説明

インクジェット記録装置及び記録方法

【課題】インクジェット記録装置による記録方法において、記録媒体が帯電することにより浮遊したインクミストが上記帯電箇所に付着し、記録媒体を汚すことがあった。
【解決手段】インクジェット記録装置の記録方法であって、記録媒体の帯電量を抑制するため、記録媒体の帯電量を抑える速度で搬送し、記録媒体の搬送部と画像形成部との間に帯電除去装置を備えることで、記録媒体上の帯電を除去することにより、インクミスト付着による記録媒体の汚れを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及び記録方法に関するものである。特に、帯電除去装置を備えた記録装置及び帯電除去装置を制御して記録する記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録ヘッドに備えられたノズルからインク滴を吐出させて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置として、民生用の小型のインクジェット記録装置は勿論、捺染用及び屋外広告用など産業用の大型のインクジェット記録装置も幅広く使用されている。
【0003】
インクジェット記録装置において、記録ヘッドより吐出されたインクの一部は、微細なミストとなり装置内を浮遊することがある。この浮遊したミストが記録媒体上の不所望箇所に着弾し、画質不良を引き起こすことがある。ミストによる画質不良が顕著に発生する原因としては、吐出されたインクミスト及び記録媒体の一部が帯電しており、両者の電気的な相互作用により、記録媒体の帯電箇所にインクミストが引き寄せられ、付着してしまうことが考えられる。
【0004】
このミスト起因の汚れを防止する方法として、特許文献1では、記録ヘッドのノズル部に除電機構として、コロナ放電装置及び金属板を取り付け、吐出されるインクの帯電を除去するというものである。また、記録文献2では、フルライン型インクジェット記録装置において、搭載した記録ヘッド側面にコロナ放電装置を取り付け、吐出されるインクの帯電を除去するものである。
【0005】
これらの従来技術では、小型な記録ヘッドに除電装置を搭載させなければならず、煩雑な機構となってしまう。また、種々の記録媒体に記録する産業用インクジェット記録装置においては、記録媒体の種類や記録媒体の搬送方法によっては、記録媒体の帯電量は高くなるので、記録媒体自体の帯電除去が要求される。
【0006】
しかし、記録媒体の帯電除去の従来技術として、記録媒体搬送部に除電ブラシを備える方法が知られているが、本手法では、記録媒体の除電効果が薄い場合がある。また、記録ヘッドの記録位置に至るまでの間に記録媒体が再帯電してしまう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−27156号公報
【特許文献2】特開2007−144791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記、従来技術では主にインクミストの帯電除去を行っており、記録媒体の帯電除去方法としては、不十分な場合がある。記録媒体の中には、帯電性の高いものもあり、インクミストの帯電除去だけでは、ミスト起因の画質不良や記録媒体の汚れが発生してしまい、種々の記録媒体に記録する産業用インクジェット記録装置においては、帯電性の高い記録媒体に対して、効果的な帯電除去を行う必要がある。
【0009】
記録媒体が帯電する理由として、記録装置に装備されているローラやベルトなどの記録媒体搬送部により記録媒体が搬送される際の前記搬送部と前記記録媒体との間の摩擦が考えられる。よって、記録媒体の帯電を抑制させる方法として、前記記録媒体の帯電を除去する方法と、記録媒体搬送時における帯電量を低下させる方法が考えられ、両者を含む方法が最も効果的である。
【0010】
そこで本発明では、記録媒体の帯電除去機構を有するインクジェット記録方法を提案することを目的とする。
また、上記インクジェット記録方法を実施可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための本発明は、記録データの入力手段と記録媒体の搬送手段と記録ヘッドを備え、前記搬送手段により前記記録媒体を搬送しながら、前記記録データに応じて前記記録ヘッドから前記記録媒体にインクを吐出して、記録を行うインクジェット記録装置の記録方法であって、前記記録データの入力工程と、記録条件に応じて、前記記録ヘッドより前記記録媒体の搬送方向上流側に備えられた帯電除去手段の前記記録媒体を帯電除去する条件を設定する帯電除去条件設定工程と、前記記録条件に応じて、前記搬送手段を制御して、前記記録媒体の記録開始位置及び前記記録開始位置までの搬送速度の少なくとも何れか一方を設定する搬送条件設定工程と、前記帯電除去設定条件工程で設定した条件で前記記録媒体を帯電除去する帯電除去工程と、前記帯電除去工程で帯電除去された記録領域に、前記搬送条件設定工程で設定した搬送条件で、前記記録データに応じて記録する記録工程を有することを特徴とする。
【0012】
また、上記の課題を解決するための別の本発明は、記録媒体の搬送手段と記録ヘッドを備え、前記搬送手段により前記記録媒体を搬送しながら、前記記録ヘッドから前記記録媒体にインクを吐出して、記録を行うインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッドより前記記録媒体の搬送方向上流側に備えられた帯電除去手段と、記録条件に応じて、前記帯電除去手段の前記記録媒体を帯電除去する条件を設定する帯電除去条件設定手段と、前記記録条件に応じて、前記搬送手段を制御して、前記記録媒体の記録開始位置及び前記記録開始位置までの搬送速度の少なくとも何れか一方を設定する搬送条件設定手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、記録ヘッドより記録媒体の搬送方向上流側に備えられた帯電除去手段により記録媒体を帯電除去することで、記録前に記録媒体の帯電を除去する。また、記録媒体の搬送速度を制御することで、記録媒体に発生する静電気を減少させる。これらを組み合わせることにより、初めて、インクミストによる汚れを効果的に防ぐ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好ましい実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を模式的に示す正面図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置の記録媒体搬送部周辺部の拡大側面図である。
【図3】本発明に好ましい実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を模式的に示すブロック図である。
【図4】本発明のインクジェット記録方法の好ましい実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を模式的に示す正面図である。
【0016】
本実施形態のインクジェット記録装置1は、図1に示すように、記録媒体50を水平に配置して図1の紙面奥行き方向に搬送し、インクジェット方式によって、記録媒体50の表面に記録データに応じた画像や文字などを記録する。
【0017】
インクジェット記録装置1は、記録媒体50を保持する記録媒体保持部40と、記録媒体50に記録する記録部41とを備える。また、記録媒体50の搬送方向と直交する方向に往復走査して記録を行う記録ヘッド9と、記録ヘッド9をクリーニングするクリーニングユニット10とを備える。また、インクジェット記録装置1は、記録データの受信や記録動作の制御を含めた装置全体の制御を行う制御部(不図示)を備える。
【0018】
記録媒体保持部40は、図1の紙面奥行き方向に延ばされた略平板状のプラテン2上に、モータ5によって紙面に沿う水平軸回りに回転される複数のピンチローラ3を備える。そして、これらピンチローラ3によって、ピンチローラ3の回転軸と平行な回転軸回りに回転自在に支持されたグリッドローラ4が、紙面奥行き方向に複数配列されている。これらグリッドローラ4は、プラテン2の上方において図1の紙面奥行き方向に延びる水平面に整列され、記録媒体50の搬送路を形成している。
【0019】
記録部41は、記録媒体保持部40およびクリーニングユニット10の上方で、記録媒体50の搬送方向と直交する方向に延在されたキャリッジレール7と、キャリッジレール7に沿って移動可能に設けられた記録ヘッドユニット8とを備える。また、記録ヘッドユニット8をキャリッジレール7上で位置制御および速度制御可能に往復移動させるモータ6を備える。さらに、記録ヘッドユニット8に記録用のインクを供給する着脱可能なインクカートリッジ17を備える。
【0020】
本実施形態では、インクカートリッジ17には、カラー記録を行うための複数色のインクが備えられ、配管としての複数のインクチューブ16を介して、色ごとに、記録ヘッドユニット8に供給できるようになっている。なお、インクカートリッジ17の内部には各々のインクに対応した複数のインクタンクが備えられ、各々のインクは各々対応するインクタンクに収容されている。
【0021】
記録ヘッドユニット8は、下面側に、インクの色や記録範囲などに応じて、複数の記録ヘッド9が設けられ、インクチューブ16から供給されるインクは、同色の記録を行う記録ヘッド9に分配して供給される。また、記録ヘッドユニット8には、各記録ヘッド9の温度を適宜の温度範囲に保つための冷却ファン18が設けられている。
【0022】
なお、記録ヘッド9の詳細は図示しないが、各ノズルにインクを供給するインク室や、圧電素子などを用いた吐出機構が設けられている。記録ヘッド9は該圧電素子などを用いた吐出機構によってインクの吐出及びノズルのインクメニスカスを微振動させる空駆動動作を行うことが可能な構成となっている。インクメニスカスを微振動させることで、ノズル近傍でのインク増粘を抑制し、画質不良を回避している。このインク増粘の影響を前記微振動のみでは排除できない場合もあるので、画像形成範囲外において、インクを吐出させ、ノズル近傍の増粘したインクを排出する予備吐出機構を有している。また、ノズルは吐出機構の構成や記録画素ピッチなどに応じて適宜の個数及び配列ピッチで設けることができる。例えば、256個などの多数のノズルを配列することができる。本実施例の記録ヘッド9は、記録素子として圧電素子を用いているが、記録素子としてヒータを用いた記録ヘッドであっても良い。
【0023】
モータ6の位置制御、速度制御は、制御部の制御信号に応じて行われる。記録動作時には記録ヘッドが記録媒体50上を所定速度で往復移動するように、モータ6が制御される。また、モータ6はクリーニング動作時にはクリーニングユニット10内の所定のクリーニング位置に記録ヘッドユニット8を移動できるようになっている。
【0024】
クリーニングユニット10は、本実施形態では、記録ヘッド9内のインクをノズルから外部に吸引することで記録ヘッド9をクリーニングする吸引クリーニング部14Aと、記録ヘッド面をワイピング処理することで記録ヘッド9をクリーニングするワイプ部14Bとからなる。クリーニングユニット10は、記録媒体保持部40の側方かつ記録部41の下方における記録ヘッドユニット8の移動経路上に、記録媒体保持部40側からワイプ部14B、吸引クリーニング部14Aの順に配置されている。本実施形態は、これら吸引クリーニング部14A、ワイプ部14Bの上方位置が、所定のクリーニング位置となっている。
【0025】
吸引クリーニング部14Aの概略構成は、キャップ11、キャップ駆動部(不図示)、吸引ポンプ12、ポンプ駆動部(不図示)、大気開放弁(不図示)および大気開放弁駆動部(不図示)からなる。
【0026】
これらのうち、少なくともキャップ11は記録ヘッド9ごとに設けられている。ただし、キャップ駆動部、吸引ポンプ12、大気開放弁および大気開放弁駆動部は、記録ヘッド9ごとに各動作を共通化できる場合には、複数のキャップ11に対して1台設ける構成としてもよい。
【0027】
キャップ駆動部は、キャップ11の上下方向の位置を選択的に切り換えるための上下動を行うものであり、例えば、機械的、電磁的、流体的な適宜の昇降手段からなる。そのため、キャップ駆動部は、モータ6によってキャリッジレール7上を移動して吸引クリーニング部14Aの上方に位置した状態の記録ヘッドユニット8に対して、キャップ11を上下方向に進退させ、キャップ11が記録ヘッド面を封止する状態と、封止を解除する状態とを切り換えることができるようになっている。
【0028】
吸引ポンプ12は、吸引空間内の空気、インクなどの内容物を吸引して、吸引空間外に排出するためのものであり、適宜構成の流体ポンプ、例えばロータリポンプなどを採用することができる。インクカートリッジ17から記録ヘッド9までインクを通液させるための通液手段とここでは吸引ポンプ12を用いている。吸引ポンプ12は、吸引口が吸引管に接続され、排出口が排出管に接続されている。排出管の他端は、廃液ボトル15に接続されている。
【0029】
ワイプ部14Bは、周知のワイピング処理を行うものであればどのような構成を有して
いてもよい。例えば、ワイプ部14Bの上方に移動された記録ヘッド9の記録ヘッド面上でワイプ液を含んだワイピングブレードを相対移動させることで、記録ヘッド面をワイピングする構成を採用することができる。
【0030】
図2は、図1のインクジェット記録装置の記録媒体搬送部周辺部の拡大側面図である。
記録媒体50は、搬送手段としてのピンチローラ3及びグリッドローラ4によって、固定されており、これらのローラの回転運動により、図2の紙面右側のプラテン2上へ搬送される。記録ヘッド9を搭載した記録ヘッドユニット8はプラテン2上を往復運動し、搬送された記録媒体50上に画像形成を行う。
【0031】
上記搬送手段と記録ヘッドユニット8との間に、帯電除去機能を有するイオナイザー20が設置されており、搬送時、ピンチローラ3及びグリッドローラ4と記録媒体50との摩擦により発生した記録媒体50上の静電気を除去する。本実施例では、イオナイザー20を搬送手段と記録ヘッドユニット8との間に設置しているが、イオナイザー20を記録ヘッドユニット8に搭載した装置構成としても良い。また、帯電除去装置としてイオナイザーを用いているが、イオナイザーに限らず、他の帯電除去機能を有する装置を用いても良い。
【0032】
図3は、本発明に好ましい実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を模式的に示すブロック図である。
図3において30は制御部であり、制御部30は、演算、制御、判別、設定などの処理動作を実行するCPU31と、該CPU31によって実行すべき制御プログラム等を格納するROM32と、記録データのバッファやCPU31による処理のワークエリア等として用いられるRAM33などを備える。入力部34は、不図示のホストコンピュータから入力した記録データなどを制御部30に出力する。
【0033】
本実施形態のインクジェット記録装置1において、制御部30は、記録ヘッド駆動部37を介して、記録ヘッド9を動作させる。記録ヘッド9が複数搭載されている場合、制御部30及び記録ヘッド駆動部37は、各々の記録ヘッド9を個別に駆動させることができる。
【0034】
また、制御部30は、搬送装備駆動部38を介して、ピンチローラ3を回転させ、記録媒体50を搬送させる。さらに、その搬送速度を変更することも可能である上、搬送速度の履歴を一時的にRAM33に格納しておくこともできる。
さらに、制御部30は、イオナイザー駆動部39を介して、イオナイザー20を動作させることができる。
【0035】
記録ヘッド駆動部37は制御部30から入力された情報に基づいて、各記録ヘッド9のインク吐出もしくは不吐出のタイミングを生成し、記録ヘッド9を駆動させる。インク吐出をさせる場合は、オン波形を生成し、不吐出させる場合には、オフ波形を生成し、各記録ヘッド9へ転送する。
【0036】
オペレーションパネル35は、インクジェット記録装置1の起動、メンテナンス、給紙(記録媒体の供給)、排紙(記録媒体の排出)その他の動作を行うためのスイッチ、及び、表示画面(例えば液晶画面)を備える。ユーザは表示画面を見ながらスイッチを操作することで上記動作を実行することができる。
【0037】
また、オペレーションパネル35上により、インクジェット記録装置1に搭載しているインク種及びインクジェット記録装置1に取り付けられた記録媒体種を設定し、制御部30にその情報を伝達することができる。オペレーションパネル35を介して予め搭載するインク種及び記録媒体種を登録しておき、インクミスト起因の汚れが顕著となるインク種及び記録媒体種が設定された場合、その情報を基に記録媒体の記録開始位置と記録開始位置までの搬送速度を制御部30により設定することができる。また、その情報を基に、イオナイザー20の出力を上げるなど、より強固な帯電対策を講じることができる。
【0038】
湿度計測部36は、インクジェット記録装置1の置かれた湿度の環境条件を計測し、制御部30に伝達する。例えば、インクジェット記録装置1の置かれた環境が静電気の発生しやすい湿度30%以下の低湿であることを検知した場合、その情報を基に記録媒体の記録開始位置と記録開始位置までの搬送速度を設定することができる。また、その情報を基に、イオナイザー20の出力を上げるなど、より強固な帯電対策を講じることができる。
【0039】
図4は、上記制御方法の好ましい実施形態を示すフローチャートである。
まず、ステップS100では、記録データを入力すると、制御部30に入力された情報条件に関する情報に基づき、所定の帯電除去方法を実施する必要があるか否かの判断を行う。本実施形態における記録条件は、インク種、使用する記録媒体種、入力した画像データに基づくインク吐出頻度及びインクジェット記録装置1の置かれた環境湿度である。上記何れかの少なくとも1つの記録条件において、本発明の帯電除去方法の実施が必要であると判定した場合、ステップS110へ進む。上記帯電除去方法の実施が不要であると判定した場合、ステップS160へ進み、通常の記録方法によって画像形成を開始する。別の表現をすると、制御部30は、上記記録条件に応じて、記録媒体の帯電除去条件を設定する。
【0040】
判断項目の1つであるインク種においては、ミストが飛散しやすいインク種を予め設定しておき、この設定されたインク種が搭載されていると判断された場合、ステップS110へ進む。例えば、インクの周波数1kHzにおける交流インピーダンス値が50kΩ以下であるようなインク種は帯電しやすい傾向があり、記録媒体50の帯電除去を行い、インクミスト起因の記録媒体汚れを抑制する必要がある。
【0041】
記録媒体によっては、帯電しやすいものとそうでないものがある。一般的にポリエチレンテレフタレートを材質とした記録媒体は帯電しやすい記録媒体として知られている。しかし、記録媒体の表面処理などにより記録媒体の帯電性は異なるため、帯電しやすいものか否かを一概に判定することは困難である。そのため、経験的に帯電しやすい記録媒体に関しては、オペレーションパネル35を通してインクジェット記録装置1に備えられた不図示のEEPROMなどにその情報を格納させることができる。帯電しやすい記録媒体を使用する場合は、帯電除去方法を講じるように制御部30が判断する。
【0042】
インクジェット記録装置1の置かれた環境湿度によっては、ミストが飛散しやすい場合がある。具体的にはその湿度が低くなるほどミストが飛散しやすい傾向にある。本実施形態では、制御部30は、湿度計測部36が計測した計測値がROM32に格納された所定の湿度以下になると帯電除去方法を講じるよう設定する。
【0043】
また、入力した記録データに基づくインク吐出頻度によっても帯電除去方法を実施する必要があるか否か判定する。記録ヘッド9からのインクの吐出量が多い画像を出力する場合は、インクミストの飛散量も多くなるため、帯電除去方法を実施する必要がある。よって、予め設定した値よりもインク吐出量が多いか否かを制御部30は検知し、上記帯電除去方法を実施するか否かを判断する。
【0044】
上記の判定により、帯電除去方法の実施が必要であると判定されると、ステップS110に進み、制御部30は搬送速度履歴情報を読み出し、ステップS120へと進む。
【0045】
ステップS120では、制御部30は記録媒体50が一定の速度以上で搬送された履歴があり記録媒体50の帯電量が高いか否かを判断する。上記判断により、記録媒体50が高速搬送された履歴がある場合、ステップS130へと進み、記録媒体50が高速搬送された履歴がない場合、ステップS140へと進む。別の表現をすると、制御部30は、記録媒体50が一定の速度以上で搬送された履歴があるか否かに応じて、記録媒体の搬送条件を設定する。
【0046】
ステップS130では、記録媒体50上の予定される記録開始位置の帯電量が高い可能性があるため、画像形成(記録)開始位置及び記録開始位置までの搬送速度を変更する動作を行う。制御部30が搬送装備駆動部38を介して、ピンチローラ3を低速度で回転させ、記録媒体50の帯電量が少なくなる位置まで、予定される記録開始位置を越えて、記録媒体50を低速搬送する。上記工程により、記録媒体50の帯電量が少ない位置からの記録が可能となる。なお、本実施形態では、記録開始位置及び記録開始位置までの搬送速度の両方を変更したが、何れか一方を変更する場合も本発明に含まれる。
ステップS140では、記録媒体50の帯電量は既に少ないため、特別な搬送制御は行わず、通常の記録開始位置まで通常の搬送速度で記録媒体50を搬送する。
【0047】
ステップS130もしくはステップS140を経由した後、ステップS150に進み、画像形成を開始する。この際、記録媒体50上の帯電を除去するため、制御部30はイオナイザー駆動部39を介して、所定の出力でイオナイザー20を動作させながら、画像形成を行う。上記工程により、記録媒体50上の帯電除去工程と並行して、画像形成を行うことができる。なお、本発明は、上記記録条件によってイオナイザー20の出力条件を変更する構成とすることもできる。
ステップS150もしくはステップS160の終了により、本実施形態の記録方法は終了する。
【0048】
なお、本実施形態においては、記録媒体の帯電除去条件を設定する際の記録条件としてインク種、使用する記録媒体種、入力した画像データに基づくインク吐出頻度及びインクジェット記録装置1の置かれた環境湿度を用いた。また、記録媒体の搬送条件を設定する際の記録条件として記録媒体50が一定の速度以上で搬送された履歴の有無を用いた。しかし、本発明は、記録媒体の帯電除去条件を設定する際の記録条件として記録媒体50が一定の速度以上で搬送された履歴の有無を含めてもよい。また、本発明は、記録媒体の搬送条件を設定する際の記録条件としてインク種、使用する記録媒体種、入力した画像データに基づくインク吐出頻度及びインクジェット記録装置1の置かれた環境湿度を含めてもよい。 なお、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート及び紙などの帯電性の高い記録媒体に対して画像形成する場合、従来のインクジェット記録方法ではインクミストによる汚れが顕著であるため、本発明は特に効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
上記本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置は、一般的なインクジェット記録装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 記録装置
2 プラテン
3 ピンチローラ
4 グリッドローラ
8 記録ヘッドユニット
9 記録ヘッド
20 イオナイザー
35 オペレーションパネル
36 湿度計測部
50 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録データの入力手段と記録媒体の搬送手段と記録ヘッドを備え、前記搬送手段により前記記録媒体を搬送しながら、前記記録データに応じて前記記録ヘッドから前記記録媒体にインクを吐出して、記録を行うインクジェット記録装置の記録方法であって、
前記記録データの入力工程と、
記録条件に応じて、前記記録ヘッドより前記記録媒体の搬送方向上流側に備えられた帯電除去手段の前記記録媒体を帯電除去する条件を設定する帯電除去条件設定工程と、
前記記録条件に応じて、前記搬送手段を制御して、前記記録媒体の記録開始位置及び前記記録開始位置までの搬送速度の少なくとも何れか一方を設定する搬送条件設定工程と、
前記帯電除去条件設定工程で設定した条件で前記記録媒体を帯電除去する帯電除去工程と、
前記帯電除去工程で帯電除去された記録領域に、前記搬送条件設定工程で設定した搬送条件で、前記記録データに応じて記録する記録工程を有することを特徴とする記録方法。
【請求項2】
前記記録条件は、前記インクの種類、前記記録媒体の種類、インク吐出頻度、インクジェット記録装置の設置環境の温度及びインクジェット記録装置の設置環境の湿度及び前記記録媒体が一定の速度以上で搬送された履歴の有無の少なくとも何れか1つであることを特徴とする請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
前記インクジェット記録装置は、前記記録媒体の搬送速度の履歴を格納する格納手段を備え、
前記搬送条件設定工程は、前記格納手段に格納された搬送速度のうち予め定められた閾値より速い搬送速度がある場合、予め定められた閾値より遅い搬送速度に設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録方法。
【請求項4】
前記記録媒体は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート及び紙の何れか1つを材質とすることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載された記録方法。
【請求項5】
前記インクは、周波数1kHzにおける交流インピーダンス値が50kΩ以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載された記録方法。
【請求項6】
前記帯電除去は、イオン発生装置であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の記録方法。
【請求項7】
前記イオン発生装置は、イオナイザーであることを特徴とする請求項6に記載の記録方法。
【請求項8】
記録媒体の搬送手段と記録ヘッドを備え、前記搬送手段により前記記録媒体を搬送しながら、前記記録ヘッドから前記記録媒体にインクを吐出して、記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドより前記記録媒体の搬送方向上流側に備えられた帯電除去手段と、
記録条件に応じて、前記帯電除去手段の前記記録媒体を帯電除去する条件を設定する帯電除去条件設定手段と、
前記記録条件に応じて、前記搬送手段を制御して、前記記録媒体の記録開始位置及び前記記録開始位置までの搬送速度の少なくとも何れか一方を設定する搬送条件設定手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−107330(P2013−107330A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255090(P2011−255090)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(395003187)株式会社セイコーアイ・インフォテック (173)
【Fターム(参考)】