インクジェット記録装置および該装置のインク処理方法

【課題】インクジェット記録ヘッドのインク吐出口の形成面に付着したインクを払拭するためにワイピング部材を用いる構成に関連する。この構成において、良好な払拭を行うためにワイピング部材に供される液体を収納する大きなスペースを必要とすることなく、さらに環境によらず、所望の払拭性能を発揮できるようにする。
【解決手段】大気を冷却することにより水を発生可能な冷却部8を設け、この冷却部を駆動して水を生じさせ、これにワイピング部材9を接触させて水を転移させてから、ワイピングが行われるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に実用化されている水性インク(染料、顔料、染料顔料混合等の色材を含むものやこれらを含まないインク等)を用いる産業レベルから家庭用レベルまでのプリンターに関する。本発明は、特に、このプリンターとして有効なインクジェット記録装置および該装置のインク処理方法に関し、さらには、記録装置のメンテナンス時におけるインクの処理に適用して好適な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記水性インクを用いる産業レベルから家庭用レベルまでのプリンターに好ましく適用可能なインクジェット記録方式は、液体であるインクを媒介として入力画像データを出力画像に変換するシステムである。一方、インク出す記録ヘッドのメンテナンス技術は、プリントの信頼性の観点から重要な要素であり、以下の理由から採用されている。
【0003】
(a)インク吐出用の記録ヘッドは微細なノズル(以下、特にことわらない限り、吐出口、これに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギを発生するための素子を総称して言う)から記録媒体にインクを直接吐出するものである。従って、吐出したインクが記録媒体に当たって跳ね返ったり、インクを吐出する際に記録に関与する主なインクの他に微小なインク滴(サテライト)が吐出されて雰囲気中に漂ったりすることがある。すると、これらがインクミストとなって、記録ヘッドのインク吐出口の周りに付着することがある。また、空気中を漂っていた塵埃などが付着することもある。すると、吐出される主インク滴をこれらの付着物が引っ張ることで、インク吐出方向がよれること、すなわち主インク滴の直進性が妨げられることがある。
【0004】
(b)記録ヘッドには、記録の高速化や高解像化の目的で複数のノズルが配列されるのが一般的であるが、入力画像データによっては記録中にインク吐出に用いられないノズルが生じることがある。そのようなノズルでは、吐出口からのインク溶剤の蒸発が生じ、これに伴いノズル内のインク粘度が増加する。従ってその後、そのノズルを使用するに際して、通常のインク吐出用のエネルギが付与されても安定したインク吐出が行えなくなり、吐出不良が生じる。また、記録ヘッド内部のインク溜め、すなわち吐出口内方の液路や液路に連通する共通液室などの部分に泡が存在すると、吐出口や記録ヘッドを構成する材質の内部を透過してきたガスが泡に取り込まれ成長することがある。さらに、記録時の昇温により泡が膨張することがある。これらによってインク供給源からのインク供給が阻害され、結果としてインク吐出不良が生じる。
【0005】
そこで、これら(a)および(b)の問題を解決するためのメンテナンス技術として、インクジェット記録装置では次のようなものが採用される。
(A)所定のタイミングで、ゴム等の弾性材料でなる払拭部材で記録ヘッドの吐出口が形成されている面(以下、吐出面という)を掃き、付着物を除去する(以下、この動作をワイピングと呼ぶ)。
(B)インク吐出が行われない時間や環境などに応じて、記録媒体に画像を形成する際のインク吐出とは別に所定量のインク吐出を行い、粘度が増加したインクを排出する(以下、この動作を予備吐出という)。また、所定のタイミングで、例えばポンプを用いて吐出面に吸引力を作用させ、吐出口よりインクを吸い出すことにより、吐出口内方のインクを強制排出する回復動作を行う(以下、この動作を吸引回復という)。そして、当該吐出または排出されたインク(以下、廃インクという)は吐出面に対向または吐出口周囲に密閉空間を形成可能なキャップ等に受容され、さらに所定部位に設けた吸収体などの部材に移送されて保持される。
【0006】
一方、近年実用化されている水性インク(染料、顔料、染料顔料混合等の色材を含むものやこれらを含まないインク等)の内、更なる画像堅牢性の要求に応えるものの一つとして、色材に顔料を含むインク(顔料系インク)の使用が挙げられる。顔料系インクには、染料をベースとしたインク(染料系インク)と比較して、蒸発後は色材の再分散性に劣り、また顔料を溶剤中に分散させるために用いている高分子化合物が吐出面に対して吸着されやすいという性質が見られる。
【0007】
このことから、顔料系インクを用いる記録装置では、単にワイピングを施しても吐出面上に拭き残りが発生し、インク溶剤の蒸発によって増粘したインクが残留したままとなり、上記問題(a)が改善されない恐れが生じる。顔料系インクは、元来固体である色材を、分散剤や、顔料表面に官能基を導入するなどして水中に分散させてなるものである。従って、吐出面上でインク中の水分が蒸発し乾燥した顔料インクの乾燥物は、色材自体が分子レベルで溶解している染料系インクの乾燥固着物と比べ、吐出面に与えるダメージが大きい。また、顔料を溶剤中に分散させるために用いている高分子化合物が吐出面に対して吸着されやすいという性質が見られる。これは、インクの粘度調整や、耐光性向上その他の目的でインクに反応液を添加する結果インク中に高分子化合物が存在する場合には、顔料系インク以外でも生じる問題である。
【0008】
これらの課題に対し、特許文献1および特許文献2には、記録ヘッドのワイピング時にヘッド用液体を吐出面に塗着させる技術が開示されている。これにより、ワイパの磨耗を軽減し、記録ヘッドに蓄積したインク残渣を溶解させることによって蓄積物を除去し、さらには、記録ヘッド上にヘッド用液体の薄膜を形成させることによって異物の記録ヘッドに対する付着を防止しているのである。そして、これらによってワイピングによる拭き取り性が向上する。また、これらのワイピング時に用いるヘッド用液体は、プリンター本体内部に貯蔵する構成がとられている。さらに、特許文献1および特許文献2には、吐出面に対してワイパを相対移動させることによるクリーニング工程と、この工程の前に吐出面に不揮発性溶剤をヘッド用液体として供給する工程と、が開示されている。しかし、当該不揮発性溶剤についての開示内容は極めて少ない。すなわち、特許文献1では、分子量200〜600のポリエチレングリコール(PEG)を、特許文献2では、分子量300のポリエチレングリコール(PEG300)を開示するのみである。
【0009】
インクジェット記録技術における冷却手段の利用形態としては、以下のものがある。特許文献3号公報は、核沸騰の気泡を形成すると共にこの気泡を消滅するための冷却をマイクロ秒に極めて短い時間で行うために、ペルチェ素子を用いる技術を開示している。しかし、このようなペルチェ素子は、放熱と冷却のバランスや市場の製品を見てもアイデアレベルのものでしかない。これに対し、特許文献4には、インクジェット記録装置の記録ヘッド上に配置されたノズル群の目詰まりを防止する目的で、記録ヘッドのノズル面(吐出面)側に開口する封止空部が設けられたキャップ部材の外部に設けたペルチェ素子を開示している。特許文献4は、これによりキャップ内の湿度を向上させ、ノズルの目詰まりを予防する発明である。しかし、この技術内容は、キャップ状態で冷却を実行してもキャップ内湿度を向上することができない。逆に、キャップ前にキャップを冷却してもキャップはインクを排出するための連結管があるために、応答性が無いばかりかヘッドの目詰まりを防止できる水準の絶対湿度さえも得ることができない。
【0010】
また、インクジェット記録とは別の分野において、特許文献5には、冷却によって発色する記録メディアに接触するペン先を冷却するために、ペルチェ素子を用いて−15℃〜−20℃にすることが開示されている。この特許文献5には、そのペン先端に結露層や水滴が付着すると熱変性対象物を変質させてしまうという記載があることから、結露はむしろ避けるべきものであることが示唆されている。
【0011】
【特許文献1】特開平10−138503号公報
【特許文献2】特開2000−203037号公報
【特許文献3】特開昭54−51837号公報
【特許文献4】特開2003−276214号公報
【特許文献5】実用新案登録第2547929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載のプリントヘッド洗浄装置は、プリンター本体の寿命が尽きるまで行われるワイピング動作に対し、ワイパに塗着すなわち提供される十分な量の不揮発性溶剤を収納できる不揮発性溶剤リザーバを準備しなければなない。従って、プリンターが大型化してしまうという問題がある。また、定期的に不揮発性溶剤を補充する構成とすることでプリンターの小型化を図ることも考えられるが、ユーザに煩雑な処理を強いることになり、市販の処理液を利用するものとすればランニングコストも増大し得る。さらには、プリンターの用いられる環境により不揮発性溶剤の吸湿・乾燥が発生し、不揮発性溶剤の物性が変化することによって、ワイパへの塗着量のばらつきが生じ、所望のワイピング性能が発揮されないことも懸念される。
【0013】
さらに、特許文献1はあくまでワイパに対する不揮発性溶剤の付与を主眼としたものである。従って、吸収体の廃インク導入部分が増粘インクや固化インクでブロックされ、吸収体内部への拡散が阻止されることで廃インクの溢れが生じるという課題の認識はなく、また当然にその解決手段も示唆されていない。
【0014】
一方、上記問題(b)に関して、廃インクを吸収体に導入する際、当該導入部位において増粘したインク、さらに甚だしい場合には固化したインクが次第に堆積して行く。すると、これによって導入部位がブロックされ、吸収体内部への拡散が阻止されることで廃インクの溢れが生じる恐れがある。
【0015】
本発明の主たる課題は、インク記録ヘッドから出たインク(画像形成を除く)の液状或いは増粘状態に対して、直接或いは間接的に効率よく、実質的に水を付与することで、その状態を緩和し、処理しやすくするための新規な機構及び方法を提供することにある。本発明の別の課題は、インクジェット記録装置におけるワイピング機構などメンテナンス機構その他の、記録ヘッドから出たインクを処理する機構に関して、次の事項を満たしながら、所望のインク処理性能を維持できるようにすることにある。すなわち、この機構に供される液体を収納する大きなスペースを必要としないこと、煩雑な操作やランニングコストの増大をユーザに強いないこと、および環境に左右されないこと、である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そのために、本発明の第1の形態では、インクを吐出する記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置において、
大気を冷却することにより水を発生可能な冷却手段を具え、前記記録ヘッドから出たインクに対して前記水を供給することを特徴とする。
【0017】
本発明の第2の形態では、インクを吐出する記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置において、
大気を冷却することにより水を発生可能な冷却手段と、
前記記録ヘッドから記録動作以外でインク吐出動作を行わせることにより、または、前記記録ヘッドに対し圧力を作用することでインクを強制排出させることにより生じたインクに対して前記水を供給する処理手段と、
を具え、
前記処理手段は、当該インクを受容するキャップと、当該インクを吸収保持するための吸収体と、前記キャップから前記吸収体に向けてインクを移送する経路と、を有し、
前記冷却手段は前記経路が接続される前記吸収体のインク導入部分に設けられ前記移送されてくるインクに前記水を混合することを特徴とする。
【0018】
本発明の第3の形態では、インクを吐出する記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置において、
大気を冷却することにより水を発生可能な冷却手段と、
記録媒体の縁部に余白を残さない記録を行う際に前記縁部からはみ出して吐出されるインクに対して前記水を供給する処理手段と、
を具え、
前記処理手段は、当該吐出されるインクを受けるためのインク受け部と、当該インクを吸収保持するための吸収体と、を有し、
前記冷却手段は前記インク受け部で前記吐出されるインクに前記水を混合することを特徴とする。
【0019】
本発明の第4の形態は、氷点温度以下に大気を冷却することで氷を発生させ、該氷を融解させて水を発生させる工程と、前記水を利用して、インクジェット記録ヘッドから出たインクに対して前記水を供給する工程と、を具えたことを特徴とするインクジェット記録装置のインク処理方法に存する。
【0020】
本発明の第5の形態は、大気を露点温度の−10℃以下に冷却すること、若しくは露点温度の−10℃以下した後、温度上昇することで水を生じさせる工程と、前記水を利用して、インクジェット記録ヘッドから出たインクに対して前記水を供給する工程と、を具えたことを特徴とするインクジェット記録装置のインク処理方法に存する。
【0021】
本発明の第6の形態では、記録ヘッドから供給された水系インクを用いて記録を行うインク記録装置において、
大気を冷却することにより水を発生可能な冷却手段を具え、前記記録ヘッドから出た水系インクに対して前記水を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上記第1ないし第6の形態に係る本発明は、記録ヘッドから出て吐出面に付着したインク、予備吐出や吸引回復により生じたインク、あるいは記録媒体の縁部に余白を残さない記録を行うために前記縁部からはみ出して吐出されるインクの処理に係るものである。そして、インク処理時等或いはその準備段階で、大気を冷却することにより水を発生させ、その水自体を直接利用するものである。従って、メンテナンス液を収納する大きなスペースを必要とすることなく、かつ煩雑な操作やランニングコストの増大をユーザに強いることなく、さらに環境によらず、所望のインク処理性能を維持できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の具体的な実施形態に先立ち、まず本発明の基本的概念を説明する。
染料系であると顔料系であるとを問わず、インクの溶剤の主成分は水であることから、まず本発明者らは、水を供給しながらワイピングなどのメンテナンスを行っても相当の効果があることに着目した。吐出面の増粘インクに水を加え混合することで流動性が高まり、拭き残りのないワイピングが行われるからである。また本発明者らは、水を適時生じさせて供給できるようにすれば、特許文献1のように大型のリザーバやユーザに煩雑な処理等を強いることのない記録装置を提供できると考察した。
【0024】
以上から、本発明者らは、大気を冷却することにより水蒸気から水を得て、その水を直接メンテナンス機構に提供して機能させることに想到した。より具体的には、大気と接触する冷却面を有する冷却手段を用い、露点温度以下に大気を冷却することで冷却面に結露を生じさせ、その水を利用すれば、特許文献1に係る課題を解決できることに想到したのである。
【0025】
本発明の基本的概念は、従来の特許文献1〜特許文献4にある技術思想とは異なり、冷却により水を発生させ、さらにはその水をメンテナンス機構等に直接或いは間接的に水自体を積極的に利用する構成にある。以下、水の効率的な発生および提供を行うことで、上記した目的を達成するための具体的な実施形態を説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
図1は本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンターの主要部の模式的な斜視図である。
【0027】
図示のインクジェット記録装置において、キャリッジ100は無端ベルト5に固定され、かつガイドシャフト3に沿って移動可能になっている。無端ベルト5は一対のプーリ503に巻回され、一方のプーリ503にはキャリッジ駆動モータ(不図示)の駆動軸が連結されている。従って、キャリッジ100は、モータの回転駆動に伴いガイドシャフト3に沿って図の左右方向に往復主走査される。
【0028】
キャリッジ100上には、インクタンク2を着脱可能に保持する記録ヘッド1が搭載されている。ここで、記録ヘッド1は、インク吐出口列が記録媒体としての用紙Pと対向し、かつ上記配列方向が主走査方向と異なる方向(例えば記録媒体6の搬送方向である副走査方向)に一致するようにキャリッジ100に搭載される。なお、インク吐出口列およびインクタンク2の組は、使用するインク色に対応した個数を設けることができ、図示の例では4色(例えばブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)に対応して4組設けられている。
【0029】
記録媒体6は、キャリッジ100のスキャン方向と直交する方向に間欠的に搬送される。記録媒体6は搬送方向の上流側および下流側にそれぞれ設けた一対のローラユニット(不図示)により支持され、一定の張力を付与されてインク吐出口に対する平坦性を確保した状態で搬送される。そして、キャリッジ100の移動に伴う記録ヘッド1の吐出口の配列幅に対応した幅の記録と、記録媒体6の搬送とを交互に繰り返しながら、記録媒体6全体に対する記録が行われる。また、図示の装置には、キャリッジの主走査方向上の移動位置を検出するなどの目的でリニアエンコーダ4が設けられている。
【0030】
キャリッジ100は、記録開始時または記録中に必要に応じてホームポジションで停止する。ホームポジション付近には、キャップ7、冷却部8およびワイパブレード9を含むメンテナンス機構が設置されている。キャップ7は不図示の昇降機構によって昇降可能に支持されており、上昇位置では、記録ヘッド1の吐出面をキャッピングし、非記録動作時等においてその保護を行ったり、あるいは吸引回復を行うことが可能である。記録動作時には記録ヘッド1との干渉を避ける下降位置に設定され、また吐出面との対向によって予備吐出を受けることが可能である。
【0031】
ゴム等の弾性部材でなるワイパブレード9,9’はワイパホルダ10に固定されている。ワイパホルダ10はガイド10’に沿って、図の前後方向(記録ヘッド1の主走査方向と直交する方向)に移動可能である。そして、記録ヘッド1がホームポジションに到達したときに、図の手前側にワイパホルダ10が移動することによって、記録ヘッド1の吐出面をワイピングすることができる。ワイピングが完了すると、記録ヘッド1がホームポジションから離され、ついでワイパホルダ10が図の奥側に移動することで、次のワイピング動作に備える。
【0032】
図2は、ワイピング動作を説明するために、記録ヘッド1の一部(ある1色のインクに対する吐出口列)を吐出面側から見た図である。ここで、11は吐出面、1103は主走査方向と異なる方向(例えば主走査方向に直交する方向)に吐出面11に配列されたインク吐出口であり、図ではある1色のインクに対応したものが示されている。1104は吐出インクの直進を妨げる恐れのある付着インク、1105はワイピング方向である。ワイピングとは、図示のようにワイパブレード9,9’を吐出面11に当接させつつ矢印1105で示す方向(本例では主走査方向に直交する方向)に移動させて、付着インク1104をワイパブレード9および9’により吐出面11から払拭する動作である。なお、後述のように、ワイパブレード9および9’は高さが異なっており、記録ヘッド1の吐出面11との摺接時に、前者は比較的大きく屈曲して側部が、後者は比較的小さく屈曲して先端部が当接するようになっている。
【0033】
図3は本実施形態の冷却部8およびそれに関連した各部の模式的側断面図であり、図1の矢印方向から見たものである。本例の冷却部8はペルチェ素子を利用したものであり、ワイパブレード9が摺接可能な下面12が冷却面、上面13が放熱面となるようにDC電源部80に接続されている。記録ヘッド1のワイピングに先立ち、冷却部8の下面12が冷却され、この下面12に接触する大気が露点温度以下となると空気中の水分が結露または結霜する。そして、記録ヘッド1がホームポジションに到達すると、ワイパホルダ10が図1の手前方向(図3の左方向)に移動させることで、吐出面11をワイピングする。この際に、冷却部8の下面12に結露により発生した水、または結霜によって生じた氷が融解することで発生した水を、ワイパブレード9,9’に転移させ、その水を用いて吐出面11がワイピングされる。
【0034】
放熱面である上面13には放熱機構14が配置され、上面13で発生する熱を効率よく廃熱できるように設計されている。放熱機構14は、熱伝導率の高い素材で構成され、表面積が大きいフィン構造を有していても良いし、さらにファンと組み合わされた構成をとっても良い。また、熱伝導率の高い容器に、水や熱容量の大きい有機溶剤を収納した形態とし、気化による放熱効果を得ることも可能である。図示の例では、フィンを有するヒートシンク14hとファン14fとを組み合わせた形態としている。
【0035】
図4(a)〜図4(c)、図5(a)〜図5(d)および図6は本実施形態のワイピング時の動作を説明するための模式的側面図であり、図1の矢印方向から見たものである。
【0036】
図4(a)において、記録ヘッド1のワイピングに先立つ冷却部8の下面12の冷却によって大気中の水分が下面12に結露(または結霜)し、水(または氷)15が発生する。冷却面12の表面温度や、所望の水量を得るための制御態様については後述する。図4(b)は、ワイパホルダ10が記録ヘッド1方向に移動する過程においてワイパブレード9,9’が冷却部下面12に摺接している状態を示したものである。このとき、冷却部下面12に十分に発生した水(結露によるもの、または氷が融解したもの)15の一部がワイパブレード9,9’に転移する。この転移を効率よく行うためには、ワイパブレード9,9’が図1のガイド10’に沿って移動する際に、ワイパブレード9,9’が冷却部下面12に対し正の一定進入量をもつように冷却部8を位置決めすればよい。すなわち、図4(a)に示すようにワイパブレード9,9’に外力が作用していない状態において、その先端位置が冷却部下面12のなす平面より適切な量だけ相対的に突出するよう、冷却部8の位置を定めればよい。
【0037】
図4(c)は、ワイパホルダ10がさらに記録ヘッド1側に移動し、冷却部8を通過した状態を示している。ワイパブレード9,9’には、冷却部下面12に発生した水15の一部が転移した水16が付着している。
【0038】
図5(a)は、ワイパホルダ10が記録ヘッド1の吐出面11の下まで移動した状態を示している。記録ヘッド1およびワイパブレード9,9’は、ワイパブレード9が図1のガイド10’に沿って移動する際に、ワイパブレード9,9’が吐出面11に対し正の一定進入量をもつように相対的に位置決めされている。すなわち、ワイパブレード9に外力が作用していない状態において、その先端位置が吐出面11のなす平面より適切な量だけ相対的に突出するよう、相対位置が定められている。また、ワイパブレード9および9’は高さが異なっており、記録ヘッド1の吐出面11との摺接時に、前者は比較的大きく屈曲して側部が、後者は比較的小さく屈曲して先端部が当接する。そして、移動の過程で、まず比較的長いワイパブレード9がまず吐出面11に摺接し、比較的短いワイパブレード9’がこれに続くことになる。
【0039】
吐出面11には、図2に示したように増粘した付着インク1104が存在していることがある。また、顔料系インクが用いられている場合は、顔料を分散せるために用いている高分子化合物が吐出面に吸着されていることもある。そこで、これらの付着物を掻き取るという物理的なクリーニングのほかに、本例では化学的なクリーニングをも行うことになる。つまり、本例ではワイパブレード9に水16を担持させた状態で吐出面11をワイピングすることにより、水による増粘インクの再溶解(再分散)や、水による高分子化合物の払拭を行う。これにより、極めて優れた吐出面11のクリーニング効果が得られる。特に、図5(b)〜(d)に示すように、ワイパブレード9Aは比較的大きく屈曲してその側部が吐出面11に摺接し、水16を効率よく吐出面11に転写させてゆく。吐出面11に付着インク1104があっても、水16の付与によって溶解または剥離する。もしくは、吸水して軟化する。この状態でワイパブレード9’の先端部(エッジ)が吐出面11に当接することで、溶解、剥離もしくは軟化した付着インク1104を効率的に掻きとって行き、記録ヘッドのクリーニングが行われる。
【0040】
図6はワイパホルダ10が完全に記録ヘッド1を通過した状態を示した図である。上記ワイピングの結果、ワイパブレード9上にはインク成分が一部溶解した水16’(ないしは剥離または軟化したインク付着物を含むもの)が付着している。この水16’が重力の作用に従いワイパブレード9を伝って流れ落ちるようにする場合には、図示のワイパホルダ10の位置の下方において水16’を受容する部材を設けることができる。しかし、図示の位置付近でワイパブレード9に当接することで水16’をワイパブレード9から積極的に受容し、ワイパブレード9を清浄な状態にする手段(スポンジやスクレイパ等)または工程を設けることが望ましい。
【0041】
以上のように、本実施形態では、通常のワイピング動作だけでは拭き取れない吐出面上の付着インクが水により希釈され、ワイピング性が向上する。ここで、本例では大気を冷却することで発生した水(もしくは大気を冷却することで発生した氷を融解した水)を、吐出面のワイピングの際に直接利用している。従って、吐出面用のクリーニング液を特別に準備したり、該クリーニング液を収納するスペースを特に確保したりする必要がなく、さらには、周囲の環境に特に依存することなく飛躍的に吐出面のクリーニング性を向上させることが可能となった。すなわち、省スペース・無騒音で、かつ半永久的に良好なワイピングを行うことが可能となる。
【0042】
なお、本実施形態において、冷却部下面に撥水処理を施すことにより、ワイパブレード9への水の転移をより効率良く行わせるようにすることも可能である。
【0043】
(第2の実施形態)
本発明を適用可能なメンテナンス機構としては、上例のように記録ヘッド1の吐出面11に直接接触してワイピングを行うワイパブレードに限られない。予備吐出や吸引回復に伴って排出される廃インクを保持する部位に対しても本発明の適用が可能である。
【0044】
図7は本発明の他の実施形態に係るインクジェットプリンターの主要部の模式的な斜視図である。本例も図1とほぼ同様の構成を有し、第1の実施形態(図1)と同様に構成できる部分については対応箇所に同一符号を付してある。なお、以下の各実施形態ではワイパブレードを1つのみ(符号9で示すもの)を示しているが、上記第1実施形態と同様に2つ備えたものとすることもできることは勿論である。
【0045】
図8(a)および(b)は本実施形態の主要部の模式的側面図であり、図7の矢印方向から見たものである。
【0046】
本例のキャップ7にはチューブ21が2本連結されており、そのうちの1本にはリーク弁18が、もう1本には吸引ポンプ19がそれぞれのチューブ経路に介挿されている。ここで、リーク弁18はキャップ7の内部を大気と連通させることが可能な開閉弁であり、通常は閉状態に設定されている。リーク弁7はキャップ7を吐出面11に接合させて密閉状態を得る際、およびキャップ7を吐出面11から離脱させて密閉状態を解除する際、それぞれの動作直前に開とされてキャップ内空間を大気と連通させる。これにより、ゴム等の弾性部材でなるキャップ7が吐出面11に対して接合/離脱する際に生じるキャップ内空間の急激な圧力変動を防止し、ノズル内方への空気の押し込み/ノズルからのインクの吸出しを防ぐことができる。なお、符号23で示すものはキャップ7の内側に配置した吸収体である。
【0047】
吸引ポンプ19は、図8(a)に示すようにキャップ7を吐出面11に接合させてその内部に密閉空間を形成した状態で負圧を発生させる。これにより、記録ヘッド1内のインクをキャップ7内に吸い出し、さらにキャップ7から一方のチューブ21を介して排出する。
【0048】
吸引ポンプ19としては、例えばチューブポンプ形態のものが用いられる。これは、これは可撓性を有するものとしたチューブ21(の少なくとも一部)を沿わせて保持する曲面が形成された部材と、これに向けて可撓性チューブを押圧可能なローラと、このローラを支持して回転可能なローラ支持部とを有する。すなわち、ローラ支持部を所定方向に回転させることで、ローラは曲面形成部材上で可撓性チューブを押しつぶしながら転動する。これに伴い、キャップ7が形成する密閉空間に負圧が生じてインクが吐出口より吸引され、キャップ7からチューブないし吸引ポンプに引き込まれる一方、引き込まれているインクはさらに適宜の部材(廃インク吸収体17)に向けて移送される。
【0049】
また、吸引ポンプ19は、そのような吸引回復だけでなく、図8(b)に示すようにキャップ7が吐出面11に対向した状態で行われる予備吐出動作によってキャップ7に受容されたインクを排出するためにも作動させることができる。すなわち、予備吐出されてキャップ7に保持されたインクが所定量に達したときに吸引ポンプ19を作動させることで、キャップ7内に保持されていたインクをチューブ21を介して廃インク吸収体17に移送することができる。
【0050】
チューブポンプ19が連結しているチューブ21の出口は、廃インク吸収体17に形成した廃インク導入用空洞部17Aに配置されている。そして本実施形態では、その空洞部17Aの底面に冷却部20が設置されている。
【0051】
冷却部20は第1実施形態の冷却部8と同様、ペルチェ素子を用いたものとすることができるが、本例の場合はその上面24すなわちチューブ21の出口と対向して空洞部17Aに配置される面が冷却面、下面25が放熱面となるよう不図示の電源部に接続される。また、放熱面に一部が接続する形態にて放熱機構26が配置され、効率良く排熱できるように設計されている。放熱機構26は、断熱材27にて被覆した形態にてプリンターの構造材28の内部で這いまわされ、冷却部20とは反対の端部で大気と接するようになっている。放熱機構26は熱伝導性の高い素材で構成され、その一部が、第1実施形態の放熱機構14と同様、表面積の大きいフィン構造を有していても良いし、ファンと組み合わされた構成をとっても良い。また、熱伝導性の高い容器に水や熱容量の大きい有機溶剤を収納した形態としてもよい。
【0052】
図9(a)〜図9(d)は、廃インク吸収体17の廃インク導入部付近の拡大図であり、冷却部20を作動させた場合の経時的状態変化を示している。
【0053】
図9(a)は、チューブ21からインク30が排出される前の段階において冷却部20を作動させたことにより、冷却面24上に水34が発生している状態を示す。
【0054】
本例の場合、冷却面24上の水34にチューブ21から滴下するインク30が着水すると、表面張力の作用で冷却部20全面にインクが広がり、かつ水と混合され、図9(b)に示す混合インク35の状態となる。混合インク35は少なくとも一部が廃インク吸収体17と接触しているので、図9(c)において符号33で示すように廃インク吸収体17に吸収される。この状態においても冷却部20の作動を継続すると、混合インク35と大気の界面や、混合インクによって覆われていない冷却面24に水が発生し、混合インク35の水濃度が上がり、粘度が低下する。これによって、図9(d)に示すように、吸収体17への混合インク35の吸収・拡散が促進される。この繰り返しにより、インク30に含まれていた成分の大半が吸収体17に移動し、その後冷却部20の作動を停止した場合でも、冷却面24上ないしは空洞17Aにおける増粘もしくは固化インクの堆積が殆ど発生しなくなる。なお、冷却部20の作動を継続する際、冷却面24の表面温度は、混合インク35が氷結しない温度以上であって+5℃以下となるようにすることが好ましい。
【0055】
この上記実施例における冷却部20を作動させないと仮定した場合、つまり冷却部20が存在しない、もしくはインク30の滴下部位にも吸収体が存在していたと仮定する。すると、単純にインク滴は、増粘、凝集、固化してしまい、吸収体の吸収能力が低下してしまう。これに対して、本例は、インク滴に即座に或いはある程度増粘したとしても、滴下部分において積極的に水を発生させ、インクと混合してその粘度を低下させている。従って、吸収体17への吸収を促進でき、滴下部位で増粘インクまたは固化インクが次第に堆積して行き、廃インク吸収体のインク導入部位がブロックされてしまう恐れが無い。
【0056】
従って、ここに開示された発明は、廃インク導入部分において大気を冷却することで発生した水をそのまま利用し、当該部位においてインクと混合してその粘度を低下させることで廃インク吸収体17へ効率よく移動させることができる。すなわち、インク導入部付近の廃インク吸収体が増粘インクや固化インクでブロックされてインクの吸収・拡散効率が低下したり、廃インクの溢れが生じたりするなどの不都合が発生する恐れを格段に低減できる。
【0057】
(第3の実施形態)
本発明は、第1および第2の実施形態で説明したような記録ヘッド1のインク吐出動作を良好な状態に保持するメンテナンス機構に関してだけでなく、記録ヘッド1から出たインクを処理するその他の手段に対しても適用が可能である。
【0058】
図10は本発明のさらに他の実施形態に係るインクジェットプリンターの主要部の模式的な斜視図である。本例も図1とほぼ同様の構成を有し、第1の実施形態(図1)と同様に構成できる部分については対応箇所に同一符号を付してある。また、図11は本実施形態の主要部の模式的側断面図であり、図10の矢印方向から見たものである。
【0059】
これらの図において、38および39は記録媒体6の搬送経路の上流側に設けられた一対の搬送ローラ、36は記録ヘッド1の吐出面11との対向領域において記録媒体6を支持するためのプラテンである。プラテン36には開口36Aが設けられ、例えば記録媒体6の全面への記録(ふちなし記録)を行う場合に記録媒体6の前後端および側端部からはみ出した部位に吐出されるインクを受容するようになっている。そして本例の場合、開口36A内に冷却部37が記録媒体搬送面に対して傾斜した状態で配置され、ふちなし記録を行う際に記録媒体6からはみ出して吐出されたインク滴が冷却部37上に着弾するようにされている。図中符号41で示す範囲がインクが吐出され得る範囲である。
【0060】
冷却部20は第1実施形態の冷却部8と同様、ペルチェ素子を用いたものとすることができ、その上面42すなわち記録媒体6からはみ出して吐出されるインクを受ける面が冷却面、下面25が放熱面となるよう不図示の電源部に接続される。また、放熱面に少なくとも一部が接続する形態にて放熱機構40が配置され、効率良く排熱できるように設計されている。放熱機構40は、プラテン36との接触面および廃インク吸収体17と相対する面において断熱材44で覆われ、プリンター前面側の部位でのみ大気と接するような構成になっている。なお、廃インク吸収体17は、第2実施形態に関連して述べた予備吐出や吸引回復に伴って発生する廃インクを吸収保持する廃インク吸収体と一体のものであっても、別体のものであってもよい。放熱機構40は熱伝導性の高い素材で構成され、その一部が、第1実施形態の放熱機構14と同様、表面積の大きいフィン構造を有していても良いし、ファンと組み合わされた構成をとっても良い。また、熱伝導性の高い容器に水や熱容量の大きい有機溶剤を収納した形態としてもよい。
【0061】
図12(a)〜図12(f)は、ふちなし記録に伴って生じる廃インクの導入部付近の拡大図であり、冷却部37を作動させた場合の経時的状態変化を示している。
【0062】
図12(a)は、吐出面11の吐出口からインク滴46が冷却部37の上面(冷却面)42に着滴する前の段階において冷却部37を作動させたことにより、冷却面42上に水34が発生している状態を示す。
【0063】
水49にインク滴46が着滴すると、表面張力の作用で冷却部37の上面42の全面と冷却部37の側面までインクが広がり、かつ水と混合され、図12(b)に示す混合インク50の状態となる。混合インク50は水との混合により低粘度・高表面張力となるので、比較的多くの部分は冷却面42の傾斜に沿って流れ、自重で廃インク吸収体17上へ落下する(図12(c))。なお、この状態以降はインク滴の吐出が休止しているものとする。
【0064】
廃インク吸収体17上に着滴した混合インクは、図12(d)の符号48で示すように吸収体17内へ浸透するが、一部は増粘インク46として残る場合がある。この状態においても冷却部37の作動を継続すると、混合インク59と大気の界面や、混合インクが覆っていない冷却部37の上面42に水が発生し、冷却部37の上面42の混合インク量が増える。ここで、冷却部37の作動を継続する際の冷却面24の表面温度は、混合インク35が氷結しない温度以上であって+5℃以下となるようにすることが好ましい。本状態での混合インク50は図12(b)で示した混合インク50より水分量は多く、より粘度が低く、かつ表面張力が高いので、さらに多くの部分が廃インク吸収体17上へ落下する(図12(e))。この落下した混合インク50は水分量が多いため、廃インク吸収体17上に発生している増粘インク46を再溶解(再分散)させる作用が強い。従って、吸収体17への混合インク50の吸収・拡散が促進され、混合インク50が廃インク吸収体17に浸透もしくは乾燥した後に残る増粘インク46の体積は、図12(d)に示した体積よりも減少している(図12(f))。この繰り返しにより、冷却部37の上面42の混合インクは極めて水に近い組成となり、新たなインク滴が付与されないかぎり、冷却部37の作動を停止しても、もしくは固化インクの堆積が殆ど発生しなくなる。
【0065】
上記実施形態を用いない場合は、冷却部37の上面42に相当する傾斜面上に吐出されたインクがとどまり、増粘、凝集、固化して堆積して行き、ついにはその高さがプラテン36がなす平面よりも高くなってしまう恐れがある。すると、記録媒体の裏面を汚損したり、記録媒体搬送路を閉塞してしまったり、さらには吸収体17へ向かう方向ではない方向へのインク漏洩を発生したりする。また、仮に開口36A内に吸収体を設けたとしても、増粘インクまたは固化インクが次第に堆積してしまう事態を避け得ない。これに対し本実施形態では、縁なし記録に伴って記録媒体外に吐出されたインクを受ける部位において大気を冷却することで水を発生させている。そして、そのまま利用し、当該部位においてインクと混合してその粘度を低下させることで、廃インク吸収体17へ効率よく移動させることができる。なお、本実施形態において、開口36Aないしは冷却面をもつ冷却部37は、ふちなし記録に際して記録媒体からはみ出して吐出され得るインクを受容するに必要な部位にのみ設けられたものとすることができる。
【0066】
(冷却部制御の実施形態)
本発明者らは、図2で示したような吐出面の構成にあって、上記したワイピング時に使用するに好ましい水の量を検討した。検討にあたっては、吐出口径22μmのノズルが600DPI(ドット数/インチ)で320本、上記1105方向に配列される記録ヘッドを用いるものとした。また、自己分散性顔料(顔料表面にイオン性官能基が直接結合された顔料であり、高分子分散剤を用いなくとも水中に分散可能な顔料)を用いたインクを使用するものとした。この場合、増粘した付着インク1104が総量で0.2mg程度存在していても、ワイパブレード9の横方向の単位長さあたり0.1mg/cm以上の水が付着していれば、良好なワイピング性能を発揮できることを確認した。なお、高分子分散剤を用いて水中に分散可能な顔料を用いたインクに関しては、良好なワイピング性能を発揮できる前記付着インク量とワイパー上の水付着量の関係はまだ調査していないが、同様の関係があると推察される。
【0067】
また、図7で示したような廃インク周りの構成にあって、前記効果を達成する為の好ましい水の量を検討した。その結果、チューブ21から排出されるインク30が5分毎に3mg付与される場合、その付与に先立ち、冷却面24上の単位面積あたり、0.5mg/cm以上の水が付着していれば、良好に廃インクを吸収体17へ移動することが可能であった。
【0068】
そこでさらに、そのような付着量が得られる冷却部8の水発生量および冷却部8の制御態様について検討した。検討にあたっては、まず蝶理株式会社製のペルチェ素子TM-31-1.0-2.5(冷却面寸法1.5cm×1.5cm)を用い、放熱面には株式会社アルファ製のヒートシンクW15-10Wを2個接着した。また、冷却効果を高めるためヒートシンク部分は水中に没するようにした。冷却面には熱伝対を接着して温度を測定するものとした。
【0069】
気温25℃、相対湿度40%RHの環境において、ペルチェ素子には1V、2Vおよび3Vの電圧をそれぞれ1分および2分印加した。印加電圧1V、2Vおよび3Vのとき、到達温度(冷却面温度)はそれぞれ、約+2℃、−15℃および−20℃であった。なお、通電開始から前記温度に達するのに約40秒の時間を要した。そして上記印加時間経過直後に、株式会社クレシア製のキムワイプを用いて冷却面を拭き取り、水の発生量を測定し、2回の平均値を算出したところ、次のような結果が得られた。ただし、印加電圧が2Vおよび3Vの場合は結霜(氷結)が生じたため、融解するまで数秒間待機してから拭き取りを行った。なお、以下の表において、空欄は他の実験結果から傾向を推定できるため、未測定である。
【0070】
【表1】

【0071】
次いで、前記環境と異なる場合の水発生量に関しても検討を行った。蝶理株式会社製のペルチェ素子TM-31-1.0-2.5(冷却面寸法1.5cm×1.5cm)を3個用い、下段に2個・上段に1個、ピラミッド上に設置した。3個は直列に接続され、上段のペルチェ素子の下面(放熱面)を下段の2個のペルチェ素子の上面(冷却面)で冷却できるように配置した。下段の2個のペルチェ素子の下面(放熱面)には株式会社アルファ製のヒートシンクを配置しており、下段のペルチェ素子2個の上全面及び下全面に熱伝導性両面テープを貼り付けることにより、上段ペルチェ素子、下段ペルチェそしおよびヒートシンクを接着した。また、ヒートシンクは放熱効果を高める為に、場合によっては水中若しくはグリセリン中に没するようにした。上段ペルチェの上面(冷却面)に熱電対をあて、4mm×9mmの熱伝導性テープで上から貼り付けることにより、冷却面温度を測定した。
【0072】
環境の水準としては、15.5℃/17%RH、30℃/23%RHおよび30℃/79%RHの3つとした(温湿度はアースマン通風温湿度計で測定)。15.5℃/17%RHの環境では、ヒートシンクを空中および水中に没して検討し、30℃/23%RH・30℃/79%RHの環境では、ヒートシンクをグリセリン中に没して検討した。
【0073】
ペルチェ素子(3個直列)へ印加する電圧・通電時間を変化させた場合の冷却面温度・水発生量を、上記3環境において測定した結果を表2〜表5に示す。なお、熱電対固定用のテープ以外の領域の冷却面を株式会社クレシア製のキムワイプを用いて拭き取り、水の発生量を測定し2回の平均値を算出した。ただし、冷却面温度が0℃以下の場合は結霜(氷結)が生じたため、融解するまで数秒間待機してから拭き取りを行った。なお、通電を開始してから40〜60秒経過すると表面温度はほぼ一定になるが、放熱側の能力不足で徐々に温度が上がる場合がある。この場合は、前記表面温度が一定になった時間から通電を停止した時間までの平均値を冷却面温度と定義した。
【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
以上の結果から、プリンターが使用され得る様々な環境において、第1の実施形態を使用する際、ワイパブレード9の横方向の単位長さあたり0.1mg/cm以上の水を付着させるに十分な量の水を発生可能であることがわかった。また、冷却面の表面温度は露点温度以下となればよいが、プリンター露点温度より10℃以上低く設定することが望ましい。このように制御することにより、短時間でより多くの水を発生することが可能である。
【0079】
また、水量をより多くすることが望まれる場合がある。多くの色のインクに対応して複数の吐出口列が設けられるためにワイパブレードの横方向の長さが大きくなる場合、冷却面との摺接による水の転移効率を考慮する場合、あるいはワイピングだけでなく第2または第3実施形態のような使用形態に対応する場合である。これらの場合も、上記検討結果に基いてペルチェ素子およびそれに関連する構成の設計を行い、好ましい制御を施せばよい。
【0080】
上記結果からは、冷却面の当初温度が低い分蒸発が生じにくいことによるものと考えられるが、気温25℃、相対湿度40%RHと、30℃/79%RHの環境において、冷却面で結霜(氷結)を生じさせたほうがより多くの水量を確保できることが確認された。すなわち、気温25℃、相対湿度40%RHの環境において冷却面の表面温度が0℃の場合と−15℃の場合とで、電圧印加時間が等しいときは発生水量は明らかに後者のほうが多い。前者の場合も電圧印加時間を長くすることにより発生水量を増加させることが可能である。しかし、短時間で比較的多量の水を得ることができること、またそのために冷却部を作動させるタイミングの制御に自由度を増すことが期待できることから、氷点以下に冷却して結露水の氷結ないしは結霜が生じるようにすることがより好ましい。ここで、氷点下に冷却される場合には、第1の実施形態において、ワイパブレード9の摺接が開始される前の適宜のタイミングで冷却部8への通電を停止することで、液相である水に相変化を生じさせればよい。または電源部80から通電される電流の向きを反転させ、冷却部下面12に発生している氷を融解し、液相である水に相変化させるようにしてもよい。
【0081】
図13(a)〜(d)は冷却部下面を氷点下に冷却して結霜を生じさせる場合のワイピング時の制御態様を説明するための模式的側面図である。
【0082】
ペルチェ素子である冷却部8の下面12は結露水の氷結(15I)が生じる(ないしは結霜が生じる)ように、例えば−15℃に制御される(図13(a))。そして、ワイパブレード9が移動する直前の過程において冷却部下面12を加熱し、発生した氷15Iを融解し水15Wに相変化させる(図13(b))。加熱手段としては、通電の停止によるもの、あるいは電流の向きを反転させて冷却部下面が放熱面となるようにするものが挙げられる。前者の場合には、冷却部上面(放熱面)13からの熱伝導によって融解が行われるが、それに十分な熱量が伝達されるようにすればよい。また、後者の場合には、氷が融解すると同時に通電を停止し、融解した水がワイパブレード9に転移する前に蒸発してしまうのを防止するようにすればよい。次いで、ワイパブレード9の移動に伴い、融解した水の少なくとも一部がワイパブレード9に転移する(図13(c))。これにより、上述のようなワイピングを行うことができる。また、ワイパブレード9が冷却部8を通過した時点で再び通電を開始し、冷却部下面の冷却を再開し、次なるワイピング動作に備え十分な量の結霜を行わせることができる(図13(d))。
【0083】
本実施形態では、冷却面上で水を氷結させるようにしたことにより、ワイパブレード9の摺接前に水を保持する吸収体を持たなくとも足りる。また、上記検討結果が示すように多量の水を発生することができるのでワイパブレード9への水の転移量が増え、従って吐出面上の付着インクの払拭性がさらに向上する。
【0084】
(制御系の構成)
本発明を実施するにあたって好ましく適用できる制御系の構成および制御手順を説明する。なお、以下では第1の実施形態に対応したものを例示する。
【0085】
図14はインクジェットプリンターの制御系の構成の一例を示すブロック図である。
同図において、1005は制御部である。制御部1005は、図15につき後述する制御手順を実行するに際し各部を制御するMPU1000を具える。1001は、その制御手順に対応したプログラムやその他の固定データ等を格納したROMであり、環境、特に冷却部48の周囲環境の温度および湿度に応じて冷却部8の駆動条件を定めるためのテーブルTのデータを格納する。また、制御部1005は、MPU1000が実行する制御手順実行時におけるワークエリアとして用いられるRAM1002等を有する。
【0086】
制御部1010に対しては操作部1107が接続され、操作部1107はユーザの操作を受容するスイッチや、ユーザに情報を提示するための表示部などを有する。また、制御部1010には、コンピュータやデジタルカメラ等のホスト装置1200が接続される。ホスト装置1200からは、記録指令信号(コマンド)や記録データを含む記録情報信号を受信することができる。また、ホスト装置1200に対しては必要に応じ記録装置側のステータス情報を送出することができる。
【0087】
制御部1005には、プリンターユニット1023がインターフェース部1003を介して接続されている。プリンターユニット1023は図1および図3に示した記録装置の各部を含む。プリンターユニット1023において、1025は記録ヘッド1を駆動するためのヘッドドライバである。1010はキャリッジ100の移動(主走査)の駆動源をなすキャリッジモータ、1027はこれを駆動するためのモータドライバである。1011は記録媒体の搬送(副走査)の駆動源をなす搬送モータ、1028はこれを駆動するためのモータドライバである。1029はメンテナンス機構であり、キャップ7、冷却部8、放熱機構14およびワイパブレード9,9’を含んでいる。1030はそれらメンテナンス機構1029の各部を駆動するための駆動部である。1032は温湿度センサであり、環境、特に冷却部48の周囲環境の温度および湿度を検出する。
【0088】
なお、図14では後述する本実施形態の処理に関連する主要部のみを示している。しかし実際には、各部を制御する際の基準となるキャリッジホームポジションセンサやキャッピングセンサなどのセンサ群、およびその他の所要の手段を含み得ることは勿論である。
【0089】
図15は第1の実施形態に適用可能なワイピング処理手順の一例を示すフローチャートである。本手順は適宜のタイミングで起動することができる。例えば、所定時間毎に起動されるものであってもよいし、記録動作が所定時間以上継続されたときや、所定量のインク吐出が行われた場合に起動されるものでもよい。また、ユーザの指示に応じて行われるものでもよいし、吸引回復や予備吐出に付随して行われるものでもよい。
【0090】
本手順が起動されると、まず温湿度センサ1032によって環境の温度および湿度を検出する(ステップS1)。そして、当該温湿度情報に基き、ROM1002に設けたテーブルTを参照し、当該温湿度条件下でワイピングに必要な水分量を最短時間で得るための冷却部8の駆動条件、すなわちペルチェ素子への印加電圧および電圧印加時間を決定する(ステップS3)。
【0091】
続いて、当該決定した駆動条件にて冷却部8の駆動を開始し(ステップS5)、決定した印加時間が経過すると(ステップS7)、冷却部8の駆動を停止する。なお、冷却部8の表面に結霜が生じる場合には、冷却部8の駆動停止後に、氷が融解するまでの待機、あるいは融解を促進するための駆動を行うようにすることができる。
【0092】
以上の処理によってワイピングに必要な水分量が確保されると、ワイピングを実行する(ステップS9)。そして、このワイピングの過程で、上述したように、ワイパブレードへの水の転移および、当該水を用いた吐出面のワイピングによるクリーニングが行われる。
【0093】
なお、本手順においては、冷却部8の駆動条件をテーブル参照によって得るものとしたが、所定の計算式に基いて演算により得るものでもよい。また、本手順においては、ワイピング処理が起動されてから駆動条件の決定およびこれに基く冷却部8の駆動を行うようにしたが、ワイピングに必要な水分量を得るまでに比較的長い時間を要するのであれば、その間を利用して他の処理を実行することもできる。例えば、記録途中にワイピング処理のイベントが生じた場合、少なくとも必要水分量が確保されるまでは記録を継続するようにすることができる。また、記録動作中でなければ、必要に応じて、吸引回復や予備吐出を実行するようにしてもよい。
【0094】
さらに、吐出面へのインクミストの付着量は、吐出動作の回数すなわち記録データの量などにも相関するので、ワイピング処理のイベントが生じるタイミングを予測することも可能である。従って、そのタイミングを記録すべきデータに基いて予測し、そのタイミングより必要時間前に冷却部の駆動を開始するようにすることもできる。これによれば、ワイピング動作を即時実行可能となる。
【0095】
また、そのようにワイピング動作を即時実行可能とするために、冷却部8には常に必要十分な量(ワイピングに使用するに好ましく、かつ冷却部からの滴下が生じない量)の水が確保されているようにすることも可能である。
【0096】
そのために、プリンターの電源オンまたは記録開始信号の入力後には冷却部に常時通電することもできるし、パルス駆動を行うようにしてもよい。あるいは、タイマー等を用いてオン/オフ駆動を行うようにすることも可能である。さらに、それらの駆動条件(印加電圧や電圧印加時間)が温湿度センサ1032の検出情報等に基いて適切に変更されるよう、フィードバック制御を行って必要十分な量のインクが確保されるようにしてもよい。
【0097】
(その他)
上記第1の実施形態ではワイピングを行うために、水を適切に発生させて直接使用するものとした。第2の実施形態では予備吐出または吸引回復に伴って発生する廃インクの導入部位に水を適切に発生させて直接使用するものとした。また第3の実施形態ではふちなし記録に伴って記録媒体からはみ出して吐出されるインクを受容する部位に水を適切に発生させて直接使用するものとした。しかしそれらの実施形態を適宜組み合わせることも可能であり、またそれ以外の部位、例えばワイパブレード9を清浄な状態にする手段(スポンジやスクレイパ等)において水を適切に発生させて直接使用するようにすることもできる。さらに、複数の部位で水を使用する場合、水を発生するための冷却部をそれぞれ配設することもできるし、あるいはいくつかの冷却部を兼用すると共に適切な導水経路を付加するようにすることもできる。
【0098】
また、冷却部として上述の諸実施形態ではペルチェ素子を用いたが、ヒートポンプなどが用いられてもよい。目的に応じて定まるプリンターの大きさにもよるが、産業目的など比較的大型のプリンターに本発明を適用する場合には、コンプレッサや冷凍サイクルなどを用いて大気の冷却を行うことも考えられる。
【0099】
さらに、冷却を行う一方で発生する熱(第1実施形態ではヒートシンク側の発熱)をヒートパイプや熱伝導性の良好な部材を介して例えばプラテン部まで導き、記録物の定着・乾燥を促進する手段として有効に活用するようにすることも可能である。
【0100】
加えて、冷却部の駆動によって得られる水分量、ないしは、必要水分量を得るまでに要する時間等は、冷却部周囲環境の条件、特に相対湿度によって変化する。すなわち、相対湿度が高ければ、効率よく必要な水分量を確保することができる。従って、冷却部周囲の相対湿度を積極的に高めるようにすることも可能である。これは適宜の手段を装置に付加することで実現可能であるが、付加される構成部品点数の増大や装置の大型化を伴わないものであることが好ましい。このためには、例えば、放熱部14のヒートシンク14hの一部を延長して廃インク吸収体に導き、廃熱を利用して廃インク吸収体に吸収されている廃インクの水分蒸発を行わせるように構成することができる。プリンターは通常、筐体で覆われており、従ってその内部は密閉環境に近いので、当該水分蒸発を生じさせることで相対湿度を高めることが可能である。
【0101】
さらに加えて、上述の各実施形態では、冷却部によって発生した水を直接、記録ヘッドから出たインクに対して供給して所定の処理を行うものとした。しかし冷却部によって発生した水をそのまま供給するのではなく、例えば他の液体と混合してから供給するものでもよい。
【0102】
例えば、吐出面に付着したインク残渣等を効率よく排除するためのヘッド用液体を別途用意し、これを記録ヘッドのワイピング時に適用する技術がある。これらのワイピング時に用いるヘッド用液体は、プリンタ本体内部に貯蔵する構成が採られている。
【0103】
かかるヘッド用液体としては、ポリエチレングリコールないしはグリセリンなどの不揮発性溶剤が好ましく用いられる。しかし不揮発性溶剤は高湿環境下での吸湿によって多量の水分を含有する一方、低湿環境となると蒸発が生じるなど、環境変化によって組成が変化する。このヘッド用液体の組成変化は物性の変化をもたらし、ヘッド用液体の目的としているヘッドのクリーニング効果を充分発揮できなくなる恐れがある。
【0104】
そこで、このようなヘッド用液体の組成変化を抑制するためにも、本発明は好ましく適用できる。
【0105】
図16はそのための実施形態を示す模式図である。ここで、図中2003は不揮発性溶剤を主成分とするヘッド用液体2005を貯留するリザーバータンク、2006はタンク内と大気とを連通する連通口である。2004はヘッド用液体2005の温度と導電率とを検出するセンサーである。かかるセンサー2004により温度および導電率を知ることによって、ヘッド用液体2005の吸湿・乾燥の度合いを知ることができる。2002はペルチェ素子を利用した冷却部であり、一面(下面)がリザーバータンク2002内に、他面(上面)が大気に面し、一方が冷却面、他方が放熱面となるよう通電が制御される。2007はヘッド用液体を攪拌するための攪拌手段である。
【0106】
かかる構成において、センサー2004により、所期のクリーニング効果を充分発揮できる状態よりヘッド用液体2005が乾燥していたことが検出された場合には、冷却部2002の下面が冷却面になるように通電を行う。これにより、上述と同様に水が発生するので、その水をヘッド用液体2005に滴下させ、攪拌手段2007によって攪拌することで、ヘッド用液体2005を好ましい組成に戻す。逆に、所期のクリーニング効果を充分発揮できる状態よりヘッド用液体2005が吸湿していた場合は、冷却部2002の下面が放熱面となるように通電を行う。これにより、リザーバータンク2003内の相対湿度を低下させ、ヘッド用液体2005から水分を蒸発させることで、ヘッド用液体2005を好ましい組成に戻す。そして、このように好ましい性能に維持されたヘッド用液体を用い、適切にワイピング部材9を接触させて転移させてから、ワイピングが行われるようにすることができる。
【0107】
このように、本発明は、記録ヘッドから出たインクに対して、冷却部によって発生した水をそのまま供給するのではなく、他の液体と混合してから供給するなど、いわば間接的に供給して所定の処理を行う場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンターの主要部の模式的な斜視図である。
【図2】ワイピング動作を説明するために、記録ヘッドの一部を吐出面側から見た図である。
【図3】第1の実施形態の冷却部およびそれに関連した各部の模式的側断面図であり、図1の矢印方向から見たものである。
【図4】(a)〜(c)は第1実施形態のワイピング時の動作を説明するための模式的側面図であり、図1の矢印方向から見たものである。
【図5】(a)〜(d)は第1実施形態のワイピング時の動作を説明するための模式的側面図であり、図1の矢印方向から見たものである。
【図6】は第1実施形態のワイピング時の動作を説明するための模式的側面図であり、図1の矢印方向から見たものである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るインクジェットプリンターの主要部の模式的な斜視図である。
【図8】(a)および(b)は第2実施形態の主要部の模式的側面図であり、図7の矢印方向から見たものである。
【図9】(a)〜(d)は、第2実施形態の廃インク導入部付近の拡大図であり、冷却部を作動させた場合の経時的状態変化を示している。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るインクジェットプリンターの主要部の模式的な斜視図である。
【図11】第3実施形態の主要部の模式的側断面図であり、図9の矢印方向から見たものである。
【図12】(a)〜(f)は、ふちなし記録に伴って生じる廃インクの導入部付近の拡大図であり、第3実施形態に係る冷却部を作動させた場合の経時的状態変化を示している。
【図13】(a)〜(d)は冷却面を氷点下に冷却して結霜を生じさせる場合のワイピング時の制御態様を説明するための模式的側面図である。
【図14】第1の実施形態に適用可能なインクジェットプリンターの制御系の構成の一例を示すブロック図である。
【図15】第1の実施形態に適用可能なワイピング処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図16】本発明の別の実施形態を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0109】
1 インクジェット記録ヘッド
2 インクタンク
3 ガイド軸
4 リニアエンコーダ
5 ベルト
6 記録媒体
7 キャップ
8、20、37、2002 冷却部
9、9’ ワイパブレード
10 ワイパホルダ
10’ ワイパホルダガイド
11 吐出面
12、24、42 冷却面
13、25、43 放熱面
14、26、40 放熱機構
15、34、49 水(または氷)
17 廃インク吸収体
31 増粘インク
35 混合インク
36 プラテン
1005 制御部
1023 プリンターユニット
1029 メンテナンス機構
1032 温湿度センサ
2003 リザーバータンク
2004 温度・導電率センサー
2005 ヘッド用液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置において、
大気を冷却することにより水を発生可能な冷却手段を具え、前記記録ヘッドから出たインクに対して前記水を供給することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記冷却手段は、前記記録ヘッドのインク吐出性能を良好な状態にする処理手段に含まれていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記記録ヘッドから出たインクは、前記記録ヘッドのインク吐出口が設けられた吐出面に付着したインクであり、前記処理手段は前記吐出面に接触する部材であって、前記冷却手段により発生した前記水が供給されることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
インクを吐出する記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置において、
大気を冷却することにより水を発生可能な冷却手段と、
前記記録ヘッドから記録動作以外でインク吐出動作を行わせることにより、または、前記記録ヘッドに対し圧力を作用することでインクを強制排出させることにより生じたインクに対して前記水を供給する処理手段と、
を具え、
前記処理手段は、当該インクを受容するキャップと、当該インクを吸収保持するための吸収体と、前記キャップから前記吸収体に向けてインクを移送する経路と、を有し、
前記冷却手段は前記経路が接続される前記吸収体のインク導入部分に設けられ前記移送されてくるインクに前記水を混合することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
インクを吐出する記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置において、
大気を冷却することにより水を発生可能な冷却手段と、
記録媒体の縁部に余白を残さない記録を行う際に前記縁部からはみ出して吐出されるインクに対して前記水を供給する処理手段と、
を具え、
前記処理手段は、当該吐出されるインクを受けるためのインク受け部と、当該インクを吸収保持するための吸収体と、を有し、
前記冷却手段は前記インク受け部で前記吐出されるインクに前記水を混合することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記冷却手段は、ペルチェ素子を有するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記冷却手段は、前記水を、氷点温度以下にした後、氷を融解させて作ることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記冷却手段は、前記水を、露点温度の−10℃以下に大気を冷却すること、若しくは露点温度の−10℃以下にした後、温度上昇することで作ることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記インクは色材として顔料成分を含有するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記吐出面に供給可能なヘッド用液体を貯留する貯留手段と、当該貯留されたヘッド用液体の乾燥および吸湿の状態を検出する検出手段と、を具え、
前記冷却部は前記貯留手段内に一面が面するよう配置されたペルチェ素子を有し、
該検出手段により前記ヘッド用液体の状態に応じ、前記一面が冷却面または放熱面となるよう前記ペルチェ素子を駆動することで、前記ヘッド用液体に対し水を供給し、または前記ヘッド用液体から水分を蒸発させるようにしたことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
氷点温度以下に大気を冷却することで氷を発生させ、該氷を融解させて水を発生させる工程と、前記水を利用して、インクジェット記録ヘッドから出たインクに対して前記水を供給する工程と、を具えたことを特徴とするインクジェット記録装置のインク処理方法。
【請求項12】
大気を露点温度の−10℃以下に冷却すること、若しくは露点温度の−10℃以下した後、温度上昇することで水を生じさせる工程と、前記水を利用して、インクジェット記録ヘッドから出たインクに対して前記水を供給する工程と、を具えたことを特徴とするインクジェット記録装置のインク処理方法。
【請求項13】
記録ヘッドから供給された水系インクを用いて記録を行うインク記録装置において、
大気を冷却することにより水を発生可能な冷却手段を具え、前記記録ヘッドから出た水系インクに対して前記水を供給することを特徴とするインク記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−205727(P2006−205727A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375948(P2005−375948)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】