説明

インクレチンおよびインクレチン模倣ペプチドの持続性送達用経皮システム

本発明は、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの持続送達用の経皮システムおよびその使用方法に関する。特に、本発明は、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドを含む製剤からなる薬剤貯蔵層を備える経皮パッチと共に被験者の皮膚内にマイクロチャネルを生成する装置を備える経皮システムに関する。このシステムは、糖尿病および肥満治療のためのインクレチンおよびインクレチン模倣ペプチド、特にエキセンジン‐4の持続送達に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクレチンおよびインクレチン模倣ペプチドの持続性送達用経皮システムおよびその使用方法に関する。特に、本発明は、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドを含む製剤を収容する薬剤貯蔵層を備えた経皮パッチと共に被験者の皮膚内にマイクロチャネルを生成する装置を備える経皮システムに関する。本システムは、糖尿病および肥満を治療するためのインクレチンおよびインクレチン模倣ペプチド、特にエキセンジン‐4の持続性送達に有用である。
【背景技術】
【0002】
皮膚を介した薬剤送達は多くの利点をもたらす。第一に、かかる送達は薬剤投与の快適で便利な非侵襲性の手法である。経口治療で見受けられる吸収率および代謝率の変動が回避されるとともに、他の固有の不便さ、例えば消化管酵素を経た特定の薬剤の消化管刺激および分解が排除される。経皮薬剤送達は、理論上任意の特定薬剤の血中濃度に関する高度な制御を可能にする。実際には、これらの利点を実現するために解決すべき多くの課題が残されている。
【0003】
皮膚は、構造的に複雑で、比較的厚い障壁である。環境から傷のない皮膚内に移動する分子は、最初に角質層を貫通することになる。次いで、これら分子は活性表皮、乳頭真皮および毛細血管壁を経て血流またはリンパ管に浸透することになる。このように吸収すべき分子は各タイプの組織において異なる浸透抵抗を克服しなければならない。従って、皮膚層間の輸送は複雑な現象である。しかしながら、経皮投与薬剤にとって主な障壁となるのは角質層の細胞である。角質層は、約10〜30ミクロンの厚さで身体の大部分を覆う濃密な高度角化細胞の薄い層である。これら細胞内の高度の角化およびその濃密なパッキングが、薬剤浸透にとって実質的に不透過性の障壁を生み出すと考えられる。多くの薬剤では、皮膚透過率が極めて低く、ポリペプチドやタンパク質のような高分子量薬剤に対し特に問題となる。従って、皮膚透過性を高める手段が傷のない皮膚内への薬剤の輸送を実現するために望まれる。
【0004】
薬剤が皮膚を貫通する速度を高めるために、様々な手法が適応され、その各々が物理的浸透エンハンサーまたは化学的浸透エンハンサーのいずれかの使用を含む。皮膚透過の物理的増進は、例えばイオン導入や電気穿孔法のような電気泳動的技法を含む。物理的浸透エンハンサーとしての超音波の使用(すなわち「超音波導入法」)も研究されている。化学的エンハンサーは、角質層の透過性を高めるために薬剤(場合によっては化学的エンハンサーで皮膚を前処理することもある)と共に投与され、それによって薬剤の皮膚浸透性を高める化合物である。しかしながら、化学的エンハンサーを使用する場合、皮膚の損傷、刺激および感作がしばしば見受けられるので、大きな欠点が存在する。
【0005】
アブラハミの米国特許第6,148,232号には被験者の角質層を切除する装置が記載されている。この装置は、被験者の皮膚の各ポイントに適用される複数の電極を含む。電源は2本以上の電極間に電気エネルギーを印加して、主に各電極の下方にある角質層(SC)の明白な領域の切除を生起し、マイクロチャネルを生成する。切除を角質層に限定するための様々な技法が開示され、電極の隔置および隣接電極間における皮膚の電気抵抗の監視を含む。アブラハミの米国特許第6,597,946号、同第6,611,706号、同第6,708,060号、および同第6,711,435号には、皮膚を介して物質の経皮的通過を容易にするように角質層を切除し、マイクロチャネルを生成する追加的な装置が開示されている。これらの装置は、感覚を減退させ、マイクロチャネル生成中皮膚の下にある角質層の損傷を最小限にすることを目的とする。
【0006】
制御放出を付与しない形での治療薬の投与は、ある時には有毒となり得るかまたは望ましくない副作用をもたらす濃度に達するレベルか、またある時は治療効果に必要なレベルを大きく下回わるレベルの相当な変動をもたらす場合があることが長い間認められてきた。制御放出用の装置および/または方法を使用する一義的な目標は、治療薬の全身レベルにわたるより大きな制御をもたらすことにある。
【0007】
治療薬の制御放出を達成することを企図した様々な戦略が開発されている。これら戦略の1つは制御拡散による放出である。様々な材料を使用して拡散制御の低速放出装置を作製する。これら材料としては、ポリジメチルシロキサン、エチレンビニルアセテートコポリマー、ヒドロキシアルキルメタクリレートのような非分解性ポリマー並びに分解性ポリマー、とりわけポリ乳酸/グリコール酸コポリマーが挙げられる。エチレンビニルアセテートコポリマーから作製した微多孔膜をタンパク質の放出に使用して、高い放出能力を得る。
【0008】
制御放出用の追加的な戦略には化学的徐放が含まれ、これは治療薬を固定する基質からの開裂および/または薬剤を固定するポリマーの生物分解を可能にするために化学的開裂可能な結合を必要とする。このカテゴリはまた、非共有結合によって基質に一時的に結合された薬剤の解離に起因する放出に関する制御された非共有結合解離を含む。この方法は、タンパク質の適切な基質への安定で、恒久的でない付着を付与する多重の非共有結合、イオン結合、疎水結合および/または水素結合を形成することが可能な高分子であるタンパク質またはペプチドの制御放出に特によく適している。
【0009】
米国特許第6,275,728号は、水和性の親水性ポリマーを含む電気輸送薬剤送達装置用薄膜薬剤貯蔵器を提供するもので、該薄膜は水和液に接触するとヒドロゲルを形成することができる。
【0010】
本発明者らの数人による国際特許出願公開第WO2004/039248号には、乾燥医薬組成物の経皮送達システムが開示されている。このシステムは、被験者の皮膚上のある領域にマイクロチャネルを生成する装置と、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含む乾燥医薬組成物からなるプリントパッチとを備える。国際特許出願公開第WO2004/039248号によるマイクロチャネル生成後の血液循環への乾燥ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の経皮送達は、生成したマイクロチャネルから放出される滲出液へのこれらの活性剤の溶解に依存する。この経皮送達は、2〜6時間後をピークとし、パッチ貼付時点から8〜10時間後にベースラインレベルまで低下する。
【0011】
本発明者らの数人による国際特許出願公開第WO2005/056075号には、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の持続性送達システムが開示されている。このシステムは、被験者の皮膚上のある領域に親水性マイクロチャネルを生成する装置と、ポリマー基質を含む薬剤貯蔵層およびペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含む医薬組成物からなるパッチとを備える。国際特許出願公開第WO2005/056075号には更に、このパッチが好ましくは乾燥活性剤を含む乾式の薬剤貯蔵層を備えることが開示されている。国際特許出願公開第WO2005/056075号に係る活性剤の経皮送達は、生成したマイクロチャネルから放出される滲出液への乾燥活性剤の溶解に依存する。従って、パッチ貼付時点から6時間後に活性剤のピーク血漿レベルが現れ、パッチ貼付時点から14時間以内にベースラインレベルまで低下することによって特徴付けられる持続性経皮送達が実現される。国際特許出願公開第WO2004/039428号および同第WO2005/056075号に開示された乾燥活性剤は、まず生成した親水性マイクロチャネルから放出される小容積の滲出液に溶解し、次いで親水性マイクロチャネルを経て血液循環中に拡散し、これにより活性剤のピーク血漿レベルがパッチ貼付時点からある時間を置いて達成される。
【0012】
[エキセンジン]
エキセンジンは、様々なトカゲの唾液分泌物中で発見されるペプチドである。エキセンジン‐4はアメリカドクトカゲ(Heloderma suspectum)の唾液分泌物中に存在し、エキセンジン‐3はメキシコドクトカゲ(Heloderma horridum)の唾液分泌物に存在する(Eng. J., et al, J. Biol. Chem., 265:20259-62, 1990; Eng. J., et al., J. Biol. Chem., 267:7402-05, 1992)。
【0013】
エキセンジンは、哺乳類のグルカゴン様ペプチドファミリーのいくつかのメンバーに対するいくらかの配列類似性を有し、最高の相同性がGLP‐1に対し53%である。
【0014】
GLP‐1と同様に、エキセンジンがインスリン分泌促進作用を有することが分かっているが、グルコース低下効果の持続時間はGLP‐1よりかなり長い。現在、合成エキセンジン‐4が十分な血糖制御が達成されていないチアゾリンジオン単独またはメトホルミンと組合せて用いている2型糖尿病患者への使用に関しFDAによって承認されている。米国特許第6,506,724号には、妊娠糖尿病治療へのエキセンジンおよびエキセンジンアゴニストの使用が開示されている。
【0015】
エキセンジン‐3、エキセンジン‐4およびそれらのアゴニストの他の用途が、米国特許第6,956,026号、同第6,872,700号、同第6,858,576号および同第7,138,375号に開示されている。米国特許第6,956,026号は食物摂取量および食欲を減少させるためのエキセンジンおよびそのアナログの使用;米国特許第6,872,700号はグルカゴン分泌を抑制するためのエキセンジンおよびそのアナログの使用;米国特許第6,858,576号は消化管運動を減少させるためのエキセンジンおよびそのアナログの使用;米国特許第7,138,375号は血漿脂質を低下させるためのエキセンジンおよびそのアナログの使用をそれぞれ開示する。
【0016】
エキセンジンについては静脈内、腹膜内、皮下、筋肉内、経口、局所、経粘膜、肺吸入を含めた様々な投与経路が示唆されている。しかしながら、そのペプチド性質の故に、エキセンジンの投与は現在皮下注射によって実施されている。エキセンジンの徐放性製剤も提案されている。例えば、米国特許第6,858,576号および同第7,138,375号は、経皮注射または経皮送達後長い時間または日数にわたってエキセンジンの治療有効量を血流に送達することができるように、持続性または「デポー(depot)」遅放性製剤を教示する。米国特許第6,924,264号には、循環時間の改善、耐タンパク質分解性の改善、生物利用効率および安定性の改善を企図して、エキセンジンをPEGのような一つ以上のポリマーと結合させた修飾エキセンジンが開示されている。
【0017】
Kim et al. (Diabetes Care, 30: 1487-1493, 2007)は、合成エキセンジン‐4の持効性放出(LAR)製剤を糖尿病患者に週1回皮下投与した効果を開示する。LAR製剤は24時間の血糖制御および体重減少を実現し得るが、不便な皮下注射がなお必要である。
【0018】
国際特許出願公開第WO02/047712号および同第WO03/026591号には、肥満治療、カロリー摂取量の減少、食物摂取量の減少および食欲の減少におけるPYYおよびそのアナログの使用が開示されている。国際特許出願公開第WO03/057235号には、食欲を減少させ、食物摂取量を減少させ、肥満を治療または予防するための、GLP‐1およびそのアナログと組合せたPYYおよびそのアナログの使用が開示されている。
【0019】
これらのペプチドの不便な非経口投与、特に皮下注射の代用となり得るインクレチンおよびインクレチン模倣ペプチドの経皮送達システムおよび方法が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第6,148,232号明細書
【特許文献2】米国特許第6,597,946号明細書
【特許文献3】米国特許第6,611,706号明細書
【特許文献4】米国特許第6,708,060号明細書
【特許文献5】米国特許第6,711,435号明細書
【特許文献6】米国特許第6,275,728号明細書
【特許文献7】国際特許出願公開第WO2004/039248号明細書
【特許文献8】国際特許出願公開第WO2005/056075号明細書
【特許文献9】米国特許第6,506,724号明細書
【特許文献10】米国特許第6,956,026号明細書
【特許文献11】米国特許第6,872,700号明細書
【特許文献12】米国特許第6,858,576号明細書
【特許文献13】米国特許第7,138,375号明細書
【特許文献14】米国特許第6,924,264号明細書
【特許文献15】国際特許出願公開第WO02/047712号明細書
【特許文献16】国際特許出願公開第WO03/026591号明細書
【特許文献17】国際特許出願公開第WO03/057235号明細書
【特許文献18】国際特許出願公開第WO2004/039428号明細書
【特許文献19】国際特許出願公開第WO2005/056075号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2006/0183677号明細書
【特許文献21】国際特許出願公開第WO01/98331号明細書
【特許文献22】国際特許出願公開第WO98/08871号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Eng. J., et al, J. Biol. Chem., 265:20259-62, 1990; Eng. J., et al., J. Biol. Chem., 267:7402-05, 1992
【非特許文献2】Kim et al. (Diabetes Care, 30: 1487-1493, 2007)
【非特許文献3】Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor, 1989
【非特許文献4】Sintov et al., J. Controlled Release 89: 311-320, 2003
【発明の概要】
【0022】
本発明は、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドと、安定剤と、緩衝液と、水溶性増粘剤と、製薬学的に許容し得るキャリアとを含む経皮パッチ製剤を提供するもので、該製剤が粘液の形態である。
【0023】
本発明は更に、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドと、安定剤と、緩衝液と、水溶性増粘剤と、製薬学的に許容し得るキャリアとを含む製剤からなる薬剤貯蔵隔室を備える経皮パッチを提供するもので、該製剤が粘液の形態である。
【0024】
本発明は更に、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの経皮送達を容易にするシステムを提供するもので、該システムは被験者の皮膚のある領域に親水性のマイクロチャネルを生成する装置と、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチド、安定剤、緩衝液、水溶性増粘剤および製薬学的に許容し得るキャリアを含む製剤からなる薬剤貯蔵隔室を備える経皮パッチとを備え、該製剤が粘液の形態である。
【0025】
本発明は更に、食物摂取量および/または食欲を減少させるため、胃運動および/または胃内容排出を減少させるため、糖尿病を有する被験者の血中グルコースレベルを低下させるため、および必要とする被験者の血漿グルカゴンレベルを低下させるための前記システムの使用を提供する。
【0026】
ここで初めて開示する経皮パッチは、エキセンジンと、安定剤と、緩衝液と、製剤の約0.5%〜約3.5%(w/w)の量の増粘剤としての水溶性エーテル化セルロース誘導体と、水とを含む製剤からなる薬剤貯蔵隔室を備え、かかるパッチをマイクロチャネルを生成した皮膚の領域に貼付したときに、短い期間、通常30分〜4時間以内にエキセンジンの治療有効血漿レベルを達成することが可能となる。本発明の装置によって生成したマイクロチャネルは、所定期間の間開口するものと認められる。従って、エキセンジンが経皮パッチの薬剤貯蔵層から放出され、マイクロチャネルが開口している期間の間にマイクロチャネルを通って皮膚内に拡散するのを可能にするために、エキセンジン製剤は粘液を発生させる量の水溶性増粘剤を含まなければならない。ここで開示する増粘剤の量は製剤の3.5%(w/w)を超えないものである。
【0027】
本発明は、非架橋水溶性増粘剤が架橋増粘剤よりもエキセンジンのより速い拡散をもたらすので好ましいという発見に部分的に基づくものである。非架橋水溶性増粘剤の中でも水溶性エーテル化セルロース誘導体が好ましいことを見出し、とりわけ製剤のより高いpH安定性および経皮パッチから血液循環へのエキセンジンのより高い拡散速度を付与するのでヒドロキシエチルセルロース(HEC)が非常に好ましいことを見出した。
【0028】
更に、本発明の経皮パッチをマイクロチャネルが存在する皮膚の領域に貼付すると、エキセンジンの皮下注射によって達成される期間よりも遥かに長い長期間にわたってエキセンジンの治療血漿レベルを達成することが可能となることを開示する。その後、エキセンジンの血漿レベルは短い期間、典型的には2〜4時間以内にベースラインレベルに戻る。
【0029】
本発明をエクセナチド、すなわち合成エキセンジン‐4により例証する。しかしながら、エキセンジン‐3、GLP‐1、PYY、膵臓ペプチド(PP)、アミリン、プラムリンチドおよびそれらのアナログまたはフラグメントのようなあらゆるインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドも本発明の範囲内である。本発明は、マイクロチャネルを生成する装置で治療した動物にエクセナチドを経皮送達することにより、その食物摂取量が減少したことを開示する。エクセナチドで経皮治療した動物の食物摂取量の減少は有意であり、エクセナチドを皮下注射した動物において観察された期間よりも長い期間に及んだ。更に、エクセナチドの経皮送達は、エクセナチドを皮下注入したときに現れる嘔気および/または嘔吐のような副作用を解消した。本発明は更に、エクセナチドの経皮送達がペプチドの治療血漿レベルを達成するまでの日数または数週間若しくはベースラインレベルに戻るまでの日数または数週間を必要としないことから、エクセナチドの経皮送達が持効性放出(LAR)エキセンジン‐4製剤の皮下注射よりも好ましいことを開示する。
【0030】
一態様によれば、本発明は、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドと、安定剤と、緩衝液と、水溶性増粘剤と、製薬学的に許容し得るキャリアとを含む経皮パッチ製剤を提供するもので、該製剤が粘液の形態である。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドがエキセンジン、GLP‐1、ペプチドYY(PYY)、膵臓ポリペプチド(PP)、アミリン、プラムリンチド、およびそれらのアナログ、フラグメント、誘導体または結合体からなる群から選択される。追加的な実施形態によれば、エキセンジンが配列番号:1に記載のエキセンジン‐4、配列番号:2に記載のエキセンジン‐3およびそれらのアナログまたはフラグメント、例えば配列番号:3−8のペプチドからなる群から選択される。特定の実施形態によれば、エキセンジンは配列番号:1に記載のエキセンジン‐4である。追加的な実施形態によれば、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドは配列番号:9−15からなる群から選択される。更なる実施形態によれば、インクレチンまたはエクセナチドのようなインクレチン模倣ペプチドは、製剤中に該製剤1g当たり約1mg〜約50mg、好ましくは約2mg〜約10mr、より好ましくは約2mg〜約5mgの量で存在する。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、安定剤は単一炭水化物または複合炭水化物である。更なる実施形態によれば、単一または複合炭水化物がトレハロース、マンノース、グルコース、ガラクトース、ラフィノース、セロビオース、ゲンチオビオース、スクロースおよびそれらの組合せからなる群から選択される。特定の実施形態によれば、安定剤はトレハロースである。追加的な実施形態によれば、インクレチン模倣ペプチドはエクセナチドであり、エクセナチドおよびトレハロースが製剤中に約1:1(w:w)〜約1:20(w:w)の比率、好ましくは約1:2(w:w)〜約1:10(w:w)の比率、より好ましくは約1:5(w:w)の比率で存在する。
【0033】
更なる実施形態によれば、緩衝液が酢酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、グルタミン酸塩緩衝液およびリン酸塩緩衝液からなる群から選択される。特定の実施形態によれば、緩衝液は酢酸塩緩衝液である。また他の実施形態によれば、緩衝液が製剤のpHを約2.0〜約8.0の範囲、好ましくは約3.0〜約6.0の範囲、より好ましくは約4.9〜約5.5の範囲に維持する。更なる実施形態によれば、緩衝液の濃度が約10mM〜約30mMの範囲である。特定の実施形態によれば、緩衝液は約20mMの濃度の酢酸塩緩衝液である。
【0034】
また他の実施形態によれば、水溶性増粘剤は水溶性エーテル化セルロース誘導体である。更に他の実施形態によれば、水溶性エーテル化セルロース誘導体がヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロースおよびアルキルヒドロキシアルキルセルロース、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等からなる群から選択される。特定の実施形態によれば、水溶性エーテル化セルロース誘導体はヒドロキシエチルセルロースである。いくつかの実施形態によれば、製剤がヒドロキシエチルセルロースのような水溶性エーテル化セルロース誘導体を該製剤の約0.5%(w/w)〜約3.5%(w/w)、好ましくは約1%(w/w)〜約3%(w/w)、より好ましくは約1%〜約2%(w/w)の量で含む。特定の実施形態によれば、ヒドロキシエチルセルロースが製剤の約1.5 %(w/w)の量で製剤中に存在する。
【0035】
更に他の実施形態によれば、粘液が約10000センチポアズ(cps)まで、または約5000cpsまで、更にまたは約4000cps、3000cps、2000cpsまで、または約1000cpsまでの粘度を有する。特定の実施形態によれば、粘液が約300cps〜約900cpsの粘度を有する。
【0036】
例示的な実施形態によれば、製剤が該製剤1g当たり約2mg〜約5mgの量の配列番号:1に記載のエクセナチドと、約4.9〜約5.5のpHで濃度約20mMの酢酸塩緩衝液と、エクセナチドとトレハロースとの比が約1:5(w/w)〜1:10となるトレハロースと、製剤の約1.5%(w/w)〜2.5%(w/w)の量のヒドロキシエチルセルロースと、水とを含む。
【0037】
追加的な実施形態によれば、製剤が防腐剤、酸化防止剤、プロテアーゼ阻害剤からなる群から選択される作用物質を更に含むことができる。製剤中の防腐剤の量は、該製剤1g当たり約1.1mg〜約4.4mgとすることができる。特定の実施形態によれば、製剤は、防腐剤としてm‐クレゾールを約2.2mg/g製剤の量で含む。
【0038】
別の態様によれば、本発明は、本発明の原理による経皮パッチ製剤を含む薬剤貯蔵隔室からなるインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの経皮送達用のパッチを提供する。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、パッチが更にバッキング層、接着剤、速度制御層、非速度制御層および剥離ライナのうちの少なくとも1つを備える。
【0040】
本発明に係るパッチは、その使用前にペプチドの安定で、随意選択の微生物学的に制御された無菌または滅菌保管に適する任意の適切な幾何形状とすることができることを理解されたい。
【0041】
別の態様によれば、本発明は、被験者の皮膚を介してインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの経皮送達を容易にするシステムを提供するもので、(i)被験者の皮膚のある領域に複数のマイクロチャネルを生成することができる装置と、(ii)本発明の原理によるインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの経皮送達用のパッチとを備える。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、当該装置は、
a.複数の電極を備える電極カートリッジと、
b.電極が皮膚の近傍にあるときに2つ以上の電極間に電気エネルギーを印加し、該電極下方の領域で角質層の切除を可能にすることにより複数のマイクロチャネルを生成するのに適合する制御ユニットを備えたメインユニットとを備える。
【0043】
追加な実施形態によれば、この装置の制御ユニットは、電流流れまたはスパーク発生、従って生成したマイクロチャネルの幅、深さおよび形状を制御するように電極に送達された電気エネルギーの大きさ、周波数および/または継続時間を制御する回路を備える。電気エネルギーが無線周波数であるのが好ましい。
【0044】
更なる実施形態によれば、電極カートリッジが均一な形状および寸法を有するマイクロチャネルを生成するように構成される。電極カートリッジは着脱可能であることが好ましい。より好ましくは、電極カートリッジが1回使用後に廃棄され、従ってメインユニットへの容易な装着、その後のメインユニットからの脱着ができるように設計される。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、マイクロチャネルが約75マイクロチャネル/cm〜約450マイクロチャネル/cmの密度で生成される。好ましくは、マイクロチャネルが約150マイクロチャネル/cm〜約300マイクロチャネル/cmの密度で生成される。
【0046】
更に他の実施形態によれば、本発明のシステムによって送達すべきインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドがエキセンジン、GLP‐1、ペプチドYY(PYY)、膵臓ポリペプチド(PP)、並びにそれらのアナログ、フラグメント、誘導体および結合体からなる群から選択される。追加的な実施形態によれば、エキセンジンが配列番号:1に記載のエキセンジン‐4、配列番号:2に記載のエキセンジン‐3、およびそのアナログまたはフラグメントからなる群から選択される。特定の実施形態によれば、エキセンジンは配列番号:1に記載のエキセンジン‐4である。
【0047】
別の態様によれば、本発明は、糖尿病を有する被験者の血中グルコースレベルを減少させる方法を提供するもので、(a)被験者の皮膚のある領域に複数のマイクロチャネルを生成するステップと、(b)本発明の原理による経皮パッチ製剤を含む薬剤貯蔵隔室からなるパッチを複数のマイクロチャネルが存在する被験者の皮膚の領域に貼付し、被験者の血中グルコースレベルを減少させるステップとを備える。
【0048】
更なる態様によれば、本発明は、かかる治療を必要とする被験者の血漿グルカゴンを低下させる方法を提供するもので、(a)前記被験者の皮膚のある領域に複数のマイクロチャネルを生成するステップと、(b)本発明の原理による経皮パッチ製剤を含む薬剤貯蔵隔室からなるパッチを複数のマイクロチャネルが存在する被験者の皮膚の領域に貼付し、前記被験者の血漿グルカゴンを低下させるステップとを備える。
【0049】
また別の態様によれば、本発明は、かかる治療を必要とする被験者の食物摂取量を減少させる方法を提供するもので、(a)前記被験者の皮膚のある領域に複数のマイクロチャネルを生成するステップと、(b)本発明の原理による経皮パッチ製剤を含む薬剤貯蔵隔室からなるパッチを複数のマイクロチャネルが存在する被験者の皮膚の領域に貼付し、前記被験者の食物摂取量を減少させるステップとを備える。
【0050】
また他の態様によれば、本発明は、かかる治療を必要とする被験者の胃運動を減少させる方法を提供するもので、(a)前記被験者の皮膚のある領域に複数のマイクロチャネルを生成するステップと、(b)本発明の原理による経皮パッチ製剤を含む薬剤貯蔵隔室からなるパッチを複数のマイクロチャネルが存在する被験者の皮膚の領域に貼付し、前記被験者の胃運動を減少させるステップとを備える。
【0051】
更に他の態様によれば、本発明は、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの持続経皮送達用の方法を提供するもので、
(a)被験者の皮膚のある領域に複数のマイクロチャネルを生成するステップと、
(b)本発明の原理による経皮パッチ製剤を含む薬剤貯蔵隔室からなるパッチを複数のマイクロチャネルが存在する皮膚の領域に貼付するステップと、
(c)インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの治療血漿濃度を長期間にわたって達成するステップとを備える。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、被験者の皮膚にマイクロチャネルを生成するステップが上述した装置によって行われる。
【0053】
追加的な実施形態によれば、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドがエキセンジン、GLP‐1、PYY、PP、アミリン、プラムリンチドおよびそれらのアナログ、フラグメントまたは結合体からなる群から選択される。特定の実施形態によれば、エキセンジンが配列番号:1に記載のエキセンジン‐4である。
【0054】
他の実施形態によれば、水溶性増粘剤がヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロースおよびアルキルヒドロキシアルキルセルロース、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等からなる群から選択される水溶性エーテル化セルロース誘導体である。特定の実施形態によれば、水溶性エーテル化セルロース誘導体がヒドロキシエチルセルロースである。
【0055】
いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用すべきインクレチンまたはインクレチン模倣の製剤がエクセナチドと、安定剤としてエクセナチドとトレハロースの比が約1:5(w/w)〜約1:10(w/w)となるトレハロースと、製剤のpHを約4.9〜5.5の範囲に維持する酢酸塩緩衝液と、製剤の約1.5%(w/w)〜約2.5%(w/w)の量のヒドロキシエチルセルロースと、水とを含む。
【0056】
更なる実施形態によれば、本発明の方法で使用すべき製剤は更に、本発明の原理による防腐剤、プロテアーゼ阻害剤、酸化防止剤からなる群から選択される。
【0057】
更に他の実施形態によれば、パッチ貼付が、前記インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの皮下注射によって達成される期間より少なくとも約20%長い期間にわたるインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの治療血漿濃度を達成する。好ましくは、パッチ貼付は、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの皮下注射によって達成される期間より少なくとも約50%、100%、または少なくとも約200%長い期間にわたるインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの治療血漿濃度を達成し、その後インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの血漿濃度はベースラインレベル、すなわちパッチ貼付前に決定されたレベルに戻る。パッチを通常インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの持続送達を得るようにするために、被験者の皮膚の領域に所定の期間、好ましくは少なくとも6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間またはそれより長い時間貼付することを理解されたい。特定の実施形態によれば、パッチを被験者の皮膚の領域に16時間貼付する。従って、皮下投与が約6〜10時間のエクセナチドの治療血漿濃度を達成する一方、本発明の原理によるエクセナチドの経皮送達は、少なくとも約7時間〜少なくとも約20時間の治療血漿濃度を達成する。
【0058】
本発明のインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの持続性経皮送達方法は、食欲の減少および/またはかかる治療を必要とする被験者の血漿脂質を低下させるのに有用である。
【0059】
本発明の方法は、短い期間、通常30分〜4時間以内のインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの治療血漿濃度を達成することを理解されたい。
【0060】
他の態様によれば、本発明は、(i)被験者の皮膚上のある領域に複数のマイクロチャネルを生成することができる装置と、(ii)本発明の原理による経皮パッチ製剤を含む薬剤貯蔵隔室からなるパッチとを備えるシステムの、かかる治療を必要とする被験者にインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドを経皮送達するための使用を提供する。従って、本発明のシステムは、糖尿病を有する被験者の血中グルコースレベルを減少させるために、血漿グルカゴンを低下させるために、食物摂取量を減少させるために、胃運動を低下させるために、および/またはかかる治療を必要とする被験者の血漿脂質を低下させるために有用である。
【0061】
好ましい諸実施形態に関する以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読めば、本発明のより十分な理解が得られるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】エクセナチドと、水溶性増粘剤、例えばヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはアルギン酸塩とを含む製剤からのエキセンジン‐4の生体外拡散を示す図である。拡散は静的拡散細胞モデルで画定した。
【図2】エクセナチドおよび水溶性エーテル化セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース(HEC)またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含む製剤からのエキセンジン‐4の生体外拡散を示す図である。拡散は静的拡散細胞モデルで画定した。
【図3】マイクロチャネルが生成されるようにViaDerm(商標)で治療した後、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を有するエクセナチド製剤を含むパッチを治療皮膚に貼付したブタのエキセンジン‐4血漿レベルを示す図である。
【図4】ViaDerm(商標)で治療した後、1%または2.5%のヒドロキシエチルセルロース(HEC)で製剤化した60μgまたは200μgのエキセンジン‐4を含むパッチを治療皮膚に貼付したラットのエキセンジン‐4血清レベルを示す図である。対照ラットには1μgのエクセナチドを皮下注射した。
【図5】ViaDerm(商標)で治療した後、1%のヒドロキシエチルセルロース(HEC)を有する溶液中で製剤化またはゲルとして製剤化した1mgのエキセンジン‐4を含むパッチを治療皮膚に貼付したブタのエキセンジン‐4血漿レベルを示す図である。対照ブタには10μgのエキセンジン‐4を皮下注射した。
【図6】マイクロチャネルが150マイクロチャネル(MC)/cmまたは300MC/cmの密度で生成されるようにViaDerm(商標)で治療した後、1%のヒドロキシエチルセルロースで製剤化した0.5mgまたは1mgのエキセンジン‐4を含むパッチを治療皮膚に貼付したブタのエキセンジン‐4血漿レベルを示す図である。対照ブタには5μgのエクセナチドを皮下注射、またはエキセンジン‐4(5μg、10時間)の浸透圧ミニポンプで治療した。
【図7】マイクロチャネルが150マイクロチャネル/cmの密度で生成されるようにViaDerm(商標)で治療した後、1.5%のヒドロキシエチルセルロースで製剤化した0.5mgまたは1mgのエクセナチドを含むパッチを治療皮膚に貼付したブタのエキセンジン‐4血漿レベルを示す図である。対照ブタには10μgエクセナチドを皮下注射した。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明は、マイクロチャネルを生成した治療皮膚にインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドを送達するシステムおよび方法を提供する。
【0064】
ここで開示するインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドと、安定剤と、緩衝液と、水溶性非架橋増粘剤と、製薬学的に許容し得るキャリアとを含む製剤からなり、該製剤がマイクロチャネルを生成する装置によって前処理した皮膚のある領域に配置した際に好ましくは約10000cpsまでの粘度を有する粘液の形態である薬剤貯蔵隔室を備えるパッチは、パッチ貼付時点から短い期間、典型的には0.5時間〜4時間以内でインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの治療血漿濃度を達成することを可能にし、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの持続性送達を本質的に安定な血漿レベルで達成することを可能にし、ベースラインレベルへの急速な低下を達成することを可能にする。これらの特徴は、国際特許出願公開第WO2004/039428号に開示される乾燥または凍結乾燥させた組成物を含むプリントパッチのような当業界で既知のパッチや、国際特許出願公開第WO2005/056075号に開示される乾燥形態の活性剤および親水性ポリマーを含む乾燥薬剤貯蔵層からなるパッチでは得られない。従って、本発明は、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの持続性経皮送達用の非常に効率的なシステムおよび方法を提供する。
【0065】
このように、本発明は、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチド、安定剤、緩衝液、水溶性増粘剤および製薬学的に許容し得るキャリアを含み、粘液の形態の経皮パッチ製剤を提供する。
【0066】
本発明は更に、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドと、安定剤と、緩衝液と、水溶性増粘剤と、製薬学的に許容し得るキャリアとを含む製剤からなる薬剤貯蔵隔室を備えるインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの経皮送達用のパッチを提供する。
【0067】
本発明は更に、被験者の皮膚を介してインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの経皮送達を容易にするためのシステムを提供するもので、(i)被験者の皮膚上のある領域に複数のマイクロチャネルを生成することができる装置と、(ii)インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチド、安定剤、緩衝液、水溶性増粘剤および製薬学的に許容し得るキャリアを含む製剤からなる薬剤貯蔵隔室を備えるパッチとを備える。
【0068】
本明細書および添付の特許請求の範囲の文脈で用いる「マイクロチャネル」という用語は、一般に皮膚の表面から角質層の全体または大部分を通って延在し、分子が拡散し得る表皮または真皮に達し得る親水性経路を指す。マイクロチャネルが角質層に生成された後に、装置を皮膚から除去し、その後皮膚上に配置されたパッチから活性剤が体循環に拡散することを理解されたい。
【0069】
実際はマイクロチャネルが水性であるため、本発明のシステムは、角質層の切除によってもたらされる新しい皮膚環境を通じた親水性ペプチドの送達に非常に適している。
【0070】
本発明で使用可能なインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドは、天然のインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチド、または修飾した天然インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドとすることができる。ペプチドは、固相ペプチド合成のようなペプチド合成の標準的な技術を使用して化学的に合成するか、または当業界で既知のDNA技法(Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor, 1989参照)を用いて調製することもできる。このようにして生産したペプチドは、天然ペプチドと同一であることも同一でないこともある。天然インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドのアナログ、フラグメントおよび結合体は、それらが天然インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの生物学的活性のうちの一つ以上を保持する限り本発明の範囲に含まれる。
【0071】
本発明は、配列番号:1に記載のアミノ酸配列:His Gly Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Leu Ser Lys Gln Met Glu Glu Glu Ala Val Arg Leu Phe Ile Glu Trp Leu Lys Asn Gly Gly Pro Ser Ser Gly Ala Pro Pro Pro Ser-NH2のエキセンジン‐4、配列番号:2に記載のアミノ酸配列:His Ser Asp Gly Thr Phe Thr Ser Asp Leu Ser Lys Gln Met Glu Glu Glu Ala Val Arg Leu Phe Ile Glu Trp Leu Lys Asn Gly Gly Pro Ser Ser Gly Ala Pro Pro Pro Ser-NH2のエキセンジン‐3、並びに当業界で周知のそれらのアナログ、フラグメントおよび結合体を含み、但しこれらアナログ、フラグメントおよび結合体がそれだけに限らないが、糖尿病を有する被験者の血漿グルコースを低下させること、胃内容排出を遅らせること、食物摂取量を減少させること、食欲を減少させること、および血漿グルカゴン濃度を減少させることを含めた天然エキセンジン‐4の生物学的活性のうちの一つ以上を保持することを条件とする。エキセンジンアナログ、フラグメントまたはそれらの結合体によって発揮される生物学的活性は、天然エキセンジン‐4によって得られるものと同等またはそれより以上とすべきである。合成的に生産されたエキセンジン‐4はエクセナチドとして知られていることを理解されたい。従って、エキセンジン‐4およびエクセナチドは同じアミノ酸配列を有し、本明細書および特許請求の範囲の全体を通じて相互に置き換え可能に使用する。
【0072】
エキセンジンアナログの例としては以下が挙げられる:
配列番号:3に記載のアミノ酸配列:His Gly Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Leu Ser Lys Gln Met Glu Glu Glu Ala Val Arg Leu Phe Ile Glu Trp Leu Lys Asn Gly Glyのエキセンジン‐4(1‐30)、
配列番号:4に記載のアミノ酸配列:His Gly Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Leu Ser Lys Gln Met Glu Glu Glu Ala Val Arg Leu Phe Ile Glu Trp Leu Lys Asn Gly GIy-NH2のエキセンジン‐4(1‐30)アミド、
配列番号:5に記載のアミノ酸配列:His Gly Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Leu Ser Lys Gln Met Glu Glu Glu Ala Val Arg Leu Phe Ile Glu Trp Leu Lys Asn-NH2のエキセンジン‐4(1‐28)アミド、
配列番号:6に記載のアミノ酸配列:His Gly Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Leu Ser Lys Gln Leu Glu Glu Glu Ala Val Arg Leu Phe Ile Glu Phe Leu Lys Asn Gly Gly Pro Ser Ser Gly Ala Pro Pro Pro Ser-NH214Leu, 25Pheエキセンジン‐4、
配列番号:7に記載のアミノ酸配列:His Gly Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Leu Ser Lys Gln Leu Glu Glu Glu Ala Val Arg Leu Phe Ile Glu Phe Leu Lys Asn-NH214Leu, 25Pheエキセンジン‐4(1‐28)アミド、
配列番号:8に記載のアミノ酸配列:His Gly Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Leu Ser Lys Gln Leu Glu Glu Glu Ala Val Arg Leu Ala Ile Glu Phe Leu Lys Asn-NH214Leu, 22AIa, 25Pheエキセンジン‐4(1‐28)アミド。
【0073】
本発明に包含される追加のエキセンジンアナログは、例えば米国特許出願公開第2006/0183677号およびその中の引用文献に開示されたアナログを含む。
【0074】
インクレチンは、食後に血中グルコースレベルが上昇する前であってもランゲルハンス島のベータ細胞からのインスリン放出を増加させる消化管ホルモンに属する。インクレチンはまた、胃内容排出を減少させることにより血流への栄養分の吸収速度を低下させ、食物摂取量を減少させることができる。インクレチンは、ランゲルハンス島のアルファ細胞からのグルカゴン放出を妨げる。これらの活性を発揮するインクレチンの2つの主なメンバーは、グルカゴン様ペプチド‐1(GLP‐1)および胃抑制ペプチド(GIP)である。GLP‐1およびGIPは共に、酵素ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP‐4)によって急速に不活性化される。従って、本発明はインクレチンおよびインクレチン模倣ペプチドを含む。
【0075】
従って、配列番号:9に記載のアミノ酸配列:His Asp Glu Phe Glu Arg His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg-NH2のグルカゴン様ペプチド1(GLP‐1)、配列番号:10に記載のGIP、および当業界で既知のそれらのアナログが本発明の範囲に含まれる(例えば、参照によりそれらの内容全体を本明細書に援用する国際特許出願公開第WO01/98331号および同第WO98/08871号参照)。従って、エキセンジンはGLP‐1に対する相同性およびそれらの生物学的活性によりインクレチン模倣ペプチドとして定義される。
【0076】
本発明は更に、配列番号:11に記載のペプチドYY(PYY)およびそのフラグメントまたはアナログ、特に配列番号:12に記載のPYY(3‐36)、配列番号:13に記載の膵臓ペプチド(PP)、配列番号:14に記載のアミリン、配列番号:15に記載のプラムリンチド、および当業界で既知のそれらのフラグメントまたはアナログ(例えば、参照によりそれらの内容全体を本明細書に援用する国際特許出願公開第WO02/047712号、同第WO03/026591号および同第WO03/057235号参照)を含む胃腸のペプチド類を包含する。インスリンおよびインスリン成長因子は本発明の範囲から除外されることを理解されたい。
【0077】
ここで用いる「アナログ」という用語は、天然インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドのアミノ酸置換、付加、削除または化学的修飾によって変異された配列を含むペプチドを指す。「アミノ酸置換」を使用した場合は、機能的に等価なアミノ酸残基が配列内の残基と置換されてサイレントな変化が生じることを意味する。例えば、配列内の一つ以上のアミノ酸残基を機能的等価物として作用する類似の極性の別のアミノ酸によって置換して、サイレントな変異をもたらすことができる。配列内のアミノ酸の置換体は、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択され得る。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸はアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンを含む。極性中性のアミノ酸はセリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンを含む。正に荷電した(塩基性)アミノ酸はアルギニン、リジンおよびヒスチジンを含む。負に荷電した(酸性)アミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。このような置換は保守的置換として知られている。更に、非保守的置換を、ペプチドの生物学的活性に寄与しないアミノ酸において行うことができる。また、遊離アミノ基を誘導体化してアミン塩酸塩を形成したペプチドアナログ、p‐トルエンスルホニルアミノ基、カルボベンゾキシアミノ基、t‐ブチルオキシカルボニルアミノ基、クロロアセチルアミノ基またはホルミルアミノ基も含まれる。本発明によれば、ペプチドは遊離カルボキシル基を有することができるか、または遊離カルボキシル基を誘導体化して、例えばアミド類、塩類、メチルおよびエチルエステル類、または他のタイプのエステル類若しくはヒドラジド類を形成することができる。
【0078】
本発明は、天然インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの生物学的活性のうちの少なくとも1つを保持する限り、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドのフラグメントおよびこれらのペプチドの結合体を包含する。
【0079】
ここで用いる「フラグメント」という用語は、天然インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの生物学的活性の少なくとも1つを保持するペプチドまたはペプチドアナログの一部分を指す。
【0080】
本発明の範囲内には、アミノ若しくはカルボキシ末端若しくは側鎖の一つでペプチド結合を経て異なるタンパク質のアミノ酸配列と結合した本発明のペプチド、そのアナログまたはフラグメントを含むペプチド結合体が含まれる。それに加えてまたはその代わりに、本発明のペプチド、そのアナログまたはフラグメントは、例えば脂肪酸、糖部分のような別の部分、または膜若しくは細胞浸透を容易にするあらゆる既知の部分と結合させることができる。
【0081】
本発明によれば、パッチが製剤を保管する少なくとも一つの薬剤貯蔵隔室または層を備える。本発明に係る製剤は、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドと、増粘剤としての水溶性エーテル化セルロース誘導体とを含む。
【0082】
増粘剤を通常液体製剤に添加して、生成する製剤の粘度を増大させる。増大した粘度を有する製剤は、制御放出および/または流出の回避が重要となる局所適用に有益である。本発明の原理による増粘剤は、製剤の粘度を約1,000センチポアズ(cps)まで、または最大約2,000cps、3,000cps、4,000cps、5,000cps、6,000cps、7,000cps、8,000cps、9,000cps、或いは最大約10,000cpsまで上げる必要がある。本発明の増粘剤は製剤の粘度を約1,000cpsまで上げるのが好ましい。粘度は回転スピンドル粘度計を使用して測定する。従って、本発明の製剤は粘液の形態である。水溶性増粘剤の濃度を増加させると、本発明の範囲から除外される固体状の製剤が得られる。
【0083】
本発明の原理に従って使用すべき増粘剤は、親水性バイオポリマーおよび親水性合成ポリマーからなる群から選択される水溶性増粘剤である。親水性バイオポリマーの中では、水溶性エーテル化セルロース誘導体のような水溶性セルロース誘導体が好ましい。ここで用いる「水溶性」エーテル化セルロース誘導体という用語は、典型的には室温で1g/ml〜1g/30mlの水への可溶性を有するセルロース誘導体を指す。エーテル化セルロースの例は当業界で既知(米国特許で列挙したように)であり、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびアルキルヒドロキシアルキルセルロース、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が含まれる。
【0084】
水溶性エーテル化セルロース誘導体は架橋されていない故に、これら誘導体は、粘度が製剤の流出を防止するのに十分で、パッチからマイクロチャネル内へのインクレチンの拡散を可能にする粘液の形態でインクレチン製剤を提供するので非常に好ましいことを理解されたい。
【0085】
パッチは一つ以上の薬剤貯蔵隔室または層を備えることができる。本発明によれば、粘液の形態の薬剤が隔室または層に収容される。従って、「薬剤貯蔵隔室」および「薬剤貯蔵層」という用語は、本明細書および特許請求の範囲の全体にわたって相互に置き換え可能に使用され、薬剤製剤を含むまたは保持するパッチの積層構造の部分を指す。典型的には、薬剤貯蔵隔室または層の数は所望の放出特性によって決定される。異なる隔室または層における活性剤の濃度は変更することができ、異なる隔室または層の厚さは必ずしも同じである必要はない。加えて、薬剤貯蔵隔室または層は、所望の治療効果を達成するように一つ以上の活性剤を含むまたは保持することができる。
【0086】
一般に、本発明の薬剤貯蔵隔室または層は、薄く、柔軟で、体皮膚との密接な接触をもたらすのに適しており、ペプチドの治療上有効な経皮フラックスを達成するのに十分な速度でインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドを貯蔵室から放出することができる。薬剤貯蔵隔室に使用すべき材料は、ポリウレタン類、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、シリコーン、エチレンメタクリレートコポリマー、エチレンビニルアセテートコポリマー、エチレンビニルメチルアセテートコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(「テフロン(登録商標)」)、ポリカーボネート、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリカーボネート、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリスルホン等である。
【0087】
本発明によれば、パッチは通常微多孔質膜である一つ以上の速度制御層または非速度制御層を備えることができる。速度制御層または非速度制御層は、バイオポリマーおよび/または合成ポリマーを含む。速度制御層または非速度制御層は活性剤を含まない。速度制御層または非速度制御層の形成に有用な代表的な材料としては、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリアミド類、ポリエステル類、エチレンメタクリレートコポリマー、エチレンビニルアセテートコポリマー、エチレンビニルメチルアセテートコポリマー、エチレンビニルエチルアセテートコポリマー、エチレンビニルプロピルアセテートコポリマー、ポリイソプレン、ポリアクリロニトリル、エチレンプロピレンコポリマー、酢酸セルロースおよび硝酸セルロース、ポリテトラフルオロエチレン(「テフロン(登録商標)」)、ポリカーボネート、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリスルホン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
これらの様々な層は当業界で既知の任意の方法によって互いに接触する。かかる方法の一つは、複数の層を互いに隣接して配置し、かかる層の外側に圧力を加えてこれら層を一緒に強制的に結合させることである。別の方法は、複数の層を一緒に合わせる前に、水のような溶媒と接触すべき各層の表面を被覆することである。このようにして、各表面の薄い部分が可溶および/または膨張し、それによって接触時の接着をもたらす。別の方法は、一つ以上の接触表面に対し既知の接着剤を使用することである。接着剤は薬剤貯蔵層からの活性剤の送達に干渉しないものであることが好ましい。
【0089】
本発明によれば、パッチを用いて、一つ以上の薬剤貯蔵隔室または層内に存在するインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドを投与する。薬剤貯蔵層自体が接着性を有するか、またはパッチが薬剤貯蔵層に付着した接着剤層を更に備えることができる。パッチは更にバッキング層を備えることができる。
【0090】
一般に、バッキング層は経皮パッチの主要な構造要素として機能し、柔軟性、好ましくは密封性を付与する。バッキング層に用いる材料は不活性で、また薬剤貯蔵層内に収容された活性剤または製剤のいかなる成分も吸収できないものである必要がある。バッキング層は、パッチ上面の透過による活性剤の損失を防止する保護カバーとして働く可撓性および/または弾性の材料を含むのが好ましく、パッチで覆われた体表の領域が使用中に水和されるような程度の密封性をパッチに与えるのが好ましい。バッキング層はまた、薬剤貯蔵層の脱水を防止する。バッキング層に用いる材料は、パッチが皮膚の輪郭を辿るとともに、皮膚とパッチの可撓性または弾性の差によりパッチが皮膚から係脱する可能性が殆どないまたはまったくない機械的歪みに通常曝される関節や他の屈曲点のような皮膚の領域上におけるパッチの快適な装着を可能にする材料である必要がある。バッキング層に有用な材料の例は、ポリエステル類、単層または共押出多層を含むポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニリデン/塩化ビニルコポリマー、エチレン/ビニルアセテートコポリマー、ポリウレタン類、ポリエーテルアミド等である。閉鎖的なバッキング層を接着剤層により覆ってパッチの皮膚への付着を可能にすることができる。
【0091】
保管中および使用前に、パッチは剥離ライナを含むことができる。使用の直前に、パッチを皮膚に貼付し得るようにこの層を除去する。剥離ライナは薬剤不浸透性材料で作製する必要があり、単にパッチを適用前に保護するのに役立つ使い捨て要素である。
【0092】
本発明の原理によれば、製剤は製薬学的に許容し得るキャリアを含む。
【0093】
「製薬学的に許容し得る」という用語は、連邦政府または州政府の規制当局の承認を得ていること、または米国薬局方、若しくは動物、より具体的には人間に使用するものとして一般に認識されている他の薬局方に列挙されていることを指す。「キャリア」という用語は、希釈剤、賦形剤、または治療薬と共に投与されるベヒクルを指す。キャリアは、製剤に添加して適当な稠度または形状を製剤に付与する際に多かれ少なかれ不活性となる物質である。
【0094】
ここで用いる「製薬学的に許容し得るキャリア」という用語は、水溶液または懸濁液である。水性キャリアの例としては、水、緩衝生理食塩媒質、アルコール/水溶液または懸濁液が挙げられる。
【0095】
製剤の望ましい特徴を最適化するために、様々な添加剤が製剤に含まれる。従って、ペプチドの安定性を改善するためには、適当な安定化剤を添加する。適当な安定化剤としては、大部分の糖類、好ましくはトレハロース、マンニトール、ラクトース、スクロースおよびグルコースが挙げられるが、これらに限定されるものではない。使用する特定のペプチドと適合性のあるpHとするために、適当な緩衝液を使用する。適当な緩衝液としては、酢酸塩、リン酸塩またはクエン酸塩緩衝液を含めた一般に既知で、利用される生物学的緩衝液の大部分が挙げられる。適合性のあるpHは、ペプチドの安定性を維持し、その治療効果を最適化するか、または劣化から保護するものである。適切なpHは一般に約2〜約8、好ましくは約3〜約6.5、より好ましくは約4〜約6、最も好ましくは約4.9〜約5.5である。加えて、プロテアーゼ阻害剤、酸化防止剤および防腐剤を単独または組合せて添加することもできる。
【0096】
所望の血漿レベルを得るのに必要なインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの量は、後述の方法および当業界で既知の方法によって決定することができる。従って、パッチ当たりの製剤中のインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの量を所望の治療効果を達成するために変更することができるが、通常投与量は製剤1g当たり50mgを超えない。
【0097】
[代謝調節ペプチドの経皮送達を強化する装置]
本発明のシステムは、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの経皮送達を強化する装置を備える。本発明の原理によれば、この装置を用いて、エキセンジン、GLP‐1、PYY、PP、プラムリンチド、アミリンのようなインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチド、またはそのアナログ、フラグメント若しくは結合体を効率的に送達して新しい皮膚環境を生成する。
【0098】
ここで用いる「新しい皮膚環境」という用語は、本発明の装置を使用して角質層の切除および複数のマイクロチャネルの形成によって創出された皮膚領域を指す。
【0099】
本発明は、好ましくは無線周波数(RF)で電流またはスパーク生成により角質層の切除を誘導することによってマイクロチャネルを形成する装置および技法を含む。このような装置には、参照によりそれらの内容全体を本明細書に援用する以下の文献、すなわち、米国特許第6,148,232号、同第5,983,135号、同第6,597,946号、同第6,611,706号、同第6,708,060号、国際特許出願公開第WO2004/039428号、同第WO2004/03927号、同第WO2004/03926号、同第WO2004/112689号、Sintov et al., J. Controlled Release 89: 311-320, 2003のうちの一つ以上で開示されるViaDerm(商標)またはMicroDermと呼ばれる装置が含まれる。
【0100】
参照によりその内容全体を本明細書に援用するアブラハミの米国特許第6,148,232号には、被験者の皮膚の各ポイントに電極を適用し、2本以上の電極間に電気エネルギーを印加して、主に各ポイントの中間の領域における角質層の抵抗加熱およびその後の切除を生起する装置が開示されている。電極の隔置および隣接電極間における皮膚の電気抵抗の監視を含めて、切除を角質層に限定する様々な技法が開示されている。
【0101】
いくつかの実施形態によれば、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの経皮送達を強化する装置は、複数の電極を備える随意に着脱可能な電極カートリッジと、メインユニットとを備える。本明細書では、電極カートリッジを搭載したメインユニットもViaDermとして示す。
【0102】
制御ユニットは、通常電極カートリッジが皮膚の近傍にあるときに電流フローまたは一つ以上のスパークを発生させることにより電気エネルギーを電極に印加するのに適合する。電極アレイ内の各電極の電気エネルギーが、電極下方の領域における角質層の切除を生起し、それによって複数のマイクロチャネルが生成される。電気エネルギーは無線周波数(RF)であるのが好ましい。
【0103】
制御装置は、電流フローまたはスパーク生成を制御し、その結果生成するマイクロチャネルの寸法および形状を制御するために、電極に届けた電気エネルギーの大きさ、周波数および/または持続時間を制御することを可能にする回路を備える。一般に、電極カートリッジは1回使用した後に廃棄され、それ自体メインユニットへの容易な取り付けと、その後ユニットからの脱着できるように設計される。
【0104】
カートリッジおよびそれに関連する電極の汚染機会を最小限に抑えるために、カートリッジの装着および脱着を使用者がカートリッジに物理的に触れることなく行う。カートリッジを使用直前に開封する無菌のカートリッジホルダ内に封入し、カートリッジをメインユニットにロックする機構を係合するようにメインユニットをカートリッジの上面と接触させるのが好ましい。ユーザがカートリッジに触れる必要なくカートリッジのロックを解除し取り出すための単純な手段も設けられる。
【0105】
随意選択で、電極カートリッジは更に、パッチを皮膚の治療領域にわたって正確に配置し得るようにマイクロチャネルが生成された皮膚の領域をマーク付けする手段を備えることができる。一般に、マイクロチャネル生成(上記のアブラハミ等の米国特許および本願の出願人に譲渡された各特許出願に記載される技法に従って実施した場合)は、典型的に生成される多数のマイクロチャネルが新しい皮膚環境に対する感知可能な刺激を伴わないので、あらゆる視認可能なマークを残さない。
【0106】
いくつかの実施形態によれば、細胞を加熱することによって角質層を切除するために、電流を皮膚に印加することができる。他の実施形態によれば、スパーク生成、スパーク生成の停止または特定の電流レベルが、所望の深さに達し、電流の印加を終了すべきことを指示するフィードバックの形で使用することができる。これらの用途では、電極が、所望の深さで、この深さを超えずに角質層および表皮の切除を容易にするのを促すカートリッジ内で成形および/または支持されるのが好ましい。或いはまた、スパークの生成なしに角質層が切除されるように電流を構成することができる。
【0107】
本発明の好ましい実施形態には、典型的に参照によりその内容全体を本明細書に援用する米国特許第6,611,706号「Monopolar and bipolar current application for transdermal drug delivery and analyte extraction」に記載される方法および装置が組み込まれる。例えば、米国特許第6,611,706号には切除用電極を皮膚に接触させた状態または皮膚から最大約500ミクロンの距離に維持することが記載されている。従って、本明細書および特許請求の範囲の全体にわたって使用する皮膚の「近傍」という用語は、電極から皮膚表面までの0〜約500ミクロンの距離を包含する。本発明は更に、約10kHz〜4000kHz、好ましくは約10kHz〜500kHzの周波数を有する電界を印加することによって角質層のスパーク誘導切除について記載する。
【0108】
本発明によれば、カートリッジは電極アレイ、好ましくは密集した電極を支持し、カートリッジ下方の皮膚の領域に高いマイクロチャネル密度を生み出すように連動する。しかしながら、典型的には、角質層に生成したマイクロチャネルの全領域が電極アレイで覆われる総面積と比較して小さい。
【0109】
いくつかの実施形態によれば、電極の直径は約30〜約150ミクロンの範囲である。特定の例示的な実施形態によれば、電極アレイ内の電極の直径は約40〜約100ミクロンの範囲である。他の実施形態によれば、電極の長さは約30〜約500ミクロンの範囲である。いくつかの実施形態によれば、電極の長さは約40〜約150ミクロンの範囲である。特定の例示的実施形態によれば、電極の長さは約50ミクロンである。
【0110】
本発明の他の実施形態によれば、カートリッジの皮膚接触面を電極アレイから皮膚へと通過する電流用のリターン経路として利用することによって同心の電極セットが形成される。カートリッジが相対的に大きな皮膚との接触表面積を有するのが好ましく、その結果カートリッジ付近の皮膚に比較的低い電流密度をもたらし、従って接触面での皮膚に相当な加熱または実質的な損傷が生じなくなる。
【0111】
対照的に、電極アレイの各電極の近傍では、高エネルギーの印加電界が通常角質層の非常に急速な加熱および切除を誘導する。
【0112】
[経皮システムの使用]
本発明は更に、本発明の原理による経皮送達システムを使用して、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの持続性送達用の方法を提供する。一般に、新しい皮膚環境を形成する手順は、複数のマイクロチャネルを生成する装置を皮膚を覆うように配置するステップを含む。マイクロチャネルを生成する前に治療部位を無菌のアルコールパッドで消毒するのが好ましい。より好ましくは、該部位を治療前に乾燥させたままにすべきである。
【0113】
本発明の特定の例示的実施形態によれば、マイクロチャネルを生成するのに用いるタイプの装置が、例えば参照によりそれらの内容全体を本明細書に援用する米国特許第6,148,232号および同第6,708,060号、国際特許出願公開第WO2004/039428号およびその継続出願並びにSintov et alの同文献に開示されている。電極アレイを収容した装置を治療部位を覆うように配置し、アレイをRFエネルギーによって付勢し、治療を開始する。原則として、マイクロチャネルの切除および生成は数秒以内で完了する。この装置は、マイクロチャネルが限られた深さ、好ましくは角質層および表皮の深さまで生成された後に取り外される。本発明の原理によるパッチを新しい皮膚環境に付着する。
【0114】
本発明は、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの持続性経皮送達用の方法を提供するもので、
(i)必要とする被験者の皮膚のある領域に複数のマイクロチャネルを生成するステップと、
(ii)インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチド、安定剤、緩衝液、水溶性増粘剤および製薬学的に許容し得るキャリアを含む経皮パッチ製剤からなる薬剤貯蔵層を備えるパッチを複数のマイクロチャネルが存在する皮膚の領域に貼付するステップと、
(iii)インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの治療上有効な血漿濃度を長期間にわたって達成するステップとを備える。
【0115】
ここで定義する「治療上有効な血漿濃度」とは、エキセンジン、GLP‐1、GIP、PYY、PP、またはそのアナログ、フラグメント若しくは結合体のようなインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの治療効果をもたらす濃度を指す。
【0116】
「治療上」という用語は、被験者の臨床状態の改善および/または病的状態または疾患に対する完全なまたは部分的な予防を含むことを意味する。
【0117】
例示的な一実施形態によれば、エキセンジンは配列番号:1に記載のエキセンジン‐4である。後述するように、本発明のシステムによってラットまたはブタに経皮投与したエキセンジン‐4は、パッチ貼付後30分〜2時間以内にエキセンジン‐4の血漿レベルが増加し、かかるレベルが約12〜14時間維持され、その後エキセンジン‐4の血漿レベルがベースラインレベルに戻った(後述の実施例2〜実施例6参照)。対照的に、エキセンジン‐4の皮下投与は注射の10分〜1時間後にペプチドの血漿レベルが増加し、エキセンジン‐4の血漿レベルは3〜5時間以内にベースラインレベルに戻った。従って、本発明による経皮送達はエキセンジン‐4の徐放送達を付与する。
【0118】
いくつかの実施形態によれば、約5pg/ml〜約500pg/ml、好ましくは少なくとも約25pg/ml〜約250pg/mlまたは約150pg/mlのエキセンジン‐4の治療上有効な血漿濃度が達成される。追加的な実施形態によれば、治療上有効な血漿濃度が、少なくとも7時間または少なくとも20時間維持される。
【0119】
従って、本発明は、薬剤貯蔵隔室または層内に保管されるエキセンジン、それだけに限らないがGLP‐1、PYY、PP、アミリンおよびプラムリンチドを含むGLPファミリーのメンバー(例えば参照によりそれらの内容全体を本明細書に援用する米国特許第5,686,411号、同第5,998,367号、同第6,410,511号および同第6,610,824号参照)、およびそれらのアナログまたはフラグメントからなる群から選択される一つ以上のペプチドを含む製剤を備えたパッチを包含し、前記製剤は更に水溶性エーテル化セルロース誘導体を含む。かかるパッチを本発明の装置と併用することにより、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの治療血漿濃度が長期間、例えば7時間を超える期間にわたって達成され、その後血漿レベルはパッチ貼付前の基礎血漿濃度に戻る。
【0120】
加えて、インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの治療血漿濃度は、被験者の臨床状態によって決定される。従って、被験者の臨床状態に基づいて、臨床医は、当業界で既知のようにエキセンジン、GLP‐1、PYY、PP、アミリン、プラムリンチドまたはそれらのアナログ若しくはフラグメントの治療濃度を決定する。同様に、治療の継続時間、すなわちインクレチン若しくはインクレチン模倣ペプチドへの曝露継続時間は、臨床医が治療すべき疾患と共に患者の性別、年齢および一般的な体調を含めた二次的要因を考慮に入れることによって決定される。
【0121】
インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの持続性経皮送達用の本発明の方法は、糖尿病(1型および2型糖尿病並びに妊娠糖尿病を含む)を有する患者の血中グルコースレベルの低減;胃運動および/または胃内容排出の低減;肥満の被験者や糖尿病患者のような必要とする被験者の食物摂取量および/または食欲の低減;血漿グルカゴンレベルの低減;および/または血漿脂質の低下に対し有用である。
【0122】
インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドを単独または別の治療薬と組合せて提供し得ることを理解されたい。従って、例えば本発明の方法により、エキセンジン‐4をGLP‐1および/またはPYY(3‐36)のようなPYYと組合せて、或いは経口投与されるメトホルミンおよび/またはスルホニル尿素と組合せて経皮投与することができる。
【0123】
以上本発明の一般的な説明を行ってきたが、以下の実施例を参照すれば本発明がより容易に理解されるだろう。以下の実施例は例示として与えるものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0124】
[異なる増粘剤で製剤化したエクセナチドの生体外拡散]
【0125】
異なる増粘剤を含有する製剤からのエクセナチドの生体外拡散を静的拡散細胞モデルで測定した。ポリエーテルスルホンフィルタ膜(0.45μm)をドナー室とアクセプタ室の間の静的拡散細胞内に配置した。ドナー室は試験すべきエクセナチド製剤で満たし、アクセプタ室は酢酸塩緩衝液で満たした。エクセナチドの累積放出量をHPLC定量法を使用して指示期間測定した。
【0126】
図1は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはアルギン酸塩を含む製剤からの生体外エクセナチド拡散を示す。これらの結果は、HECを含有するエクセナチド製剤からの生体外拡散がCMCまたはアルギン酸塩を含有するエクセナチド製剤からのものよりも高いことを示す。
【0127】
図2は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含有する製剤からの生体外エクセナチド拡散を示す。これらの結果は、HECを含有するエクセナチド製剤からの生体外拡散がHPCを含有するエクセナチド製剤からのものと類似することを示す。
【実施例2】
【0128】
[ヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースで製剤化したエクセナチドのブタへの経皮送達]
【0129】
エクセナチドの持続放出がマイクロチャネルを介した経皮送達によって達成され得るかどうかを評価するために、ブタをViaDerm(商標)装置で治療してマイクロチャネルを生成し、次いでヒドロキシエチルセルロース(HEC)またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を有するエクセナチド製剤を含有するパッチを治療皮膚に貼付し、血漿中のエクセナチドのレベルを判定した。
【0130】
実験を実施するに当たり、ブタに以下の治療を施した。
1)ViaDermおよび1.5%のHECゲル中5mg/mlのエクセナチド:各ブタをViaDerm(商標)器具で700マイクロ秒間治療して150マイクロチャネル/cmの密度でマイクロチャネルを生成した。その後、1.5%のHECゲル中5mg/mlのエクセナチド、20mMでpH4.9〜5.5の酢酸塩緩衝液、および1:5の比率(w/w;ペプチド対トレハロース)のトレハロースを含有するFinn Chamber(登録商標)を治療皮膚に貼付した。
2)ViaDermおよび1.5%のHPCゲル中5mg/mlのエクセナチド:各ブタをViaDerm(商標)器具で700マイクロ秒間治療して150マイクロチャネル/cmの密度でマイクロチャネルを生成した。その後、1.5%のHPCゲル中5mg/mlのエクセナチド、20mMでpH4.9〜5.5の酢酸塩緩衝液、および1:11の比率(w/w;ペプチド対トレハロース)のトレハロースを含有するFinn Chamberを治療皮膚に貼付した。
【0131】
[結果]
エクセナチド血漿レベルを図3に示す。図3に示すように、HECを含有する製剤からのエクセナチドの経皮送達は、HPCを含有する製剤からのものよりも高かった。
【実施例3】
【0132】
[ヒドロキシエチルセルロースで製剤化したエキセンジン‐4のラットへの経皮送達]
【0133】
エキセンジン‐4の持続放出がマイクロチャネルを介した経皮送達によって達成され得るかどうかを評価するために、ラットをViaDerm装置で治療してマイクロチャネルを生成し、次いでヒドロキシエチルセルロース(HEC)およびエキセンジン‐4を含有するパッチを治療皮膚に貼付し、血漿中のエキセンジン‐4のレベルを判定した。実験を実施するに当たり、ラットに以下の治療を施した。
3)1μgエクセナチド(Byetta(Amylin Pharmaceuticals社))の皮下(SC)注射。
4)ViaDermおよび2.5%のHEC中1mg/mlのエキセンジン‐4:各ラットをViaDerm(商標)器具で700マイクロ秒間治療して75マイクロチャネル/cmの密度でマイクロチャネルを生成した。その後、2.5%のHECゲル中200μlの1mg/mlエキセンジン‐4(合計200μg、CS Bio社(米国)またはShaanxi Zhongbang Pharma-Tech社(中国)から購入)、10mMでpH4.5の酢酸塩緩衝液、および1:11の比率(w/w;ペプチド対トレハロース)のトレハロースを含有するシリコーンポーチを治療皮膚に貼付した。
5)ViaDermおよび2.5%のHECゲル中0.3mg/mlのエキセンジン‐4:各ラットをViaDerm(商標)器具で700マイクロ秒間治療して75マイクロチャネル/cmの密度でマイクロチャネルを生成した。その後、2.5%のHECゲル中200μlの0.3mg/mlエキセンジン‐4(合計60μg)、10mMでpH4.5の酢酸塩緩衝液、および1:11の比率(w/w;ペプチド対トレハロース)のトレハロースを含有するシリコーンポーチを治療皮膚に貼付した。
6)ViaDermおよび1%のHECゲル中0.3mg/mlのエキセンジン‐4:各ラットをViaDerm(商標)器具で700マイクロ秒間治療して75マイクロチャネル/cmの密度でマイクロチャネルを生成した。その後、1%のHECゲル中200μlの0.3mg/mlエキセンジン‐4(合計60μg)、10mMでpH4.5の酢酸塩緩衝液、および1:11比率(w/w;ペプチド対トレハロース)のトレハロースを含有するシリコーンポーチを治療皮膚に貼付した。
【0134】
エキセンジン‐4の血清レベルの評価を、製造業者(Phonix社)の提供する指示に従ってエキセンジン‐4エライザキットによって行った。
【0135】
経上皮的水分損失(TEWL)をマイクロチャネル生成前に判定し、その後マイクロチャネルが生成されたことを確認した。
【0136】
[結果]
エキセンジン‐4血清レベルを図4に示す。図4に示すように、ゲル中に含まれるエキセンジン‐4の経皮送達後、少なくとも11時間の長い放出プロファイルを観察した。対照的に、SC注射は約3時間の薬剤曝露期間でピークプロファイルを示した。薬剤濃度を0.3mg/mlから1mg/mlに増加させると、送達量の相当な増加をもたらす(図4)。加えて、より粘度の高いゲル(2.5%対1%のHEC濃度)がより短いエキセンジン‐4の送達(それぞれ少なくとも16時間と比較して12時間の送達、図4)になった。エキセンジン‐4の血清レベルは、6時間までは1%と2.5%の両方のHECで同程度であった。しかし、6時間後は、エキセンジン‐4血清レベルが2.5%のHECゲル群で低くなった(図4)。
【0137】
エキセンジン‐4の薬物動態学パラメータおよびその生体利用効率を表1にまとめた。
【0138】
【表1】

【0139】
生体利用効率をSC注射によって送達したエキセンジン‐4から得られた平均AUCに対して相対的に計算した。第2群対第4群においてエキセンジン‐4の濃度を3倍増加させると、AUCが5倍増加した(2.5%のHECでそれぞれ1mg/ml対0.3mg/mlのエキセンジン‐4に対して16時間中60ng‐hr/ml対16時間中12ng‐hr/mlのAUC)。ゲル粘度を2.5%から1%まで減少させると、AUCが1.5倍増加した。相対的な生体利用効率は3.5%〜5.4%であった。
【実施例4】
【0140】
[ゲルまたは溶液中で製剤化したエキセンジン‐4のブタへの経皮送達]
【0141】
この試験ではパッチからのエキセンジン‐4の経皮送達を評価した。この場合エキセンジン‐4をヒドロキシエチルセルロースゲルで製剤化または溶液中に存在させた。マイクロチャネルをViaDerm(商標)装置によってブタ皮膚内に生成し、エキセンジン‐4をパッチからブタの循環中に分散させた。
【0142】
ブタには以下の治療を施した。
1)10μgエクセナチド(Byetta(Amylin Pharmaceuticals社))の皮下(SC)注射。
2)ViaDermおよび1%のHECゲル中5mg/mlのエキセンジン‐4:ブタをViaDerm(商標)装置で治療して150マイクロチャネル/cmの密度でマイクロチャネルを生成した。次いで、1%のHEC中200μlの5mg/mlエキセンジン‐4、10mMでpH4.5の酢酸塩緩衝液、および1:11の比率(w/w;ペプチド対トレハロース)のトレハロースを含有するシリコーンポーチを治療皮膚に16時間貼付した。
3)ViaDermおよび5mg/mlのエキセンジン‐4溶液:ブタをViaDerm(商標)装置で治療して150マイクロチャネル/cmの密度でマイクロチャネルを生成した。次いで、10mMでpH4.5の酢酸塩緩衝液における200μlの5mg/mlエキセンジン‐4、および1:11の比率(w/w;ペプチド対トレハロース)のトレハロースを含有するシリコーンポーチを治療皮膚に16時間貼付した。
【0143】
ブタ血漿中のエキセンジン‐4の決定は実施例1に記載したように行った。経上皮的水分損失(TEWL)をマイクロチャネル生成前に判定し、その後マイクロチャネルが生成されたことを確認した。
【0144】
[結果]
図5は、溶液および1%のHECゲルからのエキセンジン‐4の送達を示す。図5に示すように、溶液およびHECゲルからの送達は、SC注射によって得られる典型的なピークプロファイルと比較して長い薬剤送達となった。ゲル製剤の塗布後に得られた血漿エキセンジン‐4濃度は、SC治療と比較して相対的に小さい標準偏差で9時間(塗布後2〜11時間)にわたり〜1ng/mlに維持された。
【0145】
この実験の薬物動態学的パラメータを表2にまとめた。
【0146】
【表2】

【0147】
表2に示したとおり、溶液からのエキセンジン‐4の経皮送達とHECゲルからのエキセンジン‐4の経皮送達との間に差は確認されなかった(それぞれ2.0ng/ml対1.4ng/mlのCmax、15.0ng‐hr/ml対13.8ng‐hr/mlのAUC)。SC注射群に対して相対的に計算したViaDerm治療群におけるエキセンジン‐4の生体利用効率は〜2%、送達されたエキセンジン‐4の量は〜20μgであった。
【実施例5】
【0148】
[1%ヒドロキシエチルセルロースで製剤化したエキセンジン‐4のブタへの経皮送達]
【0149】
この実験は、様々なマイクロチャネル密度およびエキセンジン塗布量の効果を評価することを目的とした。
【0150】
以下の治療を行った。
1)5μgエクセナチド(Byetta(Amylin Pharmaceuticals社)の皮下(SC)注射。
2)ViaDermおよび1%のHECゲル中5mg/mlのエキセンジン‐4、150マイクロチャネル/cm:ブタをViaDerm(商標)装置で治療して150マイクロチャネル/cmの密度でマイクロチャネルを生成した。次いで、1%のHEC中200μlの5mg/mlエキセンジン‐4、10mMでpH4.5の酢酸塩緩衝液、および1:11の比率(w/w;ペプチド対トレハロース)のトレハロースを含有するシリコーンポーチを治療皮膚に16時間貼付した。総投与量=694μg/cm。
3)ViaDermおよび1%のHECゲル中5mg/mlのエキセンジン‐4、300マイクロチャネル/cm:ブタをViaDerm(商標)装置で治療して300マイクロチャネル/cmの密度でマイクロチャネルを生成した。次いで、1%のHEC中200μlの5mg/mlエキセンジン‐4、10mMでpH4.5の酢酸塩緩衝液、および1:11の比率(w/w;ペプチド対トレハロース)のトレハロースを含有するシリコーンポーチを治療皮膚に16時間貼付した。総投与量=694μg/cm。
4)ViaDermおよび1%のHECゲル中2.5mg/mlのエキセンジン‐4、300マイクロチャネル/cm:ブタをViaDerm(商標)装置で治療して300マイクロチャネル/cmの密度でマイクロチャネルを生成した。次いで、1%のHEC中200μlの2.5mg/mlエキセンジン‐4、10mMでpH4.5の酢酸塩緩衝液、および1:11の比率(w/w;ペプチド対トレハロース)のトレハロースを含有するシリコーンポーチを治療皮膚に16時間貼付した。総投与量=347μg/cm。
5)DURECT社(米国)から購入したAlzet(登録商標)[モデル2001D(1時間当たり8.0μl(1日))]ミニ浸透圧ポンプ、5μg/時の速度で10時間の有効送達期間。
【0151】
経上皮的水分損失(TEWL)をマイクロチャネル生成前に判定し、その後マイクロチャネルが生成されたことを確認した。この実験では2つの対照群を試験した。短い薬剤曝露継続期間が示すSC群、連続薬剤送達(10時間)を示すAlzet(登録商標)ミニ浸透圧ポンプである。
【0152】
[結果]
図6はブタに対して行った実験結果を示す。図6および表3に示すように、マイクロチャネル密度を2倍にすると、生体利用効率が3倍増加した。すなわち、AUCは300MC試験群で14.67±6.51ng‐hr/ml、150MC試験群で4.67±0.58ng‐hr/mlであった。エキセンジン‐4の量を2倍増加させると、生体利用効率が2倍増加した(表3)。生体利用効率はSC送達およびミニ浸透圧ポンプ送達と比較して計算したことを強調しておく。得られた結果は、各ViaDerm治療群の生態利用効率がSC注射ではなくAlzetミニ浸透圧ポンプと比較すると3倍高いことが示された。このことは、何らかの作用機構に依存する必要なく、ミニ浸透圧ポンプによって投与されるエキセンジンが恐らくSC注入したペプチドでは発生しないプロセスである皮膚代謝を受けることを示す場合がある。従って、ミニ浸透圧ポンプの制御をこのペプチドの経皮送達用の代表的な制御として選択した。
【0153】
【表3】

【実施例6】
【0154】
[1.5%ヒドロキシエチルセルロースで製剤化したエクセナチドのブタへの経皮送達]
【0155】
1.5%(w/w)のHECで製剤化したエクセナチドの経皮送達をViaDerm(商標)装置でブタにマイクロチャネルを生成した後に決定した。血漿のエクセナチドのレベルを決定した。
【0156】
実験を実施するに当たり、ブタに以下の治療を施した。
1. ViaDermおよび1.5%のHECゲル中2mg/mlのエクセナチド:各ブタをViaDerm(商標)器具で700マイクロ秒間治療して150マイクロチャネル/cmの密度でマイクロチャネルを生成した。その後、1.5%のHECゲルの2mg/mlのエクセナチド、20mMでpH4.9〜5.5の酢酸塩緩衝液、1:5の比率(w/w;ペプチド対トレハロース)のトレハロース、および2.2mgのM‐クレゾール/gゲルを含有するIQ chamberを治療皮膚に貼付した。
2. ViaDermおよび1.5%のHPCゲル中5mg/mlのエクセナチド:各ブタをViaDerm(商標)器具で700マイクロ秒間治療して150マイクロチャネル/cmの密度でマイクロチャネルを生成した。その後、1.5%のHPCゲル中5mg/mlのエクセナチド、20mMでpH4.9〜5.5の酢酸塩緩衝液、1:5の比率(w/w;ペプチド対トレハロース)のトレハロース、および2.2mgのM‐クレゾール/gゲルを含有するIQ chamberを治療皮膚に貼付した。
3. 5μgエクセナチド(Byetta(Amylin Pharmaceuticals社)の皮下(SC)注射
【0157】
[結果]
エクセナチド血漿レベルを図7に示す。図7に示すように、HECゲルからのエクセナチドの経皮送達は、ゲル中のエクセナチド濃度の増加に従って増加した。
【実施例7】
【0158】
[ブタの食物摂取量に対するエクセナチドの経皮送達の効果]
【0159】
ブタの食物摂取量に対するエクセナチドの経皮送達効果または皮下(SC)注射効果を評価した。実験は、SC注射したエクセナチドの量を20μgとした以外上述の実施例6で詳述したとおり行い、食物摂取量を測定した。得られた結果は、エクセナチドの経皮送達がエクセナチドで治療しなかった対照群と比較して食物摂取量の減少をもたらすことを示した。更に、ViaDerm治療群で観察された食物摂取量の減少は、エクセナチドを皮下注射したブタで観察された期間よりも長い期間にわたって持続した。
【0160】
本発明は本明細書で具体的に図示および説明したものに限定されないことが当業者には理解されるだろう。そうではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドと、安定剤と、緩衝液と、水溶性増粘剤と、製薬学的に許容し得るキャリアとを含み、粘液の形態である経皮パッチ製剤。
【請求項2】
前記インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドが、エキセンジン、GLP‐1、PYY、PP、アミリン、プラムリンチドおよびそれらのアナログ、フラグメントまたは結合体からなる群から選択される請求項1に記載の経皮パッチ製剤。
【請求項3】
前記エキセンジンが、配列番号:1〜8のいずれかに記載のアミノ酸配列のエキセンジン‐4、エキセンジン‐3およびそれらのアナログまたはフラグメントから選択される請求項2に記載の経皮パッチ製剤。
【請求項4】
前記エキセンジンが、配列番号:1に記載のアミノ酸配列のエキセンジン‐4である請求項2に記載の経皮パッチ製剤。
【請求項5】
前記インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドが、配列番号:9〜15のいずれかに記載のアミノ酸配列である請求項1に記載の経皮パッチ製剤。
【請求項6】
前記安定剤は単一炭水化物または複合炭水化物である請求項1に記載の経皮パッチ製剤。
【請求項7】
前記単一炭水化物または複合炭水化物が、トレハロース、マンノース、グルコース、ガラクトース、ラフィノース、セロビオース、ゲンチオビオース、スクロースおよびそれらの組合せからなる群から選択される請求項6に記載の経皮パッチ製剤。
【請求項8】
前記安定剤がトレハロースである請求項1に記載の経皮パッチ製剤。
【請求項9】
前記緩衝液が、酢酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、グルタミン酸塩緩衝液およびリン酸塩緩衝液からなる群から選択される請求項1に記載の経皮パッチ製剤。
【請求項10】
前記緩衝液が酢酸塩緩衝液である請求項1に記載の経皮パッチ製剤。
【請求項11】
前記水溶性増粘剤が、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロースおよびアルキルヒドロキシアルキルセルロースからなる群から選択された水溶性エーテル化セルロース誘導体である請求項1に記載の経皮パッチ製剤。
【請求項12】
前記水溶性増粘剤が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される水溶性エーテル化セルロース誘導体である請求項1に記載の経皮パッチ製剤。
【請求項13】
前記水溶性増粘剤がヒドロキシエチルセルロースである請求項1に記載の経皮パッチ製剤。
【請求項14】
前記増粘剤が、前記製剤の約0.5%(w/w)〜約3.5%(w/w)の量で製剤中に存在する請求項1に記載の経皮パッチ製剤。
【請求項15】
配列番号:1に記載のエキセンジン‐4と、トレハロースと、前記製剤のpHを約4.9〜約5.5の範囲に維持する酢酸塩緩衝液と、前記製剤の約1%(w/w)〜約3%(w/w)の量のヒドロキシエチルセルロースと、水とを含む請求項1に記載の経皮パッチ製剤。
【請求項16】
インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの経皮送達に適合したパッチであって、請求項1〜15のいずれか一項に記載の経皮パッチ製剤を含む製剤貯蔵隔室を備えるパッチ。
【請求項17】
バッキング層、接着剤、速度制御層、非速度制御層、剥離ライナのうちの少なくとも1つを更に備える請求項16に記載のパッチ。
【請求項18】
被験者の皮膚を通じたインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの経皮送達を容易にするシステムであって、(i)被験者の皮膚上のある領域に複数のマイクロチャネルを生成することができる装置と、(ii)請求項1〜15のいずれか一項に記載の経皮パッチ製剤を含有する薬剤貯蔵隔室からなるパッチとを備えるシステム。
【請求項19】
前記装置が、
(a)複数の電極を備える電極カートリッジと、
(b)前記電極が皮膚の近傍にある際に該電極に電気エネルギーを印加し、電極下方の領域内の角質層の切除を可能にして複数のマイクロチャネルを生成するのに適合する制御ユニットを含むメインユニットとを備える請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記マイクロチャネルが、均一の形状および寸法である請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記電気エネルギーが無線周波数である請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
糖尿病を有する被験者の血中グルコースレベルを減少させるに当たり、
(a)前記被験者の皮膚のある領域に複数のマイクロチャネルを生成するステップと、
(b)インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチド、安定剤、緩衝液、水溶性増粘剤、および製薬学的に許容し得るキャリアを含む経皮パッチ製剤からなる薬剤貯蔵隔室を備えるパッチを前記複数のマイクロチャネルが存在する被験者の皮膚の領域に貼付し、前記被験者の血中グルコースレベルを減少させるステップとを備える方法。
【請求項23】
血漿グルカゴンレベルを低下させるに当たり、
(a)かかる治療を必要とする被験者の皮膚のある領域に複数のマイクロチャネルを生成するステップと、
(b)インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチド、安定剤、緩衝液、水溶性増粘剤、および製薬学的に許容し得るキャリアを含む経皮パッチ製剤からなる薬剤貯蔵隔室を備えるパッチを前記複数のマイクロチャネルが存在する被験者の皮膚の領域に貼付し、前記被験者の血漿グルカゴンレベルを低下させるステップとを備える方法。
【請求項24】
食物摂取量を低減するに当たり、
(a)かかる治療を必要とする被験者の皮膚のある領域に複数のマイクロチャネルを生成するステップと、
(b)インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチド、安定剤、緩衝液、水溶性増粘剤、および製薬学的に許容し得るキャリアを含む経皮パッチ製剤からなる薬剤貯蔵隔室を備えるパッチを前記複数のマイクロチャネルが存在する被験者の皮膚の領域に貼付し、前記被験者の食物摂取量を低減するステップとを備える方法。
【請求項25】
胃運動を低減するに当たり、
(a)かかる治療を必要とする被験者の皮膚のある領域に複数のマイクロチャネルを生成するステップと、
(b)インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチド、安定剤、緩衝液、水溶性増粘剤、および製薬学的に許容されるキャリアを含む経皮パッチ製剤からなる薬剤貯蔵隔室を備えるパッチを前記複数のマイクロチャネルが存在する被験者の皮膚の領域に貼付し、前記被験者の胃運動を低減するステップとを備える方法。
【請求項26】
インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの持続経皮送達のための方法であって、
(a)被験者の皮膚上のある領域に複数のマイクロチャネルを生成するステップと、
(b)インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチド、安定剤、緩衝液、水溶性増粘剤、および製薬学的に許容し得るキャリアを含む経皮パッチ製剤からなる薬剤貯蔵隔室を備えるパッチを前記複数のマイクロチャネルが存在する皮膚の領域に貼付するステップと、
(c)前記インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドの治療血漿濃度を長期間にわたって達成するステップとを備える方法。
【請求項27】
前記インクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドが、エキセンジン、GLP‐1、PYY、PP、アミリン、プラムリンチドおよびそれらのアナログ、フラグメントまたは結合体からなる群から選択される請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記エキセンジンが、配列番号:1〜8に記載のアミノ酸配列のエキセンジン‐4、エキセンジン‐3およびそれらのアナログまたはフラグメントからなる群から選択される請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記安定剤が単一炭水化物または複合炭水化物である請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記単一炭水化物または複合炭水化物が、トレハロース、マンノース、グルコース、ガラクトース、ラフィノース、セロビオース、ゲンチオビオース、スクロースおよびそれらの組合せからなる群から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記安定剤がトレハロースである請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記緩衝液が、酢酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、グルタミン酸塩緩衝液およびリン酸塩緩衝液からなる群から選択される請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記緩衝液が酢酸塩緩衝液である請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記水溶性増粘剤が、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、およびアルキルヒドロキシアルキルセルロースからなる群から選択される水溶性エーテル化セルロース誘導体である請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記エーテル化セルロース誘導体がヒドロキシエチルセルロースである請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記パッチが、バッキング層、接着剤、速度制御層、非速度制御層、剥離ライナのうちの少なくとも1つを更に備える請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
(i)被験者の皮膚上のある領域に複数のマイクロチャネルを生成することができる装置と、(ii)請求項1〜15のいずれか一項に記載の経皮パッチ製剤からなる薬剤貯蔵隔室を備える経皮パッチとを備えるシステムのインクレチンまたはインクレチン模倣ペプチドを経皮送達するための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−528709(P2011−528709A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519280(P2011−519280)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【国際出願番号】PCT/IL2009/000713
【国際公開番号】WO2010/010555
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(505474669)トランスファーマ メディカル リミテッド (11)
【Fターム(参考)】