説明

インクセットおよびこれを用いた液滴吐出装置

【課題】顔料インクおよび染料インクが混合された場合であっても、顔料の分散性が良好なインクセットを提供する。
【解決手段】水、顔料および顔料の対イオンとして第1金属イオンを含有する第1インクと、水、下記一般式(1)で表される染料および染料の対イオンとして第2金属イオンを含有する第2インクと、を有し、第1金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]は、第2金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]よりも大きい。


(式(1)中、nは0または1であり、基Aは置換複素環基であり、基Bは置換されていてもよいフェニル基またはナフチル基であり、Rはアルキル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、フェニル基等を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクセットおよびこれを用いた液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、色材として顔料または染料を含有するインクが知られている。色材として顔料を含有する顔料インクは、滲みが少なく、耐水性や耐光性が良好であるという点から、特に、文字等の記録に好ましく用いられる。また、色材として染料を含有する染料インクは、光沢性および発色性が良好であり、色彩が鮮明であるという点から、特に、画像等の記録に好ましく用いられる。
【0003】
上記のような特性を備えた顔料インクおよび染料インクを併用すると、被記録媒体に記録される文字および画像の両方の記録品質が優れたものとなる。このような理由から、近年、顔料インクおよび染料インクの両方を備えたインクセットが広く用いられている。
【0004】
ところで、顔料インクおよび染料インクを備えたインクセットをインクジェット記録装置に適用した場合に、インクを吐出するためのノズル孔を備えたノズル面において、顔料インクおよび染料インクが混合される場合がある。このような場合、顔料インク中の顔料の分散性が染料インクによって破壊され、顔料が凝集する場合がある。特に、ノズル面をクリーニングするために設けられたワイプ部材によってノズル面をクリーニングした際に、顔料の凝集物によってノズル孔が塞がれて、インクの吐出安定性を低下させてしまう場合があった。また、ノズル面に付着した顔料の凝集物が記録媒体上に落下してしまうという不具合が発生することがあった。
【0005】
このような顔料の凝集を低減させるために、特許文献1には、染料インクにラクタム構造を有するポリマーを添加することが記載されている。また、特許文献2には、顔料インクおよび染料インクに含まれるカウンターイオン(対イオン)の量を規定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−84136号公報
【特許文献2】特開2006−2094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術では、顔料インク及び染料インクが混合された際に、顔料の分散破壊を十分に抑制することができず、顔料の凝集が起こる場合があった。特に、耐候性(例えば、耐光性および耐ガス性)等の特性を向上させるために改良された特定の染料を含有する染料インクを用いた場合に、当該染料インクと顔料インクとが混合されると、顔料の分散性が著しく低下する場合があった。
【0008】
本発明のいくつかの態様にかかる目的は、上述の課題の少なくとも一部を解決することであり、顔料インクおよび染料インクが混合された場合であっても、顔料インクに含まれる顔料の分散性が良好なインクセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0010】
[適用例1]
本発明に係るインクセットの一態様は、
水、顔料および前記顔料の対イオンとして第1金属イオンを含有する第1インクと、
水、下記一般式(1)で表される染料および前記染料の対イオンとして第2金属イオンを含有する第2インクと、
を有し、
下記(条件1)または(条件2)に記載の前記第1金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]は、下記(条件3)または(条件4)に記載の前記第2金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]よりも大きい。
(条件1)前記第1金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件2)前記第1金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
(条件3)前記第2金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件4)前記第2金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
【0011】
【化1】

【0012】
(式(1)中、nは、0または1であり、
は、カルボキシ基;C1−C8アルコキシカルボニル基;C1−C8アルコキシカルボニル基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルキル基;またはヒドロキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいフェニル基を表し、
、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子;塩素原子;ヒドロキシ基;スルホ基;カルボキシ基;スルファモイル基;カルバモイル基;C1−C4アルキル基;ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、ヒドロキシC1−C4アルコキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルコキシ基;ヒドロキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいモノもしくはジC1−C4アルキルアミノ基;ヒドロキシ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルキルカルボニルアミノ基;ヒドロキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいN’−C1−C4アルキルウレイド基;ベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいフェニルアミノ基;ベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいベンゾイルアミノ基;またはベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいフェニルスルホニルアミノ基;をそれぞれ表し、
基Aは、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される置換複素環基であり、
【化2】

(式(2)中、Rは、メルカプト基;またはヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、ヒドロキシC1−C4アルコキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルキルチオ基を表す。)
【0013】
【化3】

【0014】
(式(3)中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子;塩素原子;カルボキシ基;スルホ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルバモイル基;スルファモイル基;C1−C4アルキル基;ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルコキシ基;ヒドロキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルキルスルホニル基;またはベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいフェニルスルホニル基;をそれぞれ表す。)
基Bは、置換されていてもよいフェニル基またはナフチル基であり、
基Bが置換フェニル基の場合は、ヒドロキシ基;スルホ基;カルボキシ基;C1−C4アルキル基;C1−C4アルコキシ基;アミノ基;モノもしくはジC1−C4アルキルアミノ基;アセチルアミノ基;およびベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいベンゾイルアミノ基;よりなる群から選択される置換基を有し、
基Bが置換ナフチル基の場合は、ヒドロキシ基;スルホ基;C1−C4アルコキシ基;およびベンゼン環がメチル基、ニトロ基または塩素原子で置換されていてもよいフェニルスルホニルオキシ基;よりなる群から選択される置換基を有する。)
適用例1のインクセットによれば、第1インクおよび第2インクが混合された場合であっても、第1インクに含まれる顔料の分散性が良好である。
【0015】
[適用例2]
適用例1において、
前記第1金属イオンは、ナトリウムイオンおよびリチウムイオンの少なくとも一方であることができる。
【0016】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記第2金属イオンは、カリウムイオンおよびナトリウムイオンの少なくとも一方であることができる。
【0017】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
前記一般式(1)中、前記Rがカルボキシ基または無置換C1−C4アルキル基であり、前記RがスルホC1−C4アルコキシ基、前記Rが水素原子、メチル基またはエチル基であることができる。
【0018】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか1例において、
前記基Aが前記一般式(3)で表される置換複素環基であり、
前記一般式(3)中、前記R、前記Rおよび前記Rが、それぞれ独立に水素原子、塩素原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、C1−C4アルキル基、C1−C4アルコキシ基、C1−C4アルキルスルホニル基であることができる。
【0019】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか1例において、
前記染料は、下記式(4)で表される化合物またはその塩であることができる。
【0020】
【化4】

【0021】
[適用例7]
本発明に係る液滴吐出装置の一態様は、
適用例1ないし適用例6のいずれか1例に記載の第1インクおよび第2インクを備えるインクセットと、
前記第1インクおよび前記第2インクを吐出するためのノズル孔を備えたノズル面と、
前記ノズル面を払拭するためのワイプ部材と、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態におけるプリンターの構成を示す斜視図。
【図2】本発明の実施形態におけるインクジェットヘッドに設けられたノズルの配列を示す概略図。
【図3】本発明の実施形態におけるインクジェットヘッドの内部構成を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0024】
なお、本発明において、スルホ基、カルボキシ基等の酸性官能基は、特に断りがない限り、遊離酸の形態で表す。
【0025】
本発明において、「Cv−Cwアルキル(基)」(vおよびwは、それぞれ整数である。)とは、v〜w個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。例えば、C1−C4アルキルは、1〜4個の炭素原子を含むアルキル基のことをいう。アルキル基は、特に断りがない限り、直鎖または分岐鎖のいずれの構造であってもよい。
【0026】
また、「Cv−Cwアルコキシ(基)」(vおよびwは、それぞれ整数である。)は、v〜w個の炭素原子を含むアルコキシ基を意味する。例えば、C1−C4アルコキシは、1〜4個の炭素原子を含むアルコキシ基のことをいう。アルコキシ基は、特に断りがない限り、直鎖または分岐鎖のいずれの構造であってもよい。
【0027】
また、「Cv−Cwアルキレン(基)」(vおよびwは、それぞれ整数である。)は、v〜w個の炭素原子を含むアルキレン基を意味する。例えば、C1−C4アルキレンは、1〜4個の炭素原子を含むアルキレン基のことをいう。アルキレン基は、特に断りがない限り、直鎖または分岐鎖のいずれの構造であってもよい。
【0028】
1.インクセット
本発明の一実施形態に係るインクセットは、水、顔料および前記顔料の対イオンとして第1金属イオンを含有する第1インクと、水、下記一般式(1)で表される染料および前記染料の対イオンとして第2金属イオンを含有する第2インクと、を有し、下記(条件1)または(条件2)に記載の前記第1金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]は、下記(条件3)または(条件4)に記載の前記第2金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]よりも大きいことを特徴とする。
(条件1)前記第1金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件2)前記第1金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
(条件3)前記第2金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件4)前記第2金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
第1金属イオンの極限当量伝導率が、第2金属イオンの極限当量伝導率よりも大きいと、第1インクと第2インクとが混合された際に、第1インクに含有されている顔料の分散性が低下しにくくなる。これにより、本実施形態に係るインクセットを後述する液滴吐出装置に用いた際にも、ノズルの詰まり等による吐出不良の発生を低減することができる。一方、第1金属イオンの極限当量伝導率が、第2金属イオンの極限当量伝導率以下であると、第1インクおよび第2インクが混合された際に、第1インクに含まれる顔料の分散性が低下して、顔料の凝集等が発生する場合がある。
【0029】
金属イオンの極限当量伝導率(Limiting equivalent conductivity;S・cm2/eq)とは、無限希釈状態における固有値であり、イオン独立移動の法則で定義される値として知られている。即ち、イオン独立移動の法則において、無限希釈状態における電解質の極限モル伝導率は、陽イオン及び陰イオンの極限モル伝導率の和として表される。無限希釈状態とは、電解質(イオン)が存在しないことを意味するのではなく、溶液中での陽イオン−陰イオン間距離が無限大であり、陽イオンと陰イオンとが相互に影響を及ぼさないことを意味している。なお、金属イオンの当量伝導率(S・cm2/eq)とは、当該金属イオンの極限モル伝導率(S・cm2/mol)を当該金属イオンの価数で割ったものをいう。
【0030】
金属イオンの極限当量伝導率は、既知のものが多く、具体的には、25℃における極限当量伝導率(S・cm2/eq)は、カリウムイオン(K)で73.5、ナトリウムイオン(Na)で50.1、リチウムイオン(Li)で38.7、である(電気化学協会「電気化学便覧 第4版」)。また、金属イオンの極限当量伝導率は、実験的に求めることも可能であり、当量伝導率の濃度変化を測定し、適当な方法を用いて濃度ゼロへの外挿を行うことによって決定することができる。
【0031】
また、第1金属イオンが、2種以上の金属イオンからなる場合には、第1金属イオンの極限当量伝導率を平均の極限当量伝導率とする。平均の極限当量伝導率とは、顔料の対イオンとしてインクに含まれる金属イオンの極限当量伝導率の平均値を示すものである。例えば、m個のXイオンと、n個のYイオンと、の平均の極限当量伝導率は、[(Xイオンの極限当量伝導率)×m+(Yイオンの極限当量伝導率)×n]/(m+n)、により求められる。なお、第2金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合にも、第1金属イオンと同様にして、平均の極限当量伝導率を求めることができる。
【0032】
極限当量伝導率の関係が顔料の凝集に影響する理由については、詳細は明らかになっていないが、以下のメカニズムによるものと考えられる。
【0033】
例えば、第1金属イオンの極限当量伝導率に比べて、第2金属イオンの極限当量伝導率が大きいと、第1インクおよび第2インクが混合された際に、顔料粒子の周囲の導電率が高くなる。つまり、顔料粒子は、極限当量伝導率の高い金属イオンと出会いやすくなる。その結果、顔料周囲の電気二重層が収縮することにより、顔料粒子の粒子間距離が縮まり、顔料の凝集が発生すると考えられる。
【0034】
一方、第1金属イオンの極限当量伝導率に比べて、第2金属イオンの極限当量伝導率が小さいと、顔料粒子の周囲の導電率は上昇しにくい。このような理由から、顔料の凝集が発生しにくくなると考えられる。
【0035】
第1インクは、顔料と第1金属イオンの金属塩を含む。これにより、顔料の分散性が改善し、顔料の凝集が発生しにくくなる。
【0036】
第2インクは、一般式(1)で示される染料と第2金属イオンの金属塩を含む。これにより、染料の溶解性が改善する。
【0037】
1.1.第1インク
本実施形態に係るインクセットは、第1インクを有する。以下、第1インクに含まれる成分について、詳細に説明する。
【0038】
1.1.1.顔料
第1インクは、顔料を含有する。顔料としては、公知の顔料を用いることができるが、自己分散型の顔料であることが好ましい。自己分散型の顔料とは、分散剤なしに水性媒体中に分散することが可能な顔料である。ここで、「分散剤なしに水性媒体中に分散」とは、顔料を分散させるための分散剤を用いなくても、その表面の親水基により、水性媒体中に安定に存在している状態をいう。自己分散型の顔料を用いると、顔料を分散させるための分散剤の使用量を低減できるので、分散剤に起因するインクの発泡を低減でき、吐出安定性の良好なインクが調製しやすい。
【0039】
自己分散型の顔料は、その顔料表面に親水基を有することができる。顔料表面の親水基は、−OM、−COOM、−CO−、−SOM、−SOM、−SONH、−RSOM、−POHM、−PO、−SONHCOR、−NH、および−NR(式中のMは、水素原子、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アンモニウム、置換基を有していてもよいフェニル基、または有機アンモニウムを表し、Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基または置換基を有していてもよいナフチル基を表す)からなる群から選択される一以上の親水基であることが好ましい。
【0040】
本実施形態に係る第1インクは、顔料と第1金属イオンの金属塩を含み、第1インクに含まれる顔料は実質的に第1金属イオンの金属塩からなることが好ましい。上述したように、第1インクに含まれる顔料が金属塩構造を有していると、顔料の分散性が改善し、顔料の凝集が発生しにくくなる。
【0041】
顔料の対イオンとして第1インクに含まれる第1金属イオンとしては、カリウムイオンおよびナトリウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。これにより、第1インク中における顔料の分散性を向上させることができる。
【0042】
顔料は、例えば、物理的処理または化学的処理を施すことで、前記親水基を顔料の表面に結合(グラフト)させることにより製造される。前記物理的処理としては、例えば真空プラズマ処理等が例示できる。また前記化学的処理としては、例えば水中で酸化剤により酸化する湿式酸化法や、p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法等が例示できる。
【0043】
第1インクをブラック色のインク(以下、「顔料ブラックインク」ともいう。)として用いる場合には、顔料は、次亜ハロゲン酸および/または次亜ハロゲン酸塩による酸化処理、オゾンによる酸化処理、または過硫酸および/または過硫酸塩による酸化処理により表面処理されたものであることが、高発色という点で好ましい。
【0044】
第1インクをブラック色以外のカラーのインク(以下、「顔料カラーインク」ともいう。)として用いる場合には、顔料は、その表面にフェニル基を介して上記親水基を有するものであることが、高発色という点で好ましい。顔料表面にフェニル基を介して親水基を結合させる表面処理手段としては、種々の公知の表面処理手段を適用することができ、スルファニル酸、p−アミノ安息香酸、4−アミノサリチル酸等を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介して親水基を結合させる方法等が例示できる。
【0045】
顔料ブラックインクに用いられる顔料は、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックの好ましい具体例としては、No.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B(以上三菱化学(株)製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、Printex 30、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250(以上エボニックデグサ社製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700(以上コロンビアカーボン社製)、リガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12(キャボット社製)等が挙げられる。これらのカーボンブラックは一種または二種以上の混合物として用いても良い。
【0046】
また、顔料カラーインクに用いられる顔料としては、カラーインデックスに記載されているピグメントレッド、ピグメントバイオレット、ピグメントブルー等の顔料の他、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、アゾメチン系、縮合環系等の顔料が例示できる。また、橙色228号、405号、青色1号、404号等の有機顔料や酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、群青、紺青、酸化クローム等の無機顔料が挙げられ、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド1,3,5,8,9,16,17,19,22,38,57:1,90,112,122,123,127、146,184、C.I.ピグメントバイオレッド1,3,5:1,16,19,23,38、C.I.ピグメントブルー1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,16が挙げられる。
【0047】
また、顔料として市販品を利用することも可能であり、例えば、マイクロジェットCW1(オリヱント化学工業株式会社製)、CAB−O−JET250C、CAB−O−JET260M(以上キャボット社製)等が挙げられる。
【0048】
顔料の含有量は、第1インク組成物の全質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0049】
また、顔料は、インクの保存安定性やノズルの目詰まり防止等の観点から、その平均粒径が50〜250nmの範囲であることが好ましい。
【0050】
1.1.2.水
本実施形態に係るインク組成物は、水を含有する。水は、上述した顔料を分散もしくは溶解させる主溶媒として機能する。
【0051】
水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、顔料分散液およびこれを用いたインクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
【0052】
本実施形態に係る第1インクに含有される水は、第1インクの全質量に対して、50質量%以上であることが好ましい。
【0053】
1.1.3.その他の成分
本実施形態に係る第1インクは、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0054】
これらの中でも、ノニオン系界面活性剤は、インクの被記録媒体に対する浸透性および定着性を向上できるとともに、インクジェット記録方法によって被記録媒体上に付着させたインクの液滴の形状を真円に近いものとすることができるので、好ましく用いることができる。
【0055】
また、ノニオン系界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤は、表面張力および界面張力を適正に保つ能力に優れており、かつ起泡性がほとんどないという特性を有する点から、より好ましく用いることができる。アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、または3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は市販品も利用することができ、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0056】
界面活性剤を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0057】
本実施形態に係る第1インクは、浸透促進剤を含有することができる。浸透促進剤は、被記録媒体に対するインクの濡れ性をさらに向上させて均一に塗らす作用を備える。これにより、形成された画像のインクの濃淡ムラや滲みをさらに低減させることができ、画像の発色濃度を一層向上させることができる。浸透促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0058】
浸透促進剤としては、例えば、グリコールエーテル類が挙げられる。グリコールエーテル類は、浸透促進剤としての効果に特に優れる。グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態に係る第1インクに含まれる成分との相溶性に優れている点から、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを好ましく用いることができる。
【0059】
浸透促進剤を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0060】
本実施形態に係る第1インクは、保湿剤を含有することができる。保湿剤としては、例えば、1,2−アルカンジオール類、多価アルコール類、ピロリドン誘導体、尿素類等が挙げられる。保湿剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0061】
1,2−アルカンジオール類は、被記録媒体に対するインクの濡れ性を高めて均一に濡らす作用に優れているため、被記録媒体上に優れた画像を形成することができる。1,2−アルカンジオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。1,2−アルカンジオール類を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0062】
多価アルコール類は、第1インクをインクジェット記録装置に用いた場合に、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール類を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0063】
ピロリドン誘導体は、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。ピロリドン誘導体としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。ピロリドン誘導体を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0064】
尿素類は、第1インクをインクジェット記録装置に用いた場合に、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。尿素類としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等が挙げられる。尿素類を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0065】
本実施形態に係る第1インクは、pH調整剤を含有することができる。pH調整剤は、第1インクのpH値の調整を容易にすることができる。pH調製剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0066】
pH調整剤としては、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸等)、無機塩基(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリ−iso−プロパノールアミン)、有機酸(例えば、アジピン酸、クエン酸、コハク酸等)等が挙げられる。
【0067】
pH調整剤としては、上記の中でも、有機酸および有機塩基の少なくとも一方を用いることが好ましい。特に、有機酸と有機塩基とを組み合わせて使用する場合には、無機酸と無機塩基、無機酸と有機塩基、有機酸と無機塩基の組み合わせよりもpH緩衝能力が高い。そのため、有機酸と有機塩基とを組み合わせて使用した場合には、pH値の変動を抑制する効果が一層向上して、所望のpHに設定しやすいという効果を奏する。
【0068】
本実施形態に係る第1インクは、さらに、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤等を含有することができる。本実施形態に係る第1インクは、これらの化合物を含有していると、その特性がさらに向上する場合がある。
【0069】
防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。市販品では、プロキセルXL2、プロキセルGXL(以上商品名、アビシア社製)や、デニサイドCSA、NS−500W(以上商品名、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
【0070】
防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0071】
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩等)等が挙げられる。
【0072】
1.2.第2インク
本実施形態に係るインクセットは、第2インクを有する。第2インクでは、前述した第1インクに含まれる成分のうち顔料以外の成分を同様に用いることができるので、同様に用いられる成分については、その説明を省略する。
【0073】
1.2.1.染料
(a)染料
本実施形態に係る第2インクは、下記一般式(1)で表される染料(以下、「第1染料」ともいう。)および前記染料の対イオンとして第2金属イオンを含有する。
【0074】
第1染料は、光の照射を受けたり、大気中のガス(特に、オゾン)に晒されたりしても、分解しにくい性質を備えている。そのため、第2インクを用いて形成された画像は、耐光性、耐ガス性(特に、耐オゾン性)に優れ、光や大気の影響による変色や退色を起こしにくい。また、第1染料は、インク中で分解しにくい性質を備える。そのため、第2インクは、保存安定性に優れたものとなる。
【0075】
第1染料の含有量は、第2インクの全質量に対して、好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。第1染料の含有量が上記範囲内にあると、記録される画像の発色濃度を向上させたり、耐光性および耐ガス性を向上させたりすることができる。
【0076】
【化1】

【0077】
上記一般式(1)中、nは、0または1であり、Rは、カルボキシ基;C1−C8アルコキシカルボニル基;C1−C8アルコキシカルボニル基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルキル基;またはヒドロキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいフェニル基を表す。
【0078】
また、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子;塩素原子;ヒドロキシ基;スルホ基;カルボキシ基;スルファモイル基;カルバモイル基;C1−C4アルキル基;ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、ヒドロキシC1−C4アルコキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルコキシ基;ヒドロキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいモノもしくはジC1−C4アルキルアミノ基;ヒドロキシ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルキルカルボニルアミノ基;ヒドロキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいN’−C1−C4アルキルウレイド基;ベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいフェニルアミノ基;ベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいベンゾイルアミノ基;またはベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいフェニルスルホニルアミノ基;をそれぞれ表す。
【0079】
また、基Aは、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される置換複素環基である。
【0080】
【化2】

【0081】
上記一般式(2)中、Rは、メルカプト基;またはヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、ヒドロキシC1−C4アルコキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルキルチオ基を表す。
【0082】
【化3】

【0083】
上記一般式(3)中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子;塩素原子;カルボキシ基;スルホ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルバモイル基;スルファモイル基;C1−C4アルキル基;ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルコキシ基;ヒドロキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルキルスルホニル基;またはベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいフェニルスルホニル基;をそれぞれ表す。
【0084】
また、基Bは、置換されていてもよいフェニル基またはナフチル基である。なお、基Bが置換フェニル基の場合は、ヒドロキシ基;スルホ基;カルボキシ基;C1−C4アルキル基;C1−C4アルコキシ基;アミノ基;モノもしくはジC1−C4アルキルアミノ基;アセチルアミノ基;およびベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいベンゾイルアミノ基;よりなる群から選択される置換基を有する。一方、基Bが置換ナフチル基の場合は、ヒドロキシ基;スルホ基;C1−C4アルコキシ基;およびベンゼン環がメチル基、ニトロ基または塩素原子で置換されていてもよいフェニルスルホニルオキシ基;よりなる群から選択される置換基を有する。
【0085】
第1染料は、互変異性体を有する化合物である。互変異性体としては、下記一般式(5)〜(7)等の化合物が挙げられ、これらの互変異性体も本実施形態に係る第1染料として用いることができる。
【0086】
【化5】

【0087】
【化6】

【0088】
【化7】

【0089】
上記一般式(5)〜(7)におけるn、R、R、R、R、基Aおよび基Bは、上記一般式(1)におけるものと同じ意味を表す。
【0090】
上記一般式(1)において、Rはカルボキシ基;C1−C8アルコキシカルボニル基;C1−C8アルコキシカルボニル基またはカルボキシ基で置換されていても良いC1−C4アルキル基;またはヒドロキシ基、スルホ基またはカルボキシ基で置換されていても良いフェニル基を表す。
【0091】
一般式(1)におけるRがC1−C8アルコキシカルボニル基である場合、該アルコキシカルボニル基は、直鎖、分岐鎖及びアルキル部分が環状の構造を有するもののいずれでもよいが、直鎖及び分岐鎖のアルコキシカルボニル基が好ましい。具体例としては例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、n−ヘプチルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル等の直鎖;イソプロポキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、2,2−ジメチルプロポキシカルボニル、イソペンチルオキシカルボニル、sec−ペンチルオキシカルボニル、2−メチルブチルオキシカルボニル等の分岐鎖;シクロプロピルメチルオキシカルボニル、シクロブチルメチルオキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル等のアルキル部分が環状の構造を有するもの;等が挙げられる。これらの中でも、より好ましくは直鎖C1−C6アルコキシカルボニル基であり、さらに好ましくは直鎖C1−C4アルコキシカルボニル基である。
【0092】
一般式(1)におけるRがC1−C8アルコキシカルボニル基またはカルボキシ基で置換されても良いC1−C4アルキル基であり、該C1−C4アルキル基が無置換C1−C4アルキル基である場合、該アルキル基としては、直鎖、分岐鎖のいずれでもよいが、直鎖が好ましい。C1−C4アルキル基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル等の直鎖;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の分岐鎖;が挙げられる。また、該C1−C4アルキル基が置換基を有する場合も、該アルキル基は、該C1−C4アルキル基が無置換C1−C4アルキル基である場合で例示したものと、好ましいものを含めてと同じでよい。該C1−C4アルキル基の置換基がC1−C8アルコキシカルボニル基である場合、該アルコキシカルボニル基は、RがC1−C8アルコキシカルボニル基である場合と、好ましいものを含めて同じでよい。RがC1−C8アルコキシカルボニル基で置換されたC1−C4アルキル基の場合、好ましい具体例としては、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルエチル、n−ブトキシカルボニルメチル、n−オクチルオキシカルボキシエチル等が挙げられる。Rがカルボキシ基で置換されても良いC1−C4アルキル基の場合、好ましい具体例としてはカルボキシメチル、2−カルボキシエチル、3−カルボキシプロピル、等が挙げられる。
【0093】
一般式(1)におけるR1が、ヒドロキシ基、スルホ基またはカルボキシ基で置換されていても良いフェニル基である場合の具体例としては、例えば、無置換フェニル;2−ヒドロキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル等のヒドロキシ置換フェニル;2−スルホフェニル、4−スルホフェニル、2,4−ジスルホフェニル、3,5−ジスルホフェニル等のスルホ置換フェニル;2−カルボキシフェニル、4−カルボキシフェニル、3,5−ジカルボキシフェニル等のカルボキシ置換フェニル;および、2−ヒドロキシ−5−スルホフェニル等の複数種類の基で置換されたフェニル;等が挙げられる。
【0094】
一般式(1)におけるRは、上記の中でも、カルボキシ基;C1−C4アルコキシカルボニル基;無置換C1−C4アルキル基;カルボキシ基置換C1−C4アルキル基;または無置換フェニル基がさらに好ましい。一般式(1)における好ましいRの具体例としては、メチル、エチル、tert−ブチル、カルボキシメチル、3−カルボキシプロピル、メトキシカルボニルメチル、カルボキシ、メトキシカルボキシ、エトキシカルボキシ、n−オクチルオキシカルボキシ、フェニル、2−ヒドロキシフェニル、4−スルホフェニルメチルであり、より好ましくはメチル、カルボキシメチル、カルボキシ、フェニルであり、さらに好ましくはメチル、カルボキシである。
【0095】
一般式(1)において、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子;塩素原子;ヒドロキシ基;スルホ基;カルボキシ基;スルファモイル基;カルバモイル基;C1−C4アルキル基;ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、ヒドロキシC1−C4アルコキシ基、スルホ基またはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルコキシ基;ヒドロキシ基、スルホ基またはカルボキシ基で置換されていてもよいモノまたはジC1−C4アルキルアミノ基;ヒドロキシ基またはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルキルカルボニルアミノ基;ヒドロキシ基、スルホ基またはカルボキシ基で置換されていてもよいN’−C1−C4アルキルウレイド基;ベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基またはカルボキシ基で置換されていてもよいフェニルアミノ基;ベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基またはカルボキシ基で置換されていてもよいベンゾイルアミノ基;またはベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基またはカルボキシ基で置換されていていてもよいフェニルスルホニルアミノ基;をそれぞれ表す。
【0096】
一般式(1)におけるR〜Rが、無置換のC1−C4アルコキシ基である場合、該アルコキシ基は、直鎖または分岐鎖のいずれでもよい。無置換のC1−C4アルコキシ基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ等が挙げられる。該アルコキシ基がヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、ヒドロキシC1−C4アルコキシ基、スルホ基またはカルボキシ基で置換されている場合、その具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエトキシ、2−ヒドロキシプロポキシ、3−ヒドロキシプロポキシ等のヒドロキシC1−C4アルコキシ基;メトキシエトキシ、エトキシエトキシ、n−プロポキシエトキシ、イソプロポキシエトキシ、n−ブトキシエトキシ、メトキシプロポキシ、エトキシプロポキシ、n−プロポキシプロポキシ、イソプロポキシブトキシ、n−プロポキシブトキシ等のC1−C4アルコキシC1−C4アルコキシ基;2−ヒドロキシエトキシエトキシ等のヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルコキシ基;3−スルホプロポキシ、4−スルホブトキシ等のスルホC1−C4アルコキシ基;カルボキシメトキシ、2−カルボキシエトキシ、3−カルボキシプロポキシ等のカルボキシC1−C4アルコキシ基;等が挙げられる。
【0097】
一般式(1)におけるR〜Rが、無置換のモノまたはジC1−C4アルキルアミノ基である場合、該C1−C4アルキル部分は、直鎖または分岐鎖のいずれでもよい。無置換のモノまたはジC1−C4アルキルアミノ基の具体例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n−ブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−n−プロピルアミノ、ジ−n−ブチルアミノ等の直鎖;sec−ブチルアミノ、tert−ブチルアミノ、ジイソプロピルアミノ等の分岐鎖;等が挙げられる。該モノまたはジC1−C4アルキルアミノ基が、ヒドロキシ基、スルホ基またはカルボキシ基で置換されている場合、その具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアミノ、2−ヒドロキシプロピルアミノ、2,2’−ジヒドロキシジエチルアミノ等のヒドロキシ置換モノまたはジC1−C4アルキルアミノ基;2−スルホエチルアミノ、3−スルホプロピルアミノ、4−スルホブチルアミノ、3,3’−ジスルホジプロピルアミノ等のスルホ置換モノまたはジC1−C4アルキルアミノ基;カルボキシメチルアミノ、2−カルボキシエチルアミノ、3−カルボキシプロピルアミノ、2,2’−ジカルボキシジエチルアミノ等のカルボキシ置換モノまたはジC1−C4アルキルアミノ基;等が挙げられる。
【0098】
一般式(1)におけるR〜Rが、無置換C1−C4アルキルカルボニルアミノ基である場合、該C1−C4アルキル部分は、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよいが、直鎖であるものが好ましい。無置換C1−C4アルキルカルボニルアミノ基の具体例としては、アセチルアミノ、プロパノイルアミノ、ブタノイルアミノ等が挙げられる。該C1−C4アルキルカルボニルアミノ基が、ヒドロキシ基またはカルボキシ基で置換されている場合、該C1−C4アルキルカルボニルアミノ基の具体例としては、例えば、ヒドロキシエタノイルアミノ、2−ヒドロキシプロパノイルアミノ、4−ヒドロキシブタノイルアミノ等のヒドロキシC1−C4アルキルカルボニルアミノ基;3−カルボキシプロパノイルアミノ等のカルボキシC1−C4アルキルカルボニルアミノ基;等が挙げられる。
【0099】
一般式(1)におけるR〜Rが、N’−C1−C4アルキルウレイド基である場合、無置換のものより、置換基を有するものである方が好ましい。該N’−C1−C4アルキルウレイド基が、ヒドロキシ基、スルホ基またはカルボキシ基で置換されている場合、その具体例としては例えば、N’−2−ヒドロキシエチルウレイド、N’−3−ヒドロキシエチルウレイド等のN’−ヒドロキシC1−C4アルキルウレイド基;N’−2−スルホエチルウレイド、N’−3−スルホプロピルウレイド等のN’−スルホC1−C4アルキルウレイド基;N’−カルボキシメチルウレイド、N’−2−カルボキシエチルウレイド、N’−3−カルボキシプロピルウレイド、N’−4−カルボキシブチルウレイド等のN’−カルボキシC1−C4アルキルウレイド基;等が挙げられる。
【0100】
一般式(1)におけるR〜Rが、塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基もしくはカルボキシ基でベンゼン環が置換されても良いフェニルアミノ基の具体例としては、例えば、無置換フェニルアミノ;2−クロロフェニルアミノ、4−クロロフェニルアミノ、2,4−ジクロロフェニルアミノ等の塩素原子置換フェニルアミノ基;2−メチルフェニルアミノ、4−メチルフェニルアミノ、4−tert−ブチルフェニルアミノ等のC1−C4アルキル置換フェニルアミノ基;2−ニトロフェニルアミノ、4−ニトロフェニルアミノ等のニトロ置換フェニルアミノ基;3−スルホフェニルアミノ、4−スルホフェニルアミノ、2,4−ジスルホフェニルアミノ、3,5−ジスルホフェニルアミノ等のスルホ置換フェニルアミノ基;2−カルボキシフェニルアミノ、4−カルボキシフェニルアミノ、2,5−ジカルボキシフェニルアミノ、3,5−ジカルボキシフェニルアミノ等のカルボキシ置換フェニルアミノ基;等が挙げられる。
【0101】
一般式(1)におけるR〜Rが、置換基を有するフェニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基またはフェニルスルホニルアミノ基であり、それぞれの基に含まれるベンゼン環の置換基がC1−C4アルキル基である場合、該アルキル基は直鎖、分岐鎖又は環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐鎖であるものが好ましい。該アルキル基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル等の直鎖;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の分岐鎖;が挙げられる。
【0102】
一般式(1)におけるR〜Rが、塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基もしくはカルボキシ基でベンゼン環が置換されても良いベンゾイルアミノ基の具体例としては、例えば、無置換ベンゾイルアミノ;2−クロロベンゾイルアミノ、4−クロロベンゾイルアミノ、2,4−ジクロロフェニルアミノ等の塩素原子置換ベンゾイルアミノ基;2−メチルベンゾイルアミノ、3−メチルベンゾイルアミノ、4−メチルベンゾイルアミノ等のC1−C4アルキル置換ベンゾイルアミノ基;2−ニトロベンゾイルアミノ、4−ニトロベンゾイルアミノ、3,5−ジニトロベンゾイルアミノ等のニトロ置換ベンゾイルアミノ基;2−スルホベンゾイルアミノ、4−スルホベンゾイルアミノ等のスルホ置換ベンゾイルアミノ基;2−カルボキシベンゾイルアミノ、4−カルボキシベンゾイルアミノ、3,5−ジカルボキシベンゾイルアミノ等のカルボキシ置換ベンゾイルアミノ基;等が挙げられる。
【0103】
一般式(1)におけるR〜Rが、塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基またはカルボキシ基でベンゼン環が置換されても良いフェニルスルホニルアミノ基の具体例としては、例えば、無置換フェニルスルホニルアミノ;2−クロロフェニルスルホニルアミノ、4−クロロフェニルスルホニルアミノ等の塩素原子置換フェニルスルホニルアミノ基;2−メチルフェニルスルホニルアミノ、4−メチルフェニルスルホニルアミノ、4−tert−ブチルフェニルスルホニルアミノ等のC1−C4アルキル置換フェニルスルホニルアミノ基;2−ニトロフェニルスルホニルアミノ、3−ニトロフェニルスルホニルアミノ、4−ニトロフェニルスルホニルアミノ等のニトロ置換フェニルスルホニルアミノ基;3−スルホフェニルスルホニルアミノ、4−スルホフェニルスルホニルアミノ等のスルホ置換フェニルスルホニルアミノ基;3−カルボキシフェニルスルホニルアミノ、4−カルボキシフェニルスルホニルアミノ等のカルボキシ置換フェニルスルホニルアミノ基;等が挙げられる。
【0104】
一般式(1)における好ましいR〜Rの具体例は、水素原子、カルボキシ、スルホ、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、2−ヒドロキシエトキシ、2−スルホエトキシ、3−スルホプロポキシ、4−スルホブトキシ、カルボキシメトキシ、2−カルボキシエトキシ、メチルアミノ、エチルアミノ、2−ヒドロキシエチルアミノ、2−スルホエチルアミノ、3−スルホプロピルアミノ、2−カルボキシエチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、2,2’−ジヒドロキシジエチルアミノ、2,2’−ジカルボキシジエチルアミノ、3,3’−ジスルホジプロピルアミノ、アセチルアミノ、3−カルボキシプロパノイルアミノ、4−ヒドロキシブタノイルアミノ、N’−カルボキシメチルウレイド、N’−2−スルホエチルウレイド、4−スルホフェニルアミノ、2,4−ジスルホフェニルアミノ、2,5−ジカルボキシフェニルアミノ、ベンゾイルアミノ、3−スルホベンゾイルアミノ、2−カルボキシベンゾイルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、4−メチルフェニルスルホニルアミノ、4−ニトロフェニルスルホニルアミノ、3−スルホフェニルスルホニルアミノ、4−カルボキシフェニルスルホニルアミノ等であり、より好ましくは、水素原子、スルホ、メチル、メトキシ、2−ヒドロキシエトキシ、2−スルホエトキシ、3−スルホプロポキシ、4−スルホブトキシ、ジメチルアミノ、3,3’−ジスルホジプロピルアミノ、アセチルアミノ、3−カルボキシプロパノイルアミノ、N’−2−スルホエチルウレイド、2,4−ジスルホフェニルアミノ、ベンゾイルアミノ、4−メチルフェニルスルホニルアミノであり、さらに好ましくは、水素原子、スルホ、メチル、メトキシ、3−スルホプロポキシである。
【0105】
一般式(1)における好ましいR〜Rの組み合わせは、Rが3−スルホプロポキシまたは4−スルホブトキシ、Rが水素原子、Rがメチルである。
【0106】
一般式(2)におけるRがC1−C4アルキルチオ基の場合、該C1−C4アルキル部分は直鎖又は分岐鎖のいずれも好ましいが、直鎖がより好ましい。C1−C4アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ等が挙げられる。また、一般式(2)におけるRが置換基を有するC1−C4アルキルチオ基の場合、該置換基は、ヒドロキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基であることが好ましく、スルホ基もしくはカルボキシ基であることがより好ましい。置換基を有するC1−C4アルキルチオ基の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチルチオ、2−ヒドロキシプロポキシ、3−ヒドロキシプロポキシチオ等のヒドロキシC1−C4アルキルチオ基;メトキシエチルチオ、エトキシエチルチオ、n−プロポキシエチルチオ、イソプロポキシエチルチオ、n−ブトキシエチルチオ、メトキシプロピルチオ、エトキシプロピルチオ、n−プロポキシプロピルチオ、イソプロポキシブチルチオ、n−プロポキシプロピルチオ等のC1−C4アルコキシC1−C4アルキルチオ基;2−ヒドロキシエトキシエチルチオ等のヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキルチオ基;3−スルホプロピルチオ、4−スルホブチルチオ等のスルホC1−C4アルキルチオ基;カルボキシメチルチオ、2−カルボキシエチルチオ、3−カルボキシプロピルチオ等のカルボキシC1−C4アルキルチオ基;等が挙げられる。
【0107】
一般式(2)における好ましいRの具体例はメルカプト(−SH)、メチルチオ、エチルチオ、2−ヒドロキシエチルチオ、メトキシエチルチオ、エトキシエチルチオ、2−スルホエチルチオ3−スルホプロピルチオ、4−スルホブチルチオ、カルボキシメチルチオ、2−カルボキシエチルチオ、3−カルボキシプロピルチオ等であり、より好ましくは、メチルチオ、2−スルホプロピルチオ、カルボキシメチルチオ、2−カルボキシエチルチオであり、さらに好ましくは2−スルホプロピルチオ、2−カルボキシエチルチオである。
【0108】
一般式(3)におけるR〜Rが、C1−C4アルキル基である場合、該アルキル基は、直鎖、分岐鎖もしくは環状のいずれであってもよいが、直鎖もしくは分岐鎖であることが好ましく、直鎖であることがさらに好ましい。C1−C4アルキル基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル等の直鎖;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の分岐鎖;が挙げられる。
【0109】
一般式(3)におけるR〜Rが、ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、スルホ基またはカルボキシ基で置換されても良いC1−C4アルコキシ基である場合、該置換基としては、好ましいものも含めて、一般式(1)のR〜RがC1−C4アルコキシ基である場合と同じでよい。
【0110】
一般式(3)におけるR〜Rが、ヒドロキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されてもよいC1−C4アルキルスルホニル基の具体例としては、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、n−ブチルスルホニル、sec−ブチルスルホニル、tert−ブチルスルホニル等の直鎖もしくは分岐鎖のC1−C4アルキルスルホニル基;2−ヒドロキシエチルスルホニル、3−ヒドロキシプロピルスルホニル等のヒドロキシC1−C4アルキルスルホニル基;2−スルホプロピルスルホニル、3−スルホプロピルスルホニル、4−スルホブチルスルホニル等のスルホC1−C4アルキルスルホニル基;カルボキシメチルスルホニル、2−カルボキシエチルスルホニル、3−カルボキシプロピルスルホニル等のカルボキシC1−C4アルキルスルホニル基;等が挙げられる。
【0111】
一般式(3)におけるR〜Rが、塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基またはカルボキシ基でベンゼン環が置換されても良いフェニルスルホニル基の具体例としては、例えば、無置換フェニルスルホニル;2−クロロフェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル等の塩素原子置換フェニルスルホニル基;2−メチルフェニルスルホニル、4−メチルフェニルスルホニル、2,4−ジメチルフェニルスルホニル、4−tert−ブチルフェニルスルホニル等のC1−C4アルキル置換フェニルスルホニル基;2−ニトロフェニルスルホニル、4−ニトロフェニルスルホニル等のニトロ置換フェニルスルホニル基;3−スルホフェニルスルホニル、4−スルホフェニルスルホニル、3,5−ジスルホフェニルスルホニル等のスルホ置換フェニルスルホニル基;2−カルボキシフェニルスルホニル、4−カルボキシフェニルスルホニル、3,5−ジカルボキシフェニルスルホニル等のカルボキシ置換フェニルスルホニル基;等が挙げられる。
【0112】
一般式(3)における好ましいR〜Rの具体例は、水素原子、塩素原子、カルボキシ、スルホ、ニトロ、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、2−ヒドロキシエトキシ、2−スルホエトキシ、3−スルホプロポキシ、4−スルホブトキシ、カルボキシメトキシ、2−カルボキシエトキシ、メチルスルホニル、エチルスルホニル、tert−ブチルスルホニル、2−ヒドロキシエチルスルホニル、3−スルホプロピルスルホニル、2−カルボキシエチルスルホニル、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、4−メチルフェニルスルホニル、2,4−ジメチルフェニルスルホニル、4−ニトロフェニルスルホニル、4−スルホフェニルスルホニル、2−カルボキシフェニルスルホニル、4−カルボキシフェニルスルホニル等であり、より好ましくは、水素原子、塩素原子、カルボキシ、スルホ、ニトロ、メチル、メトキシ、メチルスルホニル、2−カルボキシフェニルスルホニルであり、さらに好ましくは、水素原子、スルホ、メトキシである。また、R〜Rのうち、少なくとも1つが水素原子であることが好ましく、少なくとも1つが水素原子以外の置換基であることが好ましい。
【0113】
一般式(3)における好ましいR、R、Rの組み合わせは、水素原子、メトキシおよびスルホ、または一つがスルホで他方二つが水素原子である。一つがスルホで他方二つが水素原子である場合は、スルホの置換位置がベンゾチアゾール環の6位の場合がより好ましい。
【0114】
一般式(1)において、基Bは置換されていてもよいフェニル基またはナフチル基であり、基Bが置換フェニル基の場合は、ヒドロキシ基;スルホ基;カルボキシ基;C1−C4アルキル基;C1−C4アルコキシ基;アミノ基;モノまたはジC1−C4アルキルアミノ基;アセチルアミノ基;ベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基またはカルボキシ基で置換されていてもよいベンゾイルアミノ基;よりなる群から選択される置換基を有し、置換ナフチル基の場合はヒドロキシ基;スルホ基;C1−C4アルコキシ基;ベンゼン環がメチル基、ニトロ基または塩素原子で置換されていてもよいフェニルスルホニルオキシ基;よりなる群から選択される置換基を有する。
【0115】
一般式(1)における基Bが置換基を有するフェニル基又はナフチル基であり、該置換基がC1−C4アルコキシ基である場合、該アルコキシ基は、好ましいものも含めて、一般式(1)のR〜Rが無置換のC1−C4アルコキシ基である場合と同じでよい。
【0116】
一般式(1)における基BがモノまたはジC1−C4アルキルアミノ基置換フェニル基である場合、該モノまたはジC1−C4アルキルアミノ基は、好ましいものも含めて一般式(1)のR〜Rが無置換のモノまたはジC1−C4アルキルアミノ基である場合と同じでよい。
【0117】
一般式(1)における基Bが置換ナフチル基であり、該置換基がベンゼン環がメチル基、ニトロ基または塩素原子で置換されても良いフェニルスルホニルオキシ基である場合、その具体例としては、例えば、無置換フェニルスルホニルオキシ;4−メチルフェニルスルホニルオキシ、2,4−ジメチルフェニルスルホニルオキシ等のメチル置換フェニルスルホニルオキシ基;2−ニトロフェニルスルホニルオキシ、4−ニトロスルホニルオキシ等のニトロ置換フェニルスルホニルオキシ基;4−クロロフェニルスルホニルオキシ、2,4−ジクロロフェニルスルホニルオキシ、3,5−ジクロロフェニルスルホニルオキシ等の塩素原子置換フェニルスルホニルオキシ基;等が挙げられる。
【0118】
一般式(1)においてnは1の場合が好ましい。
【0119】
一般式(1)における基Bが置換フェニル基である場合の好ましい置換基の具体例は、水素原子、ヒドロキシ、スルホ、カルボキシ、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、ジメチルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、4−スルホベンゾイルアミノ、4−カルボキシベンゾイルアミノ等であり、より好ましくは水素原子、ヒドロキシ、スルホ、カルボキシ、メチル、アセチルアミノであり、さらに好ましくは、水素原子、スルホ、カルボキシである。
【0120】
一般式(1)における基Bが置換ナフチル基である場合の好ましい置換基の具体例は、水素原子、ヒドロキシ、スルホ、メトキシ、エトキシ、フェニルスルホニルオキシ、4−メチルフェニルスルホニルオキシ、2−ニトロフェニル等であり、より好ましくは、水素原子、ヒドロキシ、スルホ、メトキシであり、されに好ましくは、水素原子、スルホである。
【0121】
一般式(1)における好ましい基Bの具体例は、フェニル、2−スルホフェニル、4−スルホフェニル、2,4−ジスルホフェニル、3,5−ジスルホフェニル、4−カルボキシフェニル、3,5−カルボキシフェニル、4−メチルフェニル、3−メチルフェニル、3−ヒドロキシ−4−カルボキシフェニル、5−スルホ−3−カルボキシ−2−ヒドロキシフェニル、4−メトキシフェニル、4−アセチルアミノフェニル、ナフチル、ナフト−2−イル、6−スルホナフチル、7−スルホナフチル、4,7−ジスルホナフチル、5,7−ジスルホナフト−2−イル、6,8−ジスルホナフト−2−イル、4,8−ジスルホナフト−2−イル、4,6,8−トリスルホナフト−2−イル等であり、より好ましくは、フェニル、4−スルホフェニル、2,4−ジスルホフェニル、4−カルボキシフェニル、3,5−カルボキシフェニル、5,7−ジスルホナフト−2−イル、4,8−ジスルホナフト−2−イルであり、されに好ましくは、フェニル、4−スルホフェニル、4−カルボキシフェニル、3,5−カルボキシフェニルである。
【0122】
一般式(1)〜(3)、ならびに一般式(5)〜(7)の置換基について記載した好ましいもの同士を組み合わせた化合物は、より好ましく、より好ましいもの同士を組み合わせた化合物は、さらに好ましい。なお、さらに好ましいもの同士を組み合わせた場合等についても同様である。なお、上記の通り、一般式(5)〜(7)中のn、R〜R、基Aおよび基Bは、一般式(1)におけるものと同じ意味を示す。
【0123】
一般式(1)で表される染料は、分子内のスルホ基等を利用して、塩を形成できる。塩を形成するとき、分子内のスルホ基等は、金属、アンモニア又は有機塩基等の各カチオンと塩を形成することが好ましい。
【0124】
金属としてはアルカリ金属やアルカリ土類金属が挙げられる。アルカリ金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えばカルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
【0125】
有機塩基としては、下記一般式(8)で示される4級アンモニウムイオンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0126】
本実施形態に係る第2インクは、一般式(1)で表される染料と第2金属イオンの金属塩を含み、第2インクに含まれる染料は実質的に第2金属イオンの金属塩からなることが好ましい。これにより、染料の溶解性が改善するためである。
【0127】
第1染料の対イオンとして第2インクに含まれる第2金属イオンとしては、ナトリウムイオンおよびリチウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。これにより、第2インク中における第1染料の溶解性を向上させることができる。
【0128】
また、本実施形態に係る第1染料の遊離酸、その互変異性体、およびそれらの各種の塩は、混合物であってもよい。例えば、第1染料のナトリウム塩と第1染料のアンモニウム塩との混合物、第1染料の遊離酸と第1染料のナトリウム塩との混合物、第1染料のリチウム塩、第1染料のナトリウム塩および第1染料のアンモニウム塩の混合物など、いずれの組み合わせを用いてもよい。塩の種類によっては溶解性などの物性値が異なる場合があるので、必要に応じて適宜塩の種類を選択したり、複数の塩などを含む場合にその比率を変化させたりすることにより、目的に合った物性を有する混合物を得ることができる。
【0129】
【化8】

【0130】
上記一般式(8)においてZ、Z、Z、Zは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基およびヒドロキシアルコキシアルキル基よりなる群から選択される基を表す。
【0131】
一般式(8)におけるZ、Z、Z、Zのアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどが挙げられる。また、ヒドロキシアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等のヒドロキシC1−C4アルキル基が挙げられる。また、ヒドロキシアルコキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等ヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基が挙げられる。これらの中でも、水素原子、メチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等を好ましく用いることができる。
【0132】
式(8)で表される4級アンモニウムイオンについて、Z、Z、ZおよびZの好ましい組み合わせの具体例を表1に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
第1染料の好適な具体例として、特に限定されるものではないが、表2〜表7に示す構造式で表される化合物などが挙げられる。各表においてスルホ基及びカルボキシ基などの官能基は、便宜上、遊離酸の形で記載するものとする。
【0135】
【表2】

【0136】
【表3】

【0137】
【表4】

【0138】
【表5】

【0139】
【表6】

【0140】
【表7】

【0141】
(b)染料の合成方法
第1染料は、例えば次のような方法で合成することができる。なお、各工程における化合物の構造式は便宜上、遊離酸の形で表すものとする。
【0142】
まず、下記一般式(9)で表される化合物を常法によりジアゾ化し、これと下記一般式(10)で表される化合物を常法によりカップリング反応させ下記一般式(11)で表される化合物を得る。次に、得られた一般式(11)の化合物を常法によりジアゾ化した後、これと下記一般式(12)で表される化合物を常法によりカップリング反応させ、下記一般式(13)で表される化合物を得る。そして、得られた一般式(13)の化合物を常法によりジアゾ化した後、これと下記一般式(14)で表される化合物を常法によりカップリング反応させる事により、一般式(1)で表される本実施形態に係る第1染料を得ることができる。なお、一般式(14)で表される化合物は、製品として市販品を購入できるか、又は公知の方法で合成が可能である。
【0143】
下記一般式(9)の化合物のジアゾ化は、公知の方法で実施される。例えば、下記一般式(9)の化合物のジアゾ化は、硫酸、酢酸もしくは燐酸中、例えば−5℃〜20℃、好ましくは5℃〜10℃の温度でニトロシル硫酸を使用して実施される。また、一般式(9)の化合物のジアゾ化物と一般式(10)の化合物とのカップリングは、公知の条件で実施される。一般式(9)の化合物のジアゾ化物と一般式(10)の化合物とのカップリングは、具体的には、水又は水性有機媒体中、例えば−5℃〜30℃、好ましくは10℃〜30℃の温度で実施される。一般式(9)の化合物と一般式(10)の化合物とは、ほぼ化学量論量で用いることができる。
【0144】
一般式(11)の化合物のジアゾ化は、公知の方法で実施される。具体的には、一般式(12)の化合物のジアゾ化は、塩酸、硫酸のような無機酸存在下、水又は水性有機媒体(水と水溶性有機溶剤との混合物等)中、例えば−5〜40℃、好ましくは5℃〜30℃の温度で亜硝酸塩、たとえば亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸アルカリ金属塩を使用して実施される。また、一般式(11)の化合物のジアゾ化物と一般式(12)の化合物のカップリングは、公知の条件で実施される。具体的には、一般式(11)の化合物のジアゾ化物と一般式(12)の化合物のカップリングは、水又は水性有機媒体中、例えば−5℃〜50℃、好ましくは10℃〜30℃の温度であって、弱酸性からアルカリ性のpH値で行うことが好ましい。一般式(11)の化合物のジアゾ化物と一般式(12)の化合物のカップリングは、より好ましくは弱酸性から弱アルカリ性のpH値、たとえばpH6〜pH10で実施される。なお、ジアゾ化反応液が酸性であるため、カップリング反応の進行により反応系内は、さらに酸性化してしまうため、上記のpH値への調整を塩基の添加によって行うことが好ましい。塩基としては、たとえば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、酢酸ナトリウム等の酢酸塩、アンモニア又は有機アミン等が使用できる。一般式(11)と一般式(12)の化合物は、ほぼ化学量論量で用いることができる。
【0145】
一般式(13)の化合物のジアゾ化は、公知の方法で実施される。具体的には、一般式(13)の化合物のジアゾ化は、塩酸、硫酸のような無機酸存在下、含む水又は水性有機媒体(水と水溶性有機溶剤との混合物等)中、例えば−5℃〜40℃、好ましくは10℃〜30℃の温度で亜硝酸塩、たとえば亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸アルカリ金属塩を使用して実施される。また、一般式(13)の化合物のジアゾ化物と一般式(14)の化合物のカップリングは、公知の条件で実施される。一般式(13)の化合物のジアゾ化物と一般式(14)の化合物のカップリングは、水又は水性有機媒体中、例えば−5℃〜50℃、好ましくは10℃〜30℃の温度であって、弱酸性からアルカリ性のpH値で行うことが好ましい。一般式(13)の化合物のジアゾ化物と一般式(14)の化合物のカップリングは、より好ましくは弱酸性から弱アルカリ性のpH値、たとえばpH6〜pH10で実施され、pH値の調整は塩基の添加によって行うことが好ましい。塩基としては、一般式(11)の化合物のジアゾ化物と一般式(12)の化合物のカップリングで用いたものと同様のものが使用できる。一般式(13)と一般(14)の化合物は、ほぼ化学量論量で用いることができる。
【0146】
一般式(1)の染料を所望の塩とするには、カップリング反応後、所望の無機塩または有機の陽イオンの塩を反応液に添加することにより塩析するか、あるいは塩酸など鉱酸の添加により遊離酸の形で単離し、これを水、酸性の水または水性有機媒体などを必要に応じて用い洗浄することにより無機塩を除去後、水性の媒体中で所望の無機の塩基または有機の塩基により中和することで、対応する塩の溶液とすることができる。
【0147】
例として、一般式(1)で表される染料をリチウム塩とする方法を以下に説明する。一般式(13)の化合物と一般式(14)の化合物とのカップリング反応後、塩化ナトリウムを添加して、塩析および濾過分取を行うことで、一般式(1)で表される染料のナトリウム塩を得る。次に、ナトリウム塩に水および塩酸を添加し酸析および濾過分取を行うことで、一般式(1)で表される染料の遊離酸を得る。さらに、遊離酸に水および水酸化リチウムを添加することで、一般式(1)で表される染料のリチウム塩を得ることができる。また、リチウム塩とする異なる方法としては、一般式(1)で表される染料のナトリウム塩と、塩化リチウムと、を用いた塩交換反応が挙げられる。
【0148】
なお、酸性の水とは、例えば硫酸、塩酸などの鉱酸や酢酸などの有機酸を水に溶解し、酸性にしたものをいう。また、水性有機媒体とは、水を含有する水と混和可能な有機物質および水と混和可能ないわゆる有機溶剤などをいう。水性有機媒体の具体例としては、水溶性有機溶剤などが挙げられるが、通常溶剤として分類されない有機物質であっても水と混和可能なものであれば必要に応じて使用することが可能である。
【0149】
水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノールまたは第三ブタノール等のC1−C4アルカノール;N,N−ジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンまたはN−メチルピロリジン−2−オン等のラクタム;1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オンまたは1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の環式尿素類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトンまたはケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコールまたはジチオジグリコール等のC2〜C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴまたはポリ−アルキレングリコールまたはチオグリコール;グリセリンまたはヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)トリエチレングリコールモノメチルエーテルまたはトリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1−C4アルキルエーテル;γ−ブチロラクトンまたはジメチルスルホキシド等があげられる。
【0150】
また、通常溶剤として分類されない有機物質の例としては、尿素や糖類などを挙げることができる。無機塩としては、例えば塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム等のアンモニウム塩等が挙げられる。また、有機の陽イオンの塩としては、例えば、有機アミンのハロゲン塩等が挙げられる。無機の塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。また、有機の塩基としては、有機アミン、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの一般式(8)で表される4級アンモニウム類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0151】
【化9】

一般式(9)中、基Aは、式(2)および式(3)におけるものと同じ意味を表す。
【0152】
【化10】

一般式(10)中、R、RおよびRは、式(1)におけるものと同じ意味を表す。
【0153】
【化11】

一般式(11)中、基A、R、RおよびRは、式(1)〜式(3)におけるものと同じ意味を表す。
【0154】
【化12】

一般式(12)中、nは、式(1)におけるものと同じ意味を表す。
【0155】
【化13】

一般式(13)中、R、RおよびRは、式(1)におけるものと同じ意味を表す。
【0156】
【化14】

一般式(14)中、Rおよび基Bは、式(1)におけるものと同じ意味を表す。
【0157】
第1染料は、上記の表2〜表7に示す化合物の中でも、化合物No.14に示される化合物またはその塩と、化合物No.22に示される化合物またはその塩と、の混合物である下記一般式(4)で表される化合物またはその塩を好ましく用いることができる。
【0158】
【化4】

【0159】
1.3.各インクの物性
本実施形態に係るインクセットをインクジェット記録装置に用いる場合において、各インク(第1インクおよび第2インク)の20℃における粘度は、それぞれ、2mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上6mPa・s以下であることがより好ましい。各インクは、20℃における粘度が上記範囲内にあると、ノズルから適量吐出され、飛行曲がりを起こすことや飛散することを一層低減できるので、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。各インクの粘度は、振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、インクの温度を20℃に保持することで測定できる。
【0160】
2.液滴吐出装置
本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置は、上述した第1インクおよび第2インクを備えるインクセットと、第1インクおよび第2インクを吐出するためのノズル孔を備えたノズル面と、ノズル面を払拭するためのワイプ部材と、を有する。
【0161】
以下、本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置について、図1〜図3を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る液滴吐出装置として、インクジェットプリンター(以下、単に「プリンター」という。)を例示する。
【0162】
図1は、本実施形態におけるプリンター1の構成を示す斜視図である。なお、このプリンター1は、シリアルプリンターを表している。
【0163】
図1に示すように、プリンター1は、インクジェットヘッド2を搭載すると共にインクカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、インクジェットヘッド2の下方に配設され被記録媒体6が搬送されるプラテン5と、キャリッジ4を被記録媒体6の媒体幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、被記録媒体6を媒体送り方向に搬送する媒体送り機構8と、を有するものである。加えて、プリンター1は、当該プリンター1全体の動作を制御する制御装置CONTを有している。なお、上記媒体幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)である。上記媒体送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向)である。
【0164】
インクカートリッジ3は、本実施形態のようにキャリッジ4に装着するものに限らず、これに替えて例えば、プリンター1の筐体側に装着しインク供給チューブを介してインクジェットヘッド2に供給するタイプのものであってもよい。インクカートリッジ3には、それぞれ、第1インク、第2インク、第3インク、第4インクが収容されている。プリンター1のインクセットは、第1インク、第2インク、第3インクおよび第4インクからなる。第3インクおよび第4インクは、第1インクおよび第2インクの少なくとも一方と同様の組成のインクであってもよいし、第1インクおよび第2インクと異なる組成のインクであってもよい。
【0165】
キャリッジ4は、主走査方向に架設された支持部材であるガイドロッド9に支持された状態で取り付けられたものである。また、キャリッジ4は、キャリッジ移動機構7によりガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するものである。
【0166】
リニアエンコーダ10は、キャリッジ4の主走査方向上における位置を信号で検出するものである。この検出された信号は、位置情報として制御装置CONTに送信されるようになっている。制御装置CONTは、このリニアエンコーダ10からの位置情報に基づいてインクジェットヘッド2の走査位置を認識し、インクジェットヘッド2による記録動作(吐出動作)などを制御するようになっている。また、制御装置CONTは、キャリッジ4の移動速度を可変制御可能な構成となっている。
【0167】
図2は、本実施形態におけるインクジェットヘッド2に設けられたノズル孔17の配列を示す概略図である。
【0168】
図2に示すように、インクジェットヘッド2は、インクを吐出する複数のノズル孔17が設けられたノズル面21Aを有する。インクの吐出面でもあるノズル面21Aには、複数のノズル孔17ごとにノズル列16が形成されている。各ノズル列16においては、例えば異なる組成のインクを吐出可能になっている。本実施形態ではインクの組成に対応して4列、即ちノズル列16(第1インク)、ノズル列16(第2インク)、ノズル列16(第3インク)、およびノズル列16(第4インク)が設けられている。各ノズル列16は、例えば180個のノズル孔17によって構成されている。
【0169】
図3は、本実施形態におけるインクジェットヘッド2の内部構成を示す部分断面図である。
【0170】
図3に示すように、インクジェットヘッド2は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22と、を備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21と、を備えると共に、共通インク室29と、インク供給口30と、圧力室31と、を形成する。さらに、流路形成ユニット22は、ダイヤフラム部として機能する島部32と、共通インク室29内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33と、を備える。ヘッド本体18には、固定部材26と共に駆動ユニット24を収容する収容空間23と、インクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28と、が形成される。
【0171】
上記構成、即ちピエゾ式のインクジェットヘッド2によれば、ケーブル27を介して駆動ユニット24に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19が圧力室31に接近する方向及び離れる方向に変形(移動)する。このため、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル孔17から、インクが吐出される。
【0172】
図1に戻り、インクジェットヘッド2の移動範囲のうちプラテン5の外側の領域には、インクジェットヘッド2の走査起点となるホームポジションが設定されている。このホームポジションには、メンテナンスユニット11が設けられている。メンテナンスユニット11は、印字動作以外でインクジェットヘッド2をキャップ部材12でキャッピングしてインクの蒸発を抑制する保湿動作と、インクジェットヘッド2の各ノズル孔17からインクをキャップ部材12に予備吐出させることで増粘インクによるノズル孔17の目詰まり防止やノズル孔17のメニスカスを調整してインクジェットヘッド2から正常にインクを吐出させるフラッシング動作と、キャップ部材12でインクジェットヘッド2をキャッピングした後に不図示の吸引ポンプを駆動させて各ノズル孔17から粘性が高くなったインクや付着したゴミ等を強制吸引してメニスカスを調整し、インクジェットヘッド2から正常にインクを吐出させる吸引動作(ヘッドクリーニング)と、インクジェットヘッド2のノズル面21A(図2参照)をワイプ部材13で払拭(ワイピング)することでノズル孔17近傍に付着したインクや増粘したインク等を除去したり、ノズル孔17のメニスカスを破壊してメニスカスを再調整させるパージ処理を行うワイピング動作と、を実行する構成となっている。
【0173】
第1インクおよび第2インクは、上述した組成からなる。そのため、第1インクおよび第2インクがワイピングによってノズル面21Aで混合されても、顔料の凝集が生じにくくなるので、顔料の凝集物によるノズル孔17の詰まり等を低減できる。その結果、プリンター1は、吐出安定性に良好なものとなる。
【0174】
3.実施例
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0175】
3.1.インクの調製
3.1.1.顔料インクの調製
(1)顔料分散液の調製
顔料としてブラック顔料20質量部、およびイオン交換水80質量部を加えて、混合攪拌した後、サンドミル(安川製作所株式会社製)を用いて、ジルコニアビーズ(直径1.5mm)と共に6時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズをセパレータで分離することにより、顔料分散液を得た。
【0176】
(2)顔料インクの調製
次に、表8に示す配合量で各成分を混合攪拌し、孔径10μmのメンブレンフィルターで加圧濾過を行って、顔料インクAおよび顔料インクBを得た。なお、表8に記載されている単位は、質量%である。
【0177】
また、各顔料インクの粘度を振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、インクの温度を20℃に保持することで測定した。各顔料インクの粘度を表8に併せて記載する。
【0178】
3.1.2.染料インクの調製
表8に示す配合量で各成分を混合攪拌し、孔径1.0μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過を行って、染料インクA、染料インクB、染料インクC、染料インクDおよび染料インクEを得た。
【0179】
また、各染料インクの粘度を振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、インクの温度を20℃に保持することで測定した。各染料インクの粘度を表24に併せて記載する。
【0180】
【表8】

【0181】
なお、表8中の各成分は、以下の通りである。ブラック顔料Aは、エボニックデグザ株式会社製、商品名Printex 30を常法により処理し、カリウム塩としたものを用いた。また、ブラック顔料Bは、エボニックデグザ株式会社製、商品名Printex 30を常法により処理し、ナトリウム塩としたものを用いた。また、染料A〜染料Eは、下記式(4)で表される化合物を常法により処理して、塩としたものを用いた。
(顔料)
・ブラック顔料A(カリウム塩)
・ブラック顔料B(ナトリウム塩)
(染料)
・染料A(下記式(4)で表される化合物のリチウム塩)
・染料B(下記式(4)で表される化合物のナトリウム塩)
・染料C(下記式(4)で表される化合物のカリウム塩)
・染料D(上記式(4)で表される化合物のリチウム塩とナトリウム塩の混合塩;Li:Na=8:2)
・染料E(上記式(4)で表される化合物のリチウム塩とカリウム塩の混合塩;Li:K=5:5)
(浸透促進剤)
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル
(保湿剤)
・1,2−ヘキサンジオール
・グリセリン
・トリエチレングリコール
・トリメチロールプロパン
・2−ピロリドン
(界面活性剤)
・アセチレングリコール系界面活性剤A(商品名「オルフィン E1010」、日信化学工業株式会社製)
・アセチレングリコール系界面活性剤B(商品名「サーフィノール 104」、Air Products and Chemicals. Inc.社製)
(pH調整剤)
・トリエタノールアミン
・水酸化カリウム
(水)
・イオン交換水
【0182】
【化4】

【0183】
3.2.評価試験
3.2.1.導電率の測定
各顔料インクおよび各染料インクの20℃における導電率を、導電率計DS−52(商品名、株式会社堀場製作所)によって測定した。測定結果を表8に併せて示す。
【0184】
3.2.2.吐出安定性の評価
インクジェットプリンターPX−B500(商品名、セイコーエプソン株式会社製)のノズル列に、各顔料インクおよび各染料インクを充填した。そして、これらのインクのうち、顔料インク1種および染料インク1種を選択して、(a)選択した顔料インクおよび染料インクを用いたチェック印字、(b)ノズル面の吸引動作(ヘッドクリーニング)およびノズル面のワイピング、(c)選択した顔料インクおよび染料インクを用いたチェック印字、(d)インクジェットプリンターの24時間放置、という(a)〜(d)の各操作をこの順に10サイクル行った。
【0185】
その後、選択した顔料インクおよび染料インクをノズルから吐出させて、チェック印字を行い、ノズル抜けおよびインクの飛行曲がりの有無を確認することにより、吐出安定性の評価を行った。評価結果を表25に示す。また、評価基準の分類については、以下のとおりである。
「○」:ノズル抜けおよびインクの飛行曲がりがない
「×」:ノズル抜けまたはインクの飛行曲がりが発生
【0186】
3.3.評価結果
以上の評価試験の結果を表9に示す。
【0187】
【表9】

【0188】
表9の実施例1〜4のインクセットは、いずれも顔料インクに含まれる金属イオン(第1金属イオン)の極限当量伝導率が染料インクに含まれる金属イオン(第2金属イオン)の極限当量伝導率よりも大きい。そのため、吐出安定性試験により、ノズル抜けや飛行曲がりがないことが示された。これにより、顔料インクおよび染料インクが混合されても、顔料の凝集が生じにくいことが示された。
【0189】
一方、表9の比較例1〜4のインクセットは、いずれも顔料インクに含まれる金属イオン(第1金属イオン)の極限当量伝導率が染料インクに含まれる金属イオン(第2金属イオン)の極限当量伝導率以下である。そのため、吐出安定性試験において、ノズル抜けや飛行曲がりが発生した。これにより、顔料インクおよび染料インクの混合により、顔料の凝集が生じていることが示された。なお、顔料の凝集は、ノズル面のワイピング時に多く発生したほか、染料インクの吐出時における染料インクの飛沫が顔料インクを吐出するノズル孔に付着することによっても発生した。
【0190】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0191】
1…プリンター、2…インクジェットヘッド、3…インクカートリッジ、4…キャリッジ、5…プラテン、6…被記録媒体、7…キャリッジ移動機構、8…媒体送り機構、9…ガイドロッド、10…リニアエンコーダ、11…メンテナンスユニット、12…キャップ部材、13…ワイプ部材、16…ノズル列、17…ノズル孔、18…ヘッド本体、19…振動板、20…流路基板、21…ノズル基板、21A…ノズル面、22…流路形成ユニット、23…収容空間、24…駆動ユニット、25…圧電素子、26…固定部材、27…ケーブル、28…内部流路、29…共通インク室、30…インク供給口、31…圧力室、32…島部、33…コンプライアンス部、CONT…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、顔料および前記顔料の対イオンとして第1金属イオンを含有する第1インクと、
水、下記一般式(1)で表される染料および前記染料の対イオンとして第2金属イオンを含有する第2インクと、
を有し、
下記(条件1)または(条件2)に記載の前記第1金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]は、下記(条件3)または(条件4)に記載の前記第2金属イオンの極限当量伝導率[S・cm/eq]よりも大きい、インクセット。
(条件1)前記第1金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件2)前記第1金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
(条件3)前記第2金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件4)前記第2金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
【化1】

(式(1)中、nは、0または1であり、
は、カルボキシ基;C1−C8アルコキシカルボニル基;C1−C8アルコキシカルボニル基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルキル基;またはヒドロキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいフェニル基を表し、
、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子;塩素原子;ヒドロキシ基;スルホ基;カルボキシ基;スルファモイル基;カルバモイル基;C1−C4アルキル基;ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、ヒドロキシC1−C4アルコキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルコキシ基;ヒドロキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいモノもしくはジC1−C4アルキルアミノ基;ヒドロキシ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルキルカルボニルアミノ基;ヒドロキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいN’−C1−C4アルキルウレイド基;ベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいフェニルアミノ基;ベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいベンゾイルアミノ基;またはベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいフェニルスルホニルアミノ基;をそれぞれ表し、
基Aは、下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される置換複素環基であり、
【化2】

(式(2)中、Rは、メルカプト基;またはヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、ヒドロキシC1−C4アルコキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルキルチオ基を表す。)
【化3】

(式(3)中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子;塩素原子;カルボキシ基;スルホ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルバモイル基;スルファモイル基;C1−C4アルキル基;ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルコキシ基;ヒドロキシ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいC1−C4アルキルスルホニル基;またはベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいフェニルスルホニル基;をそれぞれ表す。)
基Bは、置換されていてもよいフェニル基またはナフチル基であり、
基Bが置換フェニル基の場合は、ヒドロキシ基;スルホ基;カルボキシ基;C1−C4アルキル基;C1−C4アルコキシ基;アミノ基;モノもしくはジC1−C4アルキルアミノ基;アセチルアミノ基;およびベンゼン環が塩素原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基もしくはカルボキシ基で置換されていてもよいベンゾイルアミノ基;よりなる群から選択される置換基を有し、
基Bが置換ナフチル基の場合は、ヒドロキシ基;スルホ基;C1−C4アルコキシ基;およびベンゼン環がメチル基、ニトロ基または塩素原子で置換されていてもよいフェニルスルホニルオキシ基;よりなる群から選択される置換基を有する。)
【請求項2】
請求項1において、
前記第1金属イオンは、ナトリウムイオンおよびリチウムイオンの少なくとも一方である、インクセット。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第2金属イオンは、カリウムイオンおよびナトリウムイオンの少なくとも一方である、インクセット。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記一般式(1)中、前記Rがカルボキシ基または無置換C1−C4アルキル基であり、前記RがスルホC1−C4アルコキシ基、前記Rが水素原子、メチル基またはエチル基である、インクセット。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記基Aが前記一般式(3)で表される置換複素環基であり、
前記一般式(3)中、前記R、前記Rおよび前記Rが、それぞれ独立に水素原子、塩素原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、C1−C4アルキル基、C1−C4アルコキシ基、C1−C4アルキルスルホニル基である、インクセット。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記染料は、下記式(4)で表される化合物またはその塩である、インクセット。
【化4】

【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の第1インクおよび第2インクを備えるインクセットと、
前記第1インクおよび前記第2インクを吐出するためのノズル孔を備えたノズル面と、
前記ノズル面を払拭するためのワイプ部材と、
を有する、液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−10826(P2013−10826A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143003(P2011−143003)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】