インクタンク
【課題】 吐出ノズルが多くなりインク流量が多くなった場合においても、インクタンクや記録装置のサイズを大きくすることなく、インク導入管のフィルタからエアを引き込まず、確実かつ安定したインク供給を提供する。
【解決手段】 インクジェット記録ヘッドへの着脱が可能なインクタンクであって、前記インクジェット記録ヘッドのインク導入部に設けられたフィルタと該フィルタにインク保持部材を当接させることでインクを供給するインクタンクにおいて、インク保持部材は外周近傍に、フィルタの端部を覆い、シール性を有する弾性領域を有すると共に、フィルタの直径とインク保持部材のフィルタとの接触面直径と弾性領域最外径の間に特定の関係を有する。
【解決手段】 インクジェット記録ヘッドへの着脱が可能なインクタンクであって、前記インクジェット記録ヘッドのインク導入部に設けられたフィルタと該フィルタにインク保持部材を当接させることでインクを供給するインクタンクにおいて、インク保持部材は外周近傍に、フィルタの端部を覆い、シール性を有する弾性領域を有すると共に、フィルタの直径とインク保持部材のフィルタとの接触面直径と弾性領域最外径の間に特定の関係を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置などに用いられるインクジェット記録カートリッジおよびインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録ヘッドに搭載される従来のインクタンクにおいては、特許文献1に開示されているように、インク供給口と大気連通口を有するタンクケースに第一の吸収体なるインク吸収部材と、インク供給口近傍に第二の吸収体なるインク導出部材が収納されているものがある。特許文献1に開示のインクタンクはインク供給口と大気連通口を有するタンクケース内に吸収体のみを収納したタイプのものであるが、この他に特許文献2に開示されているようなインクタンクがある。図10は特許文献2のインクタンクの断面図である。図10に示すように、インク供給口110と大気連通口103を有するタンクケース102には吸収体室106とインク室105があり、吸収体室106にはインクを含浸させた第一の吸収体108と、インク供給口110近傍にインク含浸させた第二の吸収体101を収納し、インク室105は連通部104にて吸収体室106とのみ連通し内部にインクを収納している。
【0003】
上記の2つのタイプのインクタンクは、ともにインク供給口にインクジェット記録ヘッドのインク導入管を挿入し、インク供給管の先端に設けられたフィルタと第二の吸収体を当接させることでインクタンクからインクジェット記録ヘッドへインクを供給している。
【0004】
次にインクの挙動について説明する。第二の吸収体のインク保持力が第一の吸収体より高く設定されている。そのためインク供給時においてインクは、第一の吸収体から保持力の高い第二の吸収体に導出され、当接されているフィルタへインクを供給している。
【0005】
第一の吸収体は、ウレタンスポンジや繊維からなるものがあり、第二の吸収体は、繊維を同一方向に束ねた繊維束であったり、フェルトを所望の形状に打抜いたりしているものがある。
【0006】
インクジェット記録カートリッジへインクを導入するインク導入管は、インクタンクのインク供給口へ挿入されるように管状であり、内部はインクが通るインク流路になっている。インク導入管の先端にはフィルタが設けられている。フィルタは、インクジェット記録ヘッドへの異物の混入を防ぐために設けられており、インクジェット記録ヘッドのインク吐出口の大きさによってフィルタの目の大きさが設定される。フィルタについては、特許文献3に開示されているように金属繊維を織ったものを中央部が凸になるようにドーム状に固定しているものや特許文献4に開示されているような金属繊維を不織布状に重ね、金属を焼結することで形成したフィルタを、中央部を平坦にしたドーム状にして固定しているものがある。
【0007】
フィルタの固定は、フィルタの外周を熱可塑性の樹脂を熱溶着によって覆い、フィルタ周囲の金属繊維端が第二の吸収体を傷つけないようにしている。また、フィルタ端部を覆うことでフィルタ端部が第二の吸収体に引っかかって剥離しないようにもしている。
【0008】
フィルタ固定後のドーム形状については、フィルタ外周を覆った樹脂がフィルタ面より高い凸形状になっていると第二の吸収体がフィルタ当接時に樹脂と接触し、フィルタと第二の吸収体が接触しない場合があるため外周の樹脂より高くしている。ドーム形状の中央部が平坦になっているものについても中央部の平坦部はフィルタ外周の樹脂より高くしている。
【0009】
次に上記の第二の吸収体とインク導入管のフィルタとの当接状態について説明する。
【0010】
図11ないし図13は、第二の吸収体とインク導入管の断面模式図である。図11は当接前の状態であり、図12は当接時の状態を示している。また、図13は、図12のフィルタ外周部を拡大した図である。図11に示すように第二の吸収体はフィルタに対し平行に配されている。フィルタは、フィルタ外周の樹脂より高いドーム状に固定されており、フィルタの下にはフィルタのへこみを防止するリブが設けられている。図12に示すように第二の吸収体とフィルタの当接時においては、フィルタの中央部が当接し、図13に示すように、フィルタの外周部は、第二の吸収体と当接しない部分がある。インクは、第二の吸収体とフィルタが当接している領域がインク流路となり、インク導入管へ供給される。フィルタに当接する面の対向面には第一の吸収体が当接している。
【特許文献1】特開平7−148937
【特許文献2】特開平10−193634
【特許文献3】特開平6−238910
【特許文献4】特開2002−137410
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
インクジェット記録装置は近年、高速化,高精細化が求められており、印刷速度の高速化を図るためにインクジェット記録ヘッドの吐出口数やインク吐出周波数を増やしたりしているものがある。吐出口数を多くすると、印刷時における、インクタンクから記録ヘッドへ供給されるインク流量が多くなる。また、インク吐出ノズルの目詰まりを解消したり、インク流路内の気泡を除去するためにノズルからインクを吸引する吸引動作時におけるインク流量が多くなる。特に吸引動作時におけるインク流量が最も多くなる。
【0012】
上記のようにインク流量が多くなると、インクタンクにおいては第一と第二の吸収体のインク流抵抗が大きくなる。インク流抵抗が大きくなることの問題として、吸引動作時にインクタンクからインクを引き込む際にインクの流抵抗が大きいため、インク流路の内圧が下がり、第二の吸収体に接していないフィルタのメニスカスが崩壊し、第二の吸収体からインクを導入するのと同時に、図6−3の矢印Aに示すようにフィルタ端部からエアを引き込むことがある。
【0013】
このエアの引き込みを起こさず、インクタンクからインクジェット記録ヘッドへインクを安定して供給するために、インクジェット記録ヘッドのインク導入管の断面積とインクタンクのインク供給口と第二の吸収体を大きくし、インク導入管のフィルタと第二の吸収体の当接面積を大きくすることでインク流路断面積を大きくする方法がある。
【0014】
しかし、上記の方法では、インクタンクの開口が大きくなるためインクタンクのサイズが大きくなってしまう。例えば幅が小さいインクタンクを複数並べて記録装置に搭載するタイプの場合、インク供給口が大きくなるためインクタンクの幅が広くなりひいては記録装置の大型化に引き起こす。
【0015】
そこで、本発明では、吐出ノズルが多くなりインク流量が多くなった場合においても、インクタンクや記録装置のサイズを大きくすることなく、インク導入管のフィルタからエアを引き込まず、確実かつ安定したインク供給を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、インクジェット記録ヘッドへの着脱が可能なインクタンクであって、前記インクジェット記録ヘッドのインク導入部に設けられたフィルタと該フィルタにインク保持部材を当接させることでインクを供給するインクタンクにおいて、
前記インク保持部材は外周近傍に、前記フィルタの端部を覆い、シール性を有する弾性領域を有すると共に
前記フィルタの直径D1と前記インク保持部材の前記フィルタとの接触面直径D2と前記弾性領域最外径D3の関係が、
D2≦D1<D3
であることを特徴とする。
【0017】
また、前記インク保持部材と前記弾性領域は、異なる材質であることを特徴とする。
【0018】
また、前記弾性領域は、熱可塑性エラストマーであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のインクタンクは、高速印刷化を図った記録装置において、インクジェット記録ヘッドへ供給するインクの流量が多くなった場合でも、インク供給口を大きくすることなく、インクタンクを大きくすることなく、エアの引き込みが無い確実かつ安定したインク供給を行うことができ、安定した印字品位を保つことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施例1)
以下に、本発明の第一の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1ないし図2は、本発明の第一の実施例を示す図である。
【0022】
図1はインクタンクがインクジェット記録ヘッドに未装着時の第二の吸収体1とインク導入管4を示す断面図であり、図2はインクタンクをインクジェット記録ヘッドへ装着した状態の第二の吸収体1とインク導入管4を示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、第二の吸収体1には中心にインク導出部2があり、その外周の全高において弾性部3が設けられている。弾性部3は熱可塑性エラストマーが用いられ、インク導出部2は樹脂繊維束を熱により固定している。インク供給管4は、内部にインク流路7が設けられており、インク導入管4の第二の吸収体1と当接する側の端面にフィルタ5が中心部を凸にしたドーム形状に固定されている。ドーム先端高さは、フィルタ5の外周固定部11より高くなっている。フィルタ5の固定は、フィルタ5外周を覆うようにインク導入管4の端部を溶着している。フィルタ5の下には、フィルタ5の凹みを防止するために凹み防止リブ6が設けられている。これによりフィルタ5が過度に押されてもフィルタ5が凹形状にならず第二の吸収体1との当接面積が小さくならない。よって良好な当接状態を保てるため、より安定したインク供給が行うことができる。
【0024】
また、インク導出部2の直径D1はフィルタ5の直径D2より小さく、D2より弾性部3の外径D3の方が大きい。これは、フィルタ5の中心部をインクの流れる領域とし、端部を弾性部3にてシールするシール領域とするためである。
【0025】
図2に示すように、インクタンク装着時にはインク供給口10にインク導入管4が挿入される。インク導入管4が第二の吸収体1を押し上げるため第二の吸収体1は、摺動し、第一の吸収体8に押し当てられる。第二の吸収体1とフィルタ5の当接状態は、インク導出部2がフィルタ5中心部に圧接されフィルタの中心部は平坦になる。平坦部は、フィルタ5の外周固定部11よりも高くなっている。そして、その外周の弾性部3がフィルタ5の形状に倣いフィルタ5の端部に密着して端部全周を覆っている。弾性部3は、第二の吸収体1と同じ高さであるため、第一の吸収体8によって押圧される。そのためフィルタ5の端部へより密着する。よって、フィルタ5は全面第二の吸収体1に当接することになる。
【0026】
次にインクの供給について説明する。インクは、第一の吸収体8に含浸されているが、第一の吸収体8より毛管力が高く設定されている第二の吸収体1のインク導出部2へ導出される。そして、インクジェット記録ヘッドの印刷時や吸引動作時にインク流路が減圧状態となるため第二のインク吸収体1からフィルタ5を通してインク導入管4へインクを引き出そうとする。この時、インク流量多い場合は、インク流路内の圧力がより低くなる。フィルタ端部が弾性部3で覆われずに大気に開放されている場合は、第二の吸収体1からインクを引くのと同時にフィルタ5の端部からエアを引き込む。しかし、フィルタ5の端部が弾性体3で覆われているため、エアの進入口がなくエアを引き込めない。従ってインクタンクより供給するインクの流量が多い場合においてもエアの混入が発生しない。よって、インク供給が確実かつ安定して行うことができ、ひいては安定した印刷を行うことができる。
【0027】
なお、インク流路部2は、一方向の繊維束を接着剤で固めるようなものや、繊維をフェルト状にしたものやウレタンスポンジを用いてもよい。
【0028】
また、弾性部3は、天然ゴムやシリコーンゴムのような弾性の高い材質であればよい。
【0029】
インク導出部2と弾性部3は、二色成形にて製作しても良いし、別部品を接着、勘合させても良い。また、インク導出部2に、熱により収縮するチューブ状やシート状の部材を巻き付けて、熱収縮させることで弾性部3を形成しても良い。
【0030】
本発明は上述したように、インク吐出口数を多くし高速化を図ったインクジェット記録装置においても、吸引動作時に、インクタンクとインク導入部の当接部からエアを引き込むことなくインクジェット記録ヘッドへ確実かつ安定したインク供給を行うことができ安定した印刷を行うことができる。
【0031】
(実施例2)
以下に、本発明の第二の実施形態について図面を参照して説明する。
【0032】
図3ないし図4は、本発明の第二の実施例を示す図である。
【0033】
図3はインクタンクがインクジェット記録ヘッドに未装着時の第二の吸収体1とインク導入管4を示す断面図であり、図4はインクタンクをインクジェット記録ヘッドへ装着した状態の第二の吸収体1とインク導入管4を示す断面図である。
【0034】
図3に示すように、第二の吸収体1には中心にインク導出部2があり、その外周には第二の吸収体1に比べ薄い弾性部3が設けられている。弾性部3は熱可塑性エラストマーが用いられ、インク導出部2は樹脂繊維束を熱により固定している。インク供給管4は、内部にインク流路7が設けられており、インク導入管4の第二の吸収体1と当接する側の端面にフィルタ5が中心部を凸にしたドーム形状に固定されている。ドーム先端高さは、フィルタ5の外周固定部11より高くなっている。フィルタ5の固定は、フィルタ5外周を覆うようにインク導入管4の端部を溶着している。フィルタ5の下には、フィルタ5の凹みを防止するために凹み防止リブ6が設けられている。これによりフィルタ5が過度に押されてもフィルタ5が凹形状にならず第二の吸収体1との当接面積が小さくならない。よって良好な当接状態を保てるため、より安定したインク供給が行うことができる。
【0035】
また、インク導出部2の直径D1はフィルタ5の直径D2より小さく、D2より弾性部3の外径D3の方が大きい。これは、フィルタ5の中心部をインクの流れる領域とし、端部を弾性部3にてシールするシール領域とするためである。
【0036】
図4に示すように、インクタンク装着時にはインク供給口10にインク導入管4が挿入される。インク導入管4が第二の吸収体1を押し上げるため第二の吸収体1は、摺動し、第一の吸収体8に押し当てられる。第二の吸収体1とフィルタ5の当接状態は、インク導出部2がフィルタ5中心部に圧接されフィルタの中心部は平坦になる。平坦部は、フィルタ5の外周固定部11よりも高くなっている。そして、その外周の弾性部3がフィルタ5の形状に倣いフィルタ5の端部に密着して端部全周を覆っている。弾性部3は、薄くし、弾性の高い材質を用いることによって、フィルタ5の端部に倣う。よって、フィルタ5は全面第二の吸収体1に当接することになる。
【0037】
次にインクの供給について説明する。インクは、第一の吸収体8に含浸されているが、第一の吸収体8より毛管力が高く設定されている第二の吸収体1のインク導出部2へ導出される。そして、インクジェット記録ヘッドの印刷時や吸引動作時にインク流路が減圧状態となるため第二のインク吸収体1からフィルタ5を通してインク導入管4へインクを引き出そうとする。この時、インク流量多い場合は、インク流路内の圧力がより低くなる。フィルタ端部が弾性部3で覆われずに大気に開放されている場合は、第二の吸収体1からインクを引くのと同時にフィルタ5の端部からエアを引き込む。しかし、フィルタ5の端部が弾性体3で覆われているため、エアの進入口がなくエアを引き込めない。仮に弾性体3が薄いために弾性体3とフィルタ5の端部の密着状態が良好でない場合、インク流路内の圧力によりエアをフィルタ5の端部から引き込もうとすると、弾性部3がフィルタ5に吸い付けられてフィルタ5と密着するためエアの進入を防ぐことができる。従ってインクタンクより供給するインクの流量が多い場合においてもエアの混入が発生しない。よって、インク供給が確実かつ安定して行うことができ、ひいては安定した印刷を行うことができる。
【0038】
なお、インク流路部2は、一方向の繊維束を接着剤で固めるようなものや、繊維をフェルト状にしたものやウレタンスポンジを用いてもよい。
【0039】
また、弾性部3は、天然ゴムやシリコーンゴムのような弾性の高い材質であればよい。
【0040】
インク導出部2と弾性部3は、二色成形にて製作しても良いし、別部品を接着、勘合させても良い。また、インク導出部2に、熱により収縮するチューブ状やシート状の部材を巻き付けて、熱収縮させることで弾性部3を形成しても良い。
【0041】
本発明は上述したように、インク吐出口数を多くし高速化を図ったインクジェット記録装置においても、吸引動作時に、インクタンクとインク導入部の当接部からエアを引き込むことなくインクジェット記録ヘッドへ確実かつ安定したインク供給を行うことができ安定した印刷を行うことができる。
【0042】
(実施例3)
以下に、本発明の第三の実施形態について図面を参照して説明する。
【0043】
図5ないし図7は、本発明の第三の実施例を示す図である。
【0044】
図5はインクタンクがインクジェット記録ヘッドに未装着時の第二の吸収体1とインク導入管4を示す断面図であり、図6はインクタンクをインクジェット記録ヘッドへ装着した状態の第二の吸収体1とインク導入管4を示す断面図である。
【0045】
図5及び図7に示すように、第二の吸収体1にはインク導出部2のフィルタ5の端面と当接する部分に弾性部3がドーナツ状に設けられている。弾性体3の断面形状は、第二の吸収体1とフィルタ5が当接した時のフィルタ5端部とインク導出部2で囲まれる空間の形状に近いものとなっている。また、弾性部3は熱可塑性エラストマーが用いられ、インク導出部2は樹脂繊維束を熱により固定している。インク供給管4は、内部にインク流路7が設けられており、インク導入管4の第二の吸収体1と当接する側の端面にフィルタ5が中心部を凸にしたドーム形状に固定されている。ドーム先端高さは、フィルタ5の外周固定部11より高くなっている。フィルタ5の固定は、フィルタ5外周を覆うようにインク導入管4の端部を溶着している。フィルタ5の下には、フィルタ5の凹みを防止するために凹み防止リブ6が設けられている。これによりフィルタ5が過度に押されてもフィルタ5が凹形状にならず第二の吸収体1との当接面積が小さくならない。よって良好な当接状態を保てるため、より安定したインク供給が行うことができる。
【0046】
また、インク導出部2のフィルタ5と当接する領域の直径D1は、フィルタ5の直径D2より小さく、D2より弾性部3の外径D3の方が大きい。これは、フィルタ5の中心部をインクの流れる領域とし、端部を弾性部3にてシールするシール領域とするためである。
【0047】
図3−2に示すように、インクタンク装着時にはインク供給口10にインク導入管4が挿入される。インク導入管4が第二の吸収体1を押し上げるため第二の吸収体1は、摺動し、第一の吸収体8に押し当てられる。第二の吸収体1とフィルタ5の当接状態は、インク導出部2がフィルタ5中心部に圧接されフィルタの中心部は平坦になる。平坦部は、フィルタ5の外周固定部11よりも高くなっている。そして、弾性部3形状がフィルタ5端部の空間形状に近く、背面からはインク導出部2によって押圧されるため、フィルタ5の端部に密着して全周を覆っている。よって、フィルタ5は全面第二の吸収体1に当接することになる。
【0048】
次にインクの供給について説明する。インクは、第一の吸収体8に含浸されているが、第一の吸収体8より毛管力が高く設定されている第二の吸収体1のインク導出部2へ導出される。そして、インクジェット記録ヘッドの印刷時や吸引動作時にインク流路が減圧状態となるため第二のインク吸収体1からフィルタ5を通してインク導入管4へインクを引き出そうとする。この時、インク流量多い場合は、インク流路内の圧力がより低くなる。フィルタ端部が弾性部3で覆われずに大気に開放されている場合は、第二の吸収体1からインクを引くのと同時にフィルタ5の端部からエアを引き込む。しかし、フィルタ5の端部が弾性体3で覆われているため、エアの進入口がなくエアを引き込めない。従ってインクタンクより供給するインクの流量が多い場合においてもエアの混入が発生しない。よって、インク供給が確実かつ安定して行うことができ、ひいては安定した印刷を行うことができる。
【0049】
なお、インク流路部2は、一方向の繊維束を接着剤で固めるようなものや、繊維をフェルト状にしたものやウレタンスポンジを用いてもよい。
【0050】
また、弾性部3は、天然ゴムやシリコーンゴムのような弾性の高い材質であればよい。
【0051】
インク導出部2と弾性部3は、二色成形にて製作しても良いし、別部品を接着、勘合させても良い。また、インク導出部2に、熱により収縮するチューブ状やシート状の部材を巻き付けて、熱収縮させることで弾性部3を形成しても良い。
【0052】
本発明は上述したように、インク吐出口数を多くし高速化を図ったインクジェット記録装置においても、吸引動作時に、インクタンクとインク導入部の当接部からエアを引き込むことなくインクジェット記録ヘッドへ確実かつ安定したインク供給を行うことができ安定した印刷を行うことができる。
【0053】
(実施例4)
以下に、本発明の第三の実施形態について図面を参照して説明する。
【0054】
図8ないし図9は、本発明の第三の実施例を示す図である。
【0055】
図8はインクタンクがインクジェット記録ヘッドに未装着時の第二の吸収体1とインク導入管4を示す断面図であり、図9はインクタンクをインクジェット記録ヘッドへ装着した状態の第二の吸収体1とインク導入管4を示す断面図である。
【0056】
図8に示すように、第二の吸収体1には中心にインク導出部2があり、その外周の下方に弾性部3が設けられている。次に弾性部3の形状について説明する。弾性体3は、インク導出部2のフィルタ5への当接面より凸形状である凸部13が設けられており、凸部13の内側のインク導出部2との間には、凸部13の変形を吸収する変形吸収領域12が設けられている。弾性部3は熱可塑性エラストマーが用いられ、インク導出部2は樹脂繊維束を熱により固定している。インク供給管4は、内部にインク流路7が設けられており、インク導入管4の第二の吸収体1と当接する側の端面にフィルタ5が中心部を凸にしたドーム形状に固定されている。ドーム先端高さは、フィルタ5の外周固定部11より高くなっている。フィルタ5の固定は、フィルタ5外周を覆うようにインク導入管4の端部を溶着している。フィルタ5の下には、フィルタ5の凹みを防止するために凹み防止リブ6が設けられている。これによりフィルタ5が過度に押されてもフィルタ5が凹形状にならず第二の吸収体1との当接面積が小さくならない。よって良好な当接状態を保てるため、より安定したインク供給が行うことができる。
【0057】
また、インク導出部2の直径D1はフィルタ5の直径D2より小さく、D2より弾性部3のフィルタ当接部外径D3の方が大きい。これは、フィルタ5の中心部をインクの流れる領域とし、端部を弾性部3にてシールするシール領域とするためである。
【0058】
図9に示すように、インクタンク装着時にはインク供給口10にインク導入管4が挿入される。インク導入管4が第二の吸収体1を押し上げるため第二の吸収体1は、摺動し、第一の吸収体8に押し当てられる。第二の吸収体1とフィルタ5の当接状態は、まず、インク導出部2の外周の弾性部3がフィルタ5の端部と当接し、弾性部3の凸部13が変形する。凸部13の変形は、変形吸収領域12によって吸収され、弾性部3によって、フィルタ5とインク導出部2の隙間を埋める。つまり、インク導出部2の外周はフィルタ5の端部に密着して端部全周を覆うことになる。インク導出部2は、フィルタ5中心部に圧接されフィルタの中心部は平坦になる。平坦部は、フィルタ5の外周固定部11よりも高くなっている。よって、フィルタ5は全面第二の吸収体1に当接することになる。
【0059】
次にインクの供給について説明する。インクは、第一の吸収体8に含浸されているが、第一の吸収体8より毛管力が高く設定されている第二の吸収体1のインク導出部2へ導出される。そして、インクジェット記録ヘッドの印刷時や吸引動作時にインク流路が減圧状態となるため第二のインク吸収体1からフィルタ5を通してインク導入管4へインクを引き出そうとする。この時、インク流量多い場合は、インク流路内の圧力がより低くなる。フィルタ端部が弾性部3で覆われずに大気に開放されている場合は、第二の吸収体1からインクを引くのと同時にフィルタ5の端部からエアを引き込む。しかし、フィルタ5の端部が弾性体3で覆われているため、エアの進入口がなくエアを引き込めない。従ってインクタンクより供給するインクの流量が多い場合においてもエアの混入が発生しない。よって、インク供給が確実かつ安定して行うことができ、ひいては安定した印刷を行うことができる。
【0060】
なお、インク流路部2は、一方向の繊維束を接着剤で固めるようなものや、繊維をフェルト状にしたものやウレタンスポンジを用いてもよい。
【0061】
また、弾性部3は、天然ゴムやシリコーンゴムのような弾性の高い材質であればよい。
【0062】
インク導出部2と弾性部3は、二色成形にて製作しても良いし、別部品を接着、勘合させても良い。また、インク導出部2に、熱により収縮するチューブ状やシート状の部材を巻き付けて、熱収縮させることで弾性部3を形成しても良い。
【0063】
本発明は上述したように、インク吐出口数を多くし高速化を図ったインクジェット記録装置においても、吸引動作時に、インクタンクとインク導入部の当接部からエアを引き込むことなくインクジェット記録ヘッドへ確実かつ安定したインク供給を行うことができ安定した印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第一の実施例を示すインクタンク未装着時の断面図
【図2】本発明の第一の実施例を示すインクタンク装着時の断面図
【図3】本発明の第二の実施例を示すインクタンク未装着時の断面図
【図4】本発明の第二の実施例を示すインクタンク装着時の断面図
【図5】本発明の第三の実施例を示すインクタンク未装着時の断面図
【図6】本発明の第三の実施例を示すインクタンク装着時の断面図
【図7】本発明の第三の実施例の第二の吸収体を示す図
【図8】本発明の第四の実施例を示すインクタンク未装着時の断面図
【図9】本発明の第四の実施例を示すインクタンク装着時の断面図
【図10】従来のインクタンクを示す断面図
【図11】従来のインクタンク未装着時のインクタンク接続部断面図
【図12】従来のインクタンク装着時のインクタンク接続部断面図
【図13】従来のインクタンク装着時のインクタンク接続部部分拡大断面図
【符号の説明】
【0065】
1、101 第二の吸収体
2 インク導出部
3 弾性部
4 インク導入管
5 フィルタ
6 凹み防止リブ
7 インク流路
8、108 第一の吸収体
9、102 タンクケース
10、110 インク供給口
11 外周固定部
12 変形吸収領域
13 凸部
103 大気連通口
104 連通部
105 インク室
106 吸収体室
107 リブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置などに用いられるインクジェット記録カートリッジおよびインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録ヘッドに搭載される従来のインクタンクにおいては、特許文献1に開示されているように、インク供給口と大気連通口を有するタンクケースに第一の吸収体なるインク吸収部材と、インク供給口近傍に第二の吸収体なるインク導出部材が収納されているものがある。特許文献1に開示のインクタンクはインク供給口と大気連通口を有するタンクケース内に吸収体のみを収納したタイプのものであるが、この他に特許文献2に開示されているようなインクタンクがある。図10は特許文献2のインクタンクの断面図である。図10に示すように、インク供給口110と大気連通口103を有するタンクケース102には吸収体室106とインク室105があり、吸収体室106にはインクを含浸させた第一の吸収体108と、インク供給口110近傍にインク含浸させた第二の吸収体101を収納し、インク室105は連通部104にて吸収体室106とのみ連通し内部にインクを収納している。
【0003】
上記の2つのタイプのインクタンクは、ともにインク供給口にインクジェット記録ヘッドのインク導入管を挿入し、インク供給管の先端に設けられたフィルタと第二の吸収体を当接させることでインクタンクからインクジェット記録ヘッドへインクを供給している。
【0004】
次にインクの挙動について説明する。第二の吸収体のインク保持力が第一の吸収体より高く設定されている。そのためインク供給時においてインクは、第一の吸収体から保持力の高い第二の吸収体に導出され、当接されているフィルタへインクを供給している。
【0005】
第一の吸収体は、ウレタンスポンジや繊維からなるものがあり、第二の吸収体は、繊維を同一方向に束ねた繊維束であったり、フェルトを所望の形状に打抜いたりしているものがある。
【0006】
インクジェット記録カートリッジへインクを導入するインク導入管は、インクタンクのインク供給口へ挿入されるように管状であり、内部はインクが通るインク流路になっている。インク導入管の先端にはフィルタが設けられている。フィルタは、インクジェット記録ヘッドへの異物の混入を防ぐために設けられており、インクジェット記録ヘッドのインク吐出口の大きさによってフィルタの目の大きさが設定される。フィルタについては、特許文献3に開示されているように金属繊維を織ったものを中央部が凸になるようにドーム状に固定しているものや特許文献4に開示されているような金属繊維を不織布状に重ね、金属を焼結することで形成したフィルタを、中央部を平坦にしたドーム状にして固定しているものがある。
【0007】
フィルタの固定は、フィルタの外周を熱可塑性の樹脂を熱溶着によって覆い、フィルタ周囲の金属繊維端が第二の吸収体を傷つけないようにしている。また、フィルタ端部を覆うことでフィルタ端部が第二の吸収体に引っかかって剥離しないようにもしている。
【0008】
フィルタ固定後のドーム形状については、フィルタ外周を覆った樹脂がフィルタ面より高い凸形状になっていると第二の吸収体がフィルタ当接時に樹脂と接触し、フィルタと第二の吸収体が接触しない場合があるため外周の樹脂より高くしている。ドーム形状の中央部が平坦になっているものについても中央部の平坦部はフィルタ外周の樹脂より高くしている。
【0009】
次に上記の第二の吸収体とインク導入管のフィルタとの当接状態について説明する。
【0010】
図11ないし図13は、第二の吸収体とインク導入管の断面模式図である。図11は当接前の状態であり、図12は当接時の状態を示している。また、図13は、図12のフィルタ外周部を拡大した図である。図11に示すように第二の吸収体はフィルタに対し平行に配されている。フィルタは、フィルタ外周の樹脂より高いドーム状に固定されており、フィルタの下にはフィルタのへこみを防止するリブが設けられている。図12に示すように第二の吸収体とフィルタの当接時においては、フィルタの中央部が当接し、図13に示すように、フィルタの外周部は、第二の吸収体と当接しない部分がある。インクは、第二の吸収体とフィルタが当接している領域がインク流路となり、インク導入管へ供給される。フィルタに当接する面の対向面には第一の吸収体が当接している。
【特許文献1】特開平7−148937
【特許文献2】特開平10−193634
【特許文献3】特開平6−238910
【特許文献4】特開2002−137410
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
インクジェット記録装置は近年、高速化,高精細化が求められており、印刷速度の高速化を図るためにインクジェット記録ヘッドの吐出口数やインク吐出周波数を増やしたりしているものがある。吐出口数を多くすると、印刷時における、インクタンクから記録ヘッドへ供給されるインク流量が多くなる。また、インク吐出ノズルの目詰まりを解消したり、インク流路内の気泡を除去するためにノズルからインクを吸引する吸引動作時におけるインク流量が多くなる。特に吸引動作時におけるインク流量が最も多くなる。
【0012】
上記のようにインク流量が多くなると、インクタンクにおいては第一と第二の吸収体のインク流抵抗が大きくなる。インク流抵抗が大きくなることの問題として、吸引動作時にインクタンクからインクを引き込む際にインクの流抵抗が大きいため、インク流路の内圧が下がり、第二の吸収体に接していないフィルタのメニスカスが崩壊し、第二の吸収体からインクを導入するのと同時に、図6−3の矢印Aに示すようにフィルタ端部からエアを引き込むことがある。
【0013】
このエアの引き込みを起こさず、インクタンクからインクジェット記録ヘッドへインクを安定して供給するために、インクジェット記録ヘッドのインク導入管の断面積とインクタンクのインク供給口と第二の吸収体を大きくし、インク導入管のフィルタと第二の吸収体の当接面積を大きくすることでインク流路断面積を大きくする方法がある。
【0014】
しかし、上記の方法では、インクタンクの開口が大きくなるためインクタンクのサイズが大きくなってしまう。例えば幅が小さいインクタンクを複数並べて記録装置に搭載するタイプの場合、インク供給口が大きくなるためインクタンクの幅が広くなりひいては記録装置の大型化に引き起こす。
【0015】
そこで、本発明では、吐出ノズルが多くなりインク流量が多くなった場合においても、インクタンクや記録装置のサイズを大きくすることなく、インク導入管のフィルタからエアを引き込まず、確実かつ安定したインク供給を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、インクジェット記録ヘッドへの着脱が可能なインクタンクであって、前記インクジェット記録ヘッドのインク導入部に設けられたフィルタと該フィルタにインク保持部材を当接させることでインクを供給するインクタンクにおいて、
前記インク保持部材は外周近傍に、前記フィルタの端部を覆い、シール性を有する弾性領域を有すると共に
前記フィルタの直径D1と前記インク保持部材の前記フィルタとの接触面直径D2と前記弾性領域最外径D3の関係が、
D2≦D1<D3
であることを特徴とする。
【0017】
また、前記インク保持部材と前記弾性領域は、異なる材質であることを特徴とする。
【0018】
また、前記弾性領域は、熱可塑性エラストマーであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のインクタンクは、高速印刷化を図った記録装置において、インクジェット記録ヘッドへ供給するインクの流量が多くなった場合でも、インク供給口を大きくすることなく、インクタンクを大きくすることなく、エアの引き込みが無い確実かつ安定したインク供給を行うことができ、安定した印字品位を保つことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施例1)
以下に、本発明の第一の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1ないし図2は、本発明の第一の実施例を示す図である。
【0022】
図1はインクタンクがインクジェット記録ヘッドに未装着時の第二の吸収体1とインク導入管4を示す断面図であり、図2はインクタンクをインクジェット記録ヘッドへ装着した状態の第二の吸収体1とインク導入管4を示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、第二の吸収体1には中心にインク導出部2があり、その外周の全高において弾性部3が設けられている。弾性部3は熱可塑性エラストマーが用いられ、インク導出部2は樹脂繊維束を熱により固定している。インク供給管4は、内部にインク流路7が設けられており、インク導入管4の第二の吸収体1と当接する側の端面にフィルタ5が中心部を凸にしたドーム形状に固定されている。ドーム先端高さは、フィルタ5の外周固定部11より高くなっている。フィルタ5の固定は、フィルタ5外周を覆うようにインク導入管4の端部を溶着している。フィルタ5の下には、フィルタ5の凹みを防止するために凹み防止リブ6が設けられている。これによりフィルタ5が過度に押されてもフィルタ5が凹形状にならず第二の吸収体1との当接面積が小さくならない。よって良好な当接状態を保てるため、より安定したインク供給が行うことができる。
【0024】
また、インク導出部2の直径D1はフィルタ5の直径D2より小さく、D2より弾性部3の外径D3の方が大きい。これは、フィルタ5の中心部をインクの流れる領域とし、端部を弾性部3にてシールするシール領域とするためである。
【0025】
図2に示すように、インクタンク装着時にはインク供給口10にインク導入管4が挿入される。インク導入管4が第二の吸収体1を押し上げるため第二の吸収体1は、摺動し、第一の吸収体8に押し当てられる。第二の吸収体1とフィルタ5の当接状態は、インク導出部2がフィルタ5中心部に圧接されフィルタの中心部は平坦になる。平坦部は、フィルタ5の外周固定部11よりも高くなっている。そして、その外周の弾性部3がフィルタ5の形状に倣いフィルタ5の端部に密着して端部全周を覆っている。弾性部3は、第二の吸収体1と同じ高さであるため、第一の吸収体8によって押圧される。そのためフィルタ5の端部へより密着する。よって、フィルタ5は全面第二の吸収体1に当接することになる。
【0026】
次にインクの供給について説明する。インクは、第一の吸収体8に含浸されているが、第一の吸収体8より毛管力が高く設定されている第二の吸収体1のインク導出部2へ導出される。そして、インクジェット記録ヘッドの印刷時や吸引動作時にインク流路が減圧状態となるため第二のインク吸収体1からフィルタ5を通してインク導入管4へインクを引き出そうとする。この時、インク流量多い場合は、インク流路内の圧力がより低くなる。フィルタ端部が弾性部3で覆われずに大気に開放されている場合は、第二の吸収体1からインクを引くのと同時にフィルタ5の端部からエアを引き込む。しかし、フィルタ5の端部が弾性体3で覆われているため、エアの進入口がなくエアを引き込めない。従ってインクタンクより供給するインクの流量が多い場合においてもエアの混入が発生しない。よって、インク供給が確実かつ安定して行うことができ、ひいては安定した印刷を行うことができる。
【0027】
なお、インク流路部2は、一方向の繊維束を接着剤で固めるようなものや、繊維をフェルト状にしたものやウレタンスポンジを用いてもよい。
【0028】
また、弾性部3は、天然ゴムやシリコーンゴムのような弾性の高い材質であればよい。
【0029】
インク導出部2と弾性部3は、二色成形にて製作しても良いし、別部品を接着、勘合させても良い。また、インク導出部2に、熱により収縮するチューブ状やシート状の部材を巻き付けて、熱収縮させることで弾性部3を形成しても良い。
【0030】
本発明は上述したように、インク吐出口数を多くし高速化を図ったインクジェット記録装置においても、吸引動作時に、インクタンクとインク導入部の当接部からエアを引き込むことなくインクジェット記録ヘッドへ確実かつ安定したインク供給を行うことができ安定した印刷を行うことができる。
【0031】
(実施例2)
以下に、本発明の第二の実施形態について図面を参照して説明する。
【0032】
図3ないし図4は、本発明の第二の実施例を示す図である。
【0033】
図3はインクタンクがインクジェット記録ヘッドに未装着時の第二の吸収体1とインク導入管4を示す断面図であり、図4はインクタンクをインクジェット記録ヘッドへ装着した状態の第二の吸収体1とインク導入管4を示す断面図である。
【0034】
図3に示すように、第二の吸収体1には中心にインク導出部2があり、その外周には第二の吸収体1に比べ薄い弾性部3が設けられている。弾性部3は熱可塑性エラストマーが用いられ、インク導出部2は樹脂繊維束を熱により固定している。インク供給管4は、内部にインク流路7が設けられており、インク導入管4の第二の吸収体1と当接する側の端面にフィルタ5が中心部を凸にしたドーム形状に固定されている。ドーム先端高さは、フィルタ5の外周固定部11より高くなっている。フィルタ5の固定は、フィルタ5外周を覆うようにインク導入管4の端部を溶着している。フィルタ5の下には、フィルタ5の凹みを防止するために凹み防止リブ6が設けられている。これによりフィルタ5が過度に押されてもフィルタ5が凹形状にならず第二の吸収体1との当接面積が小さくならない。よって良好な当接状態を保てるため、より安定したインク供給が行うことができる。
【0035】
また、インク導出部2の直径D1はフィルタ5の直径D2より小さく、D2より弾性部3の外径D3の方が大きい。これは、フィルタ5の中心部をインクの流れる領域とし、端部を弾性部3にてシールするシール領域とするためである。
【0036】
図4に示すように、インクタンク装着時にはインク供給口10にインク導入管4が挿入される。インク導入管4が第二の吸収体1を押し上げるため第二の吸収体1は、摺動し、第一の吸収体8に押し当てられる。第二の吸収体1とフィルタ5の当接状態は、インク導出部2がフィルタ5中心部に圧接されフィルタの中心部は平坦になる。平坦部は、フィルタ5の外周固定部11よりも高くなっている。そして、その外周の弾性部3がフィルタ5の形状に倣いフィルタ5の端部に密着して端部全周を覆っている。弾性部3は、薄くし、弾性の高い材質を用いることによって、フィルタ5の端部に倣う。よって、フィルタ5は全面第二の吸収体1に当接することになる。
【0037】
次にインクの供給について説明する。インクは、第一の吸収体8に含浸されているが、第一の吸収体8より毛管力が高く設定されている第二の吸収体1のインク導出部2へ導出される。そして、インクジェット記録ヘッドの印刷時や吸引動作時にインク流路が減圧状態となるため第二のインク吸収体1からフィルタ5を通してインク導入管4へインクを引き出そうとする。この時、インク流量多い場合は、インク流路内の圧力がより低くなる。フィルタ端部が弾性部3で覆われずに大気に開放されている場合は、第二の吸収体1からインクを引くのと同時にフィルタ5の端部からエアを引き込む。しかし、フィルタ5の端部が弾性体3で覆われているため、エアの進入口がなくエアを引き込めない。仮に弾性体3が薄いために弾性体3とフィルタ5の端部の密着状態が良好でない場合、インク流路内の圧力によりエアをフィルタ5の端部から引き込もうとすると、弾性部3がフィルタ5に吸い付けられてフィルタ5と密着するためエアの進入を防ぐことができる。従ってインクタンクより供給するインクの流量が多い場合においてもエアの混入が発生しない。よって、インク供給が確実かつ安定して行うことができ、ひいては安定した印刷を行うことができる。
【0038】
なお、インク流路部2は、一方向の繊維束を接着剤で固めるようなものや、繊維をフェルト状にしたものやウレタンスポンジを用いてもよい。
【0039】
また、弾性部3は、天然ゴムやシリコーンゴムのような弾性の高い材質であればよい。
【0040】
インク導出部2と弾性部3は、二色成形にて製作しても良いし、別部品を接着、勘合させても良い。また、インク導出部2に、熱により収縮するチューブ状やシート状の部材を巻き付けて、熱収縮させることで弾性部3を形成しても良い。
【0041】
本発明は上述したように、インク吐出口数を多くし高速化を図ったインクジェット記録装置においても、吸引動作時に、インクタンクとインク導入部の当接部からエアを引き込むことなくインクジェット記録ヘッドへ確実かつ安定したインク供給を行うことができ安定した印刷を行うことができる。
【0042】
(実施例3)
以下に、本発明の第三の実施形態について図面を参照して説明する。
【0043】
図5ないし図7は、本発明の第三の実施例を示す図である。
【0044】
図5はインクタンクがインクジェット記録ヘッドに未装着時の第二の吸収体1とインク導入管4を示す断面図であり、図6はインクタンクをインクジェット記録ヘッドへ装着した状態の第二の吸収体1とインク導入管4を示す断面図である。
【0045】
図5及び図7に示すように、第二の吸収体1にはインク導出部2のフィルタ5の端面と当接する部分に弾性部3がドーナツ状に設けられている。弾性体3の断面形状は、第二の吸収体1とフィルタ5が当接した時のフィルタ5端部とインク導出部2で囲まれる空間の形状に近いものとなっている。また、弾性部3は熱可塑性エラストマーが用いられ、インク導出部2は樹脂繊維束を熱により固定している。インク供給管4は、内部にインク流路7が設けられており、インク導入管4の第二の吸収体1と当接する側の端面にフィルタ5が中心部を凸にしたドーム形状に固定されている。ドーム先端高さは、フィルタ5の外周固定部11より高くなっている。フィルタ5の固定は、フィルタ5外周を覆うようにインク導入管4の端部を溶着している。フィルタ5の下には、フィルタ5の凹みを防止するために凹み防止リブ6が設けられている。これによりフィルタ5が過度に押されてもフィルタ5が凹形状にならず第二の吸収体1との当接面積が小さくならない。よって良好な当接状態を保てるため、より安定したインク供給が行うことができる。
【0046】
また、インク導出部2のフィルタ5と当接する領域の直径D1は、フィルタ5の直径D2より小さく、D2より弾性部3の外径D3の方が大きい。これは、フィルタ5の中心部をインクの流れる領域とし、端部を弾性部3にてシールするシール領域とするためである。
【0047】
図3−2に示すように、インクタンク装着時にはインク供給口10にインク導入管4が挿入される。インク導入管4が第二の吸収体1を押し上げるため第二の吸収体1は、摺動し、第一の吸収体8に押し当てられる。第二の吸収体1とフィルタ5の当接状態は、インク導出部2がフィルタ5中心部に圧接されフィルタの中心部は平坦になる。平坦部は、フィルタ5の外周固定部11よりも高くなっている。そして、弾性部3形状がフィルタ5端部の空間形状に近く、背面からはインク導出部2によって押圧されるため、フィルタ5の端部に密着して全周を覆っている。よって、フィルタ5は全面第二の吸収体1に当接することになる。
【0048】
次にインクの供給について説明する。インクは、第一の吸収体8に含浸されているが、第一の吸収体8より毛管力が高く設定されている第二の吸収体1のインク導出部2へ導出される。そして、インクジェット記録ヘッドの印刷時や吸引動作時にインク流路が減圧状態となるため第二のインク吸収体1からフィルタ5を通してインク導入管4へインクを引き出そうとする。この時、インク流量多い場合は、インク流路内の圧力がより低くなる。フィルタ端部が弾性部3で覆われずに大気に開放されている場合は、第二の吸収体1からインクを引くのと同時にフィルタ5の端部からエアを引き込む。しかし、フィルタ5の端部が弾性体3で覆われているため、エアの進入口がなくエアを引き込めない。従ってインクタンクより供給するインクの流量が多い場合においてもエアの混入が発生しない。よって、インク供給が確実かつ安定して行うことができ、ひいては安定した印刷を行うことができる。
【0049】
なお、インク流路部2は、一方向の繊維束を接着剤で固めるようなものや、繊維をフェルト状にしたものやウレタンスポンジを用いてもよい。
【0050】
また、弾性部3は、天然ゴムやシリコーンゴムのような弾性の高い材質であればよい。
【0051】
インク導出部2と弾性部3は、二色成形にて製作しても良いし、別部品を接着、勘合させても良い。また、インク導出部2に、熱により収縮するチューブ状やシート状の部材を巻き付けて、熱収縮させることで弾性部3を形成しても良い。
【0052】
本発明は上述したように、インク吐出口数を多くし高速化を図ったインクジェット記録装置においても、吸引動作時に、インクタンクとインク導入部の当接部からエアを引き込むことなくインクジェット記録ヘッドへ確実かつ安定したインク供給を行うことができ安定した印刷を行うことができる。
【0053】
(実施例4)
以下に、本発明の第三の実施形態について図面を参照して説明する。
【0054】
図8ないし図9は、本発明の第三の実施例を示す図である。
【0055】
図8はインクタンクがインクジェット記録ヘッドに未装着時の第二の吸収体1とインク導入管4を示す断面図であり、図9はインクタンクをインクジェット記録ヘッドへ装着した状態の第二の吸収体1とインク導入管4を示す断面図である。
【0056】
図8に示すように、第二の吸収体1には中心にインク導出部2があり、その外周の下方に弾性部3が設けられている。次に弾性部3の形状について説明する。弾性体3は、インク導出部2のフィルタ5への当接面より凸形状である凸部13が設けられており、凸部13の内側のインク導出部2との間には、凸部13の変形を吸収する変形吸収領域12が設けられている。弾性部3は熱可塑性エラストマーが用いられ、インク導出部2は樹脂繊維束を熱により固定している。インク供給管4は、内部にインク流路7が設けられており、インク導入管4の第二の吸収体1と当接する側の端面にフィルタ5が中心部を凸にしたドーム形状に固定されている。ドーム先端高さは、フィルタ5の外周固定部11より高くなっている。フィルタ5の固定は、フィルタ5外周を覆うようにインク導入管4の端部を溶着している。フィルタ5の下には、フィルタ5の凹みを防止するために凹み防止リブ6が設けられている。これによりフィルタ5が過度に押されてもフィルタ5が凹形状にならず第二の吸収体1との当接面積が小さくならない。よって良好な当接状態を保てるため、より安定したインク供給が行うことができる。
【0057】
また、インク導出部2の直径D1はフィルタ5の直径D2より小さく、D2より弾性部3のフィルタ当接部外径D3の方が大きい。これは、フィルタ5の中心部をインクの流れる領域とし、端部を弾性部3にてシールするシール領域とするためである。
【0058】
図9に示すように、インクタンク装着時にはインク供給口10にインク導入管4が挿入される。インク導入管4が第二の吸収体1を押し上げるため第二の吸収体1は、摺動し、第一の吸収体8に押し当てられる。第二の吸収体1とフィルタ5の当接状態は、まず、インク導出部2の外周の弾性部3がフィルタ5の端部と当接し、弾性部3の凸部13が変形する。凸部13の変形は、変形吸収領域12によって吸収され、弾性部3によって、フィルタ5とインク導出部2の隙間を埋める。つまり、インク導出部2の外周はフィルタ5の端部に密着して端部全周を覆うことになる。インク導出部2は、フィルタ5中心部に圧接されフィルタの中心部は平坦になる。平坦部は、フィルタ5の外周固定部11よりも高くなっている。よって、フィルタ5は全面第二の吸収体1に当接することになる。
【0059】
次にインクの供給について説明する。インクは、第一の吸収体8に含浸されているが、第一の吸収体8より毛管力が高く設定されている第二の吸収体1のインク導出部2へ導出される。そして、インクジェット記録ヘッドの印刷時や吸引動作時にインク流路が減圧状態となるため第二のインク吸収体1からフィルタ5を通してインク導入管4へインクを引き出そうとする。この時、インク流量多い場合は、インク流路内の圧力がより低くなる。フィルタ端部が弾性部3で覆われずに大気に開放されている場合は、第二の吸収体1からインクを引くのと同時にフィルタ5の端部からエアを引き込む。しかし、フィルタ5の端部が弾性体3で覆われているため、エアの進入口がなくエアを引き込めない。従ってインクタンクより供給するインクの流量が多い場合においてもエアの混入が発生しない。よって、インク供給が確実かつ安定して行うことができ、ひいては安定した印刷を行うことができる。
【0060】
なお、インク流路部2は、一方向の繊維束を接着剤で固めるようなものや、繊維をフェルト状にしたものやウレタンスポンジを用いてもよい。
【0061】
また、弾性部3は、天然ゴムやシリコーンゴムのような弾性の高い材質であればよい。
【0062】
インク導出部2と弾性部3は、二色成形にて製作しても良いし、別部品を接着、勘合させても良い。また、インク導出部2に、熱により収縮するチューブ状やシート状の部材を巻き付けて、熱収縮させることで弾性部3を形成しても良い。
【0063】
本発明は上述したように、インク吐出口数を多くし高速化を図ったインクジェット記録装置においても、吸引動作時に、インクタンクとインク導入部の当接部からエアを引き込むことなくインクジェット記録ヘッドへ確実かつ安定したインク供給を行うことができ安定した印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第一の実施例を示すインクタンク未装着時の断面図
【図2】本発明の第一の実施例を示すインクタンク装着時の断面図
【図3】本発明の第二の実施例を示すインクタンク未装着時の断面図
【図4】本発明の第二の実施例を示すインクタンク装着時の断面図
【図5】本発明の第三の実施例を示すインクタンク未装着時の断面図
【図6】本発明の第三の実施例を示すインクタンク装着時の断面図
【図7】本発明の第三の実施例の第二の吸収体を示す図
【図8】本発明の第四の実施例を示すインクタンク未装着時の断面図
【図9】本発明の第四の実施例を示すインクタンク装着時の断面図
【図10】従来のインクタンクを示す断面図
【図11】従来のインクタンク未装着時のインクタンク接続部断面図
【図12】従来のインクタンク装着時のインクタンク接続部断面図
【図13】従来のインクタンク装着時のインクタンク接続部部分拡大断面図
【符号の説明】
【0065】
1、101 第二の吸収体
2 インク導出部
3 弾性部
4 インク導入管
5 フィルタ
6 凹み防止リブ
7 インク流路
8、108 第一の吸収体
9、102 タンクケース
10、110 インク供給口
11 外周固定部
12 変形吸収領域
13 凸部
103 大気連通口
104 連通部
105 インク室
106 吸収体室
107 リブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録ヘッドへの着脱が可能なインクタンクであって、前記インクジェット記録ヘッドのインク導入部に設けられたフィルタと該フィルタにインク保持部材を当接させることでインクを供給するインクタンクにおいて、
前記インク保持部材は外周近傍に、前記フィルタの端部を覆い、シール性を有する弾性領域を有すると共に
前記フィルタの直径D1と前記インク保持部材の前記フィルタとの接触面直径D2と前記弾性領域最外径D3の関係が、
D2≦D1<D3
であることを特徴とするインクタンク。
【請求項2】
前記インク保持部材と前記弾性領域は、異なる材質であることを特徴とする請求項1記載のインクタンク。
【請求項3】
前記弾性領域は、熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項2記載のインクタンク。
【請求項1】
インクジェット記録ヘッドへの着脱が可能なインクタンクであって、前記インクジェット記録ヘッドのインク導入部に設けられたフィルタと該フィルタにインク保持部材を当接させることでインクを供給するインクタンクにおいて、
前記インク保持部材は外周近傍に、前記フィルタの端部を覆い、シール性を有する弾性領域を有すると共に
前記フィルタの直径D1と前記インク保持部材の前記フィルタとの接触面直径D2と前記弾性領域最外径D3の関係が、
D2≦D1<D3
であることを特徴とするインクタンク。
【請求項2】
前記インク保持部材と前記弾性領域は、異なる材質であることを特徴とする請求項1記載のインクタンク。
【請求項3】
前記弾性領域は、熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項2記載のインクタンク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−95961(P2006−95961A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286857(P2004−286857)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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