説明

インクジェット記録装置

【課題】 キャリッジへの記録カートリッジの装着位置決めを確実に行う。
【解決手段】 記録カートリッジ交換ステーションに記録カートリッジ挿入ガイドを設け前記装着ガイドで横方向(走査方向)の位置をガイドしながら装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置に関し、詳しくは記録媒体に沿って移動可能なキャリッジに着脱可能に搭載された記録手段からインクを吐出して記録を行なうインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータやデジタルカメラなどの普及によって画像情報を手軽に扱えるようになり、その出力用に手軽な記録装置の需要が高まっている。記録装置で用いられる記録方式の中に、比較的小型、安価かつ高精細な記録を可能とする方式として知られるインクジェット記録方式がある。
【0003】
インクジェット記録方式を用いた記録装置において、数十個から数百個のインク吐出口を有するインクジェットヘッド(カートリッジ)を装着したキャリッジ(CR)は、キャリッジ駆動モータの駆動力を伝達する駆動ベルトの一部と連結されて移動可能に構成されている。
【0004】
これにより、インクジェットカートリッジは、吐出面に対向するよう配置されたプラテンに沿って移動でき、この移動の間にこのプラテン上に給送される被記録媒体の全幅にわたって往復運動(走査)し記録を行なうことができる。被記録媒体は、キャリッジの上記走査毎に用紙搬送手段により、吐出口のピッチに応じて定められる距離を搬送される。以上の走査および被記録媒体の搬送を繰り返すことにより、被記録媒体全面に記録がなされる。
【0005】
キャリッジに着脱可能に搭載された記録手段(記録ヘッド)を有するインクジェット記録装置においては、記録手段としてのヘッドカートリッジ内のインクを使い切った時あるいは該記録手段が故障した時に、ユーザーが新しい記録ヘッドと交換することにより簡単に記録可能状態に復帰できるようにしたものがある。また、近年の高機能化が進んだインクジェット記録装置においては、常備型の記録ヘッド(ヘッドカートリッジ等)をフォトカートリッジ等のオプションヘッドと交換することにより、写真調のフォト画像等の出力(記録)を可能に構成したインクジェット記録装置も普及してきている。
【0006】
従来のキャリッジ構成においては、記録ヘッドと記録装置本体との電気的な結合を行なうために、記録ヘッド側にレジストを行っていない導体露出部を有する基板(ヘッド基板)もしくはFPCを設け、記録ヘッドを搭載するためのキャリッジには該記録ヘッドの導体露出部と電気的な結合を行なうための圧接コネクタを設ける場合が多い。この圧接コネクタは、通常、金属にメッキを施し、該金属の弾性変形を用いて記録ヘッドの導体露出部に圧接されるものである。さらに、前記圧接コネクタはキャリッジ上に搭載された基板(キャリッジ基板)に半田付けされており、さらに、該キャリッジ上の基板はFFCもしくはFPCなどを介して装置本体側の回路基板(制御回路)との電気的に結合されている。
【0007】
ユーザーが記録ヘッドを交換する場合において、ヘッドをキャリッジに位置決めする方法について以下開示文献にて従来の技術を説明する。
【0008】
特許文献1に開示される技術として被記録媒体に画像を形成する記録ヘッドを着脱自在に保持する保持手段と、記録ヘッドを保持手段に装着する際に記録ヘッドを保持手段の所定の位置に位置決めするための位置決め手段とを有する記録装置において、位置決め手段が、記録ヘッドの1方向の位置を規制する第1の嵌合手段と、記録ヘッドの2方向の位置を規制する第2の嵌合手段とを有し、記録ヘッドを保持手段に装着する際に、第2の嵌合手段を第1の嵌合手段に先立って嵌合させる規制手段を有する技術がある。
【特許文献1】特開平07−251547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら従来の技術では.レバー操作等が必要でヘッド装着性が簡便ではないという問題があった。またレバーレスでの装着を行なう場合ユーザーがキャリッジのガイド面にガイドさせながら装着するため、装着位置決めが不安定になりやすかった。特にシリアル型の記録装置においてはキャリッジの走査方向に、キャリッジが移動しやすいために、位置決めが不安定になりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の特徴的な手段を用いる記録装置を適用することにより前述した課題を解決するものである。
【0011】
(手段1)
走査移動可能なキャリッジと、前記キャリッジを走査駆動する駆動手段と、前記キャリッジに着脱可能な記録カートリッジと、前記カートリッジと前記キャリッジの走査方向の位置決めを行なうために前記キャリッジに設けられた位置決め部と、前記カートリッジ着脱ガイドとを有する記録装置において、前記記録着脱ガイドは前記記録カートリッジの挿入案内するガイド部位を設け、前記カートリッジを前記キャリッジに挿入する際、前記位置決め方向に押し付けられるように構成し、前記カートリッジの挿入力で前記キャリッジを走査方向に移動させるようにしたこと。
【0012】
(手段2)
走査移動可能なキャリッジと、前記キャリッジを走査駆動する駆動手段と、前記キャリッジに着脱可能な記録カートリッジと、前記カートリッジと前記キャリッジの走査方向の位置決めを行なうために前記キャリッジに設けられた位置決め部と、前記キャリッジに前記キャリッジに設けられた位置決め部へ押圧するための押圧手段と、前記カートリッジの交換ステーションを前記キャリッジの走査範囲に設け、前記交換ステーションに設けられた前記カートリッジ着脱ガイドとを有する記録装置において、前記記録着脱ガイドは前記記録カートリッジの挿入案内するガイド部位を設け、前記キャリッジの交換ステーションでの停止時に発生する走査方向への停止保持制御による走査方向の保持力を前記押圧手段の押圧力より小さくし、前記カートリッジの挿入力で前記キャリッジを走査方向に移動させるようにしたこと。
【0013】
(手段3)
走査移動可能なキャリッジと、前記キャリッジを走査駆動する駆動手段と、前記キャリッジに着脱可能な記録カートリッジと、前記カートリッジと前記キャリッジの走査方向の位置決めを行なうために前記キャリッジに設けられた位置決め部と、前記カートリッジの交換ステーションを前記キャリッジの走査範囲に設け、前記交換ステーションに設けられた前記カートリッジ着脱ガイドとを有する記録装置において、前記記録着脱ガイドは前記記録カートリッジの挿入案内するガイド部位を設け、前記キャリッジの交換ステーションで発生する停止保持制御による走査方向への保持力を前記押圧手段のオウ圧力より弱くしたこと。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複雑な機構を用いることなくキャリッジへカートリッジの装着を高精度に行なうことが可能になり、電気的な接触を防止することや、色ずれ、罫線ズレなどキャリッジへのカートリッジの取り付けがずれることによる障害が防止可能になる
上述したように、本発明によれば、安価な構成で使い勝手に優れた着脱可能な記録カートリッジを用いるインクジェット記録装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一又は対応した部分を示すものである。
【0016】
図11は本発明の本発明の実施の形態に係るシート搬送装置を備えた記録装置の外観斜視図であり、図1は本発明の記録装置の内部構成を示す模式的斜視図であり、記録装置がインクを吐出して被記録媒体に記録を行なうインクジェット記録装置である場合を示す。
【0017】
本実施例に係る記録装置は、大きく分けて、給紙部37、被記録媒体搬送部(用紙搬送部)20、記録部ヘッド200、記録ヘッド(記録手段)メインテナンス部36から構成されている。ホスト装置(不図示)から記録データが送られ、制御基板上の記録装置制御部(不図示)にてデータを格納し、同制御部から記録動作開始指令が出されて記録動作が開始する。
【0018】
記録が開始すると、先ず給紙動作が行われる。給紙部はメインASF(Automatic Sheet Feeder) であり、この給紙部は、圧板41上に複数枚積載された被記録媒体(被記録シート)から記録動作ごとに1枚ずつの記録シートを引き出して被記録媒体搬送部(用紙搬送部)に送る自動給紙部で構成されている。給紙動作開始でASFモータ46が正方向に回転し、その動力はギア列を経て圧板41を保持しているカムを回転させる。ASFモータ46の回転によってカムが外れると、圧板41は不図示の圧板ばねの作用により給紙ローラ39に向けて付勢される。同時に、給紙ローラ39が被記録媒体(用紙)を搬送する方向に回転するため、積載された被記録媒体の一番上の一枚のみ搬送が開始される。その際、給紙ローラ39と記録シート4との間の摩擦力、並びに記録シート同士の摩擦力の条件により、複数枚の記録シートが同時に送り出されてしまうことがある。
【0019】
その場合には、給紙ローラ39に圧接されかつ記録シート搬送方向と逆方向に所定の戻り回転トルクを有する分離ローラ40が作用し、この分離ローラ40は最も給紙ローラ39側にある記録シート以外の記録シートを元の圧板上へ押し戻す働きをする。また、ASF給紙動作終了時には、カムの動作により分離ローラ40は給紙ローラ39との圧接状態から解除され、所定の距離離間されるが、その際に確実に圧板上の所定位置まで記録シートを押し戻すために、戻し爪43が回転してその役割を果たす。以上のような動作により、記録シートを1枚だけ用紙搬送部へ搬送する。
【0020】
給紙部から搬送された被記録媒体としての記録シート4は、用紙搬送部(被記録媒体搬送部)たる搬送ローラ(紙送りローラ)21とピンチローラ22のニップ部に向けて搬送される。ピンチローラ22の中心は、搬送ローラ21の中心に対して、第1排紙ローラ30に近づく方向の若干のオフセットを持って取り付けられているので、記録シートが挿入される接線方向角度は水平より若干傾いている。よって、用紙先端が的確にニップ部にガイドされるように、ピンチローラホルダ23とガイド部材(通紙ガイド)70により形成される通紙経路で角度を付けて用紙を搬送するようにしている。
【0021】
ASF37によって搬送(送給、給紙)される用紙(記録シート)は、停止状態の搬送ローラ21のニップ部に突き当てられる。この時、所定の通紙経路長よりもやや長い距離分をメインASF37で搬送することにより、給紙ローラ39と搬送ローラ21の間で用紙のループが形成される。このループが真っ直ぐに戻ろうとする力で用紙先端が搬送ローラ21のニップ部に押圧されることにより、用紙先端が搬送ローラ21に倣って平行になり、いわゆるレジストレーション取り動作が完了する。レジストレーション取り動作が完了した後、記録シートが正方向(第1排紙ローラ30に向けて進行していく方向)に移動する方向に、LFモータ(搬送モータ)26の回転(正方向の回転)を開始する。
【0022】
その後、給紙ローラ39は駆動力を切断され、記録シートと連れ回りするようになる。この時点で、記録シートは搬送ローラ21とピンチローラ22のみで搬送されるようになる。記録シートは所定改行量毎に正方向に前進し、プラテン29に設けられたリブに沿って進行する。
【0023】
用紙先端は漸次第1排紙ローラ30及び第1拍車列32のニップ部と、第2排紙ローラ31及び第1拍車列33のニップ部に掛かるが、第1排紙ローラ30と第2排紙ローラ31の周速は搬送ローラ21の周速とほぼ等しく設定され、かつ搬送ローラ21から第1排紙ローラ30及び第2排紙ローラ31はギア列で接続されているので、第1排紙ローラ30及び第2排紙ローラ31は搬送ローラ21と同期して回転することになり、そのため、記録シート4は弛んだり引っ張られたりすることなく搬送される。
【0024】
記録部は、主に記録手段としての記録ヘッド200と、記録ヘッド200を搭載して記録シート搬送方向と交叉(通常直交)する方向に走査(移動)するキャリッジ100とから成る。キャリッジ100は、シャーシ10に固定されたガイドレール14とシャーシ10の一部であるサポートレール15とによって案内支持され、キャリッジモータ17とアイドラプーリ20との間に張架されたキャリッジベルト16を介してキャリッジモータ17の駆動力を伝達することにより、往復移動(走査)される。
【0025】
記録ヘッド200の内部には複数のインク流路が形成されており、インク流路はプラテン29と対向する面(吐出口面)に配された吐出口まで連通している。吐出口列を形成する複数の吐出口のそれぞれの内部にはインク吐出用のアクチュエータ(エネルギー発生手段)が配されている。このアクチュエータとしては、例えば、電気熱変換体(発熱素子)による液体の膜沸騰圧力を利用したものや、ピエゾ素子等の電気機械変換体(電気−圧力変換素子)などが用いられる。
【0026】
記録装置として上記のような記録ヘッド200を用いるインクジェット記録装置においては、記録ヘッド200に、フレキシブルフラットケーブル73を介してヘッドドライバ(不図示)の信号を伝達することで、記録データに応じてインク滴を吐出することが可能である。また、シャーシ10に張架されたコードストリップ18をキャリッジ100に搭載されたCR(キャリッジ100)エンコーダ19によって読み取ることで、適切なタイミングで被記録シートに向けてインク滴を吐出することができる。このようにして、1ライン分の記録が終了すると、前記用紙搬送部(被記録媒体搬送部)により必要量だけ記録シートを搬送(紙送り)する。この動作を繰り返して実施することにより、記録シート全面にわたる記録動作が可能となる。以上が記録装置の概略である。
【0027】
一方、図2は記録手段としての記録ヘッドの斜視図であり、本実施の形態においては、記録手段(記録ヘッド)とインク貯留部(インクタンク)を一体化した交換可能なインクジェットカートリッジ(ヘッドカートリッジ)を用いている。なお、前記記録ヘッドは通常のカラー記録の場合は、記録手段収容部に記録手段としての黒カートリッジ200Aが装着され、記録手段収容部に記録手段としての3色カラーカートリッジ200B(シアン、マゼンタ、イエロー)が使用される。また、写真調のフォトカラーで記録する場合には、前記黒カートリッジの代わりにオプションヘッドとしての不図示のフォトカートリッジ(黒、淡シアン、淡マゼンタ)を用いるとい言ったことも可能である。さらにまた、記録装置をスキャナとして使用する場合には、前記黒カートリッジ200A又は前記3色カラーカートリッジ200Bの代わりにオプションヘッドとしてのスキャナヘッド(不図示)を用いることも可能である。
【0028】
ヘッドカートリッジ200A、200B及びオプションヘッドとしてのフォトカートリッジ(スキャナヘッドを使用する場合はこれもオプションヘッドに含むこともある)は、ほぼ同じ形状寸法を有している。
【0029】
本実施の形態に係る記録ヘッドの代表的形状である200Aを図2に示す。図2に示すように、ヘッドカートリッジ本体部200Aの両側面の下部には位置決め溝202が形成され、該両側面の該位置決め溝202より前方のコンタクト面側の位置にはラフガイド突起203が形成されている。
【0030】
図3は図1中のキャリッジ100に図2の黒カートリッジヘッド200Aならびにカラーカートリッジ200Bが装着された状態を示す模式的斜視図である。図1及び図3において、キャリッジ100はキャリッジモータ17及びキャリッジベルト16等から成る駆動機構により駆動され、前記ガイドレール14に沿って往復動するものであり、このキャリッジ100には両側の側壁103及び中壁104が設けられている。前記キャリッジ100の前記側壁103Lと前記中壁104との間には記録手段としてのヘッドカートリッジの収容部(記録手段収容部)が形成され、前記側壁103Rと前記中壁104との間にもヘッドカートリッジの収容部(記録手段収容部)が形成されている。図1および図3中には、キャリッジ100に常備ヘッドとしての黒カートリッジ200A及び3色カラーカートリッジ200Bが装着された状態が示されている。
【0031】
図4はキャリッジ100ユニットのみを示す模式的斜視図である。図4において、キャリッジ100の中壁104の両面の下部と両側壁103の内面の下部とのそれぞれには肉厚部が設けられており、これらの肉厚部には、記録手段としての各ヘッドカートリッジ200Aおよび200Bの前記位置決め溝202が係合する位置決め突起101が設けられている。また、キャリッジ100の両側壁103および中壁104の比較的下部には、各ヘッドカートリッジ200A、200Bを装着する際に該ヘッドカートリッジを正しい挿入方向に導くように、該ヘッドカートリッジ200A、200Bに設けられた前記ラフガイド突起203を案内するためのガイド溝105が形成されている。また、キャリッジ100には、各ヘッドカートリッジ200A、200Bに設けられた不図示の配線板と接触して電気的接続を取るためのコネクタ120と、各ヘッドカートリッジ200A、200B、の導入及び固定を簡単に行なうために圧縮バネ(ヘッドセットバネ111)にて下方へ押圧されるヘッドセットカム110が設けられている。
【0032】
次に、記録手段としてのヘッドカートリッジ200A(200Bも同じ)をキャリッジ100に着脱する際の動作について説明する。図5は記録手段装着時の状態を示す模式的縦断面図であり、図6、図7は記録手段装着途中の状態を示す模式的縦断面図であり、図8は記録ヘッド200Aがロック固定状態にある時の状態を示す模式的縦断面図である。
【0033】
また、図12は図6の状態の記録装置全体斜視図であり、図10は図12の内部構成の拡大詳細斜視図である。また、図9は図10の部分における、記録手段を除いた状態の斜視図である。
【0034】
先ず、ユーザーはカートリッジ本体部200Aを挟持して、ヘッドカートリッジ200Aのラフガイド突起203を本体前方向のヘッドガイド部材13のガイド溝内13aに挿入する。ラフガイド突起203とヘッドガイド部材13のガイド溝内13aとの係合により、ヘッドカートリッジ200A(ヘッドカートリッジ200Bも同じ)は一定の姿勢を保ちながら矢印A方向へと案内される。そして、図5に示すように、ヘッドカートリッジのラフガイド突起203は、ヘッドガイド部材13のガイド溝13aより若干低い高さに構成されたキャリッジ100上のガイド溝105に当接するようになる。このとき、キャリッジ100のガイド溝105がヘッドガイド部材13のガイド溝13aより低く構成されていることで、ラフガイド突起203がキャリッジ100に干渉したり衝突したりすることはなく、ヘッドカートリッジ200Aの装着動作が阻害されるようなことはない。またこの状態では、ユーザーが手を離してものキャリッジへの進出の姿勢が保持されるように構成されている。すなわちこのとき、ヘッドカートリッジ200Aはラフガイド突起203を中心として回動しようとする。したがって、ヘッドカートリッジ200Aの着脱動作時の姿勢を保持するために、ヘッドカートリッジのインク吐出部201を備えるフェイス面のコンタクト面から遠い後方部がヘッドガイド部材13に当接するように構成されている。
【0035】
さらに引き続いて、ヘッドカートリッジ200Aを矢印A方向へ押し込んでいくと、ユーザーは特別意識することもなく、ヘッドカートリッジ200Aは回動されることによってヘッドセット状態(図8)に位置決め固定されるように構成されている。
【0036】
すなわちヘッドカートリッジ200Aの上部のヘッド押圧部204とヘッドセットカム110が当接すると、図6に示すように、カム面の形状に従って記録ヘッド200Aが時計方向に回動されつつ、ラフガイド突起部203はキャリッジ100の矢印A方向へ進入する。さらにユーザーがヘッドカートリッジ208を矢印A方向へ押し込んでいくと、図7のようにヘッド押圧部204はヘッドセットカム110によって下方へ押し下げるとともに、ラフガイド突起203がガイド溝105に係合されながら下方へ案内されていく。なお、ヘッドカートリッジ200A(200Bも同じ)の横方向へのズレは前記キャリッジ100の両側壁103と、前記中壁104によって規制されるので、前記ラフガイド突起203と前記ガイド溝105との係合が外れることはなく、記録手段(ヘッドカートリッジ)200Aを挿入する際の案内機能を十分に発揮することができる。
【0037】
図7の状態からヘッドカートリッジ200Aを矢印A方向に押し込むと、ヘッドセットバネ111の付勢力によりヘッドセットカム110がヘッド押圧部204に当接し、ヘッドカートリッジ200Aを引き込んでいく。ヘッドセットカム110によってヘッドカートリッジ200Aが完全に引き込まれた位置まで回動されると、図8に示すように位置決め溝202が位置決め突起101の突き当て部に衝当するとともに、カートリッジ本体部200Aの上突き当て部がキャリッジ100の係合部に当接することにより、ヘッドカートリッジ200Aはキャリッジ100に対し安定した状態で装着される。この装着状態では、ヘッドカートリッジ200Aとコネクタ120の電気的接続も完了する。
【0038】
ヘッドカートリッジ200Aとコネクタ120の電気的接続状態を検出することにより、記録装置はヘッドの装着有無を検出することができる。
【0039】
ヘッド装着状態の検出は上述したようにヘッドカートリッジ200Aとコネクタ120の電気的接続で行なう方法以外に専用のセンサーを用いても良い。
【0040】
なお、図8のヘッドカートリッジ200Aが固定された状態では、前記ラフガイド突起203はガイド溝105の拡開部(広いスペース)の中に位置し、移動可能な状態になっており、そのためヘッドカートリッジ200A(200B)を所定位置に固定する動作の妨げとなることはない。
【0041】
一方、ヘッドカートリッジ200A(200B)をキャリッジ100から取り出す場合には、前述の挿入時とは逆に、ヘッドカートリッジ本体200Aを引き出すように操作すればよい。
【0042】
すなわち、まずヘッドカートリッジ200Aを図8中の矢印Cの方向に押下げる。ヘッドカートリッジ200Aを矢印Cの方向に押下げると、ヘッドカートリッジ200A(200B、)のヘッドセットカム110による固定が解除され、図7のような状態となる。図7の状態から、ヘッド手掛凸部205を矢印B方向に引きずり出すと、ヘッドカートリッジ200Aの該位置決め溝202及びキャリッジ100上の位置決め突起101を中心として反時計方向に回動して、最終的には図6のようなラフガイド突起203がキャリッジ100のガイド溝105に係合する位置へ回動案内される。
【0043】
前記ヘッド200Aの着脱においてヘッドを反時計方向に回動させる場合、インクの吐出部201を備えるフェイス面や、カートリッジそのものが干渉して破壊等を生じないように、ヘッドカートリッジが回動するのに十分な空間が形成されている。
【0044】
その後引き続いて、カートリッジ本体部200Aを矢印B方向に引きずり出すことでラフガイド突起203がキャリッジ100のガイド溝部105に沿って本体排紙方向の手前へ抜出される。このとき、ラフガイド突起部203がキャリッジ100上のガイド溝105の先端まで進出すると、本体前面に設けられたヘッドガイド部13のガイド溝部13aがキャリッジ100のガイド溝105部に比べて高く構成されているため、ラフガイド突起203が前期段差のためヘッドガイド部材13のガイド溝部13aと当接する。このとき、ヘッドカートリッジ200Aはラフガイド突起203を中心として回動しようとするが、ヘッドカートリッジ200Aの姿勢を保持するために、ヘッドカートリッジ200Aのインクの出部201を備えるフェイス面のコンタクト面から遠い後方部がヘッドガイド部材13に当接するように構成されている。これにより、ヘッドカートリッジ200Aが落下してしまうといった問題も解消することができ、簡単かつ安価な構成で使い勝手に優れた着脱可能な記録手段としてのヘッドカートリッジ200Aを用いるインクジェット記録装置が提供される。
【0045】
図13を用いてカートリッジ装着時のガイド部材13とキャリッジ100の位置関係を示す。ここで説明したい内容は主にキャリッジ100の走査方向に関するガイド部材13とキャリッジ100の位置関係であるため、記録装置1を上方から眺めた模式図を用いた。カートリッジ交換時は、キャリッジ100をガイド部材13の前方へキャリッジモータ17により駆動し移動する。ここでガイド部材13のガイド溝13aとキャリッジのガイド溝105はそれぞれ13GAPC、13GAPBだけ走査方向にずれた関係に設定してある。この方向はキャリッジ100の位置決め部101とオーバラップするように設定してある。ここで上述したようにヘッドカートリッジ200Aのラフガイド突起203を本体前方向のヘッドガイド部材13のガイド溝内13aに挿入する。ラフガイド突起203とヘッドガイド部材13のガイド溝内13aとの係合により、ヘッドカートリッジ200A(ヘッドカートリッジ200Bも同じ)は一定の姿勢を保ちながら図5の矢印A方向へと案内される。
【0046】
例えば図13右側のカートリッジを装着する場合キャリッジ100に案内されると13TCの斜面部に当接する。このとき斜面13TCによりキャリッジ100は図中R方向に移動する力を受ける。この力はキャリッジモータ17による位置の保持力より若干弱く設定されるようにキャリッジモータ17の保持電力を調整してある。このため結果的にキャリッジ100はL方向に移動される。よってカートリッジは左側のガイド105に常に沿うように案内されキャリッジ位置決め突起101に隙間を生じることなく位置決めされる。
【0047】
同様に図13左側のカートリッジを装着する場合はキャリッジ100が図中R方向に移動され装着が完了する。
【0048】
上述したようにヘッドガイド部材13とキャリッジ100の走査方向の位置を13GAPCあるいは13GAPBのごとく ずらすことにより部品の精度、公差やキャリッジ100の停止位置のばらつきの影響を受けることなく確実にカートリッジの位置決めが可能になった。
【0049】
またヘッドサイドばね113の押圧力を、はキャリッジモータ17による位置の保持力より若干強く設定されるようヘッドサイドばね113の押圧力を設定しても同様の作用が発生する。
【0050】
以上図3〜図8で説明した一形態としてのインクジェット記録装置のキャリッジ100及び記録手段(ヘッドカートリッジ)200A(200B)によれば、ユーザーが特に意識しなくても記録手段の着脱動作によるキャリッジへの位置決めを行なうことができるので、簡単な構成で使い勝手の良い着脱可能な記録手段を備えたインクジェット記録装置が提供される。
【0051】
なお、図3〜図10の実施例では、キャリッジ100に2個の記録手段(記録ヘッド、ヘッドカートリッジ)200A、200Bを装着する場合を例に挙げて説明したが、本発明は、記録ヘッドの数に関わりなく自由に実施できるものであり、1個の記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置の他、異なる色のインクを使用する複数の記録ヘッドを用いるカラー記録用のインクジェット記録装置、あるいは同一色彩で異なる濃度のインクを使用する複数の記録ヘッドを用いる階調記録用のインクジェット記録装置、さらには、これらを組み合わせたインクジェット記録装置の場合にも同様に適用することができ、同様の効果を達成し得るものである。
【0052】
さらに、本発明は、記録手段(記録ヘッド200)とインク貯留部(インクタンク)を一体化した交換可能なインクジェットカートリッジ(ヘッドカートリッジ)を用いる構成、記録手段とインク貯留部を別体にし、その間をインク供給用のチューブ等で接続する構成やキャリッジ上に記録手段とインク貯留部を別体に設けインク貯蔵部のみ交換する方法など、記録手段とインク貯留部の配置構成がどのような場合にも同様に適用することができ、同様の効果が得られるものである。なお、本発明は、インクジェット記録装置の場合、例えば、ピエゾ素子等の電気機械変換体等を用いるインクジェット記録ヘッド200を使用するものにも適用できるが、中でも、熱エネルギーを利用してインクを吐出する方式のインクジェット記録ヘッド200を使用するインクジェット記録装置において優れた効果をもたらすものである。かかる方式によれば、記録(プリント)の高密度化、高精細化が達成できるからである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す模式的斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る記録手段としての記録ヘッドを示す模式的斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るキャリッジ部の記録ヘッドを搭載した状態を示す模式的斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るキャリッジ部の記録ヘッド装着前の状態を示す模式的斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る記録ヘッド装着開始時におけるの状態を示す模式的断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る記録ヘッド装着動作中の第一の状態を示す模式的断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る記録ヘッド装着動作中の第二の状態を示す模式的断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る記録ヘッド装着完了の状態を示す模式的断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る記録ヘッド装着部の状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る記録ヘッド装着部不完全の状態を示す斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る記録装置外観斜視図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る記録ヘッド交換を示す装置外観斜視図である。
【図13】本発明の一実施形態に係るカートリッジ装着時のガイド部材とキャリッジの位置関係を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 記録装置本体(記録ユニット本体)
2 アクセスカバー
5 ホストコンピュータ
4 被記録媒体(記録シート、記録用紙)
10 シャーシ
12 フレキシブルフラットケーブル
13 ヘッドガイド部材
13a ヘッドガイド部材ガイド溝
14 ガイドレール
15 サポートレール
16 キャリッジベルト
17 キャリッジモータ
20 用紙搬送部(紙送り部)
21 搬送ローラ(LFローラ、紙送りローラ)
22 ピンチローラ
23 ピンチローラホルダ
24 ピンチローラばね
25 ピンチローラ軸
26 LFモータ(紙送りモータ、搬送モータ)
27 LFベルト
28 コードホイール
29 プラテン
30 第1排紙ローラ
31 第2排紙ローラ
32 第1拍車列(回転体)
33 第2拍車列(回転体)
35 LFエンコーダ
36 メインテナンスユニット(吐出回復装置)
37 メインASF(自動給紙部)
39 給紙ローラ
40 分離ローラ
41 圧板
44 ASFフラップ
46 ASFモータ
55 ガイドシャフトばね
58 リフトカム軸
66 PEセンサレバー(用紙検知レバー)
67 PEセンサ
68 PEセンサレバーばね
70 通紙ガイド(ガイド部材)
100 キャリッジ
101 キャリッジ位置決め突起
103 キャリッジ外壁
104 キャリッジ内壁
105 キャリッジガイド溝
110 ヘッドセットカム
111 ヘッドセットバネ
113 ヘッドサイドバネ
120 コネクタ
200A 記録ヘッド(黒カートリッジ)
200B 記録ヘッド(カラーカートリッジ)
201 ノズル部
202 位置決め溝
203 ラフガイド突起
204 ヘッド押圧部
205 ヘッド手掛部a
206 ヘッド手掛部b
501 MPU
502 記録へッド制御部
503 キャリッジモータ
504 紙送りモータ
505 アクセスカバーセンサ
506 インターフェイス部
507 RAM
508 ROM
509 モータ制御部
510 キャリッジエンコーダ
511 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査移動可能なキャリッジと、前記キャリッジを走査駆動する駆動手段と、前記キャリッジに着脱可能な記録カートリッジと、前記カートリッジと前記キャリッジの走査方向の位置決めを行なうために前記キャリッジに設けられた位置決め部と、前記カートリッジ着脱ガイドとを有する記録装置において、前記記録着脱ガイドは前記記録カートリッジの挿入案内するガイド部位を設け、前記カートリッジを前記キャリッジに挿入する際、前記位置決め方向に押し付けられるように構成し、前記カートリッジの挿入力で前記キャリッジを走査方向に移動させるようにしたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
走査移動可能なキャリッジと、前記キャリッジを走査駆動する駆動手段と、前記キャリッジに着脱可能な記録カートリッジと、前記カートリッジと前記キャリッジの走査方向の位置決めを行なうために前記キャリッジに設けられた位置決め部と、前記キャリッジに前記キャリッジに設けられた位置決め部へ押圧するための押圧手段と、前記カートリッジの交換ステーションを前記キャリッジの走査範囲に設け、前記交換ステーションに設けられた前記カートリッジ着脱ガイドとを有する記録装置において、前記記録着脱ガイドは前記記録カートリッジの挿入案内するガイド部位を設け、前記キャリッジの交換ステーションでの停止時に発生する走査方向への停止保持制御による走査方向の保持力を前記押圧手段の押圧力より小さくし、前記カートリッジの挿入力で前記キャリッジを走査方向に移動させるようにしたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
走査移動可能なキャリッジと、前記キャリッジを走査駆動する駆動手段と、前記キャリッジに着脱可能な記録カートリッジと、前記カートリッジと前記キャリッジの走査方向の位置決めを行なうために前記キャリッジに設けられた位置決め部と、前記カートリッジの交換ステーションを前記キャリッジの走査範囲に設け、前記交換ステーションに設けられた前記カートリッジ着脱ガイドとを有する記録装置において、前記記録着脱ガイドは前記記録カートリッジの挿入案内するガイド部位を設け、前記キャリッジの交換ステーションで発生する停止保持制御による走査方向への保持力を前記押圧手段のオウ圧力より弱くしたことを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−160560(P2007−160560A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356517(P2005−356517)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】