説明

インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法

【課題】吸収体やメンテナンスカートリッジのより正確な交換時期を得る。
【解決手段】インクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録ヘッドに予備吐出を行わせる予備吐出手段と、記録ヘッドに予備吐出させたインクの吐出数をカウントするカウント手段と、記録ヘッドの前回のインク吐出からの経過時間に応じて、カウント手段によりカウントされたカウント値を補正する補正手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出する複数の吐出口を備えた記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク滴を吐出して記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録方式の記録装置においては、複数の微細な吐出口およびそれらに連通する液路(以下、これらを含めてノズルと称する)などを形成した記録ヘッドが用いられる。
【0003】
このようなインクジェット記録装置では、液路内のインクに吐出口から気泡や塵埃が混入したり、インクに含有される溶剤の蒸発に起因してインクが増粘あるいは固着したりすることがある。この場合、記録ヘッドの吐出性能は大幅に低下する。すなわち、記録ヘッドには、吐出されたインク滴の着弾誤差や、インク滴の不吐出などが生じる。
【0004】
こうした記録ヘッドの吐出性能低下を回避するために、ノズル内に生じた増粘インクあるいは固化したインクを排出し、ノズル内のインクをリフレッシュする処理が行われている。以下の説明において、この処理を、吐出回復処理と称する。
【0005】
吐出回復処理を行う手段の一形態としては、キャップを吐出口形成面に対向させた状態でノズル内に設けられたインク吐出エネルギー発生素子を駆動して、ノズルから記録ヘッドの吐出口形成面を覆うことが可能なキャップにインクを吐出させるものが挙げられる。この形態では、ノズル内の増粘したインクや、気泡および塵埃を含んだインクなどを吐出して、ノズル内のインクがリフレッシュされる(新しいインクが供給される)。そのため、吐出回復処理を行うことで吐出状態を良好にすることができる。この動作を、予備吐出動作とも称する。
【0006】
また、各走査時におけるノズル出口近傍の水分の蒸発によるインクの増粘や顔料の後退等の影響による画像弊害を予防するため、キャリッジの各走査開始直後にキャリッジを加速しながら予備吐口に少量の予備吐出動作を行う手段も知られている。これを、流し予備吐出と称する。
【0007】
この予備吐出動作によって排出されるインクは、非印字領域に設けられたキャップもしくは予備吐口によって回収される。これらのキャップもしくは予備吐口はメンテナンスカートリッジ等の廃インク回収手段と直結し、これら回収手段によって最終的に回収する手段がある。また、予備吐口の上に吸収体が設置され、これら吸収体によって吸収する手段もある。いずれの手段においても、廃インクの回収能力には限界がある。限界を超えたまま使用し続けると、メンテナンスカートリッジの場合は回収しきれなくなった廃インクが機外に漏れるといった問題が発生するおそれがある。それにより、吸収体の場合は乾燥し堆積しているインクに対して着弾するインクが跳ね返りを起こし、インクジェット記録装置内を汚染するおそれがある。
【0008】
そこで、予備吐出動作を行った回数を計数し、その計数した予備吐出数が、予め設定した吸収体の吸収能力を超える限界数以上となったとき、吸収体の交換時期を告知する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この交換時期の告知に応じて吸収体を交換することで、吸収体の吸収能力の低下に起因する、予備吐出の際に本体内でおこる液体の跳ね返りを抑制することができるようになった。この結果、本体内の汚染を防ぐことができるようになった。このような交換時期を告知する方法は吸収体のみならず、メンテナンスカートリッジの交換時期の告知にも利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−27058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、従来の交換時期告知方法においては、吸収体やメンテナンスカートリッジが回収する廃インク量を計算する上で、実施した予備吐出の発数をそのまま数えていた。
【0011】
しかしながら、実際には前回吐出から一定時間が経過した後の1発目や2発目の吐出動作で実際にインクが吐出しないことや、インクが吐出しても、その吐出量が少なくなることがある。そのような場合、吸収体やメンテナンスカートリッジが実際に回収する廃インク量は、実施した予備吐出の発数に基づいて計算されたインクの量よりも少なくなる。
【0012】
このため、従来技術においては、廃インク量を、実際に回収されたインク量よりも多く数えてしまい、吸収体やメンテナンスカートリッジが実際の寿命に達する前に交換を告知してしまうおそれがある。
【0013】
本発明の目的は、上記課題を解決するインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のインクジェット記録装置は、
インクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、該記録ヘッドに予備吐出を行わせる予備吐出手段と、前記記録ヘッドに予備吐出させたインクの吐出数をカウントするカウント手段とを備えるインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドの前回のインク吐出からの経過時間に応じて、前記カウント手段によりカウントされたカウント値を補正する補正手段を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のインクジェット記録方法は、
インクを吐出して記録を行う記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録方法であって、
前記記録ヘッドに予備吐出を行わせる処理と、
前記記録ヘッドに予備吐出させたインクの吐出数をカウントする処理と、
前記記録ヘッドの前回のインク吐出からの経過時間に応じて、前記カウントされたカウント値を補正する処理とを行う。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構成によれば、吸収体やメンテナンスカートリッジのより正確な交換時期を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の一形態におけるインクジェット記録装置を上側から見た平面図である。
【図2】本発明の実施の一形態におけるインクジェット記録装置を横側から見た断面図である。
【図3】本実施形態におけるインクジェット記録装置の記録装置本体に搭載される制御系(制御手段)の構成を示すブロック図である。
【図4】実施例1における予備吐出数カウント方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図5】実施例1において使用される流し予備吐出差分係数αの一例を示す図である。
【図6】実施例2における予備吐出数カウント方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図7】実施例2において使用される流し予備吐出重み付け係数βの一例を示す図である。
【図8】実施例3における予備吐出数カウント方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図9】実施例4における予備吐出数カウント方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図10】実施例5における予備吐出数カウント方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図11】実施例6における予備吐出数カウント方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の実施の一形態におけるインクジェット記録装置を上側から見た平面図である。
【0019】
図1を参照すると、記録用紙(記録媒体)の搬送系ユニット(図示せず)を含む各種の機構部を備えた記録装置本体1が示されている。また、この記録装置本体1と、これに搭載された後述の制御系とによりインクジェット記録装置が構成されている。
【0020】
なお、本実施形態における記録装置は、搬送系ユニットによって記録媒体をY方向(副走査方向)へ間欠的に搬送すると共に、記録ヘッド3をY方向と交差するX方向(主走査方向)へ移動させながら記録を行うシリアル型の記録装置である。また、図1に示した記録装置本体1は、比較的大判の記録媒体(例えば、A1サイズ)への記録を行い得るよう、X方向におけるサイズを大型化した構成となっている。
【0021】
また、図1に示すキャリッジ2には、複数個(この実施形態では2個)の記録ヘッド3が搭載され、記録ヘッド3と共にX方向へ往復移動する。すなわち、キャリッジ2は、X方向に沿って配置されたガイド軸4に沿って移動可能に支持されると共に、ガイド軸4と略平行に移動する無端ベルト5に固定されている。無端ベルト5は、キャリッジモータ(CRモータ)の駆動力によって往復移動し、それによってキャリッジ2をX方向(主走査方向)に往復移動させる。
【0022】
また、本実施形態の各記録ヘッド3には、副走査方向に1200dpi(ドット/インチ)の密度で、1280個の吐出口が配列されている。さらに、記録ヘッド3の各液路には、インクを吐出口から吐出させるための吐出エネルギーを発生させるエネルギー発生素子が配置されている。このエネルギー発生素子として、本実施形態では、インクを局所的に加熱して膜沸騰を起こさせ、その圧力によってインクを吐出させる電気熱変換体が用いられている。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、電気機械変換素子を用いることも可能である。なお、以下の説明においては、吐出口と液路とを含めてノズルと称する。
【0023】
キャリッジ2に搭載される記録ヘッドには、それぞれ6個の異なる色材を含有したインクが供給される。本実施形態では、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのインクの他に、形成する画像の粒状感の低減を目的として使用される淡シアン、淡マゼンタのインクを加えた計6色のインクが各記録ヘッド3にそれぞれ供給される。
【0024】
また、図1に示したエンコーダフィルム6およびワイピング機構9については、一般的なものであれば良い。回復処理装置7、吸引回復機構7A、予備吐出インク収容部8A,8Bおよびフチ無しインク収容部12B,12Cについては、後述する。
【0025】
図2は、本発明の実施の一形態におけるインクジェット記録装置を横側から見た断面図である。
【0026】
図2に示すように、記録装置本体1には、記録ヘッド3の各吐出口からのインク吐出性能を良好な状態に保つための回復処理装置7が具備されている。この回復処理装置7は、記録装置本体1の所定の位置に保持固定されており、後述の吸引回復機構7A,7Bと、ワイピング機構9とを備える。吸引回復機構7A,7Bは、回復処理の一形態である吸引回復処理を行う。
【0027】
ここで、吸引回復処理とは、記録ヘッドに形成された複数のノズルから強制的にインクを吸引することによって、ノズル内のインクを吐出に適した状態のインクに置き換える処理である。具体的には、この吸引回復機構7A,7Bでは、吐出口形成面をキャップで覆うと共に、そのキャップに連通するポンプによってキャップ内に負圧を発生させ、その負圧によって吐出口からインクを強制的に吸引する。なお、各吸引回復機構7A,7Bは、それぞれ記録ヘッド3の3つのインクに対して吸引回復処理を行う。強制的に吸引された廃インクは、廃インクを収容する廃インク回収手段であるメンテナンスカートリッジ10へ流れ込む。
【0028】
また、回復処理の他の形態としては予備吐出がある。この予備吐出は、予備吐出手段としても動作する記録ヘッド3が、記録動作に寄与しないインク吐出を、記録領域外に設けられた予備吐出インク収容部8A及び8Bに対して実施し、記録ヘッドの各ノズル内のインクを吐出に適した状態に保つ処理である。この予備吐出は、主として記録動作の開始時(走査開始直後)あるいは終了時などにおいて行われる。さらに、記録動作中に所定間隔毎に行われることもある。
【0029】
また、画像形成時に発生するインクミストは、本体内部で拡散される。この拡散により、画像へ付着することで、画像品位を低下させたり、機内のセンサ等に付着して誤動作をさせたりしないために、インクミスト収容部11へと回収される。更に、フチ無し画像を形成する場合には、メディア領域外へも若干はみ出して印字を行うことでフチ無し画像を形成している。このメディア領域外へ印字されたインクは、フチ無しインク収容部12A、12B及び12Cへと流れ込む。
【0030】
図3は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の記録装置本体1に搭載される制御系(制御手段)の構成を示すブロック図である。
【0031】
図3において、主制御部100は、演算、制御、判別、設定などの処理動作を実行するCPU101と、このCPU101によって実行すべき制御プログラム等を格納するROM102とを備える。さらに、主制御部100は、インクの吐出/非吐出を表す2値の記録データを格納するバッファおよびCPU101による処理のワークエリア等として用いられるRAM103と、入出力ポート104などを備える。このRAM103には、後述する廃インク算出の際に用いられる各種パラメータも格納される。
【0032】
入出力ポート104には、前述の搬送ユニットにおける搬送モータ(LFモータ)112、キャリッジモータ(CRモータ)113、記録ヘッド3、および回復処理装置7などの各駆動回路105,106,107,109が接続されている。また、入出力ポート104には、記録ヘッドの温度を検出するヘッド温度センサ(ヘッド温度検出手段)114や、キャリッジ2に固定されたエンコーダセンサ110が接続されている。さらに、入出力ポート104には、記録装置本体1の使用環境である温度と湿度を検知する温湿度センサ115などのセンサ類も接続されている。また、主制御部100は、入出力ポート104を用いて、インターフェース回路111を介してホストコンピュータ116と接続されている。
【0033】
回復処理カウンタ117は、回復処理装置7によって記録ヘッド3から強制的にインクを排出させた場合に、そのインク量をカウントする。
【0034】
予備吐出カウンタ118は、記録開始前や記録終了時、記録中に行われる予備吐吐出の吐出数をカウントするカウント手段である。
【0035】
フチ無しインクカウンタ119は、フチ無し印字を行う場合にメディア領域外に記録されるインク量をカウンタする。
【0036】
インクミストカウンタ120は、記録中に発生するインクミスト量をカウントする。
【0037】
次に、以上の構成を有するインクジェット記録装置によって実行される記録動作および廃インクカウンタ方法を説明する。まず、記録動作の概略を説明する。
【0038】
ホストコンピュータ116からインターフェース回路111を介して記録データを受信すると、その記録データはRAM103のバッファに展開される。そして、記録動作が指示されると、不図示の搬送ユニットが作動し、記録媒体を記録ヘッド3との対向位置へ搬送する。ここで、キャリッジ2はガイド軸4に沿って主走査方向(X方向)へ移動する。キャリッジ2の移動に伴って、記録ヘッド3からはインク滴が吐出され、記録用紙に1バンド分の画像が記録される。
【0039】
この後、搬送ユニットにより、記録媒体はキャリッジ2と直交する方向(副走査方向)へ1バンド分だけ搬送される。
【0040】
以上の動作を繰り返すことにより、記録媒体には所定の画像が形成される。
【0041】
なお、キャリッジ2の位置は、キャリッジ2の移動に伴ってエンコーダセンサ110から出力されるパルス信号を主制御部100がカウントすることにより検出される。すなわち、エンコーダセンサ110は、主走査方向に沿って配置されたエンコーダフィルム6(図1参照)に一定の間隔で形成された検出部を検出することによってパルス信号を主制御部100へ出力する。主制御部100は、このパルス信号をカウントすることにより、キャリッジ2の位置を検出する。キャリッジ2のホームポジションおよびその他の位置への移動は、エンコーダセンサ110からの信号に基づいて行われる。
【0042】
次に、本実施形態によって実行される予備吐出カウント方法について説明する。
【0043】
図3に示した予備吐出カウンタ118は、良好な画像を形成するために、画像形成前に予備吐出インク収容部8Aに行う予備吐出動作によって発生する廃インクの吐出数をカウントする。また、記録終了後、記録ヘッド3のインク吐出口に溜まった、異なる色のインクをノズル内に混入させないために予備吐出動作を行う。更に記録中には、インク吐出口の表面でインクが乾燥することで発生する吐出不良を改善させるために、予備吐出インク収容部8Aおよび8Bに予備吐出動作を行う。これらすべての予備吐出動作によって発生した廃インクは、予備吐出インク収容部8A,8Bへ流れ込み、その後、メンテナンスカートリッジ10によって回収される。予備吐出カウンタ118は、これら予備吐出数のカウントを行う。通常は、予備吐出を実施した数をそのまま数える。
【0044】
しかし、流し予備吐出において、前回走査の吐出からある程度時間が経過している場合は、不吐出や吐出量減少の影響を受ける。そのため、メンテナンスカートリッジ10が実際に回収する廃インクの量は、実施した予備吐出の数に基づいて計算されたインクの量よりも少なくなる。従って、このような場合、以下に示す手順で予備吐出動作の数のカウントを行う。
【0045】
図4は、実施例1における予備吐出数カウント方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0046】
また、図5は、実施例1において使用される流し予備吐出差分係数αの一例を示す図である。なお、図5に示した前回吐出からの経過時間と差分係数αとの対応付けは、図3に示したRAM103にあらかじめ設定されているものである。
【0047】
まず、キャリッジの走査が開始されると、予備吐出カウンタ118による予備吐出のカウントが開始される(ステップ201)。ここで、前回走査における16発以上の吐出から1.0秒(以下、「秒」を「s」と称する)以上経過しているかどうかを判定する(ステップ202)。
【0048】
前回走査における16発以上の吐出から1.0s以上経過している場合、図5に示した対応付けに基づいて、差分係数αをα=8に設定する(ステップ203)。一方、前回走査における16発以上の吐出からの経過時間が1.0s未満の場合は、前回走査における16発以上の吐出から0.5s以上経過しているかどうかを判定する(ステップ204)。
【0049】
前回走査における16発以上の吐出から0.5s以上経過している場合、図5に示した対応付けに基づいて、差分係数αをα=4に設定する(ステップ205)。一方、前回走査における16発以上の吐出からの経過時間が0.5s未満の場合は、図5に示した対応付けに基づいて、差分係数αをα=0に設定する(ステップ206)。
【0050】
そして、メンテナンスカートリッジ10が回収する廃インクの量を計算するための予備吐出カウント値として、予備吐出実施値から差分係数αを引いた値を設定(補正手段が、カウント値を補正)する(ステップ207)。つまり、16発の流し予備吐出を実施した場合、前回走査における16発以上の吐出からの経過時間が1.0s以上の場合は8発、0.5s以上1.0s未満の場合は12発、0.5s未満の場合は16発の流し予備吐出を実施したものとしてカウントする。
【0051】
予備吐出カウント値が決定したら、これを廃インク量に換算し(ステップ208)、吸引回復動作等でメンテナンスカートリッジ10が回収した廃インク量と合算する。そして、メンテナンスカートリッジ10が回収した廃インク量が、あらかじめ設定された閾値を超えたかどうかを判定する(ステップ209)。
【0052】
メンテナンスカートリッジ10が回収した廃インク量が閾値を超えている場合、インクジェット記録装置に設けられた部品交換告知手段は、メンテナンスカートリッジ10の交換を告知する(ステップ210)。この告知は、記録装置本体1を利用する者に対して行うものであり、その旨を示す表示や、ランプの点灯や点滅、音の出力等であっても良く、交換を促す通知であることを利用者が認識できるものであれば良い。一方、メンテナンスカートリッジ10が回収した廃インク量が閾値を超えていない場合は、予備吐出カウントを終了して(ステップ211)、次の走査もしくは動作へ進むか動作を終了する。
【0053】
ここで示した差分係数αの値、前回走査における吐出からの経過時間の区切り(ここでは0.5s及び1.0s)、考慮される前回走査における吐出の発数(ここでは16発)及び予備吐出実施値は任意であり、同様の方法であればどのような値であっても構わない。また、ここでは、前回走査における吐出からの経過時間の区切りを3段階(0.5s未満、0.5s以上1.0s未満、1.0s以上)に分けたが、これは2段階であっても良いし、4段階以上であっても構わない。
【0054】
また、ステップ208においては、予備吐出カウント値を廃インク量に換算したが、吸引回復手段等が回収した廃インク量をカウント値に換算する等、メンテナンスカートリッジ10が回収した廃インク量を合算して数えることが出来る方法であればどのような方法であっても良い。また、ステップ201からステップ211までの一連の動作は、1走査あたりであっても、1ページあたりであっても、1つのジョブ毎であっても良く、ステップ210におけるメンテナンスカートリッジ10の交換の指示は走査終了後であっても、ページ印刷終了後であっても、ジョブ終了後であっても構わない。
(実施例2)
実施例2は、実施例1において、予備吐出実施値に重み付け係数βを掛けて予備吐出カウント値を決定する場合の実施形態である。予備吐出実施値から差分係数αを差し引く代わりに、予備吐出実施値に重み付け係数を掛けて予備吐出カウント値を決定するという点以外は、実施例1と同じである。
【0055】
図6は、実施例2における予備吐出数カウント方法の一例を説明するためのフローチャートである。なお、図6に示したフローチャートにおいて、図4に示したフローチャートにおける処理と同じ処理を行うものについては、同じ符号で示した。
【0056】
また、図7は、実施例2において使用される流し予備吐出重み付け係数βの一例を示す図である。なお、図7に示した前回吐出からの経過時間と重み付け係数βとの対応付けは、図3に示したRAM103にあらかじめ設定されているものである。
【0057】
まず、キャリッジの走査が開始されると、予備吐出カウンタ118による予備吐出のカウントが開始される(ステップ201)。ここで、前回走査における16発以上の吐出から1.0s以上経過しているかどうかを判定する(ステップ202)。
【0058】
前回走査における16発以上の吐出から1.0s以上経過している場合、図7に示した対応付けに基づいて、重み付け係数βをβ=0.5に設定する(ステップ203’)。一方、前回走査における16発以上の吐出からの経過時間が1.0s未満の場合は、前回走査における16発以上の吐出から0.5s以上経過しているかどうかを判定する(ステップ204)。
【0059】
前回走査における16発以上の吐出から0.5s以上経過している場合、図7に示した対応付けに基づいて、重み付け係数βをβ=0.75に設定する(ステップ205’)。一方、前回走査における16発以上の吐出からの経過時間が0.5s未満の場合は、図7に示した対応付けに基づいて、重み付け係数βをβ=1に設定する(ステップ206’)。
【0060】
そして、メンテナンスカートリッジ10が回収する廃インクの量を計算するための予備吐出カウント値として、予備吐出実施値に重み付け係数βを掛けた値を設定(補正手段が、カウント値を補正)する(ステップ207’)。つまり、16発の流し予備吐出を実施した場合、前回走査における16発以上の吐出からの経過時間が1.0s以上の場合は8発、0.5s以上1.0s未満の場合は12発、0.5s未満の場合は16発の流し予備吐出を実施したものとしてカウントする。予備吐出カウント値が決定したら、これを廃インク量に換算し(ステップ208)、吸引回復動作等でメンテナンスカートリッジ10が回収した廃インク量と合算する。
【0061】
そして、メンテナンスカートリッジ10が回収した廃インク量が、あらかじめ設定された閾値を超えたかどうかを判定する(ステップ209)。
【0062】
メンテナンスカートリッジ10が回収した廃インク量が閾値を超えている場合、インクジェット記録装置に設けられた部品交換告知手段は、メンテナンスカートリッジ10の交換を告知する(ステップ210)。この告知は、記録装置本体1を利用する者に対して行うものであり、その旨の表示や、ランプの点灯や点滅、音の出力等であっても良く、交換を促す通知であることを利用者が認識できるものであれば良い。一方、メンテナンスカートリッジ10が回収した廃インク量が閾値を超えていない場合は、予備吐出カウントを終了して(ステップ211)、次の走査もしくは動作へ進むか動作を終了する。
【0063】
ここで示した重み付け係数βの値、前回走査における吐出からの経過時間の区切り(ここでは0.5s及び1.0s)、考慮される前回走査における吐出の発数(ここでは16発)及び予備吐出実施値は任意であり、同様の方法であればどのような値であっても構わない。なお、重み付け係数βの値は、前回の吐出からの経過時間が所定の閾値よりも長い場合(ここでは、0.5s以上)、1未満とすることで、カウント値を小さな値に設定することができる。また、ここでは前回走査における吐出からの経過時間の区切りを3段階(0.5s未満、0.5s以上1.0s未満、1.0s以上)に分けたが、これは2段階であっても良いし、4段階以上であっても構わない。
【0064】
また、ステップ208においては、予備吐出カウント値を廃インク量に換算したが、吸引回復手段等が回収した廃インク量をカウント値に換算する等、メンテナンスカートリッジ10が回収した廃インク量を合算して数えることが出来る方法であればどのような方法であっても良い。
【0065】
また、ステップ201からステップ211までの一連の動作は、1走査あたりであっても、1ページあたりであっても、1つのジョブ毎であっても良く、ステップ210におけるメンテナンスカートリッジ10の交換の指示は走査終了後であっても、ページ印刷終了後であっても、ジョブ終了後であっても構わない。
(実施例3)
実施例3は、実施例1において、予備吐出カウントを利用してインク消費量表示を行う場合の実施形態である。メンテナンスカートリッジ10の交換判定を行う代わりに、インク消費量表示を行うという点以外は、実施例1と同じであるため、実施例1と異なる部分のみを説明する。
【0066】
図8は、実施例3における予備吐出数カウント方法の一例を説明するためのフローチャートである。なお、図8に示したフローチャートにおいて、図4に示したフローチャートにおける処理と同じ処理を行うものについては、同じ符号で示した。また、ここで使用される流し予備吐出差分係数αは、図5に示したものを使用する。
【0067】
予備吐出カウント値が決定したら、これをインク消費量に換算し(ステップ308)、記録動作や吸引回復動作等で消費されたインク量と合算する。続いて、記録データが残っているかどうかを判定する(ステップ309)。
【0068】
記録が終了したと判定されたら、予備吐出カウントを終了し(ステップ310)、一連の記録動作もしくは回復動作で消費されたインク量を、消費量表示手段であるディスプレイ等に表示する(ステップ311)。このとき、決定した予備吐出カウント値を表示しても良い。
【0069】
ここで、ステップ308においては、予備吐出カウント値をインク消費量に換算したが、吸引回復手段等で消費されたインク量をカウント値に換算する等、消費されたインク量を合算して数えることが出来る方法であればどのような方法であっても良い。
(実施例4)
実施例4は、実施例2において、予備吐出カウントを利用してインク消費量表示を行う場合の実施形態である。メンテナンスカートリッジ10の交換判定を行う代わりに、インク消費量表示を行うという点以外は、実施例2と同じであるため、実施例2と異なる部分のみを説明する。
【0070】
図9は、実施例4における予備吐出数カウント方法の一例を説明するためのフローチャートである。なお、図9に示したフローチャートにおいて、図6および図8に示したフローチャートにおける処理と同じ処理を行うものについては、同じ符号で示した。また、ここで使用される流し予備吐出重み付け係数βは、図7に示したものを使用する。
【0071】
予備吐出カウント値が決定したら、これをインク消費量に換算し(ステップ308)、記録動作や吸引回復動作等で消費されたインク量と合算する。続いて、記録データが残っているかどうかを判定する(ステップ309)。
【0072】
記録が終了したと判定されたら、予備吐出カウントを終了し(ステップ310)、一連の記録動作もしくは回復動作で消費されたインク量を、消費量表示手段であるディスプレイ等に表示する(ステップ311)。このとき、決定した予備吐出カウント値を表示しても良い。
【0073】
ここで、ステップ308においては、予備吐出カウント値をインク消費量に換算したが、吸引回復手段等で消費されたインク量をカウント値に換算する等、消費されたインク量を合算して数えることが出来る方法であればどのような方法であっても良い。
(実施例5)
実施例5は、実施例1において、予備吐出カウントを利用してインクタンクの残量検知を行う場合の実施形態である。
【0074】
メンテナンスカートリッジ10の交換判定を行う代わりに、インクジェット記録装置に設けられたインク残量検知手段が、使用するインクを貯蔵しておくインク貯蔵手段であるインクタンクの残量検知を行うという点以外は、実施例1と同じであるため、実施例1と異なる部分のみを説明する。
【0075】
図10は、実施例5における予備吐出数カウント方法の一例を説明するためのフローチャートである。なお、図10に示したフローチャートにおいて、図4に示したフローチャートにおける処理と同じ処理を行うものについては、同じ符号で示した。また、ここで使用される流し予備吐出差分係数αは、図5に示したものを使用する。
【0076】
予備吐出カウント値が決定したら、これをインク消費量に換算し(ステップ408)、記録動作や吸引回復動作等で消費されたインク量と合算する。続いて、記録動作前に記憶しておいた各色インクタンクのインク残量から今回の記録で消費したインク量を差し引き、これを記録終了後のインク残量として新たに記憶する。
【0077】
そして、この記録終了後のインク残量が、予め定めておいた閾値を下回っているかどうかを判定する(ステップ409)。
【0078】
インク残量が閾値を下回っている場合、インクジェット記録装置に設けられたインク貯蔵手段交換告知手段が、該当するインクタンク交換を告知する(ステップ410)。この告知の方法は、ステップ210の処理で説明したものと同じで良い。一方、インク残量が閾値を下回っていない場合は、予備吐出カウントを終了して(411)、次の走査もしくは動作へと進むか動作を終了する。
【0079】
ここで、ステップ408においては、予備吐出カウント値をインク消費量に換算したが、吸引回復手段等が消費したインク量をカウント値に換算する等、消費されたインク量を合算して数えることが出来る方法であればどのような方法であっても良い。
【0080】
また、ステップ401からステップ411までの一連の動作は1走査あたりであっても、1ページあたりであっても、1つのジョブ毎であっても良く、ステップ410におけるインクタンク交換の指示は走査終了後であっても、ページ記録終了後であっても、ジョブ終了後であっても構わない。ただし、ページまたはジョブの途中でインク切れが発生した場合にヒータの空焚き等が行われないように注意する必要がある。
(実施例6)
実施例6は、実施例2において、予備吐出カウントを利用してインクタンクの残量検知を行う場合の実施形態である。メンテナンスカートリッジ10の交換判定を行う代わりに、インクタンクの残量検知を行うという点以外は実施例2と同じであるため、実施例2と異なる部分のみを説明する。
【0081】
図11は、実施例6における予備吐出数カウント方法の一例を説明するためのフローチャートである。なお、図11に示したフローチャートにおいて、図6および図10に示したフローチャートにおける処理と同じ処理を行うものについては、同じ符号で示した。また、ここで使用される流し予備吐出重み付け係数βは、図7に示したものを使用する。
【0082】
予備吐出カウント値が決定したら、これをインク消費量に換算し(ステップ408)、記録動作や吸引回復動作等で消費されたインク量と合算する。続いて、記録動作前に記憶しておいた各色インクタンクのインク残量から今回の記録で消費したインク量を差し引き、これを記録終了後のインク残量として新たに記憶する。
【0083】
そして、この記録終了後のインク残量が、予め定めておいた閾値を下回っているかどうかを判定する(ステップ409)。
【0084】
インク残量が閾値を下回っている場合、インクジェット記録装置に設けられたインク貯蔵手段交換告知手段が、該当するインクタンク交換を告知する(ステップ410)。この告知の方法は、ステップ210の処理で説明したものと同じで良い。一方、インク残量が閾値を下回っていない場合は、予備吐出カウントを終了して(411)、次の走査もしくは動作へと進むか動作を終了する。
【0085】
ここで、ステップ408においては、予備吐出カウント値をインク消費量に換算したが、吸引回復手段等が消費したインク量をカウント値に換算する等、消費されたインク量を合算して数えることが出来る方法であればどのような方法であっても良い。また、ステップ401からステップ411までの一連の動作は1走査あたりであっても、1ページあたりであっても、1つのジョブ毎であっても良く、ステップ410におけるインクタンク交換の指示は走査終了後であっても、ページ記録終了後であっても、ジョブ終了後であっても構わない。ただし、ページまたはジョブの途中でインク切れが発生した場合にヒータの空焚き等が行われないように注意する必要がある。
【0086】
このように、本発明の構成によればインクジェット記録装置において、予備吐出の吐出履歴を用いて、予備吐出の吐出量を実際に吸収体やメンテナンスカートリッジが回収した廃インク量に近い値で数えることとなるので、多くカウントし過ぎるということがなくなり、廃インクがいっぱいになる前に交換を指示してしまうということが無くなる。これにより、吸収体やメンテナンスカートリッジの寿命の延長が期待出来る。また、実際に消費したインク量により近い値で数えることとなるので、インク消費量表示やインク残量検知等の高精度化が期待出来る。
【符号の説明】
【0087】
1 記録装置本体
2 キャリッジ
3 記録ヘッド
4 ガイド軸
5 無端ベルト
6 エンコーダフィルム
7 回復処理装置
7A,7B 吸引回復機構
8A,8B 予備吐出インク収容部
9 ワイピング機構
10 メンテナンスカートリッジ
11 インクミスト収容部
12A,12B,12C フチ無しインク収容部
100 主制御部
101 CPU
102 POM
103 RAM
104 入出力ポート
105 LFモータの駆動回路
106 CRモータの駆動回路
107 記録ヘッドの駆動回路
109 回復制御処理装置の駆動回路
110 エンコーダセンサ
111 インターフェース回路
112 LFモータ
113 CRモータ
114 ヘッド温度センサ
115 温湿度センサ
116 ホストコンピュータ
117 回復処理カウンタ
118 予備吐出カウンタ
119 フチ無しインクカウンタ
120 インクミストカウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、該記録ヘッドに予備吐出を行わせる予備吐出手段と、前記記録ヘッドに予備吐出させたインクの吐出数をカウントするカウント手段とを備えるインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドの前回のインク吐出からの経過時間に応じて、前記カウント手段によりカウントされたカウント値を補正する補正手段を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前回吐出からの経過時間が所定の閾値よりも長い場合、実際に実施した予備吐出数よりも小さな値をカウント値とすることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前回吐出からの経過時間が所定の閾値よりも長い場合、実際に実施した予備吐出数から所定の値を差し引いた値をカウント値とすることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前回吐出からの経過時間が所定の閾値よりも長い場合、実際に実施した予備吐出数に1未満の重み付け係数を乗じた値をカウント値とすることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記予備吐出手段は、各走査開始直後に、記録領域外に前記予備吐出を実施することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記予備吐出によって吐出されたインクを回収する廃インク回収手段と、
前記カウント手段が数えたカウント値があらかじめ設定された閾値を超えた場合、前記廃インク回収手段の交換を告知する部品交換告知手段と、を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
消費したインク量を表示するインク消費量表示手段を備え、
前記インク消費量表示手段は、前記カウント手段が数えた値を表示することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
使用するインクを貯蔵しておくインク貯蔵手段と、
前記インク貯蔵手段が貯蔵しているインクの残量を検知するインク残量検知手段と、
前記インク貯蔵手段の交換を告知するインク貯蔵手段交換告知手段と、を備え、
前記インク残量検知手段は、前記カウント手段が数えた値に基づいてインク残量検知を行い、
前記インク貯蔵手段交換告知手段は、前記インク残量検知手段が検知した値があらかじめ設定された閾値を下回った場合、前記インク貯蔵手段の交換を告知することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
インクを吐出して記録を行う記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録方法であって、
前記記録ヘッドに予備吐出を行わせる処理と、
前記記録ヘッドに予備吐出させたインクの吐出数をカウントする処理と、
前記記録ヘッドの前回のインク吐出からの経過時間に応じて、前記カウントされたカウント値を補正する処理とを行うインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記補正する処理は、前回吐出からの経過時間が所定の時間よりも長い場合、実際に実施した予備吐出数よりも小さな値をカウント値とすることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−111916(P2013−111916A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261940(P2011−261940)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】