説明

インク組成物、インクジェット用であるインク組成物、インクジェット記録方法、およびインクジェット法による印刷物

【課題】放射線の照射により感度が高く硬化し、耐ブロッキング性と平滑性に優れた画像を形成しうる、インクジェット用として好適なインク組成物、該インク組成物を用いたインクジェット記録方法、及び、該インク組成物を用いて印刷した印刷物を提供する。
【解決手段】(A)(A-1)ポリオキシアルキレン基と、(A-2)フルオロアルキル基、シロキサン骨格、および長鎖アルキル基からなる群より選択される部分構造とを有するポリマーと、(B)重合性化合物と、(C)重合開始剤とを含むインク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、インクジェット記録に好適なインク組成物、該インク組成物を用いたインクジェット記録方法、及びインクジェット法による印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。例えば、インクジェット方式は、安価な装置で実施可能であり、且つ、必要とされる画像部のみにインクを射出して被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。更に、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
【0003】
インクジェット方式によれば、普通紙のみならずプラスチックシート、金属板など非吸水性の被記録媒体にも印字可能であるが、印字する際の高速化及び高画質化が重要な課題となっており、印字後の液滴の乾燥、硬化に要する時間が、印刷物の生産性や印字画像の鮮鋭度に大きく影響する性質を有している。
インクジェット方式の一つとして、放射線の照射により、硬化可能なインクジェット用インクを用いた記録方式がある。この方法によれば、インク射出後直ちに又は一定の時間後に放射線照射し、インク液滴を硬化させることで、印字の生産性が向上し、鮮鋭な画像を形成することができる。
紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェット用インクの高感度化を達成することにより、放射線に対し高い硬化性が付与され、インクジェット記録の生産性向上、消費電力低減、放射線発生器への負荷軽減による高寿命化、不充分硬化に基づく低分子物質の揮発発生の防止など、多くの利益が生じる。また、高感度化は、特に形成された画像の強度を向上させる点で重要である。
【0004】
このような放射線、例えば、紫外線による硬化型インクジェット方式は、比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い被記録媒体への記録ができる点で、近年注目されつつあり、ラジカル重合を利用した紫外線硬化型インク組成物が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献5参照。)。
また、硬化感度が高く、良好な画質の画像を与えるインク組成物として、フッ素基含有ポリマー、長鎖アルキル基含有ポリマー、及び脂環基含有ポリマーからなる群より選択される少なくとも一つの疎水性ポリマーを含むインク組成物が知られている(例えば、特許文献6参照。)。
しかしながら、これらのインク組成物では、形成された画像のベトツキや、低分子量成分が画像表面より滲出する現象(所謂、なき出し)などが生じ、耐ブッロキング性が不十分であるといった問題を有していた。また、なき出しを抑えるために、多官能のモノマーを多く用いると粘度が高くなって、得られた画像は平滑性に乏しく、インク組成物の吐出性に懸念が生じることもあった。また、硬化した画像(硬化膜)が脆くなるなどの問題が生じていた。
【0005】
放射線に対する感度を高めて、耐ブロッキング性が向上するように、種々の光重合開始剤がインク組成物に用いることが提案されている(特許文献7〜特許文献9)が、画像形成における像露光に長時間を要していた。
また耐ブロッキング性向上のために、表面の硬化性向上を目的としてホスフィン化合物を使用することが提案されている(特許文献10)が、向上効果は見られるものの、十分な架橋密度が得られず耐ブロッキング性の改善効果は不十分であった。
以上のことから、放射線に対して高感度で硬化し、且つ、耐ブロッキング性に優れ、平滑性に優れた画像を形成することができるインク組成物が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−235382号公報
【特許文献2】特開平3−216379号公報
【特許文献3】特開平5−214280号公報
【特許文献4】特公平6−21256号公報
【特許文献5】特公平6−62905号公報
【特許文献6】特開2006−182970号公報
【特許文献7】米国特許第4134813号明細書
【特許文献8】特開平1−253731号公報
【特許文献9】特開平6−308727号公報
【特許文献10】特開平7−126551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、放射線の照射により感度高く硬化し、良好な耐擦過性、延伸性を維持しつつ、耐ブロッキング性と平滑性に優れた画像を形成しうる、インクジェット用に好適なインク組成物を提供することである。
本発明のさらなる目的は、該インク組成物を用いたインクジェット記録方法、及び、該インク組成物により形成された印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定構造を有するポリマーを用いることにより、前記課題を解決しうることを見出し、本発明のインク組成物を完成するに至った。即ち本発明の前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0009】
<1> (A)(A-1)ポリオキシアルキレン基と、(A-2)フルオロアルキル基、シロキサン骨格、および長鎖アルキル基からなる群より選択される部分構造とを有するポリマーと、(B)重合性化合物と、(C)重合開始剤とを含むインク組成物。
【0010】
<2> 前記(A)(A-1)ポリオキシアルキレン基と、(A-2)フルオロアルキル基、シロキサン骨格、および長鎖アルキル基からなる群より選択される部分構造とを有するポリマーが、下記一般式(1)で表される構造単位を含む<1>に記載のインク組成物。
【0011】
【化1】

【0012】
一般式(1)中、Rは水素原子、またはメチル基を表す。Zはそれぞれ独立に2価の有機基を表し、Lはポリオキシアルキレン基を表し、Xは、フルオロアルキル基、シロキサン骨格、および長鎖アルキル基の群から選択される基を表わす。
【0013】
<3> 前記(A)(A-1)ポリオキシアルキレン基と、(A-2)フルオロアルキル基、シロキサン骨格、および長鎖アルキル基からなる群より選択される部分構造とを有するポリマーが、さらに重合性官能基を有するポリマーである<1>または<2>に記載のインク組成物。
<4> 前記(B)重合性化合物が、ラジカル重合性化合物である<1>から<3>のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0014】
<5> 前記(B)重合性化合物が、カチオン重合性化合物である<1>から<3>のいずれか1項に記載のインク組成物。
<6> (B)重合性化合物の総量を100質量部としたとき、単官能の重合性化合物の量が80〜100質量部の範囲である<1>から<5>のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0015】
<7> インクジェット用である<1>から<6>のいずれか1項に記載のインク組成物。
<8> (a)被記録媒体上に、<7>に記載のインク組成物を吐出する工程、及び(b)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、インク組成物を硬化する工程、を含むインクジェット記録方法。
<9> <7>に記載のインク組成物を用いて印刷した印刷物。
【0016】
本発明のインク組成物の作用については、以下のように推測される。
インク組成物として使用したとき、本発明で使用する(A)ポリマーは、(A-2)フルオロアルキル基、シロキサン骨格、および長鎖アルキル基からなる群より選択される部分構造を有することによって、インク組成物を被記録媒体上に付与した場合に該(A)ポリマーが表面に偏析し易くなり、インク滴の表面がポリマーにより覆われるため、低分子量成分等に起因する表面のベトツキが抑制され、耐ブロッキング性が向上したものと考えられる。さらに本発明のポリマーは(A-1)ポリオキシアルキレン基を有するので、未硬化状態のインク滴が硬化膜上に着弾した際の濡れ広がりが、ポリオキシアルキレン基がない場合に比べ良好となるため、より平滑な画像が得られていると考えられる。特に、本発明の好ましい態様では、フルオロアルキル基、シロキサン骨格、および長鎖アルキル基からなる群より選択される部分構造がポリオキシアルキレン基の末端に有している場合、画像の平滑性が、さらに向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、射線の照射により感度高く硬化し、良好な耐擦過性、延伸性を維持しつつ、耐ブロッキング性と平滑性に優れた画像を形成しうるインク組成物を提供することができる。また、本発明のインク組成物は吐出安定性に優れるため、インクジェット用に好適である。また、本発明のインク組成物を用いたインクジェット記録方法、及び、本発明のインク組成物により印刷された、優れた画像を有する印刷物を提供するができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔インク組成物〕
本発明のインク組成物は、(A)(A-1)ポリオキシアルキレン基と、(A-2)フルオロアルキル基、シロキサン骨格、および長鎖アルキル基からなる群より選択される部分構造(以下、偏析部位と称することがある。)とを有するポリマー(以下、特定ポリマーと称することがある。)と、(B)重合性化合物と、および(C)重合開始剤とを含むことを特徴とする。
以下、本発明のインク組成物を構成する成分について説明する。
【0019】
<(A)(A-1)ポリオキシアルキレン基と、(A-2)フルオロアルキル基、シロキサン骨格、および長鎖アルキル基の群から選択される部分構造とを有するポリマー>
(A-1)ポリオキシアルキレン基としては、下記一般式(2)で表されるポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリテトラヒドロフラン基であり、ポリオキシエチレン基とポリオキシプロピレン基とポリテトラヒドロフラン基との群から選ばれた2種以上が同一分子内にあるものも好ましい形態である。また、これらのポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリテトラヒドロフラン基の群から選択されるポリオキシアルキレン基がランダム共重合体、またはブロック共重合体として2個以上分子内に存在してもよい。
【0020】
【化2】

【0021】
一般式(2)中、m1、m2、およびm3は、それぞれ独立に0〜100の整数である。ポリオキシアルキレン基全体の分子量は、150から5000が好ましく、より好ましくは200から5000、最も好ましくは300から3000である。
【0022】
(A-1)ポリオキシアルキレン基として、好ましくはポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリテトラヒドロフラン基が挙げられ、またオキシエチレン基とオキシプロピレン基が複数個ランダムに連結した基、オキシエチレン基とオキシプロピレン基がそれぞれ複数個ブロック状に連結した基、などが挙げられる。
【0023】
ポリオキシアルキレン基を側鎖に有するモノマーとしては、市販されている水酸基末端のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類を使用することができる。このような市販のモノマーとしては、ブレンマーシリーズ(日油(株)製)があり、本発明で使用可能な市販モノマーとしては、ブレンマーPE−90、ブレンマーPE−200、ブレンマーPE−350、ブレンマーAE−90、ブレンマーAE−200、ブレンマーAE−400、ブレンマー70PEP−350B、ブレンマー10PEP−550Bなどであり、ブレンマーAEPシリーズ、ブレンマーPETシリーズ、ブレンマーAETシリーズも使用可能である。
またポリオキシアルキレン基を側鎖に有するモノマーは、酸ハロゲン化物とエチレンオキサイドなどの反応から合成することもできる。
【0024】
本発明における特定ポリマーは、上記した(A-1)ポリオキシアルキレン基の他に、(A-2)フルオロアルキル基、シロキサン骨格、及び長鎖アルキル基からなる群より選択される部分構造をも含むことを特徴とするポリマーである。
以下、(A-2)フルオロアルキル基、シロキサン骨格、及び長鎖アルキル基からなる群より選択される部分構造について説明する。
【0025】
<フルオロアルキル基>
本発明における特定ポリマー中のフルオロアルキル基とは、少なくとも1つのフッ素原子により置換された炭化水素基であればよく、アルキル基における少なくとも一つの水素原子をフッ素原子に置換したフルオロアルキル基が挙げられ、フルオロアルキル基のすべての水素をフッ素に置換したパーフルオロアルキル基がより好ましく、パーフルオロアルキル基が更に好ましい。
アルキル基としては、炭素数3〜12が好ましく、炭素数4〜10がより好ましく、炭素数6〜8が更に好ましい。
【0026】
フルオロアルキル基は、特定ポリマーに含まれていればよく、ポリオキシアルキレン基を介して結合していてもよい。
本発明におけるフルオロアルキル基は、インク表面への偏在性の観点から、下記一般式Iで表される基であることが好ましい。
【0027】
【化3】

【0028】
一般式I中、R及びRはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜4個のアルキル基を表し、*はポリマー鎖への連結部位を表す。Xは単結合又は2価の連結基を、mは0以上の整数を、nは1以上の整数を表す。
なお、mが2以上の場合、互いに隣接する炭素上の官能基(即ち、隣り合う炭素にそれぞれ結合しているR同士やR同士)は結合して脂肪族環を形成してもよい。
【0029】
なお、一般式Iで表される置換基の中でも、一般式Iにおけるnが1〜10の範囲であるものが好ましく、1〜4の範囲であることがより好ましく、2、又は3であることが特に好ましい。*で表されるポリマー鎖への連結部位は、特定ポリマーの主鎖に直結していてもよいし、ポリオキシアルキレン基、アルキレン基、エステル基、ウレタン基、ヘテロ原子を含んでもよい環状アルキレン基、ポリ(カプロラクトン)、アミノ基、等の2価の連結基を介して結合していてもよい。ポリオキシアルキレン基を介して結合していることが好ましい。
【0030】
ポリオキシアルキレン基を介してフルオロアルキル基を特定ポリマーに導入する方法としては、下記化合物を用いてポリオキシアルキレン基の末端に容易に導入することができる。
【0031】
【化4】

【0032】
上記Rfは下記式で表される基を表す。下記式中、Tは下記(T群)から選択される1種の基であり、n2は0〜6の整数である。
【0033】
【化5】

【0034】
【化6】

【0035】
また、フルオロアルキル基を有するモノマー(以下、フルオロアルキル基含有モノマーと称する。)を用いることで、特定ポリマーにフルオロアルキル基を導入することも可能である。
このフルオロアルキル基含有モノマーとしては、下記一般式IIで表されるモノマーが好ましいものとして挙げられる。
【0036】
【化7】

【0037】
一般式II中、Rは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいメチル基、又は置換基を有してもよいエチル基を表す。また、R、R、X、m、及びnはいずれも、一般式IにおけるR、R、X、m、及びnと同義であり、好ましい例も同様である。
なお、一般式IIにおいてRで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
【0038】
フルオロアルキル基含有モノマーとしては、上記一般式IIで表されるモノマーの中でも、一般式IIにおけるnが1〜10であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、2、又は3であることが特に好ましい。
【0039】
一般式I及び一般式IIにおいてR及びRで表される炭素数1〜4個のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、好ましくは、水素原子、又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0040】
一般式I及び一般式IIにおいて、Xが単結合である場合は、ポリマー主鎖と、R及びRが結合している炭素原子と、が直接連結していることを意味する。
また、Xが2価の連結基である場合には、その連結基としては、−O−、−S−、−N(R)−、−CO−等が挙げられる。これらの中でも−O−がより好ましい。
ここで、Rは、水素原子又は炭素数1〜4個のアルキル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、好ましくは、水素原子、メチル基である。
【0041】
一般式I及び一般式IIにおいて、mは0以上の整数を表し、2〜8の整数が好ましく、2が特に好ましい。また、mが2以上の場合、互いに隣接する炭素上の官能基(即ち、隣り合う炭素にそれぞれ結合しているR同士やR同士)は結合して脂肪族環を形成してもよい。
【0042】
一般式I及び一般式IIにおいて、nは1以上の整数を表し、1〜10の整数が好ましく、1〜4の整数がより好ましく、2、又は3であることが特に好ましい。
【0043】
一般式Iにおいて、*はポリマー主鎖との連結部位を表すが、当該ポリマー主鎖の具体的な形態としては、以下のような例が挙げられる。
例えば、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、スチリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、フェノール/ホルムアルデヒド縮合樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、無水マレイン酸/α−オレフィン樹脂、α−ヘテロ置換メタクリル樹脂などを用いることができる。その中でも、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、スチリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂が有用であり、特にアクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂が有用である。
【0044】
本発明における特定ポリマーは、例えば、前述のフルオロアルキル基を有する化合物をポリオキシアルキレン基の末端に導入する方法や、一般式Iで表される置換基を有するモノマー(即ち、フルオロアルキル基を有するモノマー)を縮重合又は付加重合、開環重合等の、当業者にとって公知の方法で容易に得ることができる。また、更に必要に応じてこれらを併用してもよい。
【0045】
なお、このようなフルオロアルキル基含有化合物の製造法に関しては、例えば、「フッ素化合物の合成と機能」(監修:石川延男、発行:株式会社シーエムシー、1987)の117〜118ページや、「Chemistry of Organic Fluorine Compounds II」(Monograph 187,Ed by Milos Hudlicky and Attila E.Pavlath, American Chemical Society 1995)の747〜752ページに記載されている。
【0046】
以下、本発明に用いられる一般式IIで表されるモノマーの具体例を示す。これらのうちポリオキシアルキレン基にフルオロアルキル基が結合した構造が好ましく、後述の一般式(1)の項で説明する。
【0047】
【化8】

【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

【0050】
【化11】

【0051】
<シロキサン骨格>
ポリオキシアルキレン基とともに特定ポリマーに含まれるシロキサン骨格とは、「−Si−O−Si−」を有していれば、特に制限はない。
シロキサン骨格を有することによって、インク組成物の吐出安定性を上げ、インク組成物を塗膜としたときの表面偏析性を高くすることができる。この観点から、下記構造式(A)で表される化合物(以下、「特定シロキサン化合物」ともいう)を重合して、シロキサン骨格を特定ポリマーに導入することが好ましい。
【0052】
【化12】

【0053】
前記構造式(A)中、Rは、水酸基、アミン基、ハロゲン原子などの置換基を有してよい炭素数が2〜6の直鎖若しくは分岐のアルキレン基、又は、下記構造式(B)で表される2価の連結基を示す。
【0054】
【化13】

【0055】
上記構造式(B)中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基を表す。m1、m2、およびm3は、一般式(2)のm1、m2、およびm3と同義である。ここで、Rは構造式(B)中に2つ以上存在するが、それぞれ異なっていてもよく、また、同じであってもよい。
【0056】
前記構造式(A)中、x、x、及びxは、これらの合計が1〜100を満たす整数である。
また、yは、1〜30の整数である。
前記構造式(A)中、Xは単結合、又は下記構造式(C)で表わされる2価の基である。
【0057】
【化14】

【0058】
前記構造式(C)中、Rは、水酸基、アミン基、ハロゲン原子などの置換基を有してよい炭素数が1〜6の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、Q、及びQは、酸素原子、硫黄原子、又は−NR−を表わし、Q、Qは、それぞれ異なっていてもよく、また、同じであってもよい。Rは、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
前記構造式(C)中、Qは、前記構造式(A)におけるRに結合する。
【0059】
前記構造式(A)中、Yは、下記構造式(D)〜下記構造式(F)で表される1価の基を表す。
【0060】
【化15】

【0061】
前記構造式(D)〜(F)中、Rは、水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状或いは分枝鎖状のアルキル基を表わす。
【0062】
前記構造式(A)中、Zは下記構造式(G)で表される1価の基を表す。
【0063】
【化16】

【0064】
上記構造式(G)中、Rは炭素数1〜4の無置換のアルキル基を表し、yは1〜100の整数を表し、好ましくは1〜50の整数、より好ましくは1〜20の整数である。
【0065】
また、本発明のシロキサン骨格としては、下記に示した構造が上記の式(A)の具体例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらのうちポリオキシアルキレン基を介してシロキサン構造がポリマーに結合した構造が好ましく、後述の一般式(1)の項で説明する。
【0066】
【化17】

【0067】
<長鎖アルキル基>
ポリオキシアルキレン基とともに特定ポリマーに含まれる長鎖アルキル基としては、炭素数4〜12のアルキル基であり、下記一般式(3)が好ましい。
【0068】
【化18】

【0069】
一般式(3)中、Aは2価から4価の炭素数0から12の炭化水素からなる環状、または直鎖、分岐のアルキル基、フェニル基であり、R11は炭素数6から20の直鎖、又は分岐のアルキル基を表す。n3は1〜3の整数である。
【0070】
この長鎖アルキル基は、ポリマー主鎖に連結した状態でポリマーに導入されていてもよいが、ポリオキシアルキレン基の末端に結合していることが好ましい。
上記一般式(3)中、R11は、炭素数6〜20のアルキル基が好ましく、炭素数10〜20のアルキル基がより好ましい。またn3は、1〜6の整数が好ましく、いずれもこの範囲にあると表面偏析性が好ましい。
【0071】
これらの基を特定ポリマーに導入する方法としては、これらの基を有するビニル化合物、(メタ)アクリロイル化合物等の不飽和基を有する重合性化合物を共重合等の方法でポリマーに導入することができる。
また、ポリオキシアルキレン基を介して長鎖アルキル基がポリマーに結合した構造が好ましく、後述の一般式(1)の項で説明する。
【0072】
本発明で使用される(A)特定ポリマーは、下記一般式(1)で表わされる側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、ポリオキシアルキレン基の末端に(A-2)フルオロアルキル基、シロキサン骨格、及び長鎖アルキル基からなる群より選択される部分構造を有するポリマーが好ましい化合物である。
【0073】
【化19】

【0074】
一般式(1)中、Rは水素原子、またはメチル基を表す。Zはそれぞれ独立に2価の有機基を表し、Lはポリオキシアルキレン基を表し、Xは、フルオロアルキル基、シロキサン骨格、および長鎖アルキル基の群から選択される基を表わす。
【0075】
一般式(1)におけるZとしては、炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキレン基、環状のアルキレン基、炭素数2〜20の直鎖又は分岐のアルケニレン基、環状のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリーレン(単環、複素環)基、−OC(=O)−、−OC(=O)Ar−、−OC(=O)O−、−OC(=O)OAr−、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−SONR−、−SONAr−、−OAr−(アリーレンオキシ、ポリアリーレンオキシ)、−C(=O)O−、−C(=O)O−Ar−、−C(=O)Ar−、−C(=O)−、−SOO−、−SOOAr−、−OSO−、−OSOAr−、−NRSO−、−NArSO−、−NRC(=O)−、−NArC(=O)−、−NRC(=O)O−、−NArC(=O)O−、−OC(=O)NR−、−OC(=O)NAr−、−NAr−、−NR−、−N+RR’−、−NRAr−、−NArAr’−、−S−、−SAr−、−ArS−、ヘテロ環基(ヘテロ原子としては、例えば、窒素、酸素及びイオウ等を少なくとも1個以上含み、3員ないし12員環の単環、縮合環)、−OC(=S)−、−OC(=S)Ar−、−C(=S)O−、−C(=S)OAr−、−C(=S)OAr−、−C(=O)S−、−C(=O)SAr−、−ArC(=O)−、−ArC(=O)NR−、−ArC(=O)NAr−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)S−、−ArC(=S)O−、−ArO−、−ArNR−等が挙げられる。
【0076】
なお、上記R、およびR’は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖又は分岐のアルキル基、環状のアルキル基、直鎖又は分岐のアルケニル基、環状のアルケニル基、直鎖又は分岐のアルキニル基、環状のアルキニル基を表し、Ar、およびAr’は、それぞれ独立に、アリール基を表す。
【0077】
このような連結基の中でも、Zとしては、炭素数6〜20のアリーレン(単環、複素環)基、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−O−(アルキレンオキシ、ポリアルキレンオキシを含む)、−OAr−(アリーレンオキシ、ポリアリーレンオキシ)、−C(=O)O−、−C(=O)O−Ar−、−C(=O)−、−C(=O)Ar−、−S−、−SAr−、−ArS−、−ArC(=O)−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)O−、−ArO−、−ArNR−、−C(=O)―、等が好ましく、炭素数6〜20のアリーレン(単環、複素環)基、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−OAr−(アリーレンオキシ、ポリアリーレンオキシ)、−C(=O)O−、−C(=O)O−Ar−、−SAr−、−ArS−、−ArC(=O)−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)O−、−ArO−、−ArNR−、−C(=O)―等がより好ましい。
【0078】
また、本発明において、上記Zで表される連結基としては、ここで挙げた連結基を2種類以上組み合わせたものであってもよい。
【0079】
Lは下記式(2)で表わされるポリオキシアルキレン基であり、m1、m2、およびm3はそれぞれ独立に0〜100の整数である。好ましくはm1が0〜20、m2が0〜20、m3が0〜20の範囲であることが好ましく、画像平滑性と感度とが良好である。
また、ポリオキシアルキレン基全体の分子量は、150から5000が好ましく、より好ましくは200から5000、最も好ましくは300から3000である。この分子量の範囲にあると画像平滑性が良好である。
【0080】
【化20】

【0081】
一般式(1)で表される構造単位の具体例を下記に示すが、本発明は下記構造単位に限定されるものではない。また下記構造を2種以上含んだポリマーも好適に使用できる。
一般式(1)で表わされる構造単位を含むモノマーを他の構造単位のモノマーと共重合して本発明の特定ポリマーとすることも好ましい。
ポリオキシアルキレン基を介してポリフルオロアルキル基がポリマーに結合した構造としては下記の具体例が挙げられる。
【0082】
【化21】

【0083】
また、ポリオキシアルキレン基を介してシロキサン骨格がポリマーに結合した構造としては、下記の具体例が挙げられる。下記式でRは2価の連結基を表す。
【0084】
【化22】

【0085】
さらに、ポリオキシアルキレン基を介して長鎖アルキル基がポリマーに結合した構造としては、下記の具体例が挙げられる。
【0086】
【化23】

【0087】
本発明における、(A-1)ポリオキシアルキレン基の含有量は、特定ポリマーに対する質量基準で、5質量%〜50質量%が好ましく、より好ましくは10質量%〜30質量%であり、更に好ましくは10質量%〜20質量%である。
また、(A-2)フルオロアルキル基、シロキサン骨格、及び長鎖アルキル基からなる群より選択される部分構造の含有量は、特定ポリマーに対する質量基準で、1質量%〜40質量%が好ましく、より好ましくは1.5質量%〜30質量%であり、更に好ましくは2質量%〜20質量%である。
上記範囲とすることで、特定ポリマーをインク組成物内にて効率的に表面偏析させ、且つ平滑性が向上する。
【0088】
以下、本発明に用いられる(A)特定ポリマーの好適な具体例を、その構造と重量平均分子量とともに挙げる。
【0089】
【化24】

【0090】
【化25】

【0091】
【化26】

【0092】
本発明におけるインク組成物の全固形分に対する、特定ポリマーの含有量は質量基準で、0.2質量%〜5質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.2質量%〜3質量%の範囲であり、更に好ましくは0.2質量%〜1.5質量%の範囲である。上記範囲とすることで、インクジェットインクに必要な物性に悪影響を与えずに平滑性が向上し、ブロッキング抑制を向上することができる。
【0093】
<(B)重合性化合物>
本発明のインク組成物は、重合性化合物を含有する。
この重合性化合物としては、分子中に(B-1)ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物、または(B-2)カチオン重合可能なエポキシ環、オキセタン環、またはビニルエーテル基を少なくとも1つ有する化合物である。重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。好ましくは2種以上併用して用いることが、反応性、物性などの性能を制御する上で好ましい。またラジカル重合性の化合物とカチオン重合性化合物を併用することもよい。
【0094】
<(B-1)ラジカル重合性化合物>
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0095】
具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、更に具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品若しくは業界で公知のラジカル重合性乃至架橋性のモノマー、オリゴマー、及びポリマーを用いることができる。
【0096】
また、ラジカル重合性化合物としては、例えば、特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特開平9−134011号等の各公報に記載されている光重合性組成物に用いられる光硬化型の重合性化合物材料が知られており、これらも本発明のインク組成物に適用することができる。
【0097】
<(B-2)カチオン重合性化合物>
本発明の重合性組成物に用いることのできるエポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、及び、脂肪族エポキシドなどが挙げられ、この中でも脂環式エポキシドが硬化性の観点で好ましい。
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
本発明の重合性組成物に用いることのできるエポキシドの種類、具体的化合物、好ましい例としては、特開2008−13646号公報の段落番号〔0037〕〜〔0040〕に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。
【0098】
本発明に併用できるオキセタン化合物としては、単官能、多官能のいずれも用いることができ、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。本発明における特定重合性化合物に併用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、インク組成物等に適用した場合において、硬化後の組成物と被記録媒体との高い密着性を得ることができる。本発明の重合性組成物に用いることのできるオキセタン化合物の種類、具体的化合物、および好ましい例としては、特開2008−13646号公報の段落番号〔0045〕〜〔0062〕に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。
【0099】
更に、カチオン重合性化合物として、ビニルエーテル化合物を用いることも好ましい。好適に用いられるビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度の観点から、ジビニルエーテル化合物、トリビニルエーテル化合物が好ましく、特に、ジビニルエーテル化合物が好ましい。ビニルエーテル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0100】
本発明のインク組成物において、(B)重合性化合物は60質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
重合性化合物は常温で固体あるいは高粘度の物性を示すものが多いため、均一なインク組成物の調製、ハンドリング性、さらには、インク組成物をインクジェット記録用として用いる場合のインク吐出安定性の観点から、単官能の重合性モノマーを用いることが好ましい。
単官能重合性化合物を使用する、硬化膜が柔軟になり好ましい。単官能重合性化合物は重合性化合物の総量に対して80質量%以上100質量%以下が好ましく、90質量%以上100質量%以下がより好ましい。
【0101】
<(C)光重合開始剤>
本発明のインク組成物は、(C)光重合開始剤を含有する。(C)光重合開始剤としては、公知の重合開始剤を、併用する前記(B)重合性化合物の種類、インク組成物の使用目的に応じて、適宜選択して使用することができる。
本発明のインク組成物に使用する(C)光重合開始剤は、外部エネルギー(光)を吸収して重合開始種を生成する化合物である。光には、活性放射線、すなわち、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できる。
【0102】
前記重合性化合物としてラジカル重合性化合物を用いた場合には、ラジカル重合開始剤を本発明の(C)光重合開始剤とすることが好ましく、カチオン重合性化合物を使用した場合にはカチオン重合開始剤を用いることが好ましい。重合性化合物としてラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物の両方を用いた場合には重合開始剤もラジカル重合開始剤とカチオン重合開始剤とを併用することが好ましい。
【0103】
<(C−1)ラジカル重合開始剤>
(C)光重合開始剤は公知の化合物が使用できるが、本発明で使用し得る好ましい(C)光重合開始剤のうち、(C−1)ラジカル重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィンオキシド化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。
【0104】
これらのラジカル重合開始剤は、上記(a)〜(m)の化合物を単独もしくは組み合わせて使用してもよい。本発明におけるラジカル重合開始剤は単独もしくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
【0105】
(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、及び、(e)チオ化合物の好ましい例としては、"RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY", J. P. FOUASSIER, J.F.RABEK(1993)、pp.77〜117記載のベンゾフェノン骨格又はチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい例としては、特公昭47−6416号公報記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等を挙げることができる。
【0106】
これらのなかでも、本発明において、重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド化合物を使用することが好ましく、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(Irgacure 819:チバスペシャルティケミカルズ社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(Darocur TPO:チバスペシャルティケミカルズ社製、Lucirin TPO:BASF社製)などが好ましい。
【0107】
(c)芳香族オニウム塩化合物としては、周期律表の15、16及び17族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、又はIの芳香族オニウム塩が含まれる。例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号、同233567号、同297443号、同297442号、同279210号、及び同422570号の各明細書、米国特許3902144号、同4933377号、同4760013号、同4734444号、及び同2833827号の各明細書に記載されるジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、及び特公昭46−42363号の各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウムテトラフルオロボレート等)、更には特公昭52−147277号、同52−14278号、及び同52−14279号の各公報記載の化合物が好適に使用される。活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0108】
(d)有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系の化合物が好ましい。
【0109】
(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0110】
(g)ケトオキシムエステル化合物としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0111】
(h)ボレート化合物の例としては、米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号の各明細書に記載されている化合物が挙げられる。
(i)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号、及び特公昭46−42363号の各公報記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0112】
(j)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号の各公報記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号の各公報記載の鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
前記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン等を挙げることができる。
【0113】
(k)活性エステル化合物の例としては、欧州特許0290750号、同046083号、同156153号、同271851号、及び同0388343号の各明細書、米国特許3901710号、及び同4181531号の各明細書、特開昭60−198538号、及び特開昭53−133022号の各公報に記載されるニトロベンズルエステル化合物、欧州特許0199672号、同84515号、同199672号、同044115号、及び同0101122号の各明細書、米国特許4618564号、同4371605号、及び同4431774号の各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、及び特開平4−365048号の各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号、及び特開昭59−174831号の各公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0114】
(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、例えば、若林ら著、Bull. Chem. Soc. Japan、42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物等を挙げることができる。
また、F. C. Schaefer等によるJ. Org. Chem.、29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物等を挙げることができる。ドイツ特許第2641100号に記載されているような化合物、ドイツ特許第3333450号に記載されている化合物、ドイツ特許第3021590号に記載の化合物群、あるいはドイツ特許第3021599号に記載の化合物群等を挙げることができる。
【0115】
本発明において(C−1)ラジカル重合開始剤は単独で用いてもよいし、併用してもよい。効果の観点からは、2種以上の(C−1)ラジカル重合開始剤を併用することが好ましい。
【0116】
<(C−2)カチオン重合開始剤>
本発明における(B)重合性化合物として(B−2)カチオン重合性化合物を用いる場合には、(C)光重合開始剤として、(C−2)カチオン重合開始剤を含有することが好ましい。(C−2)カチオン重合開始剤としては、公知の光酸発生剤が挙げられる。ここで、光酸発生剤とは、放射線の照射により酸を発生する化合物をいう。
本発明に用いうる光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、或いはマイクロレジスト等に使用されている光(400〜200nmの紫外線、遠紫外線、特に好ましくは、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光)、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどの照射により酸を発生する化合物を適宜選択して使用することができる。
【0117】
このような光カチオン重合開始剤としては、放射線の照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などを挙げることができる。本発明の重合性組成物に用いることのできる光カチオン重合開始剤の種類、具体的化合物、および好ましい例としては、特開2008−13646号公報の段落番号〔0066〕〜〔0122〕に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。
【0118】
重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
インク組成物中の重合開始剤の含有量は、インク組成物に適用する場合も含めて、固形分換算で、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0119】
(増感剤)
本発明のインク組成物には、さらに、重合硬化を促進させる増感剤を添加してもよく、増感剤としてはアントラセン化合物を用いることが好ましい。該アントラセン化合物は置換基を有していてもよい。
【0120】
前記アントラセンが置換基を有する場合、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、などが挙げられ、中でも特に、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。また、アントラセンの置換基の個数は、1〜4個であることが好ましく、1〜2個であることがより好ましい。特に、1置換の場合の置換基の位置としては9位であることが好ましく、2置換の場合の置換基の位置としては9,10位であることが好ましい。
この中でも特に、2置換の場合の9,10位である、9,10−置換アントラセン化合物であることが好ましい。
【0121】
以上のアントラセン化合物の含有量は、重合開始剤の35〜100質量%であることが好ましく、40〜80質量%であることがより好ましく、44〜70質量%であることがさらに好ましい。また、既述の重合開始剤の好ましい含有量と、上記アントラセン化合物の好ましい含有量は同時にその範囲内とすることが好ましい。
【0122】
本発明おいては、アントラセン以外の化合物も増感色素を添加してもよく、アントラセンと併用することも単独で用いることも可能である。本発明に係るアントラセン以外の増感剤としては、以下に列挙する化合物類に属しており、且つ350nm〜450nmの波長領域に吸収波長を有するものが挙げられる。
【0123】
例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル、等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン、等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン、等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー、等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン、等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン、等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム、等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、等)、等が挙げられる。
【0124】
本発明のインク組成物における前記増感剤の含有量は、インク組成物の着色性の観点から、全質量に対し、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、更に好ましくは0.5〜10質量%の範囲である。前記増感色素は、一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、増感色素と前記重合開始剤とのインク組成物における含有比としては前記重合開始剤の分解率向上と照射した光の透過性の観点から、質量比で、a/c=100〜0.5が好ましく、a/c=50〜1がより好ましく、a/c=10〜1.5が更に好ましい。
【0125】
本発明のインク組成物には更に、共増感剤として、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を加えてもよい。
【0126】
共増感剤の例としては、アミン類、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0127】
共増感剤の別の例としては、チオールおよびスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0128】
また、共増感剤の別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特願平6−191605号記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の総量(全質量)に対して、0.01〜10質量%程度である。
【0129】
<界面活性剤>
本発明のインク組成物には、公知の界面活性剤を含有させることが好ましい。公知の界面活性剤としては、例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。具体的には、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記公知の界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)および固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0130】
(着色剤)
本発明のインク組成物には、目的に応じて着色剤を含有することができる。また、本発明のインク組成物においては、着色剤を添加することで、可視画像を形成しうるインク組成物とすることができる。
本発明のインク組成物に用いることのできる着色剤は、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の色材、(顔料、染料)を適宜選択して用いることができる。例えば、耐候性に優れた画像を形成する場合には、顔料が好ましい。また、染料としては、水溶性染料および油溶性染料のいずれも使用できるが、油溶性染料が好ましい。
【0131】
(顔料)
まず、本発明のインク組成物における着色剤として好ましく使用される顔料について述べる。着色剤として顔料を用いた場合、インク組成物を使用して形成された着色画像は耐光性に優れたものとなる。
前記顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料および無機顔料、または顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、或いは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
本発明において使用できる有機顔料および無機顔料の具体例としては、特開2008−13646号公報の段落番号〔0126〕〜〔0131〕に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。
【0132】
顔料の分散には、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、ルーブリゾール社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0133】
インク組成物において、顔料などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、本発明のインク組成物は、放射線硬化型のインクであり、インクを被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じたりするためである。このような観点から、分散媒としては、重合性化合物を用い、中でも、最も粘度が低いカチオン重合性モノマーを選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
【0134】
インク組成物中の顔料粒子の体積平均粒径は、0.02〜0.60μmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.10μmである。また、最大粒径は3μm以下が好ましく、さらに好ましくは1μm以下であり、そのような範囲となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
【0135】
(染料)
次に、本発明における着色剤として好ましく使用される染料について述べる。
染料としては、従来公知の化合物(染料)から適宜選択して使用することができる。具体的には、特開2002−114930号公報の段落番号〔0023〕〜〔0089〕、特開2008−13646号公報の段落番号〔0136〕〜〔0140〕に記載の化合物などを挙げることができ、これらを本発明にも適用することができる。
【0136】
前記着色剤はインク組成物中、インク組成物の全質量に対して0.05〜20質量%添加されることが好ましく、0.2〜10質量%がより好ましい。着色剤として油溶性染料を用いた場合には、インク組成物の全質量(溶媒を含む)に対して、0.2〜6質量%が特に好ましい。
【0137】
(添加物)
本発明のインク組成物には、各必須成分に加え、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。これらの任意成分について説明する。
【0138】
−紫外線吸収剤−
本発明のインク組成物には、得られる硬化物、或いは、画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を添加することができる。
前記紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の総量(全質量)に対して、0.01〜10質量%程度である。
【0139】
−酸化防止剤−
本発明のインク組成物には、安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の総量(全質量)に対して、0.01〜10質量%程度である。
【0140】
−褪色防止剤−
本発明のインク組成物には、各種の有機系および金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式および化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の総量(全質量)に対して、0.01〜10質量%程度である。
【0141】
−導電性塩類−
本発明のインク組成物を、インクジェット記録用インク組成物に用いる場合は、射出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
【0142】
−溶剤−
本発明のインク組成物には、被記録媒体等の固体表面と、硬化物や形成された画像との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性悪化が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
【0143】
−高分子化合物−
本発明のインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、または「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0144】
この他にも、本発明のインク組成物には、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
前記タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などが挙げられる。
【0145】
<インク組成物の好ましい物性>
本発明のインク組成物は、高感度で硬化し、硬化物の強度と柔軟性に優れることから、活性エネルギー線硬化型インク組成物に適用することが好ましいのは前述の通りであるか特に、インクジェット記録方法に適用するインク組成物に使用することが好ましい。
本発明のインク組成物は、インクジェット記録に適用する場合、吐出性を考慮し、吐出時の温度におけるインク粘度が、5〜30mPa・sであることが好ましく、7〜20mPa・sが更に好ましい。このため、前記範囲になるように適宜組成比を調整し決定することが好ましい。
また、室温(25〜30℃)でのインク組成物の粘度は、7〜120mPa・sが好ましく、10〜80mPa・sが更に好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を防ぎ、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となり、更にインク液滴着弾時のドット滲みを抑えることができ、その結果として画質を改善することができる。
【0146】
本発明のインク組成物の表面張力は、20〜40mN/mであることが好ましく、20〜30mN/mであることが更に好ましい。また、本発明のインク組成物を、ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲みおよび浸透の観点から、前記表面張力は20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点では30mN/m以下であることが好ましい。
【0147】
本発明のインク組成物は、インクジェット記録用のインクとして好適に用いることができる。インクジェット記録方式には特に制限はなく、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出する電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出する音響型インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、発生した圧力を利用するサーマル型インクジェット方式、等のいずれであってもよい。なお、前記インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
前記のうち、ピエゾ素子を用いたドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)のインクジェット記録用インクとして好適である。
【0148】
<インクジェット記録方法>
本発明のインク組成物は、(a)被記録媒体上に、該インク組成物を吐出する工程(画像記録工程)、及び(b)吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して、インク組成物を硬化する工程(画像硬化工程)、を含むインクジェット記録方法に用いることができる。
即ち、本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット記録によって画像を形成する画像記録工程と画像硬化工程とを含む方法である。
【0149】
本発明における画像硬化工程においては、画像硬化工程において活性エネルギー線を利用し、画像記録工程で被記録材に画像記録した後、記録された画像に活性エネルギー線を照射することによって、画像化に寄与する重合性化合物の重合硬化が進行し、良好に硬化され堅牢性の高い画像を形成することができる。
前記画像硬化工程においては、インク組成物の有する感応波長に対応する波長領域の活性エネルギー線を発する光源を用いて重合硬化を促進する露光処理を行なうことができる。光源、露光時間および光量は、本発明に係る重合性化合物の重合硬化の程度に応じて適宜選択すればよい。
画像硬化工程において硬化した画像の厚みは、2〜30μmであることが好ましい。ここで、「画像の厚み」とは、インク組成物により形成された画像を硬化した硬化物の厚みのことである。該画像の厚みが2〜30μmであることで、低濃度から高濃度の画像を表現することができる。
【0150】
前記画像硬化工程においては、インク組成物の有する感応波長に対応する波長領域の活性エネルギー線を発する光源を用いて重合硬化を促進する露光処理を行なうことができる。具体的には、250〜450nm、好ましくは365±20nmの波長領域に属する活性線を発する光源、例えば、LD、LED(発光ダイオード)、蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ケミカルランプなどを用いて好適に行なうことができる。好ましい光源には、LED、高圧水銀灯、メタルハライドランプが挙げられ、なかでも本発明のカチオン重合性組成物の硬化においてはLEDを光源として用いることが好ましい。
【0151】
ラジカル重合により硬化させる場合、酸素により重合が阻害されるため、酸素濃度の低い状態、すなわち窒素等のガス雰囲気下で露光させることにより低エネルギーで硬化させることができる。
このインクにより得られた記録物は、画像部が紫外線などの放射線照射により硬化しており、画像部の強度に優れるため、例えば、平版印刷版のインク受容層(画像部)としても用いることができる。
【0152】
前記記録工程においては、インクジェットプリンタによるインクジェット記録方法を適用するのが好ましい。具体的には、前記画像記録工程は、前記インク組成物を吐出するインクジェット記録によって前記画像を記録することが好ましい。
【0153】
<インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置>
次に、本発明の方法に好適に採用され得るインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置について、以下説明する。
【0154】
・システム
インクを吐出するインクジェット記録システムとしては、特開2002−11860号公報に示すような形態が一例としてあげられるが、これに限定されるものではなく、他の形態であってもよい。
【0155】
・インク保持手段
インクを保持する手段としては、公知のインクカートリッジに充填することが好ましく、特開平5−16377号公報に開示されるように変形可能な容器に収納し、タンクとなすことも可能である。また特開平5−16382に開示されるように、サブタンクを有するとインクをヘッドへの供給が更に安定する。また特開平8−174860号公報に開示されるように、インク供給室の圧力が低下した場合に、弁の移動によりインクを供給する形態のカートリッジを用いることも可能である。これらのインク保持手段でヘッド内のメニスカスを適切にたもつための負圧付与方法としては、インク保持手段の高さすなわち水頭圧による方法、またインク流路中にもうけたフィルタの毛細管力による方法、また、ポンプ等により圧力を制御する方法、また、特開昭50−74341号公報に開示されるようにインクをインク吸収体に保持し、この毛細管力により負圧を付与する方法等が適切である。
【0156】
・インク供給路
インクをこれらインク保持手段からヘッドに供給する方法として、ヘッドユニットに直接保持手段を連結する方法でもよいし、チューブ等の流路により連結する方法でもよい。これらインク保持手段および流路は、インクに対して良好な濡れ性を持つような素材であること、もしくは表面処理が施されていることが好ましい。
【0157】
・ヘッド
インクを打滴する方法としては、特開平5−104725号公報に開示されるように、連続的にインク滴を吐出させ、画像に応じて滴を偏向して被記録材に着弾させるか、させないかを選択制御する方法であってもよいし、所謂オンデマンド方式を呼ばれる、画像として必要な部分にのみインク滴を吐出させる方式であってもよい。オンデマンド方式は、特開平5−16349に開示されるように、圧電素子等を用いて構造体の変形によりインク圧を発生させ、吐出させる方式であってもよいし、特開平1−234255に開示されるように、熱エネルギーによる気化にともなう膨張により発生する圧力で吐出する方式であってもよい。また特開2001−277466号公報に開示されるように、電界により被記録材への吐出を制御する方式であってもよい。
【0158】
インクジェット記録方法においては、本発明のインク組成物を用いて被記録材に画像記録を行なうが、その際に使用するインク吐出ノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ノズルはたとえば特開平5−31908号公報に記載されるような形態が適用可能である。なお、このとき複数色のインクを吐出させるため、ノズルは特開2002−316420号公報に記載されるように、複数列に構成されることにより、高速にカラー画像を形成することが可能となり、さらに複数のノズル列を有するヘッドユニットを複数配置することにより更に高速化が可能である。
【0159】
さらにノズルを特開昭63−160849号公報に記載されるように画像の幅と同等以上の幅分配置し、所謂ラインヘッドとなし、これらのノズルからの打滴と同時に被記録材を移動させることにより、高速に画像を形成することが可能となる。
またノズルの表面は、特開平5−116327号公報に開示されるような表面処理を施すことにより、ノズル表面へのインク滴の飛沫の付着、およびインク滴の付着を防ぐことが可能となる。
【0160】
このような処理を施しても、なお汚れが付着する場合があり、このため、特開平6−71904号公報に開示されるように、ブレードにより清掃を行うことが好ましい。
また、ノズルから各色のインクが均等に吐出されるとは限らず、特定のインクは長時間吐出されない場合もありうる。このようなときに、メニスカスを安定に保つために、特開平11−157102号公報に開示されるように、画像領域外で適宜インクを吐出させ、ヘッドに新しいインクを補給することにより、インク物性を適性値に維持することが好ましい。
【0161】
また、このような処置を施してもなお気泡がヘッド内に侵入もしくはヘッド内で発生することがある。このような場合は、特開平11−334092号公報に記載されるように、ヘッド外より強制的にインクを吸引することにより、物性の変化したインクを廃棄するとともに、気泡もヘッド外に排出することができる。更に長時間打滴しない場合は特開平11−138830号公報に開示されるように、キャップでノズル表面を覆うことによりノズル表面を保護することができる。これらの措置を講じてもなお吐出しない場合がありうる。
ノズルの一部が吐出しない状態で画像をプリントすると、画像にムラが発生する等の問題が発生する。このようなことを避けるため、特開平2000−343686号公報に開示されるように、吐出しないことを検出して処置をとることが有効である。
【0162】
ヘッドユニットを特開平6−115099号公報に記載されるように機械的に移動させ、これと同期させて被記録材を直交方向に間欠的に移動させることにより重畳打滴を行うと、被記録材の間欠的な移動の精度不良にともなうムラを見えにくくする効果があり、高画質を実現することが可能となる。このとき、ヘッドの移動速度、被記録材の移動量、ノズル数の関係を適宜設定することにより、画質と記録速度の関係を好ましい関係に設定することが可能となる。
また、逆にヘッドを固定し、被記録材を機械的に所定方向に往復移動するとともに、それと直交方向に間欠移動させることにより、同様の効果を得ることが可能である。
【0163】
・温度制御
インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましく、一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。
【0164】
インクジェット記録方法においては、上記インク組成物を40〜80℃に加熱して、インク組成物の粘度を30mPa・s以下、好ましくは20mPa・s以下に下げた後、射出することが好ましく、この方法を用いることにより高い射出安定性を実現することができる。一般に、放射線硬化型インク組成物では、概して水性インクより粘度が高いため、印字時の温度変動による粘度変動幅が大きい。このインク組成物の粘度変動は、そのまま液滴サイズ、液滴射出速度に対して大きな影響を与え、これにより画質劣化を引き起こすため、印字時のインク組成物温度はできるだけ一定に保つことが必要である。このためにはインク温度検出手段と、インク加熱手段、および検出されたインク温度に応じて加熱を制御する制御手段を有することが好ましい。
【0165】
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンタ立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
あるいは、インク温度に応じてインクを吐出させる手段への印加エネルギーを制御する手段を有することも好適である。
【0166】
インク組成物温度の制御幅は設定温度±5℃とすることが好ましく、より好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0167】
・露光
光源としては、前記したように、一般的に用いられる水銀灯、メタルハライドランプ等を用いてもよいし、発光ダイオード、半導体レーザ、蛍光灯等を用いることができる。また熱陰極管、冷陰極管、電子線、X線等、インクの重合反応が進行する光源、電磁波等を用いることが出来る。
【0168】
メタルハライドランプを用いる場合、ランプは10〜1000W/cmのものを使用し、被記録材面で1mW/cm〜100W/cmの照度であることが好ましい。
また、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等では放電にともない、オゾンが発生するため、排気手段を有することが好ましい。排気手段は、インク吐出時に発生するインクミストの回収を兼ねるべく配置してあることが好適である。
【0169】
次に活性エネルギー線の好ましい照射条件について述べる。基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間をおいて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。WO99/54415号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明においては、これらの照射方法を用いることが可能である。
【0170】
硬化させるための活性エネルギー線がインク吐出ノズルに照射されると、ノズル面表面に付着したインクミスト等が固化し、インク吐出の妨げとなる可能性があるため、ノズルへの照射を最小限にとどめるため、遮光等の措置を施すことが好ましい。具体的には、ノズルプレートへの照射を防止する隔壁を設ける、あるいは迷光を低減するべく被記録材への入射角を限定するための手段を設ける等が好適である。
【0171】
また本発明では、着弾から照射までの時間を0.01〜0.5秒とすることが望ましく、好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒後に放射線を照射することにある。このように着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、着弾インクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留を抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。上記説明したインクジェット記録方法と本発明のインク組成物とを併せて用いることにより、大きな相乗効果をもたらすことになる。このような記録方法を取ることで、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことが出来、画質が向上する。
【0172】
・システムパラメータ
画像を形成するうえで、被記録材上でのインク着弾径は10〜500μmの間にあることが好適であり、このためには吐出時のインク滴の直径は5〜250μmであることが好ましく、このときのノズル径は15〜100μmであることが好ましい。
画像を形成するためには1インチあたりの画素数が50〜2400dpiであることが好ましく、そのためには、ヘッドのノズル密度は10〜2400dpiであることが好ましい。ここで、ヘッドのノズル密度は低くとも、被記録材の搬送方向に対して傾ける、あるいは複数のヘッドユニットを相対的にずらして配置することにより、ノズル間隔の大きいヘッドで高密度の着弾を実現することが可能である。また上記のようにヘッドもしくは被記録材の往復移動により、低ノズルピッチでヘッドが移動するごとに被記録材を所定量搬送させ、インク滴を異なる位置に着弾させることにより、高密度の画像記録を実現することができる。
【0173】
被記録材へのインク打滴量としては、良好な階調を表現するためには0.05〜25g/mの間で任意量に制御できることが好適であり、これを実現するためにヘッドからの吐出インク滴の大きさ、およびまたは数量を制御することが好ましい。
【0174】
ヘッドと被記録材の間隔に関しては、広すぎるとヘッドもしくは被記録材の移動に伴う空気の流れでインク滴の飛翔が乱れ、着弾位置精度が低下する。逆に間隔が狭いと、被記録材の凹凸、搬送機構に起因する振動等によりヘッドと被記録材が接触する危険性があり、0.5〜2mm程度に維持されることが好ましい。
【0175】
・インクセット
インクは単色であってもよいし、シアン、マゼンタ、イエローのカラーであってもよいし、さらにブラックを加えた4色、あるいはさらに特色と呼ばれるこれら以外の特定色のインクを用いてもよい。色材は、染料であってもよいし、顔料であってもよい。これらのインクの打滴順は、明度の低い順に着弾するように打滴させてもよいし、明度の高い順に着弾させてもよいし、画像記録品質上好適な順に打滴させることが好ましい。
【0176】
明度の高い色から順に重ねていくと、下部のインクまで活性エネルギー線が到達しやすく、硬化感度の阻害、残留モノマーの増加および臭気の発生、密着性の劣化が生じにくい。また、照射は、全色を射出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
記録するべき画像信号は、たとえば特開平6−210905号公報に記載されるように、良好な色再現を得るべく信号処理を施すことが好ましい。
【0177】
なお、本発明のインク組成物の使用態様は、上記インクジェット記録方法に限定されず、例えば、画像記録工程においてインクジェット記録以外の方法で被記録媒体上にインク画像を形成し、これに活性エネルギー線を照射する画像硬化工程を組み合わせた場合、或いは、インクジェット記録装置により、被記録媒体上にインク組成物を吐出した後、加熱して画像を硬化させる場合などにも適用することが可能である。
【0178】
また、本発明のインク組成物は、インクジェット記録用途以外に、三次元造形用途、例えば、前述の平版印刷版の印刷インク受容部の形成用途などにも利用可能であり、缶印刷用途や食品用途にも利用できる。これらの用途については公知の方法を利用して画像形成することができ、例えば特許第2679586号公報などの記載を参照することができる。
【0179】
[被記録材]
本発明のインク組成物を用いて記録される被記録媒体としてはインク浸透性の被記録媒体、および、インク非浸透性の被記録媒体をともに使用することができる。インク浸透性の被記録媒体は、普通紙、インクジェット専用紙、コート紙、電子写真共用紙、布、不織布、多孔質膜、高分子吸収体等が挙げられる。これらについては特開2001−1891549号公報などに「被記録材」として記載されている。
【0180】
前記インク非浸透性の被記録媒体としては、アート紙、合成樹脂、ゴム、樹脂コート紙、ガラス、金属、陶器、木材等が挙げられる。加えて各機能を付加する為に、これら材質を複数組み合わせ複合化した基材を使用することもできる。
【0181】
前記合成樹脂としてはいかなる合成樹脂も用いることができるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、および、ポリブタジエンテレフタレート等のポリエステル;ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、および、ポリプロピレン等のポリオレフィン;並びに、アクリル樹脂、ポリカーボネート、および、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等や、ジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、セロハン、および、セルロイド等が挙げられる。
【0182】
前記合成樹脂を用いた基材の形状(厚み)は、フィルム状でもよいし、カード状またはブロック状でもよく、特に限定されることなく所望の目的に応じて適宜選定することができる。また、これら合成樹脂は透明であってもよいし、不透明であってもよい。前記合成樹脂の使用形態としては、いわゆる軟包装に用いられるフィルム状で用いることが好ましい態様の一つであり、各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができる。各種プラスチック製のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、二軸延伸ナイロン(ONy)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、および、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを挙げることができる。
【0183】
前記樹脂コート紙としては、例えば、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルム、および、紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体が挙げられ、前記紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体が特に好ましい。
【0184】
以上のように、本発明のインク組成物を用いた画像記録によると、強度と柔軟性、さらには、被記録媒体との密着性に優れた画像を得ることができ、得られた記録物は、密着性に優れ、脆性に係る問題を生じることがない。
また、本発明のインク組成物以外にも、コーティング、接着剤、光造形、半導体用フォトレジストなどの分野に適用することが可能である。
【実施例】
【0185】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例における形態に限定されるものではない。
なお、特にことわらない限り「部」は「重量部」を表す。
【0186】
〔ポリマーD−1の合成〕
500mlのフラスコに下記組成を仕込み、70℃で10時間反応した。
(組成)
・溶剤:メチルエチルケトン 50部
・モノマー1:ポリエチレングリコールモノアクリレート(n=10)(日油(株)製 商品名ブレンマーAE400) 15.8部
・モノマー2:メタクリル酸2‐(2‐ブロモイソブチリルオキシ)エチル(BBEM、マナック(株)製) 5.6部
・重合開始剤:ジメチル2,2’-アゾビス(2−メチルプロピオンネート)(和光純薬社製 商品名V−601) 0.17部
【0187】
その後1,8-Diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene(和光純薬社製 商品名:DBU)6部を添加し、室温で24時間反応した。さらにメタンスルホン酸にて、中和して析出物を濾別した。その後、溶液(濾液)を氷浴にて0℃に冷却し、偏析部位修飾剤として無水ヘプタフルオロプロピオン酸12.3部を滴下し、徐々に室温に戻した後、室温で3時間反応した。
これを300mlの水にあけ、テトラヒドロフランに溶解し、水による再沈精製を3回行い、目的のポリマーD−1 20部を得た。
【0188】
〔ポリマーD−2〜12の合成〕
ポリマーD−1の合成において、モノマー、および偏析部位修飾剤を、表1に記載の化合物に代えて、ポリマーD−1の合成と同様にして、ポリマーD−2〜D−12(下記構造)を合成した。
【0189】
【表1】

【0190】
表1で用いた化合物は以下の通りである。
ブレンマーAE−200:ポリエチレングリコールモノアクリレート(n=4.5)、日油製
ブレンマーAET:ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノアクリレート、日油製
ブレンマーAE−90:ポリエチレングリコールモノアクリレート(n=2)、日油製
ブレンマー55PET−800:ポリ(エチレングリコール-テトラメチレングリコール)モノメタクリレート、日油製
M−1420:2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート、ダイキン工業社製
M−1620:2−パーフルオロへキシルエチルメタクリレート、ダイキン工業社製
また、ブレンマーPE−350、ブレンマーPME−1000、ブレンマー70PEP−350B、FM−0711、X−22−3710の構造は下記に示す。
【0191】
【化27】

【0192】
【化28】

【0193】
【化29】

【0194】
〔実施例1〜8、12、および比較例1〜2〕
(ラジカル重合性インク組成物の調製)
下記インク組成を混合したものを2時間攪拌混合し、溶解残りがないことを確認し、メンブランフィルターでろ過を行い、粗大粒子を除去することにより実施例1〜8、12、および比較例1〜2の各インク組成物を得た。
【0195】
インク組成(マゼンタ色インク組成物)
・重合性化合物:フェノキシエチルアクリレート 21.0部
・重合性化合物:N−ビニルカプロラクタム 14.0部
・重合性化合物:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト(日立化成社製、商品名FA−512A) 17.4部
・ポリマー:表に記載のポリマーD−1〜D−8、D−12または比較化合物1 1.0部
・分散剤:Solsperse 36000(Noveon社製) 2.0部
・マゼンタ顔料:Cinquasia Mazenta RT−355 D 3.6部
(Ciba Specialty Chemicals社製顔料)
・安定剤:Genorad 16(Rahn社製) 0.05部
・重合性化合物:Rapi−Cure DVE−3 8.0部
(ISP Europe社製 トリエチレングリコールジビニルエーテル)
・光重合開始剤:Darocur TPO 8.5部
(Ciba Specialty Chemicals社製)
・光重合開始剤:Irgacure 907 4.0部
(Ciba Specialty Chemicals社製)
・Byk 307(BYK Chemie社製消泡剤) 0.05部
【0196】
なお、表2に記載の比較化合物1、2の構造を下記に示す。
【0197】
【化30】

【0198】
【化31】

【0199】
〔実施例9〜11、13、および比較例3〜4〕
(カチオン重合性組成物の調整)
下記インク組成を混合したものを2時間攪拌混合し、溶解残りがないことを確認し、メンブランフィルターでろ過を行い、粗大粒子を除去することにより実施例9〜11、13および比較例3〜4の各インク組成物を得た。
【0200】
・カチオン重合性化合物:セロキサイド2021(エポキシ化合物:ダイセルUCB(株)製) 35部
・カチオン重合性化合物:OXT−221(オキセタン化合物:東亜合成(株)製) 55部
・ポリマー:表1に記載のポリマーD−9〜D−12、または比較化合物2 1.0部
・光酸発生剤:(ユニオンカーバイド社製、製品名UVI−6990 10部
・分散剤:Solsperse 36000(Noveon社製) 2.0部
・マゼンタ顔料:Cinquasia Mazenta RT-355 D(Ciba Specialty Chemicals社製顔料)
3.6部
・増感剤:9,10−ジブトキシアントラセン 0.5部
【0201】
実施例1〜13、および比較例1〜4のインク組成物を下記に示す評価方法により評価した。結果を表2に示す。
【0202】
【表2】

【0203】
(露光感度の測定)
上記のインクジェット記録方法を適用して得られた、紫外線照射後のベタ画像面において、粘着感の無くなる露光エネルギー量(mJ/cm)を露光感度と定義した。数値が小さいものほど高感度であることを表す。
露光感度の許容範囲は2000mJ/cm以下であり、より好ましくは1500mJ/cm以下である。
【0204】
(ブロッキング感度の評価)
前記のインクジェット記録方法を適用して得られた、紫外線照射後の画像上に、PET(サイズ:縦横共に画像形成した軟質塩化ビニルシートと同サイズ、重さ:2g/枚)を500枚重ね載せ、一日放置し、PETへの転写を目視評価した。転写が無くなるまでに要した露光エネルギー量(mJ/cm)をブロッキング感度と定義した。
ブロッキング感度の許容範囲は12,000mJ/cm以下であり、より好ましくは6,000mJ/cm以下である。
【0205】
(延伸率の評価)
積算露光量:12,000mJ/cm、照度:2140mW/cmとし、支持体を軟質塩化ビニルシートの代わりにFassonPE(Fasson社製ポリエチレンフイルム:膜厚100μm)を用いる以外は、露光感度評価と同様にして、硬化膜を作成した。得られた硬化膜を軸長5cm×幅2.5cmにカットし、引っ張り試験機(島津製作所社製、オートグラフAGS-J)を用いて、速度30cm/minで延伸させ、硬化膜が破断する伸び率を測定した。初期長から2倍の長さまで伸びた状態を伸び率100%と定義した。
延伸率の許容範囲は200%以上であり、より好ましくは300%以上である。
【0206】
(吐出安定性の評価)
前述のようにして得られたインク組成物(ろ過後のもの)のヘッドノズルでの吐出安定性を以下のようにして評価した。
即ち、下記の条件でピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置により、60分の連続吐出におけるノズルロス個数を測定した。
−条件−
・チャンネル数:318/ヘッド
・駆動周波数:4.8kHz/dot
・インク滴:7滴、42pl
・温度:45℃
実験は、PET基板上にインク組成物を吐出した後、露光(露光量:1,000mW/cm)を行う方法を用い、その際のノズルロス数(ノズルが詰まってしまった数)を数えた。
−評価基準−
○:ノズルロス数が0以上5個未満
△:ノズルロス数が5個以上10個未満
×:ノズルロス数が10個以上
【0207】
(画像平滑性の評価)
目視により、画像の平滑性を評価した。評価基準として、画像全体にわたってレリーフ感が強い画像は×、許容だが悪化する場合△、改善する場合を○として評価した。
【0208】
表2から以下のことがわかる。本発明の(A-1)ポリオキシアルキレン基と、(A-2)フルオロアルキル基、シロキサン骨格、および長鎖アルキル基の群から選択される部分構造とを有する特定ポリマーであるD−1〜D−8、およびD−12を用いたラジカル重合性組成物を用いた実施例1〜8および12は、いずれも露光感度、およびブロッキング感度が小さく高感度であり、吐出安定性に優れ、画像平滑性に優れている。これに対し本発明の特定ポリマーを含まない比較例1は露光感度、およびブロッキング感度が大きく低感度であり、比較例2は画像の平滑性が劣るインク組成物であることがわかる。
また、本発明の(A-1)ポリオキシアルキレン基と、(A-2)フルオロアルキル基、シロキサン骨格、および長鎖アルキル基の群から選択される部分構造とを有する特定ポリマーであるD−9〜D−12を用いたカチオン重合性組成物を用いた実施例9〜11および13は、いずれもブロッキング感度が小さく高感度であり、吐出安定性に優れ、画像平滑性に優れている。これに対し本発明の特定ポリマーを含まない比較例3はブロッキング感度が大きく低感度であり、比較例4は画像の平滑性が劣るインク組成物であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A-1)ポリオキシアルキレン基と、(A-2)フルオロアルキル基、シロキサン骨格、および長鎖アルキル基からなる群より選択される部分構造とを有するポリマーと、(B)重合性化合物と、(C)重合開始剤とを含むインク組成物。
【請求項2】
前記(A)(A-1)ポリオキシアルキレン基と、(A-2)フルオロアルキル基、シロキサン骨格、および長鎖アルキル基からなる群より選択される部分構造とを有するポリマーが、下記一般式(1)で表される構造単位を含む請求項1に記載のインク組成物
【化1】


一般式(1)中、Rは水素原子、またはメチル基を表す。Zはそれぞれ独立に2価の有機基を表し、Lはポリオキシアルキレン基を表し、Xは、フルオロアルキル基、シロキサン骨格、および長鎖アルキル基の群から選択される基を表わす。
【請求項3】
前記(A)(A-1)ポリオキシアルキレン基と、(A-2)フルオロアルキル基、シロキサン骨格、および長鎖アルキル基からなる群より選択される部分構造とを有するポリマーが、さらに重合性官能基を有するポリマーである請求項1または請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記(B)重合性化合物が、ラジカル重合性化合物である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記(B)重合性化合物が、カチオン重合性化合物である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項6】
(B)重合性化合物の総量を100質量部としたとき、単官能の重合性化合物の量が80〜100質量部の範囲である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項7】
インクジェット用である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項8】
(a)被記録媒体上に、請求項7に記載のインク組成物を吐出する工程、及び(b)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、インク組成物を硬化する工程、を含むインクジェット記録方法。
【請求項9】
請求項7に記載のインク組成物を用いて印刷した印刷物。

【公開番号】特開2010−235880(P2010−235880A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87864(P2009−87864)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】