説明

インクジェット記録装置及びインクジェット記録装置のエアパージ制御方法

【課題】インクの一部を回収して印字を行うインクジェット記録装置において、印字ヘッドとインク容器のエアパージを行うために、それぞれにエアを送るためのエアポンプを必要とし、コストや装置重量が増加する問題があった。
【解決手段】エアポンプにより発生するパージエアをインク容器に供給後にインク容器から排出されるパージエアを印字ヘッドに供給する流路構成、またはエアポンプにより発生するパージエアを直接印字ヘッドに供給する流路構成とすることにより、エアポンプを共通化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク容器中のインクを印字ヘッドに供給し、印字ヘッドのノズルよりインクを噴出して印字を行うインクジェット記録装置及びそのエアパージ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク容器中のインクを印字ヘッドに供給して印字を行うとともに、印字に用いられないインクをインク容器に回収するインクジェット記録装置において、インクの物性を管理することは安定した粒子形成を行う上で不可欠である。特にノズル洗浄に用いる溶剤混入によりインク濃度の低下が発生するインクジェット記録装置においては、特許文献1に記載のようにインク容器内を換気して溶剤の揮発を促進させ、インク濃度を回復する技術が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−205448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のインクジェット記録装置では、印字ヘッド周辺にゴミやインクミストの浮遊が多く存在しており、印字ヘッド内にエアを送ってこれらゴミやインクミスト等を除去するエアパージを行う場合、インク容器内のエアパージに使用するエアポンプと別に印字ヘッドエアパージ用のエア源を必要とし、コストアップの原因となっていた。またインク容器のエアパージを行う場合、その排気は装置本体から大気中へ排出させるため装置周辺の換気が不十分な場合、溶剤濃度が上昇し、オペレータに不快感を与える場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、インク容器に貯留された溶剤を含むインクを印字ヘッドに供給するインク供給手段と、被印字物へ印字を行う印字ヘッドと、印字に用いられないインクを前記インク容器に回収するインク回収手段を有するインクジェット記録装置において、前記インク容器にインク中の溶剤を揮発させるパージエアを供給するとともに、前記インク容器から流出したパージエアにより前記印字ヘッド内を清掃する単一のエア供給手段を設けたことを特徴とする。
【0006】
また、インクジェット記録装置において、エア供給手段はパージポンプからなることを特徴とする。
【0007】
また、インクジェット記録装置において、前記エア供給手段と前記インク容器を接続するパージエア流路と、前記インク容器と前記印字ヘッドを接続するパージエア放出流路を有することを特徴とする。
【0008】
また、インクジェット記録装置において、前記パージエア放出流路は、大気に連通する大気放出流路と、前記印字ヘッドと接続するヘッド放出流路に分岐されることを特徴とする。
【0009】
また、インクジェット記録装置において、前記パージエア流路はエア開閉手段を有することを特徴とする。
【0010】
また、インクジェット記録装置において、前記大気放出流路はエア開閉手段を有することを特徴とする。
【0011】
また、インクジェット記録装置において、前記パージエア流路は前記印字ヘッドと接続するヘッドパージ流路が分岐されたことを特徴とする。
【0012】
また、インクジェット記録装置において、前記パージエア流路および前記ヘッドパージ流路は、各々エア開閉手段を有することを特徴とする。
【0013】
また、インクジェット記録装置において、前記パージエア流路と前記ヘッドパージ流路の分岐点にエア切替手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
また、インクジェット記録装置において、前記エア開閉手段は電磁開閉弁からなることを特徴とする。
【0015】
また、インクジェット記録装置において、前記エア切替手段は電磁切替弁からなることを特徴とする。
【0016】
また、インクジェット記録装置において、前記エア供給手段は、加熱手段を有することを特徴とする。
【0017】
さらに、インク容器に貯留された溶剤を含むインクを印字ヘッドに供給し、印字に用いられないインクを前記インク容器に回収し、前記インク容器にインク中の溶剤を揮発させるパージエアを供給するとともに、前記インク容器から流出したパージエアにより前記印字ヘッド内を清掃するインクジェット記録装置のエアパージ制御方法において、インク容器パージと印字ヘッドパージを行うパージモードAと、インク容器パージと印字ヘッドパージをともに休止するパージモードBとを選択的に実行することを特徴とする。
【0018】
さらに、インクジェット記録装置のエアパージ制御方法において、インク容器パージを行い印字ヘッドパージを休止するパージモードCを有し、パージモードA乃至Cのいずれかを選択的に実行することを特徴とする。
【0019】
さらに、インクジェット記録装置のエアパージ制御方法において、インク容器パージを休止し印字ヘッドパージを行うパージモードDを有し、パージモードA乃至Dのいずれかを選択的に実行することを特徴とする。
【0020】
さらに、インクジェット記録装置のエアパージ制御方法において、パージモードAまたはパージモードCから、パージモードBまたはパージモードDに切替えて実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、インク容器と印字ヘッドへパージエアを送るエア源を共有化するため、インクの溶剤揮発促進によるインク濃度の安定化と、印字ヘッド内への異物浸入防止による印字安定化が可能なインクジェット記録装置を低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の斜視図
【図2】本発明のインクジェット記録装置の模式図
【図3】本発明のインクジェット記録装置の回路図
【図4】本発明の実施例1のインクジェット記録装置の流路系統図
【図5】本発明の実施例2のインクジェット記録装置の流路系統図
【図6】本発明の実施例3のインクジェット記録装置の流路系統図
【図7】本発明の実施例4のインクジェット記録装置の流路系統図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態を、実施例および図面について説明する。図1にインクジェット記録装置の本体概観を示す。インクジェット記録装置は、制御系やインク循環系を収納した装置本体600と、インク粒子を噴出する印字ヘッド610と、装置本体600と印字ヘッド610を結ぶケーブル620で構成されている。ケーブル620の長さは、生産ライン等への設置に必要上から、一般的に2乃至6m程度である。装置本体600には、ユーザが印字内容や印字仕様等の入力を行うとともに、制御内容や装置運転状況等の表示が可能なタッチパネル式液晶パネル630を有する。印字ヘッド610の内部には、インク粒子を生成するノズルやインク粒子を帯電・偏向するための電極類が納められており、全体がステンレス製カバーで覆われている。印字ヘッド610の先端にはインク粒子が通過可能な開口部640を有する。装置本体600の下部には扉670があり、ここからインクジェット記録装置の内部メンテナンスを行う。
【0024】
次に図2を用いて、装置本体600の内部構成について説明する。装置本体600上部には制御回路645等の電気系部品が配置されている。装置本体下部680には、電磁弁650、ポンプユニット655等の循環系制御部品が配置されており、装置本体下部660にはノズルに供給するインクを貯留するインク容器1が納められている。扉670は開閉可能で、インク容器1を装置本体600から引き出せるようになっており、インクや溶剤の補給、廃棄等のメンテナンスが容易にできるように構成されている。
【0025】
次に図3を用いて、制御回路645の詳細について説明する。CPU300は、本発明のインクジェット記録装置の制御を行う。ROM310は、CPU300が動作するのに必要なプログラムや制御データを記憶する読み出し専用のメモリである。RAM305は、プログラム実行途上でCPU300が扱うデータ等を一時的に記憶する書き換え可能なメモリである。バスライン380はCPU300からのデータ、アドレス信号、コントロール信号全てを含む信号ラインである。インターフェース回路315は、データ、アドレス信号、コントロール信号等の入出力を仲介する。
【0026】
ポンプ制御回路320は、CPU300からの命令に基づいて供給ポンプ、回収ポンプ、パージポンプの動作制御を行う。電磁弁制御回路340は、CPU300からの命令に基づいて供給弁、パージ弁、排気弁の開閉制御を行う。
【0027】
励振源370はノズル動作条件に基づいた励振信号を作成し、ノズル6にある圧電アクチュエータ(図示せず)を駆動する。記録信号源360は入力された印字データに基づいて各インク粒子の記録信号及び印字有無情報を作成後、RAM305に保存し、CPU300からの命令に基づいて帯電電極7に記録信号を印加する。
【実施例1】
【0028】
次に、実施例1のインクジェット記録装置の印字動作について、図4を用いて説明する。インク容器1から印字ヘッド610へのインク供給と回収は、インク容器1に接続されたインク供給流路21、インク回収流路22を通して行われる。
【0029】
インク供給流路21は、インク容器1、インクを圧送する供給ポンプ2、インク供給流路21の開閉を行う供給弁100、インク圧力を調節する調圧弁3、供給インクの圧力を計測する圧力計4、フィルタ5から成り、インク容器1のインクを所定の圧力にてノズル6に供給する。
【0030】
ノズル6より吐出するインク粒子8は帯電電極7で帯電され、5kVの高電圧が印加され高圧電極9と接地されたグランド電極10の間を飛翔する。帯電電極で帯電したインク粒子8Aは、高圧電極9とグランド電極10との間を飛翔する際に、その帯電量に応じて偏向し、被印字物12に付着し、印字が行われる。なお印字に使用しないインク粒子8Bは、インク回収流路22に連結したガター11に取り込まれ、負圧を発生させる回収ポンプ14によりインク容器1に回収され、再利用される。
【0031】
ここで印字ヘッド610およびインク容器1へのパージエアの供給動作について説明する。インク容器1へのパージエアの供給はパージエア流路25、パージエア放出流路26により行われる。パージエアは、インク容器1のインクが規定値以上に増加した場合や、インク濃度が溶剤の混入で希釈された場合にインク容器1に供給され、溶剤を揮発させてインクを所定濃度まで高濃度化する。また、印字ヘッド610内のごみやインクミスト等の異物を排除し、あるいはそれらの侵入を防止する場合にはインク容器1を経由したパージエアが印字ヘッド610に供給される。
【0032】
パージエア流路25は、装置本体600外にあるエア取込口24からパージポンプ20で取込んだ外気をパージエアとしてインク容器1に圧送供給する。パージエア流路25にはエアー開閉手段としてパージ弁101が設けられ、エアの流通を開閉制御する。パージエア流路25には、溶剤の揮発を促進するためにパージエアを加熱する加熱ヒータHが設けてある。加熱ヒータHは、実施例1ではインクに接触しても問題がないようにシーズ加熱ヒータを使用しているが、エアを加熱できるものであれば種類を問わない。なお、エア取込口24にはフィルタを設けたり、エア取込口24を装置本体600内部に設けてもよい。インク容器1には、インク濃度を検出する濃度センサCが設けられている。濃度センサCは、インク濃度を検出する方式だけでなく、インク粘度を検出する方式でもよく、また溶剤により希釈され容積が増加したインク液面高さを検出する方式でもよい。
【0033】
パージエア放出流路26はインク容器1から流出したパージエアを、印字ヘッド610に供給するヘッド放出流路23または大気中に放出する大気放出流路27に供給する。またパージエア放出流路26には、流路内を通るパージエアの水分や溶剤分を凝縮除去するコンデンサ29がある。コンデンサ29で除去した水分や溶剤分は、インク容器1に戻してもよいし、別途専用の容器に保存してもよい。なおコンデンサ29は、パージエアが通過する流路であればどこにあってもよい。
大気放出流路27には、流路を開閉するエアー開閉手段である排気弁102が設けられている。
【0034】
パージ弁101と排気弁102はノーマルクローズ型の電磁開閉弁を用い、非通電時は流路を閉鎖しており通電により流路を開放する。パージ弁101はパージエア流路25の開放、閉鎖を行い、開放状態でパージエアをインク容器1に供給する。排気弁102は大気放出流路27に設けられている。排気弁102を開放することにより、インク容器1から放出されるパージエアを大気放出流路27から大気中に放出する。
【0035】
このとき、ヘッド放出流路23は大気放出流路27より流路抵抗が大きく設定され、大部分のエアは大気放出流路27から装置本体600の外部に放出されるが、いくらかのエアはヘッド放出流路23から印字ヘッド610に供給され、エアパージに用いられる。
【0036】
また、排気弁102が閉鎖状態の場合には、インク容器1から放出されるパージエアは全てヘッド放出流路23から印字ヘッド610内に放出され、エアパージに用いられる。
【0037】
先に述べたように、ポンプ制御回路320はCPU300の命令に基づいて供給ポンプ2、回収ポンプ14、パージポンプ20の動作制御を行い、電磁弁制御回路340はCPU300の命令に基づいて供給弁100、パージ弁101、排気弁102の開閉制御を行う。
【0038】
パージポンプ20はダイヤフラム式等のエアポンプを用い、ポンプ制御回路320の指令により吐出流量を変えることができる。実施例1ではパージエアの設定流量は毎分0.9リットル以下に制限した。これは、印字ヘッド610にパージエアとして毎分1リットル以上を供給すると飛翔するインク粒子に影響を与えて印字乱れの原因となるためである。
【0039】
実施例1では、パージ弁101と排気弁102の開閉状態、パージポンプ20の運転状態により、パージエアの流れを3つのパージモードA、B、Cに分けて制御する。各パージモードはタッチパネル630より選択実行する。以下に、各パージモードの動作について表1を用いて説明する。
【0040】
【表1】

【0041】
パージモードAは、インク容器1と印字ヘッド610の双方にパージエアを送る場合に選択実行される。CPU300は、パージポンプ20を運転し、パージ弁101を開放し排気弁102を閉鎖することにより、インク容器1を経由して印字ヘッド610にパージエアを送り、印字ヘッド610の開口部640よりパージエアを放出させる。これによりインク容器1内のインク溶剤の揮発促進によるインク濃度上昇を行い、かつ印字ヘッド610内へのごみやインクミスト等の異物の浸入を防止することができる。またパージエアによりインク容器1で揮発した溶剤は装置本体より数m離れた印字ヘッド610より放出されるので、オペレータが操作を行う装置本体600周囲での溶剤臭が低減される。
【0042】
パージモードBは、インク容器1と印字ヘッド610へのパージエアを停止する場合に選択実行されるパージ休止モードである。CPU300は、パージポンプ20を停止し、パージ弁101を閉鎖し排気弁102を開放することにより、インク容器1と印字ヘッド610へのパージエアの供給を停止する。パージモードBは、インク濃度の高濃度化の必要がなく、印字ヘッド610周囲にごみやインクミスト等の異物が少ない環境の場合に選択実行される。この場合パージエア放出流路26には回収ポンプ14によるガター11より取り込んだエアのみが流れる。
【0043】
なお、排気弁102が開放され装置本体600周囲にエアがリークして溶剤臭が気になる場合は、排気弁102を閉鎖してもよい。実施例1では、インクを回収するために必要な回収ポンプ14のエア量は毎分0.2リットル以下であり、印字ヘッドでの溶剤臭はパージモードAに比べ十分に小さい。
【0044】
パージモードCは、インク容器1のみにパージエアを送りインク濃度を上げる場合に選択実行される。CPU300は、パージポンプ20を運転し、パージ弁101と排気弁102を開放することによりインク容器1にパージエアを供給し、インク容器1から排出されるパージエアをパージエア放出流路26経由で大気放出流路27から大気に放出する。これによりインク容器1の溶剤の揮発を促進し、効率的にインクの高濃度化ができる。なお、装置本体600周囲の溶剤臭を低減するために、パージモードCにおいても排気弁102を閉鎖して、パージエアを印字ヘッド610から放出させてもよい。
【0045】
以上により、実施例1は三通りのパージモードを実行することができ、インク濃度および印字の安定化が可能となる。
【実施例2】
【0046】
実施例2について、図5を用いて説明する。なお実施例1との相違点についてのみ以下説明する。パージポンプ20はパージエア流路25を介してインク容器1に直接接続され、インク容器1がパージエア放出流路26とヘッド放出流路23を介して印字ヘッド610に接続されている。
【0047】
実施例2では、パージポンプ20の運転状態により、パージエアの流れをパージモードA、Bにて制御し、パージモードはタッチパネル630より選択実行する。以下に、各パージモードの動作について表2を用いて説明する。
【0048】
【表2】

【0049】
パージモードAは、インク容器1と印字ヘッド610にパージエアを送る場合に選択実行される。CPU300は、パージポンプ20を運転することにより、インク容器1と印字ヘッド610にパージエアを送り、印字ヘッド610の開口部640よりパージエアを放出させる。
【0050】
パージモードBは、インク容器1と印字ヘッド610へのパージエアを停止する場合に選択実行されるパージ休止モードである。CPU300は、パージポンプ20を停止することにより、インク容器1と印字ヘッド610へのパージエアの供給を停止する。
【0051】
以上により、実施例2は二通りのパージモードを実行でき、インク濃度および印字の安定化が可能である。実施例2は、実施例1と比較するとインク容器を効率的にエアパージして外気に放出するパージモードCを持たないが、パージ弁101と排気弁102を使用しないためコスト低減が可能となる。
【実施例3】
【0052】
第3の実施例について図6を用いて説明する。なお実施例1との相違点についてのみ以下に説明する。
【0053】
実施例3では、パージポンプ20とパージ弁101の間で流路を分岐させ、印字ヘッド610内にパージエアを直接供給するヘッドパージ流路28を設けている。ヘッドパージ流路28は、流路の開閉動作が可能なパージ弁104を有する。パージ弁104は、パージ弁101と同様にノーマルクローズ型の二方型電磁弁であり、非通電時は閉鎖され、通電により流路が開放する。
【0054】
実施例3では、パージポンプ20の運転状態により、パージエアの流れを制御し、パージモードはタッチパネル630より選択実行する。以下に、各パージモードの動作について表3を用いて説明する。パージ弁101、104と排気弁102の開閉状態、パージポンプ20の運転状態により、パージエアの流れを4つのパージモードA、B、C、Dにて制御する。
【0055】
【表3】

【0056】
パージモードA、パージモードB、パージモードCでは、パージ弁101と排気弁102の動作は実施例1と同じであり、パージ弁104は閉鎖される。これにより実施例1と同じパージモードが実行可能となっている。
【0057】
パージモードDは、印字ヘッド610のみにパージエアを送る場合に選択実行される。CPU300は、パージポンプ20を運転し、パージ弁101を閉鎖し、パージ弁104を開放することにより印字ヘッド610に直接パージエアを供給し、印字ヘッド610の開口部640よりパージエアを放出させる。なお本モードでは、排気弁102は開放してガター11から取り込んだエアを大気放出流路27より排出してもよいし、閉止してヘッド放出流路23より印字ヘッド610内に供給してもよい。パージモードDは、インク濃度の高濃度化の必要がないが、印字ヘッド610周囲にごみやインクミスト等の異物が多い環境の場合に選択実行されるパージモードである。
以上により、実施例3は四通りのパージモードを実行でき、インクおよび印字の安定化が可能となる。さらに、パージモードは濃度センサHの検出値による切り替えも可能で、インク濃度を高濃度化するパージモードAまたはパージモードC実行時に、インク濃度が所望の範囲であることを検出した時に、パージモードBまたはパージモードDに切替え、インクの高濃度化を停止させてもよい。逆にパージモードBまたはパージモードD実行時に、インク濃度が所望の範囲外を検出した時に、パージモードAまたはパージモードBに切替え、インクの高濃度化を実行させてもよい。以上のようにパージモードをインクの状態で切り替えることで、インクを常に最適に保つことができることができる。
【実施例4】
【0058】
実施例4について図7を用いて説明する。なお実施例4は実施例3でのパージ弁101、104をエアー切替手段である単一のパージ弁103に置き換えた構成であり、実施例3との相違点についてのみ以下に説明する。
【0059】
パージ弁103は3方型電磁切替弁であり、パージポンプ20からのパージエアをパージエア流路25、またはヘッドパージ流路28に切替えて供給する。非通電時は、パージエア流路25側が開放されヘッドパージ流路28が閉鎖されており、パージエアはインク容器1に供給される。通電時は、パージエア流路25側が閉鎖され、ヘッドパージ流路28側が開放され、パージエアは直接印字ヘッド610に供給される。
【0060】
パージモードA、B、C、Dにおけるパージ弁103の動作について、表4を用いて以下に説明する。なお排気弁102の動作は実施例3と同じであるので動作の詳細説明を省略する。
【0061】
【表4】

【0062】
パージモードAは、インク容器1と印字ヘッド610にパージエアを送る場合に選択実行される。CPU300は、パージポンプ20を運転し、排気弁102とパージ弁103をともに非通電とする。よってパージエアはパージエア流路25、インク容器1、パージエア放出流路26、ヘッド放出流路23を通して印字ヘッド1内に供給され、インク容器1と印字ヘッド610が同時にエアパージ状態となる。
【0063】
パージモードBは、インク容器1と印字ヘッド610へのパージエアを停止する場合に選択実行される。CPU300は、排気弁102を開放(通電)し、パージポンプ20を停止させて、パージエアの供給を停止する。パージ弁103は通電/非通電どちらの状態でもよいが、実施例4では非通電とし省エネを図った。これによりインク容器1及び印字ヘッド610のエアパージは停止状態となる。
【0064】
パージモードCは、インク容器1のみにパージエアを送る場合に選択実行される。CPU300は、パージポンプ20を運転し、排気弁102を開放(通電)し、パージ弁103を非通電し、パージエア流路25を開放する。パージエアは、パージエア流路25を通してインク容器1に供給され、パージエア放出流路26、排気弁102、大気放出流路27より大気に放出される。なお、パージモードCで排気弁102を開放してエアを大気放出流路27から大気に放出する場合も、ヘッド放出流路23は開放状態にあるから、若干のパージエアは印字ヘッド610に排出される。
【0065】
パージモードDは、印字ヘッド610のみにパージエアを送る場合に選択実行される。CPU300は、パージポンプ20を運転し、パージ弁103を通電し、ヘッドパージ流路28側を開放する。これにより印字ヘッド610にパージエアを供給し、印字ヘッド610の開口部640よりパージエアを放出させる。以上により、実施例4は実施例3同様に4通りのパージモードを実行でき、インクおよび印字の安定化が可能となる。
【0066】
以上、実施例1〜4はいずれも電磁弁の開閉制御によりエアパージ流路を制御するものである。流路を構成する電磁弁の少なくとも一部を、オリフィス等の静的流路抵抗素子に置き換えて流路制御システムを構築することも可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…インク容器、2…供給ポンプ、6…ノズル、11…ガター、14…回収ポンプ、
21…インク供給流路、22…インク回収流路、23…ヘッド放出流路
24…エア取込口、25…パージエア流路、26…パージエア放出流路、
27…大気放出流路34…回収弁、101…パージ弁、102…排気弁
103…パージ弁、104…パージ弁、C…インク濃度センサ、H…加熱ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク容器に貯留された溶剤を含むインクを印字ヘッドに供給するインク供給手段と、被印字物へ印字を行う印字ヘッドと、印字に用いられないインクを前記インク容器に回収するインク回収手段を有するインクジェット記録装置において、
前記インク容器にインク中の溶剤を揮発させるパージエアを供給するとともに、前記インク容器から流出したパージエアにより前記印字ヘッド内を清掃する単一のエア供給手段を設けたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット記録装置において、前記エア供給手段はパージポンプからなることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置において、前記エア供給手段と前記インク容器を接続するパージエア流路と、前記インク容器と前記印字ヘッドを接続するパージエア放出流路を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェット記録装置において、前記パージエア放出流路は、大気に連通する大気放出流路と、前記印字ヘッドと接続するヘッド放出流路に分岐されることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のインクジェット記録装置において、前記パージエア流路はエア開閉手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項4に記載のインクジェット記録装置において、前記大気放出流路はエア開閉手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記パージエア流路は前記印字ヘッドと接続するヘッドパージ流路を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項8】
請求項7に記載のインクジェット記録装置において、前記パージエア流路および前記ヘッドパージ流路は、各々エア開閉手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項9】
請求項8に記載のインクジェット記録装置において、前記パージエア流路と前記ヘッドパージ流路の分岐点にエア切替手段を設けたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項10】
請求項5、6又は8のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記エア開閉手段は電磁開閉弁からなることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項11】
請求項9に記載のインクジェット記録装置において、前記エア切替手段は電磁切替弁からなることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記エア供給手段は、加熱手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項13】
インク容器に貯留された溶剤を含むインクを印字ヘッドに供給し、印字に用いられないインクを前記インク容器に回収し、前記インク容器にインク中の溶剤を揮発させるパージエアを供給するとともに、前記インク容器から流出したパージエアにより前記印字ヘッド内を清掃するインクジェット記録装置のエアパージ制御方法において、
インク容器パージと印字ヘッドパージを行うパージモードAと、インク容器パージと印字ヘッドパージをともに休止するパージモードBとを選択的に実行することを特徴とするインクジェット記録装置のエアパージ制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載されたインクジェット記録装置のエアパージ制御方法において、さらにインク容器パージを行い印字ヘッドパージを休止するパージモードCを有し、パージモードA乃至Cのいずれかを選択的に実行することを特徴とするインクジェット記録装置のエアパージ制御方法。
【請求項15】
請求項14に記載されたインクジェット記録装置のエアパージ制御方法において、さらにインク容器パージを休止し印字ヘッドパージを行うパージモードDを有し、パージモードA乃至Dのいずれかを選択的に実行することを特徴とするインクジェット記録装置のエアパージ制御方法。
【請求項16】
請求項15に記載されたインクジェット記録装置のエアパージ制御方法において、パージモードAまたはパージモードCから、パージモードBまたはパージモードDに切替えて実行することを特徴とするインクジェット記録装置のエアパージ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−11609(P2012−11609A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148559(P2010−148559)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】