説明

インク組成物、インクセット及び画像形成方法

【課題】本発明は、インクの経時安定性及び硬化感度が良好なインク組成物である。
【解決手段】本発明は、顔料、水、重合性化合物、及び下記一般式(I)で表される化合物又はその塩を含むことを特徴とするインク組成物である。


(式中、Rは、2価の飽和もしくは芳香族炭化水素基又は複素環基を表し、R及びRは、各々独立に、1価の飽和もしくは不飽和炭化水素基又は複素環基を表し、Rはエチレン基又はプロピレン基を表す。Xは、スルホ基、ホスホン酸基、カルボキシル基又はアンモニウム基を表し、Yは、酸素原子又は硫黄原子を表す。nは、0〜10までの整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、インクセット及びこれを用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を記録する画像記録の方法として、インクジェット技術が知られている。インクジェット技術は、オフィスプリンタ、ホームプリンタ等の分野に適用されてきたが、近年では商業印刷分野での応用がなされつつある。
【0003】
そのインクジェットに用いられるインクとして、紫外線等の活性エネルギーによりインク組成物を硬化させて画像を形成させる活性エネルギー線硬化型水性インクが提供されている。このインクには、顔料、水、活性エネルギー線により重合する重合性化合物及び、当該重合性化合物の重合を開始させる重合開始剤等が含まれている。このうち、重合開始剤に着目すると、種々の重合開始剤又はインク組成物が提案されている(特許文献1〜4)。
例えば、特許文献1では、急速な光重合速度を行うために、α位に置換の芳香−脂肪族ケトンからなる不飽和化合物を光重合開始剤として含有する組成物が開示されている。特許文献2では、水溶性及び高い分子量を得る観点から、4−(2−ヒドロキシエチル)−フェニル2−ヒドロキシ−2−プロピルケトン等のフェノール系化合物が光開始重合剤として開示されている。特許文献3では、水溶性の観点から、2個以上の重合官能基及びアニオン性官能基を有するラジカル重合性物質と、アニオン性官能基を有する光開始重合剤とを含む水性硬化型樹脂組成物が開示されている。特許文献4では、無臭性等の観点から、連鎖移動基を有する光開始剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭54−99185号公報
【特許文献2】特公平7−2769号公報
【特許文献3】特開2002−187918号公報
【特許文献4】特表2002−544205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の各技術では、インクの経時安定性及び硬化感度のいずれについても検討がされておらず、まだ改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題に鑑みて鋭意検討した。その結果、特定構造を有する化合物を重合開始剤として含有するインクは、インクの経時安定性及び硬化感度が向上することを新たに見出し、本発明に至った。すなわち本発明は以下のインク組成物、インクセット、及び画像形成方法に関する。
【0007】
項1.顔料、水、重合性化合物、及び下記一般式(I)で表される化合物又はその塩を含むことを特徴とするインク組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Rは、2価の飽和もしくは芳香族炭化水素基又は複素環基を表し、R及びRは、各々独立に、1価の飽和もしくは不飽和炭化水素基又は複素環基を表し、Rはエチレン基又はプロピレン基を表す。Xは、スルホ基、ホスホン酸基、カルボキシル基又はアンモニウム基を表し、Yは、酸素原子又は硫黄原子を表す。nは、0〜10までの整数を表す。)
【0010】
項2.Yが酸素原子である、前記項1に記載のインク組成物。
項3.Rが2価の飽和炭化水素基である、前記項1又は2に記載のインク組成物。
項4.Rがヒドロキシル基で置換されていてもよいアルキレン基である、前記項3に記載のインク組成物。
項5.R及びRが1価の飽和炭化水素基である、前記項1〜4のいずれか1項に記載のインク組成物。
項6.R及びRがアルキル基である、前記項5に記載のインク組成物。
項7.Xがスルホ基、ホスホン酸基又はカルボキシル基である、前記項1〜6のいずれか1項に記載のインク組成物。
項8.Xがアンモニウム基である、前記項1〜6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0011】
項9.前記重合性化合物が(メタ)アクリルアミド構造を有する、前記項1〜8のいずれか1項に記載のインク組成物。
項10.樹脂粒子を含有する、前記項1〜9のいずれか1項に記載のインク組成物。
項11.界面活性剤を含有する、前記項1〜10のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0012】
項12.前記項1〜11のいずれか1項に記載のインク組成物と、当該インク組成物を凝集する処理液とからなるインクセット。
項13.前記処理液が、酸性化合物、多価金属塩又はカチオン性ポリマーから選ばれる前記項12に記載のインクセット。
項14.前記項12又は13のいずれか1項に記載の処理液を、記録媒体上に付与する処理液付与工程と、前記項1〜11のいずれか1項に記載のインク組成物をインクジェット法により記録媒体上に付与して画像を形成するインク付与工程と、を含む画像形成方法。
項15.前記記録媒体が塗工紙である前記項14に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インク経時安定性及び硬化感度に優れたインク組成物及びインクセットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の画像形成方法の実施に用いるインクジェット記録装置の構成例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のインク組成物、インクセット及びこれを用いた画像形成方法について詳細に説明する。
【0016】
<インク組成物>
本発明のインク組成物は、少なくとも顔料、水、重合性化合物、及び一般式(I)で表される化合物又はその塩を含んで構成されている。
【0017】
(一般式(I)で表される化合物又はその塩)
本発明のインク組成物は、下記一般式(I)で表される化合物又はその塩を含有することを特徴とする。下記化合物を、重合性化合物含有インク組成物に含ませることにより重合開始剤として働き、インク組成物に良好な経時安定性及び硬化感度を与えることができる。これは、上記化合物が、両端に水溶性基が存在するため均一にインク組成物に導入でき、さらに中央部分にビフェニル骨格を有するため効率的に活性エネルギーを吸収してラジカルを発生できると推測されるためである。ただし、本発明はこの推定メカニズムに限定されるものではない。
【0018】
本発明の化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0019】
【化2】

【0020】
は、2価の飽和もしくは芳香族炭化水素基又は複素環基を表す。好ましくは、2価の飽和炭化水素基である。これらの基は置換基を有してもよい。
【0021】
の2価の飽和炭化水素基の炭素数は限定的でないが、例えば1〜10程度であり、好ましくは1〜6である。直鎖構造であっても、分岐構造であっても、環状構造であってもよい。Rが飽和炭化水素基である場合、Rは−C2n−(アルキレン基)又は−Cn+22n+2−(シクロアルキレン基)であることが好ましい(ただし、nは1〜10の整数を表す)。特に、アルキレン基が好ましく、無置換、又は後述する置換基の中でもヒドロキシル基が置換されているアルキレン基が好ましい。
の2価の飽和炭化水素基としては、具体的には、−CH−、−C−、−C−、−C(CH)−、−C−、−C(CH)−、−C(CH)−、−C10−、−C1020−等のアルキレン基;−C10−、−C1018−等のシクロアルキレン基等が挙げられる。ヒドロキシル基で置換されているアルキレン基又はシクロアルキレン基の例としては、−CHCH(OH)CH−、−CCH(OH)C−、−C(OH)−等が挙げられる。
【0022】
の2価の芳香族炭化水素基の炭素数は限定的でないが、例えば6〜20程度であり、好ましくは6〜10である。
の芳香族炭化水素基としては、具体的には、−C−、−CH−C−CH−、−C−C−、−C−C−等の芳香族環(フェニレン、ナフチレン等)を有する基;等が挙げられる。
【0023】
の2価の複素環基としては、複素環を有している基であれば限定されない。複素環としては、例えば、5員環、6員環又は7員環であることが好ましい。5員環または6員環がさらに好ましく、6員環が最も好ましい。複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましい。複素環は、芳香族性複素環であることが好ましい。芳香族性複素環は、一般に不飽和複素環である。複素環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環が含まれる。これらの環には、後述の置換基を有していてもよく、また、上記アルキレン基等の2価の飽和もしくは不飽和炭化水素を介して結合していてもよい。
【0024】
及びRは、それぞれ独立に、1価の飽和もしくは不飽和炭化水素基、又は複素環基を表す。好ましくは、1価の飽和炭化水素基である。これらの基は置換基を有してもよい。
【0025】
及びRの1価の飽和炭化水素基の炭素数は限定的でないが、例えば1〜10程度であり、好ましくは1〜6であり、さらに好ましくは1〜3である。直鎖構造であっても、分岐構造であっても、環状構造であってもよい。R及びRの少なくとも一方が飽和炭化水素基である場合、−C2n+1(アルキル基)又は−Cn+22n+3(シクロアルキル基)で表されることが好ましく(ただし、nは1〜10の整数を表す。)、これらの中でも特にアルキル基が好ましい。
及びRの1価の飽和炭化水素基としては、具体的には、−CH、−C、−C、−CH(CH、−C、−CHCH(CH、−C11、−CCH(CH、−C1021等のアルキル基;−C11等のシクロアルキル基;等が挙げられる。
【0026】
及びRの1価の不飽和炭化水素基の炭素数は限定的でないが、例えば2〜20程度であり、好ましくは2〜10である。直鎖構造であっても、分岐構造であってもよい。また、環状構造であってもよく、さらには芳香族構造であってもよい。
及びRの1価の不飽和炭化水素基としては、具体的には、−CH=CH、−CH=CH−C等のアルケニル基;−C≡CH等のアルキニル基;−C−C、−C−C等の芳香族環(フェニレン、ナフチレン等)を有する基;等が挙げられる。
【0027】
及びRの1価の複素環基としては、複素環を有している基であれば限定はされず、複素環としては、例えば、5員環、6員環又は7員環であることが好ましい。5員環または6員環がさらに好ましく、6員環が最も好ましい。複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましい。複素環は、芳香族性複素環であることが好ましい。芳香族性複素環は、一般に不飽和複素環である。複素環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環が含まれる。これらの環には、後述の置換基を有していてもよく、また、上記アルキレン基等の2価の飽和もしくは不飽和炭化水素を介して結合していてもよい。
【0028】
上記1価または2価の基(R1、R及びR)は各々置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜11のアリールアルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、炭素数2〜7のアルキルオキシカルボニル基、炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数7〜11のアリールオキシカルボニル基、炭素数7〜11のアリールカルボニルオキシ基、炭素数1〜7のアルキルカルバモイル基、炭素数7〜11のアリールカルバモイル基等、複素環基等が挙げられる。複素環基としては、上述のR及びRの複素環基として例示したものと同様のものを挙げることができる。これらの中でも、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子がより好ましい。R及びRの少なくとも一方がこれらの置換基を有しその置換基に炭素が含まれる場合、その置換基の炭素数は、上記R及びRに記載の炭素数が1〜4のアルキル基の炭素数として含めないものとする。以下、本発明において、置換基を有する場合の炭素数の数え方はこれと同様とする。
はエチレン基又はプロピレン基を表す。プロピレン基は、n−プロピレン基であっても、イソプロピレン基(−CH(CH)−CH−又は−CH−CH(CH)−)であってもよい。好ましくは、エチレン基である。
Xは、スルホ基(−SOH基)、ホスホン酸基(−PO基)、カルボキシル基(−COOH基)、アンモニウム基を表す。アンモニウム基は、好ましくは−N(R3−kで表されるアルキルアンモニウム基である。Rは、好ましくは炭素数1〜6(特に好ましくは炭素数1〜4)のアルキル基等である。アルキル基は、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。kは0〜2までの整数(好ましくは0)である。なお、Rが複数ある場合、複数のRは、それぞれ同一でも異なっていても良い。具体的には、−NH(CH、−NCH、−N(CH3、−N(C等である。
【0029】
Yは、酸素原子又は硫黄原子を表し、好ましくは酸素原子である。
nは、0〜10までの整数を表し、より好ましくは、0〜2である。
ビフェニル骨格部分への置換位置は限定的でないが、例えば、3,3´、3,4´、4,3´、4、4´等が挙げられ、好ましくは4、4´に結合されていることが好ましい。
【0030】
一般式(I)の化合物は、本発明のインク組成物中に塩として存在していてもよい。
Xが、スルホ基、ホスホン酸基又はカルボキシル基である化合物である場合は、その塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、遷移金属塩、オニウム塩が挙げられる。具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩等が挙げられる。好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;アンモニウム塩である
Xがアンモニウム基である化合物である場合、この塩としては、例えば、ハロゲン化物、酸付加塩、水酸化物等が挙げられる。具体的には、フッ化イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化イオン等のハロゲン化物イオンとの塩; 塩酸、硝酸、硫酸、過酸化塩素塩等の無機酸、又は、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸等の有機酸との塩;水酸化物イオンとの塩等が挙げられる。好ましくは、ハロゲン化物イオンとの塩等である。
【0031】
本発明のインク組成物は、一般式(I)の中でも、特に下記一般式(II)で表される化合物又はその塩を使用することがより好ましい。
【0032】
【化3】

【0033】
一般式(I)の具体例の一例を下記に示すが、本発明は下記の具体例を使用するものに限られるものではない。
【0034】
【化4】

【0035】
【化5】



【0036】
【化6】

【0037】
上記一般式(I)の化合物は、公知の方法に準拠して製造することができる。例えば、下記中間体から好適に得ることができる。
【0038】
【化7】

【0039】
例えば、中間体を原料として、Xがスルホ基である化合物又はその塩を製造する場合は、中間体、スルトン、及びアルカリ金属アルコキシド若しくはアルカリ金属の水酸化物を反応させることにより得ることできる。スルトンとしては、例えば1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン等が挙げられる。アルカリ金属アルコキシドとしては例えばカリウムt−ブトキシド、水酸化ナトリウム等が挙げられる。具体的には、中間体1molに対し、スルトン1〜3mol及びアルカリ金属アルコキシド若しくはアルカリ金属の水酸化物1〜3molをアルコール溶媒等にて反応させればよい。
【0040】
Xがホスホン酸基である化合物またはその塩を製造する場合は、例えば中間体にジハロゲン化アルキルを反応させ、更に亜リン酸トリアルキルと反応させてアルキルホスホン酸エステルとした後、アルカリ金属の水酸化物などで加水分解することで製造することができる。
Xがカルボキシル基である化合物又はその塩を製造する場合は、中間体、及びハロゲン化脂肪族カルボン酸を反応させることにより得ることできる。ハロゲン化脂肪族カルボン酸としては、例えばブロモ酢酸等が挙げられる。具体的には、中間体1molに対し、ハロゲン化脂肪族カルボン酸を1〜3mol、アルコール溶媒等にて反応させればよい。
【0041】
Xがアンモニウム基である化合物又はその塩を製造する場合は、アルカリ金属の水酸化物の存在下、中間体及びグリシジルトリアルキルアンモニウムハライドを反応させることにより得ることできる。グリシジルアルキルアンモニウムハライドとしては、例えば、グリシジルトリ(C1−6)アルキルアンモニウムクロリド等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。具体的には、中間体1molに対し、グリシジルトリアルキルアンモニウムハライド1〜3mol及び水酸化アルカリをアルコール溶媒等にて反応させればよい。その他、中間体にジハロゲン化アルキルを反応させた後、アミンを反応させることによっても製造することができる。
これらは、例えば特公平7−2769号公報等を参考にしても製造することが可能である。
なお、上記中間体の一例としては、例えば下記の工程により得ることができる。
【0042】
【化8】

【0043】
本発明におけるインク組成物における上記一般式(I)の化合物の含有量は、0.1〜30質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜20質量%の範囲であることがより好ましく、1.0〜15質量%の範囲であることがさらに好ましい。
なお、本発明のインク組成物は、上記化合物以外の公知又は市販の重合開始剤を併用してもよい。
【0044】
(重合性化合物)
本発明におけるインク組成物は、重合性化合物を少なくとも1種含有する。本発明の重合性化合物は熱又は活性エネルギー線のいずれによって重合してもよいが、本発明では特に、活性エネルギー線(例えば、放射線、紫外光、可視光又は電子線など)が照射されることにより重合する重合性化合物が好ましい。
【0045】
本発明の重合性化合物は水溶性又は非水溶性の限定はないが、水溶性の化合物であることが好ましい。水溶性とは、水に一定濃度以上溶解できることをいい、水性のインク中に(望ましくは均一に)溶解し得るものであればよい。また、後述する水溶性有機溶剤を添加することにより溶解度が上がってインク中に(望ましくは均一に)溶解するものであってもよい。具体的には、25℃の水に対する溶解度が5質量%以上であることが好ましく、10質量以上であることがより好ましい。
活性エネルギー線により重合する重合性化合物としては、硬化感度向上、インク経時安定性の観点から、分子内に(メタ)アクリルアミド構造又は(メタ)アクリルエステル構造を有する重合性化合物を使用することが好ましい。特に好ましくは、分子内に(メタ)アクリルアミド構造を有する重合性化合物を使用することが好ましい。ここで、(メタ)アクリルエステル構造とは、メタクリルエステル構造又はアクリルエステル構造の少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリルアミド構造とは、メタクリルアミド構造又はアクリルアミド構造の少なくとも一方を意味するものとする。
【0046】
分子内に(メタ)アクリルアミド構造を有する重合性化合物は、例えば、式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0047】
【化9】

【0048】
一般式(1)中、Qはk価の連結基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。また、kは1以上の整数を表す。
【0049】
式(1)の化合物は不飽和ビニル単量体が、アミド結合により連結基Qに結合したものである。Rは、水素原子またはメチル基を表し、好ましくは水素原子である。連結基Qの価数kに制限はないが、重合効率、吐出安定性を向上させる観点から、k=2以上が好ましく、k=2以上6以下がより好ましく、k=2以上4以下がさらに好ましい。
【0050】
また、連結基Qは(メタ)アクリルアミド構造と連結可能な基であれば特に制限はないが、一般式(1)で表される化合物が前述の水溶性を満たすような連結基から選択されることが好ましく、具体的には以下の化合物群Xから1以上の水素原子またはヒドロキシル基が除去された残基を挙げることができる。
【0051】
−化合物群X−
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール,2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、チオグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びこれらの縮合体、低分子ポリビニルアルコール、または糖類などのポリオール類;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンジアミン、などのポリアミン類。
【0052】
さらに、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン基等の炭素数4以下の置換又は無置換のアルキレン鎖、更にはピリジン環、イミダゾール環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環などの飽和もしくは不飽和のヘテロ環を有する官能基などを例示することができる。
【0053】
連結基Qとしては、これらの中でも、オキシアルキレン基(好ましくは、オキシエチレン基)を含むポリオール類の残基であることが好ましく、オキシアルキレン基(好ましくは、オキシエチレン基)を3以上含むポリオール類の残基であることが特に好ましい。
【0054】
前記分子内に(メタ)アクリルアミド構造を有する水溶性の重合性化合物の具体例としては、例えば以下に示す水溶性の重合性化合物を挙げることができる。
【0055】
【化10】

【0056】
【化11】

【0057】
【化12】

【0058】
【化13】

【0059】
【化14】

【0060】
【化15】

【0061】
【化16】

【0062】
分子内に(メタ)アクリルエステル構造を有する重合性化合物は、例えば、一般式(2)で表される化合物である化合物であることが好ましい。
【0063】
【化17】

【0064】
一般式(2)中、Q’はm価の連結基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。また、mは1以上の整数を表す。
【0065】
式(2)の化合物は不飽和ビニル単量体が、アミド結合により連結基Q’に結合したものである。Rは、水素原子またはメチル基を表し、好ましくは水素原子である。連結基Q’の価数mに制限はないが、重合効率、吐出安定性を向上させる観点から、m=2以上が好ましく、m=2以上6以下がより好ましく、m=2以上4以下がさらに好ましい。
【0066】
また、連結基Q’は(メタ)アクリル構造と連結可能な基であれば特に制限はないが、一般式(2)で表される化合物が前述の水溶性を満たすような連結基から選択されることが好ましい。具体的には、上記一般式(1)で例示したのと同様のもの、例えば、上記化合物群Xから1以上の水素原子またはヒドロキシル基が除去された残基を挙げることができる。好ましい例示についても、上記連結基Qと同様のものが挙げられる。
前記分子内に(メタ)アクリルエステル構造を有する水溶性の重合性化合物の具体例としては、例えば以下に示す水溶性の重合性化合物を挙げることができる。
【0067】
【化18】

【0068】
また、多水酸基化合物から誘導される1分子中に2以上のアクリロイル基を有するアクリル酸エステル、も用いることができる。前記多水酸基化合物としては、例えば、グリコール類の縮合物、オリゴエーテル、オリゴエステル類等が挙げられる。
【0069】
更に、ノニオン性の重合性化合物としては、単糖類、2糖類などの2以上の水酸基を有するポリオールの(メタ)アクリル酸エステル又は;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリスヒドロキシアミノメタン、トリスヒドロキシアミノエタン等との(メタ)アクリル酸エステル、も好適である。
【0070】
さらに、前記分子内に(メタ)アクリルエステル構造を有する水溶性の重合性化合物の具体例としては、例えば以下に示すカチオン性化合物を挙げることができるが、本願はこれに限定されない。
【0071】
【化19】

【0072】
前記構造において、Rは、ポリオールの残基を表す。また、Xは、H又はCHを表し、AはCl、HSO又はCHCOOを表す。このポリオールを導入するための化合物としては、例えば、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、脂環型ビスフェノールA及びこれらの縮合物等を挙げることができる。さらに、カチオン基を有する重合性化合物として以下の構造(カチオン性化合物1〜11)も挙げることができる。
【0073】
【化20】

【0074】
【化21】

【0075】
【化22】

【0076】
【化23】

【0077】
上記重合性化合物以外にも、例えば、下記に代表されるマレイミド構造を有する化合物、スルファミド構造を有する化合物、N−ビニルアセトアミドを有する化合物等も使用することができる。
【0078】
【化24】

【0079】
【化25】

【0080】
重合性化合物は、1種単独又は2種以上を組み合わせて含有することができる。
重合性化合物のインク組成物中における含有量としては、インク組成物全質量に対して、3〜50質量%が好ましく、10〜30質量%が更に好ましく、15〜25質量%が最も好ましい。
【0081】
(顔料)
本発明におけるインク組成物は、顔料を少なくとも一種を含有する。顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。顔料は、水に殆ど不溶であるか又は難溶である顔料であることが、インク着色性の点で好ましい。
【0082】
本発明における顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知の有機および無機顔料を用いることができる。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
【0083】
また前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
【0084】
本発明に用いることができる顔料として具体的には、例えば、下記の顔料などが挙げられる。
オレンジ又はイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
【0085】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0086】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7、米国特許4311775記載のシロキサン架橋アルミニウムフタロシアニン等が挙げられる。
【0087】
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
【0088】
上記の顔料は、1種単独で使用してもよく、また、上記した各群内もしくは各群間より複数種を選択して組み合わせて使用してもよい。
顔料のインク組成物中における含有量としては、色濃度、粒状性、インク安定性、吐出信頼性の観点から、インク組成物の全質量に対して、1〜25質量%となる量が好ましく、2〜20質量%となる量がより好ましい。
【0089】
(水)
本発明におけるインク組成物は水を含み、必要に応じて後述する水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含んで構成される。
本発明における水としては、イオン交換水、蒸留水などのイオン性不純物を含まない水を用いることが好ましい。また、インク組成物における水の含有率は、目的に応じて適宜選択されるが、通常、10〜95質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましい。
【0090】
(水溶性有機溶剤)
本発明におけるインク組成物は、水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含有していてもよい。
水溶性有機溶剤の例としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルカンジオール(多価アルコール類);糖アルコール類;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0091】
乾燥防止の目的としては、多価アルコール類が有用であり、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0092】
浸透促進の目的としては、ポリオール化合物が好ましく、脂肪族ジオールが好適である。脂肪族ジオールとしては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが好ましい例として挙げることができる。
【0093】
本発明における水溶性有機溶剤としては、下記構造式(1)で表される化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0094】
【化26】

【0095】
構造式(1)において、l、m、およびnは、それぞれ独立に1以上の整数を表し、l+m+n=3〜15を満たし、l+m+nは3〜12の範囲が好ましく、3〜10の範囲がより好ましい。l+m+nの値は、3以上であると良好なカール抑制力を示し、15以下であると良好な吐出性が得られる。構造式(1)中、AOは、エチレンオキシ(EO)および/又はプロピレンオキシ(PO)を表し、中でもプロピレンオキシ基が好ましい。前記(AO)、(AO)、および(AO)における各AOはそれぞれ同一でも異なってもよい。
以下、前記構造式(1)で表される化合物の例を示す。但し、本発明はこれに限定されるものではない。尚、例示化合物中、「POP(3)グリセリルエーテル」との記載は、グリセリンにプロピレンオキシ基が合計で3つ結合したグリセリルエーテルであることを意味し、他の記載についても同様である。
【0096】
【化27】

【0097】
さらに本発明における水溶性有機溶剤は、記録媒体におけるカール発生抑制の点から、以下に例示する水溶性有機溶剤であることもまた好ましい。
・n−CO(AO)−H(AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:1)
・n−CO(AO)10−H AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:1)
・HO(AO)40−H(AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:3)
・HO(AO)55−H(AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=5:6)
・HO(PO)−H
・HO(PO)−H
・1,2−ヘキサンジオール
【0098】
本発明において水溶性有機溶剤は、1種単独で使用しても、2種類以上混合して使用してもよい。
水溶性有機溶剤のインク中における含有量としては、60質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下である。
【0099】
(分散剤)
前記顔料は、分散剤によって水系溶媒に分散された着色粒子を構成していることが好ましい。前記分散剤としては、ポリマー分散剤でも低分子の界面活性剤型分散剤でもよい。また、ポリマー分散剤としては水溶性ポリマー分散剤でも水不溶性ポリマー分散剤の何れでもよい。
本発明においては、分散安定性とインクジェット方式に適用した場合の吐出性の観点から、水不溶性ポリマー分散剤であることが好ましい。
【0100】
−水不溶性ポリマー分散剤−
本発明における水不溶性ポリマー分散剤(以下、単に「分散剤」ということがある)としては、水不溶性のポリマーであって、顔料を分散可能であれば特に制限は無く、従来公知の水不溶性ポリマー分散剤を用いることができる。水不溶性ポリマー分散剤は、例えば、疎水性の構成単位と親水性の構成単位の両方を含んで構成することができる。
【0101】
前記疎水性の構成単位を構成するモノマーとしては、スチレン系モノマー、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また前記親水性構成単位を構成するモノマーとしては、親水性基を含むモノマーであれば特に制限はない。前記親水性基としては、ノニオン性基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を挙げることができる。尚、ノニオン性基としては、水酸基、(窒素原子が無置換の)アミド基、アルキレンオキシド重合体(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等)に由来する基、糖アルコールに由来する基等が挙げられる。
本発明における親水性構成単位は、分散安定性の観点から、少なくともカルボキシル基を含むことが好ましく、ノニオン性基とカルボキシル基を共に含む形態であることもまた好ましい。
【0102】
本発明における水不溶性ポリマー分散剤として、具体的には、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。ここで「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
【0103】
本発明において水不溶性ポリマー分散剤としては、顔料の分散安定性の観点から、カルボキシル基を含むビニルポリマーであることが好ましく、疎水性の構成単位として少なくとも芳香族基含有モノマーに由来する構成単位を有し、親水性の構成単位としてカルボキシル基を含む構成単位を有するビニルポリマーであることがより好ましい。
【0104】
また前記水不溶性ポリマー分散剤の重量平均分子量としては、顔料の分散安定性の観点から、3,000〜200,000が好ましく、より好ましくは5,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜60,000である。
【0105】
着色粒子における分散剤の含有量は、顔料の分散性、インク着色性、分散安定性の観点から、顔料に対し、分散剤が10〜100質量%であることが好ましく、20〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。前記着色粒子中の分散剤の含有量が、上記範囲であることにより、顔料が適量の分散剤で被覆され、粒径が小さく経時安定に優れた着色粒子を得やすい傾向となり好ましい。
【0106】
前記着色粒子は、前記水不溶性ポリマー分散剤に加えて、その他の分散剤を含んでいてもよい。例えば、従来公知の水溶性低分子分散剤や、水溶性ポリマー等を用いることができる。前記水不溶性ポリマー分散剤以外の分散剤の含有量は、前記分散剤の含有量の範囲内で用いることができる。
【0107】
着色粒子は、分散安定性と吐出性の観点から、前記顔料および前記水不溶性ポリマー分散剤を含んで構成されていることが好ましく、顔料の表面の少なくとも一部が水不溶性ポリマー分散剤で被覆されて構成されていることが好ましい。かかる着色粒子は、例えば、顔料、分散剤、必要に応じて溶媒(好ましくは有機溶剤)等を含む混合物を、分散機により分散することで着色粒子分散物として得ることができる。
【0108】
前記着色粒子分散物は、例えば、前記顔料と前記水不溶性ポリマー分散剤と該分散剤を溶解または分散する有機溶剤との混合物に、塩基性物質を含む水溶液を加える工程(混合・水和工程)の後、前記有機溶剤を除く工程(溶剤除去工程)を設けて分散物として製造することができる。これにより、着色粒子が微細に分散され、保存安定性に優れた着色粒子の分散物を作製することができる。
【0109】
本発明において着色粒子の体積平均粒径としては、5〜200nmが好ましく、5〜150nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。体積平均粒径が200nm以下であることで色再現性が良好になり、インクジェット方式の場合には打滴特性が良好になる。また、体積平均粒径が5nm以上であることで、耐光性が良好になる。
また、着色粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ着色剤を、2種以上混合して使用してもよい。
尚、着色粒子の体積平均粒径および粒径分布は、分散状態での顔料の体積平均粒子径及び粒径分布は、Micorotrac粒度分布測定装置(Version 10.1.2−211BH(商品名)、日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により求められるものである。
本発明において、上記着色粒子は1種単独で、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0110】
(樹脂粒子)
本発明におけるインク組成物は、必要に応じて樹脂粒子を含有することができる。
また樹脂粒子は、既述の処理液又はこれを乾燥させた紙領域と接触した際に凝集、又は分散不安定化してインクを増粘させることにより、インク組成物、すなわち画像を固定化させる機能を有することが好ましい。このような樹脂粒子は、水および有機溶剤の少なくとも1種に分散されているものが好ましい。
【0111】
樹脂粒子としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素系樹脂等あるいはそのラテックスを用いることができる。アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂を好ましい例として挙げることができる。
また樹脂粒子はラテックスの形態で用いることもできる。
【0112】
樹脂粒子の重量平均分子量は1万以上、20万以下が好ましく、より好ましくは2万以上、20万以下である。重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算で測定される。
また樹脂粒子の体積平均粒径は、1nm〜1μmの範囲が好ましく、1〜200nmの範囲がより好ましく、1〜100nmの範囲が更に好ましく、1〜50nmの範囲が特に好ましい。
樹脂粒子の酸価は、処理液が接触したときの凝集性が良好である観点から、70mgKOH/g以下が好ましい。更には、該酸価は、25〜70mgKOH/gがより好ましく、30〜70mgKOH/gが更に好ましい。
樹脂粒子のガラス転移温度Tgは30℃以上であることが好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
【0113】
樹脂粒子の添加量はインクに対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%がさらに好ましい。
また、樹脂微子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つ樹脂粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
【0114】
(界面活性剤)
本発明におけるインク組成物は、必要に応じて、界面活性剤の少なくとも1種を含むことができる。界面活性剤は、表面張力調整剤として用いることができる。
表面張力調整剤として、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。更に、上記の分散剤(高分子分散剤)を界面活性剤としても用いてもよい。
本発明においては、インクの打滴干渉抑制の観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましく、中でもアセチレングリコール誘導体がより好ましい。
【0115】
界面活性剤(表面張力調整剤)をインク組成物に含有する場合、界面活性剤はインクジェット方式によりインク組成物の吐出を良好に行う観点から、インク組成物の表面張力を20〜60mN/mに調整できる範囲の量を含有するのが好ましく、表面張力の点からはより好ましくは20〜45mN/mであり、更に好ましくは25〜40mN/mである。
界面活性剤のインク組成物中における界面活性剤の具体的な量としては、前記表面張力となる範囲が好ましいこと以外は特に制限はなく、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%であり、更に好ましくは0.2〜3質量%である。
【0116】
(その他成分)
インク組成物は、上記の成分に加え、必要に応じて更にその他成分として各種の添加剤を含むことができる。
前記各種の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、pH調整剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、又はキレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤の含有量はその用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば、インク組成物に対して各々0.02〜1.00質量%程度とすればよい。
【0117】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
【0118】
褪色防止剤としては、各種の有機系および金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としては、例えば、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。
【0119】
防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、ソルビン酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。
【0120】
pH調整剤としては、調合されるインク組成物に悪影響を及ぼさずにpHを所望の値に調整できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、アルコールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールなど)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アンモニウム水酸化物(例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物など)、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。
【0121】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
【0122】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0123】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0124】
〜インク組成物の物性〜
本発明におけるインク組成物の表面張力(25℃)としては、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN/m以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上40mN/m以下である。
表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学株式会社製)を用い、インク組成物を25℃の条件下で測定される。
【0125】
また、本発明におけるインク組成物の25℃での粘度は、1.2mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上13mPa・s未満であり、更に好ましくは2.5mPa・s以上10mPa・s未満である。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、インク組成物を25℃の条件下で測定される。
【0126】
<処理液>
本発明のインク組成物は、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液と合わせてインクセットとして構成することができる。処理液は、既述のインク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を少なくとも含み、必要に応じて、さらに他の成分を用いて構成することができる。インク組成物と共に処理液を用いることで、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い描画性(例えば細線や微細部分の再現性)に優れた画像が得られる。
処理液が凝集剤を含むことで、良好な画像品質で耐擦過性、耐ブロッキング性等に優れた画像を形成することができる。
【0127】
(凝集剤)
処理液は、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含んでなる。本発明における凝集剤は、記録媒体上においてインク組成物と接触することにより、インク組成物を凝集(固定化)可能なものであり、固定化剤として機能する。例えば、処理液を記録媒体(好ましくは、塗工紙)に付与することにより記録媒体上に凝集剤が存在している状態で、インク組成物がさらに着滴して凝集剤に接触することにより、インク組成物中の成分を凝集させて、インク組成物を記録媒体上に固定化することができる。
前記インク組成物中の成分を固定化させる成分としては、酸性化合物、カチオン性ポリマー、多価金属塩等を挙げることができ、特に酸性化合物が好ましい。これらは1種単独でも、2種以上を併用することができる。
【0128】
−酸性化合物−
酸性化合物としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、およびこれらの化合物の誘導体等が好適に挙げられる。
【0129】
これらの中でも、水溶性の高い酸性化合物が好ましい。また、インク組成物と反応してインク全体を固定化させる観点から、3価以下の酸性化合物が好ましく、2価以上3価以下の酸性化合物が特に好ましい。
酸性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0130】
前記処理液が酸性化合物を含む場合、処理液のpH(25℃)は、0.1〜6.8であることが好ましく、0.5〜6.0であることがより好ましく、0.8〜5.0であることがさらに好ましい。
【0131】
前記酸性化合物の含有量は、前記処理液の全質量に対し、40質量%以下であることが好ましく、15〜40質量%であることがより好ましい。酸性化合物の含有量を15〜40質量%とすることでインク組成物中の成分をより効率的に固定化することができる。
さらに酸性化合物の含有量は、前記処理液の全質量に対し、15質量%〜35質量%であることが好ましい。
【0132】
−多価金属塩−
本発明における多価金属塩は、アルカリ土類金属、亜鉛族金属等の2価以上の金属を含む化合物であり、Ca2+、Cu2+、Al3+等の金属イオンの酢酸塩等を挙げることができる。
本発明において、前記多価金属塩を含む処理液が付与された記録媒体にインク組成物を吐出したときのインク組成物の凝集反応は、インク組成物中に分散した粒子、例えば、顔料に代表される着色剤や、樹脂粒子等の粒子の分散安定性を減じ、インク組成物全体の粘度を上昇させることで達成することができる。例えば、インク組成物中の顔料や、樹脂粒子などの粒子がカルボキシル基等の弱酸性の官能基を有するとき、当該粒子は前記弱酸性の官能基の働きにより分散安定化しているが、当該粒子の表面電荷を、多価金属塩と相互作用させることにより減じ、分散安定性を低下することができる。したがって、処理液に含まれる固定化剤としての多価金属塩は、凝集反応の観点で、価数が2価以上、すなわち多価であることが必要であり、凝集反応性の観点で、3価以上の多価金属イオンからなる多価金属塩であることが好ましい。
【0133】
以上の観点から、本発明における処理液に用いることのできる多価金属塩は、以下に示す多価金属イオンと陰イオンとの塩、ポリ水酸化アルミニウムおよびポリ塩化アルミニウムのいずれか1種以上であることが好ましい。
【0134】
多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Ba2+、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+、およびZr4+などが挙げられる。これら多価金属イオンを処理液中に含有させるためには、前記多価金属の塩を用いればよい。
塩とは、上記のような多価金属イオンと、これらのイオンに結合する陰イオンとから構成される金属塩のことであるが、溶媒に可溶なものであることが好ましい。ここで、前記溶媒とは、多価金属塩とともに処理液を構成する媒質であり、例えば、水や後述する有機溶剤が挙げられる。
【0135】
前記多価金属イオンと塩を形成するための好ましい陰イオンとしては、例えば、Cl、NO、I、Br、ClO、CHCOO、SO2−などが挙げられる。
多価金属イオンと陰イオンとは、それぞれ単独種または複数種を用いて多価金属イオンと陰イオンとの塩を形成することができる。
【0136】
上記以外の多価金属塩としては、例えば、ポリ水酸化アルミニウムおよびポリ塩化アルミニウムなどが挙げられる。
【0137】
本発明においては、反応性や着色性、さらには取り扱いの容易さなどの点から、多価金属イオンと陰イオンとの塩を用いることが好ましく、多価金属イオンとしては、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Al3+およびY3+から選ばれる少なくとも1種が好ましく、さらには、Ca2+又はMg2+が好ましい。
また、陰イオンとしては、溶解性などの観点から、NOが特に好ましい。
前記多価金属塩は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0138】
前記多価金属塩の含有量は、前記処理液の全質量に対し、15質量%以上である。多価金属塩の含有量が15質量%以上とすることでより効果的にインク組成物中の成分を固定化することができる。
多価金属塩の含有量は、前記処理液の全質量に対し、15質量%〜35質量%であることが好ましい。
【0139】
多価金属塩の記録媒体への付与量としては、インク組成物を凝集させるに足る量であれば特に制限はないが、インク組成物を固定化し易いとの観点から、0.5g/m〜4.0g/mであることが好ましく、0.9g/m〜3.75g/mであることがより好ましい。
【0140】
−カチオン性ポリマー−
カチオン性ポリマーとしては、ポリ(ビニルピリジン)塩、ポリアルキルアミノエチルアクリレート、ポリアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリエチレンイミン、ポリビグアニド、及びポリグアニドから選ばれる少なくとも1種のカチオン性ポリマーである。
カチオン性ポリマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記カチオン性ポリマーの中でも、凝集速度の観点で有利な、ポリグアニド(好ましくは、ポリ(ヘキサメチレングアニジン)アセテート、ポリモノグアニド、ポリメリックビグアニド)、ポリエチレンイミン、ポリ(ビニルピリジン)が好ましい。
【0141】
前記カチオン性ポリマーの重量平均分子量としては、処理液の粘度の観点では分子量が小さい方が好ましい。処理液をインクジェット方式で記録媒体に付与する場合には、500〜500,000の範囲が好ましく、700〜200,000の範囲がより好ましく、更に好ましくは1,000〜100,000の範囲である。重量平均分子量は、500以上であると凝集速度の観点で有利であり、500,000以下であると吐出信頼性の点で有利である。但し、処理液をインクジェット以外の方法で記録媒体に付与する場合には、この限りではない。
【0142】
前記処理液はカチオン性ポリマーを含むが、処理液のpH(25℃)は、1.0〜10.0であることが好ましく、2.0〜9.0であることがより好ましく、3.0〜7.0であることがさらに好ましい。
【0143】
カチオン性ポリマーの含有量は、前記処理液の全質量に対して、1質量%〜35質量%であることが好ましく、5質量%〜25質量%であることがより好ましい。
カチオン性ポリマーの塗工紙への付与量としては、インク組成物を安定化させるに足る量であれば特に制限はないが、インク組成物を固定化し易いとの観点から、0.5g/m〜4.0g/mであることが好ましく、0.9g/m〜3.75g/mであることがより好ましい。
【0144】
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、既述の本発明のインクセットを用いたものであり、少なくとも顔料、水、重合性化合物、一般式(I)で表される化合物、とを含むインク組成物を記録媒体にインクジェット法で付与するインク付与工程と、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程とを設けて構成されたものである。本発明の画像形成方法は、必要に応じて、更に他の工程を設けて構成することができる。
【0145】
以下、本発明の画像形成方法を構成する各工程を説明する。
−インク付与工程−
インク付与工程は、少なくとも顔料、水、重合性化合物、一般式(I)で表される化合物、とを含むインク組成物を記録媒体にインクジェット法で付与する。本工程では、記録媒体上に選択的にインク組成物を付与でき、所望の可視画像を形成できる。なお、インク組成物の詳細及び好ましい態様などインク組成物の詳細については、インク組成物に関する説明で既述した通りである。
【0146】
インクジェット法を利用した画像の記録は、具体的には、エネルギーを供与することにより、所望の被記録媒体、すなわち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載のインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に液体組成物を吐出することにより行なえる。なお、本発明に好ましいインクジェット記録方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
【0147】
インクジェット法は、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。インクジェット法としては、特に、特開昭54−59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット法を有効に利用することができる。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0148】
また、インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
尚、前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0149】
インクジェット記録方法の具体例を以下に示す。
インクジェット記録方法として、(1)静電吸引方式とよばれる方法がある。静電吸引方式は、ノズルとノズルの前方に配置された加速電極との間に強電界を印加し、ノズルから液滴状のインクを連続的に噴射させ、そのインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えることによって、インク滴を記録媒体上に向けて飛ばしてインクを記録媒体上に定着させて画像を記録する方法、又はインク滴を偏向させずに、印刷情報信号に従ってインク滴をノズルから記録媒体上にむけて噴射させることにより画像を記録媒体上に定着させて記録する方法である。また、(2)小型ポンプによってインク液に圧力を加えるとともに、インクジェットノズルを水晶振動子等によって機械的に振動させることによって、強制的にノズルからインク滴を噴射させる方法がある。ノズルから噴射されたインク滴は、噴射されると同時に帯電され、このインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えてインク滴を記録媒体に向かって飛ばすことにより、記録媒体上に画像を記録する方法である。次に、(3)インク液に圧電素子によって圧力と印刷情報信号を同時に加え、ノズルからインク滴を記録媒体に向けて噴射させ、記録媒体上に画像を記録する方法(ピエゾ)、(4)印刷信号情報にしたがって微小電極を用いてインク液を加熱して発泡させ、この泡を膨張させることによってインク液をノズルから記録媒体に向けて噴射し、記録媒体上に画像を記録する方法(バブルジェット(登録商標))がある。
【0150】
インクジェットヘッドとしては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。本発明の画像形成方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、一般にダミージェットを行なわないライン方式に適用した場合に、吐出精度及び画像の耐擦過性の向上効果が大きい。
【0151】
インクジェットヘッドから吐出されるインクの液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、1〜10pl(ピコリットル)が好ましく、1.5〜6plがより好ましい。また、画像のムラ、連続諧調のつながりを改良する観点で、異なる液滴量を組み合わせて吐出することも有効であり、このような場合でも本発明は好適に使用できる。
【0152】
−処理液付与工程−
処理液付与工程は、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を記録媒体に付与し、処理液をインク組成物と接触させて画像化する。この場合、インク組成物中の顔料及びポリマー粒子をはじめとする分散粒子が凝集し、記録媒体上に画像が固定化される。なお、処理液は凝集剤を少なくとも含有してなり、各成分の詳細及び好ましい態様については、既述した通りである。
【0153】
処理液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。インクジェット法の詳細については、既述の通りである。
【0154】
処理液付与工程は、インク組成物を用いたインク付与工程の前又は後のいずれに設けてもよい。本発明においては、処理液付与工程で処理液を付与した後にインク付与工程を設けた態様が好ましい。具体的には、記録媒体上に、インク組成物を付与する前に、予めインク組成物中の顔料及び/又は自己分散性ポリマーの粒子を凝集させるための処理液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を付与して画像化する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
【0155】
処理液の付与量としては、インク組成物を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、凝集剤の付与量が0.1g/m以上となる量とすることができる。中でも、凝集剤の付与量が0.2〜0.7g/mとなる量が好ましい。凝集剤は、付与量が0.1g/m以上であるとインク組成物の種々の使用形態に応じ良好な高速凝集性が保てる。また、凝集剤の付与量が0.7g/m以下であることは、付与した記録媒体の表面性に悪影響(光沢の変化等)を与えない点で好ましい。
【0156】
また、本発明においては、処理液付与工程後にインク付与工程を設け、処理液を記録媒体上に付与した後、インク組成物が付与されるまでの間に、記録媒体上の処理液を加熱乾燥する加熱乾燥工程を更に設けることが好ましい。インク付与工程前に予め処理液を加熱乾燥させることにより、滲み防止などのインク着色性が良好になり、色濃度及び色相の良好な可視画像を記録できる。
【0157】
加熱乾燥は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行なえる。加熱方法としては、例えば、記録媒体の処理液の付与面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の処理液の付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
【0158】
−記録媒体−
本発明の画像形成方法は、記録媒体に上に画像を記録するものである。記録媒体には、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本発明の画像形成方法によると、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
【0159】
記録媒体としては、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙(株)製の「OKプリンス上質」、日本製紙(株)製の「しおらい」、及び日本製紙(株)製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。また、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
【0160】
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられる塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢や擦過耐性など、品質上の問題を生じやすいが、本発明の画像形成方法では、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐擦性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙と無機顔料を含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましく、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのがより好ましい。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。
【実施例】
【0161】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準である。
(重合開始剤1の合成)
下記の合成スキームに従って、一般式(I)で表される化合物(重合開始剤1)を製造した。
【0162】
【化28】

【0163】
−中間体(1)の合成−
攪拌機、塩化カルシウム管及び温度計を備えた500mlの三口フラスコに4-アセトキシビフェニル10g(47.1mmol)(東京化成社製)及び塩化メチレン100mlを入れ、窒素雰囲気下で氷冷した。次いで塩化イソブチリル6.0g(56.3mmol)を反応容器内に入れた後、反応溶液を5℃以下に保ちながら塩化アルミニウム7.54g(56.6mmol)をゆっくり添加した。その後氷冷下で一時間攪拌した後、反応温度を室温まで上昇させ更に三時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を500mLの水に添加して攪拌し、300mlの酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過して、ろ液をエバポレーターで濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶液:酢酸エチル/ヘキサン=1/8)で精製して中間体(1)を収量13gで得た。
【0164】
−中間体(2)の合成−
攪拌機、塩化カルシウム管及び温度計を備えた500mlの三口フラスコに中間体(1)6.7g(23.7mmol)及びジオキサン70mlを入れ、窒素雰囲気下で氷冷した。次いで臭素4.4g(27.5mmol)をゆっくり滴下した。その後氷冷下で一時間攪拌した後、反応温度を室温まで上昇させ更に1時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を300mlの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に入れて攪拌し、200mlの酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過して、ろ液をエバポレーターで濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶液:酢酸エチル/ヘキサン=1/4)で精製して中間体(2)を収量6.7gで得た。
【0165】
−中間体(3)の合成−
攪拌機を備えた500mlの三口フラスコに中間体(2)6.7g(18.5mmol)及びイソプロパノール200mlを入れ、攪拌しながら30%水酸化ナトリウム水溶液16gを滴下した。室温で5時間攪拌した後、1規定塩酸を用いて反応溶液を中和し、300mlの酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過して、ろ液をエバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をアセトニトリルで再結晶して本発明の中間体(3)を得た(収量4.4g)。
【0166】
−重合開始剤1の合成−
攪拌機と冷却管を備えた200mlの三口フラスコに中間体(3)1.0g(3.9mmol)、1,3-プロパンスルトン0.57g(4.67mmol)、カリウムt−ブトキシド0.53g(4.72mmol)及びエタノール20mlを入れ、還流下で6時間攪拌した。反応終了後、反応液をろ過し、得られた粗生成物をエタノールで洗浄することで本発明の重合開始剤1を1.42gの収量で得た。
化合物の生成はH−NMR(測定溶媒:MeOD)およびIRスペクトル(KBr法)により確認した。
【0167】
−重合開始剤2の合成−
下記の合成スキームに従って、一般式(I)で表される化合物(重合開始剤2)を製造した。
【0168】
【化29】

【0169】
攪拌機と冷却管を備えた100mlの三口フラスコに中間体(3)0.5g(1.95mmol)、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド0.43g(2.83mmol)、水酸化カリウム(0.05規定エタノール溶液)0.1g及びエタノール20mlを入れ、還流下で6時間攪拌した。反応終了後、反応液を減圧濃縮し、得られた粗生成物をイソプロパノールで洗浄することで本発明の重合開始剤2を0.55gの収量で得た。
化合物の生成はH−NMR(測定溶媒:DO)およびIRスペクトル(KBr法)により確認した。
【0170】
(ポリマー分散剤P−1の合成)
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコにメチルエチルケトン88gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン50gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、及びメチルメタクリレート30gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥し、ポリマー分散剤P−1を96g得た。
得られた樹脂の組成は、H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は44,600であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)に記載の方法により酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
【0171】
【化30】

【0172】
(樹脂粒子の調製)
−樹脂粒子Aの合成−
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン540.0gを仕込んで、窒素雰囲気下で75℃まで昇温した。反応容器内温度を75℃に保ちながら、メチルメタクリレート108g、イソボルニルメタクリレート388.8g、メタクリル酸43.2g、メチルエチルケトン108g、及び「V−601」(アゾ重合開始剤、和光純薬(株)製)2.16gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、「V−601」1.08g、メチルエチルケトン15.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、さらに「V−601」0.54g、メチルエチルケトン15.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した後、85℃に昇温して、さらに2時間攪拌を続けた。
得られた樹脂粒子Aの共重合体の重量平均分子量(Mw)は61000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))、酸価は52.1(mgKOH/g)であった。
尚、樹脂粒子Aのモノマー組成(質量基準)は、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸(20/72/8)である。
【0173】
次に、重合溶液588.2gを秤量し、イソプロパノール165g、1モル/LのNaOH水溶液120.8mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に蒸留水718gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた。その後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保って溶媒を留去した。更に、反応容器内を減圧して、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を留去し、固形分濃度26.0%の樹脂粒子Aの水性分散物を得た。樹脂粒子Aの体積平均粒子径は、10 nmであった。なお、体積平均粒子径は、Micorotrac粒度分布測定装置(Version 10.1.2−211BH(商品名)、日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により求めた。
【0174】
(樹脂被覆顔料の分散物の調製)
−樹脂被覆シアン顔料分散物(C)−
ピグメント・ブルー15:3(フタロシアニンブルーA220、大日精化(株)製)10部と、上記ポリマー分散剤P−1を5部と、メチルエチルケトン42部と、1mol/L NaOH水溶液5.5部と、イオン交換水87.2部とを混合し、ビーズミルにより0.1mmφジルコニアビーズを用いて2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%の樹脂被覆シアン顔料の分散物(着色粒子)(C)を得た。
【0175】
−樹脂被覆マゼンタ顔料分散物(M)−
上記樹脂被覆シアン顔料分散物の調製において、顔料として用いたフタロシアニンブルーA220の代わりに、Chromophthal Jet Magenta DMQ(ピグメント・レッド122、チバ・ジャパン社製)を用いた以外は上記と同様にして樹脂被覆マゼンタ顔料の分散物(着色粒子)(M)を得た。
【0176】
−樹脂被覆イエロー顔料分散物(Y)−
上記樹脂被覆シアン顔料分散物の調製において、顔料として用いたフタロシアニンブルーA220の代わりに、Irgalite Yellow GS(ピグメント・イエロー74、チバ・ジャパン社製)を用いた以外は上記と同様にして樹脂被覆イエロー顔料の分散物(着色粒子)(Y)を得た。
【0177】
−樹脂被覆ブラック顔料分散物(K)−
上記樹脂被覆シアン顔料分散物の調製において、顔料として用いたフタロシアニンブルーA220の代わりに、顔料分散体CAB−O−JETTM 200(カーボンブラック、CABOT社製)を用いた以外は上記と同様にして樹脂被覆ブラック顔料の分散物(着色粒子)(K)を得た。
【0178】
<インク組成物C−1,M−1、Y−1、K−1及びこれら4種のインク組成物からなるインク組成物1の調製>
以下のようにして、シアンインク組成物(C−1)、マゼンタインク組成物(M−1)、イエローインク組成物(Y−1)、ブラックインク組成物(K−1)をそれぞれ調製した。
【0179】
(シアンインク組成物C−1の調製)
上記の樹脂被覆シアン顔料の分散物(C)を用い、下記組成となるように、樹脂被覆シアン顔料分散物(C)、水溶性有機溶剤、イオン交換水、重合開始剤、重合性化合物、及び界面活性剤を混合し、その後、5μmメンブランフィルタでろ過してシアンインクC−1を調製した。
【0180】
−シアンインク組成物C−1の組成−
・樹脂被覆シアン顔料分散物(C) ・・・ 6%(固形分濃度)
・重合開始剤(1) ・・・ 3%
・NKエステル A−400 (新中村化学工業(株)製) ・・・ 15%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製;界面活性剤) ・・・1%
・イオン交換水 ・・・残量(全量で100質量%となるよう加えた)
【0181】
pHメーターWM−50EG(東亜DKK(株)製)を用いて、シアン顔料インクC−1のpH(25℃)を測定したところ、pH値は8.5であった。
【0182】
(マゼンタインク組成物(M−1)の調製)
上記シアンインク組成物(C−1)の調製において、樹脂被覆シアン顔料の分散物(C)の代わりに、樹脂被覆マゼンタ顔料の分散物(M)を用いた以外は上記と同様にして、マゼンタインク(M−1)を調製した。pH値は8.5であった。
【0183】
(イエローインク組成物(Y−1)の調製)
上記シアンインク組成物(C−1)の調製において、樹脂被覆シアン顔料の分散物(C)の代わりに、樹脂被覆イエロー顔料の分散物(Y)を用いた以外は上記と同様にして、イエローインク(Y−1)を調製した。pH値は8.5であった。
【0184】
(ブラックインク組成物(K−1)の調製)
上記シアンインク組成物(C−1)の調製において、樹脂被覆シアン顔料の分散物(C)の代わりに、顔料被覆ブラック顔料の分散物(K)を用いた以外は上記と同様にして、ブラックインク(K−1)を調製した。pH値は8.5であった。
【0185】
さらにインク組成物1に準じて、下記表1〜3に示したインク2〜14(単位は質量%)を調製した。なお、表中の顔料分散物及び樹脂粒子については、固形分換算の数字である。表中の「残量」とは、各インクの全量が100質量%となるように加えた量を示す。
【0186】
【表1】



【0187】
【表2】



【0188】
【表3】



【0189】
上記インク組成物に用いたアクリレート化合物はNKエステルA−400(新中村化学工業株式会社)を、アクリルアミド化合物は下記重合性化合物(1)を用いた。
【0190】
【化31】

【0191】
【化32】

【0192】
【化33】

【0193】
(処理液1の調製)
以下の材料を混合して、処理液1を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液1のpH(25℃)を測定したところ、1.0であった。
・マロン酸(立山化成(株)製;酸性化合物) ・・・25.0%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(水溶性有機溶媒) ・・・5%
・イオン交換水 ・・・残量(全量で100質量%となるよう加えた)
【0194】
(処理液2の調製)
以下の材料を混合して、処理液2を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、pH調整後の処理液2のpH(25℃)を測定したところ、4.0であった。
・ポリエチレンイミン(日本触媒社製;カチオン性ポリマー)・・・13.0%
・イオン交換水 ・・・残量(全量で100質量%となるよう加えた)
【0195】
(処理液3の調製)
以下の材料を混合して、処理液3を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液3のpH(25℃)を測定したところ、4.0であった。
・硝酸マグネシウム ・・・15%
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル(和光純薬工業(株)製) ・・・4%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)社製) ・・・1%
・イオン交換水 ・・・残量(全量で100質量%となるよう加えた)
【0196】
[インク経時安定性評価]
上記で調製したシアンインク組成物C−1〜C−16、マゼンタインク組成物M−1〜M−16、イエローインク組成物Y−1〜Y−16、ブラックインク組成物K−1〜K−16について以下のようにしてインク安定性を評価した。
これらのインク組成物を各々25℃に温度調整した。次いで振動式粘度計(BROOKFIELD社製、DV−II+VISCOMETER)を用いて、25℃、相対湿度50%の環境下で、インク組成物を液温のまま25℃でコーンプレート(φ35mm)を用いて測定し、トルクが20〜90%の範囲で、且つ回転数が0.5〜100rpmの範囲のデータの平均値を測定値とした。調製直後の測定値をインク粘度1とした。
次いで、インク組成物の一部をガラス製サンプルビンに採取し、密栓した状態で60℃の環境下で2週間放置した後、上記と同様の方法で保存後のインク粘度2を測定した。また、同時にインク組成物の状態を目視観察した。
上記測定した保存前後でのインク粘度の変動率{100−(インク粘度2/インク粘度1)×100}を算出した。さらに保存後の目視観察結果と併せて、下記の評価基準に従ってインク保存性の評価を行った。
【0197】
〜評価基準〜
A … インク粘度の変動率が±15%未満で、かつインク組成物の変化は認められなかった。
B … インク粘度の変動率が±15%以上±30%未満で、かつインク組成物の変化は認められなかった。
C … インク粘度の変動率が±30%以上、±50%未満で、かつインク組成物の変化は認められなかった。
D … インク粘度の変動率が±50%以上、またはインク組成物の分離やゲル状化が観察された。
結果を下記表4に示す。
【表4】

【0198】
[画像形成および硬化感度評価]
記録媒体(塗工紙)として、OKトップコート+(坪量104.7g/m)を用意して、以下に示すようにして画像を形成し、形成された画像について以下の評価を行った。記録媒体には、全てOKトップコート+を用いた。
【0199】
(実施例1)
インク組成物として、上記で得られたシアンインク組成物(C−1)、マゼンタインク組成物(M−1)、イエローインク組成物(Y−1)、およびブラックインク組成物(K−1)からなるインク組成物1を用い、処理液1と共にインクセット1を構成し、下記に示す方法で、4色シングルパス記録によりライン画像とベタ画像を形成した。
【0200】
まず、図1に示すように、記録媒体の搬送方向(図中の矢印方向)に向かって順次、水性処理液を吐出する処理液吐出用ヘッド12Sを備えた処理液付与部12と、付与された水性処理液を乾燥させる処理液乾燥ゾーン13と、各種水性インクを吐出するインク吐出部14と、吐出された水性インクを乾燥させるインク乾燥ゾーン15と、紫外線(UV)を照射可能なUV照射ランプ16Sを備えたUV照射部16とが配設されたインクジェット装置を準備した。
処理液乾燥ゾーン13は、図示しないが、記録媒体の記録面側には乾燥風を送って乾燥を行なう送風器を備え、記録媒体の非記録面側には赤外線ヒータを備えており、処理液付与部で処理液の付与を開始した後900msecが経過するまでに、温度・風量を調節して水性処理液中の水の70質量%以上を蒸発(乾燥)できるように構成されている。また、インク吐出部14は、搬送方向(矢印方向)にブラックインク吐出用ヘッド30K、シアンインク吐出用ヘッド30C、マゼンタインク吐出用ヘッド30M、及びイエローインク吐出用ヘッド30Yが順次配置されており、各ヘッドは1200dpi/20inch幅フルラインヘッドであり、各色をシングルパスで主走査方向に吐出して記録できるようになっている。
【0201】
図1に示すように構成されたインクジェット装置の処理液吐出用ヘッド、インク吐出用ヘッドにそれぞれ繋がる貯留タンク(不図示)に、上記で得た処理液、インクを装填して、記録媒体にベタ画像及び1200dpiのライン画像を記録した。
ライン画像は、1200dpiの幅1ドットのライン、幅2ドットのライン、幅4ドットのラインをシングルパスで主走査方向に吐出して記録し、ベタ画像は、記録媒体をA5サイズにカットしたサンプルの全面にインクを吐出してベタ画像とした。
なお、記録する際の諸条件は下記の通りである。
【0202】
(1)処理液付与工程
記録媒体上に処理液吐出用ヘッド12Sから処理液をシングルパスで吐出した。付与量が、1.4g/mとなるように処理液を吐出した。
【0203】
(2)処理工程
処理液の乾燥は処理液乾燥ゾーン13で行ない、処理液乾燥ゾーンを水性処理液の吐出開始から900msec迄に通過するようにした。下記条件にて処理液が吐出された記録媒体について乾燥処理及び浸透処理を施した。
・風速:10m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から接触型平面ヒータで加熱した。
【0204】
(3)インク付与工程
その後、インク吐出用ヘッドにより、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、およびイエローインクをシングルパスで吐出して画像を記録した。処理液が吐出された記録媒体の吐出面に、下記条件にてインク組成物をインクジェット方式で吐出し、ライン画像、ベタ画像をそれぞれ形成した。
・ヘッド:1,200dpi/20inch幅のピエゾフルラインヘッドを4色分配置
・吐出液滴量:2.0pL
・駆動周波数:30kHz
【0205】
(4)インク乾燥工程
次いで、インク乾燥ゾーン15で、インク組成物が付与された記録媒体を下記条件で乾燥した。
・乾燥方法:送風乾燥
・風速:15m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から接触型平面ヒータで加熱した。
【0206】
(5)UV露光工程
画像乾燥後、UV照射部16において、UV光(アイグラフィックス(株)製 メタルハライドランプ 最大照射波長 365nm)を積算照射量3J/cmになるように照射して画像を硬化した。
【0207】
(硬化感度評価)
未印字のOKトップコート+を文鎮(重量470g、サイズ15mm×30mm×120mm)に巻きつけ(未印字のOKトップコート+と評価サンプルが接触する面積は150mm)、上記ベタ画像が形成された評価用サンプルの印画面を3往復擦った(荷重260kg/mに相当)。擦った後の印画面を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。評価結果を表5に示す。
〜評価基準〜
A … 印画面に画像(色材)のはがれが視認できなかった。
B … 印画面に画像(色材)のはがれがわずかに認められた。
C … 印画面に画像(色材)のはがれが視認でき、実用上問題になるレベルであった。
D … 印画面に画像(色材)の大きなはがれが視認できた。
【0208】
(実施例2〜22)
表5に示す組み合わせで、インク1〜14と、処理液1〜3を組み合わせてインクセットを構成し、実施例1と同様の方法で実施例2〜22を実施した。
(比較例1〜2)
表5に示す組み合わせで、インク15〜16と、処理液1を組み合わせてインクセットを構成し、実施例1のインクジェット記録法と同様の方法で比較例1〜2を実施した。
得られた結果を表5に示す。
【0209】
【表5】



【0210】
表4及び5に示すように、本発明のインク組成物は、いずれも優れたインクの経時安定性と硬化感度を示していることが確認された。
【符号の説明】
【0211】
12・・・処理液付与部
12S・・・処理液吐出用ヘッド
13・・・処理液乾燥ゾーン
14・・・インク吐出部
15・・・インク乾燥ゾーン
16・・・紫外線照射部
16S・・・紫外線照射ランプ
30K,30C,30M,30Y,30A,30B・・・インク吐出用ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、水、重合性化合物、及び下記一般式(I)で表される化合物又はその塩を含むことを特徴とするインク組成物。
【化1】


(式中、Rは、2価の飽和もしくは芳香族炭化水素基又は複素環基を表し、R及びRは、各々独立に、1価の飽和もしくは不飽和炭化水素基又は複素環基を表し、Rはエチレン基又はプロピレン基を表す。Xは、スルホ基、ホスホン酸基、カルボキシル基又はアンモニウム基を表し、Yは、酸素原子又は硫黄原子を表す。nは、0〜10までの整数を表す。)
【請求項2】
Yが酸素原子である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
が2価の飽和炭化水素基である、請求項1又は2に記載のインク組成物。
【請求項4】
がヒドロキシル基で置換されていてもよいアルキレン基である、請求項3に記載のインク組成物。
【請求項5】
及びRが1価の飽和炭化水素基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項6】
及びRがアルキル基である、請求項5に記載のインク組成物。
【請求項7】
Xがスルホ基、ホスホン酸基又はカルボキシル基である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項8】
Xがアンモニウム基である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記重合性化合物が(メタ)アクリルアミド構造を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項10】
樹脂粒子を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項11】
界面活性剤を含有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のインク組成物と、当該インク組成物を凝集する処理液とからなるインクセット。
【請求項13】
前記処理液が、酸性化合物、多価金属塩又はカチオン性ポリマーから選ばれる請求項12に記載のインクセット。
【請求項14】
請求項12又は13のいずれか1項に記載の処理液を、記録媒体上に付与する処理液付与工程と、請求項1〜11のいずれか1項に記載のインク組成物をインクジェット法により記録媒体上に付与して画像を形成するインク付与工程と、を含む画像形成方法。
【請求項15】
前記記録媒体が塗工紙である請求項14に記載の画像形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−12443(P2012−12443A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148246(P2010−148246)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】