説明

インクジェット記録装置

【課題】インクジェット記録装置において、インクタンクの大気連通口を介したインクの漏れがなく、また、インクが溢れてタンクの容量を超えることを検知する。
【解決手段】バッファタンク8およびサブタンク10からインクが溢れると、その溢れたインクは、各々のタンクの大気連通用開口19a、19bから第1廃インク貯蔵部26の第1ブロック26aに繋がる大気連通路34、35を介して、第1廃インク貯蔵部の第1ブロックに排出される。以上の構成により、インク溢れが発生したときのインク漏洩を防止することができる。また、バッファタンクなどからインクが溢れると、タンクと、第1廃インク貯蔵部の第1ブロックおよび第1のオーバーフローチューブ33を介して接続されているオーバーフロータンク32内に、溢れたインクが流入する。これにより、オーバーフロータンク内のフロートセンサ36によって、バッファタンクなどのインク溢れを検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関し、詳しくは、記録ヘッドのインク供給系および記録ヘッドからインクを排出さすインク排出系におけるインク溢れに対処する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、大量かつ高速に連続記録を行なうインクジェット記録装置では、ユーザが交換することができるインクタンクと、これとは別に、装置内に備え付けのインク収容部となるサブタンクを備える。交換可能なインクタンクからこのサブタンクを介して記録ヘッドにインクを供給することにより、インク切れによる交換時にもサブタンク内のインクを使用して記録を継続することを可能としている。このようなインク供給系では、インクタンクからサブタンクへのインク供給時、もしくは記録ヘッドとサブタンクとの間のインク循環時に、インク量検知センサ故障などの何らかの異常によってサブタンク内からインク溢れを生じることがある。そして、この溢れたインクによって装置内が汚れたり、装置内の電気系統でインクによるショートなどを生じたりすることがある。
【0003】
また、以上のような記録装置では、インク循環系を利用して行なわれる、記録ヘッド内からのインク排出や、記録ヘッドの予備吐出による排出といった回復処理で生じる排出インク(以下、「廃インク」ともいう)を、廃インクタンクに貯蔵させることが行なわれる。そして、多くの場合、廃インクタンクを装置に対して着脱可能な構成とすることにより、記録装置の稼働中でも廃インクタンクを取り外し、交換することを可能としている。このようなインク排出系においても、上述したインク供給系と同様、廃インクタンクなどからのインク溢れの問題は生じ得ることである。
【0004】
このような問題に対して、特許文献1には、インク供給系のインクタンクから溢れたインクをオーバーフロータンクに貯留可能にするとともに、オーバーフロータンク内に貯留されたインクを廃インクボトルに排出可能にすることが記載されている。これにより、インクタンクからのインク溢れによる装置内のインク汚れを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−263026公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、インクタンクから溢れたインクがオーバーフロータンクに連通する管路を通ってオーバーフロータンクに排出されるべきインクの一部がインクタンクに設けられた大気連通口を介して溢れ出てしまうことがある。すなわち、インクが溢れたときの流量が大きい場合、例えば、オーバーフロータンクに連通する上記管路を介した排出よりもインクタンク内への流入量が大きい場合は、大気連通口からインクが溢れてしまうことがある。
【0007】
また、インク溢れが生じ、オーバーフロータンクにインクが流れ込んでもそれを検知する機構がないため、排出されたインクがオーバーフロータンクの容量を超えると、装置内にインクが漏れてインクによる汚れを生じさせるという問題もある。
【0008】
さらには、廃インクボトルを交換するためにこのボトルが取り外されているときは、回復処理によってインクを排出する動作が不可能となり、装置の使い勝手が悪いものとなる。
【0009】
本発明は上記問題を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、インクタンクの大気連通口を介したインクの漏れがないインクジェット記録装置を提供することにある。また、インクが溢れてタンクの容量を超えることを検知することができ、さらには、交換用の廃インクタンクが装着されていないときもインク排出が可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために本発明では、インクを吐出するためのノズルを備えた記録ヘッドを用いて、記録媒体にインクを吐出することにより記録を行なうインクジェット記録装置であって、記録ヘッドに供給するインクを収容し、かつ大気と連通するための大気連通用の開口を備えたインク収容部と、記録媒体に対する記録に使用されないインクを排出するインク排出手段と、前記インク収容部から溢れたインクを貯蔵するための第1ブロックと、前記インク排出手段によって排出されたインクを貯蔵するための第2ブロックを備え、かつ大気と連通する大気連通口を備える第1廃インク貯蔵部と、前記インク収容部の大気連通用の開口と前記第1廃インク貯蔵部とを接続してインクの移送が可能な大気連通路と、前記インク排出手段と前記第1廃インク貯蔵部とを接続してインクの移送が可能なインク排出路と、前記第1廃インク貯蔵部と連結され、かつ前記インクジェット記録装置に対して着脱可能な第2廃インク貯蔵部と、前記第1廃インク貯蔵部の第1ブロックと接続してインクの移送を可能とし、当該移送されたインクの量が所定値以上であるか否かを検知する検知手段を有する第3廃インク貯蔵部と、を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の構成によれば、インクタンクの大気連通口を介したインクの漏れがなく、また、インクが溢れてタンクの容量を超えることを検知することができ、さらには、交換用の廃インクタンクが装着されていないときもインク排出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る、上記プリンタの記録時の配置構成を示す斜視図である。
【図2】図1示す構成を切断して示す断面図である。
【図3】図1に示す装置におけるクリーニング(回復)動作時の配置構成を示す断面図である。
【図4】図1〜図3で説明したインクジェット記録装置におけるインク供給系およびインク排出系を示す図である。
【図5】図4に示す構成において、バッファタンクからインクが溢れたときの、インク漏洩抑制構成およびインク溢れ検知を説明する図である。
【図6】同じく、図4に示す構成において、サブタンクからそれぞれインクが溢れたときの、インク漏洩抑制構成およびインク溢れ検知を説明する図である。
【図7】同じく、図4に示す構成において、本実施形態に係る、第2廃インク貯蔵部が取り外された状態でのインク排出を説明する図である。
【図8】同じく、図4に示す構成において、オーバーフロータンクに貯蔵した溢れインクを第1廃インク貯蔵部へ移送する動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置は、ロール状に巻かれた連続シートを記録媒体として使用し、片面記録及び両面記録の両方に対応して高速記録が可能なラインタイプの記録ヘッドを用いたプリンタに関するものである。本実施形態のこのような装置は、例えば、プリントラボ等における大量記録のプリント分野に適している。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る、上記プリンタの記録時の配置構成を示す斜視図であり、図2は、図1示す構成を切断して示す断面図である。図3は、図1に示す装置におけるクリーニング(回復)動作時の配置構成を示す断面図である。
【0016】
図1および図2において、記録装置1は、複数の記録ヘッド2を有する記録部3を備え、記録ヘッド2から記録媒体4上にインク滴を吐出し、記録媒体4上に画像などを記録する。本実施形態では、記録ヘッド2は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のインクそれぞれに対応して用意される。それぞれの記録ヘッド2は、インクを吐出する吐出口(以下、ノズルともいう)を複数配列し、それぞれの吐出口内部のインク流路には電気熱変換素子が設けられ、この電気熱変換素子が発生する熱を利用してインクに気泡を生じさせてインクを吐出する。なお、記録ヘッドの数は、上記の例に限定されるものではないことはもちろんである。これら複数の記録ヘッド2は、ヘッドホルダ5で一体に保持されており、ヘッドホルダ5は、記録媒体に対して上下方向(図2の縦方向)に移動できるように設けられている。これにより、記録ヘッド2と記録媒体の記録面との間の距離を変更でき、また、図3に示すようにクリーニング時にクリーニング部6と対向できるよう上方に移動することができる。記録装置1における記録媒体搬送路の上流側には、ロール状の記録媒体がセットされた給紙部が配置され、この給紙部(不図示)は、記録媒体4を記録ヘッド2による記録部3の下側まで給紙する。そして、搬送ローラ7などを備えて構成される搬送機構(不図示)は、記録動作中に所定速度で記録紙を搬送する。なお、記録媒体4は、ロール状に巻かれた連続シートに限るものではなく、例えば、カットシートでもよいことはもちろんである。
【0017】
記録媒体4の搬送路における記録部3の下流側にクリーニング部6が配置されている。このクリーニング部6は、記録媒体搬送方向に動作可能であり、図3に示すように、クリーニング動作実行時は記録部3の直下まで移動する。これとともに、記録部3が上方に移動することにより、クリーニング部6と対向する。この対向状態で、クリーニング部6のワイピング機構部9によって、インク色ごとの記録ヘッド2に設けられたインクを吐出するための複数のノズルをワイピングクリーニングすることができる。また、クリーニング部6には、図4などで後述するように、各記録ヘッドのノズルが配設されたノズル配設面に当接して配設面を覆うキャップが設けられている。そして、クリーニング部6は、このキャップで記録ヘッドにキャッピングをすることができ、また、このキャッピング状態で記録ヘッドのノズルからインクを排出する回復処理を行うことができる。
【0018】
図4は、図1〜図3で説明したインクジェット記録装置におけるインク供給系およびインク排出系を示す図である。先ず、この図4を参照して、本実施形態のインク供給系およびインク排出系の基本構成を説明する。
【0019】
先ず、インク供給系について説明する。記録ヘッド2に対するインク供給は、インクタンクと記録ヘッド2との間でインクを循環することによって行なう。すなわち、この循環するインクが記録ヘッド内を通るときそれぞれのノズルの毛管力によってそのノズルの吐出口近傍にメニスカスを形成するようにインクが供給される。このインク循環経路では、記録ヘッド2のインク流出側に、第1のインク収容部であるバッファタンク8が設けられる。このバッファタンク8に続いて、第2のインク収容部であるサブタンク10が設けられ、サブタンク10の先に、記録ヘッド2が設けられる。これにより、インク循環経路が構成される。記録ヘッド2とバッファタンク8との間は、第1の循環チューブ20にて接続され、その経路途中に、第1の循環ポンプ11が設けられる。また、バッファタンク8とサブタンク10との間は、第2の循環チューブ21にて接続され、その経路途中には、第2の循環ポンプ12が設けられる。また、サブタンク10と記録ヘッド2の間は、第3の循環チューブ22で接続されている。第1、第2の循環ポンプ11、12は、いずれもチューブをポンプ方式のものであり、ガイド部13とポンプローラー14との間で、しごきながら正方向または逆方向に回転駆動することにより、正圧または負圧を発生することができる。これらチューブポンプの駆動源としては、ステッピングモーターなどのモーター(不図示)が用いられ、ポンプローラー14を支持し、回転可能に保持されているポンプローラホルダー15を回転駆動させる。第1、第2の循環ポンプ11、12を同時駆動することにより、バッファタンク8、サブタンク10、記録ヘッド2間をそれぞれ接続する第1、第2、第3の循環チューブ20、21,22を介してインク循環動作を行なうことができる。
【0020】
インクタンク16は、バッファタンク8に対してインクを供給、補充するためのインクタンクであり、記録装置1に対して着脱可能に構成されている。インクタンク16とバッファタンク8とは供給チューブ17で接続され、その経路途中には、循環ポンプ11、12と同様なチューブポンプ方式を用いた供給ポンプ18が設けられている。バッファタンク8と、サブタンク10には、それぞれのタンク上部にそれぞれ大気連通のための開口19a、19bが設けられている。そして、それぞれの開口が、後述されるように、第1廃インク貯蔵部26の大気連通口に連通する。これにより、それぞれのタンク8、10内を大気連通することができる。この大気連通によって、各々のタンクにおいて集積した気泡をタンク外へ排出できる。また、大気連通口によって、気温、気圧の変化やインク循環時におけるタンク内圧力変化を緩和し、記録ヘッド2のノズル内のメニスカスが破れてインク垂れや気泡の流入が発生することを防止することができる。また、サブタンク10は、流路内部の圧力と、水頭差によって発生する圧力とのバランスが取れた高さに配置されている。これにより、インク循環の実行、非実行に関わらず、ヘッドホルダ5に保持される記録ヘッド2が、上下方向に移動を行っても、記録ヘッド2のノズルからインクが垂れたり、気泡がノズル内に流入したりすることを防止することができる。
【0021】
また、バッファタンク8とサブタンク10は、各々のタンクで収容しているインク量を制御するためにそれぞれインクの液面検知機構を有している。バッファタンク8には、内部のインク液面を検知するための、第1の液面検知手段であるフロートセンサ23が設けられている。フロートセンサ23は、その上下に、内部にマグネットを備えた円管状のフロートBH、BL部を持ち、そのフロートBH、BLを貫通支持するシャフト内部に、リードスイッチ(不図示)が設けられている。そして、それぞれのフロートBH、BLがタンク内のインク量に応じて高さ方向に変位し、シャフト内部のリードスイッチのON/OFFを切換える構成となっている。そして、そのリードスイッチのON/OFF状態からタンク内のインク量を判断することができる。サブタンク10には、バッファタンク8と同様に、第2の液面検知手段であるフロートセンサ24が設けられている。フロートセンサ24は、その上下に、フロートSH、SL部が構成されている。なお、液面検知手段は、上例に限られるものではなく、液の有無を静電容量値の違いで検知する静電容量式や、液面に超音波を発信し、その反射波の有無および反射波の到達時間で検知する超音波式を用いることができる。さらには、発光素子から光を放射し、その放射光が受光素子に全反射されるかどうかで液体の有無を検知する光学式などでもよい。また、本実施形態では各々のタンクにおける液面検知数をそれぞれ2つとしたが、それよりも少なくても、多くてもよく、またそれぞれのタンクによって検知数を変えてもよい。さらに、液面をリニアに検知する構成でもよい。また、タンク内のインク量を検知する手段として、液面検知に拘る必要は無く、例えば重量センサなどにより、タンク内の液量の変化を重量変化により検知する手段などを用いてもよい。
【0022】
次に、同じ図4を参照して、インク排出系の基本構成について説明する。クリーニング部6は、非記録時に記録ヘッドのノズル38が設けられた面に当接してこれを覆う(キャッピングする)キャップ25を備える。このキャップによる記録ヘッドに対するキャッピングによって、インクの増粘に起因した吐出不良などを抑制することができる。インク排出系では、このキャップ25の先に第1のインク貯蔵部である第1廃インク貯蔵部26が設けられている。さらに、記録装置1に対して着脱可能に構成され、装着すると、第1廃インク貯蔵部26と連結される、第2のインク貯蔵部である第2廃インク貯蔵部(ドレインタンク)27とが設けられている。ここで、第1廃インク貯蔵部26と第2廃インク貯蔵部27は、廃インクの貯蔵部であり、内部でのインク混色を問題としない。この点から、インク色毎に複数個必要とはせず、全インク色について共通に1つあればよい。但し、装置のスペースが許すのであれば複数個持つ構成であってもよい。
【0023】
第1廃インク貯蔵部26には、その貯蔵部上部に大気連通口19cが設けられている。第1廃インク貯蔵部26と第2廃インク貯蔵部27との連結部にはバルブ機構28が設けられている。第2廃インク貯蔵部27が記録装置に装着されている間は、バルブ機構28は開放状態であり、第2廃インク貯蔵部27と第1廃インク貯蔵部26は内部で連通している。一方、第2廃インク貯蔵部27が記録装置から外されると、バルブ機構28は閉状態となることにより第1廃インク貯蔵部26と第2廃インク貯蔵部27の連結部はそれぞれ閉じられ、これにより、インク漏れを抑止する。
【0024】
第1廃インク貯蔵部26は、上述したバッファタンク8およびサブタンク10から溢れたインクを貯蔵するための第1ブロック26aと、インク排出機構から排出された排出インクを貯蔵するための第2ブロック26bの、2つのブロックを有する。これら2つのブロックはブロック壁26cによって分割されている。
【0025】
また、キャップ25と第1廃インク貯蔵部26の第2ブロック26bとの間は、排出チューブ29にて接続され、その経路中に、循環ポンプ11、12および供給ポンプ18と同様なチューブポンプ方式を用いた排出ポンプ30が設けられている。このインク排出路により、記録ヘッド2に設けられたノズルから吐出された廃インクをキャップ25で受けるとともに、排出ポンプ30を不図示の駆動源で駆動することによりキャップ25内に溜まった廃インクを第1廃インク貯蔵部26へ排出することができる。
【0026】
第1廃インク貯蔵部26の第2ブロック26bには、インク排出手段から排出された排出インクを気液分離させる気液分離膜39が設けられている。第2廃インク貯蔵部27には、バッファタンク8、サブタンク10と同様に、第3の液面検知手段である廃インクセンサ31が設けられている。廃インクセンサ31は、液インクの有無を静電容量値の違いで検知する静電容量式センサにて構成されている。但し、この液面検知手段は前記フロートセンサ23、24と同様に、この構成に限るものではない。
【0027】
第1廃インク貯蔵部26の第1ブロック26aとバッファタンク8の大気連通口19aとを接続する第2のオーバーフローチューブ34を介した第1廃インク貯蔵部26の大気連通口19cによってバッファタンク8内を大気連通させることができる。サブタンク10においても、第1廃インク貯蔵部26の第1ブロック26aとサブタンク10の大気連通口19bとを接続する第3のオーバーフローチューブ35を介して第1廃インク貯蔵部26の大気連通口19cがサブタンク10内を大気連通させることができる。
【0028】
第3廃インク貯蔵部としてのオーバーフロータンク32は、バッファタンク8やサブタンク10からインクが溢れたときに、その溢れたインクを収集する溢れインク収集部である。このタンク32は、第1廃インク貯蔵部26の第1ブロック26aと第1のオーバーフローチューブ33とで接続されている。このことから、オーバーフロータンク32は、第1廃インク貯蔵部26より下方に配置されている。そして、オーバーフロータンク32は、溢れたインクの収集部であることから、インク混色を問題としない。この点から、色毎に複数個必要とはせず、全インク色に共通に1つあればよい。但し、スペースが許すのであれば複数個持つ構成であってもよい。
【0029】
次に、上述したインク供給系およびインク排出系における、バッファタンク8やサブタンク10からのインク溢れが生じたときのその溢れに対処する構成を説明する。図5および図6は、バッファタンク8およびサブタンク10からそれぞれインクが溢れたときの、インク漏洩抑制構成およびインク溢れ検知を説明する図である。
【0030】
通常、インク循環によるインク供給時は、バッファタンク8およびサブタンク10内のインクはフロートセンサ23、24の上下フロート(BHとBL、SHとSL)によって液面の検知がなされ、供給ポンプ18および循環ポンプ11、12それぞれの駆動制御により、その上下フロート間に液面が位置するようにしている。ここで、フロートセンサ23、24の故障などにより、各々のタンク内インク液面位置の制御が不能となった場合、タンクからインクが溢れる可能性がある。バッファタンク8やサブタンク10からインクが溢れると、その溢れたインクは、各々のタンクの大気連通用の開口19a、19bから第1廃インク貯蔵部26の第1ブロック26aに繋がる大気連通路34、35を介して、第1廃インク貯蔵部26の第1ブロック26aに排出される。これらの経路は、図5、図6において矢印に沿った経路として示される。以上の構成により、バッファタンク8およびサブタンク10からインク溢れが発生したときのインク漏洩を防止することができる。
【0031】
次に、同じ図5、図6を参照して、バッファタンク8およびサブタンク10からのインク溢れを検知する構成について説明する。
【0032】
オーバーフロータンク32には、バッファタンク8、サブタンク10、ドレインタンク27と同様に、第4の液面検知手段であるフロートセンサ36が設けられている。フロートセンサ36は、フロートOH部を備えている。但し、この液面検知手段は前記センサ23、24、31と同様に、この構成に限るものではない。ここで、バッファタンク8やサブタンク10からインクが溢れると、各々のタンクと、第1廃インク貯蔵部26の第1ブロック26aおよび第1のオーバーフローチューブ33を介して接続されているオーバーフロータンク32内に、溢れたインクが流入する。これにより、オーバーフロータンク32内にインクが溜まりフロートセンサ36のフロートOH部が上昇してインク量が所定値以上となると、リードスイッチのON/OFFが切換わり、バッファタンク8やサブタンク10からのインク溢れを検知することができる。また、このインク溢れの異常を検知すると、駆動中の供給ポンプ18および循環ポンプ11、12の総てを停止し、インク溢れ警告部37によって、インクが溢れたことを示すエラー警告を出す。これにより、インク溢れに伴う廃インク量をなるべく抑えることができる。
【0033】
次に、ドレインタンク27が取り外された状態で継続して記録ヘッドからインクが排出された場合のそれに対処する構成を説明する。図7は、本実施形態に係る、第2廃インク貯蔵部が取り外された状態でのインク排出を説明する図である。また、図8は、オーバーフロータンクに貯蔵した溢れインクを第1廃インク貯蔵部26へ移送する動作を説明する図である。
【0034】
ドレインタンク27が取り外された状態で記録ヘッドからインクが排出された場合、その廃インクは、排出チューブ29、排出ポンプ30を介して、第1廃インク貯蔵部26の第2ブロック26bに流入する。ドレインタンク27が記録装置1から外されているとき、バルブ機構28は閉状態となっているため、第1廃インク貯蔵部26の第2ブロック26bから廃インクは排出されない。このため、廃インク量が第1廃インク貯蔵部26の第2ブロック26bの容量を超える量となることがある。この場合、溢れた廃インクは第1廃インク貯蔵部26のブロック壁26cを乗り越え、第1廃インク貯蔵部26の第1ブロック26aへと流入する。第1廃インク貯蔵部26の第1ブロック26aへ流入した廃インクは、第1のオーバーフローチューブ33によって接続されているオーバーフロータンク32に流入する(図7の矢印に沿った経路)。以上のように、第2廃インク貯蔵部(ドレインタンク)が取り外された状態でインクが排出された場合、インク排出機構およびオーバーフロータンクによって、廃インクを収容することができる。そして、この収容したインクをフロートセンサ36が検知することによって、第1廃インク貯蔵部26で廃インク量が一定以上(インク溢れ)であることを検知することができる。
【0035】
また、このインク溢れ検知後の処理として、図8に示すようにオーバーフロータンク32(第3廃インク貯蔵部)に貯蔵された廃インクを第1廃インク貯蔵部へ移送する。オーバーフロータンク32は、排出チューブ29と接続された溢れインク排出チューブ40にて接続され、その連結部には溢れインク用バルブ機構41を備える。通常、溢れインク用バルブ機構41は連結解除され閉状態であるが、インク溢れ検知後の処理時はバルブ機構41を開放状態とされる。なお、このバルブ機構41の開閉手段は、不図示の駆動源で駆動しても、手動で切り替えてもよい。第2廃インク貯蔵部27を記録装置1に装着した状態で、排出ポンプ30を駆動することによりオーバーフロータンク32に溜まった廃インクは、溢れインク排出チューブ40とバルブ機構41、排出チューブ29、排出ポンプ30、第1廃インク貯蔵部26の第2ブロック26bを介して、ドレインタンク(第2廃インク貯蔵部)27に流入する(図8中の矢印に沿った経路)。このように、オーバーフロータンク32に溜まった廃インクをドレインタンク27に戻し、最終的にはドレインタンク27を交換することによって廃棄することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 記録装置
2 記録ヘッド
3 記録部
4 記録媒体
6 クリーニング部
8 バッファタンク
10 サブタンク
11 第1の循環ポンプ
12 第2の循環ポンプ
16 インクタンク
17 供給チューブ
18 供給ポンプ
19a 大気連通用開口(バッファタンク)
19b 大気連通用開口(サブタンク)
19c 大気連通口(第1廃インク貯蔵部)
20 第1の循環チューブ
21 第2の循環チューブ
22 第3の循環チューブ
23 第1のフロートセンサ(バッファタンク)
24 第2のフロートセンサ(サブタンク)
25 キャップ
26 第1廃インク貯蔵部
26a 第1廃インク貯蔵部の第1ブロック
26b 第1廃インク貯蔵部の第2ブロック
26c 第1廃インク貯蔵部のブロック壁
27 第2廃インク貯蔵部
28 バルブ機構
29 排出チューブ
30 排出ポンプ
31 第3のセンサ(第2廃インク貯蔵部)
32 オーバーフロータンク
33 第1のオーバーフローチューブ
34 第2のオーバーフローチューブ
35 第3のオーバーフローチューブ
36 第4のフロートセンサ(オーバーフロータンク)
37 インク溢れ警告部
38 ノズル
40 溢れインク排出チューブ
41 溢れインク用バルブ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するためのノズルを備えた記録ヘッドを用いて、記録媒体にインクを吐出することにより記録を行なうインクジェット記録装置であって、
記録ヘッドに供給するインクを収容し、かつ大気と連通するための大気連通用の開口を備えたインク収容部と、
記録媒体に対する記録に使用されないインクを排出するインク排出手段と、
前記インク収容部から溢れたインクを貯蔵するための第1ブロックと、前記インク排出手段によって排出されたインクを貯蔵するための第2ブロックを備え、かつ大気と連通する大気連通口を備える第1廃インク貯蔵部と、
前記インク収容部の大気連通用の開口と前記第1廃インク貯蔵部とを接続してインクの移送が可能な大気連通路と、
前記インク排出手段と前記第1廃インク貯蔵部とを接続してインクの移送が可能なインク排出路と、
前記第1廃インク貯蔵部と連結され、かつ前記インクジェット記録装置に対して着脱可能な第2廃インク貯蔵部と、
前記第1廃インク貯蔵部の第1ブロックと接続してインクの移送を可能とし、当該移送されたインクの量が所定値以上であるか否かを検知する検知手段を有する第3廃インク貯蔵部と、
を具えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第3廃インク貯蔵部と前記インク排出路と接続する溢れインク排出路をさらに具え、前記溢れインク排出路を介して第3廃インク貯蔵部に貯蔵したインクを第1廃インク貯蔵部へ排出することが可能な溢れインク排出手段をさらに具えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記インク収容部の大気連通用の開口からインク溢れが発生した場合、および前記第2廃インク貯蔵部が取り外された状態で前記インク排出手段によってインクが排出された場合に、前記第3廃インク貯蔵部の検知手段によって検知するインク量が所定値以上であるときに異常を検知することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドと前記インク収容部との間でインクを循環させるインク循環手段をさらに具えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記インク収容部は、第1のインク収容部であるバッファタンクと、第2のインク収容部であるサブタンクとからなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記第3廃インク貯蔵部は、前記第1廃インク貯蔵部よりも下方の位置に配置されたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記検知手段がインク量が所定値以上であることを検知したとき、インクが溢れたことを警告するインク溢れ警告手段をさらに具えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
インクを吐出するためのノズルを備えた記録ヘッドを用いて、記録媒体にインクを吐出することにより記録を行なうインクジェット記録装置であって、
記録ヘッドに供給するインクを収容し、かつ大気と連通するための大気連通用の開口を備えたインク収容部と、
前記インク収容部から溢れたインクを貯蔵するためのブロックを備え、かつ大気と連通する大気連通口を備える第1廃インク貯蔵部と、
前記インク収容部の大気連通用の開口と前記第1廃インク貯蔵部とを接続してインクの移送が可能な大気連通路と、
を具え、前記インク収容部の大気連通用の開口からインク溢れが発生した場合に、前記溢れたインクは前記大気連通路を介して前記第1廃インク貯蔵部に移送されることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項9】
インクを吐出するためのノズルを備えた記録ヘッドを用いて、記録媒体にインクを吐出することにより記録を行なうインクジェット記録装置であって、
記録ヘッドに供給するインクを収容し、かつ大気と連通するための大気連通用の開口を備えたインク収容部と、
前記インク収容部から溢れたインクを貯蔵するためのブロックを備え、かつ大気と連通する大気連通口を備える第1廃インク貯蔵部と、
前記インク収容部の大気連通用の開口と前記第1廃インク貯蔵部とを接続してインクの移送が可能な大気連通路と、
前記第1廃インク貯蔵部と連結され、かつ前記インクジェット記録装置に対して着脱可能な第2廃インク貯蔵部と、
前記第1廃インク貯蔵部の第1ブロックと接続してインクの移送を可能とし、当該移送されたインクの量が所定値以上であるか否かを検知する検知手段を有する第3廃インク貯蔵部と、
を具えことを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86440(P2013−86440A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231278(P2011−231278)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】