インク組成物及びその形成方法
【課題】 カルコゲニド半導体膜を調製するためのインク組成物及びそれを調製するための方法が開示される。
【解決手段】 前記インク組成物は、溶媒、複数のカルコゲニドナノ粒子及と、金属イオン及び金属錯体イオンを含む群から選択される少なくとも1つを含む。前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンは、前記金属カルコゲニドナノ粒子の表面上に分布され、前記溶媒中に前記金属カルコゲニドナノ粒子を分散させるために適合されている。前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属は、周期律表の第I族、第II族、第III族及び第IV族元素から選択され、カルコゲニド半導体材料の全ての金属元素を含む。
【解決手段】 前記インク組成物は、溶媒、複数のカルコゲニドナノ粒子及と、金属イオン及び金属錯体イオンを含む群から選択される少なくとも1つを含む。前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンは、前記金属カルコゲニドナノ粒子の表面上に分布され、前記溶媒中に前記金属カルコゲニドナノ粒子を分散させるために適合されている。前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属は、周期律表の第I族、第II族、第III族及び第IV族元素から選択され、カルコゲニド半導体材料の全ての金属元素を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルコゲニド半導体膜を調製するためのインク組成物及びそれを形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電池装置は、地球エネルギーの不足のために、最近大きな注目を集めてきた。前記光電池装置は、結晶性シリコン光電池セルと薄膜光電池セルに大きく分類され得る。結晶性シリコン光電池セルは、製造方法が既に成熟していること及び高効率のために主流となっている。しかし、結晶性シリコン光電池セルは、その材料及び製造方法が高コストであることから、いまだ実用化には至っていない。前記薄膜光電池セルは、ガラス基板などの非シリコン材料上に光吸収層を形成させることで製造される。ガラス基板は、結晶性シリコン光電池セルに使用されるシリコンウェハに比べて、不足することはなく、価格も安価である。従って薄膜光電池セルは、結晶性シリコン光電池セルに代わるものとして考えられている。
【0003】
薄膜光電池セルは、光吸収層の材料により、例えばアモルファスシリコン、多結晶性シリコン、カドミウムテルリド(CdTe)、銅インジウムガリウムセレニド(CIS又はCIGS)、色素増感膜(DSC)及びその他も有機膜などに分類され得る。これらの薄膜光電池セルのなかでも、CISG光電池セルがセル効率20%を達成しており、この値は結晶性シリコン光電池セルに匹敵するものである。
【0004】
4元系半導体Cu2ZnSn(S、Se)4(CZTS)は、CISGと類似の結晶構造を有する新規な光電池材料であり、その成分が低コストで天然に豊富かつ非毒性元素であることから、近年興味が持たれてきている。CZTS膜の従来の製造方法は真空環境下で処理されるものである。Ito及びNakazawaはCZTS薄膜を原子ビームスパッタリングによりステンレススチール上に形成したことが、報告されている。Friedl-Meierらは、CZTS薄膜を熱蒸発により製造し、この方法で製造されたCZTS光電池セルは変換効率が2.3%である。Katagiriらは、CZTS薄膜をRF源共スパッタリングしその後気相硫黄化又は電子ビーム蒸着硫黄化前駆体により製造し、得られたCZTS光電池セルの効率は6.77%であった。
【0005】
前記の通り、CZTS光電池セルを形成するための従来技術は通常真空プロセスを用いる。しかし真空プロセスは一般的に非常に高価なものであり、従ってCZTS光電池セルのコストが高くつく。従って、真空装置を必要としない溶液プロセスが、製造コストを下げるために必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第20110097496号明細書
【特許文献2】国際公開第2011016283号明細書
【特許文献3】米国特許第7306823号明細書
【特許文献4】国際公開第2011066205号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第20100096015号明細書
【特許文献6】米国特許第7494841号明細書
【特許文献7】米国特許第6126740号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第20110206599号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第20120061628号明細書
【特許文献10】米国特許第7964481号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第20060054506号明細書
【特許文献12】米国特許第709465号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第20040033345号明細書
【特許文献14】国際公開第2011065994号明細書
【特許文献15】国際公開第2010135667号明細書
【特許文献16】国際公開第2012000594号明細書
【特許文献17】特開2007−269589号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hironori Katagiri et al.,“Preparation and evaluation of Cu2ZnSnS4 thin films by sulfurization of E−B evaporated precursors”,1997,pages 407−414,Solar Energy Materials and Solar Cells 49.
【非特許文献2】Qijie Guo et al.,“Synthesis of Cu2ZnSnS4 Nanocrystal Ink and Its Use for Solar Cells”,2009/07/31,pages 11672−11673,VOL.131,NO.33,J.AM.CHEM.SOC.COMMUNICATIONS.
【非特許文献3】Joachim Paier et al.,“Cu2ZnSnS4 as a potential photovoltaic material: A hybrid Hartree−Fock density functional theory study”,2009/03/25,pages 115126−1〜115126−8,PHYSICAL REVIEW B79.
【非特許文献4】Qijie Guo et al.,“Fabrication of 7.2% Efficient CZTSSe Solar Cells Using CZTS Nanocrystals”,2010/11/19,pages 17384〜17386,VOL.132,NO.49,J.AM.CHEM.SOC.COMMUNICATIONS.
【非特許文献5】Shiyou Chen et al.,“Intrinsic point defects and complexes in the quaternary kesterite semiconductor Cu2ZnSnS4”,2010/06/08,pages 245204−1〜245204−10,PHYSICAL REVIEW B81.
【非特許文献6】Shiyou Chen et al.,“Compositional dependence of structural and electronic properties of Cu2ZnSn(S,Se)4 alloys for thin film solar cells”,2011/03/01,pages 125201−1〜125201−5,PHYSICAL REVIEW B83.
【非特許文献7】David B. Mitzi et al.,“The path towards a high−performance solution−processed kesterite solar cell”,2011/01/17,pages 1421〜1436,Solar Energy Materials&Solar Cells 95.
【非特許文献8】Shannon C. Riha et al.,“Photoelectrochemical Characterization of Nanocrystalline Thin−Film Cu2ZnSnS4 Photocathodes”,2010/12/31,pages 58〜66,VOL.3,NO.1,ACS Applied Materials&Interfaces.
【非特許文献9】Grayson M. Ford et al.,“Earth Abundant Element Cu2Zn(Sn1−xGex)S4 Nanocrystals for Tunable Band Gap Solar Cells:6.8% Efficient Device Fabrication”,2011/04/28,pages 2626〜2629,CHEMISTRY OF MATERIALS.
【非特許文献10】Tsuyoshi Maeda et al.,“First Principles Calculations of Defect Formation in In−Free Photovoltaic Semiconductors Cu2ZnSnS4 and Cu2ZnSnSe4”,2011/04/20,pages 04DP07−1〜04DP07−6,Japanese Journal of Applied Physics50.
【非特許文献11】J.P. Leitao et al.,“Study of optical and structural properties of Cu2ZnSnS4 thin films”,2010/12/25,pages 7390〜7393,Thin Solid Films519.
【非特許文献12】Xiuying Wang et al.,“A facile and general approach to polynary semiconductor nanocrystals via a modified two−phase method”,2011/04/21,cover page+pages1〜8,Nanotechnology22.
【非特許文献13】Wooseok Ki et al.,“Earth−Abundant Element Photovoltaics Directly from Soluble Precursors with High Yield Using a Non−Toxic Solvent”,2011/08/10,pages732〜735,ADVANCED ENERGY MATERIALS.
【非特許文献14】Mahaprasad Kar et al.,“Formation Pathway of CulnSe2 Nanocrystals for Solar Cells”,2011/09/01,pages17239〜17247,JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY.
【非特許文献15】A Nagoya et al.,“Frist−principles study of Cu2ZnSnS4 and the related band offsets for photovoltaic applications”,2011/09/19,cover page+pages1〜6,JOURNAL OF PHYSICS:CONDENSED MATTER23.
【非特許文献16】Manuel J. Romero et al.,“Comparative study of the luminescence and intrinsic point defects in the kesterite Cu2ZnSnS4 and chalcopyrite Cu(In,Ga)Se2 thin films used in photovoltaic applications”,2011/10/24,pages165324−1〜165324−5,PHYSICAL REVIEW B84.
【非特許文献17】M. Bar et al.,“Cliff−like conduction band offset and KCN−induced recombination barrier enhancement at the CdS/Cu2ZnSnS4 thin−film solar cell heterojunction”,2011/11/29,cover page+pages222105−1〜222105−3,APPLIED PHYSICS LETTERS99.
【非特許文献18】P.M.P. Salome et al.,“The influence of hydrogen in the incorporation of Zn during the growth of Cu2ZnSnS4 thin films”,2011/08/26,pages3482〜3489,Solar Energy Materials&Solar Cells95.
【非特許文献19】Richard Haight et al.,“Band alignment at the Cu2ZnSn(SxSe1−x)4/CdS interface”,2011/06/21,cover page+page253502−1〜253502−3,APPLIED PHYSICS LETTERS98.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、インク組成物及び前記インクの形成方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
インク組成物は、溶媒、複数の金属カルコゲニドナノ粒子及び金属イオン及び金属錯体イオンを含む群から選択される少なくとも1つを含む。前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンは、前記金属カルコゲニドナノ粒子の表面に分布されており、前記溶媒中で前記金属カルコゲニドナノ粒子を分散させるように適合されている。前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び金属錯体イオンの前記金属は、周期律表の第I族、第II族、第III族及び第IV族元素を含む群から選択され、カルコゲニド半導体材料の全ての金属元素を含む。
【0010】
インク組成物の製造方法は、次のステップ、金属カルコゲニドイオンを形成するステップ、金属イオン及び金属錯体イオンの少なくとも1つを含む溶液を形成するステップ、前記溶液と前記金属カルコゲニドナノ粒子を混合するステップ、及び前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属がカルコゲニド半導体材料の全ての金属元素を含まない場合には、前記金属カルコゲニドナノ粒子形成ステップ、前記金属イオン及び/又は金属錯体イオン形成ステップ及び前記混合ステップを少なくとも1回繰り返す、ステップを含む。前記金属カルコゲニド、前記金属イオン及び前記帰属錯体イオンの金属は、周期律表の第I族、第III族又は第IVから選択される。
【0011】
本発明の前記の課題及びその他の課題、構成及びその他の利点については、添付の図面を参照して以下の詳細な説明からより明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の1つの実施態様によりカルコゲニド半導体膜を形成するためのインクを調製するためのフローチャートである。
【図2】図2は電気二重層理論を模式的に示す。
【図3】図3は、実施例1の懸濁された金属カルコゲニドナノ粒子の拡大図である。
【図4】図4は、実施例1のインク中に分散された、電気二重層でカバーされた複数の金属カルコゲニドナノ粒子の拡大図である。
【図5】図5は、本発明の1つの実施例によるカルコゲニド半導体膜形成のフローチャートである。
【図6】図6は、実施例1のインクを用いたCZTS膜のXRD分析結果図である。
【図7】図7は、実施例2のインクを用いたCZTS膜のXRD分析結果図である。
【図8】図8は、実施例3のインクを用いたCZTS膜のXRD分析結果図である。
【図9】図9は、実施例6のインクを用いたCZTS膜のXRD分析結果図である。
【図10】図10は、実施例7のインクを用いたCZTS膜のXRD分析結果図である。
【図11】図11は、本発明の1つの実施態様による光電池装置を形成するフローチャートである。
【図12】図12は、図11で示される方法により形成された光電池装置の模式図である。
【図13】図13は、実施例7のインクを用いたCZTS膜を用いた光電池装置のJ−V図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の定義は、ここで使用される用語を理解するために提供されるものであり、本発明の開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0014】
「カルコゲン」とは、周期律表の第VIA族を意味する。好ましくは用語「カルコゲン」とは硫黄及びセレンを意味する。
【0015】
「カルコゲニド化合物」とは、周期律表の第VIA族元素を少なくとも1つ含む化合物を意味する。
【0016】
「カルコゲニド半導体膜」とは、広い意味で、2元系、3元系及び4元系のカルコゲニド化合物半導体材料を意味する。2元系カルコゲニド化合物半導体材料は、第IV−VI族化合物半導体材料を含む。3元系カルコゲニド化合物半導体材料には、第I−III−VI族化合物半導体材料を含む。4元系カルコゲニド化合物半導体材料には、第I−II−IV−VI族化合物半導体材料を含む。
【0017】
「第IV−VI族化合物半導体材料」とは、周期律表の第IVA族元素と第VI族元素からなる、例えばスズ硫化物(硫化スズ、SnS)などを含む化合物半導体材料を意味する。
【0018】
「第I−III−VI族化合物半導体材料を」とは、周期律表の第IB族元素、第IIIA族及び第VIA族元素からなる、例えばCIS又はCIGSなどを含む化合物半導体材料を意味する。
【0019】
「第I−II−IV−VI族化合物半導体材料」とは、周期律表の第IB族元素、第IIB族元素、第IVA族元素及び第VIA族元素からなる、例えばCZTSなどを含む化合物半導体材料を意味する。
【0020】
「CIS」とは広い意味で、第I−III−VI族化合物半導体材料を意味する。好ましくは、用語「CIS」とは、例えばCuIn(SexS1−x)2(ここで0<x<1)の銅インジウムセレニド化合物を意味する。用語「CIS」はさらに、部分化学量論的である、例えばCuIn(Se0.65S0.35)2である銅インジウムセレニド化合物を意味する。
【0021】
「CZTS」とは広い意味で、第I−II−IV−VI族化合物半導体材料を意味する。好ましくは、用語「CZTS」とは、式、例えばCua(Zn1−bSnb)(Se1−cSc)2(ここで0<a<1、0<b<1、0≦c≦1である)の銅亜鉛スズ硫化物/セレニド化合物を意味する。用語「CZTS」はさらに、部分化学量論的である、例えばCu1.94Zn0.63Sn1.3S4などの銅亜鉛スズ硫化物/セレニド化合物を含む。さらに、第I−II−IV−VI族化合物半導体材料は、例えば銅亜鉛スズゲルマニウム硫化物などの第I−II−IV−IV−VI化合物及び銅亜鉛スズゲルマニウム硫化物セレニドなどの第I−II−IV−IV−VI−VI化合物半導体材料を含む。
【0022】
「CIGS」は広い意味で、第I−III−VI属化合物半導体材料を意味する。本発明の1つの実施態様で、「CIGS」とは、例えば式CuInxGa1−xSe2(ここで0<x<1)の銅インジウムガリウムセレニドを意味する。 用語「CIGS」はさらに、部分化学量論的な例えばCu0.9In0.7Ga0.3Se2などの銅インジウムガリウムセレン化合物を含む。
【0023】
「インク」とは、半導体膜を形成する前駆体を含む溶液を意味する。用語「インク」はまた、「前駆体溶液」又は「前駆体インク」を意味する。
【0024】
「金属カルコゲニド」とは、金属及び周期律表の第VI族元素を含む化合物を意味する。好ましくは、用語「金属カルコゲニド」とは、2元系、3元系及び4元系の金属カルコゲニド化合物を意味する。
【0025】
「リガンド」とは、中心金属イオンを囲む分子又はイオンを意味する。リガンドは、前記中心金属と、化学結合及び物理的相互作用を含む結合を形成し、金属錯体イオンを形成することができる。
【0026】
「カルコゲン含有リガンド」とは、周期律表の第VI族の元素を少なくとも1つ含むリガンドを意味する。
【0027】
「カルコゲン含有金属錯体イオン」とは、カルコゲン含有リガンドを含む金属錯体イオンを意味する。
【0028】
「カルコゲン源」とは、金属と金属カルコゲニドを形成することができる化合物を意味する。
【0029】
「ナノ粒子」とは、約2nmから約2000nmの範囲の直径を持つ粒子を意味する。
【0030】
カルコゲニド半導体膜形成のためのインクの調製
図1は、本発明の1つの実施態様によるカルコゲニド半導体膜形成のためのインクを調製するためのフローチャートである。
【0031】
前記方法は、金属カルコゲニドナノ粒子形成のステップ110を含む。前記金属カルコゲニドナノ粒子は、1種類だけの金属カルコゲニドナノ粒子、又は1以上の種類の金属カルコゲニドナノ粒子を含み得る。例えば、前記金属カルコゲニドナノ粒子には複数のスズ硫化物ナノ粒子を含む。他の例では、前記金属カルコゲニドナノ粒子は、スズ硫化物ナノ粒子及び銅硫化物ナノ粒子を含む。前記金属カルコゲニドナノ粒子は、銅スズ硫化物ナノ粒子などの多元系金属カルコゲニドナノ粒子を含み得る。又は、前記金属カルコゲニドナノ粒子は、前記粒子が少なくとも2つの金属カルコゲニドからなるナノ粒子を含み得る。例えば、前記少なくとも2つの金属カルコゲニドは、スズカルコゲニド、亜鉛カルコゲニド、銅カルコゲニド、インジウムカルコゲニド及びガリウムカルコゲニドを含む群から選択される。
【0032】
金属カルコゲニドナノ粒子を形成するプロセスは:水などの溶媒中に金属塩を溶解して第1の水溶性溶液を形成し、水中にカルコゲン源を溶解して第2の水溶液を形成し、かつ前記第1の水溶液と前記第2の水溶液とを混合して前記金属カルコゲニドナノ粒子を形成させる、ことを含む。前記プロセスはさらに、前記混合溶液のpH値を調節するステップ、撹拌するステップ又は加熱するステップとを含む。いくつかの実施態様では、前記混合溶液は、pHを約7から約14に調節される。前記金属カルコゲニドナノ粒子の粒子サイズは、約2nmから約2000nmの範囲である。
【0033】
前記金属塩は、周期律表の第IB族、第IIB族及び第IVA族を含む群から選択される少なくとも1つの金属を含む。特に、前記金属塩は、スズ(Sn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)及びガリウム(Ga)を含む群から選択される少なくとも1つの金属を含む。前記金属塩は、例えば、塩化スズ、硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム又は塩化インジウムであり得る。
【0034】
前記カルコゲン源は、前記溶液中に硫化物イオン又はセレニドイオン(セレン化物イオン)を生成することが可能である単一前駆体又は組成前駆体を含み、及び前記カルコゲン源は、さらに、チオアセタミド、チオ尿素、セレノ尿素、硫化水素、セレン化水素、アルカリ金属硫化物又はアルカリ金属セレン化物、セレン、硫黄、アルキル硫化物、アルキルセレニド及びジフェニル硫化物などの硫黄含有及びセレン含有化合物を含む。
【0035】
前記金属カルコゲニドナノ粒子には、例えば、硫化スズ(Sn−S)、硫化銅(Cu−S)、硫化亜鉛(Zn−S)、硫化インジウム(In−S)、硫化ガリウム(Ga−S)、スズセレニド(Sn−Se)、銅セレニド(Cu−Se)、亜鉛セレニド(Zn−Se)、インジウムセレニド(In−Se)、ガリウムセレニド(Ga−Se)、硫化銅スズ(Cu−Sn−S)、硫化銅亜鉛(Cu−Zn−S)、硫化亜鉛スズ(Zn−Sn−S)、硫化銅インジウム(Cu−In−S)、硫化銅ガリウム(Cu−Ga−S)、、硫化銅インジウムガリウム(Cu−In−Ga−S)、銅スズセレニド(Cu−Sn−Se)、銅亜鉛セレニド(Cu−Zn−Se)、亜鉛スズセレニド(Zn−Sn−Se)、銅インジウムセレニド(Cu−In−Se)、銅ガリウムセレニド(Cu−Ga−Se)及び銅インジウムガリウムセレニド(Cu−In−Ga−Se)が含まれる。ここでハイフン(例えばCu−S又はCu−Sn−Sなどの「−」)は、これらの元素の全ての可能な組合せを含むことを示す。例えば「Cu−S」にはCuS及びCu2Sを含む。金属及びカルコゲンの化学量論は、厳密な分子比、例えば1:1又は2:1から変動し得る。さらに、Cu1.8Sなどの部分的化学量論も含まれる。
【0036】
ステップ120は、金属イオン及び/又は金属錯体イオンの形成を含む。ステップ120では、金属イオン及び金属錯体イオンのいづれか又は両方が調製され得る。前記金属イオンは、銅イオンなどの1種類のみの金属イオンから形成され得る。他の例では、前記金属イオンは、銅イオン及び亜鉛イオンなどの1以上の金属イオンを含み得る。同様に、前記金属錯体イオンは1以上の種類の金属錯体イオンを含み得る。前記金属イオン及び金属錯体イオンの金属は、周期律表の第IB族、第IIB族、第IIIB族及び第IVA族を含む群から選択される。
【0037】
前記金属イオンは、水などの溶媒中に金属塩を溶解して調製され得る。
【0038】
前記金属錯体イオンは、水中に金属塩を溶解して第1の水溶液中に金属イオンを形成し、水中にリガンドを溶解して第2の水溶液を形成し、及び前記第1の水溶液を第2の水溶液に混合して金属錯体イオンを形成することで、調製することができる。例えば、前記金属錯体イオンは、カルコゲン含有金属錯体イオンの形で形成され得る。前記カルコゲン含有金属錯体イオンは、金属イオンとカルコゲン含有リガンドを混合することで調製され得る。前記カルコゲン含有リガンドは、例えば、チオアセタミド、チオ尿素又は硫化アンモニウムを含む。前記カルコゲン含有金属錯体イオンは、金属−チオ尿素イオン、金属−チオアセタミドイオン又は金属−硫化アンモニウムイオンを含む。
【0039】
例えば、前記金属イオンは、銅イオン、スズイオン、亜鉛イオン、ゲルマニウムイオン、インジウムイオン又はガリウムイオンを含む。前記金属錯体イオンは、銅−チオ尿素イオン、スズ−チオ尿素イオン、ゲルマニウム−チオ尿素イオン、銅−チオアセタミドイオン、スズ−チオアセタミドイオン、ゲルマニウム−チオ尿素イオン、インジウム−チオ尿素イオン、ガリウム−チオ尿素、インジウム−チオアセタミドイオン及びガリウム−チオアセタミドイオンを含む。
【0040】
前記金属−カルコゲニドナノ粒子は前記インク内に、約1%(重量/体積)から80%(重量/体積)で存在する。前記金属イオン及び/又は前記金属錯体イオンは、前記インク内に、約0.5%(重量/体積)から約80%(重量/体積)存在する。
【0041】
ステップ130は、前記金属カルコゲニドナノ粒子を前記金属イオン及び/又は前記金属錯体イオンの混合を含む。
【0042】
留意すべきことは、ステップ110は、ステップ120の前、後又は同時に実施され得る、ということである。即ち、前記金属カルコゲニドナノ粒子を初めに調製し、その後前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンが調製される。他の例では、前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンを初めに調製し、その後前記金属カルコゲニドナノ粒子が調製される。他の例では、前記金属カルコゲニドナノ粒子及び前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンが同じステップで調製される。
【0043】
前記の通り、金属カルコゲニドナノ粒子及び金属イオン及び/又は金属錯体イオンの両方が1以上の金属を含むことができる。カルコゲニド半導体膜を形成するためのインクを調製するために、前記金属カルコゲニドナノ粒子及び前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンの金属は、カルコゲニド半導体材料の全ての金属元素を含む。例えば、前記カルコゲニド半導体材料は、第IV−VI族、第I−III−VI族及び第I−II−IV−VI族化合物を含む群から選択される。例えば、CZTS膜を形成するためのインクを調製するため少なくとも3つの金属、即ち、周期律表の少なくとも1つの第IB族金属元素、少なくとも1つの第IIB族金属元素、及び少なくとも1つの第IVA族金属元素が含まれ得る。いくつかの例では、前記少なくとも3つの金属はそれぞれステップ110及び120で使用されることができ、ステップ130で得られる溶液中に全て含まれる。他の場合では、前記金属カルコゲニドナノ粒子及び前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンはそれぞれ1つの金属のみが含まれ得る。従って、ステップ130で得られる溶液中では2つの金属のみが含まれる。従って、前記方法は、前記金属カルコゲニドナノ粒子及び金属イオン及び/又は金属錯体イオンの金属がカルコゲニド半導体材料の全ての金属を含むかどうかを決定するステップ140を含む。前記全ての金属が含まれていない場合には、前記説明されたステップが繰り返される。例えば、金属イオン及び/又は金属錯体イオンを形成するステップ120が、前記インク内に第3の金属を含ませるために繰り返される。他の例では、金属カルコゲニドナノ粒子を形成するステップ110が、前記インク内に前記第3の金属を含ませるために繰り返される。
【0044】
ステップ150で、インクが調製される。
【0045】
前記プロセスでは、水が溶媒として使用されている。しかし他の実施態様では溶媒には、アルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はアミンなどの極性溶媒が含まれる。アルコールの例としては、メタノール、エタノール又はイソプロピルアルコールが含まれる。
【0046】
又はいくつかの例では、ステップ120及びステップ130は、さらに金属イオン及び/又は金属錯体イオンを添加するために数回繰り返され得る。
【0047】
本発明のインクの特徴を説明するために、電気二重層の理論が簡単に説明される。図2は電気二重層理論の模式的図である。図2では、ナノ粒子210が溶媒220中に懸濁されている。前記ナノ粒子210は負に帯電した表面230を有する。従って正イオン240は静電力により前記ナノ粒子210の負に帯電した表面230へ吸着される。正イオン240のある部分が、前記負に帯電した表面230へ密に吸収され、前記層はシュテルン層250と名付けられている。一方で前記正イオン240のある部分はより低い濃度で前記シュテルン層250を取り囲み、この層は拡散層260と名付けられている。前記シュテルン層250及び拡散層260は、電気二重層を構成する。前記ナノ粒子210が前記電気二重層270で囲まれているので、前記ナノ粒子210は、前記電気二重層270により生じる電気的反発力により、他のナノ粒子210から反発される。従って前記ナノ粒子210は前記溶液220中に懸濁され得る。
【0048】
同様に、この実施態様で、前記金属カルコゲニドナノ粒子はまた、前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンでカバーされ、従って前記溶媒中に懸濁される。従って、前記インクは優れた懸濁粒子であり、カルコゲニド半導体膜を形成するために使用され得る。以下、CZTS膜及びCIGS膜を形成するためのインクを調製するいくつかの実施例が説明される。
【実施例】
【0049】
実施例1
CZTS膜を形成するためのインクの調製
金属カルコゲニドナノ粒子の調製: 5mmolの塩化スズを25mlのH2Oの溶解して溶液(A1)を形成した。4mmolのチオアセタミドを40mlのH2Oに溶解して水溶液(B1)を形成した。前記水溶液(A1)と(B1)を混合して反応溶液(C1)を調製した。前記反応溶液(C1)に12mlの30%NH4OHを添加し、65℃で1.5時間撹拌した。得られた茶黒色沈殿が集められて、硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子を得た。
【0050】
金属錯体イオンの調製: 7mmolの硝酸銅を5mlのH2Oに溶解して水溶液(D1)を形成した。10mmolのチオアセタミドを5mlのH2Oに溶解して水溶液(E1)を形成した。前記水溶液(D1)及び(E1)を混合して反応溶液(F1)を形成した。前記反応溶液(F1)を室温で0.5時間撹拌して銅チオアセタミドイオンを形成した。
【0051】
集められた硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子を前記反応溶液(F1)に混合して混合溶液(G1)を形成した。
【0052】
金属イオンの調製: 4.8mmolの硝酸亜鉛を5mlのH2Oに溶解して亜鉛イオンを含む水溶液(H1)を調製した。水溶液(H1)を前記混合液(G1)と混合し、一晩撹拌しインクを調製した。
【0053】
図3は実施例1での懸濁硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子の拡大図である。図3に示されるように、前記硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子310は負に帯電した表面320を持つ。前記銅チオアセタミドイオン330及び亜鉛イオン340はともに正に帯電し、前記硫化スズ(SnS)ナノ粒子310の負に帯電した表面に静電力により吸着される。
【0054】
さらに図4は、実施例1の前記インク中に懸濁した電気二重層でカバーされた複数の金属カルコゲニドナノ粒子の拡大を示す。図4では、前記溶媒420中に懸濁された複数の硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子が存在する。それぞれのSnSナノ粒子410は負に帯電した外部表面430を持つ。又銅−チオアセタミドイオン440及び亜鉛イオン450が前記インク420中に形成される。正に帯電した銅−チオアセタミドイオン440及び亜鉛イオン450は、前記硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子410の負に帯電した外部表面430に吸着される。それぞれの硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子410は正イオンで囲まれているので、それらはお互いに反発する。従って、前記硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子410は前記溶媒420中で分散され、懸濁されている。
【0055】
それぞれの硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子は銅−チオアセタミンドイオン及び亜鉛イオンで囲まれているので、4元系化合物半導体CZTS(Cu2ZnSnS4)2の4つの元素、即ち銅、亜鉛スズ及び硫黄が前記SnSナノ粒子のそれぞれにより閉じ込められていることになる。従って、前記インクは、銅、亜鉛、スズ及び硫黄が十分混合されたものであり、CZTS膜を製造するために使用され得る。
【0056】
実施例2
この実施例が実施例1と異なる点は、前記インク内で2種類の金属カルコゲニドナノ粒子が調製されていること、即ち1つはSnSナノ粒子とCu錯体/イオンであり、他方はZnSナノ粒子である、ということである。
【0057】
金属カルコゲニドナノ粒子の調製: 5mmolの塩化スズを40mlのH2Oに溶解して水溶液(A2)を形成した。4mmolのチオアセタミドを40mlのH2Oに溶解して、水溶液(B2)を形成した。水溶液(A2)と(B2)を混合して反応溶液(C2)を形成した。前記反応溶液(C2)に10mlの30%NH4OHを添加して65℃で1.5時間撹拌した。その後硫化スズナノ粒子が、茶黒色粒子として反応溶液(C2)中に沈殿した。
【0058】
金属錯体イオン及び金属イオンの調製: 7mmolの硝酸銅を5mlのH2Oに溶解して水溶液(D2)を形成した。5mmolのチオアセタミドを5mlのH2Oの溶解して水溶液(E2)を形成した。前記水溶液(D2)及び(E2)を混合して反応溶液(F2)を形成した。前記反応溶液(F2)を室温で0.5時間撹拌して銅−チオアセタミドイオン及び銅イオンを形成した。
【0059】
硫化スズナノ粒子を前記反応溶液(F2)に混合して混合溶液(G2)を形成した。
【0060】
金属イオンの調製: 4.8mmolの硝酸亜鉛を5mlのH2Oに溶解して亜鉛イオンを含む水溶液(H2)を形成した。
【0061】
前記混合溶液(G2)を前記水溶液(H2)に混合し、10分間撹拌して混合溶液(I2)を形成した。
【0062】
金属カルコゲニドナノ粒子及びインクの調製: 29mmolの硫化アンモニウムを前記混合溶液(I2)に添加し、一晩撹拌してインクを調製した。
実施例3
この実施例が実施例2と異なる点は、2種類の金属カルコゲニドナノ粒子が、金属イオン及び/又は金属錯体イオンの異なる組成物に分布されている、ということである。
【0063】
金属カルコゲニドナノ粒子の調製: 2.5mmolの塩化スズを25mlのH2Oに溶解して水溶液(A3)を形成した。2mmolのチオアセタミドを25mlのH2Oに溶解して水溶液(B3)を形成した。前記水溶液(A3)と(B3)を混合し反応溶液(C3)を形成した。前記反応溶液(C3)に10mlの30%NH4OHを添加し、65℃で1.5時間撹拌した。その後、硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子が、茶黒色粒子として前記反応溶液(C3)中で沈殿した。
【0064】
金属錯体イオン及び金属イオンの調製: 3.8mmolの硝酸銅を5mlのH2Oに溶解して水溶液(D3)を形成した。3mmolのチオアセタミドを5mlのH2Oに溶解して水溶液(E3)を形成した。水溶液(D3)と(E3)とを混合して反応溶液(F3)を形成した。前記反応溶液(F3)を室温で0.5時間撹拌し、銅−チオアセタミドイオン及び銅イオンを形成した。
【0065】
硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子を前記反応溶液と混合して混合溶液(G3)を形成した。
【0066】
金属イオン及び金属カルコゲニドナノ粒子の調製: 2.8mmolの硝酸亜鉛を5mlのH2Oに溶解して水溶液(H3)を形成した。22mmolの硫化アンモニウムを前記水溶液(H3)に溶解して反応溶液(I3)を形成した。
【0067】
前記混合溶液(G3)を前記水溶液(I3)と混合してインクを調製した。
【0068】
実施例4
この実施例が実施例1と異なる点は、ナノ粒子前駆体が、前記金属カルコゲニドナノ粒子の形成の前に形成される、ということである。
【0069】
ナノ粒子前駆体の調製: 2.5mmolの硫化スズ(Sn−S)及び2mmolの硫黄(S)を5mlの40〜50%硫化アンモニウム水溶液に溶解し、一晩撹拌し反応溶液(A4)を形成した。
【0070】
金属錯体イオン及び金属イオンの調製: 3.8mmolの硝酸銅を2mlのH2Oに溶解して水溶液(B4)を形成した。4.0mmolのチオアセタミドを6mlのH2Oに溶解して水溶液(C4)を形成した。前記水溶液(B4)と前記水溶液(C4)を混合し、室温で20分間撹拌して反応溶液(D4)を形成した。
【0071】
水溶液(A4)を前記反応溶液(D4)と混合して混合溶液(E4)を形成した。
【0072】
金属イオンの調製: 2.8mmolの硝酸亜鉛を2mlのH2Oに溶解して水溶液(F5)を形成した。
【0073】
前記混合溶液(E4)を前記水溶液(F4)と混合し、一晩撹拌してインクを調製した。
【0074】
実施例5
この実施例が実施例4と異なる点は、銅チオ尿素錯体イオンが前記インク中に形成される、ということである。
【0075】
ナノ粒子前駆体の調製: 2.5mmolの硫化スズを5mlの40〜50%のチオ尿素水溶液に溶解し、一晩撹拌して反応溶液(A4)を形成した。
【0076】
金属錯体イオン及び金属イオンの調製: 3.8mmolの硝酸銅を5mlのH2Oに溶解して水溶液(B5)を形成した。5.9mmolのチオ尿素を5mlのH2Oに溶解して水溶液(C5)を形成した。前記水溶液(B5)及び前記水溶液(C5)を混合し、室温で20分間撹拌して反応溶液(D5)を形成した。
【0077】
前記反応溶液(A4)を前記反応溶液(D5)と混合して混合溶液(E5)を形成した。
【0078】
金属イオン及び金属カルコゲニドナノ粒子の調製: 2.8mmolの硝酸亜鉛を2mlのH2Oに溶解して水溶液(F4)を形成した。33mmolの硫化アンモニウムを前記水溶液(F5)に溶解して反応溶液(G5)を形成した。
【0079】
前記反応溶液(E5)を前記反応溶液(G5)と混合し、一晩撹拌してインクを調製した。
【0080】
実施例6
この実施例が実施例1と異なる点は、金属イオン及び/又は金属錯体イオンが、金属カルコゲニドナノ粒子の形成の前に調製される、ということである。
【0081】
第1の金属イオンの調製: 1.07mmolの塩化スズを2mlのH2Oに溶解し、5分間撹拌して水溶液(A6)を形成した。
【0082】
第2の金属イオンの調製: 1.31mmolの硝酸亜鉛を2mlのH2Oに溶解して水溶液(B6)を形成した。
【0083】
前記水溶液(A6)を前記水溶液(B6)と混合し、15分間撹拌して水溶液(C6)を形成した。
【0084】
金属錯体イオンの調製: 1.7mmolの硝酸銅を1.5mlのH2Oに溶解して水溶液(D6)を形成した。3mmolのチオ尿素を3mlのH2Oに溶解して水溶液(E6)を形成した。前記水溶液(D6)と前期水溶液(E6)を混合し、室温で20分間撹拌して反応溶液(F6)を形成した。
【0085】
前記水溶液(C6)を前記反応溶液(F6)と混合し、10分間撹拌して混合溶液(G6)を形成した。いくつかの実施態様では、前記混合溶液(G6)は約60℃の温度で撹拌され得る。
【0086】
金属カルコゲニドナノ粒子の添加及びインクの調製: 1.5mlの40〜50%硫化アンモニウム水溶液を前記混合用系(G6)に添加し、一晩撹拌するか、又は30分間超音波処理してインクを調製した。
【0087】
実施例7
この実施例が実施例6と異なる点は、セレンが前記インクに含まれる、ということである。
【0088】
第1の金属イオンの調製: 1.07mmolの塩化スズを2mlのH2Oに溶解し、5分間撹拌して水溶液(A7)を形成した。
【0089】
第2の金属イオンの調製: 1.31mmolの硝酸亜鉛を2mlのH2Oに溶解して水溶液(B7)を形成した。
【0090】
前記水溶液(A7)を前記水溶液(B7)と混合し、15分間撹拌して水溶液(C7)を形成した。
【0091】
金属錯体イオンの調製: 1.7mmolの硝酸銅を1.5mlのH2Oに溶解し水溶液(D7)を形成した。3mmolのチオ尿素を3mlのH2Oに溶解して水溶液(E7)を形成した。前記水溶液(D7)及び前記水溶液(E7)を混合し、室温で20分間撹拌し反応溶液(F7)を形成した。
【0092】
前記水溶液(C7)を前記反応溶液(F7)と混合し、10分間撹拌して混合溶液(G7)を形成した。いくつかの実施態様では前記混合溶液(G7)は約60℃の温度で撹拌され得る。
【0093】
金属カルコゲニドナノ粒子、金属イオン及び前記インクの調製: 0.1gのセレン(Se)粉末を1mlの40〜50%の硫化アンモニウム溶液に溶解し水溶液(H7)を形成した。前記水溶液(H7)を前記混合溶液(G7)に添加し、一晩撹拌するか、又は30分間超音波処理してインクを調製した。実施例1から実施例7は、CZTS膜を形成するためのインクの調製の方法である。以下では、CIGS膜を形成するためのインクの調製の実施例を説明する。
【0094】
実施例8
CIGS膜を形成するためのインクの調製
第1の金属イオンの調製: 0.5mmolの硝酸ガリウムを2mlのH2Oに溶解して水溶液(A8)を形成した。
【0095】
第2の金属イオンの調製: 0.5mmolの塩化インジウムを2mlのH2Oに溶解して水溶液(B8)を形成した。
【0096】
前記水溶液(A8)を前記水溶液(B8)に混合し、15分間撹拌して水溶液(C8)を形成した。
【0097】
金属錯体イオンの調製: 1.0mmolの硝酸銅を2mlのH2Oに溶解して水溶液(D8)を形成した。5.9mmolのチオ尿素を5mlのH2Oに溶解して水溶液(E8)を形成した。前記水溶液(D8)及び前記水溶液(E8)を混合し、室温で20分間撹拌して反応溶液(F8)を形成した。
【0098】
前記水溶液(C8)を前記反応溶液(F8)に混合し、10分間撹拌して混合溶液(G8)を形成した。 いくつかの実施態様では前記混合溶液(G8)は、約60℃の温度で撹拌され得る。
【0099】
金属カルコゲニドナノ粒子の形成及びインクの調製: 1.5mlの40〜50%の硫化アンモニウム水溶液を前記混合溶液(G8)に添加し、一晩撹拌するか、又は30分間超音波処理してインクを調製した。
【0100】
前駆体溶液を用いるカルコゲニド半導体膜の形成
図5は、本発明の1つの実施態様によるカルコゲニド半導体膜形成の1つのフローチャートを示す。
【0101】
前記方法は、金属カルコゲニドナノ粒子と、金属イオン及び金属錯体イオンの少なくとも1つを含む前駆体溶液の調製のステップ510を含む。前記前駆体溶液は、図1に示されるプロセスにより調製され得る。
【0102】
ステップ520は、前記前駆体溶液を基板上にコーティングして、前記基板上に前記前駆体溶液の液体層を形成することを含む。前記コーティング方法には、限定されるものではないが、ドロップキャスト、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレード、カーテンコーティング、スライドコーティング、スプレー、スリットキャスト、メニスカスコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パッド印刷、フレキソ印刷又はグラビア印刷などが挙げられる。前記基板は、ガラス基板などの剛性基板、又は金属ホイルやプラスチック基板などのフレキシブル基板であり得る。いくつかの実施態様では、前記基板は、前記前駆体溶液をコーティングする前にモリブデン(Mo)層が形成される。
【0103】
ステップ530は、前記前駆体溶液の前記液体層を乾燥させて前駆体膜を形成することを含む。前記乾燥プロセスの間、前記溶媒は蒸発により除かれる。前記乾燥方法は、例えば、前記基板を加熱炉、オーブン内に又はホットプレート上に置くことで実施され得る。前記CZTS膜の前駆体溶液が使用される場合、前記乾燥プロセスは、約25℃から600℃の温度、好ましくは350℃から480℃の温度で実施され得る。最も好ましくは前記乾燥温度は約425℃である。前記コーティング及び乾燥のステップは、例えば約3回から約6回繰り返され得るものである。得られる前駆体膜の厚さは、例えば約1〜5000nmである。
【0104】
ステップ540は、前記前駆体膜をアニーリングしてカルコゲニド半導体膜を形成することを含む。前記CZTSの前駆体膜のアニーリング温度は、約300℃から700℃であり、好ましくは480℃から650℃であり得る。最も好ましくは前記温度は540℃である。この実施例では、前記アニーリングプロセスは10分間約540℃で実施され得る。いくつかの実施態様では、前記アニーリングプロセスは硫黄蒸気を含む大気圧で実施され得る。
【0105】
実施例1から実施例3及び実施例6、7で調製されたインクは、CZTS膜の前駆体溶液として使用された。図6から図10で示されるように、XRD分析により前記CZTS膜はケステライト構造を有することが確認された。
【0106】
光電池装置の製造
図11は、本出願の1つの実施態様による光電池装置の製造のための1つのフローチャートを示す。図12はまた、図11に示される方法により製造された光電池装置を模式的に示す。
【0107】
前記方法は、基板1200上に下部電極層1210を形成するステップ1110を含む。例えば、前記基板1200は、ガラス、金属ホイル及びプラスチックを含む群から選択される材料を含む。前記下部電極層1210は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)及びインジウムスズ酸化物(ITO)を含む群から選択される材料を含む。この実施態様では、Mo層1210が基板1200上にスパッタリングにより形成される。
【0108】
ステップ1120は、前駆体溶液を用いて前記下部電極層1210上にカルコゲニド半導体膜1220を形成することを含む。前記前駆体溶液は、図1で示されるプロセスで調製され得る。この実施態様では、CZTS膜は、前記カルコゲニド半導体膜1220として形成される。前記Mo層1210上に形成されるCZTS膜1220は、厚さが約0.6μmから約6μmである。
【0109】
ステップ1130は、前記カルコゲニド半導体膜1220上に緩衝層1230を形成することを含む。前記緩衝層は、n−タイプ半導体層又はp−タタイプ半導体層などの半導体層を含む。例えば、前記緩衝層には、硫化カドミウム(CdS)、Zn(O、OH、S)、硫化インジウム(In2S3)、硫化亜鉛(ZnS)及び亜鉛マグネシウム酸化物(ZnxMg1−xO)などが含まれる。この実施態様では、CdS層1230が、n−タイプ半導体層として前記CZTS膜1220上に形成されている。前記CdS膜1230は、化学浴析出方法で形成され得る。この実施態様では、前記CdS膜1230の厚さは、例えば約20nmから約150nmであり得る。
【0110】
ステップ1140は、前記緩衝層1230上に上部電極1240の形成を含む。前記上部電極は透明導電性層を含む。例えば上部電極層1240は、亜鉛酸化物(ZnO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、ホウ素ドープ亜鉛酸化物(B−ZnO)、アルミニウム−ドープ亜鉛酸化物(Al−ZnO)、ガリウム−ソープ亜鉛酸化物(Ga−ZnO)及びアンチモンスズ酸化物(ATO)を含む群から選択される材料を含む。この実施態様では、約100nmの厚さの亜鉛酸化物(ZnO)層、及び約130nmの厚さのインジウムスズ酸化物(ITO)層が、前記緩衝層1230上に上部電極層1240として形成される。前記ZnO膜と前期ITO膜を形成する方法は、例えばスパッタリングであり得る。
【0111】
ステップ1150は、前記上部電極1240上に金属コンタクト部1250を形成することを含む。前記金属コンタクト部1250は、ニッケル(Ni)/アルミニウム(Al)で形成され得る。Ni/Al金属コンタクト部1250を形成する方法は、例えば電子ビーム蒸着方法であり得る。
【0112】
ステップ1160は、前記基板1200上に反射防止膜1260を形成することを含む。例えば、前記反射防止膜は、フッ化マグネシウム(MgF2)、シリコン酸化物(SiO2)、シリコン窒化物(Si3N4)及びニオブ酸化物(NbOx)を含む群から選択される材料を含む。この実施態様では、MgF2膜1260が、反射防止膜として前記基板上に形成される。前記MgF2膜は、例えば電気ビーム蒸着方法であり得る。この実施態様では、フッ化マグネシウム(MgF2)膜の厚さは、例えば110nmであり得る。これらにより光電池装置が形成される。
【0113】
図13は、実施例7のインクを用いたCZTS膜を有する光電池装置のJ−V図である。前記装置は、1.5AM標準照明下で、開回路電圧(VOC)=450mV、フィルファクタ(FF)=40.9%及び短絡回路電流密度(JSC)=14.8mA/cm2の条件下で、電力変換効率が2.7%であることが測定された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルコゲニド半導体膜を調製するためのインク組成物及びそれを形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電池装置は、地球エネルギーの不足のために、最近大きな注目を集めてきた。前記光電池装置は、結晶性シリコン光電池セルと薄膜光電池セルに大きく分類され得る。結晶性シリコン光電池セルは、製造方法が既に成熟していること及び高効率のために主流となっている。しかし、結晶性シリコン光電池セルは、その材料及び製造方法が高コストであることから、いまだ実用化には至っていない。前記薄膜光電池セルは、ガラス基板などの非シリコン材料上に光吸収層を形成させることで製造される。ガラス基板は、結晶性シリコン光電池セルに使用されるシリコンウェハに比べて、不足することはなく、価格も安価である。従って薄膜光電池セルは、結晶性シリコン光電池セルに代わるものとして考えられている。
【0003】
薄膜光電池セルは、光吸収層の材料により、例えばアモルファスシリコン、多結晶性シリコン、カドミウムテルリド(CdTe)、銅インジウムガリウムセレニド(CIS又はCIGS)、色素増感膜(DSC)及びその他も有機膜などに分類され得る。これらの薄膜光電池セルのなかでも、CISG光電池セルがセル効率20%を達成しており、この値は結晶性シリコン光電池セルに匹敵するものである。
【0004】
4元系半導体Cu2ZnSn(S、Se)4(CZTS)は、CISGと類似の結晶構造を有する新規な光電池材料であり、その成分が低コストで天然に豊富かつ非毒性元素であることから、近年興味が持たれてきている。CZTS膜の従来の製造方法は真空環境下で処理されるものである。Ito及びNakazawaはCZTS薄膜を原子ビームスパッタリングによりステンレススチール上に形成したことが、報告されている。Friedl-Meierらは、CZTS薄膜を熱蒸発により製造し、この方法で製造されたCZTS光電池セルは変換効率が2.3%である。Katagiriらは、CZTS薄膜をRF源共スパッタリングしその後気相硫黄化又は電子ビーム蒸着硫黄化前駆体により製造し、得られたCZTS光電池セルの効率は6.77%であった。
【0005】
前記の通り、CZTS光電池セルを形成するための従来技術は通常真空プロセスを用いる。しかし真空プロセスは一般的に非常に高価なものであり、従ってCZTS光電池セルのコストが高くつく。従って、真空装置を必要としない溶液プロセスが、製造コストを下げるために必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第20110097496号明細書
【特許文献2】国際公開第2011016283号明細書
【特許文献3】米国特許第7306823号明細書
【特許文献4】国際公開第2011066205号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第20100096015号明細書
【特許文献6】米国特許第7494841号明細書
【特許文献7】米国特許第6126740号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第20110206599号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第20120061628号明細書
【特許文献10】米国特許第7964481号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第20060054506号明細書
【特許文献12】米国特許第709465号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第20040033345号明細書
【特許文献14】国際公開第2011065994号明細書
【特許文献15】国際公開第2010135667号明細書
【特許文献16】国際公開第2012000594号明細書
【特許文献17】特開2007−269589号明細書
【非特許文献】
【0007】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、インク組成物及び前記インクの形成方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
インク組成物は、溶媒、複数の金属カルコゲニドナノ粒子及び金属イオン及び金属錯体イオンを含む群から選択される少なくとも1つを含む。前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンは、前記金属カルコゲニドナノ粒子の表面に分布されており、前記溶媒中で前記金属カルコゲニドナノ粒子を分散させるように適合されている。前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び金属錯体イオンの前記金属は、周期律表の第I族、第II族、第III族及び第IV族元素を含む群から選択され、カルコゲニド半導体材料の全ての金属元素を含む。
【0010】
インク組成物の製造方法は、次のステップ、金属カルコゲニドイオンを形成するステップ、金属イオン及び金属錯体イオンの少なくとも1つを含む溶液を形成するステップ、前記溶液と前記金属カルコゲニドナノ粒子を混合するステップ、及び前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属がカルコゲニド半導体材料の全ての金属元素を含まない場合には、前記金属カルコゲニドナノ粒子形成ステップ、前記金属イオン及び/又は金属錯体イオン形成ステップ及び前記混合ステップを少なくとも1回繰り返す、ステップを含む。前記金属カルコゲニド、前記金属イオン及び前記帰属錯体イオンの金属は、周期律表の第I族、第III族又は第IVから選択される。
【0011】
本発明の前記の課題及びその他の課題、構成及びその他の利点については、添付の図面を参照して以下の詳細な説明からより明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の1つの実施態様によりカルコゲニド半導体膜を形成するためのインクを調製するためのフローチャートである。
【図2】図2は電気二重層理論を模式的に示す。
【図3】図3は、実施例1の懸濁された金属カルコゲニドナノ粒子の拡大図である。
【図4】図4は、実施例1のインク中に分散された、電気二重層でカバーされた複数の金属カルコゲニドナノ粒子の拡大図である。
【図5】図5は、本発明の1つの実施例によるカルコゲニド半導体膜形成のフローチャートである。
【図6】図6は、実施例1のインクを用いたCZTS膜のXRD分析結果図である。
【図7】図7は、実施例2のインクを用いたCZTS膜のXRD分析結果図である。
【図8】図8は、実施例3のインクを用いたCZTS膜のXRD分析結果図である。
【図9】図9は、実施例6のインクを用いたCZTS膜のXRD分析結果図である。
【図10】図10は、実施例7のインクを用いたCZTS膜のXRD分析結果図である。
【図11】図11は、本発明の1つの実施態様による光電池装置を形成するフローチャートである。
【図12】図12は、図11で示される方法により形成された光電池装置の模式図である。
【図13】図13は、実施例7のインクを用いたCZTS膜を用いた光電池装置のJ−V図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の定義は、ここで使用される用語を理解するために提供されるものであり、本発明の開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0014】
「カルコゲン」とは、周期律表の第VIA族を意味する。好ましくは用語「カルコゲン」とは硫黄及びセレンを意味する。
【0015】
「カルコゲニド化合物」とは、周期律表の第VIA族元素を少なくとも1つ含む化合物を意味する。
【0016】
「カルコゲニド半導体膜」とは、広い意味で、2元系、3元系及び4元系のカルコゲニド化合物半導体材料を意味する。2元系カルコゲニド化合物半導体材料は、第IV−VI族化合物半導体材料を含む。3元系カルコゲニド化合物半導体材料には、第I−III−VI族化合物半導体材料を含む。4元系カルコゲニド化合物半導体材料には、第I−II−IV−VI族化合物半導体材料を含む。
【0017】
「第IV−VI族化合物半導体材料」とは、周期律表の第IVA族元素と第VI族元素からなる、例えばスズ硫化物(硫化スズ、SnS)などを含む化合物半導体材料を意味する。
【0018】
「第I−III−VI族化合物半導体材料を」とは、周期律表の第IB族元素、第IIIA族及び第VIA族元素からなる、例えばCIS又はCIGSなどを含む化合物半導体材料を意味する。
【0019】
「第I−II−IV−VI族化合物半導体材料」とは、周期律表の第IB族元素、第IIB族元素、第IVA族元素及び第VIA族元素からなる、例えばCZTSなどを含む化合物半導体材料を意味する。
【0020】
「CIS」とは広い意味で、第I−III−VI族化合物半導体材料を意味する。好ましくは、用語「CIS」とは、例えばCuIn(SexS1−x)2(ここで0<x<1)の銅インジウムセレニド化合物を意味する。用語「CIS」はさらに、部分化学量論的である、例えばCuIn(Se0.65S0.35)2である銅インジウムセレニド化合物を意味する。
【0021】
「CZTS」とは広い意味で、第I−II−IV−VI族化合物半導体材料を意味する。好ましくは、用語「CZTS」とは、式、例えばCua(Zn1−bSnb)(Se1−cSc)2(ここで0<a<1、0<b<1、0≦c≦1である)の銅亜鉛スズ硫化物/セレニド化合物を意味する。用語「CZTS」はさらに、部分化学量論的である、例えばCu1.94Zn0.63Sn1.3S4などの銅亜鉛スズ硫化物/セレニド化合物を含む。さらに、第I−II−IV−VI族化合物半導体材料は、例えば銅亜鉛スズゲルマニウム硫化物などの第I−II−IV−IV−VI化合物及び銅亜鉛スズゲルマニウム硫化物セレニドなどの第I−II−IV−IV−VI−VI化合物半導体材料を含む。
【0022】
「CIGS」は広い意味で、第I−III−VI属化合物半導体材料を意味する。本発明の1つの実施態様で、「CIGS」とは、例えば式CuInxGa1−xSe2(ここで0<x<1)の銅インジウムガリウムセレニドを意味する。 用語「CIGS」はさらに、部分化学量論的な例えばCu0.9In0.7Ga0.3Se2などの銅インジウムガリウムセレン化合物を含む。
【0023】
「インク」とは、半導体膜を形成する前駆体を含む溶液を意味する。用語「インク」はまた、「前駆体溶液」又は「前駆体インク」を意味する。
【0024】
「金属カルコゲニド」とは、金属及び周期律表の第VI族元素を含む化合物を意味する。好ましくは、用語「金属カルコゲニド」とは、2元系、3元系及び4元系の金属カルコゲニド化合物を意味する。
【0025】
「リガンド」とは、中心金属イオンを囲む分子又はイオンを意味する。リガンドは、前記中心金属と、化学結合及び物理的相互作用を含む結合を形成し、金属錯体イオンを形成することができる。
【0026】
「カルコゲン含有リガンド」とは、周期律表の第VI族の元素を少なくとも1つ含むリガンドを意味する。
【0027】
「カルコゲン含有金属錯体イオン」とは、カルコゲン含有リガンドを含む金属錯体イオンを意味する。
【0028】
「カルコゲン源」とは、金属と金属カルコゲニドを形成することができる化合物を意味する。
【0029】
「ナノ粒子」とは、約2nmから約2000nmの範囲の直径を持つ粒子を意味する。
【0030】
カルコゲニド半導体膜形成のためのインクの調製
図1は、本発明の1つの実施態様によるカルコゲニド半導体膜形成のためのインクを調製するためのフローチャートである。
【0031】
前記方法は、金属カルコゲニドナノ粒子形成のステップ110を含む。前記金属カルコゲニドナノ粒子は、1種類だけの金属カルコゲニドナノ粒子、又は1以上の種類の金属カルコゲニドナノ粒子を含み得る。例えば、前記金属カルコゲニドナノ粒子には複数のスズ硫化物ナノ粒子を含む。他の例では、前記金属カルコゲニドナノ粒子は、スズ硫化物ナノ粒子及び銅硫化物ナノ粒子を含む。前記金属カルコゲニドナノ粒子は、銅スズ硫化物ナノ粒子などの多元系金属カルコゲニドナノ粒子を含み得る。又は、前記金属カルコゲニドナノ粒子は、前記粒子が少なくとも2つの金属カルコゲニドからなるナノ粒子を含み得る。例えば、前記少なくとも2つの金属カルコゲニドは、スズカルコゲニド、亜鉛カルコゲニド、銅カルコゲニド、インジウムカルコゲニド及びガリウムカルコゲニドを含む群から選択される。
【0032】
金属カルコゲニドナノ粒子を形成するプロセスは:水などの溶媒中に金属塩を溶解して第1の水溶性溶液を形成し、水中にカルコゲン源を溶解して第2の水溶液を形成し、かつ前記第1の水溶液と前記第2の水溶液とを混合して前記金属カルコゲニドナノ粒子を形成させる、ことを含む。前記プロセスはさらに、前記混合溶液のpH値を調節するステップ、撹拌するステップ又は加熱するステップとを含む。いくつかの実施態様では、前記混合溶液は、pHを約7から約14に調節される。前記金属カルコゲニドナノ粒子の粒子サイズは、約2nmから約2000nmの範囲である。
【0033】
前記金属塩は、周期律表の第IB族、第IIB族及び第IVA族を含む群から選択される少なくとも1つの金属を含む。特に、前記金属塩は、スズ(Sn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)及びガリウム(Ga)を含む群から選択される少なくとも1つの金属を含む。前記金属塩は、例えば、塩化スズ、硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム又は塩化インジウムであり得る。
【0034】
前記カルコゲン源は、前記溶液中に硫化物イオン又はセレニドイオン(セレン化物イオン)を生成することが可能である単一前駆体又は組成前駆体を含み、及び前記カルコゲン源は、さらに、チオアセタミド、チオ尿素、セレノ尿素、硫化水素、セレン化水素、アルカリ金属硫化物又はアルカリ金属セレン化物、セレン、硫黄、アルキル硫化物、アルキルセレニド及びジフェニル硫化物などの硫黄含有及びセレン含有化合物を含む。
【0035】
前記金属カルコゲニドナノ粒子には、例えば、硫化スズ(Sn−S)、硫化銅(Cu−S)、硫化亜鉛(Zn−S)、硫化インジウム(In−S)、硫化ガリウム(Ga−S)、スズセレニド(Sn−Se)、銅セレニド(Cu−Se)、亜鉛セレニド(Zn−Se)、インジウムセレニド(In−Se)、ガリウムセレニド(Ga−Se)、硫化銅スズ(Cu−Sn−S)、硫化銅亜鉛(Cu−Zn−S)、硫化亜鉛スズ(Zn−Sn−S)、硫化銅インジウム(Cu−In−S)、硫化銅ガリウム(Cu−Ga−S)、、硫化銅インジウムガリウム(Cu−In−Ga−S)、銅スズセレニド(Cu−Sn−Se)、銅亜鉛セレニド(Cu−Zn−Se)、亜鉛スズセレニド(Zn−Sn−Se)、銅インジウムセレニド(Cu−In−Se)、銅ガリウムセレニド(Cu−Ga−Se)及び銅インジウムガリウムセレニド(Cu−In−Ga−Se)が含まれる。ここでハイフン(例えばCu−S又はCu−Sn−Sなどの「−」)は、これらの元素の全ての可能な組合せを含むことを示す。例えば「Cu−S」にはCuS及びCu2Sを含む。金属及びカルコゲンの化学量論は、厳密な分子比、例えば1:1又は2:1から変動し得る。さらに、Cu1.8Sなどの部分的化学量論も含まれる。
【0036】
ステップ120は、金属イオン及び/又は金属錯体イオンの形成を含む。ステップ120では、金属イオン及び金属錯体イオンのいづれか又は両方が調製され得る。前記金属イオンは、銅イオンなどの1種類のみの金属イオンから形成され得る。他の例では、前記金属イオンは、銅イオン及び亜鉛イオンなどの1以上の金属イオンを含み得る。同様に、前記金属錯体イオンは1以上の種類の金属錯体イオンを含み得る。前記金属イオン及び金属錯体イオンの金属は、周期律表の第IB族、第IIB族、第IIIB族及び第IVA族を含む群から選択される。
【0037】
前記金属イオンは、水などの溶媒中に金属塩を溶解して調製され得る。
【0038】
前記金属錯体イオンは、水中に金属塩を溶解して第1の水溶液中に金属イオンを形成し、水中にリガンドを溶解して第2の水溶液を形成し、及び前記第1の水溶液を第2の水溶液に混合して金属錯体イオンを形成することで、調製することができる。例えば、前記金属錯体イオンは、カルコゲン含有金属錯体イオンの形で形成され得る。前記カルコゲン含有金属錯体イオンは、金属イオンとカルコゲン含有リガンドを混合することで調製され得る。前記カルコゲン含有リガンドは、例えば、チオアセタミド、チオ尿素又は硫化アンモニウムを含む。前記カルコゲン含有金属錯体イオンは、金属−チオ尿素イオン、金属−チオアセタミドイオン又は金属−硫化アンモニウムイオンを含む。
【0039】
例えば、前記金属イオンは、銅イオン、スズイオン、亜鉛イオン、ゲルマニウムイオン、インジウムイオン又はガリウムイオンを含む。前記金属錯体イオンは、銅−チオ尿素イオン、スズ−チオ尿素イオン、ゲルマニウム−チオ尿素イオン、銅−チオアセタミドイオン、スズ−チオアセタミドイオン、ゲルマニウム−チオ尿素イオン、インジウム−チオ尿素イオン、ガリウム−チオ尿素、インジウム−チオアセタミドイオン及びガリウム−チオアセタミドイオンを含む。
【0040】
前記金属−カルコゲニドナノ粒子は前記インク内に、約1%(重量/体積)から80%(重量/体積)で存在する。前記金属イオン及び/又は前記金属錯体イオンは、前記インク内に、約0.5%(重量/体積)から約80%(重量/体積)存在する。
【0041】
ステップ130は、前記金属カルコゲニドナノ粒子を前記金属イオン及び/又は前記金属錯体イオンの混合を含む。
【0042】
留意すべきことは、ステップ110は、ステップ120の前、後又は同時に実施され得る、ということである。即ち、前記金属カルコゲニドナノ粒子を初めに調製し、その後前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンが調製される。他の例では、前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンを初めに調製し、その後前記金属カルコゲニドナノ粒子が調製される。他の例では、前記金属カルコゲニドナノ粒子及び前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンが同じステップで調製される。
【0043】
前記の通り、金属カルコゲニドナノ粒子及び金属イオン及び/又は金属錯体イオンの両方が1以上の金属を含むことができる。カルコゲニド半導体膜を形成するためのインクを調製するために、前記金属カルコゲニドナノ粒子及び前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンの金属は、カルコゲニド半導体材料の全ての金属元素を含む。例えば、前記カルコゲニド半導体材料は、第IV−VI族、第I−III−VI族及び第I−II−IV−VI族化合物を含む群から選択される。例えば、CZTS膜を形成するためのインクを調製するため少なくとも3つの金属、即ち、周期律表の少なくとも1つの第IB族金属元素、少なくとも1つの第IIB族金属元素、及び少なくとも1つの第IVA族金属元素が含まれ得る。いくつかの例では、前記少なくとも3つの金属はそれぞれステップ110及び120で使用されることができ、ステップ130で得られる溶液中に全て含まれる。他の場合では、前記金属カルコゲニドナノ粒子及び前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンはそれぞれ1つの金属のみが含まれ得る。従って、ステップ130で得られる溶液中では2つの金属のみが含まれる。従って、前記方法は、前記金属カルコゲニドナノ粒子及び金属イオン及び/又は金属錯体イオンの金属がカルコゲニド半導体材料の全ての金属を含むかどうかを決定するステップ140を含む。前記全ての金属が含まれていない場合には、前記説明されたステップが繰り返される。例えば、金属イオン及び/又は金属錯体イオンを形成するステップ120が、前記インク内に第3の金属を含ませるために繰り返される。他の例では、金属カルコゲニドナノ粒子を形成するステップ110が、前記インク内に前記第3の金属を含ませるために繰り返される。
【0044】
ステップ150で、インクが調製される。
【0045】
前記プロセスでは、水が溶媒として使用されている。しかし他の実施態様では溶媒には、アルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はアミンなどの極性溶媒が含まれる。アルコールの例としては、メタノール、エタノール又はイソプロピルアルコールが含まれる。
【0046】
又はいくつかの例では、ステップ120及びステップ130は、さらに金属イオン及び/又は金属錯体イオンを添加するために数回繰り返され得る。
【0047】
本発明のインクの特徴を説明するために、電気二重層の理論が簡単に説明される。図2は電気二重層理論の模式的図である。図2では、ナノ粒子210が溶媒220中に懸濁されている。前記ナノ粒子210は負に帯電した表面230を有する。従って正イオン240は静電力により前記ナノ粒子210の負に帯電した表面230へ吸着される。正イオン240のある部分が、前記負に帯電した表面230へ密に吸収され、前記層はシュテルン層250と名付けられている。一方で前記正イオン240のある部分はより低い濃度で前記シュテルン層250を取り囲み、この層は拡散層260と名付けられている。前記シュテルン層250及び拡散層260は、電気二重層を構成する。前記ナノ粒子210が前記電気二重層270で囲まれているので、前記ナノ粒子210は、前記電気二重層270により生じる電気的反発力により、他のナノ粒子210から反発される。従って前記ナノ粒子210は前記溶液220中に懸濁され得る。
【0048】
同様に、この実施態様で、前記金属カルコゲニドナノ粒子はまた、前記金属イオン及び/又は金属錯体イオンでカバーされ、従って前記溶媒中に懸濁される。従って、前記インクは優れた懸濁粒子であり、カルコゲニド半導体膜を形成するために使用され得る。以下、CZTS膜及びCIGS膜を形成するためのインクを調製するいくつかの実施例が説明される。
【実施例】
【0049】
実施例1
CZTS膜を形成するためのインクの調製
金属カルコゲニドナノ粒子の調製: 5mmolの塩化スズを25mlのH2Oの溶解して溶液(A1)を形成した。4mmolのチオアセタミドを40mlのH2Oに溶解して水溶液(B1)を形成した。前記水溶液(A1)と(B1)を混合して反応溶液(C1)を調製した。前記反応溶液(C1)に12mlの30%NH4OHを添加し、65℃で1.5時間撹拌した。得られた茶黒色沈殿が集められて、硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子を得た。
【0050】
金属錯体イオンの調製: 7mmolの硝酸銅を5mlのH2Oに溶解して水溶液(D1)を形成した。10mmolのチオアセタミドを5mlのH2Oに溶解して水溶液(E1)を形成した。前記水溶液(D1)及び(E1)を混合して反応溶液(F1)を形成した。前記反応溶液(F1)を室温で0.5時間撹拌して銅チオアセタミドイオンを形成した。
【0051】
集められた硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子を前記反応溶液(F1)に混合して混合溶液(G1)を形成した。
【0052】
金属イオンの調製: 4.8mmolの硝酸亜鉛を5mlのH2Oに溶解して亜鉛イオンを含む水溶液(H1)を調製した。水溶液(H1)を前記混合液(G1)と混合し、一晩撹拌しインクを調製した。
【0053】
図3は実施例1での懸濁硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子の拡大図である。図3に示されるように、前記硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子310は負に帯電した表面320を持つ。前記銅チオアセタミドイオン330及び亜鉛イオン340はともに正に帯電し、前記硫化スズ(SnS)ナノ粒子310の負に帯電した表面に静電力により吸着される。
【0054】
さらに図4は、実施例1の前記インク中に懸濁した電気二重層でカバーされた複数の金属カルコゲニドナノ粒子の拡大を示す。図4では、前記溶媒420中に懸濁された複数の硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子が存在する。それぞれのSnSナノ粒子410は負に帯電した外部表面430を持つ。又銅−チオアセタミドイオン440及び亜鉛イオン450が前記インク420中に形成される。正に帯電した銅−チオアセタミドイオン440及び亜鉛イオン450は、前記硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子410の負に帯電した外部表面430に吸着される。それぞれの硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子410は正イオンで囲まれているので、それらはお互いに反発する。従って、前記硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子410は前記溶媒420中で分散され、懸濁されている。
【0055】
それぞれの硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子は銅−チオアセタミンドイオン及び亜鉛イオンで囲まれているので、4元系化合物半導体CZTS(Cu2ZnSnS4)2の4つの元素、即ち銅、亜鉛スズ及び硫黄が前記SnSナノ粒子のそれぞれにより閉じ込められていることになる。従って、前記インクは、銅、亜鉛、スズ及び硫黄が十分混合されたものであり、CZTS膜を製造するために使用され得る。
【0056】
実施例2
この実施例が実施例1と異なる点は、前記インク内で2種類の金属カルコゲニドナノ粒子が調製されていること、即ち1つはSnSナノ粒子とCu錯体/イオンであり、他方はZnSナノ粒子である、ということである。
【0057】
金属カルコゲニドナノ粒子の調製: 5mmolの塩化スズを40mlのH2Oに溶解して水溶液(A2)を形成した。4mmolのチオアセタミドを40mlのH2Oに溶解して、水溶液(B2)を形成した。水溶液(A2)と(B2)を混合して反応溶液(C2)を形成した。前記反応溶液(C2)に10mlの30%NH4OHを添加して65℃で1.5時間撹拌した。その後硫化スズナノ粒子が、茶黒色粒子として反応溶液(C2)中に沈殿した。
【0058】
金属錯体イオン及び金属イオンの調製: 7mmolの硝酸銅を5mlのH2Oに溶解して水溶液(D2)を形成した。5mmolのチオアセタミドを5mlのH2Oの溶解して水溶液(E2)を形成した。前記水溶液(D2)及び(E2)を混合して反応溶液(F2)を形成した。前記反応溶液(F2)を室温で0.5時間撹拌して銅−チオアセタミドイオン及び銅イオンを形成した。
【0059】
硫化スズナノ粒子を前記反応溶液(F2)に混合して混合溶液(G2)を形成した。
【0060】
金属イオンの調製: 4.8mmolの硝酸亜鉛を5mlのH2Oに溶解して亜鉛イオンを含む水溶液(H2)を形成した。
【0061】
前記混合溶液(G2)を前記水溶液(H2)に混合し、10分間撹拌して混合溶液(I2)を形成した。
【0062】
金属カルコゲニドナノ粒子及びインクの調製: 29mmolの硫化アンモニウムを前記混合溶液(I2)に添加し、一晩撹拌してインクを調製した。
実施例3
この実施例が実施例2と異なる点は、2種類の金属カルコゲニドナノ粒子が、金属イオン及び/又は金属錯体イオンの異なる組成物に分布されている、ということである。
【0063】
金属カルコゲニドナノ粒子の調製: 2.5mmolの塩化スズを25mlのH2Oに溶解して水溶液(A3)を形成した。2mmolのチオアセタミドを25mlのH2Oに溶解して水溶液(B3)を形成した。前記水溶液(A3)と(B3)を混合し反応溶液(C3)を形成した。前記反応溶液(C3)に10mlの30%NH4OHを添加し、65℃で1.5時間撹拌した。その後、硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子が、茶黒色粒子として前記反応溶液(C3)中で沈殿した。
【0064】
金属錯体イオン及び金属イオンの調製: 3.8mmolの硝酸銅を5mlのH2Oに溶解して水溶液(D3)を形成した。3mmolのチオアセタミドを5mlのH2Oに溶解して水溶液(E3)を形成した。水溶液(D3)と(E3)とを混合して反応溶液(F3)を形成した。前記反応溶液(F3)を室温で0.5時間撹拌し、銅−チオアセタミドイオン及び銅イオンを形成した。
【0065】
硫化スズ(Sn−S)ナノ粒子を前記反応溶液と混合して混合溶液(G3)を形成した。
【0066】
金属イオン及び金属カルコゲニドナノ粒子の調製: 2.8mmolの硝酸亜鉛を5mlのH2Oに溶解して水溶液(H3)を形成した。22mmolの硫化アンモニウムを前記水溶液(H3)に溶解して反応溶液(I3)を形成した。
【0067】
前記混合溶液(G3)を前記水溶液(I3)と混合してインクを調製した。
【0068】
実施例4
この実施例が実施例1と異なる点は、ナノ粒子前駆体が、前記金属カルコゲニドナノ粒子の形成の前に形成される、ということである。
【0069】
ナノ粒子前駆体の調製: 2.5mmolの硫化スズ(Sn−S)及び2mmolの硫黄(S)を5mlの40〜50%硫化アンモニウム水溶液に溶解し、一晩撹拌し反応溶液(A4)を形成した。
【0070】
金属錯体イオン及び金属イオンの調製: 3.8mmolの硝酸銅を2mlのH2Oに溶解して水溶液(B4)を形成した。4.0mmolのチオアセタミドを6mlのH2Oに溶解して水溶液(C4)を形成した。前記水溶液(B4)と前記水溶液(C4)を混合し、室温で20分間撹拌して反応溶液(D4)を形成した。
【0071】
水溶液(A4)を前記反応溶液(D4)と混合して混合溶液(E4)を形成した。
【0072】
金属イオンの調製: 2.8mmolの硝酸亜鉛を2mlのH2Oに溶解して水溶液(F5)を形成した。
【0073】
前記混合溶液(E4)を前記水溶液(F4)と混合し、一晩撹拌してインクを調製した。
【0074】
実施例5
この実施例が実施例4と異なる点は、銅チオ尿素錯体イオンが前記インク中に形成される、ということである。
【0075】
ナノ粒子前駆体の調製: 2.5mmolの硫化スズを5mlの40〜50%のチオ尿素水溶液に溶解し、一晩撹拌して反応溶液(A4)を形成した。
【0076】
金属錯体イオン及び金属イオンの調製: 3.8mmolの硝酸銅を5mlのH2Oに溶解して水溶液(B5)を形成した。5.9mmolのチオ尿素を5mlのH2Oに溶解して水溶液(C5)を形成した。前記水溶液(B5)及び前記水溶液(C5)を混合し、室温で20分間撹拌して反応溶液(D5)を形成した。
【0077】
前記反応溶液(A4)を前記反応溶液(D5)と混合して混合溶液(E5)を形成した。
【0078】
金属イオン及び金属カルコゲニドナノ粒子の調製: 2.8mmolの硝酸亜鉛を2mlのH2Oに溶解して水溶液(F4)を形成した。33mmolの硫化アンモニウムを前記水溶液(F5)に溶解して反応溶液(G5)を形成した。
【0079】
前記反応溶液(E5)を前記反応溶液(G5)と混合し、一晩撹拌してインクを調製した。
【0080】
実施例6
この実施例が実施例1と異なる点は、金属イオン及び/又は金属錯体イオンが、金属カルコゲニドナノ粒子の形成の前に調製される、ということである。
【0081】
第1の金属イオンの調製: 1.07mmolの塩化スズを2mlのH2Oに溶解し、5分間撹拌して水溶液(A6)を形成した。
【0082】
第2の金属イオンの調製: 1.31mmolの硝酸亜鉛を2mlのH2Oに溶解して水溶液(B6)を形成した。
【0083】
前記水溶液(A6)を前記水溶液(B6)と混合し、15分間撹拌して水溶液(C6)を形成した。
【0084】
金属錯体イオンの調製: 1.7mmolの硝酸銅を1.5mlのH2Oに溶解して水溶液(D6)を形成した。3mmolのチオ尿素を3mlのH2Oに溶解して水溶液(E6)を形成した。前記水溶液(D6)と前期水溶液(E6)を混合し、室温で20分間撹拌して反応溶液(F6)を形成した。
【0085】
前記水溶液(C6)を前記反応溶液(F6)と混合し、10分間撹拌して混合溶液(G6)を形成した。いくつかの実施態様では、前記混合溶液(G6)は約60℃の温度で撹拌され得る。
【0086】
金属カルコゲニドナノ粒子の添加及びインクの調製: 1.5mlの40〜50%硫化アンモニウム水溶液を前記混合用系(G6)に添加し、一晩撹拌するか、又は30分間超音波処理してインクを調製した。
【0087】
実施例7
この実施例が実施例6と異なる点は、セレンが前記インクに含まれる、ということである。
【0088】
第1の金属イオンの調製: 1.07mmolの塩化スズを2mlのH2Oに溶解し、5分間撹拌して水溶液(A7)を形成した。
【0089】
第2の金属イオンの調製: 1.31mmolの硝酸亜鉛を2mlのH2Oに溶解して水溶液(B7)を形成した。
【0090】
前記水溶液(A7)を前記水溶液(B7)と混合し、15分間撹拌して水溶液(C7)を形成した。
【0091】
金属錯体イオンの調製: 1.7mmolの硝酸銅を1.5mlのH2Oに溶解し水溶液(D7)を形成した。3mmolのチオ尿素を3mlのH2Oに溶解して水溶液(E7)を形成した。前記水溶液(D7)及び前記水溶液(E7)を混合し、室温で20分間撹拌し反応溶液(F7)を形成した。
【0092】
前記水溶液(C7)を前記反応溶液(F7)と混合し、10分間撹拌して混合溶液(G7)を形成した。いくつかの実施態様では前記混合溶液(G7)は約60℃の温度で撹拌され得る。
【0093】
金属カルコゲニドナノ粒子、金属イオン及び前記インクの調製: 0.1gのセレン(Se)粉末を1mlの40〜50%の硫化アンモニウム溶液に溶解し水溶液(H7)を形成した。前記水溶液(H7)を前記混合溶液(G7)に添加し、一晩撹拌するか、又は30分間超音波処理してインクを調製した。実施例1から実施例7は、CZTS膜を形成するためのインクの調製の方法である。以下では、CIGS膜を形成するためのインクの調製の実施例を説明する。
【0094】
実施例8
CIGS膜を形成するためのインクの調製
第1の金属イオンの調製: 0.5mmolの硝酸ガリウムを2mlのH2Oに溶解して水溶液(A8)を形成した。
【0095】
第2の金属イオンの調製: 0.5mmolの塩化インジウムを2mlのH2Oに溶解して水溶液(B8)を形成した。
【0096】
前記水溶液(A8)を前記水溶液(B8)に混合し、15分間撹拌して水溶液(C8)を形成した。
【0097】
金属錯体イオンの調製: 1.0mmolの硝酸銅を2mlのH2Oに溶解して水溶液(D8)を形成した。5.9mmolのチオ尿素を5mlのH2Oに溶解して水溶液(E8)を形成した。前記水溶液(D8)及び前記水溶液(E8)を混合し、室温で20分間撹拌して反応溶液(F8)を形成した。
【0098】
前記水溶液(C8)を前記反応溶液(F8)に混合し、10分間撹拌して混合溶液(G8)を形成した。 いくつかの実施態様では前記混合溶液(G8)は、約60℃の温度で撹拌され得る。
【0099】
金属カルコゲニドナノ粒子の形成及びインクの調製: 1.5mlの40〜50%の硫化アンモニウム水溶液を前記混合溶液(G8)に添加し、一晩撹拌するか、又は30分間超音波処理してインクを調製した。
【0100】
前駆体溶液を用いるカルコゲニド半導体膜の形成
図5は、本発明の1つの実施態様によるカルコゲニド半導体膜形成の1つのフローチャートを示す。
【0101】
前記方法は、金属カルコゲニドナノ粒子と、金属イオン及び金属錯体イオンの少なくとも1つを含む前駆体溶液の調製のステップ510を含む。前記前駆体溶液は、図1に示されるプロセスにより調製され得る。
【0102】
ステップ520は、前記前駆体溶液を基板上にコーティングして、前記基板上に前記前駆体溶液の液体層を形成することを含む。前記コーティング方法には、限定されるものではないが、ドロップキャスト、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレード、カーテンコーティング、スライドコーティング、スプレー、スリットキャスト、メニスカスコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パッド印刷、フレキソ印刷又はグラビア印刷などが挙げられる。前記基板は、ガラス基板などの剛性基板、又は金属ホイルやプラスチック基板などのフレキシブル基板であり得る。いくつかの実施態様では、前記基板は、前記前駆体溶液をコーティングする前にモリブデン(Mo)層が形成される。
【0103】
ステップ530は、前記前駆体溶液の前記液体層を乾燥させて前駆体膜を形成することを含む。前記乾燥プロセスの間、前記溶媒は蒸発により除かれる。前記乾燥方法は、例えば、前記基板を加熱炉、オーブン内に又はホットプレート上に置くことで実施され得る。前記CZTS膜の前駆体溶液が使用される場合、前記乾燥プロセスは、約25℃から600℃の温度、好ましくは350℃から480℃の温度で実施され得る。最も好ましくは前記乾燥温度は約425℃である。前記コーティング及び乾燥のステップは、例えば約3回から約6回繰り返され得るものである。得られる前駆体膜の厚さは、例えば約1〜5000nmである。
【0104】
ステップ540は、前記前駆体膜をアニーリングしてカルコゲニド半導体膜を形成することを含む。前記CZTSの前駆体膜のアニーリング温度は、約300℃から700℃であり、好ましくは480℃から650℃であり得る。最も好ましくは前記温度は540℃である。この実施例では、前記アニーリングプロセスは10分間約540℃で実施され得る。いくつかの実施態様では、前記アニーリングプロセスは硫黄蒸気を含む大気圧で実施され得る。
【0105】
実施例1から実施例3及び実施例6、7で調製されたインクは、CZTS膜の前駆体溶液として使用された。図6から図10で示されるように、XRD分析により前記CZTS膜はケステライト構造を有することが確認された。
【0106】
光電池装置の製造
図11は、本出願の1つの実施態様による光電池装置の製造のための1つのフローチャートを示す。図12はまた、図11に示される方法により製造された光電池装置を模式的に示す。
【0107】
前記方法は、基板1200上に下部電極層1210を形成するステップ1110を含む。例えば、前記基板1200は、ガラス、金属ホイル及びプラスチックを含む群から選択される材料を含む。前記下部電極層1210は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)及びインジウムスズ酸化物(ITO)を含む群から選択される材料を含む。この実施態様では、Mo層1210が基板1200上にスパッタリングにより形成される。
【0108】
ステップ1120は、前駆体溶液を用いて前記下部電極層1210上にカルコゲニド半導体膜1220を形成することを含む。前記前駆体溶液は、図1で示されるプロセスで調製され得る。この実施態様では、CZTS膜は、前記カルコゲニド半導体膜1220として形成される。前記Mo層1210上に形成されるCZTS膜1220は、厚さが約0.6μmから約6μmである。
【0109】
ステップ1130は、前記カルコゲニド半導体膜1220上に緩衝層1230を形成することを含む。前記緩衝層は、n−タイプ半導体層又はp−タタイプ半導体層などの半導体層を含む。例えば、前記緩衝層には、硫化カドミウム(CdS)、Zn(O、OH、S)、硫化インジウム(In2S3)、硫化亜鉛(ZnS)及び亜鉛マグネシウム酸化物(ZnxMg1−xO)などが含まれる。この実施態様では、CdS層1230が、n−タイプ半導体層として前記CZTS膜1220上に形成されている。前記CdS膜1230は、化学浴析出方法で形成され得る。この実施態様では、前記CdS膜1230の厚さは、例えば約20nmから約150nmであり得る。
【0110】
ステップ1140は、前記緩衝層1230上に上部電極1240の形成を含む。前記上部電極は透明導電性層を含む。例えば上部電極層1240は、亜鉛酸化物(ZnO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、ホウ素ドープ亜鉛酸化物(B−ZnO)、アルミニウム−ドープ亜鉛酸化物(Al−ZnO)、ガリウム−ソープ亜鉛酸化物(Ga−ZnO)及びアンチモンスズ酸化物(ATO)を含む群から選択される材料を含む。この実施態様では、約100nmの厚さの亜鉛酸化物(ZnO)層、及び約130nmの厚さのインジウムスズ酸化物(ITO)層が、前記緩衝層1230上に上部電極層1240として形成される。前記ZnO膜と前期ITO膜を形成する方法は、例えばスパッタリングであり得る。
【0111】
ステップ1150は、前記上部電極1240上に金属コンタクト部1250を形成することを含む。前記金属コンタクト部1250は、ニッケル(Ni)/アルミニウム(Al)で形成され得る。Ni/Al金属コンタクト部1250を形成する方法は、例えば電子ビーム蒸着方法であり得る。
【0112】
ステップ1160は、前記基板1200上に反射防止膜1260を形成することを含む。例えば、前記反射防止膜は、フッ化マグネシウム(MgF2)、シリコン酸化物(SiO2)、シリコン窒化物(Si3N4)及びニオブ酸化物(NbOx)を含む群から選択される材料を含む。この実施態様では、MgF2膜1260が、反射防止膜として前記基板上に形成される。前記MgF2膜は、例えば電気ビーム蒸着方法であり得る。この実施態様では、フッ化マグネシウム(MgF2)膜の厚さは、例えば110nmであり得る。これらにより光電池装置が形成される。
【0113】
図13は、実施例7のインクを用いたCZTS膜を有する光電池装置のJ−V図である。前記装置は、1.5AM標準照明下で、開回路電圧(VOC)=450mV、フィルファクタ(FF)=40.9%及び短絡回路電流密度(JSC)=14.8mA/cm2の条件下で、電力変換効率が2.7%であることが測定された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク組成物であり、前記インク組成物は:
溶媒;
複数の金属カルコゲニドナノ粒子;及び
前記金属カルコゲニドナノ粒子の表面に分布され、前記溶媒中で前記金属カルコゲニドナノ粒子を分散させるように適合される、金属イオン及び金属錯体イオンを含む群から選択される少なくとも1つを含み;
前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属が、周期律表の第I族、第II族、第III族及び第IV族元素を含む群から選択され、及びカルコゲニド半導体材料の全ての金属元素を含む、インク組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のインク組成物であり、前記カルコゲニド半導体材料が、第IV−VI族、第I−III−VI族及び第I−II−IV−VI族化合物を含む群から選択される、インク組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のインク組成物であり、前記金属カルコゲニドナノ粒子が少なくとも2つの異なる金属カルコゲニドを含む、インク組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のインク組成物であり、前記金属カルコゲニドナノ粒子が、少なくとも2つの金属カルコゲニドを含む1つのナノ粒子を含む、インク組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のインク組成物であり、前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体の金属が、スズ、銅及び亜鉛を含む、インク組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のインク組成物であり、前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属がさらにゲルマニウムを含む、インク組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のインク組成物であり、前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属が、銅、インジウム及びガリウムを含むインク組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のインク組成物であり、前記溶媒が極性溶媒を含む、インク組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のインク組成物であり、前記溶媒が、水、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びアミンを含む群から選択される少なくとも1つを含む、インク組成物。
【請求項10】
インクを調製するための方法であり、前記方法は:
金属カルコゲニドナノ粒子を形成し;
1つの金属イオン及び金属錯体イオンの少なくとも1つを含む溶液を形成し;
前記溶液を前記金属カルコゲニドナノ粒子と混合し、
前記帰属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属が、周期律表の第I族、第II族、第III族又は第IV又は族から選択され;及び
前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属がカルコゲニド半導体材料の全ての金属元素を含まない場合には、前記金属カルコゲニドナノ粒子の形成及び前記溶液の形成及び前記混合の少なくとも1つのステップを繰り返すことを含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であり、前記方法がさらに、前記反応溶液のpHを約7から約14に調節することを含む、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であり、前記金属塩が、スズ塩、銅塩、亜鉛塩、ゲルマニウム塩、インジウム塩及びガリウム塩を含む群から選択される少なくとも1つを含む、方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であり、前記カルコゲン源が、硫化物及びセレン化物含有化合物の少なくとも1つを含む、方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法であり、金属イオン及び金属錯体イオンの少なくとも1つを含む溶液を形成する前記ステップが:
金属塩を溶媒中に溶解して金属イオンを形成し;
カルコゲン含有リガンドを形成し;及び
前記金属イオンと前期カルコゲン含有リガンドを混合する、方法。
【請求項1】
インク組成物であり、前記インク組成物は:
溶媒;
複数の金属カルコゲニドナノ粒子;及び
前記金属カルコゲニドナノ粒子の表面に分布され、前記溶媒中で前記金属カルコゲニドナノ粒子を分散させるように適合される、金属イオン及び金属錯体イオンを含む群から選択される少なくとも1つを含み;
前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属が、周期律表の第I族、第II族、第III族及び第IV族元素を含む群から選択され、及びカルコゲニド半導体材料の全ての金属元素を含む、インク組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のインク組成物であり、前記カルコゲニド半導体材料が、第IV−VI族、第I−III−VI族及び第I−II−IV−VI族化合物を含む群から選択される、インク組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のインク組成物であり、前記金属カルコゲニドナノ粒子が少なくとも2つの異なる金属カルコゲニドを含む、インク組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のインク組成物であり、前記金属カルコゲニドナノ粒子が、少なくとも2つの金属カルコゲニドを含む1つのナノ粒子を含む、インク組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のインク組成物であり、前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体の金属が、スズ、銅及び亜鉛を含む、インク組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のインク組成物であり、前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属がさらにゲルマニウムを含む、インク組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のインク組成物であり、前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属が、銅、インジウム及びガリウムを含むインク組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のインク組成物であり、前記溶媒が極性溶媒を含む、インク組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のインク組成物であり、前記溶媒が、水、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びアミンを含む群から選択される少なくとも1つを含む、インク組成物。
【請求項10】
インクを調製するための方法であり、前記方法は:
金属カルコゲニドナノ粒子を形成し;
1つの金属イオン及び金属錯体イオンの少なくとも1つを含む溶液を形成し;
前記溶液を前記金属カルコゲニドナノ粒子と混合し、
前記帰属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属が、周期律表の第I族、第II族、第III族又は第IV又は族から選択され;及び
前記金属カルコゲニドナノ粒子、前記金属イオン及び前記金属錯体イオンの金属がカルコゲニド半導体材料の全ての金属元素を含まない場合には、前記金属カルコゲニドナノ粒子の形成及び前記溶液の形成及び前記混合の少なくとも1つのステップを繰り返すことを含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であり、前記方法がさらに、前記反応溶液のpHを約7から約14に調節することを含む、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であり、前記金属塩が、スズ塩、銅塩、亜鉛塩、ゲルマニウム塩、インジウム塩及びガリウム塩を含む群から選択される少なくとも1つを含む、方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であり、前記カルコゲン源が、硫化物及びセレン化物含有化合物の少なくとも1つを含む、方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法であり、金属イオン及び金属錯体イオンの少なくとも1つを含む溶液を形成する前記ステップが:
金属塩を溶媒中に溶解して金属イオンを形成し;
カルコゲン含有リガンドを形成し;及び
前記金属イオンと前期カルコゲン含有リガンドを混合する、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−64108(P2013−64108A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171003(P2012−171003)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(512103284)旺能光電股▲ふん▼有限公司 (5)
【氏名又は名称原語表記】DelSolar Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.6, Kebei 2nd Rd., Zhunan Science Park, Zhunan Township, Miaoli County, Taiwan, R.O.C.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(512103284)旺能光電股▲ふん▼有限公司 (5)
【氏名又は名称原語表記】DelSolar Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.6, Kebei 2nd Rd., Zhunan Science Park, Zhunan Township, Miaoli County, Taiwan, R.O.C.
【Fターム(参考)】
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