説明

インク組成物、画像形成方法、及び印画物

【課題】本発明の課題は、長期間保存した場合においてもインクの吐出安定性に優れ、画像膜への硬化性に優れたインク組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明のインク組成物は、(a)顔料、(b)マレイミド化合物の少なくとも2種、及び(c)重合性化合物、を含有し、かつ、前記(b)マレイミド化合物の少なくとも一方が(b−1)アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する高分子化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、画像形成方法及び印画物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、圧力、熱、電界などを駆動源として液状のインク組成物をノズルから記録媒体に向けて吐出させ、記録する記録方式である。このようなインクジェット記録方式は、ランニングコストが低く、高画質化が可能であるために、近年、オフィス用のみならず民生用としても急速に普及している。
【0003】
近年では、安定な吐出性のインク組成物を得るために分散剤等を用いる種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、吐出安定性を改善する目的で、ビニル系重合体、着色剤及び有機溶剤を含む非水性インクジェット用インキ組成物が開示されている。特許文献2には、着色コーティング組成物に使用する顔料の分散剤として、セグメントのSP値を規定したイミド基を有する顔料分散剤が開示されている。
一方、インクジェット用途以外のインク組成物では、屋外での塗装を目的として、マレイミド基を有する重合体、顔料、光重合開始剤及び有機溶剤を含有する塗料組成物も開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2007/072805公報
【特許文献2】特開2003−277673号公報
【特許文献3】特開2002−241702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェット用インク組成物を使用する場合、インク組成物の吐出安定性以外にも、インク組成物から得られる記録画像(膜)の硬化性も求められる。例えば、紫外線等の活性エネルギー線で硬化させる活性エネルギー線硬化型インクジェットでは、少ない露光量もしくは露光回数で、素早く硬化することが重要である。
しかし、特許文献1のインク組成物および特許文献2の顔料分散剤のみを使用したインク組成物では、この硬化性の改良については未だ十分なレベルに達しておらず、より一層の改良の余地がある。
また、特許文献3では、インクの吐出安定性についてはなんら開示しておらず、硬化性についてもインクジェット等の短時間での硬化に対する要求としては到底満足できるものではない。特に近年、得られる記録画像(膜)の薄膜化が進んでおり、この画像薄膜を形成する際の硬化性の改良が求められている。
本発明は、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、長期間保存した場合においてもインクの吐出安定性に優れ、画像膜への硬化性(特に、より薄い膜での硬化性)に優れたインク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
項1.(a)顔料、(b)マレイミド化合物の少なくとも2種、及び(c)重合性化合物、を含有し、かつ、前記(b)マレイミド化合物の少なくとも一方が(b−1)アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する高分子化合物である、インク組成物。
【0007】
項2.前記マレイミド化合物のうち他方の化合物(b−2)が、アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基を有しない化合物である、項1に記載のインク組成物。
【0008】
項3.前記(b−1)アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する高分子化合物が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む、項1又は2に記載のインク組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、R及びRは互いに結合して環を形成していてもよい。Aは、単結合、アリーレン基、−COO−、または−CONR−を表し、Rは水素原子またはアルキル基を表す。Bは単結合、アルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表し、これらの基中にエーテル結合またはエステル結合を含んでいてもよい。)
項4.前記(b−1)アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する高分子化合物が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位をさらに有する、項1〜3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R5は水素原子又はメチル基を表す。Jは、単結合、−CO−、−COO−、−CONR6−、−OCO−又はフェニレン基を表し、R6は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは単結合、アミド結合、又はアルキレン基若しくはアラルキレン基を表し、これらの基中に、イミノ結合、エステル結合、エーテル結合、スルホンアミド結合、ウレタン結合、ウレイレン結合、カーボネート結合又は複素環を含んでいてもよい。Pは3〜5個の環が縮合した縮合環である。)
【0013】
項5.前記(b−1)アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する高分子化合物の重量平均分子量が、10000〜500000である、項1〜4のいずれかに1項に記載のインク組成物。
【0014】
項6.前記アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基を有しない化合物が低分子化合物である、項2〜5のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0015】
項7.前記アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基を有しない化合物がマレイミド基を少なくとも2つ有する、項2〜6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0016】
項8.前記重合性化合物が、(メタ)アクリレート化合物である、項1〜7のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0017】
項9.重合開始剤をさらに含む、項1〜8のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0018】
項10.インクジェット用インク組成物である項1〜9のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0019】
項11.項1〜10のいずれか1項に記載のインク組成物をインクジェットプリンターを用いて画像を形成する工程を備えた画像形成方法。
【0020】
項12.項1〜10のいずれか1項に記載のインク組成物を用いて形成した印画物。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、インクの吐出安定性及び硬化性(特に薄膜となるように吐出した際での硬化性)に優れたインク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[インク組成物]
本発明のインク組成物は、少なくとも(a)顔料、(b)マレイミド化合物の少なくとも2種、及び(c)重合性化合物、を含有し、かつ、前記(b)マレイミド化合物の少なくとも一方が、(b−1)アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する高分子化合物である。
【0023】
以下、本発明のインク組成物における各成分について詳述する。
【0024】
<(a)顔料>
本発明のインク組成物は、(a)顔料を必須成分として含む。
【0025】
本発明のインク組成物が含有する(a)顔料は特に制限がなく、目的に応じて公知の種々の顔料を適宜選択して用いることができる。
【0026】
(a)顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、橋本勲著「有機顔料ハンドブック」(2006年刊)、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報等に記載の顔料が挙げられる。
【0027】
前記有機顔料としては、例えば、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、緑色顔料、オレンジ顔料、茶色顔料、バイオレット顔料、黒色顔料などが挙げられる。
【0028】
前記イエロー顔料は、イエロー色を呈する顔料であり、例えば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、非ベンジジン系アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、酸性染料レーキ顔料、塩基性染料レーキ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料、ピラゾロン顔料、アセトロン顔料、金属錯塩顔料、ニトロソ顔料、金属錯体アゾメチン顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料などが挙げられる。これらのうち、本発明で好ましく使用できる顔料として、例えば、C.I.ピグメントイエロー(以下、PYと略称する)1、PY3、PY12、PY13、PY14、PY16、PY17、PY18、PY24、PY60、PY74、PY83、PY93、PY94、PY95、PY97、PY100、PY109、PY110、PY115、PY117、PY120、PY128、PY138、PY139、PY150、PY151、PY153、PY154、PY155、PY166、PY167、PY173、PY175、PY180、PY181、PY185、PY194、PY213、PY214、PY219等が挙げられる。中でも、発色色や耐光性の観点から、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アセトロン顔料等のベンズイミダゾロン顔料、が好ましく、PY74、PY120、PY150、PY151、PY154、PY155、PY180、が好ましい。
【0029】
前記マゼンタ顔料は、赤あるいはマゼンタ色を呈する顔料であり、例えば、モノアゾ系顔料、β−ナフトール顔料、ジスアゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、酸性染料レーキ顔料、塩基性染料レーキ顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、アリザリンレーキ顔料、ナフトロン顔料、ナフトールAS系レーキ顔料、ナフトールAS顔料、ジケトピロロピロール顔料等が挙げられる。
これらのうち、本発明で好ましく使用できる顔料として、例えば、C.I.ピグメントレッド(以下、PRと略称する)1、PR2、PR3、PR4、PR5、PR6、PR21、PR38、PR42、PR46、PR53:1、PR57:1、PR52:1、PR46、PR48、PR81、PR83、PR88、PR144、PR149、PR166、PR179、PR178、PR190、PR224、PR123、PR224、PR19、PR122、PR202、PR207、PR209、PR180、PR83、PR170、PR171、PR172、PR174、PR175、PR176、PR177、PR179、PR185、PR194、PR208、PR214、PR220、PR221、PR242、PR247、PR254、PR255、PR256、PR262、PR268、PR264、PR269、PR272、PR282、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。中でもキナクリドン顔料が好ましく、PR42、PR122、PR202、PR209、PR282、C.I.ピグメントバイオレット(以下、PVと略称する)19などの、無置換キナクリドン、ジメチルキナクリドン、ジクロロキナクリドン、およびこれらの混晶が好ましい。
【0030】
前記シアン顔料は、青あるいはシアン色を呈する顔料であり、ジスアゾ系顔料、フタロシアニン顔料、酸性染料レーキ顔料、塩基性染料レーキ顔料、アントラキノン系顔料、アルカリブルー顔料等が挙げられる。本発明で好ましく使用できる顔料としては、C.I.ピグメントブルー(以下、PBと略称する)1、PB15、PB15:1、PB15:2、PB15:3、PB15:4、PB15:6、PB16、PB18、PB24、PB25、PB60、PB79等が挙げられる。この中でも銅フタロシアニン顔料が好ましく、PB15、PB15:1、PB15:2、PB15:3、PB15:4、PB15:6等が好ましい。
【0031】
前記緑色顔料は、緑色を呈する顔料であり、フタロシアニン顔料や金属錯体顔料などが挙げられる。本発明で好ましく使用できる顔料としては、C.I.ピグメントグリーン(以下、PGと略称する)7、PG8、PG10、PG36などが挙げられる。
【0032】
前記オレンジ顔料は、オレンジ色を呈する顔料であり、例えば、イソインドリン顔料、アントラキノン顔料、β−ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、イソインドリノン顔料、ペリノン顔料、ジスアゾ顔料、キナクリドン顔料、アセトロン顔料、ピラゾロン顔料などが挙げられる。本発明で好ましく使用できる顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ(以下、POと略称する)2、PO3、PO4、PO5、PO13、PO15、PO16、PO22、PO24、PO34、PO36、PO38、PO43、PO48、PO49、PO51、PO55、PO60、PO61、PO62、PO64、PO66、PO72、PO74等が挙げられる。
【0033】
前記茶色顔料は、茶色を呈する顔料であり、例えばPBr25、PBr32等のナフトロン顔料等が挙げられる。
前記バイオレット顔料は紫色を呈する顔料であり、例えばナフトロン顔料、ペリレン顔料、ナフトールAS顔料、ジオキサジン顔料等が挙げられる。本発明で好ましく使用できる顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット(以下、PVと略称する)13、PV17、PV23、PV29、PV32、PV37、PV50等が挙げられる。
【0034】
前記黒色顔料は、黒色を呈する顔料であり、例えば、カーボンブラック、インダジン顔料、ペリレン顔料等が挙げられる。本発明では、C.I.ピグメントブラック(以下、PBkと略称する)1、PBk7、PBk31、PBk32等が挙げられる。
【0035】
本発明に用いる(a)顔料の体積平均粒径は小さいほど発色性に優れるため、体積平均粒径が0.01μm以上0.4μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.02μm以上0.3μm以下の範囲である。最大粒径は3μm以下、好ましくは2μm以下となるよう、インクの構成成分や分散条件等の工程条件を設定することが好ましい。本発明においては、この粒径管理によってインクヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性、及び硬化性組成物に用いる場合は硬化感度を維持することができる。本発明においては、後述する(b−1)高分子化合物を用いるため、顔料の分散性及び分散安定性に優れ、微粒子顔料を用いた場合でも、均一で安定なインク組成物が得られる。
【0036】
なお、上記(a)顔料の体積平均粒径の数値は、レーザー回折・散乱法を用いて得られる値であり、具体的には以下の方法により得られる値である。すなわち、測定装置としてLA−920(堀場製作所製)を用い、トリプロピレングリコールメチルエーテルを測定溶媒として測定される。
【0037】
本発明において、(a)顔料の含有量は、インク組成物中、固形分換算で0.5質量%以上15質量%以下添加されることが好ましく、発色と粘度低減の観点から、1.0質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0038】
<(b)マレイミド化合物>
本発明のインク組成物は、マレイミド基を有するマレイミド化合物を少なくとも2種含有し、かつ(b)当該マレイミド化合物の少なくとも一方が、(b−1)アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する高分子化合物(以下、「(b−1)高分子化合物」とも略記する。)である。
【0039】
<(b−1)アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する高分子化合物>
本発明のインク組成物に含まれる(b−1)高分子化合物は、マレイミド基を有し、かつ、アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する。この(b−1)高分子化合物は、顔料を液体媒体中に分散するための顔料分散剤として使用することが好ましい。
アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基は、顔料表面の酸基または塩基と、酸−塩基相互作用しやすいため、当該顔料表面に吸着し、溶媒親和性セグメントと相まって、優れた分散性、低粘性等を有する。また、マレイミド基は、光環化反応性であるため硬化性(特に酸素による重合阻害を受けやすい薄膜系での硬化性)に優れる。従って、本発明のインク組成物は顔料分散性が良好である上に、硬化性に優れるといった性能を有する。
【0040】
本発明の(b−1)高分子化合物に導入されるマレイミド基としては、N−置換マレイミド基であることが好ましい。また、マレイミド基のC=C二重結合の炭素部分は置換されていてもよく(下記一般式(A))、無置換であってもよい(下記一般式(B))が、本発明では、インク組成物の低粘性、吐出安定性、製造適性等の観点から、下記一般式(A)が好ましい。
【0041】
【化3】

【0042】
及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を表す。R及びRは互いに結合して環を形成していてもよい。また、これらの基はアルキル基または水酸基等の置換基で置換されていてもよい。好ましいR及びRは、互いに結合して環を形成していてもよいアルキル基である。
及びRのアルキル基の炭素数は限定的でないが、例えば1〜6程度、好ましくは1〜4程度である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。
及びRのアリール基としては、炭素数6〜12程度、好ましくは6〜8程度である。フェニル基、ナフチル基、トリル基、メシチル基等が挙げられる。
及びRは互いに結合して環を形成する場合は、例えば、5〜7員環を形成し、その環状に、さらにアルキル基、水酸基等を有していてもよい。
これらの具体例を下記に示す。
【0043】
【化4】



【0044】
より具体的には、本発明の(b-1)高分子化合物は、一般式(1)の繰り返し単位を有することが好ましい。
【0045】
【化5】

【0046】
一般式(1)において、R1は水素原子、メチル基等である。
Aは、単結合、アリーレン基、−COO−*、−CONR−*等を表し、Rは水素原子またはアルキル基を表す。好ましくは、単結合、アリーレン基または−COO−*であり、より好ましくは単結合または−COO−*である。なお、*がBに結合する箇所である。Rにおけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4程度であり、直鎖であっても、分岐であってもよい。
Aのアリーレン基の炭素数は、例えば、6〜12程度、好ましくは、6〜8程度である。また、アリーレン基には、B以外の置換基(アルキル基、水酸基等)を更に有していてもよい。具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、メチルフェニレン基等が挙げられる。
は、単結合、アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基等を表す。好ましくはアルキル基である。これらのアルキレン基、アラルキレン基等には、その基中に、エーテル結合(−O−)またはエステル結合(−COO−または−OCO−)を有していてもよい。また、アルキレン、アラルキレン基等は直鎖であっても、分岐していても良い。
のアルキレン基の炭素数としては、例えば、1〜12程度が好ましく、炭素数1〜6がより好ましい。このアルキレン基は、直鎖であっても分岐していてもよい。また、水酸基、ハロゲン原子等の置換基が置換されていてもよい。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、ヘキサンジイル基、エチレンオキシエチレン基等が挙げられる。
のアリーレン基の炭素数は、例えば、6〜12程度、好ましくは、6〜8程度である。また、アリーレン基には、B以外の置換基(アルキル基、水酸基等)を更に有していてもよい。具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。
のアラルキレン基の炭素数は、例えば、7〜18程度であることが好ましく7〜12程度である。アラルキレン基中のアリーレン基には、B以外の置換基(アルキル基、水酸基、ハロゲン原子等)を有していてもよい。具体的には、−CH−フェニレン−基、フェネチル基等が挙げられる。
としては、好ましくは炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基である。
前記(b−1)高分子化合物の一般式(1)の繰り返し単位の含有量は、(b−1)高分子化合物に対し、例えば1〜30質量%であり、5〜25質量%がより好ましい。この範囲であると、(b−1)顔料分散剤における吸着性セグメントと立体反発性セグメントとのバランスが良く、顔料の分散安定性を確保でき、更に硬化性も良好となる。
【0047】
上記一般式(1)で表される繰り返し単位を与えるモノマー(単量体)の好適な具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
【化6】

【0049】
本発明における上記一般式(1)で表される繰り返し単位を与えるモノマーS−1〜S−8は一般的には公知慣用の方法により製造することができる。例えば、(S−1)〜(S−8)で表されるような高分子化合物の前駆体となるビニルモノマー類は、例えば特開昭52−988号公報、特開平4−251258号公報等に記載の方法を参考に製造できる。
【0050】
本発明の(b−1)高分子化合物は、アミノ基、カルボキシル基(−COOH)及びリン酸基(−OPO)からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する。これらの中でも特にアミノ基を有することが好ましい。アミノ基としては、具体的には、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基等のジアルキルアミノ基;メチルフェニルアミノ基等のアルキルアリールアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;等が挙げられる。
具体的には、(b−1)高分子化合物は、下記一般式(1a)で表される繰返し単位を有することが好ましい。
【0051】
【化7】



【0052】
1aは、水素原子又はメチル基である。
A’は前記Aと同様の二価の連結であり、好ましい範囲は前記Aと同一である。
’は前記Bと同様の二価の連結であり、好ましい範囲は前記Bと同一である。
Eは、アミノ基、カルボキシル基またはリン酸基である。好ましくは、アミノ基である。
【0053】
一般式(1a)で表される繰り返し単位を与えるモノマー(単量体)の例としては、例えば以下のものが挙げられる。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
アミノ基を有する繰り返し単位を形成するモノマーとしては、たとえば、アミノ基を有するビニル化合物などを使用することができる。
このような化合物としては、例えば、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、1−(ジメチルアミノ)−1、1−ジメチルメチル(メタ)アクリレート、6−(ジメチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジイソプロピル)アミノエチル(メタ)アクリレート、2−tertブチルアミノエチルメタクリレート、及びN,N−メチルフェニルアミノエチル(メタ)アクリレート(以上(メタ)アクリレート類);2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミド、及び6−(ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド(以上アミノアルキル(メタ)アクリルアミド類);p−ビニルベンジル−N,N−ジメチルアミン、p−ビニルベンジル−N,N−ジエチルアミン、及びp−ビニルベンジル−N,N−ジヘキシルアミン(以上ビニルベンジルアミン類)が挙げられる。
【0055】
グラフト重合体の構成成分として用い得る酸基を有する繰り返し単位を形成するモノマーを使用することも可能である。このようなモノマーとしては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基またはそれらの中和塩を有するビニル化合物が挙げられる。
カルボキシル基を有する繰り返し単位を形成するモノマーとしては、たとえば、カルボキシル基を有するビニル化合物などを使用することができる。
カルボン酸を有するビニル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、1−メチル―2−メタクリロイロキシプロピルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、アクリル酸ダイマー、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルマレイン酸、ビニル安息香酸、ビニルフェニル酢酸、マレイン酸、イタコン酸、安息香酸ビニルなどのビニル基とカルボキシル基を少なくとも1つずつ有する化合物が挙げられ、これらのアルカリ金属塩、4級アンモニウム塩等も用いることができる。
【0056】
リン酸基を有する繰り返し単位を形成するモノマーとしては、たとえば、リン酸基を有するビニル化合物などを使用することができる。
リン酸基を有するビニル化合物としては、(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、メタクリロイロキシポリアルキレングリコールアシッドホスフェートなどのビニル基とリン酸基を少なくとも1つずつ有する化合物が挙げられ、これらのアルカリ金属塩や、4級アンモニウム塩も用いることができる。
本発明のインク組成物に用いる(b−1)マレイミド化合物は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位に加え、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0057】
本発明のインク組成物に用いる(b-1)高分子化合物は、顔料の分散性を高める構造として、上記一般式(1)で表される繰り返し単位に加え、顔料への吸着性を高める成分として、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0058】
【化8】

【0059】
上記一般式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Jは、単結合、−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、又はフェニレン基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Wは、単結合又は2価の連結基を表す。Pは3〜5個の環が縮合した縮合環であり、縮合環は炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子で置換されていても良い。
【0060】
上記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む重合体は、上記一般式(2)中のP(3〜5個の環が縮合した縮合環)と(a)顔料または顔料の表面処理剤との、水素結合、π−π相互作用などの分子間相互作用により、(a)に対する(b−1)高分子化合物に対する(a)顔料の吸着性が非常に良好であるものと考えられる。このため、(b-1)高分子化合物は(a)顔料を良好に分散することができる。
【0061】
上記一般式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
上記一般式(2)中、Jは、単結合、−CO−、−COO−*、−CONR−*、−OCO−*、又はフェニレン基を表す。*がWとの結合部位である。
は、水素原子、アルキル基、アリール基(例えば、フェニル基)、アラルキル基を表し、前記アルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。またRとしては、上記の中でも、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
これらのうち、Jとしては、−COO−、−CONR−又はフェニレン基が好ましく、−COO−、−CONH−又はフェニレン基がより好ましく、−COO−又はフェニレン基が最も好ましい。
【0062】
上記一般式(2)中、Wは、単結合又は2価の連結基を表す。
で表される2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、又はアラルキレン基、アミド結合(−CONR−または−NRCO−)等が挙げられ、アルキレン基、又はアラルキレン基中には、イミノ結合、エステル結合、エーテル結合、スルホンアミド結合、ウレタン結合、ウレイレン結合、カーボネート結合、又は複素環が結合基として介在していてもよい。なお、これらのアルキレン基又はアラルキレン基は置換基を有してもよい。
【0063】
で表されるアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましい。アルキレン基の具体例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基等が挙げられ、中でもメチレン基、エチレン基、プロピレン基等は特に好ましい。
【0064】
で表されるアラルキレン基としては、炭素数7〜13のアラルキレン基が好ましく、例えば、ベンジリデン基、シンナミリデン基等が挙げられる。
で表されるアリーレン基としては、炭素数6〜12のアリーレン基が好ましく、例えば、フェニレン基、クメニレン基、メシチレン基、トリレン基、キシリレン基等が挙げられ、中でもフェニレン基は特に好ましい。
で表されるアルキレン基またはアラルキレン基は置換基を有していても良く、置換基としては、炭素数1〜4の直鎖、又は分岐のアルキル基、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。
【0065】
また、Wで表される2価の連結基中には、イミノ結合(−NH−)、エステル結合(−COO−又は−OCO−)、エーテル結合(−O−)、スルホンアミド結合(−NHSO−又は−SONH−)、ウレタン結合(−NHCOO−又は−OCONH−)、ウレイレン結合(−NHCONH−)、カーボネート結合(−OCOO−)、又は複素環を有する基(具体的には、例えば複素環から水素を2つ除いた基)、が結合基として介在していてもよい。上記複素環としては例えば、ジオキサン、ジオキソラン、ピペラジン等の酸素原子又は窒素原子を含んだ5〜7員環化合物などが挙げられる。
【0066】
としては、単結合、或いは、無置換又は水酸基若しくはアミノ基で置換された炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキレン基(このアルキレン基中に、イミノ結合、エステル結合、エーテル結合、ウレタン基又はウレイレン結合が結合基として介在していてもよい)であることが好ましい。
【0067】
上記一般式(2)中、Pは3〜5の縮合環であり、縮合環は炭素数1〜4のアルキル基、カルボニル基、水酸基、ハロゲン原子で置換されていても良い。一般式(2)の繰り返し単位はPが顔料と相互作用し、顔料に吸着すると考えられる。前記縮合環は脂環、芳香環、複素環、環状ケトンから選ばれる3〜5個の環が縮合した化合物を表し、少なくとも1つは芳香環であることが好ましい。芳香環を有することにより縮合環の平面性が高まり、顔料への吸着性が高まるものと考えられる。前記縮合環を形成する脂環としては、シクロプロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンが好ましく挙げられる。前記縮合環を形成する芳香環としては、ベンゼンが好ましく挙げられる。前記縮合環を形成する複素環としては、フラン、ピロール、イミダゾール、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリドン、4−オキソチアン、シクロヘキサンジオン、スクシンイミド、グルタルイミド、バレロラクトン、バレロラクタム、オキサジンなどが好ましく挙げられる。前記縮合環は有機顔料への相互作用を高める観点から、公知の有機顔料に含まれる。
前記縮合環は公知の有機顔料に含まれる部分構造であることも好ましい。有機顔料に含まれる縮合環は平面性が高く、水素結合性基を含む傾向にあるため、顔料中のπ平面や水素結合性基と相互しやすく、吸着性に優れるものと推察される。前記縮合環が顔料の部分構造である場合は、前記縮合環の構造が(a)顔料の部分構造であると吸着性がより高まり、分散性が高まる傾向にある。
【0068】
前記Pで表される、縮合環としては、例えば、アクリドン、キナクリドン、アントラキノン、ナフタルイミド、カルバゾール、フェナジン、ジオキサジン、ナフトキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオレン、フルオレノン、アンスロン、キサントン、チオキサントン、ベンゾフラン、アントラセンから水素原子を1つ除した基が好ましく挙げられ、これら縮合環は炭素数1〜4のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子で置換されていても良い。
【0069】
上記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む(b−1)高分子化合物は、製造安定性の点で、一般式(2)で表される繰り返し単位を与えるモノマーを均一系の重合反応により導入して合成することが好ましい。顔料の部分骨格を有する一般式(2)の繰り返し単位を与えるモノマーは、溶解性が低い傾向にあるが、均一系の重合反応により導入することにより、一般式(2)の繰り返し単位を、(b−1)高分子化合物に所望の組成比で安定的に導入することができる。
また、上記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む前記(b−1)高分子化合物は(2)の繰り返し単位を与えるビニルモノマーを用いて導入して合成することもできる。
【0070】
上記一般式(2)で表される繰り返し単位の含有量は、顔料への吸着性と分散媒および重合溶媒への溶解性の観点から(b−1)高分子化合物全体に対し2質量%以上40質量%以下が好ましく、5質量%以上35質量%以下がより好ましく、5質量%以上30質量%以下が最も好ましい。
上記一般式(2)で表される繰り返し単位を与えるモノマーの好適な具体例としては、例えば、以下に示すモノマー(例示モノマー:M−1〜M−17)が挙げられる。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0071】
【化9】



【0072】
【化10】



【0073】
【化11】

【0074】
上記M−1〜M−17のモノマーは、公知慣用の方法により製造することができる。モノマーの製造方法については特に制限はないが、例えば、特開2010−13630や、特開2008−274219の記載の方法や、(メタ)アクリル酸、塩化(メタ)アクリロイルや、イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、クロロメチルスチレン、ヒドロキシスチレン、ハロゲン化スチレン、ビニル安息香酸などの反応性官能基を有するモノマーと、3〜5個の環が縮合した縮合環、およびその置換体の官能基の反応により得ることができる。
【0075】
本発明に係る(b−1)高分子化合物は、上記一般式(1)、一般式(1a)及び一般式(2)で表される繰り返し単位以外の、他の繰り返し単位を有していてもよい。
また(b−1)高分子化合物は、末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマー(以下、単に「重合性オリゴマー」とも称する。)に由来する繰り返し単位を含むグラフト共重合体であることが特に好ましい。このような末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーは、所定の分子量を有する化合物であることからマクロモノマーとも呼ばれる。
【0076】
重合性オリゴマーに由来する繰り返し単位を含む重合体は、重合性オリゴマーの液体媒体に対する高い親和性により、顔料をより安定に分散させることができる。このため、前記重合性オリゴマーは、液体媒体に対して親和性が高いことが好ましい。重合性オリゴマーの液体媒体への親和性は、例えばHOYにより提唱された溶解性パラメーターにより見積もることができる。(例えば、「ジャーナルオブペイントテクノロジー」1970年、42巻、76−78ページを参照。)
【0077】
溶質と溶媒の溶解性パラメーターδtの値が近い場合、溶質の溶媒への溶解性が良いとされることから、重合性オリゴマーの溶解性パラメーターは、液体媒体の溶解性パラメーターの80%から120%の範囲であることが好ましく、85%から115%の範囲がより好ましい。重合性オリゴマーの溶解性パラメーターの好適な範囲は、本発明の顔料分散物を適用してなるインク組成物等においても同様である。溶解性パラメータの値がこの範囲であれば、重合性オリゴマーの構造は特に限定されない。重合性オリゴマーの溶解性パラメーターがこの範囲であることで、顔料分散物に含有される顔料の分散安定性がより優れたものとなる。
【0078】
重合性オリゴマーは、ポリマー鎖部分とその末端のエチレン性不飽和二重結合を有する重合可能な官能基の部分からなる。このようなエチレン性不飽和二重結合を有する基は、ポリマー鎖の一方の末端にのみ有することが、所望のグラフト重合体を得るという観点から好ましい。エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基が好ましく、特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。
重合性オリゴマーにおけるポリマー鎖部分は、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン及びその誘導体、アクリロニトリル、酢酸ビニル、及びブタジエンからなる群より選ばれる少なくとも一種のモノマーから形成される単独重合体若しくは共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、又はポリカプロラクトンであることが一般的である。
【0079】
重合性オリゴマーは、下記一般式(3)で表される重合性オリゴマーであることが好ましい。
【0080】
【化12】



【0081】
一般式(3)中、R11及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R12は、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐のアルキレン基(好ましくは炭素原子数2〜4のアルキレン基であり、置換基(例えば水酸基)を有していてもよく、さらにエステル結合、エーテル結合、スルフィド結合、アミド結合等を介して連結していてもよい)を表す。
Yは、フェニル基、炭素原子数1〜4のアルキル基を有するフェニル基、又は−COOR14を表す。但し、R14は、炭素原子数1〜6のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数7〜10のアリールアルキル基を表す。Yとしては、フェニル基、又はR14が炭素原子数1〜12のアルキル基である−COOR14であることが好ましい。
qは15〜200を表し、好ましくは20〜150であり、より好ましくは20〜100である。
【0082】
重合性オリゴマー(マクロモノマー)の好ましい例としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリ−イソブチル(メタ)アクリレート、又はポリスチレンの分子末端の一個に(メタ)アクリロイル基が結合したポリマーを挙げることができる。市場で入手できるこのような重合性オリゴマーとしては、例えば、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(Mn=6000、商品名:AS−6、東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AA−6、東亜合成化学工業(株)製)、又は片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AB−6、東亜合成化学工業(株)製)を挙げることができる。
【0083】
重合性オリゴマーとしては、前記一般式(3)で表される重合性オリゴマーだけでなく、下記一般式(4)で表される重合性オリゴマーも好ましい。
(c)重合性化合物を併用する場合(例えば、(c)重合性化合物が含まれた本発明の顔料分散物を用いる場合、又は本発明の顔料分散物に(c)重合性化合物を添加して硬化性組成物として用いる場合)には、重合性オリゴマーは、(c)重合性化合物に応じて適宜選択することが特に好ましい。
【0084】
【化13】



【0085】
上記一般式(4)中、R21は水素原子又はメチル基を表し、R22は、炭素数1〜8の直鎖、又は分岐のアルキレン基を表す。X21は、−OR23又は−OCOR24を表す。ここで、R23及びR24は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。nは2〜200を表す。
【0086】
21は、水素原子又はメチル基を表す。
22は、炭素数1〜8の直鎖、又は分岐のアルキレン基を表し、中でも、炭素数1〜6の直鎖、又は分岐のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基がより好ましい。
21が−OR23を表す場合、R23は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、又は炭素数1〜18のアルキル基で置換されたフェニル基であることが好ましい。X21が−OCOR24を表す場合、R24は、炭素数1〜18のアルキル基であることが好ましい。
nは、2〜200を表し、5〜150が好ましく、10〜100が特に好ましい。
【0087】
一般式(4)で表される重合性オリゴマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられ、これらは市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよい。
【0088】
一般式(4)で表される重合性モノマーは、前記したように市販品としても入手可能である。市販品としては、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名:NKエステルM−40G,M−90G,M−230G(以上、新中村化学工業(株)製)、ブレンマーPME−100、PME−200、PME−400,PME−1000,PME−2000、PME−4000(以上、日本油脂(株)製))、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350,日本油脂(株)製)、ラウリロキシポリエチレングリコールアクリレート(商品名:ブレンマーALEシリーズ、日本油脂(株)製)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPP−500、PP−800、PP−1000、日本油脂(株)製)、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー70PEP−370B、日本油脂(株)製)、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー55PET−800、日本油脂(株)製)、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーNHK−5050、日本油脂(株)製)などが挙げられる。
【0089】
重合性オリゴマーは、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が500〜20000の範囲にあることが好ましく、特に、2000〜15000の範囲が好ましい。
(b−1)高分子化合物中に含まれる重合性オリゴマーに由来する繰り返し単位の含有量は、(b−1)高分子化合物全体に対し、40質量%以上95.5質量%以下が好ましく、50質量%以上92.5質量%以下がより好ましく、55質量%以上90質量%以下が最も好ましい。(b−1)高分子化合物における重合性オリゴマーに由来する繰り返し単位の割合が、この範囲にあることで、液体媒体への親和性が良好であり、(b−1)高分子化合物の(a)顔料への吸着性により優れることから、顔料分散物やその適用態様であるインク組成物の粘度を効果的に抑制しうる。
【0090】
以下に、本発明において好ましく用いられる重合性オリゴマーの具体例を示す。尚、本発明はこれに限るものではない。
【0091】
【化14】

【0092】
(b−1)高分子化合物は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を与えるモノマー、アミノ基、カルボキシル基又はリン酸基を有するモノマー及び重合性オリゴマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。該共重合可能な他のモノマーの例としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル(例、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル(例、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど)、不飽和カルボン酸(例、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸)、芳香族ビニル化合物(例、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾールなど)、カルボン酸ビニルエステル(例、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル)、シアン化ビニル(例、(メタ)アクリロニトリル及びα−クロロアクリロニトリル)、ビニルエーテル(シクロヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニル及び脂肪族共役ジエン(例、1、3−ブタジエン及びイソプレン)を挙げることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステルが好ましい。
【0093】
(b−1)高分子化合物が、上記一般式(1)で表される繰り返し単位、上記一般式(2)で表される繰り返し単位、上記一般式(1a)で表される繰り返し単位及び重合性オリゴマーに由来する繰り返し単位の他に、上記の共重合可能な他のモノマーに由来する繰り返し単位を有する場合、当該他のモノマーに由来する繰り返し単位を、(b−1)高分子化合物に含まれる全繰り返し単位の30質量%以下の範囲で有することが好ましい。
【0094】
(b−1)高分子化合物の好ましい重量平均分子量(Mw)は、顔料の分散安定性及び顔料分散物の粘度の観点から、10000以上500000以下の範囲が好ましく、特に15000以上200000以下の範囲が好ましい。ここで重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(キャリア:リチウムブロミド1mM含有N−メチルピロリドン)により測定されるポリスチレン換算重量平均分子量である。
【0095】
(b−1)高分子化合物の好適な例を以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0096】
【化15】

【0097】
【化16】

【0098】
【化17】

【0099】
式(P−1)〜(P−11)で表される高分子化合物は、前記のモノマーを公知の重合方法により重合することにより得ることができ、例えば、特開昭52−988号公報、特開昭55−154970号公報、Langmuir 18巻14号5414〜5421頁(2002年)、特開2010−13630等に記載の重合方法準じた方法で製造することができる。
【0100】
本発明のインク組成物は、(b−1)高分子化合物を1種のみ含んでもよく、2種以上を併用してもよい。顔料分散物中の(b−1)高分子化合物の含有量は、(a)顔料100質量部に対し、1質量部以上100質量部以下が好ましく、5質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。
【0101】
なお、本発明のインク組成物には、効果を損なわない限りにおいて、(b-1)高分子化合物に加えて、公知の顔料分散剤を併用することができる。その添加量としては、(b-1)高分子化合物100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下の範囲であることが好ましい。さらに、必要に応じて分散助剤として、各種(a)顔料に応じたシナージスト(相乗剤)を用いることも可能である。分散助剤は、(a)顔料100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下の範囲で添加することが好ましい。
【0102】
<(b−2)マレイミド化合物の他方>
本発明のインク組成物は、(b−1)高分子化合物の以外に、少なくとももう1種類のマレイミド化合物(以下、「(b−2)化合物」とも略記する。)を含有する。(b−2)化合物は、マレイミド基を有していれば限定的でないが、(b−1)高分子化合物以外のマレイミド化合物であることが好ましく、例えば、アミノ基、カルボキシル基又はリン酸基を有する低分子化合物;アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基のいずれも有しない化合物;などであることが好ましく、より好ましくは、アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基のいずれも有しない化合物である。(b−2)化合物は、架橋反応をさせる目的から多官能であることが好ましく、特に、式(5)で表されるマレイミド基を2つ以上有する化合物であることが好ましい。以下、マレイミド基を含有し、かつ、アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基のいずれも有しない化合物について、下記に詳述する。
マレイミド基を2つ以上有する化合物は、分子中に式(5)で表される基を2つ以上有する化合物であれば、制限することなく使用することができる。式(5)で表される基を2つ以上有する化合物を使用することで、インク組成物の架橋反応を進めることができる。
【0103】
【化18】

【0104】
(式(5)中、R及びRは各々独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して4〜6員環を形成しても良い。)
【0105】
式(5)において、R及びRは置換基を有していても、置換基を有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
【0106】
及びRは各々独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等を表す。R及びRは互いに結合して4〜6員環を形成しても良い。インク組成物を硬化した後の耐溶剤性及び基材への密着性等といった、インク硬化膜の膜物性の観点から、R及びRは各々独立に、炭素数1〜2のアルキル基、即ち、メチル基、又は、エチル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。また、R及びRが互いに結合して4〜6員環を形成する場合は、5〜6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。
【0107】
(b-2)化合物は、分子量300〜2,000の低分子化合物であっても、重量平均分子量5,000以上の高分子化合物であっても良い。
【0108】
(b-2)化合物が、分子量300〜2,000の低分子化合物である場合、(b−2)化合物の1分子中に、式(5)で表される基は2〜6であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2〜3であることがさらに好ましく、2であることが特に好ましい。
【0109】
(b−2)化合物が分子量300〜2,000の低分子化合物である場合、以下の一般式(5−L)で表される化合物であることが好ましい。
【0110】
【化19】

【0111】
(式(5−L)において、R及びRは各々独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して4〜6員環を形成しても良い。Qaはg価の連結基を表す。gは2以上の整数を表す。)
【0112】
一般式(5−L)において、R及びRは各々独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して4〜6員環を形成しても良い。式(5−L)におけるR及びRは、既述の式(5)におけるR及びRとして例示したものと(好ましい例示も含めて)同様である。
【0113】
一般式(5−L)において、Qaはg価の連結基を表す。Qaは炭化水素からg個の水素原子が除去された残基であることが好ましい。Qaが炭化水素からg個の水素原子が除去された残基である場合、前記炭化水素中にはエーテル基、エステル基、アミノ基、アミド結合、シリルエーテル基、チオール基等が存在していてもよい。前記炭化水素の炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。前記炭化水素は芳香族炭化水素であることが好ましく、芳香族炭化水素としてはベンゼン、ナフタレン等が挙げられる。
【0114】
一般式(5−L)において、gは2以上の整数を表し、2〜6であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2〜3であることがさらに好ましく、2であることが特に好ましい。
【0115】
(b−2)化合物が分子量300〜2,000の低分子化合物である場合、本願では以下の化合物を好ましく用いることができる。
【0116】
【化20】



【0117】
【化21】



【0118】
(b−2)化合物が、重量平均分子量5,000以上の高分子化合物である場合、(b−2)化合物の1分子中に、式(5)で表される基は2つ以上含有されればよく、特に制限はないが、2つ以上500以下が好ましく、10以上200以下がさらに好ましい。
【0119】
インク組成物をインクジェット法により吐出する際の吐出性等の観点から、重量平均分子量は5,000〜200,000であることが好ましく、7,000〜100,000であることがより好ましく、10,000〜50,000であることがさらに好ましく、10,000〜30,000であることが特に好ましい。
【0120】
なお重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。
【0121】
(b−2)化合物が、重量平均分子量5,000以上の高分子化合物である場合、高分子化合物の側鎖または末端に式(1)で表される基を有する高分子化合物であれば、その他の高分子構造に限定はなく、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレンイミン、ポリスチレン等の高分子構造を使用することができる。インクジェット法によるインク組成物の吐出性、インク組成物を硬化した後の耐溶剤性及び基材への密着性等の観点から、(b−2)化合物は、ポリアクリレートおよびポリウレタンより選ばれる少なくとも1種の高分子構造を有することが好ましく、ポリアクリレート構造を有することが特に好ましい。
【0122】
(b−2)化合物が高分子化合物である場合、(b−2)化合物は下記一般式(5´)で表される構造を含む高分子化合物であることが好ましい。
【0123】
【化22】

【0124】
(式(5´)において、R及びRは各々独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して4〜6員環を形成しても良い。Rは水素原子又はメチル基を表す。Zは−COO−、−CONR−を表し、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Xは2価の有機基を表す。)
【0125】
式(5´)において、R及びRは各々独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して4〜6員環を形成しても良い。式(5´)におけるR及びRは、既述の式(5)におけるR及びRとして例示したものと(好ましい例示も含めて)同様である。
【0126】
式(5´)において、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rはメチル基であることが好ましい。
【0127】
式(5´)において、Zは−COO−、−CONR−を表す。Zは−COO−であることが好ましい。
また、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基を表す。Rは水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、即ち、メチル基、又は、エチル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。なお、Rは置換基を有していても、置換基を有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。置換基としては既述のものが挙げられる。
【0128】
式(5´)において、Xは2価の有機基を表す。2価の有機基としては、炭素数2〜20のアルキレン基であることが好ましい。前記アルキレン基は−(C2i)−または−(C2i−2)−であり、かつiが2〜20の整数であることが好ましい。前記アルキレン基は直鎖構造であっても分岐構造であっても環状構造であってもよい。また、アルキレン基中には、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、アリーレン基が存在していてもよい。Xがアルキレン基である場合の炭素数は2〜20であることが好ましく、炭素数2〜12であることがより好ましく、炭素数2〜8であることがさらに好ましい。
【0129】
式(5´)において、R及びRは各々独立に炭素数1〜2のアルキル基であり、Rはメチル基であり、Zは−COO−であり、Xは−(C2i)−または−(C2i−2)−であり、iが2〜12の整数であることが好ましい。
【0130】
(b−2)化合物が上記一般式(5´)で表される構造を含む高分子化合物である場合、当該高分子化合物は下記一般式(5´−1)で表される単量体を重合して得られる高分子化合物であることが好ましい。前記重合は一般式(5´−1)で表される単量体を単独で重合したものであっても、共重合が可能なその他の単量体と共重合したものであっても良いが、インク組成物を硬化した後の膜物性を制御する観点から共重合物であることが好ましい。
【0131】
【化23】

【0132】
(式(5´−1)において、R及びRは各々独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して4〜6員環を形成しても良い。Rは水素原子又はメチル基を表す。Zは−COO−、−CONR−を表し、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Xは2価の有機基を表す。)
【0133】
式(5´−1)において、R、R、R、Z、及びXは、式(5´)における定義と好ましい範囲も含めて同様である。
【0134】
式(5´−1)で表される単量体の好ましい例としては以下のものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0135】
【化24】

【0136】
【化25】

【0137】
【化26】

【0138】
式(5´−1)で表される単量体と共重合し得る単量体としては、スチレン、p−メトキシスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−p−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、p−スルファモイルフェニル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。式(1´−1)で表される単量体と共重合し得る単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜8程度のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、上記以外の公知のモノマーを、必要に応じて使用することもできる。
【0139】
(b−2)化合物が共重合体である場合、下記一般式(A´)の構造を有することが好ましい。
【0140】
【化27】

【0141】
(式(A´)において、R及びRは各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して4〜6員環を形成しても良い。R、Rcx及びRcyはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。R及びRは各々独立に炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。Zは−COO−、−CONR−を表し、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Xは2価の有機基を表す。a、b及びcは高分子化合物における共重合比を表し、a、b及びcの総和は100となる。dは0又は1を表す。)
【0142】
式(A´)において、R、R、R、Z、及びXは、式(5´)における定義と好ましい範囲も含めて同様である。
【0143】
式(A´)において、Rcx及びRcyはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。Rcx及びRcyは共にメチル基であることが好ましい。
【0144】
式(A´)において、R及びRは各々独立に炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。これらの基は置換基を有していても、置換基を有していなくてもよい。また、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。これらは必要に応じて塩を形成していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基等を表す。炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることが最も好ましい。
【0145】
これらの基は置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、炭素数2〜7のアルキルオキシカルボニル基、炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数7〜11のアリールオキシカルボニル基、炭素数7〜11のアリールカルボニルオキシ基、炭素数1〜7のアルキルカルバモイル基、炭素数7〜11のアリールカルバモイル基等が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子がより好ましい。R及びRの少なくとも一方がこれらの置換基を有しその置換基に炭素が含まれる場合、その置換基の炭素数は、上記R及びRに記載の炭素数が1〜10のアルキル基の炭素数として含めないものとする。
【0146】
式(A´)において、a、b及びcは高分子化合物における共重合比を表し、a、b及びcの総和は100となる。30≦a+b≦90かつ10≦c≦70であることが好ましく、40≦a+b≦90かつ10≦c≦60であることがさらに好ましい。
【0147】
式(A´)において、dは0又は1を表し、1であることが好ましい。
【0148】
(b−2)化合物として、以下のものを挙げることができるが、本願はこれに限定されない。
【0149】
【化28】

【0150】
【化29】

【0151】
本発明において、(b−2)化合物として、(A−1)〜(A−6)を好ましく使用することができ、(A−2)〜(A−4)が特に好ましい。
【0152】
本発明における(b−2)化合物やその前駆体は、一般的には公知慣用の方法により製造することができる。例えば、式(1−1)〜(1−12)で表されるような低分子化合物は、米国特許公開公報US2009/0224203A1、Synlett 13巻2172〜2176頁(2009年)、Journal of Polymer Science Part A−1 Polymer Chemistry 10巻6号1687〜1699頁(1972年)等に記載の方法により製造でき、式(1−1−1)〜(1−1−16)で表されるような高分子化合物の前駆体となるアクリレート類は、特開昭52−988号公報、特開平4−251258号公報等に記載の方法で製造でき、式(A−1)〜(A−16)で表される高分子化合物は、前記の前駆体を公知の重合方法により重合することにより得ることができ、例えば、特開昭52−988号公報、特開昭55−154970号公報、Langmuir 18巻14号5414〜5421頁(2002年)等に記載の重合方法準じた方法で製造することができる。
【0153】
(b−2)化合物のインクジェット記録用インク組成物中における含有量としては、1〜50重量%が好ましく、2〜35重量%がより好ましく、5〜30重量%がさらに好ましい。(b−2)化合物の含有量は、1重量%以上であると、良好で良好な硬化膜物性が得られ、50重量%以下であると、インク粘度を適性に保てる。
本発明のインク組成物は特に(b)マレイミド化合物の少なくとも2種を含有し、かつ、前記(b)マレイミド化合物の少なくとも一方が(b−1)アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する高分子化合物であるため、インク組成物の保存安定性及び硬化性(特に薄膜形成時の硬化性)に優れる。このメカニズムは明らかではないが、下記のように推察される。複数含有されるマレイミド化合物のうち、(b−1)高分子化合物について、当該高分子化合物が有するアミノ基、カルボキシル基又はリン酸基が優れた顔料への吸着性基として機能して、顔料に効果的に吸着するため、顔料分散剤として効果的に働き、顔料凝集によるインク保存安定性の劣化を防止する。そして、当該高分子化合物がもつマレイミド基が、活性エネルギー線の照射により光二量化反応が進行し架橋し硬化する性質を発揮し、その上当該マレイミド基を繰り返し単位として多数持つため、架橋密度が高まり硬化性が向上する。また、インク組成物中に含まれる別種のマレイミド基である(b−2)化合物が、顔料に実質的に吸着せずにインク組成物中に均一に溶解して存在するため、(b−1)高分子化合物と相まって、マレイミド基の光ニ量化反応(硬化性)を相乗的に発揮する。特に、マレイミド基の有する光二量化反応は、従来のラジカル重合による硬化と比較して、酸素による反応阻害を受けにくく、酸素の供給による硬化阻害が顕著に現れる薄膜系での硬化性を向上させることができると推察される。なお、上記メカニズムは推察であり、本発明はこの推定メカニズムに限定されるものではない。
【0154】
<重合性化合物>
本発明のインク組成物は、(b−1)高分子化合物及び(b−2)化合物の他に、重合性化合物を含有する。本発明のインク組成物は(b−2)化合物とともに重合性化合物を含有することで、インクの硬化性の良好な画像を形成することができる。
【0155】
本発明のインク組成物には重合性化合物としては、何らかのエネルギー付与により重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく使用することができるが、特に、所望により添加される重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起する、ラジカル重合性モノマーを含有することが好ましい。
ラジカル重合性モノマーとしては、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物が好適に挙げられる。より具体的には、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有するモノマーである。
【0156】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマーの一例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステルおよびこれらの塩;エチレン性不飽和基を有する無水物;アクリロニトリル;スチレン等が挙げられる。また、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ポリウレタンなどのマクロモノマ等も挙げられる。
ラジカル重合性モノマーは、特に、ラジカル重合性単官能モノマーとラジカル重合性多官能モノマーとが挙げられる。
単官能モノマーの好ましい例示としては、テトラヒドロフルフリルアクリレート、サイクリックトリメチロールプロパンフォルマールアクリレート等の環状のエーテル酸素原子を有するアクリレート;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート等の芳香環を有するアクリレート;イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート等のビシクロ環構造又はトリシクロ環構造を有するアクリレート;2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシエチレングリコールモノアクリレート等の鎖状のエーテル結合を有するアクリレート;などが挙げられる。そのほか、N−ビニルカプロラクタム等も好ましい。
【0157】
2官能以上の多官能モノマーの好ましい例示としては、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール(PO変性)ジアクリレート、トリメチロールプロパン(PO変性)トリアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、変性ビスフェノールAジアクリレート等が挙げられる。なお、POはプロピレンオキシド、EOはエチレンオキシドを示す。また、トリエチレングリコールジビニルエーテル等の多官能ビニルエーテルなども挙げられる。
【0158】
これらの例のほかに、たとえば、例えば特開2008−208190号公報や同2008−266561号公報に記載の(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、ビニルエーテル化合物、スチレン化合物、N−ビニル化合物などが挙げられる。
【0159】
本発明のインク組成物に対する重合性化合物の割合は、硬化性の観点から、インク組成物の全質量に対し、50質量%以上95質量%以下が好ましく、より好ましくは60質量%以上90質量%以下である。
【0160】
本発明のインク組成物には、本発明のインク組成物には(c)重合性化合物として、所謂重合性オリゴマーを添加することもできる。重合性オリゴマーとは、オリゴマー末端に少なくとも1つ以上の重合性官能基を有する化合物であり、重量平均分子量として400〜10000以下の範囲である。
【0161】
重合性オリゴマーが有する末端の重合性官能基としては、重合性の観点から(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基、スチリル基が導入されていることが好ましい。中でもアクリロイル基が導入されているオリゴマーがより好ましい。重合性オリゴマーとしては、ポリエステルオリゴマー、ウレタンオリゴマー、変性ポリエーテルオリゴマー、アクリルオリゴマー、エポキシオリゴマーから選ばれる少なくとも1つ以上を使用することが好ましい。
【0162】
重合性オリゴマーとしては、例えば、CN9001、CN9002、CN902J75、CN961H81、CN963A80、CN963B80、CN963E75、CN964、CN964B85、CN965、CN968、CN981、CN982A75、CN983、CN984、CN9893、CN996、CN970A60、CN972、CN975、CN978、CN991、CN992、CN999、CN816、CN817、CN818、CN292、CN293、CN294、CN294、CN736、CN738、CN750、CN2100、CN2200、CN2101(以上、Sartomer社製);Ebecryl 230、Ebecryl 244、Ebecryl 245、Ebecryl 270、Ebecryl 284、Ebecryl 285、Ebecryl 4830、Ebecryl 4858、Ebecryl 8402、Ebecryl 8804、Ebecryl 8807、Ebecryl 8803、Ebecryl 8800、Ebecryl 254、Ebecryl 264、Ebecryl 1259、Ebecryl 1264、Ebecryl 9260、Ebecryl 8210、Ebecryl 5129、Ebecryl 1290、Ebecryl 210、Ebecryl 204、Ebecryl 220、Ebecryl 4450、Ebecryl 770、Ebecryl 81、Ebecryl 84、Ebecryl 83、Ebecryl 80、Ebecryl 657、Ebecryl 800、Ebecryl 810、Ebecryl 812、Ebecryl 1657、Ebecryl 450、Ebecryl 670、Ebecryl 830、Ebecryl 870、Ebecryl 2870、Ebecryl 1870、Ebecryl 745、Ebecryl 767、Ebecryl 1701、Ebecryl 1755(以上、ダイセルサイテック社製); Laromer LR8765、Laromer LR8986、Laromer LR88987、Laromer LR8739、Laromer LR8983(以上、BASF社製);NKオリゴEA-6310、NKオリゴEA1020、NKオリゴEA-6320(以上、新中村化学工業社製)などが挙げられる。
【0163】
本発明におけるインク組成物における重合性オリゴマーの含有量はインク組成物に対して、1質量%〜15質量%含有することが好ましく、1質量%〜10量%が好ましい。
【0164】
<重合開始剤>
本発明のインク組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤としては、熱重合開始剤及び光重合開始剤のいずれであってもよい。熱重合開始剤を含むと、インク組成物物は加熱により良好な硬化性を示す。また、光重合開始剤を含むと、インク組成物は活性エネルギー線の照射により硬化する。例えば本発明のインク組成物を用いて画像を形成する場合、にじみのない鮮鋭な画像を得るためには、インク組成物を瞬時に硬化させることが好ましい。このため、本発明のインク化組成物には、重合開始剤として光重合開始剤を用いることが好ましい。また、本発明のインク組成物は顔料の分散安定性が良好であるため、光重合開始剤存在化での保存安定性が良好であることも特徴の一つである。
【0165】
ここで活性エネルギー線とは、その照射によりインク組成物中において開始種を発生させうるエネルギーを付与することができるものであれば、特に制限はなく、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含する。これらのうち、硬化感度及び装置の入手容易性の観点からは、紫外線又は電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。したがって、本発明のインク組成物としては、放射線として、紫外線を照射することにより硬化可能なものが好ましい。紫外線を発生させる光源としては、300nm〜400nmに発光波長を有するものが好ましく、公知の紫外線ランプである低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ショートアーク放電ランプ、紫外線発光ダイオード、半導体レーザー、蛍光灯などを使用することができ、開始剤に適した光量や波長により、高圧放電ランプに属する高圧水銀ランプやメタルハライドランプ、ショートアーク放電ランプに属するキセノンランプが好ましく用いられる。また、省エネルギーの観点から紫外線発光ダイオードも好ましく用いられる。
【0166】
本発明のインク組成物は、ラジカル重合の重合開始剤を含有することが好ましく、光重合開始剤を含有することがより好ましい。
以下、光重合開始剤について、さらに詳細に説明する。
【0167】
<光重合開始剤>
本発明のインク組成物は、上記の通り、光重合開始剤を含んでもよい。光重合開始剤は、光の作用、又は、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカル、酸及び塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物である。
【0168】
光重合開始剤は、照射される活性光線、例えば、波長が400nm〜200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどに感度を有するものを適宜選択して使用することができる。
【0169】
光重合開始剤としては、当業者間で公知のものを制限なく使用でき、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993).や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A :Chemistry,73.81(1993).や、J.P.Faussier ”Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications” :Rapra Review vol.9,Report,Rapra Technology(1998).や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996).に多く記載されているものを使用することができる。また、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照に記載されている化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物を使用することができる。さらには、F.D.Saeva,Topics in Current Chemistry,156,59(1990).、G.G.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,1(1993).、H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(1990).、I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(1980).等に記載されているような、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0170】
光重合開始剤としては、(i)芳香族ケトン類、(ii)芳香族オニウム塩化合物、(iii)有機過酸化物、(iv)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(v)ケトオキシムエステル化合物、(vi)ボレート化合物、(vii)アジニウム化合物、(viii)メタロセン化合物、(ix)活性エステル化合物、(x)炭素ハロゲン結合を有する化合物等が好ましく、例えば特開2010−13630の明細書の段落[0147〜0225]に記載の光重合開始剤を挙げることができる。
【0171】
重合開始剤としての光重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、光重合開始剤の含有量は、インク組成物中に、0.1質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0172】
本発明のインク組成物には、必須成分の他に、開始剤等を含んでもよく、さらに増感色素、共増感剤等の種々の添加剤を目的に応じて併用することができる。
増感色素としては、例えば特開2010−13630公報の段落[0228〜0237]に記載の増感色素を好ましく用いることができる。 共増感剤としては、例えば、特開2010−13630公報の段落[0238〜0240]に記載の共増感剤を挙げることができる。
【0173】
<重合禁止剤>
本発明のインク組成物は、保存時の重合による粘度上昇や、吐出不良を防止するため、重合禁止剤を添加することができる。重合禁止剤としては、フェノール系水酸基含有化合物、およびキノン類、N−オキシド化合物類、ピペリジン−1−オキシルフリーラジカル化合物類、ピロリジン−1−オキシルフリーラジカル化合物類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン類、およびカチオン染料類からなる群より選択される化合物が好適に挙げられる。
【0174】
具体的には、ハロイドキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、レゾルシノール、カテコール、t−ブチルカテコール、ハイドロキノンモノアルキルエーテル(例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル等)、ベンゾキノン、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよびその誘導体、ジ−t−ブチルニトロキシド、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシドおよびその誘導体等、ピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−マレイミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−ホスホノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、3−カルボキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン 1−オキシルフリーラジカル、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、クリスタルバイオレット、メチルバイオレット、エチルバイオレット、およびビクトリアピュアブルーBOH等が挙げられる。
【0175】
上記のうち、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル等のハイドロキノンモノアルキルエーテル、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のヒンダートフェノールが好ましい。
【0176】
重合禁止剤のインク組成物中における含有量としては、インク組成物の全質量に対して、1000〜20000ppmが好ましく、2000〜17000ppmがより好ましく、4000〜15000ppmがより好ましい。
【0177】
<その他の成分>
本発明のインク組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤、射出物性の制御を目的としたチオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類等が用いることができる。
【0178】
本発明のインク組成物には、膜物性を調整する目的で、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。
本発明のインク組成物には、液物性の調整のためにノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤や、有機フルオロ化合物などを添加することもできる。
また、この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
【0179】
この他にも例えば、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
また、インク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。
【0180】
<有機溶剤>
本発明のインク組成物は、硬化性を損ねない範囲で有機溶剤を含有していても良い。使用する有機溶剤は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、公知のアルコール系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤などが好ましく用いられる。具体的には、アルキレンオキシドモノアルキルエーテル、アルキレンオキシドモノアルキルエーテルアセテート、アルキレングリコールジアセテート、ジカルボン酸ジエアルキルエステル、シクロヘキサノン、乳酸エチルなどが好ましい。また、本発明のインク組成物はにじみと硬化性の観点から、水を実質的に含有しない非水性インク組成物であることが好ましく、より具体的には水が3質量%以下であることが好ましく、水が0質量%であることがより好ましい。非水性インクとすることにより、顔料の分散安定性の観点で効果がある。
【0181】
<インクジェット用のインク組成物>
本発明のインク組成物の好ましい態様の一つは、インクジェット用のインク組成物である。本発明のインク組成物をインクジェット記録方法に用いる場合には、インク組成物の射出性を考慮し、射出時の温度でのインク粘度が30mPa・s以下であることが好ましく、25mPa・s以下であることがより好ましく、前記範囲になるように適宜組成比を調整し決定することが好ましい。
なお、25℃(室温)でのインク粘度は、0.5mPa・s以上200mPa・s以下、好ましくは1mPa・s以上100mPa・s以下であり、より好ましくは2mPa・s以上50mPa・s以下である。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な記録媒体を用いた場合でも、記録媒体中へのインク浸透を防ぎ、硬化性のインク組成物の場合は特に未硬化モノマーの低減が可能となり、さらに臭気低減が可能となるほか、インク液滴着弾時のドット滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善される。25℃でのインク粘度が200mPa・sより大きいと、インク液のデリバリーに問題が生じる。前記インク粘度は、E型粘度計(東機産業製)を用いて測定する。
【0182】
本発明のインク組成物をインクジェット用として用いた場合の表面張力は、好ましくは20mN/m以上40mN/m以下、より好ましくは23mN/m以上35mN/m以下である。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の観点から35mN/m以下が好ましい。
【0183】
このようにして調整されたインク組成物は、インクジェット記録用インクとして好適に用いられる。インク組成物をインクジェットプリンターにより記録媒体に印字し、硬化性のインク組成物を用いる場合は、その後印字されたインク組成物に放射線を照射して硬化して記録を行う。
【0184】
また、前記本発明のインク組成物は、インクによる画像形成以外に用いてもよい。特に、本発明の顔料分散物を含む硬化性化合物は、紫外線などの放射線照射により硬化し、強度の高い硬化膜が得られるため、例えば、硬化性化合物を平版印刷版のインク受容層(画像部)の形成などに使用してもよい。
【0185】
次に、本発明のインク組成物をインクジェット用インク組成物に適用した場合に採用され得るインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置について、以下説明する。
【0186】
−インクジェット記録方法−
インクジェットプリンターによる記録方法においては、インク組成物を25℃以上80℃以下の温度範囲に制御して、インク組成物の粘度を30mPa・s以下とした後、射出することが好ましく、この方法を用いることにより高い射出安定性を実現することができる。
一般に、非水溶性インク組成物では、概して水性インクより粘度が高いため、印字時の温度変動による粘度変動幅が大きい。このインク組成物の粘度変動は、そのまま液滴サイズ、液滴射出速度に対して大きな影響を与え、これにより画質劣化を引き起こすため、印字時のインク組成物温度はできるだけ一定に保つことが必要である。インク組成物温度の制御幅は設定温度±5℃とすることが好ましく、設定温度±2℃とすることがより好ましく、設定温度±1℃とすることが特に好ましい。
【0187】
インクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが一つの特徴であり、一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。
【0188】
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0189】
本発明のインク組成物は(c)重合性化合物を含むため、活性放射線硬化型のインク組成物となる。このようなインク組成物における活性放射線の照射条件について述べる。基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間をおいて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。WO99/54415号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明においては、これらの照射方法を用いることが可能である。
【0190】
また、本発明のインク組成物を用いた場合、インク組成物を一定温度に加温するとともに、着弾から照射までの時間を0.01秒以上0.5秒以下とすることが望ましく、好ましくは0.01秒以上0.3秒以下、より好ましくは0.01秒以上0.15秒以下経過後に放射線を照射することにある。このように着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、着弾インクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。
また、多孔質な記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留を抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。
このようなインクジェット記録方法を取ることで、表面の濡れ性が異なる様々な記録媒体に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインクを後から重ねると、下部のインクまで照射線が到達しにくく、硬化感度の阻害、残留モノマーの増加及び臭気の発生、密着性の劣化が生じやすい。また、照射は、全色を射出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点から好ましい。
【0191】
本発明に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、市販のインクジェット記録装置が使用できる。即ち、本発明においては、市販のインクジェット記録装置を用いて記録媒体へ記録し、画像を形成することで、印画物を製造することができる。
前記好ましい射出条件によれば、本発明のインク組成物は加温、降温を繰り返すことになるが、本発明のインク組成物は、このような温度条件下で保存された場合でも、顔料分散性の低下が抑制され、長期間にわたり優れた発色性が得られ、且つ、顔料の凝集に起因する吐出性の低下も抑制されるという利点をも有する。
【0192】
[記録媒体]
本発明のインク組成物を適用しうる記録媒体としては、特に制限はなく、通常の非コート紙、コート紙などの紙類、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性樹脂材料あるいは、それをフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム等が挙げられる。その他、記録媒体材料として使用しうるプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが挙げられる。また、金属類や、ガラス類も記録媒体として使用可能である。
【0193】
[印画物]
本発明の印画物は、上記記録媒体と、上記インク組成物により上記記録媒体上記形成された画像と、を有するものである。すなわち、例えば、上記本発明のインク組成物をインクジェットプリンターにより記録媒体に印字し、その後、好ましくは、印字されたインク組成物に活性エネルギーを照射又は加熱して硬化することで、印画物を得ることができる。
本発明のインク組成物により作製された印画物は、画像形成に用いられるインクが微細な顔料粒子を均一、且つ、安定に分散して含むため、発色性と鮮鋭度に優れた高品質な画像を有し、画像の耐候性にも優れることから、広汎な分野に適用しうる。
【実施例】
【0194】
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例における形態に限定されるものではない。なお、以下の実施例中、「%」は、ことわりがない限り「質量%」を意味する。
【0195】
[実施例1]
表1に、使用した高分子化合物P−1〜P−7および比較重合体1〜2を示す。
表中S−1は特開昭52−988を参考に合成し、S−8はアロニックスTO−1429(東亞合成社製)を用いた。M−4、M−17、および高分子化合物P−1〜P−7および比較重合体1〜2は特開2010−13630を参考に合成した。
表中tBuAEMAはtert−ブチルアミノエチルメタクリレート(Aldrich社製)、SAはメタクリロイロキシエチルコハク酸(商品名NKエステルSA、新中村化学工業社製)、P-1Mはメタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(商品名ライトエステルP−1M、共栄社化学社製)、N−1はメタクリロイル化ポリメチルメタクリレート(商品名AA−6、東亞合成社製)を表す。
【0196】
【表1】



【0197】
【化30】

【0198】
[実施例1]
−イエローインク1の作製−
200mLのビーカーに、8.0gの(b-1)高分子化合物P−1を、72.0gの(c)重合性化合物(フェノキシエチルアクリレート(PEA)、商品名:AMP−10G、新中村化学社製)に溶解させた。更に(a)顔料(ベンズイミダゾロン系イエロー顔料PY−120、商品名:Novoperm Yellow H2G、クラリアント社製)20gを加えマグネチックスターラーで1時間混合し、予備分散を行った。得られた分散液をビーズミル(モーターミルM50、アイガー社製、ビーズ:ジルコニアビーズ、直径0.65mm)を用い、周速9.0m/sで2.0時間分散を行い、ミルベースを得た。得られた顔料分散物(ミルベース)に表2に記載の(c)重合性化合物、光重合開始剤、重合禁止剤等を加え混合撹拌した後、メンブランフイルターで加圧濾過し、実施例1のインク1を作製した。
[実施例2〜8、比較例1〜2]
【0199】
【表2】



【0200】
−イエローインク2〜10の作製−
インク1の作製において、(b−1)高分子化合物、(c)重合性化合物、光重合開始剤、重合禁止剤を表2に変更した以外は同様にして、実施例2〜8及び、比較例1〜2のインク2〜8を得た。尚、表中、NVCはN−ビニルカプロラクタム(Aldrich社製)、PEAはフェノキシエチルアクリレート(商品名:AMP−10G、新中村化学社製)、Irg819は光重合開始剤ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Irgacure819、チバジャパン社製)、ST−1はトリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩の8.0%PEA溶液(商品名:FIRSTCURE ST−1、ALBEMARLE社製)、MEHQは4−メトキシフェノール(東京化成工業社製)を表す。
【0201】
[インク1〜10の評価]
得られたインクをインクジェット用インクとして、下記の評価方法に従って評価した。その結果を表3に記載した。インクの評価は以下の基準で評価した。
<イエローインクの評価>
−粘度−
各インクの40℃における粘度をE型粘度計(東機産業製)を用いて測定した。いずれのインク
も粘度が15〜25mPas未満であり吐出に問題ない粘度域であった。
【0202】
−分散安定性−
各インクを60℃で1週間保存後の分散状態を粘度により評価した。
A:粘度の増加率が2%以上10%未満で分散安定性に問題ないレベル。
B:粘度の増加率が10%以上20%未満で分散安定性が低下するレベル。
C:粘度の増加率が20%以上であり分散安定性が著しく低下するレベル。
※Cは実用上問題のあるレベル。
【0203】
−吐出安定性−
前記ピエゾ型インクジェットヘッドでA4サイズのベタ印字を10枚行った際の印字物を観察し、インクジェットノズルからの不吐出に由来するスジムラの有無を観察し、以下の基準で評価を行った。尚、硬化はDeep UVランプ(ウシオ電機(株)製、SP−7)を用いて8000mJ/cmのエネルギーで行った。
A:ノズル不吐出が発生せず高品質の画像が形成された状態。
B:不吐出や打滴曲がりがわずかに発生し、わずかに画像欠陥が観察された状態。
C:不吐出や打滴曲がりが頻発し、画像欠陥が著しい状態。
※Cは実用上問題のあるレベル。
【0204】
−硬化性−
得られた各インクジェットインクを、ピエゾ型インクジェットヘッド(CA3ヘッド、東芝テック(株)製、印字密度300dpi、打滴周波数4kHz、ノズル数64)を用いて、塩化ビニルフィルム上に30μmの厚みになるようにベタ印字してから、Deep UVランプ(ウシオ電機(株)製、SP−7)で1000mJ/cmのエネルギーとなる条件で露光した。印字サンプルを得た。硬化皮膜を指で触れて、べたつきがなくなるまで、露光を繰り返した。
硬化に要した露光回数から下記のように評価した。
A:4回以下
B:5回
C:6回以上
※Cは実用上問題のあるレベル。
【0205】
−薄膜硬化性−
得られた各インクジェットインクを、ピエゾ型インクジェットヘッド(CA3ヘッド)を用いて、塩化ビニルフィルム上に10μmの厚みになるようベタ印字してから、Deep UVランプ(ウシオ電機(株)製、SP−7)で1000mJ/cmのエネルギーとなる条件で露光した。印字サンプルを得た。硬化皮膜を指で触れて、べたつきがなくなるまで、露光を繰り返した。
硬化に要した露光回数から下記のように評価した。
A:2回以下
B:3回
C:4回以上
※Cは実用上問題のあるレベル。
【0206】
【表3】



【0207】
表3の結果より、比較例1のように、(b−1)高分子化合物を用いなかった場合、分散安定性が低下し、インクジェットインクにおける吐出に問題が生じた。更に薄膜での硬化性も劣る結果であった。また、比較例2のように、(b−2)化合物を用いなかった場合、薄膜での硬化性が低下し、実用上問題があるレベルであった。一方、(b−1)高分子化合物と(b−2)化合物をともに含む本発明のインク組成物(インク1〜8)では、分散安定性や吐出安定性は問題ないレベルであり、薄膜での硬化性も実用上問題ないレベルであった。
【0208】
[実施例9]
−ホワイトインク11の作製−
200mLのビーカーに、8.0gの(b-1)高分子化合物P−6、を52.0gの(c)重合性化合物(フェノキシエチルアクリレート(PEA))に溶解させた。更に(a)顔料(ホワイト顔料、ニ酸化チタン、商品名:CR−60−2、石原産業社製)40gを加えマグネチックスターラーで1時間混合し、予備分散を行った。得られた分散液をビーズミル(モーターミルM50、アイガー社製、ビーズ:ジルコニアビーズ、直径0.65mm)を用い、周速7.0m/sで2.0時間分散を行い、ミルベースを得た。得られた顔料分散物(ミルベース)と表2に記載の(c)重合性化合物、光重合開始剤、重合禁止剤等を加え混合撹拌した後、メンブランフイルターで加圧濾過し、実施例9のインク11を作製した。
【0209】
【表4】



【0210】
−ホワイトインク12〜13の作製−
インク11の作製において、(b−1)高分子化合物を表4に記載の化合物に変更した以外は同様にして、実施例10及び比較例3のインク12〜13を得た。尚、表中、ITXはイソプロピルチオキサントン(DarocureITX、BASF社製)、DPGDAは、ジプロピレングリコールジアクリレート(商品名:EbecrylDPGDA、ダイセルサイテック社製)を表す。
【0211】
[インク11〜13の評価]
得られたインクをインクジェット用インクとして、上記と同様の評価方法に従って評価した。その結果を表5に記載した。インクの評価は以下の基準で評価した。
<ホワイトインクの評価>
−粘度−
各インクの40℃における粘度をE型粘度計(東機産業製)を用いて測定した。いずれのインク
も粘度が15〜25mPas未満であり吐出に問題ない粘度域であった。
【0212】
−分散安定性−
各インクを60℃で3日保存後の分散状態を粘度により評価した。
A:粘度の増加率が2%以上10%未満で分散安定性に問題ないレベル。
B:粘度の増加率が10%以上20%未満で分散安定性が低下するレベル。
C:粘度の増加率が20%以上であり分散安定性が著しく低下するレベル。
※Cは実用上問題のあるレベル。
【0213】
−吐出安定性−
前記ピエゾ型インクジェットヘッドでA4サイズのベタ印字を5枚行った際の印字物を観察し、インクジェットノズルからの不吐出に由来するスジムラの有無を観察し、以下の基準で評価を行った。尚、硬化はDeep UVランプ(ウシオ電機(株)製、SP−7)を用いて8000mJ/cmのエネルギーで行った。
A:ノズル不吐出が発生せず高品質の画像が形成された状態。
B:不吐出や打滴曲がりがわずかに発生し、わずかに画像欠陥が観察された状態。
C:不吐出や打滴曲がりが頻発し、画像欠陥が著しい状態。
※Cは実用上問題のあるレベル。
【0214】
−硬化性−
上記イエローインクの硬化性評価と同様にして、印字し、露光を繰り返した。
硬化に要した露光回数から下記のように評価した。
A:5回以下
B:6回
C:7回以上
※Cは実用上問題のあるレベル。
【0215】
−薄膜硬化性−
上記イエローインクの硬化性評価と同様にして、印字し、露光を繰り返した。
硬化に要した露光回数から下記のように評価した。
A:3回以下
B:4回
C:5回以上
※Cは実用上問題のあるレベル。
【0216】
【表5】

【0217】
表5の結果より、比較例3のように、(b−1)高分子化合物を用いなかった場合、吐出安定性が低下し、薄膜での硬化性が劣る結果であり、実用上問題があるレベルであった。一方、(b−1)高分子化合物と(b−2)化合物をともに含む本発明のインク組成物(インク11、12)では、分散安定性や吐出安定性は問題ないレベルであり、薄膜での硬化性も実用上問題ないレベルであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)顔料、(b)マレイミド化合物の少なくとも2種、及び(c)重合性化合物、を含有し、かつ、前記(b)マレイミド化合物の少なくとも一方が(b−1)アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する高分子化合物である、インク組成物。
【請求項2】
前記マレイミド化合物のうち他方の化合物(b−2)が、アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基を有しない化合物である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記(b−1)アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する高分子化合物が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む、請求項1又は2に記載のインク組成物。
【化1】


(式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。
及びRはそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、R及びRは互いに結合して環を形成していてもよい。
Aは、単結合、アリーレン基、−COO−、または−CONR−を表し、Rは水素原子またはアルキル基を表す。
は単結合、アルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表し、これらの基中にエーテル結合またはエステル結合を含んでいてもよい。)
【請求項4】
前記(b−1)アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する高分子化合物が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位をさらに有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化2】


(式中、R5は水素原子又はメチル基を表す。Jは、単結合、−CO−、−COO−、−CONR6−、−OCO−又はフェニレン基を表し、R6は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。
は単結合、アミド結合、又はアルキレン基若しくはアラルキレン基を表し、これらの基中に、イミノ結合、エステル結合、エーテル結合、スルホンアミド結合、ウレタン結合、ウレイレン結合、カーボネート結合又は複素環を含んでいてもよい。
は3〜5個の環が縮合した縮合環である。)
【請求項5】
前記(b−1)アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する高分子化合物の重量平均分子量が、10000〜500000である、請求項1〜4のいずれかに1項に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基を有しない化合物が低分子化合物である、請求項2〜5のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記アミノ基、カルボキシル基及びリン酸基を有しない化合物がマレイミド基を少なくとも2つ有する、請求項2〜6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記重合性化合物が、(メタ)アクリレート化合物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項9】
重合開始剤をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項10】
インクジェット用インク組成物である請求項1〜9のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のインク組成物をインクジェットプリンターを用いて画像を形成する工程を備えた画像形成方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のインク組成物を用いて形成した印画物。

【公開番号】特開2012−51992(P2012−51992A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194409(P2010−194409)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】