説明

インクジェット記録装置及び記録方法

【課題】インクのメニスカスに微振動を与えてノズル近傍でのインクの増粘を防止する手段を備えたインクジェット記録装置を用いて記録ヘッドを駆動する際、与えた微振動によりメニスカスが破壊され、吐出安定性が悪化する場合があった。
【解決手段】インクジェット記録装置の記録方法であって、記録ヘッドの駆動周波数に対応して、メニスカス破壊による吐出安定性悪化が生じない程度の適切な頻度にメニスカスの振動頻度を設定し、良好な吐出安定性を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドのノズル部のインクのメニスカスに微振動を与える手段を備えたインクジェット記録装置及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録ヘッドに備えられたノズルからインク滴を吐出させて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置が知られている。
インクジェット記録装置として、民生用の小型のインクジェット記録装置は勿論、捺染用及び屋外広告用など産業用の大型のインクジェット記録装置も幅広く使用されている。
【0003】
このうち、大型のインクジェット記録装置は幅広い記録媒体に記録するものであり、前記インクジェット記録装置に搭載された記録ヘッドは長い距離を走査するため長時間大気開放される。大気開放により、記録ヘッドのノズル近傍のインクは乾燥し、増粘やノズル目詰まりなどが生じ、吐出不良が発生する場合がある。
【0004】
このインク乾燥による増粘やノズルの目詰まりを解消する方法として、記録動作中、非吐出ノズルに対して、インクが吐出しない程度の微振動をインクメニスカスに与え、乾燥したノズル近傍のインクとヘッド内部のバルク状態のインクを攪拌し、インク増粘を防止する方法が提案されている(特許文献1及び2参照)。
【0005】
また、インクが吐出しない程度の微振動をインクメニスカスに与える技術として、同時に多数のノズルにインクが吐出しない程度の微振動をインクメニスカスに与えることを防止することで瞬間的に大きな電力を消費することを防止する技術が開示されている(特許文献3参照)。
【0006】
一方、近年のインクジェット記録装置は、記録画像の美しさのほか、記録速度の向上も求められている。一般的に記録画像の美しさは記録速度を遅くするほうが向上する。別の表現をすると、美しい記録画像を記録するためには記録ヘッドの駆動周波数を小さくする必要がある。また、記録速度を向上するためには、当然、記録ヘッドの駆動周波数を大きくする必要がある。そのため、記録画像の美しさと記録速度の向上の観点から、複数の記録モードを備え、その記録モードを変更することにより、記録ヘッドの駆動周波数を複数設定できるインクジェット記録装置が増えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−230775号公報
【特許文献2】特開2007−90688号公報
【特許文献3】特開2006−35568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、吐出安定性は、記録ヘッドのノズル近傍のインクの乾燥及び増粘によって悪化するだけでなく、記録ヘッドの駆動周波数を大きくなることで悪化する傾向にあるということがわかった。
【0009】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された技術では、記録ヘッドのノズル近傍でのインク増粘を防止することができるが、メニスカスに与えた微振動の余波がメニスカスを破壊し、吐出安定性に悪影響を及ぼす場合がある。また、記録ヘッドのノズル近傍のインク増粘の程度は、インク物性、インク吐出頻度及び周辺雰囲気(温度及び湿度)などの記録条件により異なるため、各々の条件に適した駆動方法が要求される。さらに、何らかの外乱により、メニスカスが破壊された場合、ノズル抜けが発生したノズルに対して振動動作が常に与えられると、その振動動作より、破壊されたメニスカスが回復することは困難である。
【0010】
また、特許文献3に開示された技術は、吐出させるノズルへの駆動波形の印加に同期して、選択的に吐出させないノズルへインクが吐出しない程度の微振動をインクメニスカスに与える技術である。特許文献3には、記録の際の記録するノズルの駆動周波数の言及が無い。つまり、特許文献3は、記録ヘッドの駆動周波数が大きくなることで悪化する傾向にある吐出安定性を改善する技術ではない。
【0011】
そこで本発明は、記録ヘッドの駆動周波数によらず吐出安定性を向上させる記録方法を提案することを目的とする。
さらに、偶発的にメニスカスが破壊されたことによって発生した吐出不良が、メニスカスの振動頻度を低下することにより、メニスカスが回復することにより吐出不良が回復する記録方法を提案することを目的とする。
さらに、その記録方法を実施可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための本発明の記録方法は、ノズルを備えた記録ヘッドと、前記ノズルの先端にインクのメニスカスを形成し、前記ノズルからインクが吐出されない程度に前記メニスカスを振動させる振動手段を有し、前記メニスカスを形成したインクを前記ノズルから吐出して記録を行うインクジェット記録装置の記録方法であって、前記記録ヘッドの駆動周波数を設定する設定工程と、前記設定工程で設定した前記記録ヘッドの駆動周波数が高くなるほど、前記メニスカスの振動頻度を少なく、前記振動手段を制御して変更する変更工程を少なくとも有することを特徴とする。
【0013】
また、上記の課題を解決するための別の本発明のインクジェット記録装置は、ノズルを備えた記録ヘッドと、前記ノズルの先端にインクのメニスカスを形成し前記ノズルからインクが吐出されない程度に前記メニスカスを振動させる振動手段を有し、前記メニスカスを形成したインクを前記ノズルから吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、記録ヘッドの駆動周波数を設定する設定手段と、前記設定手段で設定した前記記録ヘッドの駆動周波数が高くなるほど、前記メニスカスの振動頻度を少なく、前記振動手段を制御して変更する振動頻度変更手段を少なくとも有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、記録ヘッドに備えられたノズル内のインクのメニスカスを記録ヘッドの駆動周波数に応じた頻度で振動させることで、吐出安定性が向上する。また、上記振動頻度を低下させることで、メニスカスが破壊されたことによって発生した吐出不良を回復することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好ましい実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を模式的に示す正面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を模式的に示すブロック図である。
【図3】本発明のインクジェット記録方法の好ましい実施形態を示すフローチャートである。
【図4】図3に示されたフローチャートにさらにメニスカス微振動頻度を変化させる条件の例を追加したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を模式的に示す正面図である。
本実施形態のインクジェット記録装置1は、図1に示すように、記録媒体50を水平に配置して図1の紙面奥行き方向に搬送し、インクジェット方式によって、記録媒体50の表面に記録データに応じた画像や文字などを記録する。
【0017】
インクジェット記録装置1は、記録媒体50を搬送する搬送部40と、記録媒体50に記録する記録部41とを備える。また、記録媒体50の搬送方向と直交する方向に往復走査して記録を行う記録ヘッド9と、記録ヘッド9をクリーニングするクリーニングユニット10とを備える。また、インクジェット記録装置1は、記録データの受信や記録動作の制御を含めた装置全体の制御を行う制御部(不図示)を備える。
【0018】
搬送部40は、図1の紙面奥行き方向に延ばされた略平板状のプラテン2上に、モータ5によって紙面に沿う水平軸回りに回転される複数のピンチローラ3を備える。そして、これらピンチローラ3によって、ピンチローラ3の回転軸と平行な回転軸回りに回転自在に支持されたグリッドローラ4が、紙面奥行き方向に複数配列されている。これらグリッドローラ4は、プラテン2の上方において図1の紙面奥行き方向に延びる水平面に整列され、記録媒体50の搬送路を形成している。
【0019】
記録部41は、搬送部40およびクリーニングユニット10の上方で、記録媒体50の搬送方向と直交する方向に延在されたキャリッジレール7と、キャリッジレール7に沿って移動可能に設けられた記録ヘッドユニット8とを備える。また、記録ヘッドユニット8をキャリッジレール7上で位置制御および速度制御可能に往復移動させるモータ6を備える。さらに、記録ヘッドユニット8に記録用のインクを供給する着脱可能なインクカートリッジ17を備える。
【0020】
本実施形態では、インクカートリッジ17には、カラー記録を行うための複数色のインクが備えられ、配管としての複数のインクチューブ16を介して、色ごとに、記録ヘッドユニット8に供給できるようになっている。なお、インクカートリッジ17の内部には各々のインクに対応した複数のインクタンクが備えられ、各々のインクは各々対応するインクタンクに収容されている。
【0021】
記録ヘッドユニット8は、下面側に、インクの色や記録範囲などに応じて、複数の記録ヘッド9が設けられ、インクチューブ16から供給されるインクは、同色の記録を行う記録ヘッド9に分配して供給される。また、記録ヘッドユニット8には、各記録ヘッド9の温度を適宜の温度範囲に保つための冷却ファン18が設けられている。
【0022】
なお、記録ヘッド9の詳細は図示しないが、各ノズルにインクを供給するインク室や、圧電素子などを用いた吐出機構が設けられている。記録ヘッド9は該圧電素子などを用いた吐出機構によってインクの吐出及びノズルのインクメニスカスを微振動させる空駆動動作を行うことが可能な構成となっている。本実施形態のインクジェット記録装置1は、インクのメニスカスを振動させることで、ノズル近傍でのインク増粘を抑制し、吐出不良を回避している。また、このインク増粘の影響を前記微振動のみでは排除できない場合もあるので、インクジェット記録装置1は、画像形成範囲外において、インクを吐出させ、ノズル近傍の増粘したインクを排出する予備吐出を行うことが可能な構成となっている。また、ノズルは吐出機構の構成や記録画素ピッチなどに応じて適宜の個数及び配列ピッチで設けることができる。例えば、256個などの多数のノズルを配列することができる。本実施例の記録ヘッド9は、記録素子として圧電素子を用いているが、記録素子としてヒータを用いた記録ヘッドであっても良い。
【0023】
本実施形態のインクジェット記録装置1は、振動手段として記録素子としての圧電素子をインクが吐出しない程度に振動させることでインクメニスカスを微振動させる構成であるが、このような構成に限定されず、記録素子とは別にインクメニスカスを微振動させる振動手段を備えていても良い。
【0024】
モータ6の位置制御、速度制御は、制御部の制御信号に応じて行われる。記録動作時には記録ヘッドが記録媒体50上を所定速度で往復移動するように、モータ6が制御される。また、モータ6はクリーニング動作時にはクリーニングユニット10内の所定のクリーニング位置に記録ヘッドユニット8を移動できるようになっている。
【0025】
クリーニングユニット10は、本実施形態では、記録ヘッド9内のインクをノズルから外部に吸引することで記録ヘッド9をクリーニングする吸引クリーニング部14Aと、記録ヘッド面をワイピング処理することで記録ヘッド9をクリーニングするワイプ部14Bとからなる。クリーニングユニット10は、搬送部40の側方かつ記録部41の下方における記録ヘッドユニット8の移動経路上に、搬送部40側からワイプ部14B、吸引クリーニング部14Aの順に配置されている。本実施形態は、これら吸引クリーニング部14A、ワイプ部14Bの上方位置が、所定のクリーニング位置となっている。
【0026】
吸引クリーニング部14Aの概略構成は、キャップ11、キャップ駆動部(不図示)、吸引ポンプ12、ポンプ駆動部(不図示)、大気開放弁(不図示)および大気開放弁駆動部(不図示)からなる。
【0027】
これらのうち、少なくともキャップ11は記録ヘッド9ごとに設けられている。ただし、キャップ駆動部、吸引ポンプ12、大気開放弁および大気開放弁駆動部は、記録ヘッド9ごとに各動作を共通化できる場合には、複数のキャップ11に対して1台設ける構成としてもよい。
【0028】
キャップ駆動部は、キャップ11の上下方向の位置を選択的に切り換えるための上下動を行うものであり、例えば、機械的、電磁的、流体的な適宜の昇降手段からなる。そのため、キャップ駆動部は、モータ6によってキャリッジレール7上を移動して吸引クリーニング部14Aの上方に位置した状態の記録ヘッドユニット8に対して、キャップ11を上下方向に進退させ、キャップ11が記録ヘッド面を封止する状態と、封止を解除する状態とを切り換えることができるようになっている。
【0029】
吸引ポンプ12は、吸引空間内の空気、インクなどの内容物を吸引して、吸引空間外に排出するためのものであり、適宜構成の流体ポンプ、例えばロータリポンプなどを採用することができる。インクカートリッジ17から記録ヘッド9までインクを通液させるための通液手段とここでは吸引ポンプ12を用いている。吸引ポンプ12は、吸引口が吸引管に接続され、排出口が排出管に接続されている。排出管の他端は、廃液ボトル15に接続されている。
【0030】
ワイプ部14Bは、周知のワイピング処理を行うものであればどのような構成を有して
いてもよい。例えば、ワイプ部14Bの上方に移動された記録ヘッド9の記録ヘッド面上でワイプ液を含んだワイピングブレードを相対移動させることで、記録ヘッド面をワイピングする構成を採用することができる。
【0031】
図2は、本発明の好ましい実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を模式的に示すブロック図である。
図2において20は制御部であり、制御部20は、演算、制御、判別、設定などの処理動作を実行するCPU24と、該CPU24によって実行すべき制御プログラム等を格納するROM25と、記録データのバッファやCPU24による処理のワークエリア等として用いられるRAM26などを備える。入力部21は、不図示のホストコンピュータから入力した記録データなどを制御部20に出力する。
【0032】
本実施形態のインクジェット記録装置1において、制御部20は、記録ヘッド駆動部27を介して、記録ヘッド9を動作させる。記録ヘッド9が複数搭載されている場合、制御部20及び記録ヘッド駆動部27は、各々の記録ヘッド9を個別に駆動させることができる。
【0033】
記録ヘッド駆動部27は制御部20から入力された情報に基づいて、各記録ヘッド9のインク吐出もしくは不吐出のタイミングを生成し、記録ヘッド9を駆動させる。インク吐出をさせる場合は、オン波形を生成し、不吐出させる場合には、オフ波形を生成し、各記録ヘッド9へ転送する。また、これら各々の波形とは別に、制御部20から入力された情報に基づいて、インクを吐出させない程度にインクメニスカスを微振動させる波形を生成することができる。
【0034】
また、記録ヘッド9は、記録速度と吐出安定性の観点から、10kHz以上30kHz以下の周波数で駆動されるのが好ましく、メニスカス振動頻度の変更範囲が50Hz以上30kHz以下であることが好ましい。
【0035】
各々の記録ヘッド9からのインク吐出頻度が高い画像の形成中では、制御部20はメニスカス微振動の頻度を減らすよう記録ヘッド駆動部27を介して記録ヘッド9を制御することができる。逆に、インク吐出頻度の低い画像の形成中では、制御部20はメニスカス微振動の頻度を増やすよう記録ヘッド駆動部27を介して記録ヘッド9を制御することもできる。制御部20によるこの制御方法により、インク吐出頻度の高い画像を形成する際は、インク増粘の影響が少ないため、メニスカス微振動頻度が低下し、吐出安定性向上に効果的となる。逆に、インク吐出量の少ない画像を形成する際は、高い頻度でメニスカス微振動が行われ、インク増粘を抑制することができる。
【0036】
オペレーションパネル22は、インクジェット記録装置1の起動、メンテナンス、給紙(記録媒体の供給)、排紙(記録媒体の排出)その他の動作を行うためのスイッチ、及び、表示画面(例えば液晶画面)を備える。ユーザは表示画面を見ながらスイッチを操作することで上記動作を実行することができる。
【0037】
また、ユーザはオペレーションパネル22上で、インクジェット記録装置1が備える複数の記録モードを設定することにより、記録ヘッド1の駆動周波数を設定できる。設定される情報は制御部20に伝達される。本実施形態のインクジェット記録装置1は、記録モードとして、高速モード、標準モード及び高画質モードを有しており、夫々、20kHz、15kHz及び10kHzの駆動周波数で記録ヘッド1を駆動する。制御部20は、オペレーションパネル22上で設定された記録モードに対応した駆動周波数で記録ヘッド9を駆動するよう記録ヘッド駆動部27を介して記録ヘッド9を制御する。
【0038】
また、ユーザはオペレーションパネル22上により、インクジェット記録装置1に搭載しているインク種を設定し、制御部20にその情報を伝達することができる。制御部20は設定したインク種に応じて、予め設定している駆動方法に適宜切り替えて、記録ヘッド駆動部27を介して、記録ヘッド9を駆動させることができる。
【0039】
例えば、不揮発性溶剤を多く含む、揮発速度の低いインク種に対しては、ノズル近傍でのインク増粘の影響が小さいため、顕著な増粘が表れない程度にメニスカス微振動頻度を低下させ、吐出安定性を向上させることができる。逆に、揮発性溶剤や水を多く含む、揮発性の高いインク種に対しては、ノズル近傍でのインク増粘が顕著であるため、メニスカス微振動頻度を高めて、インク増粘の影響を抑制することができる。
【0040】
温度・湿度計測部23は、インクジェット記録装置の置かれた温度及び湿度の環境条件を計測し、制御部20に伝達する。制御部20は、伝達された環境条件に適した駆動方法で、記録ヘッド駆動部27を介して、記録ヘッド9を駆動させることができる。
【0041】
例えば、高温低湿のようなインクの揮発速度が上昇するような環境条件下においては、ノズル近傍でのインク増粘の影響が大きいため、制御部20はメニスカス微振動頻度を高めて、インク増粘の影響を抑制することができる。逆に、低温高湿のようなインク揮発速度が低下するような環境条件下においては、ノズル近傍でのインク増粘の影響が小さいため、制御部20はメニスカス微振動頻度を下げて、吐出安定性が向上するように記録ヘッド9を駆動させることができる。
【0042】
図3は、上記制御方法の好ましい実施形態を示すフローチャートである。
まず、ステップS100で、インクジェット記録装置1は外部のホストコンピュータから入力部21を介して記録データを入力する。
【0043】
次にステップS110では、制御部20は、オペレーションパネル22を介してユーザにより設定された記録モードが高速モード、標準モード及び高画質モードのいずれかを判断する。なお、高速モード、標準モード及び高画質モードは、夫々、20kHz、15kHz及び10kHzの駆動周波数で記録ヘッド1を駆動する。その後、制御部20が高速モードと判断した場合、ステップS120に進み、制御部20は、所定のメニスカス微振動頻度からメニスカス微振動頻度を下げる。制御部20が標準モードと判断した場合、ステップS130に進み、制御部20は、所定のメニスカス微振動頻度を維持する。制御部20が高画質モードと判断した場合、ステップS140に進み、制御部20は、所定のメニスカス微振動頻度からメニスカス微振動頻度を下げる。
【0044】
次に、ステップS120乃至ステップS140の何れか1つのステップの後、ステップS190に進み、制御部20は、外部ホストコンピュータから入力した記録データが終了したのか否かを判断する。ここで、記録データが終了していれば記録動作を終了し、記録データが終了していなければ、ステップS110に戻り、ステップS110からステップS190までの処理を記録データが終了するまで繰り返す。
【0045】
図4は、図3で示される記録方法の実施形態に対して、さらに記録条件に応じてメニスカス微振動頻度を変化させる際の好ましい実施形態を示すフローチャートである。
外部のホストコンピュータから記録データを入力し、記録モードに応じて、メニスカス微振動頻度を決定する工程は、図3のステップS100からステップS140までの流れと共通であるため、詳細な説明は省略する。
【0046】
本実施形態では、図3のステップS120乃至ステップS140の何れか1つのステップの後、図4のステップS150に進み、記録条件に応じたメニスカス微振動頻度の設定を行う。具体的な記録条件としては、インクの種類、インクの吐出頻度、インクジェット記録装置が設置された環境温度及びインクジェット記録装置が設置された環境湿度である。本実施形態は、上記記録条件のうちインクの吐出頻度に応じてメニスカス微振動頻度を変化させるが、本発明は、上記記録条件のうちの他の何れか1つを用いてもよいし、上記記録条件のうち複数を用いてもよい。
【0047】
インクの吐出頻度に応じてメニスカス微振動頻度を変更する際は、ステップS150において、制御部20が記録時の記録ヘッドのインクの吐出頻度を検知する。その吐出頻度が予め設定している所定の上限値よりも高い場合は、ステップS160へ進み、メニスカス微振動頻度を下げる。逆に予め設定している所定の下限値よりも低い場合は、ステップS180へ進み、メニスカス微振動頻度を上げる。上記所定の下限値と上限値の範囲内の吐出頻度である場合は、ステップS170へ進み、メニスカス微振動頻度を維持する。
【0048】
なお、例えばインクの種類に応じてメニスカス微振動頻度を変更する実施形態とする場合は、記録装置1に搭載されているインクの種類がオペレーションパネル22によって入力される。そのインクの種類が増粘の影響の少ないインクであれば、ステップS160に対応するステップでメニスカス微振動頻度を下げる。逆に増粘の影響の大きいインクであれば、ステップS180に対応するステップでメニスカス微振動速度を上げる。上記、どちらでもないようなインクであれば、ステップS170に対応するステップでメニスカス微振動頻度を維持する。
【0049】
インクジェット記録装置が設置された温度環境及びインクジェット記録装置が設置された湿度環境に応じて、メニスカス微振動頻度を変更する実施形態とする場合は、ステップS150に対応するステップで、温度・湿度計測部23が温度及び湿度を計測し、制御部20に伝達する。上記制御部20は伝達された温度及び湿度の環境条件が、予め設定していた乾燥の影響が小さい低温・高湿条件であれば、ステップS160に対応するステップで、メニスカス微振動頻度を下げる。予め設定していた乾燥の影響の大きい高温・低湿条件であれば、ステップS180に対応するステップで、メニスカス微振動頻度を上げる。上記のどちらでもない温度・湿度環境条件であれば、ステップS170に対応するステップで、メニスカス微振動頻度を維持する。また、検知する環境条件として温度及び湿度のいずれか1つでもよい。
【0050】
上記記録条件に応じたメニスカス微振動頻度の変更を行った後、図3のステップS190へ進み、記録終了まで記録を継続する。なお、本発明でインクジェット記録装置に搭載するインクは、顔料、バインダー樹脂及び溶剤溶媒を少なくとも含む溶剤系インクであり、インクの水分量は5%以下であるインクであることが好ましい。これは、揮発性の高い水系インクに対して、溶剤系インクはノズル近傍でのインク増粘の影響が小さいため、設定できるメニスカス微振動頻度が幅広く、より効果的であるためである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
上記本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置は、一般的なインクジェット記録装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 記録装置
8 記録ヘッドユニット
9 記録ヘッド
20 制御部
21 入力部
22 オペレーションパネル
23 温度・湿度計測部
27 記録ヘッド駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを備えた記録ヘッドと、前記ノズルの先端にインクのメニスカスを形成し、前記ノズルからインクが吐出されない程度に前記メニスカスを振動させる振動手段を有し、前記メニスカスを形成したインクを前記ノズルから吐出して記録を行うインクジェット記録装置の記録方法であって、
前記記録ヘッドの駆動周波数を設定する設定工程と、
前記設定工程で設定した前記記録ヘッドの駆動周波数が高くなるほど、前記メニスカスの振動頻度を少なく、前記振動手段を制御して変更する変更工程を少なくとも有する記録方法。
【請求項2】
前記記録方法は、
予め定められた記録条件を検知する検知工程を更に有し、
前記変更工程は、
さらに、前記記録条件に基づいて前記メニスカスの振動頻度を変更することを特徴とする請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
前記記録条件は、前記インクの種類、前記インクの吐出頻度、前記インクジェット記録装置が設置された環境温度及び前記インクジェット記録装置が設置された環境湿度の少なくとも何れか1つであることを特徴とする請求項2に記載の記録方法。
【請求項4】
前記記録ヘッドの駆動周波数が10kHz以上30kHz以下であり、前記メニスカスの振動頻度の変更範囲が50Hz以上30kHz以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の記録方法。
【請求項5】
前記インクは、顔料、バインダー樹脂及び溶剤溶媒を少なくとも含み、前記インクの水分量は5%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の記録方法。
【請求項6】
ノズルを備えた記録ヘッドと、前記ノズルの先端にインクのメニスカスを形成し前記ノズルからインクが吐出されない程度に前記メニスカスを振動させる振動手段を有し、前記メニスカスを形成したインクを前記ノズルから吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドの駆動周波数を設定する設定手段と、
前記設定手段で設定した前記記録ヘッドの駆動周波数が高くなるほど、前記メニスカスの振動頻度を少なく、前記振動手段を制御して変更する振動頻度変更手段を少なくとも有するインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−111869(P2013−111869A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260702(P2011−260702)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(395003187)株式会社セイコーアイ・インフォテック (173)
【Fターム(参考)】