説明

インク組成物、記録方法及び記録物

【課題】マット紙上での発色性に優れたブラックインク組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、ブラック色材として下記式(1)で表される染料を含み、pHが11以上であるインク組成物、並びにこれを用いた記録方法及び記録物を提供する。
1−N=N−A2−N=N−A3 (1)
(式(1)中、A1は特許請求の範囲に示される式(Bk-2)又は(Bk-3)で表される置換基であり、A2は特許請求の範囲に示される式(Bk-4)又は(Bk-5)で表される置換基であり、A3は特許請求の範囲に示される式(Bk-6)で表される置換基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の用紙上での発色性に優れたブラックインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録画像の発色性の向上を目的として、種々のインク組成物が提案されている。
【0003】
例えば、特開平9−255906号公報では、高品質な画像と、耐水性ある画像とを両立出来る等の特性を備えるインク組成物の提供を目的として、特定構造の染料を基本とし、さらに複数の染料を組み合わせてなるインク組成物が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、従来技術は特定の色材に対する発明であり、本発明に用いる色材に対する効果は確認されていない。本発明で用いた色材は特にマット紙上での発色向上が望まれており、新たな発色向上技術が求められている。
【特許文献1】特開平9−255906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、マット紙上での発色性に優れたインク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、下記発明を提供することにより、前記目的を達成したものである。
1.ブラック色材として下記式(1)で表される染料を含み、pHが11以上であるインク組成物。
【化1】

(式(1)中、A1は下記式(Bk-2)又は(Bk-3)で表される置換基であり、A2は下記式(Bk-4)又は(Bk-5)で表される置換基であり、A3は下記式(Bk-6)で表される置換基である。)
【0006】
【化2】

(式(Bk-2)中、MはLi又はNaを表す。)
【0007】
【化3】

(式(Bk-3)中、MはLi又はNaを表す。)
【0008】
【化4】

【0009】
【化5】

【0010】
【化6】

(式(Bk-6)中、MはLi又はNaを表す。)
【0011】
2.pH調整剤として無機アルカリ及び/又は有機アルカリを含有する、前記1記載のインク組成物。
【0012】
3.前記無機アルカリが水酸化リチウムであり、前記有機アルカリがピペリジンである、前記2に記載のインク組成物。
【0013】
4.さらに、ノニオン系界面活性剤を含む、前記1〜3のいずれか一項に記載のインク組成物。
【0014】
5.前記ノニオン系界面活性剤が、アセチレングリコール系界面活性剤である、前記4に記載のインク組成物。
【0015】
6.前記ノニオン系界面活性剤を0.1〜5重量%含む、前記4又は5に記載のインク組成物。
【0016】
7.さらに、浸透促進剤を含む、前記1〜6のいずれか一項に記載のインク組成物。
【0017】
8.前記浸透促進剤がグリコールエーテル類である、前記7記載のインク組成物。
【0018】
9.前記1〜8のいずれか一項に記載のインク組成物を用いてなることを特徴とするインクカートリッジ。
【0019】
10.前記1〜8のいずれか一項に記載のインク組成物を用いて記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
【0020】
11.前記1〜8のいずれか一項に記載のインク組成物を用いて記録されたことを特徴とする記録物。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、マット紙上での発色性に優れたインク組成物を提供することができる。また、本発明のインク組成物を用いた記録方法により、優れた発色性を備えた記録物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明に係るインク組成物について、その好ましい実施態様に基づき説明する。
【0023】
本発明のインク組成物は、ブラック色材として下記式(1)で表される染料を含み、pHが11以上のものである。
【0024】
【化7】

(式(1)中、A1は下記式(Bk-2)又は(Bk-3)で表される置換基であり、A2は下記式(Bk-4)又は(Bk-5)で表される置換基であり、A3は下記式(Bk-6)で表される置換基である。)
【0025】
【化8】

(式(Bk-2)中、MはLi又はNaを表す。)
【0026】
【化9】

(式(Bk-3)中、MはLi又はNaを表す。)
【0027】
【化10】

【0028】
【化11】

【0029】
【化12】

(式(Bk-6)中、MはLi又はNaを表す。)
【0030】
本発明のインク組成物は、かかる構成からなり、マット紙上での発色性に優れた画像を形成することができる。
【0031】
まず、本発明に用いられるブラック色材としての前記式(1)で表される染料について説明する。
【0032】
前記式(1)で表される染料としては、具体的には、式(1):
1−N=N−A2−N=N−A3 におけるA1〜A3を表1のように組み合わせた、以下の式(Bk-1-1)、式(Bk-1-2)、式(Bk-1-3)、式(Bk-1-4)に示すような着色剤が挙げられる。これらの着色剤は、1種のみ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0033】
【表1】

表1中、MはLi又はNaを示す。
【0034】
本発明のインク組成物は、既述の通り、そのpHが(20℃において)11.0以上であるが、特に12以上であることが好ましい。20℃におけるインク組成物のpHを11.0以上とすることで本発明の効果であるマット紙上の発色性を十分に高めることができ、更に12以上にすることによってより一層の効果を達成できる。
【0035】
本発明のインク組成物には、pH11以上の所望のpH値にするために、pH調整剤として無機アルカリ及び/又は有機アルカリを含有することが好ましい。
無機アルカリとしては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの金属水酸化物、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウム等)等のアンモニウム塩、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩類等が挙げられ、有機アルカリとしては、ピペリジン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリン等のアミン類及びそれらの変性物等が挙げられるが、これらに限定されない。
中でも、前記無機アルカリが水酸化リチウムであり、前記有機アルカリがピペリジンであることが本発明で用いたブラック色材に対する向上効果の点で好ましい。
【0036】
本発明のインク組成物においては、前記ブラック色材を5〜8重量%含有することが好ましく、前記無機アルカリ及び/又は有機アルカリを1〜5重量%含有することが好ましい。
【0037】
以下、各インク組成物に含まれる他の成分について説明する。
本発明におけるインク組成物は、上述したブラック色材及び必要に応じて無機アルカリ及び/又は有機アルカリを適当な溶媒に溶解して得ることができる。本発明のインク組成物においてそれらの成分を溶解するための溶媒としては、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合液を主溶媒として用いることが好ましい。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等を用いることができる。また、長期保存の観点から、紫外線照射や過酸化水素添加などの各種化学滅菌処理を施した水を用いることが好ましい。本発明のインク組成物における水の含有量は、インク組成物の40〜90重量%であることが好ましく、50〜80重量%であることがさらに好ましい。
【0038】
本発明におけるインク組成物は、上述のとおり、溶媒として水とともに水溶性有機溶剤を用いることができる。この水溶性有機溶剤としては、染料を溶解する能力を有するものが好ましく、かつ蒸気圧が純水よりも小さいものが好ましい。
【0039】
本発明において用いることのできる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類、アセトニルアセトン等のケトン類、γ−ブチロラクトン、リン酸トリエチル等のエステル類、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、チオジグリコール等が好ましいが、これらに限定されるものではない。水とともに水溶性有機溶剤をインク組成物の溶媒として用いることによって、インクヘッドからのインク組成物の吐出安定性を向上させること、及び他の特性をほとんど変化させずにインク組成物の粘度を上げる等の調節を容易に行うことができる。
【0040】
また、糖類から選ばれる少なくとも一種の保湿剤を、本発明のインク組成物に含有させることができる。インク組成物に保湿剤を含有させることにより、インクジェット記録方法にインク組成物を用いた場合、インクからの水分の蒸発を抑制してインクを保湿することができる。本発明に用いる糖類としては、マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、マルトース等が好ましい。なお、上述した水溶性有機溶剤も保湿剤として働く場合がある。
【0041】
上記水溶性有機溶剤及び/又は保湿剤は合計で、インク組成物中に5〜50重量%、さらに好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは5〜20重量%含有させることができる。これらの含有量を5重量%以上にすることによって良好なインクの保湿性が得られ、かつ50重量%以下にすることによって、インク組成物の粘度をインクジェット記録方法に用いるための好ましい粘度に調整することができる。
【0042】
本発明のインク組成物に添加するその他の好ましい添加剤について以下に説明する。
本発明のインク組成物には、ノニオン系界面活性剤を含有させることが好ましい。ノニオン系界面活性剤を添加することによって、インク組成物の記録媒体への浸透性が優れたものになり、印刷時にインク組成物が記録媒体上に速やかに定着されうる。さらに記録媒体上にインク組成物によって記録された1つのドットができるだけ真円に近いことが好ましいが、ノニオン系界面活性剤をインク組成物中に含有させることにより、1ドットによって形成される像の真円度を高めることができ、得られる画像の画質を向上できるという効果が得られる。
【0043】
本発明に用いることのできるノニオン界面活性剤としては、例えばアセチレングリコール系界面活性剤が好ましいが、これに限定されるものではない。本発明のインク組成物に用いるアセチレングリコール系界面活性剤としては、特に以下の式(a-1):
【0044】
【化13】

(式(a-1)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して、C1〜C6の直鎖、環式又は分枝アルキル鎖を表し、さらにA1O及びA2Oはそれぞれ独立してC2〜C3のオキシアルキレン鎖、例えばオキシエチレン若しくはオキシプロピレン、又はC2〜C3のアルキレンオキサイドが重合又は共重合して得られるポリオキシアルキレン鎖、例えばポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、若しくはポリオキシエチレンプロピレン鎖を表す。また式中、n及びmはA1O又はA2O単位、すなわちオキシアルキレンの繰り返し数を表し、0≦n<30、0≦m<30、及び0≦n+m<50を満たす数である。)
で表される化合物を用いることが好ましい。このアセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、サーフィノール465(商標)、サーフィノール104(商標)(以上商品名、Air Products and Chemicals Inc.製)、オルフィンPD001(商標)、オルフィンE1010(商標)(以上商品名、日信化学工業株式会社製)を例示することができ、これらから選ばれる少なくとも一種を本発明のインク組成物に添加することが好ましい。
【0045】
本発明においては、インク組成物中にノニオン系界面活性剤が、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.5〜2重量%含まれるように、インク組成物にノニオン系界面活性剤を添加するのがよい。インク組成物中にノニオン系界面活性剤を0.1重量%以上含有させることによって、記録媒体に対する各インク組成物の浸透性を高くすることができる。またインク組成物中のノニオン系界面活性剤の含有量を5重量%以下にすることにより、記録媒体上にインク組成物によって形成された画像がにじみにくいという効果が得られる。
【0046】
さらに、ノニオン系界面活性剤に加えて、浸透促進剤として、グリコールエーテル類をインク組成物に添加することにより、記録媒体に対するインク組成物の浸透性が向上するとともに、カラー印刷を行った場合に隣り合うカラーインクどうしの境界において、インクのブリード(ブリーディング)が減少し、非常に鮮明な画像を得ることができる。したがって、本発明のインク組成物には浸透促進剤を添加することが好ましい。
【0047】
浸透促進剤として本発明に用いることのできる上記グリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が好ましいが、これらに限定されるものではない。これらのグリコールエーテル類は、インク組成物中に3〜30重量%、さらに好ましくは5〜15重量%含まれることが好ましい。グリコールエーテル類の添加量を3重量%以上にすることにより、カラー印刷時の隣り合うインク間のブリード(ブリーディング)を有効に防止でき、さらにこの添加量を30重量%以下にすることにより、画像のにじみが発生することを防止しやすくなり、かつインクの保存安定性を高めることができる。
【0048】
さらに、本発明におけるインク組成物には、アルギン酸ナトリウム等の水溶性ポリマー、水溶性樹脂、フッ素系界面活性剤、防腐剤、防カビ剤、防錆剤、溶解助剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤等から選ばれる材料を所望により添加することができる。これらの成分は、各種別に一種又は二種以上を混合して用いることができる。また、添加する必要がなければ添加しなくてもよい。当業者は本発明の効果を損なわない範囲で、選択された好ましい添加剤を好ましい量で用いることができる。なお、上記溶解助剤とは、インク組成物から不溶物が析出する場合に、その不溶物を溶解し、インク組成物を均一な溶液に保つための添加剤である。
【0049】
上記溶解助剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドンなどのピロリドン類、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネート等のアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類などを挙げることができるがこれらに限定されない。また、上記酸化防止剤の例としては、L−アスコルビン酸及びその塩類等が例示できるが、これらに限定されない。
【0050】
上記防腐剤又は防カビ剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及び1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン(アーチケミカルズ社)のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、及びプロキセルTN(以上商品名)等を例示できるが、これらに限定されない。
【0051】
本発明のインク組成物は、上述した成分から適宜選ばれた成分を含んで調製されるが、得られるインク組成物の粘度が20℃において10mPa・s未満であることが好ましい。さらに、本発明においてはインク組成物の表面張力を20℃において45mN/m以下にすることが好ましく、25〜45mN/mの範囲にすることが特に好ましい。粘度及び表面張力をこのように調整することによって、インクジェット記録方法に用いるために好ましい特性を有するインク組成物を得ることができる。この粘度及び表面張力の調整は、インク組成物に含有させる溶剤及び各種添加剤の添加量、並びにそれらの種類等を適宜調節及び選択することによって行うことができる。
【0052】
本発明におけるインク組成物の調製方法としては、例えば、インク組成物に含有される各種成分を充分に混合してできるだけ均一に溶解した後、孔径0. 8μm のメンブランフィルターで加圧濾過し、さらに得られた溶液を真空ポンプを用いて脱気処理して調製する方法が例示できるが、これに限定されない。
【0053】
次に、上述したインク組成物は、一種又は二種以上のインクセットとして、一体的に若しくは独立に収容したインクカートリッジとして用いることができ、取り扱いが便利である点等からも好ましい。インク組成物を含んで構成されるインクカートリッジは当技術分野において公知であり、公知の方法を適宜用いてインクカートリッジにすることができる。
【0054】
本発明のインク組成物を用いたインクカートリッジは一般の筆記具用、記録計用、ペンプロッター用等に使用することができるが、インクジェット記録方法に用いることが特に好ましい。上記インクカートリッジを用いることができるインクジェット記録方法は、インク組成物を細いノズルから液滴として吐出させ、その液滴を記録媒体に付着させるいかなる記録方法も含む。本発明のインク組成物を用いることができるインクジェット記録方法の具体例を以下に説明する。
【0055】
第一の方法は静電吸引方式とよばれる方法である。静電吸引方式は、ノズルとノズルの前方に配置された加速電極との間に強電界を印加し、ノズルから液滴状のインクを連続的に噴射させ、そのインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えることによって、インク滴を記録媒体上に向けて飛ばしてインクを記録媒体上に定着させて画像を記録する方法、又は、インク滴を偏向させずに、印刷情報信号に従ってインク滴をノズルから記録媒体上にむけて噴射させることにより画像を記録媒体上に定着させて記録する方法である。本発明のインク組成物はこの静電吸引方式による記録方法に用いることが好ましい。
【0056】
第二の方法は、小型ポンプによってインク液に圧力を加えるとともに、インクジェットノズルを水晶振動子等によって機械的に振動させることによって、強制的にノズルからインク滴を噴射させる方法である。ノズルから噴射されたインク滴は、噴射されると同時に帯電され、このインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えてインク滴を記録媒体に向かって飛ばすことにより、記録媒体上に画像を記録する方法である。本発明のインク組成物はこの記録方法に用いることが好ましい。
【0057】
第三の方法は、インク液に圧電素子によって圧力と印刷情報信号を同時に加え、ノズルからインク滴を記録媒体に向けて噴射させ、記録媒体上に画像を記録する方法である。本発明のインクセット又はインクカートリッジはこの記録方法に用いることが好ましい。
【0058】
第四の方法は、印刷信号情報に従って微小電極を用いてインク液を加熱して発泡させ、この泡を膨張させることによってインク液をノズルから記録媒体に向けて噴射させて記録媒体上に画像を記録する方法である。本発明のインク組成物はこの記録方法に用いることが好ましい。
【0059】
本発明のインク組成物は、上述した4つの方法を含むインクジェット記録方式による画像記録方法を用いて記録媒体上、好ましくはマット紙上に画像を記録する場合に用いるインク組成物として特に好ましい。本発明のインク組成物を用いて記録された記録物は優れた画質、特に発色性を有している。
【0060】
〔実施例〕
以下本発明を以下の実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
表2に示すインク組成物を常法に従い調製した。
【0062】
【表2】

【0063】
表中、Bk1:Black(ブラック)染料1は、前記式(1)で表される化合物の例であって、下記式(H):
【0064】
【化14】

【0065】
で表される化合物であり、かつBlack染料1におけるA1〜A3は、それぞれ以下に示す基である。
【0066】
【表3】

【0067】
また、ブラックインク組成物における色調調整用の染料として、下記式(J):
【化15】

で表される化合物であるY1:Yellow(イエロー) 染料1を用いた。
【0068】
評価試験<発色性>
上記のブラックインクの充填されたカートリッジを用い、1センチ平米当たり1.5〜2.2mgの打ち込み量になるようにインクジェット専用記録媒体「フォトマット紙:型番 KA450PM(セイコーエプソン株式会社製)」にプリンタドライバ上でモノクロ印刷設定を指定してベタ印字した。
それぞれの印刷物のOD値を、濃度計(Spectroino:Gretag社製)を用いて測定した。
【0069】
発色性の判定基準は以下のように定めた。
A:OD値1.65以上
B:OD値1.60以上1.65未満
C:OD値1.60未満
【0070】
評価結果は、以下の表に示されるようになった。
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、マット紙上での発色性に優れたインク組成物、これを用いた記録方法及び記録物として、産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラック色材として下記式(1)で表される染料を含み、pHが11以上であるインク組成物。
【化1】

(式(1)中、A1は下記式(Bk-2)又は(Bk-3)で表される置換基であり、A2は下記式(Bk-4)又は(Bk-5)で表される置換基であり、A3は下記式(Bk-6)で表される置換基である。)
【化2】

(式(Bk-2)中、MはLi又はNaを表す。)
【化3】

(式(Bk-3)中、MはLi又はNaを表す。)
【化4】

【化5】

【化6】

(式(Bk-6)中、MはLi又はNaを表す。)
【請求項2】
pH調整剤として無機アルカリ及び/又は有機アルカリを含有する、請求項1記載のインク組成物。
【請求項3】
前記無機アルカリが水酸化リチウムであり、前記有機アルカリがピペリジンである、請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
さらに、ノニオン系界面活性剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記ノニオン系界面活性剤が、アセチレングリコール系界面活性剤である、請求項4に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記ノニオン系界面活性剤を0.1〜5重量%含む、請求項4又は5に記載のインク組成物。
【請求項7】
さらに、浸透促進剤を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記浸透促進剤がグリコールエーテル類である、請求項7記載のインク組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のインク組成物を用いてなることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のインク組成物を用いて記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のインク組成物を用いて記録されたことを特徴とする記録物。

【公開番号】特開2008−222825(P2008−222825A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61884(P2007−61884)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】