説明

インク組成物、色素又はその塩、インクジェット記録方法及び着色体

【課題】耐光性と耐オゾン性に優れた記録画像を与える、マゼンタ色素を含有するインク組成物、特にインクジェット記録用のインク組成物の提供。
【解決手段】少なくとも1種類の下記式(13)で表される化合物又はその塩を、色素として含有し、


防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、染料溶解剤及び界面活性剤等を配合した耐光性と耐オゾン性に優れた記録画像を与えるインクジェット記録用のインク組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインク組成物、該インク組成物が色素として含有する化合物又はその塩、インクジェット記録方法、及びこれらにより着色された着色体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種カラー記録方法の中で、その代表的方法の一つであるインクジェットプリンタによる記録方法、すなわちインクジェット記録方法に用いるインクの1つとして、水溶性染料を水性媒体に溶解した水性インクが使用されている。水性インクに求められる性能としては、十分な濃度の記録画像を与えること;吐出ノズルの目詰まりを生じないこと;被記録材上での乾燥性がよいこと;滲みが少ないこと;保存安定性に優れること;等が要求される。また、コンピューターのカラーディスプレイ上の画像又は文字情報を、できるだけ忠実にフルカラーで再現するために、インクジェット記録に用いるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)のそれぞれのインクは、できるだけそれぞれの標準に近い色相を有し且つ鮮明であることが望まれる。さらに、インクジェット記録により得られる画像には、耐水性、耐湿性、耐光性及び耐ガス性(SOx、NOx、特にオゾンガスが挙げられる)等の画像の堅牢性が求められている。これらの中でも耐光性を大幅に改良する技術は未だ確立されておらず、特にY、M、C、及び必要に応じて用いられるブラック(K)の4原色のうち、マゼンタの記録画像は耐光性の弱いものが多いため、その改良は重要な課題の1つである。
【0003】
水性インクジェットインクに用いられるマゼンタ色素としては、キサンテン系色素と、1−アミノ−8−ヒドロキシ−ナフタレン−3,6−ジスルホン酸を用いたアゾ系色素が代表的である。しかし、前者は色相及び鮮明性は非常に優れるが耐光性が非常に劣る。また、後者は色相及び耐水性の点では良いものがあるが、耐光性及び耐オゾンガス性が劣る。また耐光性の向上を目的とし、アゾ系色素の金属錯体も提案されているが、鮮明性及び耐オゾンガス性が極めて劣る。
【0004】
鮮明性、耐酸化性ガス性及び耐光性に優れるマゼンタ色素としては、アントラピリドン系色素(例えば、特許文献1〜13参照)が挙げられる。しかし、色相、鮮明性、耐光性、耐水性、耐酸化性ガス性、及び該色素を含有するインク(組成物)の保存安定性の全てを満足させるものは依然として得られていない。
特許文献9、12及び13には、2分子のアントラピリドン化合物を架橋基により架橋した構造を有するマゼンタ色素、及び該色素を含有するインク組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−306221号公報
【特許文献2】特開2000−109464号公報
【特許文献3】特開2000−169776号公報
【特許文献4】特開2000−191660号公報
【特許文献5】特開2000−256587号公報
【特許文献6】特開2001−72884号公報
【特許文献7】特開2001−139836号公報
【特許文献8】国際公開2004/104108号パンフレット
【特許文献9】特開2003−192930号公報
【特許文献10】特開2005−8868号公報
【特許文献11】特開2005−314514号公報
【特許文献12】国際公開2006/075706号パンフレット
【特許文献13】国際公開2008/066062号パンフレット
【特許文献14】国際公開2009/093433号パンフレット
【特許文献15】特開2010−059217号公報
【特許文献16】国際公開2007/018175号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は耐光性と耐オゾン性(オゾンガスに対する耐久性)に優れた記録画像を与える、マゼンタ色素を含有するインク組成物、特にインクジェット記録用のインク組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討の結果、特定の式(1)で表わされる化合物を色素として含有するインク組成物が前記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させたものである。
即ち本発明は、以下の1)〜12)に関する。
【0008】
1)
少なくとも1種類の下記式(1)で表される化合物又はその塩を、色素として含有するインク組成物、
【0009】
【化1】

【0010】
[式(1)中、
1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R1とR2は結合して、これらがそれぞれ置換する2つの炭素原子と共にシクロアルキレン環を形成しても良く、
基Aは下記式(2)で表される基を表し、
基Bはカルボキシ基若しくは下記式(2)で表される基を表す。]、
【0011】
【化2】

【0012】
[式(2)中、
*は基Aとしての結合部位を表し、
nは0又は1の整数を表し、
3は水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はシアノアルキル基を表し、
4は水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、アルキル基、アルコキシ基、又はスルホ置換フェニル基を表す。]。
2)
式(1)において、
1及びR2がそれぞれ独立に水素原子又はC1−C6アルキル基であり、
1とR2が結合して、これらがそれぞれ置換する2つの炭素原子と共にC5−C10シクロアルキレン環を形成しても良く、
基Aが式(2)で表される基であり、
基Bがカルボキシ基若しくは式(2)で表される基であり、
式(2)において、
*が基Aとしての結合部位であり、
nが0又は1の整数であり、
3が水素原子、C1−C6アルキル基、ヒドロキシC1−C6アルキル基、シクロヘキシル基、又はシアノC1−C6アルキル基であり、
4が水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、C1−C6アルキル基、C1−C6アルコキシ基、又はスルホ置換フェニル基である、前記1)に記載のインク組成物。
3)
式(2)における、
3が水素原子、又はC1−C6アルキル基であり、
4が水素原子、C1−C6アルキル基、又はスルホ置換フェニル基である、前記1)又は2)に記載のインク組成物。
4)
水溶性有機溶剤をさらに含有する前記1)乃至3)のいずれか一項に記載のインク組成物。
5)
インクジェット記録に用いる前記1)乃至4)のいずれか一項に記載のインク組成物。
6)
前記1)乃至5)のいずれか一項に記載のインク組成物の液滴を、記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させ、記録を行うインクジェット記録方法。
7)
被記録材が情報伝達用シ−トである前記6)に記載のインクジェット記録方法。
8)
情報伝達用シートが多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシートである前記7)に記載のインクジェット記録方法。
9)
前記1)乃至5)のいずれか一項に記載のインク組成物で着色された着色体。
10)
前記6)に記載のインクジェット記録方法により着色された着色体。
11)
前記1)乃至5)のいずれか一項に記載のインク組成物を含む容器が装填されたインクジェットプリンタ。
12)
下記式(1)で表される化合物又はその塩、
【0013】
【化1】

【0014】
[式(1)中、
1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、
1とR2は結合して、これらがそれぞれ置換する2つの炭素原子と共にシクロアルキレン環を形成しても良く、
基Aは下記式(2)で表される基であり、基Bはカルボキシ基若しくは下記式(2)で表される基を表す。]、
【0015】
【化2】

【0016】
[式(2)中、
*は基Aとしての結合部位を表し、
nは0又は1の整数を表し、
3は水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はシアノアルキル基を表し、
4は水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、アルキル基、アルコキシ基、又はスルホ置換フェニル基を表す。]。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、耐光性と耐オゾン性に優れた記録画像を与える、マゼンタ色素及びそれを含有するインク組成物、特にインクジェット記録用のインク組成物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を詳細に説明する。
本明細書においては、煩雑さを避けるため特に断りがない限り、本発明の(アントラピリドン)「化合物又はその塩」の両者を含めて、単に本発明の(アントラピリドン)「化合物」と簡略化して以下記載し、「化合物又はその塩」の両者を意味するものとする。
【0019】
本発明のインク組成物は、少なくとも1種類の前記式(1)で表される本発明の化合物を色素として含有する、実質的に溶液の水性インク組成物である。該式(1)で表される化合物について記載する。
【0020】
式(1)中、R1及びR2におけるアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられる。炭素数の範囲としては通常C1−C6、好ましくはC1−C4、より好ましくはC1−C3、さらに好ましくはC1又はC2の範囲が挙げられる。
その具体例としては例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチルといった直鎖のもの;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、tert−ペンチル、といった分岐鎖のもの;等が挙げられる。これらの中ではメチル、エチルが好ましく挙げられる。
【0021】
1とR2が結合して、これらがそれぞれ置換する2つの炭素原子と共にシクロアルキレン環を形成するとき、該シクロアルキレン環の炭素数の範囲としては通常C5−C10、好ましくはC5−C8、より好ましくはC5又はC6、特に好ましくはC6のものが挙げられる。その具体例としては、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロへプチレン、シクロオクチレン等が挙げられる。これらの中ではシクロヘキシレンが好ましく挙げられる。
【0022】
前記のうち、好ましいR1及びR2としては水素原子、C1−C6アルキル基(好ましくはメチル基)、又はR1及びR2がそれぞれ置換する2つの炭素原子と共に形成するシクロヘキシレン環が挙げられ、それぞれ独立に水素原子又はC1−C6アルキル基がより好ましく、両者が水素原子であるのが特に好ましい。
【0023】
式(1)における基Aは、前記式(2)で表される基を表す。
式(2)中、「*」で示した炭素原子は、基Aとしての結合部位を表す。すなわち、式(2)で表される基は、該式中の「*」で示した炭素原子がメチレン基を介して、式(1)における一方の窒素原子に結合する。
【0024】
式(2)中、nは置換位置の特定されていないスルホ基の数を意味し、0又は1の整数を表す。nとしては1が好ましい。
【0025】
式(2)中、R3におけるアルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のものが挙げられ、直鎖又は環状のものが好ましく、直鎖のものがより好ましい。炭素数の範囲としては通常C1−C6、好ましくはC1−C5、より好ましくはC1−C4の範囲が挙げられる。但し、分岐鎖又は環状のものについてはC3−C6の炭素数の範囲が好ましく挙げられる。具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルといった直鎖のもの;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、tert−ペンチル、といった分岐鎖のもの;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状のもの;等が挙げられる。これらの中では、メチル、エチル、シクロヘキシルが好ましく挙げられ、メチル又はシクロヘキシルがより好ましく、メチルが特に好ましい。
【0026】
3におけるヒドロキシアルキル基としては、前記「R3におけるアルキル基」の任意の炭素原子に、ヒドロキシ基が置換したものが挙げられる。但し、同一の炭素原子に該ヒドロキシ基と窒素原子の両者が置換しないものが好ましい。
該ヒドロキシアルキル基におけるアルキル部分は、直鎖又は分岐鎖のものが好ましく、直鎖のものがより好ましい。該アルキル部分の炭素数の範囲としては、通常C1−C6、好ましくはC1−C5、より好ましくはC1−C4の範囲が挙げられる。
具体例としては、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチル等のC1−C6アルキル部分が直鎖のもの;1−ヒドロキシ−2−プロピル、1−ヒドロキシ−2−ブチル、1−ヒドロキシ−3−ブチル、2−ヒドロキシ−3−ペンチル、2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル等のC1−C6アルキル部分が分岐鎖のもの;等が挙げられる。これらの中では、2−ヒドロキシエチルが好ましく挙げられる。
【0027】
3におけるシアノアルキル基としては、「ヒドロキシ」を「シアノ」と読み換える以外は前記「R3におけるヒドロキシアルキル基」と同じものが挙げられ、炭素数の範囲等についても同じでよい。具体例としては、2−シアノエチル、2−シアノプロピル、3−シアノプロピル、3−シアノブチル、4−シアノブチル等のC1−C6アルキル部分が直鎖のもの;1−シアノ−2−プロピル、1−シアノ−2−ブチル、1−シアノ−3−ブチル、2−シアノ−3−ペンチル、2−シアノ−1,1−ジメチルエチル等のC1−C6アルキル部分が分岐鎖のもの;等が挙げられる。これらの中では、2−シアノエチルが好ましく挙げられる。
【0028】
前記のうち、好ましいR3としては水素原子、又はアルキル基が挙げられ、特に好ましくは水素原子である。
【0029】
式(2)中、R4におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0030】
4におけるアルキル基としては、前記「R1及びR2におけるアルキル基」に記載のものと、好ましいもの等を含めて同じものが挙げられる。
【0031】
4におけるアルコキシ基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。炭素数の範囲としては通常C1−C6、好ましくはC1−C4の範囲が挙げられる。但し、分岐鎖のとき、炭素数の範囲としては通常C3−C6、好ましくはC3−C4の範囲が挙げられる。その具体例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキシロキシ等の直鎖のもの;イソプロポキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、tert−ペントキシ、tert−ヘキシロキシ等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。これらの中では、メトキシ、エトキシが好ましく挙げられる。
【0032】
4におけるスルホ置換フェニル基としては、1つ又は2つのスルホ基で置換されたフェニル基が挙げられ、前者が好ましい。その具体例としては2−スルホフェニル、3−スルホフェニル、4−スルホフェニル等の1つのスルホ基で置換されたもの;2,4−ジスルホフェニル、3,5−ジスルホフェニル等の2つのスルホ基で置換されたもの;等が挙げられる。これらの中では、4−スルホフェニルが特に好ましい。
【0033】
前記のうち、好ましいR4としては水素原子、アルキル基(好ましくはC1−C6アルキル基)、又はスルホ置換フェニル基が挙げられる。
【0034】
式(1)中、基Bはカルボキシ基若しくは前記式(2)で表される基を表し、いずれも好ましい。
また、基Bが該式(2)で表される基であるとき、基A及び基Bは、同じ式(2)で表される基でもよいし、それぞれ独立に異なる式(2)で表される基であってもよい。基A及び基Bがいずれも式(2)で表される基のとき、両者は同じものであるのが好ましい。
【0035】
式(2)中、それぞれ置換位置の特定されていない「−(SO3H)n」基、及びR4の置換位置は特に制限されないが、以下のi)〜iii)の組み合わせが好ましい。
なお、置換位置については、これらの基が置換するベンゼン環に結合している酸素原子の結合位置を1位として記載する。
i)
4が水素原子のとき、nが1の整数であり且つ「−(SO3H)n」基の置換位置が4位。
ii)
4が水素原子以外(好ましくはアルキル基又はスルホ置換フェニル基)のとき、nが1の整数であり且つ「−(SO3H)n」基の置換位置が2位又は3位。
iii)
nが0であり且つR4が水素原子以外(好ましくはカルボキシ基)のとき、R4の置換位置が3位。
これらの中ではi)又はii)の組み合わせがより好ましい。
【0036】
前記式(1)及び(2)における基A、基B、R1乃至R4、n、R4及び「−(SO3H)n」基の置換位置について、好ましいもの同士を組み合わせた化合物はより好ましく、より好ましいもの同士を組み合わせたものはさらに好ましい。好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
【0037】
前記式(1)の化合物の塩は、無機又は有機陽イオンと形成する塩である。
無機陽イオンと形成する塩としては、アルカリ金属塩等、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩;又はアンモニウム(NH4+)塩;等が好ましく挙げられる。
有機陽イオンと形成する塩としては、下記式(3)で表される4級アンモニウムと形成する塩等が好ましく挙げられる。
【0038】
【化3】

【0039】
[式(3)中、Z1乃至Z4はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はヒドロキシアルコキシアルキル基を表わし、Z1乃至Z4の少なくともいずれか1つは水素原子以外の基である。]
【0040】
式(3)中、Z1乃至Z4における具体例としては、メチル、エチル、ブチル等のC1−C6アルキル基(好ましくはC1−C4アルキル基);ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等のヒドロキシC1−C6アルキル基(好ましくはヒドロキシC1−C4アルキル基);ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等のヒドロキシC1−C6アルコキシC1−C6アルキル基(好ましくはヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基);等が挙げられる。
【0041】
これらのうちより好ましいものとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アンモニウム等と形成する各塩が挙げられる。これらのうち、特に好ましいものは、ナトリウム及びカリウムと形成する各塩である。
【0042】
式(1)で表される化合物の塩は、単一の塩;複数種類の混塩;又は、遊離酸と塩との混合物;等のいずれであってもよい。式(1)で表される化合物は、その塩の種類により溶解性等の物理的な性質;又は、該化合物を含有するインクの性能、特に堅牢性に関する性能;等が変化する場合もある。このため目的とするインクの性能等に応じて、塩の種類を選択することも好ましく行われる。
遊離酸から各種の塩を造塩する方法;各種の塩から遊離酸を得る方法;特定の塩から他の塩へ塩を交換する方法;等については、いずれも当業者であれば周知の方法が使用できる。
【0043】
本発明の前記式(1)で表される化合物の具体例を下記表1及び表2に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
各表中における「−(SO3H)n基の位置」及び「R4の位置」は、前記したこれらの基の置換位置を意味する。
但し、nが0の場合とR4が水素原子であるときは、置換位置を記載せず、記号「−」を記載した。
また、各表中、R1及びR2にまたがって記載した「c−Hexl」は、前記式(1)において、R1とR2が結合して、これらがそれぞれ置換する2つの炭素原子と共に形成したシクロヘキシレン環を意味する。
その他の各表中の記号は、以下の意味を有する。
Me:メチル基。
MeO:メトキシ基。
4−S−Ph:4−スルホフェニル基。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
以下に本発明の化合物の製造方法を記載する。なお下記式(5)乃至式(7)中に記載の基A、基B、R1乃至R4、及びnは、前記式(1)及び式(2)におけるのと同じ意味を表す。また、製造方法中に記載の化合物のモル数等については代表的な例であり、当業者であれば、必要に応じて適宜増減が可能なことを理解できる。
本発明の化合物は、例えば次の方法により製造される。即ち、WO2007−018175号報等に記載の公知の方法、又はその方法に準じて合成を行うことにより、下記式(5)の化合物が得られる。
【0047】
【化5】

【0048】
得られた前記式(5)の化合物1モルに、必要に応じて陰及び/又は陽イオン交換樹脂;水酸化ナトリウム水溶液;等を加えておおよそpH7の水溶液として中和した後、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール等のアルコールやポリオール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;等の溶媒中、下記式(6)の化合物0.5モルと30〜100℃で反応させることにより下記式(7)の化合物が得られる。なお、中和後の式(5)の化合物を含む水溶液はそのまま使用してもよいが、乾燥させて式(5)の化合物を含む固体とした後、次の反応に使用する方が好ましい。また、前記の溶媒としては、非プロトン性溶媒(好ましくは非プロトン性極性溶媒、例えばアミド類)を使用する方が好ましい。
【0049】
【化6】

【0050】
【化7】

【0051】
次いで得られた前記式(7)の化合物1モルと、酢酸銅、硫酸銅、ハロゲン化銅(例えば塩化銅、ヨウ化銅等)等の銅化合物1モルとを、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール等アルコールやポリオール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;等の溶媒中、pH5〜9、10〜100℃で反応させることにより本発明の前記式(1)の化合物が得られる。
なお、この反応におけるpHの調整には任意の塩基が使用できるが、アルカリ金属の炭酸塩(例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属の水酸化物(例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等が好ましく挙げられる。
【0052】
前記式(1)で表される化合物は、該化合物の総質量中に不純物として含有される金属陽イオンの塩化物(例えば塩化ナトリウム等)及び硫酸塩(例えば硫酸ナトリウム等)等の無機不純物の少ないものを用いるのが好ましい。その含有量の目安は例えば1質量%以下程度である。無機不純物の少ない本発明の化合物を製造する方法としては、例えば逆浸透膜を用いる公知の方法;C1−C4アルコール(又は場合により含水の該アルコール)等を用いて懸濁精製する方法;又は、陰及び陽イオン交換樹脂を適宜用いる公知の方法;等により脱塩処理する方法が挙げられる。
【0053】
本発明のインク組成物は、前記式(1)で表される化合物を色素成分とし、該化合物を水又は水性溶媒(後記する水溶性有機溶剤を含有する水)に溶解したものである。本発明のインク組成物は、例えば前記式(1)で表される化合物の合成工程における、最終工程終了後の反応液等を、インク組成物の製造に直接使用することが出来る。また前記反応液から目的物を例えば晶析;又はスプレー乾燥;等の操作により単離し、これを乾燥させた後、インク組成物に使用することもできる。
本発明のインク組成物は、前記式(1)で表される化合物を通常0.1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは2〜10質量%含有する。本発明のインク組成物は、水溶性有機溶剤を0〜30質量%、好ましくは5〜20質量%;またインク調製剤を0〜10重量%;それぞれ含有してもよい。水溶性有機溶剤は染料の溶解、乾燥の防止、粘度の調整、浸透の促進、表面張力の調整、消泡等の効果を期待して使用され、インク組成物中に含有する方が好ましい。
【0054】
本発明のインク組成物は、少なくとも1種類の前記式(1)で表される化合物を含有する組成物であり、化合物の種類、及びその数は特に制限されない。例えばインク組成物の色相や印字濃度等を、望みのものに(微)調整する等の目的で、複数の化合物を配合してもよい。
1例として、式(1)における基Bが、式(2)で表される基である化合物と、カルボキシ基である化合物とを配合してもよく、両化合物の配合比率も特に制限されない。印字濃度や各種の画像堅牢性等を考慮すると、この両者を配合する際の目安としては、HPLCの面積比で、前者/後者の比率が小数点以下1桁目を四捨五入して通常1/99〜99/1、好ましくは1/10〜10/1、より好ましくは1/10〜9/1、さらに好ましくは1/10〜8/1、特に好ましくは1/10〜7/1、また場合により1/10〜6/1の配合比率がそれぞれ挙げられる。なお、HPLC面積比を算出する際に用いる検出波長は254nmが好ましい。
【0055】
本発明のインク組成物に使用しうる水溶性有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1−C4アルカノール(アルコール);N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン又は1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の複素環式尿素類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、チオジグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ又はポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル又はエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル又はトリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1−C4アルキルエーテル;γ−ブチロラクトン;又はジメチルスルホキシド;等が挙げられる。
【0056】
前記のうち好ましいものとしては、イソプロパノール、グリセリン、モノ、ジ又はトリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられ、より好ましくはイソプロパノール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンが挙げられる。
これらの水溶性有機溶剤は、単独もしくは混合して用いられる。
【0057】
以下、本発明のインク組成物の調製に使用しうるインク調製剤について記載する。インク調製剤としては、例えば防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、染料溶解剤及び界面活性剤等が挙げられる。
【0058】
防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系等の化合物が挙げられる。
有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。
ピリジンオキシド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウムが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。
その他の防腐防黴剤としてソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、無水酢酸ナトリウム、及びアベシア社製、商品名:プロクセルRTMGXL(S)、プロクセルRTMXL−2(S)等が挙げられる。
なお、本明細書において上付きの「RTM」は登録商標を意味する。
【0059】
pH調整剤としては、調製されるインクに悪影響を及ぼさずに、インクのpHを7.5〜11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;等が挙げられる。
【0060】
キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0061】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0062】
水溶性紫外線吸収剤としては、例えばスルホ化されたベンゾフェノン、スルホ化されたベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0063】
水溶性高分子化合物としては、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
【0064】
染料溶解剤としては、例えば尿素、ε−カプロラクタム、エチレンカーボネート等が挙げられる。
【0065】
界面活性剤としては、例えばアニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等が挙げられる。
【0066】
アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
【0067】
カチオン界面活性剤としては2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0068】
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、その他としてイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0069】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレンアルコール系;他の具体例として、日信化学社製、商品名サーフィノールRTM104E、同104PG50、同82、同465、商品名オルフィンRTMSTG等;等が挙げられる。これらのインク調製剤は、単独もしくは混合して用いられる。
【0070】
本発明のインク組成物は水性インク組成物であり、前記式(1)で表される化合物を水又は前記水性溶媒(水溶性有機溶剤を含有する水)に前記インク調製剤等と共に溶解させることによって製造できる。
【0071】
本発明のインク組成物の製造方法において、各成分を溶解させる順序には特に制限はない。あらかじめ水又は前記水性溶媒に本発明の化合物を溶解させ、インク調製剤を添加してもよいし、該化合物を水に溶解させた後、水溶性有機溶剤、インク調製剤を添加してもよい。またこれと順序が異なっていてもよい。さらに、本発明の化合物の合成反応における最終工程終了後の反応液;又は本発明の化合物に対して逆浸透膜による脱塩処理を行うことにより得られた水溶液;等に、水溶性有機溶剤、インク調製剤等を添加してインク組成物を製造してもよい。
インク組成物の調製に用いる水は、イオン交換水又は蒸留水等の不純物の少ないものが好ましい。このようにして調製されたインク組成物は、必要に応じてメンブランフィルター等を用いた精密濾過を行って夾雑物を除いてもよい。該インク組成物をインクジェット記録に用いるときは、精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過を行うフィルターの孔径は通常1μm〜0.1μm、好ましくは0.8μm〜0.1μmである。
【0072】
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物を含有する容器をインクジェットプリンタの所定の位置に装填し、該インク組成物の(小)液滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させ、記録を行う方法である。本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をマゼンタインクとして単独で使用することもできるが、例えばイエロー、シアン、グリーン、オレンジ、ブルー(又はバイオレット)及び必要に応じてブラック等の各色のインク組成物とを併用し、フルカラーの記録画像を得ることもできる。この際には、前記の各色から適宜選択されるインク組成物をそれぞれ含有する容器を、インクジェットプリンタの所定の位置にそれぞれ装填して使用すればよい。
インクジェットプリンタの吐出方式としては、例えば機械的振動を利用したピエゾ方式;加熱により生じる泡を利用したバブルジェット(登録商標)方式;等が挙げられる。本発明のインク組成物は、これらのいずれの吐出方式においても使用することが可能である。
【0073】
本発明のインクジェット記録方法を適用しうる被記録材としては、例えば、紙、フィルム等の情報伝達用シート、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、及びカラーフィルター用基材等が挙げられる。
情報伝達用シートとしては表面処理されたもの、具体的には基材(例えば前記の被記録材)にインク受容層を設けたもの等が好ましい。インク受容層は、例えば基材にカチオンポリマーを含浸あるいは塗工すること;多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等、インク中の色素を吸着し得る多孔性白色無機物を、ポリビニルアルコールやポリビニールピロリドン等の親水性ポリマーと共に基材表面に塗工すること;等により設けられる。このようなインク受容層を設けたものは、通常インクジェット専用紙(フィルム)や光沢紙(フィルム)等と呼ばれる。市販品としては例えば、(株)ピクトリコ製、商品名ピクトリコRTMプロ;キヤノン社製、商品名プロフェッショナルフォトペーパー、スーパーフォトペーパー、マットフォトペーパー;エプソン(株)製、商品名クリスピアRTM、写真用紙(光沢)、フォトマット紙、スーパーファイン専用光沢フィルム;日本ヒューレットパッカード(株)製、商品名アドバンスフォトペーパー、プレミアムプラスフォト用紙、プレミアム光沢フィルム、フォト用紙;コニカミノルタフォトイメージング(株)製、商品名フォトライクQP;等が挙げられる。
なお、インク受容層を特に設けていない情報伝達用シート、例えばPPC(プレインペーパーコピー)用紙等の普通紙も、被記録材として当然使用できる。
【0074】
これらのうち、多孔性白色無機物を表面に塗工した被記録材に記録した画像のオゾンガスによる変退色は、特に大きくなることが知られている。本発明の水性マゼンタインク組成物は、耐光性に加えてオゾンガスに対する耐性にも優れているため、このような被記録材への記録の際に特に大きな効果を発揮する。
【0075】
前記の多孔性白色無機物としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、合成非晶質シリカ、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛等が挙げられる。
【0076】
本発明の着色体とは、本発明の化合物又は該化合物を含有するインク組成物により着色された物質を意味する。着色される物質には特に制限はなく、例えば前記の被記録材等が挙げられるが、これらに限定されない。
着色方法としては、例えば浸染法、捺染法、スクリーン印刷等の印刷法、インクジェット記録方法等が挙げられる。本発明の着色体としては、本発明のインクジェット記録方法により着色された着色体が好ましい。
【0077】
本発明のインク組成物は鮮明なマゼンタ色であり、特に光沢紙において鮮明性の高い色相を有し、記録画像の堅牢性も高い。又、人に対する安全性も高い。
【0078】
本発明のインク組成物は、例えば印捺、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピング等の各種の記録や印刷用途に用いることが可能であり、特にインクジェット記録用インクとして好適に用いられる。本発明のインク組成物は、普通紙への記録にも使用できるが、特にインクジェット専用紙や光沢紙に記録した画像の印字濃度が高く、インクジェット記録に適した色相を有する。
また、その記録画像の耐水性、耐光性、耐オゾン性、耐摩擦性、及び耐湿性等の各種堅牢性、特に耐光性と耐オゾン性が非常に高いという特徴を有する。
本発明のインク組成物は貯蔵中に沈殿、分離することがなく、保存安定性が極めて高い。また、本発明の化合物は水溶解性に優れるため、これを含有する本発明のインク組成物をインクジェット記録に使用した場合、ノズル付近におけるインク組成物の乾燥による固体析出は非常に起こりにくく、噴射器(インクヘッド)を閉塞することもない。本発明のインク組成物は、連続式インクジェットプリンタにおける比較的長時間の一定の再循環下での使用;又は、オンデマンド式インクジェットプリンタにおける断続的な使用;等の使用環境においても物理的性質の変化を起こさない。
【実施例】
【0079】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。また、各反応及び晶析等の操作は、特に断りのない限り、攪拌下に行った。
また実施例中の各化合物又は混合物の最大吸収波長(λmax)は、特に断りの無い限り、pH5〜8の水溶液中での測定値を記載した。
なお、一回の合成反応で目的化合物の必要量が得られなかったときは、必要量が得られるまで同じ合成反応を繰り返し行った。
【0080】
[実施例1]
(工程1)
イオン交換水200部に特許文献4記載の方法を追試することによって得た下記式(9)で表される化合物を含むウェットケーキ75.4部を溶解し、陰イオン交換樹脂ダイアイオンRTMSA10AOH120部及び陽イオン交換樹脂ダイアイオンRTMSK1BH36部(共に三菱化学社製)を適宜添加して、液のpHを6.0〜8.0に保持しながら2時間攪拌した。得られた液からイオン交換樹脂を濾過により除去し、イソプロピルアルコール500部を加えて析出した固体を濾過分取し、乾燥することにより下記式(9)で表される化合物38.9部を得た。
【0081】
【化9】

【0082】
(工程2)
N−メチルピロリドン35部に、実施例1(工程1)で得た式(9)で表される化合物1.6部及びエチレンジアミン4酢酸2無水物0.7部を加え、80〜85℃に加熱して4時間反応させた。得られた反応液を2−プロパノール400部中に加えて析出した固体を濾過分取することにより、下記式(10)と式(11)で表される化合物を含むウェットケーキ3.5部を得た。
【0083】
【化10】

【0084】
【化11】

【0085】
(工程3)
実施例1(工程2)で得た式(10)と式(11)で表される化合物を含むウェットケーキ3.5部を水100部中に加え、炭酸ナトリウムで液のpHを8.0に調整した。この溶液中に、酢酸銅(II)一水和物0.6部を加え、15%炭酸ナトリウム水溶液を用いてpH6.5〜7.5に調整しながら、25〜30℃で2時間反応させた。得られた反応液にメタノール70部及びイソプロピルアルコール150部を加え、析出した固体を濾過分取した。得られた固体を水75部に溶解し、2−プロパノール400部を加えて析出した固体を濾過分取し、乾燥することにより、下記式(12)と式(13)で表される化合物の混合物の赤色固体0.8部を得た。得られた固体中の式(12)と式(13)で表される化合物のHPLC面積比は、91/9であった。
λmax:526nm。
【0086】
【化12】

【0087】
【化13】

【0088】
[実施例2]
(工程1)
N−メチルピロリドン63部に、実施例1(工程1)で得た式(9)で表される化合物4.6部及びエチレンジアミン4酢酸2無水物0.5部を加え、80〜85℃に加熱して5時間反応させた。得られた反応液を2−プロパノール450部中に加えて析出した固体を濾過分取することにより、前記式(10)と式(11)で表される化合物を含むウェットケーキ6.7部を得た。
【0089】
(工程2)
実施例2(工程1)で得た式(10)と式(11)で表される化合物を含むウェットケーキ6.7部を水70部中に加え、炭酸ナトリウムで液のpHを8.0に調整した。この溶液中に、酢酸銅(II)一水和物0.5部を加え、15%炭酸ナトリウム水溶液を用いてpH6.5〜7.5に調整しながら、25〜30℃で2時間反応させた。得られた反応液にメタノール60部及びイソプロピルアルコール150部を加え、析出した固体を濾過分取した。得られた固体を水70部に溶解し、2−プロパノール400部を加えて析出した固体を濾過分取し、乾燥することにより、前記式(12)と式(13)で表される化合物の混合物の赤色固体3.9部を得た。得られた固体中の式(12)と式(13)で表される化合物のHPLC面積比は、17/83であった。
λmax:525nm。
【0090】
[実施例3]
(工程1)
N,N−ジメチルホルムアミド65部に、実施例1(工程1)で得た式(9)で表される化合物4.7部及びエチレンジアミン4酢酸2無水物0.5部を加え、85〜90℃に加熱して8時間反応させた。得られた反応液を2−プロパノール460部中に加えて析出した固体を濾過分取することにより、前記式(10)と式(11)で表される化合物を含むウェットケーキ7.0部を得た。
【0091】
(工程2)
実施例3(工程1)で得た式(10)と式(11)で表される化合物を含むウェットケーキ7.0部を水75部中に加え、炭酸ナトリウムで液のpHを8.0に調整した。この溶液中に、酢酸銅(II)一水和物0.5部を加え、15%炭酸ナトリウム水溶液を用いてpH6.5〜7.5に調整しながら、25〜30℃で2時間反応させた。得られた反応液にメタノール50部及びイソプロピルアルコール180部を加え、析出した固体を濾過分取した。得られた固体を水70部に溶解し、2−プロパノール400部を加えて析出した固体を濾過分取し、乾燥することにより、前記式(12)と式(13)で表される化合物の混合物の赤色固体3.5部を得た。得られた固体中の式(12)と式(13)で表される化合物のHPLC面積比は、14/86であった。
λmax:526nm。
【0092】
[実施例4]
(工程1)
N,N−ジメチルホルムアミド300部中に、下記式(14)で表される化合物95.3部、フェノール25.8部、炭酸カリウム20.0部を加え、120〜125℃で6時間反応した。反応液を55℃まで冷却した後、メタノール500部を加えた。析出した固体を濾過分取し、乾燥することにより、下記式(15)で表される化合物54.9部を得た。
【0093】
【化14】

【0094】
【化15】

【0095】
(工程2)
キシレン140部中に、実施例4(工程1)で得た式(15)で表される化合物54.9部、ベンゾイル酢酸エチル67.0部、炭酸カリウム1.3部を順次加えて昇温し、135〜140℃で5時間反応を行った。その間、反応で生成するエタノールと水を、キシレンと共沸させながら系外へ留去して反応を完結させた。得られた反応液を冷却し、60℃でメタノール250部を加え、20〜25℃で30分攪拌した。析出した固体を濾過分取し、メタノール350部、次いで50℃の温水100部で洗浄し、乾燥することにより下記式(16)の化合物53.4部を得た。
【0096】
【化16】

【0097】
(工程3)
N,N−ジメチルホアルムアミド80部に実施例4(工程2)で得た式(16)で表される化合物26.1部、3−アミノアセトアニリド22.5部、酢酸銅一水和物5.6部、炭酸ナトリウム3.5部を順次加えて、120〜130℃で5時間反応を行った。得られた反応液を冷却し、50℃でメタノール270部を加え、20〜25℃で30分攪拌した。析出した固体を濾過分取し、メタノール200部、次いで50℃の温水100部で洗浄し、乾燥することにより下記式(17)の化合物21.7部を得た。
【0098】
【化17】

【0099】
(工程4)
32.7%発煙硫酸83.5部中に、98%硫酸68.3部を加え、10%発煙硫酸151.8部を調整した。調整した液に水冷下、実施例4(工程3)で得た式(17)で表される化合物21.6部を、50℃以下の液温を保持して加えた。得られた液を90〜95℃に加熱して3時間反応し、室温まで冷却後、氷水300部中に加えた。得られた液に塩化ナトリウム98.2部を加え、析出固体を濾過分取した。得られた固体をイオン交換水100部に溶解し、陰イオン交換樹脂ダイアイオンRTMSA10AOH75部及び陽イオン交換樹脂ダイアイオンRTMSK1BH26部(共に三菱化学社製)を適宜添加して、液のpHを6.0〜8.0に保持しながら20〜25℃で2時間攪拌した。得られた液からイオン交換樹脂を濾過により除去し、イソプロピルアルコール600部を加えて析出した固体を濾過分取し、乾燥することにより下記式(18)で表される化合物13.7部を得た。
【0100】
【化18】

【0101】
(工程5)
N,N−ジメチルホアルムアミド30部に、実施例4(工程4)で得た式(18)で表される化合物1.0部及びエチレンジアミン4酢酸2無水物0.1部を加え、85〜90℃に加熱して8時間反応させた。得られた反応液を2−プロパノール200部中に加えて析出した固体を濾過分取することにより、下記式(19)と式(20)で表される化合物を含むウェットケーキ3.1部を得た。
【0102】
【化19】

【0103】
【化20】

【0104】
(工程6)
実施例4(工程5)で得た式(19)と式(20)で表される化合物を含むウェットケーキ3.1部を水20部中に加え、炭酸ナトリウムで液のpHを8.0に調整した。この溶液中に、酢酸銅(II)一水和物0.2部を加え、15%炭酸ナトリウム水溶液を用いてpH6.5〜7.5に調整しながら、25〜30℃で2時間反応させた。得られた反応液にイソプロピルアルコール120部を加え、析出した固体を濾過分取した。得られた固体を水20部に溶解し、2−プロパノール200部を加えて析出した固体を濾過分取し、乾燥することにより、下記式(21)と式(22)で表される化合物の混合物の赤色固体0.8部を得た。得られた固体中の式(21)と式(22)で表される化合物のHPLC面積比は、66/34であった。
【0105】
【化21】

【0106】
【化22】

λmax:526nm。
【0107】
[実施例5]
(工程1)
N,N−ジメチルホアルムアミド30部に、実施例4(工程4)で得た式(18)で表される化合物2.0部及びエチレンジアミン4酢酸2無水物0.1部を加え、85〜90℃に加熱して16時間反応させた。得られた反応液を2−プロパノール230部中に加えて析出した固体を濾過分取することにより、前記式(19)と式(20)で表される化合物を含むウェットケーキ7.9部を得た。
【0108】
(工程2)
実施例5(工程1)で得た式(19)と式(20)で表される化合物を含むウェットケーキ7.9部を水40部中に加え、炭酸ナトリウムで液のpHを8.0に調整した。この溶液中に、酢酸銅(II)一水和物0.3部を加え、15%炭酸ナトリウム水溶液を用いてpH6.5〜7.5に調整しながら、25〜30℃で2時間反応させた。得られた反応液にイソプロピルアルコール170部を加え、析出した固体を濾過分取した。得られた固体を水40部に溶解し、2−プロパノール280部を加えて析出した固体を濾過分取し、乾燥することにより、前記式(21)と式(22)で表される化合物の混合物の赤色固体2.2部を得た。得られた固体中の式(21)と式(22)で表される化合物のHPLC面積比は、31/69であった。
λmax:527nm。
【0109】
[実施例6]
(工程1)
N,N−ジメチルホルムアミド120部中に、前記式(14)で表される化合物45.7部、4−メチルフェノール15.6部、炭酸カリウム9.5部を加え、120〜125℃で8時間反応した。反応液を55℃まで冷却した後、メタノール250部を加えた。析出した固体を濾過分取し、乾燥することにより、下記式(23)で表される化合物24.9部を得た。
【0110】
【化23】

【0111】
(工程2)
キシレン77部中に、実施例6(工程1)で得た式(23)で表される化合物24.9部、ベンゾイル酢酸エチル29.3部、炭酸カリウム0.5部を順次加えて昇温し、135〜140℃で6時間反応を行った。その間、反応で生成するエタノールと水を、キシレンと共沸させながら系外へ留去して反応を完結させた。得られた反応液を冷却し、60℃でメタノール180部を加え、20〜25℃で30分攪拌した。析出した固体を濾過分取し、メタノール200部、次いで50℃の温水70部で洗浄し、乾燥することにより下記式(24)の化合物29.5部を得た。
【0112】
【化24】

【0113】
(工程3)
N,N−ジメチルホアルムアミド90部に実施例6(工程2)で得た式(24)で表される化合物29.5部、3−アミノアセトアニリド24.8部、酢酸銅一水和物5.8部、炭酸ナトリウム3.6部を順次加えて、120〜130℃で6時間反応を行った。得られた反応液を冷却し、50℃でメタノール290部を加え、20〜25℃で30分攪拌した。析出した固体を濾過分取し、メタノール220部、次いで50℃の温水110部で洗浄し、乾燥することにより下記式(25)の化合物24.0部を得た。
【0114】
【化25】

【0115】
(工程4)
32.7%発煙硫酸86.0部中に、98%硫酸70.0部を加え、10%発煙硫酸156.0部を調整した。調整した液に水冷下、実施例6(工程3)で得た式(25)で表される化合物24.0部を、50℃以下の液温を保持して加えた。得られた液を90〜95℃に加熱して3時間反応し、室温まで冷却後、氷水300部中に加えた。得られた液に塩化ナトリウム100.4部を加え、析出固体を濾過分取した。得られた固体をイオン交換水110部に溶解し、陰イオン交換樹脂ダイアイオンRTMSA10AOH75部及び陽イオン交換樹脂ダイアイオンRTMSK1BH26部(共に三菱化学社製)を適宜添加して、液のpHを6.0〜8.0に保持しながら20〜25℃で2時間攪拌した。得られた液からイオン交換樹脂を濾過により除去し、イソプロピルアルコール650部を加えて析出した固体を濾過分取し、乾燥することにより下記式(26)で表される化合物の14.2部を得た。
【0116】
【化26】

【0117】
(工程5)
N−メチルピロリドン130部に、実施例6(工程4)で得た式(26)で表される化合物5.0部及びエチレンジアミン4酢酸2無水物0.7部を加え、80〜85℃に加熱して10時間反応させた。得られた反応液を2−プロパノール200部中に加えて析出した固体を濾過分取することにより、下記式(27)と式(28)で表される化合物を含むウェットケーキ2.9部を得た。
【0118】
【化27】

【0119】
【化28】

【0120】
(工程6)
実施例6(工程5)で得た式(27)と(28)で表される化合物を含むウェットケーキ3.1部を水30部中に加え、炭酸ナトリウムで液のpHを8.0に調整した。この溶液中に、酢酸銅(II)一水和物0.4部を加え、15%炭酸ナトリウム水溶液を用いてpH6.5〜7.5に調整しながら、25〜30℃で2時間反応させた。得られた反応液にイソプロピルアルコール120部を加え、析出した固体を濾過分取した。得られた固体を水20部に溶解し、2−プロパノール300部を加えて析出した固体を濾過分取し、乾燥することにより、下記式(29)と式(30)で表される化合物の混合物の赤色固体1.2部を得た。得られた固体中の式(29)と式(30)で表される化合物のHPLC面積比は、25/75であった。
【0121】
【化29】

【0122】
【化30】

λmax:524nm。
【0123】
[実施例7](A)インクの調製下記表4に記載の各成分を混合することによりインク組成物を調製し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過する事により試験用のインクを得た。この際、水はイオン交換水を使用し、インク組成物のpHが8〜9になるように、水酸化ナトリウム水溶液を用いて調整し、総量100.0部となるように水を加えた。インク中の色素として実施例1で得られた化合物を用いて調整したインクの調製を実施例7とする。実施例1で得られた化合物の代わりに、実施例2乃至実施例6で得られた化合物を用いる以外は、実施例7と同様にして、インクを調製した。これを実施例8乃至実施例12とする。なお、下記表3中、「界面活性剤」は、日信化学(株)社製、商品名サーフィノールRTM104PG50を使用した。
【0124】
【表3】

【0125】
[比較例1]実施例1乃至実施例6で得られた本発明の化合物の代わりに、実施例1(工程1)で得た式(9)で表される化合物を用いる以外は実施例7乃至実施例12と同様にして、比較用のインクを調製した。このインクの調製を比較例1とする。
【0126】
[比較例2]実施例1乃至6で得られた本発明の化合物の代わりに、実施例6(工程4)で得た式(18)で表される化合物を用いる以外は実施例7乃至12と同様にして、比較用のインクを調製した。このインクの調製を比較例2とする。
【0127】
(B)インクジェット記録
各実施例、及び各比較例で得られたインクをそれぞれ使用し、Canon社製インクジェットプリンタ、商品名PIXUSRTMiP4500を用いて、下記2種類の光沢紙にそれぞれインクジェット記録を行った。記録の際は、100%、85%、70%、55%、40%、25%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの記録物を得た。得られた記録物を試験片として用い、下記する試験を行った。
【0128】
光沢紙1:
セイコーエプソン社製、商品名 写真用紙クリスピア 高光沢。
光沢紙2:
ブラザー工業社製、商品名 写真光沢紙 BP71G。
【0129】
(C)記録画像の測色
各種の試験及びその評価は、X−rite社製の測色機、商品名SpectroEyeRTMを用いて試験片を測色することにより行った。測色は、濃度基準にDIN、視野角2°、光源D65の条件で行なった。なお、測色は、各試験片の画像パターンにおける70%の階調部分について行った。
【0130】
(D)キセノン耐光性試験
各試験片をホルダ−に設置して、キセノンウェザオメータXL75[スガ試験機(株)社製]を用い、温度24℃、湿度60%RH、100klux照度で168時間照射した。
試験後に前記測色システムを用いて、試験前後での印字濃度(Dm)を測色し色素残存率を求めた。色素残存率は、より大きい数値のものが、より優れる。結果を下記表4に示す。色素残存率は以下の式により算出した。

色素残存率=(試験後印字濃度/試験前印字濃度)×100(%)
【0131】
(E)耐オゾン性試験各試験片を、オゾンウェザーメーター(スガ試験機社製 型式OMS−H)を用い、オゾン濃度10ppm、槽内温度23℃、湿度50%RHで24時間放置した。試験後に前記測色システムを用いて、試験前後での印字濃度(Dm)を測色し色素残存率を求めた。色素残存率は、より大きい数値のものが、より優れる。結果を下記表4に示す。色素残存率は以下の式により算出した。色素残存率=(試験後印字濃度/試験前印字濃度)×100(%)
【0132】
【表4】

【0133】
表4の結果より明らかなように、実施例7乃至実施例12のインクを使用して得られた記録画像は、いずれの光沢紙を用いた場合にも、各比較例より残存率が大きく、耐光性及び耐オゾン性に優れることが確認された。
従って、本発明の化合物、及びこれを含有するインク組成物は、各種の記録用、特にインクジェット記録用のインク用途に好適である。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の化合物、及び該化合物を含有する本発明のインク組成物は、耐光性と耐オゾン性に優れた記録画像を与えるため、各種の記録用途、特にインクジェット記録用途に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の下記式(1)で表される化合物又はその塩を、色素として含有するインク組成物、
【化1】

[式(1)中、
1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、
1とR2は結合して、これらがそれぞれ置換する2つの炭素原子と共にシクロアルキレン環を形成しても良く、
基Aは下記式(2)で表される基を表し、
基Bはカルボキシ基若しくは下記式(2)で表される基を表す。]、
【化2】

[式(2)中、
*は基Aとしての結合部位を表し、
nは0又は1の整数を表し、
3は水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はシアノアルキル基を表し、
4は水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、アルキル基、アルコキシ基、又はスルホ置換フェニル基を表す。]。
【請求項2】
式(1)において、
1及びR2がそれぞれ独立に水素原子又はC1−C6アルキル基であり、
1とR2が結合して、これらがそれぞれ置換する2つの炭素原子と共にC5−C10シクロアルキレン環を形成しても良く、
基Aが式(2)で表される基であり、
基Bがカルボキシ基若しくは式(2)で表される基であり、
式(2)において、
*が基Aとしての結合部位であり、
nが0又は1の整数であり、
3が水素原子、C1−C6アルキル基、ヒドロキシC1−C6アルキル基、シクロヘキシル基、又はシアノC1−C6アルキル基であり、
4が水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、C1−C6アルキル基、C1−C6アルコキシ基、又はスルホ置換フェニル基である、
請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
式(2)における、
3が水素原子、又はC1−C6アルキル基であり、
4が水素原子、C1−C6アルキル基、又はスルホ置換フェニル基である、
請求項1又は2に記載のインク組成物。
【請求項4】
水溶性有機溶剤をさらに含有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項5】
インクジェット記録に用いる請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインク組成物の液滴を、記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させ、記録を行うインクジェット記録方法。
【請求項7】
被記録材が情報伝達用シ−トである請求項6に記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
情報伝達用シートが多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシートである請求項7に記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインク組成物で着色された着色体。
【請求項10】
請求項6に記載のインクジェット記録方法により着色された着色体。
【請求項11】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインク組成物を含む容器が装填されたインクジェットプリンタ。
【請求項12】
下記式(1)で表される化合物又はその塩、
【化1】

[式(1)中、
1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、
1とR2は結合して、これらがそれぞれ置換する2つの炭素原子と共にシクロアルキレン環を形成しても良く、
基Aは下記式(2)で表される基であり、基Bはカルボキシ基若しくは下記式(2)で表される基を表す。]、
【化2】

[式(2)中、
*は基Aとしての結合部位を表し、
nは0又は1の整数を表し、
3は水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はシアノアルキル基を表し、
4は水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、アルキル基、アルコキシ基、又はスルホ置換フェニル基を表す。]。

【公開番号】特開2012−149118(P2012−149118A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6870(P2011−6870)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】