説明

インサイドベルト用接着不織布及び複合インサイドベルト

【課題】 伸長性に優れ、しかもインサイドベルトに縫合する時にシワが発生しにくいインサイドベルト用接着不織布、及び複合インサイドベルトを提供すること。
【解決手段】 本発明のインサイドベルト用接着不織布は、高捲縮繊維を主体とする水流絡合不織布からなる基布に接着樹脂が接着されたインサイドベルト用接着不織布であり、10%伸長時応力が、たて方向、よこ方向ともに10N/5cm幅以下である。また、本発明の複合インサイドベルトは前記インサイドベルト用接着不織布をインサイドベルト本体と縫合したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウエストやローウエストにおける複合インサイドベルト、及び複合インサイドベルトに使用できる接着不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インサイドベルトとして、織物、編物、加工糸が使用されている。このようなインサイドベルトはウエストベルト用生地に縫い込んで使用したり、パウダードット方式、ダブルドット方式等によって塗布された熱可塑性樹脂によって、ウエストベルト用生地に接着して使用している。しかしながら、このような従来のインサイドベルトには、次のような問題があった。
【0003】
(1)インサイドベルトをウエストベルト用生地と縫製した場合には、「イセ」、「ピリ」が出やすく、波打ち現象が生じて、外観が損なわれる。
(2)熱可塑性樹脂を塗布したインサイドベルトをウエストベルト用生地に接着した場合には、接着時に熱可塑性樹脂がシミ出す恐れがある(特に、ウエストベルト用生地が薄い場合)。また、安定した初期接着力が得られにくく、波打ち現象が生じやすい。
【0004】
そのため、「伸縮性を有するベルト本体と、該ベルト本体に一体的に形成された接着層とからなる接着タイプのストレッチベルトにおいて、上記接着層の素材として熱融着性の合成樹脂不織布を用い、該合成樹脂不織布をベルト本体に加熱融着して接着層を一体的に形成したことを特徴とする接着タイプのストレッチベルト。」が提案されている(特許文献1)。しかしながら、このような熱融着性の合成樹脂不織布を用いた場合、ベルト本体と合成樹脂不織布との接着力が弱く、剥離しやすいものであった。また、ベルト本体と合成樹脂不織布とを接着したストレットベルトが合成樹脂不織布側に反り上がってしまい、寸法を確認しづらいばかりでなく、ウエストベルト用生地へ接着する際の位置決めもしづらいなど、作業効率が悪いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−61012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、インサイドべルトに接着不織布を縫製した複合インサイドベルトが提案されている。しかしながら、従来、複合インサイドベルトに使用していた接着不織布は伸長性に劣るため、身体の動きを阻害し、着用時の快適性に劣る、接着不織布をインサイドベルトに縫製した際にシワが発生しやすい、ウエストカーブにフィットしにくい、などの問題があった。
【0007】
そこで、特許文献1に開示されているようなウレタン不織布を接着不織布として使用することも考えられるが、ウレタン不織布は滑りが悪く、インサイドベルトに縫合する時にシワが発生しやすく、外観が損なわれるだけでなく、作業性の悪いものであった。
【0008】
本発明はこのような状況下においてなされたものであり、伸長性に優れ、しかもインサイドベルトに縫合する時にシワが発生しにくいインサイドベルト用接着不織布、及び複合インサイドベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1にかかる発明は、「高捲縮繊維を主体とする水流絡合不織布からなる基布に接着樹脂が接着されたインサイドベルト用接着不織布であり、10%伸長時応力が、たて方向、よこ方向ともに10N/5cm幅以下であることを特徴とする、インサイドベルト用接着不織布。」である。
【0010】
本発明の請求項2にかかる発明は、「請求項1に記載のインサイドベルト用接着不織布をインサイドベルト本体と縫合した複合インサイドベルト。」である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1にかかる発明は、インサイドベルト用接着不織布は高捲縮繊維を主体とする水流絡合不織布からなり、伸長性に優れており、身体の動きに追従しやすいため、着用時の快適性に優れ、また、接着不織布をインサイドベルトに縫製する際に歪を吸収できるためシワが発生せず、更には、ウエストカーブにフィットしやすい複合インサイドベルトを製造することができる。
【0012】
また、高捲縮繊維を主体とする水流絡合不織布は比較的摩擦抵抗が低く、滑りが良いため、インサイドベルト本体との縫製時にシワが発生しにくく、外観の優れる複合インサイドベルトを作業性良く製造できる。なお、高捲縮繊維がポリエステル系樹脂からなると、耐光性に優れ、黄変することがなく、また、洗濯時やドライクリーニング時に他の素材によって汚染されることもない。
【0013】
更に、高捲縮繊維を主体とする水流絡合不織布はソフトで風合が優れるため、優しく肌にフィットする。また、ボリューム感があるため、仮に、腰にウエストベルト用生地があたったとしても、肌が痛くなることがない。更に、高捲縮繊維を主体とする水流絡合不織布は保形性にも優れているため、ウエストカーブの処理性に優れる複合インサイドベルトを製造することができる。
【0014】
本発明の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかるインサイドベルト用接着不織布をインサイドベルト本体と縫合した複合インサイドベルトであるため、伸長性に優れており、身体の動きに追従しやすいため、着用時の快適性に優れ、また、シワのない外観の優れる、ウエストカーブにフィットしやすいものである。また、ソフトで風合が優れるため、優しく肌にフィットする。更に、インサイドベルト用接着不織布はボリューム感があるため、仮に、腰にウエストベルト用生地があたったとしても、肌が痛くなることがない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のインサイドベルト用接着不織布(以下、単に「接着不織布」ということがある)は、伸長性に優れているように、高捲縮繊維を主体とする水流絡合不織布からなる基布を用いている。本発明における高捲縮繊維とは50個/インチ以上の捲縮数を有する繊維をいう。このような高捲縮繊維は、例えば、潜在捲縮繊維の捲縮を発現させることによって得ることができる。なお、捲縮数はJIS L1015:2010 8.12.1 けん縮数、に規定する方法により得られる値である。
【0016】
この好適である潜在捲縮繊維としては、例えば、熱収縮率の異なる複数の樹脂が複合された複合繊維、繊維の一部に特定の熱履歴を施した繊維、を挙げることができる。より具体的には、複合繊維として、偏心型芯鞘構造のもの、又はサイドバイサイド型構造のものを好適に用いることができる。熱収縮率の異なる樹脂の組み合わせとしては、例えば、ポリエステル−低融点ポリエステル、ポリアミド−低融点ポリアミド、ポリエステル−ポリアミド、ポリエステル−ポリプロピレン、ポリプロピレン−低融点ポリプロピレン、ポリプロピレン−ポリエチレンなど種々の合成樹脂の組み合わせを例示できる。特に、ポリエステル−低融点ポリエステル、若しくはポリプロピレン−低融点ポリプロピレンの組み合わせからなる潜在捲縮繊維は、化学的な耐性と伸長性の点で優れているため好ましい。また、繊維の一部に特定の熱履歴を施した潜在捲縮繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂からなる繊維の一側面に熱刃などを当てながら通過させたものを使用できる。
【0017】
この潜在捲縮繊維の繊度は特に限定するものではないが、接着不織布の風合いが硬くならないように、また、十分な強度と伸長性が得られるように、0.5〜5.5dtexであるのが好ましく、1.1〜2.2dtexであるのがより好ましい。なお、繊度の異なる潜在捲縮繊維を2種類含んでいる場合、次の式により算出される平均繊度が前記繊度範囲内にあるのが好ましい。また、繊度の異なる潜在捲縮繊維を3種類以上含んでいる場合も同様にして算出した値が前記繊度範囲内にあるのが好ましい。
【0018】
Fav=1/{(Pa/100)/Fa+(Pb/100)/Fb}
ここで、Favは平均繊度(単位:dtex)、Paは水流絡合不織布に占める一方の繊維(繊維A)の質量割合(単位:mass%)、Faは繊維Aの繊度(単位:dtex)、Pbは水流絡合不織布に占める他方の繊維(繊維B)の質量割合(単位:mass%)、Fbは繊維Bの繊度(単位:dtex)をそれぞれ意味する。
【0019】
また、潜在捲縮繊維の繊維長は特に限定するものではないが、カード機を用いて繊維ウエブを形成する場合には、カード機の通過性が良好であるように、35〜65mmであるのが好ましく、40〜55mmであるのがより好ましい。
【0020】
本発明の水流絡合不織布は上述のような高捲縮繊維を主体とするものであるが、「主体」とは高捲縮繊維を50mass%以上含むことを意味し、高捲縮繊維が多ければ多いほど、伸長性に優れ、身体の動きに追従しやすく、また、縫製する際の歪を吸収してシワが発生しにくいため、70mass%以上含むのがより好ましく、90mass%以上含むのが更に好ましく、100mass%高捲縮繊維からなるのが最も好ましい。
【0021】
なお、高捲縮繊維以外の繊維は特に限定するものではないが、高捲縮繊維が潜在捲縮繊維の捲縮を発現させたものである場合、潜在捲縮繊維の捲縮を発現させる際の熱によって溶融しない繊維であるのが好ましく、例えば、ポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維など)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ポリアミド系繊維(6ナイロン繊維、66ナイロン繊維など)、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維等の合成繊維、又はコットンやレーヨン等のセルロース系繊維を含むことができる。
【0022】
本発明の基布は上述のような高捲縮繊維を主体とする水流絡合不織布からなる。そのため、比較的摩擦抵抗が低く、滑りが良いため、インサイドベルト本体との縫製時にシワが発生しにくく、外観の優れる複合インサイドベルトを作業性良く製造できる。また、高捲縮繊維を主体とする水流絡合不織布はソフトで風合が優れるため、優しく肌にフィットする。更に、ボリューム感があるため、仮に、腰にウエストベルト用生地があたったとしても、肌が痛くなることがない。更に、高捲縮繊維を主体とする水流絡合不織布は保形性にも優れているため、ウエストカーブの処理性に優れる複合インサイドベルトを製造することができる。
【0023】
このような水流絡合不織布からなる基布は、例えば、次のようにして製造できる。まず、前述のような潜在捲縮繊維、必要であれば、潜在捲縮繊維の捲縮を発現させる際の熱によって溶融しない繊維を用意する。
【0024】
次いで、潜在捲縮繊維を主体とする繊維ウエブをカード法、エアレイ法などの乾式法により繊維ウエブを形成する。なお、繊維ウエブにおける繊維の配向は特に限定するものではないが、多方向の伸長性に優れるように、多方向に配向しているのが好ましい。このような多方向に配向させる方法として、例えば、ランダムウェッバーを用いる方法、繊維ウエブ形成後にクロスラッパーにより繊維配向方向を交差させる方法、などを挙げることができる。なお、繊維配向の異なる繊維ウエブを2層以上積層することもできる。また、繊維ウエブとして、一方向性の繊維ウエブを含んでいても良い。
【0025】
次いで、繊維ウエブを水流で絡合し、水流絡合ウエブを形成する。水流絡合条件は基布の伸長性を損なわない限り、特に限定するものではないが、例えば、ノズル径0.05〜0.3mm、好適には0.08〜0.2mm、ピッチ0.2〜3mm、好適には0.4〜2mmで一列に配列したノズルプレートや、ノズルを2列以上に配列したノズルプレートを使用し、水圧1〜20MPa、好適には4〜12MPaの水流で処理する。このような水流絡合処理は1回である必要はなく、2回以上作用させても良い。また、水流処理面は繊維ウエブの片面又は両面である。なお、水流絡合処理する際に繊維ウエブを支持するネットやメッシュなどの支持体が大きな開口を有していると、得られる水流絡合不織布も大きな開口を有するものとなるため、50メッシュ以上の目の細かい平織ネットや、孔間距離が0.4mm以下の多孔板を使用するのが好ましい。
【0026】
次いで、水流絡合した繊維ウエブに対して加熱処理を施し、潜在捲縮繊維の捲縮を発現させて、伸長性に優れる水流絡合不織布とすることができる。なお、加熱手段としては、例えば、熱風ドライヤー、赤外線ランプ、加熱ロールなどを挙げることができるが、捲縮の発現を阻害せず、優れた伸長性を発揮できるように、熱風ドライヤー、赤外線ランプなどを用いるのが好ましい。特に、潜在捲縮繊維が十分に捲縮を発現し、伸長性に優れるように、捲縮の発現による繊維ウエブの収縮分を見込んでオーバーフィードしながら加熱し、捲縮を発現させるのが好ましい。このオーバーフィード率は捲縮発現を良好に行うために、5%以上であるのが好ましく、10%以上であるのがより好ましく、15%以上であるのが更に好ましい。一方で、オーバーフィード率が40%を超えると、捲縮発現のムラによる品位不良が生じやすいため、40%以下であるのが好ましく、30%以下であるのがより好ましく、25%以下であるのが更に好ましい。
【0027】
本発明の接着不織布は上述のような基布に接着樹脂が接着されたものであるが、接着不織布はウエストベルト用生地に接着され、繰り返し洗濯される可能性があるため、接着不織布に洗濯耐性と強度を付与するために、水流絡合不織布をバインダで接着するのが好ましい。なお、バインダで接着することによって、基布の風合いが硬くなる傾向があるため、風合いを損なわないように、ガラス転移温度の低い(0℃以下)バインダで接着するのが好ましい。このバインダの種類は特に限定するものではないが、例えば、ポリアクリル酸エステル樹脂バインダ、ポリウレタン樹脂バインダなどを挙げることができる。
【0028】
なお、バインダの接着量は特に限定するものではないが、バインダ量の繊維量に対する質量比が、3〜20:97〜80であるのが好ましい。この範囲よりもバインダ量が少なくなると、十分に洗濯耐性と強度を付与できない傾向があり、この範囲よりもバインダ量が多くなると、風合いを損なう傾向が強くなるためで、5〜18:95〜82であるのがより好ましい。
【0029】
また、後述の接着樹脂の基布への接着状態が立体的となり、ウエストベルト用生地への接着強度に優れるように、前記バインダに加えて、撥水剤を含ませておき、基布に撥水性を付与するのが好ましい。この撥水剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂を挙げることができる。
【0030】
このようなバインダの水流絡合不織布への付与方法は特に限定するものではないが、例えば、水流絡合不織布をバインダ浴に浸漬する方法、バインダ溶液をコーティングする方法、バインダ溶液をスプレーする方法、などを挙げることができる。
【0031】
なお、このバインダで水流絡合不織布を接着する場合には、バインダが接着作用を奏するように、水流絡合不織布に対して熱を作用させるが、その加熱手段としても、熱風ドライヤー、赤外線ランプなどで実施するのが好ましい。なお、水流絡合不織布にテンションが掛かった状態でバインダの接着作用が発揮されると、基布の伸長性を損なう傾向があるため、オーバーフィードしながら加熱するのが好ましい。このオーバーフィード率は伸長性を損なわないように、5%以上であるのが好ましく、10%以上であるのがより好ましく、15%以上であるのが更に好ましい。一方で、オーバーフィード率が40%を超えると、引っ掛かりスジなどの品位不良が生じやすいため、40%以下であるのが好ましく、35%以下であるのがより好ましく、30%以下であるのが更に好ましい。
【0032】
本発明の基布はボリューム感があるように、また、強度と低応力時における安定した伸びを有するように、目付は30〜85g/mであるのが好ましく、40〜75g/mであるのがより好ましい。また、本発明の基布の厚さはボリューム感に優れているように、また、適度な風合いとドレープ性に優れているように、厚さは0.2〜2mmであるのが好ましく、0.4〜1mmであるのがより好ましい。なお、厚さは、20gf/cm荷重時の値をいう。
【0033】
本発明の接着不織布は上述のような基布に接着樹脂が接着されたものである。そのため、ウエストベルト用生地と接着して、適度な伸長性と保形性を付与できる。
【0034】
この接着樹脂としては、融点が80〜150°Cのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができ、この接着樹脂を3〜20g/m、好ましくは5〜15g/mの量で基布に接着させることができる。接着樹脂の接着量が3g/mよりも少ない場合には、ウエストベルト用生地との十分な接着力が得られなくなる傾向があり、一方で、接着樹脂の接着量が20g/mを超える場合には、ウエストベルト用生地と接着した際に、ウエストベルト用生地の風合いが硬くなるばかりでなく、ウエストベルト用生地の接着面とは反対面まで接着樹脂が染み出やすくなる傾向があるためである。
【0035】
このような接着樹脂は基布全体に一様に接着していれば良く、どのように接着しているかは特に限定するものではないが、例えば、ドット状、ストライプ状、ランダム状、格子状に接着していることができる。なお、ドット状に接着している場合には、1個のドット面積が0.1〜2mm、密度が8〜200個/cmであるのが好ましい。
【0036】
なお、逆しみが生じないように、接着不織布を接着する温度では実質的に溶融しない非溶融樹脂を介して接着樹脂を接着させても良い。この非溶融樹脂としては、例えば、自己架橋型アクリル酸エステル樹脂、架橋型ポリウレタン樹脂、架橋型シリコーン樹脂、架橋型ニトリルゴムなどの合成樹脂、又はこれらの変性物を使用できる。
【0037】
このような接着樹脂や非溶融樹脂は、例えば、ペースト状にした後、スクリーンやグラビアロールを利用して、基布に接着させることができる。なお、非溶融樹脂も接着させる場合には、非溶融樹脂を接着させるスクリーンやグラビアロールと同調させて、非溶融樹脂上に接着樹脂を接着させる方法、又は非溶融樹脂ペースト上に、粉末状の接着樹脂を散布した後、空気や機械的手段(例えば、棒状の殴打物など)により、余剰の接着樹脂を除去し、接着樹脂を非溶融樹脂上のみに接着させることができる。
【0038】
本発明の接着不織布は基布に対して、上述のような接着樹脂が直接、又は非溶融樹脂を介して接着したものであるが、基布にテンションがかかった状態で、接着樹脂又は非溶融樹脂が接着すると、基布構成繊維が接着固定され、接着不織布の伸長性を損なう傾向がある。そのため、接着樹脂又は非溶融樹脂を接着させるために熱を作用させる際に、基布にテンションを掛けないように、オーバーフィードしながら加熱するのが好ましい。
【0039】
なお、接着樹脂又は非溶融樹脂を接着させるための加熱手段も、熱風ドライヤー、赤外線ランプなどで実施するのが好ましく、特に、基布にテンションが掛からないように、オーバーフィードしながら加熱するのが好ましい。このオーバーフィード率は伸長性を損なわないように、5%以上であるのが好ましく、10%以上であるのがより好ましい。一方で、オーバーフィード率が30%を超えると、引っ掛かりスジなどの品位不良が生じやすいため、30%以下であるのが好ましく、25%以下であるのがより好ましい。
【0040】
本発明の接着不織布は上述の通り、高捲縮繊維を主体とする水流絡合不織布からなる基布に接着樹脂が接着したものであるが、10%伸長時応力が、たて方向、よこ方向ともに10N/5cm幅以下と伸長性に優れるものである。つまり、10%伸長時の応力が10N/5cm幅以下ということは、少ない力で伸びることを意味するため、伸長性に優れるものである。また、この10%伸長時応力はたて方向とよこ方向のいずれの方向に対しても10N/5cm幅以下であるため、身体の動きに追従しやすいため、着用時の快適性に優れている。また、接着不織布をインサイドベルトに縫製する際に歪を吸収できるためシワが発生せず、更には、ウエストカーブにフィットしやすい複合インサイドベルトを製造することができる。より好ましくは、たて方向、よこ方向ともに8N/5cm幅以下であり、更に好ましくは、たて方向、よこ方向ともに6N/5cm幅以下であり、更に好ましくは、たて方向、よこ方向ともに4N/5cm幅以下であり、更に好ましくは、たて方向、よこ方向ともに3N/5cm幅以下である。このような10%伸長時応力を有する接着不織布は、例えば、前述のように、潜在捲縮繊維の捲縮の発現を阻害しないように、また、基布の伸長性を阻害しないように、オーバーフィードしながら熱処理を実施することによって製造することができる。
【0041】
なお、本発明における10%伸長時応力は、JIS L 1085:1998、6.5.1に準じて測定した値である。すなわち、幅50mm、長さ300mmの試験片を、それぞれたて方向、よこ方向に5枚ずつ採取し、つかみ間隔100mmの定速伸長形引張試験機に取り付け、100mm/min.の引張速度で、試験片が10%伸長するまで引張り、その時の応力を測定し、各5枚の算術平均値を算出し、10%伸長時応力とする。なお、たて方向とは、水流絡合不織布製造時における生産方向であり、よこ方向とは、たて方向と直交する方向である。
【0042】
本発明の接着不織布は滑り性に優れており、インサイドベルト本体に縫合する時にシワが発生しにくいため、外観を損ねることがないだけでなく、作業性に優れている。より具体的には、滑り性に優れているように、接着不織布の接着樹脂が接着していない面における、たて方向とよこ方向のいずれの方向においても、平均摩擦係数が0.5μ以下であるのが好ましく、0.4μ以下であるのがより好ましく、0.3μ以下であるのが更に好ましい。
【0043】
この「摩擦係数」は表面試験機(カトーテック(株)製、KES−FB4)により測定した値、つまり、試料(接着不織布)を表面速度1mm/min.で移動させ、試料に接触させた摩擦子により表面摩擦を検出した値であり、「平均摩擦係数」は3点における摩擦係数の算術平均値をいう。
【0044】
本発明の複合インサイドベルトは上述のような接着不織布をインサイドベルト本体に縫合したものであるため、伸長性に優れている。そのため、身体の動きに追従しやすいため、着用時の快適性に優れ、また、シワのない外観の優れる、ウエストカーブにフィットしやすいものである。更に、ソフトで風合が優れるため、優しく肌にフィットする。更に、インサイドベルト用接着不織布はボリューム感があるため、仮に、腰にウエストベルト用生地があたったとしても、肌が痛くなることがないものである。
【0045】
本発明の複合インサイドベルトを構成するインサイドベルト本体としては、従来から公知のインサイドベルトを使用することができ、接着不織布自体が伸長性を有するため、インサイドベルト本体も伸長性を有するのが好ましい。このような伸長性を有するインサイドベルト本体としては、例えば、合成樹脂製糸に熱可塑性エラストマー製弾性モノフィラメントを織り込んだ織物又は編み込んだ編物を挙げることができる。なお、前記合成樹脂製糸として、ポリエステル、ナイロン、アクリル、アセテート等を挙げることができ、前記熱可塑性エラストマーとして、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等を挙げることができる。
【0046】
また、接着不織布とインサイドベルト本体とを縫合する糸としては、本縫用ミシン糸、ウーリー糸を例示できるが、ウーリー糸は伸長性や嵩高性を付与した加工糸であるため、ウーリー糸を用いて縫合すると、接着不織布の伸長性を損ないにくいため好適に使用できる。なお、縫合は接着不織布の接着樹脂が接着した面が露出するように、接着不織布とインサイドベルト本体とを重ねた後に、実施する。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は次の実施例に限定されるものではない。なお、オーバーフィード率(Ro)は次の式から算出される値である。
【0048】
Ro=[(Rf−Re)/Rf]×100
ここで、Rfは供給速度、Reは供出速度をそれぞれ表す。
【0049】
(実施例1)
繊度2.2dtex、繊維長51mmのポリエステル/低融点ポリエステルサイドバイサイド型潜在捲縮繊維100%を用い、カード機により一方向性繊維ウエブを形成した後、クロスラッパーにより、交差繊維ウエブ(目付:15g/m)を形成した。
【0050】
一方で、繊度2.2dtex、繊維長51mmのポリエステル/低融点ポリエステルサイドバイサイド型潜在捲縮性繊維100%を用い、ランダムウェッバーによりランダム繊維ウエブ(目付:20g/m)を形成した。
【0051】
次いで、交差繊維ウエブとランダム繊維ウエブとを積層した後、この積層繊維ウエブを80メッシュの平織ネット上に載置し、ノズル径0.13mm、ピッチ0.6mmのノズルプレートを用いて、水圧6.5MPaの水流で、ランダム繊維ウエブ面に1回処理した後、反転させ、同様のノズルプレートから交差繊維ウエブ面に水圧8.5MPaの水流を1回噴出し、水流絡合した。
【0052】
その後、この水流絡合した積層繊維ウエブをオーバーフィード率21.2%でオーバーフィードしながら、温度165℃に設定した熱風ドライヤーへ供給し、潜在捲縮繊維の捲縮を発現させて、水流絡合不織布(目付:51.6g/m)を製造した。
【0053】
他方、ガラス転移温度が−31℃のアクリル酸エステル系樹脂エマルジョンバインダに、シリコーン系撥水剤を固形分で15%混合し、バインダ溶液を調製した。また、ポリアミド樹脂をペースト化した接着樹脂ペーストを調製した。
【0054】
次いで、前記水流絡合不織布を前記バインダ溶液浴に浸漬した後、オーバーフィード率25%でオーバーフィードしながら、温度150℃に設定した熱風ドライヤーへ供給し、バインダの接着作用を発揮させて、バインダ接着基布(目付:55.7g/m、厚さ:0.67mm、バインダ量:4.1g/m)を製造した。
【0055】
続いて、前記接着樹脂ペーストを直径0.63mm(面積:0.31mm)の孔が、密度52個/cmで散在したスクリーンを通して、バインダ接着基布のランダム繊維ウエブ側表面にドット状にプリントした後、オーバーフィード率17%でオーバーフィードしながら、温度120から150℃まで順に昇温するように設定した熱風ドライヤーへ供給し、接着樹脂の接着作用を発揮させて、接着不織布(目付:65.7g/m、接着樹脂量:10g/m)を製造した。
【0056】
(比較例1)
水流絡合不織布をバインダ溶液浴に浸漬した後のオーバーフィード率を14%としたこと、及びバインダ接着基布のランダム繊維ウエブ側表面にドット状にプリントした後、オーバーフィード率8%でオーバーフィードしながら、温度120から150℃まで順に昇温するように設定した熱風ドライヤーへ供給し、接着樹脂の接着作用を発揮させたこと以外は、実施例1と同様にして、接着不織布(目付:61.8g/m、接着樹脂量:10g/m)を製造した。
【0057】
(比較例2)
ウレタンスパンボンド不織布(セーレン社製、品番:UYOX 50、目付:50g/m、厚さ0.47mm)を用意した。
【0058】
(比較例3)
ウレタンメルトブロー不織布(Freudenberg社製、品番:XO 30、目付:30g/m、厚さ0.12mm)を用意した。
【0059】
(比較例4)
繊度1.7dtex、繊維長44mmのレギュラーポリエステル繊維50mass%、繊度2.2dtex、繊維長51mmのレギュラーポリエステル繊維20mass%、繊度1.1dtex、繊維長38mmのレギュラーポリエステル繊維30mass%とを用い、ランダムウェッバーによりランダム繊維ウエブ(目付:17g/m)を形成した。
【0060】
次いで、ランダム繊維ウエブを、温度210℃に加熱したエンボスロールとスムースロール間に通して、部分的に圧着した圧着不織布(圧着面積:10.24%)を形成した。
【0061】
次いで、前記圧着不織布を、シリコーン撥水剤を固形分で2%含む浴中に浸漬した後、温度130℃に設定したキャンドライヤーと温度150℃に設定したキャンドライヤーで乾燥し、撥水不織布(目付:17g/m)を製造した。
【0062】
続いて、ポリアミド樹脂ペーストを直径0.43mm(面積:0.15mm)の孔が、密度112個/cmで散在したスクリーンを通して、撥水不織布にドット状にプリントした後、オーバーフィード率5%でオーバーフィードしながら、温度120から180℃まで順に昇温するように設定した熱風ドライヤーへ供給し、接着樹脂の接着作用を発揮させて、接着不織布(目付:27g/m、接着樹脂量:10g/m)を製造した。
【0063】
(比較例5)
ポリエステル加工糸からなる平織物(目付:36g/m、織密度:79/64)を用意した。
【0064】
次いで、アクリル系樹脂エマルジョンを、直径0.22mm(面積:0.04mm)の孔が、密度180個/cmで散在したスクリーンを通して、平織物にドット状にプリント(プリント量:4g/m)した。
【0065】
その後、ポリアミドパウダーを散布した後に、エアーブローで余剰のポリアミドパウダーを払い落として、前記プリント上にポリアミドパウダーを付着させた接着織物(目付:49g/m、ポリアミドパウダー量:9g/m)を製造した。
【0066】
(接着不織布の物性評価)
1.伸長時応力;JIS L 1085:1998、6.5.1に準じて測定した。すなわち、幅50mm、長さ300mmの試験片を、それぞれたて方向、よこ方向に5枚ずつ採取し、つかみ間隔100mmの定速伸長形引張試験機に取り付け、100mm/min.の引張速度で、試験片が10%伸長するまで荷重を加え、その時の応力を測定し、各5枚の算術平均値を算出し、10%伸長時応力とした。
2.引張り強さ、伸び率;JIS L 1085:1998、6.5.1に準じて測定した。すなわち、幅50mm、長さ300mmの試験片を、それぞれたて方向、よこ方向に5枚ずつ採取し、つかみ間隔100mmの定速伸長形引張試験機に取り付け、100mm/min.の引張速度で、試験片が破断するまで荷重を加えた。この時の最大荷重を測定し、各5枚の算術平均値を算出し、引張り強さとした。また、最大荷重時の伸びを測定し、各5枚の算術平均値を算出し、伸び率とした。
3.平均摩擦係数;表面試験機(カトーテック(株)製、KES−FB4)により測定した。つまり、幅200mm、長さ200mmの試験片を、それぞれたて方向、よこ方向に1枚ずつ採取し、試験片を表面速度1mm/min.で移動させて摩擦係数を検出し、3箇所の算術平均値を算出し、平均摩擦係数とした。
【0067】
これらの結果は表1に示す通りであった。
【0068】
【表1】

【0069】
表1から、本発明の接着不織布はたて方向、よこ方向のいずれの方向においても10%伸長時応力が小さい、伸長性に優れるものであった。しかも平均摩擦係数が小さく、比較的滑りやすいものであった。
【0070】
(実施例2、比較例6〜10)
インサイドベルト本体として、ソロ(登録商標)ストレッチインベルDS200を用意した。また、ポリエステル100%からなるフィラメントを3本撚り合わせた本縫用ミシン糸(50番手=78dtex 1×3、フジックス社製)を用意した。
【0071】
次いで、このインサイドベルト本体と実施例1又は比較例1〜5の接着不織布又は接着織物とを、本縫用ミシン糸を用いて、縫い目ピッチ5.5目/2cmで本縫いし、それぞれ複合インサイドベルトを製造した。
【0072】
実施例1の接着不織布を用いた複合インサイドベルト(実施例2)はシワを発生させることなく、作業性良く製造することができた。これに対して、比較例1、比較例4又は比較例5の接着不織布を用いた複合インサイドベルト(比較例6、9、10)は接着不織布の伸長性が悪いため、シワを有するものであった。また、比較例2、3の接着不織布を用いた複合インサイドベルト(比較例7、8)は、縫製時の滑りが悪いため、シワを有するものであった。
【0073】
(複合インサイドベルトの物性評価)
1.伸長時応力;JIS L 1085:1998、6.5.1に準じて測定した。すなわち、たて方向の応力を測定する場合には、幅50mm、長さ300mmの試験片を、よこ方向の応力を測定する場合には、幅50mm、長さ50mmの試験片を、各5枚ずつ採取し、定速伸長形引張試験機に取り付け、100mm/min.の引張速度で、試験片が10%伸長するまで荷重を加え、その時の応力を測定し、各5枚の算術平均値を算出し、10%伸長時応力とした。なお、つかみ間隔はたて方向の測定においては100mm、よこ方向の測定においては20mmとした。
2.引張り強さ、伸び率;JIS L 1085:1998、6.5.1に準じて測定した。すなわち、たて方向の引張り強さ及び伸び率を測定する場合には、幅50mm、長さ300mmの試験片を、よこ方向の引張り強さ及び伸び率を測定する場合には、幅50mm、長さ50mmを、各5枚ずつ採取し、定速伸長形引張試験機に取り付け、100mm/min.の引張速度で、試験片が破断するまで荷重を加えた。この時の最大荷重を測定し、各5枚の算術平均値を算出し、引張り強さとした。また、最大荷重時の伸びを測定し、各5枚の算術平均値を算出し、伸び率とした。なお、つかみ間隔はたて方向の測定においては100mm、よこ方向の測定においては20mmとした。
【0074】
【表2】

【0075】
表2から、本発明の複合インサイドベルトは、たて方向における10%伸長時応力が小さいため、複合インサイドベルトのたて方向を長手方向とすることによって、伸長性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の接着不織布は伸長性に優れており、身体の動きに追従しやすいため、着用時の快適性に優れ、また、接着不織布をインサイドベルトに縫製する際に歪を吸収でき、しかも滑りも良いためシワが発生せず、更には、ウエストカーブにフィットしやすい複合インサイドベルトを製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高捲縮繊維を主体とする水流絡合不織布からなる基布に接着樹脂が接着されたインサイドベルト用接着不織布であり、10%伸長時応力が、たて方向、よこ方向ともに10N/5cm幅以下であることを特徴とする、インサイドベルト用接着不織布。
【請求項2】
請求項1に記載のインサイドベルト用接着不織布をインサイドベルト本体と縫合した複合インサイドベルト。

【公開番号】特開2013−36151(P2013−36151A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175571(P2011−175571)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】