説明

インク組成物、画像形成方法及び印画物

【課題】耐水性、耐溶剤性及び耐ブロッキング性に優れた画像が得られ、インクジェット法を用いた画像形成に好適なインク組成物、該インク組成物を用いた画像形成方法、及び印画物を提供する。
【解決手段】(a)下記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位と、パーフルオロアルキル基及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種と、を有する高分子化合物、及び(b)水を含有するインク組成物。一般式(1)中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRの少なくとも一方は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは互いに結合して4〜6員の環構造を形成してもよい。*は、高分子化合物における主鎖又は側鎖との結合部位を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用に適用しうるインク組成物、該インク組成物を用いた画像形成及びインク組成物により形成された印画物に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。
電子写真方式は、感光体ドラム上に帯電及び露光により静電潜像を形成するプロセスを必要とし、システムが複雑となり、結果的に製造コストが高価になるなどの問題がある。また熱転写方式は、装置は安価であるが、インクリボンを用いるため、ランニングコストが高く、かつ廃材が出るなどの問題がある。
一方、インクジェット方式は、安価な装置で、且つ必要とされる画像部のみにインクを吐出し記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安いという利点を有し、さらに、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
【0003】
インクジェット方式による画像の記録に用いられるインク組成物のなかでも、活性エネルギー線硬化型水性インク組成物は、画像の印刷、記録媒体に印刷適性を付与するための前処理、印刷された画像の保護・装飾の後処理などに好適に使用でき、また、水を主成分とすることから安全性に優れ、低粘度化によって高密度インクジェット記録への適用が可能になるなど、多くの優れた特徴、可能性を有する技術である。
【0004】
活性エネルギー線硬化型水性インク組成物の基本構成材料の一例として、水、重合性物質、活性エネルギー線によってラジカルなどを発生して重合を開始させる重合開始剤及び色材(顔料あるいは染料)を挙げることができる。このうち重合性物質や重合開始剤は、エマルジョン状態にして調製される場合と、適当な置換基により水溶性を付与されて溶液状態として存在する場合がある。
【0005】
重合性物質及び重合開始剤が水溶性である活性エネルギー線硬化型水性インク組成物の例としては、例えば、特許文献1に記載されているインク組成物が挙げられ、該インク組成物によれば、光照射により密着性などに優れた膜が得られるインクジェット記録用インク組成物が得られるとされている。
また、特許文献2及び特許文献3には、特定のマレイミド構造を有する活性エネルギー線重合性物質を含むインク組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−307199号公報
【特許文献2】特開2007−119449号公報
【特許文献3】特開2000−160086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、水溶性の重合開始剤を用いる特許文献1に記載の技術では、添加された重合開始剤の分解物や未反応残存物が硬化膜に残ることで膜物性や印画物に悪影響を及ぼすことから、印刷された画像の耐ブロッキング性や耐溶水性については、更なる改良の余地がある。
また、特許文献2においては、耐溶剤性に関しては何ら検討がなされておらず、耐溶剤性については改良の余地がある。特許文献3においては、水性インクとしての使用や、耐ブロッキング性、耐水性についての検討はなされていない。
従って、耐ブロッキング性、耐水性及び耐溶剤性のいずれもが良好な画像を形成する水性インク組成物が切望されているが、未だ提供されていないのが現状である。
【0008】
本発明は、上記の事情に照らしなされたものであり、耐水性、耐溶剤性及び耐ブロッキング性に優れた画像が得られ、インクジェット法を用いた画像形成に好適なインク組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、耐水性、耐溶剤性及び耐ブロッキング性に優れた画像を形成できる画像記録方法、及び、耐水性、耐溶剤性及び耐ブロッキング性に優れた画像を有する印画物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> (a)下記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位と、パーフルオロアルキル基及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種と、を有する高分子化合物、及び(b)水を含有するインク組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
一般式(1)中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRの少なくとも一方は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。*は、高分子化合物における主鎖又は側鎖との結合部位を示す。
【0012】
<2> 前記(a)高分子化合物が、親水性基を有する高分子化合物である<1>に記載のインク組成物。
<3> 前記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位である<1>又は<2>に記載のインク組成物。
【0013】
【化2】

【0014】
一般式(2)中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRの少なくとも一方は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。Rは、水素原子又はメチル基を表す。Zは、単結合、−COO−**又は−CONR−**を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、**はXとの結合位置を表す。Xは2価の有機基を表す。
【0015】
<4> 前記(a)高分子化合物が、アルコール性水酸基、アルキル置換カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一種の親水性基を有する<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインク組成物。
<5> 前記(a)高分子化合物が、前記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位を10質量%〜70質量%含み、パーフルオロアルキル基及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種を有する繰り返し単位を5質量%〜25質量%含む高分子化合物である<1>〜<4>のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0016】
<6> 更に、前記(a)高分子化合物とは構造が異なる(c)水溶性高分子化合物を含有する<1>〜<5>のいずれか1項に記載のインク組成物。
<7> 更に、前記(a)高分子化合物とは構造が異なる(c)水溶性高分子化合物を含有し、該(c)水溶性高分子化合物が(c’)架橋性化合物である<1>〜<6>のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0017】
<8> 前記(a)高分子化合物の含有量が、インク組成物の全質量に対し、0.1質量%〜15質量%である<1>〜<7>のいずれか1項に記載のインク組成物。
<9> 前記(a)高分子化合物の含有量が、インク組成物の全質量に対し、0.1質量%〜2質量%である<1>〜<8>のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0018】
<10> 更に、(d)着色剤を含有する<1>〜<9>のいずれか1項に記載のインク組成物。
<11> 更に、(e)水溶性有機溶剤を含有する<1>〜<10>のいずれか1項に記載のインク組成物。
<12> インクジェット記録用である<1>〜<11>のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0019】
<13> <1>〜<12>のいずれか1項に記載のインク組成物を記録媒体上に付与するインク付与工程と、記録媒体上に付与されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程と、を含む画像形成方法。
<14> <1>〜<12>のいずれか1項に記載のインク組成物を記録媒体上に付与するインク付与工程と、記録媒体上に付与されたインク組成物に含まれる(b)水及び(e)水溶性有機溶剤の少なくとも一部を乾燥して除去するインク乾燥工程と、記録媒体上に付与され、乾燥されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程と、を含む画像形成方法。
<15> 画像記録媒体上に、<1>〜<12>のいずれか1項に記載のインク組成物により形成されたか、或いは、<13>又は<14>に記載の画像形成方法によって記録された画像を有する印画物。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐水性、耐溶剤性及び耐ブロッキング性に優れた画像が得られ、インクジェット法を用いた画像形成に好適なインク組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、耐水性、耐溶剤性及び耐ブロッキング性に優れた画像を形成できる画像記録方法、及び、耐水性、耐溶剤性及び耐ブロッキング性に優れた画像を有する印画物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のインク組成物、画像形成方法、及び印画物について説明する。
なお、本明細書において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
また、本発明のインク組成物において固形分量とは、25℃においてインク組成物中に含まれる成分のうち、溶剤を除く全ての成分の総質量に意味する。本明細書における固形分は、溶剤以外の低分子量成分などの液状の成分も含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0022】
[インク組成物]
本発明のインク組成物は、(a)下記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位と、パーフルオロアルキル構造及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種の繰り返し単位と、を有する高分子化合物、及び(b)水を含有するインク組成物である。
【0023】
【化3】

【0024】
一般式(1)中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRの少なくとも一方は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。*は、高分子化合物における主鎖又は側鎖との結合部位を示す。
【0025】
なお、以下では、前記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位と、パーフルオロアルキル構造及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種と、を有する高分子化合物を、適宜、「(a)高分子化合物」とも称する。
【0026】
本発明のインク組成物は、上記の各成分を含有することにより、耐水性、耐溶剤性、及び耐ブロッキング性に優れた画像を形成することができる。ここで、本発明において、画像の耐水性及び耐溶剤性とは、形成された画像の水及び溶剤に対する耐久性を意味する。また、画像の耐ブロッキング性とは、記録媒体上に画像が形成された印画物を重ねて保管した場合において、隣接する印画物に対する所望とされない画像の貼着や転写が抑制されていることを意味する。
【0027】
本発明のメカニズムについては未だ明確ではないが、本発明者らは、以下の如く推測している。
即ち、(a)高分子化合物は、表面エネルギーが低いパーフルオロアルキル基及び/又はジアルキルシロキサン構造を有することで、インクジェットノズル等により記録媒体上にインクが付与され、乾燥された段階において、インク滴表面と空気との界面に(a)高分子化合物が偏在化すると考えられる。更に、(a)高分子化合物は、酸素による重合阻害を受けにくい一般式(1)で表される部分構造を有していることから、活性ネネルギー線の照射により良好に硬化反応が進行する。このような作用により得られた硬化被膜は、(a)高分子化合物が有する分子構造に起因する撥水性及び撥油性の特徴と共に、耐水性及び耐溶剤性の特徴を示し、耐ブロッキング性にも優れたものとなると考えられる。
【0028】
本発明のインク組成物は、(a)高分子化合物及び(b)水に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、液体又は固体の種々の化合物を添加剤として含んでもよく、例えば、(a)高分子化合物とは構造が異なる(c)水溶性高分子化合物、(d)着色剤、又は(e)水溶性有機溶剤などの他の成分を好適に含むことができる。例えば、更に、後述する(c)水溶性高分子化合物の一つの態様である(c’)架橋性化合物を含むことで画像の硬化性がより向上する。
【0029】
以下、本発明のインク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)について詳細に説明する。
【0030】
〔(a)一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位と、パーフルオロアルキル基及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種と、を有する高分子化合物〕
本発明のインク組成物は、下記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位と、パーフルオロアルキル基及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種と、を有する高分子化合物((a)高分子化合物)を含む。
【0031】
(a)高分子化合物としては、ビニル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、又はポリアミドであることが好ましく、ビニル系ポリマー、又はポリウレタンであることがより好ましい。
【0032】
(a)高分子化合物は、分子内に更に親水性基を含むことが好ましく、一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位が、後述する一般式(2)で表される繰り返し単位であり、さらに、親水性基を有する繰り返し単位を共重合成分として含む態様が特に好ましい。
以下、(a)高分子化合物について詳細に説明する。
【0033】
(一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位)
(a)高分子化合物は、下記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位を含む。
【0034】
【化4】

【0035】
一般式(1)中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRの少なくとも一方は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。*は、高分子化合物における主鎖又は側鎖との結合部位を示す。
【0036】
一般式(1)中、R又はRで表される炭素数1〜4のアルキル基としては、直鎖構であっても分岐構造であってもよい。該アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基が挙げられる。これらのアルキル基の中でも、炭素数1〜2のアルキル基(メチル基及びエチル基)であることが好ましく、炭素数1のアルキル基(メチル基)であることが特に好ましい。
【0037】
一般式(1)において、R又はRで表されるアルキル基は、置換基を有していても、有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
【0038】
及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成していてもよい。
【0039】
及びRとしては、その双方が炭素数1〜4のアルキル基である態様、又は、R及びRが互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成していることが好ましく、R及びRの双方が炭素数1〜2のアルキル基であることがより好ましく、R及びRの双方が炭素数1のアルキル基であることが更に好ましい。
【0040】
以下に、一般式(1)で表される部分構造の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0041】
【化5】

【0042】
(a)高分子化合物は、一般式(1)で表される部分構造を、側鎖に複数有する態様であることが好ましい。
【0043】
一般式(1)で示される部分構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(2)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0044】
【化6】

【0045】
一般式(2)中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRの少なくとも一方は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。Rは水素原子又はメチル基を表す。Zは、単結合、−COO−**、又は−CONR−**を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、**はXとの結合位置を表す。Xは2価の有機基を表す。
【0046】
一般式(2)において、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRの少なくとも一方は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは互いに結合して4〜6員の環構造を形成してもよい。
【0047】
一般式(2)におけるR及びRは、前記一般式(1)におけるR及びRと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0048】
一般式(2)において、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rはメチル基であることが好ましい。
【0049】
一般式(2)において、Zは、単結合、−COO−**、又は−CONR−**を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、**はXとの結合位置を表す。Zは−COO−**であることが好ましい。
【0050】
また、前記−CONR−*におけるRは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rで表される炭素数1〜4のアルキル基としては、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。該アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基が挙げられる。Rは水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基、即ち、メチル基又はエチル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。Rがアルキル基を表す場合、該アルキル基は置換基を有していても、置換基を有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
【0051】
一般式(2)において、Xは2価の有機基を表す。2価の有機基としては、アルキレン基又はアラルキレン基が挙げられ、炭素数は2〜20のアルキレン基又は炭素数6〜12のアラルキレン基であることが好ましい。Xとしてはアルキレン基であることがより好ましい。
【0052】
Xがアルキレン基を表す場合、該アルキレン基は、炭素数2〜20であることが好ましく、炭素数2〜12であることがより好ましく、炭素数2〜8であることがさらに好ましい。Xで表されるアルキレン基の炭素数が、この範囲であることで、(a)高分子化合物における側鎖末端に存在する一般式(1)で示される部分構造の運動性が向上し、本発明の効果がより向上する。
【0053】
Xで表されるアルキレン基は、直鎖構造であっても、アルキレン鎖中に分岐を有するものであっても、環状構造を有するものであってもよい。また、該アルキレン基は、−O−、−COO−、−OC(=O)−、及び−CONH−から選択される結合をアルキレン鎖中に含んでいてもよい。また、該アルキレン基は、炭素数4以下のアルキル基、水酸基、又は塩素原子で置換されていてもよい。
【0054】
一般式(2)で表される繰り返し単位としては、R及びRが各々独立に炭素数1〜2のアルキル基であり、Rがメチル基であり、Zが−COO−**であり、Xが炭素数2〜12のアルキレン基であることが好ましい。
【0055】
(a)高分子化合物に含まれる一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位(好ましくは一般式(2)で表される繰り返し単位)の含有量は、インク組成物により形成される硬化膜(画像)が目的とする性質に応じて適宜選択される。即ち、一般式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、強固なインク画像を得る場合であれば大きくするとよく、柔軟な硬化膜を得る場合であれば小さくするとよい傾向にある。
これらを考慮した一般式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、(a)高分子化合物の質量に対し、5質量%〜95質量%であることが好ましく、15質量%〜95質量%であることがさらに好ましく、30質量%〜95質量%であることが特に好ましい。
【0056】
一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位は、一般式(1)で表される部分構造を有する単量体を共重合成分の一つとして用いて共重合することにより、(a)高分子化合物に導入することができる。一般式(1)で表される繰り返し単位が、一般式(2)で表される繰り返し単位である場合、下記一般式(2’)で表される単量体を用いることができる。
また、一般式(1)で表される部分構造は、高分子反応を用いた方法により導入することもできる。そのような方法としては、例えば、1級アミノ基を有するプレポリマーに、対応する無水物を反応して得る方法や、プレポリマー中の官能基と反応し結合を形成する官能基と一般式(1)で表される部分構造とを有する化合物を、プレポリマーと反応させる方法などが挙げられる。
【0057】
【化7】

【0058】
一般式(2’)中、R、R、R、Z及びXは、前記一般式(2)におけるR、R、R、Z及びXとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0059】
一般式(2’)で表される単量体の好ましい例としては、以下に示す単量体(2’−1)〜(2’−11)を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0060】
【化8】

【0061】
単量体(2’−1)〜(2’−11)に代表される、一般式(1)で表される部分構造を含む単量体は、例えば、特開昭52−988号公報、特開平4−251258号公報等に記載の方法を参考に製造することができる。
【0062】
(パーフルオロアルキル基及びジアルキルシロキサン構造)
本発明における(a)高分子化合物は、パーフルオロアルキル基及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種を、側鎖又は主鎖末端に有する。
【0063】
(a)高分子化合物は、パーフルオロアルキル基及びジアルキルシロキサン構造のいずれか一方のみを有していてもよく、双方を有していてもよいが、パーフルオロアルキル基及びジアルキルシロキサン構造のいずれか一方を有する態様がより好ましい。
【0064】
〜パーフルオロアルキル基〜
(a)高分子化合物が有するパーフルオロアルキル基としては、炭素数1以上のパーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基がより好ましい。
(a)高分子化合物が有するパーフルオロアルキル基は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0065】
パーフルオロアルキル基は、パーフルオロアルキル基を含有する単量体を、共重合成分の一つとして用いて共重合することで、(a)高分子化合物に導入することができる。
【0066】
パーフルオロアルキル基を含有する単量体は、一種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0067】
パーフルオロアルキル基を含有する単量体としては、下記一般式(I)で表される単量体を好適なものとして挙げることができる。即ち、本発明における(a)高分子化合物の好適な態様の一つは、前記一般式(1)で表される部分構造を有する単量体と、下記一般式(I)で表される単量体と、を用いて共重合して得られた高分子化合物である。
【0068】
【化9】

【0069】
一般式(I)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいメチル基又は置換基を有してもよいエチル基を表す。R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xは、単結合又は2価の連結基を表す。mは0以上の整数を表し、nは1以上の整数を表す。
【0070】
一般式(I)において、Rで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
【0071】
一般式(I)中、R又はRで表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。R及びRとして好ましくは、各々独立に、水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0072】
一般式(I)中、Xで表される2価の連結基としては、−O−、−S−、−N(R)−、−CO−等が挙げられる。
は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。Rとして好ましくは、水素原子、メチル基又はブチル基である。
で表される2価の連結基としては、−O−がより好ましい。
【0073】
mは0以上の整数を表し、2〜8の整数が好ましく、m=2であることが特に好ましい。また、mが2以上の整数である場合、互いに隣接する炭素上の官能基(即ち、隣り合う炭素にそれぞれ結合しているR同士やR同士)は結合して脂肪族環を形成してもよい。
【0074】
nは1以上の整数を表し、1〜16の整数であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1、6又は8であることがさらに好ましい。
【0075】
以下に、パーフルオロアルキル基を含有する単量体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0076】
【化10】

【0077】
【化11】



【0078】
【化12】

【0079】
【化13】

【0080】
〜ジアルキルシロキサン構造〜
本発明におけるジアルキルシロキサン構造とは、少なくとも1つのシロキサン結合(Si−O)を有し、且つ、該シロキサン結合におけるケイ素原子が2つのアルキル基と結合してなる構造を意味する。ジアルキルシロキサン構造は、シロキサン結合を少なくとも1つ有すればよいが、(a)高分子化合物の表面偏析出性の観点からは、3以上のシロキサン結合を有することがより好ましい。
(a)高分子化合物が有するジアルキルシロキサン構造は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0081】
ジアルキルシロキサン構造は、例えば、共重合成分の一つとして、エチレン性不飽和二重結合とジアルキルシロキサン構造とを有する単量体を用いて共重合することで、(a)高分子化合物に導入することができる。
【0082】
エチレン性不飽和二重結合とジアルキルシロキサン構造とを有する単量体の例としては、下記一般式(A)で表される化合物であることが好ましい。
【0083】
【化14】

【0084】
一般式(A)中、R11は、炭素数が2〜6の直鎖状又若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は下記一般式(B)で表される2価の連結基を示す。
【0085】
【化15】

【0086】
一般式(B)中、R12は、水素原子又はメチル基を表し、nは1〜50の整数を表す。一般式(B)中の*は、Xとの結合位置である。なお、複数存在するR12は同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
【0087】
一般式(A)中、x、x及びxは、それぞれ、x、x及びxの合計が1〜100となる整数である。yは、1〜150の整数である。
【0088】
一般式(A)中、Xは、単結合、酸素原子、又は下記一般式(C)で表される二価の連結基を表す。
【0089】
【化16】

【0090】
一般式(C)中、Zは、単結合、酸素原子、硫黄原子、又はNR14を表し、R14は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。一般式(C)中、R13は、炭素数6〜10のアルキレン基、環状アルキレン基、アリーレン基、及びキシリレン基から選ばれる2価の連結基を表す。一般式(C)中の*は、Yとの結合位置である。
【0091】
一般式(A)中、Yは、アクリロイル基、メタクリロイル基、下記一般式(D)、下記一般式(E)、又は下記一般式(F)で表される1価の基を表す。
【0092】
【化17】

【0093】
【化18】

【0094】
【化19】

【0095】
一般式(D)〜(F)中、R16は、水素原子又は炭素数1〜6の直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を表し、R17は、直鎖状又は分枝鎖状の炭素数2〜10のアルキレン基を表し、R18は、炭素数1〜6の直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基を表す。一般式(D)〜(F)中の*は、Xとの結合位置である。
【0096】
一般式(A)中、Zは、下記一般式(G)で表される1価の基を表す。一般式(A)中に、Zが複数存在する場合、これらは同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0097】
【化20】

【0098】
一般式(G)中、zは0〜100の整数を表し、好ましくは0〜50の整数であり、より好ましくは0〜10の整数である。一般式(G)中の*は、Xとの結合位置である。
【0099】
一般式(A)中、Rは、炭素数1から4のアルキル基を表し、メチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基又はtert−ブチル基が好ましい。一般式(A)中に、3つ存在するRは、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。Rとしては、3つのRの全部がメチル基である態様、及び、3つのRのうち2つがメチル基であり1つがn−ブチル基である態様が好ましい。
【0100】
以下に、エチレン性不飽和二重結合とジアルキルシロキサン構造とを有する単量体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0101】
【化21】

【0102】
【化22】

【0103】
なお、(a)高分子化合物において、パーフルオロアルキル基及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種を有する繰り返し単位は、表面配向性と溶解性の観点から共重合体中に、各々の合計が1.0質量%〜20質量%の範囲で含まれることが好ましく、2.0質量%〜15質量%がより好ましく、3.0質量%〜10質量%の範囲で含まれること最も好ましい。
【0104】
(a)高分子化合物としては、一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位を10質量%〜70質量%含み、パーフルオロアルキル基及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種を有する繰り返し単位を5質量%〜25質量%含む態様であることが特に好ましい。
【0105】
(a)高分子化合物は、分子内にさらに親水性基を含む高分子化合物であることが好ましい。
【0106】
ここで親水性基としては、(a)高分子化合物の親水性を高める機能を有する基であれば、であれば特に限定されず、ノニオン性親水性基であってもよいし、イオン性親水性基(例えば、アニオン性親水性基又はカチオン性親水性基)であってもよい。
【0107】
(a)高分子化合物に含まれる親水性基の個数に限定はなく、その数は、親水性基の種類、(a)高分子化合物の分子量等に応じて適宜選択される。
【0108】
(a)高分子化合物における親水性基の含有量は、(a)高分子化合物が水溶性を示す個数で含まれることが好ましい。ここで、(a)高分子化合物が水溶性を示すとは、(a)高分子化合物が、25℃の水に対して3質量%以上溶解できることを意味する。
【0109】
(親水性基)
(a)高分子化合物に導入しうる親水性基について説明する。
(a)高分子化合物に導入しうる導入しうる親水性基としては、ノニオン性親水性基及びイオン性親水性が好適に挙げられる
【0110】
ノニオン性親水性基には、例えば、特に限定されないが、例えば、窒素原子又は酸素原子を含む複素環構造から水素原子を1個除いた残基、アミド基、カルバモイル基、アルキル置換カルバモイル基、アルコール性水酸基、又はポリアルキレンオキシ構造を有する基等のノニオン性親水性基が挙げられる。
【0111】
窒素原子又は酸素原子を含む複素環構造から水素原子を1個除いた残基における該複素構造としては、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;2−ピロリドン、エチレンウレア等の環状ウレア類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル類;等が挙げられる。
【0112】
アミド基としては、炭素数2〜10のアミド基が好ましく、アミド基における窒素原子には水素原子が結合していることが好ましい。
【0113】
アルキル置換カルバモイル基としては、カルバモイル基が有する窒素原子に結合する水素原子がアルキル基で置換されたモノアルキルカルバモイル基、又は、カルバモイル基が有する窒素原子に結合する2つの水素原子がアルキル基で置換されたジアルキルカルバモイル基が挙げられる。該アルキル基は、更に水酸基等の置換基を有していてもよい。これらのアルキル置換カルバモイル基中でも、炭素数1〜8のアルキル基又は水酸基で置換された炭素数1〜4のアルキル基で置換されたモノアルキルカルバモイル基が好ましい。
【0114】
ポリアルキレンオキシ構造を有する基としては、特に限定されないが、炭素数1から4のアルキレンオキシ基を繰り返し単位に有するポリアルキレンオキシ構造が好ましい。ポリアルキレンオキシ構造中のアルキレンオキシ基は1種であってもよいし、複数種のアルキレンオキシ基が組み合わされていてもよい。ポリアルキレンオキシ構造の末端基としては、水酸基又はアルコキシ基が好ましく、水酸基又はメトキシ基がより好ましい。
【0115】
イオン性親水性基としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基、又は4級アンモニウム基等のイオン性親水性基が挙げられる。該イオン性親水性基は塩を形成していてもよい。
【0116】
イオン性親水性基が塩を形成している場合、対塩としては、アルカリ金属塩(Li、Na、K等)、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。この中でもアルカリ金属塩(Li、Na、K等)又はアンモニウム塩が好ましい。
【0117】
これらの親水性基の中でも、アミド基、カルバモイル基、アルキル置換カルバモイル基、アルコール性水酸基、ポリアルキレンオキシ構造を有する基、カルボキシル基、スルホ基、及びこれらの塩が好ましく、アルコール性水酸基、アルキル置換カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、及びこれらの塩であることが更に好ましい。
【0118】
(a)高分子化合物としては、前記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位と、パーフルオロアルキル構造及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種の繰り返し単位とを含み、更に、親水性基を有する繰り返し単位を有する態様であることが好ましい。(a)高分子化合物のより好ましい態様は、前記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位が、前記一般式(2)で表される繰り返し単位であり、パーフルオロアルキル構造及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種の繰り返し単位を含み、更に、親水性基を有する繰り返し単位を含む態様である。
【0119】
本発明における(a)高分子化合物が、更に親水性基を有する繰り返し単位を含む場合、該親水性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(3)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0120】
【化23】

【0121】
一般式(3)中、Rcyは水素原子又はメチル基を表す。Zは−COO−***、−CONRdy−***、又は、単結合を表し、Rdyは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rは、単結合、アルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基からなる群から選ばれる基を表す。Aは親水性基を表す。なお、***は、ZがRに結合する位置を表す。
【0122】
一般式(3)について詳細に説明する。
一般式(3)中、Rcyは、水素原子又はメチル基を表す。
【0123】
一般式(3)中、Zは、−COO−***、−CONRdy−***、又は単結合を表し、−COO−***であることが好ましい。なお、***は、ZがRに結合する位置である。
【0124】
dyは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基を表す。Rdyは、水素原子、又は炭素数1〜2のアルキル基(即ち、メチル基又はエチル基)であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0125】
dyは、置換基を有していても、置換基を有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。Rdyが有していてもよい置換基としては、炭素数6〜8のアリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I等)等が挙げられる。
【0126】
一般式(3)において、Rは、単結合、又は、アルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基からなる群から選ばれる基を表し、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基又は炭素数7〜20のアラルキレン基であることが好ましい。
が、アルキレン基、アリーレン基、及びアラルキレン基からなる群から選ばれる基である場合、これらの基は、置換基を有していても、置換基を有していなくてもよい。また、Rで表されるアルキレン基、アリーレン基、及びアラルキレン基は、その構造中に、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はウレタン結合が存在していてもよい。
一般式(3)において、Rは単結合であることが好ましい。
【0127】
が、アルキレン基、アリーレン基、及びアラルキレン基からなる群から選ばれる基である場合、これらの基は、更に置換基を有していてもよい。該置換基としては、炭素数6〜8のアリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I等)等が挙げられる。
【0128】
が炭素数1〜20のアルキレン基である場合、該アルキレン基は直鎖構造であっても分岐構造であっても環状構造であってもよい。Rがアルキレン基である場合の炭素数は2〜12であることがより好ましく、炭素数2〜8であることがさらに好ましい。Rのアルキレン基の具体例としては、−CH−、−C−、−C(CH−CH−、−CHC(CHCH−、−C12−、−C(C)C−、C1836−、1,4−trans−シクロヘキシレン基、−C−OCO−C−、−C−OCO−、−C−O−C10−、−CH−O−C(C11)−、−C−CONH−C−、−C−OCONH−C12−、−CH−OCONHC1020−、−CHCH(OH)CH−、等が挙げられる。
【0129】
が炭素数6〜20のアリーレン基である場合、該アリーレン基の炭素数は6〜18であることが好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であることが特に好ましい。Rで表されるアリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、−C−CO−C−、ナフチレン基等が挙げられる。
【0130】
が炭素数7〜20のアラルキレン基である場合、該アラルキレン基の炭素数は7〜18であることが好ましく、7〜14であることがさらに好ましく、7〜10であることが特に好ましい。Rで表されるアラルキレン基の具体例としては、−C−C−、−C−C−C−、−CH−C−C−C−、−C−OCO−C−等が挙げられる。
【0131】
一般式(3)中のAで表される親水性基としては、既述の親水性基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0132】
(a)高分子化合物が、一般式(3)で表される繰り返し単位を有する場合、(a)高分子化合物における一般式(3)で表される繰り返し単位の含有量は以下の通りである。
一般式(3)における親水性基Aがイオン性親水性基である場合、一般式(3)で表される繰り返し単位の含有量は、(a)高分子化合物中、5質量%〜50質量%であることが好ましく、5質量%〜40質量%が更に好ましく、1質量%〜20質量%が特に好ましい。
一般式(3)における親水性基Aがノニオン性親水性基である場合、(a)高分子化合物中、20質量%〜95質量%であることが好ましく、30質量%〜80質量%が更に好ましく、30質量%〜70質量%が特に好ましい。
【0133】
一般式(3)で表される繰り返し単位は、下記一般式(3’)で表される単量体を重合して得ることができる。
【0134】
【化24】

【0135】
一般式(3’)における、Rcy、Z、R、及びAは、前記一般式(3)におけるRcy、Z、R、及びAとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0136】
一般式(3’)で表される単量体の好ましい例としては以下に示す単量体化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0137】
メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−co−プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート(メタ)アクリロイロキシエチルエチエンウレア、ビニルピロリドン、3−(メタ)アクリロイロキシ−γ―ブチロラクトン、アクリルアミド、tert−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸テトラブチルアンモニウム、モノ(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、モノ(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸ナトリウム、モノ(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸ナトリウム、(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニル安息香酸等が挙げられる。
【0138】
一般式(3’)で表される単量体としては、市販の化合物を用いることができる他、一般的に知られている公知慣用の方法により製造することができる。
【0139】
また、本発明においては、一般式(3’)で表される単量体の他に、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその無水物、さらにこれらより誘導されるジカルボン酸塩も好ましく使用することができる。
【0140】
(a)高分子化合物における親水性基を有する繰り返し単位の含有量は、親水性基の種類により好ましい含有量が異なるが、(a)高分子化合物が水溶性となる含有量とすることが好ましい。
【0141】
本発明に係る(a)高分子化合物は、一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位、パーフルオロアルキル構造及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種の繰り返し単位と、及び、親水性基を有する繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。
【0142】
他の繰り返し単位を形成する単量体としては、スチレン、p−メトキシスチレン等のスチレン類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類が挙げられ、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。
なお、他の繰り返し単位を形成するモノマーとしては、上記以外の公知のモノマーを、必要に応じて使用することもできる。
【0143】
(a)高分子化合物における他の繰り返し単位の含有量としては、0〜60質量%であることが好ましく、0〜40質量%が更に好ましく、0〜30質量%が特に好ましい。
【0144】
(a)高分子化合物は、例えば、(i)前記一般式(2’)で表される単量体等の一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位を形成するための単量体、(ii)パーフルオロアルキル基を有する単量体、エチレン性不飽和二重結合とジアルキルシロキサン構造とを有する単量体などのパーフルオロアルキル基及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種を有する繰り返し単位を形成するための単量体、及び(iii)所望により用いられる一般式(3)で表される繰り返し単位を形成するための単量体を、公知の重合方法により重合し、必要に応じて酸性基をアルカリ金属の水酸化物等により中和することにより得ることができる。具体的には、例えば、特開昭52−988号公報、特開昭55−154970号公報、Langmuir 18巻14号5414〜5421頁(2002年)等に記載の重合方法準じた方法で、(a)高分子化合物を製造することができる。
【0145】
(a)高分子化合物の重量平均分子量は、2,000〜100,000であることが好ましく、2,000〜80,000がより好ましく、2,000〜60,000が更に好ましい。
【0146】
なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。
【0147】
以下に、(a)高分子化合物の具体例として、例示化合物(A−1)〜例示化合物(A−9)をその重量平均分子量とともに示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、下記例示化合物において、a、b、c及びdを用いて示される共重合比は質量基準である。

【0148】
【化25】

【0149】
【化26】

【0150】
〔(b)水〕
本発明のインク組成物は水を含有する。
(b)水としては、不純物を含まないイオン交換水、蒸留水などを用いることが好ましい。
本発明のインク組成物における水の含有量は、10〜97質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることが好ましく、50〜85質量%であることがより好ましい。
【0151】
〔その他の添加剤〕
本発明のインク組成物には、必須成分である(a)高分子化合物、(b)水に加えて、本発明の効果を損なわない限りにおいて、公知の添加剤を併用することができる。以下、インク組成物に使用しうる添加剤について説明する。
【0152】
<<(a)高分子化合物とは構造が異なる(c)水溶性高分子化合物>>
本発明のインク組成物には、(a)高分子化合物とは構造が異なる(c)水溶性高分子化合物を含有してもよい。以下、(a)高分子化合物とは構造が異なる(c)水溶性高分子化合物を単に(c)水溶性高分子化合物ともいう。
【0153】
(c)水溶性高分子化合物については、水溶性を有し、且つ、前記(a)高分子化合物とは構造が異なる高分子化合物であれば、特に限定なく用いることができるが、設計の自由度から、水溶性のビニル重合体であることが好ましい。
【0154】
(c)水溶性高分子化合物としては、親水性基を有する繰り返し単位を含むことが好ましく、該親水性基を有する繰り返し単位としては、前記一般式(3)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。(c)水溶性高分子化合物における一般式(3)で表される繰り返し単位の好ましい含有量は(a)高分子化合物における場合と同様の範囲である。
(c)水溶性高分子化合物は、更に共重合成分を含んでいてもよい。共重合成分としては、親水性基を有さないラジカル重合性モノマーにより得られる繰り返し単位が挙げられる。親水性基を有さないラジカル重合性モノマーの例としては、併用成分として後述する分子量100以上100,000未満の硬化性化合物に包含されるラジカル重合性モノマーのうち、親水性基を有さないものが挙げられる。
【0155】
本発明のインク組成物に、(c)水溶性高分子化合物を含有する場合、(a)高分子化合物の含有量が少量であっても、記録媒体にインク組成物が付与された際において、空気と接するインク滴の表面部分を(a)高分子化合物が覆う傾向となり、良好な耐ブロッキング性、耐水性、及び耐溶剤性を発現できる。さらに、(c’)架橋性化合物の架橋効果により、膜強度に優れた硬化膜(画像)を得ることができる。
【0156】
(c)水溶性高分子化合物としては、(c’)架橋性化合物であることも好ましい態様である。
(c’)架橋性化合物としては、前記一般式(1)で表される部分構造を含む繰り返し単位を含み、パーフルオロアルキル構造及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種の繰り返し単位を含まない水溶性の高分子化合物であることが好ましい。特に好ましくは、前記一般式(2)で表される繰り返し単位と、前記一般式(3)で表される繰り返し単位を含み、パーフルオロアルキル構造及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種の繰り返し単位を含まない水溶性の高分子化合物である。
【0157】
(c)水溶性高分子化合物が(c’)架橋性化合物である場合における前記一般式(1)で表される部分構造を含む繰り返し単位と親水性基を有する繰り返し単位との含有量(好ましくは、前記一般式(2)で表される繰り返し単位と、前記一般式(3)で表される繰り返し単位との含有量)は、前記(a)高分子化合物における場合と同様の範囲である。
【0158】
(c)水溶性高分子化合物の一態様である(c’)架橋性化合物の他の例としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、マレイミジル基、スチリル基、ビニルエーテル基、アリル基、又は一般式(1)で表される部分構造を有する水溶性の高分子化合物が挙げられる。本発明においては、前記一般式(1)で表される部分構造を含む繰り返し単位を含み、パーフルオロアルキル構造及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種の繰り返し単位を含まない水溶性の高分子化合物であることが特に好ましい。
【0159】
水溶性高分子化合物の分子量としては、重量平均分子量で、3,000〜20,0000の範囲が好ましく、5,000〜150,000の範囲がより好ましく、10,000〜100,000の範囲が更に好ましい。
【0160】
(c)水溶性高分子化合物としては、非架橋性化合物、(c’)架橋性化合物のいずれか一方を用いてもよいし、双方を併用してもよい。
【0161】
インク組成物における(c)水溶性高分子化合物の総含有量としては、2〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましく、2〜10質量%が更に好ましい。
(c)水溶性高分子化合物の含有量を、上記範囲とすることで、硬化性や吐出性とインク硬化膜の平滑性が良い傾向となる。
【0162】
<<分子量100以上100,000未満の硬化性化合物>>
本発明のインク組成物には、分子量100以上100,000未満の硬化性化合物(以下、単に「硬化性化合物」と称する場合がある。)を併用することもできる。該硬化性化合物には、(a)高分子化合物及び(c’)架橋性化合物は包含されない。
【0163】
硬化性化合物としては、分子中に、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する水溶性の硬化性化合物、又は、前記一般式(1)で表される部分構造を少なくとも1つ有する水溶性の硬化性化合物であることが好ましく、本発明においては、分子量が、100以上1,000未満の硬化性低分子化合物、及び、分子量1,000以上100,000未満の硬化性高分子化合物のいずれについても使用することができる。なお、ここで分子量とは、分子量分布を有するものについては重量平均分子量である。
【0164】
硬化性化合物としては、硬化性低分子化合物及び硬化性高分子化合物をそれぞれ1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよく、重合性低分子化合物と重合性高分子化合物の両方を用いてもよい。2種以上の硬化性化合物を併用することが好ましい。
【0165】
本発明で用いられる硬化性化合物は、水溶性の化合物又は水分散性の化合物であることを要する。本発明において、水溶性又は水分散性の化合物とは、室温において蒸留水に2質量%溶解又は分散するものを指すが、15質量%溶解又は分散することが好ましく、任意の割合で水と均一に混合するものが特に好ましい。
【0166】
分子量100以上100,000未満の硬化性化合物の一例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステルおよびこれらの塩;エチレン性不飽和基を有する無水物;(メタ)アクリルアミド;スチレン誘導体;ビニルエーテル類、N−ビニル化合物等のラジカル重合性モノマーが挙げられる。
【0167】
ラジカル重合性モノマーとしては、ラジカル重合性単官能モノマーとラジカル重合性多官能モノマーとが挙げられる。
【0168】
ラジカル重合性単官能モノマーとしては、アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシメチルアクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、3−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、メトキシオリゴエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0169】
ラジカル重合性多官能モノマーとしては、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス[2−(メタクリロイロキシ)エチル]ホスフェート、メチレンビスアクリレート、4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンビスアクリルアミド、トリエチレングリコールジビニルエーテルなどが挙げられる。
【0170】
ラジカル重合性オリゴマーとしては、ポリエステルオリゴマー、ウレタンオリゴマー、変性ポリエーテルオリゴマー、アクリルオリゴマー、エポキシオリゴマー等を用いることができる。これらの中で、加水分解安定性の観点から、重合性基としてアクリルアミド基を有するオリゴマーや水分散性のウレタンオリゴマーがより好ましい。
【0171】
また、前記一般式(1)で表される部分構造を有する低分子化合物も、分子量100以上1,000未満の硬化性低分子化合物として使用してもよい。
【0172】
このような重合性低分子化合物は、1分子中に、前記一般式(1)で表される部分構造を2〜6有する化合物が好ましく、2〜4有する化合物がより好ましく、2〜3有する下化合物であることがさらに好ましく、2であることが特に好ましい。
より具体的には、下記一般式(1−L)で表される化合物が挙げられる。
【0173】
【化27】

【0174】
一般式(1−L)において、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRの少なくとも一方は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは互いに結合して4〜6員の環構造を形成してもよい。Qはg価の連結基を表す。gは2以上の整数を表す。
【0175】
一般式(1―L)におけるR及びRは、既述の一般式(1)におけるR及びRとそれぞれ同義であり、好ましい例示も同様である。
【0176】
一般式(1―L)において、Qはg価の連結基を表す。Qは炭化水素基からg個の水素原子が除去された残基であることが好ましい。Qが炭化水素基である場合、炭化水素基中にはエーテル基、エステル基、アミノ基、アミド結合、シリルエーテル基、チオール基等が存在していてもよい。Qが炭化水素基である場合、炭素数1〜30の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜20の炭化水素基であることがより好ましい。
【0177】
一般式(1―L)において、gは2以上の整数を表し、2〜6であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2〜3であることがさらに好ましく、2であることが特に好ましい。
【0178】
一般式(1−L)で示される化合物の具体例としては、以下の化合物(4−1)〜(4−6)が好ましく挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
【化28】

【0180】
また、1分子中に、前記一般式(1)で表される部分構造を1つ有する単官能の化合物についても、分子量100以上1,000未満の硬化性低分子化合物と使用してもよい。
前記一般式(1)で表される部分構造を1つ有する単官能の化合物としては、例えば下記(4−7)〜(4−9)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
【化29】

【0182】
本発明のインク組成物が、分子量100以上100,000未満の硬化性化合物を含有する場合、その含有量としては、インク組成物の全質量に対し、2質量%〜20質量%が好ましく、2質量%〜15質量%がより好ましく、2質量%〜12質量%が更に好ましい。
【0183】
<<(d)着色剤>>
本発明のインク組成物は、着色剤を含有することが好ましい。
着色剤としては、染料及び顔料が挙げられ、耐熱性、耐光性、耐水性等の耐久性の観点からは、顔料であることが好ましい。
【0184】
着色剤として顔料を用いる場合、該顔料は顔料分散物としてインク組成物に含有させることができる。着色剤として顔料分散物を用いることは、耐溶剤性向上の観点から好ましい。顔料分散物としては、顔料を顔料分散剤で分散したものの他、自己分散顔料も用いることができる。
【0185】
(顔料)
着色剤として用いられる顔料としては、一般に用いられる有機顔料、無機顔料、さらには、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。通常、市販されている顔料はいずれも使用でき、さらに、市販の顔料分散体や表面処理剤などで予め処理された顔料、例えば、顔料を分散媒としての不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等も、本発明の効果を損なわない限りにおいて用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0186】
本発明に用いうる有機顔料及び無機顔料としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等)、C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエロー等)、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー219の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエロー等)、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー166の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料、C.I.ピグメントイエロー120(ベンズイミダゾロンイエロー)C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー194等の如きアセトロン顔料等が挙げられる。
【0187】
赤あるいはマゼンタ色を呈するものとしては、例えば、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド6等の如きB−ナフトール顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B等)、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド48(B−オキシナフト酸レーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッド等)、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド242の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)、C.I.ピグメントレッド172(エリスロシンレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、
【0188】
C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド224の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)、C.I.ピグメントレッド262、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド209の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド208の如きナフトロン顔料、C.I.ピグメントレッド247の如きナフトールAS系レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド256、C.I.ピグメントレッド268、C.I.ピグメントレッド269の如きナフトールAS顔料、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド27の如きジケトピロロピロール顔料等が挙げられる。
【0189】
青あるいはシアン色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0190】
緑色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)、C.I.ピグメントグリーン10等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ2、C.I.ピグメントオレンジ3、C.I.ピグメントオレンジ5の如きΒ−ナフトール顔料、C.I.ピグメントオレンジ4、C.I.ピグメントオレンジ22、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ74等の如きナフトールAS顔料、C.I.ピグメントオレンジ61等の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントオレンジ43等の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントオレンジ15、C.I.ピグメントオレンジ16等の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントオレンジ48、C.I.ピグメントオレンジ49等の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ62、C.I.ピグメントオレンジ60、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ72等の如きアセトロン顔料、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34等の如きピラゾロン顔料、が挙げられる。
茶色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン32等のナフトロン顔料などが挙げられる。
【0191】
黒色を呈する顔料としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック)等の如きインダジン顔料、C.I.ピグメントブラック31、C.I.ピグメントブラック32の如きペリレン顔料等が挙げられる。
白色顔料としては、例えば、塩基性炭酸鉛(2PbCOPb(OH)、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。白色顔料に使用される無機粒子は単体でも良いし、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等の酸化物や有機金属化合物、有機化合物との複合粒子であっても良い。
【0192】
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、さらに、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0193】
白色以外の顔料は、平均粒径が小さいほど発色性に優れるため、顔料分散物を白色以外の顔料分散物に適用する場合であれば、顔料分散物に含有される顔料の平均粒径は、0.01μm〜0.4μm程度であることが好ましく、さらに好ましくは0.02μm〜0.3μmの範囲である。
また、顔料の最大粒径は、3μm以下、好ましくは1μm以下がより好ましい。顔料の粒径は、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件の設定などにより調整することができる。また、本発明のインク組成物を、白色のインク組成物として調製する場合であれば、顔料分散物に含有される顔料の平均粒径は、充分な隠蔽性を与える観点から、0.05μm〜1.0μm程度であることが好ましく、さらに好ましくは0.1μm〜0.4μm程度である。白色の顔料分散物とする場合についても、顔料の最大粒径は、3μm以下、好ましくは1μm以下であることが好ましい。
【0194】
(分散剤)
着色剤として顔料を用いる場合には、顔料粒子を調製する際に、必要に応じて顔料分散剤を用いてもよく、用いることのできる顔料分散剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、あるいはスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体およびこれらの塩を挙げることができる。
【0195】
また、本発明のインク組成物には、自己分散顔料を用いることもできる。本発明でいう自己分散顔料とは、分散剤なしで分散が可能な顔料を指し、特に好ましくは、表面に極性基を有している顔料粒子である。
【0196】
本発明でいう表面に極性基を有する顔料粒子とは、顔料粒子表面に直接極性基で修飾させた顔料、あるいは有機顔料母核を有する有機物で直接に又はジョイントを介して極性基が結合しているもの(以下、顔料誘導体という)をいう。
極性基としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、燐酸基、硼酸基、水酸基が挙げられるが、好ましくはスルホン酸基、カルボン酸基であり、更に好ましくは、スルホン酸基である。
【0197】
このような表面に極性基を有する顔料粒子を得る方法としては、例えば、WO97/48769号公報、特開平10−110129号公報、特開平11−246807号公報、特開平11−57458号公報、同11−189739号公報、特開平11−323232号公報、特開2000−265094公報等に記載の顔料粒子表面を適当な酸化剤で酸化させることにより、顔料表面の少なくとも一部に、スルホン酸基もしくはその塩といった極性基を導入する方法が挙げられる。具体的には、カーボンブラックを濃硝酸で酸化したり、カラー顔料の場合は、スルフォランやN−メチル−2−ピロリドン中で、スルファミン酸、スルフォン化ピリジン塩、アミド硫酸などで酸化することにより調製することができる。これらの反応で、酸化が進みすぎ、水溶性となってしまった物は除去、精製することにより、顔料分散体を得ることができる。また、酸化によりスルフォン酸基を表面に導入した場合は、酸性基を必要に応じて、塩基性化合物を用いて中和してもよい。
【0198】
そのほかの表面に極性基を有する顔料粒子を得る方法としては、特開平11−49974号公報、特開2000−273383公報、同2000−303014公報等に記載の顔料誘導体をミリングなどの処理で顔料粒子表面に吸着させる方法、特願2000−377068、同2001−1495、同2001−234966に記載の顔料を顔料誘導体と共に溶剤で溶解した後、貧溶剤中で晶析させる方法等を挙げることができ、いずれの方法でも容易に、表面に極性基を有する顔料粒子を得ることができる。
【0199】
顔料表面における極性基は、フリーでも塩の状態でも良いし、あるいはカウンター塩を有していても良い。カウンター塩としては、例えば、無機塩(リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ニッケル、アンモニウム)、有機塩(トリエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ピリジニウム、トリエタノールアンモニウム等)が挙げられ、好ましくは1価の価数を有するカウンター塩である。
【0200】
本発明におけるインク組成物全量に対する着色剤の含有量は、0.5質量%〜10質量%が好ましく、0.5質量%〜5質量%が更に好ましい。
【0201】
<<(e)水溶性有機溶剤>>
本発明のインク組成物は、主たる溶剤して水を含有するが、目的に応じて、溶剤中に、さらに、水溶性有機溶剤を併用することが好ましい。
ここで水溶性有機溶剤とは、25℃の水に対する溶解度が10質量%以上である有機溶剤をいう。
【0202】
本発明で用いることのできる水溶性有機溶剤としては、例えば、下記のものが挙げられる。
・アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、
・多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール、2−メチルプロパンジオール等)、
・多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、
【0203】
・アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、
・アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、
・複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチレンウレア等)、
・スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、
・スルホン類(例えば、スルホラン等)、
・その他(尿素、アセトニトリル、アセトン等)
【0204】
好ましい水溶性有機溶剤としては、多価アルコールエーテル類、複素環類が挙げられ、これらを併用して使用することが好ましい。
【0205】
多価アルコールエーテル類では、いわゆるグリコールエーテル類が好ましく、具体的には、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルが好ましく、2−ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが更に好ましい。
複素環類としては、2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンウレア等が好ましく、2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが特に好ましい。
特に沸点の高い溶剤は好ましく用いることができ、常圧での沸点が120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。
【0206】
水溶性有機溶剤は、単独もしくは複数を併用してもよい。水溶性有機溶剤のインク組成物中の添加量としては、総量で1質量%〜60質量%が好ましく、より好ましくは2質量%〜35質量%である。
【0207】
<<界面活性剤>>
本発明のインク組成物には、界面活性剤を添加することができる。
好ましく使用される界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。特にアニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0208】
また、本発明においては、高分子界面活性剤も用いることができ、以下の水溶性樹脂が、好ましい高分子界面活性剤として挙げられる。水溶性樹脂として好ましく用いられるのは、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等を挙げることができる。
また、本発明にはポリアルキルシロキサンを有するシリコーン系界面活性剤や、フッ化アルキル基を有するフッ素系界面活性剤も好ましく用いることができる。
【0209】
本発明のインク組成物において、界面活性剤を用いる場合、その添加量は、固形分添加量で0.1質量%以上5質量%以下となるように添加されることが好ましく、界面活性剤の固形分添加量を0.5質量%以上2質量%以下とすることが特に好ましい。
【0210】
<<増感色素>>
本発明においては、公知の増感色素を併用することができ、増感色素を併用することが好ましい。溶解性としては蒸留水に対して室温において、0.5質量%以上溶解するものが好ましく、1質量%以上溶解するものがより好ましく。3質量%以上溶解するものが特に好ましい。また、増感度色素としては、非水溶性の重合開始剤を分散した光重合開始剤も用いることができる。
【0211】
併用しうる公知の増感色素の例としては、N−[2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアルミウムクロリド、ベンゾフェノン、チオキサントン、アントラキノン誘導体及び3−アシルクマリン誘導体、ターフェニル、スチリルケトン及び3−(アロイルメチレン)チアゾリン、ショウノウキノン、エオシン、ローダミン及びエリスロシンや、これらを水溶化した変性体やこれらの分散体などが挙げられる。また、特開2010−24276号広報に記載の一般式(i)で表される化合物や、特開平6−107718号広報に記載の一般式(I)で表される化合物も、好適に使用できる。
【0212】
本発明に係るインクには、上述した各構成要素に加えて、必要に応じて、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤、固体湿潤剤、シリカ微粒子等を適宜選択して用いることができ、例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号および特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤等を挙げることができる。
【0213】
<インク組成物の調製方法>
本発明に係るインク組成物の調製方法としては、特に制限はなく、各成分を、ボールミル、遠心ミル、遊星ボールミルなどの容器駆動媒体ミル、サンドミルなどの高速回転ミル、撹拌槽型ミルなどの媒体撹拌ミル、ディスパーなどの簡単な分散機により撹拌、混合し、分散させることにより調製することができる。各成分の添加順序については任意である。好ましくは、アゾ顔料、高分子分散剤及び有機溶剤をプレミックスした後に分散処理し、得られた分散物を樹脂と有機溶剤とともに混合する。この場合、添加時や添加後、スリーワンモーター、マグネチックスターラー、ディスパー、ホモジナイザーなどの簡単な撹拌機にて均一に混合する。ラインミキサーなどの混合機を用いて混合してもよい。また、分散粒子をより微細化するために、ビーズミルや高圧噴射ミルなどの分散機を用いて混合してもよい。また、顔料や高分子分散剤の種類によっては、顔料分散前のプレミックス時に樹脂を添加するようにしてもよい。
【0214】
本発明のインク組成物は、25℃における表面張力が200mN/m〜40mN/mであることが好ましい。表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用い、25℃の条件下で測定されるものである。また、粘度は、1mPa・s〜40mPa・sが好ましく、3mPa・s〜30mPa・sがより好ましい。インク組成物の粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYOCO.LTD製)を用い、25℃の条件下で測定されるものである。
【0215】
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、前記インク組成物を記録媒体上に付与するインク付与工程と、前記付与したインク組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程とを含むことを特徴とする。これらの工程を行うことで、記録媒体上に定着したインク組成物による画像が形成される。
【0216】
(インク付与工程)
以下、本発明の画像形成方法における、インク付与工程について説明する。
本発明におけるインク付与工程は、前記インク組成物を記録媒体上に付与する工程であれば限定されない。
【0217】
記録媒体上に本発明のインク組成物を付与する態様としては、インクジェット法によるインク組成物を記録媒体上に付与する態様が特に好ましい。
【0218】
本発明の画像形成方法において、インク付与工程インクジェット法が適用される場合に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明の画像形成方法における記録媒体へのインク組成物の吐出を実施することができる。
【0219】
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、加熱手段を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi(dot per inch)、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、さらに好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm(1inch)当たりのドット数を表す。
【0220】
インク付与工程において、吐出されるインク組成物は、一定温度にすることが望ましいことから、インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物の流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンタ立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0221】
上記のインクジェット記録装置を用いたインク組成物の吐出、インク組成物を好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3mPa・s〜15mPa・s、より好ましくは3mPa・s〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明のインク組成物として、25℃におけるインク組成物の粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
【0222】
吐出時のインク組成物の温度は一定であることが好ましく、インク組成物の温度の制御幅は、より好ましくは設定温度の±5℃、更に好ましくは設定温度の±2℃、最も好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0223】
本発明において、記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の記録媒体を使用することができる。記録媒体としては、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。
中でも、本発明のインク組成物は密着性に優れるため、記録媒体として非吸収性記録媒体に対して好適に使用することができ、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等のプラスチック基材が好ましく、ポリ塩化ビニル樹脂基材がより好ましく、ポリ塩化ビニル樹脂シート又はフィルムがさらに好ましい。
【0224】
(照射工程)
以下、本発明の画像形成方法における、照射工程について説明する。
本発明における照射工程は、前記記録媒体上に付与されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する工程であれば限定されない。
本発明のインク組成物に活性エネルギー線を照射することで、インク組成物中の化合物の架橋反応が進行し、画像を定着させ、印画物の耐溶剤性等を向上させることが可能となる。この照射工程により、(a)高分子化合物が有する反応性基である一般式(1)表される部分構造による架橋反応が起こり、インク組成物中に下記一般式(5)の架橋構造が形成される。この反応は隣接する高分子化合物の粒子同士、或いは、(a)特定高分子と、所望により含まれる一般式(1)で示される部分構造を有する重合性化合物との間でも生起する。この架橋反応はラジカルを介在しない反応であるために酸素により架橋反応が阻害される懸念がないという特徴を有する。
【0225】
【化30】

【0226】
一般式(5)中、R、R、Ra’及びRb’は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRの少なくとも一方、及び、Ra’及びRb’の少なくとも一方は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは互いに結合して4〜6員の環構造を形成してもよい。Ra’及びRb’は互いに結合して4〜6員の環構造を形成してもよい。R及びRは、好ましい範囲も含めて、一般式(1)に記載されたものと同様である。Ra’は好ましい範囲も含めて一般式(1)に記載されたRと同様である。Rb’は好ましい範囲も含めて一般式(1)に記載されたRと同様である。
【0227】
照射工程で用いることができる活性エネルギー線としては、紫外線(以下、UV光とも称する)、可視光腺、電子線等をあげることができ、UV光を使用することが好ましい。
【0228】
UV光のピーク波長は、必要に応じて用いられる増感色素の吸収特性にもよるが、例えば、200nm〜405nmであることが好ましく、220nm〜390nmであることがより好ましく、220nm〜350nmであることが更に好ましい。本発明では増感色素や光重合開始剤を併用しない場合は200nm〜310nmであることが好ましく200nm〜280nmがより好ましい。
【0229】
UV光は、露光面照度が、例えば、10mW/cm〜2,000mW/cm、好ましくは、20mW/cm〜1,000mW/cmで照射されることが適当である。
【0230】
UV光源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、水銀ランプ、メタルハライドランプやUV蛍光灯が広く知られている。また、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用であり、LED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、UV光源として期待されている。本発明では増感色素や光重合開始剤を併用する場合は、メタルハライドランプや、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、UV−LEDが好ましく、増感色素や光重合開始剤を併用しない場合は、中圧水銀ランプや低圧水銀ランプが好ましい。
【0231】
照射工程おいては、記録媒体上に付与された本発明のインク組成物が、このようなUV光に、例えば、0.01秒間〜120秒間、好ましくは、0.1秒間〜90秒間照射されることが適当である。
照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されているに開示されている照射条件及び照射方法を本発明においても同様に適用することができる。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査する方式や、駆動を伴わない別光源によって行われ、駆動を伴わない別光源によって行われる方式が好ましい。活性エネルギー線の照射は、インク着弾、加熱乾燥後、一定時間(例えば、0.01秒間〜120秒間、好ましくは、0.01秒間〜60秒間)をおいて行われることになる。
【0232】
(加熱乾燥工程)
本発明の画像形成方法は、インク付与工程後であって照射工程前に、更に加熱乾燥工程を有することが好ましい。
加熱乾燥工程において、記録媒体上に吐出されたインク組成物は、加熱手段により、(b)水及び必要に応じて併用される水溶性有機溶剤が蒸発されることにより定着されることが好ましい。
【0233】
吐出された本発明のインク組成物に熱を加えて乾燥させ、定着する工程(加熱乾燥工程)について説明する。
加熱手段としては、(b)水及び必要に応じて併用される水溶性有機溶剤を乾燥させることができればよく、限定されないが、ヒートドラム、温風、赤外線ランプ、熱オーブン、ヒート版加熱などを使用することができる。
加熱温度は、40℃以上が好ましく、40℃〜150℃程度がより好ましく、40℃〜80℃程度が更に好ましい。なお、乾燥/加熱時間は、用いるインク組成物の組成・印刷速度を加味して適宜設定することができる。
【0234】
加熱により定着されたインク組成物は、必要に応じ、照射工程において活性エネルギー線を照射して、さらに光定着される。既述のごとく、照射工程においては、UV光による定着をすることが好ましい。
【0235】
[印画物]
本発明の印画物は、本発明のインク組成物を形成された画像、或いは、本発明の画像形成方法によって記録された画像を有することを特徴とする。本発明の印画物は、記録された画像の耐水性、耐溶剤性及び耐ブロッキング性に優れた印画物となる。
【実施例】
【0236】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0237】
実施例、比較例で使用した顔料分散物、インク組成物の素材を以下に示す。
【0238】
〔顔料分散物の調製〕
<ポリマー分散剤E−1の合成>
撹拌機、冷却管を備えた500mlの三口フラスコにメチルエチルケトン44gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン25gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.43g、ベンジルメタクリレート30g、メタクリル酸5g、及びメチルメタクリレート15gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン1gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.21gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥し、ポリマー分散剤E−1を43g得た。
得られたポリマー分散剤E−1の組成は、H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は42,000であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)に記載の方法により酸価を求めたところ、65.4mgKOH/gであった。
【0239】
<樹脂被覆顔料分散物の調製>
(樹脂被覆シアン顔料の分散物(C))
ピグメント・ブルー15:3(フタロシアニンブルーA220、大日精化(株)製)10部と、上記ポリマー分散剤E−1を5部と、メチルエチルケトン42部と、1mol/L NaOH水溶液5.5部と、イオン交換水87.2部とを混合し、ビーズミルにより0.1mmφジルコニアビーズを用いて2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%の樹脂被覆シアン顔料の分散物(C)を得た。
【0240】
実施例に用いた(a)高分子化合物である化合物A−1〜A−4、化合物C−1(非架橋性化合物である(c)水溶性高分子化合物)、及び、化合物D−1(架橋性化合物である(c)水溶性高分子化合物)は、特開昭52−988号公報を参考に合成を行った。合成した各高分子化合物は、大量のヘキサン中に再沈殿後、炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)水溶液で溶解して用いた。
本実施例及び比較例に使用した各化合物の構造を以下に示す。
なお、化合物A−1〜A−4、化合物C−1、化合物D−1において、a、b、c及びdを用いて示される共重合比は質量基準である。
【0241】
<(a)高分子化合物>
【化31】

【0242】
<(c)水溶性高分子化合物>
【化32】

【0243】
<水溶性有機溶剤>
・2−ピロリドン(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)
【0244】
<界面活性剤>
・フッ素系界面活性剤(商品名:ZONYL FSN、Aldrich社製)
【0245】
[実施例1〜6、比較例1]
〔インク組成物の調製〕
得られた顔料分散物〔分散物(C)〕と、上記の(a)高分子化合物、(c)水溶性高分子化合物、水溶性有機溶剤、界面活性剤、及び水を、下記表1に示す組成になるように、ミキサー(シルバーソン社製L4R)を用いて、2,500回転/分にて混合撹拌し、粗インク組成物をそれぞれ調製した。得られた各粗インク組成物は、プラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の孔径5μmフィルタ(ミリポア社製のMillex−SV、直径25mm)にて濾過して完成品である実施例1〜6及び比較例1のインク組成物を得た。
【0246】
<評価>
得られた実施例及び比較例の各インク組成物を、RK PRINT COAT INSTRUMENTS社製 KハンドコーターのNo.2バーを用いて、8cm四方の塩化ビニルシート(エイブリィ・デニソン社製、AVERY 400 GLOSS WHITE PERMANENT)に12μmの厚みで塗布した。さらに、60℃で3分間水分を乾燥した後、低圧水銀灯で1000mJ/cmのエネルギーとなる条件で露光し、塩化ビニルシート上に硬化膜(ベタ画像)を有する印画物を得た。
得られた印画物を用いて、以下の評価を行った。評価結果は表1に示す。
【0247】
<耐ブロッキング性評価>
得られた2枚の印画物における硬化膜を有する側の面が向き合うように、印画物同士を重ね合わせ、印画物と同サイズの鉄板を用いて、さらに1kg/cmの圧力で30℃で1時間加圧した。その後、2枚の塗膜面を剥がした場合の状態を目視で観察し、以下の評価基準で評価した。評価結果は表1に示す。なお、A及びBが実用上問題の無いレベルである。
−評価基準−
A:塗膜にはがれがなく、剥がす際に音が生じない。
B:塗膜にはがれがないが、剥がす際に音が生じる。
C:塗膜にはがれはないが、塗膜に若干の転写が見られる。
D:塗膜に剥がれが生じる。
【0248】
<耐水性評価>
得られた印画物における硬化膜を有する側の表面を、イオン交換水を含浸した綿棒にてこすり、以下の評価基準で評価した。評価結果は表1に示す。なお、A及びBが実用上問題の無いレベルである。
−評価基準−
A:10回以上こすっても、画像に変化が認められなかった。
B:5〜9回のこすりで、画像の濃度が低下した。
C:2〜4回のこすりで、画像の濃度が低下した。
D:1回こすっただけで、画像の濃度が著しく低下した。
【0249】
<耐溶剤性評価>
得られた印画物における硬化膜を有する側の表面を、イソプロピルアルコールを含浸した綿棒にてこすり、以下の評価基準で評価した。評価結果は表1に示す。なお、A及びBが実用上問題の無いレベルである。
−評価基準−
A:10回以上こすっても、画像に変化が認められなかった。
B:5〜9回のこすりで、画像の濃度が低下した。
C:2〜4回のこすりでで、画像の濃度が低下した。
D:1回こすっただけで、画像の濃度が著しく低下した。
【0250】
<吐出性評価>
インクジェット記録装置として、市販のインクジェットプリンタ(ローランド ディー.ジー.社製SP−300V)を用意した。得られた各インク組成物を上記インクジェットプリンタに装填し、塩化ビニルシート(エイブリィ・デニソン社製、AVERY 400 GLOSS WHITE PERMANENT)にヘッドから、3分間吐出し、ベタ画像及び細線を記録した。吐出停止後、得られた画像を3分間放置した。その後、再び、ベタ画像及び細線を記録して得られた画像(5cm×5cm)を観察した。観察した画像を下記の評価基準に従って目視により評価した。評価結果は表1に示す。
−評価基準−
A:抜けの発生等によるドット欠けの発生が認められず、良好な画像が得られた。
B:抜けの発生等によるドット欠けの発生がわずかに認められたが、実用上支障を来さない程度であった。
C:抜けの発生等によるドット欠けの発生があり、実用に耐えない画像であった。
なお、評価ランクA及びBが実用上問題のないレベルである。

下記表1中の「−」は含有しないことを表す。
【0251】
【表1】

【0252】
表1に示すように、(a)高分子化合物を含有する各実施例のインク組成物は、比較例のインク組成物との対比において、いずれも、耐ブロッキング性、耐水性、及び耐溶剤性について優れた効果が得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位と、パーフルオロアルキル基及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種と、を有する高分子化合物、及び(b)水を含有するインク組成物。
【化1】



[一般式(1)中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRの少なくとも一方は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。*は、高分子化合物における主鎖又は側鎖との結合部位を示す。]
【請求項2】
前記(a)高分子化合物が、親水性基を有する高分子化合物である請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位が、下記一般式(2)で表される繰り返し単位である請求項1又は請求項2に記載のインク組成物。
【化2】



[一般式(2)中、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRの少なくとも一方は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。Rは、水素原子又はメチル基を表す。Zは、単結合、−COO−**又は−CONR−**を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、**はXとの結合位置を表す。Xは2価の有機基を表す。]
【請求項4】
前記(a)高分子化合物が、アルコール性水酸基、アルキル置換カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一種の親水性基を有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記(a)高分子化合物が、前記一般式(1)で表される部分構造を有する繰り返し単位を10質量%〜70質量%含み、パーフルオロアルキル基及びジアルキルシロキサン構造から選択された少なくとも1種を有する繰り返し単位を5質量%〜25質量%含む高分子化合物である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項6】
更に、前記(a)高分子化合物とは構造が異なる(c)水溶性高分子化合物を含有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項7】
更に、前記(a)高分子化合物とは構造が異なる(c)水溶性高分子化合物を含有し、該(c)水溶性高分子化合物が(c’)架橋性化合物である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記(a)高分子化合物の含有量が、インク組成物の全質量に対し、0.1質量%〜15質量%である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記(a)高分子化合物の含有量が、インク組成物の全質量に対し、0.1質量%〜2質量%である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項10】
更に、(d)着色剤を含有する請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項11】
更に、(e)水溶性有機溶剤を含有する請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項12】
インクジェット記録用である請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項13】
請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のインク組成物を記録媒体上に付与するインク付与工程と、記録媒体上に付与されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程と、を含む画像形成方法。
【請求項14】
請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のインク組成物を記録媒体上に付与するインク付与工程と、記録媒体上に付与されたインク組成物に含まれる(b)水及び(e)水溶性有機溶剤の少なくとも一部を乾燥して除去するインク乾燥工程と、記録媒体上に付与され、乾燥されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程と、を含む画像形成方法。
【請求項15】
画像記録媒体上に、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のインク組成物により形成されたか、或いは、請求項13又は請求項14に記載の画像形成方法によって記録された画像を有する印画物。

【公開番号】特開2013−112789(P2013−112789A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262311(P2011−262311)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】