説明

インクジェット記録装置及び記録方法

【課題】 インクジェット記録装置を用いて記録した記録画像のインクが記録媒体に強固に定着しない場合があった。
【解決手段】 記録媒体の搬送手段と記録ヘッドを備えるインクジェット記録装置を用いて、搬送手段により前記記録媒体を搬送しながら、テトラエチレングリコールアルキルエーテルを15%以上25%以下含有し浸透溶剤を5%以上10%以下含有し有機溶剤を主溶媒とするインクを記録ヘッドから記録媒体に吐出する。そして、記録ヘッドでの記録領域よりも記録媒体の搬送方向下流側であって、記録媒体の記録面に対向する位置に備えられた加熱手段により記録媒体を加熱する。そして、加熱手段よりも記録媒体の搬送方向下流側に備えられた冷却手段により記録媒体を冷却する。
を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録ヘッドに備えられたノズルからインク滴を吐出させて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置のうち、屋外サイン用途のインクジェット記録装置は、記録素子として圧電素子を使用した記録ヘッドを用い、有機溶剤を主溶媒とするインクを用いるものが一般的である。
【0003】
このようなインクジェット記録装置を用いて記録を行うと、使用するインクによっては、強い臭気を発生させる場合がある。環境に対しての意識が強くなっている昨今、このような臭気を抑えることが強く求められている。
【0004】
インクの臭気を抑えることをひとつの目的として、水性インクを使用する屋外サイン用途のインクジェット記録装置及びUV光を照射することで硬化するインクを使用してインクを記録媒体に定着させるインクジェット記録装置が実用化されている。
【0005】
屋外サイン用途のインクジェット記録装置で主に用いられるのは、記録面に塩化ビニルが用いられ、コーティング剤未塗布である記録媒体である。しかしながら、水性インクを使用するインクジェット記録装置及びUV光を照射することで硬化するインクを使用するインクジェット記録装置では、インクが記録媒体上で十分に濡れ広がらないために記録画像の光沢性が悪く、記録画像がかすれることがある。
【0006】
そこで、記録画像がきれいな溶剤を主溶媒とした溶剤インクであって、かつ、低臭気のインクを使用するインクジェット記録装置が要求されている。例えば、特許文献1は、ジエチレングリコールジアルキルエーテルとテトラエチレングリコールジアルキルエーテルを含有する低臭気のインクジェット用インクを開示している。
【0007】
一方、インクジェット記録装置で記録された記録物をより取り扱いやすくするための様々な技術が開示されている。たとえば、特許文献2は、記録物を乾燥させるため、記録物に熱風を吹きかける熱風乾燥手段を備えたインクジェット記録装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−101153号公報
【特許文献2】特開2007−50555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者等が鋭意検討した結果、特許文献1で開示されているインクは、確かに低臭気であるもののそのインクを使用するインクジェット記録装置によってはインクが記録媒体に強固に定着しない場合があることがわかった。一般的に、有機溶剤を主溶媒とする所謂溶剤インクに関して、インクの臭気を低下するには、臭気の少ない溶剤を多く使用するか、揮発しづらい溶剤を多く使用するかのいずれかである。このため、低臭気のインクは、揮発しづらい溶剤を多く使用する場合が多いため、記録媒体に強固に定着しない場合がある。
【0010】
また、本発明者等が更に鋭意検討した結果、特許文献2で開示されている技術を用いると、使用するインクによっては効果が不十分となる場合があることがわかった。また、記録物の記録面に手で触れた際にインクが手に付かなくなるまでの時間は短くなり記録物の乾燥速度は向上するが、記録面を擦ると記録画像が剥れる場合があり、インクが記録媒体に強固に定着しない場合があることがわかった。
【0011】
そこで本発明は、低臭気の溶剤インクを用いた場合でもこの溶剤インクを記録媒体に強固に定着させることができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
また、低臭気の溶剤インクを用いた場合でもこの溶剤インクを記録媒体に強固に定着させることができる記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための本発明は、記録媒体の搬送手段と記録ヘッドを備え、前記搬送手段により前記記録媒体を搬送しながら、インクを前記記録ヘッドから前記記録媒体に吐出して、記録を行うインクジェット記録装置であって、前記インクは、テトラエチレングリコールアルキルエーテルを15%以上25%以下含有し浸透溶剤を5%以上10%以下含有し有機溶剤を主溶媒とするインクであり、前記インクジェット記録装置は、前記記録ヘッドでの記録領域よりも前記記録媒体の搬送方向下流側であって、前記記録媒体の記録面に対向する位置に備えられた前記記録媒体の加熱手段と、前記加熱手段よりも前記記録媒体の搬送方向下流側に備えられた前記記録媒体の冷却手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、上記の課題を解決するための別の本発明は、記録媒体の搬送手段と記録ヘッドを備えるインクジェット記録装置を用いて行う記録方法であって、前記搬送手段により前記記録媒体を搬送しながら、テトラエチレングリコールアルキルエーテルを15%以上25%以下含有し浸透溶剤を5%以上10%以下含有し有機溶剤を主溶媒とするインクを前記記録ヘッドから前記記録媒体に吐出する工程と、前記記録ヘッドでの記録領域よりも前記記録媒体の搬送方向下流側であって前記記録媒体の記録面に対向する位置に備えられた加熱手段により前記記録媒体を加熱する加熱工程と、前記加熱手段よりも前記記録媒体の搬送方向下流側に備えられた冷却手段により前記記録媒体を冷却する冷却工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低臭気の溶剤インクを用いた場合でもこの溶剤インクを記録媒体に強固に定着させることができるインクジェット記録装置を提供することができる。また、低臭気の溶剤インクを用いた場合でもこの溶剤インクを記録媒体に強固に定着させることができる記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好ましい実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を模式的に示す正面図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置の記録媒体搬送部周辺部の拡大側面図である。
【図3】本発明に好ましい実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を模式的に示すブロック図である。
【図4】本発明のインクジェット記録方法の好ましい実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を模式的に示す正面図である。
【0017】
本実施形態のインクジェット記録装置1は、図1に示すように、記録媒体50を水平に配置して図1の紙面奥行き方向に搬送し、インクジェット方式によって、記録媒体50の表面に記録データに応じた画像や文字などを記録する。
【0018】
インクジェット記録装置1は、記録媒体50を搬送する搬送部40と、記録媒体50に記録する記録部41とを備える。また、記録媒体50の搬送方向と直交する方向に往復走査して記録を行う記録ヘッド9と、記録ヘッド9をクリーニングするクリーニングユニット10とを備える。また、インクジェット記録装置1は、記録データの受信や記録動作の制御を含めた装置全体の制御を行う制御部(不図示)を備える。
【0019】
搬送部40は、図1の紙面奥行き方向に延ばされた略平板状のプラテン2上に、モータ5によって紙面に沿う水平軸回りに回転される複数のピンチローラ3を備える。そして、これらピンチローラ3によって、ピンチローラ3の回転軸と平行な回転軸回りに回転自在に支持されたグリッドローラ4が、紙面奥行き方向に複数配列されている。これらグリッドローラ4は、プラテン2の上方において図1の紙面奥行き方向に延びる水平面に整列され、記録媒体50の搬送路を形成している。
【0020】
記録ヘッド9での記録領域に対応する記録部41よりも記録媒体50の搬送方向下流側には、搬送された記録媒体50の記録面及びプラテン2に対向する位置に温風ファン61が備えられている。なお、温風ファンとは所望の温度の温風を送風可能なファンのことである。また、温風ファン61よりも記録媒体50の搬送方向下流側には、搬送された記録媒体50の記録面に対向する位置に送風用の冷却ファン62が備えられている。なお、冷却ファンとは単に送風のみを行うことが可能なファンのことである。まず、記録部41で記録された記録媒体50の記録画像は、温風ファン61に対して図1の紙面奥側であって温風ファン61に対向する位置まで搬送され、記録面側から温風により加熱される。次に、その記録画像は、冷却ファン62に対して図1の紙面奥側であって冷却ファン62に対向する位置まで搬送され、記録面側から送風により冷却される。なお、温風ファン61の温風の温度は40℃以上60℃以下が好ましい。この温度が40℃未満ではインクを記録媒体に強固に定着させる効果が薄くなる場合があり、この温度が60℃を超えると記録媒体50にダメージを与える場合があるからである。
【0021】
記録部41は、搬送部40およびクリーニングユニット10の上方で、記録媒体50の搬送方向と直交する方向に延在されたキャリッジレール7と、キャリッジレール7に沿って移動可能に設けられた記録ヘッドユニット8とを備える。また、記録ヘッドユニット8をキャリッジレール7上で位置制御および速度制御可能に往復移動させるモータ6を備える。さらに、記録ヘッドユニット8に記録用のインクを供給する着脱可能なインクカートリッジ17を備える。
【0022】
本実施形態では、インクカートリッジ17には、カラー記録を行うための複数色のインクが備えられ、配管(インク流路)としての複数のインクチューブ16を介して、色ごとに、記録ヘッドユニット8に供給できるようになっている。
【0023】
記録ヘッドユニット8は、下面側に、インクの色や記録範囲などに応じて、複数の記録ヘッド9が設けられ、インクチューブ16から供給されるインクは、同色の記録を行う記録ヘッド9に分配して供給される。また、記録ヘッドユニット8には、各記録ヘッド9の温度を適宜の温度範囲に保つための記録ヘッド冷却ファン18が設けられている。
【0024】
なお、記録ヘッド9の詳細は図示しないが、各ノズルにインクを供給するインク室や、圧電素子などを用いた吐出機構が設けられている。記録ヘッド9は該圧電素子などを用いた吐出機構によってインクの吐出及びノズルのインクメニスカスを微振動させる空駆動動作を行うことが可能な構成となっている。また、ノズルは吐出機構の構成や記録画素ピッチなどに応じて適宜の個数及び配列ピッチで設けることができる。例えば、256個などの多数のノズルを配列することができる。本実施例の記録ヘッド9は、記録素子として圧電素子を用いているが、記録素子としてヒータを用いた記録ヘッドであっても良い。
【0025】
モータ6の位置制御、速度制御は、制御部の制御信号に応じて行われ、モータ6は記録動作時には記録ヘッドユニット8を所定速度で記録媒体50上を復移動させる。また、モータ6はクリーニング動作時にはクリーニングユニット10内の所定のクリーニング位置に記録ヘッドユニット8を移動できるようになっている。
【0026】
クリーニングユニット10は、本実施形態では、記録ヘッド9内のインクをノズルから外部に吸引することで記録ヘッド9をクリーニングする吸引クリーニング部14Aと、記録ヘッド面をワイピング処理することで記録ヘッド9をクリーニングするワイプ部14Bとからなる。クリーニングユニット10は、搬送部40の側方かつ記録部41の下方における記録ヘッドユニット8の移動経路上に、搬送部40側からワイプ部14B、吸引クリーニング部14Aの順に配置されている。本実施形態は、これら吸引クリーニング部14A、ワイプ部14Bの上方位置が、所定のクリーニング位置となっている。
【0027】
吸引クリーニング部14Aの概略構成は、キャップ11、キャップ駆動部(不図示)、吸引ポンプ12、ポンプ駆動部(不図示)、大気開放弁(不図示)および大気開放弁駆動部(不図示)からなる。
【0028】
これらのうち、少なくともキャップ11は記録ヘッド9ごとに設けられている。ただし、キャップ駆動部、吸引ポンプ12、大気開放弁および大気開放弁駆動部は、記録ヘッド9ごとに各動作を共通化できる場合には、複数のキャップ11に対して1台設ける構成としてもよい。
【0029】
キャップ駆動部は、キャップ11の上下方向の位置を選択的に切り換えるための上下動を行うものであり、例えば、機械的、電磁的、流体的な適宜の昇降手段からなる。そのため、キャップ駆動部は、モータ6によってキャリッジレール7上を移動されて吸引クリーニング部14Aの上方に位置した状態の記録ヘッドユニット8に対して、キャップ11を上下方向に進退させ、キャップ11が記録ヘッド面を封止する状態と、封止を解除する状態とを切り換えることができるようになっている。
【0030】
吸引ポンプ12は、吸引空間内の空気、インクなどの内容物を吸引して、吸引空間外に排出するためのものであり、適宜構成の流体ポンプ、例えばロータリポンプなどを採用することができる。本実施形態では、ポンプ駆動部により吸引量を可変できる構成としている。また、吸引ポンプ12の吸引量は、必要に応じて多段階に変化できるようにしてもよい。吸引ポンプ12は、吸引口が吸引管に接続され、排出口が排出管に接続されている。排出管の他端は、廃液ボトル15に接続されている。
【0031】
吸引クリーニング部14Aにおいて、キャップ駆動部、大気開放弁駆動部、ポンプ駆動部は、不図示のクリーニング制御部にそれぞれ電気的に接続され、クリーニング制御部からの制御信号により、それぞれの動作が制御されるようになっている。
【0032】
ワイプ部14Bは、周知のワイピング処理を行うものであればどのような構成を有していてもよい。例えば、ワイプ部14Bの上方に移動された記録ヘッド9の記録ヘッド面上でワイプ液を含んだワイピングブレードを相対移動させることで、記録ヘッド面をワイピングする構成を採用することができる。
【0033】
図2は、図1のインクジェット記録装置の記録媒体搬送部周辺部の拡大側面図である。
記録媒体50は、搬送手段としてのピンチローラ3及びグリッドローラ4によって、固定されており、これらのローラの回転運動により、図2の紙面右側のプラテン2上へ搬送される。記録ヘッド9を搭載した記録ヘッドユニット8はプラテン2上を往復運動し、搬送された記録媒体50上に画像形成を行う。
【0034】
上記記録ヘッド9での記録領域よりも記録媒体50の搬送方向下流側であって記録媒体50の記録面と対向する位置に、温風ファン61が備えられている。温風ファン61は、記録媒体50に温風を吹き付けることが可能なように図2の紙面左側に向けて温風を発することが可能な構成となっている。なお、本実施形態においては、記録媒体50の加熱手段として温風ファン61を用いているが、記録媒体50の記録面と対向する位置から記録媒体50を加熱することができるのであれば他の加熱手段でも構わない。
【0035】
上記温風ファン61の記録媒体50の搬送方向下流側であって記録媒体50の記録面と対向する位置に、冷却ファン62が備えられている。冷却ファン62は、記録媒体50に風を吹き付けることが可能なように図2の紙面左側に向けて風を発することが可能な構成となっている。なお、本実施形態においては、記録媒体50の冷却手段として冷却ファン62を用いているが、記録媒体50を冷却することができるのであれば他の冷却手段でも構わない。
【0036】
また、記録媒体50の搬送経路は、記録媒体50がプラテン2上を通過した後斜め下方に向かって進むように、ガイドが設けられている。温風ファン61は冷却ファン62の方向に風が向かわないように配置されている。すなわち、鉛直線方向に対して直角に温風を発するように開口部が配置されている。すなわち、温風は斜め下方に向かって搬送される記録媒体50に対して斜めに吹き付けることになり、温風は上方に向かうので、下流に配置された冷却ファン62による記録媒体50の冷却に対する影響を抑えることができる。
【0037】
図3は、本発明の好ましい実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を模式的に示すブロック図である。
図3において20は制御部であり、制御部20は、演算、制御、判別、設定などの処理動作を実行するCPU25と、該CPU25によって実行すべき制御プログラム等を格納するROM26と、記録データのバッファやCPU25による処理のワークエリア等として用いられるRAM27などを備える。
【0038】
本実施形態のインクジェット記録装置1において、制御部20は、入力部23を介して外部装置から入力した画像データに対応して、記録ヘッド駆動部22を介して、記録ヘッドユニット8に備えられた記録ヘッド9の駆動を制御する。また、制御部20は、画像データの入力に基づいて、温風ファン駆動部63を介して温風ファン61の駆動を制御する。また、制御部20は、画像データの入力に基づいて、冷却ファン駆動部64を介して冷却ファン62の駆動を制御する。
【0039】
また、本実施形態インクジェット記録装置1では、温風ファン61の温風温度、温風ファン61の回転速度及び冷却ファン62の回転速度に関するデータは、不揮発性メモリとしてのEEPROM28に格納される。また、これらのデータは、オペレーションパネル24を介して任意にユーザーが設定可能である。
【0040】
次に、本発明のインクジェット記録装置で好ましく使用されるインクについて説明する。
本発明のインクジェット記録装置で使用されるインクは、テトラエチレングリコールアルキルエーテルを15%以上25%以下含有し浸透溶剤を5%以上10%以下含有し有機溶剤を主溶媒とするインクである。
【0041】
低臭気であり、揮発しづらい溶剤であるテトラエチレングリコールアルキルエーテルを15%以上25%以下含有し、記録媒体にインクを強固に定着させるために必要な浸透溶剤を5%以上10%以下含有する。本発明は、このような低臭気のインクを用いて記録媒体にインクを強固に定着させることを目的としている。
【0042】
テトラエチレングリコールアルキルエーテルの好ましい具体例は、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル及びテトラエチレングリコールモノブチルエーテルである。本発明をより効果的にするために、これらのうちの少なくとも1つを本発明のインクジェット記録装置用のインクとして使用するのが好ましい。
【0043】
浸透溶剤の好ましい具体例は、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノンである。本発明をより効果的にするために、これらのうちの少なくとも1つを本発明のインクジェット記録装置用のインクとして使用するのが好ましい。
【0044】
また、本発明をより効果的にするために、本発明のインクジェット記録装置用のインクは、プロピレンカーボネートを10%以上15%以下含有するインクであることが更に好ましい。
【0045】
なお、その他の溶剤、色材、添加剤などは、特に限定は無く既存のものを使用することができる。
次に、本発明のインクジェット記録装置で好ましく使用される記録媒体について説明する。
【0046】
本発明のインクジェット記録装置で好ましく使用される記録媒体は、記録面に塩化ビニルが用いられ、コーティング剤未塗布の記録媒体である。このような記録媒体を用いたときに本発明は特に効果的である。
【0047】
次に、本発明の記録方法について説明する。
図4は、本発明の記録方法の好ましい実施形態を示すフローチャートである。
【0048】
本実施形態で使用するインクジェット記録装置1は、記録媒体の搬送手段と記録ヘッドを備え、前記搬送手段により前記記録媒体を搬送しながら、インクを前記記録ヘッドから前記記録媒体に吐出して、記録を行うインクジェット記録装置である。また、本実施形態で使用するインクは、テトラエチレングリコールアルキルエーテルを15%以上25%以下含有し浸透溶剤を5%以上10%以下含有し有機溶剤を主溶媒とするインクである。また、本実施形態で使用する記録媒体50は、記録面に塩化ビニルが用いられ、コーティング剤未塗布の記録媒体である。
【0049】
インクジェット記録装置1は、入力部23を介してホストコンピュータから画像データを入力すると、ステップS110で、その画像データに基づいて記録ヘッド9からインクを吐出させて記録媒体50に記録画像を形成する。
【0050】
次に、ステップS120で、制御部20は、温風ファン駆動部63を介して温風ファン61を駆動させ記録媒体を加熱する。本実施形態で使用するインクジェット記録装置1は、記録画像の形成領域が温風ファン61に対向する位置に搬送される前から、温風ファン61が記録媒体を加熱する構成のインクジェット記録装置である。しかし、記録画像の形成領域が温風ファン61に対向する位置に搬送されてから温風ファン61が記録媒体を加熱する構成のインクジェット記録装置を用いることもできる。
【0051】
次に、ステップS130で、制御部20は、冷却ファン駆動部64を介して冷却ファン62を駆動させ記録媒体を冷却する。本実施形態で使用するインクジェット記録装置1は、記録画像の形成領域が冷却ファン62に対向する位置に搬送される前から、冷却ファン62が記録媒体を冷却する構成のインクジェット記録装置である。しかし、記録画像の形成領域が冷却ファン62に対向する位置に搬送されてから冷却ファン62が記録媒体を冷却する構成のインクジェット記録装置を用いることもできる。
【0052】
ステップS130での記録媒体50の冷却工程が終了することで本実施形態の記録方法の処理は終了する。
【0053】
本発明は、特定のインクを用いた場合に、記録媒体に形成された記録画像を一度記録面側から加熱し、更にその記録画像を冷却した場合に、インクが記録媒体に強固に定着することを本発明者らが見出すことにより達成された発明である。本発明のメカニズムは厳密には不明であるが、以下のようなメカニズムであると推測される。特定のインクと特に記録面に塩化ビニルを用いた記録媒体を使用する場合、記録面の裏側からではなく記録面側から記録媒体を加熱することにより、インクの成分と記録媒体の記録面の成分とがより良く混ざり合う。そして、このより良く混ざり合った塗膜を急速に冷却することで、この塗膜を自然乾燥させるよりも、この塗膜がより強固に定着すると推測される。
以下、具体的な実施例により更に詳細に本発明を説明する。
【実施例】
【0054】
以下の実施例は、インクジェット記録装置として、カラープリンタW−64s(セイコーアイ・インフォテック社製)に温風ファンと冷却ファンを備えた改造機を用いた。また、記録媒体として、記録面に塩化ビニルが用いられコーティング剤未塗布の記録媒体であるMD5/GL(メタマーク社製)を用いた。
【0055】
以下の表1に、リファレンス1及びリファレンス2、実施例1から実施例3、並びに、比較例1から比較例4の記録条件を示す。なお、表中のIXは、カラープリンタW−64sの純正インクであるHAPs Free IXインクであり、テトラエチレングリコールアルキルエーテルを15%以上25%以下含有し浸透溶剤を5%以上10%以下含有しプロピレンカーボネートを10%以上15%以下含有する溶剤インクである。また、表中のGXは、カラープリンタW−64sの純正インクであるEG−Outdoor GXII
インクであり、テトラエチレングリコールアルキルエーテル及びプロピレンカーボネートを含有しないインクである。また、表中のメディアヒータは、カラープリンタW−64sに備えられた、記録媒体を記録面の裏側から加熱する手段である。
【0056】
【表1】

【0057】
以下の表2に、実施例1から実施例3、並びに、比較例1から比較例4の記録条件で記録した記録物の定着性評価の結果を示す。なお、この定着性評価は、エタノール濃度70%のエタノール水溶液を作成し、これを綿棒に含ませ、記録物をこの綿棒で擦ることにより評価した。また、夫々の記録物を記録してから1時間後と24時間後に擦り評価を行った。本評価は、リファレンス1及びリファレンス2の条件で記録した記録物の擦り評価結果と比較して、どの程度擦ることによる記録物の画像の削れの程度が少なくなっているかで評価した。なお、インクとしてIXを使用したもののリファレンスはリファレンス1であり、インクとしてGXを使用したもののリファレンスはリファレンス2である。
【0058】
本評価の評価基準は以下の通りである。
○:リファレンスより明らかに画像の削れの程度が少ない。
△:リファレンスよりやや画像の削れの程度が少ない。
×:リファレンスと画像の削れの程度が大差ない。
【0059】
【表2】

【0060】
本実施例の評価結果から本発明のインクジェット記録装置は、インクを記録媒体に強固に定着させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
上記本発明のインクジェット記録装置及び記録方法は、一般的なインクジェット記録装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 記録装置
9 記録ヘッド
20 制御部
61 温風ファン
62 冷却ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の搬送手段と記録ヘッドを備え、前記搬送手段により前記記録媒体を搬送し、インクを前記記録ヘッドから前記記録媒体に吐出して、記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記インクは、
テトラエチレングリコールアルキルエーテルを15%以上25%以下含有し浸透溶剤を5%以上10%以下含有し有機溶剤を主溶媒とするインクであり、
前記インクジェット記録装置は、
前記記録ヘッドでの記録領域よりも前記記録媒体の搬送方向下流側であって、前記記録媒体の記録面に対向する位置に備えられた前記記録媒体の加熱手段と、
前記加熱手段よりも前記記録媒体の搬送方向下流側に備えられた前記記録媒体の冷却手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記テトラエチレングリコールアルキルエーテルは、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル及びテトラエチレングリコールモノブチルエーテルの少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記浸透溶剤は、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノンの少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記インクは、プロピレンカーボネートを10%以上15%以下含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記記録媒体は、記録面に塩化ビニルが用いられ、該記録面がコーティング剤未塗布であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記加熱手段は、温風の温度が40℃以上60℃以下の温風ファンであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記冷却手段は、前記記録媒体の記録面に対向する位置に備えられたファンであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
記録媒体の搬送手段と記録ヘッドを備えるインクジェット記録装置を用いて行う記録方法であって、
前記搬送手段により前記記録媒体を搬送し、テトラエチレングリコールアルキルエーテルを15%以上25%以下含有し浸透溶剤を5%以上10%以下含有し有機溶剤を主溶媒とするインクを前記記録ヘッドから前記記録媒体に吐出する工程と、
前記記録ヘッドでの記録領域よりも前記記録媒体の搬送方向下流側であって前記記録媒体の記録面に対向する位置に備えられた加熱手段により前記記録媒体を加熱する加熱工程と、
前記加熱手段よりも前記記録媒体の搬送方向下流側に備えられた冷却手段により前記記録媒体を冷却する冷却工程と、
を有することを特徴とする記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−107292(P2013−107292A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254291(P2011−254291)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(395003187)株式会社セイコーアイ・インフォテック (173)
【Fターム(参考)】