説明

インクセット

【課題】光沢ムラがなく、定着性に優れた画像を実現できるインクセットを提供する。
【解決手段】顔料とポリマーとを含んでなるインク組成物と、中空樹脂粒子とウレタン樹脂とを含んでなる白色インク組成物とを少なくとも有するインクセットであって、前記ポリマーの屈折率と、前記中空樹脂粒子の屈折率と、前記ウレタン樹脂の屈折率との間で、最高屈折率と最低屈折率との差が0.1以下であるインクセットとする。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、白色インク組成物を少なくとも有するインクセットに関する。
【0002】
背景技術
従来から、白色色材として中空ポリマー微粒子を含有させた白色インク組成物が知られている(例えば、米国特許第4,880,465号:特許文献1)。この中空ポリマー微粒子は、その内部に空洞を有しており、その外殻が液体透過性の樹脂から形成されている。この様な構造により、インク組成物中では、中空樹脂粒子の内部空洞は溶媒によって満たされて中空樹脂粒子の比重とインク組成物の比重とが実質的に同一になるため、中空樹脂粒子はインク組成物中に安定に分散することができる。そして、このインク組成物を用いて記録媒体上に画像を形成すると、乾燥時に中空樹脂粒子の内部空間が空気で置換されるため、中空樹脂粒子は、その外殻と空洞の間における光の屈折率の差により生じる光散乱によって隠蔽効果を発揮する(即ち、白色を呈する)。一般的に、中空樹脂粒子自体はアクリル等の透明樹脂により形成されている。また、一方で、白色色材として金属酸化物等を含有させた白色インク組成物も知られている。しかしながら、上記のような白色色材を用いたインク組成物では、記録媒体上での光沢ムラおよび定着性が不十分とされる場合があった。
【0003】
一方、特開平8−85218号公報(特許文献2)には、印字領域中でカラーインクの記録されていない空隙箇所に、カラーインクとの屈折率差が0.1以内の屈折率を有するクリアーインクを記録することを特徴とするインクジェット記録方法が提案されているが、本発明によるインクセットとは、その構成および効果がまったく異なるものである。
【0004】
また、特開2005−255755号公報(特許文献3)には、濃淡部間の光沢差が小さい画像が印刷できる顔料インク組成物を製造するために好ましいマイクロカプセル化顔料、及びそれを含むインク組成物が提案されているが、本発明によるインクセットとは、まったく異なるものである。
【0005】
さらに、特開2010−53328号公報(特許文献4)には、中空微粒子や酸化チタン等の白色色材を用いたインク組成物について、ポリウレタン樹脂を添加することにより、優れた耐擦性を付与できることが提案されているが、本発明のインクセットとはまったく異なるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,880,465号明細書
【特許文献2】特開平8−85218号公報
【特許文献3】特開2005−255755号公報
【特許文献4】特開2010−53328号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、今般、顔料とポリマーとを含んでなるインク組成物と、中空樹脂粒子とウレタン樹脂とを含んでなる白色インク組成物とを少なくとも有するインクセットであって、前記ポリマーの屈折率と、前記中空樹脂粒子の屈折率と、前記ウレタン樹脂の屈折率との間で、最高屈折率と最低屈折率との差が0.1以下であるインクセットとすることにより、光沢ムラがなく、定着性に優れた画像を実現できるとの知見を得た。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、光沢ムラがなく、定着性に優れた画像を実現できるインクセットを提供することである。
【0009】
そして、本発明によるインクセットは、顔料とポリマーとを含んでなるインク組成物と、中空樹脂粒子とウレタン樹脂とを含んでなる白色インク組成物とを少なくとも有するインクセットであって、前記ポリマーの屈折率と、前記中空樹脂粒子の屈折率と、前記ウレタン樹脂の屈折率との間で、最高屈折率と最低屈折率との差が0.1以下であるインクセットである。
【0010】
本発明によれば、光沢ムラがなく、定着性に優れた画像を実現できる。
【発明の具体的説明】
【0011】
本発明によるインクセットは、顔料とポリマーとを含んでなるインク組成物と、中空樹脂粒子とウレタン樹脂とを含んでなる白色インク組成物とを少なくとも有するインクセットであって、前記ポリマーの屈折率と、前記中空樹脂粒子の屈折率と、前記ウレタン樹脂の屈折率との間で、最高屈折率と最低屈折率との差が0.1以下であるインクセットである。本発明のインクセットによれば、光沢ムラがなく、定着性に優れた画像を実現できる。以下、本発明によるインクセットに含まれる各成分について記載する。
【0012】
本明細書において、「白色インク組成物」とは、エプソン純正写真用紙<光沢>(セイコーエプソン社製)に、該用紙が被覆される量のインクが吐出された印字物の明度(L)と色度(a、b)とが、Gretag Macbeth Spectrolino(X-Rite社製)の測色器を用いて計測した場合に、
70≦L≦100
−3.5≦a≦1
−5≦b≦1.5
の範囲を示すインク組成物のことをいう。
【0013】
また、本明細書において、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)×100・・(A)
(式(A)中、「実印字ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。100%dutyとは、画素に対する単色の最大インク質量を意味する。)
【0014】
白色インク組成物
中空微粒子
本発明によるインクセットには中空樹脂粒子とウレタン樹脂とを含んでなる白色インク組成物が含まれる。本発明における中空樹脂粒子としては、その内部に空洞を有しており、その外殻が液体透過性を有する樹脂から形成されていることが好ましい。このような構造の中空樹脂粒子が水性インク組成物中に存在する場合、内部の空洞は水性媒質で満たされることになる。水性媒質で満たされた粒子は、外部の水性媒質とほぼ等しい比重を有するため、水性インク組成物中で沈降することなく分散安定性を保つことができる。これにより、インク組成物の貯蔵安定性や吐出安定性を高めることができる。
【0015】
また、本発明のインク組成物を、紙その他の記録媒体上に吐出させると、粒子の内部の水性媒質が乾燥時に抜けることにより空洞となる。粒子が内部に空気を含有することにより、粒子は屈折率の異なる樹脂層および空気層を形成し、入射光を効果的に散乱させるため、白色を呈することができると考えられる。なお、中空樹脂粒子を形成する樹脂層を光透過性を残した状態で着色することで、白色以外の色を呈することも可能である。
【0016】
本発明で用いられる中空樹脂粒子は、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、米国特許第4,880,465号公報や特許第3,562,754号公報などの明細書に記載されている中空樹脂粒子を好ましく用いることができる。
【0017】
中空樹脂粒子の屈折率は、特に限定されないが、1.30〜1.75であることが好ましく、より好ましくは1.40〜1.60である。中空樹脂粒子の屈折率をこの範囲にすることにより、印刷した際にその記録物が良好な白色性を得ることができる。なお、屈折率は20℃でアッベ屈折率計を用いて測定することができる。
【0018】
中空樹脂粒子の平均粒子径(外径)は、好ましくは0.2〜1.0μmであり、より好ましくは0.4〜0.8μmである。外径が1.0μmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、またインクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、外径が0.2μm未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向にある。また、内径は、0.1〜0.8μm程度が適当である。
【0019】
本発明のさらに好ましい態様によれば、本発明のインクセットに用いられる中空樹脂粒子の屈折率が1.30〜1.75であり、かつ中空樹脂粒子の平均粒子径(外径)が0.2〜1.0μmであることが好ましく、さらに一層好ましい態様によれば、中空樹脂粒子の屈折率が1.40〜1.60であり、かつ中空樹脂粒子の平均粒子径(外径)が0.4〜0.8μmであることが好ましい。このような中空樹脂粒子を本発明のインクセットに用いることにより、さらに一層、光沢ムラがなく、定着性に優れた画像を実現できる。
【0020】
中空樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
【0021】
中空樹脂粒子の含有量(固形分)は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは5〜20質量%であり、より好ましくは8〜15質量%である。この範囲とすることにより、とりわけ中空樹脂粒子の含有量(固形分)が20質量%を超えずにあることより、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性が向上し、5質量%を下回らずにあることにより、十分な白色度等の色濃度が確保される。
【0022】
上記したような中空樹脂粒子の調製方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を適用することができる。中空樹脂粒子の調製方法として、例えば、ビニルモノマー、界面活性剤、重合開始剤、および水系分散媒を窒素雰囲気下で加熱しながら撹拌することにより中空樹脂粒子エマルジョンを形成する、いわゆる乳化重合法を適用することができる。
【0023】
ビニルモノマーとしては、非イオン性モノエチレン不飽和モノマーが挙げられ、例えば、スチレン、ビニルトルエン、エチレン、ビニルアセテート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0024】
また、ビニルモノマーとして、二官能性ビニルモノマーを用いることもできる。二官能性ビニルモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタン−ジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。上記単官能性ビニルモノマーと上記二官能性ビニルモノマーとを共重合させて高度に架橋することにより、光散乱特性だけでなく、耐熱性、耐溶剤性、溶剤分散性などの特性を備えた中空樹脂粒子を得ることができる。
【0025】
また、乳化重合法に好適に使用できる界面活性剤としては、水中でミセルなどの分子集合体を形成するものであればよく、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。また、重合開始剤としては、水に可溶な公知の化合物を用いることができ、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウムなどが挙げられる。また、水系分散媒としては、例えば、水、親水性有機溶媒を含有する水などが挙げられる。
【0026】
水系分散媒としては、例えば、水、親水性有機溶媒を含有する水などが挙げられる。
【0027】
また、本発明によるインクセットに含まれる白色インク組成物には、前記中空樹脂粒子の他に、他の色材を含んでいても良い。他の色材としては、汎用の顔料や染料を使用することができる。
【0028】
ウレタン樹脂
白色インク組成物に含まれるポリウレタン樹脂としては、ポリカーボネート系またはポリエーテル系のアニオン性ポリウレタン樹脂を好適に使用することができる。これらポリウレタン樹脂は、公知の合成方法により得ることができ、例えば、2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、2個以上の活性水素基を有する化合物と、を反応させて得ることができる。2個以上の活性水素基を有する化合物が、ポリエーテルポリオールまたはポリカーボネートポリオールである。
【0029】
2個以上のイソシアネート基を有する化合物は、特に制限されないが、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の鎖状の脂肪族イソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の環状構造を有する脂肪族イソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、3,3′−ジクロロ−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネートが挙げられる。これらはその1種を単独で用いてもよく、またはそれらの2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0030】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、或いは、エピクロロヒドリン等の環状エーテル化合物を、活性水素原子を有する化合物を触媒とする等して、単独または2種以上を混合して開環重合する等して得られる重合体が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
ポリカーボネートポリオールとしては、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、或いは、ポリテトラメチレングリコール等のようなジオール類と、ホスゲン、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、或いは、エチレンカーボネート等の環式カーボネートとの反応生成物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
また、ポリウレタン樹脂をアニオン性にするためには、例えば、カルボキシル基やスルホン基等を有するモノマーを導入すればよい。このようなモノマーとしては、乳酸等のモノヒドロキシカルボン酸;α,α−ジメチロール酢酸、α,α−ジメチロールプロピオン酸、α,α−ジメチロール酪酸等のジヒドロキシカルボン酸、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノー2−トルエンスルホン酸等のジアミノスルホン酸などが挙げられる。
【0033】
一般的に、ポリウレタン樹脂の性質として、ポリウレタン樹脂の主鎖間が水素結合により緩やかに結合するため、柔軟で強靭な膜構造を形成させることが可能である。上記ポリウレタン樹脂を用いることにより、通常のインクジェット印刷を行う温度(10℃〜40℃)において流動性を維持した状態で、記録媒体上で広がるようにしながら、柔軟な膜構造を形成するため、耐擦性が向上する。また、一般に印刷用途に使われるメディア(例えば、インクジェット用専用記録用紙「OHPシート」セイコーエプソン株式会社製)は正に帯電していることが多いため、アニオン性のウレタンをインクの定着樹脂として用いることで、静電相互作用により定着性が向上する。また、ポリエーテル系またはポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、ポリエステル系ポリウレタン樹脂などに比べて、柔軟性の高い膜を形成しやすいため、耐擦性が向上する。また、ポリエーテル系またはポリカーボネート系ポリウレタン樹脂は、水に対して劣化しにくい性質も有するため、水性インクに用いる際に好ましい。
【0034】
また、上記ポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−10℃以下であることが特に好ましい。詳細な理由は明らかではないが、50℃以下のガラス転移温度をもつポリウレタン樹脂が記録媒体上で広がるようにしながら画像を形成するため、色材である中空樹脂粒子を記録媒体上により強固に定着させることができるものと考えられる。その結果、優れた耐擦性を有する画像を得ることができる。特に、ポリウレタン樹脂のガラス転移温度を0℃以下とすることにより、間欠印字特性を格段に向上させ、インクジェット記録時のノズル抜け等を抑制することができる。
【0035】
白色色材として、前記中空樹脂粒子を含む白色インク組成物を、他のカラーインク組成物と組み合わせて使用することがある。カラーインク組成物は、通常、保湿剤等が含まれているが、このような保湿剤を含むカラーインク組成物と白色インク組成物とを組み合わせて画像を形成する場合、得られる記録物は、長時間保存下あるいは高湿度環境下におかれると、カラー色味の低下やカラー画像と白色画像との境界が透明化するなどの現象を生じることがある。これは、記録物が長時間保存下あるいは高湿度環境下におかれると、カラーインク組成物中に残存する保湿剤が、空気中の水分を吸収して白色画像に滲み出したり、あるいは水分を保持したまま白色画像中に移動することで、白色画像を構成する中空樹脂粒子の空洞内に入り込むことにより生じるものと考えられる。中空樹脂粒子は、その外殻と空洞の間における光の屈折率の差による光散乱により隠蔽効果(白色性)を発揮しており、空洞に水分を保有する保湿剤が入り込むことによって隠蔽効果による白色を呈することができなくなる。
【0036】
本発明においては、上記のように保湿剤と含む他のインク組成物と白色インク組成物とを組み合わせて用いる場合において、白色インク組成物中に、ポリウレタン樹脂としてポリカーボネート系またはポリエーテル系のアニオン性ポリウレタン樹脂を用いることにより、インク組成物を吐出して記録媒体上に付着させた場合に、インクの乾燥とともに表面で膜化が起こり、ポリエステル系などのウレタン樹脂に比べて、柔軟性の高い膜を形成することができる。その結果、カラーインク組成物中の保湿剤の白色画像への浸入をカラー画像と白色画像の境界において阻止することができ、中空樹脂粒子の透明化を抑制することができる。
【0037】
本発明の白色インク組成物に含まれるポリウレタン樹脂としては、溶媒中に粒子状で分散されたエマルジョンタイプ、溶媒中に溶解した状態で存在している溶液タイプのいずれのタイプを用いてもよい。また、エマルジョンタイプは、その乳化方法によって強制乳化型と自己乳化型に分類することができ、本発明においてはいずれの型式でも用いることができるが、好ましくは自己乳化型である。自己乳化型のディスパージョンは、強制乳化型に比べ、造膜性や耐水性に優れるため、水に強い膜を表面に形成し、カラーインク画像から中空樹脂粒子が形成する白色画像への水分を含んだ保湿剤の浸入を防ぐことができる。
【0038】
本発明に用いられるポリウレタン樹脂としては、例えば、「タケラック(登録商標)W−6061」(三井化学社製)などの強制乳化型ポリウレタンエマルジョン、「タケラック(登録商標)W−6021」(三井化学社製)、「WBR−016U」(大成ファインケミカル(株)製 ポリエーテル、Tg=20℃)などの自己乳化型ポリウレタンエマルジョンなどが挙げられる。
【0039】
ポリウレタン樹脂として上記のエマルジョンタイプを適用した場合、ポリウレタン樹脂の平均粒子径は、好ましくは50〜200nmであり、より好ましくは60〜200nmである。ポリウレタンの樹脂の平均粒子径が上記範囲にあると、インク組成物中においてポリウレタン樹脂粒子を均一に分散させることができる。なお、平均粒子径とは、インク組成物中で形成している粒子としての分散径(累積50%径)の平均値であり、例えば、マイクロトラックUPA(Microtrac Inc.社)を使用して測定することができる。
【0040】
ウレタン樹脂の屈折率は、特に限定されないが、1.45〜1.55であることが好ましく、より好ましくは1.47〜1.53である。ウレタン樹脂の屈折率をこの範囲にすることにより、定着性を有することが可能となる。なお、屈折率は20℃でアッベ屈折率計を用いて測定することができる。
【0041】
上記ポリウレタン樹脂の含有量(固形分)は、白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%である。この範囲にあることより、特にポリウレタン樹脂の含有量が10質量%を超えずにあることより、インクの信頼性(目詰まりや吐出安定性など)が向上し、インクとしての適切な物性(粘度など)を得ることができる。一方、ポリウレタン樹脂の含有量が0.5質量%を下回らずあることで、記録媒体上におけるインクの定着性が優れ、耐擦性に優れた画像を形成することができる。
【0042】
顔料とポリマーとを含んでなるインク組成物
ポリマー
本発明のインクセットに含まれる顔料とポリマーとを含んでなるインク組成物中のポリマーは、スチレン−アクリル酸系共重合樹脂、ウレタン系樹脂、およびフルオレン系樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂を含んでなることが好ましい。これら共重合樹脂は、顔料に吸着して分散性を向上させることができる。
【0043】
共重合樹脂におけるモノマーの具体例としては、メタクリル酸メチル(1.4152)、メタクリル酸エチル(1.4157)、メタクリル酸n−ブチル(1.4253)、メタクリル酸i−ブチル(1.4216)、メタクリル酸t−ブチル(1.4196)、メタクリル酸2−エチルヘキシル(1.4398)、メタクリル酸ラウリル(1.4470)、メタクリル酸トリデシル(1.4518)、メタクリル酸ステアリル(1.4503)、メタクリル酸シクロヘキシル(1.4598)、メタクリル酸ベンジル(1.5144)、メタクリル酸イソボルニル(1.477)、1,3−ブチレングリコールジメタクリル酸エステル(1.4535)、1,6−ヘキサンジオールジメタクリル酸エステル(1.457)、およびトリメチロールプロパントリメタクリル酸エステル(1.4750)等のモノマーの少なくとも一種又は二種以上を用いることが好ましく、さらに所望により他のモノマーを加えて重合を行うことができる(なお、かっこ内の数値は20℃におけるそれぞれのモノマーの屈折率を表す)。重合原料として用いた各モノマーの屈折率に、重合体を構成するそのモノマーの割合を乗じた数を合計し、その値に約0.05を加えることで、得られるポリマーの屈折率を推算することができる。
【0044】
また、原料モノマーとして用いるモノマーを選択する場合、そのモノマーのホモポリマーの屈折率も参考にすることができる。ホモポリマー及びその屈折率を以下に例示するが、ポリマーの名称の後のかっこ内の数値がホモポリマーの屈折率である。具体例としては、ポリメタクリル酸ペンタブロモフェニル(1.71)、ポリビニルカルバゾール(1.683)、ポリビニルナフタレン(1.6818)、ポリ(α−ナフチルメタクリレート)(1.6410)、ポリ(o−クロロスチレン)(1.6098)、ポリメタクリル酸ペンタクロロフェニル(1.608)、ポリ(p−ブロモフェニルメタクリレート)(1.5964)、ポリスチレン(1.59〜1.592)、ポリジアリルフタレート(1.572)、ポリメタクリル酸フェニル(1.5706)、ポリメタクリル酸ベンジル(1.5680)、ポリ(2−ブロモエチルメタクリレート)(1.5426)、ポリ(2−クロロエチルメタクリレート)(1.517)、ポリメタクリル酸シクロヘキシル(1.5066)、ポリメタクリル酸メチル(1.4893)、ポリメタクリル酸トリフルオロエチレン(1.437)、シリコーンポリマー(1.37〜1.41)、ポリテトラフルオロエチレン(1.35〜1.38)、ポリテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(1.338)を挙げることができる。
【0045】
ポリマーの屈折率は、特に限定されないが、1.30〜1.70であることが好ましく、より好ましくは1.40〜1.55である。ポリマーの屈折率をこの範囲にすることにより、印刷物の定着性を有効に得ることが出来るようになる。
【0046】
本発明によるインクセットに含まれる前記ポリマーの屈折率と、前記中空樹脂粒子の屈折率と、前記ウレタン樹脂の屈折率との間で、最高屈折率と最低屈折率との差が0.1以下であり、より好ましくは、0.08以下である。この範囲とすることにより、光沢ムラがなく、定着性に優れた画像を形成することができる。
【0047】
屈折率を測定するための重合体の重合反応は、水を溶媒として用い、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用い、重合開始剤として過硫酸カリウムを用い、重合温度は70℃で乳化重合により行う。具体的には、攪拌機、滴下装置、及び温度計などを備えた反応容器を用い、反応容器中でドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3g及びイオン交換水50gの混合液を70℃に昇温し、窒素雰囲気下、過硫酸カリウム0.3〜0.5gを添加して溶解し、そこへモノマー10g〜25g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3g、及びイオン交換水30〜50gを予め乳化させた液を連続して約3時間かけて滴下し、さらに70℃で約3時間加熱して重合反応させてポリマーエマルションを得る。このポリマーエマルションを乾燥してフィルムを得、このフィルムの屈折率を、20℃でアッベ屈折率計を用いて測定する。
【0048】
顔料
本発明のインクセットに含まれる顔料とポリマーとを含んでなるインク組成物中の顔料は、好ましくは、特に以下の無機顔料及び有機顔料を挙げることができる。
【0049】
無機顔料としては、ファーネスブラック,ランブブラック,アセチレンブラック,チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.l.ピグメントブラック7)類、あるいは、酸化鉄顔料等を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、及びキレートアゾ顔料などを含む。)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、又はキノフラノン顔料などを含む。)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート又は酸性染料型キレートなどを含む。)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、及びアニリンブラックなどを挙げることができる。これらは、ブラック顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、及びイエロー顔料を含む。さらに所望により、その他の色の顔料を本発明に用いることもできる。
【0050】
ブラック用として用いられる無機顔料としては、例えば、以下のカーボンブラック、例えば、三菱化学社製のNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、及びNo2200B等(以上、商品名);コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、及びRaven700等(以上、商品名);キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、及びMonarch 1400等(以上、商品名);あるいは、デグッサ社製のColor Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、及びSpecial Black 4等(以上、商品名)を挙げることができる。また、ブラック用の有機顔料としては、アニリンブラック(C.l.ピグメントブラック1)等の黒色有機顔料を用いることもできる。
【0051】
イエローインク用の有機顔料としては、例えば、C.l.ピグメントイエロー1(ハンザイエロー);同2,3(ハンザイエロー10G);同4,5(ハンザイエロー5G);同6,7,10,11,12,13,14,16,17,24(フラバントロンイエロー);同34,35,37,53,55,65,73,74,75,81,83,93,94,95,97,98,99,108(アントラピリミジンイエロー);同109,110,113,117(銅錯塩顔料);同120,124,128,129,133(キノフタロン);同138,139(イソインドリノン);同147,151,153(ニッケル錯体顔料);および、同154,167,172,180などを挙げることができる。
【0052】
マゼンタインク用の有機顔料としては、例えば、C.l.ピグメントレッド1(パラレッド);同2,3(トルイジンレッド);同4,5(lTR Red);同6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38(ピラゾロンレッド);同40,41,42,48(Ca);同48(Mn),57(Ca),57:1,88(チオインジゴ);同112(ナフトールAS系);同114(ナフトールAS系);同122(ジメチルキナクリドン);同123,144,146,149,150,166,168(アントアントロンオレンジ);同170(ナフトールAS系);同171,175,176,177,178,179(ベリレンマルーン);同184,185,187,202,209(ジクロロキナクリドン);同219,224(ベリレン系);同245(ナフトールAS糸)、又は、C.I.ピグメントバイオレット19(キナクリドン);同23(ジオキサジンバイオレット);同32,33,36,38,43,50などを挙げることができる。
【0053】
シアンインク用の有機顔料としては、例えば、C.l.ピグメントブルー1,2,3,15,15:1,15:2,15:3,15:34,15:4,16(無金属フタロシアニン);同18(アルカリブルートナー);同22,25,60(スレンブルー);同65(ビオラントロン);同66(インジゴ);および、C.l.Vatブルー4,60などを挙げることができる。
【0054】
また、マゼンタ,シアン又はイエローインク以外のカラーインクに用いる有機顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン);同10(グリーンゴールド);同36,37;C.I.ピグメントブラウン3,5,25,26;及び、C.I.ピグメントオレンジ1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63等を本発明に用いることができる。本発明によるインクセットに含まれる顔料の原料としては、上記の顔料を1種で用いることも、または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0055】
その他の成分
本発明のインクセットに含まれるインク組成物には、任意成分として、浸透性有機溶剤が含まれてもよい。浸透性有機溶剤としては、アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。アルカンジオールやグリコールエーテルは、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0056】
アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4〜8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。この中でも炭素数が6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いため、より好ましい。
【0057】
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。
【0058】
これらのアルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
【0059】
本発明のインクセットに含まれるインク組成物には、任意成分として、界面活性剤が含まれてもよい。界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0060】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0061】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
【0062】
さらに、本発明によるインクセットに含まれるインク組成物には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
【0063】
前記界面活性剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0064】
さらに、本発明によるインクセットに含まれるインク組成物には、多価アルコールを含有することもできる。多価アルコールは、本発明のインクセットをインクジェット式記録装置に適用した場合に、インクの乾燥を抑制し、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクの目詰まりを防止することができる。
【0065】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0066】
前記多価アルコールの含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%である。
【0067】
本発明によるインクセットに含まれるインク組成物には、第三級アミンを含有することが好ましい。第三級アミンは、pH調整剤としての機能を有し、インク組成物のpHを容易に調整することができる。第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミンなどが挙げられる。第三級アミンの含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%である。
【0068】
本発明によるインクセットに含まれるインク組成物には、通常溶媒として水を含有する。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
【0069】
本発明によるインクセットに含まれるインク組成物には、必要に応じて、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤などの添加剤を含有させることができる。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし、もちろん2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0070】
インク組成物の調製方法
本発明によるインクセットに含まれるインク組成物は、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミルなどを使用して、従来の顔料インクと同様に調製することができる。調製に際しては、メンブランフィルターやメッシュフィルターなどを用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
【0071】
本発明によるインクセットは、各種記録媒体に塗布することにより画像を形成することができる。記録媒体としては、例えば、紙、厚紙、繊維製品、シートまたはフィルム、プラスチック、ガラス、セラミックスなどが挙げられる。
【0072】
本発明によるインクセットは、その用途は特に限定されないが、各種インクジェット記録方式に適用することができる。インクジェット記録方式としては、例えば、サーマルジェット式インクジェット、ピエゾ式インクジェット、連続インクジェット、ローラーアプリケーション、スプレーアプリケーションなどが挙げられる。
【0073】
記録方法
また、本発明によるインクセットを用いて、上記したような記録媒体に画像記録を行う記録方法を提供することができる。この記録方法としては特に限定されず、凸版印刷方式、凹版印刷方式、平版印刷方式、孔版印刷方式、電子写真記録方式、熱転写記録方式、インクジェット記録方式等が挙げられ、特に好ましくはインクジェット記録方式による記録方法である。インクジェット記録方式としては、従来公知の方式はいずれも使用でき、特に圧電素子の振動を利用して液滴を吐出させる方法(電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成するインクジェットヘッドを用いた記録方法)や熱エネルギーを利用する方法においては優れた画像記録を行うことが可能である。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0075】
<白色中空樹脂粒子の製造>
スチレン80部、メタクリル酸5部、メタクリル酸メチル15部、α−メチルスチレンダイマー4部、t−ドデシルメルカプタン14部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8部、過硫酸カリウム1.0部、および水200部を容量2Lのフラスコ中に入れ、撹拌しながら窒素ガス中にて80℃に昇温して6時間乳化重合を行い、これにより、重合収率98%で、平均粒子径0.15μm、重量平均分子量(Mw)3,500の重合体シード粒子を得た。
【0076】
反応容器に、前記シード粒子の10部(固形分換算)と、ラウリル硫酸ナトリウム0.3部と、過硫酸カリウム0.5部と、水400部とを仕込み、これに、ジビニルベンゼン( 純度55重量%、残余が1官能ビニルモノマーのもの)11.6部と、エチルビニルベンゼン8.4 部と、アクリル酸5 部と、メタクリル酸メチル75部との混合物よりなる架橋重合性モノマー組成物を添加して30℃で1時間撹拌し、架橋重合性モノマー組成物をシード粒子にモノマーをほぼ完全に吸収させ、70℃で5時間攪拌しながら乳化重合処理を行ったところ、重合収率99%で、水を粒子内部に含有するカプセル状の重合体粒子の水性分散体が得られた。得られた中空樹脂粒子の屈折率は、1.55であった。
【0077】
インク組成物の調製
下記表1の組成に従い各成分を混合し、10μmのメンブランフィルターでろ過することにより、各インクを調製した。下記表1中の数値はインク中の含有量(質量%)を表す。表1中、
白色中空樹脂粒子は上記に記載のとおり調製したものを使用し、
(I)スチレンアクリル共重合体アンモニウム塩は、分子量が7000で、屈折率が1.54であるのものを使用し、
(II)スチレンアクリル共重合体アンモニウム塩は、分子量が8000で、屈折率が1.56であるのものを使用し、
(III)ポリウレタンエマルジョンA(ポリエーテル系/分子量9000)は、屈折率が1.49であるのものを水分散溶液として使用し (固形分30%)、
(IV)ポリウレタンエマルジョンB(ポリオール系/分子量9000)は、屈折率が1.48であるのものを水分散溶液として使用し(固形分30%)、
BYK−348は、ビックケミー・ジャパン社製のものを使用した。
【0078】
【表1】

【0079】
印刷方法
ホワイト印刷
プリンタは、PX-A650(セイコーエプソン(株)製)を用いた。ブラックインク部分に上記表1に記載の白色インク組成物を装着した。A4サイズにカットしたクリアプルーフフィルム(セイコーエプソン(株)社製)にホワイトのベタを印刷した。この際に用いたホワイトパターンは、100%のdutyで記録した。
【0080】
カラー印刷
上記ホワイト印刷で記録したホワイトパターン上に上記表1に記載のマゼンタインク組成物、シアンインク組成物、イエローインク組成物、およびブラックインク組成物を用いて、カラー印刷を行った。カラー印刷はPX-A650(セイコーエプソン(株)社製)を用いた。それぞれに対応した色の部分に調整した各カラーインクを装着した。上記ホワイト印刷で作成したホワイトパターンをプリンタにセットし、そのままPCよりデータを送って通常のプリントと同様にカラー印刷を行った。カラー印刷画像は、ISO12642(IT8.7/3)のカラーチャートを用いた。
【0081】
上記ホワイト印刷において、白色インク組成物1を用い、上記カラー印刷において、マゼンタインク組成物1、シアンインク組成物1、イエローインク組成物1、およびブラックインク組成物1を用いて得られた印刷パターンを「印刷パターン1」とし、上記ホワイト印刷において、白色インク組成物2を用い、上記カラー印刷において、マゼンタインク組成物2、シアンインク組成物2、イエローインク組成物2、およびブラックインク組成物2を用いて得られた印刷パターンを「印刷パターン2」とし、それぞれの印刷パターンについて、以下の評価を行った。
【0082】
定着性の評価
上記カラー印刷において得られた印刷パターン1および2の耐擦性の評価を行った。評価は、試験担当者の「不織布による擦り試験」を行った。不織布による擦り試験は、不織布(ベンコット ラボ(旭化成せんい(株)社製))に200グラムの荷重をかけた上体で印刷面を擦った。下記評価基準により評価を行い、その評価結果を下記表2に記載した。
<評価基準>
A:印刷面に変化が認められない
B:印刷面に擦った跡が認められるが、剥がれるには至らない。
C:印刷面が剥がれる。
D:軽く触れただけで印刷面も剥がれる。
【0083】
光沢ムラの評価
上記カラー印刷において得られた印刷パターン1および2のチャートを目視により評価した。特に光沢のムラは、濃色と淡色の光沢性の差によって発生する。下記評価基準により評価を行い、その評価結果を下記表2に記載した。
<評価基準>
A:濃色側と淡色側に光沢性の差がわからない
B:濃色側よりも淡色側の光沢が高く見えるが、大きな問題とは感じられない。
C:濃色側よりも淡色側の光沢が高く、大きな違和感が認められる。
【0084】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料とポリマーとを含んでなるインク組成物と、中空樹脂粒子とウレタン樹脂とを含んでなる白色インク組成物とを少なくとも有するインクセットであって、前記ポリマーの屈折率と、前記中空樹脂粒子の屈折率と、前記ウレタン樹脂の屈折率との間で、最高屈折率と最低屈折率との差が0.1以下である、インクセット。
【請求項2】
前記ポリマーの屈折率が1.30〜1.70である、請求項1 に記載のインクセット。
【請求項3】
前記中空樹脂粒子の屈折率が1.30〜1.75である、請求項1または2に記載のインクセット。
【請求項4】
前記ウレタン樹脂の屈折率が1.45〜1.55である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項5】
前記中空樹脂粒子の平均粒子径が0.2〜1.0μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項6】
前記中空樹脂粒子の含有量が5〜20質量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項7】
さらに、それぞれのインク組成物中にアルカンジオールおよび/またはグリコールエーテルを含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項8】
さらに、それぞれのインク組成物中にアセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクセット。

【公開番号】特開2012−25884(P2012−25884A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167368(P2010−167368)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】