説明

インクジェット記録装置

【課題】インクジェット記録装置において、記録媒体におけるインクの滲みを抑制するとともに、画像担持体から記録媒体への画像の転写効率を高める。
【解決手段】感温性高分子層12が表面に形成された画像担持体1と、水性媒体に顔料を分散させたインクを画像担持体1に吐出して画像を形成するインク吐出ヘッド2と、画像担持体1に接触する転写ローラ3と、画像担持体1に接触し感温性高分子層12を加熱する第2加熱ローラ4と、感温性高分子層12表面の水分を吸収除去する水分吸収ローラ5とを設ける。そしてさらに、インク吐出ヘッド2よりも、画像担持体1の回転方向上流側に水分吐出ヘッド9を設けると共に、転写ローラ3と画像担持体1を挟んで対向する位置に、画像担持体1の内周面と接触するように第1加熱ローラ8aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に関し、より詳細には、画像担持体にインク画像を形成した後、画像担持体から記録媒体にインク画像を転写するインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インク吐出ヘッドからインク液滴を記録媒体に吐出して画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置(インクジェット記録装置)は、電子写真方式に比べて構造が簡単で小型・軽量化しやすく、また電子写真方式のような加熱定着部が不要で消費電力も少ないことから近年広く使用されている(特許文献1など)。
【0003】
一方、インクジェット記録装置は、水などの分散媒に着色剤としての顔料や染料を分散させたインクを用いるので、インク吸収層のない普通紙に画像を形成した場合にはインクの滲みが生じ解像度が悪くなる。
【0004】
そこで、インクの滲みを抑えるためこれまでから種々の方法が提案されている。例えば、インク画像を形成する前に記録媒体に凝集剤を吹き付け塗布してインクの滲みを抑制する方法、あるいは高粘度の顔料分散インクを用いる方法、さらには固形インクをヘッド内で加熱して液体とし記録媒体に打滴する方法などが提案され、市販装置に搭載されている方法もある。
【0005】
しかしながら、記録媒体に凝集剤を予め塗布する方法では、極めて短時間に凝集剤を乾燥させなければならず電子写真方式と同程度の電力を必要とするおそれがある。また、記録媒体の非画像形成領域にも凝集剤を塗布するため凝集剤の無駄が不可避的に生じる。高粘度の顔料分散インクを用いる方法では、記録媒体の水分吸収は従来に比べて抑えられると考えられるものの、画像形成部分が広い場合には記録媒体に吸収される水分量が多くなるため、記録媒体のコシが低下するおそれがある。固形インクを用いる方法では、ヘッド内でインクが再固化しないように加熱しておく必要があるため電力消費が多くなるおそれがある。
【0006】
また、中間転写体上に顔料分散インクで画像を形成し、形成したインク画像から溶媒を吸収除去した後、中間転写体から記録媒体に画像を転写する記録装置も提案されている(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7-276792号公報
【特許文献2】特開平5-200999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の提案技術によればインク画像の滲みは抑制されると推測されるものの、中間転写体と顔料との付着力が大きくなりすぎ、記録媒体へのインク画像の転写効率が低くなるおそれがある。
【0009】
本発明は、前記のような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、消費電力を増加させることなく、記録媒体におけるインク画像の滲みを抑制するとともに、画像担持体から記録媒体への画像の転写効率を高めたインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、加熱によって親水性から疎水性に可逆変化する感温性高分子層が表面に形成された回転自在の画像担持体と、水性媒体に顔料を分散させたインクを前記画像担持体に吐出して画像を形成するインク吐出手段と、前記画像担持体に接触し、前記画像担持体に形成された画像を記録媒体に転写させる転写手段と、前記感温性高分子層を加熱する第1加熱手段とを備え、前記インク吐出手段によって画像を形成する時は、前記感温性高分子層を親水性としてインク中の水分を前記感温性高分子層に吸収させると共に、前記画像担持体に形成した画像を記録媒体に転写する際は、第1加熱手段による加熱で前記感温性高分子層を親水性から疎水性とし、前記感温性高分子層から水分を滲み出させて前記感温性高分子層に対する顔料の付着力を低下させることを特徴とするインクジェット記録装置が提供される。
【0011】
前記画像担持体に形成した画像を記録媒体に転写する際の、前記感温性高分子層から滲み出させる水分量を調整して、画像の転写効率を高める観点から、前記転写手段よりも前記画像担持体の回転方向上流側に、前記感温性高分子層に水分を付与する水分付与手段をさらに設けてもよい。
【0012】
第1加熱手段は、前記転写手段と前記画像担持体を挟んで対向する位置に設けてもよい。また、前記転写手段を介して前記感温性高分子層を加熱する位置に設けてもよい。
【0013】
また、前記転写手段よりも前記画像担持体の回転方向下流側に、前記感温性高分子層を加熱する第2加熱手段と、前記感温性高分子層から滲み出した水分を取り除く水分除去手段とをこの順で設けるのが好ましい。
【0014】
そしてまた、親水性と疎水性とに可逆変化する前記感温性高分子層の相転移温度としては5℃〜45℃の範囲が好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のインクジェット記録装置によれば、電力消費量を増加させることなく、記録媒体におけるインクの滲みを抑制できるとともに、画像担持体から記録媒体への画像の転写効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の一例を示す概説図である。
【図2】本発明に係るインクジェット記録装置の他の例を示す概説図である
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るインクジェット記録装置について図に基づいて以下説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の一例を示す概説図である。この図のインクジェット記録装置は、円筒状の基体11の表面に感温性高分子層12が形成された画像担持体1と、画像信号に基づいて感温性高分子層12にインク画像を形成するインク吐出ヘッド2と、画像担持体1に接触する転写ローラ(転写手段)3と、画像担持体1に接触し感温性高分子層12を加熱する、回転自在の筒状体41の軸中心に棒状のハロゲンヒータ42を内蔵した第2加熱ローラ(第2加熱手段)4と、感温性高分子層12表面の水分を吸収除去する水分吸収ローラ(水分除去手段)5とを備える。
【0019】
そして、インク吐出ヘッド2よりも、画像担持体1の回転方向上流側に水分吐出ヘッド(水分付与手段)9が設けられ、転写ローラ3と画像担持体1を挟んで対向する位置に、画像担持体1の内周面と接触するように第1加熱ローラ(第1加熱手段)8aが設けられている。第1加熱ローラ8aは、回転自在の筒状体81と、筒状体81の軸中心に取り付けられた棒状のハロゲンヒータ82とを備える。
【0020】
なお、水分吐出ヘッド9の取付位置は、転写ローラ3よりも画像担持体1の回転方向上流側であれば、インク吐出ヘッド2の上流側および下流側のいずれであっても構わないが、インク吐出ヘッド2よりも下流側に設けると、水分吐出ヘッド9から吐出した水分によってインク画像が移動して画像に「にじみ」が生じるおそれがある。また、いわゆるベタ画像の場合には画像に濃度ムラが生じ、これに起因して感温性高分子層12に吸収される水分量にムラができて、転写効率に部分的な差が生じる。このため、図1に示すように、水分吐出ヘッド9はインク吐出ヘッド2よりも上流側に設けるのが好ましい。
【0021】
この図で示したインクジェット記録装置は単色の画像を形成するものであるが、複数のインク吐出ヘッド2を設けて複数色のインクを吐出可能としカラーインク画像が形成可能な装置にも本発明はもちろん適用できる。
【0022】
本発明で使用する感温性高分子は、相転移温度以下では親水性を示し、相転移温度以上では疎水性を示す高分子である。例えば、N−イソプロピルアクリルアミドやN−メチルアクリルアミド,N−アクリロイルピロリジン,N−ビニルイソブチルアミド、ビニルエーテルなどを構成単位として含む単独重合体又は共重合体を挙げることができる。感温性高分子の相転移温度は装置内温度よりも高いことが好ましく、通常、5℃〜45℃の範囲が好ましい。
【0023】
本発明で使用する画像担持体1は、このような感温性高分子からなる層を円筒状の基体11の表面に形成してなる。感温性高分子層12の基体11への形成は、例えば、感温性高分子をシート状に成形した後、シランカップリング剤などの接着剤で基体11に貼着する方法等が挙げられる。基体11の材料としては、例えば、アルミニウムやステンレス鋼などの金属材料やポリオレフィンやポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック材料が挙げられる。また、基体11は、円筒状に限定されるものではなく、例えば無端状ベルトであっても構わない。
【0024】
このような構成のインクジェット記録装置において画像形成は次のようにして行われる。まず、水分吐出ヘッド9から水分を吐出させて感温性高分子層12に水分を散布する。ここで、水分の散布は画像形成予定部分にのみ行うのが好ましい。非画像形成部分にまで水分を散布すると、後述する転写時に多くの加熱エネルギーが必要になると共に、感温性高分子層12から滲み出した水分が記録媒体6に吸収され記録媒体6のコシが低下するからである。なお、感温性高分子層12は、少なくとも水分吐出ヘッド9による水分付与から転写ローラ3によるインク画像の転写領域直前までの間は、相転移温度未満の温度に調整され、この間は感温性高分子層12は親水性とされている。
【0025】
水分付与手段としては、水分吐出ヘッド9の他、噴霧器や、オフセット印刷機で用いられている湿し水着けローラなどが使用できるが、画像形成予定部分にのみ水分を散布できる点でインクジェット方式の水分吐出ヘッド9が望ましい。水分吐出ヘッド9から吐出させる水分量は、水分吐出ヘッド9から吐出した水分とインク7中の水分71との総量が、感温性高分子層12の最大水分吸収量を超えない範囲内において適宜決定すればよい。具体的には、第1加熱ローラ8aの加熱によって感温性高分子層12から滲み出す水分量を、転写の際に、顔料72を浮き上がらせることなく且つ感温性高分子層12と顔料72と付着力を低下させる量とすればよい。なお、第1加熱ローラ8aによる加熱温度やインク7中の水分量、感温性高分子層12による水分吸収量などを調整することによって、インク7中の水分71のみで、転写の際に、顔料72を浮き上がらせることなく、感温性高分子層12と顔料72と付着力を低下させることができる場合には、水分吐出ヘッド9を設けなくても構わない。
【0026】
次いで、画像信号に基づいてインク吐出ヘッド2からインク7を吐出させて、感温性高分子層12にインク画像を形成する。本発明で使用するインク吐出ヘッド2は、オンデマンド方式やコンティニュアス方式など従来公知の方式を用いることができる。また吐出方式としては、例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等の電気−機械変換方式;サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型の等の電気−熱変換方式;スパークジェット型等の静電吸引方式などが挙げられる。さらに、印字方式としては、シリアルヘッド方式、ラインヘッド方式等のいずれの方式も用いることができる。
【0027】
そして、不図示の駆動源によって画像担持体1は図の右回りにさらに回転し、インク画像は画像担持体1と転写ローラ3とのニップ部に搬送される。インク画像がニップ部に回転搬送されるまでの間に、インク7中の水分71は感温性高分子層12に吸収され、感温性高分子層12の表面には主に顔料72が残存した状態となる。そして、ニップ部において、第1加熱ローラ8aによって感温性高分子層12を相転移温度以上に加熱して、親水性から疎水性とし、感温性高分子層12から水分71を滲み出させる。これにより、感温性高分子層12の表面の顔料72の付着力が低下し、不図示の搬送手段によってニップ部に搬送されてきた記録部材6にインク画像が容易に転写するようになる。なお、前述のように、感温性高分子層12の水分吸収量は、顔料72を浮き上がらせることなく且つ感温性高分子層12と顔料72と付着力を低下させる量に調整されているので、従来問題となっていた記録媒体6におけるインク画像の滲みが発生することはない。また、第1加熱手段としては、第1加熱ローラ8aの他、接触方式あるいは非接触方式の従来公知の加熱手段を用いることができる。
【0028】
ここで、転写効率を一層高める観点からは、画像担持体1から記録媒体6へのインク画像の転写は、ニップ部において画像担持体1の周速度を記録媒体6の搬送速度よりも速くし、発生するずり応力を利用してインク画像を記録媒体6に転写させるのが好ましい。より好ましくは、画像担持体1の周速度を記録媒体6の搬送速度の1.2倍以下とするのがよい。
【0029】
インク画像が記録媒体6に転写した後、画像担持体1がさらに回転すると、第2加熱ローラ4によって感温性高分子層12がさらに加熱され、感温性高分子層12に吸収されていた水分71の多くが表面に滲み出してくる。なお、加熱温度は、感温性高分子層12の相転移温度以上であればよく、この相転移温度を常温に近い温度に設定することにより、消費電力を従来の装置に比べて低くすることができる。感温性高分子層12を加熱する第2加熱手段としては、第2加熱ローラ4の他、サーマルヘッドのような選択的に加熱できるものなど、接触方式あるいは非接触方式の従来公知の加熱手段を用いることができる。また、第2加熱手段の設置位置としては、画像担持体1の外周部であってもよいし内周部であってもよい。
【0030】
次いで、感温性高分子層12から滲み出た水分71は、画像担持体1に接触しながら回転する、多孔質体から構成される水分吸収ローラ5によって吸収され、画像担持体1表面から除去される。水分吸収ローラ5によって吸収された水分71は水分吸収ローラ5の軸中心又は外周側からポンプ等で吸引して回収するようにしてもよい。なお、感温性高分子層12表面の水分71を取り除く手段としては、水分吸収ローラ5の他、ブレード接触や加熱乾燥、エアナイフ等の従来公知の除去手段を用いることができる。
【0031】
そして、水分吸収ローラ5によって表面の水分71が除去された画像担持体1は、水分吐出ヘッド9によって水分が吐出される位置に回転移動する間に空冷され、相転移温度以下まで冷却される。これによって感温性高分子層12は疎水性から親水性に変化し、水分吐出ヘッド9から感温性高分子層12に散布された水分が、前述のように、感温性高分子層12に吸収される。なお、水分吸収ローラ5から水分吐出ヘッド9まで画像担持体1が回転する間に、画像担持体1を相転移温度以下まで確実に冷却する観点から、水分吸収ローラ5と水分吐出ヘッド9との間に冷却手段をさらに設けても構わない。冷却手段としては、ファンなどを用いた風冷やヒートポンプ、ペルチェ素子などが挙げられる。
【0032】
本発明で使用するインク7は、媒体としての水71に顔料72を分散したものであり、必要によりラテックスやポリマーが混合されていてもよい。また、顔料72は、色材の他、色材を内包したマイクロカプセルなどであってもよい。
【0033】
以上説明したインクジェット記録装置によれば、インクジェット専用紙のみならず、普通紙、アート紙など従来はインクが滲みやすかった記録媒体6に対しても高解像度のインク画像が形成できる。
【0034】
図2に、本発明に係るインクジェット記録装置の他の実施形態を示す概説図を示す。この図に示すインクジェット記録装置が、図1のインクジェット記録装置と異なる点は、第1加熱手段が、感温性高分子層12を転写ローラ3を介して加熱する点にある。すなわち、第1加熱手段としての棒状のハロゲンヒータ8bを転写ローラ3の軸中心に設け、転写手段と第1加熱手段とを一体化した点にある。これにより、装置構成が単純化できる。また、転写ローラ3の外側の近接位置にハロゲンヒータ8bを設けて、転写ローラ3を介して感温性高分子層12を加熱するようにしてもよい。
【0035】
以上説明した実施形態では、第2加熱ローラ4と水分吸収ローラ5によって、感温性高分子層12に吸収された水分を除去していたが、第2加熱手段だけで感温性高分子層12に吸収された水分を除去するようにしてもよい。例えば、第2加熱手段によって感温性高分子層12から水分を滲み出させ、さらに蒸発させるのである。具体例としては、第2加熱手段として複数の棒状のハロゲンヒータを用い、これらのハロゲンヒータを画像担持体1の表面に対して離隔対向し、且つ周方向に所定間隔で設置し、ハロゲンヒータから放射された熱線を画像担持体1に照射し加熱して、感温性高分子層12から水分を滲み出させ蒸発させる。あるいは、第2加熱手段として、表面に多孔質層が形成された接触式の加熱ローラを用いて、感温性高分子層12を相転移温度以上に加熱すると同時に感温性高分子層12から滲み出た水分を吸収するようにしてもよい。
【実施例】
【0036】
(感温性高分子の作製)
イオン交換水を容器に入れた後、窒素置換して脱酸素を行った。このイオン交換水に対してN−イソプロピルアクリルアミドを0.1wt%加えた後、再度窒素置換を行い撹拌した。そして、N−イソプロピルアクリルアミド1mmolに対して、架橋剤としてのメチレンビスアクリルアミドを0.0075mmol、重合促進剤としてのテトラメチルエチレンジアミンを0.13mmol、重合開始剤としてのペルオキソ二硫酸アンモニウムを0.0065mmolをそれぞれ加え、窒素置換後撹拌し、ゲル化が終了するまで静置し感温性高分子を得た。その後、得られた感温性高分子を純水で洗浄し試料とした。
【0037】
(転写試験)
前記作製した感温性高分子からなる層の画像形成部分に0μL,1μL,2μL,5μLの水分をそれぞれ滴下した。加えて、感温性高分子層の水分吸収量以上の水分を貯留した容器に感温性高分子層を浸漬し含水率が100%の感温性高分子層を作製した。次に、エプソン社製のインクジェット記録装置「PX−G920」のインク吐出ヘッドを用いて、前記作製した感温性高分子層のそれぞれに12ポイントの大きさの文字「響」を水性顔料インクで形成した。
次いで、感温性高分層と転写ローラとを接触すると共に感温性高分子層を60℃に加熱し、感温性高分子層と転写ローラとのニップ部にコニカミノルタ社製の普通紙「Jペーパー」を搬送し、感温性高分子層の文字「響」を普通紙に転写した。感温性高分子層の周速は普通紙の搬送速度の1.1倍とした。結果を表1に示す。
一方、比較例として、感温性高分子層を加熱せずに、感温性高分子層と転写ローラとのニップ部にコニカミノルタ社製の普通紙「Jペーパー」を搬送し、感温性高分子層の文字「響」を普通紙に転写した。結果を表1に合わせて示す。
【0038】
【表1】

*1:普通紙のコシが低下
「○」:文字の判読ができる。
「×」:文字の判読ができない。
【0039】
表1から理解されるように、水分を滴下し且つ感温性高分子層の加熱を行った参考例では、水分の滴下量が2μL以上になると、普通紙に転写した文字の判読ができた。ただし、感温性高分子層に水分を必要以上に吸収させると(例えば、どぶ漬け含浸)、普通紙に水分が吸収されて普通紙のコシが低下した。一方、感温性高分子層の加熱を行わなかった比較例ではいずれも、普通紙に転写した文字の判読はできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のインクジェット記録装置によれば、電力消費量を増加させることなく、記録媒体におけるインクの滲みを抑制することができるとともに、画像担持体から記録媒体への画像の転写効率を高めることができ有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 画像担持体
2 インク吐出ヘッド(インク吐出手段)
3 転写ローラ(転写手段)
4 加熱ローラ(第2加熱手段)
5 水分除去ローラ(水分除去手段)
6 記録媒体
7 インク
8a 加熱ローラ(第1加熱手段)
8b ハロゲンヒータ(第1加熱手段)
9 水分吐出ヘッド(水分付与手段)
12 感温性高分子層
71 水分
72 顔料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱によって親水性から疎水性に可逆変化する感温性高分子層が表面に形成された回転自在の画像担持体と、水性媒体に顔料を分散させたインクを前記画像担持体に吐出して画像を形成するインク吐出手段と、前記画像担持体に接触し、前記画像担持体に形成された画像を記録媒体に転写させる転写手段と、前記感温性高分子層を加熱する第1加熱手段とを備え、
前記インク吐出手段によって画像を形成する時は、前記感温性高分子層を親水性としてインク中の水分を前記感温性高分子層に吸収させると共に、前記画像担持体に形成した画像を記録媒体に転写する際は、第1加熱手段による加熱で前記感温性高分子層を親水性から疎水性とし、前記感温性高分子層から水分を滲み出させて前記感温性高分子層に対する顔料の付着力を低下させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記転写手段よりも前記画像担持体の回転方向上流側に、前記感温性高分子層に水分を付与する水分付与手段をさらに設けた請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
第1加熱手段が、前記転写手段と前記画像担持体を挟んで対向する位置に設けられた請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
第1加熱手段が、前記転写手段を介して前記感温性高分子層を加熱する位置に設けられた請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記転写手段よりも前記画像担持体の回転方向下流側に、前記感温性高分子層を加熱する第2加熱手段と、前記感温性高分子層から滲み出した水分を取り除く水分除去手段とをこの順で設けた請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
親水性と疎水性とに可逆変化する前記感温性高分子層の相転移温度が5℃〜45℃の範囲である請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−218191(P2012−218191A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83227(P2011−83227)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】