説明

インク受容層、インク受容層形成用塗布液、インク受容層の形成方法、及び導電パターンの形成方法

【課題】基板上に形成される、導電性と基板密着性が良好な導電パターンを形成することが可能なインク受容層の形成方法を提供する。
【解決手段】銅微粒子を含む導電性インクを塗布後に焼成により導電パターンを形成することが可能な、基板表面上に形成されるインク受容層で、該インク受容層が(i)非導電性無機粒子とバインダー樹脂からなる構造体でポリオールが5〜25質量%保持されたインク受容層(R1)、(ii)複数の貫通孔を有する多孔構造部を備えた非導電性無機材料構造体でポリオールが5〜80体積%保持されたインク受容層(R2)、又は(iii)複数の貫通孔を有する多孔構造部を備えた非導電性有機ポリマー構造体でポリオールが5〜80体積%保持されたインク受容層(R3)であり、前記ポリオールが分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃である、インク受容層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面に形成され、かつ導電性インクを塗布又はパターン化後、加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能なインク受容層、非導電性無機粒子とバインダー樹脂からなる構造体にポリオールが保持されたインク受容層形成用のインク受容層形成用塗布液とインク受容層の形成方法、及び導電パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からプリント配線板上に回路パターンなどの微細な配線パターンを形成する方法としては、液滴吐出方法が知られている。この方法は、パターン形成成分を含む機能液を液滴吐出ヘッドから基板上に吐出すること等により配線パターンを形成する方法である。この方法によれば、フォトリソグラフィ工程が不要となるので、プロセスが大幅に簡略化されるというメリットがある。このパターン形成において、パターン形成成分を含む機能液として金属微粒子分散液を用いてパターニングを行い、続けて焼成を行うことで金属微粒子の導電パターンを形成することができる。
近年、コスト低減及び耐マイグレーション性の観点から、インクジェットプロセス等の液滴吐出方法で吐出させる導電性インクに銅などの卑金属の微粒子を用いた分散溶液の使用が望まれている。しかしながら、卑金属は酸化されやすい金属であるため、焼成時に酸化され、導電性に優れた導電パターンを形成することが難しいという問題がある。この問題を解決するため、金属微粒子分散液中に還元性物質を添加することで、焼成中の金属の酸化を抑制し、かつ還元を促進することで、低温・不活性雰囲気による焼成が可能になる。
【0003】
一方、金属微粒子分散液を用いて導電パターンを形成する際に、基板との密着性向上やパターニング性の向上を目的として、金属微粒子分散液を受容する薄膜層(受容層)を基板表面に設けることが提案されている。一般的な金属微粒子分散液の受容層は、無機粒子とバインダーから成る多孔質構造であり、金属微粒子分散液の溶媒が多孔質層に吸収されることで、金属微粒子分散液中の金属微粒子が受容層表面に残存する構造となっている。
例えば、特許文献1には、基板上方に微小空隙型の受容層を形成し、導電性微粒子を含有する液状体を受容層上へ設け、続けて加熱、焼成を行うことで導電パターンを形成する方法が開示されている。
【0004】
特許文献1には多孔性シリカ等の粒子がバインダーで結合された多孔質層からなる受容層を使用して、導電性微粒子を含む液状体を受容層上にパターニングする際にその液分を多孔質の受容層中に染み込ませ、受容層上に導電性微粒子を残こして、乾燥処理を行うことなく焼成して導電膜パターンを形成することが開示されている。特許文献1には、金属系の導電性微粒子として金、銀、銅、パラジウム、ニッケルが挙げられているが、実施例では金属微粒子として、酸化され難い貴な金属である金微粒子を使用して焼成した例が挙げられているのみである。
【0005】
また、特許文献2によれば、受容層中に導電性微粒子が含まれているが、導電性微粒子相互は離れており絶縁性を有する受容層について記載されている。この受容層上に金属粒子を含むインクを塗布して導電回路を形成し、加熱することで受容層中の導電性微粒子と導電回路の接触が向上することにより、導電性回路の導電性や基板との接着性を向上させることができると記載されている。
また、特許文献3には、基板に樹脂膜を形成し、その表面に金属配線を形成する際に、樹脂膜として、塗料に溶解、又は分散しやすいフッ素系の撥液材料、及びSiOやTiO等の微粒子を分散した塗料を基板に塗布後、溶媒等の揮発、或いは含有する樹脂を熱硬化する目的で加熱し、撥液材料と微粒子が分散した塗膜を形成することが開示されている。この塗膜は微粒子に由来する凹凸を有しているためサンドペーパーやサンドブラストによる膜への凹凸形成が不要になると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−006578号公報
【特許文献2】特開2004−345321号公報
【特許文献3】特開2005−191330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1では、比較的酸化され易い卑な金属である銅微粒子と還元効果を発現できない溶媒を含む導電性インクを受容層上にパターニングする場合、焼成の際に水素ガス等の還元性ガスを使用して、還元性ガス雰囲気を形成する必要がある。
上記特許文献2では、導電性向上のためにインク受容層中に導電性微粒子が配されており、パターニング性向上を目的として非導電性無機粒子を配合しているが、還元性溶媒を使用して、金属微粒子を比較的低温で焼成して導電性を発現させる技術思想は開示されていない。
【0008】
上記特許文献3には、塗料に溶解、又は分散しやすいフッ素系の撥液材料、及びSiOやTiO等の微粒子を分散した塗料を基板に塗布後、溶媒等の揮発、或いは加熱により樹脂を熱硬化させて微粒子に由来する凹凸を有している樹脂膜を基板上に形成しているが、該樹脂膜中には還元性を有する溶剤は含有されていないので、金属微粒子を焼成させる際に比較的低い温度で焼成することは困難である。
本発明は上記従来技術の問題点を改良して、銅又は銅合金微粒子を含む導電性インクを基板上で焼成する際に、比較的低温で焼成しても導電性の高い導電パターンを形成することが可能でありまた、導電性インクのパターニング性を向上することが可能な、基板上に形成されるインク受容層、非導電性無機粒子とバインダー樹脂からなる構造体にポリオールが保持されたインク受容層形成用のインク受容層形成用塗布液とインク受容層の形成方法、及び導電パターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、金等と比較して比較的容易に酸化され易い銅又は銅合金微粒子を含む分散溶液を基板上にパターニングする際に、予め基板上に分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて特定の沸点範囲のポリオールが保持されたインク受容層を基板表面に設けることにより、銅又は銅合金微粒子を焼成する際に還元性雰囲気を形成することが可能になり、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下の(1)ないし(15)に記載する発明を要旨とする。
【0010】
(1)銅又は銅合金微粒子(P)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能な、基板(K)表面上に形成されるインク受容層(R)であって、
該インク受容層(R)が
(i)非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)からなる構造体(T1)の内部にポリオール(A)が5〜25質量%(インク受容層(R1)中の質量割合)保持されたインク受容層(R1)、
(ii)複数の貫通孔を有する多孔構造部を備えた非導電性無機材料構造体(T2)の多孔構造部にポリオール(A)が5〜80体積%(インク受容層(R2)中の体積割合)保持されたインク受容層(R2)、又は
(iii)複数の貫通孔を有する多孔構造部を備えた非導電性有機ポリマー構造体(T3)の多孔構造部にポリオール(A)が5〜80体積%(インク受容層(R3)中の体積割合)保持されたインク受容層(R3)であり、
ポリオール(A)が分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃である、
ことを特徴とする、インク受容層(以下、第1の態様ということがある)。
(2)前記インク受容層(R1)が少なくとも非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、及び分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(A)から形成されており、
非導電性無機粒子(G)がバインダー樹脂(B)により結合された構造体(T1)中の非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(G+B)]×100)が50〜90体積%で、
ポリオール(A)が非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)からなる構造体(T1)内に保持されていることを特徴とする、前記(1)に記載のインク受容層。
(3)前記インク受容層(R1)におけるバインダー樹脂(B)が水溶性バインダー樹脂であることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載のインク受容層。
(4)前記インク受容層(R1)における水溶性バインダー樹脂がポリビニルアルコールであることを特徴とする、前記(3)に記載のインク受容層。
(5)前記インク受容層(R1)における非導電性無機粒子(G)が平均粒子径100〜5000nmのシリカ粒子及び/又はアルミナ粒子からなることを特徴とする、前記(1)から(4)のいずれかに記載のインク受容層。
(6)前記インク受容層(R2)を形成する非導電性無機材料構造体(T2)が多孔質セラミック膜であり、インク受容層(R3)を形成する非導電性有機ポリマー構造体(T3)が多孔質フッ素樹脂膜である、前記(1)に記載のインク受容層。
【0011】
(7)前記基板(K)表面上に形成されたインク受容層(R1)の厚みが1〜100μmで、インク受容層(R2)と(R3)の厚みが1μm〜3mmであることを特徴とする、前記(1)から(6)のいずれかに記載のインク受容層。
(8)前記ポリオール(A)がエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリト−ル、キシリトール、ソルビトール、ペンチト−ル、テルピネオール、及びヘキシトールの中から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、前記(1)から(7)のいずれかに記載のインク受容層。
(9)銅又は銅合金微粒子(P)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能な、基板(K)表面上に形成されるインク受容層(R1)を形成するインク受容層形成用塗布液であって、
該インク受容層形成用塗布液が少なくとも非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(A)、及び水系溶媒からなり、
ポリオール(A)と非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対するポリオール(A)の質量割合([A/(A+G+B)]×100)が5〜25質量%であり、
非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(G+B)]×100)が50〜90体積%であることを特徴とする、インク受容層形成用塗布液(以下、第2の態様ということがある)。
【0012】
(10)基板(K)上に、銅又は銅合金微粒子(P)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能なインク受容層(R1)の形成方法であって、
少なくとも非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(A)、及び水系溶媒からなるインク受容層形成用塗布液を、基板(K)上に塗布後、
該水系溶媒を蒸発除去して、非導電性無機粒子(G)がバインダー樹脂(B)により結合された構造体(T1)中の非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(G+B)]×100)が50〜90体積%で、ポリオール(A)が非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)からなる構造体(T1)内に5〜25質量%(インク受容層(R1)中の質量割合)保持されている、インク受容層(R1)を形成することを特徴とする、基板(K)上へのインク受容層の形成方法(以下、第3の態様ということがある)。
(11)基板(K)上に、銅又は銅合金微粒子(P)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能なインク受容層(R1)の形成方法であって、
少なくとも非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、及び水系溶媒からなるインク受容層形成用塗布液を基板(K)上に塗布後、
該水系溶媒を蒸発除去して、非導電性無機粒子(G)がバインダー樹脂(B)により結合されていて、非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(G+B)]×100)が50〜90体積%の構造体(T1)を形成し、該構造体(T1)上に、分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(A)を常温又は加熱状態で塗布して、ポリオール(A)が非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)からなる構造体(T1)内に5〜25質量%(インク受容層(R1)中の質量割合)保持されている、インク受容層(R1)を形成することを特徴とする、基板(K)上へのインク受容層の形成方法(以下、第4の態様ということがある)。
【0013】
(12)基板上に形成された、請求項1に記載のインク受容層(R1)、インク受容層(R2)、又はインク受容層(R3)上に銅又は銅合金微粒子(P)と還元性溶媒(S)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に150℃以上の温度で加熱、焼成することを特徴とする、導電パターンの形成方法(以下、第5の態様ということがある)。
(13)少なくとも非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、及び分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(A)、及び水系溶媒を含むインク受容層形成用塗布液を基板(K)表面上に塗布後、
該水系溶媒を蒸発除去して、非導電性無機粒子(G)がバインダー樹脂(B)により結合された構造体(T1)中の非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(G+B)]×100)が50〜90体積%で、ポリオール(A)が非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)からなる構造体(T1)内に5〜25質量%(インク受容層(R1)中の質量割合)保持されるインク受容層(R1)を形成し、
該インク受容層(R)上に銅又は銅合金微粒子(P)と還元性溶媒(S)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に150℃以上の温度で加熱、焼成することを特徴とする、前記(12)に記載の導電パターンの形成方法。
(14)前記還元性溶媒(S)中に分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(S1)が10〜100質量%含有されていることを特徴とする、前記(12)又は(13)に記載の導電パターンの形成方法。
(15)前記導電性インク(I)を塗布又はパターン化する際に、焼成温度より30℃以上低く、かつ、還元性溶媒(S)中のポリオール(S1)の沸点より30℃以上低い温度に、基板を加熱することを特徴とする、前記(14)に記載の導電パターンの形成方法。
【発明の効果】
【0014】
(イ)上記(1)ないし(8)に記載のインク受容層(R)(第1の態様)では、導電性インク(I)をインク受容層(R)上に塗布又はパターニング後に加熱、焼成して導電パターンを形成する際に、インク受容層(R)中に含有されるポリオール(A)が還元性雰囲気を形成して銅又は銅合金微粒子(P)の還元を促進するので、比較的低温で銅又は銅合金微粒子(P)の焼成が可能となり、かつ得られる導電パターンの導電性も向上する。
また、導電性インク(I)を用いて塗布又はパターニングする際に、該インクの濡れ広がり、及び銅又は銅合金微粒子(P)の拡散を抑制して、パターニング性を向上する。
(ロ)上記(9)に記載のインク受容層形成用塗布液(第2の態様)を使用して形成されたインク受容層(R1)は、上記(イ)に記載したと同様の効果を発揮する。
(ハ)上記(10)及び(11)に記載のインク受容層の形成方法(第3、4の態様)により形成されたインク受容層(R1)は、上記(イ)に記載したと同様の効果を発揮する。
(ニ)上記(13)に記載の導電パターンの形成方法(第5の態様)では、インク受容層(R)中にポリオール(A)が保持されているので、加熱、焼成の際に該ポリオール(A)が還元作用を発揮して、比較的低い焼成温度でも、導電性の高い導電パターンを形成することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、〔1〕インク受容層(R1)(第1の態様−1)、〔2〕インク受容層形成用塗布液(第2の態様)、〔3〕インク受容層(R1)の形成方法(第3の態様)、[4〕インク受容層(R1)の形成方法(第4の態様)、〔5〕インク受容層(R2)(第1の態様−2)、〔6〕インク受容層(R3)(第1の態様−3)、及び〔7〕導電パターンの形成方法(第5の態様)について説明する。
〔1〕インク受容層(R1)(第1の態様−1)
本発明の第1の態様−1の「インク受容層(R1)」は、銅又は銅合金微粒子(P)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能な、基板(K)表面上に形成されるインク受容層(R1)であって、該インク受容層(R1)が非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)からなる構造体(T1)の内部にポリオール(A)が5〜25質量%(インク受容層(R1)中の質量割合)保持されており、ポリオール(A)が分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃である、ことを特徴とする。
【0016】
前記インク受容層(R1)が少なくとも非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、及び分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(A)から形成されており、非導電性無機粒子(G)がバインダー樹脂(B)により結合された構造体(T1)中の非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(G+B)]×100)が50〜90体積%で、ポリオール(A)が非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)からなる構造体(T1)内に保持されている、ことが好ましい。
【0017】
(1)基板(K)
本発明で使用する基板(K)は、特に限定されるものではなくガラス基板等の無機材料基板、樹脂基板等を広く使用することができる。樹脂基板としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、耐熱性、機械的特性、熱的特性などの面からポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はポリエステル樹脂を用いるのが好ましく、中でもポリイミド樹脂が特に好ましい。
尚、ガラス基板を使用する場合には予め、酸洗浄、水洗、及び乾燥処理をこの順に施しておくことが望ましい。樹脂基板を用いる場合には予めその表面をコロナ処理、電子線照射、プラズマ処理、及びエッチング処理から選択された1種又は2種以上の操作により表面処理することが好ましい。
【0018】
(2)導電性インク(I)
導電性インク(I)には銅又は銅合金微粒子(P)が含まれる。銅又は銅合金微粒子(P)から得られる焼結体は、回路を形成した際に導電性が高く、またコストも低く有用である。
銅は卑な金属でありその表面が酸化を受け易いので、銅微粒子にはその表面の一部が酸化されたものも含まれる。尚、「導電性インク(I)」の用語は、該インク自体が導電性を有していることを意味するのではなく、該インクを塗布又はパターニング後に焼成して形成される焼成体が導電材を形成することを意味するための用語である。銅合金微粒子としては、Co、Si、Mg、Zn、及びSnから選択される1種又は2種以上を含む銅合金などが挙げられる。
導電性インク(I)の分散媒としては、ポリオール成分を含有する還元性溶媒が好ましく、該還元性溶媒の成分としては、ポリオール以外に、導電性インク(I)の分散性向上と焼成の容易化のために、アミド基を有する有機溶媒、エーテル系化合物、アルコール、ケトン系化合物、及びアミン系化合物等を配合することができる。好ましい分散媒については第5の態様における「導電性インク(I)」の項で説明する。
【0019】
(3)インク受容層(R1)
インク受容層(R1)は、基板(K)表面上に形成され、銅又は銅合金微粒子(P)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に加熱、焼成により導電性パターンを形成することが可能であり、少なくとも非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、及び分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(A)から形成される。
基板(K)表面上に形成される乾燥後のインク受容層(R1)の厚みは1〜100μmが好ましく、耐屈曲性や透明性の観点から20〜60μmがより好ましい。
(3−1)非導電性無機粒子(G)
インク受容層(R1)に用いられる非導電性無機粒子(G)の例としては、例えば二酸化チタン、ジルコニア、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ等の非導電性無機粒子を挙げることができる。これらの中でも、1次粒子の平均粒径が100〜5000nmの非導電性無機粒子(G)が好ましく、100〜1000nmの非導電性無機粒子(G)がより好ましい。一次粒子径が100nm未満であると、粒子の比表面積が増加し、非導電性無機粒子間同士の結合が阻害されてインク受容層(R1)の膜強度が低下するおそれがあり、一方5000nmを超えるとインク受容層(R1)表面の平坦性が悪化し、インクのパターニング性が低下するため好ましくない。非導電性無機粒子(G)としては、入手が容易で低コストであり、かつ表面がカチオン性であるため銅又は銅合金微粒子(P)との親和性が良い等の観点から非導電性無機粒子(G)としてアルミナ粒子及び/又はシリカ粒子を用いることが好ましい。また、多孔質の無機粒子を用いると、無機粒子表面の凹凸が増加し、銅又は銅合金微粒子(P)と固着する面積が大きくなるため、導電パターンの密着性をより向上することができる。
【0020】
(3−2)バインダー樹脂(B)
バインダー樹脂(B)は、非導電性無機粒子(G)を結合させ、インク受容層(R1)を形成するために必要である。バインダー樹脂(B)は使用時に加熱されるため、ガラス転移点の高い材料が好ましい。例えば、親油性ポリマーとして、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ブチラール樹脂、メラミン樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられ、親水性ポリマーとして、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン等が挙げられ、これらの親水性ポリマーは2種以上併用することも可能である。
【0021】
バインダー樹脂(B)は、水系溶媒に溶解して塗布することが好ましいことから、水溶性バインダー樹脂であることが望ましい。
更に、水溶性バインダー樹脂としてはポリビニルアルコールがより好ましい。ポリビリルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。取り扱いや汎用性の高さを考慮すると、通常のポリビニルアルコールを用いるのが好ましい。
前記通常のポリビニルアルコールは、平均重合度が1000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1000〜2400ものが好ましい。鹸化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
バインダー樹脂(B)は、インク受容層(R1)形成時に非導電性無機粒子(G)同士を結合させることで該インク受容層(R1)の膜強度を向上させると共に、インク受容層形成用塗布液中の非導電性無機粒子(G)を基板(K)上に接着させるため、インク受容層(R1)と基板(K)の密着性をも向上させる。
【0022】
(3−3)ポリオール(A)
ポリオール(A)は、分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオールである。ポリオール(A)についての説明はインク受容層(R1)、(R2)、及び(R3)について共通するので、以下にインク受容層(R)に使用するポリオール(A)として記載する。
ポリオール(A)の沸点が100℃未満では保存の際に蒸発を避けるために温度管理が必要となり、一方、350℃以下で焼成の際に気化して還元性ガス雰囲気を形成し易くなり、350℃を越えると焼成の際に除去が困難になるおそれがある。
ポリオール(A)は、焼成時に銅又は銅合金の微粒子(P)を還元する作用を発揮させるために必要である。インク受容層(R)にポリオール(A)が含まれることによって、銅、銅合金のような酸化され易い金属粒子を用いた導電性回路形成用のインクであっても、また、導電性インクの溶媒に還元性がない場合、又は焼成の際に水素ガス等の還元性ガスを使用しない場合でも、導電性に優れた導電材を形成できるインク受容層(R)を得ることが可能となる。
【0023】
ポリオール(A)はインク受容層(R)中で非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)間に存在していて、銅又は銅合金微粒子(P)を焼成する際に蒸発して還元性雰囲気を形成し、その結果、銅又は銅合金微粒子(P)の還元と焼成を促進する作用を発揮する。ポリオール(A)としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリト−ル、キシリトール、ソルビトール、ペンチト−ル、テルピネオール、及びヘキシトールが挙げられ、これらの中から選択される1種又は2種以上の使用が望ましいが本発明で使用可能なポリオール(A)は上記例示のポリオールに限定されるものではない。上記例示のポリオール(A)のうち沸点がもっとも高いのはエリスリトールの330℃である。
これらのポリオール(A)は銅又は銅合金微粒子(P)を焼成する際に、熱分解されて水素ラジカルを発生し、その水素ラジカルが銅又は銅合金微粒子(P)の表面の酸化膜を還元あるいは酸化を防止する機能を発現し、卑な金属の微粒子においても焼成が良好な導電性の高い金属膜を形成することが可能となると共に、比較的低温における焼成を可能にする。
尚、該還元性の発現は、後述する導電性インク(I)に含まれる還元性溶媒(S)中の還元性溶剤の量では焼成の際の還元性雰囲気の形成が十分でない場合に効果的である。
【0024】
(3−4)インク受容層(R1)
インク受容層(R1)中にポリオール(A)が5〜25質量%含まれている。
ポリオール(A)が前記5質量%未満では、焼成の際に銅又は銅合金微粒子(P)を還元性の雰囲気にするには不十分となるおそれがあり、一方、ポリオール(A)が25質量%を超えるとインク受容層(R1)の構造体の形成に支障をきたすおそれがある。
また、前記インク受容層中の非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(G+B)]×100)は50〜90体積%であることが好ましい。該体積割合が50体積%未満であると塗布液に占める非導電性無機粒子の濃度が減少し、塗布膜を乾燥した際に緻密なインク受容層を作製することが困難になり、一方、90体積%を超えると該無機粒子同士、及び非導電性無機粒子(G)と基板(K)を結び付けるバインダー樹脂(B)が減少して膜強度の高いインク受容層を作製することが困難になるおそれがある。
【0025】
〔2〕インク受容層形成用塗布液(第2の態様)
本発明の第2の態様の「インク受容層形成用塗布液」は、
銅又は銅合金微粒子(P)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能な、基板(K)表面上に形成されるインク受容層(R1)を形成するインク受容層形成用塗布液であって、
該インク受容層形成用塗布液が少なくとも非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(A)、及び水系溶媒からなり、
ポリオール(A)と非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対するポリオール(A)の質量割合([A/(A+G+B)]×100)が5〜25質量%であり、
非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(G+B)]×100)が50〜90体積%であることを特徴とする。
【0026】
該インク受容層形成用塗布液成分中の非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、及びポリオール(A)は前記第1の態様に記載した通りである。ポリオール(A)の沸点が100〜350℃の範囲である理由は、前記第1の態様−1に記載した通りである。
インク受容層形成用塗布液中の溶媒は、水系溶剤が好ましい。水系溶剤とは水を主成分とする溶媒であり、水系溶剤中の水の割合は通常65質量%以上である。水以外の溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類あるいはメチルエチルケトンなどのケトン類を使用することができる。
インク受容層形成用塗布液の塗布方法としては、スピンコーティング、ディップコーティング、ドロップコーティング、ローラーコーティング、スタンプ、インクジェット等の公知方法の中から選択することができる。
また、インク受容層形成用塗布液中の非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(G+B)]×100)が50〜90体積%である。該体積割合が50〜90体積%であり、ポリオール(A)と非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対するポリオール(A)の質量割合([A/(A+G+B)]×100)が5〜25質量%である理由は、前記第1の態様−1に記載した通りである。
【0027】
〔3〕インク受容層(R1)の形成方法(第3の態様)
本発明の第3の態様の基板(K)上への「インク受容層(R1)の形成方法」は、
基板(K)上に、銅又は銅合金微粒子(P)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能なインク受容層(R1)の形成方法であって、
少なくとも非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(A)、及び水系溶媒からなるインク受容層形成用塗布液を、基板(K)上に塗布後、該水系溶媒を蒸発除去して、
非導電性無機粒子(G)がバインダー樹脂(B)により結合された構造体(T1)中の非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(G+B)]×100)が50〜90体積%で、ポリオール(A)が非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)からなる構造体(T1)内に5〜25質量%(インク受容層(R1)中の質量割合)保持されている、インク受容層(R1)を形成することを特徴とする。
第3の態様の「インク受容層(R1)の形成方法」における、基板(K)、銅又は銅合金微粒子(P)、導電性インク(I)、インク受容層(R1)、非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、ポリオール(A)、及び水系溶媒については第1の態様−1に記載した通りである。また、上記体積割合([G/(G+B)]×100)、ポリオール(A)のインク受容層(R1)における存在、及びポリオール(A)のインク受容層(R1)中の濃度は第1の態様−1に記載した通りである。
【0028】
〔4〕インク受容層(R1)の形成方法(第4の態様)
本発明の第4の態様の基板(K)上への「インク受容層(R1)の形成方法」は、基板(K)上に、銅又は銅合金微粒子(P)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能なインク受容層(R1)の形成方法であって、
少なくとも非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、及び水系溶媒からなるインク受容層形成用塗布液を基板(K)上に塗布後、
該水系溶媒を蒸発除去して、非導電性無機粒子(G)がバインダー樹脂(B)により結合されていて、非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(G+B)]×100)が50〜90体積%の構造体(T1)を形成し、
該構造体(T1)上に、分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(A)を常温又は加熱状態で塗布して、ポリオール(A)が非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)からなる構造体(T1)内に5〜25質量%(インク受容層(R1)中の質量割合)保持されている、インク受容層(R1)を形成することを特徴とする。
【0029】
第4の態様の「インク受容層(R1)の形成方法」における、基板(K)、銅又は銅合金微粒子(P)、導電性インク(I)、インク受容層(R1)、非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、ポリオール(A)、及び水系溶媒については第1の態様−1に記載したのと同様である。また、上記体積割合([G/(G+B)]×100)、ポリオール(A)のインク受容層(R1)における存在、及びポリオール(A)のインク受容層(R1)中の濃度は第1の態様−1に記載した通りである。前記ポリオール(A)の塗布方法としては、スピンコーティング、ディップコーティング、ドロップコーティング、ローラーコーティング、スタンプ、インクジェット等の公知方法の中から、塗布するポリオール(A)の特性に応じて選択することができる。
ポリオール(A)の構造体(T1)上への塗布は、ポリオール(A)が常温(およそ25〜30℃程度、以下同じ)で液体の場合には常温で塗布でき、ポリオール(A)が常温で固体である場合には加熱状態で溶融して塗布することができる。この場合、構造体(T1)も加熱状態にすることが望ましい。
【0030】
〔5〕インク受容層(R2)(第1の態様−2)
本発明の第1の態様−2の「インク受容層(R2)」は、銅又は銅合金微粒子(P)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能な、基板(K)表面上に形成されるインク受容層(R2)であって、該インク受容層(R2)が複数の貫通孔を有する多孔構造部を備えた非導電性無機材料構造体(T2)の多孔構造部にポリオール(A)が5〜80体積%(インク受容層(R2)中の体積割合)保持されており、ポリオール(A)が分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃である、ことを特徴とする。
【0031】
(1)非導電性無機材料構造体(T2)
インク受容層(R2)を形成する非導電性無機材料構造体(T2)は、複数の貫通孔を有する多孔構造部を備えた非導電性無機材料構造体である。このような非導電性無機材料構造体(T2)としては公知の多孔質無機材料を使用することが可能であり、絶縁性、耐熱性、軽量性等の点からアルミナ、シリカ等から形成される多孔質セラミック膜の使用が好ましい。
非導電性無機材料構造体(T2)の厚みは、ポルオール(A)の保持量と、基板(K)上へのインク受容層(R2)の形成性等を考慮すると、1μm〜3mmが好ましく、100μm〜1mm程度がより好ましい。
また、非導電性無機材料構造体(T2)の空隙率は、大きい方が好ましいが機械的強度を考慮すると5〜80体積%が好ましく、20〜70体積%がより好ましく、30〜70体積%が更に好ましく、市販されている種々の空隙率のものから選択して使用することができる。
貫通孔の断面形状は円形に限定されるものではなく、楕円形、多角形、細長い形状などの形状とすることができ、また複数の貫通孔の断面形状や断面積を揃えることは必須ではなく、断面形状や断面積の異なる貫通孔が存在してもよく、貫通孔の平面配置は規則的とすることが好ましいが不規則的であってもよい。表面の凹凸形状は導電性インク(I)のパターニングを考慮すると緻密でマクロ的にみて平坦であることが好ましい。
【0032】
(2)非導電性無機材料構造体(T2)へのポルオール(A)の保持
非導電性無機材料構造体(T2)中には、前記したポルオール(A)を保持することができる。非導電性無機材料構造体(T2)へのポルオール(A)の保持は、インク受容層(R2)を基板(K)に装着させた後に行うことが好ましい。
非導電性無機材料構造体(T2)にポルオール(A)を保持させるために、ポルオール(A)を刷毛による塗布、バーコータ等の平易な方法、その他第4の態様に記載した方法で塗布することができる。塗布後、非導電性無機材料構造体(T2)表面に残った余分なポルオール(A)を取り除き、非導電性無機材料構造体(T2)内に浸透したポルオール(A)のみが残るようにする。
【0033】
〔6〕インク受容層(R3)(第1の態様−3)
本発明の第1の態様−3の「インク受容層(R3)」は、銅又は銅合金微粒子(P)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能な、基板(K)表面上に形成されるインク受容層(R3)であって、該インク受容層(R3)が複数の貫通孔を有する多孔構造部を備えた非導電性有機ポリマー構造体(T3)で、その多孔構造部にポリオール(A)が5〜80体積%(インク受容層(R3)中の体積割合)保持されており、ポリオール(A)が分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃である、ことを特徴とする。
【0034】
(1)非導電性有機ポリマー構造体(T3)
インク受容層(R3)を形成する非導電性有機ポリマー構造体(T3)は、複数の貫通孔を有する多孔構造部を備えた非導電性有機ポリマー構造体である。このような非導電性有機ポリマー構造体(T3)としては公知の有機ポリマー構造体を使用することが可能であり、絶縁性、耐熱性等の点から多孔質のフッ素樹脂膜、ポリカーボネート膜、ポリスルフォン膜、ポリエーテルスルフォン膜、ポリエーテルイミド膜、ポリエステルカーボネート膜等を使用することができるが、多孔質フッ素樹脂膜の使用が好ましい。
非導電性有機ポリマー構造体(T3)としては、多孔質のフィルム状フィルターで、繊維のからみあいで形成される、円形に近い孔が相互につながりあった孔構造を有するメンブレンフィルタを使用することができる。
非導電性有機ポリマー構造体(T3)の厚みは、ポルオール(A)の保持量と、基板(K)上へのインク受容層(R3)の形成性、可撓性等を考慮すると、1μm〜3mmが好ましく、100μm〜1mm程度がより好ましい。
また、非導電性有機ポリマー構造体(T3)の空隙率は、大きい方が好ましいが機械的強度を考慮すると5〜80体積%が好ましく、20〜70体積%がより好ましく、30〜70体積%が更に好ましく、市販されている種々の空隙率のものから選択して使用することができる。表面の凹凸形状は導電性インク(I)のパターニングを考慮すると緻密でマクロ的にみて平坦であることが好ましい。
【0035】
(2)非導電性有機ポリマー構造体(T3)へのポルオール(A)の保持
非導電性有機ポリマー構造体(T3)中には、前記したポルオール(A)を保持することができる。非導電性有機ポリマー構造体(T3)へのポルオール(A)の保持は、インク受容層(R2)を基板(K)に装着させた後に行うことが好ましい。
非導電性有機ポリマー構造体(T3)へのポルオール(A)の保持方法は、前記非導電性無機材料構造体(T2)へのポルオール(A)を保持方法と同様に行うことができる。
【0036】
〔7〕導電性パターンの形成方法(第5の態様)
本発明の第5の態様の「導電性パターンの形成方法」は、基板(K)上に形成された、前記第1の態様に記載のインク受容層(R1)、インク受容層(R2)、又はインク受容層(R3)上に銅又は銅合金微粒子(P)と還元性溶媒(S)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に150℃以上の温度で加熱、焼成することを特徴とする。また、インク受容層(R)として、インク受容層(R1)を使用する場合、少なくとも非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、及び分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(A)、及び水系溶媒を含むインク受容層形成用塗布液を基板(K)表面上に塗布後、該水系溶媒を蒸発除去して、非導電性無機粒子(G)がバインダー樹脂(B)により結合された構造体(T1)中の非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(G+B)]×100)が50〜90体積%で、ポリオール(A)が非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)からなる構造体(T1)内に5〜25質量%(インク受容層(R1)中の質量割合)保持されるインク受容層(R1)を形成し、該インク受容層(R1)上に銅又は銅合金微粒子(P)と還元性溶媒(S)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に150℃以上の温度で加熱、焼成することが好ましい。
この場合、非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、ポリオール(A)、水系溶媒、基板(K)、及びインク受容層(R)は、前記第1の態様−1〜3に示した通りであり、インク受容層形成用塗布液は、第2の態様に記載した通りであり、インク受容層(R)の形成方法は、第3の態様に記載した通りである。また、上記体積割合([G/(G+B)]×100)、ポリオール(A)のインク受容層(R)における存在、及びポリオール(A)のインク受容層(R)中の濃度は第1の態様−1に記載した通りである。
【0037】
(1)導電性インク(I)
導電性インク(I)中の銅又は銅合金微粒子(P)は、第1の態様に記載した通りである。
導電性インク(I)に含まれる還元性溶媒(S)としては、分子中にヒドロキシル基を2つ以上有するポリオール(S1)単独、又はポリオール(S1)と以下に記載する混合溶媒を使用することができる。

好ましいポリオール(S1)としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、グリセロール、トレイトール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ヘキシトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、グリセリンアルデヒド、ジオキシアセトン、トレオース、エリトルロース、エリトロース、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、アルトロース、ラクトース、イソマルトース、グルコヘプトース、ヘプトース、マルトトリオース、ラクツロース、及びトレハロースの中から選択される1種又は2種以上を挙げることができる。これらの中で融点が高いものについては他のポリオール(S1)と混合して使用することができる。
これらのポリオール(S1)はインクの焼成に伴う熱分解時に水素ラジカルを発生し、その水素ラジカルが銅又は銅合金微粒子(P)の表面の酸化膜を還元あるいは酸化を防止する機能を発現し、卑な金属の微粒子においても焼成が良好な導電性の高い金属膜を形成することが可能となる。
還元性溶媒(S)の成分としては、上記ポリオール(S1)以外に、以下に記載するアミド基を有する有機溶媒(S2)、エーテル系化合物(S3)、アルコール(S4)、ケトン系化合物(S5)、及びアミン系化合物(S6)等を配合することができる。
【0038】
前記アミド基を有する有機溶媒(S2)としては、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルプロパンアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、及びアセトアミドの中から選択される1種又は2種以上が例示できる。
還元性溶媒(S)の他の成分としては、一般式R−O−R(R、Rは、それぞれ独立したアルキル基で、炭素原子数は1〜4である。)で表されるエーテル系化合物(S3)、一般式R−OH(Rは、アルキル基で、炭素原子数は1〜4である。)で表されるアルコール(S4)、R−C(=O)−R(R、Rは、それぞれ独立したアルキル基で、炭素原子数は1〜2である。)で表されるケトン系化合物(S5)、及び一般式R−(N−R)−R(R、R、Rは、それぞれ独立したアルキル基、又は水素で、炭素原子数は0〜2である。)で表されるアミン系化合物(S6)が例示できる。
【0039】
前記エーテル系化合物(S3)の具体例として、ジエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、t−アミルメチルエーテル、ジビニルエーテル、エチルビニルエーテル、及びアリルエーテルの中から選択される1種又は2種以上が例示でき、前記アルコール(S4)の具体例として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、及び2−メチル2−プロパノールの中から選択される1種又は2種以上が例示でき、前記ケトン系化合物(S5)の具体例として、アセトン、メチルエチルケトン、及びジエチルケトンの中から選択される1種又は2種以上が例示でき、前記アミン系化合物(S6)の具体例として、トリエチルアミン及び/又はジエチルアミンが例示できる。
【0040】
(2)分散剤
上記還元性溶媒(S)には銅又は銅合金微粒子(P)の分散剤を配合することができる。
分散剤は、還元性溶媒(S)中で少なくとも銅又は銅合金微粒子(P)の表面の一部を覆って、二次凝集性が少ない状態で銅又は銅合金微粒子(P)を分散させる作用を発揮する。上記分散剤として好ましいのは、水溶性高分子化合物である、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン等のアミン系の高分子;ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等のカルボン酸基を有する炭化水素系高分子;ポリアクリルアミド等のアクリルアミド;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、更にはデンプン、及びゼラチンの中から選択される1種又は2種以上である。
【0041】
上記例示した水溶性高分子化合物の具体例として、ポリビニルピロリドン(分子量:1000〜500、000)、ポリエチレンイミン(分子量:100〜100,000)、カルボキシメチルセルロース(アルカリセルロースのヒドロキシル基Na塩のカルボキシメチル基への置換度:0.4以上、分子量:1000〜100,000)、ポリアクリルアミド(分子量:100〜6,000,000)、ポリビニルアルコール(分子量:1000〜100,000)、ポリエチレングリコール(分子量:100〜50,000)、ポリエチレンオキシド(分子量:50,000〜900,000)、ゼラチン(平均分子量:61,000〜67,000)、水溶性のデンプン等が挙げられる。
【0042】
上記かっこ内にそれぞれの高分子化合物の数平均分子量を示すが、このような分子量範囲にあるものは分散剤として好適に使用できる。尚、これらの2種以上を混合して使用することもできる。
また、分散剤の添加量は、分散溶液に存在する銅又は銅合金微粒子(P)に対する質量比([分散剤/銅又は銅合金微粒子(P)]質量比)として0.01〜10が好ましい。分散剤の添加量比が前記10を超えると溶液の粘性が高くなる場合がある。一方、前記0.01未満では粒子が粗大化したり、もしくは架橋効果により粒子同士が強固な凝集体を形成したりする場合がある。より好ましい上記添加量比は0.5〜5である。
このようにして得られた導電性インク(I)は、銅又は銅合金微粒子(P)が少なくともその表面の一部が分散剤に覆われた状態で還元性溶媒(S)中に分散している。このような分散剤が銅又は銅合金微粒子(P)を分散させるメカニズムは完全に解明されてはいないが、高分子分散剤を使用する場合には、例えば高分子に存在する官能基の非共有電子対を有する原子部分が銅又は銅合金微粒子(P)の表面に吸着して、分子層を形成し、互いに銅又は銅合金微粒子(P)同士の接近をさせない、斥力が発生していることが予想される。
【0043】
(3)銅又は銅合金微粒子(P)の分散性向上
導電性インク(I)中での銅又は銅合金微粒子(P)の分散性を更に向上するのに、撹拌手段を採用することが望ましい。分散溶液の撹拌方法としては、公知の撹拌方法を採用することができるが、超音波照射方法を採用するのが好ましい。
上記超音波照射時間は、特に制限はなく任意に選択することが可能である。例えば、超音波照射時間を5〜60分間の間で任意に設定すると照射時間が長い方が平均二次凝集サイズは小さくなる傾向にある。更に超音波照射時間を長くすると分散性は一層向上する。
【0044】
(4)導電性インク(I)の塗布又はパターン化
前記インク受容層(R)上に導電性インク(I)を塗布又はパターン化により液膜を形成する。該塗布又はパターン化は特に限定されるものではなく、吐出、転写手段等も含まれる。
パターン化の具体的方法としては特に制限されず、スクリーン印刷、マスク印刷、スプレーコート、バーコート、ナイフコート、スピンコート、インクジェット印刷、ディスペンサ印刷等の方法を用いることができる。
上記導体パターンの形成方法によれば、線幅25μm、線間25μm程度の緻密なパターンを形成することが可能である。また、これらの吐出、塗布、又は転写手段は公知の方法を採用することができる。
【0045】
前記導電性インク(I)を塗布又はパターン化する際に、焼成温度より30℃以上低く、かつ還元性溶媒(S)中のポリオール(S1)の沸点より30℃以上低い温度に、基板(K)を加熱することが望ましい。また、使用する還元性溶媒(S)にもよるが、基板(K)の加熱温度は50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましい。
このような温度範囲で基板(K)を加熱することにより、インク受容層(R)もほぼ同温度に加熱される結果、還元作用を有するポリオール(S1)の蒸発を抑制して、還元性溶媒(S)中の後述する低沸点の溶媒を蒸発させることにより導電性インクの濡れ広がりを防いで微細ラインの形成が可能になると共にパターン形成の精度を向上させることができる。尚、上記加熱温度は受容層に使用するポリオール(A)の沸点より30℃以上低い温度することが望ましい。上記基板(K)の加熱は、例えば配置するステージ上にペルチェ素子をおき、その上に基板(K)を載せて、ペルチェ素子の加熱温度を制御することにより行うことができる。
【0046】
(5)導電パターンの形成
上記塗布又はパターン化された液膜は、150℃以上の温度で焼成して、導電パターンを形成することが可能である。尚、焼成に先立ち乾燥工程を設けることもできるが、該乾燥条件は、使用する還元性溶媒(S)にもよるが例えば100〜200℃で15〜30分程度であり、焼成条件は、塗布厚にもよるが例えば190〜250℃で20〜40分間程度、好ましくは190〜220℃で20〜40分間程度である。このようにして得られる導電パターンは、良好な導電性を有しており、その電気抵抗値は、1.0Ωcm以下で例えば、1.0×10−5Ωcm〜1×10−3Ωcm程度を達成することが可能である。更に、上記導電パターンは、インク受容層(R)上方の非導電性無機粒子(G)と固着することでアンカー効果を発現するため、インク受容層(R)への密着性が極めて優れている。
【実施例】
【0047】
実施例により本発明をより具体的に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下に本実施例、比較例で使用した原材料、及び評価方法を記載する。
(1)原材料
(イ)ガラス基板
松浪硝子工業(株)製、商品名:Micro Slide Glass
(ロ)バインダー樹脂
ポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:PVA117)
(ハ)非導電性無機粒子
アルミナ粒子(住友化学(株)製、商品名:AA−07,スミコランダム、平均一次粒子径700nm)
(ニ)非導電性有機ポリマー構造体
ADVANTEC社製、PTFE製メンブレンフィルタ(商品名:PF020)
(ホ)非導電性無機材料構造体
アスザック(株)製、多孔質セラミック板(商品名:AZP60)
【0048】
(2)評価方法
(2−1)インク受容層
(イ)形成性
インク受容層の形成性を評価した。評価基準は下記の通りである。
○:安定したインク受容層が形成された。
△:形成されたインク受容層は非導電性無機粒子間の結合が弱く、また基板から容易に剥離し易いものであった。
×:インク受容層の膜が形成されなかった。
(ロ)インク受容層の基板への密着性
JIS D0202−1988に準拠してテープ剥離試験を行った。
評価試料のインク受容層を1mm×1mmずつ、計10マス区切り、セロハンテープ(ニチバン(株)製、商品名:セロテープ(登録商標)No.405)を用い、インク受容層に密着させた後剥離した。
判定は10マスの内、剥離したマス目の数から以下の規準により表した。
○:剥離したマス目が1マス以下
△:剥離したマス目が2〜4マス
×:剥離したマス目が5マス以上
(ハ)インク受容層への印刷性
市販のインクジェットメディア印刷幅を1とした場合の滲み幅Xを求め、下記の判定基準で導電性インクのインク受容層への印刷性を評価した。なお、滲み幅Xは、得られた配線材料をデジタルマイクロスコープにより観察して求めた。
○:0.1≦X≦1.2
△:1.2<X≦1.5
×:1.5<X
【0049】
(2−2)導電パターン
(イ)導電性
JIS D0202−1988に準拠して、導電パターンの体積抵抗率を直流四端子法(使用測定機:ケースレー社製、デジタルマルチメータDMM2000型(四端子電気抵抗測定モード))により評価した。評価基準は下記の通りである。
○:体積抵抗率が100μΩ・cm以下
△:体積抵抗率が100μΩ・cm超、200μΩ・cm以下
×:体積抵抗率が200μΩ・cm超
(ロ)密着性
JIS D0202−1988に準拠して導電パターンのテープ剥離試験を行った。
評価試料の導電パターンを1mmずつ、計10マス区切り、セロハンテープ(ニチバン(株)製、商品名:セロテープ(登録商標)No.405)を用い、導電パターンに密着させた後剥離した。
判定は10マスの内、剥離したマス目の数から以下の規準により表した。
○:剥離したマス目が1マス以下
△:剥離したマス目が2〜4マス
×:剥離したマス目が5マス以上
【0050】
[実施例1]
ガラス基板上にインク受容層を形成し、形成性と基板への密着性を評価した。次に、導電性インクを調製して、形成したインク受容層上に該導電性インクをパターニングして、導電性パターンを形成し、印刷性を評価した。その後、インク受容層上の導電性パターンを焼成して導電パターンを形成後、導電性と密着性の評価を行った。
(1)ガラス基板上にインク受容層の形成
ポリビニルアルコール1.5質量部を90℃に加熱したイオン交換水83質量部に溶解し、その後アルミナ粒子13.5質量部を添加してアルミナ粒子の分散溶液を調製した。該分散溶液を室温まで冷却した後にグリセリン2質量部を加えて、インク受容層形成用塗布液を調製した。次に、このインク受容層形成用塗布液をガラス基板上にドロップコーティングにより、乾燥後の厚みが50μmになるように塗布し、室温で12時間乾燥することにより、インク受容層を形成した。
該インク受容層における、アルミナ粒子とポリビニルアルコール(固形分)の合計量に対するアルミナ粒子の体積割合(表1中、無機粒子体積割合と記載する。以下同じ)は80体積%、また該インク受容層中のグリセリン含有量(表1中、ポリオール含有量と記載する。以下同じ)は12質量%であった。該インク受容層の形成性、基板への密着性の評価を行った。
【0051】
(2)インク受容層上への導電性パターンの形成
酢酸銅((CHCOO)Cu・1HO)0.2gを蒸留水10ミリリットル(ml)に溶解させた酢酸銅水溶液10mlと、金属イオン還元剤として5.0mol/リットル(l)となるように水素化ホウ素ナトリウムと蒸留水とを混合した水素化ホウ素ナトリウム水溶液100mlを調製した。その後、上記水素化ホウ素ナトリウム水溶液に、水溶性高分子分散剤としてポリビニルピロリドン(PVP、数平均分子量約3500)0.5gを添加して、攪拌溶解させた後、窒素ガス雰囲気中で、上記酢酸銅水溶液10mlを滴下した。
この混合液を約60分間よく攪拌しながら反応させた結果、粒子径5〜10nmの銅微粒子が分散した分散液が得られた。
次に、上記方法で得られた銅微粒子が分散した分散液100mlに、凝集促進剤としてクロロホルムを5ml添加してよく攪拌した。数分間攪拌した後、反応液を遠心分離機に入れ、銅微粒子を沈殿回収した。回収した銅微粒子と30mlの蒸留水とを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく攪拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収する水洗浄を3回、続いて、同じく試験管中で、得られた銅微粒子と30mlの1−ブタノールとを入れよく攪拌した後、遠心分離機で銅微粒子を回収するアルコール洗浄を3回行った。
以上の工程により回収された銅微粒子を、混合有機溶媒としてN−メチルアセトアミド50体積%、トリエチルアミン10体積%、及びグリセリン40体積%からなる混合有機溶媒10mlに分散させ、1時間、超音波ホモジナイザーを用いて分散液中に超音波振動を与えることで導電性インクを調製した。
ガラス基板上に形成されたインク受容層上に、該導電性インクをスクリーン印刷法(版:線幅200μm、長さ50mm、厚み10μm)にて印刷して導電性パターンを形成し、印刷性(表1中、インク受容層への印刷性と記載する。以下同じ。)評価を行った。
【0052】
(3)導電性パターンの焼成による導電パターンの形成
インク受容層上に形成された導電性パターンを窒素雰囲気下で250℃にて30分間焼成することにより、導電パターン(配線材料)を形成した。
得られた導電パターンの導電性と密着性の評価を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0053】
[実施例2]
インク受容層形成用塗布液を調製する際に、インク受容層中のグリセリン含有量が21質量%となるようにグリセリンを添加した以外は、実施例1に記載したと同様にしてインク受容層形成用塗布液を調製した。該インク受容層形成用塗布液を実施例1に記載したと同様の方法で基板上に塗布後、乾燥してインク受容層を形成した。該インク受容層における、アルミナ粒子とポリビニルアルコール(固形分)の合計量に対するアルミナ粒子の体積割合は70体積%であった。該インク受容層の形成性、基板への密着性の評価を行った。
実施例1に記載したと同様の方法で、導電性インクを調製し、前記インク受容層上に該導電性インクを印刷して導電性パターンを形成して印刷性を評価した。
次に実施例1に記載したと同様の方法で該導電性パターンを焼成して導電パターンを形成した。得られた導電パターンの導電性と密着性の評価を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0054】
[実施例3]
インク受容層形成用塗布液を調製する際に、インク受容層中のグリセリン含有量が6質量%となるようにグリセリンを添加した以外は、実施例1に記載したと同様にしてインク受容層形成用塗布液を調製した。該インク受容層形成用塗布液を実施例1に記載したと同様の方法で基板上に塗布後、乾燥してインク受容層を形成した。
該インク受容層における、アルミナ粒子とポリビニルアルコール(固形分)の合計量に対するアルミナ粒子の体積割合は85体積%であった。該インク受容層の形成性、基板への密着性の評価を行った。
実施例1に記載したと同様の方法で導電性インクを調製し、前記インク受容層上に該導電性インクを印刷して導電性パターンを形成して印刷性を評価した。
次に実施例1に記載したと同様の方法で該導電性パターンを焼成して導電パターンを形成した。得られた導電パターンの導電性と密着性の評価を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0055】
[実施例4]
ガラス基板上にインク受容層を形成し、次に、導電性インクを調製して該インク受容層上に導電性インクをパターニングして導電性パターンを形成した。その後、該導電性パターンを焼成して導電パターンを形成した。
(1)ガラス基板上にインク受容層の形成
ポリビニルアルコール1.5質量部を90℃に加熱したイオン交換水83質量部に溶解し、その後アルミナ粒子13.5質量部を添加してアルミナ粒子の分散溶液を調製した。該分散溶液を室温まで冷却した後にインク受容層中のグリセリン含有量が12質量%となるようにグリセリンを添加して、インク受容層形成用塗布液を調製した。次に、このインク受容層形成用塗布液をガラス基板上にドロップコーティングにより塗布し、室温で12時間乾燥することにより、塗膜層を形成した。
該塗膜層における、アルミナ粒子とポリビニルアルコール(固形分)の合計量に対するアルミナ粒子の体積割合は80体積%であった。
該塗膜層上にグリセリン2質量部を前記インク受容層表面を覆うように塗布してインク受容層を形成した。該インク受容層中にグリセリンが12質量%含まれていた。該インク受容層の形成性、基板への密着性の評価を行った。
(2)導電性パターンの形成、及び該パターンの焼成による導電パターンの形成
実施例1に記載したと同様の方法で導電性インクを調製し、前記インク受容層上に該導電性インクを印刷して導電性パターンを形成し、印刷性を評価した。次に実施例1に記載したと同様の方法で該導電性パターンを焼成して導電パターンを形成した。
得られた導電パターンの導電性と密着性の評価を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0056】
[比較例1]
(1)ガラス基板上にインク受容層の形成
グリセリンを添加しなかった以外は実施例1に記載したと同様にガラス基板上にインク受容層を形成した。該インク受容層の形成性、基板への密着性の評価を行った。
(2)導電性パターンの形成、及び該パターンの焼成による導電パターンの形成
実施例1に記載したと同様の方法で、導電性インクを調製し、前記インク受容層上に該導電性インクを印刷して導電性パターンを形成し、印刷性を評価した。
次に実施例1に記載したと同様の方法で該導電性パターンを焼成して導電パターンを形成した。得られた導電パターンの導電性と密着性の評価を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0057】
[比較例2]
インク受容層の形成の際にインク受容層中のグリセリン含有量が40質量%となるようにグリセリンを添加した以外は、実施例1に記載したと同様にしてインク受容層形成用塗布液を調製した。該インク受容層形成用塗布液を実施例1に記載したと同様の方法で基板上に塗布後、乾燥してインク受容層を形成した。
該インク受容層における、アルミナ粒子とポリビニルアルコール(固形分)の合計量に対するアルミナ粒子の体積割合は60体積%であった。該インク受容層の形成性、基板への密着性の評価を行った。
実施例1に記載したと同様の方法で導電性インクを調製し、前記インク受容層上に該導電性インクを印刷して導電性パターンを形成し、印刷性を評価した。
次に実施例1に記載したと同様の方法で該導電性パターンを焼成して導電パターンを形成した。得られた導電パターンの導電性と密着性の評価を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0058】
[比較例3]
インク受容層形成用塗布液を調製する際に、ポリビニルアルコールを10質量部、アルミナ粒子を5質量部とし、インク受容層中のグリセリン含有量が12質量%となるようにグリセリンを添加したとした以外は、実施例1に記載したと同様にしてインク受容層形成用塗布液を調製した。該インク受容層形成用塗布液を実施例1に記載したと同様の方法で基板上に塗布後、乾燥してインク受容層を形成した。該インク受容層における、アルミナ粒子とポリビニルアルコール(固形分)の合計量に対するアルミナ粒子の体積割合は30体積%であった。該インク受容層の形成性、基板への密着性の評価を行った。
実施例1に記載したと同様の方法で、導電性インクを調製し、前記インク受容層上に該導電性インクを印刷して導電性パターンを形成し、印刷性を評価した。
次に実施例1に記載したと同様の方法で該導電性パターンを焼成して導電パターンを形成した。得られた導電パターンの導電性と密着性の評価を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0059】
[比較例4]
インク受容層形成用塗布液を調製する際に、ポリビニルアルコールを0.5質量部、アルミナ粒子を14.5質量部とし、グリセリン添加量を0質量部とした以外は、実施例1に記載したと同様にしてインク受容層形成用塗布液を調製した。該インク受容層形成用塗布液を実施例1に記載したと同様の方法で基板上に塗布後、乾燥してインク受容層を形成した。
該インク受容層における、アルミナ粒子とポリビニルアルコール(固形分)の合計量に対するアルミナ粒子の体積割合は97体積%であった。該インク受容層の形成性、基板への密着性の評価を行った。
実施例1に記載したと同様の方法で、導電性インクを調製し、前記インク受容層上に該導電性インクを印刷して導電性パターンを形成し、印刷性を評価した。
次に実施例1に記載したと同様の方法で該導電性パターンを焼成して導電パターンを形成した。得られた導電パターンの導電性と密着性の評価を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
[実施例1〜4、比較例1〜4の評価結果]
実施例1〜4においては、基板上に形成したインク受容層の形成性と密着性は良好であり、該インク受容層上への導電性インクの印刷性も良好であった。また、実施例1〜4において、導電性パターンを焼成して得られた導電パターンは導電性及び密着性が良好であった。
これに対し、グリセリンを添加しないでインク受容層を形成した比較例1においては、体積抵抗率は大きすぎて測定不可であった。
インク受容層中のグリセリン濃度が40質量%である比較例2においてはインク受容層としての膜が形成されなかった。
アルミナ粒子とポリビニルアルコール(固形分)の合計量に対するアルミナ粒子の体積割合が30体積%である比較例3においては、導電性インクの濡れ広がりが多く印刷性が低下した。
アルミナ粒子とポリビニルアルコール(固形分)の合計量に対するアルミナ粒子の体積割合が97体積%である比較例4においてはバインダー樹脂量の減少に伴い、インク受容層の形成性が低下して、基板への密着性も低下した。
【0062】
[実施例5]
ガラス基板上に耐熱性接着剤(アレムコプロダクツ社製、商品名:アレムコボンド526N)を塗布しておき、その上に非導電性有機ポリマー構造体として、上記PTFE製メンブレンフィルタ(厚み:0.54mm)を平坦になるように貼り付けた。次に該非導電性有機ポリマー構造体上にグリセリンをバーコータにより塗布・浸透させた後、表面に残った余分なグリセリンを取り除き、グリセリンをインク受容層中に50体積%含むインク受容層を形成した。
実施例1に使用した導電性インクを用いてインクジェット装置(マイクロジェット社製、型式:LaboJet-300)で、該インク受容層の表面上に幅200μm、長さ20mmの導電性パターンを形成した。次に、インク受容層上に形成された導電性パターンを窒素ガス雰囲気下で250℃にて30分間焼成することにより、導電パターン(配線材料)を形成した。
得られた導電パターンについて、導電性の評価結果を表2に示す。
【0063】
[比較例5]
比較例5において、インク受容層にグリセリンを塗布・浸透させない以外は実施例5に記載したと同様の方法にて、インク受容層を形成して導電性パターンを形成した。次に、実施例5に記載したと同様の方法にて導電性パターンを焼成して、導電パターン(配線材料)を形成した。得られた導電パターンについて、導電性の評価結果を表2に示す。
【0064】
[実施例6]
ガラス基板上に耐熱性接着剤(アレムコプロダクツ社製、商品名:アレムコボンド 526N)を塗布しておき、その上に非導電性無機材料構造体として、多孔質セラミック板(厚み:0.5mm)を貼り付けた。次に多孔質セラミック板の上に、実施例5に記載したと同様の方法により、グリセリンを塗布・浸透させ、グリセリンをインク受容層中に50体積%含むインク受容層を形成した。
次に実施例1で使用した導電性インクを用いて実施例5に記載したと同様の方法により、導電性パターンを形成した。次に、インク受容層上に形成された導電性パターンを窒素ガス雰囲気下で250℃にて30分間焼成することにより、導電パターン(配線材料)を形成した。得られた導電パターンについて、導電性の評価結果を表2に示す。
【0065】
[比較例6]
比較例6において、インク受容層にグリセリンを塗布・浸透させなかった以外は実施例6に記載したと同様の方法にて、インク受容層を形成し、該インク受容層上に導電性インクを使用して導電性パターンを形成後、焼成して導電パターン(配線材料)を形成した。得られた導電パターンについて、導電性の評価結果を表2に示す。
【0066】
[実施例7]
実施例7において、導電性インク中の有機溶媒を「グリセリン100体積%」とした以外は実施例1に記載したと同様の導電性インクを使用した。実施例1に記載したと同様に、インク受容層を形成して該インク受容層上に該導電性インクを使用して導電性パターンを形成後、焼成して導電パターン(配線材料)を形成した。得られた導電パターンについて、導電性の評価結果を表2に示す。
【0067】
[実施例8]
実施例8として、導電性インク中の混合有機溶媒を「N−メチルアセトアミド80体積%、トリエチルアミン20体積%とした以外は実施例1に記載したと同様の導電性インクを使用した。実施例1に記載したと同様に、インク受容層を形成して該インク受容層上に前記導電性インクを使用して導電性パターンを形成後、焼成して導電パターン(配線材料)を形成した。得られた導電パターンについて、導電性の評価結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
[実施例9、10]
(1)ガラス基板上にインク受容層の形成
インクジェット装置の基板を配置するステージ上にペルチェ素子をおき、その上に実施例1に記載したと同様の方法で、基板上にインク受容層を形成した。
(2)インク受容層上への導電性パターンの形成
実施例1に記載したと同様の方法で導電性インクを調製した。
表3に記載する通り、実施例9、10でガラス基板を60、80℃にそれぞれ加熱した状態で、前記ガラス基板上のインク受容層上に、実施例1に使用した導電性インクを用いてインクジェット装置(マイクロジェット社製、型式:LaboJet−300)を用いて、該インク受容層の表面上に幅200μm、長さ20mmの導電性パターンを形成した。
導電性パターンのライン形状の評価基準は下記の通りであった。
導電性パターンのライン形状の幅が平均幅の±30%の範囲内であるとき:○
導電性パターンのライン形状の幅が平均幅の±30%の範囲を超える部分があるとき:×
次に250℃で焼成して導電パターンを形成した。
インク受容層上の導電性パターンのライン形状、インク受容層上に形成した導電パターンのインク受容層への密着性、導電性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0070】
【表3】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅又は銅合金微粒子(P)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能な、基板(K)表面上に形成されるインク受容層(R)であって、
該インク受容層(R)が
(i)非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)からなる構造体(T1)の内部にポリオール(A)が5〜25質量%(インク受容層(R1)中の質量割合)保持されたインク受容層(R1)、
(ii)複数の貫通孔を有する多孔構造部を備えた非導電性無機材料構造体(T2)の多孔構造部にポリオール(A)が5〜80体積%(インク受容層(R2)中の体積割合)保持されたインク受容層(R2)、又は
(iii)複数の貫通孔を有する多孔構造部を備えた非導電性有機ポリマー構造体(T3)の多孔構造部にポリオール(A)が5〜80体積%(インク受容層(R3)中の体積割合)保持されたインク受容層(R3)であり、
ポリオール(A)が分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃である、
ことを特徴とする、インク受容層。
【請求項2】
前記インク受容層(R1)が少なくとも非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、及び分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(A)から形成されており、
非導電性無機粒子(G)がバインダー樹脂(B)により結合された構造体(T1)中の非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(G+B)]×100)が50〜90体積%で、
ポリオール(A)が非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)からなる構造体(T1)内に保持されていることを特徴とする、請求項1に記載のインク受容層。
【請求項3】
前記インク受容層(R1)におけるバインダー樹脂(B)が水溶性バインダー樹脂であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のインク受容層。
【請求項4】
前記インク受容層(R1)における水溶性バインダー樹脂がポリビニルアルコールであることを特徴とする、請求項3に記載のインク受容層。
【請求項5】
前記インク受容層(R1)における非導電性無機粒子(G)が平均粒子径100〜5000nmのシリカ粒子及び/又はアルミナ粒子からなることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のインク受容層。
【請求項6】
前記インク受容層(R2)を形成する非導電性無機材料構造体(T2)が多孔質セラミック膜であり、インク受容層(R3)を形成する非導電性有機ポリマー構造体(T3)が多孔質フッ素樹脂膜である、請求項1に記載のインク受容層。
【請求項7】
前記基板(K)表面上に形成されたインク受容層(R1)の厚みが1〜100μmで、インク受容層(R2)と(R3)の厚みが1μm〜3mmであることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のインク受容層。
【請求項8】
前記ポリオール(A)がエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリト−ル、キシリトール、ソルビトール、ペンチト−ル、テルピネオール、及びヘキシトールの中から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のインク受容層。
【請求項9】
銅又は銅合金微粒子(P)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能な、基板(K)表面上に形成されるインク受容層(R1)を形成するインク受容層形成用塗布液であって、
該インク受容層形成用塗布液が少なくとも非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(A)、及び水系溶媒からなり、
ポリオール(A)と非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対するポリオール(A)の質量割合([A/(A+G+B)]×100)が5〜25質量%であり、
非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(G+B)]×100)が50〜90体積%であることを特徴とする、インク受容層形成用塗布液。
【請求項10】
基板(K)上に、銅又は銅合金微粒子(P)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能なインク受容層(R1)の形成方法であって、
少なくとも非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(A)、及び水系溶媒からなるインク受容層形成用塗布液を、基板(K)上に塗布後、
該水系溶媒を蒸発除去して、非導電性無機粒子(G)がバインダー樹脂(B)により結合された構造体(T1)中の非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(G+B)]×100)が50〜90体積%で、ポリオール(A)が非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)からなる構造体(T1)内に5〜25質量%(インク受容層(R1)中の質量割合)保持されている、インク受容層(R1)を形成することを特徴とする、基板(K)上へのインク受容層の形成方法。
【請求項11】
基板(K)上に、銅又は銅合金微粒子(P)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に加熱、焼成により導電パターンを形成することが可能なインク受容層(R1)の形成方法であって、
少なくとも非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、及び水系溶媒からなるインク受容層形成用塗布液を基板(K)上に塗布後、
該水系溶媒を蒸発除去して、非導電性無機粒子(G)がバインダー樹脂(B)により結合されていて、非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(G+B)]×100)が50〜90体積%の構造体(T1)を形成し、
該構造体(T1)上に、分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(A)を常温又は加熱状態で塗布して、ポリオール(A)が非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)からなる構造体(T1)内に5〜25質量%(インク受容層(R1)中の質量割合)保持されている、インク受容層(R1)を形成することを特徴とする、基板(K)上へのインク受容層の形成方法。
【請求項12】
基板(K)上に形成された、請求項1に記載のインク受容層(R1)、インク受容層(R2)、又はインク受容層(R3)上に銅又は銅合金微粒子(P)と還元性溶媒(S)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に150℃以上の温度で加熱、焼成することを特徴とする、導電パターンの形成方法。
【請求項13】
少なくとも非導電性無機粒子(G)、バインダー樹脂(B)、及び分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(A)、及び水系溶媒を含むインク受容層形成用塗布液を基板(K)表面上に塗布後、
該水系溶媒を蒸発除去して、非導電性無機粒子(G)がバインダー樹脂(B)により結合された構造体(T1)中の非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)(固形分)の合計量に対する非導電性無機粒子(G)の体積割合([G/(G+B)]×100)が50〜90体積%で、ポリオール(A)が非導電性無機粒子(G)とバインダー樹脂(B)からなる構造体(T1)内に5〜25質量%(インク受容層(R1)中の質量割合)保持されるインク受容層(R1)を形成し、
該インク受容層(R1)上に銅又は銅合金微粒子(P)と還元性溶媒(S)を含む導電性インク(I)を塗布又はパターン化後に150℃以上の温度で加熱、焼成することを特徴とする、請求項12に記載の導電パターンの形成方法。
【請求項14】
前記還元性溶媒(S)中に分子内にヒドロキシル基を2個以上有していて常圧における沸点が100〜350℃の範囲にあるポリオール(S1)が10〜100質量%含有されていることを特徴とする、請求項12又は13に記載の導電パターンの形成方法。
【請求項15】
前記導電性インク(I)を塗布又はパターン化する際に、焼成温度より30℃以上低く、かつ還元性溶媒(S)中のポリオール(S1)の沸点より30℃以上低い温度に、基板(K)を加熱することを特徴とする、請求項14に記載の導電パターンの形成方法。

【公開番号】特開2012−182445(P2012−182445A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23645(P2012−23645)
【出願日】平成24年2月7日(2012.2.7)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】