説明

インサイテュで創傷を洗浄するための装置

【課題】創傷治癒に有害である物質を除去し得るとともに、創傷治癒の促進に有益である物質を創傷底に対して接触させた状態に保持し得るような、治療システムの提供。
【解決手段】創傷を洗浄するための洗浄装置であって、変形可能な創傷ドレッシングを具備し、このドレッシングが、裏張層(3)を具備し、この裏張層が、創傷上において、比較的流体密封的な封止部あるいは閉鎖部を形成し得るものとされ、ドレッシングが、このドレッシングの内部に配置されたフィルタを有した洗浄手段(4)を具備し、ドレッシングが、洗浄手段を通して流体を移動させるための駆動デバイス(7)を具備している。好ましくは、裏張層を貫通する通路が設けられ、フィルタが、通路の起点部分のところに位置している。好ましくは、フィルタは、疎水性材料から形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷を洗浄するための装置および医療用創傷ドレッシングに関するものであり、また、そのような装置を使用して、創傷を処置するための方法に関するものである。
【0002】
本発明は、特に、広範囲の創傷、とりわけ慢性的創傷に容易に適用することができ、それらの創傷を創傷治癒に有害である物質から洗浄し得るとともに、とりわけ創傷治癒に有益であるような物質を保持し得るような、そのような装置や、創傷ドレッシングや、方法、に関するものである。
【背景技術】
【0003】
この発明以前には、吸引および/または灌注用装置が知られており、また、創傷治療の間に創傷滲出物を除去するために使用される傾向にあった。このような創傷治療についての公知の形態では、創傷からの排出物は、とりわけ強滲出状態にあるときには、廃棄のために例えば捕集バッグへ放出される。
【0004】
創傷治癒に有害である物質はこのようにして除去される。しかしながら、創傷からの滲出物の成長因子、細胞基質成分、および他の生理活性成分のような創傷治癒の促進に有益である物質は、そのような治療が適用されたときに、最も有益である可能性のある部位、すなわち創傷底へ失われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】仏国特許出願公開第1163907号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19844355号明細書
【特許文献3】国際公開第00/07653号
【特許文献4】国際公開第02/092783号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような公知の形態の創傷ドレッシングと吸引および/または灌注治療システムとによって、身体自体の組織治癒処理の最適特性が失われることになるとともに遅い治癒および/または創傷底に十分に付着しかつ創傷底から成長する強い3次元構造を有しない弱い新組織成長を引き起こす創傷環境がドレッシングの下方にしばしば作り出される。このことは、とりわけ慢性的創傷においてかなり不都合である。
【0007】
したがって、
a)創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することができ、なおかつ、
b)創傷治癒の促進に有益である物質を創傷底に対して接触させた状態に保持し得るような、
治療システムを提供することが望ましいであろう。
【0008】
透析は、血液のような体液から身体に有害である物質を全身的に洗浄するために、血液のような体液を生体外で処理する公知の方法である。透析液との接触によってそのような物質を除去し、一方で血液、細胞および蛋白質のような物質を保持することは、透析の主要目的である。付加的な積極治療作用を有している他の物質は、それらをも透過させる透析メンブランを通ってシステムへ失われるおそれがある。このため、再循環における体液中のそのような物質の均衡はさらにくずれることがある。
【0009】
創傷底と接触して創傷治癒の促進に有益である物質を実質的に希釈することなく、創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することができ、かつ、そのような物質を同時に創傷へ連続的に供給しかつ再循環させることのできる治療システムを提供することが望ましいであろう。
【0010】
体液を処理する透析は、処理された流体が身体の内部へ戻されるので、全身治療でもある。これは、処理された流体が身体の外側、例えば創傷へ循環される局所療法とは対照的なものである。
【0011】
透析では血液のような体液や透析液といったようなものが大量に必要でもあり、そのために関連装置は携帯型のものではない傾向にある。強滲出状態においてさえ、慢性的創傷によって、身体内システムに比べて処置すべき量がかなり少ない流体と、何らかの治療的観点で有益であって創傷および/またはその環境の内部に保持すべき量がかなり少ない物質とが作り出される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの目的は、
a)公知の吸引および/または灌注治療システムにおける前記短所の少なくともいくつかを未然に防止することと、
b)創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することができ、一方、創傷底と接触して創傷治癒の促進に有益である物質を保持することのできる治療システムを提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、
a)公知の透析システムにおける前記短所の少なくともいくつかを未然に防止することと、
b)創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することができ、一方、創傷底と接触して創傷治癒の促進に有益である物質を保持することのできる治療システムを
c)身体の全身に影響をおよぼすことなく提供することである。
【0014】
本発明のさらにもっと別の目的は、
a)公知の透析システムにおける前記短所の少なくともいくつかを未然に防止することと、
b)創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することができ、一方、創傷底と接触して創傷治癒の促進に有益である物質を保持することのできる
c)携帯型の治療システムを提供することである。
【0015】
創傷の下にあって創傷を包囲している組織への血管供給とその組織における循環とは妥協的なものであることが多い。本発明のさらに別の目的は、この効果を逆にし、一方、有害である物質を除去し、それによって創傷治癒を促進するのに有益である物質の治療的活性量を保持するとともに供給する治療システムを提供することである。
【0016】
したがって、本発明の第1の見地によれば、創傷を洗浄するための洗浄装置であって、
変形可能な創傷ドレッシングを具備し、
このドレッシングが、裏張層を備え、
この裏張層が、創傷上において、比較的流体密封的な封止部あるいは閉鎖部を形成し得るものとされ、
このような洗浄装置において、
洗浄装置が、さらに、
a)創傷滲出物から創傷治癒に有害な材料を選択的に除去するための洗浄手段であるとともに、使用時には裏張層の下方に配置されかつ創傷の直上位置に配置されることとなる、洗浄手段と;
b)洗浄手段内において流体を移動させるための駆動デバイスと;
c)付加的に、洗浄手段を流出させるための流出手段と;
を具備していることを特徴とする洗浄装置が提供される。
【0017】
『洗浄手段を流出させるための流出手段』という用語は、洗浄手段に対して流体連通しているような任意の流出手段を包含している。
【0018】
創傷治療に有害材料は、洗浄手段によって除去される。また、洗浄済み流体は、創傷内に留まっていたり、創傷へと戻されたり、する。
【0019】
よって、流体は、治療的に有効な量でもって、創傷治癒に潜在的に有益であるような創傷滲出物内の自然発生的材料を、保持している。
【0020】
本発明のこの第1見地による創傷洗浄装置は、この原理をベースとしている。すなわち、洗浄手段を通して流体を移動させ、駆動デバイスは、創傷治癒に有害な材料と、洗浄手段とを、連続的に、相互に動的に接触させる。この状況は、例えば流体中の化学ポテンシャル勾配下の拡散によってそのような材料を受動的に移動させるのとは、全く相違する。創傷滲出物からの有害材料の除去は、そのような流体的移動の場合と比較して、より迅速に達成される。
【0021】
詳細に後述するような適用例も含めて、様々なタイプの適用例に関し、本発明の第1見地による装置は、様々な実施形態を有している。それら様々な実施形態がいかに異なっていようとも、それら様々な実施形態は、流体が洗浄手段を通過する態様に基づき、以下のような機能的なタイプに分類し得るものと考えられる。
【0022】
1.『単相システム』
この場合、洗浄手段を通して駆動される流体は、創傷滲出物とされ、付加的には、創傷滲出物と灌流液との混合物とされる。流体は、例えば裏張層の下のチャンバといったような洗浄手段から抽出可能とされまた洗浄手段を通して流通可能とされまた洗浄手段へと供給可能とされ、さらに、創傷底へと戻される。
【0023】
2.『複数相システム』
この場合、創傷滲出物は、創傷内に留まり、マクロスケールでは洗浄手段内を通過しない。洗浄手段は、多くの場合、第2洗浄流体を含有しているチャンバを備え、最も一般的には、流体(透析物)相を含有しているチャンバを備えている。後者は、創傷滲出物から、例えば多くの場合ポリマーフィルムやシートやメンブランといったような一体型透過手段によって、分離される。駆動デバイスによって洗浄手段を通して駆動される流体は、創傷滲出物とされ、および/または、創傷滲出物と灌流液との混合物とされる。
【0024】
単相システムと複数相システムとの双方において、創傷または洗浄手段を通して流体を駆動するデバイスを、『循環システム』として動作させることを適切なものとすることができる。
【0025】
この場合、関連する流体は、1回または複数回にわたって、単一方向にのみ、洗浄手段を通過する。
【0026】
これに代えて、適切であれば、駆動デバイスは、『往復システム』という態様のものとすることができる。この場合には、関連する流体は、少なくとも1往復にわたって、洗浄手段を通過する。
【0027】
しかしながら、本発明の第1見地による装置は、様々なタイプの適用において、循環システムおよび往復システムの双方として、動作することができる。この場合、関連する流体は、少なくとも1回は同じ方向においてかつ少なくとも1回は逆方向において、洗浄手段を通過する。(後述の図2を参照されたい)。
【0028】
洗浄手段のタイプは、本発明による装置に関し、適切な構成および動作モードを決定することができる。
【0029】
洗浄手段は、所望によっては、『単一通過システム』として動作することができる。この場合には、関連する流体は、ただ1回にわたって洗浄手段を通過する。
【0030】
これに代えて、適切であれば、洗浄手段は、『複数通過システム』という態様とすることができる。この場合には、関連する流体は、洗浄手段をおよび/または創傷底上を、複数回にわたって通過する。
【0031】
これらのパラメータの組合せによって、本発明の多くの主要な実施形態が形成されることがわかる。要約すれば、以下のようである。
【0032】
1.『単相システム』
a)『循環システム』として構成される場合には、創傷滲出物と、付加的には灌流液とが、1回または複数回にわたって、単一方向にのみ、洗浄手段を通過する(このようなシステムの例は、図2、図4、図8、図9、図11および図15に図示されている)。
b)『往復システム』として構成される場合には、創傷滲出物と、付加的には灌流液とが、少なくとも1往復にわたって、逆向きに、洗浄手段を通過する(このようなシステムの例は、図1、図2、図3、図6、図7、図10および図14に図示されている)。
【0033】
このタイプの洗浄は、
i)『単一通過システム』として、すなわち、関連する流体が、洗浄手段を1回だけ通過するシステムとして、動作することができ、また、
ii)『複数通過システム』として、すなわち、関連する流体が、洗浄手段をおよび/または創傷底上を、複数回にわたって通過するシステムとして、動作することができる。
【0034】
2.『複数相システム』
a)『循環システム』として構成される場合には、
(i)創傷滲出物および付加的には灌流液、および/または、
(ii)洗浄流体、
の各々が、1回または複数回にわたって、単一方向にのみ、洗浄手段を通過する(このようなシステムの例は、図12および図13に図示されている)。
b)『往復システム』として構成される場合には、
(i)創傷滲出物および付加的には灌流液、および/または、
(ii)洗浄流体、
の各々が、少なくとも1往復にわたって、逆向きに、洗浄手段を通過する。
【0035】
このタイプの洗浄は、
i)『単一通過システム』として、すなわち、関連する流体が、洗浄手段を1回だけ通過するシステムとして、動作することができ、また、
ii)『複数通過システム』として、すなわち、関連する流体が、洗浄手段をおよび/または創傷底上を、複数回にわたって通過するシステムとして、動作することができる。
【0036】
このような『複数相システム』においては、洗浄流体と、創傷滲出物と(あるいは、創傷滲出物と灌流液との混合物と)、の双方が、同一方向にも、または、互いに向流的にも、流通することができる。好ましくは、向流的に流通することができる。
【0037】
このような循環システムの例は、
−図12aおよび図13に示されており、この場合には、滲出物が静的なものとされ、かつ、洗浄流体が、1回または複数回にわたって単一方向にのみ洗浄手段を通過する、また、
−図12bに示されており、この場合には、滲出物と(あるいは、傷滲出物と灌流液との混合物と)、洗浄流体とが、1回または複数回にわたって単一方向にのみ、この場合には互いに向流的に、洗浄手段を通過する。
【0038】
以下においては、本発明によるドレッシングの一般的な特徴点について、ドレッシング内における特定の洗浄手段に関連した特定の特徴点に関して、説明する。
【0039】
創傷の洗浄するための本発明のこの第1見地による装置のすべての実施形態において、特別な利点は、創傷ドレッシングがそれの施される身体部分の形状に適合する傾向があるという点である。
【0040】
この創傷ドレッシングは、創傷を覆って比較的流体密封的な封止部あるいは閉鎖部を形成することのできる創傷対向面のある裏張層を備えている。
【0041】
『比較的流体密封的な封止部あるいは閉鎖部』という用語は、この明細書では、流体・微生物不透過性であって、50%大気圧までの、いっそう一般的には15%大気圧までの正圧あるいは負圧を創傷へ加えることのできる部分を表示するために使用されている。『流体』という用語は、この明細書では、ゲル、例えば厚い滲出物、液体、例えば水、および空気、窒素などの気体を含めるために使用されている。
【0042】
施される裏張層の形状は、創傷の区域にわたって創傷を吸引し、灌注しかつ/または洗浄するのに適している任意の形状であってよい。
【0043】
このような例には、実質的に偏平なフィルム、シートあるいはメンブラン、または流体を収容することのできる、例えばポリマーフィルムからなるバッグ、チャンバ、パウチあるいは裏張層の他の構造体が含まれる。
【0044】
裏張層は、普通は最大100ミクロンまでの、好ましくは最大50ミクロンまでの、いっそう好ましくは最大25ミクロンまでの、そして最小10ミクロンの(ほぼ均一な)厚さのあるフィルム、シートあるいはメンブランであってよい。
【0045】
その最大断面寸法は、500mmまで(例えば大きい胴の創傷に対して)、100mmまで(例えば腋窩の創傷および鼠径部の創傷に対して)、そして手足の創傷に対しては200mmまで(例えば、静脈性下腿潰瘍および糖尿病性足部潰瘍のような慢性的創傷に対して)であってよい。
【0046】
このドレッシングは弾性的に変形可能なものであるのが好ましいが、その理由は、患者の快適性が増大し、かつ、創傷の炎症のおそれが減少するからである。
【0047】
そのために適した材料には、ポリエチレン、例えば高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、これらのコポリマー、例えば酢酸ビニルとのコポリマーおよびポリビニルアルコール、およびこれらの混合物のようなポリオレフィン、ポリシロキサン、ポリカーボネートのようなポリエステル、ポリアミド、例えば6-6ポリアミド、6-10ポリアミド、および疎水性ポリウレタンのような水溶性流体を吸収しない合成ポリマー材料が含まれる。
【0048】
それらは、親水性であってもよく、したがって、親水性ポリウレタンも含まれる。
【0049】
それらには、熱可塑性エラストマーおよびエラストマーブレンド、例えば、場合によってはあるいは必要に応じて高衝撃耐性ポリスチレンをブレンドしたエチル酢酸ビニルのようなコポリマーも含まれる。
【0050】
それらには、エラストマー性ポリウレタン、とりわけ溶液流延によって形成されたポリウレタンが含まれる。
【0051】
この創傷ドレッシングについての好ましい材料には、熱可塑性エラストマーおよび硬化性システムが含まれる。
【0052】
裏張層は、創傷を覆ってかつ/または導入パイプおよび導出パイプの周りに相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成することができるものである。
【0053】
しかしながら、とりわけ創傷ドレッシングの周縁、すなわち相対的に液密な封止部の外側の周りでは、創傷の周りにおける皮膚の浸軟を防止するために、高い水蒸気透過性のある材料から作られているのが好ましい。この材料はまた、流体、例えば水、血液あるいは創傷滲出物と接触したときに高い水蒸気透過性がある交換可能材料であってもよい。この材料は例えば、スミス・アンド・ネフュー(Smith & Nephew )社のアレビン(Allevyn(登録商標))、アイブイ(IV)3000(登録商標)およびオプサイト(OpSite(登録商標))のドレッシングに使用されている材料であってよい。
【0054】
裏張層の創傷対向面の周縁には、例えば創傷の周りの皮膚に貼り付けるために接着性フィルムが担持されていてもよい。
【0055】
このフィルムは、創傷ドレッシングの創傷対向面の周縁の周りにおける液密な封止部の定位置に創傷ドレッシングを保持するのに十分であれば、例えば感圧性接着剤であってもよい。
【0056】
これに代えて、あるいはこれに加えて、適切な場合には、ドレッシングを定位置に固定して漏れを防止するために光切換可能な接着剤(light switchable adhesive )を使用することができる。(光切換可能な接着剤は、その接着力が光硬化によって減少されているものである。その使用は、ドレッシング除去の際の外傷を減少させるのに有益である。)
【0057】
したがって、裏張層は、裏張層の近位面の周りに延びている透明あるいは半透明の材料(先に列挙された材料がとりわけ適しているということが理解されるであろう)からなるフランジあるいはリップを有していてもよい。
【0058】
この裏張層には、ドレッシングを定位置に固定してその近位面における漏れを防止するために光切換可能な接着剤からなるフィルムと、その遠位面における不透明材料からなる層とが担持されている。
【0059】
ドレッシングを除去するために、また、ドレッシング除去の際に過剰な外傷を引き起こさないために、近位創傷の周りに延びているフランジあるいはリップの遠位面における不透明材料からなる層は、適切な波長の放射線をそのフランジあるいはリップに照射する前に除去される。
【0060】
創傷の周りの皮膚に貼り付けるために接着性フィルムが担持されている創傷ドレッシングの周縁、すなわち相対的に液密な封止部の外側は、高い水蒸気透過性のある材料かあるいは交換可能な材料から作られており、したがって、接着性フィルムは、連続状であれば、高いまたは交換可能な水蒸気透過性も有していなければならず、例えば、スミス・アンド・ネフュー社のアレビン( Allevyn(登録商標))、アイブイ(IV)3000(登録商標)およびオプサイト(OpSite(登録商標))のドレッシングに使用されているような接着性フィルムである。
【0061】
本発明の多数の主要な実施形態(上に要約された)においては、灌流液および/または創傷滲出物が、ドレッシング外へと抽出され、また、ドレッシング内へと供給される。
【0062】
これはドレッシングに対する負圧の下で行うことができる。そのような真空を使用することにより、創傷ドレッシングの創傷対向面の周縁回りにおける流体密封シール内において、所定位置に創傷ドレッシングを保持することができる。
【0063】
このことによって、患者の皮膚への接着テープの必要性とそれに関連する外傷とを除去することができ、創傷のまわりにドレッシングをシールするに際しては、創傷ドレッシングには、単に、シリコーンフランジまたはリップを設けるだけでよい。
【0064】
これに代えて、ドレッシングの内外にわたっての灌流液および/または創傷滲出物の流通は、正圧の下に行うことができる。このことは、傷のまわりの皮膚からドレッシングを持ち上げて除去し得るよう、複数の周縁ポイントにおいて作用する傾向がある。
【0065】
したがって、装置のこのような使用においては、この目的のために周縁箇所で作用するために、そのような正圧に抗して創傷を覆ってそのような封止部あるいは閉鎖部を形成しかつ維持する手段を設ける必要があるであろう。
【0066】
このような手段の例には、ドレッシングを定位置に固定して漏れを防止するために、前記のような光切換可能な接着剤からなるものが含まれる。
【0067】
光切換可能な接着剤の接着力は光硬化によって減少され、それによってドレッシング除去の外傷が減少しているので、例えば前記のようなフランジには、いっそう強い接着剤からなるフィルムを使用することができる。
【0068】
患者の皮膚への外傷が許容できるいっそう極端な条件の下で使用するのに適した液状接着剤の例には、創傷の縁部の周りおよび/または創傷ドレッシングの裏張層の近位面、例えばフランジあるいはリップの周りに塗布された、基本的にシアノアクリレートおよび同様の組織接着剤からなるものが含まれる。
【0069】
このような手段のさらに適切な例には、接着性(例えば感圧接着性)および非接着性の、かつ、弾性および非弾性のストラップ、バンド、ループ、細片、ひも、包帯、例えば圧縮包帯、シート、カバー、スリーブ、ジャケット、さや、包み、ストッキングおよびホーズ、がある。
【0070】
後者には、例えば、体肢の創傷を覆って圧縮状に装着され、治療がこのようにして施されるとそこに適切な圧力を加える管状の弾性ホーズあるいは管状の弾性ストッキング、がある。
【0071】
適切な例には、さらに、膨脹可能なカフ、スリーブ、ジャケット、ズボン、さや、包み、体肢の創傷を覆って圧縮状に装着され、治療がこのようにして施されるとそこに適切な圧力を加えるストッキングおよびホーズが含まれる。このような手段は、それぞれ創傷ドレッシングを覆って配置されて創傷ドレッシングの裏張層の周縁を越えて延びていてもよい。
【0072】
必要に応じて、創傷および/またはそれ自体の周りで皮膚に接着されるかさもなければ固定され、さらに、必要に応じて、創傷の周縁の周りにおける液密な封止部の中の定位置に創傷ドレッシングを保持するのに十分である程度まで(例えば、弾性の包帯、ストッキングで)圧縮力を加える。
【0073】
このような手段は、それぞれドレッシングの他の構成要素、とりわけ裏張層と一体であってもよい。
【0074】
これに代えて、このような手段は、例えば接着性フィルムで、ドレッシングに永久に取り付けられるかあるいは取り外し可能に取り付けられてもよく、または、これらの構成要素は、互いに嵌まり合うベルクロ(Velcro(登録商標))、押しロック、スナップロックあるいはひねりロックであってもよい。
【0075】
この手段およびドレッシングは、互いに永久に取り付けられていない別々の構造体であってよい。
【0076】
創傷に対するより高い正圧についてのいっそう適切なレイアウトでは、堅いフランジあるいはリップが、先に画成されたような創傷ドレッシングの裏張層における近位面の周縁の周りに広がっている。
【0077】
このフランジあるいはリップは、周縁の溝あるいは導管を画成するために、その近位面において凹形のものである。
【0078】
それは、フランジあるいはリップを通過して溝あるいは導管に連通する吸引出口を有しており、また、真空のポンプあるいは管備品のような真空供給装置に接続されていてもよい。
【0079】
裏張層は、その近位面の周りに広がっているフランジあるいはリップと一体であってもよく、あるいは、例えばヒートシール処理によってフランジあるいはリップに取り付けられていてもよい。
【0080】
創傷を覆って、必要とされる相対的に液密な封止部あるいは閉鎖部を形成するために、また、装置の使用時に創傷ドレッシングの創傷対向面における周縁の下方の灌注流体および/または滲出物の通過を防止するために、ドレッシングは創傷の周りの皮膚に配置される。
【0081】
次いで、この装置には、フランジあるいはリップの内側へ真空処理が施され、したがって、創傷の周りにおける周縁箇所で、創傷における正圧に抗する封止部あるいは閉鎖部が形成されるとともに維持される。
【0082】
前記の取付手段と、創傷の周りにおける周縁箇所で創傷における正圧あるいは負圧に抗する創傷を覆う封止部あるいは閉鎖部を形成しかつ維持する手段とのすべてに対して、創傷ドレッシング封止用周縁は、楕円形および特定の円形のようなほぼ丸い形状のものであるのが好ましい。
【0083】
上述したように、創傷滲出物から創傷治癒に有害な材料を選択的に除去するための洗浄手段は、裏張層の下にあり、使用時には、創傷の直上に位置し、多くの場合、チャンバを備えている。例えばシートやフィルムやメンブランといったような一体的透過部材が、チャンバ壁の一部を形成している。
【0084】
単相システムにおいては、流体を駆動するためのデバイスが、一体的透過部材を通して洗浄手段の内外にわたって創傷滲出物を駆動し、これにより、『循環システム』あるいは往復システムとして動作させる。
【0085】
二相システムにおいては、チャンバが、洗浄流体を収容しており、最も一般的には、流体(透析液)相を収容している。後者は、一体的透過部材によって創傷滲出物から分離されている。流体を駆動するための少なくとも1つのデバイスによって洗浄手段内にわたって駆動される流体は、洗浄流体、および/または、創傷滲出物(あるいは、創傷滲出物と灌流液との混合物)である。
【0086】
以下、本発明の洗浄手段の一般的特徴点について、ドレッシング内における特定の洗浄手段に関連した特定の特徴点に関して、説明する。
【0087】
洗浄チャンバは、例えば弾性的といったように弾性的にフレキシブルなものとされ、好ましくは、創傷の形状に応じて変形し得るようなソフトな構造とされる。洗浄チャンバは、好ましくは、それ自身の弾性によって、裏張層に対して付勢され、これにより、創傷底に対して緩やかな圧力を印加することができる。
【0088】
洗浄チャンバは、ドレッシングの他の構成部材と一体的なものとすることができ、特に、裏張層と一体的なものとすることができる。これに代えて、洗浄チャンバは、接着フィルムを使用して、あるいは、熱シールによって、基端面から延在しているフランジまたはリップに対して、恒久的に取り付けることができる。これにより、創傷に対しての比較的流体密封的なシールまたは閉塞を壊すことがない。
【0089】
場合によっては、洗浄チャンバは、例えば接着性フィルムを使用して、裏張層に対して着脱可能に取り付けることができる。あるいは、他の構成要素は、互いに嵌まり合う押しロック、スナップロックあるいはひねりロックであってもよい。
【0090】
洗浄チャンバおよび裏張層は、個別の構造とすることができ、互いに恒久的には取り付けられない。
【0091】
洗浄チャンバは、1つまたは複数の変形可能な中空ボディという態様のものとすることができる、あるいは、1つまたは複数の変形可能な中空ボディを備えることができる。中空ボディは、フィルムやシートやメンブランによって形成され、例えば、バッグやカートリッジやパウチや他の同様の構造とされる。
【0092】
フィルムやシートやメンブランの厚さは、多くの場合、(ほぼ均一であって)、最大で1mmであり、好ましくは最大で500ミクロンであり、より好ましくは最小厚さが20ミクロンから500ミクロンであり、多くの場合、例えばエラストマーといったように弾性的でフレキシブルなものであり、好ましくはソフトなものである。
【0093】
そのようなフィルムやシートやメンブランは、多くの場合、ドレッシングの他の構成部材と一体的なものとされ、特に、裏張層と一体的なものとされる、あるいは、例えばフランジに対して、接着性フィルムを使用してあるいは熱シールによって、他の構成部材に対して恒久的に取り付けられる。
【0094】
しかしながら、この明細書においては、『チャンバ』という用語は、任意の中空ボディや、フィルムやシートやメンブランによって形成されたボディ、とすることができ、バッグやパウチや他の同様の構造に制限されるものではない。
【0095】
チャンバは、ポリマー材料からなるフィルムやシートやメンブランから形成し得るものであって、より複合的な構造とすることができる。そのような構造は、長尺構造とすることができ、例えば、パイプやチューブや中空ファイバやフィラメントやチューブとすることができ、例えば、それらの間にわたって導入口と導出口との間に延在するスペースを形成しつつ配列状のものとすることができる。
【0096】
チャンバは、特に洗浄流体を収容したバッグやカートリッジやパウチや他の同様の構造である場合には、創傷治療に際しての使用時に、創傷空間の大部分あるいはすべてを、適切に満たすことができる。チャンバは、好ましくは、フィラーを使用することによって、裏張層の下方の残りの創傷空間の容積を制限し得るものとすることができる。あるいはそうでない場合には、そうし得るように、チャンバの容積を調節し得るものとされる。
【0097】
チャンバおよび裏張層が、個別構造とされている場合には、すなわち、互いに直接的に取り付けられていない場合には、そのようなフィラーは、便宜的には、チャンバと裏張層との間に位置することができる。これにより、構造どうしを分離させることができる。あるいは、フィラーは、チャンバ内に位置することができ、これにより、チャンバは、創傷底に対して直接的に接触することができる。
【0098】
フィラーは、好ましくは、例えばエラストマーといったように弾性的でフレキシブルなものとされ、好ましくは創傷形状に応じて変形可能なソフトな構造とすることができる。チャンバは、それ自身の弾性によっておよびフィラーの弾性によって、付勢されることができる。これにより、創傷底に対して緩やかな圧力を印加することができる。
【0099】
このような創傷フィラーの適切な例は、適切な材料、例えば弾性のある熱可塑性プラスチックから形成された発泡体である。この創傷ドレッシングについての好ましい材料には、小さい開き口すなわち微細孔のある濾過用の網状化発泡ポリウレタン発泡体が含まれる(このようなフィラーの例は、図7,10,11,13に図示されている)。
【0100】
これに代えて、あるいはこれに加えて、創傷フィラーは、創傷フィラーを創傷の形状に押し付ける流体あるいは固体で満たされたバッグ、チャンバー、パウチあるいは他の構造体のような、フィルム、シートあるいはメンブランによって画成された適合性のある1つ以上の中空ボディの形状にあってもよく、そのような中空ボディからなるものであってもよい。
【0101】
フィルム、シートあるいはメンブランによって画成された中空ボディに含有された関連する流体の例には、大気圧を超える小さい正圧の空気、窒素およびアルゴンのような気体、より一般的には空気と、水や生理食塩水のような液体とが含まれる。
【0102】
これらの例には、シリコーンゲル、例えばキャビケア(CaviCare)(登録商標)ゲル、あるいは、好ましくはセルロースゲル、例えばイントラジット(Intrasite)(登録商標)架橋物質のような親水性架橋セルロースゲルも含まれる。これらの例には、エアゾールシステムの気体相が、空気または、窒素あるいはアルゴンのような不活性気体であり、より一般的には、大気圧を超える小さい正圧の空気であるエアゾール発泡体と、プラスチック小片のような固体粒子とが含まれる。
【0103】
そのようなフィラーは、流体によって、例えばエアや窒素といったような気体によって、あるいは、例えば水や生理的食塩水といったような液体によって、膨張可能かつ収縮可能なものとすることができる。これにより、設けられている場合には導入パイプおよび/または導入パイプを使用することによって、チャンバに対しておよび創傷空間に対して、様々な圧力を印加することができる。
【0104】
当然のことであるが、裏張層が十分に適合性のあるものであり、かつ/または、例えば下向き皿状のシートであれば、裏張層は、創傷フィラーの上方でなく下方に存在するであろう。図6は、そのような弾性的にフレキシブルなバルーンフィラーを示している。このバルーンフィラーは、流体によって膨張可能かつ収縮可能なものであって、裏張層と、剛直なポリマードームと、によって形成されている。ここで、ドームは、不透過性のものであるとともに、裏張層の先端面に対して恒久的に取り付けられている。
【0105】
この種のレイアウトでは、創傷フィラーが創傷ドレッシングを創傷底へ押し付けるように、創傷フィラーは、創傷の周りの皮膚にしっかりと接合するかさもなければ取り外し可能に取り付けなければならない。このことは、創傷フィラーおよび裏張層が互いに永久に取り付けられていない別々の構造体であるような実施形態では重要である。図7は、裏張層の上方にそのような弾性的にフレキシブルなバルーンフィラーが配置された装置の一変形例を示している。
【0106】
チャンバの特定の性質は、使用されている洗浄手段のタイプに大いに依存する。
【0107】
本発明に係る創傷の吸引、灌注および洗浄用装置には、
a)限外濾過ユニットあるいは化学吸収ユニットおよび/または化学吸着ユニットのような単相システム、または
b)透析ユニットのような二相システム、
であってよい流体洗浄手段が設けられている。
【0108】
前者において、創傷および流体貯蔵器からの流体は、創傷治癒に有害である物質が除去され、かつ、創傷治癒の促進に有益である物質を依然として包含している洗浄済み流体が創傷へ戻される単一通過型のシステムを通過する。
【0109】
そのようなシステムの例は、図1および図2に図示されている。
【0110】
このようなシステムにおける流体洗浄手段は、1つ以上の巨視的フィルターおよび/または微視的フィルターを適切に備えているマクロ濾過ユニットあるいはミクロ濾過ユニットを備えることができる。これらは、粒子、例えば細胞残屑および微生物を保持し、蛋白質および栄養素を通過させるためのものである。
【0111】
このメンブランは、酢酸セルロース−硝酸エステル混合物、ポリ塩化ビニリデン、および例えば親水性ポリウレタンのような親水性ポリマー材料から作られているのが好ましい。
【0112】
あまり好ましくない材料の例には、ポリカーボネート、PTFEおよびポリアミドのようなポリエステル、例えば6-6ポリウレタン、6-10ポリウレタンおよび疎水性ポリウレタン、および石英ファイバーならびにグラスファイバーも含有している疎水性材料が含まれる。
【0113】
それには微細な開き口あるいは微細なくり穴があり、その最大断面寸法は、このようにして選択的に除去される種と透過される種とに大きく左右される。
【0114】
前者は、例えば、典型的には20〜700ミクロンの範囲にある最大断面寸法、例えば20〜50nm(例えば望ましくない蛋白質に対して)、50〜100nm、100〜250nm、250〜500nmおよび500〜700nmを有している微細な開き口あるいは微細なくり穴で除去される。
【0115】
これに代えて、創傷滲出物の洗浄手段のこの一部は、実質的に、互いに直列に連結されたそれらフィルタの積層体とすることができる。この場合、開口またはポアの横断面積は、流体流通方向において減少する。
【0116】
洗浄手段は、限外ろ過ユニットを備えることができる。限外ろ過ユニットは、1つ以上の限外ろ過フィルタを適切に有している。例えば一体型洗浄部材が、創傷治癒に有害な材料材料のためのフィルタとされ、創傷治癒に有害な材料に対して選択的に不透過性であるような、例えば処理速度が大きくかつタンパク質結合性の小さなをポリマーフィルムやシートやメンブランから形成される。有害材料が除去され、また、創傷治癒の促進において有益な材料をまだ含有している洗浄済み流体は、それを通過する。
【0117】
そのようなシステムにおける一体型透過部材は、選択的な『ローパス』システムとすることができ、フィルムやシートやメンブランは、比較的小さな開口あるいはポアを有している。
【0118】
フィルタにふさわしい材料は、マクロフィルタおよびミクロフィルタに関して上述した有機ポリマーを含有している。
【0119】
このタイプの洗浄手段を『循環システム』として、装置を構成して動作させることは、適切である。この場合、関連する流体は、1回または複数回にわたって、単一方向にのみ、洗浄手段を通過する。それは、創傷滲出物からのフィルタ残留物の保持に必要であるからである。
【0120】
(システムを『往復システム』として動作させることは、不適当であろう。それは、逆方向に少なくとも1往復にわたって洗浄手段を通過した流体が、創傷内へとそれら材料を戻すからである。)
【0121】
一体型フィルターは、いっそう複雑な形態、例えば管、細管などのような細長い構造の形態にあるポリマー材料製のフラットなシートあるいはメンブランであってよい。
【0122】
チャンバおよびドレッシングの各々を、使い捨て可能なものとすることを意図することができる。そのような場合、創傷滲出物洗浄手段を通して流体を駆動するためのデバイスは、創傷滲出物内に、創傷治癒に有害な量の材料が残存しなくなるまで、動作する。
【0123】
その後、ドレッシングおよび/または裏張層の下方の洗浄チャンバが、取り出されて廃棄される。これにより、創傷滲出物から、創傷治癒に有害な材料を除去することができる。
【0124】
単相システム洗浄手段は、化学吸収ユニット、例えば、ゼオライトのような微粒子、あるいは、例えば官能化されたポリマーからなる層が、創傷および流体貯蔵器からの循環流体を通過させるときに創傷治癒に有害である物質を取り除くことができる部位をその表面に有しているようなものであってよい。
【0125】
これらの材料は、創傷治癒に有害である物質を例えばキレート化剤および/またはイオン交換剤、酵素であってもよい分解剤によって破壊することあるいは結合することで、除去することができる。
【0126】
このタイプにおいては、チャンバ壁をなすフィルムやシートやメンブランは、創傷治癒に有害な材料に対して選択的に透過性の一体部材ではない。しかしながら、チャンバは、そのような種に対して拮抗性を有していて創傷滲出物からの創傷治癒に有害な材料の除去を行い得るような、1つ以上の材料を含有している。
【0127】
例えば、創傷滲出物が、
セリンプロテアーゼ、例えばエラスターゼおよびトロンビン、システインプロテアーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、例えばコラゲナーゼ、およびカルボキシル(酸)プロテアーゼのようなプロテアーゼ;
リポ多糖類のようなエンドトキシン;
トロンボスポンジン-1(TSP-1)、プラスミノゲン・アクチベータ・阻害剤、あるいはアンギオスタチン(プラスミノゲンフラグメント)のような血管形成阻害剤;
腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)およびインターロイキン1ベータ(IL-1β)のような炎症誘発性サイトカイン;
遊離基のような酸化剤、例えば過酸化物および超酸化物;あるいは、
金属イオン、例えばII価鉄およびIII価鉄、創傷底における酸化ストレスに含まれるすべてのもの;
を含有している場合には、洗浄チャンバは、一体的透過部材の背面側に、適切であれば灌流液および/または創傷滲出物に対して接触し得るチャンバ部分内に捕捉された態様で、以下の拮抗剤のうちの少なくとも1つを備えることができる。すなわち、
4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスルホニルフルオライド(AEBSF、ペファブロック)およびNα-p-トシル-L-リシンクロロメチルケトン(TLCK)およびε-アミノカプロイル-p-クロロベンジルアミドのようなセリンプロテアーゼ阻害剤、システインプロテアーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、およびカルボキシル(酸)プロテアーゼ阻害剤、のようなプロテアーゼ阻害剤;
リポ多糖類、例えばペプチドミメティックスを結合しあるいは分解するための抗炎症物質のような結合剤および/または分解剤;
創傷底における酸化ストレスを除去するための、3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン) 、アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンEおよびグルタチオン、およびこれらの安定誘導体、およびこれらの混合物のような酸化防止剤;
例えば鉄(III) キレート形成剤(Fe(III) は、創傷底上において、酸化ストレスによって生じる)やデスフェリオキサミン(DFO)や3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン)といったような遷移金属イオンキレート形成剤のような、金属イオンキレート形成剤および/またはイオン交換剤;あるいは、
ScavengePore(登録商標)フェンチルモルホリン(Aldrich)等のよう安定な不溶性の非固定の種とし得るような、という固体酸性捕捉剤を含有し例えば塩基捕捉剤や酸捕捉剤および/またはイオン交換剤や他の種といったような、創傷滲出物内におけるpH調節剤。
【0128】
洗浄手段を備えた装置は、『循環システム』としても、また、『往復し』としても、適切に動作させることができる。それは、洗浄手段を逆向きに少なくとも1回は往復する流体が、創傷内へと有害材料を戻さないからである。
【0129】
このようなシステムの例が、特に、図1,6,7(往復システム)および図2,8,9(循環システム)に図示されている。
【0130】
第2の選択的に透過性の一体型透過部材は、この場合にも好適にはフラットシートあるいはメンブランとされ、装置の適切な場所におけるフロー経路に関して先端チャンバ壁の一部を形成するのに必要とされる。これにより、創傷治癒に有害な材料と、拮抗剤と、他活性材料とを、チャンバ内に保持することができる。
【0131】
システムのこの形態の特別の利点は、創傷滲出物から創傷治癒に有害な材料をとして除去される材料が(細胞)毒性を有しているまたは生体非適合性であるあるいは創傷治癒の促進の有益な成分に対して不活性ではないような場合に、システムにおいては、それらを創傷内にわたって通過させ得ないことである。
【0132】
二相システムにおいては、チャンバは、洗浄流体を収容しており、最も通常的には、流体(透析液)相を収容している。後者は、一体型透過部材を介して、創傷滲出物から分離される。
【0133】
少なくとも1つの流体が、少なくとも1つのデバイスによって、流体洗浄手段を通して駆動される。例えばポリマーフィルムやシートやメンブランといったような一体型)透過部材を通して駆動される。
【0134】
これにより、有害材料も含めて比較的高濃度の溶質あるいは分散相種の、創傷滲出物から、洗浄流体内への、および、チャンバ内への、および付加的には、洗浄流体が再循環している系内への、通過を促進する。このようなシステムについては、詳細に後述する。
【0135】
流体駆動デバイスによって洗浄手段を通して駆動される流体は、
a)洗浄流体とされる、あるいは、
b)創傷滲出物とされる、または、創傷滲出物と灌流液との混合物とされる、あるいは、
c)これら双方とされる。
【0136】
そのようなシステムの例は、図12および図13に図示されている。
【0137】
図12aおよび図13は、そのようなシステムをなす透析ユニットを示しており、この場合には、創傷滲出物から分離された洗浄流体だけが、駆動流体である。
【0138】
図12bは、そのようなシステムをなす透析ユニットを示しており、この場合には、洗浄流体と、創傷滲出物と、付加的には灌流液とが、駆動流体である。
【0139】
洗浄流体は、図4に示すように、それほど静的ではない。それは、実際的な速度でもって、創傷治癒に有害な材料を創傷滲出物から除去するだけの十分な(動的な)表面を有したシステムではないからである。
【0140】
本発明による創傷の吸引、灌注および洗浄用装置における流体洗浄のための透析手段の典型的な透析液流速は、全身治療のための透析ユニットのような通常型二相システムにおいて使用されるようなものである。
【0141】
一体物は、全身治療のための透析ユニットのような通常型二相システムにおいて使用されるものとたいていは同じ種類で同じ(ほぼ均一な)厚さのフィルム、シートあるいはメンブランであってもよい。
【0142】
上述したように、フィルムやシートやメンブランは、実質的にフラットなものとすることができる。しかしながら、特に洗浄流体が循環する場合には、パイプやチューブや配列状チューブといったような形態の方が適切なこともあり得る。
【0143】
任意のそのようなフィルムやシートやメンブランの表面積は、100〜1000000mm といったように、50mm 以上であることが適切であり、例えば、500〜25000mm とされる。
【0144】
双方の流体が駆動される場合には、それらは同じ向きに流通し得るけれども、好ましくは、向流的に流通する。
【0145】
この場合もやはり、創傷治癒に有害である物質は透析液の中へ除去され、また、創傷治癒に有益である物質を依然として含有している洗浄済み流体は再循環管を通して創傷底へ戻される。
【0146】
上述したような有害材料の例には、
遊離基のような酸化剤、例えば過酸化物および超酸化物;
II価鉄およびIII価鉄;
創傷底における酸化ストレスに含まれるすべてのもの;
セリンプロテアーゼ、例えばエラスターゼおよびトロンビン、システインプロテアーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、例えばコラゲナーゼ、およびカルボキシル(酸)プロテアーゼのようなプロテアーゼ;
リポ多糖類のようなエンドトキシン;
ホモセリンラクトン誘導体、例えばオキソアルコール誘導体のような自己誘導物質シグナル分子;
トロンボスポジン-1(TSP-1)、プラスミノゲン・アクチベータ・阻害剤、あるいはアンギオスタチン(プラスミノゲンフラグメント)のような血管形成阻害剤;
腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)およびインターロイキン1ベータ(IL-1β)のような炎症誘発性サイトカイン;
リポ多糖類、例えばヒスタミンのような炎症剤;および、
プロトンといったような創傷滲出物内のpHに悪影響を及ぼすような塩基性種あるいは酸性種;
が含まれる。
【0147】
フィルム、シートあるいはメンブラン(典型的には、フィルム、シートあるいはメンブランによって画成された、先に記載されたような適合性中空ボディの形態にある)の例には、天然および合成のポリマー材料が含まれる。
【0148】
メンブランは、セルロース誘導体、例えば再生セルロース、セルロースのモノアセテート、ジアセテートあるいはトリアセテートのようなセルロースのモノエステル、ジエステルあるいはトリエステル、ベンジルセルロースおよびヘモファン、およびこれらの混合物のような1つ以上の親水性ポリマー材料であってよい。
【0149】
他の材料の例には、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトンおよびポリエーテルエーテルケトン、およびこれらのスルホン化誘導体、およびこれらの混合物のような1つ以上の疎水性ポリマー材料が含まれる。
【0150】
他の材料の例には、ポリカーボネートのようなポリエステル、例えば6-6ポリアミド、6-10ポリアミドおよびポリアミド、例えばポリ(メチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリルおよびそのコポリマー、例えばアクリロニトリル−金属スルホン酸ナトリウムのコポリマーを含むポリアクリレート、およびポリ塩化ビニリデンのような疎水性材料が含まれる。
【0151】
このメンブランのための適切な材料には、ポリエチレン、例えば高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、そのコポリマー、例えば酢酸ビニルとのコポリマーおよびポリビニルアルコール、およびこれらの混合物のような熱可塑性ポリオレフィンが含まれる。
【0152】
この透析メンブランには、創傷からの除去のために目標とされた創傷治癒に有害である種の選択的灌流をさせるために選ばれた分画分子量(MWCO)がなければならない。例えば、セリンプロテアーゼエラスターゼ(分子量25900ダルトン)の灌流にはMWCOが25900ダルトンよりも大きいメンブランが必要である。
【0153】
MWCOの限界値は、それぞれの適用を適切にするために1〜3000000ダルトンの間で変えることができる。MWCOは、より大きい競合種による干渉を排除するために、できるだけこの分子量に近いのが好ましい。
【0154】
例えば、MWCOが25900ダルトンよりも大きいようなメンブランでは、エラスターゼへの拮抗剤であるアルファ-1-アンチトリプシン(AAT)(分子量54000ダルトン)を創傷流体の外側から透析液の中へ付加的には、拡散させることができない。慢性的創傷の治癒の促進に有益である阻害剤は、創傷底と接触したままであり、また、その上で有益に作用するが、創傷治癒に有害であるエラスターゼは除去される。
【0155】
この装置のこのような使用は例えば、糖尿病性足部潰瘍のような慢性的創傷、そしてとりわけ褥瘡性圧迫潰瘍における創傷治癒処理に都合がよい。
【0156】
以下で述べるように、メンブランの透析液側におけるエラスターゼに対する拮抗剤、例えば分解性酵素、あるいは金属イオン封鎖剤は、このプロテアーゼの創傷滲出物からの除去を促進するために使用することができる。
【0157】
透析ユニットのような二相系のうちあまり一般的でないもの(前記参照)を流体洗浄手段として使用してもよい。この種類のものでは、透析用のポリマー製フィルム、シートあるいはメンブランは、創傷治癒に有害である以下のような物質を選択的に透過させることのできる一体物ではない。すなわち、
セリンプロテアーゼ、例えばエラスターゼおよびトロンビン、システインプロテアーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、例えばコラゲナーゼ、およびカルボキシル(酸)プロテアーゼのようなプロテアーゼ;
リポ多糖類のようなエンドトキシン;
トロンボスポンジン-1(TSP-1)、プラスミノゲン・アクチベータ・阻害剤、あるいはアンギオスタチン(プラスミノゲンフラグメント)のような血管形成阻害剤;
腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)およびインターロイキン1ベータ(IL-1β)のような炎症誘発性サイトカイン;
遊離基のような酸化剤、例えば過酸化物および超酸化物;
金属イオン、例えばII価鉄およびIII価鉄、創傷底における酸化ストレスに含まれるすべてのもの;および、
プロトンといったような創傷滲出物内のpHに悪影響を及ぼすような塩基性種あるいは酸性種。
【0158】
しかしながら、創傷からの滲出物および/または灌注流体の成分は、創傷治癒の際にその中へ入りかつそれを貫通するように含まれるのが有利であるものの、より大きい分子あるいはより小さい分子であっても差しつかえないであろう。透析液の中には、あるいは好ましくは、透析液に接触する少なくとも1つの表面がある、流体洗浄 手段における1つ以上の中実構造状完全体の中には、例えば酵素あるいは他のものである以下のような種に対する拮抗剤であることによって、創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することのできる1つ以上の物質がある。
4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスルホニルフルオライド(AEBSF、ペファブロック)およびNα-p-トシル-L-リシンクロロメチルケトン(TLCK)およびε-アミノカプロイル-p-クロロベンジルアミドのようなセリンプロテアーゼ阻害剤、システインプロテアーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、およびカルボキシル(酸)プロテアーゼ阻害剤、のようなプロテアーゼ阻害剤、
リポ多糖類、例えばペプチドミメティックスを結合しあるいは分解するための抗炎症物質のような結合剤および/または分解剤、
創傷底における酸化ストレスを除去するための、3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン) 、アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンEおよびグルタチオン、およびこれらの安定誘導体、およびこれらの混合物のような酸化防止剤、
デスフェリオキサミン(DFO)、3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン)のようなキレート化剤および/またはイオン交換剤、および、
ScavengePore(登録商標)フェンチルモルホリン(Aldrich)等のよう安定な不溶性の非固定の種とし得るような、という固体酸性捕捉剤を含有し例えば塩基捕捉剤や酸捕捉剤および/またはイオン交換剤や他の種といったような、創傷滲出物内におけるpH調節剤。
【0159】
これらには、ペプチド(サイトカイン、例えば、α-アミノ-γ-ブチロラクトンおよびL-ホモカルノシンのような細菌性サイトカインが含まれる)、および創傷治癒の促進に潜在的に有益であるかあるいは実際に有益であるIII価鉄還元剤のような犠牲的酸化還元物質、および/またはグルタチオン酸化還元系のようなこの種の再生可能物質、および他の生理活性成分がさらに含まれる。
【0160】
このようなあまり一般的でない種類の二相システム透析ユニットの使用では、広い範囲の種は滲出物から透析液の中へ入るのが普通である。
【0161】
いくつかの(主としてイオン性の)種は、創傷治癒に有害である物質をあまり選択透過させない透析用のポリマー製フィルム、シートあるいはメンブランを通って、透析液から灌注流体および/または創傷滲出物の中へ流れるであろう。
【0162】
創傷からの滲出物および/または灌注流体はそれを通ってあちらこちらに付加的には、拡散するであろう。
【0163】
創傷ドレッシングから「最上位」である透析液と灌注流体および/または創傷滲出物との間に、安定状態にある濃度均衡が最終的にもたらされる。
【0164】
循環する創傷流体は、創傷治癒の促進に有益である物質がこの均衡により速く達するのを促進する。
【0165】
循環する創傷流体はまた、これらの物質を、最も有益である可能性のある部位、すなわち創傷底へ戻す。
【0166】
創傷治癒に有害である目標物質はまた、創傷治癒に有害である物質をあまり選択透過させない透析用のポリマー製フィルム、シートあるいはメンブランを通って、滲出物から透析液の中へ流れる。
【0167】
創傷からの滲出物および/または灌注流体の他の成分とは異なり、創傷治癒に有害である目標物質は、透析液と接触するか、あるいは好ましくは、透析液の中で、少なくとも1つの表面がある、流体洗浄手段における1つ以上の中実構造状一体部材と接触し、そして、適切な拮抗剤、結合剤および/または分解剤、キレート化剤および/またはイオン交換剤、酸化還元剤などによって、除去される。創傷治癒を促進するのに有益である物質が依然として含有されている洗浄済み流体は、創傷へと戻される。
【0168】
創傷からの滲出物および/または灌注流体の他の成分とは異なり、創傷治癒に有害である目標物質は、透析液から絶えず除去され、きわめて少ないこれらの種は、透析液から灌注流体および/または創傷滲出物の中へ流れ、また、これらの種が創傷ドレッシングから常に「最上位」にあっても、安定状態にある濃度均衡はもたらされない。
【0169】
循環する創傷流体は、創傷治癒に有害である物質の再循環からの除去を促進するとともに、創傷に接触する創傷治癒の促進に有益である物質を保持する、と信じられている。
【0170】
このような形態の二相システムの特別な利点は、創傷滲出物から創傷治癒に有害である物質を除去することのできる物質が、(細胞)毒性のものであるかあるいは生体不適合性のものであるか、または創傷治癒の促進に有益である任意成分に対して不活性でないときには、このシステムは、かなりの量の拮抗剤を透析液の外側から灌注流体の中へ付加的には、拡散させることがない、という点である。しかしながら、活性物質は、流体に対して有益に作用することができる。
【0171】
このフィルム、シートあるいはメンブランは、金属イオン封鎖あるいは分解のために目標とされた種の灌流をさせるために選ばれた分画分子量(MWCO)(従来のように定義された)の透析メンブランであるのが好ましい。
【0172】
例えば、セリンプロテアーゼエラスターゼ(分子量25900ダルトン)の金属イオン封鎖にはMWCOが25900ダルトンよりも大きいメンブランが必要であろう。
【0173】
MWCOの限界値は、それぞれの適用を適切にするために1〜3000000ダルトンの間で変えることができる。MWCOは、より大きい競合種による干渉を排除するために、できるだけこの分子量に近いのが好ましい。
【0174】
創傷を洗浄するための本発明のこの第1見地による装置の多くの実施形態においては、灌流液および/または創傷滲出物および/または洗浄流体が、創傷ドレッシングから抽出され、創傷上において比較的流体密封性のシールまたは閉塞を形成し得る創傷対向面付きの裏張層を通してまたはその下方を通して、戻り経路を経由して、戻されることは、理解されるであろう。
【0175】
各戻り経路は、流体戻りチューブに対する連結のためのものであるとともに、裏張層の創傷対向面を貫通する少なくとも1本の導入パイプと;流体排出チューブに対する連結のためのものであるとともに、裏張層の創傷対向面を貫通する少なくとも1本の導出パイプと;を必要とし、各導入パイプがあるいは各導出パイプが創傷対向面を貫通しているポイントは、創傷上において比較的流体密封性のシールまたは閉鎖部を形成する。
【0176】
装置の動作に関連して、チューブ(の係合端)に対しての接続のためのものとしてパイプを説明する限りにおいては、パイプとチューブとは、同一の一体部材を形成することができる。
【0177】
本発明による装置の動作モードが『往復システム』という態様のものである場合には、少なくとも1本の導入パイプと、少なくとも1本の導出パイプと、少なくとも1本の流体供給チューブと、少なくとも1本の導出パイプとは、それぞれ、同じ一体部材を形成することができる。
【0178】
多くの場合、灌流液および/または創傷滲出物のために『複数経路システム』が使用され、この場合、流体は、創傷ドレッシングから抽出され、いずれの場合も洗浄手段を経由して、創傷へと戻される。これは、例えば、シリンジやピストンポンプといったような往復ポンプの作用によって、行われる。
【0179】
各導入パイプあるいは各導出パイプは、例えば漏斗や穴や開口やオリフィスやルアーやスロットやポートといったような開口の形態とされたものを有することができる。これにより、メス型部材として、流体戻りチューブあるいは流体排出チューブの係合端(付加的にはあるいは必要に応じて、チューブやパイプやノズルを形成するための手段を介して、オス型部材として機能する)に対して係合することができる。
【0180】
構成部材どうしが一体的である場合には、通常は、同じ材料(上述した材料が適切なものであることは、理解されるであろう)から形成される。
【0181】
これに代えて、プッシュフィットやスナップフィットやツイストロックフィットである場合には、同じ材料から、あるいは、互いに異なる材料から、形成することができる。いずれの場合においても、すべての構成部材に関し、上述した材料が適切である。
【0182】
裏張層は、多くの場合、剛直なおよび/または弾性的フレキシブルさの無い領域すなわち硬い領域を有することができる。これにより、各パイプと各係合チューブとの間の実質的なあそびに対して抵抗することができ、また、加圧時における任意の方向に関する変形に対して抵抗することができる。
【0183】
多くの場合、先端向きに(創傷から外向きに)突出するボスによって、硬さを増強したり、補強したり、強化したり、することができる。
【0184】
ボスは、通常は、流体戻りチューブあるいは流体排出チューブの係合端に対する連結のための関連するチューブやパイプやホースやノズルや穴や開口やオリフィスやルアーやスロットやポートの周囲に配置される。
【0185】
これに代えてあるいはこれに加えて、適切であれば、裏張層は、裏張層の基端面回りに延在する硬いフランジまたはリップを有することができる。これにより、裏張層を、硬いものとしたり、強化したり、補強したり、することができる。
【0186】
例えば限外ろ過ユニットといったような単相システムと、例えば透析ユニットといったような二相システムと、の双方は、モジュール式のものとすることができる。これにより、本発明による装置からの脱着を比較的容易に行うことができる。
【0187】
各戻りフロー経路(単相システムであるか、あるいは、透析ユニットといったような二相システムであるか、にかかわらず)は、流体を駆動するための手段を必要する。
【0188】
適切な手段は、当業者には自明であろう。しかしながら、以下のようなタイプの小さなポンプを、所望に応じて使用することができる。すなわち、
小さな往復動ポンプ。例えば、以下のようなものがある。
ダイアフラムポンプ:1つあるいは2つの柔軟性ダイアフラムの脈動によって液体が変位し、チェックバルブによって流体の流れの方向が調節される。
シリンジおよびピストンポンプ:ピストンが、付加的にはチェックバルブを介して、流体をポンピングする。特に、閉塞した単相往復システムにおいては、創傷底に対して、可変圧力や、および/または、反復的正圧や、および/または、負圧、を印加する。この場合、創傷滲出物および/または灌流液は、洗浄手段を通して駆動される。
小さな回転ポンプ。例えば、以下のようなものがある。
遠心ポンプ
ロータリーベーンポンプ:駆動軸に取り付けられ、そのスピンのような脈動によることなく流体を移動させる羽根付きディスクがある。出力はポンプを損傷することなく制限することができる
蠕動ポンプ:周縁ローラを有しており、ロータアームが、フレキシブルな流体循環チューブとして作用し、これにより、チューブ内の流体流を、ロータの回転方向に付勢する。特に、透析モードにおいては、複数相循環システムとして動作する。すなわち、一方向にのみ流体を駆動する。
【0189】
この装置の型式および/または容量は、創傷治癒過程の最適特性についての、灌注流体および/または創傷からの創傷滲出物における適切なあるいは所望の流体容積の流速と、創傷底へ正圧あるいは負圧を加えることが適切であるかどうかあるいは望まれているかどうかということと、創傷底ヘのそのような圧力の大きさとによって、また、携帯性、消費電力、および汚染からの隔離のような諸因子によって、大きく左右されるであろう。
【0190】
このような装置はまた、パルス式、連続式、可変式、可逆式および/または自動化されかつ/またはプログラム可能な流体移動のできるものであるのが好ましい。
【0191】
創傷の灌注および洗浄に際して有利にはポータブルであるという本発明(すなわち、本発明による装置)の主要な機能は、洗浄すべき創傷の吸引や加圧ではなく、例えば洗浄手段を通しての(慢性)創傷滲出物といったようなものをポンピングするためのポンプすなわち流体駆動デバイスの主要機能を大いに決定する。
【0192】
しかしながら、ポンプは、50%大気圧までの、いっそう一般的には15%大気圧までの正圧あるいは負圧を創傷へ加えることができる。これは、流体駆動に関し、パルス型とすることも、連続型とすることも、変動型とすることも、反復型とすることも、自動化されたものとすることも、または、プログラムされたものとすることも、できる。
【0193】
このようにして創傷洗浄が行われる場合には、裏張層の周縁回りにおける創傷ドレッシングの流体密封性シールまたは閉鎖部は、より重大なものとなってくる。
【0194】
デバイスは、好ましくは、小さな蠕動ポンプあるいはダイヤフラムポンプとされる。例えば、好ましくは、小型のポータブルなダイヤフラムポンプあるいは蠕動ポンプとされる。これらは、特に、(慢性)創傷滲出物内表面と、ポンプの内表面や可動部材と、の間の接触を低減または除去し得るという点において、また、クリーニングを容易に行い得るという点において、好ましいタイプのポンプである。
【0195】
ポンプがダイヤフラムポンプである場合には、そして好ましくは小さなポータブルダイヤフラムポンプである場合には、液体を変位させる1つあるいは2つのフレキシブルなダイヤフラムの各々は、例えばポリマーフィルムやシートやメンブランから形成され、脈動を生成するための手段に対して連結される。脈動生成手段は、簡便な任意の態様のものとすることができ、例えば、電気機械的オシレーターや、圧電トランスデューサや、ソレノイドのコアあるいは強磁性部材と交流用コイルとの組合せや、回転カムとフォロワとの組合せ、等とすることができる。
【0196】
例えば透析ユニットといったような二相システムを備えているような、創傷洗浄のための本発明のこの第1見地による装置の1つの実施形態においては、流体は、創傷ドレッシングから流出しない、すなわち、流体は、裏張層を介して戻り経路を経由して創傷へと戻される。
【0197】
したがって、流体戻りチューブに対する接続用の導入パイプや、流体排出チューブに対する接続用の導出パイプを、裏張層の創傷対向面を貫通するものとして、設ける必要がない。
【0198】
このような実施形態においては、駆動デバイスの第1目的は、洗浄流体を駆動することである。このような実施形態においては、適切なデバイスは、以下のようなものである。
【0199】
そのようなドレッシングの適切な例には、例えばベーンやインペラーといったような回転インペラーを利用したものがある。回転ベーンディスクが、駆動軸に対して取り付けられ、プロペラが、駆動軸上に取り付けられる。
【0200】
そのようなデバイスは、ドレッシングに対して一体的なものとすることができる。対応する装置が、チャンバ壁または創傷ドレッシングの通過場所において、駆動デバイスの任意の部分のまわりのところのチャンバシール部または閉塞部を形成しなければならず、不便であることは、理解されるであろう。それらは、ポータブルなものとすることができない(不利)。
【0201】
このタイプの創傷ドレッシングを使用する可能性は、そのような比較的流体密封性のシールあるいは閉鎖部を達成する能力によって、大部分を決定することができる。駆動デバイスのいかなる部分も、チャンバ壁を貫通していないことかつ創傷ドレッシングを貫通していないことが望ましい。
【0202】
分離構造とすることができる。この構造においては、適切であれば、選択的に透過可能な一体部材を通して所望のフロー経路に沿って洗浄流体を駆動するという目的で相互作用することができる。この構造は、チャンバの内部が『複数経路システム』である場合に効果的である。
【0203】
駆動デバイスは、チャンバの内部において洗浄流体を遠隔的に駆動することができ、駆動状態に維持することができる。
【0204】
装置のそのような実施形態は、有利には、創傷上に密封シールまたは閉鎖部材を形成することができ、駆動デバイスのいかなる部分も、チャンバ壁を貫通していないことかつ創傷ドレッシングを貫通していない。
【0205】
これにより、周縁におけるチャンバの流体密封性シールまたは閉鎖部を確保する必要がない。
【0206】
よって、チャンバは、例えば、内包された少なくとも1つの磁気フォロワという態様のものとすることができ、電磁撹拌機によって駆動され、洗浄流体を駆動する。洗浄流体を駆動するための電磁撹拌機は、ドレッシングの他の構成部材に対して特に裏張層に対して、例えばVelcro(登録商標)や接着性フィルム(例えば感圧的に接着性のもの)や弾性ストラップや非弾性ストラップやバンドやタイや圧縮バンデージ等のバンデージやシートやカバーや押しフィットやスナップフィットやツイストロックフィットによって、取り付けることができる、あるいは、着脱可能に取り付けることができる。
【0207】
チャンバは、例えば中央において、円形のまたはドーナツ形の中空ボディの上方で、裏張層上に取り付けることができる。これにより、内部に少なくとも1つの磁気フォロワを備えた環状チャンバを効果的に形成することができる。使用時には、電磁撹拌機が、円形または環状のチャンバ内に包含された磁気フォロワを駆動し、洗浄流体の循環を引き起こす。
【0208】
フィルムやシートやメンブランは、多くの場合、選択的に透過性のものとされ、洗浄流体を含有しており、脈動圧力に対して弾性を有しているべきである。これにより、チャンバを膨張させたり収縮させたりすることができ、創傷洗浄流体の再循環を可能とする。
【0209】
すべてのそのような遠隔的なデバイスは、一体的なものとすることも、また、ドレッシングに対して特に裏張層に対して接着性フィルムや熱シールを使用して恒久的に取り付けられたものとすることも、できる。
【0210】
これら構成部材は、着脱可能に取り付けることもできる。その場合には、例えばVelcro(登録商標)や接着性フィルム(例えば感圧的に接着性のもの)や弾性ストラップや非弾性ストラップやバンドやタイや圧縮バンデージ等のバンデージやシートやカバーが使用される。
【0211】
そのような他のデバイスは、少なくとも1個のボールあるいは球体という態様のものとすることができる。例えば、固体金属ボールや球体という態様のものとすることができる。
【0212】
これにより、患者の身体の移動に基づいて、創傷滲出物内の材料に対して選択的に透過性を有した一体部材の表面に対して接触しつつ、洗浄流体が移動することができる。
【0213】
これに代えて、押圧可能なチャンバの頂面には、トラックウェイを設けることができる。このトラックウェイの周囲を患者が指がなぞることにより、チャンバに沿って流体を駆動することができる。
【0214】
実際には、強滲出状態にある創傷からの場合でさえも、そのような滲出物の流れの速度は、最大で75マイクロリットル/cm /時間(ここでcm は創傷の面積である)の程度に過ぎず、流体には(プロテアーゼが存在するために)大きい可動性がある。
【0215】
創傷が治癒するにつれて、滲出物の体液濃度は低下し、粘度は例えば同じ創傷についての水準である12.5〜25マイクロリットル/cm /時間まで変化する
【0216】
創傷治癒に有害である物質が透析ユニットのような二相系(以下を参照)によって除去されると、流体も流体洗浄 手段によって系へ失われるおそれがある。
【0217】
このことは、創傷治癒に有害である物質に加えて、水も透過させることのできる例えば透析用のポリマー製フィルム、シートあるいは膜によって起きることがある。
【0218】
したがって、再循環中の流体の均衡は、さらに減少するかも知れない。このような望ましくない損失を先に説明されたような通常の方法で最小限にするために、調整することができる。
【0219】
創傷滲出物の粘度が変わった場合には、例えば創傷の治癒に伴って粘度が大きくなった場合には、灌流液および/または創傷滲出物の量を調節することが好ましい。これにより、例えば初期レベルに等しいレベルへと、液体の粘性を調節することができる。
【0220】
上述したように、創傷洗浄のための本発明のこの第1見地による装置は、50%大気圧までの、いっそう一般的には15%大気圧までの正圧あるいは負圧を創傷へ加えることができる。
【0221】
創傷の治療前におよび/または治療最中に、灌流液および/または創傷滲出物の量を調節し得るよう、および/または、創傷内を中立や正圧や負圧に調節し得るよう、創傷空間に対して、流体を追加したり抽出したりすることができる。
【0222】
したがって、創傷からの灌流液および/または創傷滲出物の量は、創傷空間内へと灌流液を追加し続けることによって、増大させることができる。例えば、創傷に対してドレッシングを適用する前に創傷に対して灌流液の所望量を供給することによって、および/または、実施時に創傷に対する灌流液の供給を継続することによって、創傷に対して正圧を印加することができる。例えば小さなポンプを使用すること等によって、創傷から流体を除去することにより、創傷に対して負圧を印加することができる。
【0223】
これは、すべての場合において、バルブあるいは他の制御装置といったような流体レギュレータを通して関連する流体の通過を制御することによって、得られる。例えば、裏張層を通過するあるいは裏張層の下方を通過するパイプやチューブに取り付けられたバルブの開閉が制御される。
【0224】
例えば、使用時に、裏張層の下方において滲出物の蓄積量が過度になった場合、流出バルブを開くことによって、過剰分の流体を、例えば廃棄物リザーバといったようなところへと、除去することができ、これにより、超過圧力を逃がすことができる。
【0225】
同様に、創傷からの任意の流体の損失も、調節することができる。すなわち、正圧(つまり、大気圧以上の圧力)を、バルブあるいは他の制御装置といったような同様の入力側レギュレータを通して制御することによって、創傷底に対して印加することができる。例えば、裏張層と創傷底とを連結している部分に設けられたバルブの開閉が制御される。
【0226】
負圧は、創傷底に対して、簡便には、例えば小さなポンプを使用した創傷からの流体除去によって、印加することができる。その際、バルブあるいは他の制御装置といったような同様の真空レギュレータを通して制御することができる。バルブは、真空吸引源を適用した後には閉塞される、あるいは、真空吸引源の連結を解除する際には閉塞される。
【0227】
これに代えてあるいはこれに加えて、適切であれば、裏張層は、注入隔壁といったようなレギュレータを有することができる。このレギュレータを使用することにより、例えば灌流液といったような所望量の関連流体を、創傷から抽出したり創傷へと供給したりすることができる。その際、所望の効果が得られるよう、小さなシリンジや同様のポンプを使用しても良い。
【0228】
同等に、任意の洗浄流体中のバランスは、関連フロー経路に対しての流体抽出供給手段によっても、調節することができる。関連フロー経路に対しての流体抽出供給手段は、装置のうちの、洗浄流体に対して接触している任意の適切な部分に、配置することができる。
【0229】
関連フロー経路に対しての流体抽出供給手段は、バルブあるいは他の制御装置といったような真空レギュレータとすることができる。レギュレータは、例えば収集バッグ等の廃棄物リザーバへと装置から流体を排出し得るよう、排出側にスイッチングされる、あるいは、装置に対して流体を供給し得るよう、供給側にスイッチングされる。
【0230】
これに代えてあるいはこれに加えて、適切であれば、関連フロー経路は、注入隔壁といったようなレギュレータを有することができる。このレギュレータを使用することにより、所望量の関連洗浄流体を、フロー経路から抽出したりフロー経路へと供給したりすることができる。その際、所望の効果が得られるよう、小さなシリンジや同様のポンプを使用しても良い。
【0231】
導入パイプや、導出パイプや、流体戻りチューブや、流体排出チューブなどは、従来タイプのものとすることができる。例えば、楕円形や円形という横断面のものとすることができ、適切であれば、一定の円筒穴やチャネルや導管や通路を、自身の長さ全体にわたって、有することができる。
【0232】
灌流液および/または創傷からの創傷滲出物の所望の流体流速に依存して、また、所望の再循環量に依存して、適切であれば、穴の最大直径は、大規模な胴体傷の場合には、最大で10mmとすることができ、手足の創傷の場合には、最大で2mmとすることができる。
【0233】
チューブ壁は、印加されるすべての正圧や負圧に耐え得るよう、十分に厚いことが適切である。
【0234】
これは、特に、再循環している灌流液および/または創傷滲出物の量が、増大する場合である。このような増大は、創傷滲出物が創傷に対して供給され続けている場合や、例えば透析ユニットといったような二相システムの例えばポリマーフィルムやシートやメンブランといったような選択的一体透過部材を介して洗浄流体を通過する流体が創傷に対して供給され続けている場合、である。しかしながら、ポンプに関して上述したように、そのようなチューブの第1の目的は、圧力容器として機能することではなく、装置のフロー経路の長さ全体にわたって灌流液と滲出物とを搬送することである。チューブ壁は、適切であれば、25ミクロン以上という厚さとすることができる。
【0235】
創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置の全長は、使用時に創傷ドレッシングが創傷を覆うときには、微生物不透過性でなければならない。
【0236】
創傷ドレッシングとこの発明の創傷の吸引、灌注および/または洗浄用装置の内部とは無菌であるのが望ましい。
【0237】
流体は、流体が駆動されるシステム内において、紫外線のガンマ線照射あるいは電子ビーム照射によって殺菌することができる。この方法によればとりわけ、内部表面と殺菌剤が含まれる流体との接触が減少するかあるいはなくなる。
【0238】
流体の滅菌に関する他の方法の例には例えば、微生物に対して選択的に不透過性である、最大断面寸法が例えば0.22〜0.45ミクロンである微細な開き口あるいは微細なくり穴による限外濾過法と、クロルヘキシジンおよびポビドンヨードのような化学物質の溶液、銀塩例えば硝酸銀のような金属イオン源、および過酸化水素によるような流体殺菌法との使用も含まれるが、後者には、内部表面と殺菌剤が含まれる流体との接触が含まれる。
【0239】
創傷ドレッシングの内部、流体が再循環するシステムの残り部分および/または創傷底は、創傷が強滲出状態にあるときでさえ、滅菌状態に維持されているのが好ましく、または、少なくとも自然に起きる微生物成長が抑制されるのが好ましい。
【0240】
創傷治癒に有益である滲出物の生理活性成分が流体洗浄の実行の前あるいは後に除去されない系を設けることも望ましい。これは、例えば、例えば成長因子などの蛋白質のような、創傷治癒の促進に有益である物質の例えば受動沈殿によって生じるであろう。
【0241】
これは、システム内において、創傷治癒に有益である滲出物の生理活性成分と接触しているような任意の箇所において起こるであろう。
【0242】
多くの場合、これは、システム内において、滲出物と接触している任意の場所で起こるであろう。通常は、単相システム内において起こるものの、複数相システム内における第2流体(透析流体)相内において、創傷治癒に潜在的に有益である創傷滲出物内の材料が相内へと自由に拡散している場所において起こるであろう。
【0243】
創傷治癒の促進に有益である物質の沈殿は、関連する流体と直接的に接触しているすべてのポイント上におけるまたすべての一体部材上における忌避剤コーティングを使用と対抗することとなる。
【0244】
循環流体が通過する表面についてのコーティング物質の例には、成長因子、酵素および他の蛋白質や誘導体について有用である、ヘパリンのような抗凝血剤と、PTFEおよびポリアミドのような高表面張力物質とが含まれる。
【0245】
この発明に係る創傷の吸引、灌注および/または洗浄 用装置には、流体貯蔵器への流体供給管の形態にあり、創傷ドレッシングの下方における創傷へ流体を直接あるいは間接的に流入させる手段が設けられている。
【0246】
特に長期にわたる時間尺度での使用に適しているためには、材料は、無毒で生体適合性があり、適切な場合には、透析液内の灌流液および/または創傷滲出物の活性成分に対して不活性でなければならない。この装置の使用に際して、その材料は、かなりの量の抽出溶剤を装置の外側へ自由に拡散させるべきではない。
【0247】
その材料は、紫外線のガンマ線照射あるいは電子ビーム照射によって、かつ/または、使用時に流体・微生物不透過性であって軟性である化学物質の溶液のような流体殺菌剤によって、殺菌することのできるものであるべきである。
【0248】
適切な材料の例には、ポリエチレンなどのポリオレフィンのような合成ポリマー材料、例えば、高密度ポリエチレンおよび高密度ポリプロピレンが含まれる。
【0249】
この目的のために適した材料には、そのコポリマー、例えば酢酸ビニルおよびその混合物のあるものも含まれる。この目的のために適した材料には、医療級のポリ塩化ビニルがさらに含まれる。
【0250】
本発明の装置における流体洗浄の目的のために、限外濾過ユニットのような単相システムおよび透析ユニットのような二相システムの双方には、創傷ドレッシングからの灌注流体および/または創傷滲出物が上方を通るか貫通して次に流体再循環管へ流れる不溶解性のかつ/または固定化された基質に結合された、捕捉状の(化学変化を起こしにくい、不溶解性のかつ/または固定化された)以下のような種があってもよい。
創傷底における酸化ストレスを除去するための、3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン) 、アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンEおよびグルタチオン、およびこれらの安定誘導体、およびこれらの混合物のような酸化防止剤および遊離基捕捉剤;
デスフェリオキサミン(DFO)、3-ヒドロキシチラミン(ドーパミン)のようなIII価鉄キレート化剤(III価鉄は創傷底における酸化ストレスに含まれる)のような遷移金属イオンキレート化剤のような金属イオンキレート化剤および/またはイオン交換剤;
III価鉄還元剤;
TIMPおよびアルファ1-アンチトリプシン(AAT)のようなプロテアーゼ阻害剤、4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスルホニルフルオライド(AEBSF、ペファブロック)およびNα-p-トシル-リシンクロロメチルケトン(TLCK)およびε-アミノカプロイル-p-クロロベンジルアミドのようなセリンプロテアーゼ阻害剤、システインプロテアーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、カルボキシル(酸)プロテアーゼ阻害剤;
創傷治癒に有害である酸化還元感受性遺伝子の創傷滲出物の中への発現を引き起こす物質の除去による創傷治癒の促進に潜在的に有益であるかあるいは実際に有益である犠牲的酸化還元物質;
酵素であってもよい自己誘導物質シグナル分子分解剤;
リポ多糖類、例えばペプチドミメティックス(peptidomimetics)に結合しあるいは分解する抗炎症物質;
ScavengePore(登録商標)フェンチルモルホリン(Aldrich)等のよう安定な不溶性の非固定の種とし得るような、という固体酸性捕捉剤を含有し例えば塩基捕捉剤や酸捕捉剤および/またはイオン交換剤や他の種といったような、創傷滲出物内におけるpH調節剤。
【0251】
創傷治癒に有害である滲出物の他の生理活性成分は、このようにして除去してもよい。
【0252】
これらの成分は適切なキレート化剤および/またはイオン交換剤、酵素であってもよい分解剤、あるいは他の種で除去してもよい。
【0253】
以下の種類の官能化された基質には、創傷からの再循環流体をそれらの上方に流す際に創傷治癒に有害である物質を除去することのできる部位が、その表面にある。
不均質樹脂、例えば、
金属捕捉剤、すなわち
3-(ジエチレントリアミノ)プロピル-官能化シリカゲル、
2-(4-(エチレンジアミノ)ベンゼン)エチル-官能化シリカゲル、
3-(メルカプト)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1-チオウレイド)プロピル-官能化シリカゲル、
トリアミンテトラアセテート-官能化シリカゲル、
あるいは求電子的捕捉剤、すなわち
4-カルボキシブチル-官能化シリカゲル、
4-エチルベンゼンスルホニルクロライド-官能化シリカゲル、
プロピオニルクロライド-官能化シリカゲル、
3-(イソシアノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(チオシアノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(2-無水コハク酸)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(マレイミド)プロピル-官能化シリカゲル、
あるいは求核性捕捉剤、すなわち
3-アミノプロピル-官能化シリカゲル、
3-(エチレンジアミノ)-官能化シリカゲル、
2-(4-(エチレンジアミノ))プロピル-官能化シリカゲル、
3-(ジエチレントリアミノ)プロピル-官能化シリカゲル、
4-エチルベンゼンスルホンアミド-官能化シリカゲル、
2-(4-トルエンスルホニルヒドラジノ)エチル-官能化シリカゲル、
3-(メルカプト)プロピル-官能化シリカゲル、
ジメチルシロキシ-官能化シリカゲル、
あるいは塩基捕捉剤あるいは酸捕捉剤、すなわち
3-(ジメチルアミノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド-[1,2-α] ピリミジノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1-イミダゾル-1-イル)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1-モルホリノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1-ピペラジノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(1-ピペリジノ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(4,4’-トリメチルジピペリジノ)プロピル-官能化シリカゲル、
2-(2-ピリジル)エチル-官能化シリカゲル、
3-(トリメチルアンモニウム)プロピル-官能化シリカゲル、
あるいは反応物、すなわち
3-(1-シクロヘキシルカルボジイミド)プロピル-官能化シリカゲル、
TEMPO-官能化シリカゲル、
2-(ジフェニルホスフィノ)エチル-官能化シリカゲル、
2-(3,4-シクロヘキシルジオール)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(グリシドキシ)プロピル-官能化シリカゲル、
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル-官能化シリカゲル、
1-(アリル)メチル-官能化シリカゲル、
4-ブロモプロピル-官能化シリカゲル、
4-ブロモフェニル-官能化シリカゲル、
3-クロロプロピル-官能化シリカゲル、
4-ベンジルクロライド-官能化シリカゲル、
2-(カルボメトキシ)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(4-ニトロベンズアミド)プロピル-官能化シリカゲル、
3-(ウレイド)プロピル-官能化シリカゲル、
または前記のものの任意の組み合わせ
のようなシリカ保持型反応物。
【0254】
創傷ドレッシングからの灌注流体および/または創傷滲出物が上方を通るか貫通する、不溶性のかつ/または固定化された基体に結合された、前記のような捕捉性の(化学変化を起こしにくい、不溶解性のかつ/または固定化された)種は、流体洗浄手段に適したものとして前に説明された。
【0255】
しかしながら、それらは、創傷治癒に有害である物質を創傷から除去するために、たいていはドレッシングの内部に使用されるものの、適切な場合には、灌注流体および/または創傷滲出物に接触する装置の任意の部分にも使用することができる。
【0256】
本発明の第2見地においては、本発明による創傷洗浄装置を使用することによって、創傷治癒を促進させ得るようにして創傷を取り扱う方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0257】
【図1】本発明による創傷洗浄装置を示す断面図である。
【図2】本発明による創傷洗浄装置を示す断面図である。
【図3】本発明による創傷洗浄装置を示す断面図である。
【図4a】本発明による創傷洗浄装置を示す断面図である。
【図4b】本発明による創傷洗浄装置を示す図である。
【図5】本発明による創傷洗浄装置を示す断面図である。
【図6】本発明による創傷洗浄装置を示す断面図である。
【図7】本発明による創傷洗浄装置を示す断面図である。
【図8】本発明による創傷洗浄装置を示す断面図である。
【図9】本発明による創傷洗浄装置を示す断面図である。
【図10】本発明による創傷洗浄装置を示す断面図である。
【図11】本発明による創傷洗浄装置を示す断面図である。
【図12a】本発明による創傷洗浄装置を示す断面図である。
【図12b】本発明による創傷洗浄装置を示す断面図である。
【図13】本発明による創傷洗浄装置を示す断面図である。
【図14】本発明による創傷洗浄装置を示す断面図である。
【図15】本発明による創傷洗浄装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0258】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明を何ら限定するものではなく単なる例示としての実施形態に関して、本発明について説明する。
【0259】
図1〜図15は、本発明の第1見地による創傷洗浄装置を示す断面図である。
【0260】
図1〜図11および図14は、創傷からの滲出物を洗浄するための単相手段を備えた装置を示している。より詳細には、次のようである。
【0261】
図1,2,3,6,7,14は、往復システムを示している。そのようなシステムにおいては、創傷からの滲出物は、さらに付加的には灌流液は、少なくとも1回は逆向きにといったように1回または複数回にわたって洗浄手段を通過する。
【0262】
図2,4,5,8,9,11,15は、循環システムを示している。そのようなシステムにおいては、創傷からの滲出物は、単一方向にのみ通過する。
【0263】
図12および図13は、創傷からの滲出物を洗浄するための二相手段を備えた装置を示している。より詳細には、次のようである。
【0264】
図12および図13は、洗浄相が洗浄手段を通過するようなそのような装置を示している。
【0265】
図1〜図11および図14に示すように、創傷を洗浄するための装置(1)は、
−変形可能な創傷ドレッシング(2)であるとともに、創傷上にわたって比較的液密な封止部あるいは閉鎖部を形成し得る裏張層(3)でありかつ所定位置において創傷ドレッシング(2)を皮膚に対して十分に保持するようにして取り付けるための接着性フィルムを付帯した裏張層(3)を有している変形可能な創傷ドレッシング(2)と;
−創傷からの滲出物から創傷治癒に有害な材料を選択的に除去するための洗浄手段(4)であるとともに、裏張層(3)の下方に配置され、使用時には創傷の直上位置に配置されることとなる、洗浄手段(4)と;
−洗浄手段にわたって流体を移動させるための駆動デバイス(7)と;
を具備している。
【0266】
大部分の図面においては、洗浄手段(4)から流体を抽出するための手段や、洗浄手段(4)に対して流体を供給するための手段や、裏張層の直下の滲出物から流体を抽出するための手段や、裏張層の直下の滲出物に対して流体を供給するための手段、といったような、例えばレギュレータやバルブ等の付加的な手段は、図示が省略されている。
【0267】
図1には、往復システムが図示されている(創傷からの滲出物は、洗浄手段にわたって、少なくとも1回は往復する)。微生物透過可能なフィルムからなる裏張層(3)は、中央位置において基端向きに突出する凹所付きのボス(11)を付帯している。
【0268】
ボス(11)の凹所(14)内に設けられた多孔性フィルム(12)および透過可能メンブラン(13)は、洗浄チャンバ(15)を形成している。洗浄チャンバ(15)は、初期的には創傷滲出物から離間しているものの創傷滲出物から有害材料を隔離するための固体微粒子(図示せず)を収容している。これらが、全体として、洗浄手段(4)を形成している。
【0269】
ボス(11)の周囲には、環状チャンバ(16)が形成されている。環状チャンバ(16)は、ボス(11)に対して取り付けられた流体透過可能フィルム(17)と、裏張層(3)の下面と、の間に形成されている。環状チャンバ(16)は、フレキシブルな弾性発泡体(18)によって充填されている。
【0270】
導入および導出のためのパイプ(19)が、ボス(11)の中央を貫通して設置されており、ボス(11)の内部と、シリンジバレル(20)と、の間を連通させている。シリンジバレル(20)は、シリンジタイプの駆動デバイス(7)の一部をなすものである。
【0271】
使用時には、シリンジプランジャー(22)の駆動により、洗浄手段(4)にわたって、創傷滲出物を、往復移動的に、吸引したり押し込んだりすることができる。
【0272】
図2に示す装置(1)は、循環システムとして、また、循環システムと往復システムとの双方として、動作することができる。
【0273】
図2の装置は、図1の装置と構成的に同様のものである。しかしながら、図2の装置は、主に、導入パイプ戻りループが、ボス(11)を貫通しつつ屈曲形成されているともに、逆止弁(21)を介してチャンバ(16)の内部とシリンジバレル(20)との間にわたって連通している。逆止弁(21)の流通抵抗は、洗浄手段(4)の流通抵抗と比較して、より小さいものとされている。例えばバルブといったような、チャンバ(16)から流体を流出させるための手段は、図2においては、省略されている。
【0274】
使用時には、シリンジ型駆動デバイス(7)のプランジャー(22)を引っ張ることによって、洗浄手段(4)内へと創傷滲出物を吸引する。これにより、創傷滲出物から、有害材料を隔離する。
【0275】
その後、シリンジ型駆動デバイス(7)のプランジャー(22)を戻し、これにより、洗浄済み創傷滲出物を、バルブ(21)を通して環状チャンバ(16)内へと押し込む。その後、洗浄済み創傷滲出物は、多孔性フィルム(17)を介して創傷内へと戻される。
【0276】
また、シリンジプランジャーの各戻りストローク時には、洗浄済み創傷滲出物の一部が、洗浄手段(4)を通して押し戻される。その割合は、大いに、シリンジバレル上における戻りループ(19)の位置に依存する。環状チャンバ(16)へとポンピングされる量は、シリンジバレルに対して連結された戻りループの基端部から離れるにつれて、減少する。それは、プランジャーが、戻りストロークの後期に、戻りループ(19)をカットオフするからである。
【0277】
本発明による装置のこの実施形態において使用されている洗浄手段のタイプに大いに依存して、洗浄手段(4)の抵抗に対してのバルブ(21)の抵抗が、さらに、チャンバ(16)を通過する量と、多孔性フィルム(17)を通過する量と、の比率に影響を及ぼすことができる。
【0278】
もし流出バルブが設けられている場合には、流出バルブによって、チャンバ(16)内における過度の圧力を、逃がすことができる。例えば、高滲出状態において創傷からの滲出物に起因するものといったようなチャンバ(16)内における過度の圧力を、逃がすことができる。
【0279】
図3に示す装置(1)は、主に、フロー経路内における多孔性フィルム(12)の位置に関して、図2の装置と相違している。
【0280】
使用モードは、同じである。すなわち、シリンジプランジャー(22)の移動により、創傷滲出物を、洗浄手段(4)から吸引したり洗浄手段(4)に対して押し込んだりすることができる。
【0281】
図4に示す装置(1)は、駆動デバイス(7)に関して、図2の装置と相違している。
【0282】
駆動デバイスは、シリンジに代えて、押しボタンポンプとされている。ポンプ(7)は、裏張層(3)の先端面上に取り付けられている。
【0283】
ポンプは、弾性的に押圧可能な取込チャンバ(26)を備えている、この取込チャンバ(26)は、導出パイプ(19)を介して洗浄手段(4)に対して連結されているとともに、小さな抵抗の第1逆止弁(31)付きの搬送チューブ(27)を介して、弾性的に押圧可能な導出チャンバ(36)に対して連結されている。導出チャンバ(36)は、小さな抵抗の第2逆止弁(32)付きの導入チューブ(20)を介してチャンバ(16)の内部に対して連結されている。
【0284】
使用時には、取込チャンバ(26)は、手動で押圧され解放される。取込チャンバ(26)が初期状態へと復帰する際に、創傷滲出物を、洗浄手段(4)から吸引することができる。
【0285】
その後、導出チャンバ(36)が、手動で押圧され解放される。導出チャンバ(36)が初期状態へと復帰する際に、洗浄済み創傷滲出物を、取込チャンバ(26)から第1逆止弁(31)を介して吸引することができる。
【0286】
その後、取込チャンバ(26)が、再度手動で押圧され解放される。取込チャンバ(26)が押圧された際に、洗浄済み創傷滲出物を、取込チャンバ(26)から第1逆止弁(31)を介して導出チャンバ(36)内へと押し込むことができる。そして、取込チャンバ(26)が初期状態へと復帰する際に、創傷滲出物を、洗浄手段(4)から吸引することができる。
【0287】
その後、導出チャンバ(36)が、再度手動で押圧され解放される。導出チャンバ(36)が押圧された際に、洗浄済み創傷滲出物を、導出チャンバ(36)から第2逆止弁(32)を介してチャンバ(16)内へと押し込むことができる。そして、導出チャンバ(36)が初期状態へと復帰する際に、洗浄済み創傷滲出物を、取込チャンバ(26)から吸引することができる。
【0288】
所望の回数にわたって、上記のサイクルが繰り返される。そして、出力チャンバ(36)を手動で押圧するという第2サイクル以降においては、洗浄済み創傷滲出物が環状チャンバ(16)を通して押し込まれ、さらにその後、多孔性フィルム(17)を通して創傷内へと戻される。
【0289】
図5〜図7および図10においては、各装置(1)は、ここでは変形可能な中空バッグとされたチャンバ(5)を備えた洗浄手段(4)を具備している。チャンバ(5)は、裏張層(3)と、透過可能なものであるとともに裏張層(3)の基端面に対して恒久的に取り付けられたポリマーフィルム(6)と、によって形成されている。
【0290】
使用時には、ポリマーフィルム(6)は、ドーム状裏張層(3)の下方に位置し、かつ、創傷の直上に位置する。ポリマーフィルム(6)は、弾性的フレキシブル発泡体(41)に吸収された洗浄流体を収容している。
【0291】
図5〜図7および図10は、洗浄手段(4)内からまた洗浄手段(4)内へと創傷滲出物を移動させるための様々な手法を示している。
【0292】
図5においては、電気的機械的オシレーターまたは圧電トランスデューサ(43)が、裏張層(3)に対して接触しつつ、裏張層(3)の周囲領域に対して取り付けられた剛直なフレーム(44)に対して、中央位置において取り付けられている。電気的機械的オシレーターまたは圧電トランスデューサ(43)は、適切な交流電源(45)(概略的に図示されている)に対して、電気的に接続されている。チャンバ(5)には、流出バルブ(8)が設けられている。使用時に裏張層(3)の下方に集積した滲出物が過度なものとなった場合、流出バルブ(8)を開放することができる。これにより、過度の流体を追い出すことができ、過剰な圧力を逃がすことができる。
【0293】
図6においては、発泡体(41)が、弾性的でフレキシブルなバルーンコア(47)を有している。バルーンコア(47)は、裏張層(3)の周囲に取り付けられた導入導出パイプ(48)を介して、流体によって、例えばエアや窒素といったような気体によって、あるいは、例えば水や生理的食塩水といったような液体によって、膨張させたり収縮させたりすることができる。これにより、チャンバ(5)に対して様々な圧力を印加することができる。
【0294】
パイプ(48)は、コア(47)内へと膨張流体を供給したりまたコア(47)から膨張流体を抽出したりすることができこれにより洗浄手段(4)から創傷滲出物を抽出したりまた洗浄手段(4)内へと創傷滲出物を供給したりし得るような適切な駆動デバイス(58)(図示せず)に対して、連結されている。そのようなデバイスは、付加的にはパルス的な態様でもって流体を往復動させ得るような適切なデバイスとすることができる。
【0295】
駆動デバイスは、とりわけ、小さな蠕動ポンプや、ダイヤフラムポンプとすることができ、例えば、好ましくは、バッテリ駆動型の小型の携帯式のダイヤフラムポンプまたは蠕動ポンプとすることができ、例えば、チャンバ(5)の上方において裏張層(3)上へと中央に取り付けられ、また、裏張層(3)に対して着脱可能に取り付けられる。
【0296】
図7は、図6の装置(1)の一変形例を示している。裏張層(3)の下方に位置した弾性的にフレキシブルなバルーンコア(47)が、弾性的にフレキシブルなバルーンチャンバ(49)によって、代替されている。バルーンチャンバ(49)は、裏張層(3)と、不透過性のものとされかつ裏張層(3)の先端面に対して恒久的に取り付けられた剛直なポリマードーム(50)と、によって形成されている。
【0297】
裏張層(3)と剛直なポリマードーム(50)とによって形成されたバルーンチャンバ(49)も、また、裏張ドーム(50)の周囲に取り付けられた導入導出パイプ(51)を介して、流体によって、例えばエアや窒素といったような気体によって、あるいは、例えば水や生理的食塩水といったような液体によって、膨張させたり収縮させたりすることができる。これにより、チャンバ(5)に対して様々な圧力を印加することができる。
【0298】
適切な駆動デバイス(58)(図示せず)を使用することにより、図6の場合と同様に、バルーンチャンバ(49)内へと膨張流体を供給したりまたバルーンチャンバ(49)内から膨張流体を抽出したりすることができる。これにより、洗浄手段(4)内から滲出物を抽出したりまた洗浄手段(4)内へと滲出物を供給したりすることができる。この場合には、駆動デバイスは、裏張層(3)上にではなく、ドーム(50)上に取り付けることができる。
【0299】
図10においては、電気コイル(54)内に配置された電磁ソレノイドコア(53)が、剛直なフランジ(55)上において、裏張層(3)に対して接触しつつ、中央に取り付けられている。電気コイル(54)は、適切な交流電源(60)(概略的に図示されている)に対して電気的に接続されている。
【0300】
チャンバ(5)には、底部のところに、強磁性体材料からなる付属ディスク(56)が設けられている。ディスク(56)は、創傷滲出物に対して、また、洗浄流体に対して、液密的に設置されている。
【0301】
電流の方向が変わるたびに、ソレノイドコアが追従し、これにより、チャンバ(5)を押圧したり解放したりする。これにより、洗浄手段(4)から創傷滲出物を抽出したりまた洗浄手段(4)内へと創傷滲出物を押し込んだりすることができる。
【0302】
図8および図9は、図1および図4の装置(1)の一変形例を示している。双方の場合において、駆動デバイス(7)は、シリンジおよび押圧ボタンに代えて、小さな蠕動ポンプまたはダイヤフラムポンプによって代替されている。駆動デバイスは、好ましくは、バッテリ駆動型の小型の携帯式のダイヤフラムポンプまたは蠕動ポンプとされ、例えば、チャンバ(5)の上方において裏張層(3)上へと中央に取り付けられ、また、裏張層(3)に対して着脱可能に取り付けられる。
【0303】
図11は、創傷滲出物の洗浄のための単相手段を備えた装置を示している。この場合、創傷滲出物は、洗浄手段を通して、1回または複数回にわたって、単一方向にのみ通過する。この構造は、図5〜図7および図10に示す装置と同様である。
【0304】
装置(1)は、ここでは変形可能な中空バッグとされたチャンバ(5)を備えた洗浄手段(4)を具備している。チャンバ(5)は、裏張層(3)と、透過可能なものであるとともに裏張層(3)の基端面に対して恒久的に取り付けられたポリマーフィルム(6)と、によって形成されている。ポリマーフィルム(6)は、弾性的フレキシブル発泡体(41)に吸収された洗浄流体を収容している。
【0305】
弾性的にフレキシブルな発泡体(41)は、透過可能なメンブラン(43)の中に収容されているとともに、創傷滲出物から有害な材料を隔離するための材料を収容している。
【0306】
これらが全体として、洗浄手段(4)を形成している。
【0307】
導出パイプ(69)が、中央のところにおいて裏張層(3)を貫通しており、チャンバ(5)の内部とポンプとの間を連通させている。ポンプは、例えば、好ましくは、バッテリ駆動型の小型の携帯式のダイヤフラムポンプまたは蠕動ポンプとされ、例えば、チャンバ(5)の上方において裏張層(3)上へと中央に取り付けられ、また、裏張層(3)に対して着脱可能に取り付けられる。
【0308】
導入パイプ(20)は、周縁部分において裏張層(3)を貫通しており、創傷空間とポンプとの間を連通させている。
【0309】
使用時には、創傷滲出物は、ポンプ(7)によって、洗浄手段(4)を通して駆動され、その際、発泡体(41)が、創傷滲出物から有害な材料を隔離する。
【0310】
図12は、洗浄相を移動させるような、創傷滲出物を洗浄するための二相手段を備えた装置を示している。
【0311】
図12aは、洗浄相だけを移動させる装置を示している。図12bは、洗浄相と創傷滲出物との双方を移動させる装置を示している。
【0312】
双方の図において、装置(1)は、ここでは複数のチューブという態様のものとされたチャンバ(5)を備えた洗浄手段(4)を具備している。複数のチューブは、裏張層(3)の下方において、共に裏張層(3)に対して取り付けられた第1ボス(71)と第2ボス(72)との間にわたって、配列状で配置されている。チューブは、創傷滲出物内の有害材料を選択的に透過させ得るポリマーメンブランから形成されており、透析流体を収容している。
【0313】
導入パイプ(20)は、第1ボス(71)から延出されており、チャンバ(5)の内部とポンプ(7)との間を連通させている。ポンプは、例えば、好ましくは、バッテリ駆動型の小型の携帯式のダイヤフラムポンプまたは蠕動ポンプとされ、例えば、チャンバ(5)の上方において裏張層(3)上へと中央に取り付けられ、また、裏張層(3)に対して着脱可能に取り付けられる。導出パイプ(21)は、第2ボス(72)から延出されており、チャンバ(5)の内部とポンプ(7)との間を連通させている。
【0314】
使用時には、透析流体が、ポンプ(7)によって、洗浄手段(4)を通して駆動される。このとき、創傷滲出物から有害な材料が除去される。
【0315】
図12bにおいては、創傷滲出物の導出チューブを有した第3ボス(78)が、貫通しているとともに、創傷滲出物の導入チューブを有した第4ボス(79)が、貫通している。双方のボス(78,79)は、周縁位置に取り付けられており、裏張層(3)において互いに径方向反対側に配置されている。
【0316】
創傷滲出物の導出チューブ(80)は、第3ボス(78)に対して接続されていて、創傷内部と第2ポンプ(82)(図示せず)の導入ポートとの間を連通させている。第2ポンプは、例えば、好ましくは、バッテリ駆動型の小型の携帯式のダイヤフラムポンプまたは蠕動ポンプとされ、裏張層(3)上へと中央に取り付けられている。
【0317】
創傷滲出物の導入チューブ(81)は、第4ボス(79)に対して接続されていて、創傷内部と第2ポンプの導出ポートとの間を連通させている。
【0318】
使用時には、第1ポンプ(7)によって洗浄手段(4)を通して透析流体が駆動されこれにより創傷滲出物から有害材料が除去されるだけでなく、第2ポンプによって、創傷滲出物相が、裏張層(3)の下方において、創傷空間内を通して逆向きに駆動される。これにより、創傷滲出物からの除去が増強される。
【0319】
図13は、洗浄相を駆動して創傷滲出物を洗浄するための二相手段を備えた装置を示している。
【0320】
装置(1)は、ここでは裏張層(3)の下方に配置されかつ発泡体フィラー(81)の下方に配置されたバッグという態様とされたチャンバ(5)を備えた洗浄手段(4)を具備している。
【0321】
このバッグは、ポリマーメンブランから形成されているとともに、透析流体を収容している。透析流体は、創傷滲出物からの有害材料を隔離または劣化させ得るような溶質または分散相スピーシーズとして作用する材料を含有している。メンブランは、選択的に透過可能なものとして選択されている。これにより、創傷滲出物から透析流体内へと、隔離あるいは破壊の対象をなす有害材料スピーシーズを灌流させ得るとともに、なおかつ、透析流体相内の大部分の拮抗成分が透析流体から出て創傷流体内へと自由に拡散することを阻止し得るものとされている。
【0322】
導出パイプ(89)が、裏張層(3)を貫通しており、チャンバ(5)の内部とポンプとの間を連通させている。ポンプは、例えば、好ましくは、バッテリ駆動型の小型の携帯式のダイヤフラムポンプまたは蠕動ポンプとされ、例えば、チャンバ(5)の上方において裏張層(3)上へと中央に取り付けられ、また、裏張層(3)に対して着脱可能に取り付けられる。導入パイプ(90)が、周縁部において裏張層(3)を貫通しており、チャンバ(5)とポンプとの間を連通させている。
【0323】
使用時には、透析液が、ポンプ(7)によって、洗浄手段(4)を通して駆動される。創傷滲出物から透析液内へと、隔離あるいは破壊の対象をなす有害材料スピーシーズが移動する。透析流体相内の拮抗成分は、滲出物内へと拡散することなく、創傷滲出物から有害材料を除去する。
【0324】
図14においては、図1および図3に示す装置と比較して構造的に同様であるような、往復システムが図示されている(創傷滲出物は、少なくとも1往復にわたっては、逆向きに洗浄手段を通過する)。
【0325】
溶液キャスティングまたは押出によって形成されたような、微生物不透過性のポリウレタンフィルム製の裏張層(3)は、中央に取り付けられた基端向きに突出するボス(11)を付帯している。ボス(11)には、流体供給用のかつ排出物排出用のチューブ(19)の係合端部に対する接続のためのルアーが設けられている。チューブ(19)は、ボス(11)の内部とシリンジバレル(20)との間に連通させている。シリンジバレル(20)は、シリンジ型駆動デバイス(7)の一部をなすものである。
【0326】
下側の多孔性フィルム(12)と、中間に位置した多孔性メンブラン(13)とは、共に、小さな複数の開口またはポアを有しつつ透過可能なポリウレタンメンブランから形成されたものであって、洗浄チャンバ(15)を形成している。洗浄チャンバ(15)は、固体微粒子(図示せず)を収容している。固体微粒子は、創傷滲出物から有害材料を隔離するためのものであり、初期的には、創傷滲出物から離間している。これらの全体が、ボス(11)内の導管に対して位置合わせされ得るものとされた上側開口(25)を有した平行に延在する不透過性の上側シート(24)と一緒に、洗浄手段(4)を形成している。上側シート(24)は、上側チャンバ(25)の形成に寄与している。上側シート(24)は、ボス(11)内の導管に対して位置合わせされた上部開口を有しつつ、ボス(11)の下面に対して取り付けられている。
【0327】
使用時には、シリンジプランジャー(22)を駆動することにより、洗浄手段(4)内から創傷滲出物を抽出することができまた洗浄手段(4)内へと創傷滲出物を押し込むことができる。
【0328】
図15に示す装置(1)は、循環システムを示している(創傷滲出物は、1回または複数回にわたって、一方向にのみ、洗浄手段を通過する)。図15の装置は、図8および図9の装置(1)の一変形例である。
【0329】
溶液キャスティングによって形成されたような、微生物不透過性のポリウレタンフィルム製の裏張層(3)は、中央に取り付けられた基端向きに突出するボス(11)を付帯している。ボス(11)には、このボスを貫通する一様な円筒形状の穴を有した導管と、流体供給チューブ(20)の係合端部に対する接続のためのルアーと、が設けられている。チューブ(20)は、ボス(11)の内部と駆動デバイス(7)の導出ポートとの間に連通させている。
【0330】
駆動デバイス(7)は、バッテリ駆動型の小型の携帯式のダイヤフラムポンプまたは蠕動ポンプとされ、裏張層(3)上へと中央に取り付けられ、また、裏張層(3)に対して着脱可能に取り付けられる。
【0331】
基端向きに突出する第2ボス(82)は、流体排出チューブ(83)の係合端部に対する接続のためのルアーを備えたものであって、裏張層(3)に対して、周縁領域において、取り付けられている。流体排出チューブ(83)は、創傷空間とポンプ(7)の導入ポートとの間に連通させている。
【0332】
下側の多孔性フィルム(12)と、中間に位置した多孔性メンブラン(13)とは、共に、小さな複数の開口またはポアを有しつつ透過可能なポリウレタンメンブランから形成されたものであって、洗浄チャンバ(15)を形成している。洗浄チャンバ(15)は、固体微粒子(図示せず)を収容している。固体微粒子は、創傷滲出物から有害材料を隔離するためのものであり、初期的には、創傷滲出物から離間している。これらの全体が、ボス(11)内の導管に対して位置合わせされ得るものとされた上側開口を有した平行に延在する不透過性の上側シート(24)と一緒に、洗浄手段(4)を形成している。上側シート(24)は、上側チャンバ(25)の形成に寄与している。上側シート(24)は、ボス(11)内の導管に対して位置合わせされた上部開口を有しつつ、ボス(11)の下面に対して取り付けられている。
【0333】
使用時には、創傷滲出物は、ポンプ(7)によって洗浄手段(4)を通して駆動される。そして、微粒子(図示せず)は、創傷滲出物から有害材料を隔離する。
【0334】
次に、本発明の装置の使用について、例示の目的のための以下の様々な実験例を参照して説明する。
【0335】
実験例1:図1の装置を使用した場合の水溶液からのFe(II)の洗浄:固体の金属イオン封鎖剤(カデクソメール(Cadexomer)−デスフェリオキサミン) を含有しているような単相の手動シリンジによってポンピングされるドレッシング
図14に示すような手動シリンジによってポンピングされるドレッシングを、構成した。洗浄チャンバ(15)は、固体微粒子(図示せず)を収容している。固体微粒子は、カデクソメール(50mg)上に支持されたデスフェリオキサミンとされ、代理滲出物からの有害なFe(II)イオンを隔離し除去することができる。
【0336】
多孔性フィルム(12)および透過性メンブラン(13)は、共に、Porvair(登録商標)透過性メンブランから形成されているものであって、シリンジによるポンピングによって、固体微粒子を含有させることなく洗浄流体を灌流させ得るように選択されている。
【0337】
3回にわたって、図1に示すようなドレッシングを、フェラスクロライドテトラハイドレート(Aldrich )(9.60ml、200マイクロモル)の水溶液を含有している9.60ml容積の円形創傷キャビティ(パースペックス中のキャスト)に対して、適用した。
【0338】
装置のシリンジを使用して、水溶液の完全な抽出と、水溶液の完全な再注入と、を繰り返した。各抽出においては、水溶液の中の100μlを、以下のような手順で、フェロジンアッセイ法を使用して分析した。すなわち、各100ml水溶液試料を、即座に、1mlというフェリジンのストック溶液(73.93mgのフェリジンを、蒸留水に添加して250mlとしたもの(600μM)を含有した1.5mlという容積の1cmという経路長さのUVキュベットに対して、添加した。少なくとも5分間という放置時間の後に、吸光度(562nm)の測定を行った。吸光度は、ユニキャム(UNICAM)UV4−100 UV−Vis分光光度計V3.32(製造番号022405)を使用して、測定した。
【0339】
4分間という間隔でもって、合計で6回の通過を行った。同じ手法を、流体を使用することなく(すなわち、シリンジのポンピングによって洗浄溶液を駆動することなく)、等価な時間ポイントでのサンプリングを行うことにより、繰り返した。
【0340】
結果および結論
得られた鉄濃度プロファイルを平均し、標準偏差を決定した。Fe(II)濃度は、3回のフルサイクル(12分)によって、背景レベルにまで実質的に枯渇した。対照実験においては、同じ経過時間では、実質的な濃度変化は、起こらなかった。図1に示すドレッシングは、例えば水や生理的食塩水や創傷滲出物といったような水溶液から、Fe(II)を効果的に隔離する。
【0341】
実験例2:図15の装置を使用した場合の酸性溶液のpHの中和:ScavengePore(登録商標)フェンチルモルホリンという固体酸性捕捉剤を含有しているような、単相かつ再循環型でポンピングされるドレッシング
図15に示すような再循環型でポンピングされるドレッシングを、構成した。洗浄チャンバ(15)は、固体微粒子(図示せず)を収容している。固体微粒子は、ScavengePore(登録商標)フェンチルモルホリン(Aldrich )(50mg)とされ、これは、200〜400μmという粒径を有した、低膨潤性のマクロポーラスな架橋度合いの大きなポリスチレン/ジビニルベンゼンからなるイオン交換樹脂マトリクスである。これにより、代理滲出物から、創傷滲出物内のpHに対して悪影響を及ぼす酸性種であるプロトンを、追い出して除去することができる。
【0342】
多孔性フィルム(12)および透過性メンブラン(13)は、共に、Porvair(登録商標)透過性メンブランから形成されているものであって、シリンジによるポンピングによって、イオン交換剤を含有させることなく洗浄流体を灌流させ得るように選択されている。
【0343】
3回にわたって、Dubecco's Modified Eagles Medium(DMEM)(sigma)(4.80ml。塩酸(水中において0.975N、75μl)を使用して、pH6.6にまでpHが調節された)を含有している9.60ml容積の円形創傷キャビティ(パースペックス中のキャスト)に対して、適用した。残りのキャビティ容積を、ガラスビーズで充填した。この溶液を、2.35ml/minという流速でもってキャビティ内にわたって循環させた。
【0344】
100μlという各サンプルを、5分ごとに、40分間にわたって、採取した。サンプルのpHを、フラット底pH計を使用して記録した。同じ手法を、流体を使用することなく(すなわち、溶液をポンピング循環させることなく)、等価な時間ポイントでのサンプリングを行うことにより、繰り返した。
【0345】
結果および結論
得られたpHプロファイルを平均し、標準偏差を決定した。pHは、40分間で、pH7.4にまで効果的に調整された。対照実験においては、同じ経過時間では、pH7にまで、より遅いpH変化が、観測された。
【0346】
実験例3:図12の装置を使用した場合の透析メンブランを横断しての拡散による水溶液からのエラスターゼの洗浄:試薬を含有していない二相の再循環型でポンピングされるドレッシング
図12に示すような再循環型でポンピングされるドレッシングを、構成した。洗浄チャンバ(15)は、ポリマーメンブランから形成された複数のチューブという形態とされ、創傷滲出物内の有害材料(エラスターゼ)を選択的に透過させることができる。複数のチューブを、裏張層(3)内に取り付けられた第1ボス(71)と第2ボス(72)との間の創傷空間内において、裏張層(3)の下方で、配列した。複数のチューブは、透析流体を含有しており、ポンプ(7)を備えた回路内に配置されている。
【0347】
3回にわたって、図12に示すようなドレッシングを、エラスターゼ溶液(豚の膵臓のエラスターゼ、Sigma)(4.80ml、TRISSバッファー内において0.5mg/ml、pH8.2、0.2M)を含有している9.60ml容積の円形創傷キャビティ(パースペックス中のキャスト)に対して、適用した。残りのキャビティ容積を、ガラスビーズで充填した。導入ポートおよび導出ポートを、循環ポンプに対して連結した。
【0348】
透析システムを、TRIS(pH8.0、0.2M)によって予め充填した。この溶液を、2.35ml/minという流速でもってキャビティ内にわたって循環させた。循環溶液から各10μlのサンプルを、5分ごとに、45分間にわたって、採取した。サンプルの活性を、標準的なN−サッカニル−(アラ) −p−ニトロアニリドによる比色分析を使用して記録した。同じ手法を、流体を使用することなく(すなわち、溶液をポンピング循環させることなく)、等価な時間ポイントでのサンプリングを行うことにより、繰り返した。
【0349】
結果および結論
サンプルの活性を、UV−Vis分光光度計を使用して、405nmにおける吸光度に基づいて決定した。結果を平均し、標準偏差を決定した。透析メンブランを横断してのエラスターゼの有効な転移が、45分で見られた。対照実験においては、同じ経過時間では、有効な転移は、観測されなかった。
【0350】
実験例4:図13の装置を使用した場合の水溶液からのFe(II)の洗浄:液相をなす隔離剤(スターチ−デスフェリオキサミン(DFO)共役体)を含有しているような二相の再循環型でポンピングされるドレッシング
図13に示すような装置(1)と同様のものを、構成した。すなわち、洗浄相が駆動されるような創傷滲出物の洗浄のための二相手段を備えた循環システム(創傷滲出物は、1回または複数回にわたって、単一方向にのみ、洗浄手段を通して通過する)を、構成した。
【0351】
装置(1)は、チャンバ(5)を備えた洗浄手段(4)を具備している。チャンバは、ポリマーメンブランから形成されているとともに、透析流体を含有している。透析流体は、創傷滲出物からの有害材料を隔離または劣化させ得るような溶質または分散相スピーシーズとして作用する材料を含有している。
【0352】
メンブランは、選択的に透過可能なものとして選択されている。これにより、創傷滲出物から透析流体内へと、隔離あるいは破壊の対象をなす有害材料スピーシーズを灌流させ得るとともに、なおかつ、透析流体相内の大部分の拮抗成分が透析流体から出て創傷流体内へと自由に拡散することを阻止し得るものとされている。
【0353】
上述したように、0.5〜1.0mlという容積の Slide-A-Lyder透析ユニットを備えた回路が、上側チャンバおよび下側チャンバとともに、設けられている。上側チャンバおよび下側チャンバは、上述したような特性(MWCO 10000)を有したものとして選択されたポリマーメンブランを介して創傷滲出物および洗浄流体が互いに隔離されたものである。
【0354】
洗浄流体が通過する下側チャンバは、互いに斜めの位置に配置された導入ポートと導出ポートとを有している。導入ポートおよび導出ポートは、ニードルを有しつつ開口しており、5ml容積の透析液リザーバとバッテリ駆動型の小型かつ携帯式のダイヤフラムポンプまたは蠕動ポンプとからなる回路に対して、連結されている。回路は、水性のかつ大きな分子量のスターチ−DFO共役体(5ml、4mg/ml)を含有している。
【0355】
水の高い分子量糊−DFOを含んでいます。フェラスクロライドテトラハイドレート(Aldrich )(0.5ml、3mM)の溶液を、スライドの上側キャビティ内に配置し、3.6ml/minでもって回路内において透析した。また、回路内において、(参照実験として)流体が無い状態で、透析を行った。
【0356】
各10μlのサンプルを、5分間隔でもって(t=0も含めて)30分間にわたって採取した。10の溶液を、実験例1において上述したフェロジン鉄(II)決定分析を使用して、分析した。これら実験を、3回にわたって行った。
【0357】
結果および結論
得られた鉄の濃度プロファイルを平均し、標準偏差を決定した。Fe(II)濃度は、30分でもって、最初のレベルのおよそ50%にまで、効果的に減少した。回路の流通がない場合には、Fe(II)濃度は、同じ経過時間で、開始値のおよそ75%にまでしか減少しなかった。装置は、水溶液から効果的にFe(II)を隔離する。
【符号の説明】
【0358】
1 洗浄装置
2 創傷ドレッシング
3 裏張層
4 洗浄手段
7 駆動デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷を洗浄するための洗浄装置であって、
変形可能な創傷ドレッシングを具備し、
このドレッシングが、裏張層を具備し、
この裏張層が、創傷上において、比較的流体密封的な封止部あるいは閉鎖部を形成し得るものとされ、
前記ドレッシングが、このドレッシングの内部に配置されたフィルタを有した洗浄手段を具備し、
前記ドレッシングが、前記洗浄手段を通して流体を移動させるための駆動デバイスを具備していることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
請求項1記載の洗浄装置において、
前記裏張層を貫通する通路が設けられ、
前記フィルタが、前記通路の起点部分のところに位置していることを特徴とする洗浄装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の洗浄装置において、
前記フィルタが、疎水性材料から形成されていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄装置において、
前記フィルタが、ポリマー材料から形成されたフラットシートまたはメンブランであることを特徴とする洗浄装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗浄装置において、
前記フィルタが、ミクロ濾過ユニット、または、マクロ濾過ユニット、または、限外濾過ユニットであることを特徴とする洗浄装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の洗浄装置において、
前記フィルタが、創傷滲出物から創傷治癒に有害な材料を選択的に除去するものであることを特徴とする洗浄装置。
【請求項7】
請求項6記載の洗浄装置において、
前記フィルタが、例えば細胞残屑および微生物といったような粒子を保持するものであることを特徴とする洗浄装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の洗浄装置において、
前記洗浄手段を通して流体を移動させるための前記駆動デバイスが、ポンプであることを特徴とする洗浄装置。
【請求項9】
請求項8記載の洗浄装置において、
前記ポンプが、創傷底に対して正圧または負圧を印加するように機能するものであることを特徴とする洗浄装置。
【請求項10】
請求項9記載の洗浄装置において、
前記創傷底に対して印加される前記正圧または負圧が、50%大気圧までのまたは15%大気圧までの正圧あるいは負圧とされることを特徴とする洗浄装置。
【請求項11】
請求項10記載の洗浄装置において、
前記正圧または負圧が、パルス的に、または、連続的に、または、可変的に、または、可逆的に、または、自動的に、または、プログラム的に、印加されるものとされていることを特徴とする洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−137084(P2010−137084A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59188(P2010−59188)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【分割の表示】特願2006−537411(P2006−537411)の分割
【原出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(391018787)スミス アンド ネフュー ピーエルシー (79)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】