説明

インク組成物とその製造方法,およびインク組成物内の自己分散型着色剤の表面で非イオン性作用基の含量を調節する方法

【課題】表面改質された着色剤を含むインク組成物を提供する。
【解決手段】着色剤の表面上にイオン性作用基及び非イオン性の線形または環型エステルまたはアミドモイエティを1:10から10:1のモル比で有する自己分散型着色剤と,有機溶媒と,水とを含むインク組成物である。これにより,表面改質された着色剤及び有機溶媒を含有しており,着色剤と有機溶媒との相互作用によって,インクの安定性を向上させて粒径を均一に維持させ,用紙のような基材への付着性を向上させて,印刷された画像の色相間の拡散性を最小化し,印刷された画像の耐水性と,乾燥及び湿潤状態での摩擦に対する耐性とを向上させて,媒質基板上で優れた染色堅牢度を示す。また,印刷された画像の画質が改善されるだけでなく,長期保存安定性にも優れているので,それを利用してインクジェットインク,印刷インク,塗料,捺染,製紙,化粧品の製造,窯業などに多様に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,インク組成物とその製造方法,およびインク組成物内の自己分散型着色剤の表面で非イオン性作用基の含量を調節する方法に係り,さらに詳細には,インクの安定性と用紙への付着性が改善されたインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に,可視光線を選択的に吸収または反射することにより,固有の色を表す物質を着色剤というが,着色剤は,染料と顔料とに区分可能である。
【0003】
染料は,一定の方法で繊維,皮革,毛皮,紙類のような被染物に染着されて相当の日光洗濯,摩擦などに堅牢度を有する着色剤であり,顔料は,着色剤を有する微粒子であって,被染物の表面に直接的に染着されず,物理的な方法(接着など)により被染物の表面に付着されて固有の色を表すものである。このような顔料,染料などの着色剤の表す色は,物質の粒子が,300〜700nmの可視光線のどの波長部分を選択的に反射または透過するかによって,その色が決定される。
【0004】
顔料型インクの製造過程では,着色剤を含有している顔料を溶媒に分散させる工程を,基本的に行われなければならない。このとき,顔料の粒径,顔料の粒径の分布及び顔料粒子の分散安定度が,効果的な顔料分散に影響を及ぼす重要な要因となる。また,顔料型インクを長期間使用するためには,上記のような顔料分散工程を経て分散された顔料粒子を長期間保存するか,または温度変化のような周辺環境要素の変化に露出させても,顔料粒子の凝集または沈殿が発生してはならない。
【0005】
ほとんどの顔料型の黒色インクは,着色剤としてカーボンブラックを使用するが,このカーボンブラックをインク溶媒に分散させる方法の例としては,特許文献1に公知のような,スチレンマレイン酸無水物共重合体を利用する分散方法,または特許文献2に公知のようなカルボン酸,スルホン酸,硫酸塩などのイオン性基を含む親水性の高分子分散剤を利用する分散方法がある。
【0006】
カーボンブラックを分散させるために分散剤を使用する場合には,通常的な分散剤を使用できるので,分散剤の入手が比較的に容易であるという長所がある。しかし,カーボンブラック顔料を水溶性の媒質に分散させるために水溶性の分散剤を使用する場合には,この水溶性の分散剤がカーボンブラックの表面に物理的に吸着され得るので,過量の分散剤を使用してはじめて所望の顔料分散効果が得られる。したがって,分散させる顔料の量に比べて過量の水溶性の分散剤を使用せねばならないので,全体的な分散効率は低下し,上記分散剤が顔料と効果的かつ安定的に結合せずに分散安定性が不良となるので,上記分散剤を使用してインクを製造する場合には,長期間の保存安定性が低下して,インク内の不溶性粒子の凝集または沈殿が発生しやすい。
【0007】
一方,ブロック共重合体及びグラフト共重合体を分散剤として使用する場合には,それらの分散剤の製造に高コストがかかるという問題点があり,一般的な乳化剤を利用する場合には,分散工程中に過量の泡が発生するという問題点がある。
【0008】
前述の分散剤及び乳化剤の使用による問題点を解決するために,表面改質によりカーボンブラックを分散させる方法が考案された。特許文献3及び特許文献4には,カーボンブラック顔料をジアゾニウム塩と反応させてイオン性基を上記カーボンブラックの表面に導入させることによって,カーボンブラック顔料を自己分散型顔料に変形させる方法が開示されている。インク組成物に使用される自己分散型着色剤,特に,自己分散型顔料を製造するためには,通常的な着色剤に4次アンモニウム基(−NR),4次ホスホニウム基(−PR),4次スルホニウム基(−SR)(ここで,Rは,C1−C10のアルキル基または水素を表す)のような陽イオン基を結合させるか,または−COOM,−SOM,−SONH,−POHM,−PO(上記Mは,水素原子,アルカリ金属,アンモニウム,有機アンモニウム)のような陰イオン成分を導入することが一般的である(特許文献3及び特許文献4)。
【0009】
商業的に利用可能な自己分散型顔料の例として,CABOT社及びOrient社の顔料が代表的に知られている。
【0010】
ところが,上記のような着色剤は,イオン性作用基を主に有しており,これを利用すれば,別途の分散剤なしにも優れた分散性を有するインク組成物が得られる一方,水に対するイオン性が向上して耐水性が低下するという問題点がある。このような短所を克服するために,着色剤にイオン性基だけでなく,非イオン性基も一定量以上導入しようとする試みがあった。
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,687,887号明細書
【特許文献2】米国特許第4,697,794号明細書
【特許文献3】米国特許第5,630,868号明細書
【特許文献4】米国特許第5,672,198号明細書
【特許文献5】特開昭63−003066号公報
【特許文献6】特開昭62−001758号公報
【特許文献7】特開昭52−152422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら,未だに,優れた分散性および耐水性を有するインク組成物は得られていなかった。
【0013】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的は,耐水性が向上しつつ,耐拡散性及び耐摩耗性などの染色堅牢度などが改善されて,印刷画像が改善されるだけでなく,長期保存安定性にも優れた,新規かつ改良されたインク組成物とその製造方法,およびインク組成物内の自己分散型着色剤の表面で非イオン性作用基の含量を調節する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために,本発明の第1の観点によれば,表面上にイオン性作用基(A)と,非イオン性の線形もしくは環状エステルモイエティ(moiety)または非イオン性の線形もしくは環状アミドモイエティ(B)とを有する自己分散型着色剤と,有機溶媒と,水とを含み,イオン性作用基(A)と,非イオン性の線形もしくは環状エステルモイエティまたは非イオン性の線形もしくは環状アミドモイエティ(B)との混合モル比は,1:10〜10:1であるインク組成物が提供される。
【0015】
上記混合モル比は,3:8〜9:1であってもよい。
【0016】
上記イオン性作用基(A)は,−NR,−PR,−SR(ここで,Rは,C1−C10のアルキル基または水素を表す),−COOM,−SOM,−SONH,−POHM,および−PO(上記Mは,水素原子,アルカリ金属,アンモニウム,または有機アンモニウムである)からなる群より選択された少なくとも何れか一つであってもよい。
【0017】
上記非イオン性の線形もしくは環状エステルモイエティまたは非イオン性の線形もしくは環状アミドモイエティ(B)は,C3−C10ラクトン,C3−C10ラクタム,−C(=O)OR(Rは,C1−C10アルキル基またはC6−C20アリール基)およびC(=O)NR(Rは,C1−C10アルキル基またはC6−C20アリール基)からなる群より選択されてもよい。
【0018】
上記の有機溶媒は,共溶媒であり,メチルアルコール,エチルアルコール,n−プロピルアルコール,イソプロピルアルコール,n−ブチルアルコール,sec−ブチルアルコール,t−ブチルアルコールまたはイソブチルアルコール;1,6−へキサンジオール,1,2−へキサンジオール,エチレングリコール,ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,プロピレングリコール,ブチレングリコール,1,4−ブタンジオール,1,2,4−ブタントリオール,1,5−ペンタンジオール,1,2,6−へキサントリオール,トリメタノールプロパン,へキシレングリコール,グリセロール,ポリ(エチレングリコール);アセトン,メチルエチルケトン,ジアセトンアルコール;酢酸エチル及び乳酸エチルなどのエステル;エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル,ジエチレングリコールメチルエーテル,ジエチレングリコールエチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテル,ジエチレングリコールジエチルエーテル,トリエチレングリコールモノメチルエーテル,トリエチレングリコールモノエチルエーテル;ジメチルスルホキシド,テトラメチレンスルホン,チオグリコールからなる群から選択された何れか一つ以上であってもよい。
【0019】
上記有機溶媒は,アミド系化合物であり,2−ピロリドン,2−ピペリドン,N−メチル−ピロリドン,カプロラクタム,テトラヒドロ−2−ピリミドン,3−メチル−テトラヒドロ−2−ピリミドン,2−イミダゾリジノン,ジメチルイミダゾリジノン,ジエチルイミダゾリジノン,ブチルウレア,1,3−ジメチルウレア,エチルウレア,プロピルウレア,イソプロピルウレアおよび1,3−ジエチルウレアからなる群より選択された何れか一つ以上であってもよい。
【0020】
上記有機溶媒は,アルキルカルボン酸塩,アルコールスルホン酸エステル塩,アルキルスルホン酸塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,脂肪酸アミン塩,4級アンモニウム塩,スルホニウム塩,またはホスホニウム塩から選択されたイオン系乳化剤であるか,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,ポリオキシエチレン二次アルコールエーテル,ポリオキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体,ポリグリセリン脂肪酸エステル,ソルビタン脂肪酸エステル,アセチレンポリアルキレン酸化物,またはアセチレンジオールから選択された非イオン性乳化剤であってもよい。
【0021】
上記インク組成物内の上記有機溶媒の含量は,上記自己分散型着色剤1質量部を基準として約1〜約20質量部であってもよい。
【0022】
上記インク組成物内の上記水の含量は,上記自己分散型着色剤1質量部を基準として約1〜約30質量部であってもよい。
【0023】
20℃における上記インク組成物の表面張力は,約15〜約70dyne/cmであり,20℃における上記インク組成物の粘度は,約1〜約20cPであってもよい。
【0024】
上記インク組成物を常温で少なくとも約1ヶ月間保管した場合,上記着色剤は,初期粒径の3倍以下の粒径を有していてもよい。
【0025】
上記課題を解決するために,本発明の第2の観点によれば,表面上に約1:10〜約10:1の混合モル比のイオン性作用基(A)及び非イオン性作用基(B)を有する自己分散型着色剤と,有機溶媒と,液体運搬体とを含むインク組成物が提供される。
【0026】
上記の非イオン性作用基(B)は,非イオン性の線形もしくは環状エステルモイエティまたは非イオン性の線形もしくは環状アミドモイエティであってもよい。
【0027】
上記液体運搬体は,水であってもよい。
【0028】
上記課題を解決するために,本発明の第3の観点によれば,下記化学式1を有する自己分散型着色剤を含み,着色剤の表面上における非イオン性ラクトン基に対するイオン性−COOH基のモル比が,約1:10〜約10:1であるインク組成物が提供される。
【0029】
【化1】

【0030】
上記課題を解決するために,本発明の第4の観点によれば,インク組成物内の自己分散型着色剤の表面で非イオン性作用基の含量を調節する方法であって,着色剤の表面上に存在する一つ以上のイオン性作用基を,一つ以上の非イオン性作用基と反応させる工程と,着色剤と反応する一つ以上の非イオン性作用基のモル比を調節することによって,着色剤の表面上の一つ以上の非イオン性作用基に対する一つ以上のイオン性作用基のモル比を,約1:10〜約10:1に調節する工程とを含むことを特徴とする,インク組成物内の自己分散型着色剤の表面で非イオン性作用基の含量を調節する方法が提供される。
【0031】
上記イオン性作用基は,−COOH基を含んでもよい。
【0032】
上記非イオン性作用基は,線形もしくは環状エステルモイエティまたは線形もしくは環状アミドモイエティを含んでもよい。
【0033】
上記課題を解決するために,本発明の第5の観点によれば,着色剤の表面上にイオン性作用基(A)及び非イオン性作用基(B)を約1:10〜約10:1の混合モル比で含む自己分散型着色剤と水とを共に混合して,均質な混合物を形成する工程を含むことを特徴とする,インク組成物の製造方法が提供される。
【0034】
上記非イオン性作用基(B)は,非イオン性の線形もしくは環状エステルモイエティまたは非イオン性の線形もしくは環状アミドモイエティであってもよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば,耐水性が向上しつつ,耐拡散性及び耐摩耗性などの染色堅牢度などが改善されて,印刷画像が改善されるだけでなく,長期保存安定性にも優れた,インク組成物とその製造方法,およびインク組成物内の自己分散型着色剤の表面で非イオン性作用基の含量を調節する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0037】
本発明は,着色剤の表面でイオン性基と非イオン性基との相対的な比率を最適化することにより,耐水性が向上しつつ,耐拡散性及び耐摩耗性などの染色堅牢度などが改善されて,印刷画像が改善されるだけでなく,長期保存安定性にも優れたインク組成物を提供するものである。
【0038】
本発明の第1の実施形態に係るインク組成物は,水及び分子内にイオン性作用基及び非イオン性の線形もしくは環状エステルモイエティ,または非イオン性の線形もしくは環状アミドモイエティを,1:10から10:1のモル比で同時に有する表面改質された自己分散型の着色剤及び有機溶媒を含有している。
【0039】
上記イオン性作用基の非制限的な例として,例えば,−NR,−PR,−SR(ここで,Rは,C1−C10のアルキル基または水素を表す)のような陽イオン基,また−COOM,−SOM,−SONH,−POHM,−PO(上記Mは,水素原子,アルカリ金属,アンモニウム,有機アンモニウム)のような陰イオン成分がある。
【0040】
上記非イオン性エステルまたはアミドモイエティは,用紙のような基材上にインク組成物をバインディングする役割を行えるので,付着性を向上させる。このようなモイエティの例として,環状エステルモイエティとしては,例えばC3−C10ラクトン,環状アミドモイエティとしては,例えばC3−C10ラクタムなどがあり,線形エステルモイエティとしては,例えば−C(=O)OR(Rは,C1−C10アルキル基,C6−C20アリール基などがある),線形アミドモイエティとしては,例えば−C(=O)NR(Rは,C1−C10アルキル基,C6−C20アリール基などがある)などがある。したがって,イオン性作用基のみを有している着色剤を含有したインク組成物を使用した場合に比べて,耐水性が改善され,用紙との付着性を向上させて摩擦に対する耐性及び色間の拡散性を最小化して,印刷された画像の耐久性を向上させうる。
【0041】
本実施形態で使用された自己分散型着色剤の場合,任意に着色剤の表面における非イオン性の線形または環状のエステルモイエティの含量を変化させたが,その具体的方法は次の通りである。
【0042】
まず,カーボンブラックをNaOCl(次亜塩素酸ナトリウム)と反応させれば,着色剤の表面に−COOH基を導入でき,これをハロゲン化チオニルと反応させれば,着色剤の表面は,ハロゲン化チオニルを含有する(米国特許第6,402,825号明細書を参照)。
【0043】
以上のように,反応性の大きなハロゲン化チオニルを含有した着色剤,ヒドロキシ基(−OH),アミノ基(−NH)を有する非イオン性の線形または環状エステルモイエティを反応させれば,本実施形態で使用された着色剤を製造できる。
【0044】
着色剤の表面のイオン性基と非イオン性基とのモル比は,着色剤の溶液を完全に乾燥させた後,赤外線分光法で分析可能である。
【0045】
上記反応式をさらに具体的に説明すれば,次の通りである。
【0046】
下記反応式1のように,カーボンブラックを,ピリジンの含まれた塩基性の条件下で塩化チオニルと反応させれば,カーボンブラックの表面には,−C(=O)Cl基が多量分布する。
【0047】
下記反応式1の生成物と反応式2の2,5−ジヒドロキシフェニル酢酸−γ−ラクトンとを反応させれば,カーボンブラックの表面にはラクトン基を含む化合物が導入され,反応前に−COOH基を有する表面がラクトン基を有しつつ,イオン性の表面が非イオン性に変わる。言い換えれば,反応式1及び反応式2を通じて,カーボンブラックの表面に付着されたイオン性作用基は,前述したラクトン基のような−OHまたはNHを有する非イオン性の線形または環型エステルまたはアミドモイエティにより代替される。反応式2に使用されたラクトン基を有する化合物のモル比と,カーボンブラックのモル比とを適切に調節すれば,カーボンブラック表面のイオン性基と非イオン性基とのモル比を変化させることができる。
【0048】
【化2】

【0049】
【化3】

【0050】
上記反応を経て得られた着色剤の一例として,例えば,下記化学式1の化合物が挙げられる。
【0051】
【化4】

【0052】
上記化学式1の着色剤で,−COOH基のようなイオン性作用基とラクトンのような非イオン性作用基との混合モル比は,1:10〜10:1,特に,3:8〜9:1であることが望ましく,これらの混合モル比が6.8:1,4.8:1,または8.8:1であることが望ましい。
【0053】
本実施形態に係る着色剤において,上記のようなイオン性作用基と非イオン性の線形または環型エステルモイエティとの混合モル比は,前述したように,1:10〜10:1,特に,3:8〜9:1であることが望ましい。もし,非イオン性作用基のモル比がイオン性基に比べて10倍を超えれば,自己分散された着色剤の静電気的な反撥力の低下によって保存安定性が悪くなり,非イオン性作用基のモル比がイオン性基に比べて0.1倍の範囲未満であれば,上記インクで印刷された画像の耐水性が悪くなり,非イオン性基の作用による用紙への付着性が低下して望ましくない。
【0054】
また,本実施形態に係るインク組成物は,既存のイオン性基のみを有する着色剤を使用した場合には,水(Hイオン)の接近が容易であり,インク水溶液内で分散安定性が良いが,非イオン性基が導入された着色剤の場合,相対的に水(Hイオン)との相互作用が少なくて,着色剤同士で結合しようとする傾向が強い。したがって,上記インクでは極性及び非極性基を何れも有しており,水に溶解されつつ顔料の非イオン性の表面との相互作用を向上させうる有機溶媒を適用するが,その含量は,着色剤の最高20倍を超えない。上記有機溶媒としては,着色剤表面の湿潤性及び保存安定性を向上させるためのものであって,非極性基としては,線形または環型のヒドロカーボン基またはアリール基が属し,極性基としては,線形または環型のエステルまたはアミド基を含んで,ヘテロ原子やハロゲン原子またはヒドロキシ基,ニトロ基,アミン基などがあるが,必ずしもこれに限定されるものではなく,少なくとも一つ以上の有機溶媒を適用できる。
【0055】
上記有機溶媒としては,例えば,メチルアルコール,エチルアルコール,n−プロピルアルコール,イソプロピルアルコール,n−ブチルアルコール,sec−ブチルアルコール,t−ブチルアルコールまたはイソブチルアルコールのアルコール類化合物と,1,6−へキサンジオール,1,2−へキサンジオール,エチレングリコール,ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,プロピレングリコール,ブチレングリコール,1,4−ブタンジオール,1,2,4−ブタントリオール,1,5−ペンタンジオール,1,2,6−へキサントリオール,トリメタノールプロパン,へキシレングリコール,グリセロール,ポリ(エチレングリコール)などの多価アルコール化合物;アセトン,メチルエチルケトン,ジアセトンアルコールなどのケトン類;酢酸エチル,乳酸エチルなどのエステル;エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル,ジエチレングリコールメチルエーテル,ジエチレングリコールエチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテル,ジエチレングリコールジエチルエーテル,トリエチレングリコールモノメチルエーテル,トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどの低級アルキルエーテル;ジメチルスルホキシド,テトラメチレンスルホン,チオグリコールなどを含むが,必ずしもこれに限定されるものではない。
【0056】
アミド系化合物の具体的な例としては,例えば,2−ピロリドン,2−ピペリドン,N−メチルピロリドン,カプロラクタム,テトラヒドロ−2−ピリミドン,3−メチルテトラヒドロ−2−ピリミドン,2−イミダゾリジノン,ジメチルイミダゾリジノン,ジエチルイミダゾリジノン,ブチルウレア,1,3−ジメチルウレア,エチルウレア,プロピルウレア,イソプロピルウレア,1,3−ジエチルウレアなどを含むが,必ずしもこれに限定されるものではない。
【0057】
また,乳化剤は,イオン系乳化剤としては,例えば,アルキルカルボン酸塩,アルコールスルホン酸エステル塩,アルキルスルホン酸塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,脂肪酸アミン塩,4級アンモニウム塩,スルホニウム塩,ホスホニウム塩が挙げられ,非イオン性乳化剤としては,例えば,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,ポリオキシエチレン2次アルコールエーテル,ポリオキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体,ポリグリセリン脂肪酸エステル,ソルビタン脂肪酸エステル,アセチレンポリアルキレン酸化物,アセチレンジオールなどを含むが,必ずしもこれに限定されるものではない。
【0058】
本実施形態において,上記有機溶媒の含量は,着色剤1質量部を基準として1〜20質量部であることが望ましい。もし,有機溶媒の含量が1質量部未満であれば,湿潤性及び保存安定性が発現され難く,20質量部を超えれば,粘度が上昇し,粒径が急に大きくなって望ましくない。
【0059】
本実施形態に係るインク組成物で水の含量は,着色剤1質量部を基準として1〜30質量部であることが望ましい。もし,水の含量が1質量部未満であれば,インク水溶液の着色剤の密度が高すぎて,粘度が上昇し,30質量部を超えれば,着色剤の含量が少なすぎて,色相の発現が難しくなるので,望ましくない。水は,インク組成物において液体運搬体として使用されうるが,液体運搬体は,水に限定されない。適当な液体運搬体として,例えば,水,エチレングリコール,プロピレングリコール,ジエチレングリコール,グリセリン,ジプロピレングリコール,ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,アミド,エステル,ウレア,置換のウレア,エーテル,カルボン酸及びその塩,エステル,アルコール,スルフィド有機物,スルホキシド有機物,スルホランのようなスルホン,アルコール誘導体,カルビトール,ブチルカルビトール,セロソルブ,トリプロピレングリコールモノメチルエーテル,エーテル誘導体,アミノアルコール,ケトン,N−メチルピロリドン,2−ピロリドン,シクロヘキシルピロリドン,ヒドロキシエーテル,アミド,スルホキシド,ラクトン,ポリマー電解質,メチルスルホニルエタノール,イミダゾール,ベタイン,その他の水溶性または水混和性物質及びその混合物の例が挙げられるが,必ずしもこれに限定されるものではない。液体運搬体は,水単独からなってもよく,水及び水溶性または水混和性の有機構成成分との混合物を含んでも良い。
【0060】
本実施形態に係るインク組成物は,その他にも粘度調節剤,湿潤剤,分散剤,pH調節剤,抗酸化剤及びその他の通常的にインク組成物に含まれる製剤などの添加剤をさらに含み得る。
【0061】
また,本実施形態に係るインク組成物には,酸または塩基がさらに含まれてもよい。ここで,酸または塩基は,溶媒に対する有機溶媒の溶解度を向上させ,着色剤を安定化させる役割を行う。
【0062】
前述したような組成を有するインク組成物の製造方法について説明すれば,次の通りである。
【0063】
まず,水に自己分散型着色剤(特に,自己分散型顔料)及び有機溶媒などを付加して混合した後,攪拌器で十分に攪拌して均一な状態にする。
【0064】
その後,上記結果物をフィルタに通過させて濾過することによって,本実施形態に係るインク組成物を得る。
【0065】
上記過程によって得た本実施形態に係るインク組成物は,20℃で表面張力が15〜70dyne/cmであり,粘度が1.0〜20cPであり,本インク組成物を常温で保管するとき,着色剤の粒径は初期値の3倍を超えないが,望ましくは,1.01〜3倍の範囲である。上記保管時間は1ヶ月である。
【0066】
ここで,粒径は,インク組成物内で着色剤の平均粒径を意味する。
【0067】
一方,本実施形態に係るインク組成物は,その用途が特別に制限されず,インク組成物以外にもトナー組成物,各種塗料,コーティング液などに使用可能である。
【0068】
以下において,本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが,本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。
【0069】
(実施例)
下記実施例で使用された自己分散型顔料は,次の通りである。
【0070】
<自己分散型顔料>
S−Pigment1:Linejet Black SP−1,三星電子製
S−Pigment2:Linejet Black SP−2,三星電子製
S−Pigment3:Linejet Black SP−3,三星電子製
S−Pigment4:Linejet Black SP−4,三星電子製
S−Pigment5:Linejet Black SP−5,三星電子製
【0071】
(比較例)
下記比較例で使用された自己分散型顔料は,次の通りである。
【0072】
<自己分散型顔料>
S−Pigment6:Linejet Black SP−6,三星電子製
S−Pigment7:Linejet Black SP−7,三星電子製
S−Pigment8:Linejet Black SP−8,三星電子製
S−Pigment9:Linejet Black SP−9,三星電子製
S−Pigment10:Linejet Black SP−10,三星電子
【0073】
上記自己分散型顔料の表面分析を赤外線分光器によって当該非イオン性基及びイオン性基のピークを積分して,その面積比でモル比を計算した結果は,次の通りである。
【0074】

【0075】
また,本実施例および比較例で用いた試薬については,以下のように略記して表示した。
【0076】
<有機溶媒>
EG:Ethylene Glycol
DEG:Diethylene Glycol
Gly:Glycerine
1,2,6−hex:1,2,6−hexanetriol
DEGMBE:Diethyleneglycol MonobutylEther
【0077】
<アミド化合物>
2−P:2−pyrroidone
NMP:N−methyl−2−pyrrolidone
Cyclo−P:Cyclohexyl pyrroidone
C−lactam:Caprolactam
V−lactam:Valerolactam
【0078】
<乳化剤>
乳化剤1:BYK社製のDisperbyk−181
乳化剤2:Air Product社製のSurfynol 465
乳化剤3:ICI社製のTergitol
乳化剤4:BASF社製のPluronics
乳化剤5:CYTEC社製のsodium dicyclohexyl sulfosuccinate
【0079】
上記自己分散顔料及び有機溶媒を適用して,次のような方法でインクサンプルを製造した。
【0080】
インクは,250mLのビーカにそれぞれの有機溶媒を下記表2のような組成でインクの特性に合わせて添加した後,水を添加して最終的に100gを合わせる。次いで,700rpmの攪拌器で30分以上攪拌して均一な状態にし,最後に0.45umの濾過紙で濾過して,最終的なインク組成物を得た。
【0081】

【0082】
上記表2のインク組成物の物性を測定した結果を下表3及び表4に表した。
【0083】

【0084】

【0085】
(実験例1:粒径の変化)
上記実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例5で得たインク組成物をガラス瓶に100mlずつ入れた後,入口を密封し,25℃の恒温槽に1ヶ月間放置した後,放置前後の粒径を測定して,その変化率によって次の通りに評価し,その結果は表5に表した。
【0086】
A=放置後の粒径/放置前の粒径
◎:A<2
O:2≦A<3
X:3≦A<4
XX:A>4
【0087】
(実験例2:保存安定性)
上記実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例5で得たインク組成物を耐熱性のガラス瓶に100mlずつ入れた後,入口を密封し,60℃の恒温槽に保存した。これを2ヶ月間放置した後,底部の沈殿有無及び層分離を確認し,次のように評価し,その結果は,表5に表した。
【0088】
○:沈殿物なし+層分離なし
△:沈殿物なし+層分離あり
×:沈殿物あり
【0089】
(実験例3:ノズル詰まりのテスト)
実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例5で得たインク組成物をインクカートリッジ((株)三星電子製)に常温(25℃),低温(−5℃)で2週間ずつ放置した後にプリンティングしたとき,ノズル詰まりによってインクが排出できない程度を次のように評価して,その結果を下記表5に表した。
【0090】
◎:既存ノズル数の5%以下のノズル詰まりが観察された
O:既存ノズル数の6〜10%のノズル詰まりが観察された
X:既存ノズル数の11〜20%のノズル詰まりが観察された
XX:既存ノズル数の21%以上のノズル詰まりが観察された
【0091】
(実験例4:耐摩耗性のテスト)
実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例5で得たインク組成物をインクカートリッジM−50((株)三星電子製)に再充填した後,プリンタ(MJC−2400C,(株)三星電子製)で棒画像(2×10cm)を印刷した後,それを24時間乾燥して,テスト器を利用して5回摩擦したとき,棒画像から転移されたOD(Optical Density)を,摩擦する前の棒画像のODと比較して百分率で表して,次のように評価し,その結果を下記表5に表した。
【0092】
A=(転移された画像のOD/本来の棒画像のOD)×100(%)
◎:A<10
O:10≦A<20
X:20≦A<30
XX:A>30
【0093】
(実験例5:耐水性のテスト)
実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例5で得たインク組成物をインクカートリッジM−50((株)三星電子製)に再充填した後,プリンタ(MJC−2400C,(株)三星電子製)で棒画像(2×10cm)を印刷し,5分後に5滴の水を落とし,それを24時間乾燥した後,水が流れつつ減少したODを本来の棒画像のODと比較して百分率で表して次のように評価して,その結果を下記表5に表した。
【0094】
A=(水が流れた後の画像OD/元棒画像のOD)×100(%)
◎:95≦A
O:90≦A<95
X:85≦A<90
XX:A<85
【0095】
(実験例6:耐拡散性のテスト)
実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例5で得たインク組成物をインクカートリッジM−50((株)三星電子製)に再充填した後,C−60((株)三星電子製)カラーインクと共にプリンタ(MJC−2400C,(株)三星電子製)でテストパターンを印刷し,30分後に隣接した二つのカラー間の境界線を基準とするとき,カラーミキシングが発生するドットラインの位置を顕微鏡で測定する(評価基準:米国特許第5,854,307号明細書を参照)。
【0096】
下記を基準として拡散性の程度を評価する。
5:境界線全体でカラーミキシングが表れない
4:1ドットの直径に該当するほどの幅でカラーミキシングが表れる
3:2ドットの直径に該当されるほどの幅でカラーミキシングが表れる
2:3ドットの直径に該当するほどの幅でカラーミキシングが表れる
1:4ドットまたはそれ以上の直径に該当するほどの幅でカラーミキシングが表れる(但し,600dpiを基準とするとき,1ドットの直径=100μmである。)
【0097】

【0098】
本発明のインク組成物は,イオン性基と非イオン性基との相対的な比率を最適化した着色剤及び有機溶媒を含有して,着色剤の均一な粒径を維持し,保管時にインクの保存安定性を向上させ,用紙に吐出されたインク液滴内で着色剤の流動性を低下させ,基材への付着性を向上させて,印刷された画像の色間の拡散性を最小化し,印刷された画像の耐水性と,乾燥及び湿潤状態での摩擦に対する耐性とを向上させて,媒質基板上で優れた染色堅牢度を表す。また,印刷された画像の画質が改善されるだけでなく,長期間の保存安定性にも優れているので,それを利用してインクジェットインク,印刷インク,塗料,捺染,製紙,化粧品の製造,窯業などに多様に使用されうる。
【0099】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は,例えば,インクジェットインク,印刷インク,塗料,捺染,製紙,化粧品の製造,窯業などに多様な分野に適用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上にイオン性作用基(A)と,非イオン性の線形もしくは環状エステルモイエティまたは非イオン性の線形もしくは環状アミドモイエティ(B)とを有する自己分散型着色剤と,
有機溶媒と,
水と,
を含み,
前記イオン性作用基(A)と,前記非イオン性の線形もしくは環状エステルモイエティまたは非イオン性の線形もしくは環状アミドモイエティ(B)との混合モル比は,1:10〜10:1であることを特徴とする,インク組成物。
【請求項2】
前記混合モル比は,3:8〜9:1であることを特徴とする,請求項1に記載のインク組成物
【請求項3】
前記イオン性作用基(A)は,−NR,−PR,−SR(ここで,Rは,C1−C10のアルキル基または水素を表す),−COOM,−SOM,−SONH,−POHM,および−PO(前記Mは,水素原子,アルカリ金属,アンモニウム,または有機アンモニウムである)からなる群より選択された少なくとも何れか一つであることを特徴とする,請求項1または2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記非イオン性の線形もしくは環状エステルモイエティまたは非イオン性の線形もしくは環状アミドモイエティ(B)は,C3−C10ラクトン,C3−C10ラクタム,−C(=O)OR(Rは,C1−C10アルキル基またはC6−C20アリール基)およびC(=O)NR(Rは,C1−C10アルキル基またはC6−C20アリール基)からなる群より選択されることを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項5】
前記有機溶媒は,共溶媒であり,
メチルアルコール,エチルアルコール,n−プロピルアルコール,イソプロピルアルコール,n−ブチルアルコール,sec−ブチルアルコール,t−ブチルアルコールまたはイソブチルアルコール,1,6−へキサンジオール,1,2−へキサンジオール,エチレングリコール,ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,プロピレングリコール,ブチレングリコール,1,4−ブタンジオール,1,2,4−ブタントリオール,1,5−ペンタンジオール,1,2,6−へキサントリオール,トリメタノールプロパン,へキシレングリコール,グリセロール,ポリ(エチレングリコール),アセトン,メチルエチルケトン,ジアセトンアルコール,酢酸エチル及び乳酸エチルなどのエステル,エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル,ジエチレングリコールメチルエーテル,ジエチレングリコールエチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテル,ジエチレングリコールジエチルエーテル,トリエチレングリコールモノメチルエーテル,トリエチレングリコールモノエチルエーテル,ジメチルスルホキシド,テトラメチレンスルホン,チオグリコールからなる群より選択された何れか一つ以上であることを特徴とする,請求項1〜4のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項6】
前記有機溶媒は,アミド系化合物であり,
2−ピロリドン,2−ピペリドン,N−メチル−ピロリドン,カプロラクタム,テトラヒドロ−2−ピリミドン,3−メチル−テトラヒドロ−2−ピリミドン,2−イミダゾリジノン,ジメチルイミダゾリジノン,ジエチルイミダゾリジノン,ブチルウレア,1,3−ジメチルウレア,エチルウレア,プロピルウレア,イソプロピルウレアおよび1,3−ジエチルウレアからなる群より選択された何れか一つ以上であることを特徴とする,請求項1〜4のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項7】
前記有機溶媒は,
アルキルカルボン酸塩,アルコールスルホン酸エステル塩,アルキルスルホン酸塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,脂肪酸アミン塩,4級アンモニウム塩,スルホニウム塩,またはホスホニウム塩から選択されたイオン系乳化剤であるか,
ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,ポリオキシエチレン二次アルコールエーテル,ポリオキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体,ポリグリセリン脂肪酸エステル,ソルビタン脂肪酸エステル,アセチレンポリアルキレン酸化物,またはアセチレンジオールから選択された非イオン性乳化剤であることを特徴とする,請求項1〜4のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項8】
前記インク組成物内の前記有機溶媒の含量は,前記自己分散型着色剤1質量部を基準として1〜20質量部であることを特徴とする,請求項1〜7のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項9】
前記インク組成物内の前記水の含量は,前記自己分散型着色剤1質量部を基準として1〜30質量部であることを特徴とする,請求項1〜8のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項10】
20℃における前記インク組成物の表面張力は,15〜70dyne/cmであり,20℃における前記インク組成物の粘度は,1〜20cPであることを特徴とする,請求項1〜9のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項11】
前記インク組成物を常温で少なくとも1ヶ月間保管した場合,前記着色剤は,初期粒径の3倍以下の粒径を有することを特徴とする,請求項1〜10のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項12】
表面上に1:10〜10:1の混合モル比のイオン性作用基(A)及び非イオン性作用基(B)を有する自己分散型着色剤と,
有機溶媒と,
液体運搬体と,
を含むことを特徴とする,インク組成物。
【請求項13】
前記非イオン性作用基(B)は,非イオン性の線形もしくは環状エステルモイエティまたは非イオン性の線形もしくは環状アミドモイエティであることを特徴とする,請求項12に記載のインク組成物。
【請求項14】
前記液体運搬体は,水であることを特徴とする,請求項12または13に記載のインク組成物。
【請求項15】
下記化学式1を有する自己分散型着色剤を含み,
前記着色剤の表面上における非イオン性ラクトン基に対するイオン性−COOH基のモル比が,1:10〜10:1であることを特徴とする,インク組成物。
【化1】

【請求項16】
インク組成物内の自己分散型着色剤の表面で非イオン性作用基の含量を調節する方法であって:
前記着色剤の表面上に存在する一つ以上のイオン性作用基を,一つ以上の前記非イオン性作用基と反応させる工程と,
前記着色剤と反応する一つ以上の前記非イオン性作用基のモル比を調節することによって,前記着色剤の表面上の一つ以上の前記非イオン性作用基に対する一つ以上の前記イオン性作用基のモル比を,1:10〜10:1に調節する工程と,
を含むことを特徴とする,インク組成物内の自己分散型着色剤の表面で非イオン性作用基の含量を調節する方法。
【請求項17】
前記イオン性作用基は,−COOH基を含むことを特徴とする,請求項16に記載のインク組成物内の自己分散型着色剤の表面で非イオン性作用基の含量を調節する方法。
【請求項18】
前記非イオン性作用基は,線形もしくは環状エステルモイエティまたは線形もしくは環状アミドモイエティを含むことを特徴とする,請求項16に記載のインク組成物内の自己分散型着色剤の表面で非イオン性作用基の含量を調節する方法。
【請求項19】
着色剤の表面上にイオン性作用基(A)及び非イオン性作用基(B)を1:10〜10:1の混合モル比で含む自己分散型着色剤と水とを共に混合して,均質な混合物を形成する工程を含むことを特徴とする,インク組成物の製造方法。
【請求項20】
前記非イオン性作用基(B)は,非イオン性の線形もしくは環状エステルモイエティまたは非イオン性の線形もしくは環状アミドモイエティであることを特徴とする,請求項19に記載のインク組成物の製造方法。

【公開番号】特開2006−213922(P2006−213922A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23691(P2006−23691)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】