説明

インクジェット記録装置

【課題】 循環経路の外部から画像形成動作に適さない温度のインクが補充されても、画像形成動作が停止することのないインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】 循環経路の外部にある交換可能なメインタンクと、循環経路内にあるサブタンクと、循環経路内のインク温度を測定する測定部を有し、メインタンクから画像形成動作に適さない温度のインクが循環経路内に補充されても、測定部で測定されたインク温度に基づいてインク補充を不許可にすることにより、画像形成動作を停止しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷データに応じてノズルからインク滴を吐出させて、記録媒体上に文字や画像を記録するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクタンクと印字ヘッドとの間でインクを循環させる構成において、印字ヘッドのノズルへ供給されるインクの温度が設定温度範囲内になるように制御するインク温度制御手段を備えることが記載されている。また、インク圧力室内に配された温度センサを設けて、温度センサで検出されたインク温度が設定温度範囲内にあると判別されたことを条件にして、印字動作を実行させることが記載されている。また、温度センサで検出された温度が設定温度範囲より低温または高温の場合には、印字動作を不許可とすることが記載されている。
【0003】
図7に特許文献1のシーケンスのフローチャートを示す。まず、S90で印字ヘッドへ供給されるインクの温度を検出し、第1の設定温度範囲と比較する。インクの温度Tbdが第1の設定温度範囲内(Tbl<Tbd<Tbh)にある場合は、S91に進んで印字動作を許可する。そして、S92に進んで印字ヘッドへインクを供給する供給運転に移行する。また、S90でインクの温度Tbdが第1の設定温度範囲外にある場合は、S93に進んで印字動作を不許可とする。そして、S94に進んでインクタンクと印字ヘッドとの間でインクを循環する循環運転に移行する。
【0004】
S95でインクタンク内の温度を検出し、第2の設定温度範囲と比較する。インクタンク内のインク温度Ttdが第2の設定温度範囲内(Ttl<Ttd<Tth)にある場合は、S96に進んでインクタンク内のヒータをオフにする。また、S95でインク温度Ttdが第2の設定温度範囲外にある場合は、S97に進んでインクタンク内のヒータをオンにして、インクタンク内のインク温度を暖める。S97でヒータをオンすることによってインクタンク内のインク温度が高くなり、S90で印字ヘッドのノズルへ供給されるインクの温度Tbdが第1の設定温度範囲内(Tbl<Tbd<Tbh)になった場合は、印字動作を許可する。
【0005】
特許文献2には、第1タンク、第2タンク、記録ヘッド間でインクを循環するインク循環機構を備える構成において、インク循環機構へ供給されるインクを収容するインクボトルが着脱可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−175315号公報
【特許文献2】特開2011−56784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2のようにインクボトルからインク循環機構へインクを補充する構成において、インクボトルに収容されているインクが記録に適した温度から大幅に異なっている温度であることがあった。例えば、インクボトルが倉庫等に保管されており、インクボトル内のインク温度が非常に高温になっている場合や、反対に非常に低温になっている場合があった。
【0008】
このような、記録に適した温度と大幅に異なっている温度のインクが一気にインク循環機構へ補充されると、インク温度制御手段によって記録に適した温度に制御することができず、印字動作が不許可になってしまうという問題があった。ここで、インク温度制御手段は、所定温度に設定された浴槽内にインク循環経路が所定距離設けられる構成である。インク温度制御手段を通過する前のインク温度と浴槽内の温度との差が所定温度以内である場合には、インクが浴槽内のインク循環経路を通過することによって、インク温度制御手段を通過したインクの温度は浴槽内の温度と同じになる。しかしながら、インク温度制御手段を通過する前のインク温度が浴槽内の温度と大きく異なっている場合は、インク温度制御手段を通過させても、インクを浴槽内の温度に調整することができない。
【0009】
そのため、インク温度制御手段を通過した後のインク温度が記録に適さない温度である場合は、温度センサで検出されたインク温度Tbdが第1の設定温度範囲内(Tbl<Tbd<Tbh)にないと判断され、印字動作が不許可になってしまう。図6に、インクボトルから記録に適した温度と大幅に異なっている温度のインクがインク循環機構に補充されたときの、インク温度の変化を示す。図6において、T1は従来技術で説明したTblに相当する。T2は従来技術で説明したTbhに相当する。例えば、インクボトルから低温のインクが供給された場合は、印字ヘッドに供給されるインク温度がT1(Tbl)以下になったときに印字動作が不許可になる。
【0010】
このような事情に鑑みて、本発明の目的は、循環経路の外部から画像形成動作に適さない温度のインクが補充されても、画像形成動作が停止することのないインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するため、インクを吐出する記録ヘッドと、該記録ヘッドへ供給されるインクを貯留する第1のインクタンクと、該第1のインクタンクと前記記録ヘッドとの間でインクを循環する循環経路と、該循環経路内のインク温度を測定する測定部と、前記循環経路へインクを補充する第2のインクタンクと、を備えるインクジェット記録装置において、前記測定部で測定されたインク温度に基づいて、前記第2のインクタンクから前記循環経路へのインク補充を制御する制御部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、循環経路の外部から画像形成に適さない温度のインクが補充されても、画像形成動作が停止することのないインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態の循環系を表した図である。
【図2】本発明の2種類の温度範囲と、インク補充が行われた際の循環系内のインク温度を示す図である。
【図3】第1の実施形態の制御シーケンスのフローチャートである。
【図4】第2の実施形態の制御シーケンスのフローチャートである。
【図5】第2の実施形態において、メインタンクからサブタンクへインクが補充されるときのインクの温度変化を示す図である。
【図6】従来技術のインクの温度変化を示す図である。
【図7】従来技術のシーケンスのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
本実施形態のインクジェット記録装置に関する構成について図1を参照して説明する。図1は本実施形態のインクジェット記録装置の循環系を表した図である。本実施形態の循環系は、ラインヘッドである記録ヘッド1と、記録ヘッド1へ供給されるインクを貯留するためのサブタンク2(第1のインクタンク)を備える。サブタンク2から記録ヘッド1へ供給されるインクの温度を調整するインク温度調整手段3を備える。インク温度調整手段3を通過したインクを貯留し記録ヘッド1に対する負圧源となる負圧源4を備える。インク温度調整手段3を通過した後のインクの温度を測定するインク温度測定手段5(測定部)を備える。本実施形態では負圧源4の下流側にインク温度測定手段を設けた構成を説明するが、循環経路内の他の位置にインク温度測定手段を設けてもよい。
【0016】
サブタンク2から記録ヘッド1へインクを供給する供給経路6と、ラインヘッドで吐出されなかったインクをサブタンク2へ回収する回収経路7と、供給経路6と回収経路7にインクを循環させるための循環ポンプ8を備える。
【0017】
また本実施形態においては、循環経路に対してメインタンク10(第2のインクタンク)から補充ポンプ9によってサブタンク2(第1のインクタンク)へインクを補充する。本実施形態ではメインタンク10からサブタンク2へインクを補充する構成を説明するが、メインタンクから循環経路内の他の位置へインクを補充する構成にしてもよい。
【0018】
なお、本実施形態のインクジェット記録装置では、インク温度調整手段3(調整部)を除いて画像形成に用いられるインク色ごとに循環経路を備えているが、図1ではインク1色分の構成のみを示している。
【0019】
サブタンク2内にはインク残量を測定するための液面センサが設けられている。サブタンク2内のインク残量が一定量以下になると、メインタンク10からサブタンク2内に設定された液面高さまでインクが補充される構成である。また、メインタンク10は装置本体に対して着脱可能な構成である。メインタンク内のインクがなくなった場合は、新たなメインタンク10を装置本体に着脱することによってインクを補充することが可能である。
【0020】
従って、画像形成動作中にメインタンク10の交換が行われることを想定し、サブタンク2はメインタンクの交換作業の間も画像形成を続行できるだけのインクを保持できる容量を持つことが望ましい。また、本実施形態のインクジェット記録装置ではサブタンク2を1つ備えた構成としている。しかし、サブタンク2と記録ヘッド1の間の水頭差などによって記録ヘッド1にかかるインク圧を軽減するために、記録ヘッド1への供給経路6内にサブタンク2を複数備え、圧力分散を行う構成としても良い。
【0021】
インク温度調整手段3は、記録ヘッド1に供給されるインク温度を調整するものであり、供給経路6内に配置されている。インク温度調整手段3は温度を調整した水を満たした浴槽の中に、インクが通過するチューブを所定距離配設した温度調整機器である。循環経路内のインクはインク温度調整手段3を通過することで浴槽内の水と熱交換を行い、設定された温度に調整される。本実施形態のインクジェット記録装置では、1つのインク温度調整手段3によって全ての色のインク循環経路のインクの温度を調製する構成を採用している。インク温度調整手段3の浴槽をインクが通過する時間には限りがあるため、インクが浴槽内を1回通過する間に調整できるインク温度には限界がある。本実施形態では、浴槽の温度を30℃に設定している。インク温度調整手段3を1回通過することによりインクの温度を30℃に調整するためには、インク温度調整手段3に入る前のインクの温度が21℃以上であることが必要である。すなわち、インク温度調整手段3に入る前のインクの温度が20℃以下の場合は、インク温度調整手段3を1回通過しただけでは浴槽の温度まで調整することができない。
【0022】
本実施形態は1つのインク温度調整手段によって全ての色のインク循環経路のインクの温度を調整する構成としたが、インク循環経路ごとにインク温度調整手段を設ける構成としてもよい。
【0023】
また、本実施形態では水を用いた浴槽でインクの温度を調整する構成としたが、循環経路内部にヒータを設ける構成としてもよいし、循環経路を温風などで暖める構成としてもよい。
【0024】
インク温度測定手段5は記録ヘッド1へ供給されるインク温度を測定するためのものである。画像形成に適した温度のインクが記録ヘッドへ供給されているかを確認するためのものなのでインク温度調整手段3の下流側でかつ記録ヘッド1の近傍に設置されていることが好ましい。しかしながら、インクは循環しているため循環経路のどこに設けてもよい。また、インク温度測定手段5はインクの温度を直接測定しても良いし、循環経路を構成する熱伝導性の高い部材の温度を測定しても良い。
【0025】
8は循環ポンプである。循環ポンプ8を駆動することによって、供給経路6と回収経路7においてインクを循環させることができる。
【0026】
本実施形態では、画像形成動作中は循環経路内のインクの循環流量を所定量にするために循環ポンプ8を駆動する。画像形成動作を行わない待機中は、循環ポンプ8の駆動速度を遅くしてもよい。
【0027】
インク温度測定手段5で得られた情報を基にした、各構成の制御手段(制御部)について示す。制御手段(制御部)として、インク温度制御手段と画像形成動作許可判別手段、インク補充動作許可判別手段を備える。
【0028】
インク温度制御手段は予め2つの温度範囲テーブル(第1温度範囲、第2温度範囲)を備えている。インク温度測定手段5で測定されたインク温度を温度範囲テーブルと比較する。図2に2つの温度範囲を示す。第1温度範囲(T1≦T(℃)≦T2)は、画像形成動作を行う際、画像形成品質を保証できる温度範囲である。第2温度範囲(T3≦T(℃)≦T4)は、第1温度範囲の間に存在している(T1<T3<T4<T2)。各温度範囲の上限値、下限値は、インク色などインク物性の違いによって画像形成品質が保証できる温度範囲が異なる場合などに対応するため、インク色ごとに異なる値でも良い。
【0029】
画像形成動作許可判別手段は、インク温度測定手段5で測定されたインク温度が、第1温度範囲内にあると判別した場合は画像形成動作を許可する。インク温度が第1温度範囲外にあると判断された場合には画像形成動作を不許可とする。第2温度範囲であれば、第1温度範囲に含まれるため画像形成動作は許可される。インク補充動作許可判別手段は、インク温度測定手段5で測定されたインク温度が第2温度範囲内にあると判別した場合はメインタンク10からサブタンク2へのインク補充動作を許可する。第2温度範囲外にあると判断された場合にはインク補充動作を不許可とする。
【0030】
メインタンク10を交換した後にメインタンク10からサブタンク2へ補充されるインクの単位時間当たりのインク流量はサブタンク2のインク残量によらず一定である。
【0031】
ここで、交換されたメインタンク10内のインク温度が、インク温度調整手段3を1度通過しただけでは設定温度まで調整できないくらい低い温度であるとする。また、メインタンク10からインク補充が開始されるときのサブタンク2内のインク残量は一定であるとする。この場合、メインタンク10内のインク温度が低ければ低いほど、インク温度測定手段5で測定されるインク温度の変化は急峻になる。
【0032】
メインタンク10からインクを補充されるサブタンク2と、インク温度測定手段5と、は離れた場所にあるためメインタンク10からインクの補充を開始したタイミングと、インク温度測定手段5でインクの温度変化を検出するタイミングとには、時間差が生じる。
【0033】
記録ヘッド1近傍で測定したインク温度を基に、画像形成動作、インク補充動作、インク温度制御動作を行う構成について図3を用いて説明する。図3は、第1の実施形態の制御シーケンスのフローチャートである。
【0034】
本実施形態では、下記に示す制御方法を実施することで、画像形成動作を継続させる。インク温度が大きく変動する要因として、上記に示したように、メインタンク10からサブタンクへのインク補充によるものが挙げられる。よって、補充されるインクの温度による影響に基づいて、従来技術の画像形成動作を停止する制御に加えてインクの補充動作を停止する制御も行う。今回の実施形態では画像形成に適した温度よりも冷たいインクが入ったものとして考える。
【0035】
図3において、S10に示すように循環経路のインク温度が第1温度範囲内にあるか否かを判別する。S10においてインク温度が第1温度範囲内にあると判別した場合は、S11に進んで画像形成動作を許可する。
【0036】
そして、S12で液面センサによってサブタンク2内のインク残量を測定する。インク残量が所定量未満であり、メインタンク10からサブタンク2へインク補充が必要な場合は、S13において循環経路のインク温度が第2温度範囲内にあるかを判別する。S13においてインク温度が第2温度範囲内にあると判別した場合は、S14に進み、メインタンクからサブタンクへのインク補充を許可する。また、S13においてインク温度が第2温度範囲内にないと判別した場合、S15に進みメインタンク10からサブタンク2へのインク補充を不許可にする。
【0037】
S10において循環経路内のインク温度が第1温度範囲内にないと判別された場合は、S16に進み画像形成動作許可判別手段によって画像形成動作を不許可とする。インク温度が第1温度範囲内にないときは、画像形成品質を保証できないからである。このとき、S17で画像形成すべき記録データが存在する場合はS10に再び処理が戻る。画像形成動作は不許可状態であるが、循環経路内のインク循環動作は継続して行われている。そのため、インク温度調整手段3によってインク温度が調整されるため、循環動作を継続することによってインク温度が第1温度範囲内に入ってくる。インク温度が第1温度範囲内にあると判別された場合は、S11に進み画像形成動作を許可する。
【0038】
図2を用いて、インク補充が行われた際の循環系内の温度変化について説明する。メインタンクから低温のインクが補充された場合、インク温度測定手段で測定されるインクの温度は徐々に低下していく。本実施形態では循環経路内のインク温度が第2の温度範囲から外れたことを判別する(21のタイミング)と、メインタンクからのインクの補充動作を停止する。低温のインクが補充されず、かつインクの循環動作が継続されるため、22に示すように、インク温度は徐々に暖められる。また、インク温度は第1温度範囲内にあるため、画像形成動作が中断されることはない。
【0039】
一方、本発明を実施しないと、メインタンクから低温のインクが補充され続けるため、23に示すように、インク温度測定手段で測定されるインクの温度は低下し続ける。すると、インク温度はT1以下(第1の温度範囲外)になり、画像形成動作が中断されてしまう。画像形成動作が中断されてインクの循環動作が継続して行われるが、メインタンクからサブタンクへのインクの補充も継続しているため、インク温度を適正温度に戻すためには時間を要してしまう。
【0040】
なお、メインタンク10から画像形成に適した温度よりも低温のインクがサブタンク2に補充される例となっているが、画像形成に適した温度よりも高温のインクが補充されても同様に発明の効果を発揮できる。また、サブタンク2以外にも循環経路内のどこにメインタンク10からインクが補充されてももちろん良い。そして、インク温度測定手段5の設置位置も実施形態に限定されず循環経路内ならばどこでも良い。
【0041】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態の制御シーケンスのフローチャートである。図5は、第2の実施形態において、メインタンクからサブタンクへインクが補充されるときのインクの温度変化を示す図である。第2の実施形態は、温度変化量閾値ΔTthと補充停止温度Teのテーブルを備える。
【0042】
インク温度測定手段5によって測定されたインク温度の単位時間当たりの変化量(インク温度変化量)に基づいて、メインタンクから循環経路へのインク補充を制御する。
【0043】
例としてメインタンクによって補充されたインクが、画像形成に適した温度より低い場合の動作を説明する。
【0044】
ここで、図5に示される単位時間当たりの温度変化量ΔTは
ΔT=a(温度降下量)/b(時間)である。
【0045】
図5において、メインタンク10からサブタンク2へインクの補充を開始する時間をt1とすると、t1から少し間をおいて循環経路全体のインク温度が変化し始める。インクの補充を開始したタイミングからインクの温度変化が始まるまでの時間を温度変化ディレイtsとする。これは循環経路全体のインク温度変化の変化量が安定するまでの時間であって、実験的に求めることができる。
【0046】
図4において、S30でメインタンク10からサブタンク2へのインク補充が許可される。続いて、S32でインク温度測定手段5によって測定されるインクの温度変化量ΔTを算出する。S32で温度変化量ΔTが予め定められている温度変化量閾値ΔTthより大きいか否かを判断する。S33においてΔTがΔTthよりも大きいと判断した場合は、メインタンク10からサブタンク2へのインクの補充を停止する。
【0047】
このときΔTthは、
ΔTth={T0(インク温度)−T1(第一温度範囲下限)}/ts(温度変化ディレイ)
である。
【0048】
S33においてΔTがΔTthよりも大きくないと判別した場合は、S35に進み、インク補充を停止する温度Teを算出する。補充停止温度Teは、メインタンク10からのインク補充を停止する温度である、補充停止温度Teは、ΔTに基づいて算出する
Te=ΔT・Ts+T1
【0049】
S36でインク温度がTeより低いと判別した場合は、メインタンクからのインク補充を停止する。インク温度が補充停止温度Teになったタイミング(t2)でメインタンクからのインク補充を停止することにより、インク補充を停止した直後は温度低下が所定時間継続してしまうが、インク温度が第1の温度範囲からは外れないようにすることができる。
【0050】
ΔTが閾値ΔTthを超えない範囲で大きい場合にはTeを高い温度とし、小さい場合にはTeを低い温度とすることで、メインタンクから補充されるインク量を多くすることができる。今回の実施形態では温度変化量ΔTをインク補充開始からts後に測定しているが、ΔTは時間の経過とともに緩やかになるため、インク補充開始時点より勾配が急になることはない。そのため、一度定めれば少なくとも第1温度範囲を逸脱することはない。
【0051】
図4のフローチャートに示すように、このΔTが予め定めてある閾値ΔTthより大きければ直ちに補充ポンプ9によるインクの補充を停止する。
【0052】
また、ΔTが閾値ΔTthよりも小さい場合はインク補充停止温度Teを決定し、循環経路中のインク温度がTeを下回ったらインクの補充を停止する。ここで、インクの補充を停止しても直ちに循環経路中のインクの温度変化が停止するわけではない。そのため、ΔTが小さい場合はTeをT1に近い温度に設定してもT1を下回らない範囲でインクの補充を行い、ΔTが閾値ΔTthを超えない範囲で大きい場合にはT1を超えないようにTeを高い温度とする。この構成により、メインタンクから補充されるインク量を多くすることができる。
【0053】
また、温度変化量ΔTは複数回測定して、算出してもよい。また、Teを算出しているが、ΔTをもとにテーブルから参照するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 記録ヘッド
2 サブタンク
3 インク温度調整手段
4 負圧源
5 インク温度測定手段
6 供給経路
7 回収経路
10 メインタンク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する記録ヘッドと、該記録ヘッドへ供給されるインクを貯留する第1のインクタンクと、該第1のインクタンクと前記記録ヘッドとの間でインクを循環する循環経路と、該循環経路内のインク温度を測定する測定部と、前記循環経路へインクを補充する第2のインクタンクと、を備えるインクジェット記録装置において、
前記測定部で測定されたインク温度に基づいて、前記第2のインクタンクから前記循環経路へのインク補充を制御する制御部を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記測定部で測定されたインク温度が予め定められた第1温度範囲内にない場合は、前記記録ヘッドによる画像形成動作を不許可にすることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記測定部で測定されたインク温度が予め定められた第2温度範囲内にない場合は、前記第2のインクタンクから前記循環経路へのインク補充を不許可にすることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第2温度範囲は、前記第1温度範囲に含まれることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記測定部で測定された単位時間当たりのインク温度変化量が閾値よりも大きい場合は、前記第2のインクタンクから前記循環経路へのインク補充を停止することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記温度変化量が前記閾値よりも大きくない場合は、前記第2のインクタンクから前記循環経路へのインク補充を停止する補充停止温度を算出することを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記第2のインクタンクから前記第1のインクタンクへインクが補充されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記循環経路内のインク温度を調整する調整部を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記測定部は、前記循環経路内であって前記調整部と前記記録ヘッドの間に設けられることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記記録ヘッドはラインヘッドであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−82207(P2013−82207A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−199518(P2012−199518)
【出願日】平成24年9月11日(2012.9.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】