説明

インクジェット記録装置

【課題】1つの検知部により、廃インクタンクの交換が間もなく必要であること、及び廃インクタンクの交換が必要になったことを、精度良く判断する。
【解決手段】廃インクタンク70には、インクが満量未満の第1インク量を超えるとインクに接触する検知電極が設けられている。制御部は、検知電極にインクが到達したと判断すると、廃インクタンク70の交換が間もなく必要である旨を液晶パネル17に表示させる。制御部は、インクが検知電極に到達したときのインク量カウンタ81の積算値により、廃インクタンク80の交換が必要であるか否かを判断するための判断基準値を補正する。制御部は、インク量カウンタ81の積算値が補正後の判断基準値を超えると、廃インクタンク70の交換が必要であると判断し、その旨を液晶パネル17に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドのクリーニングにおいて記録ヘッドから排出されたインクを廃インクタンクに貯留するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被記録媒体を搬送し、搬送される被記録媒体に記録ヘッドからインク滴を吐出して画像記録を行うインクジェット記録装置が提供されている。インクジェット記録装置には、クリーニングにおいて記録ヘッドから排出されたインクを廃インクタンクに貯留するものがある。クリーニングには、ポンプにより記録ヘッドからインクを吸い出すパージや、記録ヘッドに空吐出を行わせるフラッシングがある。
【0003】
この種のインクジェット記録装置には、クリーニングごとに、記録ヘッドから排出されるインクの排出量を算出し、算出した排出量をカウンタにより積算し、カウンタの積算値により、廃インクタンクに貯留されているインクの総量を推定するものがある(特許文献1,2参照)。このインクジェット記録装置では、カウンタのカウント値により廃液タンク(廃インクタンク)が満量となったと判断すると、廃液タンクの交換を知らせるメッセージを表示手段に表示させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−29065号公報
【特許文献2】特開2002−166540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクの蒸発や、クリーニングごとに記録ヘッドから排出されるインクの排出量の装置による誤差等により、廃インクタンクに貯留されたインクの総量を正確に推定することは困難である。そうすると、安全を考慮して、廃インクタンク内のインクが実際に満量になるかなり前に廃インクタンクの交換をユーザに促さなければならなくなり、廃インクタンクの交換までの期間が短くなって使い勝手が悪くなる。
【0006】
そこで、廃インクタンク内のインクが満量になったことを検知する検知部を廃インクタンクに設けることが考えられる。そうすると、廃インクタンク内のインクが満量近くになるまで廃インクタンクを使用することができる。しかしながら、満量を検知する検知部では、廃インクタンク内のインクの量が満量未満の所定量(ニアフル)になったことは検知できず、ユーザに、廃インクタンクの交換が間もなく必要になることを知らせることができない。そうすると、ユーザにとっては、インクジェット記録装置が突然使用できなくなってしまい、使い勝手が悪い。
【0007】
そこで、廃インクタンク内のインクの満量を検知する検知部を設けたインクジェット記録装置に特許文献1,2に記載された技術を用い、推定したインクの量が満量未満の所定量になったときに事前報知を行うことが考えられる。しかしながら、上述したように廃インクタンク内のインクの量を正確に推定することは困難であるので、事前報知を行ってから廃インクタンクが実際に満量になるまでの時間がばらついてしまう。そうすると、事前報知を行ってから直ぐに廃インクタンク内のインクが満量になったり、事前報知を行ってから廃インクタンク内のインクが満量になるまでの時間が長くなって事前報知を行うことの意味が失われたりする。
【0008】
そこで、廃インクタンク内のインクが満量近くになったことを検知する検知部と、所定量になったことを検知する検知部との2つの検知部を廃インクタンクに設けることが考えられる。そうすると、廃インクタンク内のインクが所定量になったこと及び満量近くになったことを精度良く検知できる。しかしながら、検知部を2つも設けると、部品点数が多くなり、また、製造工程が多くなり、その結果、製造コストが増加してしまう。
【0009】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、1つの検知部により、廃インクタンクの交換が間もなく必要であること、及び廃インクタンクの交換が必要になったことを、精度良く判断できる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明のインクジェット記録装置は、インク滴を被記録媒体へ吐出して画像記録を行う記録ヘッドと、上記記録ヘッドからインクを排出させるクリーニング動作を行うクリーニング部と、上記クリーニング部により上記記録ヘッドから排出されたインクを貯留する廃インクタンクと、上記廃インクタンク内に配置されており、上記廃インクタンク内のインクを検知する検知部と、上記廃インクタンクの交換の判断基準値を記憶する第1記憶部と、上記クリーニング動作において上記記録ヘッドから排出されるインクの排出量に対応する設定値を記憶する第2記憶部と、上記クリーニング動作が行われるごとに上記設定値を積算するインク量カウンタと、上記検知部がインクを検知した際における上記インク量カウンタの積算値に基づいて上記判断基準値を補正する第1補正部と、を備える。
【0011】
インク量カウンタは、クリーニング動作が行われるごとに設定値を積算する。インク量カウンタの積算値は、廃インクタンク内のインクの推定量である。検知部がインクを検知した際のインク量カウンタの積算値は、廃インクタンク内のインクの推定量と廃インクタンク内の実際のインク量との誤差の程度により変わる。第1補正部は、検知部がインクを検知した際のインク量カウンタの積算値に基づいて誤差の程度を判断し、廃インクタンクの交換の判断基準値を補正する。検知部がインクを検知した際のインク量カウンタの積算値に基づいて判断基準値が補正されるので、廃インクタンク内のインクが満量近くになったことを精度良く判断できる。
【0012】
(2) 上記第1補正部は、上記検知部がインクを検知した際の上記廃インクタンク内のインク量に相当する値である基準値と、上記検知部がインクを検知した際における上記インク量カウンタの積算値とに基づいて、上記判断基準値を補正するものであってもよい。
【0013】
(3) 上記基準値より小さい第1閾値、及び上記基準値より大きい第2閾値を記憶する第3記憶部を更に備えており、上記第1補正部は、上記第1閾値及び上記第2閾値と、上記検知部がインクを検知した際における上記インク量カウンタの積算値とに基づいて上記判断基準値を補正するものであってもよい。
【0014】
(4) 本発明のインクジェット記録装置は、上記廃インクタンク内のインクの温度または上記廃インクタンクの周辺温度を検出する温度センサと、時間をカウントするタイマカウンタと、を更に備えており、上記第1補正部は、上記検知部がインクを検知した際における上記インク量カウンタの積算値と、上記検知部がインクを検知するまでに上記温度センサが検知した温度及び上記タイマカウンタのカウント値とに基づいて補正を行うものであってもよい。
【0015】
検知部がインクを検知するまでの温度及び時間に基づいて判断基準値が補正されるので、廃インクタンク内のインクが満量近くになったことを、より精度良く判断できる。
【0016】
(5) 本発明のインクジェット記録装置は、時間をカウントするタイマカウンタと、上記クリーニング部による定期的なクリーニング動作の間隔であるクリーニング間隔を記憶する第4記憶部と、上記検知部がインクを検知した際における上記インク量カウンタの積算値に基づいて上記クリーニング間隔を補正する第2補正部と、を更に備えたものであってもよい。
【0017】
上記検知部がインクを検知した際における上記インク量カウンタの積算値に基づいてクリーニング間隔が補正されることにより、廃インクタンクを使用可能な期間を延ばすことができる。
【0018】
(6) 上記クリーニング部は、上記記録ヘッドに空吐出させるものであってもよい。
【0019】
(7) 本発明のインクジェット記録装置は、上記インク量カウンタの積算値が補正後の上記判断基準値を超えたことを判断する判断部と、上記検知部がインクを検知したことを条件に報知を行い、且つ上記インク量カウンタの積算値が補正後の上記判断基準値を超えたことを条件に報知を行う報知部と、を更に備えたものであってもよい。
【0020】
(8) 本発明のインクジェット記録装置は、インク滴を被記録媒体へ吐出して画像記録を行う記録ヘッドと、上記記録ヘッドからインクを排出させるクリーニング動作を行うクリーニング部と、上記クリーニング部により上記記録ヘッドから排出されたインクを貯留する廃インクタンクと、上記廃インクタンク内に配置されており、上記廃インクタンク内のインクを検知する検知部と、上記廃インクタンクの交換の判断基準値を記憶する第1記憶部と、上記クリーニング部の駆動における駆動設定値が記憶された第5記憶部と、上記駆動設定値に基づいて設定された設定値が記憶された第2記憶部と、上記クリーニング動作が行われるごとに上記設定値を積算するインク量カウンタと、上記検知部がインクを検知した際における上記インク量カウンタの積算値を記憶する第3記憶部と、上記検知部がインクを検知した際における上記インク量カウンタの積算値に基づいて上記駆動設定値または上記設定値を補正する第3補正部と、を備える。
【0021】
インク量カウンタは、クリーニング動作が行われるごとに設定値を積算する。インク量カウンタの積算値は、廃インクタンク内のインクの推定量である。検知部がインクを検知した際のインク量カウンタの積算値は、廃インクタンク内のインクの推定量と廃インクタンク内の実際のインク量との誤差の程度により変わる。第3補正部は、検知部がインクを検知した際のインク量カウンタの積算値に基づいて誤差の程度を判断し、駆動設定値または設定値を補正する。駆動設定値または設定値が補正されることにより、クリーニング動作において記録ヘッドから排出されるインクの量と、設定値との誤差が小さくなり、廃インクタンク内のインクが満量近くになったことを精度良く判断できる。
【0022】
(9) 上記クリーニング部は、インク滴を吐出する吐出口が設けられた上記記録ヘッドの下面に当接して当該吐出口を覆うキャップと、上記駆動時間だけ駆動され、上記キャップ内を負圧にするポンプと、上記キャップと上記廃インクタンクとを接続するチューブと、を備えたものであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、検知部によりインクを検知し、インクを検知した際のインク量カウンタの積算値により、判断基準値、駆動設定値または設定値を補正するので、1つの検知部により、廃インクタンクの交換が間もなく必要であること、及び廃インクタンクの交換が必要になったことを、精度良く判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】インクジェット記録装置10の外観斜視図である。
【図2】(A)は記録部50の下面図であり、(B)はパージ機構60の模式的な側面図である。
【図3】プリンタ部11の一部を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は斜視図である。
【図4】(A)は廃インクタンク70の斜視図であり、(B)は変形例5の廃インクタンク110の斜視図であり、(C)は変形例6の廃インクタンク120の斜視図であり、(D)は変形例3の廃インクタンク70の一部の斜視図である。
【図5】インクジェット記録装置10のブロック図である。
【図6】判断基準値を補正する際の制御部80の動作を説明するフローチャートである。
【図7】補正テーブルを示す図である。
【図8】廃インクタンク70の交換が必要か否かを判断する際の制御部80の動作を説明するフローチャートである。
【図9】変形例3において、判断基準値を補正する際の制御部80の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明がされる。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲において実施形態が適宜変更されてもよい。以下の説明においては、図1に示されるように、インクジェット記録装置10を使用可能に設置した状態を基準として上下方向7が定義されている。また、操作部15がインクジェット記録装置10の前面(正面)側に設けられているものとして前後方向8が定義されている。また、インクジェット記録装置10を前側から見て左右方向9が定義されている。
【0026】
[インクジェット記録装置10の概要]
インクジェット記録装置10は、記録用紙等の不図示のシート(被記録媒体に相当する)に画像を記録するプリンタ部11と、原稿(不図示)に記録された画像を取り込むスキャナ部12とを備えており、プリント、スキャン、コピー等を実行可能である。スキャナ部12は任意の構成であるので、以下では、プリンタ部11について説明がされる。
【0027】
[プリンタ部11の概要]
プリンタ部11は、パーソナルコンピュータなどの外部機器や操作部15により印刷指示を受けて、給紙カセット20に載置されたシートに画像を記録し、画像が記録されたシートを排紙トレイ29に排出する。
【0028】
図5に示されるように、プリンタ部11は、給紙カセット20(図1)に載置されたシートを送り出す給送ローラ43と、シートを搬送する搬送ローラ35及び排紙ローラ38と、搬送されるシートにインク滴を吐出する記録ヘッド51とを備えている。給送ローラ43は、ASFモータ101により駆動される。搬送ローラ35及び排紙ローラ38は、PFモータ102により駆動される。ASFモータ101及びPFモータ102の駆動制御は、制御部80により行われる。制御部80は、不図示の制御基板に実装されたマイクロコンピュータにより実現されている。以下、プリンタ部11の各構成について説明がされる。
【0029】
[筐体13]
図1に示されるように、筐体13は、回動可能な開閉蓋18を前面側に有している。開閉蓋18は、左右方向9における筐体13の右部の下部に配置されている。開閉蓋18の奥側に、不図示のカートリッジ装着部が設けられている。カートリッジ装着部には、インクを収容したインクカートリッジが装着される。また、筐体13は、給紙カセット20を着脱自在に下部に収容している。
【0030】
[操作部15]
操作部15は筐体13の上部に設けられている。操作部15は、不図示の操作スイッチが設けられた操作パネル16と、液晶パネル17(報知部に相当する)とを備えている。
【0031】
[フレーム90]
図3に示されるフレーム90が、給紙カセット20(図1)の上側に配置されている。フレーム90は、プラテン33(図3)や、記録部50のキャリッジ58や、パージ機構60等を保持する部材である。
【0032】
フレーム90は、メインフレーム91と、一対のガイドレール92,93とを備えており、矩形枠状の外形を呈している。詳細には、メインフレーム91は、底板94と、左右方向9において互いに対向する左側板95及び右側板96とを備えている。一対のガイドレール92,93は、左側板95の上端と右側板96の上端とにそれぞれ連結されており、前後方向8において互いに対向している。
【0033】
フレーム90は、一対のガイドレール92,93において、キャリッジ58を左右方向9へ往復動可能に支持している。ガイドレール92,93は、メインフレーム91の右側板96を越えて右側板96の右方まで延ばされている。これは、記録部50をパージ機構60の上側まで移動可能とするためである。詳しくは後述される。
【0034】
[記録部50]
図3に示されるように、記録部50は、キャリッジ58と、キャリッジ58に搭載された記録ヘッド51(記録ヘッドに相当する)とを備えている。
【0035】
図3に示されるように、キャリッジ58は、左右方向9へ往復動可能にガイドレール92,93に支持されている。キャリッジ58は、ガイドレール93の左右方向9における左端部と右端部との間において往復動される。
【0036】
記録ヘッド51は、キャリッジ58がガイドレール93の左端部の上側にあるとき、後述される廃インクトレイ48の上側に位置しており、この位置(以下、フラッシング位置と称される)において、空吐出を行う。記録ヘッド51は、キャリッジ58がガイドレール93の右端部の上側にあるとき、後述のパージ機構60の上側に位置しており、この位置(以下、パージ位置と称される)において、パージ処理を受ける。記録ヘッド51は、フラッシング位置とパージ位置との間にあるとき、プラテン33の上側に位置しており、この位置において、シートへの画像記録を行う。
【0037】
図3(A)に示されるように、記録ヘッド51は、4本のインクチューブ45により、4つのインクカートリッジ(不図示)と接続されている。4つのインクカートリッジに貯留されたブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクが、インクチューブ45を通って記録ヘッド51へ供給される。
【0038】
記録ヘッド51は、インクが流入される複数のノズルを備えている。図2(A)に示されるように、各ノズルは、記録ヘッド51の下面側に吐出口52(吐出口に相当する)をそれぞれ有している。複数の吐出口52は、4つの吐出口列53〜56を構成している。吐出口列53を構成する各ノズルには、ブラックのインクが流入される。吐出口列54〜56を構成する各ノズルには、それぞれシアン、マゼンタ、イエローのうちのいずれかのインクが流入される。
【0039】
記録ヘッド51は、各ノズルを変形させて吐出口52からインク滴を吐出させる不図示の圧電素子を備えている。記録ヘッド51は、圧電素子に印加される電圧の大きさに応じた量のインク滴を吐出口52から吐出する。制御部80(図5)は、圧電素子に印加する電圧の大きさを制御することにより、吐出口52から吐出させるインク滴の量を制御する。制御部80は、インク滴を空吐出させるフラッシングにおいて、所定の電圧を圧電素子に印加する。詳しくは後述される。なお、圧電素子によりインク滴を吐出させる記録ヘッド51に代えて、ヒータによりノズル内のインクを局所的に沸騰させてインク滴を吐出口52から吐出させる記録ヘッドが用いられてもよい。
【0040】
[廃インクトレイ48]
図3に示されるように、廃インクトレイ48は、左右方向9におけるフレーム90の左側板95とプラテン33との間に配置されている。廃インクトレイ48は、フラッシングにおいて記録ヘッド51から空吐出されたインク滴を受ける。廃インクトレイ48には、フェルトやスポンジ等からなる不図示のインク吸収部材が載置されている。空吐出されたインクは、このインク吸収部材に吸収されて保持される。
【0041】
[パージ機構60]
図3に示されるように、パージ機構60(クリーニング部の一例)は、左右方向9におけるフレーム90の右側板96の右側に配置されている。図2(B)に示されるように、パージ機構60は、可動部61と、可動部61を上下方向7へ移動させるカム機構62と、インクが流れる2本のチューブ66,67(チューブに相当する)と、インクを吸引するポンプ63(ポンプに相当する)とを備えている。カム機構62は、不図示の駆動モータの駆動を可動部61に伝達し、可動部61を上下方向7へ移動させる。
【0042】
可動部61は、ゴム材料からなるキャップ64,65(キャップに相当する)を備えている。一方のキャップ64は、パージ位置にある記録ヘッド51の黒色インク用の吐出口列53の下方となる位置に配置されている。キャップ64は、可動部61が上下方向7へ移動されることにより、記録ヘッド51の下面に密着されて吐出口列53の吐出口52を覆い、又は記録ヘッド51の下面から離間されて吐出口列53の吐出口52を開放する。他方のキャップ65は、パージ位置にある記録ヘッド51の吐出口列54〜56の下方となる位置に設けられている。キャップ65は、上下方向7へ移動されることにより、記録ヘッド51の下面に密着されて吐出口列54〜56の吐出口52を覆い、又は記録ヘッド51の下面から離間されて吐出口列54〜56の吐出口52を開放する。
【0043】
チューブ66,67の一端は、キャップ64、キャップ65にそれぞれ接続されおり、チューブ66,67の他端は、廃インクタンク70に接続されている。
【0044】
ポンプ63には、駆動モータ104(図5)により駆動されるロータリ式のチューブポンプが用いられている。駆動モータ104は、例えばPWM制御により駆動が制御される。キャップ64,65が吐出口列53〜56を閉塞した状態において駆動モータ104が駆動されると、キャップ64,65内が負圧となり、インクがノズルからキャップ64,65内を通じてチューブ66,67へ流出する。チューブ66,67に流出されたインクは、廃インクタンク70に流れ込む。なお、駆動モータ104を設ける代わりに遊星ギア機構を設け、この遊星ギア機構により、ASFモータ101(図5)の一方の向きの回転により給送ローラ43(図5)を回転させ、ASFモータ101の他方の向きの回転によりポンプ63を駆動してもよい。
【0045】
[廃インクタンク70]
図4(A)に示されるように、廃インクタンク70(廃インクタンクの一例)は、上下方向7における高さが幅方向や奥行き方向の長さよりも短い扁平な直方体状の外形を呈しており、且つ上部に開口71を有している。廃インクタンク70の第1側壁70Aには、2つの接続管72が接続されている。接続管72の内部空間と廃インクタンク70の内部空間とは連通されている。チューブ66,67(図2(B))が2つの接続管72に接続されている。パージ機構60によりノズルから吸引されたインクは、チューブ66,67を通って接続管72の流入口73から廃インクタンク70内へ流れ込む。
【0046】
インク吸収部材74が廃インクタンク70内に充填されている。インク吸収部材74は、スポンジやフェルトなどインクを吸収可能な材料により直方体状に成型されており、開口71から廃インクタンク70内に挿入されている。廃インクタンク70内へのインクの流入量が増加すると、インクは、図4(A)の1点鎖線の矢印に示される向き77へ徐々に進行する。インクは、廃インクタンク70に対して満量になると、廃インクタンク70の向き77側の第2側壁70Bへ到達する。
【0047】
廃インクタンク70内には検知電極76(検知部に相当する)が配置されている。この検知電極76には、検知回路75(図5)により電圧が印加される。インクが検知電極76に到達していないときは、検知電極76に電圧を印加しても電流はほとんど流れない。検知電極76にインクが到達した後は、検知電極76に電圧を印加すると、インクへの放電により、検知電極76に電流が流れる。検知電極76に電流が流れたことは、検知回路75により検知され、制御部80に入力される。
【0048】
検知回路75は、例えば、定電圧源と、定電圧源にソースが接続された電界効果トランジスタと、電界効果トランジスタのドレインに一端が接続され他端が検知電極76に接続された検知抵抗と、検知抵抗の両端間の電圧又は検知抵抗に流れる電流を検出する検出器とにより構成される。制御部80は、電界効果トランジスタのゲートに駆動信号を入力して電界効果トランジスタをオンさせる。このときの検出器の出力が制御部80に入力される。制御部80は、検出器から入力した信号により、検知電極76にインクが到達しているか否かを判断する。制御部80は、検知電極76にインクが到達していると一度判断すると、当該判断をメモリ83(図5)に記憶させる。
【0049】
インクが検知電極76に到達したときの廃インクタンク70内のインク量(以下、第1インク量と称される)が図4(A)において破線により示されている。検知電極76は、第1インク量が満量未満の所定量となる位置に配置されている。具体的には、検知電極76は、向き77に沿う廃インクタンク70の内側面において、第1インク量が満量の90〜98%程度の値となる位置に配置されている。第1インク量は、後述されるように、廃インクタンク70の交換が必要であるか否かの判断に用いられるので、検知電極76の位置は、設計により厳密に決められる。
【0050】
[制御部80]
図5に示される制御部80(判断部及び第1補正部に相当する)は、制御基板に実装された不図示のマイクロコンピュータにより実現されている。このマイクロコンピュータは、中央演算処理部(CPU)、制御プログラム等が格納されたROM、データの記憶領域又は作業領域として使用されるRAM、EEPROM等により構成されている。各構成要素は、バスを介してASICに接続されている。これらの構成要素により、インク量カウンタ81(インク量カウンタに相当する)、及び時間をカウントする複数のタイマカウンタ82(タイマカウンタに相当する)が形成されている。また、RAM及びEEPROMにより、メモリ83(第1記憶部、第2記憶部、第3記憶部、第4記憶部及び第5記憶部に相当する)が形成されている。
【0051】
メモリ83には、駆動時間、クリーニング間隔、第1設定値、第2設定値、判断基準値、第1閾値α、第2閾値β、及び第1補正テーブル(図7(A))が記憶されている。
【0052】
駆動時間(駆動設定値の一例)は、パージにおいて駆動モータ104が駆動される時間である。制御部80は、メモリ83に記憶された複数の駆動時間からパージの種類に応じた駆動時間を選択し、駆動モータ104を駆動させる。パージの種類には、定期的なものと、ユーザの入力により実施されるものとがある。定期的なパージは、クリーニング間隔(クリーニング間隔に相当する)ごとに定期的に行われる。ユーザの入力により実施されるパージは、ノズルに詰まった異物や気泡により印刷に不備が生じたときに、ユーザに指示されて行われる。制御部80は、ユーザに指示されたパージにおいて、1回のパージにより印刷の不備が解消されない場合は、より長い駆動時間により駆動モータ104を駆動させ、2回目のパージを行う。
【0053】
第1設定値(設定値の一例)は、駆動時間に対応して設定されている。詳細には、第1設定値は、メモリ83に記憶された駆動時間だけ駆動モータ104が駆動されたときに記録ヘッド51から吸引されるインク量から推定の蒸発量を引いた値とされている。
【0054】
インク量カウンタ81は、パージが行われるごとに、第1設定値を積算する。よって、インク量カウンタ81の積算値は、廃インクタンク70に貯留されているインクの推定量となる。インク量カウンタ81の積算値は、電源がオフされても積算を継続できるように、積算を行うごとにメモリ83に記憶される。
【0055】
第2設定値は、フラッシングにおいて記録ヘッド51の圧電素子に印加する電圧を決めるものである。制御部80は、フラッシングにおいて、第2設定値により決まる電圧を圧電素子に印加し、記録ヘッド51にインクを空吐出させる。
【0056】
判断基準値(判断基準値に相当する)は、廃インクタンク70の容量に基づいて設定されている。詳細には、判断基準値は、廃インクタンク70の容量から所定量を引いた値に設定されている。この所定量は、例えば、1〜3回のパージにおいて記録ヘッド51から吸引されるインク量とされる。所定量は、廃インクタンク70からインクが溢れないためのマージンである。
【0057】
第1閾値α、第2閾値β及び第1補正テーブルは、判断基準値を補正するためのものである。以下、詳しく説明がされる。
【0058】
廃インクタンク70に貯留された実際のインク量と、インク量カウンタ81の積算値により推定される推定のインク量との間には、量産におけるパージ機構60の吸引能力のばらつき等により誤差が生じる。制御部80は、検知電極76にインクが到達したときのインク量カウンタ81の積算値である第1積算値により、パージ機構60の吸引能力を判断し、判断した吸引能力により判断基準値を補正する。以下では、記録ヘッド51から吸引するインクの量が多いパージ機構60が吸引能力の高いパージ機構60と称され、記録ヘッド51から吸引するインクの量が少ないパージ機構60が吸引能力の低いパージ機構60と称され、説明がされる。
【0059】
図7(A)の第1補正テーブルに示される第1閾値α(第1閾値に相当する)及び第2閾値β(第2閾値に相当する)は、検知電極76にインクが到達したときの廃インクカウンタ81の積算値である第1積算値との大小関係を比較するためのものである。第1閾値α及び第2閾値βは、以下のようにして決められる。まず、インク量カウンタ81により積算される第1設定値を、吸引能力が平均的なパージ機構60が使用された場合を想定して決定する。次に、このように決定した第1設定値による第1積算値がを基準値(基準値に相当する)とする。つまり、基準値は、吸引能力が平均的なパージ機構60が使用された場合の第1積算値と同じ値とされる。第1閾値αは、基準値より小さい値とされる。第2閾値βは、基準値より大きい値とされる。例えば、基準値を「100」とした場合、第1閾値αは「95」、第2閾値βは「105」である。
【0060】
このように第1閾値α及び第2閾値βを決めることにより、吸引能力が平均的なパージ機構60が使用された場合は、第1閾値α≦第1積算値<第2閾値βとなる。また、吸引能力が低いパージ機構60が使用された場合、第2閾値β≦第1積算値となる。吸引能力が高いパージ機構60が使用された場合、第1積算値<第1閾値αとなる。つまり、第1積算値が第1閾値α及び第2閾値βより大きいか小さいかにより、パージ機構60の吸引能力を判断できる。
【0061】
第1補正テーブル(図7(A))において、第1積算値と、判断基準値を補正するための第1補正値とが対応付けられている。詳細には、第1補正テーブルにおいて、第1積算値<第1閾値αのときの第1補正値が「A」とされており、第1閾値α≦第1積算値<第2閾値βのときの第1補正値が「B」とされており、第2閾値β≦第1積算値のときの第1補正値が「C」とされている。
【0062】
第1閾値α≦第1積算値<第2閾値βであるとき、パージ機構60の吸引能力は平均的であるので、第1補正値Bは、補正後の判断基準値が補正前の判断基準値と同じとなるように、「1」とされている。
【0063】
第1積算値<第1閾値αであるとき、パージ機構60の吸引能力は高いので、第1補正値Aは、補正後の判断基準値が補正前の判断基準値より小さな値となるように、「1」よりも小さな値(例えば、「0.9」)とされている。
【0064】
第2閾値β≦第1積算値であるとき、パージ機構60の吸引能力は低いので、第1補正値Cは、補正後の判断基準値が補正前の判断基準値より大きな値となるように、「1」よりも大きな値(例えば、「1.1」)とされている。
【0065】
[本実施形態の動作]
以下、図5を参照してインクジェット記録装置10の動作が説明される。制御部80は、パーソナルコンピュータなどの外部機器や操作部15(図1)から印刷指示が入力されると、ASFモータ101、PFモータ102、CRモータ103の駆動及び記録ヘッド51の圧電素子への電圧印加を制御し、シートへの画像記録を行う。画像記録が終了すると、制御部80は、CRモータ103の駆動を制御し、記録ヘッド51をパージ位置へ移動させ、キャップ64,65(図2(B))を記録ヘッド51の下面に密着させるキャッピングを行い、ノズル内のインクの乾燥及びノズルへの異物の侵入を防止する。
【0066】
また、制御部80は、パーソナルコンピュータや操作部15からフラッシングを行う旨の指示が入力されたり、一定期間が前回の画像記録から経過したと判断すると、フラッシングを行う。
【0067】
制御部80は、フラッシングを行う場合、CRモータ103を駆動させ、記録ヘッド51をフラッシング位置へ移動させる。その後、制御部80は、メモリ83に記憶された第2設定値により決まる電圧を圧電素子に印加し、インクの空吐出を行う。空吐出されたインクは、廃インクトレイ48(図3)により受けられる。乾燥等により粘性の高くなったインクは、空吐出によって記録ヘッド51から排出される。
【0068】
また、制御部80は、パーソナルコンピュータや操作部15からパージを行う旨の指示が入力されたり、メモリ83に記憶されたクリーニング間隔が前回の定期的なパージから経過したと判断すると、上述のキャッピングを行う。次に、制御部80は、メモリ83に記憶された駆動時間だけ駆動モータ104を駆動させ、記録ヘッド51からインクを吸引させる。記録ヘッド51から吸引されたインクは、チューブ66,67(図2(B))を通って廃インクタンク70内に流れ込み、インク吸収部材74(図4(A))に吸収される。
【0069】
次に、制御部80が、廃インクタンク70の交換が間もなく必要になる旨や、廃インクタンク70の交換が必要である旨を液晶パネル17又はパーソナルコンピュータの表示画面に表示させる動作が説明される。なお、「廃インクタンク70の交換」には、廃インクタンク70内のインク吸収部材74のみを交換することも含まれる。
【0070】
制御部80は、インクジェット記録装置10の電源がオンされた直後や、パージを行った直後などに検知電極76に電圧を印加し、検知電極76にインクが到達しているか否かを判断する。制御部80は、検知電極76にインクが到達していると判断すると、当該判断(以下、第1判断と称される)をメモリ83に記憶し、且つ、廃インクタンク70の交換が間もなく必要になる旨を液晶パネル17又はパーソナルコンピュータの表示画面に表示させる。第1判断は、廃インクタンク70が交換されるまで、メモリ83に記憶され続ける。廃インクタンク70が交換されると、第1判断は消去(リセット)される。
【0071】
また、制御部80は、検知電極76にインクが到達したと判断したときのインク量カウンタ81の積算値である第1積算値をメモリ83に記憶させる。制御部80は、第1積算値をメモリ83に記憶させた後、図6のフローチャートに示される動作を行って判断基準値を補正する。
【0072】
まず、制御部80は、第1積算値<第1閾値αであるか否かを判断する(S1)。制御部80は、第1積算値<第1閾値αであると判断すると(S1,Y)、第1補正テーブル(図7(A))により、第1補正値を「A」に決定する(S2)。制御部80は、第1積算値<第1閾値αでないと判断すると(S1,N)、第1閾値α≦第1積算値<第2閾値βであるか否かを判断する(S3)。制御部80は、第1閾値α≦第1積算値<第2閾値βであると判断すると(S3,Y)、第1補正テーブルにより、第1補正値を「B」に決定する(S4)。制御部80は、ステップS3において、第1閾値α≦第1積算値<第2閾値βでないと判断すると(S3,N)、第1補正テーブルにより、第1補正値を「C」に決定する(S5)。制御部80は、決定した第1補正値を判断基準値に乗じて得た値を補正後の判断基準値とする(S6)。補正後の判断基準値は、メモリ83に記憶される。
【0073】
制御部80は、補正後の判断基準値と、インク量カウンタ81の積算値とを用いて、廃インクタンク70の交換が必要であるか否かを判断する。この判断を行う際の制御部80の動作が、図8に示されるフローチャートを用いて以下詳しく説明される。
【0074】
制御部80は、電源がオンされたり、パージを実行する旨の指示が入力されたりすると、図8に示されるフローチャートの動作を開始する。まず、制御部80は、第1判断がメモリ83に記憶されているか否かを判断する(S11)。制御部80は、第1判断がメモリ83に記憶されていると判断すると(S11,Y)、インク量カウンタ81の積算値が補正後の判断基準値を超えているか否かを判断する(S12)。制御部80は、インク量カウンタ81の積算値が補正後の判断基準値を超えていると判断すると(S12,Y)、次にパージを行うと廃インクタンク70からインクが溢れるおそれがあるとして、廃インクタンク70の交換が必要であると判断する(S13)。そうすると、制御部80は、廃インクタンク70の交換が必要である旨を液晶パネル17又はパーソナルコンピュータの表示画面に表示させ(S14)、動作を終了する。
【0075】
制御部80は、ステップS11において第1判断がメモリ83に記憶されていないと判断した場合(S11,N)、又はステップS12においてインク量カウンタ81の積算値が補正後の判断基準値を超えていないと判断した場合(S12,N)は、次にパージを行っても廃インクタンク70からインクが溢れるおそれがないとして、廃インクタンク70の交換が必要でないと判断し(S15)、動作を終了する。なお、制御部80は、廃インクタンク70の交換が必要であると判断した後は、ユーザによる指示が入力されたとしても、また、クリーニング間隔が経過したとしても、パージを行わない。これにより、廃インクタンク70からインクが溢れることが防止される。
【0076】
[実施形態の効果]
上述されたように、廃インクタンク70内の実際のインク量と、インク量カウンタ81の積算値に基づいて推定される廃インクタンク70内のインク量との間には、パージ機構60の吸引能力の量産におけるばらつきにより、誤差が生じる。この誤差により、廃インクタンク70内のインクが満量近くになったことを正確に判断できない事態が生じる。本実施形態では、パージ機構60の吸引能力の違いによって変化する第1積算値に基づいてパージ機構60の吸引能力を判断し、この判断に基づいて判断基準値を補正する。よって、パージ機構60の吸引能力の違いに拘わらず、廃インクタンク70内のインクが満量近くになったことを正確に判断できる。したがって、1つの検知電極76により、廃インクタンク70の交換が間もなく必要になること、及び廃インクタンク70の交換が必要になったことを精度良く判断できる。その結果、製造コストが抑えられており、且つ使い勝手の良いインクジェット記録装置10を実現できる。
【0077】
上述の実施形態では、決定した第1補正値が判断基準値に乗じられて判断基準値が補正された。しかしながら、決定した第1補正値が判断基準値に加減算されて判断基準値が補正されてもよい。また、第1補正テーブルにおいて、第1積算値と補正後の判断基準値とが直接対応付けられていてもよい。
【0078】
また、上述の実施形態では、吸引能力の平均的なパージ機構60に基づいて第1設定値、第1閾値α、第2閾値βが決められた例が説明された。しかしながら、吸引能力の低いパージ機構60や吸引能力の高いパージ機構60に基づいて第1設定値、第1閾値α、第2閾値βが決められていてもよい。吸引能力の低いパージ機構60に基づいて第1設定値、第1閾値α、第2閾値βが決められる場合について以下説明がされる。この場合、第1閾値α<第2閾値β<基準値とされる。上述と同様に、第2閾値β≦第1積算値である場合、パージ機構60の吸引能力は低いと判断できる。上述のように、インク量カウンタ81により積算される第1設定値は、吸引能力の低いパージ機構60を想定して決められている。よって、パージ機構60の吸引能力が低い場合は、判断基準値を変える必要はない。したがって、第2閾値β≦第1積算値である場合の第1補正値Cは、補正後の判断基準値が補正前の判断基準値と同じになるように、「1」とされる。第1閾値α≦第1積算値<第2閾値βである場合、パージ機構60の吸引能力は平均的であると判断される。このときの第1補正値Bは、補正後の判断基準値が補正前の判断基準値より小さくなるように、「1」より小さい値(例えば、「0.95」)とされる。第1積算値<第1閾値αである場合、パージ機構60の吸引能力は高いと判断される。このときの第1補正値Aは、補正後の判断基準値が補正前の判断基準値より更に小さくなるように、第1補正値Bよりも小さい値(例えば、「0.90」)とされる。吸引能力の高いパージ機構60を基準とした場合、基準値<第1閾値α<第2閾値βとされる。第1補正値Aは、「1」とされ、第2補正値Bは、「1」よりも大きな値(例えば、「1.05」)とされ、第3補正値Cは、第2補正値Bよりも大きな値(例えば、「1.10」)とされる。
【0079】
[変形例1]
上述の実施形態では、判断基準値を補正する例が説明された。本変形例では、駆動モータ104の駆動時間を補正する例が説明される。
【0080】
本変形例では、判断基準値は、上述の実施形態と異なり、廃インクタンク70(図4(A))の容量から第1インク量を引いた量(第2インク量と称される)に基づいて設定されている。詳細には、第2インク量から所定量を引いた量が判断基準値とされている。この所定量は、例えば、1〜3回のパージにおいて記録ヘッド51から吸引されるインク量とされる。所定量は、廃インクタンク70からインクが溢れないためのマージンである。
【0081】
また、メモリ83には、第1補正テーブルの代わりに、図7(B)に示される第2補正テーブルが記憶されている。第2補正テーブルでは、第1積算値と第2補正値とが対応付けられている。その他の構成は上述の実施形態と同じである。
【0082】
制御部80は、検知電極76にインクが到達したと判断すると、第1判断及び第1積算値をメモリ83に記憶させ、且つインク量カウンタ81のカウント値をリセットする。また、制御部80は、検知電極76にインクが到達したと判断すると、廃インクタンク70の交換が間もなく必要になる旨を液晶パネル17又はパーソナルコンピュータの表示画面に表示させる。
【0083】
制御部80(判断部及び第3補正部に相当する)は、第1積算値をメモリ83に記憶させた後、図6のフローチャートの動作と同様の動作を行い、メモリ83に記憶された駆動時間を補正する。図6のフローチャートにおいて、第1設定テーブルの代わりに第2設定テーブルが用いられ、第1補正値A,B,Cの代わりに第2補正値D,E,Fが決定される。メモリ83に記憶された駆動時間は、決定された第2補正値が乗じられることにより補正される。補正後の駆動時間は、メモリ83に記憶される。
【0084】
第1閾値α≦第1積算値<第2閾値βであるとき、上述の実施形態と同様に、パージ機構60の吸引能力を平均的と判断できる。よって、第1閾値α≦第1積算値<第2閾値βであるときの第2補正値Eは、補正後の駆動時間が補正前の駆動時間と同じ値となるように「1」とされている。
【0085】
第1積算値<第1閾値αであるとき、パージ機構60の吸引能力を高いと判断できる。よって、第1積算値<第1閾値αであるときの第2補正値Dは、補正後の駆動時間が補正前の駆動時間より短くなって、パージ機構60が記録ヘッド51から吸引するインクの量が、吸引能力が平均的なパージ機構60が記録ヘッド51から吸引するインクの量とほぼ同じになるように、「1」よりも小さな値(例えば、「0.95」)とされている。
【0086】
第2閾値β≦第1積算値であるとき、パージ機構60の吸引能力を低いと判断できる。よって、第2閾値β≦第1積算値であるときの第1補正値Fは、補正後の駆動時間が補正前の駆動時間より長くなって、パージ機構60が記録ヘッド51から吸引するインクの量が、吸引能力が平均的なパージ機構60が記録ヘッド51から吸引するインクの量とほぼ同じになるように、「1」よりも大きな値(例えば、「1.05」)とされている。
【0087】
制御部80は、駆動時間を補正した後は、補正後の駆動時間により駆動モータ104を駆動させ、パージを行う。
【0088】
制御部80は、電源がオンされた直後や、パージを行う旨の指示を受けた直後や、パージを行った直後などに、上述の実施形態と同様に、図8のフローチャートに示された動作を行い、廃インクタンク70の交換が必要であるか否かを判断する。
【0089】
本変形例では、制御部80は、駆動モータ104の駆動時間を補正することにより、パージ機構60の吸引能力の差によって生じる吸引インク量のばらつきを抑えている。よって、検知電極76にインクが到達した後は、廃インクタンク70へ流れ込むインクの量が、パージ機構60の吸引能力の違いに拘わらずほぼ同じになり、廃インクタンク70内のインクが満量近くになったことを正確に判断できる。
【0090】
本変形例では、決定した第2補正値を駆動時間に乗じて駆動時間を補正する例が説明された。しかしながら、決定した第2補正値を駆動時間に加減算することにより駆動時間を補正してもよい。また、第2補正テーブルにおいて、第1積算値と補正後の駆動時間とが直接対応付けられていてもよい。
【0091】
また、本変形例では、駆動時間を長くし、又は短くする例が説明された。しかしながら、駆動時間が段階的に短くされてもよい。つまり、吸引能力の低いパージ機構60においても異物等を記録ヘッドから確実に除去できるように、吸引能力の低いパージ機構60に合わせて駆動時間を長めに設定しておき、第1積算値に基づいて駆動時間を段階的に短くする。
【0092】
また、本変形例では、駆動モータ104の駆動時間を補正することにより、パージ機構60の吸引能力の違いに拘わらず廃インクタンク70へ流れ込むインクの量をほぼ同じにする例が説明された。しかしながら、駆動モータ104の回転速度(駆動設定値の一例)を増減することにより、パージ機構60の吸引能力の違いに拘わらず廃インクタンク70へ流れ込むインクの量をほぼ同じにすることができる。駆動モータ104の回転速度の補正は、駆動時間の補正と同様にして行われる。
【0093】
また、本変形例では、駆動時間を補正する例が説明されたが、第1設定値を補正しても、廃インクタンク70内のインクが満量近くになったことを正確に判断することができる。なお、この場合、第1設定値は、駆動時間と同様にして補正される。
【0094】
[変形例2]
本変形例では、第1積算値により、判断基準値、及び、メモリ83に記憶されたクリーニング間隔が補正される例が説明される。
【0095】
上述されたように、パージ機構60の吸引能力は量産においてばらつく。クリーニング間隔は、吸引能力の低いパージ機構60に合わせて短めに設定されている。本変形例では、第1積算値によりパージ機構60の吸引能力を判断し、クリーニング間隔を長くする。以下、詳しく説明がされる。
【0096】
インクジェット記録装置10の基本的な構成は、上述の実施形態と同じであり、実施形態と同様にして判断基準値が補正される。但し、第1補正テーブルに加え、図7(C)に示される第3補正テーブルがメモリ83に記憶されている。なお、判断基準値の補正方法は、上述の実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0097】
制御部80(第1補正部及び第2補正部に相当する)は、検知電極76にインクが到達したと判断すると、第1判断及び第1積算値をメモリ83に記憶させる。また、制御部80は、検知電極76にインクが到達したと判断すると、廃インクタンク70の交換が間もなく必要になる旨を液晶パネル17又はパーソナルコンピュータの表示画面に表示させる。
【0098】
制御部80は、第1積算値をメモリ83に記憶させた後、図6のフローチャートの動作と同様の動作を行い、メモリ83に記憶されたクリーニング間隔を補正する。図6のフローチャートにおいて、第1設定テーブルの代わりに第3設定テーブルが用いられ、第1補正値A,B,Cの代わりに第3補正値G,H,Jが決定される。クリーニング間隔は、決定された第3補正値が乗じられることにより補正される。補正後のクリーニング間隔は、メモリ83に記憶される。
【0099】
第1積算値<第1閾値αであるとき、上述の実施形態と同様に、パージ機構60の吸引能力を高いと判断できる。よって、第1積算値<第1閾値αのときの第3補正値Gは、クリーニング間隔を長くするために、「1」より大きい値(例えば、「1.1」)とされる。
【0100】
第1閾値α≦第1積算値<第2閾値βであるときは、パージ機構60の吸引能力を平均的であると判断できる。よって、第1閾値α≦第1積算値<第2閾値βのときの第3補正値Hは、クリーニング間隔を少し長くするために、「1」よりも大きく第3補正値Gよりも小さい値(例えば、「1.05」)とされる。
【0101】
第2閾値β≦第1積算値であるときは、パージ機構60の吸引能力を低いと判断できる。よって、第2閾値β≦第1積算値であるときの第3補正値Jは、補正後のクリーニング間隔が補正前のクリーニング間隔と同じになるように、「1」とされる。
【0102】
制御部80は、クリーニング間隔を補正した後は、前回の定期的なパージから補正後のクリーニング間隔が経過すると、定期的なパージを行う。
【0103】
本変形例では、吸引能力の高いパージ機構60や吸引能力が平均的なパージ機構60が使用されているインクジェット記録装置10において、廃インクタンク70を使用可能な期間を延ばすことができる。
【0104】
本変形例では、決定した第3補正値がクリーニング間隔に乗じられてクリーニング間隔が補正された例が説明された。しかしながら、決定した第3補正値をクリーニング間隔に加えることによりクリーニング間隔を補正してもよい。また、第3補正テーブルにおいて、第1積算値と補正後のクリーニング間隔とが直接対応付けられていてもよい。
【0105】
[変形例3]
本変形例では、第1積算値に加え、検知電極76にインクが到達するまでの廃インクタンク70の平均温度及び経過時間により判断基準値が補正される例が説明される。
【0106】
上述の実施形態では、第1積算値に基づいてパージ機構60の吸引能力を判断した。しかしながら、第1積算値は、パージ機構60の吸引能力のばらつきに加え、インクの蒸発量の多寡によっても変わる。本実施形態では、検知電極76にインクが到達するまでの廃インクタンク70の平均温度及び経過時間によりインクの蒸発量を推定し、パージ機構60の吸引能力を、より正確に判断する。そうすることにより、廃インクタンク70が満量近くになったことを、上述の実施形態よりも正確に判断できる。以下、詳しく説明がされる。
【0107】
本変形例では、図4(D)に示されるサーミスタ135(温度センサに相当する)が廃インクタンク70に設けられている。また、第1補正テーブルに代えて、図7(D),(E)に示される第4補正テーブル及び第5補正テーブルがメモリ83に記憶されている。本変形例のその他の構成は、上述の実施形態と同じである。
【0108】
図4(D)に示されるように、廃インクタンク70の第3側壁70Cには、留め金具133を保持する一対の保持部130が設けられている。各保持部130は、第3側壁70Cに対向する保持片131をそれぞれ有している。留め金具133には、矩形状の金属片が用いられている。一対の保持片131と第3側壁70Cとの間に留め金具133の長手方向の両端部が挿入されている。この両端部間に、サーミスタ135が挿通される挿入孔134が開口されている。サーミスタ135には、留め金具133の挿入孔134の縁に引っ掛かる段部が設けられている。サーミスタ135は、留め金具133により、第3側壁70Cに押し付けられ、第3側壁70Cに密着された状態に維持される。サーミスタ135のリード線136は、制御基板(不図示)に接続されている。サーミスタ135の出力は、リード線136を介して制御部80(図5)に入力される。
【0109】
制御部80(判断部、第1補正部及び第2補正部に相当する)は、一定期間が経過するごとに、サーミスタ135により検知された廃インクタンク70の温度をインクの温度としてメモリ83に記憶させる。一定期間は、例えば、1週間〜3カ月間程度である。また、制御部80は、インクジェット記録装置10の使用が開始されたときから、又は廃インクタンク70が交換されたときから検知電極76にインクが到達したと判断するまでの経過時間をタイマカウンタ82にカウントさせる。
【0110】
制御部80は、検知電極76にインクが到達したと判断すると、第1判断、第1積算値、及び検知電極76にインクが到達したと判断したときのタイマカウンタのカウント値(以下、第1時間と称される)をメモリ83に記憶させる。また、制御部80は、検知電極76にインクが到達したと判断すると、廃インクタンク70の交換が間もなく必要になる旨を液晶パネル17又はパーソナルコンピュータの表示画面に表示させる。
【0111】
また、制御部80は、検知電極76にインクが到達したと判断すると、それまでに検知した廃インクタンク70の温度の平均値を算出する。その後、制御部80は、第1積算値と、算出した平均温度と、第1時間と、図7(D)に示される第4補正テーブルと、図7(E)に示される第5補正テーブルとを用いて判断基準値を補正する。第4補正テーブルでは、平均温度及び第1時間と、第4補正値とが対応付けられている。第5補正テーブルでは、第4補正値及び第1積算値と、第5補正値とが対応付けられている。以下、図9のフローチャートを参照して、第1積算値を補正する際の制御部80の動作が詳しく説明される。
【0112】
制御部80は、メモリ83に記憶された第3閾値(例えば、25℃)を用いて、平均気温が「高い」か否かを判断する(S21)。本実施形態において、平均気温が第3閾値より高い場合に、「高い」とし、平均気温が第3閾値より低い場合に、「低い」とする。制御部80は、平均気温が「高い」と判断すると(S21,Y)、メモリ83に記憶された第4閾値(例えば、52時間)を用いて、第1時間が長いか否かを判断する(S22)。本実施形態において、第1時間が第4閾値より長い場合に、「長い」とし、第1時間が第4閾値より短い場合に、「短い」とする。制御部80は、第1時間が長いと判断すると(S22,Y)、第4補正テーブルにより、第4補正値を「K」に決定する(S23)。制御部80は、ステップS21において、平均気温が「低い」と判断すると(S21,N)、第1時間が「長い」か否かを判断する(S24)。制御部80は、第1時間が「短い」と判断すると(S24,N)、第4補正テーブルにより、第4補正値を「M」に決定する(S26)。制御部80は、ステップS22において、第1時間が「短い」と判断した場合(S22,N)、及び、ステップS24において、第1時間が「長い」と判断した場合(S24,Y)、第4補正テーブルにより、第4補正値を「L」に決定する(S25)。
【0113】
制御部80は、第4補正値を決定した後、第1積算値<第1閾値αであるか否かを判断する(S27)。制御部80は、第1積算値<第1閾値αであると判断すると(S27,Y)、第4補正値が「K」であるか否かを判断する(S28)。制御部80は、第4補正値が「K」であると判断すると(S28,Y)、第5補正テーブルにより、第5補正値を「U」に決定する(S29)。制御部80は、ステップS28において、第4補正値が「K」でないと判断すると(S28,N)、第4補正値が「L」であるか否かを判断する(S30)。制御部80は、第4補正値が「L」であると判断すると(S30,Y)、第5補正テーブルにより、第5補正値を「V」に決定する(S31)。制御部80は、ステップS30において、第4補正値が「L」でないと判断すると(S30,N)、第5補正テーブルにより、第5補正値を「W」に決定する(S32)。
【0114】
制御部80は、ステップS27において、第1積算値<第1閾値αでないと判断すると(S27,N)、第1閾値α≦第1積算値<第2閾値βであるか否かを判断する(S33)。制御部80は、第1閾値α≦第1積算値<第2閾値βであると判断すると(S33,Y)、第4補正値が「K」であるか否かを判断する(S34)。制御部80は、第4補正値が「K」であると判断すると(S34,Y)、第5補正テーブルにより、第5補正値を「R」に決定する(S35)。制御部80は、ステップS34において、第4補正値が「K」でないと判断すると(S34,N)、第4補正値が「L」であるか否かを判断する(S36)。制御部80は、第4補正値が「L」であると判断すると(S36,Y)、第5補正テーブルにより、第5補正値を「S」に決定する(S37)。制御部80は、ステップS36において、第4補正値が「L」でないと判断すると(S36,N)、第5補正テーブルにより、第5補正値を「T」に決定する(S38)。
【0115】
制御部80は、ステップS33において、第1閾値α≦第1積算値<第2閾値βでないと判断すると(S33,N)、第4補正値が「K」であるか否かを判断する(S39)。制御部80は、第4補正値が「K」であると判断すると(S39,Y)、第5補正テーブルにより、第5補正値を「N」に決定する(S40)。制御部80は、ステップS39において、第4補正値が「K」でないと判断すると(S39,N)、第4補正値が「L」であるか否かを判断する(S41)。制御部80は、第4補正値が「L」であると判断すると(S41,Y)、第5補正テーブルにより、第5補正値を「P」に決定する(S42)。制御部80は、ステップS41において、第4補正値が「L」でないと判断すると(S41,N)、第5補正テーブルにより、第5補正値を「Q」に決定する(S43)。
【0116】
制御部80は、第5補正値を決定した後、第5補正値を判断基準値に乗じて補正する(S44)。補正後の判断基準値は、メモリ83に記憶される。
【0117】
第5補正値Uは、第4補正値が「K」、すなわち、平均気温が「高い」且つ第1時間が「長い」であり、且つ第1積算値<第1閾値αであるときの補正値である。つまり、第5補正値Uは、インクの蒸発量が多く、且つ第1積算値が第1インク量よりかなり少ないときの補正値である。よって、パージ機構60の吸引能力がかなり高いと判断できる。したがって、第5補正値Uは、「1」よりもかなり小さい値(例えば、「0.900」)とされる。
【0118】
第5補正値Vは、第4補正値が「L」、すなわち、平均気温が「高い」(又は「低い」)且つ第1時間が「短い」(又は「長い」)であり、且つ第1積算値<第1閾値αであるときの補正値である。つまり、第5補正値Vは、インクの蒸発量が平均的な量であり、且つ第1積算値が第1インク量よりかなり少ないときの補正値である。よって、パージ機構60の吸引能力が少し高いと判断できる。したがって、第5補正値Vは、「1」よりも小さく、第5補正値Uよりも少し大きな値(例えば、「0.925」)とされる。
【0119】
第5補正値Wは、第4補正値が「M」、すなわち、平均気温が「低い」且つ第1時間が「短い」であり、且つ第1積算値<第1閾値αであるときの補正値である。つまり、第5補正値Wは、インクの蒸発量が少なく、且つ第1積算値が第1インク量よりかなり少ないときの補正値である。よって、パージ機構60の吸引能力は少し高いが、第5補正値を「V」としたときよりは低いと判断できる。したがって、第5補正値Wは、「1」よりも小さく、第5補正値Vよりも少し大きい値(例えば、「0.950」)とされる。
【0120】
第5補正値Sは、第4補正値が「L」であり、且つ第1閾値α≦第1積算値<第2閾値βであるときの補正値である。つまり、第5補正値Sは、インクの蒸発量が平均的な量であり、且つ第1積算値が第1インク量とほぼ同じときの補正値である。よって、パージ機構60の吸引能力が平均的であると判断できる。したがって、第5補正値Vは「1」とされる。
【0121】
第5補正値Rは、第4補正値が「K」であり、且つ第1閾値α≦第1積算値<第2閾値βであるときの補正値である。つまり、第5補正値Rは、インクの蒸発量が多く、且つ第1積算値が第1インク量とほぼ同じときの補正値である。よって、パージ機構60の吸引能力が少し高いと判断できる。したがって、第5補正値Rは、「1」よりも少し小さい値(例えば、「0.975」)とされる。
【0122】
第5補正値Tは、第4補正値が「M」であり、且つ第1閾値α≦第1積算値<第2閾値βであるときの補正値である。つまり、第5補正値Tは、インクの蒸発量が少なく、且つ第1積算値が第1インク量とほぼ同じときの補正値である。よって、パージ機構60の吸引能力が少し低いと判断できる。したがって、第5補正値Tは、「1」よりも少し大きな値(例えば、「1.025」)とされる。
【0123】
第5補正値Qは、第4補正値が「M」であり、且つ第2閾値β≦第1積算値であるときの補正値である。つまり、第5補正値Qは、インクの蒸発量が少なく、且つ第1積算値が第1インク量よりかなり多いときの補正値である。よって、パージ機構60の吸引能力がかなり低いと判断できる。したがって、第5補正値Qは、「1」よりもかなり大きな値(例えば、「1.100」)とされる。
【0124】
第5補正値Pは、第4補正値が「L」且つ第2閾値β≦第1積算値であるときにの補正値である。つまり、第5補正値Pは、インクの蒸発量が平均的な量であり、且つ第1積算値が第1インク量よりかなり多いときの補正値である。よって、パージ機構60の吸引能力が少し低いと判断できる。したがって、第5補正値Pは、「1」よりも大きく、第5補正値Qよりも小さい値(例えば、「1.075」)とされる。
【0125】
第5補正値Nは、第4補正値が「K」であり、且つ第2閾値β≦第1積算値であるときの補正値である。つまり、第5補正値Nは、インクの蒸発量が多く、且つ第1積算値が第1インク量よりかなり多いときの補正値である。よって、パージ機構60の吸引能力は少し低いが、第5補正値を「P」とした場合よりは高いと判断できる。したがって、第5補正値Nは、「1」よりも大きく、第5補正値Pよりも少し小さい値(例えば、「1.050」)とされる。
【0126】
制御部80は、電源がオンされた直後や、パージが行われた直後などに、補正後の判断基準値を用いて廃インクタンク70の交換が必要であるか否かを判断する。この判断時に制御部80が行う動作は、図8に示されるフローチャートの動作と同じである。
【0127】
本変形例では、第1積算値と、平均温度と、第1時間とにより判断基準値が補正されるので、第1積算値のみにより判断基準値を補正する上述の実施形態よりも、パージ機構60の吸引能力を正確に判断できる。よって、廃インクタンク70内のインクが満量近くになったことを、上述の実施形態よりも正確に判断できる。なお、上述されたように、第1インク量は、廃インクタンク70の容量の90%〜98%に設定されているので、第1インク量から満量近くになるまでの期間におけるインクの蒸発量は少なく、当該蒸発量が大きくばらつくことはない。よって、第1インク量から満量近くになるまでの間の蒸発量のばらつきが、廃インクタンク70内のインクが満量近くになったことの判断に与える影響は少ない。
【0128】
本変形例では、決定した第5補正値が判断基準値に乗じられて判断基準値が補正された。しかしながら、決定した第5補正値を判断基準値に加減算することにより判断基準値が補正されてもよい。また、第5補正テーブルにおいて、第1積算値及び第4補正値と補正後の判断基準値とが直接対応付けられていてもよい。また、本変形例において、判断基準値の補正に加え、上述の変形例2と同様にしてメモリ83に記憶されたクリーニング間隔が補正されてもよい。
【0129】
また、本変形例では、廃インクタンク70の温度をインクの温度として検知する例が説明された。しかしながら、廃インクタンク70内のインクの温度が直接検知されてもよいし、廃インクタンク70の周辺の雰囲気温度がインクの温度として検知されてもよい。
【0130】
[変形例4]
変形例1では、第1積算値により、駆動モータ104の駆動時間又は第1設定値が補正される例が説明された。しかしながら、変形例3のように、第1積算値と、平均温度と、第1時間とにより、駆動モータ104の駆動時間、駆動モータの回転速度又は第1設定値が補正されてもよい。この場合、駆動モータ104の駆動時間、駆動モータの回転速度又は第1設定値の補正は、変形例3と同様にして行われる。
【0131】
本変形例では、第1積算値と、平均温度と、第1時間とにより、駆動モータ104の駆動時間、駆動モータ104の回転速度又は第1設定値が補正されるので、第1積算値のみにより駆動モータ104の駆動時間、駆動モータの回転速度又は第1設定値を補正する変形例1よりも、パージ機構60の吸引能力を正確に判断できる。その結果、廃インクタンク70内のインクが満量近くになったことを、変形例1よりも正確に判断できる。
【0132】
[変形例5]
本変形例では、図4(A)に示される廃インクタンク70の代わりに、図4(B)に示される廃インクタンク110(廃インクタンクの一例)が用いられた例が説明される。
【0133】
廃インクタンク110は、廃インクタンク70とほぼ同じ外形を呈している。但し、2つの接続管72は、上下に並べられて配置されている。また、2つの接続管72は、第1向き111側の廃インクタンク110の端部に設けられている。また、廃インクタンク110内には、底から起立するリブ113が設けられている。リブ113は、第1側壁70Aの第1方向111における中央部から第2向き112へ沿って延び、且つ第2側壁70Bから離間されている。よって、貯留されるインクの進む向きは、図4(B)の一点鎖線の矢印の向き77に示されるようなUターンする向きになる。
【0134】
検知電極76は、廃インクタンク110内のインク量が第1インク量(図の破線により示される量)になったときにインクが到達する位置に配置されている。詳細には、検知電極76は、第1向き111とは反対向き側の第3側壁70Cにおいて、第1側壁70Aに寄せて廃インクタンク110内に配置されている。
【0135】
本変形例の廃インクタンク110においては、図4(A)に示される廃インクタンク70よりもインクの流路が細いので、上述の実施形態よりも、廃インクタンク110内のインクの量が第1インク量となったことを正確に検知することができる。
【0136】
[変形例6]
本変形例では、図4(A)に示される廃インクタンク70の代わりに、図4(C)に示される廃インクタンク120(廃インクタンクの一例)が用いられている。廃インクタンク120は、高さ方向の長さが幅方向や奥行き方向の長さよりも長い外形を呈しており、且つ上部に開口121を有している。この開口121からインク吸収部材122が廃インクタンク120内に挿入されている。2つの接続管72は、廃インクタンク120の第1側壁120Aの下端部に接続されている。廃インクタンク120内へのインクの流入量が増加すると、インクは、図4(C)の一点鎖線の矢印に示されるように上向きへ進行する。インクは、廃インクタンク120に対して満量になると、廃インクタンク120の上端に到達する。
【0137】
縦長の廃インクタンク120を用いることにより、前後方向8や左右方向9において、筐体13を小さくすることができる。
【0138】
[変形例7]
上述の実施形態では、廃インクタンク70に検知電極76が設けられた例が説明された。しかしながら、廃インクタンク70と同様にして、検知電極76と同構成の検知電極が廃インクトレイ48(廃インクタンクの一例)に設けられていてもよい。メモリ83に記憶される判断基準値は、廃インクトレイ48の容量に基づいて設定される。メモリ83には、第2設定値に基づいて設定された第3設定値(本発明の設定値の一例)が記憶される。詳細には、第2設定値により決まる電圧が記録ヘッド51の圧電素子に印加されたときに記録ヘッド51が空吐出するインクの量から推定の蒸発量を引いた値が第3設定値とされる。インク量カウンタ81は、フラッシングが行われるごとに、第3設定値を積算する。本変形例において、記録ヘッド51からインク滴を空吐出させる圧電素子及び制御部80は、クリーニング部の一例である。
【0139】
制御部80は、インクジェット記録装置10の電源がオンされた直後や、フラッシングを行った直後などに検知電極に電圧を印加し、検知電極にインクが到達しているか否かを判断する。制御部80は、検知電極にインクが到達していると判断すると、廃インクトレイ48の交換が間もなく必要である旨を液晶パネル17又はパーソナルコンピュータの表示画面に表示させる。
【0140】
また、制御部80は、検知電極にインクが到達したと一旦判断した後は、フラッシングが行われるごとに、又は、電源がオンされるごとに、上述の実施形態と同様にして、廃インクトレイ48の交換が必要であるか否かを判断する。制御部80は、廃インクトレイ48の交換が必要であると判断すると、廃インクトレイ48の交換が必要である旨を液晶パネル17又はパーソナルコンピュータの表示画面に表示させる。
【0141】
本変形例において、フラッシングが一定間隔ごとに行われる場合は、上述の変形例2と同様にして、フラッシングを行う間隔(クリーニング間隔の一例)が補正されてもよい。また、変形例3と同様に、廃インクトレイ48にサーミスタ135を取り付け、サーミスタ135により検知した廃インクトレイ48の温度及び第1時間により、判断基準値を補正してもよい。また、変形例1と同様に、第1積算値により、第2設定値又は第3設定値が補正されてもよい。
【0142】
[その他の変形例]
上述の実施形態または変形例では、2個の閾値(第1閾値α、第2閾値β)を用いて第1積算値を3つに区分して判断基準値、駆動時間、またはクリーニング間隔を補正する例が説明された。しかしながら、3個以上の閾値を用いて第1積算値を4つ以上に区分して判断基準値、駆動時間、またはクリーニング間隔を補正してもよい。
【0143】
また、上述の実施形態または変形例では、閾値(第1閾値α、第2閾値β)を用いて第1積算値を区分して補正する例が説明された。しかしながら、例えば、「第1積算値−基準値」の計算式により得られた値に応じた値を判断基準値、駆動時間、またはクリーニング間隔に加減算して補正してもよい。
【0144】
上述の実施形態では、液晶パネル17又はパーソナルコンピュータの表示画面により表示を行う例が説明された。しかしながら、発光ダイオード(LED)の点灯、点滅や、スピーカからの音声により、廃インクタンク70の交換が間もなく必要である旨、及び廃インクタンク70の交換が必要である旨が報知されてもよい。
【0145】
上述の実施形態及び変形例では、検知電極76を用いた例が説明された。しかしながら、廃インクタンク70内のインク量が第1インク量となったことを検知できるのであれば、他の既存のセンサが用いられても良い。例えば、第1インク量未満ではインクが光路から外れており、第1インク量以上ではインクが光路上にあるように設置されたフォトインタラプタが検知電極76の代わりに用いられてもよい。
【0146】
上述の実施形態において説明されたパージ機構60の他に、既存の他のパージ機構が用いられても、もちろんよい。
【符号の説明】
【0147】
6・・・被記録媒体
17・・・液晶パネル
10・・・インクジェット記録装置
48・・・廃インクトレイ
51・・・記録ヘッド
60・・・パージ機構
63・・・ポンプ
64,65・・・キャップ
66,67・・・チューブ
70・・・廃インクタンク
76・・・検知電極
80・・・制御部
81・・・インク量カウンタ
82・・・タイマカウンタ
83・・・メモリ
110・・・廃インクタンク
120・・・廃インクタンク
135・・・サーミスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴を被記録媒体へ吐出して画像記録を行う記録ヘッドと、
上記記録ヘッドからインクを排出させるクリーニング動作を行うクリーニング部と、
上記クリーニング部により上記記録ヘッドから排出されたインクを貯留する廃インクタンクと、
上記廃インクタンク内に配置されており、上記廃インクタンク内のインクを検知する検知部と、
上記廃インクタンクの交換の判断基準値を記憶する第1記憶部と、
上記クリーニング動作において上記記録ヘッドから排出されるインクの排出量に対応する設定値を記憶する第2記憶部と、
上記クリーニング動作が行われるごとに上記設定値を積算するインク量カウンタと、
上記検知部がインクを検知した際における上記インク量カウンタの積算値に基づいて上記判断基準値を補正する第1補正部と、を備えたインクジェット記録装置。
【請求項2】
上記第1補正部は、上記検知部がインクを検知した際の上記廃インクタンク内のインク量に相当する値である基準値と、上記検知部がインクを検知した際における上記インク量カウンタの積算値とに基づいて、上記判断基準値を補正するものである請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
上記基準値より小さい第1閾値、及び上記基準値より大きい第2閾値を記憶する第3記憶部を更に備えており、
上記第1補正部は、上記第1閾値及び上記第2閾値と、上記検知部がインクを検知した際における上記インク量カウンタの積算値とに基づいて上記判断基準値を補正するものである請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
上記廃インクタンク内のインクの温度または上記廃インクタンクの周辺温度を検出する温度センサと、
時間をカウントするタイマカウンタと、を更に備えており、
上記第1補正部は、上記検知部がインクを検知した際における上記インク量カウンタの積算値と、上記検知部がインクを検知するまでに上記温度センサが検知した温度及び上記タイマカウンタのカウント値とに基づいて補正を行うものである請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
時間をカウントするタイマカウンタと、
上記クリーニング部による定期的なクリーニング動作の間隔であるクリーニング間隔を記憶する第4記憶部と、
上記検知部がインクを検知した際における上記インク量カウンタの積算値に基づいて上記クリーニング間隔を補正する第2補正部と、を更に備えた請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
上記クリーニング部は、上記記録ヘッドに空吐出させるものである請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
上記インク量カウンタの積算値が補正後の上記判断基準値を超えたことを判断する判断部と、
上記検知部がインクを検知したことを条件に報知を行い、且つ上記インク量カウンタの積算値が補正後の上記判断基準値を超えたことを条件に報知を行う報知部と、を更に備えた請求項1から6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
インク滴を被記録媒体へ吐出して画像記録を行う記録ヘッドと、
上記記録ヘッドからインクを排出させるクリーニング動作を行うクリーニング部と、
上記クリーニング部により上記記録ヘッドから排出されたインクを貯留する廃インクタンクと、
上記廃インクタンク内に配置されており、上記廃インクタンク内のインクを検知する検知部と、
上記廃インクタンクの交換の判断基準値を記憶する第1記憶部と、
上記クリーニング部の駆動における駆動設定値が記憶された第5記憶部と、
上記駆動設定値に基づいて設定された設定値が記憶された第2記憶部と、
上記クリーニング動作が行われるごとに上記設定値を積算するインク量カウンタと、
上記検知部がインクを検知した際における上記インク量カウンタの積算値を記憶する第3記憶部と、
上記検知部がインクを検知した際における上記インク量カウンタの積算値に基づいて上記駆動設定値または上記設定値を補正する第3補正部と、を備えたインクジェット記録装置。
【請求項9】
上記クリーニング部は、
インク滴を吐出する吐出口が設けられた上記記録ヘッドの下面に当接して当該吐出口を覆うキャップと、
上記駆動設定値に基づいて駆動され、上記キャップ内を負圧にするポンプと、
上記キャップと上記廃インクタンクとを接続するチューブと、を備えた請求項8に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−71261(P2013−71261A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209802(P2011−209802)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】