説明

インクジェット記録装置

【課題】 色の異なるインクを吐出する記録ヘッドであっても、拭き取り時に生じる色混じりの影響を抑制する。
【解決手段】 インクジェット記録装置は、ノズル面上に複数のノズルが配列された少なくとも一つのノズル列を有し、一列のノズル列内に配列された多数のノズルのうち、所定の複数個の前記ノズルからなる第一ノズル群と、残りの複数個の前記ノズルからなる第二ノズル群とはそれぞれ明度の異なるインクを吐出する記録ヘッドと、ノズル面を摺擦するブレードとを備えている。ブレードは、第一ノズル群及び第二ノズル群のうち、明度の高いインクを吐出するノズル群から、明度の低いインクを吐出するノズル群に向かうようにノズル面を摺擦する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置においては、一つの記録ヘッドの駆動部及び流路を分割し、当該一つの記録ヘッドで色の異なるインクを吐出するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−150673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、色の異なるインクを吐出する記録ヘッドのノズル面に対して拭き取りを行うと、色混じりが生じてしまい、その後の画質に悪影響を与えるおそれがあった。
本発明の課題は、色の異なるインクを吐出する記録ヘッドであっても、拭き取り時に生じる色混じりの影響を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明に係るインクジェット記録装置は、
ノズル面上に複数のノズルが配列された少なくとも一つのノズル列を有し、前記一列のノズル列内に配列された多数のノズルのうち、所定の複数個の前記ノズルからなる第一ノズル群と、残りの複数個の前記ノズルからなる第二ノズル群とはそれぞれ明度の異なるインクを吐出する記録ヘッドと、
前記ノズル面を摺擦するブレードとを備えるインクジェット記録装置において、
前記ブレードは、前記第一ノズル群及び前記第二ノズル群のうち、明度の高いインクを吐出するノズル群から、明度の低いインクを吐出するノズル群に向かうように、前記ノズル面を摺擦することを特徴としている。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のインクジェット記録装置において、
前記ブレードは、前記ノズル列の配列方向に対して所定の角度で傾いた状態で、前記配列方向に直交する方向に移動することで、前記第一ノズル群及び前記第二ノズル群のうち、明度の高いインクを吐出するノズル群から、明度の低いインクを吐出するノズル群に向かうように前記ノズル面を摺擦し、
前記所定の角度をθとし、前記第一ノズル群のうち最も第二ノズル群側に配置された前記ノズルと、前記第二ノズル群のうち最も第一ノズル群側に配置された前記ノズルとの両者の接線となり、なおかつ前記配列方向と交差する一直線と、前記配列方向とがなす鋭角の角度をθminとすると、前記所定の角度θは式(1)の関係を満たしていることを特徴としている。
θmin<θ≦90°・・・(1)
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のインクジェット記録装置において、
前記第一ノズル群及び前記第二ノズル群のうち、明度の高いインクを吐出するノズル群側の側方に配置され、前記ブレードを回転させるための回転軸を備え、
前記ブレードは、前記回転軸を中心に回転することで、前記第一ノズル群及び前記第二ノズル群のうち、明度の高いインクを吐出するノズル群から、明度の低いインクを吐出するノズル群に向かうように、前記ノズル面を摺擦することを特徴としている。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記ブレードは、前記第一ノズル群及び前記第二ノズル群のうち、明度の高いインクを吐出するノズル群に対応する部分の方が、前記明度の低いノズル群に対応する部分よりも当たり量が大きいことを特徴としている。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドは、前記ブレードによる摺擦後に空吐出を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、色の異なるインクを吐出する記録ヘッドであっても、拭き取り時に生じる色混じりの影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係るインクジェット記録装置1の概略構成を示す説明図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置に備わる記録ヘッドのノズル面を示す下面図である。
【図3】図1のインクジェット記録装置に備わるブレードとノズル列との位置関係を示す模式図である。
【図4】図3のブレードの当たり量を示す説明図である。
【図5】図3のブレードの概略構成を示す正面図である。
【図6】図1のインクジェット記録装置の主制御構成を示すブロック図である。
【図7】摺擦時におけるブレードと各ノズルとの関係を示す説明図である。
【図8】本実施形態に係る第一ノズル群と第二ノズル群とを逆に配置し、第二ノズル群から第一ノズル群に向かうようにブレードがノズル面を摺擦する場合を示す説明図である。
【図9】本実施形態に係る所定の角度θが角度θminよりも小さくなるようにブレードを配置した場合の拭き取り動作を示す説明図である。
【図10】本実施形態の記録ヘッドにノズル列が二つ形成された場合の拭き取り動作を示す説明図である。
【図11】図3のブレードの変形例を示す説明図である。
【図12】図5のブレードの変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
図1は本実施形態に係るインクジェット記録装置1の概略構成を示す説明図である。
インクジェット記録装置1は、スキャン式のインクジェットプリンタであり、記録ヘッドから記録媒体に対してインクを吐出し、記録媒体上に画像を形成するものである。ここで、スキャン式のインクジェット記録装置は、記録媒体が搬送装置により所定の方向に搬送され、インクを吐出する記録ヘッドが記録媒体の面に沿って、記録媒体の搬送方向に直交する方向に走査することで記録媒体に画像を形成するものである。
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、記録媒体Pに対してインクを吐出する記録ヘッド2と、記録ヘッド2を支持するキャリッジ3と、キャリッジ3を走査方向に移動自在に支持するガイドレール4と、記録媒体Pを搬送する搬送装置6と、記録ヘッド2のノズル面2aを清掃するメンテナンス部8と、記録ヘッド2のノズル面2aを保湿する保湿部9と、を備えている。
【0014】
記録ヘッド2は、キャリッジ3に搭載されている。このインクジェット記録装置1では、合計で4個の記録ヘッド2がキャリッジ3に設置されている。4個の記録ヘッド2は、記録ヘッドの走査方向Sに1列に並んで配置されている。ここで、4個の記録ヘッド2のうち、一つの記録ヘッド2はブラック(K)のインクのみを吐出する。残りの3個の記録ヘッド2は、一つの記録ヘッド2で明度の異なる二色のインクを吐出する。具体的には、イエロー(Y)及びライトイエロー(LY)を吐出する記録ヘッド2と、マゼンタ(M)及びライトマゼンタ(LM)を吐出する記録ヘッド2と、シアン(C)及びライトシアン(LC)を吐出する記録ヘッド2となっている。
なお、本実施形態では明度として例えばCIE L色空間におけるLの値を用いている。Lの値は、インクを350nm〜800nmの範囲において、極大吸収波長が1となるように希釈し、日立製作所製の分光光度計で計測することで求められている。
【0015】
図2は、記録ヘッド2のノズル面2aを示す下面図である。図2に示すように、記録ヘッド2は、直方体状に形成され、その下端面となるノズル面2aには、複数のノズル22が走査方向Sに直交する方向に沿って一列に配列されたノズル列が形成されている。このノズル22からインクを吐出することにより記録媒体Pに印画することができる。明度の異なる二色のインクを吐出する記録ヘッド2においては、一列のノズル列内に配列された多数のノズル22のうち、所定の複数個のノズル22が明度の高いインクを吐出し、残りの複数個のノズル22が前記インクよりも明度の低いインクを吐出するようになっている。ここで、明度の高いインクを吐出するノズル22群を第一ノズル群22aとし、明度の低いインクを吐出するノズル22群を第二ノズル群22bとする。
【0016】
各記録ヘッド2には、ブラック、イエロー、ライトイエロー、マゼンタ、ライトマゼンタ、シアン、ライトシアンの各色のインクを貯留するインクタンク2tが、インク供給管などのインク流路2rを介して連結されている。つまり、インクタンク2t内のインクは、インク流路2rによって各記録ヘッド2に供給されるようになっている。
これらの記録ヘッド2を支持するキャリッジ3は、ガイドレール4に移動自在に取り付
けられている。キャリッジ3は、キャリッジ駆動機構31(図2参照)によりガイドレール4に沿って移動する。
ガイドレール4は、記録ヘッド2の走査方向Sに沿って延びるように形成されている。ガイドレール4は、記録ヘッド2の初期待機位置となるホームポジション領域X、記録ヘッド2が記録媒体Pに記録を行う記録領域Y、記録ヘッド2のメンテナンスを行うメンテナンス領域Zにわたって移動することができるように形成されている。
【0017】
搬送装置6は、図示しない駆動ローラ、従動ローラ、駆動ローラと従動ローラとに架け渡された搬送ベルト、駆動ローラを回転させるモータ61(図2参照)とを備えている。
搬送ベルトは、モータ61の駆動により駆動ローラが回転すると駆動ローラと従動ローラとの間を周回してその上面に載置された記録媒体Pを搬送方向に沿って搬送し、駆動ローラの回転が停止すると、両ローラ間での周回を停止し、記録媒体Pの搬送を停止する。
記録媒体Pの搬送方向は、走査方向Sに直交する方向であるとともに記録媒体Pの面方向に平行になるように設定される。
【0018】
図1に示すように、キャリッジ3の移動可能範囲であって搬送装置6の設けられている記録領域Yの外側一端はメンテナンス領域Zとなっており、このメンテナンス領域Zには、記録ヘッド2に対してヘッドメンテナンスを行うメンテナンス部8が設けられている。このメンテナンス部8には、記録ヘッド2のノズル面2aからインクを吸引する吸引装置81、ブレード82、インク受器83等が設けられている。
吸引装置81には、記録ヘッド2のノズル面2aを覆う吸引キャップ81aが記録ヘッド2の数に対応して4個設けられている。また、吸引キャップ81aの底面には、吸引キャップ81aの内部に連通するインク連通管81bが設けられている。このインク連通管81bの途中には、吸引ポンプ81cが設けられており、インク連通管81bの下端には、吸引したインクを受ける廃インクタンク81dが設けられている。
吸引ポンプ81cはシリンダーポンプやチューブポンプを有して構成されていて、吸引キャップ81aがノズル面2aを覆った状態で作動することにより、ノズル面2aから記録ヘッド2内部のインクを異物や気泡と共に吸引するための吸引力を発生するようになっている。
吸引キャップ81aの一端近傍には、記録ヘッド2のノズル22からインクを空吐出させた際に吐出されたインクを受けるインク受器83が設けられており、このインク受器83に隣接してノズル面2aに付着したインクを拭き取るブレード82が設けられている。ブレード82はブレード駆動部84(図7参照)によって、ノズル列の配列方向に直交する方向(走査方向S)に沿って移動し、ノズル面2aを摺擦するようになっている。
【0019】
図3は、ブレード82とノズル列との位置関係を示す模式図である。なお、便宜上、4つのノズル22からなるノズル列を表記している。
ブレード82は例えばEPDM等のゴムによって、ゴム硬度が50となるように板状に形成されている。ブレード82はノズル列の配列方向L1に対して所定の角度で傾いた状態で、配列方向L1に直交する方向(走査方向S)に移動するようになっている。ここで、所定の角度をθとし、第一ノズル群22aのうち最も第二ノズル群22b側に配置されたノズル22cと、第二ノズル群22bのうち最も第一ノズル群22a側に配置されたノズル22dとの両者の接線となり、なおかつ配列方向L1と交差する一直線L2と、配列方向L1とがなす鋭角の角度をθminとすると、所定の角度θは式(1)の関係を満たしている。
θmin<θ≦90°・・・(1)
【0020】
所定の角度θが式(1)の関係を満たしているので、ブレード82が配列方向L1に直交する方向に沿って移動すると、明度の高いインクを吐出する第一ノズル群22aから、明度の低いインクを吐出する第二ノズル群22bに向かうように前記ノズル面を摺擦するようになっている。
【0021】
図4は、ブレード82の当たり量を示す説明図である。図4(a)に示すように、ブレード82はその先端部が湾曲した状態でノズル面2aを摺擦することになる。図4(b)は湾曲していない状態のブレード82を示しているが、変形前ではブレード82の上端部と記録ヘッド2とに重なる領域Hが設けられている。この領域Hが大きいと湾曲時にノズル面2aに対して大きな力が加わり、領域Hが小さいと湾曲時にノズル面2aに対して小さな力が加わることになる。この領域Hを当たり量とする。
図5はブレード82の概略構成を示す正面図である。この図5に示すように、ブレード82のうち、第一ノズル群22aに対応する部分(第一部分821)の方が、第二ノズル群22bに対応する部分(第二部分822)よりも当たり量が大きくなるように形成されている。
【0022】
また、キャリッジ3の移動範囲の他の一端部であって搬送装置6を挟んでメンテナンス領域Zと反対の位置はホームポジション領域Xとされており、このホームポジション領域Xには、記録ヘッド2を保湿する保湿部9が設けられている。保湿部9には、記録ヘッド2が待機状態にあるとき、ノズル面2aを覆うことで記録ヘッド2のインクを保湿する4個の保湿キャップ91が設けられている。これら4個の保湿キャップ91は、4個の記録ヘッド2のノズル面2aを同時に覆うことができるよう、記録ヘッド2の配列に対応して配列されている。
【0023】
図6は、インクジェット記録装置1の主制御構成を示すブロック図である。図6に示すように、制御部10は、CPU、RAM、ROMを備えており、制御部10はインターフェイス(図示省略)を介してキャリッジ駆動機構31、搬送装置6のモータ61、記録ヘッド2、メンテナンス部8、保湿部9、ブレード駆動部84等と接続されている。
【0024】
制御部10は、キャリッジ3を走査方向Sに往復移動させるとともに、キャリッジ3の動作に合わせて記録媒体Pの搬送と停止とを繰り返し、記録媒体Pを間欠的に搬送方向に搬送させるように、キャリッジ駆動機構31及び搬送装置6のモータ61の動作を制御する。
【0025】
制御部10には、画像情報を入力するホストコンピュータやスキャナ、画像記録条件を入力するキーボード等からなる入力部12が接続されており、制御部10は、入力部12から入力された所定の信号に基づいて記録ヘッド2を動作させ、記録媒体P上にインクを吐出させて所定の画像を記録させるようになっている。
制御部10は、画像形成時でもメンテナンス時でもない待機状態の際に、保湿部9に、保湿キャップ91による保湿動作を行わせるように制御する。
制御部10は、電源投入直後や、所定のメンテナンス開始条件に当てはまった場合にメンテナンス部8を作動させてヘッドメンテナンスを行わせるように制御している。
【0026】
次に、本実施形態の作用について説明する。
記録ヘッド2のメンテナンスの実行時においては、制御部10は、吸引装置81を制御して、記録ヘッド2からインクを吸引する。そして、制御部10は、ブレード駆動部84を制御して、ブレード82によってノズル面2aを摺擦する。図7は摺擦時におけるブレード82と各ノズル22との関係を示す説明図である。図7(a)に示した状態からブレード82が移動してノズル面2aを摺擦し始めると、まず図7(b)に示すようにブレード82の第一部分821が第一ノズル群22a上のインクを拭き取る。さらに、ブレード82が移動すると図7(c)に示すようにブレード82の第二部分822が第二ノズル群22b上のインクを拭き取り始める。ここで、第一ノズル群22aからブレード82の第一部分821によって拭き取られたインクI1は、第一部分821の方が第二部分822よりも当たり量が大きいために、当該第一部分821に留まりやすくなる。したがって、インクI1が第二ノズル群22bまで侵入することが防止されることになる。
拭き取り後においては、制御部10は記録ヘッド2を制御してインク受器83に向けて所定回数だけインクを空吐出させる。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、明度の高いインクを吐出する第一ノズル群22aから、明度の低いインクを吐出する第二ノズル群22bに向かうように、ブレード82がノズル面2aを摺擦しているので、明度の高いインクがまずブレード82に拭き取られてから明度の低いインクがブレード82に拭き取られることになる。
図8は、第一ノズル群22aと第二ノズル群22bとを逆に配置し、明度の低いインクを吐出する第二ノズル群22bから、明度の高いインクを吐出する第一ノズル群22aに向かうように、ブレード82がノズル面2aを摺擦する場合を示している。図8(a)に示した状態からブレード82が移動してノズル面2aを摺擦し始めると、まず図8(b)に示すようにブレード82が第二ノズル群22b上のインクを拭き取り、さらにブレード82が移動すると図8(c)に示すように第一ノズル群22a上のインクを拭き取り始める。このとき、先に拭き取られた明度の低いインクI2がブレード82に沿って第一ノズル群22aをなすノズル22に侵入してしまうと、明度の高いインクに明度の低いインクが混じってしまい、色味の変化が大きくなってしまう。
しかしながら、本実施形態の場合、先に拭き取られた明度の高いインクがブレード82に沿って第二ノズル群22bをなすノズル22に侵入したとしても、明度の低いインクに明度の高いインクが混じることは、明度の高いインクに明度の低いインクが混じる場合よりも色味の変化が小さいために色混じりの影響を抑制することが可能である。
このように、色の異なるインクを吐出する記録ヘッド2であっても、拭き取り時に生じる色混じりの影響を抑制することができる。
【0028】
また、図9は、所定の角度θが前記鋭角の角度θminよりも小さくなるようにブレード82を配置した場合の拭き取り動作を示している。図9(a)に示した状態からブレード82が移動してノズル面2aを摺擦し始めると、まず図9(b)に示すようにブレード82が第一ノズル群22a上のインクを拭き取り、さらにブレード82が移動すると図9(c)に示すように第二ノズル群22b上のインクを拭き取り始める。このとき、先に拭き取られた明度の大きいインクI3がブレード82に沿って第二ノズル群22bをなすノズル22に侵入してしまい、明度の低いインクに明度の高いインクが混じることもある。上述したように、明度の低いインクに明度の高いインクが混じることは色混じりの影響は少ないものの極力なくしたいのが実状である。
本実施形態では、所定の角度θが式(1)の関係を満たす角度に設定されているので、先に拭き取られた明度の大きいインクがブレード82に沿って第二ノズル群22bをなすノズル22に侵入してしまうことを一層防止することができる。これにより、色混じりの発生自体を抑えることができる。
【0029】
また、第一部分821の方が第二部分822よりも当たり量が大きいために、当該第一部分821によって拭き取られたインクI1は第一部分821に留まりやすくなる。したがって、インクI1が第二ノズル群22bまで侵入することが防止されることになり、色混じり自体の発生を抑えることができる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能である。なお、以下の説明において上記実施形態と同一部分においては同一符号を付してその説明を省略する。
例えば、上記実施形態では、記録ヘッド2にノズル列が一つ設けられている場合を例示して説明したが、ノズル列は複数形成されていてもよい。図10は、一つの記録ヘッド2にノズル列が二つ形成された場合の拭き取り動作を示している。図10に示すように二つのノズル列N1,N2はそれぞれ、明度の高いインクを吐出する第一ノズル群22e,22fと、明度の低いインクを吐出する第二ノズル群22g,22hとを備えている。さらにブレード82の移動方向における上流側に配置された第一ノズル列N1の第一ノズル群22eの方が、下流側に配置された第二ノズル列N2の第一ノズル群22fよりも、明度の高いインクを吐出するようになっている。また、第一ノズル列N1の第二ノズル群22gの方が、第二ノズル列N2の第二ノズル群22hよりも、明度の高いインクを吐出するようになっている。
そして、図10(a)に示した状態からブレード82が移動してノズル面2aを摺擦し始めると、まず図10(b)に示すようにブレード82が第一ノズル列N1の第一ノズル群22e上のインクを拭き取り、さらにブレード82が移動すると図10(c)に示すように第二ノズル列N2の第一ノズル群22f上のインクを拭き取る。その後、ブレード82が移動すると、図10(d)に示すように、第一ノズル列N1の第二ノズル群22g上のインクを拭き取ってから第二ノズル列N2の第二ノズル群22h上のインクを拭き取る。
この場合においても、明度の高いインクを吐出するノズル群から順に、明度の低いインクを吐出するノズル群へ向けてブレード82がノズル面2aを摺擦しているので、明度の高いインクがブレード82に拭き取られてから明度の低いインクがブレード82に拭き取られることになる。
【0031】
また、上記実施形態では、ノズル列の配列方向L1に対してブレード82が傾いた状態で、配列方向L1に直交する方向に移動することで、第一ノズル群22aから第二ノズル群22bに向かうようにノズル面2aを摺擦する場合を例示して説明したが、これ以外の手法で第一ノズル群22aから第二ノズル群22bに向かうようにブレード82がノズル面2aを摺擦するようにしてもよい。
図11は変形例を示す説明図である。図11に示すように、第一ノズル群22a側の側方には、ブレード82を回転させるための回転軸85が設けられている。ブレード82は、回転軸85を中心に回転することで、第一ノズル群22aから第二ノズル群22bに向かうようにノズル面2aを摺擦するようになっている。
【0032】
また、上記実施形態では、ブレード82を段差形状としたことで、第一ノズル群22aに対応する部分(第一部分821)の方が、第二ノズル群22bに対応する部分(第二部分822)よりも当たり量が大きくなる場合を例示したが、これ以外の形状であっても構わない。例えば図12に示すブレード82aのように、ブレード82aの長さが連続して徐々に変化する形状であってもよい。この場合、ブレード長さが長い領域を第一ノズル群22aに対応させ、ブレード長さが短い領域を第二ノズル群22bに対応するようにノズル面2aに当接させ、第一ノズル群22aに対応する部分の当たり量が第二ノズル群22bに対応する部分よりも大きくなるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 インクジェット記録装置
2 記録ヘッド
2a ノズル面
2r インク流路
2t インクタンク
3 キャリッジ
4 ガイドレール
6 搬送装置
8 メンテナンス部
9 保湿部
10 制御部
12 入力部
22 ノズル
22a 第一ノズル群
22b 第二ノズル群
31 キャリッジ駆動機構
61 モータ
81 吸引装置
82 ブレード
83 インク受器
84 ブレード駆動部
85 回転軸
91 保湿キャップ
821 第一部分
822 第二部分
H 領域
L1 配列方向
L2 一直線
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル面上に多数のノズルが配列された少なくとも一つのノズル列を有し、前記一列のノズル列内に配列された多数のノズルのうち、所定の複数個の前記ノズルからなる第一ノズル群と、残りの複数個の前記ノズルからなる第二ノズル群とはそれぞれ明度の異なるインクを吐出する記録ヘッドと、
前記ノズル面を摺擦するブレードとを備えるインクジェット記録装置において、
前記ブレードは、前記第一ノズル群及び前記第二ノズル群のうち、明度の高いインクを吐出するノズル群から、明度の低いインクを吐出するノズル群に向かうように、前記ノズル面を摺擦することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1記載のインクジェット記録装置において、
前記ブレードは、前記ノズル列の配列方向に対して所定の角度で傾いた状態で、前記配列方向に直交する方向に移動することで、前記第一ノズル群及び前記第二ノズル群のうち、明度の高いインクを吐出するノズル群から、明度の低いインクを吐出するノズル群に向かうように前記ノズル面を摺擦し、
前記所定の角度をθとし、前記第一ノズル群のうち最も第二ノズル群側に配置された前記ノズルと、前記第二ノズル群のうち最も第一ノズル群側に配置された前記ノズルとの両者の接線となり、なおかつ前記配列方向と交差する一直線と、前記配列方向とがなす鋭角の角度をθminとすると、前記所定の角度θは式(1)の関係を満たしていることを特徴とするインクジェット記録装置。
θmin<θ≦90°・・・(1)
【請求項3】
請求項1記載のインクジェット記録装置において、
前記第一ノズル群及び前記第二ノズル群のうち、明度の高いインクを吐出するノズル群側の側方に配置され、前記ブレードを回転させるための回転軸を備え、
前記ブレードは、前記回転軸を中心に回転することで、前記第一ノズル群及び前記第二ノズル群のうち、明度の高いインクを吐出するノズル群から、明度の低いインクを吐出するノズル群に向かうように、前記ノズル面を摺擦することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記ブレードは、前記第一ノズル群及び前記第二ノズル群のうち、明度の高いインクを吐出するノズル群に対応する部分の方が、前記明度の低いノズル群に対応する部分よりも当たり量が大きいことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記記録ヘッドは、前記ブレードによる摺擦後に空吐出を行うことを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−1094(P2013−1094A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137923(P2011−137923)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】