説明

インク組成物、インクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法

【課題】保存安定性、吐出安定性及び防腐性に優れ、得られる画像のにじみや色移りの防止にも優れたインク組成物等の提供。
【解決手段】一般式(1)で表される染料と防腐剤とを水性媒体中に含有するインク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、得られる画像のにじみや色移りの防止に優れ、画像濃度などの画像品質が高く、またインク及び記録画像の保存安定性に優れ、しかも吐出安定性及び防腐性に優れるインク組成物、並びに、これを用いたインクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューターの普及に伴いインクジェットプリンターがオフィスだけでなく家庭で紙、フィルム、布等に印字するために広く利用されている。
インクジェット記録方法には、ピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた方式、あるいは静電力により液滴を吸引吐出させる方式がある。これらのインクジェット記録用インクとしては、水性インク、油性インク、あるいは固体(溶融型)インクが用いられる。これらのインクのうち、製造・取り扱い性・臭気・安全性等の点から水性インクが主流となっている。
【0003】
これらのインクジェット記録用インクに用いられる着色剤に対しては、溶剤に対する溶解性が高いこと、高濃度記録が可能であること、色相が良好であること、光、熱、空気、水や薬品に対する堅牢性に優れていること、受像材料に対して定着性が良く滲みにくいこと、インクとしての保存性に優れていること、毒性がないこと、純度が高いこと、更には、安価に入手できることが要求されている。しかしながら、これらの要求を高いレベルで満たす着色剤を捜し求めることは、極めて難しい。
既にインクジェット用として様々な染料や顔料が提案され、実際に使用されているが、未だに全ての要求を満足する着色剤は、発見されていないのが現状である。カラーインデックス(C.I.)番号が付与されているような、従来からよく知られている染料や顔料では、インクジェット記録用インクに要求される色相と堅牢性とを両立させることは難しい。
これまでの研究により、インクジェット記録用インクの性能の改善が行われてきている。特許文献1及び2には、特定のアゾ色素により、インクジェット記録用インクに要求される良好な色相と堅牢性の高さを両立できることが開示されている。
【0004】
また、水性インクは腐敗しやすく、黴も発生しやすいため、インクを長期間経時させると腐敗によるインク物性の変化や、発生した黴がインクの異物となることで、吐出性が著しく悪化するという問題が知られている。特にブラック領域の色相では黴の有する色素の色が目立ち易く、色合いに影響を与え易いため、保存後のインクの色相や印刷後に経時した画像の色相の安定性に劣るという問題点を有する。
防腐剤を含有するインクジェット記録用インクとしては、例えば特許文献3に特定構造のアゾ染料又はフタロシアニン染料を溶解又は分散してなるインクジェット記録用インクであって、該染料が1.0V(vsSCE)よりも貴の酸化電位を有する水溶性染料であり、該インクが防腐剤を少なくとも1種含有することが開示されている。また特許文献4には、特定構造のフタロシアニン染料と、チアゾール化合物とを含有するインクジェット記録用インクが開示されている。更に特許文献5の実施例には、特定のブラックインクと防腐剤とを含有するインクジェット記録用インクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−306623号公報
【特許文献2】特開2005−139427号公報
【特許文献3】特許第4538229号公報
【特許文献4】特開2007−217533号公報
【特許文献5】特表2007−516317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明が解決しようとする課題は、取り扱い性・臭気・安全性等の観点から水性インクにおいて、得られる画像のにじみや色移りの防止に優れ、画像濃度などの画像品質が高く、インク及び得られる画像の保存安定性に優れ、吐出安定性及び防腐性にも優れたインク組成物、該インク組成物を用いたインクジェット記録用インク、並びに、該インクジェット記録用インクを用いたインクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の方法により解決された。即ち、本発明によれば下記のインク組成物、該インク組成物を用いたインクジェット記録用インク、並びに、該インクジェット記録用インクを用いたインクジェット記録方法が提供される。
【0008】
〔1〕
下記一般式(1)で表されるアゾ化合物である少なくとも1種の染料を、水性媒体中に含有するインクであって、防腐剤を少なくとも1種含有する、インク組成物。
【化1】


(一般式(1)中、Aは置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素5員ヘテロ環基を表す。Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Y、Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y及びYは、互いに結合して環を形成しても良い。Y、Y及びYの全てが同時に水素原子を表すことはない。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
〔2〕
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(2−1)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記〔1〕に記載のインク組成物。
【化2】

(一般式(2−1)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Aは置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素5員ヘテロ環基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
〔3〕
前記一般式(1)又は(2−1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(3−1)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載のインク組成物。
【化3】

(一般式(3−1)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
〔4〕
前記一般式(1)、(2−1)又は(3−1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4−1)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化4】


(一般式(4−1)中、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
〔5〕
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(2−2)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記〔1〕に記載のインク組成物。
【化5】

(一般式(2−2)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Rは、1価の置換基を表す。Aは置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素5員ヘテロ環基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
〔6〕
前記一般式(1)又は(2−2)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(3−2)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記〔1〕又は〔5〕に記載のインク組成物。
【化6】

(一般式(3−2)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Rは1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
〔7〕
前記一般式(1)、(2−2)又は(3−2)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4−2)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記〔1〕、〔5〕、〔6〕のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化7】

(一般式(4−2)中、Rは、1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びXは、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
〔8〕
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(1−3)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記〔1〕に記載のインク組成物。
【化8】

(一般式(1−3)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y及びYは、互いに結合して環を形成しても良い。Y、Y及びYの全てが同時に水素原子を表すことはない。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
〔9〕
前記一般式(1)又は(1−3)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(2−3)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記〔1〕又は〔8〕に記載のインク組成物。
【化9】

(一般式(2−3)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
〔10〕
前記一般式(1)、(1−3)又は(2−3)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(3−3)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記〔1〕、〔8〕、〔9〕のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化10】

(一般式(3−3)中、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
〔11〕
前記一般式(1)、(1−3)又は(2−3)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4−3)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記〔1〕、〔8〕、〔9〕のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化11】

(一般式(4−3)中、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
〔12〕
前記一般式(1)又は(1−3)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(2−4)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記〔1〕又は〔8〕に記載のインク組成物。
【化12】

(一般式(2−4)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Rは、1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
〔13〕
前記一般式(1)、(1−3)又は(2−4)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(3−4)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記〔1〕、〔8〕、〔12〕のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化13】

(一般式(3−4)中、Rは1価の置換基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
〔14〕
前記一般式(1)、(1−3)又は(2−4)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4−4)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする上記〔1〕、〔8〕、〔12〕のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化14】

(一般式(4−4)中、Rは、1価の置換基を表す。X、X、X、X、X、X及びXは、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
〔15〕
前記一般式(1)、(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)で表されるアゾ化合物が、少なくとも3つ以上のイオン性親水性基を有することを特徴とする上記〔1〕〜〔14〕のいずれか1項に記載のインク組成物。
〔16〕
前記一般式(1)、(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)で表されるアゾ化合物において、少なくとも1つのMがリチウムイオンであることを特徴とする上記〔1〕〜〔15〕のいずれか1項に記載のインク組成物。
〔17〕
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物において、全てのMがリチウムイオンである、上記〔1〕〜〔16〕のいずれか1項に記載のインク組成物。
〔18〕
2種以上の防腐剤を含有する、上記〔1〕〜〔17〕のいずれか1項に記載のインク組成物。
〔19〕
各防腐剤のそれぞれの含有量が、防腐剤の総含有量の20質量%以上である、上記〔18〕に記載のインク組成物。
〔20〕
前記少なくとも1種の防腐剤として、複素環化合物、フェノール誘導体、フェノキシエーテル誘導体、及びアルカンジオール類からなる群より選ばれる防腐剤を少なくとも1種含有する、上記〔1〕〜〔19〕のいずれか1項に記載のインク組成物。
〔21〕
前記少なくとも1種の防腐剤が前記複素環化合物を含み、該複素環化合物がチアゾール系化合物又はベンゾトリアゾール系化合物である、上記〔20〕に記載のインク組成物。
〔22〕
前記防腐剤の総含有量が、0.01〜0.5質量%である、上記〔1〕〜〔21〕のいずれか1項に記載のインク組成物。
〔23〕
上記〔1〕〜〔22〕のいずれか1項に記載のインク組成物を含有するインクジェット記録用インク。
〔24〕
上記〔23〕に記載のインクジェット記録用インクを用いる、インクジェット記録方法。
〔25〕
支持体上に白色無機顔料粒子を含有する受像層を有する受像材料にインク滴を記録信号に応じて吐出させ、受像材料上に画像を記録するインクジェット記録方法であって、インク滴が上記〔23〕に記載のインクジェット記録用インクからなる、インクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、取り扱い性・臭気・安全性等に優れた水性インクであって、得られる画像のにじみや色移りの防止に優れ、画像濃度などの画像品質が高く、インク及び得られる画像の保存安定性に優れ、吐出安定性及び防腐性にも優れたインク組成物、該インク組成物を用いたインクジェット記録用インク、並びに、該インクジェット記録用インクを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明において、置換基群A’、置換基群J、イオン性親水性基、ハメットの置換基定数σp値について定義する。
【0011】
(置換基群A’)
炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖アルキル基、炭素数7〜18の直鎖又は分岐鎖アラルキル基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルケニル基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルキニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、シクロペンチル)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル)、ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メチルスルホニルエトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルボニルフェノキシ、3−メトキシカルボニルフェニルオキシ、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ)、アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ)、ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド)、スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ)、アルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、p−トルエンスルホニルアミノ)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ)、スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル)、ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル)、イオン性親水性基(カルボキシル基、スルホ基など)が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群A’から選択される基を挙げることができる。
【0012】
(置換基群J)
例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、イオン性親水性基が例として挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Jから選択される基を挙げることができる。
【0013】
更に詳しくは、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
【0014】
アルキル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。詳細には、アルキル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられ、ビシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基等が挙げられる。
【0015】
アラルキル基としては、置換若しくは無置換のアラルキル基が挙げられ、置換若しくは無置換のアラルキル基としては、炭素原子数が7〜30のアラルキル基が好ましい。例えばベンジル基及び2−フェネチル基を挙げられる。
【0016】
アルケニル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルケニル基が挙げられ、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を包含する。詳細には、アルケニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基等が挙げられ、シクロアルケニル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換若しくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等が挙げられ、ビシクロアルケニル基としては、置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基等が挙げられる。
【0017】
アルキニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0018】
アリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。
【0019】
ヘテロ環基としては、好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換の芳香族若しくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基、例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0020】
アルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0021】
アリールオキシ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等が挙げられる。
【0022】
シリルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から20の置換若しくは無置換のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
ヘテロ環オキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換のヘテロ環オキシ基、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等が挙げられる。
【0024】
アシルオキシ基としては、好ましくは、ホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0025】
カルバモイルオキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等が挙げられる。
【0026】
アルコキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0027】
アリールオキシカルボニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0028】
アミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアニリノ基、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基、トリアジニルアミノ基等が挙げられる。
【0029】
アシルアミノ基としては、好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0030】
アミノカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0031】
アルコキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0032】
アリールオキシカルボニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0033】
スルファモイルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等が挙げられる。
【0034】
アルキル又はアリールスルホニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等が挙げられる。
【0035】
アリールチオ基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等が挙げられる。
【0036】
ヘテロ環チオ基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基等が挙げられる。
【0037】
スルファモイル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等が挙げられる。
【0038】
アルキル又はアリールスルフィニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基等が挙げられる。
【0039】
アルキル又はアリールスルホニル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基等が挙げられる。
【0040】
アシル基としては、好ましくは、ホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数2から30の置換若しくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基等が挙げられる。
【0041】
アリールオキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数7から30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基等が挙げられる。
【0042】
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは、炭素数2から30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0043】
カルバモイル基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換若しくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等が挙げられる。
【0044】
アリール又はヘテロ環アゾ基としては、好ましくは炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換若しくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ等が挙げられる。
【0045】
イミド基としては、好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基等が挙げられる。
【0046】
ホスフィノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等が挙げられる。
【0047】
ホスフィニル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等が挙げられる。
【0048】
ホスフィニルオキシ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等が挙げられる。
【0049】
ホスフィニルアミノ基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基が挙げられる。
【0050】
シリル基としては、好ましくは、炭素数0から30の置換若しくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0051】
(イオン性親水性基)
スルホ基、カルボキシル基、チオカルボキシル基、スルフィノ基、ホスホノ基、ジヒドロキシホスフィノ基などが挙げられる。特に好ましくはスルホ基、カルボキシル基である。またカルボキシル基、ホスホノ基及びスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対カチオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。
【0052】
本発明のアゾ化合物が含有するイオン性親水性基の対カチオン(一価のカウンターカチオン)は主成分としてリチウムイオンを含むことが好ましい。対カチオンはすべてリチウムイオンでなくてもよいが、上記各インク組成物中のリチウムイオン濃度は、各インク組成物中の対カチオン全体に対して、50質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%であり、特に好ましくは95質量%以上である。
このような存在比率の条件下において、水素イオン、アルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなど)、4級アンモニウムイオン、4級ホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどを対カチオンとして含むことができる。
【0053】
上記着色剤の対カチオンの種類及び比率については、日本化学会編“新実験化学講座9
分析化学”(1977年 丸善)及び日本化学会編“第4版 実験化学講座15 分析”(1991年 丸善)に、分析方法や元素についての各論が記載されているので、これを参考にして分析方法を選び、分析及び定量することができる。中でもイオンクロマトグラフィー、原子吸光法、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP)などの分析法によって決定することが容易である。
対カチオンがリチウムイオンを含む本発明の着色剤を得る方法としては、いずれの方法を使用してもよい。例えば、(1)イオン交換樹脂を用いて対カチオンを別のカチオンからリチウムイオンに変換する方法、(2)リチウムイオンを含む系から酸析又は塩析する方法、(3)対カチオンがリチウムイオンである原料及び合成中間体を用いて着色剤を形成させる方法、(4)対カチオンがリチウムイオンである反応剤を用いて、各色着色剤の官能基変換によってイオン性親水性基を導入する方法、(5)着色剤中のイオン性親水性基の対カチオンが銀イオンである化合物を合成し、これをリチウムハロゲン化物溶液と反応させ析出したハロゲン化銀を除去することで対カチオンをリチウムイオンにする方法、などが挙げられる。
【0054】
各色着色剤中のイオン性親水性基としては、イオン性解離基である限りいかなるものであってもよい。好ましいイオン性親水性基としては、スルホ基(塩でもよい)、カルボキシル基(塩でもよい)、水酸基(塩でもよい)、ホスホノ基(塩でもよい)及び4級アンモニウム基、アシルスルファモイル基(塩でもよい)、スルホニルカルバモイル基(塩でもよい)、スルホニルスルファモイル基(塩でもよい)等が含まれる。
好ましくはスルホ基、カルボキシル基、又は水酸基(それらの塩を含む)である。イオン性親水性基が塩の場合、好ましいカウンターカチオンはリチウム又はリチウムを主成分とするアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム)、アンモニウム、及び有機のカチオン(例えばピリジニウム、テトラメチルアンモニウム、グアニジニウム)混合塩を挙げることができ、その中でもリチウム又はリチウムを主成分とするアルカリ金属混合塩が好ましく、特にスルホ基のリチウム塩、カルボキシ基のリチウム塩が、水酸基のリチウム塩が好ましい。
【0055】
(ハメットの置換基定数σp値)
本明細書中で用いられるハメットの置換基定数σp値について説明する。
ハメット則はベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。なお、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σpにより限定したり説明したりするが、これは上記の成書で見出せる、文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に含まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。本発明にかかる化合物はベンゼン誘導体ではないが、置換基の電子効果を示す尺度として、置換位置に関係なくσp値を使用する。本発明においては今後、σp値をこのような意味で使用する。
【0056】
なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。
【0057】
本発明のインク組成物は、下記一般式(1)で表されるアゾ化合物である少なくとも1種の染料(以下一般式(1)で表される染料を「アゾ染料」又は「水溶性染料」と表記する場合がある)を、水性媒体中に含有し、該インク組成物が防腐剤を少なくとも1種含有する。インク組成物が、一般式(1)で表される染料を含有し、更に少なくとも1種の防腐剤を含有することにより、得られる画像のにじみや色移りの防止に優れ、画像濃度などの画像品質が高く、インク及び得られる画像の保存安定性に優れ、吐出安定性及び防腐性にも優れたインク組成物が提供される。この理由は定かではないが、一般式(1)で表される染料と少なくとも1種の防腐剤がインク組成物に含有されることにより、染料が持つ本来の特性を損なうことなく、水性媒体中での黴や微生物の発生を抑制し、適切にインクの吐出性や防腐性を確保できるためと推定される。
【0058】
【化15】

【0059】
(一般式(1)中、Aは置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素5員ヘテロ環基を表す。Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Y、Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y及びYは、互いに結合して環を形成しても良い。Y、Y及びYの全てが同時に水素原子を表すことはない。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0060】
〔一般式(1)で表される染料〕
本発明のインク組成物において使用するアゾ染料は、一般式(1)で表される。以下に、一般式(1)で表されるアゾ染料(ブラック染料)(以下「一般式(1)で表されるアゾ化合物」と称する場合がある)について説明する。
【0061】
【化16】

【0062】
(一般式(1)中、Aは置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素5員ヘテロ環基を表す。Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Y、Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y及びYは、互いに結合して環を形成しても良い。Y、Y及びYの全てが同時に水素原子を表すことはない。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0063】
一般式(1)におけるGは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表し、カルバモイル基が置換基を有する場合の置換基としてはアルキル基(メチル基、エチル基)、アリール基(フェニル基)を挙げることができる。
【0064】
、Y、及びYはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y、及びYはいずれか少なくとも1つが置換基を表す。Y、Y、及びYが置換基を表す場合の置換基としては、それぞれ独立に前記置換基群Jを挙げることができる。
一般式(1)において、Y、Y、及びYはそれぞれ独立に、水素原子、イオン性親水性基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のスルファモイル基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基のいずれかであることが好ましい。置換若しくは無置換のアミノ基である場合、ヘテロ環アミノ基であることが好ましい。
、Y、及びYはそれぞれ独立に、水素原子、イオン性親水性基、置換若しくは無置換のヘテロ環アミノ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基のいずれかであることがより好ましく、水素原子、置換若しくは無置換のヘテロ環アミノ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基のいずれかであることが特に好ましい。
【0065】
、Y、及びYが表すヘテロ環アミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アシルアミノ基が置換基を有する場合の置換基としては、それぞれ独立に、イオン性親水性基(例えば、−COM、−SOM:Mは一価のカウンターカチオン)であることより好ましい。
、Y、及びYは更に置換基を有していてもよく、更なる置換基としては、水酸基、置換若しくは無置換のアミノ基又はイオン性親水性基を有していてもよいアリール基、イオン性親水性基を有していてもよいヘテロ環基を挙げることができ、置換若しくは無置換のアミノ基であることが好ましい。該置換アミノ基の置換基としては、例えば、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、又はイオン性親水性基で置換されたアリール基であることがより好ましい。
【0066】
ヘテロ環アミノ基としては、置換若しくは無置換のトリアジニルアミノ基が好ましく、置換基を有するトリアジニルアミノ基がより好ましい。
トリアジニルアミノ基が有する置換基としては、置換若しくは無置換のアミノ基が好ましく、置換若しくは無置換のアミノ基であることが特に好ましい。
該置換アミノ基の置換基としては、上述の例が好適に用いられる。ここで、イオン性親水性基で置換されたアルキル基におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基が好ましく、エチル基がより好ましい。イオン性親水性基で置換されたアリール基におけるアリール基としてはフェニル基が好ましい。
【0067】
アシルアミノ基としては、アルキルカルボニルアミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルカルボニルアミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアリールカルボニルアミノ基が好ましい。該アルキルカルボニルアミノ基におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基が好ましく、エチル基がより好ましい。該アリールカルボニルアシル基におけるアリール基としてはフェニル基が好ましい。
【0068】
、Y及びYの全てが同時に水素原子を表すことはない。Y、Y、及びYは、互いに結合して環を形成しても良く、Y、Y、及びYが互いに結合して形成する環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環が挙げられ、ベンゼン環であることが好ましい。
、Y及びYのなかでも、Yが置換基を表すことが好ましく、Y、及びYが水素原子を表し、Yが置換基を表すことがより好ましい。
特に、Y、及びYは水素原子を表し、Yは置換若しくは無置換のアミノ基を置換として有するヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアリールスルホニルアミノ基、又はイオン性親水性基を置換基として有するアシルアミノ基であることが最も好ましい。
【0069】
、Y及びYが表す置換基としてより具体的には、下記の置換基(A1)を挙げることができる。
【0070】
【化17】

【0071】
(置換基(A1)中、*はY〜Yとしての結合手を表す。Lは単結合、カルボニル基、スルホニル基を表す。Rは置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。)
【0072】
は置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基であることが好ましく、置換基を有する場合の置換基は、イオン性親水性基、アリールアミノ基、アルキルアミノ基が挙げられる。
【0073】
前記置換基(A1)は、下記置換基(A2)又は(A3)であることが好ましい。
【0074】
【化18】

【0075】
(置換基(A2)及び(A3)中、*はY〜Yとしての結合手を表す。Lはカルボニル基、又はスルホニル基を表す。RA2は置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。RA3は置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。)
【0076】
A2は置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、アルキル基であることが好ましい。置換基を有する場合の置換基は、イオン性親水性基であることが好ましい。
はカルボニル基であることが好ましい。
A3は置換若しくは無置換のヘテロ環基を表し、置換基を有する場合の置換基は、アルキルアミノ基、アリールアミノ基であることが好ましく、アルキルアミノ基又はアリールアミノ基であることがより好ましく、これらは更に置換基を有していてもよくイオン性親水性基により置換されていることが好ましい。
【0077】
前記置換基(A3)は、下記置換基(A4)であることが好ましい。
【0078】
【化19】

【0079】
(置換基(A4)中、*はY〜Yとしての結合手を表す。RA4はそれぞれ独立に置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、又は置換若しくは無置換のアリールアミノ基を表す。)
【0080】
A4はそれぞれ独立に置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、又は置換若しくは無置換のアリールアミノ基を表し、置換基を有する場合の置換基は、イオン性親水性基であることが好ましい。
【0081】
前記置換基(A1)〜(A4)におけるアルキル基、アリール基、ヘテロ環基アルキルアミノ基、アリールアミノ基、及びイオン性親水性基の具体例はY、Y及びYにおけるものと同様である。
【0082】
前記置換基(A1)〜(A4)の具体例を以下に示すが、下記の例に限定されるものではない。*はY〜Yとしての結合手を表す。
【0083】
【化20】

【0084】
Aは置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素5員ヘテロ環基を表す。アリール基としては、置換若しくは無置換のアリール基が含まれる。更に詳しくは、置換基群Jを有するアリール基が挙げられる。
Aが表すアリール基は、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリール基が好ましく、置換若しくは無置換のフェニル基又は置換若しくは無置換のフェニル基がより好ましい。置換基の例としては、前述の置換基群Jの項で述べた基が挙げられ、前記イオン性親水性基又は前記ハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基が好ましい。
【0085】
Aが表す含窒素ヘテロ環基は、置換若しくは無置換の含窒素へテロ環基が含まれる。Aが表すヘテロ環基としては、5員の、置換若しくは無置換の芳香族若しくは非芳香族のへテロ環化合物から1個の水素原子を取り除いた1価の基が好ましく、炭素数2〜4の5員の芳香族へテロ環基がより好ましい。置換基の例としては、前述の置換基群Jの項で述べた基が挙げられる。前記含窒素5員ヘテロ環基としては、置換位置を限定しないで表すと、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環が挙げられる。
【0086】
Aは置換基を有するアリール基であることが好ましく、イオン性親水性基又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を有するアリール基であることがより好ましく、イオン性親水性基又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を有するフェニル基であることが更に好ましい。
【0087】
一般式(1)におけるイオン性親水性基としては、−SO又は−COが好ましく、−SOがより好ましく、−SOLiが特に好ましい。
【0088】
前記M及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられる。リチウムイオン以外の対カチオンとしては、カリウムイオン、ナトリウムイオンが好ましく、ナトリウムイオンがより好ましい。
【0089】
形成される塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。
一般式(1)で表されるアゾ化合物が混合塩である場合、水に対する溶解性、水溶液の粘度、表面張力、高濃度水溶液の貯蔵安定性の観点から、リチウム塩とナトリウム塩の混合塩であることが好ましく、複数のMの一部がリチウムイオンを表し残りのMがナトリウムイオンを表す態様であっても、一般式(1)中の全てのMがリチウムイオンを表す染料と、一般式(1)中の全てのMがナトリウムイオンを表す染料とを混合した態様であってもよい。
Mがリチウム塩とナトリウム塩の混合塩である場合、リチウム塩とナトリウム塩のモル比(Li:Na)は99:1〜25:75であることが好ましく、特に99:1〜50:50が好ましく、更に99:1〜55:45が好ましくその中でも特に99:1〜65:35であることが最も好ましい。この範囲であれば、水に対する溶解度・溶解速度が良好で、高濃度水溶液の粘度、表面張力の調整が容易となり、更に高濃度水溶液の貯蔵安定性に優れる傾向となるため、例えば水溶性インク組成物特にインクジェット用水溶性インクのインク組成物の構成要件の処方設計が容易となり、インクジェット用水溶性インクの要求性能を高いレベルで満たす優れた原料(高濃度水溶液、インク組成物)を提供できるという効果を奏する。
該混合塩のカチオンの比は、イオンクロマト分析により測定することができる。
【0090】
一般式(1)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ホ)を含むものである。
【0091】
(イ)Gは窒素原子又は−C(R)=を表し、−C(R)=であることが好ましい。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表し、カルバモイル基(−CONH基)又はシアノ基であることが好ましく、シアノ基であることがより好ましい。
【0092】
(ロ)Aは置換基を有するアリール基であることが好ましく、イオン性親水性基又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を有するアリール基であることがより好ましく、イオン性親水性基を2個有するフェニル基であることが更に好ましい。
【0093】
(ハ)Y、Y、及びYはそれぞれ独立に、水素原子、置換又は無置換のヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基、置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基のいずれかであることが好ましく、水素原子、置換又は無置換のアミノ基を置換として有するヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基、置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基のいずれかであることがより好ましく、水素原子、置換又は無置換のアミノ基を置換として有するヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアリールスルホニルアミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアシルアミノ基のいずれかであることが特に好ましい。アシルアミノ基としては、アルキルカルボニルアシル基、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルカルボニルアシル基、イオン性親水性基を置換基として有するアリールカルボニルアシル基が好ましい。該アルキルカルボニルアシル基におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基が好ましく、エチル基がより好ましい。該アリールカルボニルアシル基におけるアリール基としてはフェニル基が好ましい。
、及びYは水素原子を表し、Yは置換又は無置換のアミノ基を置換として有するヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアリールスルホニルアミノ基、又はイオン性親水性基を置換基として有するアシルアミノ基であることが最も好ましい。
【0094】
(ニ)イオン性親水性基としては、−SO又は−COが好ましく、−SOがより好ましく、−SOLiが特に好ましい。
【0095】
(ホ)前記M及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。
【0096】
この構造が好ましい要因としては、一般式(1)のアゾ化合物の水溶性が向上し、良好な色相と着色力及び高い保存安定性を両立することができるアゾ色素構造を電子的・立体的に付与することができることが挙げられる。
その結果、インク組成物としての貯蔵安定性が向上し、インクの要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、好ましい例となる。
【0097】
上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2−1)で表される化合物であることも好ましい。
【0098】
以下、一般式(2−1)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
【0099】
【化21】

【0100】
(一般式(2−1)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Aは置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素5員ヘテロ環基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0101】
一般式(2−1)中のG、A、R及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(1)中のG、A、R及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0102】
一般式(2−1)中のR11、R12、R13、及びR14が表す1価の置換基としては、それぞれ独立に、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基(炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、又はt−ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基がより好ましく、n−プロピル基が更に好ましい。)、又はイオン性親水性基で置換されたアリール基(炭素数6〜20のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。)であることがより好ましい。
【0103】
上記一般式(1)、(2−1)で表される化合物は、下記一般式(3−1)で表される化合物であることも好ましい。
以下、一般式(3−1)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
【0104】
【化22】

【0105】
(一般式(3−1)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0106】
一般式(3−1)中のG、R、R11、R12、R13、R14、及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(2−1)中のG、R、R11、R12、R13、R14、及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0107】
一般式(3−1)において、X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5が置換基を表す場合の置換基としては、前記の置換基群Jを挙げることができる。
、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、置換又は無置換のアルキルスルホニル基、置換又は無置換のアリールスルホニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基であることが好ましく、水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、メタンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ニトロ基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基であることがより好ましく、水素原子、イオン性親水性基、又はシアノ基であることが特に好ましい。
【0108】
一般式(3−1)において、X及びXはそれぞれ独立に、水素原子又はイオン性親水性基であることが好ましい。X、X、及びX5はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基群Jのいずれかであることが好ましく、更に、X、X及びX5の少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を表すことが好ましい。ハメットの置換基定数σp値の上限としては1.0以下の電子求引性基である。
、X、及びX5の少なくとも一つが、σp値がこの範囲の電子求引性基であれば、アゾ化合物の色相調整と光堅牢性及びオゾンガス堅牢性向上が可能であり、インクジェット記録黒インク用水溶性染料として使用する点で効果を得ることができる。
【0109】
σp値が0.3以上の電子求引性基の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.3以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、又はセレノシアネート基が挙げられる。好ましくはシアノ基、メチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基であり、より好ましくはシアノ基、メチルスルホニル基、ニトロ基である。
【0110】
色相、着色力、水溶性の貯蔵安定性の観点から、上記の中でも、X、及びX4の少なくとも一つはイオン性親水性基であることが好ましく、X、X3及びX5が水素原子又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であることが好ましく、X、X3、及びX5が水素原子であって、X、及びXがイオン性親水性基であることがより好ましい。イオン性親水性基としては、−SO又は−CO(Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)が好ましく、−COがより好ましく、−COLiが特に好ましい。
【0111】
一般式(3−1)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ホ)を含むものである。
【0112】
(イ)X及びXはそれぞれ独立に、水素原子又はイオン性親水性基であることが好ましく、X、X及びX5の少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を表すことが好ましく、シアノ基、メチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基であり、より好ましくはシアノ基、メチルスルホニル基、ニトロ基であり、更に好ましくはシアノ基であり、X、X、X及びXが、水素原子であってX5がシアノ基であることが特に好ましい。
【0113】
(ロ)Gは窒素原子又は−C(R)=を表し、−C(R)=であることが好ましい。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換又は無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表し、カルバモイル基(−CONH基)又はシアノ基であることが好ましく、シアノ基であることがより好ましい。
【0114】
(ハ)R11、R12、R13、及びR14が表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、又はイオン性親水性基で置換されたアリール基であることがより好ましい。
【0115】
(ニ)イオン性親水性基としては、−SO又は−COが好ましく、−SOがより好ましく、−SOLiが特に好ましい。
【0116】
(ホ)前記M及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。
【0117】
この構造が好ましい要因としては、一般式(3−1)のアゾ化合物の水溶性とインク組成物中のアゾ色素の会合性が著しく向上し、特にインク組成物中の高い貯蔵安定性向上することが挙げられる。
その結果、長期保存安定性が可能となり、インクの要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、好ましい例となる。
【0118】
上記一般式(1)、(2−1)又は(3−1)で表される化合物は、下記一般式(4−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0119】
以下、一般式(4−1)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
【0120】
【化23】

【0121】
(一般式(4−1)中、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0122】
一般式(4−1)中のR11、R12、R13、R14、及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(2−1)中のR11、R12、R13、R14、及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0123】
一般式(4−1)中のX、X、X、X、及びX5の例は、それぞれ独立に上記一般式(3−1)中のX、X、X、X、及びX5の例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0124】
この構造が好ましい要因としては、一般式(1)におけるGを含む環が含窒素5員へテロ環ではなくチオフェン環となることで本発明のインク組成物を用いた印画物の画像堅牢性の保存性(例えば、オゾンガス堅牢性、光堅牢性)、変色(色変化)、褪色(消色)をより高いレベルで改良でき、変褪色の変化が小さいことを要求される、グレイ〜ブラックインクとしての適性が向上する。
【0125】
上記一般式(1)、(2−1)、(3−1)又は(4−1)で表される化合物は、下記一般式(5)で表される化合物であることが好ましい。
以下、一般式(5)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
【0126】
【化24】

【0127】
(一般式(5)中、M、M、M、M、及びM5はそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、M、M、M、M、及びM5が一価のカウンターカチオンを表す場合は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はアンモニウムイオンを表す。)
【0128】
上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2−2)で表される化合物であることも好ましい。
【0129】
以下、一般式(2−2)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
【0130】
【化25】

【0131】
(一般式(2−2)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Rは、1価の置換基を表す。Aは置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素5員ヘテロ環基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0132】
一般式(2−2)中のA、G、R及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(1)中のA、G、R及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0133】
一般式(2−2)中のRが表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、又はアリール基であることがより好ましく、特に好ましくは、イオン性親水性基で置換されたアルキル基である。
上記イオン性親水性基で置換されたアルキル基において、アルキル基としては、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基、が好ましく、エチル基が特に好ましい。イオン性親水性基としては、−SO又は−CO(Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)が好ましく、−COがより好ましく、−COLiが特に好ましい。
【0134】
上記一般式(1)、(2−2)で表される化合物は、下記一般式(3−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0135】
以下、一般式(3−2)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
【0136】
【化26】

【0137】
(一般式(3−2)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Rは1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0138】
一般式(3−2)中のG、R、R及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(2−2)中のG、R、R及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0139】
一般式(3−2)において、X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5が置換基を表す場合の置換基としては、前記の置換基群Jを挙げることができる。
、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、置換又は無置換のアルキルスルホニル基、置換又は無置換のアリールスルホニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基であることが好ましく、水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、メタンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ニトロ基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基であることがより好ましく、水素原子、イオン性親水性基(−SO又は−COが好ましく、−COがより好ましく、−COLiが特に好ましい。)、又はシアノ基であることが特に好ましい。
【0140】
一般式(3−2)において、X及びXはそれぞれ独立に、水素原子又はイオン性親水性基であることが好ましい。X、X、及びX5はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基群Jのいずれかであることが好ましく、更に、X、X及びX5の少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を表すことが好ましい。ハメットの置換基定数σp値の上限としては1.0以下の電子求引性基である。
、X、及びX5の少なくとも一つが、σp値がこの範囲の電子求引性基であれば、アゾ化合物の色相調整と光堅牢性及びオゾンガス堅牢性向上が可能であり、インクジェット記録黒インク用水溶性染料として使用する点で効果を得ることができる。
【0141】
σp値が0.3以上の電子求引性基の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.3以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、又はセレノシアネート基が挙げられる。好ましくはシアノ基、メチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基であり、より好ましくはシアノ基、メチルスルホニル基、ニトロ基である。
【0142】
色相、着色力、水溶性の貯蔵安定性の観点から、上記の中でも、X、及びX4の少なくとも一つはイオン性親水性基であることが好ましく、X、X3、及びX5が水素原子又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であることが好ましく、X、X3、及びX5が水素原子であって、X、及びXがイオン性親水性基であることがより好ましい。イオン性親水性基としては、−SO又は−CO(Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)が好ましく、−COがより好ましく、−COLiが特に好ましい。
【0143】
一般式(3−2)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ニ)を含むものである。
【0144】
(イ)X、及びX4の少なくとも一つはイオン性親水性基であることが好ましく、X、X3及びX5が水素原子又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であることが好ましく、X、X3、及びX5が水素原子であって、X、及びXがイオン性親水性基であることがより好ましい。
【0145】
(ロ)Rが表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、ヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、アリール基であることがより好ましい。
【0146】
(ハ)イオン性親水性基としては、−SO又は−COが好ましく、−COがより好ましく、−COLiが特に好ましい。
【0147】
(ニ)前記M及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。
【0148】
この構造が好ましい要因としては、一般式(3−2)のアゾ化合物の水溶性とインク組成物中のアゾ色素の会合性が著しく向上し、特にインク組成物中の高い貯蔵安定性向上することが挙げられる。
その結果、長期保存安定性が可能となり、インクの要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、好ましい例となる。
【0149】
上記一般式(1)、(2−2)又は(3−2)で表される化合物は、下記一般式(4−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0150】
以下、一般式(4−2)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
【0151】
【化27】

【0152】
(一般式(4−2)中、Rは1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0153】
一般式(4−2)中のR、及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(2−2)中のR、及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0154】
一般式(4−2)において、X、X、X、X、及びX5は上記一般式(3−2)中のX、X、X、X、及びX5の例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0155】
一般式(4)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ニ)を含むものである。
【0156】
(イ)一般式(1)におけるAが置換基を有するアリール基であり、イオン性親水性基又はハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を有するアリール基であることがより好ましく、イオン性親水性基を2個有するフェニル基であることが更に好ましい。
【0157】
(ロ)Rが表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、ヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、アリール基であることがより好ましく、特に好ましくは、イオン性親水性基で置換されたアルキル基(メチル基、エチル基、又はn−プロピル基、が好ましく、n−プロピル基が特に好ましい)である。
【0158】
(ハ)イオン性親水性基としては、−SO又は−COが好ましく、−COがより好ましく、−COLiが特に好ましい。
【0159】
(ニ)前記M及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられる。形成される塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。
【0160】
この構造が好ましい要因としては、一般式(1)におけるGを含む環が含窒素5員へテロ環ではなくチオフェン環となることで本発明のインク組成物を用いた印画物の画像堅牢性の保存性(例えば、オゾンガス堅牢性、光堅牢性)、変色(色変化)褪色(消色)をより高いレベルで改良でき、変褪色の変化が小さいことを要求される、グレイ〜ブラックインクとしての適性が向上する。
【0161】
上記一般式(1)、(2−2)、(3−2)又は(4−2)で表される化合物は、下記一般式(5−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0162】
【化28】

【0163】
(Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、Mが一価のカウンターカチオンを表す場合は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はアンモニウムイオンを表す。)
【0164】
一般式(5−2)中のMの例は、それぞれ独立に上記一般式(2−2)中のMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0165】
また、本発明は一般式(1)で表されるアゾ化合物にも関し、本発明のアゾ化合物を色素(着色剤)として用いた水溶液及び水溶性インク組成物は、染料や顔料などの色材とそれの分散剤(溶媒など)を含有する組成物を意味し、特に画像形成に好適に使用できる。
上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(1−3)で表される化合物であることも好ましい。
【0166】
以下、一般式(1−3)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
【0167】
【化29】

【0168】
(一般式(1−3)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y、及びYはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y、及びYは、互いに結合して環を形成しても良い。Y、Y及びYの全てが同時に水素原子を表すことはない。Mはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0169】
一般式(1−3)中のG、R、Y、Y、Y及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(1)中のG、R、Y、Y、Y及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0170】
一般式(1−3)において、X、X、X、X、X、X、及びXはそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、X、X、及びXが置換基を表す場合の置換基としては、前記の置換基Jを挙げることができる。
、X、X、X、X、X、及びXはそれぞれ独立に水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、置換又は無置換のアルキルスルホニル基、置換又は無置換のアリールスルホニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基であることが好ましく、水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、メタンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ニトロ基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基であることがより好ましく、水素原子、イオン性親水性基、又はシアノ基であることが特に好ましい。
一般式(1−3)において、X、X、X5及びXはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基群Jのいずれかであることが好ましく、更に、X、X、及びXの少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を表すことが好ましい。
、X、及びXの少なくとも一つが、σp値がこの範囲の電子求引性基であれば、アゾ化合物の色相調整と光堅牢性及びオゾンガス堅牢性向上が可能であり、インクジェット記録黒インク用水溶性染料として使用する点で効果を得ることができる。
【0171】
、X、及びXはそれぞれ独立に水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、置換又は無置換のアルキルスルホニル基、置換又は無置換のアリールスルホニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基であることが好ましく、水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、メタンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ニトロ基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基であることがより好ましく、水素原子、イオン性親水性基、又はシアノ基であることが特に好ましい。
【0172】
更に、X、X、及びXの少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を表すことが好ましく、ハメットの置換基定数σp値の上限としては1.0以下の電子求引性基であり、X、及びXがイオン性水酸基であって、Xがハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を表すことがより好ましい。
【0173】
σp値が0.3以上の電子求引性基の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.3以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、又はセレノシアネート基が挙げられる。好ましくはシアノ基、メチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基であり、より好ましくはシアノ基、メチルスルホニル基、ニトロ基である。
【0174】
色相、着色力、水溶性の貯蔵安定性の観点から、上記の中でも、X、X、及びXの少なくとも一つはイオン性親水性基であることが好ましく、X、X、及びXの少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であることが好ましく、X3がハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であって、X、及びXがイオン性親水性基であることがより好ましい。イオン性親水性基としては、−SO又は−CO(Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)が好ましく、−SOがより好ましく、−SOLiが特に好ましい。
【0175】
一般式(1−3)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ホ)を含むものである。
【0176】
(イ)Gは窒素原子又は−C(R)=を表し、−C(R)=であることが好ましい。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表し、カルバモイル基(−CONH基)又はシアノ基であることが好ましく、シアノ基であることがより好ましい。
【0177】
(ロ)Y、Y、及びYはそれぞれ独立に、水素原子、置換又は無置換のヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のスルファモイル基、置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基のいずれかであることが好ましく、水素原子、置換又は無置換のアミノ基を置換基として有するヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基、置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、置換若しくは無置換のアシルアミノ基のいずれかであることがより好ましく、水素原子、置換又は無置換のアミノ基を置換基として有するヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアリールスルホニルアミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアシルアミノ基のいずれかであることが特に好ましい。アシルアミノ基としては、アルキルカルボニルアミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアルキルカルボニルアミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアリールカルボニルアミノ基が好ましい。該アルキルカルボニルアミノ基におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基が好ましく、エチル基がより好ましい。該アリールカルボニルアミノ基におけるアリール基としてはフェニル基が好ましい。
、及びYは水素原子を表し、Yは置換又は無置換のアミノ基を置換として有するヘテロ環アミノ基、イオン性親水性基を置換基として有するアリールスルホニルアミノ基、又はイオン性親水性基を置換基として有するアシルアミノ基であることが最も好ましい。
【0178】
(ハ)イオン性親水性基としては、−SO又は−CO(Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)が好ましく、−SOがより好ましく、−SOLiが特に好ましい。
【0179】
(ニ)前記M及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。
【0180】
(ホ)X、X、X、X、X、X、及びXはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基群Jのいずれかであることが好ましく、水素原子、イオン性親水性基、シアノ基、メタンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ニトロ基、メトキシカルボニル基、カルバモイル基であることがより好ましく、水素原子、イオン性親水性基、又はシアノ基であることが特に好ましい。X、X、X5及びXはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基群Jのいずれかであることが好ましく、更に、X、X、及びXの少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基を表すことが好ましく、Xがハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であって、X、及びXがイオン性親水性基であることがより好ましい。イオン性親水性基としては、−SO又は−CO(Mは水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)が好ましく、−SOがより好ましく、−SOLiが特に好ましい。
【0181】
この構造が好ましい要因としては、一般式(1−3)のアゾ化合物の水溶性が向上し、良好な色相と着色力及び高い保存安定性を両立することができるアゾ色素構造を電子的・立体的に付与することができることが挙げられる。
その結果、インク組成物としての貯蔵安定性が向上し、インクの要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、好ましい例となる。
【0182】
上記一般式(1−3)で表される化合物は、下記一般式(2−3)で表される化合物であることも好ましい。
【0183】
以下、一般式(2−3)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
【0184】
【化30】

【0185】
(一般式(2−3)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0186】
一般式(2−3)中のG、R、X〜X、及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(1−3)中のG、R、X〜X、及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0187】
一般式(2−3)中のR11、R12、R13、及びR14が表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、又はイオン性親水性基で置換されたアリール基であることがより好ましい。
11、R12において、一方が水素原子、他方が水素原子又はイオン性親水性基を有するアルキル基、アリール基が好ましい。R13、R14においても、一方が水素原子、他方が水素原子又はイオン性親水性基を有するアルキル基、アリール基が好ましい。
【0188】
特に、s-トリアジン環上のアミノ基の置換基(R11とR12)の一方が水素原子、他方がイオン性親水性基を有するアルキル基、又はアリール基で、(R13とR14)の一方が水素原子、他方がイオン性親水性基を有するアルキル基、又はアリール基の組み合わせとなることで、染料の水溶性と水溶性中での染料の会合性向上(染料分子の相互作用が向上)することで、着色組成物及びインクジェット用水溶性インクに要求される、水溶性インクの貯蔵安定性(色素の析出防止・色素の分解抑制)を大幅に向上させることができる点から好ましい。
【0189】
上記一般式(1)、(2−3)で表される化合物は、下記一般式(3−3)で表される化合物であることが好ましい。
以下、一般式(3−3)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
【0190】
【化31】

【0191】
(一般式(3−3)中、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0192】
一般式(3−3)中のX〜X、R11〜R14、及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(2−3)中のX〜X、R11〜R14、及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0193】
上記一般式(1)、(2−3)で表される化合物は、下記一般式(4−3)で表される化合物であることが好ましい。
以下、一般式(4−3)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
【0194】
【化32】

【0195】
(一般式(4−3)中、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、X5、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0196】
一般式(4−3)中のX〜X、R11〜R14、及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(2−3)中のX〜X、R11〜R14、及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0197】
一般式(2−3)、(3−3)及び(4−3)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ニ)を含むものである。
【0198】
(イ)R11〜R14が表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、又はイオン性親水性基で置換されたアリール基であることがより好ましい。
【0199】
(ロ)イオン性親水性基としては、−SO又は−COが好ましく、−SOがより好ましく、−SOLiが特に好ましい。
【0200】
(ハ)前記M及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。(ニ)X、X、及びXの少なくとも一つはイオン性親水性基であることが好ましく、X、X、及びXの少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であることが好ましく、Xがハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であって、X、及びXがイオン性親水性基であることがより好ましい。
【0201】
この構造が好ましい要因としては、一般式(2−3)、(3−3)、(4−3)のアゾ化合物の水溶性とインク組成物中のアゾ色素の会合性が著しく向上し、特にインク組成物中の高い貯蔵安定性向上することが挙げられる。
その結果、長期保存安定性が可能となり、インクの要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、好ましい例となる。
【0202】
上記一般式(1−3)で表される化合物は、下記一般式(2−4)で表される化合物であることも好ましい。
【0203】
以下、一般式(2−4)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
【0204】
【化33】

【0205】
(一般式(2−4)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Rは、1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0206】
一般式(2−4)中のG、X〜X、R及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(1−3)中のG、X〜X、R及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0207】
一般式(2−4)中のRが表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、ヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、アリール基であることがより好ましい。
【0208】
上記一般式(1−3)、(2−4)で表される化合物は、下記一般式(3−4)で表される化合物であることが好ましい。
【0209】
以下、一般式(3−4)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
【0210】
【化34】

【0211】
(一般式(3−4)中、Rは1価の置換基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0212】
一般式(3−4)中のM、R、及びX〜Xの例は、それぞれ独立に上記一般式(2−4)中のM、R、及びX〜Xの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0213】
一般式(2−4)及び(3−4)で表される化合物として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ニ)を含むものである。
【0214】
(イ)Rが表す1価の置換基としては、置換基群A’を挙げることができ、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、ヘテロ環基であることが好ましく、イオン性親水性基で置換されたアルキル基、アリール基であることがより好ましい。
【0215】
(ロ)イオン性親水性基としては、−SO又は−COが好ましく、−SOがより好ましく、−SOLiが特に好ましい。
【0216】
(ハ)前記M及びMはそれぞれ独立に、水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、一価のカウンターカチオンとしては、例えばアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩又はリチウム塩を主成分とする混合塩が更に好ましく、リチウム塩が最も好ましい。(ニ)X、X、及びXの少なくとも一つはイオン性親水性基であることが好ましく、X、X、及びXの少なくとも一つはハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であることが好ましく、Xがハメットのσp値が0.3以上の電子求引性基であって、X、及びXがイオン性親水性基であることがより好ましい。
【0217】
この構造が好ましい要因としては、一般式(2−4)及び(3−4)のアゾ化合物の水溶性とインク組成物中のアゾ色素の会合性が著しく向上し、特にインク組成物中の高い貯蔵安定性向上することが挙げられる。
その結果、長期保存安定性が可能となり、インクの要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、好ましい例となる。
【0218】
上記一般式(1−3)又は(2−4)で表される化合物は、下記一般式(4−4)で表される化合物であることが好ましい。
【0219】
以下、一般式(4−4)により表される化合物、又はその塩について詳細に説明する。
【0220】
【化35】

【0221】
(一般式(4−4)中、Rは、1価の置換基を表す。X、X、X、X、X、X及びXは、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0222】
一般式(4−4)中のR、X〜X及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(2−4)中のR、X〜X及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0223】
また、本発明は一般式(1)で表されるアゾ化合物にも関し、本発明のアゾ化合物を色素(着色剤)として用いたインク組成物は、染料や顔料などの色材とそれの分散剤(溶媒など)を含有する組成物を意味し、特に画像形成に好適に使用できる。
【0224】
【化36】

【0225】
(一般式(1)中、Aは置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素5員ヘテロ環基を表す。Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Y、Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y及びYは、互いに結合して環を形成しても良い。Y、Y及びYの全てが同時に水素原子を表すことはない。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0226】
一般式(1)中のG、A、R、Y、Y、Y及びMの例は、それぞれ独立に上述の一般式(1)中のG、A、R、Y、Y、Y及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0227】
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(3−1)で表されるアゾ化合物であることも好ましい。
【0228】
【化37】

【0229】
(一般式(3−1)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0230】
一般式(3−1)中のG、R、R11、R12、R13、R14、X、X、X、X、X5及びMの例は、それぞれ独立に上述の一般式(3−1)中のG、R、R11、R12、R13、R14、X、X、X、X、X5及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0231】
前記一般式(3−1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4−1)で表されるアゾ化合物であることが好ましい。
【0232】
【化38】

【0233】
(一般式(4−1)中、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0234】
一般式(4−1)中のR11、R12、R13、R14、X、X、X、X、X5及びMの例は、それぞれ独立に上述の一般式(4−1)中のR11、R12、R13、R14、X、X、X、X、X5及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0235】
前記一般式(4−1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(5)で表されるアゾ化合物であることが好ましい。
【0236】
【化39】

【0237】
(一般式(5)中、M、M、M、M、及びM5はそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表し、M、M、M、M、及びM5が一価のカウンターカチオンを表す場合は、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はアンモニウムイオンを表す。)
【0238】
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(6)で表されるアゾ化合物であることも好ましい。
【0239】
【化40】

【0240】
(一般式(6)中、X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y、及びYは、それぞれ独立に水素原子又は1価の置換基を表す。Y、Y及びYの全てが同時に水素原子を表すことはない。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0241】
一般式(6)中のX、X、X、X、X5及びMの例は、それぞれ独立に上記一般式(3−1)中のX、X、X、X、X5及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
一般式(6)中のY、Y、及びYの例は、それぞれ独立に上記一般式(1)中のY、Y、及びYの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0242】
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(7)で表されるアゾ化合物であることも好ましい。
【0243】
【化41】

【0244】
(一般式(7)中、X、X、X、X、及びX5はそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y、Yは、それぞれ独立に水素原子又は1価の置換基を表す。Y、Y及びYの全てが同時に水素原子を表すことはない。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0245】
一般式(7)中のY、Y、Y、X〜X及びMの例は、それぞれ独立に上述の一般式(6)中のY、Y、Y、X〜X及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0246】
前記一般式(1)及び(7)で表されるアゾ化合物は、下記式(8)で表されるアゾ化合物であることも好ましい。
【0247】
【化42】

【0248】
また、本発明は一般式(2−3)で表されるアゾ化合物にも関し、本発明のアゾ化合物を色素(着色剤)として用いたインク組成物は、染料や顔料などの色材とそれの分散剤(溶媒など)を含有する組成物を意味し、特に画像形成に好適に使用できる。
【0249】
【化43】

【0250】
(一般式(2−3)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0251】
一般式(2−3)中のG、R、R11、R12、R13、R14、X〜X及びMの例は、それぞれ独立に上述の一般式(2−3)中のG、R、R11、R12、R13、R14、X〜X及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0252】
前記一般式(2−3)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4−3)で表されるアゾ化合物であることが好ましい。
【0253】
【化44】

【0254】
(一般式(4−3)中、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0255】
一般式(4−3)中のR11、R12、R13、R14、X〜X及びMの例は、それぞれ独立に上述の一般式(4−3)中のR11、R12、R13、R14、X〜X及びMの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0256】
また、本発明は一般式(2−4)で表されるアゾ化合物にも関し、本発明のアゾ化合物を色素(着色剤)として用いたインク組成物は、染料や顔料などの色材とそれの分散剤(溶媒など)を含有する組成物を意味し、特に画像形成に好適に使用できる。
【0257】
【化45】

【0258】
(一般式(2−4)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Rは、1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0259】
前記一般式(2−4)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(3−4)で表されるアゾ化合物であることが好ましい。
【0260】
【化46】

【0261】
(一般式(3−4)中、Rは1価の置換基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0262】
前記一般式(2−4)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4−4)で表されるアゾ化合物であることも好ましい。
【0263】
【化47】

【0264】
(一般式(4−4)中、Rは、1価の置換基を表す。X、X、X、X、X、X及びXは、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【0265】
一般式(1)、(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)、(5)〜(7)、式(8)で表される化合物は、水を溶媒として測定した吸収スペクトルの最大吸収波長(λmax)が550nm以上700nm以下であることが好ましく、更に580nm〜650nmであることが特に好ましい。
また、本発明では、一般式(1)、(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)、(5)〜(7)、式(8)で表される化合物は少なくとも3つ以上のイオン性親水性基を有することが好ましい。より好ましくはイオン性親水性基を3〜6個有し、更に好ましくはイオン性親水性基を4〜5個有する。これにより本発明のアゾ化合物の水溶性、水溶液貯蔵安定性が向上し、インクジェット記録黒インク用水溶性染料としての要求性能を高いレベルで満足し更にインクジェット記録用インクとして使用した際のインクジェット印画物の画質を更に向上できる点という効果を奏する。
一般式(1)、(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)、(5)〜(7)、式(8)で表されるアゾ化合物において、少なくとも1つのMがリチウムイオンであることが好ましい。
また、本発明では、一般式(1)、(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)、(5)〜(7)、式(8)で表される化合物中に同位元素(例えば、2H、3H、13C、15N)を含有していても適用できる。
【0266】
以下に前記一般式(1)、(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)、(5)〜(7)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられる化合物は、下記の例に限定されるものではない。Mは水素原子又は一価のカウンターカチオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はアンモニウムイオン)を表す。
【0267】
【化48】

【0268】
【化49】

【0269】
【化50】

【0270】
【化51】

【0271】
【化52】

【0272】
【化53】

【0273】
【化54】

【0274】
【化55】

【0275】
【化56】

【0276】
一般式(1)で表される染料は複数種類のMが存在する混合塩の状態であってもよい。混合塩である場合、インク中に含まれる一般式(1)で表される染料が有するMのうち、モル分率で好ましくは50〜100%、より好ましくは80〜100%、その中でも特に90〜100%のMがLiイオンであることが好ましい。Liイオン以外のMとしては、Naイオン、NHイオンが好ましく、Naイオンがより好ましい。
【0277】
また、混合塩ではなく、インク中に含まれる一般式(1)で表される染料の全てのMがLiであることも好ましい。全てのMがLiであることにより、水溶液又はインク溶液中に溶解した分子分散状態において、イオン性親水性基であるカルボキシ基又はその塩(−COM)が解離して−COとMにイオン化した状態でカチオン種が交換することにより、より水溶液又はインク溶液に対して溶解性の低い塩の状態を形成して着色剤の塩の状態で析出することを抑制し易いといった効果が得られるためである。
一般式(1)で表される染料は、一般的な合成法で合成することが可能であり、例えば、ジアゾ成分とカプラーとのカップリング反応によって合成することができる。具体的には、特開2003−306623号公報や特開2005−139427号公報に記載の方法により合成することができる。
【0278】
(インク組成物)
本発明のインク組成物(本発明のインクともいう)は、前記一般式(1)で表される少なくとも1種の染料を水性媒体中に含有するものであり、好ましくは水性媒体中に溶解してなる。
一般式(1)で表される染料のインク組成物中での含有量は、インク組成物全量に対し、好ましくは、0.2〜20質量%であり、より好ましくは、0.5〜15質量%であり、更に好ましくは1〜10質量%である。当該染料を使用することで、得られた画像のにじみや色移りを抑制することができ、また良好な画像濃度を有する品質とすることができる。更に、一般的なアゾ染料に比して、光、熱、空気、水、薬品等に対する堅牢性すぐれるため、インク及び記録画像の保存安定性に寄与する。
また本発明のインク組成物は、インクジェット記録用インクとして用いられることが好ましい。すなわち、本発明は、本発明のインク組成物を含有するインクジェット記録用インクにも関する。インクジェット記録用インクにおける一般式(1)で表される染料の含有量は、上記インク組成物中における含有量と同様である。
本発明のインクジェット記録用インクは、インクジェット記録用インクの原液を水等により希釈して調製することができる。一般式(1)で表される染料のインクジェット記録用インク原液中への添加量は、広い範囲で使用可能であるが、インクジェット記録用インク原液全量に対し、好ましくは、1〜20質量%、より好ましくは、5〜15質量%である。また本発明のインクジェット記録用インクには、本発明のインク組成物が含有していてもよい後述の成分を同様に含ませることができる。
【0279】
本発明に用いられる上記ブラック染料は、優れたオゾンガスに対する強制褪色速度定数を有する。オゾンガスに対する強制褪色速度定数の測定は、当該インクのみを反射型受像媒体に印画して得られた画像の該インクの主分光吸収領域の色であってステータスAのフィルターを通して測定した反射濃度が0.90〜1.10の濃度の着色領域を初期濃度点として選択し、この初期濃度を開始濃度(=100%)とする。この画像を5mg/Lのオゾン濃度を常時維持するオゾン褪色試験機を用いて褪色させ、その濃度が初期濃度の80%となるまでの時間を測定し、この時間の逆数[hour−1]を求め、褪色濃度と時間関係が一次反応の速度式に従うとの仮定のもとに、褪色反応速度定数とする。したがって、求められる褪色速度定数は当該インクによって印画された着色領域の褪色速度定数であるが、本明細書では、この値をインクの褪色速度定数として用いる。
【0280】
試験用の印画パッチは、JISコード2223の黒四角記号を印字したパッチ、マクベスチャートの階段状カラーパッチ、そのほか測定面積が得られる任意の階段濃度パッチを用いることができる。
【0281】
測定用に印画される反射画像(階段状カラーパッチ)の反射濃度は、国際規格ISO5−4(反射濃度の幾何条件)を満たした濃度計によりステータスAフィルターを透過した測定光で求められた濃度である。
【0282】
オゾンガスに対する強制褪色速度定数測定用の試験チャンバーには、内部のオゾンガス濃度を定常的に5mg/Lに維持可能のオゾン発生装置(例えば乾燥空気に交流電圧を印可する高圧放電方式)が設けられ、曝気温度は25℃に調節される。
【0283】
なお、この強制褪色速度定数は、光化学スモッグ、自動車排気、家具の塗装面や絨毯などからの有機蒸気、明室の額縁内の発生ガスなどの環境中の酸化性雰囲気による酸化の受け易さの指標であって、オゾンガスによってこれらの酸化性雰囲気を代表させた指標である。
【0284】
本発明のインク組成物(好ましくはインクジェット記録用インク)には、前記一般式(1)で表されるアゾ染料とともに、しまりの良い好ましいブラックの画像を得る目的で、あるいは色調を整えるために他の染料を併用してもよい。併用することが出来る染料の例としては以下を挙げることができる。
【0285】
イエロー染料としては、例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類、開鎖型活性メチレン化合物類を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分として開鎖型活性メチレン化合物類を有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料などがあり、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。これらの染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてイエローを呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、更にはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
【0286】
マゼンタ染料としては、例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類を有するアゾメチン染料;例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、オキソノール染料のようなメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料、例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン系染料、例えばジオキサジン染料等のような縮合多環系染料等を挙げることができる。これらの染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてマゼンタを呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、更にはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
【0287】
シアン染料としては、例えばインドアニリン染料、インドフェノール染料のようなアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料のようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料、インジゴ・チオインジゴ染料を挙げることができる。これらの染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてシアンを呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、更にはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
また、ポリアゾ染料などのブラック染料も使用することができる。
【0288】
水溶性染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料等が挙げられる。好ましいものとしては、
C.I.ダイレクトレッド2、4、9、23、26、31、39、62、63、72、75、76、79、80、81、83、84、89、92、95、111、173、184、207、211、212、214、218、21、223、224、225、226、227、232、233、240、241、242、243、247
C.I.ダイレクトバイオレット7、9、47、48、51、66、90、93、94、95、98、100、101
C.I.ダイレクトイエロー8、9、11、12、27、28、29、33、35、39、41、44、50、53、58、59、68、86、87、93、95、96、98、100、106、108、109、110、130、132、142、144、161、163
C.I.ダイレクトブルー1、10、15、22、25、55、67、68、71、76、77、78、80、84、86、87、90、98、106、108、109、151、156、158、159、160、168、189、192、193、194、199、200、201、202、203、207、211、213、214、218、225、229、236、237、244、248、249、251、252、264、270、280、288、289、291
C.I.ダイレクトブラック9、17、19、22、32、51、56、62、69、77、80、91、94、97、108、112、113、114、117、118、121、122、125、132、146、154、166、168、173、199
C.I.アシッドレッド35、42、52、57、62、80、82、111、114、118、119、127、128、131、143、151、154、158、249、254、257、261、263、266、289、299、301、305、336、337、361、396、397
C.I.アシッドバイオレット5、34、43、47、48、90、103、126
C.I.アシッドイエロー17、19、23、25、39、40、42、44、49、50、61、64、76、79、110、127、135、143、151、159、169、174、190、195、196、197、199、218、219、222、227
C.I.アシッドブルー9、25、40、41、62、72、76、78、80、82、92、106、112、113、120、127:1、129、138、143、175、181、205、207、220、221、230、232、247、258、260、264、271、277、278、279、280、288、290、326
C.I.アシッドブラック7、24、29、48、52:1、172
C.I.リアクティブレッド3、13、17、19、21、22、23、24、29、35、37、40、41、43、45、49、55
C.I.リアクティブバイオレット1、3、4、5、6、7、8、9、16、17、22、23、24、26、27、33、34
C.I.リアクティブイエロー2、3、13、14、15、17、18、23、24、25、26、27、29、35、37、41、42
C.I.リアクティブブルー2、3、5、8、10、13、14、15、17、18、19、21、25、26、27、28、29、38
C.I.リアクティブブラック4、5、8、14、21、23、26、31、32、34
C.I.ベーシックレッド12、13、14、15、18、22、23、24、25、27、29、35、36、38、39、45、46
C.I.ベーシックバイオレット1、2、3、7、10、15、16、20、21、25、27、28、35、37、39、40、48
C.I.ベーシックイエロー1、2、4、11、13、14、15、19、21、23、24、25、28、29、32、36、39、40
C.I.ベーシックブルー1、3、5、7、9、22、26、41、45、46、47、54、57、60、62、65、66、69、71
C.I.ベーシックブラック8、
等が挙げられる。
【0289】
更に本発明のインクには、顔料も併用し得る。
本技術に用いられる顔料としては、市販のものの他、各種文献に記載されている公知のものが利用できる。文献に関してはカラーインデックス(The Society of Dyers and Colourists編)、「改訂新版顔料便覧」日本顔料技術協会編(1989年刊)、「最新顔料応用技術」CMC出版(1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版(1984年刊)、W.Herbst,K.Hunger共著によるIndustrial Organic Pigments (VCH Verlagsgesellschaft、1993年刊)等がある。具体的には、有機顔料ではアゾ顔料(アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料)、多環式顔料(フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、インジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等)、染付けレーキ顔料(酸性又は塩基性染料のレーキ顔料)、アジン顔料等があり、無機顔料では、黄色顔料のC.I.Pigment Yellow 34,37,42,53など、赤系顔料のC.I.Pigment Red 101,108など、青系顔料のC.I.Pigment Blue 27,29,17:1など、黒系顔料のC.I.Pigment Black 7,マグネタイトなど、白系顔料のC.I. Pigment White 4,6,18,21などを挙げることができる。
【0290】
画像形成用に好ましい色調を持つ顔料としては、青ないしシアン顔料ではフタロシアニン顔料、アントラキノン系のインダントロン顔料(たとえばC.I.Pigment Blue 60など)、染め付けレーキ顔料系のトリアリールカルボニウム顔料が好ましく、特にフタロシアニン顔料(好ましい例としては、C.I.Pigment Blue 15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6などの銅フタロシアニン、モノクロロないし低塩素化銅フタロシアニン、アルニウムフタロシアニンでは欧州特許860475号に記載の顔料、C.I.Pigment Blue 16である無金属フタロシアニン、中心金属がZn、Ni、Tiであるフタロシアニンなど、中でも好ましいものはC.I.Pigment Blue 15:3、同15:4、アルミニウムフタロシアニン)が最も好ましい。
【0291】
赤ないし紫色の顔料では、アゾ顔料(好ましい例としては、C.I.Pigment Red 3、同5、同11、同22、同38、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同49:1、同52:1、同53:1、同57:1、同63:2、同144、同146、同184)など、中でも好ましいものはC.I.Pigment Red 57:1、同146、同184)、キナクリドン系顔料(好ましい例としてはC.I.Pigment Red 122、同192、同202、同207、同209、C.I.Pigment Violet 19、同42、なかでも好ましいものはC.I.Pigment Red 122)、染め付けレーキ顔料系のトリアリールカルボニウム顔料(好ましい例としてはキサンテン系のC.I.Pigment Red 81:1、C.I.Pigment Violet 1、同2、同3、同27、同39)、ジオキサジン系顔料
(例えばC.I.Pigment Violet 23、同37)、ジケトピロロピロール系顔料(例えばC.I.Pigment Red 254)、ペリレン顔料(例えばC.I.Pigment Violet 29)、アントラキノン系顔料(例えばC.I.Pigment Violet 5:1、同31、同33)、チオインジゴ系(例えばC.I.Pigment Red 38、同88)が好ましく用いられる。
【0292】
黄色顔料としては、アゾ顔料(好ましい例としてはモノアゾ顔料系のC.I.Pigment Yellow 1,3,74,98、ジスアゾ顔料系のC.I.PigmentYellow 12,13,14,16,17,83、総合アゾ系のC.I.Pigment Yellow 93,94,95,128,155、ベンズイミダゾロン系のC.I.Pigment Yellow 120,151,154,156,180など、なかでも好ましいものはベンジジン系化合物を原料に使用しないもの)、イソインドリン・イソインドリノン系顔料(好ましい例としてはC.I.Pigment Yellow 109,110,137,139など)、キノフタロン顔料(好ましい例としてはC.I.Pigment Yellow 138など)、フラパントロン顔料(例えばC.I.Pigment Yellow 24など)が好ましく用いられる。
【0293】
黒顔料としては、無機顔料(好ましくは例としてはカーボンブラック、マグネタイト)やアニリンブラックを好ましいものとして挙げることができる。
この他、オレンジ顔料(C.I.Pigment Orange 13,16など)や緑顔料(C.I.Pigment Green 7など)を使用してもよい。
【0294】
本技術に使用できる顔料は、上述の裸の顔料であっても良いし、表面処理を施された顔料でも良い。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート、ジアゾニウム塩から生じるラジカルなど)を顔料表面に結合させる方法などが考えられ、次の文献や特許に記載されている。
(1) 金属石鹸の性質と応用(幸書房)
(2) 印刷インキ印刷(CMC出版 1984)
(3) 最新顔料応用技術(CMC出版 1986)
(4) 米国特許5,554,739号、同5,571,311号
(5) 特開平9−151342号、同10−140065号、同10−292143号、同11−166145号
特に、上記(4)の米国特許に記載されたジアゾニウム塩をカーボンブラックに作用させて調製された自己分散性顔料や、上記(5)の日本特許に記載された方法で調製されたカプセル化顔料は、インク中に余分な分散剤を使用することなく分散安定性が得られるため特に有効である。
【0295】
本発明においては、顔料は更に分散剤を用いて分散されていてもよい。分散剤は、用いる顔料に合わせて公知の種々のもの、例えば界面活性剤型の低分子分散剤や高分子型分散剤を用いることが出来る。分散剤の例としては特開平3−69949号、欧州特許549486号等に記載のものを挙げることができる。また、分散剤を使用する際に分散剤の顔料への吸着を促進するためにシナジストと呼ばれる顔料誘導体を添加してもよい。
本技術に使用できる顔料の粒径は、分散後で0.01〜10μmの範囲であることが好ましく、0.05〜1μmであることが更に好ましい。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造時に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、縦型あるいは横型のアジテーターミル、アトライター、コロイドミル、ボールミル、3本ロールミル、パールミル、スーパーミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、ダイナトロン、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986)に記載がある。
【0296】
〔防腐剤〕
次に、防腐剤について説明する。
本発明において、防腐剤とは微生物、特に細菌・真菌(カビ)の発生、発育を防止する機能を有するものを言う。
本発明に使用可能な防腐剤としては、種々のものが使用可能である。
【0297】
重金属イオンを含有する無機物系の防腐剤(銀イオン含有物など)や塩類をまず挙げることができる。有機系の防腐剤としては、第4級アンモニウム塩(テトラブチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド等)、フェノール誘導体(フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、キシレノール、ビスフェノール等)、フェノキシエーテル誘導体(フェノキシエタノール等)、複素環化合物(ベンゾトリアゾール、プロキセル(PROXEL)、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等)、アルカンジオール類(ペンチレングリコール(1,2−ペンタンジオール)、イソペンチルジオール(3−メチル−1,3−ブタンジオール)、ヘキサンジオール(1,2−ヘキサンジオール等)、カプリリルグリコール(1,2−オクタンジオール)等)、酸アミド類、カルバミン酸、カルバメート類、アミジン・グアニジン類、ピリジン類(ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド等)、ジアジン類、トリアジン類、ピロール・イミダゾール類、オキサゾール・オキサジン類、チアゾール・チアジアジン類、チオ尿素類、チオセミカルバジド類、ジチオカルバメート類、スルフィド類、スルホキシド類、スルホン類、スルファミド類、抗生物質類(ペニシリン、テトラサイクリン等)、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、及びその塩など種々のものが使用可能である。防腐剤として好ましくは複素環化合物、フェノール誘導体、フェノキシエーテル誘導体、及びアルカンジオール類からなる群より選ばれる防腐剤を少なくとも1種用いることが好ましい。また、防腐剤としては防菌防微ハンドブック(技報堂:1986)、防菌防黴剤事典(日本防菌防黴学会事典編集委員会編)等に記載のものも使用し得る。
【0298】
これらの化合物は油溶性の構造、水溶性の構造のものなど種々のものが使用可能であるが、好ましくは水溶性の化合物である。
本発明のインク組成物は、2種以上の防腐剤を含有してもよい。本発明では、これらの防腐剤を2種以上併用して使用すると、インク及び記録画像の保存安定性、特に色相安定性が向上し、またインクの長期間の経時における吐出安定性が格段に向上するなど、本発明の効果が更に良好に発揮される。これは、2種以上の防腐剤に菌が接触することにより、個々の防腐剤に対する菌の耐性獲得が抑制されるためであると考えられる。
2種以上の防腐剤を組み合わせる場合、それらの防腐剤は異なった化学構造の骨格を有するものであることが好ましい。また、2種以上の防腐剤を含有する場合には、少なくとも1種の防腐剤が、複素環化合物、フェノール誘導体、フェノキシエーテル誘導体、又はアルカンジオール類であることが好ましく、なかでも複素環化合物であることが好ましい。例えば、複素環化合物とフェノキシエーテル誘導体の組み合わせ、複素環化合物とフェノール誘導体との組み合わせ、複素環化合物とアルカンジオール類との組み合わせ等が好ましく挙げられる。
【0299】
更に、複素環化合物としては、チアゾール系化合物又はベンゾトリアゾール系化合物であることが好ましい。
チアゾール系化合物は、防腐剤のなかでも、特に防黴剤として機能する。チアゾール系化合物としては、ベンズイソチアゾリン、イソチアゾリン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−(チオシアノメチルチオ)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンズチアゾール及び3−アリルオキシ−1,2−ベンズイソチアゾール−1,1−オキシド等を挙げることができる。また、チアゾール系防黴剤としてアーチ・ケミカルズ(株)より製造販売されているProxel(商標)シリーズ(BDN,BD20,GXL,LV,XL2及びUltra10等)を使用することもできる。
【0300】
ベンゾトリアゾール系化合物は、防腐剤のなかでも、特に防錆剤として機能し、例えば、インクジェットヘッドを構成する金属材料(特に、42合金(42%ニッケルを含有するニッケル−鉄合金))がインクとの接触を原因の一つとする錆の発生を防止することができる。ベンゾトリアゾール系化合物としては、1H−ベンゾトリアゾール、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩等を挙げることができる。
【0301】
2種以上の防腐剤を組み合わせる場合の含有量比は、特に限定的ではないが、各防腐剤のそれぞれの含有量が、防腐剤の総含有量の1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。また各防腐剤のそれぞれの含有量が、防腐剤の総含有量の99質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましい。この値とすることで、それぞれの防腐剤の効果を効率的に得ることができ、また防腐剤間の相乗効果も得やすくなる。また、防腐剤の効果を維持しつつ、インクに触れた人、特に防腐剤に対して敏感な人が、かぶれ等を生じる可能性も低減できる。
【0302】
防腐剤のインク組成物中への添加量(防腐剤を2種以上添加する場合にはその総含有量)は広い範囲で使用可能であるが、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.005〜2.0質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。この値とすることで、防腐剤の効果をより効率的に得ることができ、また析出物の発生の危険性を抑えることができる。
本発明のインクジェット記録用インクは、前記インク組成物を原液として水等により、例えば2〜5倍に希釈して調製することができる。また水等による希釈の際に、防腐剤を追加で添加してもよい。防腐剤のインクジェット記録用インク中への添加量は、上記インク組成物中における添加量と同様である。
本発明のインク組成物又はインクジェット記録用インクにおいて、一般式(1)で表される染料の含有量に対する防腐剤の含有量の比(防腐剤/一般式(1)で表される染料)は、質量比で0.00001〜5であることが好ましく、0.00002〜0.5であることがより好まく、0.0001〜0.05であることが更に好ましい。
【0303】
〔界面活性剤〕
次に、本発明のインク組成物(好ましくはインクジェット記録用インク)が含有し得る界面活性剤について説明する。
本発明で使用される界面活性剤としては脂肪酸塩類、高級アルコールのエステル塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類、高級アルコールのリン酸エステル塩類等のアニオン界面活性剤、脂肪族アミン塩類、4級アンモニウム塩類等のカチオン界面活性剤、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、アセチレングリコール及びそのエチレンオキサイド付加物等のノニオン界面活性剤、アミノ酸型、ベタイン型等の両性界面活性剤、フッ素系、シリコン系化合物等が挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を用いることができる。
【0304】
本発明のインク組成物に界面活性剤を含有させ、表面張力等のインクの液物性を調整することで、インクの吐出安定性を向上させ、画像の耐水性の向上や印字したインクの滲みの防止などに優れた効果を持たせることができる。また、上記の界面活性剤は2種類以上併用してもよい。
本発明で用いるインク組成物は、界面活性剤を0.005〜5質量%含有することが好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%含有する。インク組成物中の界面活性剤の含有量が0.005〜5質量%の範囲にあると、吐出安定性の低下、混色時の滲みの発生、ひげ発生などの印字品質の低下が起こらず、吐出時、ノズル周辺部へのインクの付着等による印字不良を抑えることができる。
【0305】
本発明のインク組成物は、水性媒体中に前記染料を溶解させ、必要に応じて界面活性剤を特定量添加し、更に必要に応じてその他の添加剤を溶解及び/又は分散させることによって作製することができる。本発明における「水性媒体」とは、水又は水と少量の水混和性有機溶剤との混合物に、必要に応じて湿潤剤、安定剤等の添加剤を添加したものを意味する。
【0306】
本発明のインク液を調液する際には、水溶性インクの場合、まず水に溶解することが好ましい。そのあと、各種溶剤や添加物を添加し、溶解、混合して均一なインク液とする。
このときの溶解方法としては、攪拌による溶解、超音波照射による溶解、振とうによる溶解等種々の方法が使用可能である。なかでも特に攪拌法が好ましく使用される。攪拌を行う場合、当該分野では公知の流動攪拌や反転アジターやディゾルバを利用した剪断力を利用した攪拌など、種々の方式が利用可能である。一方では、磁気攪拌子のように、容器底面との剪断力を利用した攪拌法も好ましく利用できる。
【0307】
水性のインクジェット用インクの調製方法については、特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、特開2002−020657号、特開2002−060663号の各公報に詳細が記載されていて、本発明のインクジェット記録用インクの調製にも利用できる。
【0308】
本発明のインクは、一般式(1)で表される少なくとも1種の染料を、水性媒体中に含有してなり、更に少なくとも1種の防腐剤を含有してなるものである。水性媒体中には水混和性有機溶剤を含有してもよく、水性媒体中に含まれる水混和性有機溶剤は、使用される染料の25℃における溶解度が10(g/100g溶剤)以下のものが好ましい。ここで溶解度とは溶剤100g中にある一定の温度で溶解可能な溶質の質量を表し、単位は「g/100g溶剤である。
本発明の染料はその構造によって溶解性に多少変動があるが、本発明のインクは、染料種によってその溶解度が10(g/100g溶剤)以下となるような水混和性有機溶剤を適宜選択することが好ましい。
本発明の染料の25℃における溶解度は、より好ましくは8(g/100g溶剤)以下であり、更に好ましくは5(g/100g溶剤)以下である。
また、該水混和性有機溶剤は、少なくとも1種がアルコール及び/又はその誘導体含む2種以上からなる混合物であることが好ましい。水混和性有機溶剤の添加量は1〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜50質量%である。この値とすることで、インクの安定性、吐出安定性、乾燥性が良好となる傾向にある。
【0309】
前記水混和性有機溶剤の例は、以下のものが挙げられる。下記の中から本発明に適切な水混和性有機溶剤を選ぶことができる。
アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、
【0310】
エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、エチレン尿素(2−イミダゾリジノン)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン、ジアセトンアルコール)。なお、前記水混和性有機溶剤は、二種類以上を併用してもよい。
【0311】
本発明で併用する前記他の染料が油溶性染料の場合は、該油溶性染料を高沸点有機溶媒中に溶解させ、水性媒体中に乳化分散させることによって調製することができる。
用いられる高沸点有機溶媒の沸点は150℃以上であるが、好ましくは170℃以上である。高沸点有機溶媒は油溶性染料に対して質量比で0.01〜3倍量、好ましくは0.01〜1.0倍量で使用できる。
これらの高沸点有機溶媒は単独で使用しても、数種の混合で使用してもよい。
【0312】
本発明では油溶性性染料や高沸点有機溶媒は、水性媒体中に乳化分散して用いられる。乳化分散の際、乳化性の観点から場合によっては低沸点有機溶媒を用いることができる。低沸点有機溶媒としては、常圧で沸点約30℃以上150℃以下の有機溶媒である。
【0313】
乳化分散は、高沸点有機溶媒と場合によっては低沸点有機溶媒の混合溶媒に染料を溶かした油相を、水を主体とした水相中に分散し、油相の微小油滴を作るために行われる。この際、水相、油相のいずれか又は両方に、前述した界面活性剤、湿潤剤、染料安定化剤、乳化安定剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。乳化法としては水相中に油相を添加する方法が一般的であるが、油相中に水相を滴下して行く、いわゆる転相乳化法も好ましく用いることができる。
【0314】
本発明では以上の化合物のほかにインクジェット用記録インクとして用いる場合には、インクの噴射口での乾燥による目詰まりを防止するための乾燥防止剤、インクを紙により浸透させるための浸透促進剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、pH調整剤、消泡剤、キレート剤等の添加剤を適宜選択して適量使用することができる。
【0315】
本発明に使用される乾燥防止剤としては水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。
具体的な例としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチルー2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。これらのうちグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。また上記の乾燥防止剤は単独で用いても良いし2種以上併用しても良い。これらの乾燥防止剤はインク中に10〜50質量%含有することが好ましい。
【0316】
本発明に使用される浸透促進剤としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等も用いることができる。これらはインク中に10〜30質量%含有すれば充分な効果があり、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
【0317】
本発明で画像の保存性を向上させるために使用される紫外線吸収剤としては特開昭58−185677号公報,同61−190537号公報,特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
【0318】
本発明で画像の保存性を向上させるために使用される酸化防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的にはリサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
【0319】
本発明に使用される防錆剤としては例えば、酸性亜鉛硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、4硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が挙げられる。これらはインク中の0.02〜5.00質量%使用するのが好ましい。
【0320】
本発明に使用されるpH調整剤はpH調節、分散安定性付与などの点で好適に使用する事ができ、25℃でのインクのpHが8〜11に調整されているものである。pHが8未満である場合は染料の溶解性が低下してノズルが詰まりやすく、11を超えると耐水性が劣化する。pH調整剤としては、塩基性のものとして有機塩基、無機アルカリ等が、酸性のものとして有機酸、無機酸等が挙げられる。
前記有機塩基としてはトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンなどが挙げられる。前記無機アルカリとしては、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなど)、炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなど)、アンモニウムなどが挙げられる。また、前記有機酸としては酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、アルキルスルホン酸などが挙げられる。前記無機酸としては、塩酸,硫酸、リン酸などが挙げられる。
【0321】
本発明で用いるインクの表面張力は25℃において20〜50mN/m以下であることが好ましく、20〜40mN/m以下であることが更に好ましい。この値とすることで、吐出安定性、印字品質が良好となる傾向にあり、吐出時のノズル周辺部へのインクの付着等による印字不良を防止し易くなる。
【0322】
本発明に用いられるインクの粘度は30mPa・s以下が好ましい。更に20mPa・s以下に調整することがより好ましいので、粘度を調整する目的で、粘度調整剤が使用されることがある。粘度調整剤としては、例えば、セルロース類、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーやノニオン系界面活性剤等が挙げられる。更に詳しくは、「粘度調整技術」(技術情報協会、1999年)第9章、及び「インクジェットプリンタ用ケミカルズ(98増補)−材料の開発動向・展望調査−」(シーエムシー、1997年)162〜174頁に記載されている。
【0323】
更に本発明において、ポリマー微粒子分散物を用いることもできる。これらの詳細については特開2002−264490号公報に記載されている。
本発明では分散剤、分散安定剤として上述のカチオン、アニオン、ノニオン系の各種界面活性剤、消泡剤としてフッソ系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も必要に応じて使用することができる。
【0324】
本発明のインクは公知の被記録材、即ち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載されているインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に画像を形成するのに用いることができる。
【0325】
以下に本発明のインクを用いてインクジェットプリントをするのに用いられる記録紙及び記録フィルムについて説明する。記録紙及び記録フィルムおける支持体はLBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等をからなり、必要に応じて従来の公知の顔料、バインダー、サイズ剤、定着剤、カチオン剤、紙力増強剤等の添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機等の各種装置で製造されたもの等が使用可能である。これらの支持体の他に合成紙、プラスチックフィルムシートのいずれであってもよく、支持体の厚み10〜250μm、坪量は10〜250g/mが望ましい。支持体には、そのままインク受容層及びバックコート層を設けてもよいし、デンプン、ポリビニルアルコール等でサイズプレスやアンカーコート層を設けた後、インク受容層及びバックコート層を設けてもよい。更に支持体には、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置により平坦化処理を行ってもよい。本発明では支持体としては、両面をポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブテン及びそれらのコポリマー)でラミネートした紙及びプラスチックフイルムがより好ましく用いられる。ポリオレフィン中に、白色顔料(例、酸化チタン、酸化亜鉛)又は色味付け色素(例、コバルトブルー、群青、酸化ネオジウム)を添加することが好ましい。
【0326】
支持体上に設けられるインキ受容層には、顔料や水性バインダーが含有される。顔料としては、白色顔料がよく、白色顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、合成非晶質シリカ、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛等の無機白色顔料、スチレン系ピグメント、アクリル系ピグメント、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。インク受容層に含有される白色顔料としては、多孔性無機顔料がよく、特に細孔面積が大きい合成非晶質シリカ等が好適である。合成非晶質シリカは、乾式製造法(気相法)によって得られる無水珪酸及び湿式製造法によって得られる含水珪酸のいずれも使用可能であるが、特に含水珪酸を使用することが望ましい。これらの顔料は2種以上を併用しても良い。
【0327】
上記顔料を受像層に含有する記録紙としては、具体的には、特開平10−81064号、同10−119423号、同10−157277号、同10−217601号、同10−348409号、特開2001−138621号、同2000−43401号、同2000−211235号、同2000−309157号、同2001−96897号、同2001−138627号、特開平11−91242号、同8−2087号、同8−2090号、同8−2091号、同8−2093号、同8−174992号、同11−192777号、特開2001−301314号などに開示されたものを用いることができる。
【0328】
インク受容層に含有される水性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド誘導体等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。これらの水性バインダーは単独又は2種以上併用して用いることができる。本発明においては、これらの中でも特にポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコールが顔料に対する付着性、インク受容層の耐剥離性の点で好適である。
インク受容層は、顔料及び水性結着剤の他に媒染剤、耐水化剤、耐光性向上剤、耐オゾン性向上剤、界面活性剤、その他の添加剤を含有することができる。
【0329】
インク受容層中に添加する媒染剤は、不動化されていることが好ましい。そのためには、ポリマー媒染剤が好ましく用いられる。
ポリマー媒染剤については、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430号、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号の各明細書に記載がある。特開平1−161236号公報の212〜215頁に記載のポリマー媒染剤を含有する受像材料が特に好ましい。同公報記載のポリマー媒染剤を用いると、優れた画質の画像が得られ、かつ画像の耐光性が改善される。
【0330】
耐水化剤は、画像の耐水化に有効であり、これらの耐水化剤としては、特にカチオン樹脂が望ましい。このようなカチオン樹脂としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン、ポリエチレンイミン、ポリアミンスルホン、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、カチオンポリアクリルアミド等が挙げられる。これらのカチオン樹脂の含有量は、インク受容層の全固形分に対して1〜15質量%が好ましく、特に3〜10質量%であることが好ましい。
【0331】
耐光性向上剤、耐ガス性向上剤としては、フェノール化合物、ヒンダードフェノール化合物、チオエーテル化合物、チオ尿素化合物、チオシアン酸化合物、アミン化合物、ヒンダードアミン化合物、TEMPO化合物、ヒドラジン化合物、ヒドラジド化合物、アミジン化合物、ビニル基含有化合物、エステル化合物、アミド化合物、エーテル化合物、アルコール化合物、スルフィン酸化合物、糖類、水溶性還元性化合物、有機酸、無機酸、ヒドロキシ基含有有機酸、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物、ヘテロ環化合物、水溶性金属塩、有機金属化合物、金属錯体等が挙げられる。
これらの具体的な化合物例としては、特開平10−182621号、特開2001−260519号、特開2000−260519号、特公平4−34953号、特公平4−34513号、特公平4−34512号、特開平11−170686号、特開昭60−67190号、特開平7−276808号、特開2000−94829号、特表平8−512258号、特開平11−321090号等に記載のものが挙げられる。
【0332】
界面活性剤は、塗布助剤、剥離性改良剤、スベリ性改良剤あるいは帯電防止剤として機能する。界面活性剤については、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載がある。
界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。有機フルオロ化合物の例には、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれる。有機フルオロ化合物については、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭61−20994号、同62−135826号の各公報に記載がある。
【0333】
硬膜剤としては特開平1−161236号公報の222頁、特開平9−263036号、特開平10−119423号、特開2001−310547号、に記載されている材料等を用いることが出来る。
【0334】
その他のインク受容層に添加される添加剤としては、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、pH調整剤、マット剤、硬膜剤等が挙げられる。なお、インク受容層は1層でも2層でもよい。
【0335】
記録紙及び記録フィルムには、バックコート層を設けることもでき、この層に添加可能な成分としては、白色顔料、水性結着剤、その他の成分が挙げられる。バックコート層に含有される白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等が挙げられる。
【0336】
バックコート層に含有される水性バインダーとしては、スチレン/マレイン酸塩共重合体、スチレン/アクリル酸塩共重合体、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、デンプン、カチオン化デンプン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、スチレンブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン等の水分散性高分子等が挙げられる。バックコート層に含有されるその他の成分としては、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
【0337】
インクジェット記録紙及び記録フィルムの構成層(バック層を含む)には、ポリマーラテックスを添加してもよい。ポリマーラテックスは、寸度安定化、カール防止、接着防止、膜のひび割れ防止のような膜物性改良の目的で使用される。ポリマーラテックスについては、特開昭62−245258号、同62−1316648号、同62−110066号の各公報に記載がある。ガラス転移温度が低い(40℃以下の)ポリマーラテックスを媒染剤を含む層に添加すると、層のひび割れやカールを防止することができる。また、ガラス転移温度が高いポリマーラテックスをバック層に添加しても、カールを防止できる。
【0338】
本発明は、本発明に係るインクジェット記録用インクを用いるインクジェット記録方法にも関する。
本発明のインクはインクジェットの記録方式に制限はなく、公知の方式例えば静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等に用いられる。
インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
好ましい被記録材と記録方式の組み合わせは、支持体上に白色無機顔料粒子を含有する受像層を有する受像材料にインク滴を記録信号に応じて吐出させ、受像材料上に画像を記録するインクジェット記録方法である。
【0339】
本発明のインクジェット記録用インクは、インクジェット記録以外の用途に使用することもできる。例えば、ディスプレイ画像用材料、室内装飾材料の画像形成材料及び屋外装飾材料の画像形成材料などに使用が可能である。
【0340】
ディスプレイ画像用材料としては、ポスター、壁紙、装飾小物(置物や人形など)、商業宣伝用チラシ、包装紙、ラッピング材料、紙袋、ビニール袋、パッケージ材料、看板、交通機関(自動車、バス、電車など)の側面に描画や添付した画像、ロゴ入りの洋服、等各種の物を指す。本発明の染料をディスプレイ画像の形成材料とする場合、その画像とは狭義の画像の他、抽象的なデザイン、文字、幾何学的なパターンなど、人間が認知可能な染料によるパターンをすべて含む。
【0341】
室内装飾材料としては、壁紙、装飾小物(置物や人形など)、照明器具の部材、家具の部材、床や天井のデザイン部材等各種の物を指す。本発明の染料を画像形成材料とする場合、その画像とは狭義の画像の他、抽象的なデザイン、文字、幾何学的なパターンなど、人間が認知可能な染料によるパターンをすべて含む。
【0342】
屋外装飾材料としては、壁材、ルーフィング材、看板、ガーデニング材料屋外装飾小物
(置物や人形など)、屋外照明器具の部材等各種の物を指す。本発明の染料を画像形成材料とする場合、その画像とは狭義の画像ののみならず、抽象的なデザイン、文字、幾何学的なパターンなど、人間が認知可能な染料によるパターンをすべて含む。
【0343】
以上のような用途において、パターンが形成されるメディアとしては、紙、繊維、布(不織布も含む)、プラスチック、金属、セラミックス等種々の物を挙げることができる。染色形態としては、媒染、捺染、若しくは反応性基を導入した反応性染料の形で色素を固定化することもできる。この中で、好ましくは媒染形態で染色されることが好ましい。
【実施例】
【0344】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
【0345】
(合成例)
以下、実施例に本発明の染料混合物の調製法を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0346】
本発明に用いられる染料BLACK−11は、例えば下記合成ルートから誘導することができる。
【0347】
〔合成例1〕
BLACK−11(M:Li/Na≒70/30(mol/mol))の合成スキームを下記に示す。
【0348】
【化57】


【0349】
(1)中間体(B−5)の合成:
アミノアセトフェノン(a−2)8.5g、マロノニトリル4.9g、トルエン26.5mL、酢酸アンモニウム5.0g及び酢酸5.9gを室温で添加後、内温を100℃まで昇温して同温度で3時間撹拌した。反応液を40℃まで冷却後メタノール31.8mLを注加し、20分撹拌後に反応液を濾過した。イソプロピルアルコール42.4mLで洗浄し60℃で8時間乾燥した。(B−5)11.1gを得た。
【0350】
(2)中間体(C−5)の合成:
(B−5)8.0g、硫黄2.8g、炭酸水素ナトリウム7.4g、ジメチルアセトアミド160mL、アセトニトリル80mL及び水80mLを室温で混ぜた後、内温40℃まで昇温、同温度で1時間撹拌した。反応液を25℃まで冷却後、不溶物をろ過し、(C−5)を溶液状態で得た。
【0351】
(3)中間体(T−1)の合成:
アセトン100mLを内温0℃に冷却し塩化シアヌル18.4gを添加した。次に2,5−ジスルホアニリン27.5g、炭酸ナトリウム10.6gを95gの水に溶解させ、内温0以上4℃以下で30分かけて滴下した。内温0〜5℃で2.5時間撹拌後、メタノール200mL、イソプロピルアルコール200mLを内温5℃以下で滴下し、析出した不溶物をろ過した後、(T−1)の溶液状態で得た。
【0352】
(4)中間体(T−2)の合成:
上記(3)で得られた(T−1)を内温20℃に維持したまま(C−5)240.0gを滴下した。滴下後内温を30℃まで昇温して2.0時間撹拌した。イソプロピルアルコール2.3Lを内温30〜35℃で1時間かけて滴下した後、同温度で30分撹拌した。反応液をろ過、イソプロピルアルコールで洗浄、乾燥して(T−2)を24.0gで得た。
【0353】
(5)中間体(T−3)の合成:
タウリン8.0g及び炭酸ナトリウム6.8gを水650mLに室温で完溶させ、その溶液の中に(T−2)24.0gを粉体で添加した。内温を100℃まで昇温して同温度で1.5時間撹拌した。反応液を内温25℃まで冷却し、中間体(T−3)を溶液状態で得た。
【0354】
(6)中間体(f−6)の合成:
2−アミノベンゾニトリル(e−1)4.4gに水58mLを加え室温で撹拌し、12M塩酸水10.5mLを滴下後、反応液を内温0℃まで冷却した。内温を0〜4℃に保ちながら亜硝酸ナトリウム2.8gの25%水溶液を滴下し内温0〜5℃で1.5時間撹拌した。その後、尿素0.4gを加え15分撹拌しジアゾニウム塩溶液を得た。上記ジアゾニウム塩溶液とは別に、中間体(T−3)に水300mLを加え内温2℃まで冷却後、先ほど調整したジアゾニウム塩溶液を内温2〜4℃で15分かけて滴下した。内温を2〜4℃に保ち2時間撹拌後、(f−6)を溶液状態で得た。
【0355】
(7)BLACK−11の合成:
上記(6)で得られた(f−6)を室温で撹拌し、中間体(G)17.7gを水60mLに完溶させ滴下した。亜硝酸イソアミル4.5gを内温22℃で滴下し、同温度で30分撹拌した。その後更に亜硝酸イソアミル0.2gを滴下し内温22℃で2時間撹拌した。反応液を除塵ろ過し不溶物を除いた後、反応液にジメチルアセトアミド183mLを加え更にイソプロピルアルコール1.1Lを30分かけて滴下した。スラリー状の反応液をろ過しメタノール2Lで洗浄し粗(BLACK−11)を得た。
この粗体に水220mLを加え溶解しイソプロピルアルコール370mLを滴下し再度ろ過しウェットケーキを得た。このウェットケーキを水220mLに完溶させ、1N―水酸化リチウム水溶液を加えpH値を8.3(25℃)に調整した後、メタノール100mLを加え除塵ろ過をした。この溶液を内温40℃に昇温し同温度で、飽和LiClイソプロピルアルコール溶液300mLを滴下し、析出した結晶を濾過しウェット結晶を得た。得られたウェット結晶に水170mL、メタノール100mLを加え内温40℃で撹拌しながら飽和LiClイソプロピルアルコール溶液430mLを滴下し析出した結晶をろ別した。イソプロピルアルコール500mLで洗浄後、40℃で12時間乾燥し、精(BLACK−11)M:Li/Na≒70/30(mol/mol)を11.3gで得た。
【0356】
〔合成例2〕
BLACK−32(M:Li)の合成スキームを下記に示す。
【0357】
【化58】

【0358】
(1)中間体(B−11)の合成:
チオ尿素12.5gと水120mlの中に原料(A−11;和光純薬品)40gを添加し、70℃で5時間攪拌した。析出した結晶を濾別し、5%NaOH溶液400mlを加え、室温で3時間攪拌した後、濾過し、中間体(B−11)の黄色結晶を35.5g得た。
【0359】
(2)中間体(C−11)の合成:
還元鉄57.0g、塩化アンモニウム5.0g、水35ml及びイソプロピルアルコール250mlを30分還流し、中間体(B−11)22.0gを添加し、1時間還流攪拌した。濾過した後、濃縮し、中間体(C−11)の黄色結晶を15.0g得た。
【0360】
(3)中間体(D−11)の合成
中間体(C−11)9.6gをアセトン125mLに加え内温50℃で攪拌し溶解させた。氷浴で内温を4℃まで冷却後無水酢酸5.6gを15分で滴下した。室温まで昇温後、水50mLを添加し、アセトンを減圧下で留去した。結晶を濾別後50mLの水で2回洗浄し、80℃で6時間乾燥させ中間体(D−11)の白色結晶を9.9g得た。
【0361】
(4)中間体(F−11)の合成
中間体(E−11) 4.3gを水 43mLに添加し室温で攪拌した。12N塩酸 4.0mLを滴下後、内温4℃まで冷却した。そこへ亜硝酸ナトリウム 0.9gの水溶液 3mLを滴下し5℃以下で2時間攪拌した。その後、尿素 0.1gを加え内温4℃で15分撹拌しジアゾニウム溶液を得た。別途、中間体(D−11) 2.4gと酢酸リチウム 8.6gをメタノール55mLとジメチルアセトアミド 3.5mLに溶かし内温5℃以下まで冷却した。ジアゾニウム溶液を内温5℃以下で5分かけて滴下した。1.5時間撹拌した後、塩化リチウム 15.0gを添加し、続いてイソプロピルアルコール
150mLを滴下した。結晶を濾別後イソプロピルアルコール100mLで洗浄した。80℃で乾燥後、中間体(F−11)の茶色結晶を5.4g得た。
【0362】
(5)BLACK−32の合成
中間体(F−11) 5.0g、(G) 3.8g及び水 50mLの溶液を12N塩酸でpH2以下に調整し、内温35から40℃で亜硝酸イソアミル 1.5gを滴下した。内温40℃で4時間撹拌後、塩化リチウム 20gを添加し、続いてイソプロピルアルコール 25mL滴下した。内温25℃まで冷却し、結晶を濾別後、イソプロピルアルコール 50mLで洗浄した。この結晶を水60mLを添加し、内温40℃まで昇温後、イソプロピルアルコール 100mLを滴下した。内温25℃まで冷却後結晶を濾別した。得られた結晶を水 35mLに加え、pHが8.3となるように4mol/L水酸化リチウム水溶液を加えた。この溶液にイソプロピルアルコール 250mLを滴下し析出した結晶を濾別した。イソプロピルアルコール30mLで洗浄後、80℃で乾燥して(BLACK−32)(M:Li)の黒色結晶 2.7gを得た。
【0363】
〔合成例3〕
BLACK−31(M:Li)の合成スキームを下記に示す。
【0364】
【化59】

【0365】
(1)中間体(B−12)の合成:
p−アミノアセトフェノン(A−12;東京化成品) 20.3gをアセトニトリル 150mLに添加し、室温で攪拌することで完溶させた。続いて、ピリジン 13.4mLを添加し、氷浴下で内温を4℃に保った。無水酢酸 11.8gを滴下し、内温4℃で15分攪拌した。反応液に水 300mL、続いて12N塩酸を5mL添加し、結晶を濾別した。結晶を水 100mLで洗浄後、80℃で乾燥し中間体(B−12)の白色結晶を18.6g得た。
【0366】
(2)中間体(C−12)の合成:
ディーンスタークトラップを装着した100mL三つ口フラスコに、中間体(B−12)17.7g、マロノニトリル 7.3g、酢酸 4.6mL、酢酸アンモニウム 1.5gとトルエン 20mLを投入し、125℃のオイルバスで還流させた。1時間攪拌後、酢酸 4.6mLと酢酸アンモニウム 1.5gを追添し、還流条件で2時間攪拌した。放冷後、メタノール 30mL添加し、氷浴で30分攪拌した。結晶を濾別後、冷メタノール20mLで洗浄し乾燥させた。中間体(C−12)の白色結晶を12.1g得た。
【0367】
(3)中間体(D−12)の合成
中間体(C−12) 11.3gとエタノール 20mLの溶液に硫黄 1.5gを添加し、続いてトリエチルアミン6.6mLを滴下した。内温50℃で30分攪拌後、酢酸エチル500mLと水300mLを加え、振盪後、分液を実施した。有機層に食塩水200mLを加え振盪後分液し、有機層に硫酸マグネシウムを添加し乾燥させた。有機溶媒を留去後、イソプロパノールを50mL添加し、懸濁攪拌後に結晶を濾別した。80℃で乾燥後、中間体(D−12)の白色結晶 8.1gを得た。
【0368】
(4)中間体(F−12)の合成
中間体(E−11) 6.0gを水 60mLに加え室温で撹拌し、12N塩酸 5.6mLを滴下後、内温4℃まで冷却した。内温5℃以下で亜硝酸ナトリウム 1.3gの水溶液 4mLを滴下した。内温5℃以下で2時間攪拌した後に、尿素 0.1gを加え、15分撹拌しジアゾニウム溶液を得た。
別途、中間体(D−12) 3.4gと酢酸リチウム 12.0gをメタノール 90mLとジメチルアセトアミド 10mLに室温で溶解し、内温4℃まで冷却後、先のジアゾニウム溶液を内温5℃以下で15分滴下した。内温4℃以下で1.5時間撹拌した後、塩化リチウム 20.0g添加し、アセトニトリル 75mLを滴下した。結晶を濾別後、アセトニトリルで洗浄した。単離結晶をイソプロピルアルコール 75mLを用いて内温50℃で懸濁洗浄した。結晶を濾別後イソプロピルアルコールで洗浄した。80℃で乾燥後、中間体(F−12)の茶色結晶を6.4g得た。
【0369】
(5)BLACK−31(M:Li)の合成
中間体(F−12) 5.0gと(G) 3.7g及び水 50mLの溶液を12N塩酸水でpH2以下に調整し、内温35〜40℃で亜硝酸イソアミル 1.2gを滴下した。内温40℃で3時間撹拌後、塩化リチウム 50.0gを加え内温25℃まで冷却した。結晶を濾別後、イソプロピルアルコール 150mLで洗浄した。単離結晶をメタノール 200mLに加え内温40℃まで昇温後、アセトニトリル 800mLを滴下した。滴下後15分撹拌し、内温25℃まで冷却した。結晶を濾別後、水 150mLに加え、室温でイソプロピルアルコール 450mLを滴下した。結晶を濾別後、水 50mLに加え、pH8.3になるまで4mol/L水酸化リチウム水溶液を加えた。この溶液にイソプロピルアルコール 150mLを滴下し析出した結晶を濾別した。イソプロピルアルコール 50mLで洗浄後、80℃で乾燥し(BLACK−31)(M:Li)の黒色結晶4.3gを得た。
【0370】
BLACK−10は、BLACK−11の合成法に準じて合成することができる。
【0371】
また上述のようにして得られたBLACK−11(M:Li/Na≒70/30(mol/mol))を、Li塩型イオン交換樹脂(オルガノ社製、IR−120BをLi型にしたもの)を用いてBLACK−11(M:Li(すなわち、Mは全てLi))を得た。
【0372】
〔インク原液の調製〕
ブラック染料(BLACK−11)(M:Li/Na≒70/30(mol/mol))100gを超純水900gに室温で攪拌しながら溶解後、プロキセルXL2(フジフイルムイメージングカララント製、有効成分10質量%)(防腐剤)1g(すなわち、固形分(有効成分)として0.1g)を添加してこれらを完全に混合溶解した。引き続き、平均孔径0.2μmのメンブランフィルターを用いて不溶物のろ過を行い、インク原液Aを得た。
前記プロキセルXL2(チアゾール系の複素環化合物、フジフイルムイメージングカララント製)(防腐剤)を、下記表1に示すように変更した以外は、インク原液Aの調製と同様にして、インク原液B及びCを作製した。なお表1の防腐剤の欄における「フェノキシエタノール」はフェノキシエタノールを0.1g添加したことを意味し、「ペンチレングリコール」はペンチレングリコールを0.1g添加したことを意味する。
ブラック染料(BLACK−11)(M:Li/Na≒70/30(mol/mol))を、下記表1に示すように変更した以外は、インク原液Aの調製と同様にして、インク原液D〜I、比較用のインク原液102を作製した。
この際に、比較用のインク原液として、防腐剤を含有しない以外はインク原液Aの調製と同様にしてインク原液101を作製した。
【0373】
【表1】

【0374】
【化60】

【0375】
【化61】

【0376】
【化62】


【0377】
〔インク液の調製〕
上記で得られたインク原液Aを用い、以下の表2に記載の成分に超純水を加え1000gとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間攪拌溶解した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧ろ過しインク液1(ブラックインク)を調製した。
【0378】
〔実施例1:インク液1の組成〕
【0379】
【表2】

【0380】
【化63】

【0381】
〔実施例2〜18、比較例101及び102:インク液2〜18、101及び102の調製〕
インク原液及びインク液を調製する際に新たに添加する防腐剤の種類及び添加量を以下の表3に記載するように変更した以外は、インク液1と同様にしてインク液2〜18、101及び102(ブラックインク)をそれぞれ調製した。
【0382】
〔インク液2〜18、101及び102の組成〕
【0383】
【表3】

【0384】
(画像記録及び評価)
以上の本発明の実施例1〜18(インク液1〜18)及び比較例101(インク液101)、比較例102(インク液102)のインクジェット用インクについて、下記評価を行った。その結果を表4に示した。
なお、表4において、「にじみ」及び「色移り」は、各インクジェット用インクを、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置(商品名:PIXUS iP8600;キヤノン製)に搭載し、記録条件を、温度23℃、相対湿度55%、記録密度2,400dpi×1,200dpi、吐出量2.5pLとし、専用フィルムA(キャノン社製 フォト光沢フィルム HG201)に画像を記録した後で評価したものである。なお、試験に用いた専用フィルムAは、支持体上に白色無機顔料粒子を含有するインク受像層を有する記録媒体である。
また、表4において、「画像濃度」及び「画像の保存安定性」は、各インクジェット用インクを、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置(PIXUS iP8600;キヤノン社製)の黒インクカートリッジに装填し、画像ソフトAdobe社製PhotoshopElements3.0を使用してR=G=B=0からR=G=B=255までの256階調の白黒画像を作成し、白黒モードで写真用紙(キヤノン社製 キャノン写真用紙・光沢プロフェッショナル(PR201))に画像を記録した後、下記方法で評価したものである。
【0385】
<画像のにじみ及び色移りの評価>
前記画像を形成したフォト光沢フイルムを、1時間室温乾燥した後、10秒間脱イオン水に浸漬し、室温にて自然乾燥させ、滲みを観察した。滲みが少ないものをA、滲みが中程度のものをB、滲みが多いものをCとして、三段階で評価した。
また色移りを、連続6枚画像を記録し集積部に集積させ、全記録が終了後、記録フイルムの記録面に重なっていた記録フイルム裏面の色移りを観察した。色移りが無いものを○、1枚でも色移りがあるものを×で評価した。
【0386】
<画像濃度>
反射濃度計(X−Rite310TR)を用いて濃度が最高となる画像(画像データでR=G=B=0となる画像)を測定し、その濃度が2.0以上をA、1.6以上2.0未満をB、1.6未満をCとして評価をした。
【0387】
<インクの保存安定性評価>
インクジェット用インク100mLをガラス容器内に密閉し、60℃の恒温槽中に14日間放置した後、インク50mLを孔径0.2μmの親水性メンブランフィルタで濾過を行い、メンブランフィルタ上の析出物の有無を目視観察及び顕微鏡観察によって、以下の基準で評価した。
○・・・メンブランフィルタ上に析出物が存在しない
×・・・メンブランフィルタ上に析出物が存在する
またインク液1〜18、101及び102の調製で使用したインク原液A〜I、101及び102についても、同様に保存安定性を評価した。
【0388】
<画像の保存安定性評価>
画像の保存安定性については、キャノン写真用紙・光沢プロフェッショナル(PR201)に、印字濃度を変えたブラックのベタ画像印字サンプルを作成し、以下の評価を行った。
(1)光堅牢性は印字直後の画像濃度Ciを反射濃度計(X−Rite310TR)にて測定した後、アトラス社製ウェザーメーターを用い画像にキセノン光(8万5千ルックス)を10日照射した後、再び画像濃度Cfを測定し染料残存率(100×Cf/Ci)を求め評価を行った。染料残像率について反射濃度が0.5、1及び1.5の3点にて評価し、いずれの濃度でも染料残存率が70%以上の場合をA、2点が70%未満の場合をB、全ての濃度で70%未満の場合をCとした。
(2)熱堅牢性については、80℃15%RHの条件下に10日間、試料を保存する前後での濃度を、反射濃度計(X−Rite310TR)にて測定し染料残存率を求め評価した。染料残像率について反射濃度が0.5、1及び1.5の3点にて評価し、いずれの濃度でも染料残存率が90%以上の場合をA、2点が90%未満の場合をB、全ての濃度で90%未満の場合をCとした。
(3)オゾン(O)耐性については、前記画像を形成したフォト光沢フィルムを、オゾンガス濃度が0.5ppmに設定されたボックス内に7日間放置し、オゾンガス下放置前後の画像濃度を反射濃度計(X−Rite310TR)を用いて測定し、色素残存率として評価した。なお、前記反射濃度は、0.5、1及び1.5の3点で測定した。ボックス内のオゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。
【0389】
何れの濃度でも色素残存率が80%以上の場合をA、1又は2点が80%未満をB、全ての濃度で80%未満の場合をCとして、三段階で評価した。
【0390】
<吐出安定性>
吐出安定性については、上記で得られた各インクをインクジェット記録装置(商品名:PIXUS iP8600;キヤノン製)用のインクカートリッジに充填し、該カートリッジを前記インクジェット記録装置にセットし全ノズルからのインクの吐出を確認した後、A4 20枚出力し、以下の基準で評価した。
AA:印刷開始から終了まで印字の乱れが全く無し
A:印刷開始から終了まで印字の乱れが殆ど無し
B:印字の乱れのある出力が多数発生する
C:印刷開始から終了まで終始印字の乱れあり
この実験を、インク充填直後(吐出性A)と、インクカートリッジを40℃80%RHの条件下、2週間保存後(吐出性B)に行った。
【0391】
<防腐性能評価>
日水製薬(株)製の細菌検査用フードスタンプ(生菌数用及び真菌用)のキャップをとり、寒天培地面に充分なインクジェット用インクを塗布した。キャップをしないまま10時間放置することにより、菌の付着を促した。その後でキャップをし、生菌数用フードスタンプについては36℃の恒温槽中で2日間、真菌用フードスタンプについては23℃の恒温槽中で5日間、培養した。目視観察により、以下の基準にて評価を行った。
○・・・黴の発生なし
×・・・黴の発生あり
またインク液1〜18、101及び102の調製で使用したインク原液A〜I、101及び102についても、同様に防腐性能を評価した。
【0392】
以上で得られた結果を表4に示す。
【0393】
【表4】

【0394】
表4に示される結果より、本発明の実施例1〜18のインクをインクジェット記録に用いた場合、比較例101、102に比べ、得られる画像のにじみや色移りの防止に優れ、画像濃度などの画像品質が高く、インク及び得られる画像の保存安定性に優れ、吐出安定性及び防腐性にも優れていることが分かる。
特に実施例9(染料化合物としてBLACK−11(M:Li)を使用したインク)は、予想外にもその他のものと比較して、印画濃度が一段高く、より鮮明な黒色を呈した。
また実施例4、5、12〜15から、複数種の防腐剤を含有するインク液は吐出安定性に優れていた。
なお、画像のにじみ及び色移りの評価については、本発明において使用する受像紙をEPSON社製 写真用紙<光沢>(旧名称:PM写真用紙)、キャノン社製 PR−201(従来のPR−101に相当)に変更した場合でも上記結果と同様の効果が見られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアゾ化合物である少なくとも1種の染料を、水性媒体中に含有するインクであって、防腐剤を少なくとも1種含有する、インク組成物。
【化1】

(一般式(1)中、Aは置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素5員ヘテロ環基を表す。Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Y、Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y及びYは、互いに結合して環を形成しても良い。Y、Y及びYの全てが同時に水素原子を表すことはない。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(2−1)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【化2】


(一般式(2−1)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Aは置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素5員ヘテロ環基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)又は(2−1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(3−1)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインク組成物。
【化3】


(一般式(3−1)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【請求項4】
前記一般式(1)、(2−1)又は(3−1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4−1)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化4】


(一般式(4−1)中、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【請求項5】
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(2−2)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【化5】


(一般式(2−2)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Rは、1価の置換基を表す。Aは置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素5員ヘテロ環基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【請求項6】
前記一般式(1)又は(2−2)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(3−2)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項1又は5に記載のインク組成物。
【化6】


(一般式(3−2)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。Rは1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【請求項7】
前記一般式(1)、(2−2)又は(3−2)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4−2)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項1、5、6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化7】


(一般式(4−2)中、Rは、1価の置換基を表す。X、X、X、X、及びXは、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【請求項8】
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(1−3)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【化8】


(一般式(1−3)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y及びYはそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Y、Y及びYは、互いに結合して環を形成しても良い。Y、Y及びYの全てが同時に水素原子を表すことはない。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【請求項9】
前記一般式(1)又は(1−3)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(2−3)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項1又は8に記載のインク組成物。
【化9】


(一般式(2−3)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【請求項10】
前記一般式(1)、(1−3)又は(2−3)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(3−3)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項1、8、9のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化10】


(一般式(3−3)中、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【請求項11】
前記一般式(1)、(1−3)又は(2−3)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4−3)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項1、8、9のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化11】


(一般式(4−3)中、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【請求項12】
前記一般式(1)又は(1−3)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(2−4)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項1又は8に記載のインク組成物。
【化12】


(一般式(2−4)中、Gは窒素原子又は−C(R)=を表す。Rは、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、又はシアノ基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Rは、1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【請求項13】
前記一般式(1)、(1−3)又は(2−4)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(3−4)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項1、8、12のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化13】


(一般式(3−4)中、Rは1価の置換基を表す。X、X、X、X、X、X及びXはそれぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【請求項14】
前記一般式(1)、(1−3)又は(2−4)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(4−4)で表されるアゾ化合物であることを特徴とする請求項1、8、12のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化14】


(一般式(4−4)中、Rは、1価の置換基を表す。X、X、X、X、X、X及びXは、それぞれ独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。Mはそれぞれ独立に水素原子又は一価のカウンターカチオンを表す。)
【請求項15】
前記一般式(1)、(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)で表されるアゾ化合物が、少なくとも3つ以上のイオン性親水性基を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項16】
前記一般式(1)、(2−1)、(2−2)、(2−3)、(2−4)、(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)、(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)で表されるアゾ化合物において、少なくとも1つのMがリチウムイオンであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項17】
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物において、全てのMがリチウムイオンである、請求項1〜16のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項18】
2種以上の防腐剤を含有する、請求項1〜17のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項19】
各防腐剤のそれぞれの含有量が、防腐剤の総含有量の20質量%以上である、請求項18に記載のインク組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1種の防腐剤として、複素環化合物、フェノール誘導体、フェノキシエーテル誘導体、及びアルカンジオール類からなる群より選ばれる防腐剤を少なくとも1種含有する、請求項1〜19のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項21】
前記少なくとも1種の防腐剤が前記複素環化合物を含み、該複素環化合物がチアゾール系化合物又はベンゾトリアゾール系化合物である、請求項20に記載のインク組成物。
【請求項22】
前記防腐剤の総含有量が、0.01〜0.5質量%である、請求項1〜21のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載のインク組成物を含有するインクジェット記録用インク。
【請求項24】
請求項23に記載のインクジェット記録用インクを用いる、インクジェット記録方法。
【請求項25】
支持体上に白色無機顔料粒子を含有する受像層を有する受像材料にインク滴を記録信号に応じて吐出させ、受像材料上に画像を記録するインクジェット記録方法であって、インク滴が請求項23に記載のインクジェット記録用インクからなる、インクジェット記録方法。

【公開番号】特開2012−177080(P2012−177080A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145031(P2011−145031)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】