説明

インクタンク

【課題】 大容量インクタンクに対してLED付きチップと導光部材を設ける構造を採用するにあたり、LED付きチップと導光部材の最適な配置とその取り付け構造は提案されていない。
【解決手段】 凹状の部分を備えて構成される半筺体と、凹状を覆う蓋体とを組み合わせて構成されるタンク外筺体と、
外筺体の一部に配置された発光部を備えた素子と、
前記素子の発光部の光をタンク外筺体の外に導く導光部材と、
を備えたインクタンクにおいて、
前記タンク外筺体に嵌め込まれた前記導光部材の抜け落ちを規制するように、前記導光部材に対して蓋体がかみ合うように導光部材および蓋体に凹凸形状部を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタで使用されるインクなどの液体を収納したインクタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタの消耗品の1つである液体収納容器(以下、インクタンクとも称する)は、インクジェットヘッドに対して供給されるインクや印刷品位の向上を目的とした液体を貯留するものである。
【0003】
インクタンクは、印刷によってインクが消費され、容器内に貯留されたインクや液体が終了した時点で交換が指示される。
【0004】
このとき、交換すべきインクタンクをユーザーが容易に特定できることを目的として、インクタンクにLED付きチップを搭載し、その発光の状態をユーザーが直接確認して、交換すべきインクタンクを特定する構成が特許文献1に提案されている。
【0005】
特許文献1は、インクジェットヘッドを備えたキャリッジに対して、着脱可能に構成されたインクタンク(以下、オンキャリッジインクタンクとも称する)を搭載したインクジェットプリンタを開示している。
【0006】
そして、特許文献1には、LED付きチップの配置位置とユーザーが目視する位置が離れている場合にも有効にチップのLEDの発光を活用できるように、光を導く性質の構造体(以下、導光部材という)をインクタンクに配置した構成が開示されている。
これによって、ユーザーは交換すべきインクタンクを容易に特定することができる。
【0007】
なお、チップのLEDはインクタンクがインクジェットプリンタのキャリッジに対して装着が完了した時点で発光するように構成されており、装着の完了を発光によってユーザーが確認できる構成にもなっている。
【0008】
また、インクジェットプリンタには受光センサが配置されており、LEDの発光を利用してインクタンクの装着位置の確認(適正、不適正)を可能にしている。
一方、インクタンクをインクジェットプリンタの特定の位置に配置し、チューブによってインクジェットヘッドと連結してインクを供給する、いわゆる据え置きインクタンクが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−142484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、印字スピードの高速化、印刷量の増大化がすすみ、インクタンクのインク容量も大容量化が求められている。
このような大容量インクタンクにおいてもオンキャリッジインクタンクのようにLED付きチップをインクタンクに配置して、チップのLEDの光を導光部材によってユーザーの目視しやすい位置に光を導くように構成することが考えられる。
【0011】
このような構造を採用してインクタンクの装着完了、インクタンクのインク残量状態、交換が必要なインクタンクの特定などユーザーによるインクタンクの取り扱いを向上させることは重要である。
【0012】
しかし、大容量インクタンクでは落下などによる衝撃が大きくなる為、従来のインクタンクに採用されているLED付きチップの配置および導光部材の配置構造等をそのまま適用することは、インクタンクの外形形状や導光部材の構造や配置等の違いから容易ではない。
【0013】
このような大容量インクタンクにおいて、LED付きチップを配置して、その光を導光する導光部材を設ける構造を採用するにあたり、衝撃による導光部材の外れなどを考慮した、LED付きチップと導光部材の最適な配置とその取り付け構造は提案されていない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、インクタンクにLED付きチップを配置し、その光を導光する導光部材を設ける構造を採用するにあたり、大容量インクタンクを鑑みてLED付きチップと導光部材の最適な配置を提供することを目的とする。
また、特にインクタンクに対する導光部材の好適な取り付け構造を提供することを目的とする。
【0015】
これらの目的を達成する本発明のインクタンクは、
凹状の部分を備えて構成される半筺体と、凹状を覆う蓋体とを組み合わせて構成されるタンク外筺体と、
外筺体の一部に配置された発光部を備えた素子と、
前記素子の発光部の光をタンク外筺体の外に導く導光部材と、
を備えたインクタンクにおいて、
前記タンク外筺体に嵌め込まれた前記導光部材の抜け落ちを規制するように、前記導光部材に対して蓋体がかみ合うように導光部材および蓋体それぞれに噛み合い形状部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記構成を具備したインクタンク(液体収納容器)は、落下等の不測の事態で導光部材が抜ける方向に位置ずれを発生させた場合でも、インクタンクを構成する蓋部材に設けられた突起部に対して導光部材の突起部が当接する位置関係にあるため抜けない。
【0017】
また、導光部材は、インクタンクの特定位置に対して組み付けた後、インクタンクを完成させるために蓋部材を取り付けることによって、導光部材の抜けを抑制することができるように互いの突起部を設けている。
【0018】
そのため、導光部材をインクタンクに対して一体に形成したり、インクタンクに対して別体として設けられた導光部材を溶着や接着などの手法で固定することなく導光部材付きインクタンクを容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明が適用されたインクタンクを操作部(正面)側から見た概略斜視図である。
【図2】本発明が適用されたインクタンクを供給部が配置された側から見た概略斜視図である。
【図3】本発明が適用されたインクタンクを操作部側から見た概略分解斜視図である。
【図4】(a)は本発明が適用されたインクタンクの側面の一部を切り欠いて示す概略側面図、(b)は切り欠かれた箇所の一部であるチップが配された箇所を拡大して示す概略側面図である。
【図5】(a)は本発明が適用されたインクタンクのチップが配された面の一部を切り欠いて示す概略平面図、(b)は切り欠かれた箇所を拡大して示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1および図2は、本発明が適用されたインクタンク1の外観を示す概略斜視図である。
図1はインクジェットプリンタに対して装着する際にユーザーが操作する側面1f(便宜上、こちら側を正面1fとする)から見た概略斜視図である。一方、図2はインクジェットプリンタへのインク供給口7が配された側面1sから見た概略斜視図である。
【0021】
インクタンク1には、その上面1uの内、供給口7が設けられた側面1s側にLED(不図示)で構成された発光部を備えた素子5(便宜的にLED付きチップ、または単にチップとも称する)を備えている。LED付きチップ5では、たとえば、特開2006−142484号公報に開示されるような制御がなされる。
【0022】
また、このチップ5のLEDはインクタンクの内方に向いて、図面上下向きにして配置され(図5参照)ている。
【0023】
そして、このLEDからの光をインクタンク1の正面1fと上面1uとの交差する角部付近の表示部4dに導光するための、導光部材4がインクタンク上面1uの下に設けられた室2c(図5参照)内に配されている。
【0024】
インクタンクの供給口7が配置された側面1sには、インクジェットプリンタへインクタンクを装着する際の誤装着を防止する目的で誤装着防止部6が配されている。
【0025】
誤装着防止部6はインクタンクの両側面を利用されて構成されており、6aと6bの2側面に設けられた切り欠き部の組み合わせによってインクタンクが特定されるようになっている。
【0026】
インクジェットプリンタのインクタンクの装着部には、インクタンクの誤装着防止部に対応した凸部が配されており、インクタンク、プリンタ双方が対応していないと装着が完了しないように構成されている。
【0027】
インクタンク1は、インクジェットプリンタに対して図1の上面1uに示される矢印マークの方向に挿入されて装着が完了するように構成されている。
【0028】
インクタンク1の装着が完了すると、チップ5の電気接点とインクジェットプリンタの電気接点とが接触し、通電する事でチップ5に設けられたLEDが発光する。
【0029】
この光をインクタンク内に設けられた導光部材4で導く事で、インクタンク1の正面1fの表示部4dが光りユーザーに装着の完了を報知する。
【0030】
次に図3を用いて、インクタンク内への導光部材の固定方法を説明する。
インクタンク1は、一方が開口され、内部にインクを収納した可撓性のインク袋(不図示)を備えた凹状の部分を備えて構成される半筺体2と、開口を覆うように構成された蓋体3とが組み合わされてタンク外筺体を構成する。
【0031】
蓋体3には、半筺体2に取り付けられた際に係合して閉蓋状態を維持するための爪3bが複数適宜の間隔で設けられている。
【0032】
インクタンク1の上面1uに設けられたチップ5のLEDの光を上面1uの正面1f側に導くために導光部材4は、上面1uの両端に配されたLEDから表示部4dまで光を効果的導くようにスティック状に構成されている。
【0033】
導光部材4の受光面4bの反対側の端部は、導光した光を表示する表示部4dとなっている。
半筺体2の上面1uと正面1fとの公さ交差部には開口2gが設けられている。
導光部材4は、開口2gから半筐体2内に挿入されて装着される。
このとき、導光部材4の表示部4dは半筺体2の開口2gに対して嵌合した状態となっており、特別に接着や溶着などの手法による固定はしていない。
【0034】
導光部材4には、その途中に突起部4aが設けられている。また、蓋体3には、爪3bとは別に突起部3aが具備されている。後述するようにこれら2つの突起体が互いにかみ合うようなかみ合い形状部として構成されることで導光部材の抜けおちが抑制されることになる。
【0035】
導光部材4を半筐体2に装着後、側面より蓋体3を半筐体2に取り付ける事で、導光部材4と蓋体3との組み付けが完了する。
【0036】
次に図4を用いて、LEDと導光部材の位置関係について説明する。
図4はインクタンク1を蓋体3側からみた側面図であり、図4(a)に示すA−Aより上方の蓋体3および半筐体2をインクタンク幅方向中央まで切り欠いた内部構成説明図である。
【0037】
導光部材4の先端には、チップ5のインクタンク内面側に配されているLED5aに対面した位置にその受光面4bがある。
【0038】
LEDの発した光は、導光部材4の上面から導光部材内に導入される。
導光部材内に導かれた光は、受光面4bによって図中右方向に反射されることで、導光部材4内を伝達して表示部4dに導かれる。
図中、導光部材4に示された一点鎖線はLEDの代表的な光の経路を示している。
【0039】
なお、符号8は、インクタンク1に収納されているインク袋の内部につながっているインク攪拌部材の一端部を示しており、顔料インクの沈降を解消する目的でプリンタの駆動部と係合して動作するように構成されている。
【0040】
次に図5を用いて、本構成の特徴である導光部材と蓋体との係合状態について説明する。
図5(a)はインクタンクを上面1uからみた上面図であり、半筐体2のうち正面1f側の一部を切り欠いた説明図である。また、図5(b)は、その一部を拡大して示す上面図である。
【0041】
導光部材4の突起部4aと蓋体3の突起部3aは、組み立て後の状態で、図に示すように蓋体3の突起部3aが正面1fに近く、導光部材4の突起部4aが蓋体3の突起部3aよりタンク内側に位置するような位置関係で設けられている。言い換えると、導光部材4のタンク外筺体への嵌め込み経路上における導光部材4の突起部4aと蓋体3の突起部3aが、嵌めこみ方向の奥側に導光部材4の突起部4a、手前側に蓋体3の突起部3aがかみ合い形状部として位置している。
【0042】
そして、導光部材4の突起部4aと蓋体3の突起部3aとは距離rだけ離間して互いに一部オーバーラップし、相互にかみ合い状態となるかみ合い形状部となっている。
【0043】
例えば、嵌合した状態の導光部材4は、外的要因などで衝撃を受けて半筐体2の外に外れてしまいそうな状態となっても、導光部材4の突起部4aと蓋体3の突起部3aとが上述の位置関係で構成されていることによって外れることはない。
【0044】
このような構成を採用すると、接着や溶着などの工程を省略でき簡易な製造でありながら外れてしまうように事態も抑制することができ、導光部材4の取り付けの信頼性を確保できる。
【0045】
なお、本実施例では、導光部材と蓋体との係合構成を両方凸状の突起部としてかみ合い形状部を説明したが、この形状に限らず、導光部材の外れ方向の移動が規制できる構造であれば一方が凹形状であってもよい。
【0046】
また、蓋体3に設けられた突起部3aは蓋固定用の爪3bと兼ねる構成にすることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 インクタンク
2 半筺体
3 蓋体
3a 突起部(蓋体)
4 導光部材
4a 突起部(導光部材)
5 チップ
5a LED


【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹状の部分を備えて構成される半筺体と、凹状を覆う蓋体とを組み合わせて構成されるタンク外筺体と、
外筺体の一部に配置された発光部を備えた素子と、
前記素子の発光部の光をタンク外筺体の外に導く導光部材と、
を備えたインクタンクにおいて、
前記タンク外筺体に嵌め込まれた前記導光部材の抜け落ちを規制するように、前記導光部材に対して蓋体がかみ合うように導光部材および蓋体それぞれにかみ合い形状部を有していることを特徴とするインクタンク。
【請求項2】
前記導光部材のタンク外筺体への嵌め込み経路上における前記かみ合い形状部が、嵌めこみ方向の奥側に前記導光部材の、手前側に前記蓋体のかみ合い形状部が位置していることを特徴とする請求項1に記載のインクタンク。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−86361(P2013−86361A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229034(P2011−229034)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】