説明

インクジェット記録装置及びインク回収方法

【課題】画像の記録に用いられない、記録ヘッドから吐出されたインクを好適に回収し、再利用することができる、インクジェット記録装置及びインク回収方法を提供することを目的とする。
【解決手段】インクジェット記録装置1は、記録ヘッド20と、インクタンク60と、インクトレイ78及び中継タンク80と、インク回収流路706と、インク循環流路708と、回収側切替部82と、回収側ポンプ84とを備える。インクトレイ78は、記録ヘッド20のノズルから吐出されたインクを受け、中継タンク80は、受け容れられたインクを貯留する。中継タンク80に貯留されたインクは、回収側ポンプ84によって送液され、回収側切替部82が回収状態である場合、インク回収流路706を流れて、インクタンク60に流入し、回収側切替部82が循環状態である場合、インク循環流路708を流れて、中継タンク80に流入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及びインク回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像の記録にインクジェット記録装置が用いられ、これに関する提案がなされている(例えば、特許文献1〜特許文献4参照)。特許文献1には、ノズルから吐出したインク滴の一部を記録材に印字すると共に、印字されなかった残りのインク滴をインク循環系に回収して再使用するインクジェット記録装置が、開示されている。インクジェット記録装置では、インク循環系におけるインクの密度を固有振動測定方式密度計により検出し、この検出した密度と予め設定した基準密度との差に応じてインク循環系に補充液を添加し、インク循環系のインク密度を基準密度にするような制御が実行される。特許文献2には、溶媒としてイオン性液体を含む液体を記録媒体に付与する記録ヘッドから、メンテナンスユニットにより回収し、回収された液体を再生ユニットにより再生し、再び、記録ヘッドへ供給し、画像記録に利用する記録装置が、開示されている。
【0003】
特許文献3には、記録ヘッドと、インク貯留槽と、インク受け部材と、第1インク経路と、第2インク経路と、動作制御部とを具備して構成されるインクジェット記録装置が、開示されている。第1インク経路は、インク受け部材とインク貯留槽とを連結し、記録ヘッドから排出された排インクをインク受け部材を介してインク貯留槽に回収する経路を構成する排液戻し通路と第1ポンプとを有する。第2インク経路は、排液戻し通路とは独立した経路として構成され、インク貯留槽と記録ヘッドの一端とを連結し、インク貯留槽から記録ヘッドにインクを供給する経路を構成するインク供給路と第2ポンプとを有する。動作制御部は、第2インク経路を介して記録ヘッドにインクを供給し、記録ヘッドからインク受け部材を介して第1インク経路を経由してインク貯留槽にインクを回収することで行なわれる記録ヘッドの回復動作が、第2インク経路のインク供給量と第1インク経路のインク回収量とが略同一もしくは、第2インク経路のインク供給量に対して第1インク経路のインク回収量が大となるように、第1ポンプおよび第2ポンプの駆動を制御する。
【0004】
特許文献4には、インクジェットプリンタのインク供給装置が、開示されている。インク供給装置では、インクボトル内のインクはインク供給パイプを通ってエアトラップに連通する。ポンプで加圧されたインクはフィルタ、電磁弁をへてノズルに到達し、ここで必要な電気信号で制御されてインク粒子が噴射され、印字に供される。印字に使用されないインクはガターで回収され回収ポンプにより回収チューブをへてインクボトル内へ戻る。インクボトルの上方に空気抜きパイプがあり、インクボトルの内圧はエアトラップを介して大気開放されている。エアトラップの上方は大気開放である。エアトラップはインク内の気泡を抜く場所でありかつ液面を計測する場所として使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−117233号公報
【特許文献2】特開2006−212788号公報
【特許文献3】特許第3630978号公報
【特許文献4】特公昭64−255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、インクジェット記録装置では、記録ヘッドのノズルから吐出されたインクであって、画像の記録に用いられないインクを回収し、再利用する場合がある。インクには、色剤が含まれている。色材等の含有成分は、それぞれ、所定の比重を有する。従って、インクが一定の場所に継続して貯留(停滞)すると、色剤等の含有成分が沈降(沈殿)することがある。画像の記録に用いられないインクを回収する場合、回収された場所(構成)及び/又は回収のためのインク回収流路内で、沈降が発生し易い。含有成分が沈降すると、例えば、吐出するインクの含有成分の濃度が変化し、吐出結果に濃度ムラ及び/又は歪み、色再現性の悪化等の品質劣化が生じることがある。
【0007】
本発明は、画像の記録に用いられない、記録ヘッドから吐出されたインクを好適に回収し、再利用することができる、インクジェット記録装置及びインク回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題に鑑みなされた本発明の一側面は、インクを吐出し、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、インクを吐出するノズルが形成された記録ヘッドと、前記記録ヘッドに供給されるインクを貯留する供給側貯留部と、前記供給側貯留部から前記記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給流路と、前記記録ヘッドのノズルから吐出されたインクを受け、受け容れられたインクを貯留する回収側貯留部と、前記回収側貯留部と前記供給側貯留部とを接続し、前記回収側貯留部に貯留されたインクを前記供給側貯留部に流入させるためのインク回収流路と、前記インク回収流路の途中の第一位置で、前記インク回収流路から分岐し、前記回収側貯留部に接続され、前記回収側貯留部から流出されたインクを、前記回収側貯留部に流入させるためのインク循環流路と、前記第一位置に設けられ、インクが前記インク回収流路を流れて前記供給側貯留部に流入する回収状態とするか、インクが前記インク循環流路を流れて前記回収側貯留部に流入する循環状態とするか、を切り替える切替部と、前記第一位置より前記回収側貯留部の側となる、前記インク回収流路の途中の第二位置に設けられ、前記切替部が前記回収状態である場合、前記回収側貯留部に貯留されたインクを、前記供給側貯留部の側に送液し、前記切替部が前記循環状態である場合、前記回収側貯留部に貯留されたインクを、前記回収側貯留部の側に送液するための送液部と、を備える、インクジェット記録装置である。
【0009】
これによれば、記録ヘッドのノズルから吐出された後、回収側貯留部に貯留されたインクを、供給側貯留部に流入させるまでの間、循環させることができる。そのため、インク内で含有成分が沈降することを抑制することができる。
【0010】
このインクジェット記録装置は、次のような構成とすることもできる。前記回収側貯留部に貯留されたインクの量を検出する検出部を備え、前記切替部は、前記検出部で検出されるインクの量が、上限量となった場合、前記回収状態とされ、前記検出部で検出されるインクの量が、下限量となった場合、前記循環状態とされる、ようにしてもよい。これによれば、回収状態及び循環状態を、好適に切り替えることができる。この場合、前記下限量は、前記切替部が前記循環状態である場合において、前記回収側貯留部を流出したインクが、前記回収側貯留部に流入するまでに通過する全流路内に存在できるインクの量より多い量である、ようにしてもよい。これによれば、循環状態において、回収側貯留部を流出したインクが、回収側貯留部に流入するまでに通過する全流路内への、エアの入り込みを抑制し、送液部でエアの噛み込みが発生することを防止することができる。
【0011】
前記回収側貯留部は、前記記録ヘッドのノズルから吐出されたインクを受けるインクトレイと、前記インクトレイで受け容れられたインクが流入し、前記インク回収流路を流れて前記供給側貯留部に流入するインクを貯留する中継タンクと、を備え、前記インク回収流路は、前記インクトレイと、前記中継タンクと、前記供給側貯留部と、を接続し、前記インクトレイから流出するインクを前記中継タンクに流入させ、前記中継タンクから流出するインクを前記供給側貯留部に流入させ、前記インク循環流路は、前記中継タンクに接続され、前記中継タンクから流出されたインクを、前記中継タンクに流入させる、ようにしてもよい。これによれば、中継タンクで好適にインクを貯留させることが可能となり、インクの循環を好適に行うことができる。
【0012】
前記中継タンクに貯留されたインクの量を検出する検出部を備え、前記切替部は、前記検出部で検出されるインクの量が、上限量となった場合、前記回収状態とされ、前記検出部で検出されるインクの量が、下限量となった場合、前記循環状態とされる、ようにしてもよい。これによれば、回収状態及び循環状態を、好適に切り替えることができる。この場合、前記下限量は、前記切替部が前記循環状態である場合において、前記中継タンクを流出したインクが、前記中継タンクに流入するまでに通過する全流路内に存在できるインクの量より多い量である、ようにしてもよい。これによれば、循環状態において、中継タンクを流出したインクが、中継タンクに流入するまでに通過する全流路内への、エアの入り込みを抑制し、送液部でエアの噛み込みが発生することを防止することができる。
【0013】
上述した何れかのインクジェット記録装置では、インクは、活性エネルギー硬化型インクであって、活性エネルギー硬化型インクを吐出し、記録媒体に画像を記録する、ようにしてもよい。これによれば、色剤等の含有成分の沈降が発生し易い活性エネルギー硬化型インクを画像の記録に用いるインクジェット記録装置で、沈降の発生を抑制することができる。活性エネルギー硬化型インクとしては、紫外線硬化型インク又は電子線硬化型インク等が例示される。活性エネルギー硬化型インクは、例えば、加工生産のような産業用途における画像のインクジェット記録に用いられる。活性エネルギー硬化型インクは、色剤としての顔料等の含有成分を溶媒に分散させてなる。そのため、活性エネルギー硬化型インクでは、経時的に、含有成分の沈降が発生する。活性エネルギー硬化型インクの含有成分としての顔料には、無機顔料と有機顔料とがある。このうち、無機顔料の比重は、有機顔料と比較すると大きい。そのため、特に、無機顔料を含む活性エネルギー硬化型インクでは、経時的な無機顔料の沈降が発生し易い。例えば、比重が3.0〜6.0である無機顔料を含む活性エネルギー硬化型インクが用いられる場合、吐出される活性エネルギー硬化型インクの顔料濃度が変化し、吐出結果に濃度ムラ及び/又は歪み、色再現性の悪化等の品質劣化が生じ易くなる。前述したようなインクジェット記録装置では、上述した通り、インクの循環が実行される。従って、記録ヘッドのノズルから吐出された活性エネルギー硬化型インクが回収側貯留部に貯留された後、供給側貯留部に流入されない活性エネルギー硬化型インクを、循環させることで、無機顔料の沈降を抑制することができる。なお、紫外線硬化型インク又は電子線硬化型インク等のような活性エネルギー硬化型インクは、パーソナルユースで用いられるインク等と比較すると高価である。そのため、画像の記録に用いられない活性エネルギー硬化型インクを回収することは、有効である。
【0014】
本発明の他の側面は、インクを吐出し、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、インクを吐出するノズルが形成された記録ヘッドと、前記記録ヘッドに供給されるインクを貯留する供給側貯留部と、前記供給側貯留部から前記記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給流路と、前記記録ヘッドのノズルから吐出されたインクを受けるインクトレイと、前記インクトレイで受け容れられたインクが流入し、流入されたインクを貯留する中継タンクと、前記インクトレイと、前記中継タンクと、前記供給側貯留部とを接続し、前記インクトレイから流出するインクを前記中継タンクに流入させ、前記中継タンクから流出するインクを前記供給側貯留部に流入させるためのインク回収流路と、前記中継タンクより前記供給側貯留部の側となる、前記インク回収流路の途中の位置に設けられ、前記中継タンクに貯留されたインクを、前記供給側貯留部の側に送液するための送液部と、を備える、インクジェット記録装置である。
【0015】
これによれば、インクトレイで受け容れられたインクを、供給側貯留部に流入させる際、このインクを、中継タンクに貯留させることができる。インクトレイと供給側貯留部とをインク回収流路によって接続し、両者の水頭差を利用してインクを回収することもできる。しかし、このような構成では、記録ヘッド及びインクトレイを、供給側貯留部より上方とし、供給側貯留部を、インクトレイの、真下又はその付近に設ける必要がある。従って、水頭差による回収を実現したインクジェット記録装置では、装置が大型化し、メンテナンス動作のためのスペースの確保が困難となる等、設計上の制約を受け易くなる。メンテナンス動作では、記録ヘッドのクリーニングが行われ、ノズルからインクが吐出される。この吐出されたインクは、画像の記録には用いられない。発明者は、供給側貯留部を、作業性及び/又は装置全体の構成を考慮したスペースに配置することとし、インク回収流路に送液部を設け、インクを送液する構成を検討した。その際、発明者は、インクトレイに受け容れられたインクを、送液部によって、供給側貯留部に送液すると、インク回収流路内に存在するインクが次第に減少し、送液部でエアの噛み込みが発生する場合があることを、知見した。中継タンクを設けた構成によれば、中継タンク以降のインク回収流路において、エアの入り込みを抑制し、送液部でエアの噛み込みが発生することを防止することができる。このインクジェット記録装置において、送液部が設けられる「前記中継タンクより前記供給側貯留部の側となる、前記インク回収流路の途中の位置」は、上述した本発明の一側面に係るインクジェット記録装置における第二位置に相当する。
【0016】
本発明のさらに他の側面は、インクを貯留する供給側貯留部から、インク供給流路を流れて記録ヘッドに供給され、前記記録ヘッドに形成されたノズルから吐出されたインクを受け、受け容れられたインクを、回収側貯留部に貯留する受容工程と、インクが、前記回収側貯留部と前記供給側貯留部とを接続し、前記回収側貯留部に貯留されたインクを前記供給側貯留部に流入させるためのインク回収流路を流れて前記供給側貯留部に流入する回収状態とするか、インクが、前記インク回収流路の途中の第一位置で、前記インク回収流路から分岐し、前記回収側貯留部に接続され、前記回収側貯留部から流出されたインクを、前記回収側貯留部に流入させるためのインク循環流路を流れて前記回収側貯留部に流入する循環状態とするか、を切り替える切替部を、前記回収状態とし、又は、前記循環状態とする切替工程と、前記切替部が前記回収状態である場合、前記第一位置より前記回収側貯留部の側となる、前記インク回収流路の途中の第二位置に設けられ、前記回収側貯留部に貯留されたインクを送液する送液部によって、前記回収側貯留部から流出されたインクを、前記インク回収流路を介して、前記供給側貯留部に流入させるインク回収工程と、
前記切替部が前記循環状態である場合、前記送液部によって、前記回収側貯留部から流出されたインクを、前記インク循環流路を介して、前記回収側貯留部に流入させるインク循環工程と、を含む、インク回収方法である。
【0017】
これによれば、本発明の一側面に係るインクジェット記録装置によって実現される、上記同様の機能を実現することができる。なお、このインク回収方法は、上述した本発明の一側面に係るインクジェット記録装置と同様に、上述したような別の要素を含むインクジェット記録装置を用いて実行されるインク回収方法、又は、他の側面に係るインクジェット記録装置を用いて実行されるインク回収方法として特定することもできる。このようなインク回収方法によっても、同様の要素を含む、上述したインクジェット記録装置によって実現される、上記同様の機能を実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、画像の記録に用いられない、記録ヘッドから吐出されたインクを好適に回収し、再利用することができる、インクジェット記録装置及びインク回収方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】インクジェット記録装置の一例を示す図であって、インクジェット記録装置の平面図である。
【図2】インクジェット記録装置が備えるインク流路を説明する図である。
【図3】画像の記録中又は待機中に実行されるインク回収方法のための第一の制御を説明する図(その1)である。上段は、第一の制御の第一段階で、下段は、第一の制御の第二段階である。
【図4】第一の制御を説明する図(その2)である。上段は、第一の制御の第三段階で、下段は、第一の制御の第四段階である。
【図5】第一の制御の各段階における、回収側ポンプの駆動状態と、回収側切替部の状態との関係を示す図である。
【図6】インクジェット記録装置への初回インク導入時に実行されるインク回収方法のための第二の制御を説明する図(その1)である。上段は、第二の制御の第一段階で、下段は、第二の制御の第二段階である。
【図7】第二の制御を説明する図(その2)である。上段は、第二の制御の第三段階で、下段は、第二の制御の第四段階である。
【図8】第二の制御を説明する図(その3)である。上段は、第二の制御の第五段階で、下段は、第二の制御の第六段階である。
【図9】第二の制御の各段階における、回収側ポンプの駆動状態と、回収側切替部の状態との関係を示す図である。
【図10】インクジェット記録装置が備える他のインク流路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。他の構成を含むようにしてもよい。
【0021】
<インクジェット記録装置>
インクジェット記録装置1では、フルカラーの画像が記録(形成)される。画像が記録される記録媒体としては、パーソナルユースでも広く用いられる記録用紙の他、加工生産において用いられる産業資材3が例示される。本実施形態では、記録媒体として産業資材3を例に説明する。産業資材3には、例えば、布帛、建築材が含まれる。建築材としては、コンクリートブロック、窯業サイディング材等が含まれる。産業用途のインクジェット記録装置1では、画像の記録に、活性エネルギー硬化型インクが用いられる。活性エネルギー硬化型インクとしては、紫外線硬化型インク又は電子線硬化型インク等が例示される。活性エネルギー硬化型インクは、顔料、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマー、光重合開始剤を含み、さらに必要に応じて添加剤等を含む。インク色としては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックが例示される。
【0022】
顔料には、有機顔料と無機顔料とがある。例えば、耐光性等が要求されるような場合、無機顔料が用いられる。画像の記録に用いられる無機顔料には、次のようなものが例示される。黄色顔料としては、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー等が例示される。赤色顔料としては、べんがら、カドミウムレッド、カドミウムリトポンレッド等が例示される。青色顔料としては、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトアルミニウムクロムブルー等が例示される。黒色顔料としては、カーボンが例示される。この他、鮮やかな色表現を実現するため、下地として白色で着色する場合がある。ホワイトの活性エネルギー硬化型インクに含まれる白色顔料としては、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、酸化アンチモン等が例示される。赤色の無機顔料は、他の色の無機顔料と比較し、沈降し易い傾向にある。
【0023】
インクジェット記録装置1は、図1に示すように、搬送部10と、記録ヘッド20と、照射部30と、メンテナンス部40と、制御ボックス50と、インクタンク60と、インク流路70とを備える。インクジェット記録装置には、シリアル型のインクジェット記録装置と、ライン型のインクジェット記録装置とがある。本実施形態では、インクジェット記録装置1が、ライン型のインクジェット記録装置である場合を例に説明する。搬送部10は、コンベア等によって構成される。搬送部10は、搬送面12に載せ置かれた産業資材3を、搬送部10の一端側から、記録ヘッド20及び照射部30を通過させ、搬送部10の他端側に搬送する。
【0024】
記録ヘッド20は、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの活性エネルギー硬化型インクが用いられる場合、これらの各色用の記録ヘッド20Y,20M,20C,20Kで構成される。記録ヘッド20Yは、イエロー用の記録ヘッドである。記録ヘッド20Mは、マゼンタ用の記録ヘッドである。記録ヘッド20Cは、シアン用の記録ヘッドである。記録ヘッド20Kは、ブラック用の記録ヘッドである。記録ヘッド20Y,20M,20C,20Kは、搬送方向に、記録ヘッド20K、記録ヘッド20C、記録ヘッド20M、記録ヘッド20Yの順で整列して配置される。記録ヘッド20Y,20M,20C,20Kは、同一の構成を有する。本実施形態では、記録ヘッド20Y,20M,20C,20Kをそれぞれ区別しない場合(インク色をそれぞれ区別しない場合)、又は、これらを総称する場合、単に「記録ヘッド20」という。記録ヘッド20には、活性エネルギー硬化型インクを吐出する複数のノズル(不図示)が形成されている。ノズルは、搬送部10によって搬送される産業資材3の記録面5と対向して形成されており、ノズルから吐出された活性エネルギー硬化型インクは、記録面5に着弾する。記録面5に着弾した活性エネルギー硬化型インクは、インクドットを形成する。これによって、記録面5に画像が記録され、記録面5が模様付けされる。
【0025】
記録ヘッド20には、サブタンク22(図2参照)が一体化された状態で搭載されている。インク流路70を流れて供給される活性エネルギー硬化型インクは、サブタンク22に貯留された後、記録ヘッド20に供給される。サブタンク22は、ノズルから吐出される活性エネルギー硬化型インクを一時貯留するためのタンクである。サブタンク22の容量は適宜設定される。例えば30g〜40gの範囲に設定される。サブタンク22には、加減圧機構24(図2参照)が、所定のエアライン26(図2参照)を介して接続されている。加減圧機構24は、サブタンク22の内部を減圧し、加圧する。具体的に、記録ヘッド20から活性エネルギー硬化型インクが吐出される場合、加減圧機構24は、サブタンク22の内部を減圧し、大気圧より低い圧力にする。これによって、メニスカスを好適に生成することができる。一方、後述するメンテナンス動作が行われる場合、加減圧機構24は、サブタンク22の内部を大気圧より高い圧力にする。サブタンク22の内部圧力の増加は、圧縮されたエアをサブタンク22の内部に送り込んで行われる。これによって、活性エネルギー硬化型インクをノズルから好適に吐出(排出)することができる。エアライン26には、電磁弁28(図2参照)が設けられている。電磁弁28は、例えば二方電磁弁で構成される。加減圧機構24によってサブタンク22の内部が減圧され、加圧される場合、電磁弁28は開放される。サブタンク22と加減圧機構24との間を、非連通状態とする場合、電磁弁28は閉鎖される。
【0026】
照射部30は、活性エネルギー線を照射する。例えば、画像の記録に、紫外線硬化型インクが用いられる場合、照射部30では、活性エネルギー線としての紫外線が照射される。電子線硬化型インクが用いられる場合、照射部30では、活性エネルギー線としての電子線が照射される。照射部30は、記録ヘッド20に対して搬送方向下流側の所定の位置に設置される。例えば紫外線硬化型インクが用いられる場合、照射部30は、搬送部10の搬送面12に向けて設置された紫外線ランプを備え、搬送面12の方向に紫外線を照射する。活性エネルギー線の照射は、例えば、記録ヘッド20に対して搬送方向下流側で且つ照射部30に対して搬送方向上流側の所定の位置に設けられた検出センサ(不図示)で、産業資材3が検出されたことを条件として開始される。活性エネルギー線の照射は、照射部30に対して搬送方向下流側の所定の位置に設けられた検出センサ(不図示)で、産業資材3が照射部30を通過したことが検出されたことを条件として停止される。
【0027】
メンテナンス部40では、記録ヘッド20に対するメンテナンス動作が行われる。メンテナンス動作が行われる場合、記録ヘッド20(各色用の記録ヘッド20Y,20M,20C,20Kの全体)は、所定の移動機構によってメンテナンス部40が設けられた位置に移動される。メンテナンス部40は、インクトレイ78を備える(図2参照)。インクトレイ78は、中継タンク80(図2参照)と共に、回収側貯留部を構成する。インクトレイ78及び中継タンク80については、後述する。メンテナンス部40では、例えば、記録ヘッド20においてノズルが形成された面である吐出面がクリーニングされる。メンテナンス部40では、記録ヘッド20からインクトレイ78に活性エネルギー硬化型インクが強制的に吐出される。この吐出は、例えば、ノズル詰まり、エア詰まり等を解消する目的で行われる。前述したようなメンテナンス動作が終了した場合、メンテナンス部40に移動された記録ヘッド20は、所定の移動機構によって図1に示す位置に戻される。図1に示す位置に記録ヘッド20が戻ったインクジェット記録装置1では、例えば、産業資材3の搬送が開始され、画像の記録が再開される。
【0028】
制御ボックス50は、例えば、制御部(不図示)と、接続インターフェース(不図示)とを含む。制御部は、インクジェット記録装置1を制御する。例えば、制御部は、画像の記録等に関するインクジェット記録方法と、インク回収方法とを制御する。制御部は、電子部品が搭載された回路基板及び電気配線等を含む。なお、制御部に含まれる少なくとも一部の構成は、記録ヘッド20の上部に設置されることもある。接続インターフェースは、インクジェット記録装置1(制御ボックス50)と、パーソナルコンピュータのような外部装置(不図示)とを、データ通信可能に接続するためのインターフェースである。例えば、外部装置からインクジェット記録装置1には、接続インターフェースを介して、記録される画像を示す画像データが入力される。制御部は、この入力された画像データに従いインクジェット記録方法を制御する。
【0029】
インクタンク60は、供給側貯留部として機能し、記録ヘッド20に供給される活性エネルギー硬化型インクを貯留する。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの活性エネルギー硬化型インクが用いられる場合、インクタンク60は、これら各色の活性エネルギー硬化型インクをそれぞれ貯留した4個のインクタンク60Y,60M,60C,60Kによって構成される。インクタンク60Yは、イエローの活性エネルギー硬化型インクを貯留するインクタンクである。インクタンク60Mは、マゼンタの活性エネルギー硬化型インクを貯留するインクタンクである。インクタンク60Cは、シアンの活性エネルギー硬化型インクを貯留するインクタンクである。インクタンク60Kは、ブラックの活性エネルギー硬化型インクを貯留するインクタンクである。インクタンク60Y,60M,60C,60Kは、同様の構成を有する。本実施形態では、インクタンク60Y,60M,60C,60Kをそれぞれ区別しない場合(インク色をそれぞれ区別しない場合)、又は、これらを総称する場合、単に「インクタンク60」という。インクタンク60には、インクタンク60に貯留されている活性エネルギー硬化型インクを攪拌するための攪拌部(不図示)を設けるとよい。攪拌部によれば、インクタンク60に貯留されている活性エネルギー硬化型インクを攪拌することが可能であるため、この状態において、顔料が沈降することを抑制できる。そして、インクタンク60に貯留されている活性エネルギー硬化型インクの顔料濃度を、一定に保つことができる。なお、攪拌部によれば、顔料と共に活性エネルギー硬化型インクに含まれる他の含有成分についても、攪拌することができる。
【0030】
インク流路70は、インクタンク60と記録ヘッド20とを接続し、インクトレイ78とインクタンク60とを接続するための流路である。インク流路70には、活性エネルギー硬化型インクが流れる。複数色の活性エネルギー硬化型インクが用いられる場合、インクジェット記録装置1は、各色用のインク流路70を備える。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの活性エネルギー硬化型インクが用いられる場合、インクジェット記録装置1は、イエロー用のインク流路70Yと、マゼンタ用のインク流路70Mと、シアン用のインク流路70Cと、ブラック用のインク流路70Kとを備える。インク流路70Y,70M,70C,70Kは、同様の構成を有する。本実施形態では、インク流路70Y,70M,70C,70Kをそれぞれ区別しない場合(インク色をそれぞれ区別しない場合)、又は、これらを総称する場合、単に「インク流路70」という。インク流路70は、図2に基づき後述するような、所定の流路によって形成される。インク流路70の所定の位置には、同じく後述するような各部が設けられている。なお、図1においてインク流路70(70Y,70M,70C,70K)は、図示を簡略化している。
【0031】
<インクジェット記録方法及びインク回収方法>
制御ボックス50の制御部によって制御され、インクジェット記録装置1で実行されるインクジェット記録方法は、例えば、インクジェット記録工程と、照射工程とを含む。インクジェット記録方法は、供給側循環工程と、インク供給工程と、供給側切替工程とを含む。供給側循環工程は、記録ヘッド20に供給される前の活性エネルギー硬化型インクを循環させる工程である。インク供給工程は、活性エネルギー硬化型インクを供給する工程である。供給側切替工程は、供給側切替部72(図2参照)を、活性エネルギー硬化型インクをインクタンク60に流入する供給側循環状態とし、又は、活性エネルギー硬化型インクを記録ヘッド20の側に流れる供給状態とする工程である。
【0032】
インク回収方法は、受容工程と、インク回収工程と、回収側循環工程と、回収側切替工程とを含む。受容工程は、メンテナンス部40で、記録ヘッド20のノズルから吐出された活性エネルギー硬化型インクであって、画像の記録に用いられない活性エネルギー硬化型インクを、回収側貯留部で受け、受け容れられた活性エネルギー硬化型インクを、回収側貯留部に貯留する工程である。具体的には、前述の活性エネルギー硬化型インクを、インクトレイ78で受け、受け容れられた活性エネルギー硬化型インクを、中継タンク80に流入させて貯留する工程である。インク回収工程は、活性エネルギー硬化型インクを、インクタンク60に流入させる工程である。回収側循環工程は、インクタンク60に回収される前の活性エネルギー硬化型インクを循環させる工程である。回収側切替工程は、回収側切替部82(図2参照)を、活性エネルギー硬化型インクをインクタンク60に流入する回収状態とし、又は、活性エネルギー硬化型インクを中継タンク80に流入する回収側循環状態とする工程である。以下では、主に、インクジェット記録工程と、照射工程とについて説明することとし、その他の各工程及びインク回収方法については、後述する。
【0033】
インクジェット記録方法においてインクジェット記録工程は、インクジェット記録装置1に接続された外部装置から、画像の記録指令及び記録する画像を示す画像データ等が入力された場合に開始される。記録指令が入力されたインクジェット記録装置1では、先ず、搬送部10が動作を開始し、搬送面12に載せ置かれた産業資材3の搬送が開始される。次に、入力される画像データに従い、搬送方向に整列して配置された記録ヘッド20K,20C,20M,20Yにおいて、搬送されてきた産業資材3に対して各色の活性エネルギー硬化型インクがそれぞれ吐出される。吐出された各色の活性エネルギー硬化型インクは、記録面5に着弾する。これによって、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの活性エネルギー硬化型インクそれぞれによる、ブラックドット、シアンドット、マゼンタドット及びイエロードットが、記録面5に形成される。その後、さらに搬送部10によって産業資材3が搬送され、照射部30で、記録面5に、活性エネルギー線が照射され、ブラックドット、シアンドット、マゼンタドット及びイエロードットが硬化する(照射工程)。産業資材3は、搬送部10の搬送方向下流側の端部まで搬送される。これによって、1つの産業資材3に対する画像の記録が終了する。なお、搬送面12には、産業資材3が所定のタイミングで順次載せ置かれ、これの搬送が開始され、上述した処理が連続的に繰り返して実行される。つまり、インクジェット記録装置1では、インクジェット記録工程と照射工程とを含むインクジェット記録方法が繰り返して連続的に実行される。
【0034】
ところで、インクジェット記録方法においてインクジェット記録工程及び照射工程が実行される場合、記録ヘッド20は、所定時間間隔でメンテナンス部40に移動し、上述したようなメンテナンス動作が行われる。例えば、メンテナンス動作は、4時間以下の間隔で行われる。より好ましくは、2時間以下の間隔で行われる。例えば、無機顔料を含む活性エネルギー硬化型インクでは、メンテナンス動作の間隔が、4時間を超えると、無機顔料及びその他の含有成分の沈降が発生し始める傾向が認められ、好適な画像の記録が阻害される場合がある。メンテナンス動作を、頻繁に行うと、加工生産における生産性が低下する。従って、メンテナンス動作が行われる時間間隔は、例えば1時間以上とするとよい。メンテナンス動作時における活性エネルギー硬化型インクの吐出量(排出量)は、無機顔料等の含有成分の沈降を抑制することができる量が適宜設定される。大量の吐出は、メンテナンス動作に要する時間を延長させ、加工生産における生産性を低下させる要因となる。従って、吐出量は、サブタンク22の容量以下の量とするとよい。例えば、1回のメンテナンス動作時の吐出量は、5g以上であって、30g以下であることが好ましく、15g以下とするとさらに好ましい。なお、メンテナンス動作は、例えばインクジェット記録工程が実行されていない待機中についても、前述したように行われてもよい。
【0035】
<インク流路>
インク流路70について、図2を参照して説明する。上述した通り、インク流路70Y,70M,70C,70Kは、同様の構成を有するため、以下では、インク色を特定せずに(インク色を区別することなく)説明する。インク流路70は、供給側の流路として、インク供給流路702と、インク循環流路704とを含み、回収側の流路として、インク回収流路706と、インク循環流路708とを含む。インク流路70(インク供給流路702、インク循環流路704、インク回収流路706、インク循環流路708)は、チューブ又は鋼管等で構成される。
【0036】
インク供給流路702は、記録ヘッド20(詳細には、記録ヘッド20と一体化されたサブタンク22)とインクタンク60とを接続し、インクタンク60に貯留されている活性エネルギー硬化型インクを、インクタンク60から記録ヘッド20に供給するための流路である。インク供給流路702には、供給側切替部72と、供給側ポンプ73と、加圧タンク74とが設けられている(接続されている)。加圧タンク74には、加圧機構76が接続されている。インク循環流路704は、図2に示すようなインク供給流路702の途中の第三位置で、インク供給流路702から分岐した流路である。インク循環流路704は、インク供給流路702から分岐し、インクタンク60に接続される。インク供給流路702からのインク循環流路704の分岐は、第三位置に設けられた供給側切替部72によって行われる。供給側切替部72は、例えば、三方弁、具体的には、三方電磁弁によって構成される。ただし、供給側切替部72は、3方向に分岐可能な構成であれば、どのような構成であってもよい。供給側切替部72は、活性エネルギー硬化型インクがインク循環流路704を流れてインクタンク60に流入する供給側循環状態とするか、活性エネルギー硬化型インクが第三位置を通過しインク供給流路702を記録ヘッド20の側に流れる供給状態とするかを切り替える(供給側切替工程)。
【0037】
供給側切替部72が供給側循環状態である場合、インク供給流路702の第三位置に到達した活性エネルギー硬化型インクは、インク供給流路702を記録ヘッド20の方向に流れることなく、インク循環流路704の方向に流れる。インク循環流路704を流れる活性エネルギー硬化型インクは、インクタンク60に流入する。即ち、供給側切替部72が供給側循環状態である場合、インクタンク60に貯留されている活性エネルギー硬化型インクは、第三位置までのインク供給流路702と、供給側循環状態とされた供給側切替部72と、インク循環流路704とを流れ、循環される(供給側循環工程)。これによって、記録ヘッド20に供給される前のインク供給流路702に存在する活性エネルギー硬化型インクを、定期的に入れ替えることができる。供給側切替部72が供給状態である場合、活性エネルギー硬化型インクは、インク循環流路704の方向に流れることなく、そのままインク供給流路702を流れ、サブタンク22に流入し、記録ヘッド20に供給される(インク供給工程)。記録ヘッド20に供給された活性エネルギー硬化型インクは、制御部によって制御された状態で、インクジェット記録装置1に入力された画像データに従い、ノズルから吐出される。供給側切替部72は、例えば、サブタンク22に貯留されている活性エネルギー硬化型インクの量が、予め定めた下限量以下又は未満となった場合、供給状態とされる。活性エネルギー硬化型インクの量が、予め定めた上限量となった場合、供給側切替部72は、供給側循環状態とされる。供給側切替部72の切り替えは、サブタンク22に貯留されている活性エネルギー硬化型インクの量を検出する検出センサ(不図示)からの出力信号に従い、制御部によって制御される。
【0038】
供給側ポンプ73は、インクタンク60に貯留されている活性エネルギー硬化型インクを、加圧タンク74の側に送液するための駆動源である。供給側ポンプ73の能力は、インク粘度、流路長、流路内径等の諸条件を考慮し、適宜決定される。供給側ポンプ73が駆動すると、インクタンク60から活性エネルギー硬化型インクが流出する。インクタンク60から流出した活性エネルギー硬化型インクは、インク供給流路702を流れ、インク供給流路702の第四位置に設けられた加圧タンク74に流入する。インク供給流路702の第四位置は、供給側切替部72が設けられる第三位置より、インクタンク60の側である。加圧タンク74は、インク供給流路702を流れる活性エネルギー硬化型インクを加圧するためのタンクである。加圧タンク74における活性エネルギー硬化型インクの加圧は、加圧タンク74に接続された加圧機構76によって行われる。具体的に、加圧機構76は、圧縮されたエアを、加圧タンク74の内部に送り込み、加圧タンク74の内部圧力を大気圧より高い状態とし、加圧タンク74に貯留されている活性エネルギー硬化型インクを加圧する。加圧タンク74に貯留され、加圧された活性エネルギー硬化型インクは、加圧タンク74から流出し、再度、インク供給流路702を流れる。即ち、加圧タンク74に流入した活性エネルギー硬化型インクは、加圧タンク74から圧送され、インク供給流路702の第三位置に到達する。第三位置に到達した活性エネルギー硬化型インクは、その後、上述したように、インク供給流路702又はインク循環流路704を流れる。
【0039】
インクトレイ78は、メンテナンス部40において、メンテナンス部40に移動した記録ヘッド20の吐出面に対向するような位置に設けられる。メンテナンス部40に移動した記録ヘッド20のノズルからは活性エネルギー硬化型インクが吐出される。インクトレイ78は、吐出された活性エネルギー硬化型インクを受ける(受容工程)。インクトレイ78の底部の所定の位置には、インク回収流路706が接続される。インク回収流路706には、中継タンク80と、回収側切替部82と、回収側ポンプ84とが設けられている(接続されている)。中継タンク80は、インク回収流路706によって、インクトレイ78と接続される。従って、メンテナンス部40に移動した記録ヘッド20のノズルから吐出され、インクトレイ78に受け容れられた活性エネルギー硬化型インクは、インクトレイ78から流出し、インク回収流路706を流れ、中継タンク80に流入し、中継タンク80に貯留される(受容工程)。中継タンク80は、その内部を大気開放状態にすることができるバルブ(不図示)を備える。受容工程、回収工程及び回収側循環工程において、中継タンク80は、大気開放状態とされる。インクトレイ78及び中継タンク80は、吐出された活性エネルギー硬化型インクを受け容れ、貯留する。即ち、インクトレイ78及び中継タンク80は、回収側貯留部として機能する。
【0040】
インク回収流路706は、回収側貯留部としてのインクトレイ78及び中継タンク80と、インクタンク60とを接続し、中継タンク80(回収側貯留部)に貯留されたインクをインクタンク60に流入させるための流路である。インク回収流路706において、回収側切替部82とインクタンク60との間で、インクタンク60に近い位置に、フィルタを設けるとよい。インク回収流路706を流れる活性エネルギー硬化型インクに含まれる異物を除去し、回収される活性エネルギー硬化型インクを清浄な状態とすることができる。回収側ポンプ84の流入側であって、回収側ポンプ84に近い位置となるインク回収流路706に、ストレーナを設けるとよい。回収側ポンプ84を保護することができる。インク循環流路708は、インク回収流路706の途中の第一位置で、インク回収流路706から分岐し、中継タンク80に接続され、中継タンク80から流出されたインクを、中継タンク80に流入させるための流路である。インク回収流路706からのインク循環流路708の分岐は、第一位置に設けられた回収側切替部82によって行われる。回収側切替部82は、三方弁によって、具体的には、三方電磁弁によって構成される。ただし、回収側切替部82は、3方向に分岐可能な構成であれば、どのような構成であってもよい。回収側切替部82は、活性エネルギー硬化型インクがインク回収流路706を流れてインクタンク60に流入する回収状態とするか、活性エネルギー硬化型インクがインク循環流路708を流れて中継タンク80に流入する回収側循環状態とするかを切り替える(回収側切替工程)。回収側切替部82は、インクタンク60に近くなる位置に設け、回収側切替部82とインクタンク60との間のインク回収流路706の距離を短くするとよい。回収側切替部82は、インクタンク60の側に流れた活性エネルギー硬化型インクが、自重によって流れるようにするため、インクタンク60より高い位置に設けるとよい。
【0041】
回収側切替部82は、例えば、中継タンク80に貯留されている活性エネルギー硬化型インクの量に応じて、回収状態又は回収側循環状態とされる。回収側切替部82の切り替えは、中継タンク80に貯留されている活性エネルギー硬化型インクの量を検出する検出センサ90,92からの出力信号に従い、制御部によって制御される。検出センサ90,92は、中継タンク80に貯留されている活性エネルギー硬化型インクの量(上限量、下限量)を検出することができるセンサであれば、どのようなタイプであってもよい。検出センサ90,92は、例えば、中継タンク80に貯留されている活性エネルギー硬化型インクの液面レベルを検出して、その量を検出する。検出センサ90,92は、例えば、フロートセンサ又はフォトセンサ等によって構成される。中継タンク80の質量を計測し、計測された質量によって、活性エネルギー硬化型インクの量(上限量、下限量)を検出するようにしてもよい。この場合、検出センサ90,92は、質量計といった単一の装置(センサ)で構成される。
【0042】
検出センサ90は、中継タンク80に、活性エネルギー硬化型インクが上限量だけ貯留されているかを検出する。中継タンク80に貯留されている活性エネルギー硬化型インクの液面レベルが上昇し、その量が上限量となった場合、検出センサ90は、オンの状態となり、液面レベルが下降し、上限量より少なくなった場合、オフの状態となる。検出センサ92は、中継タンク80に、活性エネルギー硬化型インクが下限量だけ貯留されているかを検出する。中継タンク80に貯留されている活性エネルギー硬化型インクの液面レベルが上昇し、その量が下限量となった場合、検出センサ92は、オンの状態となり、液面レベルが下降し、下限量より少なくなった場合、オフの状態となる。上限量は、中継タンク80から、活性エネルギー硬化型インクが、漏れ出さない量等を考慮して設定される。下限量は、回収側切替部82が回収側循環状態である場合において、中継タンク80を流出した活性エネルギー硬化型インクが、中継タンク80に流入するまでに通過する全流路内に存在できるインクの量より多い量に設定される。
【0043】
回収側ポンプ84は、第一位置より中継タンク80の側、換言すれば、中継タンク80よりインクタンク60の側となる、インク回収流路706の途中の第二位置に設けられる。回収側ポンプ84は、中継タンク80に貯留されている活性エネルギー硬化型インクを、インクタンク60の側に送液するための駆動源である。回収側ポンプ84は、中継タンク80に貯留されている活性エネルギー硬化型インクを、インク循環流路708を介して中継タンク80の側に送液し、循環させるための駆動源である。回収側ポンプ84の能力は、インク粘度、流路長、流路内径等の諸条件を考慮し、適宜決定される。回収側ポンプ84が駆動すると、中継タンク80から活性エネルギー硬化型インクが流出する。即ち、回収側ポンプ84は、活性エネルギー硬化型インクを回収及び循環させるための送液部として機能する。
【0044】
<インク回収方法のための制御>
インク回収方法のための制御に関し、2つの制御を説明する。以下の説明で参照する図3及び図4と、図6〜図8とにおいて、黒塗りされた部分(検出センサ90,92を示す三角形部分を除く)は、活性エネルギー硬化型インクを示す。ただし、中継タンク80に貯留されている、黒塗りされた活性エネルギー硬化型インクに関し、その量は、上述した下限量等に対応した状態では図示されておらず、簡略化されている。
【0045】
<第一の制御>
インク回収方法のための第一の制御について、図3〜図5を参照して説明する。第一の制御は、画像の記録中、又は、待機中に実行される。第一の制御が実行される場合、活性エネルギー硬化型インクは、回収側に設けられた構成(インク回収流路706、インク循環流路708、インクトレイ78、中継タンク80、回収側切替部82及び回収側ポンプ84)に、存在する。例えば、中継タンク80に貯留された活性エネルギー硬化型インクの量が、図3の上段に示す第一段階のように、上限量未満で下限値より多い場合(検出センサ90:オフ、検出センサ92:オン)、制御部は、回収側ポンプ84を駆動させ、回収側切替部82を回収側循環状態とするように制御する。従って、第一段階では、回収側ポンプ84は駆動し、回収側切替部82は回収側循環状態となる(図5の「第一段階」参照)。活性エネルギー硬化型インクは、中継タンク80から流出し、中継タンク80から第一位置までの範囲のインク回収流路706を流れ、回収側循環状態とされた回収側切替部82をインク循環流路708の側に流れる。回収側切替部82を通過した活性エネルギー硬化型インクは、その後、インク循環流路708を流れ、中継タンク80に流入する(回収側循環工程)。
【0046】
活性エネルギー硬化型インクが、上述したようにして、循環されている第一段階において、例えば、メンテナンス動作が実行されるタイミングになったとする。記録ヘッド20は、メンテナンス部40に移動する。移動後、記録ヘッド20のノズルから、活性エネルギー硬化型インクが吐出され、インクトレイ78に受け容れられる(受容工程)。受け容れられた活性エネルギー硬化型インクは、中継タンク80に流入し(受容工程)、貯留された活性エネルギー硬化型インクは、次第に増加し、図3の下段に示す第二段階のように、上限量に到達する。活性エネルギー硬化型インクの量が上限量となると、第一段階ではオフであった検出センサ90が、オンに切り替わる。制御部は、検出センサ90がオンに切り替わったタイミングで、回収側循環状態とされた回収側切替部82を回収状態とするように制御する。回収側ポンプ84の駆動は、継続される。従って、第二段階では、回収側ポンプ84は駆動し、回収側切替部82は回収状態となる(図5の「第二段階」参照)。メンテナンス部40に移動された記録ヘッド20は、メンテナンス動作が終了した所定のタイミングで、図1に示す位置に戻される。
【0047】
第二段階で、回収側切替部82が、回収状態に切り替えられると、中継タンク80から流出し、中継タンク80から第一位置までの範囲のインク回収流路706を流れていた活性エネルギー硬化型インクは、そのままインク回収流路706を流れ、インクタンク60に流入する(インク回収工程)。これによって、活性エネルギー硬化型インクが、インクタンク60に回収される。上限量だけ中継タンク80に貯留されていた活性エネルギー硬化型インクは、図4の上段に示す第三段階のように、次第に減少する。この減少に伴い、検出センサ90は、オフに切り替わる。第三段階では、回収側ポンプ84及び回収側切替部82は、共に第二段階のままとされる(図5の「第三段階」参照)。
【0048】
上述したようにして、第三段階での回収が継続されると、中継タンク80に貯留されている活性エネルギー硬化型インクは、下限量となり、これを下回ったタイミングで、検出センサ92は、図4の下段に示す第四段階のように、オフに切り替わる。制御部は、検出センサ92がオフに切り替わったタイミングで、回収状態とされた回収側切替部82を回収側循環状態とするように制御する。回収側ポンプ84の駆動は、継続される。従って、第四段階では、回収側ポンプ84は駆動し、回収側切替部82は回収側循環状態となる(図5の「第四段階」参照)。再度、メンテナンス動作が実行されると、中継タンク80に貯留された活性エネルギー硬化型インクは、増加し、下限量となる。その後、制御部は、上述した第一の制御の各段階での制御を、繰り返して実行する。
【0049】
<第二の制御>
インク回収方法のための第二の制御について、図6〜図9を参照して説明する。第二の制御は、インクジェット記録装置1への初回インク導入時に実行される。初回インク導入時とは、例えば、インクジェット記録装置1に、インクタンク60が、新たに搭載されたタイミングのことである。この場合、回収側に設けられた構成には、活性エネルギー硬化型インクは存在しない。インクジェット記録装置1で、画像の記録が開始される等して、メンテナンス動作のタイミングになったとする。記録ヘッド20は、メンテナンス部40に移動する。移動後、記録ヘッド20のノズルから、活性エネルギー硬化型インクが吐出される。吐出された活性エネルギー硬化型インクは、図6の上段に示す第一段階のように、インクトレイ78に受け容れられ、インク回収流路706を中継タンク80の側に流れる(受容工程)。第一段階では、制御部は、回収側ポンプ84を停止させた状態に制御する。換言すれば、制御部は、停止中の回収側ポンプ84を駆動させるような制御を実行しない。制御部は、回収側切替部82が回収状態である場合、回収側切替部82を回収側循環状態とするように制御する。従って、第一段階では、回収側ポンプ84は停止し、回収側切替部82は回収側循環状態となる(図9の「第一段階」参照)。
【0050】
インク回収流路706を中継タンク80の側に流れる活性エネルギー硬化型インクは、図6の下段に示す第二段階のように、中継タンク80に流入し、中継タンク80に貯留される(受容工程)。活性エネルギー硬化型インクが中継タンク80に流入し、下限量となり、検出センサ92がオンに切り替わったタイミングで、制御部は、回収側ポンプ84を駆動させるように制御する。第二段階では、回収側ポンプ84は駆動し、回収側切替部82は回収側循環状態のままとされる(図9の「第二段階」参照)。初回インク導入時においては、回収側循環工程は、未実行である。回収側切替部82が回収側循環状態である場合において、中継タンク80を流出した活性エネルギー硬化型インクが、中継タンク80に流入するまでに通過する全流路内は、十分な活性エネルギー硬化型インクで充填されていない。従って、第二段階で、循環が開始され、中継タンク80から活性エネルギー硬化型インクが流出すると、中継タンク80に貯留された活性エネルギー硬化型インクは、図7の上段に示す第三段階のように、下限量より少なくなる。ただし、下限量は、上述したような値に設定されているため、中継タンク80から活性エネルギー硬化型インクがなくなることはなく、活性エネルギー硬化型インクの流出は継続される。中継タンク80に貯留された活性エネルギー硬化型インクの減少に伴い、検出センサ92は、オフに切り替わる。第三段階では、回収側ポンプ84の駆動と、回収側切替部82の回収側循環状態とは、共に第二段階のままとされる(図9の「第三段階」参照)。
【0051】
その後、メンテナンス動作によって、記録ヘッド20のノズルから、活性エネルギー硬化型インクが吐出され、図7の下段に示す第四段階のように、活性エネルギー硬化型インクが下限量より多くなると、検出センサ92が、オンに切り替わる。制御部は、検出センサ92がオンに切り替わった後も、検出センサ90がオンに切り替わるまで、回収側ポンプ84を駆動させ、回収側切替部82を回収側循環状態とした状態を、継続させる。第四段階では、回収側ポンプ84の駆動と、回収側切替部82の回収側循環状態とは、共に第三段階のままとされる(図9の「第四段階」参照)。活性エネルギー硬化型インクは、中継タンク80から流出し、中継タンク80から第一位置までの範囲のインク回収流路706を流れ、回収側循環状態とされた回収側切替部82をインク循環流路708の側に流れる。回収側切替部82を通過した活性エネルギー硬化型インクは、インク循環流路708を流れ、中継タンク80に流入する(回収側循環工程)。
【0052】
活性エネルギー硬化型インクが、上述したようにして、循環されている第四段階において、メンテナンス動作が実行されると、図8の上段に示す第五段階のように、中継タンク80に貯留された活性エネルギー硬化型インクは、増加し、上限量に到達する。活性エネルギー硬化型インクの量が上限量となると、第四段階ではオフであった検出センサ90は、オンに切り替わる。制御部は、検出センサ90がオンに切り替わったタイミングで、回収側循環状態とされた回収側切替部82を回収状態とするように制御する。回収側ポンプ84の駆動は、継続される。従って、第五段階では、回収側ポンプ84は駆動し、回収側切替部82は回収状態となる(図9の「第五段階」参照)。
【0053】
第五段階で、回収側切替部82が、回収状態に切り替えられると、中継タンク80から流出し、中継タンク80から第一位置までの範囲のインク回収流路706を流れていた活性エネルギー硬化型インクは、そのままインク回収流路706を流れ、インクタンク60に流入する(インク回収工程)。これによって、活性エネルギー硬化型インクが、インクタンク60に回収される。上限量だけ中継タンク80に貯留されていた活性エネルギー硬化型インクは、次第に減少する。この減少に伴い、検出センサ90は、オフに切り替わる。その後、さらに回収が継続されると、中継タンク80に貯留されている活性エネルギー硬化型インクは、下限量となり、これを下回ったタイミングで、検出センサ92は、図8の下段に示す第六段階のように、オフに切り替わる。制御部は、検出センサ92がオフに切り替わったタイミングで、回収状態とされた回収側切替部82を回収側循環状態とするように制御する。回収側ポンプ84の駆動は、継続される。従って、第六段階では、回収側ポンプ84は駆動し、回収側切替部82は回収側循環状態となる(図9の「第六段階」参照)。再度、メンテナンス動作が実行されると、中継タンク80に貯留された活性エネルギー硬化型インクは、増加し、下限量となる。その後、制御部は、図3及び図4に基づき説明した第一の制御の第一段階以降の制御を、繰り返して実行する。
【0054】
<本実施形態による効果>
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0055】
(1)インク回収流路706の第一位置に、回収側切替部82を設け、回収状態と、回収側循環状態とを切り替えることができるようにした。回収側切替部82が回収側循環状態である場合、中継タンク80に貯留された活性エネルギー硬化型インクは、中継タンク80から第一位置までのインク回収流路706と、回収側循環状態とされた回収側切替部82と、インク循環流路708とを流れ、循環される(回収側循環工程)。これによって、回収前の活性エネルギー硬化型インクで、含有成分が沈降することを抑制することが可能となり、沈降が抑制された好適な活性エネルギー硬化型インクを、インクタンク60に流入させることができる。例えば、比重が3.0〜6.0である無機顔料を含む活性エネルギー硬化型インクであっても、無機顔料の沈降を抑制することができる。その結果、中継タンク80に貯留された活性エネルギー硬化型インクにおいて、無機顔料等の含有成分の濃度を一定に保ち、回収された活性エネルギー硬化型インクを、再利用したとしても、記録される画像のプリント品位を好適にすることができる。具体的に、記録面5に記録された画像における所定の同一色について、色差ΔEを、例えば「色差ΔE<2」とすることができる。活性エネルギー硬化型インクを回収することで、高価な活性エネルギー硬化型インクを廃棄することなく有効活用することができる。
【0056】
(2)検出センサ92によって検出される下限量を、回収側切替部82が回収側循環状態である場合において、中継タンク80を流出した活性エネルギー硬化型インクが、中継タンク80に流入するまでに通過する全流路内に存在できるインクの量より多い量とした。そのため、上述した、第二の制御の第三段階において、中継タンク80から活性エネルギー硬化型インクが全て流出し、中継タンク80が空の状態となることを回避することができる。中継タンク80が空となる状態で、回収側ポンプ84を駆動させると、エアの噛み込みが発生する。インクジェット記録装置1では、このようなエアの噛み込みの発生を防止することができる。
【0057】
<変形例>
本実施形態は、次のようにすることもできる。
【0058】
(1)メンテナンス動作において、記録ヘッド20のノズルから吐出されたインクを受け、貯留する回収側貯留部を、インク回収流路706で接続されたインクトレイ78及び中継タンク80で構成することとした。回収側貯留部は、中継タンク80を省略し、図10に示すように、インクトレイ79、単独で構成してもよい。例えば、インクジェット記録装置において、インクトレイを固定して設けることができるような場合に、このような構成を採用するとよい。インクトレイ79は、中継タンク80としての機能を含む。インク循環流路708は、インクトレイ79に接続される。インクトレイ79によれば、記録ヘッド20のノズルから吐出された活性エネルギー硬化型インクは、インクトレイ79で受けられ、インクトレイ79から流出し、インク循環流路708等を流れて、インクトレイ79に流入される。検出センサ90,92は、インクトレイ79に貯留された活性エネルギー硬化型インクの量を検出する。インクトレイ79を採用したインクジェット記録装置によっても、上述した本実施形態と同様の効果を得ることができる。インクジェット記録装置が、インクトレイを、例えば、鉛直方向に上下動させるような移動機構を含むような場合には、上下動に伴う、活性エネルギー硬化型インクの液面変動及びこぼれ落ち等の観点から、インクトレイ78及び中継タンク80を備える構成にするとよい。インクトレイ78及び中継タンク80は、移動機構の有無に関わりなく、好適な循環を実現することができる。中継タンク80は、これを備えないインクジェット記録装置に、所謂、後付けすることもできる。
【0059】
(2)例えば、1回のメンテナンス動作によって、相当量の活性エネルギー硬化型インクが吐出されるようなインクジェット記録装置では、吐出され、インクトレイ78に受け容れられた活性エネルギー硬化型インクを、直ちに、インクタンク60に回収するようにしてもよい。この場合、回収側において、活性エネルギー硬化型インクは循環されないため、インク循環流路708及び回収側切替部82は、省略できる。
【0060】
(3)インク供給流路702に加圧タンク74と加圧機構76とを設け、圧縮されたエアを、加圧タンク74の内部に送り込み、加圧タンク74の内部圧力を大気圧より高い状態とし、加圧タンク74に流入した活性エネルギー硬化型インクを、記録ヘッド20の側に流し、又は、インク循環流路704を介して循環させる構成を例に説明した。加圧タンク74と加圧機構76とを省略し、前述のような活性エネルギー硬化型インクの送液を、例えば供給側ポンプ73によって行うようにしてもよい。さらに、供給側ポンプ73も省略してもよい(図10参照)。この場合、インクタンク60から記録ヘッド20への活性エネルギー硬化型インクの供給は、例えば、加圧機構76のような装置(図10では不図示)で圧縮されたエアをインクタンク60の内部に送り込み、インクタンク60の内部圧力を大気圧より高い状態とし、圧送して行われる。インク回収工程が実行され、活性エネルギー硬化型インクをインクタンク60に流入させる場合、インクタンク60は、大気開放状態とされる。
【0061】
(4)顔料として無機顔料を含む活性エネルギー硬化型インクを例に説明した。この他、画像の記録に用いられる活性エネルギー硬化型インクは、有機顔料を含むものであってもよい。有機顔料は、無機顔料と比較すると比重は小さいが、沈降しないということはなく、無機顔料の場合と同じく沈降が問題となることもある。この他、活性エネルギー硬化型インクとは異なる種類のインクであってもよい。どのようなインクであっても、色剤を含み、沈降の問題は生じ得る。従って、有機顔料を含む活性エネルギー硬化型インク、又は、他の種類のインクにおいても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 インクジェット記録装置、 3 産業資材、 5 記録面
10 搬送部、 12 搬送面
20,20Y,20M,20C,20K 記録ヘッド
30 照射部、 40 メンテナンス部、 50 制御ボックス
60,60Y,60M,60C,60K インクタンク
70,70Y,70M,70C,70K インク流路
702 インク供給流路、 704 インク循環流路
706 インク回収流路、 708 インク循環流路
72 供給側切替部、73 供給側ポンプ、 74 加圧タンク、 76 加圧機構
78,79 インクトレイ、 80 中継タンク、 82 回収側切替部
84 回収側ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出し、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
インクを吐出するノズルが形成された記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給されるインクを貯留する供給側貯留部と、
前記供給側貯留部から前記記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給流路と、
前記記録ヘッドのノズルから吐出されたインクを受け、受け容れられたインクを貯留する回収側貯留部と、
前記回収側貯留部と前記供給側貯留部とを接続し、前記回収側貯留部に貯留されたインクを前記供給側貯留部に流入させるためのインク回収流路と、
前記インク回収流路の途中の第一位置で、前記インク回収流路から分岐し、前記回収側貯留部に接続され、前記回収側貯留部から流出されたインクを、前記回収側貯留部に流入させるためのインク循環流路と、
前記第一位置に設けられ、インクが前記インク回収流路を流れて前記供給側貯留部に流入する回収状態とするか、インクが前記インク循環流路を流れて前記回収側貯留部に流入する循環状態とするか、を切り替える切替部と、
前記第一位置より前記回収側貯留部の側となる、前記インク回収流路の途中の第二位置に設けられ、前記切替部が前記回収状態である場合、前記回収側貯留部に貯留されたインクを、前記供給側貯留部の側に送液し、前記切替部が前記循環状態である場合、前記回収側貯留部に貯留されたインクを、前記回収側貯留部の側に送液するための送液部と、を備える、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記回収側貯留部に貯留されたインクの量を検出する検出部を備え、
前記切替部は、
前記検出部で検出されるインクの量が、上限量となった場合、前記回収状態とされ、
前記検出部で検出されるインクの量が、下限量となった場合、前記循環状態とされる、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記下限量は、前記切替部が前記循環状態である場合において、前記回収側貯留部を流出したインクが、前記回収側貯留部に流入するまでに通過する全流路内に存在できるインクの量より多い量である、請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記回収側貯留部は、
前記記録ヘッドのノズルから吐出されたインクを受けるインクトレイと、
前記インクトレイで受け容れられたインクが流入し、前記インク回収流路を流れて前記供給側貯留部に流入するインクを貯留する中継タンクと、を備え、
前記インク回収流路は、前記インクトレイと、前記中継タンクと、前記供給側貯留部と、を接続し、前記インクトレイから流出するインクを前記中継タンクに流入させ、前記中継タンクから流出するインクを前記供給側貯留部に流入させ、
前記インク循環流路は、前記中継タンクに接続され、前記中継タンクから流出されたインクを、前記中継タンクに流入させる、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記中継タンクに貯留されたインクの量を検出する検出部を備え、
前記切替部は、
前記検出部で検出されるインクの量が、上限量となった場合、前記回収状態とされ、
前記検出部で検出されるインクの量が、下限量となった場合、前記循環状態とされる、請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記下限量は、前記切替部が前記循環状態である場合において、前記中継タンクを流出したインクが、前記中継タンクに流入するまでに通過する全流路内に存在できるインクの量より多い量である、請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
インクは、活性エネルギー硬化型インクであって、
活性エネルギー硬化型インクを吐出し、記録媒体に画像を記録する、請求項1から請求項6の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
インクを吐出し、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
インクを吐出するノズルが形成された記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給されるインクを貯留する供給側貯留部と、
前記供給側貯留部から前記記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給流路と、
前記記録ヘッドのノズルから吐出されたインクを受けるインクトレイと、
前記インクトレイで受け容れられたインクが流入し、流入されたインクを貯留する中継タンクと、
前記インクトレイと、前記中継タンクと、前記供給側貯留部とを接続し、前記インクトレイから流出するインクを前記中継タンクに流入させ、前記中継タンクから流出するインクを前記供給側貯留部に流入させるためのインク回収流路と、
前記中継タンクより前記供給側貯留部の側となる、前記インク回収流路の途中の位置に設けられ、前記中継タンクに貯留されたインクを、前記供給側貯留部の側に送液するための送液部と、を備える、インクジェット記録装置。
【請求項9】
インクを貯留する供給側貯留部から、インク供給流路を流れて記録ヘッドに供給され、前記記録ヘッドに形成されたノズルから吐出されたインクを受け、受け容れられたインクを、回収側貯留部に貯留する受容工程と、
インクが、前記回収側貯留部と前記供給側貯留部とを接続し、前記回収側貯留部に貯留されたインクを前記供給側貯留部に流入させるためのインク回収流路を流れて前記供給側貯留部に流入する回収状態とするか、インクが、前記インク回収流路の途中の第一位置で、前記インク回収流路から分岐し、前記回収側貯留部に接続され、前記回収側貯留部から流出されたインクを、前記回収側貯留部に流入させるためのインク循環流路を流れて前記回収側貯留部に流入する循環状態とするか、を切り替える切替部を、前記回収状態とし、又は、前記循環状態とする切替工程と、
前記切替部が前記回収状態である場合、前記第一位置より前記回収側貯留部の側となる、前記インク回収流路の途中の第二位置に設けられ、前記回収側貯留部に貯留されたインクを送液する送液部によって、前記回収側貯留部から流出されたインクを、前記インク回収流路を介して、前記供給側貯留部に流入させるインク回収工程と、
前記切替部が前記循環状態である場合、前記送液部によって、前記回収側貯留部から流出されたインクを、前記インク循環流路を介して、前記回収側貯留部に流入させるインク循環工程と、を含む、インク回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−71331(P2013−71331A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212488(P2011−212488)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】