インクジェット記録装置

【課題】吸引回復機能を具えるインクジェット記録装置において、記録ヘッドからのインクの吸引量を軽減しつつ、記録ヘッドの信頼性を回復する吸引回復を行なう。
【解決手段】インクを吐出するための吐出口が形成された吐出口面を有する記録ヘッドと、吐出口面を覆うキャップと、該キャップ内にポンプにより負圧を生じさせ記録ヘッドからインクを吸引する吸引手段とを具える。そして、吸引手段は、ポンプとキャップとを繋ぐ連通路に設けられた弁を有し、相対的に低い負圧によりインクを吸引した後に、前記弁の切り替えにより相対的に高い負圧によりインクを吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に関し、特に、インクジェット記録ヘッドの吸引回復を行なう構成を備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置は、プリンタ、複写機、ファクシミリ等におけるプリント出力機能を担い、また、コンピュータやワードプロセッサ等を含む複合型電子機器やワークステーションの出力機器として用いられている。記録装置は、画像情報に基づいて、記録媒体、例えば用紙やプラスチック薄板に、画像を記録する。これらの記録装置は、その記録方式によりインクジェット式、ワイヤドット式、サーマル式、レーザビーム式等に分けることができる。
【0003】
インクジェット式の記録装置は、記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出することにより記録を行う。記録ヘッドからインクを吐出する動作を継続していくうちに、記録ヘッドのインク吐出口内のインクの乾燥やインク吐出口やその周囲への異物の付着などにより、正常な記録が行えなくなることがある。また、インクジェット記録装置には、インクを充填したインクカートリッジが記録ヘッドと分離可能なものがある。インクがなくなったときにインクカートリッジのみを交換するタイプの場合、新しいインクカートリッジを取り付けた後に、記録ヘッド内へインクを導入するための処理が必要となる。さらに、インク流路や吐出口等のインクが流れる部分は微小な空間であり、インクタンクからインクノズルにインクが流れる流路や連通部に気泡が留まることがあるため、これらの気泡を取り除く必要がある。
【0004】
このような点から、インクジェット記録装置は、記録ヘッドの吐出口面を覆ったキャップ内に負圧を作用させて、記録ヘッド内のインクを吸引し、インクを強制的に排出させるための吸引回復処理を行う回復機構を備えている。これにより、乾燥したインク、異物、空気などをインクと共に排出させることができ、インクカートリッジを交換したときのインク導入も行うことができる。また、インク流路等の気泡を排出させることができる。さらに、回復処理の一つとして、上記のキャップ内に所定箇所で記録に関与しない吐出(以下、予備吐出ともいう。)を行うことも知られている。このような回復処理では、キャップ内に排出された廃インクを上記の吸引と同じ作用によって収容することが行なわれている。
【0005】
吸引回復処理の負圧発生源として、チューブポンプを用いたものが知られている。このチューブポンプは、チューブをプラスチック部材により外側から規制し、その内側に回転可能であってチューブを押圧するコロを備えた回転軸を配置したものである。そして、回転軸を回転させることによりコロが追従、回転してチューブを押圧しつつ回転する動作により発生する負圧を発生させる。そして、この負圧によりインクジェット記録ヘッドのインク吐出口面(以下、吐出面ともいう。)を減圧して、インク吸引回復を行なう。チューブポンプを用いて吸引回復を行なう場合、インクを吸引しながらキャップ内の負圧を上昇させるため、所望の圧力に減圧するまでに、記録ヘッドから必要以上のインクが排出されることがある。すなわち、吐出口内にインクを充填させるためのインク吸引量は容易に設定することができるが、インク流路中等の気泡を除去するためには、さらにキャップ内の負圧を増す必要が生じ、吐出口内にインクが充填されても、インクをさらに吸引することが必要となる。
【0006】
また、負圧発生源の他の形態としてピストンポンプを用いたものが知られている。例えば、密閉されたシリンダ内にシリンダ内壁と密着し、圧力リークしない状態でピストンを設ける。そして、ピストンを移動させる事によりシリンダ内を減圧する。その後、ピストンがインクジェット記録ヘッドの吐出口面に連通する穴を通過した時点でシリンダ内の負圧をインクジェット記録ヘッドへ伝達してインク吸引回復を行なう。
【0007】
ピストンポンプを用いて吸引回復を行なう場合、初期負圧を高く設定することができる。すなわち、インク流路内の気泡を除去するための圧力を予め設定をすることができる。しかしながら、吸引量を可変とすることが困難、あるいは調整範囲が狭いことから、吐出口内にインクを充填させるためのインク量の調整が困難となる。したがって、吐出口にインクを充填することを目的とした回復処理と、インク流路内の気泡を除去することを目的とした回復処理を同時に行うためには、インク流路内にインクを充填するために複数回の吸引を行い、吸引量を調整することが必要となる。
【0008】
したがって、上述したポンプでは吐出口内にインクを充填させるための吸引回復と、インク流路内等の気泡を除去するための吸引回復を同一の機構で行なうことができなかった。
【0009】
これに対し、特許文献1には、チューブポンプを用いた回復処理であって、吸引回復を行う構成内に、弁を配置することにより負圧を増すものが開示されている。また、特許文献2には、同様に、チューブポンプを用いた回復処理であって、吸引回復を行う構成内に、弁を配置することにより負圧を増すことにより、2段階の吸引を行なうものが開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開平09−323432号公報
【特許文献2】特開2000−52568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載された回復処理では、回復を行なう構成内に弁を配置して負圧を増すことにより高い負圧を急激に作用させてインクの排出流速を高め、インク流路内等の気泡を除去することができる。しかし、この高圧による気泡除去のための吸引は、これとは別の態様で、記録ヘッドにインクを充填させるためのインクの吸引との関連はない。このため、インクの吸引量の低減を図ることができない。また、特許文献2に記載された回復処理では、低圧、高圧の順に2段階の吸引を行なう場合にあっては、これら圧力の切り替えの間でもポンプを作動していることから、インクの吸引量の低減を図ることができない。
【0012】
本発明の目的は、吸引回復機能を具えるインクジェット記録装置において、記録ヘッドからのインクの吸引量を軽減しつつ、記録ヘッドの信頼性を回復する吸引回復を行なうことを可能とするポンプを備えたインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記問題点を解決するため、本発明は、インクを吐出するための吐出口が形成された吐出口面を有する記録ヘッドと、該記録ヘッドの吐出口面を覆うキャップと、該キャップ内にポンプにより負圧を生じさせ前記記録ヘッドからインクを吸引する吸引手段と、を具えるインクジェット記録装置において、前記吸引手段は、前記ポンプと前記キャップとが連通路を介して連通され、前記ポンプと前記キャップとの連通を遮断可能な弁を有し、相対的に低い負圧によりインクを吸引した後に、前記弁を使用して相対的に高い負圧によりインクを吸引することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、インクを吐出するための吐出口が形成された吐出口面を有する記録ヘッドと、該記録ヘッドの吐出口面を覆うキャップと、該キャップ内にポンプにより負圧を生じさせ前記記録ヘッドからインクを吸引する吸引手段と、を具えるインクジェット記録装置において、前記吸引手段は、前記ポンプと前記キャップとが連通路を介して連通され、前記ポンプと前記キャップとの連通を遮断可能な弁を有し、前記弁を閉じた遮断状態で前記ポンプを駆動して前記負圧を生じさせ、その後、前記ポンプの駆動を停止し、その後、前記弁を開けて前記遮断状態を解除することでインクを吸引することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上の構成によれば、記録ヘッドからのインクの吸引量を軽減しつつ、記録ヘッドの信頼性を回復する吸引回復を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録装置の要部を示す概略構成図である。図1において、記録装置の外装部材内に収納されたシャーシM3019は、所定の剛性を有する複数の板状金属部材によって構成され、記録装置の骨格を成すものである。シャーシM3019、自動給送部M3022、搬送部M3029、排出部M3030、回復部M5000を備える。自動給送部M3022は、用紙(記録媒体)を装置本体内へと自動的に給送する。搬送部M3029は、自動給送部M3022から1枚ずつ送出される用紙を所定の記録位置へと導くと共に、その記録位置から排出部M3030へと用紙を導く。矢印Yは、用紙の搬送方向(副走査方向)である。記録位置に搬送された用紙は、記録部によって所望の記録が行われる。この記録部は回復部M5000によって回復処理が行われる。M2015は紙間調整レバー、M3006はLFローラM3001の軸受けを示している。記録部において、キャリッジM4001は、キャリッジ軸M4021によって矢印X方向(主走査方向)に移動可能に支持されている。このキャリッジM4001には、インクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドH1001(図3参照)が着脱可能に搭載される。
【0017】
キャリッジM4001に搭載された記録ヘッドH1001は、メイン基板E0001から本体フレキE0012を経由して記録に必要なヘッド駆動信号を得る。また、インクを吐出するためのエネルギとして、電気熱変換体から発生する熱エネルギを利用するものであってもよい。その場合には、電気熱変換体の発熱によってインクに膜沸騰を生じさせ、そのときの発泡エネルギによって、吐出口からインクを吐出することができる。
【0018】
回復部M5000には、記録ヘッドH1001における吐出面をキャップするキャップ(不図示)が備えられている。このキャップには、その内部に負圧を導入するためのチューブポンプ(不図示)が接続される。このチューブポンプでは不図示のモータによってコロを保持したホルダの回転駆動がおこなわれる。記録ヘッドH1001の吐出面を覆ったキャップ内に負圧を導入し、インク吐出口からインクを吸引排出させることにより、記録ヘッドH1001の良好なインク吐出状態を維持すべく吸引回復処理を行う。また、キャップ内に向かって、インク吐出口から画像の記録に寄与しないインクを吐出させる(以下、「予備吐出」ともいう。)ことによって、記録ヘッドH1001の良好なインク吐出状態を維持すべく吐出回復処理を行なう。
【0019】
また、キャリッジM4001には、キャリッジM4001上の所定の装着位置に記録ヘッドH1001を案内するためのキャリッジカバーM4002が設けられている。さらに、キャリッジM4001には、記録ヘッドH1001のタンクホルダーと係合して、記録ヘッドH1001を所定の装着位置にセットするためのヘッドセットレバーM4007が設けられている。ヘッドセットレバーM4007は、キャリッジM4001の上部に位置するヘッドセットレバー軸に対して回動可能に設けられており、記録ヘッドH1001と係合する係合部には、ばね付勢されるヘッドセットプレート(不図示)が備えられている。そのばね力によって、ヘッドセットレバーM4007は、記録ヘッドH1001を押圧しながらキャリッジM4001に装着する。
【0020】
図2は、本実施形態の記録装置における制御系の概略を示すブロック図である。 図2において、CPU100は、本実施形態における装置の動作の制御処理やデータ処理等を実行する。ROM101は、それらの処理手順等のプログラムが格納され、またRAM102は、それらの処理を実行するためのワークエリアなどとして用いられる。記録ヘッドH1001からのインクの吐出は、CPU100が電気熱変換体などの駆動データ(記録データ)および駆動制御信号(ヒートパルス信号)をヘッドドライバH1001Aに供給することにより行われる。CPU100は、キャリッジM001を主走査方向に駆動するためのキャリッジモータ103をモータドライバ103Aにより制御し、また記録媒体を副走査方向に搬送するためのP.Fモータ104をモータドライバ104Aにより制御する。記録を行う場合には、ホスト装置200から外部I/Fを通して送出されてきた記録データをプリントバッファに一旦格納する。そして、キャリッジモータ103によってキャリッジM4001と共に記録ヘッドH1001を主走査方向に走査させる。そして記録データに基づいて記録ヘッドH1001からインクを吐出させる記録動作と、P.Fモータ104によって記録媒体を副走査方向に所定量搬送する搬送動作とを繰り返すことによって、記録媒体上に順次画像を記録する。
【0021】
以上説明した制御系によって本発明の一実施形態に係るチューブポンプの駆動制御が行なわれる。具体的には、CPU100は、図8にて後述される処理プログラムに従い、チューブポンプの駆動モータを始めとして、キャップ、ワイピングの駆動制御を実行する。
【0022】
図3は、本発明の第1の実施形態におけるインクタンクおよび記録ヘッドを示す図である。記録ヘッドH1001は、インクを貯留するインクタンクH1900AからH1900Fを搭載して記録ヘッドカートリッジH1000を構成する。本実施形態の記録同地は、写真調の高画質なカラー記録を可能とするために、フォトブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色独立のインクタンクを搭載している。H1900AおよびH1900FにはCインクが、H1900BおよびH1900FにはMインクが、H1900CにはYインクが、H1900DにはBkインクがそれぞれ貯蔵されている。これらのインクタンクは、記録ヘッドH1001に対して着脱自在となっている。なお、本実施形態では、フォトブラック、シアン、マゼンタおよびイエローを用いているが、本発明はこの4色のインクに限定されない。これらの3色以下のインクを用いたものであっても、他のインクを用いたもの、また、他のインクとこれらの4色のいずれかを用いたものであってもよい。他のインクとは、例えばライトシアン、ライトマゼンタ、ライトイエロー、また、顔料ブラックインク等である。
【0023】
図4、図5、図6、図7は、図3に示すインクジェット記録ヘッドをより詳細に説明するための図である。
【0024】
図4は、インクジェット記録ヘッドのインク流路を示す模式図である。本実施形態では、シアン、マゼンタ、イエロー、フォトブラックの4色のインク流路を有する。フィルタ部301では、金属製のフィルタがH1001に熱溶着される。フィルタ部301はインクタンクとの結合部であり、インクタンクからインクを導入するための毛管力の発生と外部からのごみの侵入を防止する機能を有する。また、フィルタ部301からインクノズルへとインクを導入するためのインク流路部302が設けられている。インク流路部302の断面はおよそ1mm程度の直径であり、インクノズル部と比較して流抵抗は低いが、その体積はインク流路体積の大部分を占める。そのインク流路からインク共通液室303に連通する。インク共通液室303はおよそ幅1mmで構成され泡抜けのためにインクノズルが構成される方向へ傾きを持って構成されている。4色合計の総体積はおよそ197mm3となっている。
【0025】
図5は、インクノズル列をインク流路側から見た模式透視図である。共通液室303の各々に、インクノズル列が2列構成されている。インクノズル列の長さは0.21inchである。また、シアンとマゼンタは右から5pl、1pl、2pl、5plのノズル列、イエローは5pl、5pl、フォトブラックは2pl、5plの幅となっている。
【0026】
図6は、図5の一部を拡大した模式図である。303は共通液室を、304はインク発泡室を、305は5plのインク吐出口を、306は1plのインク吐出口を、307は共通液室303からインクを導入するためのインク導入部を、それぞれ示している。
【0027】
図7は図6における破線C−Cの断面を示す模式図である。303は共通液室、308はインク発泡、305は5plのインク吐出口、306は1plのインク吐出口、309は5plのインク吐出口用のヒータ(電気熱変化素子)、310は2plのインク吐出口用のヒータ(電気熱変化素子)をそれぞれ示している。
【0028】
図8は、本発明の第1の実施形態における吸引回復の制御工程を示すフローチャートである。また、図9は、記録ヘッドの吸引回復動作の組合せを示す表である。
【0029】
インクジェット記録装置は、記録ヘッド内の気泡除去、固着インクの排出、インク充填などを目的とした、吸引回復制御によるヘッドのクリーニングを実施している。クリーニングを必要とする状況として、インクジェット記録ヘッドの装着時、インクタンクの交換時、非記録時間が予め決められた期間を超えた場合がある。また、プリンタドライバなどからクリーニング実行の命令が入力された場合に、即座にもしくは所定のタイミングでインクジェット記録ヘッドのクリーニングを実行する。
【0030】
クリーニングの種類は各種の用途ごとに異なり、図9に示すクリーニング1は、最も弱いクリーニング強度であり、最も短い非記録時間経過後のクリーニングや、プリンタドライバなどから入力されるマニュアルクリーニングに割り当てられる。また、最も強度の強いクリーニング8は、プリンタドライバなどから指定可能なリフレッシュクリーニングに割り当てられ、インクジェット記録ヘッドの吐出記録状態がマニュアルクリーニングなどでは回復しない場合に用いられる。
【0031】
また、吸引工程(1)は、図10にて後述するチャージバルブ(チャージ弁)を使用しない吸引回復動作であり、「吸引R」と「吸引A」ではモータの回転数が異なる吸引を示している。また、吸引工程(2)は、図10にて後述するチャージバルブ(チャージ弁)を使用する吸引回復動作であり、「吸引B」は、チャージバルブを開いた時にポンプが作動していない吸引を示している。また、「吸引C」は、チャージバルブを開いた時にポンプが作動している吸引を示している。なお、本実施形態では、工程(1)および工程(2)のいずれもモードが2つ設定されているものであるが、本発明は、モードの数や種類はこれらに限定されない。すなわち、工程(1)では、「吸引R」と「吸引A」以外のモータの回転数が異なるモードが選択されるものであってもよく、また、「吸引R」や「吸引A」のモータの回転数のみのモードであってもよい。また、工程(2)では、ポンプの回転を停止させるタイミングによってモードを増やしてもよい。
【0032】
以下、インクタンク交換時に割り当てられるクリーニング2を例に、吸引回復工程について図8を用いて説明する。図9に示されるように、クリーニング2が選択されると、吸引工程(1)は「吸引A」が選択され、回数は1回となる。また、吸引工程(2)は「吸引B」が選択され、回数が1回となる。また、予備吐出(3)は「予備吐出1」が選択されることとなる。
【0033】
まず、インクタンクが交換されたことを記録装置が検知し、クリーニング2の要求フラグがセットされる。次に記録信号入力時、もしくはプリンタドライバなどからクリーニング実行の命令が入力された際に他のクリーニング要求フラグと比較し、クリーニング2が最も優先順位が高い場合にクリーニング2が実行される。
【0034】
クリーニングが開始されると(S100)吸引工程(1)が実行される(S101からS106)。クリーニング2が実行されるため、吸引工程(1)は吸引Aが行なわれる。
【0035】
まず、キャップが記録ヘッドへ押圧されて吐出面と密着する(S101)。吸引工程(1)はチャージバルブを使用しない制御であるため、S102ではチャージバルブが開放される。次に、S103にてポンプ回転が開始される。
【0036】
図10は、チャージバルブ、チャージバルブポンプ、および記録ヘッドの構成を示す図である。10はチャージバルブ(弁)、11はチャージバルブポンプ、H1001は記録ヘッドをそれぞれ示している。チャージバルブ(弁)10は、チャージバルブポンプ11とキャップとの連通を遮断可能に構成されている。チャージバルブ(弁)10を閉じるとチューブが押圧され、連通が遮断された状態(遮断状態)となる。一方、チャージバルブ(弁)10を開けると遮断状態が解除され、連通状態に復帰する。コロ12が配置された軸が、矢印方向へ回転することにより、コロ12とガイド13によって保持される部分のチューブが順次つぶされ、コロ12が回転することでチューブ内に負圧が生じる。その結果インクジェット記録ヘッドH1001はキャップ16を通じて減圧され、インク吐出口からインクを吸引する。この吸引量は予め規定されたコロ12の回転数、回転速度によって制御される。「吸引A」の吸引量はおよそ0.35cc(4色合計)であり、吸引時の最大圧力(全負圧、すなわちインク流れの有る状態での発生負圧)はおよそ−20kPaである。
【0037】
上記の所定の回転数を実施した後、ポンプ駆動は停止する(S104)。そして、キャップオープンし記録ヘッドの内部を大気圧へと開放する(S105)。その後、キャップ内に残留するインクを空吸引し排出する(S106)。ここで、キャップオープン(S105)は、記録ヘッドへ押圧されて密着するキャップを記録ヘッドから離すことにより大気圧へ解放してもよく、また、大気連通弁17により、キャップを記録ヘッドから離すことなく大気圧へと開放してもよい。大気開放弁17を使用して大気圧へと開放すると、内部の減圧度による影響を受けにくくなる。
【0038】
以上の工程1では、インクジェット記録ヘッド内のインク流路、インク共通液室にインクを充填し気泡を除去する事を主目的としている。これは、インクタンク交換がなされる場合はインクタンクのインクが無くなり、記録状態がかすれるまで記録を継続した場合にインクジェット記録ヘッドのインク流路内にインクが全く無い場合が想定されるためである。すなわち、第1工程では、インク吐出ノズル部の発泡室308、インク共通液室303、インク導入部307などの微小部分での気泡の完全な除去を目的とはしていない。
【0039】
クリーニング2では、第1工程を1回(N=1)行い(S107)、次に、第2工程を行なう。
【0040】
キャップが記録ヘッドへ押圧されて吐出面と密着する(S108)。吸引工程(2)はチャージバルブを使用する制御であるため、S109 ではチャージバルブ10を閉める。バルブの方式は、機械的にチューブを押圧し密閉しても良く、電磁弁などを設けても良いが、コストやサイズの観点からは機械的にチューブを押圧する方式が最も好適である。
【0041】
S110ではポンプ駆動を開始する。このときチューブのコロ12からチャージバルブ10までの部分が減圧室となり負圧をチャージする。クリーニング2では、「吸引B」が選択され、このときのチャージ圧は予め規定されたコロの回転数、回転速度によって制御される。
【0042】
次にS111では、ポンプの駆動を停止させる。そして、S112ではチャージバルブを開放して、記録ヘッドの吸引を行なう。そして、S105、S106と同様に、キャップオープンし記録ヘッドの内部を大気圧へと開放し(S113)、キャップ内に残留するインクを空吸引し排出する(S114)。チャージバルブを開放してキャップオープンの間(S112からS113)の設定時間によって吸引量は制御される。本実施形態では、チャージバルブ解放後におよそ0.1秒でキャップを開放する。このときの吸引量はおよそ0.03cc(4色合計)であり、吸引時の最大圧力(全負圧)はおよそ−35kPaである。なお、S113のキャップオープンは、大気開放弁17により大気圧へと開放すると、内部の減圧度による影響を受けにくい。
【0043】
クリーニング2では、以上の吸引工程(2)を1回(M=1)行なう(S115)。このようにクリーニング2では、1つの吸引実行命令に基づいて、相対的に低い負圧による吸引工程(1)および相対的に高い負圧による吸引工程(2)がこの順序で連続して実行される。
【0044】
次に、S116からS119では、予備吐出を行なう。
【0045】
図11は、予備吐出の発数を示す表である。まず、S116では、空吸引をしながら、1.5秒待機した後に予備吐出3を行なう。図11に示すように、予備吐出3では、大ノズル(5pl)、中ノズル(2pl)、小ノズル(1pl)の全ノズルについて、5000発の予備吐出を行なう。そして、0.5秒待機した後に再び予備吐出3を行なう。
【0046】
次に、吐出面のワイピングを行い(S117)、予備吐出工程(3)を実施する(S118)。予備吐出工程(3)では、図11に示す「予備吐出1」または「予備吐出2」を行なう(図9参照)。すなわち、クリーニング1または2が選択された場合には、「予備吐出1」を実施し、クリーニング3から8が選択された場合には、「予備吐出2」を実施する。
【0047】
クリーニング2が選択されている場合には、「予備吐出1」を行なうことから、大ノズル(5pl)の全ノズルについて、1000発、2000発、0発、1000発、2000発の順で、予備吐出するノズルを異ならせて予備吐出を行なうこととなる。
【0048】
次に、予備吐出4を行なう(S119)。この予備吐出では、中ノズル(2pl)と小ノズル(1pl)の全ノズルについて300発ずつ予備吐出を行なう。そして、S120では空吸引を行い、S121で回復処理工程を終了する。
【0049】
図12は、吸引工程(2)において、チャージバルブを開いてから(S112)、キャップオープン(S113)までの時間と吸引量を示すグラフである。チャージ圧65kPaおよび82kPaの2種類で実質吸引時間をパラメータにその時の吸引量を調べている。
【0050】
チャージ圧65kPaでは、実質吸引時間0.1秒のときに吸引量がおよそ0.03ccであるが、実質吸引時間が0.2秒となると吸引量は0.05ccとなる。このとき、インク吐出ノズルの微小部分の気泡除去の性能に差はなく、記録信頼性に問題ない。したがって、実質吸引時間を0.1秒とし吸引量を0.03ccとするのが効果的である。インク吐出ノズルの微小部分からの気泡除去には、チャージバルブ開放直後の最大の吸引圧が最も支配的であり、その後に吸引されるインクは気泡除去には寄与していないからである。なお、0.1秒より短い場合には、機構部品の動作が不安定となることがある。
【0051】
また、チャージ圧を82kPaとして最高圧力を65kPaのおよそ1.26倍としても、実質吸引時間が0.1秒のときの吸引量は、0.03cc程度の増加である。したがって、更に高圧の吸引圧が必要なインクジェット記録ヘッドのクリーニングにおいても、吸引量の大きな増加無く対応可能である。
【0052】
よって、本実施形態では、チャージバルブ解放後からキャップ開放までの実質吸引時間を0.1秒としている。
【0053】
また、吸引工程(2)において「吸引B」が選択された場合には、チャージバルブ開放時にポンプの駆動を継続したとしても、その後に減圧度は上昇せず、インク吐出ノズルの微小部分からの気泡除去には寄与しない。したがって、チャージバルブを開放する前にポンプを停止する。これにより、インク吸引量を抑制することができる。
【0054】
吸引工程(2)では、記録ヘッドのインク吐出ノズル部の気泡を除去する事が主目的となる。これは、吸引工程(1)にて記録ヘッドのインク流路内にインクは充填されているが、インク吐出ノズル、特に小液滴ノズルの微小部分での気泡は完全には除去されていないためである。すなわち、吸引工程(2)は、インク吸引量を増大させずにノズル部の気泡を除去するための最終的な仕上げの吸引である。
【0055】
クリーニング2を選択した場合、総吸引量はおよそ0.38cc(0.35cc+0.03cc)であり、吸引工程(1)の吸引時の最大圧力はおよそ−20kPa、吸引工程(2)の吸引時の最大圧力はおよそ−35kPaである。
【0056】
図13は、実際に記録ヘッドの吸引を実施した際の波形を示す。前半部は、チャージバルブを使用しない吸引である吸引Aを示し、後半部は、チャージバルブを使用した吸引である吸引Bを示している。吸引Aのピーク圧はおよそ−20kPaであり吸引継続時間はおよそ5秒である。吸引Bのピーク圧はおよそ−35kPaでありチャージバルブ解放後の負圧保持時間(大気開放までの時間)はおよそ0.1秒である。
【0057】
図14は、比較対象として従来のチューブ方式で本件のインクジェット記録ヘッドのインクタンク交換吸引を実施した場合の圧力波形を示す。チューブポンプ機能のみで吸引圧力を−35kPaまで上昇させるためには、吸引継続時間はおよそ12秒必要となり、吸引量はおよそ0.65cc必要となる。
【0058】
図15は、クリーニング2の圧力波形を示す。図15において、縦軸に圧力、横軸に時間をそれぞれ示し、クリーニング2を実施した際の静負圧(インク流れの無い状態での発生負圧)をチャージバルブよりポンプ側(減圧室側)で取得した値をプロットしたものである。前半部は、チャージバルブを使用しない吸引である吸引Aを示し、後半部は、チャージバルブを使用した吸引である吸引Bを示している。吸引Aのピーク圧はおよそ−25kPaであり吸引継続時間はおよそ5秒である。吸引Bのピーク圧はおよそ−65kPaでありチャージ圧を蓄積するためにおよそ4秒である。
【0059】
図15および図13から、チャージバルブを使用した吸引は、チャージ圧から吸引圧への圧力の損失が大きい。その損失は、図10に示すコロ12からチャージバルブ10までのチューブ内の体積V1と、V1にチャージバルブ10が開放された後のバルブ10から記録ヘッドH1001側の回復系内の体積を加えたV2の体積比によって決まる。したがって、本実施形態において、チャージバルブは可能な限り記録ヘッドH1001側に設けた方が、吸引圧の損失を抑制することができる。
【0060】
以上により、チャージバルブを用いた吸引回復制御を実施することにより、吸引量に与える影響を低くしながら吸引圧力を高める事が可能となる。その結果、吐出口にインクを充填させるための回復に必要な吸引圧を発生させ、かつ気泡の除去をすることが可能となり、高い記録信頼性を確保することが可能となる。
【0061】
また、インクタンク交換時の吸引量は吸引量も0.65ccから0.38ccへと、58%に削減される。したがって、廃インク保持のための部材の小型化が可能となり、記録装置の小型化、コストダウンを図ることができる。
【0062】
本実施形態の記録装置は、図5または図6に示されるように、吐出量の異なるノズル列を有する記録装置である。吐出量が異なるノズル列を同時に吸引した場合の効果について説明する。
ノズルの流抵抗はハーゲンポアゼイユの一般式より
△P=128LQη/πD
η:インク粘度(kgf*sec/m)、L:円管長さ(m)、Q:流量(m)、D:円管の直径(m)
で示される。
【0063】
η、L、Qがほぼ等しいと見なした場合、インク吐出ノズル部における圧損は、主に吐出口の直径の4乗に反比例する。
【0064】
このことから、本実施形態のようなインク吐出量が異なるインクノズル列を複数有する記録ヘッドにおいて、吐出量が異なるノズル列を同時に吸引する場合は、吐出口の大きいノズルからインクは流れ易い。よって、インクノズル内の気泡除去に必要とする吸引圧力の上昇が妨げられる。またメニスカス力により気泡の除去に高い減圧度が必要となるのは吐出口の小さいインクノズルであり、その必要圧を得るために吸引圧力を高める必要が生じる。
【0065】
したがって、本実施形態では、吐出量の異なるインク吐出ノズルを有する記録ヘッドや、小液滴化したインクノズルからの気泡除去のために必要な吸引圧により、吸引量の大きな増大を招くことなく吸引回復を行なうことができる。
【0066】
また、図14に示す吸引では、インク流れを発生させる時間は12秒間であった。一方、本実施形態では、インク流れが発生する時間はおよそ5秒となるため、インク供給系、すなわちインクタンクなどの負荷を軽減し、供給系からの気泡の侵入を抑制することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、吐出量の異なるノズル列を有する記録装置であるが、吐出量が同じノズル列を有する記録装置であっても、本発明は適用することができる。また、本発明はインクジェット記録装置のほか、インクジェット記録装置を応用したファクシミリ、複写機、ワードプロセッサ、また複合機にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録装置を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における記録装置の制御系を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録ヘッドおよびインクタンクの概観を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録ヘッドのインク流路を示す模式図である。
【図5】本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録ヘッドのインクノズル列をインク流路側から見た模式透視図である。
【図6】図5に示すインクノズル列をインク流路側から見た模式透視図である。
【図7】図6に示すノズル列の破線C-Cの断面模式図である。
【図8】本発明の第1の実施形態におけるフローチャートである。
【図9】本発明の第1の実施形態におけるクリーニングモードの動作を示す表である。
【図10】本発明の第1の実施形態におけるチャージバルブ方式回復系の模式図である。
【図11】本発明の第1の実施形態における予備吐出の発数を示す表である。
【図12】本発明の第1の実施形態におけるチャージ吸引時のキャップオープンの時間と吸引量の関係を示すグラフである。
【図13】本発明の第1の実施形態における吸引時間と吸引圧力の関係を示すグラフである。
【図14】従来例の吸引時間と吸引圧力の関係を示すグラフである。
【図15】本発明の第1の実施形態におけるポンプ付近の吸引時間と吸引圧力の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0069】
M4001 キャリッジ
H1000 記録ヘッドカートリッジ
H1001 インクジェット記録ヘッド
H1900A、H1900B、H1900C、H1900D、H1900E、H1900F インクタンク
100 CPU
101 ROM
102 RAM
103 キャリッジモータ
103A モータドライバ
104 P.Fモータ
104A モータドライバ
303 インク共通液室
304 インク発泡室
307 導入部
309、310 吐出用ヒータ(電気熱変換素子)
10 チャージバルブ(弁)
11 チャージバルブポンプ
12 コロ
13 ガイド
16 キャップ
17 大気連通弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するための吐出口が形成された吐出口面を有する記録ヘッドと、該記録ヘッドの吐出口面を覆うキャップと、該キャップ内にポンプにより負圧を生じさせ前記記録ヘッドからインクを吸引する吸引手段と、を具えるインクジェット記録装置において、
前記吸引手段は、前記ポンプと前記キャップとが連通路を介して連通され、前記ポンプと前記キャップとの連通を遮断可能な弁を有し、相対的に低い負圧によりインクを吸引した後に、前記弁を使用して相対的に高い負圧によりインクを吸引することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記弁は、前記連通路を介して連通する前記ポンプと前記キャップとの中間よりも前記キャップに近接していることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記相対的に低い負圧によるインクの吸引は、前記相対的に高い負圧によるインクの吸引よりインクの吸引量が多いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記吸引手段は、吸引の実行命令に基づいて、前記相対的に低い負圧によるインクの吸引と、前記相対的に高い負圧によるインクの吸引を、それぞれ1回以上行なうことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
インクを吐出するための吐出口が形成された吐出口面を有する記録ヘッドと、該記録ヘッドの吐出口面を覆うキャップと、該キャップ内にポンプにより負圧を生じさせ前記記録ヘッドからインクを吸引する吸引手段と、を具えるインクジェット記録装置において、
前記吸引手段は、前記ポンプと前記キャップとが連通路を介して連通され、前記ポンプと前記キャップとの連通を遮断可能な弁を有し、前記弁を閉じた遮断状態で前記ポンプを駆動して前記負圧を生じさせ、その後、前記ポンプの駆動を停止し、その後、前記弁を開けて前記遮断状態を解除することでインクを吸引することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−55788(P2008−55788A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236381(P2006−236381)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】