インク収納容器と再充填インク収納リサイクル容器
【課題】
頂点(部)を持つプリズム被検知部では、オリジナルの状態は無論のことインクが再充填された場合は特にその能力が低下するという課題がある。また一方で、顔料や染料の分子量が大きくなってきた現状では、会合や凝集でさらに大型化するため、表面エネルギーも大きく変化してくることが原因として推定される。
【解決手段】
インクを直接収納するインク室内の相対的に下側に位置し互いに対向しつつ相対的に上方に向かう第1斜面及び第2斜面を備えた光学的被検知部が、相対的に上方に向かい前記対向する第1斜面及び第2斜面の上部と連続するとともに前記第1斜面及び第2斜面の表面エネルギーよりも高い表面エネルギーである上面を備えているインク収納容器。
頂点(部)を持つプリズム被検知部では、オリジナルの状態は無論のことインクが再充填された場合は特にその能力が低下するという課題がある。また一方で、顔料や染料の分子量が大きくなってきた現状では、会合や凝集でさらに大型化するため、表面エネルギーも大きく変化してくることが原因として推定される。
【解決手段】
インクを直接収納するインク室内の相対的に下側に位置し互いに対向しつつ相対的に上方に向かう第1斜面及び第2斜面を備えた光学的被検知部が、相対的に上方に向かい前記対向する第1斜面及び第2斜面の上部と連続するとともに前記第1斜面及び第2斜面の表面エネルギーよりも高い表面エネルギーである上面を備えているインク収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的被検知部と、相対的に下側に位置するインク供給部と、を備えたインク収納容器及び再充填インクが再充填された再充填インク収納リサイクル容器に関し、そのインク収納容器を含むカートリッジ、及び、そのカートリッジを用いる記録装置に関し、特に、インクジェット方式に従って記録を行なう記録ヘッドにインクを供給するインク収納容器、及び、そのインク収納容器を含むカートリッジ、及び、そのカートリッジを用いる記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の染料分子や染料集合体あるいは顔料(以下、色材と呼ぶ)は、その性能(耐光性や発色性など)を向上するため、分子量が大きくなってきている。そのため、インク収納容器内では、色材の沈降や凝集が起こり、種種の問題を引き起こしている。この問題の中でも良く知られていることは、インク収納容器内のインクを直接、収納するインク室でインクが高濃度になったりすることである。
【0003】
また、インク室のインク残量を光学的に検知させるためのプリズム(被検知部)を設けるものがあるが、上述した問題として「色材がプリズム表面に付着することによる誤検知」が発生している。
【0004】
特許文献1は、この誤検知を防止するため、ピラミッド形状の頂点(部)を持つプリズム斜面の表面エネルギーをインク収納容器の大きな面領域に対して相対的に低くする、低表面エネルギー処理(撥水剤を塗布)を開示している。しかし、この撥水剤の塗布処理はその斜面全体を均一に塗布することが難しく、表面エネルギーが不均一になりやすい。そのため、色材が付着することがしばしば見られ、再充填を行ったりするとその付着量は多くなりやすい傾向がある。つまり、この技術自体は、ピラミッド形状の頂点(部)を持つプリズムを前提としているため、結果的にその斜面に上述した色材が付着してインク残量検知に誤動作を引き起こす。したがって、この特許文献1が開示する技術は、安定した製造が難しく、製造工程の複雑さをもたらし、長期にわたる性能を維持できない問題がある。
【0005】
また、特許文献1には、従来技術として、光学的インク残量検出を行う場合、「光路に含まれる構成要素にインク液滴が付着するのを防ぐために撥水処置を施し、インク収納容器のインク量が減少した場合にも、そのインク液滴が光路に含まれる構成要素の表面に付着してインク残量検出の誤動作を回避する構成も知られている」と記載されている。
【0006】
さらに、「例えば、特許文献2には、光路に含まれる構成要素である光の反射板やインク収納容器の側壁面などにインク滴の付着を防ぐための撥水処理剤としてシリコンやテトラフロロエチレン樹脂を用いる構成が開示されている。また、特許文献3は、光路に含まれる構成要素であるインク収納容器の内壁面を研磨してその面粗度を小さくしてインクとインク収納容器内壁面との接触角を大きくする代わりに、その内壁面に撥水・撥油処理などの表面処理を施すことを開示している。」とも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特登録第3595743号公報
【特許文献2】特開平7−237300号公報
【特許文献3】特開平8−187873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の公知技術の問題を解決するための発明であって、ピラミッド形状の頂点(部)を持つプリズム被検知部の能力を下げずに、撥水剤も不要化できる新規な光学的被検知部を備えたインク収納容器を提供することを第1の目的とするものである。
【0009】
本発明は、上述の背景技術では、ピラミッド形状のプリズム表面ばかり問題対象としているが、インク収納容器底面に付着堆積してくる色材を課題認識していない。この堆積問題は、少なくともピラミッド形状のプリズム周辺のインク収納容器底面において深刻な問題で、インク収納容器を再利用する場合にはさらに大きな問題となる。本発明は、この新たな問題を解決することを第2の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明第1発明は、第1の目的を達成するもので、インクを直接収納するためのインク室と、前記インク室内の相対的に下側に位置し互いに対向しつつ相対的に上方に向かう第1斜面及び第2斜面を備えた光学的被検知部と、相対的に下側に位置するインク供給部と、を備えたインク収納容器において、前記光学的被検知部は、前記第1斜面の表面エネルギー及び第2斜面の表面エネルギーのそれぞれよりも高い表面エネルギーであって、前記第1斜面及び第2斜面よりも相対的に上方に位置する接液面を有していることを特徴とするインク収納容器である。
【0011】
本発明第2発明は、第2の目的を達成するもので、再充填されたインクを直接収納しているインク室と、前記インク室内の相対的に下側に位置し互いに対向しつつ相対的に上方に向かう第1斜面及び第2斜面を備えた光学的被検知部と、相対的に下側に位置するインク供給部と、を備えた再充填インク収納リサイクル容器において、前記光学的被検知部は、前記第1斜面の表面エネルギー及び第2斜面の表面エネルギーのそれぞれよりも高い表面エネルギーであって、前記第1斜面及び前記第2斜面よりも相対的に上方に位置する接液面を有していることを特徴とする再充填インク収納リサイクル容器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明第1,2発明は、上述したような、原因となる塊合あるいは凝集した色材を、前記第1斜面及び前記第2斜面に付着する前に、上記「上面」が積極的に付着せしめる領域として機能するために、上記課題であるインクの色材濃度上昇を防止でき、被検知部の機能を安定せしめることができる。特に、本発明第2発明は、再充填インクに対しても、前記第1斜面及び前記第2斜面に色材が付着することを防止できるので、光学的被検知部の第1斜面及び第2斜面の機能を維持し、長期的な安定性をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施例の部分断面を含むインクカートリッジの側面図である。
【図2】図1の底面部の横断面を上方から見た略図である。
【図3】図1の上面部の横断面を上方から見た略図である。
【図4】図1のプリズム被検知部を含む縦断面を側面から見た略図である。
【図5】図5は、図2,3にあわせた面から見た図1の反対側の側面図である。
【図6】本発明が適用されるインクジェット方式に従って記録を行う記録ヘッドを備えた記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図7】図6の記録装置の制御回路の構成を示すブロック図である。
【図8】図6のインク残量有無検出部25の詳細な構成を示すブロック図である。
【図9】図6のインク収納容器7と記録ヘッド1を備えたヘッドホルダ200の外観斜視図である。
【図10】図6に適用される本発明の変形例のインク収納容器7の内部構造を示す側断面図である。
【図11】図6のインク収納容器の底面に設けられた本発明が適用された光透過型プリズムとそのプリズムに光を照射する発光素子及びその光を受光する受光素子の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の第1実施例の部分断面を含むインクカートリッジの側面図で、図2は、図1の底面部の横断面を上方から見た略図、図3は、図1の上面部の横断面を上方から見た略図、図4は、図1のプリズム被検知部を含む縦断面を側面から見た略図、図5は、図2,3にあわせた面から見た図1の反対側の側面図である。これらの図において、Pは、台形プリズム(光学的被検知部)で、第1被検知面としての第1斜面P1と第2被検知面としての第2斜面P2と、上面である接液面U1を備えている。接液面U1の表面エネルギーは、第1斜面P1と第2斜面P2それぞれの表面エネルギーよりも高い。具体的には、インク中の色材のうち凝集あるいは会合した色材が、第1斜面P1と第2斜面P2よりも接液面U1に対して付着しやすい条件であればよい。特に、好ましくは、インク収納容器7のインク室72内のインク室底面Fの表面エネルギーよりも接液面U1の表面エネルギーは高いことが好ましく、インク室72内の底面に集合しやすい色材を台形プリズム接液面U1に付着せしめることができ、結果的にインク室内底部の色材濃度の上昇を抑えることができる。
【0015】
接液面U1の表面エネルギーを他の部分よりも高くする手法としては、公知の手法が採用できる。例えば、接液面U1の表面エネルギーを高くする方法は、型抜き製法の場合は、接液面U1の型の表面性を他の部分よりも低下する方法が採用でき、他の部分と同一に成型された場合は、接液面U1を後加工で粗面化する方法、あるいは、上面に対して第1斜面及び第2斜面の表面エネルギーを低下させてもよいが、被光学検知部としての第1斜面及び第2斜面は、色材の付着を防止できる程度の撥水性を維持していることが好ましい。例えば、上面に対する部分の表面を「1S」以下にして、被検知部の第1斜面及び第2斜面を「3S」で、撥水処理を施せば、特に効果的である。
【0016】
台形プリズム形状は、断面が台形のもので、等脚台形だけではなく、上面がある4角形でも欲、全体形状が、台形柱であってもよい。
【実施例】
【0017】
図6は本発明が適用されるインクジェット方式に従って記録を行う記録ヘッドを備えた公知の記録装置の槻略構成を示す斜視図である。
図6に示すように記録ヘッド1はこれにインクを供給するインク収納容器7とともに連結され一体となってインクカートリッジ20を構成する。なお、この実施形態ではインクカートリッジ20は後述するように記録ヘッド1とインク収納容器7とが分離可能な構成となっているが、記録ヘッドとインク収納容器とが一体化したインクカートリッジを用いても良い。
【0018】
また、インク収納容器7の底面にはインク残量検出を行うための光学プリズムが前述した本発明の構成要件をもっている。この記録ヘッドは、公知のインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、その熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式が用いられている。
【0019】
図6において、記録ヘッド1は図中下向きにインクを吐出する姿勢でキャリッジ2に搭載されており、キヤリッジ2をガイド軸3に沿って移動させながらインク液滴を吐出して記録用紙のような記録媒体(不図示)上に画像を形成していく。なお、キヤリッジ2の左右移動(往復移動)はキヤリッジモータ4の回転によりタイミングベルト5を介して行われる。キヤリッジ2には係合爪6が設けられ、インク収納容器の係合穴7aと係合して、キヤリッジ2にインク収納容器7は固定される。
【0020】
さて、記録ヘッド1走査分の記録が終了すると、記録動作を中断し、プラテン8上に位置する記録媒体をモータ9の駆動により所定量だけ搬送し、次いで再びキヤリッジ2をガイド軸3に沿って移動させながら次の1走査分の画像形成を行う。
【0021】
装置本体の右側には記録ヘッド1のインク吐出状態を良好に保つための回復動作を行う回復機器10が配設されており、回復機器10には記録ヘッド1をキャップするキャップ11、記録ヘッド1のインク吐出面を拭うワイパー12、及び、記録ヘッド1のインク吐出ノズルからインクを吸引するための吸引ポンプ(不図示)などが設けられている。
【0022】
また、記録媒体を搬送するためのモータ9の駆動力は本来の記録媒体搬送機構に伝達される他に、自動給紙装置(ASF)13へも伝達される。
【0023】
さらに、回復機器10の横側には赤外LED(発光素子)15及びフォトトランジスタ(受光素子)16から成るインク残量検出とインク収納容器有無検出を行うための光学ユニット14が設けられている。これらの発光素子15と受光素子16とは記録用紙の搬送方向(矢印Fの方向)に沿って並ぶように取り付けられている。光学ユニット14は装置本体のシヤーシ17に取り付けられている。インクカートリッジ20がキヤリッジ2に搭載され、
図1に示された位置より右方向へと移動すると、インクカートリッジ20は光学ユニット14上に位置するようになる。そして、インク収納容器7の底面より残量インクの有無を光学ユニット14によって検出することが可能となる。
【0024】
次に、上述した装置の記録制御を実行するための制御構成について説明する。
図7は記録装置の制御回路の構成を示すブロック図である。制御回路を示す図7において、1700は記録信号を入力するインタフェース、1701はMPU、1702はMPU1701が実行する制御プログラムを格納するROM、1703は各種データ(上記記録信号や記録ヘッド1に供給される記録データ等)を保存しておくDRAMである。1704は記録ヘッド1に対する記録データの供給制御を行うゲートアレイ(G.A.)であり、インタフェース1700、MPU1701、RAM1703間のデータ転送制御も行う。1705は記録ヘッド1を駆動するヘッドドライパ、1706、1707はそれぞれフィードモータ9、キヤリッジモータ4を駆動するためのモータドライバである。
【0025】
上記制御構成の動作を説明すると、インタフェース1700に記録信号が入るとゲートアレイ1704とMPU1701との間で記録信号がプリント用の記録データに変換される。そして、モータドライバ1706、1707が駆動されると共に、ヘッドドライバ1705に送られた記録データに従って記録ヘッド1が駆動され、記録が行われる。
【0026】
なお、1710は記録動作や記録装置の拭態に係る種々のメッセージを表示するLCD1711や記録動作や記録装置の状態を知らせる種々の色のLEDランプ1712を備えた表示部である。
【0027】
また、記録ヘッド1と一体となったインク収納容器7の残量インク有無を検出するインク残量検出部25の動作はMPU1701によって制御される。
図8はインク残量検出部25の詳細な構成を示すブロック図である。図8(A)に示すような構成において、MPU1701からの制御信号に基づいて、コントローラ32は、所定のデューティ(DUTY)比(%)のパルス信号をLED駆動回路30に出力して、そのデューティ比に従って光学ユニット14を構成する発光素子15を駆動して赤外光をインク収納容器7の底部に照射する。その赤外光は、インク収納容器7の底部の光学プリズム(以下、プリズムという)180で反射され、光学ユニット14を構成する受光素子16に戻ってくる。フォトトランジスタである受光素子16は受光した光を電気信号に変換し、その電気信号をローパスフィルタ(LPF)31に出力する。ローパスフィルタ(LPF)31は、受光素子16から入力した電気信号の内、高周波雑音をカットして周波数の低い信号のみをコントローラ32に送る。コントローラ32はローパスフィルタ(LPF)31の信号をA/D変換してデジタル信号に変換する。そして、変換された値はMPU1701に転送される。
【0028】
なお、
図8(B)に示しているように、発光素子15は赤外光28を発光するLEDであり、受光素子16は赤外光29を受光して、その受光強度に応じて電気信号を出力するフォトトランジスタである。これらのLEDとフォトトランジスタとは、図1に示すように、記録用紙の搬送方向に沿って並ぶように配置される。
【0029】
次に、本発明を好適に適用可能なインク収納容器の構成の概要について、
図9はインク収納容器7と記録ヘッド1を備えたヘッドホルダ200の外観斜視図である。
図9において、(A)はインク収納容器7がヘッドホルダ200から分離している状態を、(B)はインク収納容器7がヘッドホルダ200に取り付けられている状態を示す。また、図10はインク収納容器7の内部構造を示す側断面図である。まず、この実施形態におけるインク収納容器7は、略直方体状をなしており、その上壁7Uには、インク収納容器内部と通じる穴である大気連通口120が設けられている。
【0030】
また、インク収納容器7の下壁7Bには、筒状に突出した形態でインク供給口を有するインク供給筒140が形成されている。そして、物流過程では大気連通口120はフィルム等で、また、インク供給筒140はインク供給口密閉部材としてのキャップにより塞がれて密閉されている。160はインク収納容器7の外側に弾性変形自在に一体に成形されたレバー部材であり、その中間部に係止用突起が形成されている。200は、上述のインク収納容器7が装着される記録ヘッド一体型のヘッドホルダであり、この実施形態では、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)の各色のインク収納容器7(7C、7M、7Y)を収容する。ヘッドホルダ200の下部には各色のカラーインクを吐出する記録ヘッド1が一体的に設けられている。なお、ブラック(Bk)インクを収容したインク収納容器のみを、ヘッドホルダに装着し、モノクロ記録専用の記録ヘッドを構成してもよい。ヘッドホルダ200の底部には、後述するインク有無検知部が光学ユニット14とインク残量検出部25と協働して残量インクの有無を検知可能なように窓が設けられている。
【0031】
記録ヘッド1はその複数の吐出口が下向きに形成されている(以下、この吐出口が形成されているヘッドの面を吐出口形成面と称す)。そして、インク収納容器7は、
図9(A)に示す状態から、ヘッドホルダ200に、インク供給筒140が記録ヘッド1に設けられたインク供給筒受け部(不図示)に係合し、かつ、記録ヘッド1のインク通路筒がインク供給筒140内に進入するように押し込まれる。すると、レバー部材160の係止用突起160Aがヘッドホルダ200の所定箇所に形成された突起(不図示)に係合し、図9(B)に示す正規の装着状態が得られる。なお、インク収納容器7が装着された状態のヘッド一体型のヘッドホルダ200は、例えば、図6に示すような記録装置のキヤリッジ2にさらに搭載されプリント可能状態となる。このような状態で、インク収納容器7の底部とヘッドの吐出口形成面との問には所定の水頭差(H)が形成されることになる。
【0032】
次に、インク収納容器7の内部構造について、
図10を参照して説明する。この実施形態におけるインク収納容器7は、上部で大気連通口120を介して大気に連通し、一方下部でインク供給口に連通し内部に負圧発生部材としての吸収体320を収容する負圧発生部材収納室340と、液体のインクを収容する実質的に密閉された液体収納室360とに隔壁380でもって仕切られている。そして、負圧発生部材収納室340と液体収納室360とはインク収納容器7の底部付近で隔壁380に形成された連通口400を介してのみ連通されている。
【0033】
負圧発生部材収納室340を形成するインク収納容器7の上壁7Uには、内部に突出する形態で複数個のリブ420が一体に成形され、負圧発生部材収納室340に圧縮状態で収容される吸収体320と当接している。しかして、上壁7Uと吸収体320の上面との間にエアバッファ室440が形成されている。吸収体320は熱圧縮ウレタンフォームで形成されており、後述するように所定の毛管力を発生すべく、圧縮状態で負圧発生部材収納室340内に収容されている。この所定の毛管力を発生するための吸収体320のポアサイズの絶対値は、使用するインクの種類、インク収納容器7の寸法、記録ヘッド1の吐出口形成面の位置(水頭差H)等により異なる。
【0034】
また、インク供給口140Aを形成しているインク供給筒140内には、円柱状の圧接体460が配置されている。圧接体460は、例えば、ポリプロピレンのフェルトにより形成され、それ自体は外力により容易に変形しないものである。圧接体460は、上述のヘッドホルダ200に装着されていない図9(A)に示す状態において、吸収体320を局所的に圧縮するよう吸収体320に押し込まれた状態に保持されている。このために、インク供給筒140の端部には、圧接体460の周辺に当接するフランジが形成されている。
【0035】
このような負圧発生部材を収容するとともに液体供給口と大気連通部とを備える負圧発生部材収容室と、その負圧発生部材収納室と連通する連通部を備えるとともに実質的な密閉空間を形成する液体収納室とを有する構成のインク収納容器においては、記録ヘッド1により吸収体320のインクが消費されると、液体収納室360からインクが隔壁380の連通口400を通じて負圧発生部材収納室340の吸収体320に供給される。この時、液体収納室360内は減圧されるが、大気連通部120から負圧発生部材収納室を経由した空気が隔壁380の連通口400を通じて液体収納室360に入り、液体収納室360内の減圧は緩和される。従って、記録ヘッド1によりインクが消費されてもその消費量に応じてインクが吸収体320に充填され、吸収体320は一定量のインクを保持し、記録ヘッド1に対する負圧をほぼ一定に保つので、記録ヘッド1ヘのインク供給が安定する。その後、液体収納室360内のインクを消費すると、吸収体320内のインクが消費されてゆく。従って、このようなインク収納容器の液体収納室360にインク残量検出機構の一部となる台形プリズムPを設け、液体収納室360内のインクを消費したことをユーザに知らせ収納容器を交換させることで、インク付着の問題を解決し、記録装置を使用することが可能になる。
【0036】
この実施形態では台形プリズムPが上述したインク有無検知部として機能する。台形プリズムPは第1,2斜面の延長となる仮の頂角が90°となる二等辺三角形の2面と、上記接液面U1を備える被検知部で、頂角を含む上部を除いた台形プリズムの形をしている。そして、接液面U1の表面エネルギーは、第1斜面P1と第2斜面P2それぞれの表面エネルギーよりも高い。
【0037】
台形プリズムPの被検知部の第1,2斜面に色材が付着するのを防止するための撥水性を高める処理について述べる。この処理はプリズム面の表面エネルギーをインク収納容器の他の領域に対して相対的に低くする処理であり、以下、低表面エネルギー処理と呼ぶ。
【0038】
この実施形態において使用する低表面エネルギー処理を行う処理剤としては後述する実施例1、実施例2のような組成のものが挙げられる。さて、各実施例においてアルキルポリシロキサンの濃度を4部としているが、低表面エネルギー処理剤中のアルキルポリシロキサンの含有量は1〜20重量%、より好ましくは2〜8重量%の範囲である。
【0039】
また、アルキルポリシロキサンの溶剤としてのアルコール類として2−プロパノールと、2−メチル−2プロパノールを用いているが、本発明はこれらに限定されるものではなく、揮発性のアルコール類、水可溶性の揮発性有機溶剤も使用可能である。
【0040】
また、この実施例において、酸物質としてベンゼンスルホン酸を用いているが、これ以外にも硫酸、硝酸、塩酸、芳香族スルホン酸、脂肪族スルホン酸等の強酸性の物質を使用することもできる。
【0041】
ここで説明している低表面エネルギー処理は、このような組成の低表面エネルギー処理剤を、針径26Gのニードル(注射針)を用いて、台形プリズムPの第1,2斜面にそれぞれ半滴(約1.0mg)滴下塗布し、塗布後自然乾燥することで行われる。このような低表面エネルギー処理により、インク収納容器7の台形プリズムPのインク収納容器内側に露出した第1,2斜面には単位面積(1平方ミリメートル)当り3.0〜4.0(μg/平方ミリメートル)のアルキルポリシロキサンが塗布されることが好ましい。
【0042】
ここで、低表面エネルギー処理剤は前述したように、あまり多く塗布し過ぎるとプリズム表面に吸着できなくなる恐れがあり、これとは反対にその塗布量があまりに少ないと十分に低表面エネルギー処理がなされない恐れがある。従って、低表面エネルギー処理剤による低表面エネルギー処理される部分(ここでは、台形プリズム斜面のみ)に塗布されるアルキルポリシロキサンは1〜15μg/mm2の範囲にあることが望ましい。
【0043】
以上説明した方法により、インク収納容器は、光学的インク残量有無の検出において光路に含まれるプリズム面にアルキルポリシロキサンを含む低表面エネルギー処理剤による低表面エネルギー処理が施されるので、接液面U1及びその容器の内壁の他の領域に対し、相対的にプリズム面の表面エネルギーが低くなる。
【0044】
次にこの低表面エネルギー処理を、台形プリズムPの上面である接触液面U1を除く、第1,2斜面及びインク室底面に施し、台形上面が第1,2斜面及びインク収納容器底面よりも表面エネルギーが高い状態にした本発明実施例の効果を実証するために、以下のような比較実験を行った。
【0045】
この実験には、以下の組成の水性顔料インクを用いた。このインクは、分散剤を用いない自己分散タイプの顔料である。
・水性顔料インク組成
マイクロジェットCW1顔料(オリエント化学工業株式会社製) 5部
ジエチレングリコール(水溶性有機溶剤) 5部
グリセリン(水溶性有機溶剤) 7部
チオヂグリコール(水溶性有機溶剤) 7部
アセチレノールEH(界面活性剤) 0.1部
硫酸カリウム(添加剤) 0.3部
水 残部
【0046】
図10に示すインク収納容器の台形プリズムPの上面である接触液面U1を除く、台形プリズムの第1,2斜面及びインク収納容器底面に、以下の低表面エネルギー処理を施し、台形プリズム上面がこれらに対して高表面エネルギーにした。そのインク収納容器に上記組成の水溶性顔料インクを充填し、温度が60℃の環境で1ヶ月保存した後にインク収納容器からインクを抜き取り、上述した構成の記録装置を用いてインク残量検出の処理を行った。
【0047】
ここで、下記処理剤を用い上述の手順に従ってインク残量検出を行ったインク収納容器を実験サンプル1、同様に実施例2の処理剤を用いたインク収納容器を実験サンプル2とする。
(処理剤実施例1)
・低表面エネルギー処理剤A組成
アルキルポリシロキサン 4 部
2−プロパノール(アルコール類) 45.7部
2−メチル−2プロパノール(アルコール類) 50 部
ベンゼンスルホン酸(酸) 0.3部
(処理剤実施例2)
・低表面エネルギー処理剤B組成
アルキルポリシロキサン 4 部
2−プロパノール(アルコール類) 46 部
2−メチル−2プロパノール(アルコール類) 50 部
各実施例の処理剤のプリズムへの塗布は処理剤を所望の量だけ塗布し、その後、自然乾燥させた。各実施例において、プリズムに塗布されたアルキルポリシロキサンの塗布量は、単位面積(1平方ミリメートル)当たり1〜15(μg)の範囲にある。
【0048】
また、比較のために、(比較例1)台形プリズムの上面及び斜面に低表面エネルギー処理を施せず、表面エネルギーを同一にしたインク収納容器を用いて、上記組成の水溶性顔料インクを充填し、同じ環境(温度60℃で1ヶ月)保存したものと、(比較例2)インク収納容器の台形プリズム全表面を含む内壁全面に実施例1に示す低表面エネルギー処理剤Aを塗布したインク収納容器に上記組成の水溶性顔料インクを充填し、同じ環境(温度60℃で1ヶ月)保存したものとを用意し、保存期間後に夫々のインク収納容器からインクを抜き取り、上述した構成の記録装置を用いて同様のインク残量検出の処理を行った。ここで、このような手順に従ってインク収納容器残量検出を行った前者のインク収納容器を比較サンプル1、後者のインク収納容器を比較サンプル2とする。
【0049】
その結果、実験サンプル1、2では、温度60℃の環境で2ヶ月保存した後においても、台形プリズムの斜面及びインク収納容器底面には色材の付着は認められず、台形プリズム上面には色材の確実な付着が認められるが、インク残量検出が有効に作動した。一方、比較サンプル1や比較サンプル2では、温度60℃の環境で1ヶ月保存した後には、台形プリズムには上面はもとより斜面にも色材がべったりと付着しており、インク残量検知は有効に作動しなかった(即ち、インクがインク収納容器にないにも係らず、プリズムに付着した色材のためと判断した)。
【0050】
従って、以上説明した実施形態に従えば、台形プリズムの上面を除くインク収納容器の底面および光学的インク残量検出の光路に含まれる台形プリズムの斜面に低表面エネルギー処理剤を塗布することにより、台形プリズムの上面よりもはるかに表面エネルギーの低い領域を設けているので、過酷な保存条件において台形プリズムの検知機能を低下させることがなく、正確に残量インクの有無検出を行うことができた。
【0051】
なお、以上の実施形態において、インクを再充填した再充填インク収納容器の場合は、上記効果の差は一層顕著であり、本発明のインク収納容器の場合は、3回のインクを再充填して繰り返し使用しても問題なく正確に残量インクの有無検出を行うことができた。したがって、本発明は、再充填インク収納リサイクル容器としても、有効な発明である。
【0052】
また上述の実施形態においてはインク残量検出を行う台形プリズムの第1、2斜面に撥水処理を施した例を示したが、図11に示すような台形プリズムでも良い。
図11は、光透過性部材により形成されており、インク収納容器のようなインク収納容器の外壁面の一部を構成する面と、その面とは異なるとともに容器内の収容物(例えば、インクなど)との界面が光路に対して所定の角度を有する複数の反射面とを有し、その容器内の収容物の有無により反射面からの反射光量が異なるように構成されている。このような構成のプリズムを用いると、その反射面の表面に存在する物質の有無に従ったインク収納容器内との屈折率の違いを利用してインクの有無を検知できる。
【0053】
従って、このような台形プリズムに対して本発明を適用することは、水性顔料インクなどの色材を分散させたインクを使用する場合、図10に示したようなインク収納容器の底面に設けられたプリズムに対して、インク収納容器内のインクがなくなったときにインク滴が付着することがなく、さらに、高温環境下において色材の分散が不安定になった場合でも、色材がプリズムに付着することはないため、特に、効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
記録装置は、高密度かつ高速な記録動作が可能であることから、情報処理システムの出力手段、例えば、複写機、ファクシミリ、電子タイプライタ、ワードプロセッサ、ワークステーションなとの出力端末としてのプリンタ、あるいはパーソナルコンピュータ、光ディスク装置、ビデオ装置などに具備されるハンディまたはポータブルプリンタとして利用できる。従って、本発明に従うインク収納容器インク収納容器としての適用範囲は単に記録装置に留まるにのみならず、ファクシミリ装置や複写機など様々な機器に及ぶことは言うまでもなく、さらに、本発明は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インタフェース機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置など)に適用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
P 台形プリズム(光学的被検知部)
P1 第1被検知面(第1斜面)
P2 第2被検知面(第2斜面)
U1 上面(接液面)
7 インク収納容器
72 インク室
F インク室底面
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的被検知部と、相対的に下側に位置するインク供給部と、を備えたインク収納容器及び再充填インクが再充填された再充填インク収納リサイクル容器に関し、そのインク収納容器を含むカートリッジ、及び、そのカートリッジを用いる記録装置に関し、特に、インクジェット方式に従って記録を行なう記録ヘッドにインクを供給するインク収納容器、及び、そのインク収納容器を含むカートリッジ、及び、そのカートリッジを用いる記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の染料分子や染料集合体あるいは顔料(以下、色材と呼ぶ)は、その性能(耐光性や発色性など)を向上するため、分子量が大きくなってきている。そのため、インク収納容器内では、色材の沈降や凝集が起こり、種種の問題を引き起こしている。この問題の中でも良く知られていることは、インク収納容器内のインクを直接、収納するインク室でインクが高濃度になったりすることである。
【0003】
また、インク室のインク残量を光学的に検知させるためのプリズム(被検知部)を設けるものがあるが、上述した問題として「色材がプリズム表面に付着することによる誤検知」が発生している。
【0004】
特許文献1は、この誤検知を防止するため、ピラミッド形状の頂点(部)を持つプリズム斜面の表面エネルギーをインク収納容器の大きな面領域に対して相対的に低くする、低表面エネルギー処理(撥水剤を塗布)を開示している。しかし、この撥水剤の塗布処理はその斜面全体を均一に塗布することが難しく、表面エネルギーが不均一になりやすい。そのため、色材が付着することがしばしば見られ、再充填を行ったりするとその付着量は多くなりやすい傾向がある。つまり、この技術自体は、ピラミッド形状の頂点(部)を持つプリズムを前提としているため、結果的にその斜面に上述した色材が付着してインク残量検知に誤動作を引き起こす。したがって、この特許文献1が開示する技術は、安定した製造が難しく、製造工程の複雑さをもたらし、長期にわたる性能を維持できない問題がある。
【0005】
また、特許文献1には、従来技術として、光学的インク残量検出を行う場合、「光路に含まれる構成要素にインク液滴が付着するのを防ぐために撥水処置を施し、インク収納容器のインク量が減少した場合にも、そのインク液滴が光路に含まれる構成要素の表面に付着してインク残量検出の誤動作を回避する構成も知られている」と記載されている。
【0006】
さらに、「例えば、特許文献2には、光路に含まれる構成要素である光の反射板やインク収納容器の側壁面などにインク滴の付着を防ぐための撥水処理剤としてシリコンやテトラフロロエチレン樹脂を用いる構成が開示されている。また、特許文献3は、光路に含まれる構成要素であるインク収納容器の内壁面を研磨してその面粗度を小さくしてインクとインク収納容器内壁面との接触角を大きくする代わりに、その内壁面に撥水・撥油処理などの表面処理を施すことを開示している。」とも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特登録第3595743号公報
【特許文献2】特開平7−237300号公報
【特許文献3】特開平8−187873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の公知技術の問題を解決するための発明であって、ピラミッド形状の頂点(部)を持つプリズム被検知部の能力を下げずに、撥水剤も不要化できる新規な光学的被検知部を備えたインク収納容器を提供することを第1の目的とするものである。
【0009】
本発明は、上述の背景技術では、ピラミッド形状のプリズム表面ばかり問題対象としているが、インク収納容器底面に付着堆積してくる色材を課題認識していない。この堆積問題は、少なくともピラミッド形状のプリズム周辺のインク収納容器底面において深刻な問題で、インク収納容器を再利用する場合にはさらに大きな問題となる。本発明は、この新たな問題を解決することを第2の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明第1発明は、第1の目的を達成するもので、インクを直接収納するためのインク室と、前記インク室内の相対的に下側に位置し互いに対向しつつ相対的に上方に向かう第1斜面及び第2斜面を備えた光学的被検知部と、相対的に下側に位置するインク供給部と、を備えたインク収納容器において、前記光学的被検知部は、前記第1斜面の表面エネルギー及び第2斜面の表面エネルギーのそれぞれよりも高い表面エネルギーであって、前記第1斜面及び第2斜面よりも相対的に上方に位置する接液面を有していることを特徴とするインク収納容器である。
【0011】
本発明第2発明は、第2の目的を達成するもので、再充填されたインクを直接収納しているインク室と、前記インク室内の相対的に下側に位置し互いに対向しつつ相対的に上方に向かう第1斜面及び第2斜面を備えた光学的被検知部と、相対的に下側に位置するインク供給部と、を備えた再充填インク収納リサイクル容器において、前記光学的被検知部は、前記第1斜面の表面エネルギー及び第2斜面の表面エネルギーのそれぞれよりも高い表面エネルギーであって、前記第1斜面及び前記第2斜面よりも相対的に上方に位置する接液面を有していることを特徴とする再充填インク収納リサイクル容器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明第1,2発明は、上述したような、原因となる塊合あるいは凝集した色材を、前記第1斜面及び前記第2斜面に付着する前に、上記「上面」が積極的に付着せしめる領域として機能するために、上記課題であるインクの色材濃度上昇を防止でき、被検知部の機能を安定せしめることができる。特に、本発明第2発明は、再充填インクに対しても、前記第1斜面及び前記第2斜面に色材が付着することを防止できるので、光学的被検知部の第1斜面及び第2斜面の機能を維持し、長期的な安定性をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施例の部分断面を含むインクカートリッジの側面図である。
【図2】図1の底面部の横断面を上方から見た略図である。
【図3】図1の上面部の横断面を上方から見た略図である。
【図4】図1のプリズム被検知部を含む縦断面を側面から見た略図である。
【図5】図5は、図2,3にあわせた面から見た図1の反対側の側面図である。
【図6】本発明が適用されるインクジェット方式に従って記録を行う記録ヘッドを備えた記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図7】図6の記録装置の制御回路の構成を示すブロック図である。
【図8】図6のインク残量有無検出部25の詳細な構成を示すブロック図である。
【図9】図6のインク収納容器7と記録ヘッド1を備えたヘッドホルダ200の外観斜視図である。
【図10】図6に適用される本発明の変形例のインク収納容器7の内部構造を示す側断面図である。
【図11】図6のインク収納容器の底面に設けられた本発明が適用された光透過型プリズムとそのプリズムに光を照射する発光素子及びその光を受光する受光素子の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の第1実施例の部分断面を含むインクカートリッジの側面図で、図2は、図1の底面部の横断面を上方から見た略図、図3は、図1の上面部の横断面を上方から見た略図、図4は、図1のプリズム被検知部を含む縦断面を側面から見た略図、図5は、図2,3にあわせた面から見た図1の反対側の側面図である。これらの図において、Pは、台形プリズム(光学的被検知部)で、第1被検知面としての第1斜面P1と第2被検知面としての第2斜面P2と、上面である接液面U1を備えている。接液面U1の表面エネルギーは、第1斜面P1と第2斜面P2それぞれの表面エネルギーよりも高い。具体的には、インク中の色材のうち凝集あるいは会合した色材が、第1斜面P1と第2斜面P2よりも接液面U1に対して付着しやすい条件であればよい。特に、好ましくは、インク収納容器7のインク室72内のインク室底面Fの表面エネルギーよりも接液面U1の表面エネルギーは高いことが好ましく、インク室72内の底面に集合しやすい色材を台形プリズム接液面U1に付着せしめることができ、結果的にインク室内底部の色材濃度の上昇を抑えることができる。
【0015】
接液面U1の表面エネルギーを他の部分よりも高くする手法としては、公知の手法が採用できる。例えば、接液面U1の表面エネルギーを高くする方法は、型抜き製法の場合は、接液面U1の型の表面性を他の部分よりも低下する方法が採用でき、他の部分と同一に成型された場合は、接液面U1を後加工で粗面化する方法、あるいは、上面に対して第1斜面及び第2斜面の表面エネルギーを低下させてもよいが、被光学検知部としての第1斜面及び第2斜面は、色材の付着を防止できる程度の撥水性を維持していることが好ましい。例えば、上面に対する部分の表面を「1S」以下にして、被検知部の第1斜面及び第2斜面を「3S」で、撥水処理を施せば、特に効果的である。
【0016】
台形プリズム形状は、断面が台形のもので、等脚台形だけではなく、上面がある4角形でも欲、全体形状が、台形柱であってもよい。
【実施例】
【0017】
図6は本発明が適用されるインクジェット方式に従って記録を行う記録ヘッドを備えた公知の記録装置の槻略構成を示す斜視図である。
図6に示すように記録ヘッド1はこれにインクを供給するインク収納容器7とともに連結され一体となってインクカートリッジ20を構成する。なお、この実施形態ではインクカートリッジ20は後述するように記録ヘッド1とインク収納容器7とが分離可能な構成となっているが、記録ヘッドとインク収納容器とが一体化したインクカートリッジを用いても良い。
【0018】
また、インク収納容器7の底面にはインク残量検出を行うための光学プリズムが前述した本発明の構成要件をもっている。この記録ヘッドは、公知のインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、その熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式が用いられている。
【0019】
図6において、記録ヘッド1は図中下向きにインクを吐出する姿勢でキャリッジ2に搭載されており、キヤリッジ2をガイド軸3に沿って移動させながらインク液滴を吐出して記録用紙のような記録媒体(不図示)上に画像を形成していく。なお、キヤリッジ2の左右移動(往復移動)はキヤリッジモータ4の回転によりタイミングベルト5を介して行われる。キヤリッジ2には係合爪6が設けられ、インク収納容器の係合穴7aと係合して、キヤリッジ2にインク収納容器7は固定される。
【0020】
さて、記録ヘッド1走査分の記録が終了すると、記録動作を中断し、プラテン8上に位置する記録媒体をモータ9の駆動により所定量だけ搬送し、次いで再びキヤリッジ2をガイド軸3に沿って移動させながら次の1走査分の画像形成を行う。
【0021】
装置本体の右側には記録ヘッド1のインク吐出状態を良好に保つための回復動作を行う回復機器10が配設されており、回復機器10には記録ヘッド1をキャップするキャップ11、記録ヘッド1のインク吐出面を拭うワイパー12、及び、記録ヘッド1のインク吐出ノズルからインクを吸引するための吸引ポンプ(不図示)などが設けられている。
【0022】
また、記録媒体を搬送するためのモータ9の駆動力は本来の記録媒体搬送機構に伝達される他に、自動給紙装置(ASF)13へも伝達される。
【0023】
さらに、回復機器10の横側には赤外LED(発光素子)15及びフォトトランジスタ(受光素子)16から成るインク残量検出とインク収納容器有無検出を行うための光学ユニット14が設けられている。これらの発光素子15と受光素子16とは記録用紙の搬送方向(矢印Fの方向)に沿って並ぶように取り付けられている。光学ユニット14は装置本体のシヤーシ17に取り付けられている。インクカートリッジ20がキヤリッジ2に搭載され、
図1に示された位置より右方向へと移動すると、インクカートリッジ20は光学ユニット14上に位置するようになる。そして、インク収納容器7の底面より残量インクの有無を光学ユニット14によって検出することが可能となる。
【0024】
次に、上述した装置の記録制御を実行するための制御構成について説明する。
図7は記録装置の制御回路の構成を示すブロック図である。制御回路を示す図7において、1700は記録信号を入力するインタフェース、1701はMPU、1702はMPU1701が実行する制御プログラムを格納するROM、1703は各種データ(上記記録信号や記録ヘッド1に供給される記録データ等)を保存しておくDRAMである。1704は記録ヘッド1に対する記録データの供給制御を行うゲートアレイ(G.A.)であり、インタフェース1700、MPU1701、RAM1703間のデータ転送制御も行う。1705は記録ヘッド1を駆動するヘッドドライパ、1706、1707はそれぞれフィードモータ9、キヤリッジモータ4を駆動するためのモータドライバである。
【0025】
上記制御構成の動作を説明すると、インタフェース1700に記録信号が入るとゲートアレイ1704とMPU1701との間で記録信号がプリント用の記録データに変換される。そして、モータドライバ1706、1707が駆動されると共に、ヘッドドライバ1705に送られた記録データに従って記録ヘッド1が駆動され、記録が行われる。
【0026】
なお、1710は記録動作や記録装置の拭態に係る種々のメッセージを表示するLCD1711や記録動作や記録装置の状態を知らせる種々の色のLEDランプ1712を備えた表示部である。
【0027】
また、記録ヘッド1と一体となったインク収納容器7の残量インク有無を検出するインク残量検出部25の動作はMPU1701によって制御される。
図8はインク残量検出部25の詳細な構成を示すブロック図である。図8(A)に示すような構成において、MPU1701からの制御信号に基づいて、コントローラ32は、所定のデューティ(DUTY)比(%)のパルス信号をLED駆動回路30に出力して、そのデューティ比に従って光学ユニット14を構成する発光素子15を駆動して赤外光をインク収納容器7の底部に照射する。その赤外光は、インク収納容器7の底部の光学プリズム(以下、プリズムという)180で反射され、光学ユニット14を構成する受光素子16に戻ってくる。フォトトランジスタである受光素子16は受光した光を電気信号に変換し、その電気信号をローパスフィルタ(LPF)31に出力する。ローパスフィルタ(LPF)31は、受光素子16から入力した電気信号の内、高周波雑音をカットして周波数の低い信号のみをコントローラ32に送る。コントローラ32はローパスフィルタ(LPF)31の信号をA/D変換してデジタル信号に変換する。そして、変換された値はMPU1701に転送される。
【0028】
なお、
図8(B)に示しているように、発光素子15は赤外光28を発光するLEDであり、受光素子16は赤外光29を受光して、その受光強度に応じて電気信号を出力するフォトトランジスタである。これらのLEDとフォトトランジスタとは、図1に示すように、記録用紙の搬送方向に沿って並ぶように配置される。
【0029】
次に、本発明を好適に適用可能なインク収納容器の構成の概要について、
図9はインク収納容器7と記録ヘッド1を備えたヘッドホルダ200の外観斜視図である。
図9において、(A)はインク収納容器7がヘッドホルダ200から分離している状態を、(B)はインク収納容器7がヘッドホルダ200に取り付けられている状態を示す。また、図10はインク収納容器7の内部構造を示す側断面図である。まず、この実施形態におけるインク収納容器7は、略直方体状をなしており、その上壁7Uには、インク収納容器内部と通じる穴である大気連通口120が設けられている。
【0030】
また、インク収納容器7の下壁7Bには、筒状に突出した形態でインク供給口を有するインク供給筒140が形成されている。そして、物流過程では大気連通口120はフィルム等で、また、インク供給筒140はインク供給口密閉部材としてのキャップにより塞がれて密閉されている。160はインク収納容器7の外側に弾性変形自在に一体に成形されたレバー部材であり、その中間部に係止用突起が形成されている。200は、上述のインク収納容器7が装着される記録ヘッド一体型のヘッドホルダであり、この実施形態では、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)の各色のインク収納容器7(7C、7M、7Y)を収容する。ヘッドホルダ200の下部には各色のカラーインクを吐出する記録ヘッド1が一体的に設けられている。なお、ブラック(Bk)インクを収容したインク収納容器のみを、ヘッドホルダに装着し、モノクロ記録専用の記録ヘッドを構成してもよい。ヘッドホルダ200の底部には、後述するインク有無検知部が光学ユニット14とインク残量検出部25と協働して残量インクの有無を検知可能なように窓が設けられている。
【0031】
記録ヘッド1はその複数の吐出口が下向きに形成されている(以下、この吐出口が形成されているヘッドの面を吐出口形成面と称す)。そして、インク収納容器7は、
図9(A)に示す状態から、ヘッドホルダ200に、インク供給筒140が記録ヘッド1に設けられたインク供給筒受け部(不図示)に係合し、かつ、記録ヘッド1のインク通路筒がインク供給筒140内に進入するように押し込まれる。すると、レバー部材160の係止用突起160Aがヘッドホルダ200の所定箇所に形成された突起(不図示)に係合し、図9(B)に示す正規の装着状態が得られる。なお、インク収納容器7が装着された状態のヘッド一体型のヘッドホルダ200は、例えば、図6に示すような記録装置のキヤリッジ2にさらに搭載されプリント可能状態となる。このような状態で、インク収納容器7の底部とヘッドの吐出口形成面との問には所定の水頭差(H)が形成されることになる。
【0032】
次に、インク収納容器7の内部構造について、
図10を参照して説明する。この実施形態におけるインク収納容器7は、上部で大気連通口120を介して大気に連通し、一方下部でインク供給口に連通し内部に負圧発生部材としての吸収体320を収容する負圧発生部材収納室340と、液体のインクを収容する実質的に密閉された液体収納室360とに隔壁380でもって仕切られている。そして、負圧発生部材収納室340と液体収納室360とはインク収納容器7の底部付近で隔壁380に形成された連通口400を介してのみ連通されている。
【0033】
負圧発生部材収納室340を形成するインク収納容器7の上壁7Uには、内部に突出する形態で複数個のリブ420が一体に成形され、負圧発生部材収納室340に圧縮状態で収容される吸収体320と当接している。しかして、上壁7Uと吸収体320の上面との間にエアバッファ室440が形成されている。吸収体320は熱圧縮ウレタンフォームで形成されており、後述するように所定の毛管力を発生すべく、圧縮状態で負圧発生部材収納室340内に収容されている。この所定の毛管力を発生するための吸収体320のポアサイズの絶対値は、使用するインクの種類、インク収納容器7の寸法、記録ヘッド1の吐出口形成面の位置(水頭差H)等により異なる。
【0034】
また、インク供給口140Aを形成しているインク供給筒140内には、円柱状の圧接体460が配置されている。圧接体460は、例えば、ポリプロピレンのフェルトにより形成され、それ自体は外力により容易に変形しないものである。圧接体460は、上述のヘッドホルダ200に装着されていない図9(A)に示す状態において、吸収体320を局所的に圧縮するよう吸収体320に押し込まれた状態に保持されている。このために、インク供給筒140の端部には、圧接体460の周辺に当接するフランジが形成されている。
【0035】
このような負圧発生部材を収容するとともに液体供給口と大気連通部とを備える負圧発生部材収容室と、その負圧発生部材収納室と連通する連通部を備えるとともに実質的な密閉空間を形成する液体収納室とを有する構成のインク収納容器においては、記録ヘッド1により吸収体320のインクが消費されると、液体収納室360からインクが隔壁380の連通口400を通じて負圧発生部材収納室340の吸収体320に供給される。この時、液体収納室360内は減圧されるが、大気連通部120から負圧発生部材収納室を経由した空気が隔壁380の連通口400を通じて液体収納室360に入り、液体収納室360内の減圧は緩和される。従って、記録ヘッド1によりインクが消費されてもその消費量に応じてインクが吸収体320に充填され、吸収体320は一定量のインクを保持し、記録ヘッド1に対する負圧をほぼ一定に保つので、記録ヘッド1ヘのインク供給が安定する。その後、液体収納室360内のインクを消費すると、吸収体320内のインクが消費されてゆく。従って、このようなインク収納容器の液体収納室360にインク残量検出機構の一部となる台形プリズムPを設け、液体収納室360内のインクを消費したことをユーザに知らせ収納容器を交換させることで、インク付着の問題を解決し、記録装置を使用することが可能になる。
【0036】
この実施形態では台形プリズムPが上述したインク有無検知部として機能する。台形プリズムPは第1,2斜面の延長となる仮の頂角が90°となる二等辺三角形の2面と、上記接液面U1を備える被検知部で、頂角を含む上部を除いた台形プリズムの形をしている。そして、接液面U1の表面エネルギーは、第1斜面P1と第2斜面P2それぞれの表面エネルギーよりも高い。
【0037】
台形プリズムPの被検知部の第1,2斜面に色材が付着するのを防止するための撥水性を高める処理について述べる。この処理はプリズム面の表面エネルギーをインク収納容器の他の領域に対して相対的に低くする処理であり、以下、低表面エネルギー処理と呼ぶ。
【0038】
この実施形態において使用する低表面エネルギー処理を行う処理剤としては後述する実施例1、実施例2のような組成のものが挙げられる。さて、各実施例においてアルキルポリシロキサンの濃度を4部としているが、低表面エネルギー処理剤中のアルキルポリシロキサンの含有量は1〜20重量%、より好ましくは2〜8重量%の範囲である。
【0039】
また、アルキルポリシロキサンの溶剤としてのアルコール類として2−プロパノールと、2−メチル−2プロパノールを用いているが、本発明はこれらに限定されるものではなく、揮発性のアルコール類、水可溶性の揮発性有機溶剤も使用可能である。
【0040】
また、この実施例において、酸物質としてベンゼンスルホン酸を用いているが、これ以外にも硫酸、硝酸、塩酸、芳香族スルホン酸、脂肪族スルホン酸等の強酸性の物質を使用することもできる。
【0041】
ここで説明している低表面エネルギー処理は、このような組成の低表面エネルギー処理剤を、針径26Gのニードル(注射針)を用いて、台形プリズムPの第1,2斜面にそれぞれ半滴(約1.0mg)滴下塗布し、塗布後自然乾燥することで行われる。このような低表面エネルギー処理により、インク収納容器7の台形プリズムPのインク収納容器内側に露出した第1,2斜面には単位面積(1平方ミリメートル)当り3.0〜4.0(μg/平方ミリメートル)のアルキルポリシロキサンが塗布されることが好ましい。
【0042】
ここで、低表面エネルギー処理剤は前述したように、あまり多く塗布し過ぎるとプリズム表面に吸着できなくなる恐れがあり、これとは反対にその塗布量があまりに少ないと十分に低表面エネルギー処理がなされない恐れがある。従って、低表面エネルギー処理剤による低表面エネルギー処理される部分(ここでは、台形プリズム斜面のみ)に塗布されるアルキルポリシロキサンは1〜15μg/mm2の範囲にあることが望ましい。
【0043】
以上説明した方法により、インク収納容器は、光学的インク残量有無の検出において光路に含まれるプリズム面にアルキルポリシロキサンを含む低表面エネルギー処理剤による低表面エネルギー処理が施されるので、接液面U1及びその容器の内壁の他の領域に対し、相対的にプリズム面の表面エネルギーが低くなる。
【0044】
次にこの低表面エネルギー処理を、台形プリズムPの上面である接触液面U1を除く、第1,2斜面及びインク室底面に施し、台形上面が第1,2斜面及びインク収納容器底面よりも表面エネルギーが高い状態にした本発明実施例の効果を実証するために、以下のような比較実験を行った。
【0045】
この実験には、以下の組成の水性顔料インクを用いた。このインクは、分散剤を用いない自己分散タイプの顔料である。
・水性顔料インク組成
マイクロジェットCW1顔料(オリエント化学工業株式会社製) 5部
ジエチレングリコール(水溶性有機溶剤) 5部
グリセリン(水溶性有機溶剤) 7部
チオヂグリコール(水溶性有機溶剤) 7部
アセチレノールEH(界面活性剤) 0.1部
硫酸カリウム(添加剤) 0.3部
水 残部
【0046】
図10に示すインク収納容器の台形プリズムPの上面である接触液面U1を除く、台形プリズムの第1,2斜面及びインク収納容器底面に、以下の低表面エネルギー処理を施し、台形プリズム上面がこれらに対して高表面エネルギーにした。そのインク収納容器に上記組成の水溶性顔料インクを充填し、温度が60℃の環境で1ヶ月保存した後にインク収納容器からインクを抜き取り、上述した構成の記録装置を用いてインク残量検出の処理を行った。
【0047】
ここで、下記処理剤を用い上述の手順に従ってインク残量検出を行ったインク収納容器を実験サンプル1、同様に実施例2の処理剤を用いたインク収納容器を実験サンプル2とする。
(処理剤実施例1)
・低表面エネルギー処理剤A組成
アルキルポリシロキサン 4 部
2−プロパノール(アルコール類) 45.7部
2−メチル−2プロパノール(アルコール類) 50 部
ベンゼンスルホン酸(酸) 0.3部
(処理剤実施例2)
・低表面エネルギー処理剤B組成
アルキルポリシロキサン 4 部
2−プロパノール(アルコール類) 46 部
2−メチル−2プロパノール(アルコール類) 50 部
各実施例の処理剤のプリズムへの塗布は処理剤を所望の量だけ塗布し、その後、自然乾燥させた。各実施例において、プリズムに塗布されたアルキルポリシロキサンの塗布量は、単位面積(1平方ミリメートル)当たり1〜15(μg)の範囲にある。
【0048】
また、比較のために、(比較例1)台形プリズムの上面及び斜面に低表面エネルギー処理を施せず、表面エネルギーを同一にしたインク収納容器を用いて、上記組成の水溶性顔料インクを充填し、同じ環境(温度60℃で1ヶ月)保存したものと、(比較例2)インク収納容器の台形プリズム全表面を含む内壁全面に実施例1に示す低表面エネルギー処理剤Aを塗布したインク収納容器に上記組成の水溶性顔料インクを充填し、同じ環境(温度60℃で1ヶ月)保存したものとを用意し、保存期間後に夫々のインク収納容器からインクを抜き取り、上述した構成の記録装置を用いて同様のインク残量検出の処理を行った。ここで、このような手順に従ってインク収納容器残量検出を行った前者のインク収納容器を比較サンプル1、後者のインク収納容器を比較サンプル2とする。
【0049】
その結果、実験サンプル1、2では、温度60℃の環境で2ヶ月保存した後においても、台形プリズムの斜面及びインク収納容器底面には色材の付着は認められず、台形プリズム上面には色材の確実な付着が認められるが、インク残量検出が有効に作動した。一方、比較サンプル1や比較サンプル2では、温度60℃の環境で1ヶ月保存した後には、台形プリズムには上面はもとより斜面にも色材がべったりと付着しており、インク残量検知は有効に作動しなかった(即ち、インクがインク収納容器にないにも係らず、プリズムに付着した色材のためと判断した)。
【0050】
従って、以上説明した実施形態に従えば、台形プリズムの上面を除くインク収納容器の底面および光学的インク残量検出の光路に含まれる台形プリズムの斜面に低表面エネルギー処理剤を塗布することにより、台形プリズムの上面よりもはるかに表面エネルギーの低い領域を設けているので、過酷な保存条件において台形プリズムの検知機能を低下させることがなく、正確に残量インクの有無検出を行うことができた。
【0051】
なお、以上の実施形態において、インクを再充填した再充填インク収納容器の場合は、上記効果の差は一層顕著であり、本発明のインク収納容器の場合は、3回のインクを再充填して繰り返し使用しても問題なく正確に残量インクの有無検出を行うことができた。したがって、本発明は、再充填インク収納リサイクル容器としても、有効な発明である。
【0052】
また上述の実施形態においてはインク残量検出を行う台形プリズムの第1、2斜面に撥水処理を施した例を示したが、図11に示すような台形プリズムでも良い。
図11は、光透過性部材により形成されており、インク収納容器のようなインク収納容器の外壁面の一部を構成する面と、その面とは異なるとともに容器内の収容物(例えば、インクなど)との界面が光路に対して所定の角度を有する複数の反射面とを有し、その容器内の収容物の有無により反射面からの反射光量が異なるように構成されている。このような構成のプリズムを用いると、その反射面の表面に存在する物質の有無に従ったインク収納容器内との屈折率の違いを利用してインクの有無を検知できる。
【0053】
従って、このような台形プリズムに対して本発明を適用することは、水性顔料インクなどの色材を分散させたインクを使用する場合、図10に示したようなインク収納容器の底面に設けられたプリズムに対して、インク収納容器内のインクがなくなったときにインク滴が付着することがなく、さらに、高温環境下において色材の分散が不安定になった場合でも、色材がプリズムに付着することはないため、特に、効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
記録装置は、高密度かつ高速な記録動作が可能であることから、情報処理システムの出力手段、例えば、複写機、ファクシミリ、電子タイプライタ、ワードプロセッサ、ワークステーションなとの出力端末としてのプリンタ、あるいはパーソナルコンピュータ、光ディスク装置、ビデオ装置などに具備されるハンディまたはポータブルプリンタとして利用できる。従って、本発明に従うインク収納容器インク収納容器としての適用範囲は単に記録装置に留まるにのみならず、ファクシミリ装置や複写機など様々な機器に及ぶことは言うまでもなく、さらに、本発明は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インタフェース機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置など)に適用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
P 台形プリズム(光学的被検知部)
P1 第1被検知面(第1斜面)
P2 第2被検知面(第2斜面)
U1 上面(接液面)
7 インク収納容器
72 インク室
F インク室底面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを直接収納するためのインク室と、前記インク室内の相対的に下側に位置し互いに対向しつつ相対的に上方に向かう第1斜面及び第2斜面を備えた光学的被検知部と、相対的に下側に位置するインク供給部と、を備えたインク収納容器において、前記光学的被検知部は、前記第1斜面の表面エネルギー及び第2斜面の表面エネルギーのそれぞれよりも高い表面エネルギーであって、前記第1斜面及び第2斜面よりも相対的に上方に位置する接液面を有していることを特徴とするインク収納容器。
【請求項2】
前記接液面は、前記第1斜面及び前記第2斜面それぞれの上部と連続していることを特徴とする請求項1に記載のインク収納容器。
【請求項3】
前記接液面の表面エネルギーは、前記インク室の底面の表面エネルギーよりも高いことを特徴とする請求項1または2に記載のインク収納容器。
【請求項4】
前記接液面は、インク中の色材を捕捉し、前記色材が前記第1斜面及び前記第2斜面へ付着することを防止することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインク収納容器。
【請求項5】
再充填されたインクを直接収納しているインク室と、前記インク室内の相対的に下側に位置し互いに対向しつつ相対的に上方に向かう第1斜面及び第2斜面を備えた光学的被検知部と、相対的に下側に位置するインク供給部と、を備えた再充填インク収納リサイクル容器において、前記光学的被検知部は、前記第1斜面の表面エネルギー及び前記第2斜面の表面エネルギーのそれぞれよりも高い表面エネルギーであって、前記第1斜面及び第2斜面よりも相対的に上方に位置する接液面を有していることを特徴とする再充填インク収納リサイクル容器。
【請求項6】
前記接液面は、前記第1斜面及び第2斜面それぞれの上部と連続していることを特徴とする請求項5に記載の再充填インク収納リサイクル容器。
【請求項7】
前記接液面表面エネルギーは、前記インク室の底面の表面エネルギーよりも高いことを特徴とする請求項5または6に記載の再充填インク収納リサイクル容器。
【請求項8】
前記接液面は、インク中の色材を捕捉し、前記色材が前記第1斜面及び前記第2斜面への付着することを防止することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の再充填インク収納リサイクル容器。
【請求項1】
インクを直接収納するためのインク室と、前記インク室内の相対的に下側に位置し互いに対向しつつ相対的に上方に向かう第1斜面及び第2斜面を備えた光学的被検知部と、相対的に下側に位置するインク供給部と、を備えたインク収納容器において、前記光学的被検知部は、前記第1斜面の表面エネルギー及び第2斜面の表面エネルギーのそれぞれよりも高い表面エネルギーであって、前記第1斜面及び第2斜面よりも相対的に上方に位置する接液面を有していることを特徴とするインク収納容器。
【請求項2】
前記接液面は、前記第1斜面及び前記第2斜面それぞれの上部と連続していることを特徴とする請求項1に記載のインク収納容器。
【請求項3】
前記接液面の表面エネルギーは、前記インク室の底面の表面エネルギーよりも高いことを特徴とする請求項1または2に記載のインク収納容器。
【請求項4】
前記接液面は、インク中の色材を捕捉し、前記色材が前記第1斜面及び前記第2斜面へ付着することを防止することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインク収納容器。
【請求項5】
再充填されたインクを直接収納しているインク室と、前記インク室内の相対的に下側に位置し互いに対向しつつ相対的に上方に向かう第1斜面及び第2斜面を備えた光学的被検知部と、相対的に下側に位置するインク供給部と、を備えた再充填インク収納リサイクル容器において、前記光学的被検知部は、前記第1斜面の表面エネルギー及び前記第2斜面の表面エネルギーのそれぞれよりも高い表面エネルギーであって、前記第1斜面及び第2斜面よりも相対的に上方に位置する接液面を有していることを特徴とする再充填インク収納リサイクル容器。
【請求項6】
前記接液面は、前記第1斜面及び第2斜面それぞれの上部と連続していることを特徴とする請求項5に記載の再充填インク収納リサイクル容器。
【請求項7】
前記接液面表面エネルギーは、前記インク室の底面の表面エネルギーよりも高いことを特徴とする請求項5または6に記載の再充填インク収納リサイクル容器。
【請求項8】
前記接液面は、インク中の色材を捕捉し、前記色材が前記第1斜面及び前記第2斜面への付着することを防止することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の再充填インク収納リサイクル容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−110712(P2011−110712A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266170(P2009−266170)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(397025587)エステー産業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(397025587)エステー産業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】
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