説明

インクジェット記録装置における記録ヘッドの位置調整機構

【課題】 記録ヘッドの位置調整を簡単に、かつ正確に行わせ得るようにすること。
【解決手段】 基準ピン14、24を支点として走査方向及び紙送り方向に変位自在に取付けた2つのプレート15、25を、回動操作可能な角度調整レバー16、26によりそれぞれ独自に調整可能にするとともに、キャリッジ1の側壁に回動操作可能に設けたノズル位置調整レバー35により、黒の記録ヘッド19を基準としてカラーの記録ヘッド29を紙送り方向に調整可能にしたもの。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェット記録装置における記録ヘッドの位置調整機構に関する。
【0002】
【従来の技術】シリアルタイプのオンデマンド型インクジェット記録装置を用いてカラープリンタを構成するに当って、単一のキャリッジに黒の記録ヘッドとカラー用の記録ヘッドを搭載した場合、各記録ヘッドが持つ機械的な公差や取付け上の公差によって互いの位置が相対的にズレて良好なカラー画像を形成し得ないといった問題が生じる。
【0003】このような問題を解消すべく本出願人が特開平7−314851号公報において開示した機構は、走査方向と平行な向きの当接面上の走査方向いずれか一方に回転補正板を介在させて各記録ヘッドの傾きを独立に補正するとともに、同じく走査方向と平行な向きの位置決め面のいずれか一方に調整板を介在させて一方の記録ヘッドを基準としつつ他方の記録ヘッドの紙送り方向の調整を行うようにしたものである。
【0004】このものは、記録ヘッドの傾き調整と紙送り方向の調整とを同時に行える利点を有しているが、反面において、これらの調整には、補正量に応じて厚さを異にする複数の回転補正板と調整板とを必要とするほかに、これらの補正板や調整板を差込む過程で、記録ヘッドに微妙な位置ずれを生じさせかねないといった点でさらに改善すべき余地が残されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、キャリッジ上に設けたレバーを単に回動操作するだけで、記録ヘッドの傾き調整を正確に行うことのできる新たな記録ヘッドの位置調整機構を提供することにある。
【0006】また、本発明の他の目的とするところは、キャリッジ上に設けたレバーを単に回動操作するだけで、一方の記録ヘッドに対して他方の記録ヘッドを紙送り方向に相対的に調整することのできる新たな記録ヘッドの位置調整機構を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明はこのような課題を達成するためのインクジェット記録装置における記録ヘッドの位置調整機構として、記録ヘッドを担持した担持体をキャリッジ上の基準ピンを支点として走査方向に回動変位可能に配設するとともに、一部に担持体と当接してこれを走査方向に変位させるカム面を備えた角度調整部材を基準ピンから離れた位置でのキャリッジ上に回動操作可能に配設するようにしたものであり、また、キャリッジ上に位置決め配設され、かつ記録ヘッドを担持した2つの担持体のうち、一方を他方に対して紙送り方向に変位可能に配設するとともに、一方の担持体と当接してこの担持体を紙送り方向に変位させるカム面を備えた単一のノズル位置調整部材をキャリッジ上に回動操作可能に配設するようにしたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】そこで以下に本発明の実施例について説明する。図面はいずれもインクカートリッジのみを交換可能となしたカラーのインクジェット記録装置に適用した本発明の一実施例を示したものである。はじめに、図1をもとにこの実施例の概要構成について説明する。
【0009】図において符号1は、ガイドロッド2に沿って主走査方向に往復動するキャリッジ本体で、このキャリッジ本体1には、黒のインクカートリッジ10とカラーのインクカートリッジ20を収容する2つのカートリッジ収容室11、21が画壁3を介して形成され、また各カートリッジ収容室11、21には、蓋12、22の開閉と連動して空のインクカートリッジ10、20を引出したり、新たなインクカートリッジ10、20を記録ヘッド19、29に結合させるべく昇降させるリフタ13、23が設けられている。
【0010】このキャリッジ本体1の基板5には、カートリッジ収容室11、21と対応する部分に記録ヘッド19、29の傾きをそれぞれ独自に調整するための後述する2つの角度調整レバー16、26が、キャリッジ本体1の前面から操作し得るよう回動自在に配設され、また、カラーのインクカートリッジ20を収容するカートリッジ収容室21側の側壁4には、黒の記録ヘッド19を基準としてカラーの記録ヘッド29のみを紙送り方向に位置調整することを可能とするノズル孔位置調整レバー35が回動操作可能に設けられている。
【0011】なお、図中符号6は、ガイドロッド2上を滑動する油溝付きのスリーブを示している。
【0012】これらの各位置調整機構は本発明の特徴部分をなすもので、以下に図2、図3をもとにこれらの構成をさらに詳しく説明する。
【0013】図2は、蓋12、22を外してキャリッジ本体1を上方から示した図で、キャリッジ本体1の基板5のガイドロッド2寄りの部分には、各収容室11、21の中央部にそれぞれ基準ピン14、24が一体的に突設されていて、これらの基準ピン14、24には、それぞれ記録ヘッド19、29を担持した担持体としてのプレート15、25が位置決めスリット15a、25aを介して回動自在に嵌め込まれ、また、基板5のうちの黒インクカートリッジ収容室11側のガイドロッド2寄りの部分には凸部9が設けられていて、黒の記録ヘッド19を担持するプレート15をここに当接させることによって、Y軸方向、つまり紙送り方向に位置決めするように構成されている。
【0014】一方、これらのプレート15、25は、位置決めスリット15a、25aの対側に設けた取付けビス15b、25bによって若干変位させることができるよう基板5上に取付けられており、また、これらの位置決めスリット15a、25aの対側には、後述する角度調整レバー16、26のカム面16a、26aに当接する当接面15c、25cがガイドロッド2と直交する向きに設けられ、さらにその一側には、X軸及びY軸方向にスプリング17、27の付勢力を受けるバネ受け座15d、25dが略45゜の角度をもって形成されている。
【0015】黒の記録ヘッド19を担持するプレート15は、バネ受け座15dと基板5との間に介在させたスプリング17によって、X軸方向には基準ピン14と角度調整レバー16のカム面16aに、Y軸方向には基板5上の凸部9に向けてそれぞれ付勢され、他方、カラーの記録ヘッド19を担持するプレート25は、バネ受け座25dと基板5との間に介在させたスプリング27によって、X軸方向には基準ピン24と角度調整レバー26のカム面26aに、Y軸方向には後述するノズル位置調整レバー35の偏心円部35aに向けてそれぞれ付勢されている。
【0016】これらのプレート15、25の角度調整を行うレバー16、26は、プレート15、25の当接面15c、25c近傍に立設した基板5上の支点ピン16b、26bを支点として回動し得るよう軸支され、その先端のカム面16a、26bをプレート15、25の当接面15c、25cに当接させてプレート15、25を基準ピン14、24回りに回動調整するように構成されている。
【0017】なお、図中符号36、36は角度調整レバー16、26を度決めすべく基板5の対応する部分に弧状に列設したクリック孔を示しており、また37、37はこれらのレバー16、26のカム面16a、26aをプレート15、25の当接面15c、25cに向けて押圧すべく基板5上に形成した度当て片を示している。
【0018】これに対して、ノズル孔位置調整レバー35は、キャリッジ本体1のカラーインクカートリッジ収容室21側の側壁4下方に回動自在に取付けられている。
【0019】この調整レバー35の支持軸35bの一部には、図2に示したように、外周をカム面となした円板35aが偏心させた状態で取り付けられていて、この円板35aには、カラーの記録ヘッド29を担持するプレート25がスプリング27のY軸方向分力により常時その先端を当接させていて、ノズル調整レバー35を回動操作することにより、この円板35aを介してプレート25をガイドロッド2の軸心と直交する向き、つまりY軸方向に移動変位させ得るように構成されている。
【0020】なお、図中符号38はノズル調整レバー35を度決めすべく側壁4に弧状に列設したクリック孔を示している。
【0021】このように構成された実施例において、黒及びカラーの各記録ヘッド19、29を担持するプレート15、25は、バネ受け座15d、25dの略45°をなす角度の面に作用するスプリング17、27の付勢力によって、X軸方向には、位置決めスリット15a、25aの左側面と、カムの当接面15c、25cとをそれぞれ基準ピン14、24と、角度調整レバー16、26のカム面16a、26aとに当接させ、またY軸方向には、黒の記録ヘッド19を担持するプレート15は基板5上の凸部9に当接させ、カラーの記録ヘッド29を担持するプレート25はその先端をノズル位置調整レバー35の円板35aに当接させて、それぞれキャリッジ本体1の基板5上に位置決め固定されている。
【0022】この状態のもとで、いま、例えばカラーの記録ヘッド29に設けたノズル列29aの傾きを調整する必要が生じた場合には、調整に必要とする量だけ対応する角度調整レバー26を、調整方向に、例えば反時計方向に回動操作する。
【0023】これにより、図4に示したように、カム面26aと当接する当接面25cを介してプレート15は、担持したカラーの記録ヘッド29を保持しつつ基準ピン24を支点として図中矢印方向に回動変位して、ノズルプレートに設けたノズル列29aを角θだけ回動調整する。
【0024】そして、この角度調整を行った状態のもとで、黒とカラーの各ノズル19a、29aの孔位置を紙送り方向に一致させるべくカラーインクカートリッジ収容室21側の側壁4に設けたノズル孔位置調整レバー35を必要とする量だけ調整方向に回動操作すると、カラーの記録ヘッド29を担持したプレート25は、基準ピン24と角度調整レバー26のカム面26aとに案内されつつ、先端をレバー35の円板35aに当接させているプレート25をガイドロッド2の軸心と直交する向き、つまりY軸方向に移動変位させ、黒の記録ヘッド19を基準としてこのノズル孔の位置とカラーのノズル孔の位置を正しく紙送り方向に一致させる。
【0025】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、被調整部材としての記録ヘッド担持体を基準ピンを支点として走査方向に回動変位可能に取付ける一方、この担持体の角度を調整する角度調整部材をキャリッジ上に回動操作可能に取付けたので、共通のキャリッジを介して被調整部材と調整部材の相対的な位置決めを可能にするとともに、このキャリッジ上の角度調整部材によって被調整部材の回動変位調整を行うことにより、この種の調整を著しく正確にかつ簡単に行わせることができる。
【0026】またさらに、キャリッジ上に回動操作可能に取付けたノズル位置調整部材により2つの担持体のうちの一方を紙送り方向に調整するようにしたので、担持体と同じキャリッジ上のノズル位置調整部材によって、しかも、一方の記録ヘッド担持体を基準とすることによって、記録ヘッド相互の間のノズル位置調整といったこの種のきわめて微妙な位置調整をも、簡単にしかも正確に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す装置の斜視図である。
【図2】同上装置を上面から示した図である。
【図3】同上装置を側面から示した図である。
【図4】各調整状態を示した説明図である。
【符号の説明】
1 キャリッジ
11、21 カートリッジ収容室
15、25 プレート
16、26 角度調整レバー
17、27 位置決め用スプリング
19、29 記録ヘッド
35 ノズル位置調整レバー
35a 偏心円部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 記録ヘッドを担持した担持体をキャリッジ上の基準ピンを支点として走査方向に回動変位可能に配設するとともに、一部に上記担持体と当接して走査方向に変位させるカム面を備えた角度調整部材を上記基準ピンから離れた位置での上記キャリッジ上に回動操作可能に配設したことを特徴とするインクジェット記録装置における記録ヘッドの位置調整機構。
【請求項2】 上記キャリッジに、上記担持体をX軸方向及びY軸方向に付勢すべく該担持体に対して斜めに作用する単一のバネ部材を配設したことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置における記録ヘッドの位置調整機構。
【請求項3】 キャリッジ上に位置決め配設され、かつそれぞれ記録ヘッドを担持した2つの担持体のうちの一方を他方に対して紙送り方向に変位可能に配設するとともに、上記一方の担持体と当接して該担持体を紙送り方向に変位させるノズル位置調整部材を上記キャリッジに回動操作可能に配設したことを特徴とするインクジェット記録装置における記録ヘッドの位置調整機構。
【請求項4】 上記ノズル位置調整手段に、上記一方の担持体と当接して該担持体を紙送り方向に変位させるカム面を備えた部材を回動支点に対して変位させて設けたことを特徴とする請求項3記載のインクジェット記録装置における記録ヘッドの位置調整機構。
【請求項5】 記録ヘッドを担持した2つの担持体をそれぞれキャリッジ上の基準ピンを支点として走査方向に変位可能に、かつ一方の上記担持体を他方の上記担持体に対して紙送り方向に変位可能に配設するとともに、上記2つの担持体の各一部に当接して走査方向に変位させるカム面を備えた2つの角度調整部材と、上記一方の担持体の一部に当接して紙送り方向に変位させるカム面を備えた単一のノズル位置調整部材とを、それぞれ上記キャリッジ上に回動操作可能に配設したことを特徴とするインクジェット記録装置における記録ヘッドの位置調整機構。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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