インクジェット記録装置

【課題】インクによるチューブの詰まりを抑制することが可能なインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】記録ヘッド1と、インク収集部2と、廃インクトレー5と、インクを、湾曲部を通じて廃インクトレー5まで移送するチューブ3と、チューブ3を開放した第1の状態と、チューブ3を閉塞した第2の状態とに切り替え可能なチューブ開閉部と、湾曲部の最下点と廃インクトレー5との間に位置する負圧発生源6と、制御部14と、を有し、チューブ3は、内部圧力が第1の負圧から、第1の負圧よりも大きい第2の負圧に変化したときに、チューブの長さ方向に垂直な断面の面積が減少するように変形し、制御部14は、チューブ開閉部が第1の状態のときに負圧発生源6が内部圧力を第1の負圧に調整する吸収動作を行わせ、チューブ開閉部を第2の状態に切り替えた後、負圧発生源6が内部圧力を第2の負圧に調整する排出動作を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録に用いられない廃インクを移送するためのチューブを有するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドに形成された吐出口から記録媒体に向かってインクを吐出するインクジェット記録装置では、吐出口が記録媒体に対向しているので、記録媒体に付着していたゴミ等が吐出口に付着する場合がある。この場合、インクが吐出しにくくなるので、不吐が発生したり、インクが正規の位置からずれた位置に吐出される現象(いわゆるヨレ)が発生したりすることによって、画像品位の劣化が懸念される。不吐やヨレを防止するために、記録を行っていないときにインクを予備吐出して吐出口に付着したインクが増粘することを防止する回復動作がある。他には、記録ヘッドの吐出口にキャップを圧接密閉し、キャップに接続された負圧発生手段(ポンプ)により強制的にインクを吸引することにより、吐出口に付着したインクやゴミ等を除去する回復動作がある。
【0003】
上記のような回復動作が行われると、記録に用いられない廃インクが発生する。廃インクは、一般的に廃インクトレーに排出される。廃インクトレーは、廃インクの発生場所の近くに配置されるのが望ましい。しかし、記録装置の小型化に伴って、廃インクトレーを理想的な場所に配置することは難しい。そのため、廃インクトレーは、スペースに余裕のある場所に配置せざるを得ない。この場合、廃インクトレーが廃インクの発生場所(吐出口に対向する場所)から離れることになる。そのため、廃インクの発生場所から廃インクトレーまで廃インクを移送するチューブが必要になる。廃インクを移送するチューブを備えたインクジェット記録装置が、特許文献1に開示されている。特許文献1には、チューブポンプとキャップの間に弁を設置し、チューブポンプの内部圧力が、ある負圧値に達したらチューブポンプのカムが弁を開放して廃インクを一気に吸引するインクジェット記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2801388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようにチューブを用いて廃インクを移送する場合、装置内のスペースの都合で、チューブが、鉛直方向にU字状に湾曲する部分を有する可能性がある。この場合、図9(a)に示すようにチューブ30の湾曲部の最下点では、インク70が貯留し、その上にエア層30f(隙間)が形成される。そのため、チューブポンプを何回作動させてもエア層30fによりインク70の排出が阻害される。すると、図9(b)に示すように、湾曲部の両サイドに付着したインクが最下点に集まってエア層30fを埋める状態になる可能性がある。この状態が長期間放置されると、インクの増粘、固着等でチューブ30が詰まることが懸念される。
【0006】
本発明は、インクによるチューブの詰まりを抑制することが可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のインクジェット記録装置は、インクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドの、前記インクの吐出方向側に対向したインク収集部と、廃インクトレーと、前記インク収集部に収集されたインクを、前記インク収集部の下方に向かって湾曲した湾曲部を通じて前記廃インクトレーまで移送するチューブと、前記インク収集部と前記湾曲部の最下点との間に位置し、前記チューブを開放した第1の状態と、前記チューブを閉塞した第2の状態とに切り替え可能なチューブ開閉部と、前記湾曲部の前記最下点と前記廃インクトレーとの間に位置する負圧発生源と、前記チューブ開閉部および前記負圧発生源を制御する制御部と、を有し、前記チューブは、内部圧力が第1の負圧から、前記第1の負圧よりも大きい第2の負圧に変化したときに、前記チューブの長さ方向に垂直な断面の面積が減少するように変形し、前記制御部は、前記チューブ開閉部が前記第1の状態のときに、前記負圧発生源が前記内部圧力を前記第1の負圧に調整する吸引動作を行わせ、前記チューブ開閉部を前記第2の状態に切り替えた後、前記負圧発生源が前記内部圧力を前記第2の負圧に調整する排出動作を行わせる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、制御部が負圧発生源に排出動作を行わせることによってチューブの断面積が小さくなる。その結果、チューブ内に残留したインクの排出を妨げる隙間が小さくなるので、インクがチューブに残留しにくくなる。よって、インクによるチューブの詰まりを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示すインクジェット記録装置のチューブが扁平した状態を示す図である。
【図3】図1に示すインクジェット記録装置の電気的な制御構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示すインクジェット記録装置の回復動作の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す図である。
【図7】図5に示すインクジェット記録装置の回復動作の手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第4の実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す図である。
【図9】図7に示すインクジェット記録装置の回復動作の手順を示すフローチャートである。
【図10】従来のインクジェット記録装置において、インクがチューブの湾曲部に残留した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す図である。図1(a)は全体図であり、図1(b)は、図1(a)に示す切断線E−Eに沿った断面図である。図1(a)に示す本実施形態のインクジェット記録装置は、インクを吐出する記録ヘッド1を有する。記録ヘッド1の、インクの吐出方向側に対向する位置には、キャップ2が設置されている。キャップ2は、記録ヘッド1から離れた位置(第1の位置)と、記録ヘッドに圧接する位置(第2の位置)との間を移動可能とされている。キャップ2には、厚さが1mmのシリコン製のチューブ3の一端が接続されている。チューブ3には、弁4が設置されている。弁4は、チューブ3を開放する状態(第1の状態)と、チューブ3を閉塞する状態(第2の状態)とに切り替え可能なチューブ開閉部として機能する。チューブ3は、弁4よりもインクの移送方向(図1(a)の矢印C参照)の下流側に、U字状に湾曲した湾曲部を有する。湾曲部の最下点3aよりも下流側には、凸部の最上点3bがある。チューブ3は、最上点3bよりも下流側で、斜め下方向に延伸し、他端に排出口3cを有する。排出口3cの直下には、廃インクトレー5が設置されている。チューブ3の区間L2(凸部の最上点3bから排出口3cまでの区間)には、チューブ3の内部圧力を調整する負圧発生源6が設置されている。弁4は、チューブ3の凸部の最上点3bよりも距離L1分だけ上位に位置している。キャップ2は、弁4よりも更に上位に位置している。そのため、チューブ3内にインクが残留したとしても、残留インクの高さは、弁4より下位つまり凸部の最上点3bと同じ高さになる位置3e以下に制限される。
【0011】
図1(a)では、鉛直方向をZ軸とし、インクジェット記録装置が設置されている水平面とZ軸の交点Aと、チューブ3の排出口3cを通過する鉛直線と水平面との交点Bを通過する水平線をX軸とする。Z-X平面にチューブ3を投影させた図が図1(a)である。チューブ3は3次元的に記録装置内に配置されているが、本発明を説明する時は投影図を利用して説明する。
【0012】
図1(a)に示す本実施形態のインクジェット記録装置において、記録ヘッド1にキャップ2を圧接し、弁4が開放した状態で負圧発生源6がチューブ3の内部圧力を負圧(第1の負圧)にした場合、記録ヘッド1からインクが吸引される。吸引されたインクは、チューブ3を通じて廃インクトレー5に排出される。その後、キャップ2が記録ヘッド1から離間した状態でさらに負圧発生源6がインクを吸引し続けるとチューブ3内のインクはほぼ廃インクトレー5に排出されるが、チューブ3の湾曲部の最下点3aにインク7が集積して残留してしまう可能性がある。これを防止するため、本実施形態のインクジェット記録装置では、一連の吸引動作が完了すると弁4がチューブ3を閉塞する。その後、負圧発生源6がチューブ3の内部圧力を、吸引動作時の負圧よりも絶対値の大きな負圧(第2の負圧)に変化させる。チューブ3の内壁面には、チューブ3を扁平させやすくするため、図1(b)に示すように、チューブ3の中心軸に関して互いに対称な形状であり、チューブ3の長さ方向に沿って延びた一対の溝3dが形成されている。チューブ3の内部の負圧値が70927.5Pa(0.7atm)になると、チューブ3は、図2(a)に示すように、弁4から負圧発生源6までの区間が扁平変形する。このとき、長さ方向に垂直なチューブ3の断面は、図1(b)に示す円形から図2(b)に示す楕円形に扁平変形する。図2(b)は、図2(a)に示す切断線F−Fに沿った断面図である。チューブ3の扁平変形により、長さ方向に垂直なチューブ3の断面の面積が減少するのでチューブ3の内部の隙間が減少し、残留インクが排出口3cから強制的に排出される。チューブ3の区間L2は扁平していないが、弁4の開放によりチューブ3が大気と連通するので、区間L2に残留したインクは自重により落下する。チューブ3が扁平したか否かの検知は弁4と負圧発生源6との間に設置された圧力検知器(不図示)が飽和状態になったかどうかで判断する。他の方法としてはチューブ3が扁平するために必要な負圧発生源6の、事前に判明している回転数即ち、弁4と負圧発生源6との間のチューブ3の内容積以上の排気を負圧発生源6が実施したかどうかで判断することもできる。
【0013】
図3は、本実施形態のインクジェット記録装置の電気的な制御構成を示すブロック図である。図3(a)に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置は、上述した構成に加え、制御部14と、操作部15と、計測部16と、を有する。制御部14は、予め定められたプログラムに基づいて動作するCPU(Central Processing Unit)、CPUを動作させるためのプログラムを格納したメモリ等で構成され、記録ヘッド1、弁4、および負圧発生源6を制御する。操作部15は、本実施形態のインクジェット記録装置の操作を受け付ける。計測部16は、記録ヘッド1からキャップ2に吐出されたインク量を計測する。
【0014】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置の回復動作について説明する。この回復動作は、制御部14の制御に基づいて実施される。図4は、本実施形態のインクジェット記録装置の回復動作の手順を示すフローチャートである。図4(a)は、ヘッド吸引による回復動作の手順を示すフローチャートである。一方、図4(b)は、予備吐出による回復動作の手順を示すフローチャートである。
【0015】
まず、ヘッド吸引による回復動作の手順について図4(a)を参照しながら説明する。弁4がチューブ3を開放した状態になる(ステップS1)。続いて、負圧発生源6が流路を開放する(ステップS2)。このようにして記録ヘッド1のノズル(吐出口)が加圧されない状態が確保された後、キャップ2が、制御部14の制御に従って記録ヘッド1に圧接する位置まで移動する(ステップS3)。続いて、ノズルに付着したインクやゴミを吸引するために、キャップ2が記録ヘッド1に圧接した状態で、負圧発生源6は、時間T1が経過するまでチューブ3の内部に負圧を発生させる吸引動作を行う(ステップS4)。時間T1が経過した後、キャップ2が、制御部14の制御に従って、記録ヘッド1から開放(離間)する(ステップS5)。キャップ2が開放してから時間T2が経過したときに負圧発生源6は停止する。その後、チューブ3に残留しているインクを排出するため、一旦弁4がチューブ3を閉塞した状態に切り替わる(ステップS7)。負圧発生源6が、チューブ3が扁平変形するのに必要な時間T3が経過するまでチューブ3の内部に負圧を発生させる(ステップS8)。時間T3が経過すると、弁4がチューブ3を開放した状態に切り替わる(ステップS9)。これにより、キャップ2側からエアが取り込まれ、チューブ3は復元する。このとき負圧発生源6は、弁4の開放以前から動作し続けているので、インクが排出し易い状態になっている。負圧発生源6は、弁4が開放してから時間T4が経過するまで動作し続け、時間T4の経過後流路を開放して停止する(ステップS10)。これで、ヘッド吸引による回復動作が終了する。
【0016】
次に、予備吐出による回復動作の手順について図4(b)を参照しながら説明する。
【0017】
まず、弁4がチューブ3を開放した状態になる(ステップS11)。続いて、負圧発生源6が、時間T5が経過するまで動作(ステップS12)する。これにより、キャップ2に残存しているインクが排出される。時間T5の経過後、負圧発生源6は停止し(ステップS13)、キャップ2に収容されたインク量がリセットされる。続いて、記録ヘッド1がキャップ2に予備吐を行う(ステップS14)。このとき、計測部16が、キャップ2に収集されるインク量に対応する予備吐数を計測し、制御部14は、計測部16が計測した予備吐数が予め定められた値に達したか否か判断する(ステップS15)。予め定められた値は、キャップ2の収容能力に応じて決まる。計測した予備吐数が予め定められた値に達すると、キャップ2からインクが溢れないようにするため、負圧発生源6が、時間T6が経過するまで動作してキャップ2に収集されたインクを吸引して停止する(ステップS16)。時間T6の経過後、弁4がチューブ3を閉塞した状態に切り替わる(ステップS17)。負圧発生源6は、チューブ3が扁平変形するのに必要な時間T7が経過するまでチューブ3の内部に負圧を発生させ(ステップS18)、チューブ3内のインクを強制排出する。時間T7の経過後、弁4がチューブ3を開放した状態に切り替わり(ステップS19)、時間T8が経過した後に負圧発生源6が停止する(ステップS20)。これで、予備吐出による回復動作が終了する。
【0018】
本発明では、上述した2つの回復動作において、ステップS9とステップS10、又はステップS19とステップS20の順番を逆にすると、チューブ3の区間L2に付着したインクが、扁平部分の復元に伴い逆流するおそれがある。これは、ステップS6又はステップS16以前の負圧発生源6による吸引によるインクや、S7又はS17以降のチューブ3を扁平にした時に強制排出されるインクがチューブ3の区間L2にある程度残留している可能性が高いからである。したがって、弁4を開放した後、負圧発生源6が排出動作を終了することが望ましい。
【0019】
本発明では、チューブ3内の残留インクを極力少なくするために、制御部14が、負圧発生源6に排出動作を連続して複数回繰り返し行わせることが望ましい。
【0020】
本発明では、上述した2つの回復動作において、負圧発生源6の排出動作は、吸引動作毎に実施しなくてもよい。排出動作は長時間放置時に必要なので、操作部15から電源をオフする信号が入力されたときに制御部14が負圧発生源6に排出動作を行わせてもよい。或いは、図3(b)に示すブロック図のように、タイマー17が吸引動作終了後の経過時間を経過し、制御部14が、タイマー17の計測時間が予め定められた時間に達したときに排出動作を行わせるようにしても。そのように排出動作を実施することによってチューブ3の耐久性を向上させることが可能となる。
【0021】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す図である。図5では、第1の実施形態のインクジェット記録装置と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0022】
本実施形態のインクジェット記録装置は、チューブ3が、凸部の最上点3bよりも下流側に、キャップ2の下方に向かって湾曲した他の湾曲部を有する。チューブ3の下流端3eは上向きで終端し、下流端3eに負圧発生源6が設置された構成となっている。本実施形態では、記録ヘッド1のノズルに付着したインクやゴミ等を除去する動作の終了後、図5(a)に示すように、最下点3a、3cにインク8、9が残留する可能性が高い。そこで、本実施形態では、上述した第1の実施形態と同様の回復動作の手順に従って、弁4がチューブ3を閉塞した状態で負圧発生源6が、チューブ3における、弁4から負圧発生源6までの区間を扁平変形させるのに十分な負圧を発生させる(図5(b)参照)。これにより、チューブ3に残留したインク8、9は廃インクトレー5に排出される。このようにチューブ3の下流端3eが上向きであっても、負圧発生源6を下流端3eに設置することにより、チューブ3に残留した廃インクを排出することが可能となる。
【0023】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す図である。図6では、第1の実施形態のインクジェット記録装置と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0024】
図6に示す本実施形態のインクジェット記録装置は、弁4の代わりにチューブ開閉部として機能するチューブポンプ10を有する。チューブポンプ10は、図6(a)に示すように、最下点3aの上部に設置されている。チューブポンプ10は、図6(b)に示すように、ロータ12と、ロータ12に移動可能に取り付けられた2つのコロ11(押圧部材)と、を有する。ロータ12には、中心側から外周側へ延びたガイド溝12aが形成されている。ポンプチューブ10において、ロータ12が反時計回り(第2の方向、矢印C参照)に回転した場合、コロ11がチューブ3を押しつぶす。この後、ロータ12が時計回り(第1の方向、矢印D参照)に回転したとき、チューブポンプ10よりも上流側のインクは、チューブポンプ10の下流側に排出される。キャップ2とチューブポンプ10との間のチューブ3の内容積以上に相当する排気を行なえば、チューブポンプ10の上流側のインクは排出されエアのみになる。
【0025】
ロータ12が反時計回りに回転し、チューブポンプ10よりも上流側のインクが無くなってエアのみになったらチューブポンプ10は停止する。このとき、コロ11がチューブ3を押し潰した状態のまま、チューブポンプ10よりも下流側に配置された負圧発生源6でチューブ3が扁平変形するまで負圧を作用させ、インクを強制排出する。その後、ロータ12が時計回りに回転すると、コロ11はチューブ3から遠ざかり、チューブ3は、大気開放になる。これは、図6(b)に示すように、角度θの位相差を有するガイド溝12aに沿ってコロ11の軸11aが移動することによって、ロータ12の中心から軸11aまでの距離が短くなるからである(図6(b)R1、R2参照)。すなわち、コロ11がロータ12の外周側から中心側に移動するからである。このとき、負圧発生源6よりも下流側のインクは自然落下する。
【0026】
本実施形態では、コロ11が湾曲部の最下点3aの上部を押しつぶせるようにチューブポンプ10を設置することが望ましい。コロ11が湾曲部の最下点3aよりも下流側の区間を押しつぶすようにチューブポンプ10が設置されると、湾曲部の最下点3aでインクが残留し、残留インクの上にエア層が形成され、インクを排出しにくくなる。
【0027】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置の回復動作について説明する。この回復動作は、制御部14の制御に基づいて実施される。図7は、本実施形態のインクジェット記録装置の回復動作の手順を示すフローチャートである。図7(a)は、ヘッド吸引による回復動作の手順を示すフローチャートである。一方、図7(b)は、予備吐出による回復動作の手順を示すフローチャートである。
【0028】
まず、ヘッド吸引による回復動作の手順について図7(a)を参照しながら説明する。ロータ12が時計回りに回転することによって、コロ11がチューブ3を圧接した状態が解除され、チューブ3が開放される(ステップS21)。続いて、負圧発生源6が流路を開放して(ステップS22)、チューブ3を全て開放する。次に、キャップ2が記録ヘッド1に圧接する位置まで移動する(ステップS23)。チューブポンプ10が、時間T9が経過するまで動作し、インクを吸引する(ステップS24)。その後、キャップ2が記録ヘッド1から開放する(ステップS25)。キャップ2が開放してから時間T10が経過したときに、ロータ12が反時計回りに回転して停止する(ステップS26)。このときコロ11は、チューブ3を押しつぶして閉塞している。この状態で負圧発生源6は、チューブ3が扁平変形するのに必要な時間T11が経過するまでチューブ3の内部に負圧を発生させる(ステップS27)。この扁平変形によりチューブ3の内部に残留したインクは強制的に廃インクトレー5に排出される。その後、ロータ12が時計回りに回転することによってコロ11によるチューブ3の圧接が解除され、チューブ3が開放される(ステップS28)。その結果、キャップ2側からエアが取り込まれてチューブ3は復元する。その後、時間T12が経過した後、負圧発生源6は流路を開放して停止する(ステップS29)。これで、ヘッド吸引による回復動作が終了する。
【0029】
次に、予備吐出による回復動作の手順について図7(b)を参照しながら説明する。
【0030】
まず、ロータ12が時計回りに回転することによって、コロ11がチューブ3を圧接した状態が解除され、チューブ3が開放される(ステップS31)。その後、負圧発生源6が、時間T13が経過するまで動作する(ステップS32)。この動作により、キャップ2に残存しているインクがチューブ3を通じて廃インクトレー5に排出される。時間T13の経過後、負圧発生源6は停止し(ステップS33)、キャップ2に収容されたインク量がリセットされる。続いて、記録ヘッド1がキャップ2に予備吐を行う(ステップS34)。このとき制御部14が、第1の実施形態と同様に、計測部16が計測した予備吐数が予め定められた値に達したか否か判断する(ステップS35)。計測した予備吐数が予め定められた値に達すると、キャップ2からインクが溢れないようにするため、負圧発生源6が、時間T14が経過するまで動作してキャップ2に収集されたインクを吸引し、停止する(ステップS36)。このときロータ12が反時計回りに回転することによって、コロ11は、チューブ3を圧接して閉塞し、弁として機能している(ステップS37)。この状態で負圧発生源6は、チューブ3が扁平変形するのに必要な時間T15が経過するまで負圧をチューブ3の内部に作用し続ける(ステップS38)。これにより、チューブ3の内部に残留したインクは強制的に廃インクトレー5に排出される。その後、ロータ12が時計回りに回転し、コロ11によるチューブ3の圧接が解除され、チューブ3が開放する(ステップS39)。その後、時間T16が経過した後に、負圧発生源6は流路を開放して停止する(ステップS40)。これで、予備吐出による回復動作が終了する。
【0031】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、制御部14が、負圧発生源6に排出動作を連続して複数回繰り返し行わせることが望ましい。更に、操作部15から電源をオフする信号が入力されたときに制御部14が負圧発生源6に排出動作を行わせてもよい。或いは制御部14が、タイマー17の計測時間が予め定められた時間に達したときに負圧発生源6に排出動作を行わせてもよい。そのように排出動作を実施することによってチューブ3の耐久性を向上させることが可能となる。
【0032】
(第4の実施形態)
図8は、本発明の第4の実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す図である。図8では、第1の実施形態のインクジェット記録装置と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0033】
図8に示す本実施形態のインクジェット記録装置は、第3の実施形態で説明したチューブポンプ10の2つの機能、すなわち弁としての機能と負圧発生源としての機能を弁4と負圧発生源13に分離した構成である。
【0034】
図8(a)に示すように弁4は、湾曲部の最下点3aよりも上流側に設置され、負圧発生源13は、湾曲部の最下点3aと負圧発生源6との間に設置されている。本実施形態では、第1の実施形態よりも負圧発生源の個数が増加したが、第1の実施形態に比べ記録ヘッド1の回復処理を速くできるようになる。本実施形態では、キャップ2から負圧発生源13までの距離が短いので負圧の発生が速くなり、その結果、第3の実施形態と同様に回復処理に要する時間は速くなる。
【0035】
本実施形態では、弁4がチューブ3を閉塞した状態のときに、負圧発生源13が流路を開放して、負圧発生源6がチューブ3内の負圧を高めるように動作することによってチューブ3が扁平変形(図8(b)参照)する。その後、負圧発生源6が停止し、弁4が開放する。弁4が開放した状態で弁4よりも上流側にインクが存在した場合、そのインクは1回の排出動作では排除できないので再度排出動作を実施することによりそのインクを排除できる。
【0036】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置の回復動作について説明する。この回復動作は、制御部14の制御に基づいて実施される。図9は、本実施形態のインクジェット記録装置の回復動作の手順を示すフローチャートである。図9(a)は、ヘッド吸引による回復動作の手順を示すフローチャートである。一方、図9(b)は、予備吐出による回復動作の手順を示すフローチャートである。
【0037】
まず、ヘッド吸引による回復動作の手順について図9(a)を参照しながら説明する。弁4がチューブ3を開放した状態になる(ステップS41)。続いて、負圧発生源13が流路を開放し(ステップS42)、負圧発生源6が流路を開放(ステップS43)する。このようにして記録ヘッド1の吐出口が加圧されない状態が確保された後、キャップ2が記録ヘッド1に圧接する位置まで移動する(ステップS44)。ノズルに付着したインクやゴミを吸引するため、負圧発生源6は時間T17が経過するまでチューブ3の内部に負圧を発生させる(ステップS45)。時間T17の経過後、キャップ2が記録ヘッド1から開放する(ステップS46)。キャップ2が開放してから時間T18が経過するまで負圧発生源13は動作し続けて(ステップS47)、停止する。時間T18の経過後、チューブ3に残留しているインクを排出するため、一旦弁4がチューブ3を閉塞した状態に切り替わる(ステップS48)。その後、負圧発生源6が、チューブ3が扁平変形するのに必要な時間T19が経過するまでチューブ3の内部に負圧を発生させる(ステップS49)。その後、弁4がチューブ3を開放した状態に切り替わる(ステップS50)。これによりキャップ2側からエアが取り込まれることによってチューブ3は復元する。負圧発生源6は、弁4の開放以前から動作し続けて、インクが排出し易い状態となっている。負圧発生源6は、弁4の開放後時間T20が経過するまで動作し続け、流路を開放して停止する(ステップS51)。これで、ヘッド吸引による回復動作が終了する。
【0038】
次に、予備吐出による回復動作の手順について図9(b)を参照しながら説明する。
【0039】
まず、弁4がチューブ3を開放した状態になる(ステップS52)。続いて、負圧発生源13が流路を開放し(ステップS53)、負圧発生源6が、時間T21が経過するまで動作する(ステップS54)。これにより、キャップ2に残存しているインクが排出される。時間T21の経過後、負圧発生源6は停止し(ステップS55)、キャップ2に終了されたインク量がリセットされる。続いて、記録ヘッド1がキャップ2に予備吐を行う(ステップS56)。このとき、他の実施形態と同様に、制御部14が、計測部16が計測した予備吐数が予め定められた値に達したか否か判断する(ステップS57)。計測した予備吐数が予め定められた値に達すると、キャップ2からインクが溢れないようにするため、負圧発生源6が、時間T22が経過するまで動作してキャップ2に収集されたインクを吸引して停止する(ステップS58)。その後、弁4がチューブ3を閉塞した状態に切り替わる(ステップS59)。負圧発生源6が、チューブ3が扁平変形するのに必要な時間T23が経過するまでチューブ3の内部に負圧を発生し(ステップS60)、チューブ3内のインクを強制排出する。時間T23の経過後、弁4がチューブ3を開放した状態に切り替わり(ステップS61)、時間T24が経過した後に負圧発生源6が流路を開放して停止する(ステップS62)。これで、予備吐出による回復動作が終了する。
【0040】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、制御部14が負圧発生源6に排出動作を連続して複数回繰り返し行わせることが望ましい。更に、電源をオフする信号が操作部15から入力されたときに制御部14が負圧発生源6に排出動作を行わせてもよい。或いは制御部14が、タイマー17の計測時間が予め定められた時間に達したときに、負圧発生源6に排出動作を行わせてもよい。そのように排出動作をじっしすることによってチューブ3の耐久性を向上させることが可能となる。
【0041】
上述した第1の実施形態〜第4の実施形態では、チューブ3の湾曲箇所が1つ又は2つであるが、本発明では、チューブ3の湾曲箇所の個数は特に制限されない。さらに、本発明では、キャップ2は、インクを収集可能なインク収集部としての形態であればよい。さらに、本発明では、チューブ3の下流端の向き(傾き)におうじて負圧発生源6の位置が規制される。チューブ3の下流端の向きが下向き(X−Z平面で傾きがマイナス)の場合、負圧発生源6は最も下流側の変曲点から下流端までの区間L2に設置される。一方、チューブ3の下流端の向きが上向き(X−Z平面で傾きがプラス)の場合、負圧発生源6は下流端に設置される。
【符号の説明】
【0042】
1 記録ヘッド
2 キャップ(インク収集部)
3 チューブ
4 弁(チューブ開閉部)
5 廃インクトレー
6 負圧発生源
14 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドの、インクの吐出方向側に対向したインク収集部と、廃インクトレーと、前記インク収集部に収集されたインクを、前記インク収集部の下方に向かって湾曲した湾曲部を通じて前記廃インクトレーまで移送するチューブと、前記インク収集部と前記湾曲部の最下点との間に位置し、前記チューブを開放した第1の状態と、前記チューブを閉塞した第2の状態とに切り替え可能なチューブ開閉部と、前記湾曲部の前記最下点と前記廃インクトレーとの間に位置する負圧発生源と、前記チューブ開閉部および前記負圧発生源を制御する制御部と、を有し、
前記チューブは、内部圧力が第1の負圧から、前記第1の負圧よりも大きい第2の負圧に変化したときに、前記チューブの長さ方向に垂直な断面の面積が減少するように変形し、
前記制御部は、前記チューブ開閉部が前記第1の状態のときに、前記負圧発生源が前記内部圧力を前記第1の負圧に調整する吸引動作を行わせ、前記チューブ開閉部を前記第2の状態に切り替えた後、前記負圧発生源が前記内部圧力を前記第2の負圧に調整する排出動作を行わせる、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記チューブが、複数の前記湾曲部を有し、
前記負圧発生源が、最も下流側の湾曲部の最下点と前記廃インクトレーとの間に位置している、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記チューブ開閉部を前記第2の状態から前記第1の状態に切り替えた後に前記排出動作を終了させる、請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記インク収集部は、前記制御部の制御に従って、前記記録ヘッドから離れた第1の位置と、前記記録ヘッドに圧接する第2の位置との間を移動可能であり、
前記制御部は、前記インク収集部を前記第2の位置に移動させて前記吸引動作を行わせ、該吸引動作の後、前記インク収集部を前記第1の位置に移動させて前記排出動作を行わせる、請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御部に接続され、前記記録ヘッドから前記インク収集部に吐出されたインク量を計測する計測部をさらに有し、
前記制御部は、前記計測部が計測したインク量が予め定められた値に達したときに前記吸引動作を行わせ、該吸引動作の後に前記排出動作を行わせる、請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記排出動作を連続して複数回繰り返し行わせる、請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記制御部に接続され、前記インクジェット記録装置の操作を受け付ける操作部をさらに有し、
前記制御部は、前記操作部から電源をオフする信号が入力されると前記排出動作を行わせる、請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記制御部に接続され、前記吸引動作が終了した後の経過時間を計測するタイマーをさらに有し、
前記制御部は、前記タイマーが計測した経過時間が予め定められた時間に達したときに前記排出動作を行わせる、請求項1から7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記チューブがシリコン製である、請求項1から8のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記チューブの内壁面に、前記チューブの中心軸に関して互いに対称な形状であり、前記長さ方向に沿って延びた一対の溝が形成されている、請求項1から9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記チューブ開閉部は、ロータと、前記ロータに移動可能に取り付けられた押圧部材と、を有するチューブポンプであり、前記ロータは、中心側から外周側へ延びたガイド溝を有し、前記押圧部材は、前記ロータが第1の方向へ回転すると前記ガイド溝に沿って前記中心側に移動して前記第1の状態になり、前記ロータが前記第1の方向と反対の第2の方向へ回転すると前記ガイド溝に沿って前記外周側に移動して前記チューブを押しつぶすことによって前記第2の状態となる、請求項1から10までのいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記負圧発生源が、前記湾曲部の前記最下点と前記廃インクトレーとの間に複数設置されている、請求項1から11までのいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−218395(P2012−218395A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89213(P2011−89213)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】