説明

インク組成物及び酸素インジケーター

色素としての酸化還元化合物と、還元剤としての揮発性剤と、バインダーとしてのポリマー材料と、揮発性溶媒とを含み、印刷に使用する際に3〜150mPa・sの粘度を有するインク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、インク組成物製造方法、酸素インジケーター及び酸素インジケーター製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
漏れ、保護ガス包装体等の包装体の酸素含有量の変化、又はその内部の製品の損傷を検出するために、変色して、包装体の状態変化を示すインジケーターを使用することが知られている。この種の多くの既知インジケーターは、メチレンブルー等の酸化還元色素、水酸化カルシウム等のアルカリ物質、及びアルカリ物質によって強い還元性を帯びるグルコース等の還元剤を含む。酸素を含まない環境において、還元剤は、通常は有色の酸化状態から、還元された通常無色の形態に酸化還元インジケーターを十分に還元する。例えば、青色のメチレンブルーの酸化状態は、アルカリ性グルコースにより還元されて、無色のロイコ状態になる。ロイコメチレンブルーは、酸素等の強い酸化剤の影響下で容易に酸化されてメチレンブルーに戻る。そのようなインジケーターは、嫌気性条件下で保管される必要があり、酸化剤と反応すると一般には極めて可逆的になる。それらは一般には感光性も有し、その感度は、二酸化炭素、二酸化硫黄等の酸化性ガスの存在によって著しく影響される。
【0003】
米国特許第4526752号には、上述したような嫌気性環境で機能する酸素インジケーターであって、ロイコ状態において還元剤を含まない色素を担持し、酸素と不可逆的に反応して変色する基質を含む酸素インジケーターが開示されている。そのインジケーターは、揮発性還元剤を含有する水に色素を溶解させ、空気が存在せず、包装体が密封されている環境において還元剤を除去することによって製造される。そのインジケーターは、包装体を閉じ込むフィルム上に設けるか、又は印刷することができる。
【0004】
既知酸素インジケーターの短所は、インク溶液の粘度が高すぎて、ドリッピング技術によりインジケーターをパッケージに付着できないことである。
【0005】
さらに、このインク組成物においては、揮発性還元剤による色素のロイコ状態への還元を効果的に行うために、揮発性アルカリ剤を用いて溶液を高いpH環境に調整している。そのため、得られた酸素インジケーターは耐光性に劣る傾向がある。
【発明の開示】
【0006】
本発明の目的は、上記の短所を回避することである。
【0007】
本発明の目的は、新型の酸素インジケーターと、その粘度及び密着性が、ドリッピング技術を用いた印刷に好適であるインク組成物とを提供することである。ドリッピング技術を用いた印刷において、包装とともにインジケーターを包装材に直接付着させることが可能である。これにより、予め製造された酸素インジケーターの嫌気性状態における取扱い及び保管に関わる短所を伴わずに、個別的な製品特有のインジケーターを包装ライン上で製造することが可能になる。また、ドリッピング技術を用いた包装に関わるインジケーターを付着させることにより、包装体を個別に扱うための識別子としてインジケーターを使用することが可能になる。さらに、本発明の目的は、酸素インジケーターと、食品包装における最も重要なガスの1つである二酸化炭素を含む包装体で使用するのに十分適したインク組成物とを提供することである。
【0008】
本発明の目的はさらに蛍光灯等に対する耐光性に優れるインク組成物を提供することである。
【0009】
(1)色素としての酸化還元化合物と、還元剤としての揮発性剤と、バインダーとしてのポリマー材料と、揮発性溶媒とを含み、印刷に使用する際に3〜150mPa・sの粘度を有するインク組成物。
【0010】
(2)印刷に使用する際に10〜40mPa・sの粘度を有する、項目(1)に記載の組成物。
【0011】
(3)バインダー濃度がインク組成物に対して10〜50重量%である項目(1)に記載のインク組成物。
【0012】
(4)バインダーの重量平均分子量が8000以下である項目(1)に記載のインク組成物。
【0013】
(5)バインダーが、ポリオール、ケトン樹脂、セルロース誘導体及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、項目(1)〜(4)のいずれか一項に記載の組成物。
【0014】
(6)バインダーがシクロヘキサノン系ケトン樹脂又はアセトフェノン系ケトン樹脂を含む項目(1)〜(4)のいずれか一項に記載のインク組成物。
【0015】
(7)バインダーがケトン樹脂と、樹脂酸と、アルコール由来のエステル化合物との混合物を含む項目(1)〜(4)のいずれか一項に記載のインク組成物。
【0016】
(8)樹脂酸がアレウリチン酸、ジャラール酸、又はラクシジャラール酸である項目(7)に記載のインク組成物。
【0017】
(9)揮発性還元剤が、アルコール、アンモニア、チオール、アルデヒド及び低分子アミンからなる群から選択される、項目(1)〜(4)のいずれか一項に記載の組成物。
【0018】
(10)揮発性還元剤がアンモニアである項目(1)〜(4)のいずれか一項に記載のインク組成物。
【0019】
(11)溶媒が、アルコール、ケトン、エステル及び水からなる群から選択される、項目(1)〜(4)のいずれか一項に記載の組成物。
【0020】
(12)色素としての酸化還元剤の酸化還元電位が0.1V以上である項目(1)〜(4)のいずれか一項に記載のインク組成物。
【0021】
(13)色素としての酸化還元剤と、バインダーとしてのポリマー材料と、揮発性溶媒とを混合し、次いで還元性物質としての揮発性剤を、生成した混合物に添加し、色素を還元することを含む、インク組成物の製造方法。
【0022】
(14)項目(1)〜(12)までのいずれか一項に記載のインク組成物をドリップすることによって調製した酸素インジケーター。
【0023】
(15)項目(1)〜(12)のいずれか一項に記載のインク組成物をドリップし、次いで揮発性還元剤及び揮発性溶媒を除去することを含む、ドリッピング技術を用いた酸素インジケーターの製造方法。
【0024】
(16)色変化により漏れ及び/又は酸素含有量の変化を示す、項目(14)に記載の酸素インジケーター。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明によるインク組成物は、色素としての酸化還元剤(化合物)、還元剤としての揮発性物質(剤)、バインダーとしてのポリマー材料及び揮発性溶媒を含む。
【0026】
本発明に用いられるバインダーとは、主として色素としての酸化還元剤をバインダー中に分散状態で包括し、色素を被付着面に固定する役割を果たす。バインダーに用いられる物質は公知に使用されるバインダーであれば単独又はその混合物としていずれも使用してもよい。また、本発明においてインク組成におけるバインダー含有量は、プラスチック表面へのドリッピングの場合、被付着面であるプラスチックへの結着性の観点及びプリントヘッドからのインク溶液の吐出性能やノズル穴の詰まりの観点より、インク組成物全体に対して10〜50重量%含むことが好ましい。含有量は、より好ましくは15〜45重量%である。被付着面はコロナ処理等の公知の表面処理を行って結着性を改善してもよい。ドリッピング技術での印刷において好ましいインク組成物の粘度は、30℃における粘度で3〜150mPa・sであることが好ましく、鮮明な印刷をする観点より、より好ましくは10〜40mPa・sが良い。この溶液粘度を実現するために、バインダーの重量平均分子量(Mw)は小さい方が好ましいが、バインダー成分の溶出を鑑み重量平均分子量が1000〜8000であることが好ましく、より好ましくは重量平均分子量が1500〜7000、さらに好ましくは重量平均分子量が2000〜6000である。
【0027】
本発明に用いられるバインダーとして、例えば、ケトン樹脂、セルロース誘導体(ニトロセルロース等のセルロースエステル類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースエーテル類、オキシセルロース等の修飾セルロース類)、ポリビニルアルコール、ポリオール類、ポリビニルピロリドン、ポリアミド系、ポリアセタール系、その他天然樹脂系バインダーとその変性物が挙げられ、被印刷物や被塗布物の表面素材に合わせて、これらバインダーは単独又はその混合物を使用できるのである。
【0028】
好ましいバインダーとしては、色素の還元補助機能の観点より、ケトン樹脂が良く、また、色素の色変化反応性の観点より、セルロース誘導体や天然樹脂等が良く、また、安全性の観点より、天然樹脂等が良く、これらを総合的に考慮して、ケトン樹脂と天然樹脂がより好ましい。
【0029】
また、被印刷面がプラスチックの場合、印刷部が均一な表面を形成するにはバインダーの濃度が10重量%以上であるが、ケトン樹脂を含むバインダーを用いることは、上記の低粘度とバインダー濃度を両立することができ、より好ましい。さらに、ケトン樹脂を含むバインダーを用いる場合、還元剤として少量のアンモニアで色素をロイコ状態に還元することが可能であり、インク溶液のpHを中性近くに設定できるため、インク組成物の保存安定性及び印刷物の耐光性に優れる他、包装後の包装体内に飛散した揮発性物質の影響を最小にすることもできる。
【0030】
本発明で用いるケトン樹脂は、ケトン基を有する化合物とアルデヒドの縮合反応により得られる化合物であり、例えば、メチルエチルケトン系、メチルイソブチルケトン系、メチルシクロヘキサノン系、シクロヘキサノン系、アセトフェノン系等の樹脂が挙げられ、これらのタイプの樹脂の中から適宜選択して用いることができる。好ましくは、シクロヘキサノン系、アセトフェノン系の樹脂であり、シクロヘキサノン系ケトン樹脂としては、例えば、シクロヘキサノンとホルムアルデヒドからなるケトン樹脂が挙げられ、アセトフェノン系ケトン樹脂としては、例えば、アセトフェノンとホルムアルデヒドからなるケトン樹脂が挙げられる。
【0031】
ケトン樹脂のインク組成物に対する添加量としては、バインダー機能及び色素としての酸化還元剤の還元機能の観点より10重量%以上が好ましく、より好ましくは15重量%以上である。
【0032】
バインダーとしてケトン樹脂を使用する場合、色素としての酸化還元剤の発色速度を制御する観点より酸素透過性の良いバインダーを混合するのは好ましい。通常、ケトン樹脂は分子内及び分子間の水素結合により、酸素透過性が緩やかである。本発明のインク組成が酸素インジケーターに用いられる場合、色素としての酸化還元剤の発色はバインダー中を拡散してくる酸素との反応によるものであり、包装体内の環境の変化を即座に検知するため、酸素拡散性を改善する目的で酸素透過性の優れるバインダーを混合してもよい。例えば、バインダー機能及びバインダー内の酸素拡散性改善の観点より、前記に挙げたセルロース誘導体や天然樹脂系バインダーとその変性物が挙げられるが、特に溶媒との相溶性、インク粘度、食品安全の観点より、天然樹脂系のシェラック樹脂が好ましい。シェラック樹脂は、樹脂酸、及びアルコールのエステル化合物からなるバインダーであるが、より好ましくはバインダーの樹脂酸がアレウリチン酸、ジャラール酸、ラクシジャラール酸を含むエステル化合物が良い。
【0033】
本発明によるインク組成物に使用される溶媒は、インク組成物の構造をより均質にし、インク組成物を残すことを目的とする。溶媒としては、組成物の色素及びバインダーを溶解させる揮発性アルコール、ケトン、エステル、水及び/又は任意の類似の揮発性溶媒等の揮発性溶媒を使用することが可能である。好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メトキシエタノール、及び/又はそれらの混合物、より好ましくはイソプロパノール等の揮発性アルコールが溶媒として使用される。
【0034】
特にアンモニアがアンモニア水で使用されること及び色素の溶解性の観点より、水を含んだ溶媒が好ましく、バインダーの溶解性、プリンタヘッドの詰まり防止性、印刷後の乾燥性の観点より、水及びアルコールの混合物がより好ましい。
【0035】
本発明によるインク組成物において、酸化還元物質として使用される還元剤は、色素を還元し、インク組成物を残すことを目的とする。酸化還元物質としては、印刷及び/又は包装条件下で蒸発する、且つ/又は蒸発される揮発性還元剤を使用することが可能である。ドリッピング技術を用いた印刷を包装条件下、及び包装環境で実施することが可能である。揮発性還元剤の蒸気圧は、温度20℃で1hPaを上回り、好ましくは5hPaを上回る。揮発性還元剤はアルコール、アンモニア、チオール、アルデヒド、低分子アミン及び/又は同様に機能する任意の他の還元剤であってもよい。
【0036】
還元剤の添加量は還元能力の観点より、好ましくはインク溶液の0.1〜20重量%で、より好ましくは0.3〜15重量%、さらに好ましくは0.3〜13重量%である。
【0037】
還元剤がアンモニアの場合、バインダーはケトン樹脂との組み合わせが色素をロイコ状態にする無色化反応の反応性の観点より、好ましい。
【0038】
還元剤がアンモニアの場合のインク溶液に対する還元剤の添加量は、通常、還元剤はアンモニア水の形で添加されるが、25%アンモニア水溶液の場合、バインダーの水に対する溶解性の観点及び還元能力の観点より、好ましくはインク溶液の0.1〜20重量%で、より好ましくは0.3〜15重量%である。
【0039】
さらに、還元剤としてのアンモニア水とバインダーとしてのケトン樹脂の含有割合を適宜、調整することにより、インク溶液のpHを調整することができ、塗膜形成時にバインダーの相転移機能の長所を駆使することで塗布面を透明又は不透明に制御することもできる。同様にインク溶液のpHを従来技術の値(pH10.5以上)よりも中性側のpH(pH10程度以下)で色素還元することにより、耐光性機能を格段に向上することができる。
【0040】
本発明でいう色素としての酸化還元剤とはpH、温度、水素及び電子の授受又は酸素による直接酸化による酸化還元等の環境変化により変色をする薬剤を示す。酸化還元剤とは物質の酸化又は還元によって光吸収波長が変化すればいずれの物質でもよい。このように変化した光吸収波長を検出することによって酸素の有無を判断することができるのである。利用できる光吸収波長の波長域は、変化した波長を測定又は検出できればどのような波長でも利用できる。
【0041】
本発明でいう酸化還元剤の光吸収波長変化反応とは、指示薬自体の構造変化、又は酸化還元剤の場合、酸化還元剤が酸素指示部に含有する他の化合物と反応して光吸収波長が変化することをいう。本発明で使用する指示薬を種々に選択することによって、塗布後の色や検知酸素濃度や変色速度等を適宜、設定することができる。さらに、本発明に用いられる指示薬による変色が不可逆反応である場合、包装体内における内容物の酸素濃度による暴露程度を色差(色の濃淡、変色等)によって判別できるため、包装体内における内容物がどのくらい酸素濃度によって暴露したのかを積算表示できる。さらに、数種の指示薬が混合された場合において、指示薬の反応が化学的に安定であり、かつ、反応が独立である場合、例えば、酸化還元剤の反応に必要な酸素濃度、反応速度及び反応時の色彩の全く違う酸化還元剤を数種混合して用いると、例えばある酸素濃度ではオレンジ色、さらに酸素濃度が高い場合は青色等と、酸素濃度によって色を段階的に変化させることが可能であり、または、例えば酸素濃度の暴露時間が少ない場合は褐色、酸素濃度の暴露時間が長い場合は赤色等と、酸素暴露時間によって色を段階的に変化させることが可能である。
【0042】
本発明でいう酸化還元剤としてチアジン系、オキザリン系、ラクトン系、サルトン系、アゾ薬剤、インジゴイド系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系、フェナントロリン誘導体及びこれらの混合物等が挙げられ、より好ましくは、チアジン系、オキザリン系、ラクトン系、サルトン系、インジゴイド系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系及びこれらの混合物である。具体的には、インジゴテトラスルホン酸、ジフェニルアミン、ジフェニルベンジジン、ジフェニルアミンスルホン酸、フェロイン、ニトロフェロイン、メチルフェロイン、ジメチルフェロイン、メチレンブルー、ガロシアニン、メチルレッド、メチルバイオレッド、チモールブルー、アントシアニン、メチルイエロー、フェノールレッド、チモールフタレイン、アザリンイエロー、アントラキノン、サフラニン、フェノサフラニン、β−カロチン、リコピン、レソルフィン、チオニン、クレシルブルー、トルイジンブルー、メチルオレンジ、リトマス、ブロムチモールブルー、カルミン、フェノールフタレン、ブリリアントブルー、ファーストグリーン、インジゴカルミン、アミノブラック、1,10−フェナトロリン、1,7−フェナトロリン、5−フェニル−1,10−フェナトロリン及び4,7−ジメチル−1,10−フェナトロリン、N−フェニルアントラリン酸、ナイルブルー(スルファート)、ニュートラルレッド、ジフェニルアミン−4−スルホン酸、2,2’−ビピリジン、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール、3,3’−ジメチルナフチジン、N,N−ジメチル−1,4−フェニレン−ジアンモニウム、ジフェニルアミン、ジフェニルベンジジン等が挙げられる。好ましくはインジゴテトラスルホン酸、ジフェニルアミン、ジフェニルベンジジン、ジフェニルアミンスルホン酸、フェロイン、ニトロフェロイン、メチルフェロイン、ジメチルフェロイン、メチレンブルー、ガロシアニン、メチルレッド、メチルバイオレッド、チモールブルー、アントシアニン、メチルイエロー、フェノールレッド、チモールフタレイン、アザリンイエロー、サフラニン、フェノサフラニン、レソルフィン、チオニン、トルイジンブルー、メチルオレンジ、リトマス、ブロムチモールブルー、ブリリアントブルー、ファーストグリーン、インジゴカルミン、アミノブラック、2,6−ジクロロフェノールインドフェノールであり、より好ましくはインジゴテトラスルホン酸、ジフェニルアミンスルホン酸、フェロイン、ニトロフェロイン、メチルフェロイン、ジメチルフェロイン、メチレンブルー、メチルバイオレッド、チモールブルー、アントシアニン、フェノールレッド、チモールフタレイン、アザリンイエロー、サフラニン、フェノサフラニン、レソルフィン、チオニン、トルイジンブルー、メチルオレンジ、リトマス、ブロムチモールブルー、ブリリアントブルー、ファーストグリーン、インジゴカルミン、アミノブラック、2,6−ジクロロフェノールインドフェノールであり、さらに好ましくはインジゴテトラスルホン酸、ジフェニルアミンスルホン酸、フェロイン、ニトロフェロイン、メチルフェロイン、ジメチルフェロイン、メチレンブルー、チモールブルー、チモールフタレイン、サフラニン、フェノサフラニン、チオニン、トルイジンブルー、リトマス、ブロムチモールブルー、ブリリアントブルー、ファーストグリーン、2,6−ジクロロフェノールインドフェノールである。さらにより好ましくは食用色素であり、ブリリアントブルー、ファーストグリーン、インジゴカルミン、アミノブラック等が挙げられるのである。
【0043】
色素のインク溶液に対する添加量は、通常、溶媒に対する溶解性及び色差判別の観点より、好ましくは0.1〜5重量%で、より好ましくは0.3〜4重量%、さらに好ましくは0.3〜3重量%である。
【0044】
本発明に用いられる色素としての酸化還元剤がある特定の酸化還元電位を有する場合、酸化還元電位の異なる色素としての酸化還元剤を使用することにより、包装体内の酸素含有量を所望の濃度で検知することができるのである。本発明でいう酸化還元電位とは、後述のサイクリックボルタンメトリーにより測定された値を用いる。酸化還元電位が0.1V以上+0.7V以下の場合は、揮発性還元剤により色素としての酸化還元剤を還元状態にした場合、ごく少量の酸素によって色素としての酸化還元剤は即座に酸化状態に変化するため、ごく少量の酸素の有無を検知することが可能である。酸化還元電位が0.1V未満の場合は、酸素暴露による発色前の色を任意に着色できるため、酸素暴露による発色を視覚的に顕著にする効果を奏することができるのである。さらに、酸化還元電位が+0.7V以上の場合は、脱酸素剤等の酸素補足材料が包装体内にないような場合にも、酸素インジケーターとして使用できる他、酸化還元電位の値によっては、包装体内の酸素含有量を所望の濃度で検知することができるのであり、酸化還元電位の値によって所望の酸素含有量で変色する酸素検知用インク組成物の色素を達成することができるのである。
【0045】
本発明によるインク組成物は、pH調節剤、湿度保持剤、酵素、可塑剤、ワックス、酸素吸収剤及び/又は商用ラッカー等の、インク組成物及びインジケーターに汎用される添加剤をさらに含有することが可能である。pH調節剤は、還元性糖、アスコルビン酸及びクエン酸等の有機酸、並びにアスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、ジチオン酸塩、水酸化ナトリウム及び水酸化カルシウム等の無機塩基、鉄及び亜鉛等の金属粉、多くの鉄化合物等の金属塩であってもよい。湿度保持剤は、ポリエチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール及びエリスリトールであってもよい。酵素は、ラッカーゼ、グルコースオキシダーゼ及びペルオキシダーゼであってもよい。インク組成物及びインジケーターは、必要であれば、基質及び/又は酸素吸収剤を含有することもできる。適切な基質は、主に酵素を使用するときは、各酵素に対する通常の気質である。例えば、FI特許第94802号には可能な酸素吸収剤が記載されている。
【0046】
インク組成物は、酸化還元物質、還元剤及びポリマー材料を揮発性溶媒に溶解させた後で、揮発性還元剤をその混合物に添加することによって製造される。還元剤は、必要であれば色素を還元する。製造方法には、従来の色素製造/混合技術が用いられる。
【0047】
酸素インジケーターは、ドリッピング技術を用いてインク組成物を包装材に印刷し、インクを還元した揮発性還元剤、及び揮発性溶媒を除去することによって製造する。インジケーターの製造及び還元剤の除去は、無酸素条件、例えば真空、窒素、二酸化炭素及び/又はアルゴン雰囲気で行われる。還元剤及び溶媒は、通常蒸発によって除去される。密封された包装体が無酸素状態を維持するように、包装体を、印刷、すなわちインジケーターの付着とともに密封することができる。例えばインクジェット技術等のドリッピング技術に基づくか、又は例えば静電技術を用いる任意の印刷技術を用いて、インク組成物を印刷することができる。インジケーターは、製造され、好ましくは、連続的な圧電又は感熱インクジェット印刷に基づくインクジェット技術を用いて包装材に付着される。
【0048】
使用する包装材は、繊維、プラスチック及び/又はガラス系、及び/又は汎用される任意の他の包装材であってもよい。繊維系材料は、例えば、表面処理済み又は未処理の紙、厚紙、溶解繊維系フィルム材料、又は他のセルロース系若しくはポリアセテート系材料、例えば酢酸セルロース系材料であってもよい。プラスチック材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、他のポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、又は包装材料として汎用されている任意の他のプラスチック材料であってもよい。さらに、包装材料は、先述の包装材料、又は既知の他の包装材料からなる積層体又は他の複合材料から形成できる。包装材料としてコーティングすることもできる。
【0049】
PET、EVOH、PVDC又は再生セルロースの如き酸化剤に対してわずかに透過性、又は非透過性の材料で製造された遮蔽物に酸素インジケーターを付着させることによって、酸素インジケーターを酸素からさらに保護することができる。
【0050】
包装体に付着された酸素インジケーターは、包装体外部からの酸素に反応し、包装体の変化を色により示す。また、インジケーターは、包装体の破損により包装体に入り込んだ酸素に反応し、漏れを示す。可視光400〜780nmの波長領域、又は紫外線100〜400nmの波長領域で変色を検出することが可能である。
【0051】
インジケーターをバーコード識別子と併用すると、包装体の老化及び/又は破損により入り込んだ空気によって変色し、究極的には識別子が不活性化し、すなわち識別子の読取り及び/又は認識が不可能になる。これにより、例えば、店が老化又は破損した包装体を販売することが防止される。
【0052】
本発明は、ドリッピング技術により、高信頼性の不可逆的なインジケーターを包装体に付着させることを可能にする。本発明によるインク組成物/インジケーターは、プラスチック表面等の高光沢で非吸収性の表面に付着し、残留する。さらに、本発明によるインジケーターの利点は、保護ガスとして二酸化炭素を使用する包装体にも好適なことである。また、本発明によるインク組成物及びインジケーターの成分は安価である。
【0053】
本発明のインク組成物は、本発明の機能を用いられる分野であればいかなる分野でも使用できる。その用途分野として、食品分野、非食品分野、医療分野、金属分野(金属加工分野も含む)、電子機器分野(電子部品分野も含む)等の分野が挙げられ、インク組成物はその分野における包装、流通、保管、品質管理等に用いられ、例えば具体的には、食品分野の包装における酸素インジケーター等が挙げられる。
【0054】
以下に、実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0055】
(1)粘度測定
ブルックス社製粘度測定器DV−IIIを用いて30℃における各インク組成物の粘度を測定した。
【0056】
(2)酸素透過度
ASTM−D−3985に準拠して測定を行った。MOCON社製酸素透過率測定装置OX−TRANを使用し、コーティング面を酸素側にセットして20℃乾燥条件で測定を行った。測定サンプルは、表面処理38mN/mでコロナ処理を施したポリエチレンフィルム(PE:厚さ20μm)に、メイヤーバーを用い、インク組成物を塗工厚2.5μm(乾燥時)になるようにコーティングして作製した。
【0057】
(3)酸化還元電位測定
北斗電工株式会社製サイクリックボルタンメトリーHX−105(商品名)を用いて、各色素1重量%水溶液での酸化還元電位を測定した。測定は20℃環境下で銀/塩化銀電極を用いた。掃引速度は50mV/sで−0.5V〜1.5Vまで掃引した。酸化還元電位はピーク値を用い、数ヶ所に酸化還元電位があるものは低電流側の値を用いた。
【0058】
(4)包装体の調整
(4−1)本体:ポリプロピレン(PP)フィラー入りシート(500μm)に線状低密度ポリエチレン(LLDPE)/ナイロン(NY)/酢酸ビニル共重合体鹸化物(鹸化度)38%(EVOH)/NYの共押しフィルム(50μm)をドライラミネートしたフィルムを成形した包装体を用いた(容器大きさ:75mm×75mm×35mm)。
(4−2)トップシールフィルム:ポリエチレン(PE)フィルム(50μm)にLLDPE/NY/EVOH/NYの共押しフィルム(50μm)をドライラミネートしたフィルムを用い、PEフィルム面を内面とし、フィルムにコロナ処理を行った(コロナ処理:38mN/m)。
(4−3)包装方法:各インク組成物をSPECTRA社製インクジェット印刷機APOLLO−II(商品名)によりトップシールフィルムの内面(コロナ処理面)に印刷し、そのまま、真空ガス置換包装機DYNAPACK462(商品名)にて容器内を真空・ガス置換を行い、ヒートシールにて密封包装体を作製した。
【0059】
(5)密封用包装容器内空間の酸素及び二酸化炭素組成比率測定
PBI Dansensor社製コンビチェック(商品名)酸素及び二酸化炭素測定器を用いて20℃における密封用包装容器内空間の酸素及び二酸化炭素組成比率(重量%)を測定した。窒素濃度は100重量%から酸素濃度及び二酸化炭素濃度を差し引くことにより算出した。
【0060】
(6)発色時間測定
20℃に調整した部屋で30分毎に写真撮影し、各写真の色を比較して色変化がなくなったところを測定した。
【0061】
(7)耐光性測定
20℃に調整した部屋で蛍光灯を用いて600ルクスの状態にてサンプルを放置し、1日1回写真撮影し、各写真の色を比較して色があせてきたところを測定した。
【0062】
(8)インク組成物の調製方法
表1に示す色素及びバインダーを水及びアルコール混合溶媒に溶解し、溶解後、溶液を密封して還元剤を添加し、生成した混合物を撹拌した。還元剤添加前は色素は発色状態であるが、還元剤添加後、1日以内に還元し、無色のインク溶液となった。
【0063】
(9)使用樹脂及び試薬
ケトン樹脂:ケトン樹脂(シクロヘキサノンとホルムアルデヒド縮合物)Krumbhaar1717(商品名)
天然樹脂:岐阜シェラック社製天然樹脂(シェラック樹脂は樹脂酸及びアルコールのエステル化合物)白シェラックGBN−D(商品名)
ニトロセルロース樹脂:akzo Nobel社製ニトロセルロース樹脂
メチルセルロース樹脂:akzo Nobel社製メチルセルロース樹脂
還元糖:関東化学社製試薬D(+)−グルコース
その他化学物質は関東化学社製の化学物質を使用した。
【0064】
(実施例1〜11)
表1に記載された成分で、上記の方法にて調製したインク組成物をSPECTRA社製インクジェット印刷機のインクリザーブタンクに入れ、印刷機のプリンタヘッドを30℃に昇温してトップシールフィルムの包装体内面のPE面(コロナ処理面)に印刷し、その印刷したフィルムをトップシールフィルムとして用い、真空ガス置換包装機DYNAPACK462にて容器内をそのまま真空・ガス置換を行い、ヒートシールにて密封包装体を作製した。インク組成物及びサンプル作製条件は表1に記載する。実施例1〜10はいずれも印刷状態、耐光性が良好であった。実施例11は粘度が高めであり、そのため、インクジェット印刷評価において、実用的には問題ないレベルではあるが少々斑があった。実施例11はインク溶液のpHが10〜11であるため、蛍光灯下での耐光性テストにおいて1週間以内で色があせてくる傾向があった。
【0065】
(比較例1)
US4526752特許に開示してあるインジケーターを作製した。表1に示している通り、比較例1はロイコ色素を還元(無色化)するには還元性アルカリ剤を用いてインク溶液のpHを10〜11に調節する必要があった。また、通常用いられるメチルセルロースを5重量%使用して作製したインク組成物では、インク溶液の粘度が300mPa・sとなった。この粘度領域では、ドリッピング技術であるピエゾ式インクジェット印刷は不可能(ノズルよりインク溶液が吐出しないため)であった。メチルセルロースを5重量%使用して作製したインク組成物でハンドコーティングをした場合、コロナ処理を施したポリエチレンプラスチックフィルムでは、均一な塗膜が得られなかった。
【0066】
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲により規定される発明の着想又は概念の範囲内で多くの変更が可能である。
【0067】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素としての酸化還元化合物と、還元剤としての揮発性剤と、バインダーとしてのポリマー材料と、揮発性溶媒とを含み、印刷に使用する際に3〜150mPa・sの粘度を有するインク組成物。
【請求項2】
印刷に使用する際に10〜40mPa・sの粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
バインダー濃度がインク組成物に対して10〜50重量%である請求項1に記載のインク組成物。
【請求項4】
バインダーの重量平均分子量が8000以下である請求項1に記載のインク組成物。
【請求項5】
バインダーが、ポリオール、ケトン樹脂、セルロース誘導体及びポリビニルピロリドンからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
バインダーがシクロヘキサノン系ケトン樹脂又はアセトフェノン系ケトン樹脂を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項7】
バインダーがケトン樹脂と、樹脂酸と、アルコール由来のエステル化合物との混合物を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項8】
樹脂酸がアレウリチン酸、ジャラール酸、又はラクシジャラール酸である請求項7に記載のインク組成物。
【請求項9】
揮発性還元剤が、アルコール、アンモニア、チオール、アルデヒド及び低分子アミンからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
揮発性還元剤がアンモニアである請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項11】
溶媒が、アルコール、ケトン、エステル及び水からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
色素としての酸化還元剤の酸化還元電位が0.1V以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項13】
色素としての酸化還元剤と、バインダーとしてのポリマー材料と、揮発性溶媒とを混合し、次いで還元性物質としての揮発性剤を、生成した混合物に添加し、色素を還元することを含む、インク組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜12までのいずれか一項に記載のインク組成物をドリップすることによって調製した酸素インジケーター。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のインク組成物をドリップし、次いで揮発性還元剤及び揮発性溶媒を除去することを含む、ドリッピング技術を用いた酸素インジケーターの製造方法。
【請求項16】
色変化により漏れ及び/又は酸素含有量の変化を示す、請求項14に記載の酸素インジケーター。

【公表番号】特表2009−504806(P2009−504806A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558386(P2007−558386)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【国際出願番号】PCT/JP2006/315982
【国際公開番号】WO2007/018301
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】