説明

インク収容容器及び画像形成装置

【課題】インクジェット方式の画像形成装置に備えられ、インクを吐出するヘッドと一体のインク収容部を有し、ヘッドの向きを変更可能であるとともに、ヘッドの向きを変更してもインク収容部内のインク量を検知可能なインク収容容器及びこれを備えたかかる画像形成装置の提供。
【解決手段】回動により、ヘッド61の位置が変化する態様で、少なくともヘッド61からインクを吐出する第1の配置状態と、第1の配置状態と異なる第2の配置状態とを有するインク収容容器50が、インク収容部54内のインクを介して電流が流れることでインクを検知する複数の検知部材53a、53bを有する。検知部材53a、53bは、第1の配置状態と第2の配置状態とでインク収容部54の回動中心に対する位相が変化するとともに、インク収容部54の回転面内で互いに異なる方向を向くようにインク収容部54に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式の複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に備えられた、インクを吐出するヘッドと一体のインク収容部を有するインク収容容器及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献6〕参照)においては、ヘッドから記録紙等の記録媒体にインクを吐出する方向が下向きであることが多い(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献5〕参照)が、かかる方向が横向きあるいは傾斜方向のものも知られている(たとえば、〔特許文献6〕参照)。
【0003】
また、インクジェット方式のかかる画像形成装置において、インクの乾燥防止等を目的として、ヘッドのインク吐出面を塞ぐキャップを備えた構成が知られている(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献4〕参照)。ヘッドから記録媒体へのインクの吐出方向が下向の場合において、キャップがかかる吐出方向に合わせて上向きであると、キャップにインクが付着してもキャップからインクが垂れることは通常ないが、インクの吐出方向が横向きあるいは傾斜方向の場合において、キャップがかかる吐出方向に合わせて横向きあるいは傾斜方向であると、キャップに付着したインクが垂れて画像形成装置内を汚染する可能性がある。
【0004】
これに対応するための構成として、インクの吐出方向が横向きあるいは傾斜方向の構成においても、ヘッドのキャッピングを行う場合にはヘッドを下向きにし、上向きのキャップでキャッピングする構成が考えられる。
このように、ヘッドの向きを、必要に応じて変更可能なように構成するのが望ましい場合がある。
【0005】
一方、ヘッドと一体のインク収容部を有するインク収容容器において、インク収容部内のインク量を適正にする等のために、インクの導電性を用いてかかるインク量を検知する技術が従来より種々提案されている(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献7〕参照)。
【0006】
なお、かかるインク収容容器が、いわゆるサブタンクである構成(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献4〕参照)が知られている。サブタンクは、メインタンクであるインクカートリッジからチューブ等を介してインクを供給されるものであり、インクカートリッジが空になった後でも印字可能とするリザーバタンクとしての機能を持つ。サブタンクは、ヘッドからのインク漏れを防止するための負圧形成部として機能することもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ヘッドの向きを変更可能とした構成に、従来提案されている、インクの導電性を用いてインク収容部内のインク量を検知する技術を用いると、ヘッドがある一方に向いているときしかインク量しか検知できない。
【0008】
本発明は、インクジェット方式の複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に備えられ、インクを吐出するヘッドと一体のインク収容部を有し、ヘッドの向きを変更可能であるとともに、ヘッドの向きを変更してもインク収容部内のインク量を検知可能なインク収容容器及びこれを備えたかかる画像形成装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、インクを吐出するヘッドと一体であり、回動により、前記ヘッドの位置が変化する態様で、少なくとも、前記ヘッドからインクを吐出する第1の配置状態と、第1の配置状態と異なる第2の配置状態とを有するインク収容容器であって、前記ヘッドから吐出するインクを収容したインク収容部と、このインク収容部内のインクを介して電流が流れることでインクを検知する複数の検知部材とを有し、前記複数の検知部材は、インク収容容器が第1の配置状態であるときと第2の配置状態であるときとで前記インク収容部の回動中心に対する位相が変化するとともに、同インク収容部の回転面内で互いに異なる方向を向くように、同インク収容部に配設されているインク収容容器にある。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のインク収容容器において、前記複数の検知部材は、第1の配置状態と第2の配置状態とで高さの異なるインク面位置を検知するように、互いに異なる高さで前記インク収容部に突設されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のインク収容容器において、前記複数の検知部材は、第2の配置状態において検知するインク面位置が第1の配置状態において検知するインク面位置より高くなるように、互いに異なる高さで前記インク収容部に突設されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載のインク収容容器において、前記複数の検知部材の少なくとも1つは、少なくとも先端部が分岐していることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のインク収容容器において、前記複数の検知部材が、第1の配置状態と第2の配置状態とで高さの異なるインク面位置を検知するように、前記少なくとも先端部が分岐している検知部材の、同先端部の高さを異ならせたことを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載のインク収容容器において、所定方向から駆動されることで前記インク収容部内の空気を外部に逃がす弁部を有し、第1の配置状態と第2の配置状態とで前記弁部が同一方向から駆動されるように、同弁部を、前記複数の検知部材の間に配設したことを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6の何れか1つに記載のインク収容容器において、前記インク収容部から溢れたインクを収容するインクバッファ部を有することを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7の何れか1つに記載のインク収容容器を有する画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、インクを吐出するヘッドと一体であり、回動により、前記ヘッドの位置が変化する態様で、少なくとも、前記ヘッドからインクを吐出する第1の配置状態と、第1の配置状態と異なる第2の配置状態とを有するインク収容容器であって、前記ヘッドから吐出するインクを収容したインク収容部と、このインク収容部内のインクを介して電流が流れることでインクを検知する複数の検知部材とを有し、前記複数の検知部材は、インク収容容器が第1の配置状態であるときと第2の配置状態であるときとで前記インク収容部の回動中心に対する位相が変化するとともに、同インク収容部の回転面内で互いに異なる方向を向くように、同インク収容部に配設されているインク収容容器にあるので、ヘッドの向きを変更し第1の配置状態を占めた配置状態でも第2の配置状態を占めた配置状態でもインク収容部内のインク量を高い精度で検知可能であり良好な画像形成を経時的に行うことに寄与可能であるとともに、第1の配置状態と第2の配置状態とを有するインク収容容器やこれを備えた画像形成装置との部品の共通化が可能なインク収容容器を提供することができる。
【0018】
前記複数の検知部材は、第1の配置状態と第2の配置状態とで高さの異なるインク面位置を検知するように、互いに異なる高さで前記インク収容部に突設されていることとすれば、ヘッドの向きを変更し第1の配置状態を占めた配置状態でも第2の配置状態を占めた配置状態でもインク収容部内のインク量を、互いに異なる量で、高い精度で検知可能であり良好な画像形成を経時的に行うことに寄与可能であるとともに、第1の配置状態と第2の配置状態とを有するインク収容容器やこれを備えた画像形成装置との部品の共通化が可能なインク収容容器を提供することができる。
【0019】
前記複数の検知部材は、第2の配置状態において検知するインク面位置が第1の配置状態において検知するインク面位置より高くなるように、互いに異なる高さで前記インク収容部に突設されていることとすれば、ヘッドの向きを変更し第1の配置状態を占めた配置状態でも第2の配置状態を占めた配置状態でもインク収容部内のインク量を、第1の配置状態より第2の配置状態の方が多い量で、高い精度で検知可能であり良好な画像形成を経時的に行うことに寄与可能であるとともに、第1の配置状態と第2の配置状態とを有するインク収容容器やこれを備えた画像形成装置との部品の共通化が可能なインク収容容器を提供することができる。
【0020】
前記複数の検知部材の少なくとも1つは、少なくとも先端部が分岐していることとすれば、ヘッドの向きを変更し第1の配置状態を占めた配置状態でも第2の配置状態を占めた配置状態でもインク収容部内のインク量を高い精度及び安定性で検知可能であり良好な画像形成を経時的に行うことに寄与可能であるとともに、第1の配置状態と第2の配置状態とを有するインク収容容器やこれを備えた画像形成装置との部品の共通化が可能なインク収容容器を提供することができる。
【0021】
前記複数の検知部材が、第1の配置状態と第2の配置状態とで高さの異なるインク面位置を検知するように、前記少なくとも先端部が分岐している検知部材の、同先端部の高さを異ならせたこととすれば、ヘッドの向きを変更し第1の配置状態を占めた配置状態でも第2の配置状態を占めた配置状態でもインク収容部内のインク量を、互いに異なる量で、高い精度及び安定性で検知可能であり良好な画像形成を経時的に行うことに寄与可能であるとともに、第1の配置状態と第2の配置状態とを有するインク収容容器やこれを備えた画像形成装置との部品の共通化が可能なインク収容容器を提供することができる。
【0022】
所定方向から駆動されることで前記インク収容部内の空気を外部に逃がす弁部を有し、第1の配置状態と第2の配置状態とで前記弁部が同一方向から駆動されるように、同弁部を、前記複数の検知部材の間に配設したこととすれば、ヘッドの向きを変更し第1の配置状態を占めた配置状態でも第2の配置状態を占めた配置状態でもインク収容部内のインク量を高い精度で検知可能であり良好な画像形成を経時的に行うことに寄与可能であるとともに、第1の配置状態と第2の配置状態とを有するインク収容容器やこれを備えた画像形成装置との部品の共通化が可能であり、また、弁部の駆動方向が第1の配置状態と第2の配置状態とで所定方向で同一であるから、弁部の駆動を行う構成を簡略化可能なインク収容容器を提供することができる。
【0023】
前記インク収容部から溢れたインクを収容するインクバッファ部を有することとすれば、ヘッドの向きを変更し第1の配置状態を占めた配置状態でも第2の配置状態を占めた配置状態でもインク収容部内のインク量を高い精度で検知可能であり、またインクバッファ部によりインク収容容器外にインクが溢出することを防止可能であるから、良好な画像形成を経時的に行うことに寄与可能であるとともに、第1の配置状態と第2の配置状態とを有するインク収容容器やこれを備えた画像形成装置との部品の共通化が可能なインク収容容器を提供することができる。
【0024】
本発明は、かかるインク収容容器を有する画像形成装置にあるので、インク収容容器においてヘッドの向きを変更し第1の配置状態を占めた配置状態でも第2の配置状態を占めた配置状態でもインク収容部内のインク量を高い精度で検知可能であり良好な画像形成を経時的に行うことが可能であるとともに、第1の配置状態と第2の配置状態とを有するインク収容容器やこれを備えた画像形成装置との部品の共通化が可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を適用した画像形成装置の概略側面図である。
【図2】図1に示した画像形成装置に備えられたインク収容容器の概略側断面図である。
【図3】図2に示したインク収容容器が傾斜した配置状態を示す概略側断面図である。
【図4】複数の検知部材の構成態様を別のものとしたインク収容容器の概略側断面図である。
【図5】複数の検知部材の構成態様をまた別のものとしたインク収容容器の概略側断面図である。
【図6】複数の検知部材の構成態様をさらに別のものとしたインク収容容器の概略側断面図である。
【図7】インクバッファ部を備えたインク収容容器の概略側断面図である。
【図8】複数の検知部材の構成態様をまたさらに別のものとしたインク収容容器の概略側断面図である。
【図9】複数の検知部材の構成態様が本願発明にかかるものと異なるインク収容容器の不具合を説明するための概略側断面図である。
【図10】複数の検知部材の構成態様が本願発明にかかるものと異なるインク収容容器の別の不具合を説明するための概略側断面図である。
【図11】複数の検知部材の構成態様が本願発明にかかるものと異なるインク収容容器のまた別の不具合を説明するための概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に本発明を適用した画像形成装置の一例の概略を示す。この画像形成装置100は、インクジェットプリンタとしてのプリンタであって多色カラーの画像形成を行うようになっている。多色カラーには、たとえば4色を用いたフルカラーを含むほか、他にもたとえば6色、7色、8色等の色を用いるものを含む。これら多色カラーを構成する色の組み合わせは、たとえば4色を用いたフルカラーであればイエロー、マゼンタ、シアン、黒色が挙げられるが、これに限定されず、このことは6色、7色、8色等の色を用いる場合も同様である。また多色カラー機でなくモノカラー機であっても良い。
【0027】
画像形成装置100は、以下述べるようなシリアル型プリンタに限らず、ライン型ヘッドすなわち主走査方向に移動することなくインクを吐出して画像を形成するヘッドを用いるライン型プリンタであっても良い。
【0028】
画像形成装置100は、インクを用いて画像形成を行うものであれば、複写機、ファクシミリ、プロッタ、導電性材料を混合させる等した液体をインクとして用いヘッドから吐出された液体によって導電経路を形成する電子回路形成装置の単体、あるいはこれらの2以上を適宜組み合わせた複合機であっても良い。
【0029】
なお、本願において、「画像形成装置」は、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを着弾させて画像形成を行う装置を含み、また、「画像形成」とは、記録、印字、印写、印刷と同義であり、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること、すなわち単に液滴を媒体に着弾させることをも含む。「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体、樹脂などと称されるものなど、画像形成を行うのに用いられるすべての液体の総称である。「媒体」、「記録媒体」、「用紙」とは、材質を紙に限定するものではなく、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称である。「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含む。
【0030】
画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。画像形成装置100は、記録媒体である記録体としての用紙Sの両面に画像形成可能な両面画像形成装置であるが、用紙Sの片面に画像形成可能な片面画像形成装置であってもよい。
【0031】
画像形成装置100は、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
画像形成装置100は、画像形成装置本体の内部に、画像形成装置100において画像形成可能となっている各色の画像を形成するための画像形成部60と、用紙Sを画像形成部60に対向させながら鉛直方向に沿う方向である垂直方向に搬送する用紙搬送ユニットとしての搬送ユニットである搬送機構10とを有している。
【0032】
画像形成部60は、画像形成装置100において画像形成可能となっている各色の液体であるインクを液滴の状態で吐出する液体吐出体である液滴吐出体たるインク吐出体としてのヘッド61を有し、液体吐出装置としてのインク吐出装置を構成している。
【0033】
ヘッド61は、図1の紙面に垂直な方向に対応する主走査方向に移動しながら同図における左方である水平方向にインクを吐出して画像を形成するように、画像形成部60に備えられている。よって、画像形成装置100は、シリアル型画像形成装置となっている。
【0034】
画像形成装置100は、画像形成部60、搬送機構10の他に、用紙Sを多数枚積載可能であり積載した用紙Sを搬送機構10に向けて給送する給紙部である給紙トレイとしての給紙ユニット20と、搬送機構10によって鉛直上方に向けて搬送されてきた画像形成済み言い換えるとプリント済みの用紙Sをさらに上方向に搬送する排紙部30とを有している。
【0035】
画像形成装置100はまた、排紙部30によって搬送されてきた画像形成済みの用紙Sを多数積載可能な排紙トレイである排紙台71と、用紙Sの両面に画像形成を行うとき言い換えると両面印刷を行うときに、その一面言い換えると表面に画像形成が行われた用紙Sを排紙部30から取り込んで搬送機構10によって逆方向すなわち鉛直下方に搬送しながら反転させ、再度搬送機構10によって鉛直上方に搬送させてヘッド61との対向位置を通過させこの用紙Sの他方の面言い換えると裏面に画像形成を行わせるための反転部25とを有している。
【0036】
画像形成装置100はまた、画像形成部60の下方に位置しヘッド61に備えられている図示しないノズルの状態を維持し、また回復させるための維持回復機構40と、ヘッド61が図1に示すように同図中の左方である水平方向を向きインクを吐出して画像形成を行う配置状態とヘッド61が下方を向き維持回復機構40により後述するようにキャッピング等される配置状態との何れかに位置決めする駆動源としてのモータ90等を含む図示しないヘッド変位駆動手段と、画像形成装置100の動作全般を制御する図示しないCPU、メモリ等を含む制御手段としての制御部70とを有している。
【0037】
搬送機構10は、用紙Sをヘッド61に対向する位置に向けて垂直方向に間歇的に搬送するために、駆動ローラである搬送ローラ11と、搬送ローラ11に巻き掛けられた無端状の搬送ベルト12と、搬送ベルト12を搬送ローラ11とともに掛け渡した従動ローラ13と、搬送ローラ11を回転駆動する図示しない用紙搬送駆動手段とを有している。
【0038】
搬送機構10はまた、搬送ローラ11の下方において搬送ベルト12に当接しており搬送ベルト12に用紙Sを静電吸着させるために搬送ベルト12を帯電させる帯電ローラ14と、ヘッド61に対向する位置で搬送ベルト12の平面性を維持しかかる位置において用紙Sを平らにしてヘッド61との距離を保ち画像形成が良好に行われるように搬送ベルト12に内側に配設されたプラテン部材15と、図1における搬送ローラ11の右方において搬送ベルト12に当接しており給紙ユニット20から搬送されてきた用紙Sを搬送ベルト12に密着させ静電吸着させるための押さえコロ16とを有している。
【0039】
排紙部30は、搬送機構10によって搬送されてきた用紙Sをさらに搬送するための排紙搬送ローラ31およびこの排紙搬送ローラ31に当接した拍車32と、これら排紙搬送ローラ31および拍車32によって搬送されている用紙Sをガイドして排紙経路を形成しフェイスダウンで排紙させるための湾曲形状をなした排紙ガイド部材33と、排紙ガイド部材33によってガイドされた用紙Sを排紙台71上に排紙する排紙ローラ34およびこの排紙ローラ31に当接した拍車35とを有している。
【0040】
反転部25は、排紙ローラ34および拍車35によってその一部を排出された用紙Sが排紙ローラ34および拍車35によってスイッチバックして反転されたときにこの用紙Sをガイドし搬送機構10に向けて搬送するための反転経路を形成する反転ガイド部材36と、かかる用紙Sを、排紙ガイド部材33によって形成された排紙経路ではなく反転ガイド部材36によって形成された反転経路に導くための切り換え爪37と、反転ガイド部材36によってガイドされている用紙Sを搬送機構10に向けて搬送するための反転ローラ38およびこの反転ローラ38に当接した反転コロである拍車39とを有している。
【0041】
反転部25はまた、図1における従動ローラ13の左方において搬送ベルト12に当接し、反転ローラ38および拍車39によって反転ガイド部材36にガイドされ搬送されてきた用紙Sを搬送ベルト12に密着させ静電吸着させるための従動補助ローラである搬送補助ローラ26と、搬送補助ローラ26によって搬送ベルト12に密着され搬送ベルト12によって搬送された用紙Sを、帯電ローラ14を迂回させて搬送ベルト12と押さえコロ16との間に案内する迂回ガイド部材27とを有している。
【0042】
給紙ユニット20は、用紙Sを多数枚積載可能な給紙カセット21と、給紙カセット21に積載された用紙Sのうち最上位の用紙Sのみを搬送ベルト12と押さえコロ16との間に向けて給送するための給紙コロである給紙ローラ22および分離パッド23と、給紙ローラ22を回転駆動し用紙Sを給送させる図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。
【0043】
維持回復機構40は、図示を省略するが、ヘッド61が下方を向いた配置状態でヘッド61のノズル面のキャッピングを行うキャップと、かかる配置状態でノズル面のワイピングを行うワイパ部材としてのワイパブレードと、かかる配置状態でノズル内のインクを吸引してヘッド61のクリーニングを行うポンプ吸引ユニットを備えたクリーニング手段と、かかる配置状態で増粘したインクをノズルから排出するために予備吐出である空吐出が行われた場合にインクを受ける空吐出受けと、ヘッド変位駆動手段の動作時にこれらがヘッド61等に当接することを防止するとともにかかる配置状態が形成されるようにこれらを上下動させる変位手段とを有している。
【0044】
画像形成部60は、ヘッド61の他に、ヘッド61にインクを供給する供給系をなす液体供給装置としてのインク供給装置80を有している。
【0045】
インク供給装置80は、ヘッド61に供給されるインクを収容した液体タンクであるメインタンクとしてのインクカートリッジ81と、ヘッド61を支持したヘッド支持体として機能し、インクカートリッジ81内のインクを供給され一時的に貯容するとともに貯容したインクがヘッド61から用紙Sに吐出されるインク収容容器としてのヘッドタンクであるサブタンク50とを有している。
【0046】
インク供給機構80はまた、サブタンク50を内部に収容したキャリッジ82と、キャリッジ82をサブタンク50およびヘッド61とともに主走査方向に摺動自在に支持した軸部である支持部材としてのガイドロッド51と、キャリッジ82をサブタンク50およびヘッド61とともにガイドロッド51に沿ってスライドさせ主走査方向に駆動する図示しない主走査駆動手段とを有している。
【0047】
インク供給機構80はまた、インクカートリッジ81とサブタンク50とを接続しインクカートリッジ81内のインクをサブタンク50に供給する供給経路を構成した供給チューブであるチューブ83と、インクカートリッジ81内のインクをチューブ83を介してサブタンク50内に供給するときにサブタンク50の内部を開放するように制御部70によって動作を制御される開放機構84と、開放機構84によってサブタンク50の内部が開放された配置状態でインクカートリッジ81内のインクをチューブ83を介してサブタンク50内に圧送するための、制御部70によって動作を制御される図示しないポンプとを有している。
【0048】
インクカートリッジ81は、内部のインクが消費されて残り少なくなったときあるいはなくなったとき等に新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、画像形成装置本体に対して着脱可能となっている。
【0049】
ガイドロッド51は、主走査方向に沿って突設された凸条51aを有している。凸条51aは、キャリッジ82がサブタンク50およびヘッド61とともに自由に回転することを禁止している。
【0050】
サブタンク50は、ヘッド変位駆動手段によってガイドロッド51が回転駆動されることで、キャリッジ82とともに回転駆動され、ヘッド61が同図中の左方である水平方向を向きインクを吐出して画像形成を行う配置状態となる図1に示す第1の配置状態としての第1の態位であるホームポジションとヘッド61が維持回復機構40によりキャッピング等される配置状態となる第2の配置状態としての第2の態位であるキャッピング位置との何れかに位置決めされるものであり、この回転駆動のときの回転中心がガイドロッド51となっている。
【0051】
サブタンク50は、開放機構84によって駆動されサブタンク50の内部を開放する大気開放部としての弁部52を有している。チューブ83はサブタンク50に接続されている。そして、弁部52は、開放機構84によって駆動されサブタンク50の内部が開放されたときに、チューブ83内を圧送されてきたインクを、チューブ83からサブタンク50の内部に流入させるとともに、インクの流入に伴ってサブタンク50の内部から外部への空気を排出する機能を担っている。
【0052】
なお、サブタンク50には、インク漏れ防止等の目的で、内部に負圧を形成する負圧形成手段を設けても良い。またサブタンク50は、ヘッド61と一体で回動するものあれば、インクカートリッジ81のようなインクタンクとして備えられるものであっても良い。
【0053】
サブタンク50は、ヘッド変位駆動手段の駆動によって回動することで、鉛直方向すなわち図1における紙面の上下方向におけるヘッド61の位置が変化する態様で、第1の配置状態と第2の配置状態とを有する。このとき、開放機構84の少なくとも一部は、サブタンク50の回動に伴って、弁部52の駆動を可能な、弁部52に対向した配置状態を保つように左右方向に変位するようになっている。
【0054】
これにより、開放機構84においては、弁部52を駆動するアクチュエータ等が第1の配置状態と第2の配置状態とに共通して用いられており、低コスト化が図られている。なお、開放機構84は、アクチュエータ等の機構を、後述するように、第1の配置状態、第2の配置状態のそれぞれについて設けられたものであっても良い。画像形成装置100は、ヘッド61が横向きの姿勢でインクを吐出するいわゆる水平打ちを採用していることから、画像形成装置100はいわゆる縦置きプリンタとなっており、設置スペースの省スペース化が図られたものとなっている。
【0055】
インクカートリッジ81、サブタンク50、チューブ83、開放機構84、ポンプはそれぞれ、画像形成装置100において用いられるインクの各色毎に備えられている。ヘッド61は、鉛直方向に沿って多数のノズルを備えたノズル列を備えている。このノズル列は、画像形成装置100において用いられるインクの各色にそれぞれ対応して備えられている。これらのノズル列は、主走査方向に並設されている。
【0056】
サブタンク50は画像形成装置本体に固定で配置されている。ただし、サブタンク50は、ヘッド61に劣化等が生じたときにこれらが新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、ヘッド61と一体で、画像形成装置本体に対して着脱可能としても良い。
サブタンク50のその余については後述する。
【0057】
このような構成の画像形成装置100においては、画像形成開始の旨の所定の信号の入力によりサブタンク50が第1の配置状態であるとともに給紙ユニット20から一枚の用紙Sが搬送機構10に供給される。搬送機構10に供給された用紙Sは、搬送ベルト12に静電吸着されて搬送される。
【0058】
この用紙Sの表面がヘッド61に対向する位置を移動する過程で、用紙搬送駆動手段が間歇的に駆動される。そして、用紙Sの搬送が停止されたタイミングで、形成すべき画像に応じてヘッド61からインクが吐出され、用紙Sの表面に、たとえばヘッド61のノズル面に形成されたノズル領域の長さに相当する幅の画像が形成される。かかる幅の画像が形成されると、用紙Sの搬送がかかる幅だけ行われ、再度用紙Sの搬送が停止される。この繰り返しによって用紙Sに画像の全体が形成される。他の例としてドット形成順序が前後するインターレースによって画像を形成しても良い。
【0059】
画像の全体が形成された用紙Sは、排紙部30によって排紙台71上にそのまま排出されて積載されるか、反転部25によって反転されたうえで再度ヘッド61に対向する位置を搬送され、このときにもう一方の面に画像を形成されたうえで排紙部30によって排紙台71上に排出されて積載される。
【0060】
このような画像形成が終了した場合、あるいはこのような画像形成を繰り返してヘッド61がインクの詰まり等によりクリーニングすべき状態となった場合には、サブタンク50が第1の配置状態から第2の配置状態に変位してヘッド61が維持回復機構40によってキャッピングされ、クリーニングの必要に応じてインクの吸引動作等が行われること等によってヘッド61がクリーニングされる。
【0061】
一方、画像形成やクリーニングを行うと、サブタンク50内のインク量が減少するため、サブタンク50内にインクを適宜補給する必要がある。
そこで、図2に示すように、サブタンク50は、サブタンク50内のインク量を検知するための複数の検知部材として電極ピンである棒状の電極53a、53bと、各電極53a、53bを固定支持しているとともに、収容しているインクがヘッド61から吐出されるインク収容部54とを有している。このような構成および以下述べる各構成、動作等は、画像形成装置100において用いられるインクの各色に対応した各サブタンク50に共通である。
【0062】
符号52aは、弁部52に備えられた大気開放弁としての弁を示している。弁部52は、弁52aの他に、開放機構84の駆動力が作用していない状態ではインク収容部54をサブタンク50外の空間に対して密閉するように弁52aを付勢した図示しない付勢部材を有している。弁52aは、開放機構84の駆動力が作用すると、弁部52がインク収容部54の内部を開放した状態となり、インク収容部54内の空気を外部に逃がすとともにチューブ83から供給されるインクがインク収容部54内に流入することを許容する。
【0063】
電極53a、53bは、インク収容部54内のインクを介して電流が流れることでインクを検知するものであり、画像形成装置本体内には、各電極53a、53bに接続された図示しない電源及び電流計等を備えた回路が設けられている。
【0064】
電流計には、制御部70が接続されており、電流計によって電流が流れたことが検知された状態で、制御部70により、インク収容部54内のインクが電極53a及び電極53bに接触するレベルにあると認識される。
【0065】
このように、電極53a、53bは、インク収容部54内のインクの液面を検知することでインク量の不足を検出するためにインク収容部54内のインク量を検知するインク量検知手段としてのインク量検知センサ、液面検知センサとして機能するものであって、これらがインクに浸っているか否かに関する信号が制御部70に入力されるものとなっている。サブタンク50が第1の配置状態、第2の配置状態の何れかを占めている配置状態において、電極53a、53bの少なくとも一方がインクに浸っていない配置状態は、インクの不足を生じている配置状態であって、インクをインク収容部54内に供給すべき配置状態である。
【0066】
制御部70は、かかる信号に基づいて、電極53a、電極53bの少なくとも一方がインクに浸っていない場合にインク収容部54内のインクが不足しているとの判断を行い、開放機構84を駆動するとともに、電極53a、電極53bの双方がインクに接触するまでインク供給機構80のポンプを駆動して、インクカートリッジ81内のインクをインク収容部54内に流入させる。
【0067】
サブタンク50は、ヘッド変位駆動手段により、図2の紙面に平行な面内で回転駆動される。よって、図2の紙面に平行な面は、サブタンク50、インク収容部54の回転面に平行である。インク収容部54は、サブタンク50の回転面による断面が正方形をなすようになっているが、後述するようにこの形状に限られるものではない。
【0068】
電極53a、53bは、サブタンク50が第1の配置状態であるときと第2の配置状態であるときとでインク収容部54の回動中心に対する位相が変化するとともに、インク収容部54の回転面内で互いに異なる方向を向くように、インク収容部54に配設されている。具体的には、電極53aは、図2(a)に示す、サブタンク50が第1の配置状態であるときにおいて、インク収容部54の天井面となる面に配設されており、電極53bは、図2(b)に示す、サブタンク50が第2の配置状態であるときにおいて、インク収容部54の天井面となる面に配設されている。なお、電極53a、53bは、図2の紙面に垂直な方向における位置が互いにずれていても良く、インク収容部54の同一の回転面に投影された配置状態で互いに異なる方向を向いていれば良い。また電極53a、53bは、インク収容部54の回転面に対してねじれの態様で配設されていても良い。
【0069】
電極53a、53bをこのように配設した意義について説明する。
たとえば、かりに、図9ないし図11に示すように、2つの電極53をインク収容部54の同じ面に互いに同じ方向を向くように配設したサブタンク50’を考える。
これらの図に示した構成において、各電極53は何れも、第2の配置状態に対応する各図(a)に示した配置状態におけるインク収容部54の天井面に、下方を向くように配設されている。
【0070】
各図(a)に示す配置状態において各電極53がインクに接触したインク量を、インク収容部54におけるインクの適正量であるとすると、たとえば、インク収容部54内のインク量が図9(a)の破線部の位置まで低下しインク量が不足した状態にある場合であっても、同図(b)に示すように第1の配置状態に対応する配置状態ではインクの不足が検知されないこととなる。なお、図9(c)、図10(c)は、ヘッド61が同図(b)と逆方向にインクを吐出する場合を示しており、図9(c)に示した場合も同様に、インク収容部54内のインク量が図9(a)の破線部の位置まで低下しインク量が不足した状態にある場合であっても、インクの不足が検知されない。図10(c)に示した場合については次に述べる。
【0071】
図10に示すように、インク収容部54内のインク量が同図(a)の破線部の位置まで低下しインク量が不足した状態にある場合であっても、各電極53の位置を調整すれば、同図(b)に示すように第1の配置状態に対応する配置状態ではインクの不足が検知され得るが、同図(c)に示す配置状態では、やはりインクの不足が検知されない。なお、図9(b)、図10(b)の配置状態、図9(c)、図10(c)の配置状態の何れにおいてもインクを吐出する構成は、たとえば用紙Sの両面に画像形成可能な機種に採用されるものである。
【0072】
また、各電極53を、インク収容部54の同じ面に配設すると、インク収容部54内のインク量が図11(a)に示すように不足した状態にある場合であっても、同図(b)に示すように、インクの表面張力によりインクが各電極53に接触し、インク量が十分であると誤検知され得る。
【0073】
しかしながら、画像形成装置100、サブタンク50において採用されている電極53a、53bによれば、インク収容部54の回転面内で互いに異なる方向を向くように、インク収容部54に配設されているため、サブタンク50が第1の配置状態であるとき、第2の配置状態であるときの何れにおいても、インク量が不足した状態にあるか否かが適正に検知される。
【0074】
なお、図10に示した不具合は、電極53a、53bの間の距離を調整することによって解消されうるが、同図に示した構成においては、インク収容部54の形状によっては電極53a、53bの間の距離を大きくとることが難しい場合がある。これに対し、画像形成装置100、サブタンク50において採用されている電極53a、53bの配設位置は比較的自由度が高いため、図10に示した不具合も生じにくい。
【0075】
電極53a、53bは、インク収容部54の回転方向において、インク収容部54の隣接する面にそれぞれ備えられている。
弁部52、弁52aは、かかる隣接する2つの面の接続部分言い換えるとインク収容部54の角部に位置している。
【0076】
よって、弁部52は、電極53aと電極53bとの間に位置しており、弁52aは、サブタンク50が第1の配置状態である場合であっても第2の配置状態である場合であっても、所定方向具体的には上方から駆動可能となっており、上方から押圧されるとインク収容部54内の空気を外部に逃がすとともにチューブから供給されるインクがインク収容部54内に流入する状態となる。
【0077】
そのため、開放機構84は、弁52aを押圧する機構を、弁52aを所定方向である上方から押圧するように備えているとともに、サブタンク50の回動に伴って、かかる機構が、弁部52に上方から対向した状態を保つように左右方向に変位するように備えている。そして、これによって上述のように低コスト化が図られているのであるが、事情によっては、かかる機構を、第1の配置状態、第2の配置状態のそれぞれについて設けても良く、この場合、弁部52の構成は、たとえば図9ないし図11に示すように、弁52aの位置が角部からずれた位置を占めていても良い。弁52が同じ方向から駆動されるのであれば、ヘッド位置がメンテナンス時を含め水平打ちの配置状態で固定されるような構成の画像形成装置、あるいはヘッド位置が従来に多くあるようにいわゆる垂直打ちの配置状態で固定されるような構成の画像形成装置にも、かかる機構の構成を共通化可能である。
【0078】
ただし、電極53a、53bは、インク収容部54の形状によっては、インク収容部54の回転方向において、インク収容部54の隣接する面にそれぞれ備えられるとは限らない。サブタンク50の回転面によるインク収容部54の断面形状は、構造や説明が簡易であること等の観点から正方形状としたが、これに限られない。電極53a、53bが設けられるインク収容部54の面が曲面であっても良い。
【0079】
電極53a、53bは、インク収容部54内部側の端部が、それぞれが設けられた面からインク収容部54内に向けて突設されており、電極53a、53bの端部はともに、サブタンク50が第1の配置状態である場合、第2の配置状態である場合の何れにおいても、弁部52より下方に位置している。よって、インク収容部54内にインクが供給された場合、サブタンク50が第1の配置状態である場合、第2の配置状態である場合の何れにおいても、インクは、通常、弁部52のレベルに達する前に供給が停止されることとなり、弁部52に流入することはない。
【0080】
また、電極53a、53bは、それぞれが設けられた面に直角をなすように突設されている。よって、サブタンク50が第1の配置状態である場合と第2の配置状態である場合とでは、電極53a、53bは、延設方向が縦と横との間で変化するだけであるため、各配置状態におけるその先端位置のレベルが、たとえば図9ないし図11に示した各電極53のレベルに一致するように配置すれば、図9ないし図11に示した場合におけるインク量の制御と同じ制御でインク量が制御され、制御が共通化され得る。また、たとえば、画像形成装置100が傾斜した状態で設置され、図3に示すように、サブタンク50が傾斜した配置状態で使用される場合であっても、インクが電極53a及び電極53bに接触する範囲でインク量が制御され、インク量の誤検知によってインクがサブタンク50から溢出することが防止される。
【0081】
ただし、電極53a、53bは、サブタンク50、インク収容部54の形状等によっては、かかる突設の態様でなく、それぞれが設けられる面に面一で設けられても良い。しかしながら、かかる突設の態様で設けると、上述の利点の他、次のような利点も得られる。
【0082】
すなわち、図4に示すように、電極53a、53bを、第1の配置状態と第2の配置状態とで高さの異なるインク面位置を検知するように、互いに異なる高さで、言い換えるとそれぞれが設けられた面からの突出量が互いに異なるように、インク収容部54に突設すれば、第1の配置状態におけるインク量と第2の配置状態におけるインク量とが異なるように制御される。
【0083】
同図に示した例では、電極53aの突設量が電極53bの突設量より大きくなっているため、同図(b)に示す第2の配置状態において検知するインク面位置が、同図(a)に示す第1の配置状態において検知するインク面位置よりも高くなっている。これにより、第2の配置状態においてメンテナンスを行うときにはインク収容部54内のインク量を多くしてメンテナンスが良好に行われるようにするとともに、第1の配置状態において印字等の画像形成を行うときはインク収容部54内のインク量の下限量が検知され画像形成が良好に行われるようになっている。なお、かかる突出量の関係は、他の理由があれば、逆転するようにしても良い。
【0084】
電極53a、53bの少なくとも1つは、少なくとも先端部が分岐していても良い。図5は、電極53a、53bがともに、その基部を除いて分岐している構成を示している。このように、先端部が分岐しているとともに電気的に接続された構成では、汚れ等の何らかの原因で電極53a、53bのインクに接触する部分が導電しなくなったときに、他の先端部が導電すれば、インク量の制御が継続して行われる。分岐する数は2つでなく3つ以上であっても良い。
【0085】
電極53a、53bの、少なくとも先端部が分岐していることには、その全体が分離した構成を含む。図6は、電極53a、電極53bがそれぞれ、2本に分かれ、電極53a1、53a2、電極53b1、53b2となった構成を示している。このように、インク収容部54の各面に電極事態を複数設けて、フェイルセーフがなされるように、すなわちインク量の制御の不具合が回避されるようにしても良い。
【0086】
とくに、同図に示した構成では、電極53a1と電極53a2との突出量を互いに異ならせているとともに、電極53b1と電極53b2との突出量を互いに異ならせている。このようにすれば、図5に示した構成のようにフェイルセーフに用いることが可能である他、電極53a1、53a2、53b1、53b2の適宜の組合せによってインク量を検知することで、適宜、第1の配置状態及び/又は第2の配置状態において、複数のインク量による制御が可能となる。
【0087】
図7に示すように、サブタンク50は、インク収容部54の外側に、インク収容部54から溢れたインクを収容するインクバッファ部55a、55bを備えていても良い。インクバッファ部55aは、第1の配置状態である場合にインク収容部54から溢れたインクを収容し、インクバッファ部55bは、第2の配置状態である場合にインク収容部54から溢れたインクを収容する。よって、インクカートリッジ81からインク収容部54内へのインクの供給の停止動作が遅れたような場合に、余剰のインクは、インクバッファ部55aあるいはインクバッファ部55bに流入し、サブタンク50から溢出することが防止される。
【0088】
第1の配置状態を占めている場合にインク収容部54から溢れインクバッファ部55aに収容されたインクは、サブタンク50の回転に伴い第2の配置状態を占めたときにインク収容部54内に戻される。また同様に、第2の配置状態を占めている場合にインク収容部54から溢れインクバッファ部55bに収容されたインクは、サブタンク50の回転に伴い第1の配置状態を占めたときにインク収容部54内に戻される。よって、インクカートリッジ81からサブタンク50に一旦供給されたインクは、インク収容部54を経て無駄なくヘッド61から吐出され、有効に利用される。ただし、インクバッファ部55a、インクバッファ部55bは、何れか一方だけ備えられていても良い。
【0089】
以上の各構成例では、電極53a、53bあるいは電極53a1、53a2、53b1、53b2が、第1の配置状態、第2の配置状態にそれぞれ対応してインク収容部54の2つの面に配設されているが、図8に示すように、同図(a)に示す第1の配置状態、同図(b)に示す第2の配置状態のほかに、同図(c)に示す他の第2の配置状態がある場合には、これに合わせて電極53cをかかる2つの面と異なる面に設けても良い。同図(a)に示した配置状態と、同図(c)に示した配置状態とは、同図(b)に示した配置状態から、サブタンク50を互いに逆方向に回転させることによって形成される配置状態であるため、同図(b)に示した配置状態で待機しておけば、同図(a)に示した配置状態と、同図(c)に示した配置状態との何れかが必要に応じて速やかに形成される。
【0090】
同図(c)に示した配置状態は、図9(c)、図10(c)に示したのと同様に、ヘッド61が図8(b)に示した場合と逆方向にインクを吐出する場合であっても良いし、インクの吐出と異なることを行う場合、たとえば、維持回復機構40におけるキャッピング機能とクリーニング機能とを分離して、これらの機能を図8(b)の配置状態と図8(c)の配置状態とに振り分けた場合のような場合であっても良い。
【0091】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0092】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0093】
50 インク収容容器
52 弁部
53a、53b 複数の検知部材
53a1、53a2、53b1、53b2 複数の検知部材
54 インク収容部
55a、55b インクバッファ部
61 ヘッド
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0094】
【特許文献1】特開2010−5843号公報
【特許文献2】特開2010−5845号公報
【特許文献3】特許第3684022号公報
【特許文献4】特開平10−6521号公報
【特許文献5】特開2004−188933号公報
【特許文献6】特開平2−201123号公報
【特許文献7】特開平9−262987号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するヘッドと一体であり、回動により、前記ヘッドの位置が変化する態様で、少なくとも、前記ヘッドからインクを吐出する第1の配置状態と、第1の配置状態と異なる第2の配置状態とを有するインク収容容器であって、
前記ヘッドから吐出するインクを収容したインク収容部と、
このインク収容部内のインクを介して電流が流れることでインクを検知する複数の検知部材とを有し、
前記複数の検知部材は、インク収容容器が第1の配置状態であるときと第2の配置状態であるときとで前記インク収容部の回動中心に対する位相が変化するとともに、同インク収容部の回転面内で互いに異なる方向を向くように、同インク収容部に配設されているインク収容容器。
【請求項2】
請求項1記載のインク収容容器において、
前記複数の検知部材は、第1の配置状態と第2の配置状態とで高さの異なるインク面位置を検知するように、互いに異なる高さで前記インク収容部に突設されていることを特徴とするインク収容容器。
【請求項3】
請求項2記載のインク収容容器において、
前記複数の検知部材は、第2の配置状態において検知するインク面位置が第1の配置状態において検知するインク面位置より高くなるように、互いに異なる高さで前記インク収容部に突設されていることを特徴とするインク収容容器。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載のインク収容容器において、
前記複数の検知部材の少なくとも1つは、少なくとも先端部が分岐していることを特徴とするインク収容容器。
【請求項5】
請求項4記載のインク収容容器において、
前記複数の検知部材が、第1の配置状態と第2の配置状態とで高さの異なるインク面位置を検知するように、前記少なくとも先端部が分岐している検知部材の、同先端部の高さを異ならせたことを特徴とするインク収容容器。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載のインク収容容器において、
所定方向から駆動されることで前記インク収容部内の空気を外部に逃がす弁部を有し、
第1の配置状態と第2の配置状態とで前記弁部が同一方向から駆動されるように、同弁部を、前記複数の検知部材の間に配設したことを特徴とするインク収容容器。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1つに記載のインク収容容器において、
前記インク収容部から溢れたインクを収容するインクバッファ部を有することを特徴とするインク収容容器。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか1つに記載のインク収容容器を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−158159(P2012−158159A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21106(P2011−21106)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】