インク吐出ヘッドの製造方法
【課題】インク吐出ヘッドのノズル孔部の硬化を防止し、ノズル孔の精度を向上させる。
【解決手段】基板201上のエネルギー発生素子202周囲位置の流路壁203の端面を覆いつつ、流路壁203により区画される空間では流路壁203の端面よりも低い領域を有する第一の犠牲層204を形成し、第一の犠牲層204の表面に紫外線を吸収可能な第二の犠牲層205を形成し、流路壁203の端面よりも低い領域がないよう、第二の犠牲層205の表面に第三の犠牲層206を形成し、少なくとも第二の犠牲層205を残存させつつ、犠牲層を流路壁203の端面が露出するまで除去し、形成されたノズル形成層207上にノズル孔110に相当するマスク部208aが形成されたフォトマスク208を形成し、紫外線209を照射しノズル形成層207を硬化させ、溶解液に浸漬させて、ノズル孔部207aおよび犠牲層を除去する。
【解決手段】基板201上のエネルギー発生素子202周囲位置の流路壁203の端面を覆いつつ、流路壁203により区画される空間では流路壁203の端面よりも低い領域を有する第一の犠牲層204を形成し、第一の犠牲層204の表面に紫外線を吸収可能な第二の犠牲層205を形成し、流路壁203の端面よりも低い領域がないよう、第二の犠牲層205の表面に第三の犠牲層206を形成し、少なくとも第二の犠牲層205を残存させつつ、犠牲層を流路壁203の端面が露出するまで除去し、形成されたノズル形成層207上にノズル孔110に相当するマスク部208aが形成されたフォトマスク208を形成し、紫外線209を照射しノズル形成層207を硬化させ、溶解液に浸漬させて、ノズル孔部207aおよび犠牲層を除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクジェットプリンターなどに用いられるインク吐出ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱源駆動方式を用いたインク吐出ヘッドは、インク室内部に設けられた熱源によってインクに気泡を発生させる。インク吐出ヘッドは、発生させた気泡の膨張力によって、ノズルからインクを用紙面に吐出する。従来のインク吐出ヘッドは、下記特許文献1に示されるようにフォトリソグラフィー法により製造される。
【0003】
図4を用いて、従来技術におけるインク吐出ヘッドの製造方法について説明する。図4は、従来技術におけるインク吐出ヘッドの製造方法の一例を模式的に示す説明図である。なお、図4に示す例では、インク吐出ヘッドにおけるインクを吐出する1つのノズルを例にして説明する。図4において、インク加熱要素形成工程400では、シリコンなどを含む基板401上に、抵抗発熱体からなるエネルギー発生素子402を形成する。流路壁形成工程410では、エネルギー発生素子402の周囲位置に流路壁403を形成する。
【0004】
犠牲層形成工程420では、後述するインク室CHの内部空間を形成するため、流路壁403により区画形成されたエネルギー発生素子402を含む空間と、流路壁403とを覆うように樹脂などからなる犠牲層404を注入する。犠牲層除去工程430では、研磨による機械加工によって、流路壁403の端面が露出するよう、同一平坦面Kまで流路壁403および犠牲層404の上部を除去する。ノズル形成層形成工程440では、流路壁403および犠牲層404の上部の平坦面K上に、溶媒に溶解させた紫外線硬化型樹脂を塗布・乾燥させて、ノズル形成層405を形成する。
【0005】
紫外線照射工程450では、ノズル形成層405上にノズル孔部405aに相当するマスク部406aが形成されたフォトマスク406を形成する。そして、フォトリソグラフィー法によって、フォトマスク406に対向する位置から紫外線407をノズル形成層405に照射して、ノズル形成層405を硬化させる。フォトマスク406によって、マスク部406aで紫外線407が遮断される位置に相当するノズル孔部405aは硬化することがない。
【0006】
ノズル孔形成工程460では、硬化したノズル形成層405は溶解せずに、硬化していないノズル孔部405aを溶解可能な溶解液に、基板401ごと浸漬させて、ノズル形成層405におけるノズル孔部405aを除去して、ノズル孔410を形成する。その後、犠牲層除去工程470では、犠牲層404を可溶とし、基板401、流路壁403およびノズル形成層405を不溶とする溶媒を用いて犠牲層404が除去される。犠牲層404が除去され、基板401、流路壁403およびノズル形成層405によって区画形成された空間は、インクが流入するインク室CHとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−104156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術におけるインク吐出ヘッドの製造方法は、図4に示した紫外線照射工程450において照射された紫外線407が、基板401で乱反射して、マスク部406a直下のノズル孔部405aに照射されてしまう。すなわち、紫外線407で硬化させるべきではないノズル孔部405aに紫外線407が照射されることによって、ノズル孔部405aが硬化されてしまい、ノズル孔形成工程460によって形成されるノズル孔410の形状に不具合が生じてしまう。特に、ノズル孔410の孔径が小さいインク吐出ヘッドを製造する場合、ノズル孔410となる位置のノズル孔部405aが硬化してしまうと、ノズル孔410が開口しないという問題が一例として挙げられる。
【0009】
この発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、紫外線照射工程において、インク吐出ヘッドのノズル孔部の硬化を防止することで、ノズル孔の精度を向上させることのできるインク吐出ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明のインク吐出ヘッドの製造方法は、基板上に配置されるエネルギー発生素子と、前記エネルギー発生素子に対応する位置に形成されるノズルと、を含み構成されるインク吐出ヘッドの製造方法において、前記基板上において前記エネルギー発生素子の周囲位置に流路壁を形成する流路壁形成工程と、前記基板上に、前記流路壁の端面を覆いつつ、前記流路壁により区画される空間では前記流路壁の端面よりも低い領域を有する第一の犠牲層を形成する第一犠牲層形成工程と、前記第一の犠牲層の表面に紫外線を吸収可能な第二の犠牲層を形成する第二犠牲層形成工程と、前記流路壁によって区画される空間において、前記流路壁の端面よりも低い領域がないよう、前記第二の犠牲層の表面に第三の犠牲層を形成する第三犠牲層形成工程と、少なくとも前記低い領域に形成された前記第二の犠牲層を残存させつつ、前記第一の犠牲層、第二の犠牲層および第三の犠牲層を含み構成される犠牲層を前記流路壁の端面が露出するまで除去し、前記犠牲層の上面を平坦にする犠牲層除去工程と、前記流路壁の端面および前記犠牲層上面に、紫外線の照射により硬化するノズル形成層を形成するノズル形成層形成工程と、前記ノズル形成層上に、前記ノズルのノズル孔に相当するマスク部が形成されたフォトマスクを形成するフォトマスク形成工程と、前記フォトマスクに対向する位置から紫外線を前記ノズル形成層に照射して、前記ノズル形成層を硬化させる紫外線照射工程と、前記基板を溶解液に浸漬させて、前記ノズル形成層の前記ノズル孔部および前記犠牲層を除去する除去工程と、を含み、前記第二の犠牲層によって、少なくとも前記紫外線照射工程において照射される前記紫外線のうち、前記基板によって反射される反射紫外線を吸収させることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、上記発明において、前記第一犠牲層形成工程は、前記流路壁によって区画形成される空間のうち、前記ノズルに対向する領域に前記低い領域を形成し、前記低い領域の面積は、前記ノズル孔の面積よりも大きく、前記第二犠牲層形成工程は、前記ノズル孔に対向する領域では、前記流路壁の端面よりも低く前記第二の犠牲層を形成することを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、上記発明において、前記第二犠牲層形成工程は、前記第一の犠牲層の上層を覆うようにスピンコートにより前記第二の犠牲層を形成することを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、上記発明において、前記第二犠牲層形成工程は、前記第一の犠牲層の上層のうち、前記低い領域のみを覆うように前記第二の犠牲層を形成することを特徴する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、流路壁の端面よりも低い領域に、紫外線を吸収可能な第二の犠牲層を形成した上で、第一、第二および第三の犠牲層が形成された流路壁によって区画される空間について、第二の犠牲層を残存させつつ犠牲層の上面を平坦にする。ノズル形成層上に形成されたフォトマスクに対向する位置から紫外線を照射しても、第二の犠牲層によって基板や流路壁などから反射される紫外線を吸収することで、ノズル孔部へ紫外線が照射されることがない。したがって、ノズル孔部は硬化されることなく除去工程によって除去できるため、ノズル孔の形状の精度を保持することができる。また、第二の犠牲層は、基板、流路壁およびノズル形成層の接続部位などの端部に接する領域を小さくしているため、紫外線を吸収可能な第二の犠牲層が除去工程によって空間内部に残存することなく、確実に犠牲層の除去をおこなうことができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、ノズル孔に対向する領域にある、ノズル孔の面積よりも大きな面積となる領域に対して第二の犠牲層を形成するため、ノズル孔へ基板や流路壁などから反射される紫外線の照射を確実に防ぐことができる。したがって、ノズル孔部は硬化されることなく除去できるため、ノズル孔の形状の精度を保持することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、スピンコート法によって第二の犠牲層を形成することができる。したがって、簡易な手法によって、ノズル孔への紫外線の照射を防ぎ、ノズル孔の形状の精度を保持することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、第二の犠牲層を低い領域のみに形成するため、第二の犠牲層の形成範囲を最小限としつつ、ノズル孔への紫外線の照射を防ぐことができる。
【0018】
以上説明したように、本発明にかかるインク吐出ヘッドの製造方法によれば、インク吐出ヘッドのノズル孔部の硬化を防止することで、ノズル孔の精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態にかかるインク吐出ヘッドの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるインク吐出ヘッドの製造方法について、図1に示したA−A断面における工程の一例を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の変形例にかかるインク吐出ヘッドの製造方法について、図1に示したA−A断面における工程の一例を模式的に示す説明図である。
【図4】従来技術におけるインク吐出ヘッドの製造方法の一例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるインク吐出ヘッドの製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
(実施形態)
(インク吐出ヘッドの構成)
図1を用いて、本発明の実施形態にかかるインク吐出ヘッドの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態にかかるインク吐出ヘッドの一例を示す斜視図である。図1において、インク吐出ヘッド100は、ノズル形成層207に整列した複数のノズル孔110を有する。ノズル孔110のそれぞれは、図2で後述する個別に設けられたインク室CHにそれぞれ連通する。
【0022】
インク室CHは、図2に詳述する基板201、流路壁203およびノズル形成層207などによって区画形成されている。インク室CH内には、インクを吐出するための熱エネルギーを発生するエネルギー発生素子202(図2参照)がそれぞれ設けられる。インク吐出ヘッド100の下面からインク室CHへとつながるインク供給口によって、インク室CHへとインクが供給される。インク室CHに供給されたインクは、エネルギー発生素子202の加熱によりその一部が気泡となる。この気泡によって押し出されたインク室CH内のインクは、ノズル孔110から吐出する。
【0023】
(インク吐出ヘッドの製造方法)
図2を用いて、本発明の実施形態にかかるインク吐出ヘッドの製造方法について説明する。図2は、本発明の実施形態にかかるインク吐出ヘッドの製造方法について、図1に示したA−A断面における工程の一例を模式的に示す説明図である。A−A断面は、図示上側鉛直方向からの断面で、複数のノズル孔110のうち、1つのノズル孔110について部分的に切断する断面の一例を示す。
【0024】
図2において、エネルギー発生素子形成工程200では、SiO2やSiNなどの酸化物絶縁膜が1000Åから10000Å程度の膜厚で形成されたシリコン製の基板201上に、エネルギー発生素子であるエネルギー発生素子202を形成する。エネルギー発生素子202は、たとえば、TaNやTaAlなどの抵抗発熱体を、200〜1000Å程度の厚みになるように、反応性スパッタリング法によってエネルギー発生素子202の形成位置に堆積することで形成される。
【0025】
流路壁形成工程210では、基板201上のエネルギー発生素子202の周囲位置に流路壁203を形成する。なお、特に図示はしないが、流路壁203は、基板201上に塗布された密着層などの上面に形成されることとしてもよい。流路壁203は、たとえば、エポキシ樹脂などを含み構成される。流路形成工程210では、基板201上に塗布されたエポキシ樹脂などに対し、フォトリソグラフィー法などによって流路を形成する。
【0026】
第一犠牲層形成工程220では、基板201上に形成された流路壁203を覆いつつ、流路壁203によって区画される空間において、流路壁203よりも低い領域を有する第一の犠牲層204を形成する。第一の犠牲層204は、たとえば、アルカリやアセトンなどを含む溶解液に可溶な樹脂として、半硬化ポリイミド(例えば東レ株式会社の商品名セミコファイン)、ポリメチルイソプロペニルケトンを含む電離放射型のポジ型レジスト(例えば株式会社東京応化工業の商品名ODUR−1010)、メタクリル酸エステルとメタクリル酸との共重合を含む電離放射分解型のポジ型レジスト(例えばPMMA系共重合体)、旭有機材工業(株)製のEP4080G、EP4050Gなどのノボラック樹脂などがある。
【0027】
第二犠牲層形成工程230では、第一の犠牲層204の表面に紫外線を吸収可能な第二の犠牲層205を形成する。第二犠牲層形成工程230では、たとえば、スピンコート法などによって第一の犠牲層204の表面に第二の犠牲層205を形成する。具体的には、たとえば第二の犠牲層205は、第一の犠牲層204上の流路壁203よりも低い領域であるに形成される。第二の犠牲層205は、低い領域のうち、ノズル形成層207に形成されるノズル孔110に対向する位置に、ノズル孔の面積より大きい面積で形成される。
【0028】
第二の犠牲層205は、たとえば、アルカリやアセトンなどを含む溶解液に可溶な樹脂である第一の犠牲層の構成にくわえ、紫外線吸収材として、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリルレート系の紫外線吸収材が含まれる。具体的には、紫外線吸収材には、2,4−ジ−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,2’−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどがある。また、フードブラックやカーボンブラックなども好適である。
【0029】
第三犠牲層形成工程240は、基板201上に流路壁203の端面よりも低い領域がないように、第一の犠牲層204、第二の犠牲層205の上面に第三の犠牲層206を形成する。第三の犠牲層206は、たとえば、第一の犠牲層204と同一の樹脂や溶解液を使用してもよいが、これに限ることはない。
【0030】
犠牲層除去工程250では、研磨や切削による機械加工などによって、少なくとも流路壁203よりも低い領域に形成された第二の犠牲層205を残存させつつ、第一の犠牲層204、第二の犠牲層205および第三の犠牲層206を、流路壁203の端面が露出するように同一平坦面Kまで除去する。なお、犠牲層除去工程250では、機械加工によって平坦面Kを形成する構成として説明したが、これに限ることはない。具体的には、たとえば、犠牲層溶解溶液に浸漬させることで流路壁203の端面が露出するように平坦面Kを形成してもよい。
【0031】
ノズル形成工程260では、流路壁203、第一の犠牲層204、第二の犠牲層205および第三の犠牲層206の上部の平坦面K上に塗布・乾燥させてノズル形成層207を形成させる。ノズル形成層207は、たとえば、紫外線硬化性イミド、紫外線硬化性シリコン樹脂、紫外線硬化性エポキシ等の紫外線硬化性樹脂などで、第一の犠牲層204、第二の犠牲層205および第三の犠牲層206上にスピンコート法などによって塗布される。
【0032】
紫外線照射工程270では、まず、ノズル形成層207上に、ノズル孔部207aに相当するマスク部208aが形成されたフォトマスク208を形成する。そして、フォトリソグラフィー法によって、フォトマスク208に対向する位置から紫外線209をノズル形成層207に照射して、ノズル形成層207を硬化させる。
【0033】
具体的には、紫外線照射工程270によって照射される紫外線209は、マスク部208a以外のフォトマスク208を透過し、ノズル形成層207を硬化させる。照射される紫外線209のうち、第一の犠牲層204を経由して、基板201や流路壁203などによる乱反射のうちノズル孔部207aへ向かう紫外線209は、第二の犠牲層205によって吸収され、ノズル孔部207aに照射されることはない。また、照射される紫外線209のうち、第三の犠牲層206を経由する紫外線は、第二の犠牲層205によって吸収され、基板201や流路壁203などによって乱反射されることはない。
【0034】
ノズル孔形成工程280では、ノズル孔部207aを除去して、ノズル形成層207にノズル孔110を形成する。具体的には、たとえば、ノズル孔形成工程280は、ノズル孔部207a以外の位置が硬化したノズル形成層207をキシレンなどの現像液に浸してノズル孔部207aを除去する。換言すれば、ノズル孔形成工程280は、現像液に対して不溶である紫外線熱硬化性樹脂であるノズル形成層207のうち硬化した部位と、第一の犠牲層204、第二の犠牲層205および第三の犠牲層206とを残して、現像液に可溶であり硬化していない部位であるノズル孔部207aのみを除去する工程である。
【0035】
除去工程290では、第一の犠牲層204、第二の犠牲層205および第三の犠牲層206からなる犠牲層を可溶とし、基板201、流路壁203およびノズル形成層207を不溶とする溶媒を用いて第一の犠牲層204、第二の犠牲層205および第三の犠牲層206が除去される。具体的には、たとえば、犠牲層の除去は、基板201、流路壁203およびノズル形成層207を不溶とする犠牲層溶解溶液(PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)に浸すことで行われる。なお、図2の例では、ノズル孔部207aと、犠牲層とを別々の工程で除去することとして説明したが、これに限ることはない。具体的には、ノズル孔部207aと、犠牲層とを可溶な溶剤に基板201ごと浸して除去することとしてもよい。また、犠牲層の除去は、たとえば、図示しないインク供給口や別途設けられる犠牲層除去口などを介しておこなわれる。
【0036】
なお、本発明における各工程と、本発明の実施形態の各工程とを関連付けて説明すると、図2に示した流路壁形成工程210によって、本発明の流路壁形成工程の処理が実行される。また、第一犠牲層形成工程220によって、本発明の第一犠牲層形成工程の処理が実行される。また、第二犠牲層形成工程230によって、本発明の第二犠牲層形成工程の処理が実行される。また、第三犠牲層形成工程240によって、本発明の第三犠牲層形成工程の処理が実行される。また、犠牲層除去工程250によって、本発明の犠牲層除去工程の処理が実行される。また、ノズル形成工程260によって、本発明のノズル形成層形成工程の処理が実行される。紫外線照射工程270によって、本発明のフォトマスク形成工程および紫外線照射工程の処理が実行される。また、ノズル孔形成工程280および除去工程290によって、本発明の除去工程の処理が実行される。
【0037】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、犠牲層の一部に紫外線を吸収する第二の犠牲層205を形成して、紫外線照射工程270における紫外線209によりノズル形成層207におけるノズル孔部207aに紫外線209が照射されることを防ぐことができる。したがって、ノズル孔部207aは硬化されることなく除去できるため、ノズル孔110の形状の精度を保持することができる。
【0038】
また、第一の犠牲層204において、ノズル孔110(ノズル孔部207a)と対向する領域に流路壁203よりも低い領域を設けて第二の犠牲層205を形成する構成であるため、確実にノズル孔部207aに紫外線209が照射されるのを防ぐことができる。
【0039】
また、第一の犠牲層204および第三の犠牲層206とは異なり、紫外線吸収材を含んだ第二の犠牲層205を、基板201、流路壁203およびノズル形成層207の接続部位などの端部に接する領域を小さくしているため、除去工程290によって第二の犠牲層205をインク室CHに残存させることなく犠牲層の除去をおこなうことができる。
【0040】
また、第二の犠牲層205の上部に第三の犠牲層206を形成することで、ノズル孔部207aと接する犠牲層は第三の犠牲層206となるため、ノズル孔部207aに第二の犠牲層205が接することなく、ノズル孔部207aへ紫外線209が照射されるのを防ぐことができる。したがって、ノズル孔110の形状の精度を保持することができる。換言すれば、犠牲層を除去する際、第二の犠牲層205がノズル孔部207aやノズル形成層207や流路壁203などの端面に残存することを防ぐことができる。
【0041】
(その他一部の変形例)
本発明の実施形態では特に、第二の犠牲層205について、第一の犠牲層204の表面に形成することとして説明したが、これに限ることはない。具体的には、第一の犠牲層204のうち流路壁203よりも低く、ノズル孔部207aに対向する領域に選択的に形成する構成としてもよい。
【0042】
図3を用いて、本発明の変形例にかかるインク吐出ヘッドの製造方法について説明する。図3は、本発明の変形例にかかるインク吐出ヘッドの製造方法について、図1に示したA−A断面における工程の一例を模式的に示す説明図である。
【0043】
図3において、エネルギー発生素子形成工程300では、基板301上に、エネルギー発生素子であるエネルギー発生素子302を形成する。流路壁形成工程310では、基板301上のエネルギー発生素子302の周囲位置に流路壁303を形成する。
【0044】
第一犠牲層形成工程320では、基板301上に形成された流路壁303を覆いつつ、流路壁303によって区画される空間において、流路壁303よりも低い領域を有する第一の犠牲層304を形成する。
【0045】
第二犠牲層形成工程330では、第一の犠牲層304の表面に紫外線を吸収可能な第二の犠牲層305を形成する。第二犠牲層形成工程330では、たとえば、第一の犠牲層304の表面のうち、流路壁303よりも低い領域のみを限定して覆うように第二の犠牲層305をインクジェットやディスペンサーなどを用いて形成する。
【0046】
第三犠牲層形成工程340は、基板301上に流路壁303の端面よりも低い領域がないように、第一の犠牲層304、第二の犠牲層305の上面に第三の犠牲層306を形成する。換言すれば、第三犠牲層形成工程340では、第二の犠牲層305を厚く形成せずに、第三犠牲層306によって流路壁303の端面よりも高く犠牲層が形成される。
【0047】
犠牲層除去工程350では、研磨や切削による機械加工などによって、第一の犠牲層304、第二の犠牲層305および第三の犠牲層306を、流路壁303の端面が露出するように同一平坦面Kまで除去する。ノズル形成工程360では、流路壁303、第一の犠牲層304、第二の犠牲層305および第三の犠牲層306の上部の平坦面K上に塗布・乾燥させてノズル形成層307を形成させる。
【0048】
紫外線照射工程370では、まず、ノズル形成層307上に、ノズル孔部307aに相当するマスク部308aが形成されたフォトマスク308を形成する。そして、フォトリソグラフィー法によって、フォトマスク308に対向する位置から紫外線309をノズル形成層307に照射して、ノズル形成層307を硬化させる。
【0049】
具体的には、紫外線照射工程370によって照射される紫外線309は、マスク部308a以外のフォトマスク308を透過し、ノズル形成層307を硬化させる。照射される紫外線309のうち、第一の犠牲層304を経由して、基板301や流路壁303などによる乱反射のうちノズル孔部307aへ向かう紫外線309は、第二の犠牲層305によって吸収され、ノズル孔部307aに照射されることはない。また、照射される紫外線309のうち、第三の犠牲層306を経由する紫外線は、第二の犠牲層305によって吸収され、基板301や流路壁303などによって乱反射されることはない。
【0050】
ノズル孔形成工程380では、ノズル孔部307aを除去して、ノズル形成層307にノズル孔110を形成する。具体的には、ノズル孔形成工程380は、現像液に対して不溶である紫外線熱硬化性樹脂であるノズル形成層307のうち硬化した部位と、第一の犠牲層304、第二の犠牲層305および第三の犠牲層306とを残して、ノズル孔部307aのみを除去する工程である。
【0051】
除去工程390では、第一の犠牲層304、第二の犠牲層305および第三の犠牲層306からなる犠牲層を可溶とし、基板301、流路壁303およびノズル形成層307を不溶とする溶媒を用いて第一の犠牲層304、第二の犠牲層305および第三の犠牲層306が除去される。
【0052】
以上説明したように、本発明の変形例によれば、第二の犠牲層305を第一の犠牲層304のうち低い領域のみ形成するため、第二の犠牲層305の形成範囲を最小限としつつ、ノズル孔部307aへの紫外線309の照射を防ぐことができる。したがって、ノズル孔部307aは硬化されることなく除去できるため、ノズル孔110の形状の精度を保持することができる。また、第二の犠牲層305は、基板301、流路壁303およびノズル形成層307の接続部位などの端部に接する領域がないため、紫外線309を吸収可能な第二の犠牲層305が除去工程390によって空間内部に残存することなく、確実に犠牲層の除去をおこなうことができる。
【0053】
また、上述した説明では、実施形態および一部の変形例について別々の例として説明したが、これに限ることはない。すなわち、それぞれを組み合わせた構成として、実施形態および一部の変形例を適宜組み合わせて利用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
100 インク吐出ヘッド
110 ノズル孔
CH インク室
201,301 基板
202,302 エネルギー発生素子
203,303 流路壁
204,304 第一の犠牲層
205,305 第二の犠牲層
206,306 第三の犠牲層
207,307 ノズル形成層
207a,307a ノズル孔部
208,308 フォトマスク
208a,308a マスク部
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクジェットプリンターなどに用いられるインク吐出ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱源駆動方式を用いたインク吐出ヘッドは、インク室内部に設けられた熱源によってインクに気泡を発生させる。インク吐出ヘッドは、発生させた気泡の膨張力によって、ノズルからインクを用紙面に吐出する。従来のインク吐出ヘッドは、下記特許文献1に示されるようにフォトリソグラフィー法により製造される。
【0003】
図4を用いて、従来技術におけるインク吐出ヘッドの製造方法について説明する。図4は、従来技術におけるインク吐出ヘッドの製造方法の一例を模式的に示す説明図である。なお、図4に示す例では、インク吐出ヘッドにおけるインクを吐出する1つのノズルを例にして説明する。図4において、インク加熱要素形成工程400では、シリコンなどを含む基板401上に、抵抗発熱体からなるエネルギー発生素子402を形成する。流路壁形成工程410では、エネルギー発生素子402の周囲位置に流路壁403を形成する。
【0004】
犠牲層形成工程420では、後述するインク室CHの内部空間を形成するため、流路壁403により区画形成されたエネルギー発生素子402を含む空間と、流路壁403とを覆うように樹脂などからなる犠牲層404を注入する。犠牲層除去工程430では、研磨による機械加工によって、流路壁403の端面が露出するよう、同一平坦面Kまで流路壁403および犠牲層404の上部を除去する。ノズル形成層形成工程440では、流路壁403および犠牲層404の上部の平坦面K上に、溶媒に溶解させた紫外線硬化型樹脂を塗布・乾燥させて、ノズル形成層405を形成する。
【0005】
紫外線照射工程450では、ノズル形成層405上にノズル孔部405aに相当するマスク部406aが形成されたフォトマスク406を形成する。そして、フォトリソグラフィー法によって、フォトマスク406に対向する位置から紫外線407をノズル形成層405に照射して、ノズル形成層405を硬化させる。フォトマスク406によって、マスク部406aで紫外線407が遮断される位置に相当するノズル孔部405aは硬化することがない。
【0006】
ノズル孔形成工程460では、硬化したノズル形成層405は溶解せずに、硬化していないノズル孔部405aを溶解可能な溶解液に、基板401ごと浸漬させて、ノズル形成層405におけるノズル孔部405aを除去して、ノズル孔410を形成する。その後、犠牲層除去工程470では、犠牲層404を可溶とし、基板401、流路壁403およびノズル形成層405を不溶とする溶媒を用いて犠牲層404が除去される。犠牲層404が除去され、基板401、流路壁403およびノズル形成層405によって区画形成された空間は、インクが流入するインク室CHとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−104156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術におけるインク吐出ヘッドの製造方法は、図4に示した紫外線照射工程450において照射された紫外線407が、基板401で乱反射して、マスク部406a直下のノズル孔部405aに照射されてしまう。すなわち、紫外線407で硬化させるべきではないノズル孔部405aに紫外線407が照射されることによって、ノズル孔部405aが硬化されてしまい、ノズル孔形成工程460によって形成されるノズル孔410の形状に不具合が生じてしまう。特に、ノズル孔410の孔径が小さいインク吐出ヘッドを製造する場合、ノズル孔410となる位置のノズル孔部405aが硬化してしまうと、ノズル孔410が開口しないという問題が一例として挙げられる。
【0009】
この発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、紫外線照射工程において、インク吐出ヘッドのノズル孔部の硬化を防止することで、ノズル孔の精度を向上させることのできるインク吐出ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明のインク吐出ヘッドの製造方法は、基板上に配置されるエネルギー発生素子と、前記エネルギー発生素子に対応する位置に形成されるノズルと、を含み構成されるインク吐出ヘッドの製造方法において、前記基板上において前記エネルギー発生素子の周囲位置に流路壁を形成する流路壁形成工程と、前記基板上に、前記流路壁の端面を覆いつつ、前記流路壁により区画される空間では前記流路壁の端面よりも低い領域を有する第一の犠牲層を形成する第一犠牲層形成工程と、前記第一の犠牲層の表面に紫外線を吸収可能な第二の犠牲層を形成する第二犠牲層形成工程と、前記流路壁によって区画される空間において、前記流路壁の端面よりも低い領域がないよう、前記第二の犠牲層の表面に第三の犠牲層を形成する第三犠牲層形成工程と、少なくとも前記低い領域に形成された前記第二の犠牲層を残存させつつ、前記第一の犠牲層、第二の犠牲層および第三の犠牲層を含み構成される犠牲層を前記流路壁の端面が露出するまで除去し、前記犠牲層の上面を平坦にする犠牲層除去工程と、前記流路壁の端面および前記犠牲層上面に、紫外線の照射により硬化するノズル形成層を形成するノズル形成層形成工程と、前記ノズル形成層上に、前記ノズルのノズル孔に相当するマスク部が形成されたフォトマスクを形成するフォトマスク形成工程と、前記フォトマスクに対向する位置から紫外線を前記ノズル形成層に照射して、前記ノズル形成層を硬化させる紫外線照射工程と、前記基板を溶解液に浸漬させて、前記ノズル形成層の前記ノズル孔部および前記犠牲層を除去する除去工程と、を含み、前記第二の犠牲層によって、少なくとも前記紫外線照射工程において照射される前記紫外線のうち、前記基板によって反射される反射紫外線を吸収させることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、上記発明において、前記第一犠牲層形成工程は、前記流路壁によって区画形成される空間のうち、前記ノズルに対向する領域に前記低い領域を形成し、前記低い領域の面積は、前記ノズル孔の面積よりも大きく、前記第二犠牲層形成工程は、前記ノズル孔に対向する領域では、前記流路壁の端面よりも低く前記第二の犠牲層を形成することを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、上記発明において、前記第二犠牲層形成工程は、前記第一の犠牲層の上層を覆うようにスピンコートにより前記第二の犠牲層を形成することを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、上記発明において、前記第二犠牲層形成工程は、前記第一の犠牲層の上層のうち、前記低い領域のみを覆うように前記第二の犠牲層を形成することを特徴する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、流路壁の端面よりも低い領域に、紫外線を吸収可能な第二の犠牲層を形成した上で、第一、第二および第三の犠牲層が形成された流路壁によって区画される空間について、第二の犠牲層を残存させつつ犠牲層の上面を平坦にする。ノズル形成層上に形成されたフォトマスクに対向する位置から紫外線を照射しても、第二の犠牲層によって基板や流路壁などから反射される紫外線を吸収することで、ノズル孔部へ紫外線が照射されることがない。したがって、ノズル孔部は硬化されることなく除去工程によって除去できるため、ノズル孔の形状の精度を保持することができる。また、第二の犠牲層は、基板、流路壁およびノズル形成層の接続部位などの端部に接する領域を小さくしているため、紫外線を吸収可能な第二の犠牲層が除去工程によって空間内部に残存することなく、確実に犠牲層の除去をおこなうことができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、ノズル孔に対向する領域にある、ノズル孔の面積よりも大きな面積となる領域に対して第二の犠牲層を形成するため、ノズル孔へ基板や流路壁などから反射される紫外線の照射を確実に防ぐことができる。したがって、ノズル孔部は硬化されることなく除去できるため、ノズル孔の形状の精度を保持することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、スピンコート法によって第二の犠牲層を形成することができる。したがって、簡易な手法によって、ノズル孔への紫外線の照射を防ぎ、ノズル孔の形状の精度を保持することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、第二の犠牲層を低い領域のみに形成するため、第二の犠牲層の形成範囲を最小限としつつ、ノズル孔への紫外線の照射を防ぐことができる。
【0018】
以上説明したように、本発明にかかるインク吐出ヘッドの製造方法によれば、インク吐出ヘッドのノズル孔部の硬化を防止することで、ノズル孔の精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態にかかるインク吐出ヘッドの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるインク吐出ヘッドの製造方法について、図1に示したA−A断面における工程の一例を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の変形例にかかるインク吐出ヘッドの製造方法について、図1に示したA−A断面における工程の一例を模式的に示す説明図である。
【図4】従来技術におけるインク吐出ヘッドの製造方法の一例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるインク吐出ヘッドの製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
(実施形態)
(インク吐出ヘッドの構成)
図1を用いて、本発明の実施形態にかかるインク吐出ヘッドの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態にかかるインク吐出ヘッドの一例を示す斜視図である。図1において、インク吐出ヘッド100は、ノズル形成層207に整列した複数のノズル孔110を有する。ノズル孔110のそれぞれは、図2で後述する個別に設けられたインク室CHにそれぞれ連通する。
【0022】
インク室CHは、図2に詳述する基板201、流路壁203およびノズル形成層207などによって区画形成されている。インク室CH内には、インクを吐出するための熱エネルギーを発生するエネルギー発生素子202(図2参照)がそれぞれ設けられる。インク吐出ヘッド100の下面からインク室CHへとつながるインク供給口によって、インク室CHへとインクが供給される。インク室CHに供給されたインクは、エネルギー発生素子202の加熱によりその一部が気泡となる。この気泡によって押し出されたインク室CH内のインクは、ノズル孔110から吐出する。
【0023】
(インク吐出ヘッドの製造方法)
図2を用いて、本発明の実施形態にかかるインク吐出ヘッドの製造方法について説明する。図2は、本発明の実施形態にかかるインク吐出ヘッドの製造方法について、図1に示したA−A断面における工程の一例を模式的に示す説明図である。A−A断面は、図示上側鉛直方向からの断面で、複数のノズル孔110のうち、1つのノズル孔110について部分的に切断する断面の一例を示す。
【0024】
図2において、エネルギー発生素子形成工程200では、SiO2やSiNなどの酸化物絶縁膜が1000Åから10000Å程度の膜厚で形成されたシリコン製の基板201上に、エネルギー発生素子であるエネルギー発生素子202を形成する。エネルギー発生素子202は、たとえば、TaNやTaAlなどの抵抗発熱体を、200〜1000Å程度の厚みになるように、反応性スパッタリング法によってエネルギー発生素子202の形成位置に堆積することで形成される。
【0025】
流路壁形成工程210では、基板201上のエネルギー発生素子202の周囲位置に流路壁203を形成する。なお、特に図示はしないが、流路壁203は、基板201上に塗布された密着層などの上面に形成されることとしてもよい。流路壁203は、たとえば、エポキシ樹脂などを含み構成される。流路形成工程210では、基板201上に塗布されたエポキシ樹脂などに対し、フォトリソグラフィー法などによって流路を形成する。
【0026】
第一犠牲層形成工程220では、基板201上に形成された流路壁203を覆いつつ、流路壁203によって区画される空間において、流路壁203よりも低い領域を有する第一の犠牲層204を形成する。第一の犠牲層204は、たとえば、アルカリやアセトンなどを含む溶解液に可溶な樹脂として、半硬化ポリイミド(例えば東レ株式会社の商品名セミコファイン)、ポリメチルイソプロペニルケトンを含む電離放射型のポジ型レジスト(例えば株式会社東京応化工業の商品名ODUR−1010)、メタクリル酸エステルとメタクリル酸との共重合を含む電離放射分解型のポジ型レジスト(例えばPMMA系共重合体)、旭有機材工業(株)製のEP4080G、EP4050Gなどのノボラック樹脂などがある。
【0027】
第二犠牲層形成工程230では、第一の犠牲層204の表面に紫外線を吸収可能な第二の犠牲層205を形成する。第二犠牲層形成工程230では、たとえば、スピンコート法などによって第一の犠牲層204の表面に第二の犠牲層205を形成する。具体的には、たとえば第二の犠牲層205は、第一の犠牲層204上の流路壁203よりも低い領域であるに形成される。第二の犠牲層205は、低い領域のうち、ノズル形成層207に形成されるノズル孔110に対向する位置に、ノズル孔の面積より大きい面積で形成される。
【0028】
第二の犠牲層205は、たとえば、アルカリやアセトンなどを含む溶解液に可溶な樹脂である第一の犠牲層の構成にくわえ、紫外線吸収材として、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリルレート系の紫外線吸収材が含まれる。具体的には、紫外線吸収材には、2,4−ジ−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,2’−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどがある。また、フードブラックやカーボンブラックなども好適である。
【0029】
第三犠牲層形成工程240は、基板201上に流路壁203の端面よりも低い領域がないように、第一の犠牲層204、第二の犠牲層205の上面に第三の犠牲層206を形成する。第三の犠牲層206は、たとえば、第一の犠牲層204と同一の樹脂や溶解液を使用してもよいが、これに限ることはない。
【0030】
犠牲層除去工程250では、研磨や切削による機械加工などによって、少なくとも流路壁203よりも低い領域に形成された第二の犠牲層205を残存させつつ、第一の犠牲層204、第二の犠牲層205および第三の犠牲層206を、流路壁203の端面が露出するように同一平坦面Kまで除去する。なお、犠牲層除去工程250では、機械加工によって平坦面Kを形成する構成として説明したが、これに限ることはない。具体的には、たとえば、犠牲層溶解溶液に浸漬させることで流路壁203の端面が露出するように平坦面Kを形成してもよい。
【0031】
ノズル形成工程260では、流路壁203、第一の犠牲層204、第二の犠牲層205および第三の犠牲層206の上部の平坦面K上に塗布・乾燥させてノズル形成層207を形成させる。ノズル形成層207は、たとえば、紫外線硬化性イミド、紫外線硬化性シリコン樹脂、紫外線硬化性エポキシ等の紫外線硬化性樹脂などで、第一の犠牲層204、第二の犠牲層205および第三の犠牲層206上にスピンコート法などによって塗布される。
【0032】
紫外線照射工程270では、まず、ノズル形成層207上に、ノズル孔部207aに相当するマスク部208aが形成されたフォトマスク208を形成する。そして、フォトリソグラフィー法によって、フォトマスク208に対向する位置から紫外線209をノズル形成層207に照射して、ノズル形成層207を硬化させる。
【0033】
具体的には、紫外線照射工程270によって照射される紫外線209は、マスク部208a以外のフォトマスク208を透過し、ノズル形成層207を硬化させる。照射される紫外線209のうち、第一の犠牲層204を経由して、基板201や流路壁203などによる乱反射のうちノズル孔部207aへ向かう紫外線209は、第二の犠牲層205によって吸収され、ノズル孔部207aに照射されることはない。また、照射される紫外線209のうち、第三の犠牲層206を経由する紫外線は、第二の犠牲層205によって吸収され、基板201や流路壁203などによって乱反射されることはない。
【0034】
ノズル孔形成工程280では、ノズル孔部207aを除去して、ノズル形成層207にノズル孔110を形成する。具体的には、たとえば、ノズル孔形成工程280は、ノズル孔部207a以外の位置が硬化したノズル形成層207をキシレンなどの現像液に浸してノズル孔部207aを除去する。換言すれば、ノズル孔形成工程280は、現像液に対して不溶である紫外線熱硬化性樹脂であるノズル形成層207のうち硬化した部位と、第一の犠牲層204、第二の犠牲層205および第三の犠牲層206とを残して、現像液に可溶であり硬化していない部位であるノズル孔部207aのみを除去する工程である。
【0035】
除去工程290では、第一の犠牲層204、第二の犠牲層205および第三の犠牲層206からなる犠牲層を可溶とし、基板201、流路壁203およびノズル形成層207を不溶とする溶媒を用いて第一の犠牲層204、第二の犠牲層205および第三の犠牲層206が除去される。具体的には、たとえば、犠牲層の除去は、基板201、流路壁203およびノズル形成層207を不溶とする犠牲層溶解溶液(PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)に浸すことで行われる。なお、図2の例では、ノズル孔部207aと、犠牲層とを別々の工程で除去することとして説明したが、これに限ることはない。具体的には、ノズル孔部207aと、犠牲層とを可溶な溶剤に基板201ごと浸して除去することとしてもよい。また、犠牲層の除去は、たとえば、図示しないインク供給口や別途設けられる犠牲層除去口などを介しておこなわれる。
【0036】
なお、本発明における各工程と、本発明の実施形態の各工程とを関連付けて説明すると、図2に示した流路壁形成工程210によって、本発明の流路壁形成工程の処理が実行される。また、第一犠牲層形成工程220によって、本発明の第一犠牲層形成工程の処理が実行される。また、第二犠牲層形成工程230によって、本発明の第二犠牲層形成工程の処理が実行される。また、第三犠牲層形成工程240によって、本発明の第三犠牲層形成工程の処理が実行される。また、犠牲層除去工程250によって、本発明の犠牲層除去工程の処理が実行される。また、ノズル形成工程260によって、本発明のノズル形成層形成工程の処理が実行される。紫外線照射工程270によって、本発明のフォトマスク形成工程および紫外線照射工程の処理が実行される。また、ノズル孔形成工程280および除去工程290によって、本発明の除去工程の処理が実行される。
【0037】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、犠牲層の一部に紫外線を吸収する第二の犠牲層205を形成して、紫外線照射工程270における紫外線209によりノズル形成層207におけるノズル孔部207aに紫外線209が照射されることを防ぐことができる。したがって、ノズル孔部207aは硬化されることなく除去できるため、ノズル孔110の形状の精度を保持することができる。
【0038】
また、第一の犠牲層204において、ノズル孔110(ノズル孔部207a)と対向する領域に流路壁203よりも低い領域を設けて第二の犠牲層205を形成する構成であるため、確実にノズル孔部207aに紫外線209が照射されるのを防ぐことができる。
【0039】
また、第一の犠牲層204および第三の犠牲層206とは異なり、紫外線吸収材を含んだ第二の犠牲層205を、基板201、流路壁203およびノズル形成層207の接続部位などの端部に接する領域を小さくしているため、除去工程290によって第二の犠牲層205をインク室CHに残存させることなく犠牲層の除去をおこなうことができる。
【0040】
また、第二の犠牲層205の上部に第三の犠牲層206を形成することで、ノズル孔部207aと接する犠牲層は第三の犠牲層206となるため、ノズル孔部207aに第二の犠牲層205が接することなく、ノズル孔部207aへ紫外線209が照射されるのを防ぐことができる。したがって、ノズル孔110の形状の精度を保持することができる。換言すれば、犠牲層を除去する際、第二の犠牲層205がノズル孔部207aやノズル形成層207や流路壁203などの端面に残存することを防ぐことができる。
【0041】
(その他一部の変形例)
本発明の実施形態では特に、第二の犠牲層205について、第一の犠牲層204の表面に形成することとして説明したが、これに限ることはない。具体的には、第一の犠牲層204のうち流路壁203よりも低く、ノズル孔部207aに対向する領域に選択的に形成する構成としてもよい。
【0042】
図3を用いて、本発明の変形例にかかるインク吐出ヘッドの製造方法について説明する。図3は、本発明の変形例にかかるインク吐出ヘッドの製造方法について、図1に示したA−A断面における工程の一例を模式的に示す説明図である。
【0043】
図3において、エネルギー発生素子形成工程300では、基板301上に、エネルギー発生素子であるエネルギー発生素子302を形成する。流路壁形成工程310では、基板301上のエネルギー発生素子302の周囲位置に流路壁303を形成する。
【0044】
第一犠牲層形成工程320では、基板301上に形成された流路壁303を覆いつつ、流路壁303によって区画される空間において、流路壁303よりも低い領域を有する第一の犠牲層304を形成する。
【0045】
第二犠牲層形成工程330では、第一の犠牲層304の表面に紫外線を吸収可能な第二の犠牲層305を形成する。第二犠牲層形成工程330では、たとえば、第一の犠牲層304の表面のうち、流路壁303よりも低い領域のみを限定して覆うように第二の犠牲層305をインクジェットやディスペンサーなどを用いて形成する。
【0046】
第三犠牲層形成工程340は、基板301上に流路壁303の端面よりも低い領域がないように、第一の犠牲層304、第二の犠牲層305の上面に第三の犠牲層306を形成する。換言すれば、第三犠牲層形成工程340では、第二の犠牲層305を厚く形成せずに、第三犠牲層306によって流路壁303の端面よりも高く犠牲層が形成される。
【0047】
犠牲層除去工程350では、研磨や切削による機械加工などによって、第一の犠牲層304、第二の犠牲層305および第三の犠牲層306を、流路壁303の端面が露出するように同一平坦面Kまで除去する。ノズル形成工程360では、流路壁303、第一の犠牲層304、第二の犠牲層305および第三の犠牲層306の上部の平坦面K上に塗布・乾燥させてノズル形成層307を形成させる。
【0048】
紫外線照射工程370では、まず、ノズル形成層307上に、ノズル孔部307aに相当するマスク部308aが形成されたフォトマスク308を形成する。そして、フォトリソグラフィー法によって、フォトマスク308に対向する位置から紫外線309をノズル形成層307に照射して、ノズル形成層307を硬化させる。
【0049】
具体的には、紫外線照射工程370によって照射される紫外線309は、マスク部308a以外のフォトマスク308を透過し、ノズル形成層307を硬化させる。照射される紫外線309のうち、第一の犠牲層304を経由して、基板301や流路壁303などによる乱反射のうちノズル孔部307aへ向かう紫外線309は、第二の犠牲層305によって吸収され、ノズル孔部307aに照射されることはない。また、照射される紫外線309のうち、第三の犠牲層306を経由する紫外線は、第二の犠牲層305によって吸収され、基板301や流路壁303などによって乱反射されることはない。
【0050】
ノズル孔形成工程380では、ノズル孔部307aを除去して、ノズル形成層307にノズル孔110を形成する。具体的には、ノズル孔形成工程380は、現像液に対して不溶である紫外線熱硬化性樹脂であるノズル形成層307のうち硬化した部位と、第一の犠牲層304、第二の犠牲層305および第三の犠牲層306とを残して、ノズル孔部307aのみを除去する工程である。
【0051】
除去工程390では、第一の犠牲層304、第二の犠牲層305および第三の犠牲層306からなる犠牲層を可溶とし、基板301、流路壁303およびノズル形成層307を不溶とする溶媒を用いて第一の犠牲層304、第二の犠牲層305および第三の犠牲層306が除去される。
【0052】
以上説明したように、本発明の変形例によれば、第二の犠牲層305を第一の犠牲層304のうち低い領域のみ形成するため、第二の犠牲層305の形成範囲を最小限としつつ、ノズル孔部307aへの紫外線309の照射を防ぐことができる。したがって、ノズル孔部307aは硬化されることなく除去できるため、ノズル孔110の形状の精度を保持することができる。また、第二の犠牲層305は、基板301、流路壁303およびノズル形成層307の接続部位などの端部に接する領域がないため、紫外線309を吸収可能な第二の犠牲層305が除去工程390によって空間内部に残存することなく、確実に犠牲層の除去をおこなうことができる。
【0053】
また、上述した説明では、実施形態および一部の変形例について別々の例として説明したが、これに限ることはない。すなわち、それぞれを組み合わせた構成として、実施形態および一部の変形例を適宜組み合わせて利用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
100 インク吐出ヘッド
110 ノズル孔
CH インク室
201,301 基板
202,302 エネルギー発生素子
203,303 流路壁
204,304 第一の犠牲層
205,305 第二の犠牲層
206,306 第三の犠牲層
207,307 ノズル形成層
207a,307a ノズル孔部
208,308 フォトマスク
208a,308a マスク部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置されるエネルギー発生素子と、前記エネルギー発生素子に対応する位置に形成されるノズルと、を含み構成されるインク吐出ヘッドの製造方法において、
前記基板上において前記エネルギー発生素子の周囲位置に流路壁を形成する流路壁形成工程と、
前記基板上に、前記流路壁の端面を覆いつつ、前記流路壁により区画される空間では前記流路壁の端面よりも低い領域を有する第一の犠牲層を形成する第一犠牲層形成工程と、
前記第一の犠牲層の表面に紫外線を吸収可能な第二の犠牲層を形成する第二犠牲層形成工程と、
前記流路壁によって区画される空間において、前記流路壁の端面よりも低い領域がないよう、前記第二の犠牲層の表面に第三の犠牲層を形成する第三犠牲層形成工程と、
少なくとも前記低い領域に形成された前記第二の犠牲層を残存させつつ、前記第一の犠牲層、第二の犠牲層および第三の犠牲層を含み構成される犠牲層を前記流路壁の端面が露出するまで除去し、前記犠牲層の上面を平坦にする犠牲層除去工程と、
前記流路壁の端面および前記犠牲層上面に、紫外線の照射により硬化するノズル形成層を形成するノズル形成層形成工程と、
前記ノズル形成層上に、前記ノズルのノズル孔に相当するマスク部が形成されたフォトマスクを形成するフォトマスク形成工程と、
前記フォトマスクに対向する位置から紫外線を前記ノズル形成層に照射して、前記ノズル形成層を硬化させる紫外線照射工程と、
前記基板を溶解液に浸漬させて、前記ノズル形成層の前記ノズル孔部および前記犠牲層を除去する除去工程と、を含み、
前記第二の犠牲層によって、少なくとも前記紫外線照射工程において照射される前記紫外線のうち、前記基板によって反射される反射紫外線を吸収させることを特徴とするインク吐出ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記第一犠牲層形成工程は、前記流路壁によって区画形成される空間のうち、前記ノズルに対向する領域に前記低い領域を形成し、前記低い領域の面積は、前記ノズル孔の面積よりも大きく、
前記第二犠牲層形成工程は、前記ノズル孔に対向する領域では、前記流路壁の端面よりも低く前記第二の犠牲層を形成することを特徴とする請求項1に記載のインク吐出ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記第二犠牲層形成工程は、前記第一の犠牲層の上層を覆うようにスピンコートにより前記第二の犠牲層を形成することを特徴とする請求項1または2に記載のインク吐出ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記第二犠牲層形成工程は、前記第一の犠牲層の上層のうち、前記低い領域のみを覆うように前記第二の犠牲層を形成することを特徴する請求項1または2に記載のインク吐出ヘッドの製造方法。
【請求項1】
基板上に配置されるエネルギー発生素子と、前記エネルギー発生素子に対応する位置に形成されるノズルと、を含み構成されるインク吐出ヘッドの製造方法において、
前記基板上において前記エネルギー発生素子の周囲位置に流路壁を形成する流路壁形成工程と、
前記基板上に、前記流路壁の端面を覆いつつ、前記流路壁により区画される空間では前記流路壁の端面よりも低い領域を有する第一の犠牲層を形成する第一犠牲層形成工程と、
前記第一の犠牲層の表面に紫外線を吸収可能な第二の犠牲層を形成する第二犠牲層形成工程と、
前記流路壁によって区画される空間において、前記流路壁の端面よりも低い領域がないよう、前記第二の犠牲層の表面に第三の犠牲層を形成する第三犠牲層形成工程と、
少なくとも前記低い領域に形成された前記第二の犠牲層を残存させつつ、前記第一の犠牲層、第二の犠牲層および第三の犠牲層を含み構成される犠牲層を前記流路壁の端面が露出するまで除去し、前記犠牲層の上面を平坦にする犠牲層除去工程と、
前記流路壁の端面および前記犠牲層上面に、紫外線の照射により硬化するノズル形成層を形成するノズル形成層形成工程と、
前記ノズル形成層上に、前記ノズルのノズル孔に相当するマスク部が形成されたフォトマスクを形成するフォトマスク形成工程と、
前記フォトマスクに対向する位置から紫外線を前記ノズル形成層に照射して、前記ノズル形成層を硬化させる紫外線照射工程と、
前記基板を溶解液に浸漬させて、前記ノズル形成層の前記ノズル孔部および前記犠牲層を除去する除去工程と、を含み、
前記第二の犠牲層によって、少なくとも前記紫外線照射工程において照射される前記紫外線のうち、前記基板によって反射される反射紫外線を吸収させることを特徴とするインク吐出ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記第一犠牲層形成工程は、前記流路壁によって区画形成される空間のうち、前記ノズルに対向する領域に前記低い領域を形成し、前記低い領域の面積は、前記ノズル孔の面積よりも大きく、
前記第二犠牲層形成工程は、前記ノズル孔に対向する領域では、前記流路壁の端面よりも低く前記第二の犠牲層を形成することを特徴とする請求項1に記載のインク吐出ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記第二犠牲層形成工程は、前記第一の犠牲層の上層を覆うようにスピンコートにより前記第二の犠牲層を形成することを特徴とする請求項1または2に記載のインク吐出ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記第二犠牲層形成工程は、前記第一の犠牲層の上層のうち、前記低い領域のみを覆うように前記第二の犠牲層を形成することを特徴する請求項1または2に記載のインク吐出ヘッドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2013−71408(P2013−71408A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214026(P2011−214026)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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