説明

インク貯蔵器として用いるエラストマー成分を有する多元繊維から形成された結合構造体

結合繊維貯蔵器、結合繊維貯蔵器を含むインクジェットプリンターカートリッジ及び結合繊維貯蔵器を含むインクジェットカートリッジを用いるインクジェットプリンターを開示する。結合繊維貯蔵器は3次元繊維構造体を包含し、3次元結合繊維構造体は空間をおいて離れた接触点で互いに結合した複数の繊維からなり、少なくとも一部の繊維は少なくとも1のエラストマー繊維成分を有する多元繊維である。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
この出願は、米国仮出願No.60/664,032号「エラストマー2元繊維及びそれから形成された結合構造体」(2005年3月22日出願)及び米国仮出願No.60/737,342号「エラストマー2元繊維から形成されたインク貯蔵器」(2005年11月16日出願)の優先権を主張し、引用によってその全体を編入する。
【0002】
背景技術
本発明は、一般的に多元(multicomponent)繊維及び結合繊維構造体(structure)の分野に関する。特に、本発明は、多成分エラストマー繊維からなる三次元自己支持性結合繊維構造体を指向する。更に、本発明はこのようなエラストマー繊維からなる3次元自己支持性結合繊維構造体で形成されたインク貯蔵器に関する。
【0003】
多元繊維は、典型的には融解紡糸技術(通常の融解紡糸、融解ブロー、スパンボンド(spun bond)及び他の融解紡糸法を含む)によって製造される。多元繊維は、サイドバイサイド構造、中心(centric)さや−コア構造、中心を外れた(acentric、例えば自己捲縮)さや−コア構造で製造され得る。これは連続フィラメント又はステープル形態及び/又はウエブ又はトウに集めて用い得る。単独で又は混合繊維システムの部分として製造できる。多元繊維は、各種の用途に用いることができ、織物及び不織布又は構造体及び結合(bonded)又は非結合構造体を含むがこれにに限られない。
【0004】
米国特許第5,607,766号、第5,620,641号、第5,633,082号、第6,103,181号、第6,330,883号、第6,814,911号及び第6,840,692号に記載されているように、その全体を引用によってここに導入するが、結合繊維構造体の多くの形態及び使用、同様に多くの製造方法がある。一般に、このような結合繊維構造体は、接触点で互いに結合した高度分散した繊維の相互連結ネットワークを包含する熱可塑性繊維材料のウエブで形成される。これらのウエブは実質的に自己支持性(self-sustaining)、三次元多孔性成分及び構造体に形成され、これらは各種の大きさ及び形で製造され得る。
【0005】
多元繊維から形成される多孔性、結合構造体は、この結合繊維構造体が各種処方の流体をとり及び制御可能に解放することを示したので、流体貯蔵及び流体取扱い用途に優れた利点を示した。これらの構造体の典型的な用途は、筆記具のニブ、筆記具及び/又はインクジェットプリンターカートリッジ用のインク貯蔵器、広範囲の器具及び用途用のウイックス(wicks)、デプスフィルター、及びこれらの構造体の特性が有利である他の用途が含まれれ得る。結合繊維構造体の有利な特性の多くは、これらの構造体が形成される繊維に用いられる材料から生じる。
【0006】
上述の特許は、3次元結合構造体に用いる繊維を形成するのに用い得る広範囲の重合体材料を記載している。然し、これらの構造体は、弾性(resiliency)、又は貫通性(penetrability)が求められる一定の用途には適しないことが多い。更に、これらの構造体が各種処方の流体をとり、各種環境条件下で液体を保持し、及びこれらの液体を制御下に放出する能力は望ましくないことが多い。更に、所望の流体貯蔵及び取扱い特性を示す弾性結合繊維構造体を必要とする。
【0007】
これらの特性はインクジェットプリンターに望ましい。インクジェットプリンターはカートリッジ内に備えたインクジェットプリントヘッドを用いることが多い。カートリッジは媒体(即ち、紙)を越えて動くので、インクジェットプリントヘッドはインク貯蔵器からインクを引出し、かつインクを媒体(即ち、手紙の形態で)上に適当に沈積する。インク貯蔵器は典型的にはインクジェットプリンターカートリッジに含まれる。インクジェットプリンターカートリッジは一般的にインク貯蔵器を包む。インクジェットプリンターカートリッジはプリントヘッドに近接したカートリッジに配置されるか、又はインクジェットプリンター内のどこかに配置でき、かつプリンターヘッドにインキを送り得る。
【0008】
各種の材料がインク貯蔵器に用い得る。典型的材料は開放セルフォーム、及びフエルトのような繊維状構造体を含む。インク貯蔵器用の材料の選定に当たって、数種の特性が考慮される。これらの特性は主として材料の流体取扱い品質を取巻く。例えば、毛細管強度、表面エネルギー、多孔性、リーク抵抗、破片又は抽出物をインク内に移す抵抗性、集合の容易性、及びインク抽出が検討される。
【0009】
然しながら、これらの品質も各種の検査条件で検討される。例えば、インクジェットカートリッジは輸送中に生じ得る大気圧変化の間に漏れてはならない。更に、インクジェットプリンターカートリッジは、インクジェットプリンターカートリッジが偶然に落下したような衝撃において漏れてはならない。最後に、インクジェットプリンタカートリッジは、カートリッジに使用不能なインクを残したままにするよりできるだけ多くのインクをプリントヘッドに移送しなければならない。
【0010】
従って、各種環境条件下でインクを保留し、インク貯蔵器からインクが容易に抽出されるようにし、かつ高い割合のインクの抽出を許容するインク貯蔵器で使用する材料を見出すことが望ましい。
【0011】
発明の概要
本発明の観点は、結合繊維インク貯蔵器、結合繊維貯蔵器を含むインクジェットプリンターカートリッジ、及び結合繊維貯蔵器を含むインクジェットカートリッジを用いるインクジェットプリンターを含む。結合繊維貯蔵器は、3次元繊維構造体が空間を空けて離れた接触点で互いに結合した、少なくとも繊維の一部は少なくとも1のエラストマー繊維成分を有する多元繊維である、複数の繊維を包含するて3次元結合繊維構造体を包含し得る。
【0012】
上記の一般的説明及び次の詳細な説明は例示的な説明のみであり、請求された発明を制限するものではないことは理解すべきである。添付する図面は明細書の一部を構成し、発明の一定の態様を説明し、詳細な説明と共に、本発明の原則を説明するのに役立つ。
【0013】
図面の簡単な説明
本発明の理解を助けるために、添付図面を参照する。同一の参照符号は同一の要素を参照する。図面は例示のみであり、本発明を限定するものと解すべきではない。
【0014】
図1は、本発明の若干の態様によるインクジェットカートリッジの等角図である。
【0015】
図2は、本発明の若干の態様による集合したインクジェットカートリッジの断面図である。
【0016】
図3は、本発明の若干の態様による3次元自己支持性結合繊維構造体の形成に用いた中心的さや-コア多元繊維の断面図である。
【0017】
図4は、本発明の若干の態様による3次元自己支持性結合繊維構造体の形成に用いた中心を外れたさや-コア多元繊維の断面図である。
【0018】
図5は、本発明の若干の態様による3次元自己支持性結合繊維構造体の形成に用いたサイドバイサイド多元繊維の断面図である。
【0019】
図6は、本発明の若干の態様による3次元自己支持性結合繊維構造体の形成に用いた多元繊維の断面図である。
【0020】
図7は、本発明の若干の態様による3次元自己支持性結合繊維構造体の形成に用いた多元繊維の断面図である。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明の態様は、弾性(resilient)結合繊維構造体を形成するように用い得る1以上のエラストマー成分を有する多元(multicomponent)繊維を提供する。ここで用いる「多元繊維」の語は、異なる特性及び/又は異なる化学的性質を有する重合体材料から一体に形成された2以上の別個の成分を有する繊維をいう。ここで用いる「二元繊維」の語は、異なる特性及び/又は異なる化学的性質を有する重合体材料から一体に形成された2の別個の成分を有する繊維をいう。二元繊維の他の形態は可能であるが、最も普通には2重合体成分の間が「side by side」又は「さや(seath)−コア」関係である。例えば、1重合体のコア及び異なる重合体の皮膜又はさやを包含する二元繊維は多くの応用について特に望ましい。コア材料はかさ高くかつ強度のある繊維を提供して相対的に廉価であるが、より高価であるが独特のさや材料の相対的に薄い外部成分は、特に結合に関して独特の特性を有する繊維を提供するからである。
【0022】
ここで用いるように、「エラストマー成分多元繊維」又は「ECM繊維」は、エラストマー材料を包含する少なくとも1の成分を有する多元繊維を意味する。「エラストマー成分二元繊維」の語は、エラストマー物質を包含する少なくとも1成分を有する二元繊維を意味する。ここで用いる「エラストマー材料」の語は、実質的な変形及び応力の開放の後に初期の寸法及び形態に迅速に戻る高分子材料をいう。
【0023】
ここで用いられるように、「流体(fluid)」の語は、分子が自由に互いに通過する物質を意味し、液体又は気体を含むが、それに限られない。ここで用いる「流体」の語は、多相でもあり得、及び液体又は気体に懸濁した粒子物をも含む。
【0024】
本発明の態様を詳細に説明する。例は添付した図面に示されている。
【0025】
3次元自己支持性結合繊維構造体の特定の応用はインクジェット貯蔵器である。ECM繊維からなるインクジェット貯蔵器は、数種の有利な特性を示す。例えば、本発明の態様による貯蔵器を用いるインクジェットカートリッジは漏洩抵抗性であることが示され、カートリッジから予想外に高度のインク放出を示した。テストデータは、ECM繊維から作った貯蔵器は広範囲のインク処方に用い得ることを示した。更に、用いられたECM繊維の特別の化学は、仕上げを含んで、用いられる特定のインク処方に対応する特定の表面エネルギ-を提供するように適合できる。
【0026】
結合ECM繊維からなるインク貯蔵器は、弾性で圧縮固定を取るのに抵抗性であり、及び従ってインクジェットカートリッジの内部構造に高度適合性をの有する材料を提供できる。この増大する適合性は貯蔵器がカートリッジ内部の他のインク導管との接触を維持することを許容する。他の要素との接触を厳しい環境条件下で維持すること(例えば、熱衝撃、物理的衝撃又は振動、プリンターからカートリッジの繰返しの除去及び荷重、等)はカートリッジの失敗の可能性を減少する。
【0027】
本発明の若干の態様による結合ECM繊維からなるインク貯蔵器は容易な再充填を助ける特性をも示すことができる。例えば、結合繊維構造体は大きい充填針で挿入でき、かつ針を抜いたときに再封できる。これは、標準、非-弾性繊維ベースの貯蔵器で通常達成されるより迅速充填を容易にし得る。
【0028】
図1及び2を参照して、本発明の若干の態様によるインクジェットプリンターカートリッジ10をここで説明する。インクジェットプリンターカートリッジ10は、一般にハウジング100及び貯蔵器200からなり得る。
【0029】
インクハウジング100及び関連する貯蔵器は、一般的に形は方形で、典型的には全ての角が90度角であり得る。カートリッジの大きさは典型的に5ミリメータ未満から100ミリメータの範囲に亘り得る。一連のデザイン配慮が用いられ、6以上の貯蔵器を保持できるカートリッジのデザイン、典型的なインクジェットプリンターデザインに適合するものを含み得る。非-方形型も用い得る。この場合、貯蔵器はそれに応じた形になる。
【0030】
ハウジング100は、空気ベント110、流体出口120、及び隔離又は隔壁130を包含し得る。空気ベント110は一般にハウジング100の上表面に配置され、空気をハウジング100内に通気することを許容し、それによってハウジング100の外にインクが流れるのを許容する。空所111が空気ベント110の近くに存在し、環境条件によって貯蔵器200から流出し得るインクを含むために用い得る。更に、空気ベント110は、一定のタイプのインクジェットプリンターカートリッジにおいて、集合の間にインクジェットプリンターカートリッジにインクを充填するために用い得る。
【0031】
流体出口120はハウジング100の底におくことができる。流体出口は、プリンターヘッド又はハウジング100からインクを引き出す他の装置と接触できる。出口は貯蔵器200から増加した毛細管強度を介してインクを引出し得る。隔離又は隔壁130は肩部又は他のハウジングと一体のデテントであり得、特定の位置で貯蔵器を保持できる。
【0032】
貯蔵器200は、ECM繊維210で形成された多孔性、3次元、自己支持性結合繊維構造体からなり得る。結合繊維構造体貯蔵器200は、プリントヘッドポンプ又はより高い毛細管圧ウイックによって貯蔵器から引かれるまで貯蔵器内にインクを保持する一定の毛細管圧を有し得る。更に、インク貯蔵器200は機械的衝撃又は大気圧の変化の結果としての漏洩を抑制するに十分の毛細管圧を有するように設計できる。
【0033】
結合繊維インク貯蔵器200はハウジング100に適した大きさに切断できる。この寸法は、ハウジング100の貯蔵器200の圧力ばめを確保するため、僅かに大きめのサイズであり得る。貯蔵器200を包含するECM繊維210のネットワークはECM繊維の毛細管特性を通して各種処方のインクを保持しかつ貯蔵する。
【0034】
ECM繊維及びECM繊維から構成された3次元自己支持性結合繊維構造体の製造方法は、代理人のドケット番号61633,001139として2006年3月14日に出願され、出願番号____の代理人の係属出願に詳細に記載されており、ここに引用して全体を挿入する。
【0035】
本発明の若干の態様に用い得るECM繊維は、(i)さやがエラストマー材料からなり、かつコアが非エラストマー材料からなるさや−コア多元繊維;(ii)さや及びコアの両者がエラストマー材料からなり、さや材料の物理的及び/又は熱的特性とは異なるコア材料を伴ったさや−コア多元繊維;(iii)一成分がエラストマー物質からなる融解ブローサイドバイサイド二元繊維;(iv)両成分がエラストマー材料からなり、かつ一成分が他とは異なる物理的及び/又は熱的特性を有する融解ブローサイドバイサイド二元繊維を含む。
【0036】
図3〜7に関して、本発明によるECM繊維の態様の各種の例を詳細に説明する。
【0037】
図3は、本発明の例示的なECM繊維を説明する。この態様では、繊維は、さや成分が熱可塑性エラストマーを包含するさや成分320によって取巻かれたコア成分310を有するさや−コア二元繊維300として形成される。さや成分320としてエラストマーの使用は、エラストマー材料は一般に互いに及び他の繊維材料と容易に接合するので特に有利である。接合したとき、さや−コア二元繊維ECM繊維300のコア成分310は繊維に強度と安定性を与えるが、エラストマーさや成分320は結合した他の繊維に対して伸張をさやーコア二元ECM繊維300に許容し得る。この伸張できる結合は、通常のさや−コア繊維を用いては達成できない結合構造に弾性を提供できる。
【0038】
本発明のECM繊維のさや−コアの割合は、特定の材料、繊維の利用、及び製造方法によって調製できる。典型的なさや対コア容積比は10:90〜90:10の範囲であり得る。特定の態様ではさや対コア容積比は25:75〜40:60の範囲である。
【0039】
続いて図3に関して、さや−コア二元ECM繊維300は同中心のさや−コア繊維である。即ち、さや及びコアは同心円断面積を有する。本発明の他のECM繊維は図4に示された中心を外れたさや−コアECM繊維400で例示される中心を外れたさやコア繊維として形成され得る。中心を外れたさや−コアECM繊維400は、エラストマー材料を包含するさや成分420及びコア成分410を有する。この繊維では、さや及びコア成分は実質的に断面積が円形であるがオフセット中心であり得る。この中心を外れた図形は、高く、かさ高く、かつより弾性なウエブの製造を容易にする自己捲縮繊維を製造するのに用い得る。
【0040】
本発明による融解ブローECM繊維も、図5に示されたサイドバイサイドECM繊維500に例示される、サイドバイサイド配置に形成され得る。さや−コア二元ECM繊維300のように、サイドバイサイドECM繊維500はエラストマーを包含する第1成分及び第2成分530を有する。サイドバイサイド配置は、エラストマー成分510に表面の少なくとも一部が他の繊維との結合に露出されることを確保する。
【0041】
本発明のECM繊維は二元繊維に限られない。例えば、図6は本発明による多元ECM繊維600を説明する。これは3成分610、620、630を有し、その1以上はエラストマー材料を包含し得る。
【0042】
ECMさやーコア繊維は2成分以上でも製造できる。図7に関連して、多元ECM繊維700はエラストマー材料を包含するさや成分730、中間成分720、及びコア成分710を包含できる。類似の繊維は中心を外れた配置で製造できる。
【0043】
さや−コアECM繊維300、400、700のコア成分310、410、710、サイドバイサイドECM繊維500の第2成分510及びサイドバイサイドECM繊維600の第2及び第3成分620、630は、非弾性であるか又は第1繊維成分320、420、530、620、630及び730のエラストマー材料とは異なる材料及び/又は熱的特性を有するエラストマー材料を包含し得る。若干の態様ではコア成分310、410、710及びサイドバイサイド成分530、620、630は結晶性又は半結晶性重合体を包含できる。このような重合体は、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン及びナイロン6及びナイロン66のようなポリアミドを含み得るが、これに限られるものではない。
【0044】
本発明のECM繊維の各種エラストマー成分は、適当なエラストマー材料を包含し得る。適当な熱可塑性エラストマーは、ポリウレタン、ポリエステル共重合体、スチレン共重合体、オレフィン共重合体、又はこれらの物質の任意の組合せを含み得るが、それに限られるものではない。より詳しくは、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ウレア、エラストマー又はプラストマーポリプロピレン、スチレン−ブチレン共重合体、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、ブタジエン−アクリロニトリル、エラストマーブロックオレフィン共重合体(例えばスチレン−イソプレン−スチレン)、エラストマーブロックコ−ポリエーテルポリアミド、エラストマーブロックコポリエステル、及びエラストマーシリコーンが用い得る。
【0045】
これらのエラストマー材料のうちで、熱可塑性ポリウレタンは結合繊維構造体に用いるECM繊維を製造するのに特に適していることが示された。ここで用いる「熱可塑性ポリウレタン」又は「TPU」の語は、硬いセグメントが芳香族又は脂肪族及び軟らかいセグメントが線状ポリエーテル又はポリエステルである、軟らかい又は硬いセグメントからなる線状セグメントブロック重合体を包含する。TPUを定義する化学品はジイソシアネートで、単鎖ジオールと反応して線状ハード重合体ブロックを形成する。芳香族ハードセグメントは、通常は芳香族ジイソシアネートに基づき、最も一般的にはMDI(4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート)である。脂肪族ハードセグメントブロックは、通常は脂肪族ジイソシアネートに基づき、最も一般的には水素化MDI(H12MDI)である。一般に用いられる線状ポリエーテルソフトセグメントブロックはポリ(ブチレンオキサイド)ジオール、ポリ(エチレンオキサイド)ジオール、及びポリ(プロピレンオキサイド)ジオール又は異なるグリコールの反応生成物を含む。一般に用いられる線状ポリエステルソフトセグメントは、アジピン酸と短い炭素鎖グリコールとのポリ縮合生成物を含む。ポリカプロラクトンも用い得る。熱可塑性ポリウレタンは、DuPont(R)、Bayer(R)、Dow(R)、Noveon(R)、及びBASF(R)のような供給者から商業的に入手できる。
【0046】
ECM繊維に用いるために選択される特定のエラストマー材料は、紡糸能、結合能、繊維で形成される結合繊維構造体に求められる弾性の程度、結合繊維構造体の使用に関連する他の特性を含む各種の因子に左右され得る。特定のエラストマー材料は、例えば、相対的疎水性又は親水性に基づいて、又は流体又は結合繊維構造体と相互作用することが期待される他の材料との親和性に基づいて選び得る。
【0047】
上述のECM繊維態様300、400、500、600、700、のいずれかについて、製造工程を通じて繊維の統一性を維持するように注意しなければならない。本発明のECM繊維は、継続中の米国特許出願第___、2006年3月14日出願、代理人ドケット番号61633.001139号に詳述されている数方法のいずれかを用いて製造できる。然し、製造方法に拘らず、特定の処理因子を実行可能な繊維が製造されることを確保するために特定の材料に合せなければならない。さや−コアECM繊維では、例えば、処理因子は、コアの完全な覆いを確保し及びさやがコアに付着したままであるように確保するように適合しなければならない。
【0048】
ECM繊維及び結合繊維貯蔵器に本発明の範囲から逸脱することなく変形及び修正を加えることができる。例えば、米国特許第6,814,911号に記載されているように、繊維、繊維ウエブ及びそれから形成された製品は、繊維ウエブへの製造中での添加物の配合が必要であるか又はそれによって向上される。従って、界面活性剤又は特定の濃度における他の化学剤をインク貯蔵器又はインクジェットプリンターカートリッジの形成に用いるECM繊維及び/又はECM繊維ウエブに添加できる。これらの添加物はECM繊維の表面特性を変性して吸収性及び/又は特定のインク処方との適合性を向上させ得る。同様に、特定のものをECM繊維又はECM繊維ウェブに一定の特性(例えば、吸収性の向上)を生じるために付着し得る。
【0049】
更に、ECM繊維を包含する2方式ウエブを形成できる。このような2方式ウエブを形成する方法は、米国特許第6,103,181号に記載されている。2方式ウエブは、異なるタイプ、材料及び/又は配置の繊維の組合せから形成したウエブである。例えば、第一繊維タイプはさや材料がエラストマーであり及びコアが非エラストマーであるさや−コア二元ECM繊維であり、かつ第二繊維タイプはエラストマー性又は非エラストマー性一元繊維であり得る。若干の態様では、ウエブは、コア材料がエラストマーで及びさやが非エラストマーであり得る第一さや−コア二元ECM繊維、及びさや−コア二元ECM繊維のコアと同一のエラストマーから形成された一元繊維であり得る第二繊維タイプを包含し得る。若干の態様では、繊維状ウエブは、ECM繊維及びエラストマー性分を含まない多元繊維から交互に形成され得る。これらの変形からの2方式繊維コレクションが、一タイプの繊維が互いに及び他のタイプの繊維と結合する結合ウエブを形成するのに用いられ得る。
【0050】
結合ECM繊維構造体を形成するのに用いられたECM繊維は、個別フィラメント、連続フィラメント、フィラメントトウ、ステープル繊維のロービング、又は軽く結合した又は機械的にもつれたウエブ又は不織ステープルファイバーの形式であり得る。ECM繊維は、機械的に捲縮させるか又は連続形成工程中に自己捲縮(例えば、繊維を延伸及び次いで緩和するによって)が生じ得る。更に、若干の態様では、ECM繊維から形成された実質的に自己支持性ウエブは、後延伸して機械方向に沿ってより弾性的な捲縮を形成し得る。付加的捲縮は、高く、かさ高く、かつより弾性的な基体を生じるのに役立つ。
【0051】
試験方法
本発明によるインク貯蔵器の若干の態様のインク漏洩及びインク抽出特性を次の試験方法によって定める:
漏洩試験方法
1.結合ECM繊維貯蔵器をインクジェットプリンターカートリッジ内におき、かつ貯蔵器に13.5gのインクを入れた。30分間放置してカートリッジにインクを平衡させた。
【0052】
2.カートリッジにインクを平衡させた後、次いでカートリッジの各面から約1メータの高さから硬い表面にカートリッジ当り全部で6滴を落とした。次いでカートリッジは漏洩をチェックした。貯蔵器及びカートリッジからのインクの損失は失敗と評価した。
【0053】
3.カートリッジが漏洩落下試験を通過した場合、カートリッジは次いで真空漏洩試験に付した。カートリッジをカートリッジの上部を下側に面しておき、次の手順で漏洩を試験した。
【0054】
a.真空室内の真空を1分以上0.0から9.5Hgに上昇した。この真空圧は2秒間保った。
【0055】
b.次いで真空室内の真空は1分間以上9.5から12.5Hgに上げた。この圧力は2分間保った。
【0056】
4.真空室の真空を解放し、カートリッジを真空室から移動し、漏洩の証拠をチェックした。カートリッジからインクの目に見えるインクの損失は失敗と評価した。
【0057】
インク抽出試験方法
1.結合ECM繊維貯蔵器をインクジェットプリンターカートリッジにおき、13.5gのインクを貯蔵器に入れた。30分間インクを放置してカートリッジを平衡にした。
【0058】
2.カートリッジにインクを平衡させた後、カートリッジの当初質量を記録した。
【0059】
3.次いでカートリッジをインク抽出装置内におき、かつ、インクを次のように抽出した。
【0060】
a.インクを全部で4mLが抽出されるまで、2mL/分の速度で抽出した。
【0061】
b.次いで1mL/分の速度で累積総量5mLが抽出されるまでインクを抽出した。
【0062】
c.次いで0.5mL/分の速度で累積総量5.5mLが抽出されるまでインクを抽出した。
【0063】
d.次いで0.25mL/分の速度でバック圧力8in.H2Oに達するまでインクを抽出した。
【0064】
4.インクをカートリッジから抽出した後、カートリッジの最終質量を記録した。最終質量と当初質量との差を用いて、カートリッジ及び貯蔵器の抽出効率を決定した。
【実施例】
【0065】
1) 融解ブロー熱可塑性ポリウレタン(TPU)/ポリプロピレン(PP)さや−コア繊維で作ったインクジェットプリンター貯蔵器
融解ブローさや−コア二元ECM繊維を、さや材料として熱可塑性ポリウレタン(TPU)(Noveon(R)Estane(R)74280)及びコア材料としてポリプロピレン(PP)(Atofina(R)PP3860X、100融解フロー速度(「MFR」))を用いて形成した。TPUは当初60℃で4時間乾燥した。さや及びコア樹脂は168℃のダイチップで180°−245℃の温度で融解ブローした。TPUさや材料対PPコア材料の比は容量で約30:70であった。生成するウエブは良好なかさ及び軟らかさを示した。生成したウエブはスチーム形成ダイ及び冷却した形成ダイを通過させ、所望の長さに切断して方形ロッドを形成した。生成結合繊維構造体は次いでインクジェットプリンターカートリッジに挿入し、インクを満たし、インク抽出及び漏洩抵抗性について試験した。試験方法は、上記のとおりである。マトリックス評価繊維サイズは一般化した。(表1)表1の結果を検討すると、本発明によるTPU−ベースのインク貯蔵器の若干の態様は70%を十分に越えるインク抽出パフォーマンスを提供することを示す。
【0066】
2) 融解ブローエラストマーポリプロピレン(EPP)/ポリプロピレン(PP)さや−コア繊維で作ったインクジェットプリンター貯蔵器
融解ブローさや−コア二元ECM繊維を、さや材料としてエラストマーポリプロピレン(EPP)材料(ExxonMobil(R)Vistamaxx(R)2330)及びコア材料としてPP材料(Atofina(R)PP3860X)を用いて形成した。さや対コアの比は容量で約30:70であった。このさや及びコア樹脂を、277℃のダイチップで200〜290℃の範囲の温度で融解ブローした。約9ミクロンの大きさの繊維が得られた。生成ウエブは良好なかさ及び軟らかさを示した。生成するウエブは次いでスチーム形成ダイを通過させ、方形ロッドを形成して所望の長さに切断した。生成結合繊維構造体を次いでインクジェットプリンターカートリッジに挿入し、インクを満たし、かつインク抽出及び漏洩抵抗を試験した。試験手順は上述した。
【表1】

【0067】
表2は、ECM繊維マトリックスに吸収される一定の表面張力(ν)のインクに必要とする時間量を示して、相対的インク吸収データを示す。一連の表面張力のインクに対する値は、非−ECM繊維マトリックス(ポリエステルさやのさや−コア二元繊維)、疎水性TPUさや材料を伴うさやーコア二元ECM繊維、及び親水性TPUさや材料を伴うさやーコア二元ECM繊維に吸収を提供した。
【表2】

【0068】
*「インク滴」は繊維マトリックスの切断端へのインクの滴の吸収の速度である。小さい値は速い吸収を意味する。
【0069】
当業者には、本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、本発明の方法、製造、配置、及び/又は使用に各種の変型及び変形を行い得ることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の若干の態様によるインクジェットカートリッジの等角図。
【図2】本発明の若干の態様による集合インクジェットカートリッジの断面図。
【図3】本発明の若干の態様による3次元自己支持性結合繊維構造体の形成に用いた中心的さや-コア多元繊維の断面図。
【図4】本発明の若干の態様による3次元自己支持性結合繊維構造体の形成に用いた中心を外れたさや-コア多元繊維の断面図。
【図5】本発明の若干の態様による3次元自己支持性結合繊維構造体の形成に用いたサイドバイサイド多元繊維の断面図。
【図6】本発明の若干の態様による3次元自己支持性結合繊維構造体の形成に用いた多元繊維の断面図。
【図7】本発明の若干の態様による3次元自己支持性結合繊維構造体の形成に用いた多元繊維の断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元結合繊維構造体を包含するインク貯蔵器であって、3次元結合繊維構造体は空間をおいて離れた接触点で互いに結合した複数の繊維を包含し、繊維の少なくとも一部は少なくとも1のエラストマー繊維成分を有する多元繊維であるインキ貯蔵器。
【請求項2】
少なくとも1のエラストマー繊維成分は熱可塑性ポリウレタンを包含する請求項1に記載のインク貯蔵器。
【請求項3】
少なくとも1のエラストマー繊維成分は、エラストマー及びプラストマーポリプロピレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、ブタジエン−アクリロニトリル、エラストマーブロックオレフィン共重合体、エラストマーブロックコポリエーテルポリアミド、エラストマーブロックコポリエステル、ポリ(エーテル−ウレタン−ウレア)、ポリ(エステル−ウレタン−ウレア)、及びエラストマーシリコーンからなる群から選ばれる材料を包含する請求項1に記載のインク貯蔵器。
【請求項4】
多元繊維が熱可塑性重合体コア材料;及び
コア材料を取巻くエラストマー重合体さや材料
を包含する多元繊維である請求項1に記載のインク貯蔵器。
【請求項5】
エラストマー重合体さや材料が熱可塑性ポリウレタンを包含する請求項4に記載のインク貯蔵器。
【請求項6】
熱可塑性コア材料がエラストマー重合体さや材料とは異なる第2のエラストマー材料を包含する請求項4に記載のインク貯蔵器。
【請求項7】
熱可塑性コア材料がポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる請求項4に記載のインク貯蔵器。
【請求項8】
多元繊維が融解ブローサイドバイサイド二元繊維である請求項1に記載のインク貯蔵器。
【請求項9】
三次元結合繊維構造体は、構造体が構造一体性を保持しながら少なくとも200%延伸できる少なくとも1の元を有する請求項1に記載のインク貯蔵器。
【請求項10】
繊維が約1ミクロン〜約200ミクロンの範囲内の直径を有する請求項1に記載のインク貯蔵器。
【請求項11】
繊維が約1ミクロン〜約25ミクロンの範囲内の直径を有する請求項1に記載のインク貯蔵器。
【請求項12】
繊維が、少なくとも部分的に、特定のインク処方と適合できるように選ばれた材料を包含する請求項1に記載のインク貯蔵器。
【請求項13】
結合繊維構造体が特定のインク処方を取上げ、保持し、管制可能な放出をするに適した請求項1に記載のインク貯蔵器。
【請求項14】
貯蔵器空間を定めるハウジング及び
貯蔵器空間内に配置された貯蔵器を包含するものであって、
貯蔵器は3次元結合繊維構造体を包含し、3次元結合繊維構造体は空間をおいて離れた接触点で互いに結合した複数の繊維を包含し、繊維の少なくとも一部は少なくとも1のエラストマー繊維成分を有する多元繊維である、
インクジェットプリンターカートリッジ。
【請求項15】
少なくとも1のエラストマー繊維成分が熱可塑性ポリウレタンを包含する請求項14に記載のインクジェットプリンターカートリッジ。
【請求項16】
少なくとも1のエラストマー繊維成分が、エラストマー及びプラストマーポリプロピレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、ブタジエン−アクリロニトリル、エラストマーブロックオレフィン共重合体、エラストマーブロックコポリエーテルポリアミド、エラストマーブロックコポリエステル、ポリ(エーテル−ウレタン−ウレア)、ポリ(エステル−ウレタン−ウレア)、及びエラストマーシリコーンからなる群から選ばれた材料を包含する請求項14に記載のインクジェットカートリッジ。
【請求項17】
多元繊維が熱可塑性重合体コア材料及び
コア材料を取巻くエラストマー重合体さや材料を
包含する多元繊維である請求項14に記載のインクジェットプリンターカートリッジ。
【請求項18】
エラストマー重合体さや材料が熱可塑性ポリウレタンを包含する請求項17に記載のインクジェットプリンターカートリッジ。
【請求項19】
熱可塑性コア材料がエラストマー重合体さや材料とは異なる第2のエラストマー材料を包含する請求項17に記載のインクジェットプリンターカートリッジ。
【請求項20】
熱可塑性コア材料がポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる請求項17に記載のインクジェットプリンターカートリッジ。
【請求項21】
多元繊維が融解ブローサイドバイサイド二元繊維である請求項14に記載のインクジェットプリンターカートリッジ。
【請求項22】
3次元結合繊維構造体は、構造体が構造一体性を保持しながら少なくとも200%延伸できる少なくとも1元を有する請求項14に記載のインクジェットプリンターカートリッジ。
【請求項23】
繊維が約1ミクロン〜約200ミクロンの範囲の直径を有する請求項14に記載のインクジェットプリンターカートリッジ。
【請求項24】
繊維が約1ミクロン〜約25ミクロンの範囲の直径を有する請求項14に記載のインクジェットプリンターカートリッジ。
【請求項25】
繊維が、少なくとも部分的に、特定のインク処方との両立性で選ばれる材料を包含する請求項14に記載のインクジェットプリンターカートリッジ。
【請求項26】
結合繊維構造体が特定のインク処方を取上げ、保持し、及び制御可能な放出をするに適している請求項14に記載のインクジェットプリンターカートリッジ。
【請求項27】
運搬具、
運搬具にのせたプリントヘッド及び
インクジェットプリンターカートリッジがプリントヘッドにインクを供給するように、プリントヘッドと連関したインクジェットプリンターカートリッジを包含するインクジェットプリンターにおいて、
インクジェットプリンターカートリッジは空間をおいて離れた接触点で互いに結合した複数の繊維で形成され、繊維の少なくとも一部は少なくとも一部は少なくとも1のエラストマー繊維成分を有する多元繊維であるインク貯蔵器を包含するインクジェットプリンター。
【請求項28】
多元繊維が熱可塑性重合体コア材料及びエラストマー重合体さや材料を包含する多元繊維である請求項27に記載のインクジェットプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−535685(P2008−535685A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503055(P2008−503055)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/009825
【国際公開番号】WO2006/102136
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507310341)フィルトロナ・リッチモンド・インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】