説明

インサート体抄込紙の抄造装置

【課題】第1湿紙層と第2湿紙層とに挟持させるインサート体を、第1湿紙層に載置させるために落下させる際に、インサート体の姿勢を確実に維持できるようにしたインサート体抄込紙の抄造装置の提供。
【解決手段】第1湿紙層P1の走行域で、第2湿紙層P2を重畳させる上流側に、ガイドロール12とサクションロール13、供給ロールとに掛け渡した無端循環移動する搬送ベルト11を備えたインサート体供給装置10を配する。サクションロール13と供給ロール14との間の走行をサクションボックス15に沿って行わせ、サクションロール13とサクションボックス15により搬送ベルト11を吸引し、搬送ベルト11の表面にICタグインレット9を担持させる。サクションボックス15に案内されるインサート方向Qを第1湿紙層P1の走行方向に対して順方向で斜め上方とし、前記供給ロール14の下端部からICタグインレット9を第1湿紙層P1に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、種々の情報が記録されるICチップを備えて、それ自体の識別を行えるICタグインレット等のインサート体が抄き込まれたインサート体抄込紙の抄造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な商品がある中で、いわゆる商品タグが付されるものがある。例えば、衣料品等には製造メーカが表示された商品タグが付されているものが多く、商品の流通過程における取扱者や消費者の指標とされている。この商品タグに当該商品に関する情報を記録したICチップを有するICタグインレットがインサート体として埋め込まれることにより、流通過程における商品管理の簡便化を図ることが行われている。特に、非接触型で動作が受動形式のICタグインレットであるRFID(Radio Frequency Identification)タグの普及により、商品管理等がより迅速に簡便に行われるようになってきている。
【0003】
ICタグインレットは、ICチップとこれを動作させる信号を受信するアンテナ線とが薄肉のフィルム支持体上に形成されているもので、商品タグにはこのICタグインレットが埋め込まれる。ICタグインレットは商品タグ用の用紙を抄造する際に抄き込むことにより埋め込まれ、用紙を二層の紙層で形成し、これらの層間にICタグインレットを挟み込んだ構造とされている。例えば、特許文献1には、抄紙機で一方の抄網で一方の湿紙層を形成し、ICタグインレットをこの湿紙層に載置させ、このICタグインレットの上に他方の抄網で形成した他方の湿紙層を被せてプレスパートに供して搾水し、ドライパートを通して乾燥させて抄紙されるICタグ抄き込み用紙の製造方法が開示されている。
【0004】
ICタグインレットを一方の湿紙層に載置する際には、湿紙層の形成を行うワイヤーパートにて行われるから、走行中の湿紙層に対してICタグインレットを載置することになる。このため、載置されたICタグインレットの姿勢が不揃いとなったり、湿紙層との密着が不十分で湿紙層が袋状に浮き上がったりするおそれがあるため、前記一方の湿紙層の表面に接着剤を噴霧した後にICタグインレットを載置させるようにしたICタグインレット抄き込み用紙の製造方法が、特許文献2に開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、ICタグインレットが連続した帯状のシート状体を抄き込んだ後に、紙層と共に切断する場合には切断箇所がずれてしまうと、ICタグインレットの抄き込み位置がずれてしまうおそれがあり、また、切断位置がICタグインレットの配置位置に依存してしまうため、タグ用の用紙の仕様変更に円滑に対応できないおそれがあると共に、その対応による製造コストが上昇するおそれがあることに鑑みて、前記一方の湿紙層である第1紙層を形成する第1抄紙手段と、前記他方の湿紙層である第2紙層を形成する第2抄紙手段と、第1、第2紙層を搬送する紙層搬送手段と、上記第1、第2紙層間に、RFIDチップ単位からなる単位実装体を供給する単位実装体供給手段とを備え、上記単位実装体供給手段は、上記単位実装体を第2紙層上に供給するための単位実装体搬送モータと、この単位実装体搬送モータを制御するコントローラと、上記紙層搬送手段によって搬送される紙層速度を検出してその検出信号を上記コントローラへ入力する紙層速度センサとを備えるとともに、上記コントローラは、上記紙層速度センサから入力された紙層速度に基づいて単位実装体搬送モータを制御し、単位実装体の供給タイミングを調整する構成されたRFIDチップ抄き込み紙の製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−122222号
【特許文献2】特開2008−77155号
【特許文献3】WO 2007/088873 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載された製造装置では、ICタグインレットを湿紙層に載置させる際に、該ICタグインレットを一対のベルトで挟持して搬送しながら湿紙層に供給する構造とされているため、搬送用ベルトの排出端部と湿紙との間に少なくともベルトを巻回させたロール径方向の長さに相当する高さが必要となる。このため、ICタグインレットの供給時には該ICタグインレットが搬送用ベルトの排出端部から落下することになって、湿紙層に載置されたICタグインレットの姿勢が不安定となってしまうおそれがある。
【0008】
特許文献1、2においても、ICタグインレットが載置される際には、供給装置から落下することが避けられず、ICタグインレットの姿勢が不揃いとなってしまう。すなわち、走行中の湿紙に対してICタグインレットを載置することによるから、シート状体から切断されて分離された単体のICタグインレットは軽量であるため、走行により生じる気流等の影響を受けやすく、落下中に方向が変えられてしまうおそれがあり、姿勢が不安定となってしまうことになる。
【0009】
そこで、この発明は、ICタグインレット等のインサート体を載置させた方の湿紙層に他方の湿紙層を重畳させて抄紙することにより、インサート体を埋め込むインサート体抄込紙を製造する場合に、インサートを湿紙層に載置させる際に該インサート体の姿勢を極力崩すことなく供給することができるようにしたインサート体抄込紙の抄造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置は、走行する湿紙からなる第1湿紙層にインサート体を載置させた後、該第1湿紙層に第2湿紙層を重畳させて前記インサート体を埋め込むことによるインサート体抄込紙の抄造装置において、走行する前記第1湿紙層に、該第1湿紙層の走行方向に対して順方向で、かつ、該第1湿紙層と交差するインサート方向から、前記インサート体を供給する無端循環移動帯を有するインサート体供給装置を備え、前記該無端循環移動帯のインサート方向に走行する際の下面を、前記インサート体を保持させる保持面部として、該保持面部を吸引する吸引手段を備え、前記保持面部の下端を前記第1湿紙層の走行域に臨ませて配設したことを特徴としている。
【0011】
すなわち、インサート体を第1湿紙層の走行方向に対して斜め後方から供給するようにしたものである。インサート体は前記無端循環移動帯が保持面部を走行する際には前記吸引手段による吸引力を受けて、該無端循環移動帯に吸着されているため、途中で落下することなく保持面部の下端部まで無端循環移動帯に担持された状態で搬送される。保持面部の下端部に達すると前記吸引力が消滅するから、インサート体は無端循環移動帯から前記第1湿紙層に落下する。このとき、斜め後方から落下することにより、円滑に第1湿紙層に移行することになり、インサート体は姿勢を崩すことなく第1湿紙層に載置される。その後、前記第2湿紙層が重畳され、搾水され、乾燥されてインサート体抄込紙が製造される。
【0012】
また、請求項2の発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置は、前記無端循環移動帯を通気性を有する材料により形成し、前記保持面部の移動域の内側に、該保持面部の移動方向に沿って吸引口を備えた吸引筐体を設け、前記吸引筐体で吸引することにより保持面部に前記インサート体を吸着して該インサート体を保持面部の下部の供給部から前記第1湿紙層に供給することを特徴としている。
【0013】
前記吸引手段を、通気性を備えた無端循環移動帯と前記保持面部に配設したサクションボックスとを組み合わせた構造としたものである。サクションボックスは保持面部を臨む部分に該保持面部に沿って吸引口が形成された吸引筐体により形成されているため、筐体内を負圧にすることにより吸引口から吸引される。しかも、前記無端循環移動帯が通気性を有しているから、該無端循環移動帯を介して吸引され、この無端循環移動帯の表面にインサート体が存している場合には、該インサート体が無端循環移動帯に吸着されて担持される。このため、無端循環移動帯の無端循環移動に伴われて、保持面部を移動する。保持面部の下端部に達した後、吸引状態が解除されてインサート体は前記第1湿紙層に移行することになる。
【0014】
また、請求項3の発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置は、前記無端循環移動帯の保持面部の上流側の走行域に受領面部を配し、該受領面部にインサート体を供給し、該受領面部から前記保持面部にわたり無端循環移動帯を案内する案内ロールに吸引手段を具備させてあることを特徴としている。
【0015】
前記インサート体を無端循環移動帯に担持させるには、前記保持面部が傾斜しているため、インサート体を下方から押し上げながら供給して、該保持面部の吸引力により吸引させるようにすることができる。しかし、一定の間隔でインサート体を無端循環移動帯に担持させるための機構が必要となり、複雑な構造で大型の装置を必要とするおそれがある。このため、無端循環移動帯の上方からインサート体を供給するようにすれば、簡単な構造の供給装置とすることが可能となる。このため、無端循環移動帯の一部を、上方からインサート体を所望の状態で供給できる方向に走行させてこの走行域を受領面部とし、該受領面部にインサート体を供給する。受領面部から前記保持面部に無端循環移動帯が走行するため、その走行方向の変更の際にインサート体が落下しては不都合であるから、この走行方向の変更を案内する案内ロールに吸引手段を設けて、インサート体の落下を防止するようにしたものである。案内ロールの部分を通過した後には、前記保持面部の吸引手段により吸引されて無端循環移動帯に担持される。
【0016】
また、請求項4の発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置は、前記インサート方向と前記第1湿紙層の走行方向とがなす角度を30度以下としたことを特徴としている。
【0017】
インサート体は第1湿紙層の走行方向に対して斜め後方から供給される。このとき、インサート方向と第1湿紙層の走行方向とがなす角度が大きいと、インサート体が第1湿紙層の走行に委ねられる前に該第1湿紙層に衝突して、インターと体の姿勢が崩れてしまうおそれがある。このため、インサート方向と第1湿紙層の走行方向とを平行に近い状態としてインサート体を供給することが望ましい。そこで、インサート方向と第1湿紙層の走行方向とがなす角度を30度以下としたものである。
【0018】
また、請求項5の発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置は、前記供給部の下端と前記第1湿紙層との間隔が0.5mm以下としたことを特徴としている。
【0019】
インサート体を第1湿紙層に供給する際には、該第1湿紙層の走行により生じる気流等の影響を受けることがないようにすることが望ましい。このため、第1湿紙層に接近させることにより気流等の影響を極力排除することができる。そこで、インサート体を第1湿紙層に供給する部分となる保持面部の下端と第1湿紙層との間隔を0.5mm以下としたものである。
【0020】
また、請求項6の発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置は、前記供給部に配置して無端循環移動帯の走行を案内するガイド手段に空気吹き出し手段を設け、該空気吹き出し手段から吹き出した空気で前記インサート体を第1湿紙層に移行させることを特徴としている。
【0021】
保持面部で無端循環移動帯に吸着したインサート体は、その吸引状態が解除された場合でも、例えば、無端循環移動帯の表面に水分が付着しているような場合には、インサート体が保持面部の下端部で離脱せずに、無端循環移動帯にインサート体が付着した状態で該無端循環移動帯の走行に伴われて通過してしまうおそれがある。特に、インサート体が軽量なものである場合には顕著である。このため、インサート体を無端循環移動帯から離脱させるために、前記供給部に設けた無端循環移動帯のガイド手段から空気を吹き出してインサート体を該空気の圧力により離脱させるようにしたものである。
【0022】
また、請求項7の発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置は、前記インタート体がICタグインレットであることを特徴としている。
【0023】
インサート体としてICタグインレットを用いるものである。ICタグインレットはICチップとアンテナとが組み込まれた薄肉のシート状をしたもので、ICタグインレットの製造は、複数のICタグインレットが連続したシート状に形成され、それを個々のICタグインレットに切断して前記インサート体供給装置へ供給するものである。インサート体供給装置に供給されたICタグインレットは、前記保持面部にて吸引力を受けて無端循環移動帯に担持され、前記供給部から前記第1湿紙層へ供給される。その後、前記第2湿紙層が重畳され、搾水され、乾燥されて、ICタグインレット抄込紙が製造される。
【0024】
また、請求項8の発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置は、前記第1湿紙層へのインサート体の供給間隔を変更するインサート体供給調整手段を備えていることを特徴としている。
【0025】
インサート体を抄き込む場合に、インサート体抄込紙の用途等に応じて、インサート体の抄き込み間隔等のインサート体の抄き込み配列を変更する必要がある。このため、インサート体の供給間隔を調整するインサート体供給調整手段を備えたものである。インサート体供給調整手段としては、例えば、前記インサート体供給装置の無端循環移動帯の速度を変更することによるもの等がある。
【0026】
また、請求項9の発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置は、前記案内ロールの吸引手段を該案内ロールに形成した吸引口で構成し、前記インサート体供給調整手段を該吸引口の配列の変更して前記インサート体の前記第1湿紙層への供給間隔を変更するものとしたことを特徴としている。
【0027】
前記抄き込み配列の変更を、案内ロールに形成された吸引口の配列位置を変更することにより行うようにしたものである。すなわち、インサート体が案内ロールに供給される際には、案内ロールの回転によって吸引口が該インサート体に臨むことにより吸引されて案内ロールに供給される。このため、例えば吸引口の周方向の間隔を大きくすれば、インサート体の供給間隔が広がり、抄込紙におけるインサート体の配列間隔が大きくなる。吸引口の周方向の間隔を小さくすれば、抄込紙におけるインサート体は小さな間隔で配列される。
【発明の効果】
【0028】
この発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置によれば、インサート体を第1湿紙層の走行方向と順方向から該第1湿紙層に載置させるようにしたから、該インサート体がその姿勢を崩すことなく第1湿紙層に供給される。また、インサート体供給装置に無端循環移動帯を用いてインサート体を搬送するから、インサート体を第1湿紙層まで極力接近させて供給できるため、インサート体の姿勢を保持させることができる。しかも、無端循環移動帯を配設する構造であるから、インサート体供給装置を大型化することがなく、設置スペースの制限を受けることがほとんどない。このため、既存の抄紙機にも容易に設置することができる。さらに、インサート体をインサート体供給装置へ供給する間隔を調整することにより、インサート体抄込紙の寸法を容易に変更できるから、該インサート体抄込紙の仕様変更等にも迅速に、かつ、簡便に対応することができる。
【0029】
また、請求項2の発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置によれば、保持面部において、簡単な構造で、確実にインサート体を無端循環移動帯に担持させることができる。
【0030】
また請求項3の発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置によれば、インサート体を確実にインサート体供給装置へ供給することができ、インサート体を確実に第1湿紙層へ載置させることができる。
【0031】
また、請求項4の発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置によれば、インサート体を確実に第1湿紙層に沿って供給できるから、該インサート体の姿勢を確実に保った状態で第1湿紙層に載置することができる。
【0032】
また、請求項5の発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置によれば、インサート体の第1湿紙層への供給時に、該第1湿紙層の走行により生じる気流等の影響をほとんど受けることがないから、インサート体を、その姿勢を崩すことなく第1湿紙層に載置させることができる。
【0033】
また、請求項6の発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置によれば、インサート体が強制的に無端循環移動帯から離脱させられることにより、確実に第1湿紙層へインサート体を移行させることができる。
【0034】
また、請求項7の発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置によれば、極めて軽量なICタグインレットであっても確実に第1湿紙層に載置させるインサート体供給装置となり、ICタグインレット抄込紙を製造するのに適した抄造装置とすることができる。
【0035】
また、請求項8または請求項9の発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置によれば、インサート体抄込紙の用途等に応じてインサート体の抄き込み配列を容易に変更することができる。したがって、インサート体抄込紙の用途に拘わらず、この抄造装置により種々のインサート体抄込紙を抄造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置の概略構造を示す側面図である。
【図2】この発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置に装備させたインサート体供給装置の一の実施形態を説明する側面図である。
【図3】無端循環移動帯の走行を案内するサクションロールの構造を説明する概略の断面図である。
【図4】図3に示すサクションロールの軸直角方向で切断した概略の断面図である。
【図5】サクションロールの外筒に形成された透孔の配置に関し、一の実施例を示す図である。
【図6】サクションロールの外筒に形成された透孔の配置に関し、他の実施例を示す図である。
【図7】保持面部を構成する吸引筐体の斜視図であり、サクションロールと供給ロールを想像線で併記してある。
【図8】インサート体としてのICタグインレットをインサート体供給装置に供給する機構の一の例を示す図である。
【図9】インサート体としてのICタグインレットをインサート体供給装置に供給する機構の他の例を示す図である。
【図10】この発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置に装備されたインサート体供給装置の他の実施形態を説明する側面図であり、図2に対応する図である。
【図11】図10に示すインサート体供給装置のガイド部材の構造を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置を具体的に説明する。なお、この実施形態では、インサート体としてICタグインレットを用いたICタグインレット抄込紙を抄造する場合を例示して説明する。
【0038】
図1にこの発明に係る抄造装置1を示す概略図であり、この実施形態では、第1湿紙層P1を形成する長網式の第1湿紙層形成用ワイヤーパート2と第2湿紙層P2を形成する傾斜式の第2湿紙層形成用ワイヤーパート3とを備えた、いわゆる多層抄き抄紙機が用いられる。なお、後述するように、上方からインサート体を第1湿紙層P1に載置するものであれば、円網その他の形式の抄紙機であっても構わない。前記第2湿紙層形成用ワイヤーパート3は、前記第1湿紙層形成用ワイヤーパート2の途中位置に、第2湿紙層を供給するようにしてあり、以後は第1湿紙層と第2湿紙層と二層となって、プレスパート4に給送される。プレスパート4ではこの二層の湿紙がプレスロール4a〜4dに挟持されながら通過することにより該湿紙に含まれた水分が圧搾されて除去される。このプレスパート4に続いてドライパート5に給送され、内部に過熱蒸気が供給される多数本のドライヤシリンダ5aを巻回しながら乾燥された後、リール6に巻き取られてID抄込紙Pが製造されることとなる。
【0039】
また、前記第1湿紙層形成用ワイヤーパート2にはヘッドボックス7から、第2湿紙層形成用ワイヤーパート3にはヘッドボックス8から、それぞれ製紙原料が供給され、ワイヤーパート2、3を走行しながら製紙原料の繊維の方向が整えられ、脱水されて、第1湿紙層P1と第2湿紙層P2とがそれぞれ形成される。
【0040】
前記第1湿紙層形成ワイヤーパート2を臨む位置であって、前記第2湿紙層形成ワイヤーパート3により第2湿紙層P2の供給位置よりも上流側に、インサート体供給装置としてのICタグインレット供給装置10が配されている。図2にこのICタグインレット供給装置10を示している。ICタグインレット供給装置10は、無端循環移動帯として通気性を備えた搬送ベルト11がガイドロール12と案内ロールとしてのサクションロール13、供給部14aを構成する供給ロール14とに巻回されて、搬送ベルト11がこれらロール12、13、14に案内されて無端循環移動を行うようにしてある。前記サクションロール13と供給ロール14との間では、搬送ベルト11は傾斜した方向に走行するよう案内され、この方向を、図1に示すように、第1湿紙層形成ワイヤーパート2の走行方向に対して順方向で、斜め上方から傾斜させてインサート方向Qとしてある。また、これらサクションロール13と供給ロール14との間位置には、後述する吸引筐体としてのサクションボックス15が設けられており、このサクションボックス15の一面に沿って搬送ベルト11が走行するようにしてある。このインサート方向Qと第1湿紙層P1の走行方向とがなす角度θを30度以下に設定してある。また、前記供給ロール14の下端と第1湿紙層P1との間隔gを0.5mm以下に設定してある。
【0041】
前記サクションロール13は、図3及び図4に示すように、内筒13aと外筒13bとからなる二重筒構造をしており、内筒13aは一端が支柱16aに固定されており、他端が外筒13bに軸受16bを介して連繋させてある。一方、外筒13bは一端が軸受17aを介して支柱17bに回転自在に支持されており、他端は軸受17cを介して内筒13aに連繋させてある。また、外筒13bの一端には駆動モータ18の出力軸が接続されて、該駆動モータ18の作動により内筒13aに対して回転するようにしてある。また、この内筒13aの内部は、図示しないブロワー等により吸引されて負圧にされている。該内筒13aの壁体の外周面には、図4に示すように、一対の区画壁13dが設けられており、この区画壁13dの先端が外筒13bの内周面に臨ませてあり、この先端に図示しないシール部材が取り付けられて、外筒13bの回転を阻害しないようにしてある。そして、内筒13aの壁体であってこれら区画壁13dで仕切られた部分のうち、このサクションロール13に巻回された前記搬送ベルト11を臨む部分には、図3と図4、図5に示すように、多数の透孔13cが形成されている。また、図3に示すように、内筒13aと外筒13bとの間に介在させた前記軸受16bと軸受17cの内側には閉塞壁13eが内筒13aの外周面に取り付けられて設けられている。したがって、内筒13aと外筒13bとの間の空間部が該閉塞壁13eによって外部と区画されている。そして、外筒13bの壁体には、図3と図4、図5に示すように、多数の透孔13fが形成されている。このため、前記ブロワー等による吸引力は、前記透孔13cと前記透孔13fを通ってサクションロール13に巻回された搬送ベルト11に作用することになる。しかも、外筒13bの回転によりサクションロール13に巻回された搬送ベルト11が走行すると共に、該搬送ベルト11に吸引力が作用することになる。
【0042】
前記サクションボックス15は、図7に示すように、搬送ベルト11を臨む面には、該搬送ベルト11の走行方向に沿って開口により吸引口15aが形成されている。また、このサクションボックス15の内部は図示しないブロワー等によって吸引されて負圧とされている。このため、搬送ベルト11がこのサクションボックス15に沿って走行する際には、吸引口15aを介してブロワー等による吸引力が該搬送ベルト11に作用することになり、この吸引力による作用を受ける部分が保持面部15bとなる。また、サクションボックス15の前記サクションロール13を臨む端部と前記供給ロール14を臨む端部のそれぞれは、それぞれのロール13、14の外形形状に沿って円弧状に形成されている。この場合、前記サクションロール13の搬送ベルト11に吸引力を作用させる部分に連続してサクションボックス15の吸引力を作用させることができるように、前記区画壁13dの位置を調整することが好ましい。
【0043】
前記ガイドロール12から前記サクションロール13との間を走行する際に、インサート体としてのICタグインレット9がICタグインレット供給装置10に供給されるようにしてあり、これらガイドロール12とサクションロール13との間が受領面部12aとされている。この受領面部12aにICタグインレット9を供給する機構を、図8及び図9に例示してある。ICタグインレット9は、ICチップとアンテナとがフィルム支持体に保持されて構成されており、これらを連続した帯状のシートとして製作され、巻き取られた状態で提供される。このシートを巻き解きながら、カッター25で個々のICタグインレット9に順次切断しながら前記受領面部12aに供給する。この場合には、例えば光学センサー等によって切断位置を検出すると共に、切断のタイミングを調整してICタグインレット9の供給タイミングを調整する。
【0044】
また、図9に示すように、予め所定の寸法に切断したICタグインレット9を供給用のカセット19に積層された状態で収容させ、該カセット19の下部にシャッター19aを設け、該シャッター19aを開放した状態で、最下部のICタグインレット9がサクションロール13の表面で吸引され、該サクションロール13の回転に伴われてカセット19から引き出されるようにすることができる。この場合には、ICタグインレット9の供給のタイミングはサクションロール13の外筒13bに形成した前記透孔13fの周方向の間隔L(図6示)と、該サクションロール13の回転速度により調整する。
【0045】
以上により構成されたこの発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置の作用を、以下に説明する。
【0046】
前記ヘッドボックス7から前記第1湿紙層形成用ワイヤーパート2に、前記ヘッドボックス8から前記第2湿紙層形成用ワイヤーパート3に、それぞれ製紙原料を供給する。供給された原料は、ワイヤーパート2、3のそれぞれにおいて、第1湿紙層P1と第2湿紙層P2とが形成される。第1湿紙層P1の走行途中において、前記ICタグインレット供給装置10からICタグインレット9が該第1湿紙層P1の表面に供給されて載置される。このICタグインレット供給装置10の下流で、前記第2湿紙層軽装用ワイヤーパート3から第2湿紙装置P2が供給されて第1湿紙層P1に重畳される。このため、第1湿紙層P11に載置されたICタグインレット9がこれら第1湿紙層P1と第2湿紙層P2に挟持された状態となって、後続するプレスパート4に給送される。プレスパート4ではこのICタグインレット9を挟持した状態の第1湿紙P1と第2湿紙P2とをプレスロール4a〜4dで圧搾されて搾水される。このとき、これらプレスロール4a〜4dで圧搾されることにより第1湿紙層P1と第2湿紙層P2とが結合されてICタグインレット9が抄き込まれた抄込紙Pが形成される。ついで、ドライパート5を通過することにより加熱されて水分を蒸発させることにより乾燥されICタグインレット抄込紙Pとなって、リール6に巻き取られる。
【0047】
前記ICタグインレット供給装置10には、個々のICタグインレット9が前記受領面部12aを走行する搬送ベルト11に供給される。供給されたICタグインレット9は搬送ベルト11がサクションローラ13に巻回している部分においては、該サクションローラ13からの吸引力を受けて搬送ベルト11に担持された状態で搬送される。サクションローラ13から前記保持面部15bに移行すると、前記サクションボックス15を通過するから、該サクションボックス15からの吸引力を受けてICタグインレット9は搬送ベルト11に担持された状態で搬送されて、前記供給ロール14に達する。該供給ロール14に達すると吸引力の作用が解除されることになるから、ICタグインレット9は搬送ベルト11から離脱する。この供給ローラ14が前記第1湿紙層P1の走行域を臨んで配されているから、搬送ベルト11から離脱したICタグインレット9は第1湿紙層P1上に落下する。このとき、前記保持面部15bが、ICタグインレット9の第1湿紙層P1に対するインサート方向Qを該第1湿紙層P1の走行方向に対して斜め上方で順方向となる傾斜面に形成されていることから、ICタグインレット9は第1湿紙層P1の走行方向に沿って落下することになる。このため、ICタグインレット9はその姿勢が保持された状態で第1湿紙層P1に供給されて、その上面に載置される。
【0048】
特に、前記インサート方向Qと第1湿紙層P1の走行方向とがなく角度を30度以下とすることにより、ICタグインレット9がその姿勢を保持した状態で円滑に第1湿紙層P1へ移行する。また、前記供給部14aにおける搬送ベルト11と第1湿紙層P1との間隔を0.5mm以下とすることにより、ICタグインレット9が第1湿紙層P1の走行により生じる気流の影響を受けることが極力防止される。このため、ICタグインレット9の姿勢が崩されることがなく、第1湿紙層P1へ載置されることになる。
【0049】
ところで、保持面部15bを通過する際にはサクションボックス15からの吸引力を受けて搬送ベルト11に担持されていたICタグインレット9が、供給ローラ14に達して吸引力の作用が解除されても搬送ベルト11から離脱しないおそれがある。軽量なインサート体であるとそのおそれがあり、特に、ICタグインレット9は軽量であることが必要とされるから、離脱しないおそれが強くなる。そこで、保持面部15bを通過した後には搬送ベルト11からICタグインレット9を強制的に離脱させるようにすることを要する場合がある。図10及び図11は、前記供給ロール14の代わりにICタグインレット9を強制的に搬送ベルト11から離脱させる排出機構を備えた搬送ベルト11のガイド部材21を備えたICタグインレット供給装置20を示している。このガイド部材21は、搬送ベルト11を巻回させてその無端循環移動を案内する外形形状とされており、内部が区画壁21aにより、保持面部15b側に位置している吸引室22と第1湿紙層P1側に位置している噴射室23とに分割されている。吸引室22の壁体であって搬送ベルト11に臨む位置であって、保持面部15b側の部分には透孔22aが形成されており、図示しないブロワー等によって該吸引室22が吸引されている。また、前記噴射室23の壁体であって前記第1湿紙層P1を臨む供給部14aには、空気噴射孔23aが形成されており、図示しないブロアー等によって該噴射室23に噴射用空気が供給されている。なお、前記透孔22aと空気噴射孔23aとは、前記サクションボックス15の吸引口15aの延長線上に配されている。なお、このガイド部材21は搬送ベルト11が円滑に走行することを許容すると共に、搬送ベルト11の擦過によっても容易に磨耗しない素材により形成することが好ましい。
【0050】
すなわち、保持面部15bを搬送ベルト11に担持されたICタグインレット9は、前記吸引室22を臨む位置に至ると、前記透孔22aから吸引力を受けて搬送ベルト11による担持状態が維持される。次いで、搬送ベルト11が前記空気噴射孔23aを臨む位置まで走行すると、該空気噴射孔23aから噴射された加圧空気により該搬送ベルト11に担持されているICタグインレット9が吹き飛ばされて、搬送ベルト11から強制的に離脱させられることになる。したがって、ICタグインレット9が離脱せずに搬送ベルト11に付着したまま搬送されてしまうことがない。
【0051】
以上説明した実施形態では、インサート体としてICタグインレットを抄き込む抄造装置について説明したが、ICタグインレット以外であっても抄き込むことができる。例えば、可撓性を備えた金属箔等を抄き込むことにより、当該金属箔の有無をセンサー等で検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
この発明に係るインサート体抄込紙の抄造装置によれば、インサート体の姿勢を所望の状態に維持して湿紙層に載置することができることから、安定したインサート体抄込紙を抄造することに寄与する。
【符号の説明】
【0053】
P ICタグインレット抄込紙
1 第1湿紙層
2 第2湿紙層
Q インサート方向
1 抄造装置
2 第1湿紙層形成用ワイヤーパート
3 第2湿紙層形成用ワイヤーパート
4 プレスパート
5 ドライパート
6 リール
10 ICタグインレット供給装置(インサート体供給装置)
11 搬送ベルト
12 ガイドロール
12a 受領面部
13 サクションロール
13a 内筒
13b 外筒
13c 透孔
13d 区画壁
13e 閉塞壁
13f 透孔
14 供給ロール
14a 供給部
15 サクションボックス(吸引筐体)
15a 吸引口
15b 保持面部
18 駆動モータ
19 カセット
20 ICタグインレット供給装置
21 ガイド部材
21a 区画壁
22 吸引室
22a 透孔
23 噴射室
23a 空気噴射孔
25 カッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する湿紙からなる第1湿紙層にインサート体を載置させた後、該第1湿紙層に第2湿紙層を重畳させて前記インサート体を埋め込むことによるインサート体抄込紙の抄造装置において、
走行する前記第1湿紙層に、該第1湿紙層の走行方向に対して順方向で、かつ、該第1湿紙層と交差するインサート方向から、前記インサート体を供給する無端循環移動帯を有するインサート体供給装置を備え、
前記該無端循環移動帯のインサート方向に走行する際の下面を、前記インサート体を保持させる保持面部として、該保持面部を吸引する吸引手段を備え、
前記保持面部の下端を前記第1湿紙層の走行域に臨ませて配設したことを特徴とするインサート体抄込紙の抄造装置。
【請求項2】
前記無端循環移動帯を通気性を有する材料により形成し、
前記保持面部の移動域の内側に、該保持面部の移動方向に沿って吸引口を備えた吸引筐体を設け、
前記吸引筐体で吸引することにより保持面部に前記インサート体を吸着して該インサート体を保持面部の下部の供給部から前記第1湿紙層に供給することを特徴とする請求項1に記載のインサート体抄込紙の抄造装置。
【請求項3】
前記無端循環移動帯の保持面部の上流側の走行域に受領面部を配し、該受領面部にインサート体を供給し、該受領面部から前記保持面部にわたり無端循環移動帯を案内する案内ロールに吸引手段を具備させてあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインサート体抄込紙の抄造装置。
【請求項4】
前記インサート方向と前記第1湿紙層の走行方向とがなす角度を30度以下としたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のインサート体抄込紙の抄造装置。
【請求項5】
前記供給部の下端と前記第1湿紙層との間隔が0.5mm以下としたことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載のインサート体抄込紙の抄造装置。
【請求項6】
前記供給部に配置して無端循環移動帯の走行を案内するガイド手段に空気吹き出し手段を設け、該空気吹き出し手段から吹き出した空気で前記インサート体を第1湿紙層に移行させることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載のインサート体抄込紙の抄造装置。
【請求項7】
前記インタート体がICタグインレットであることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載のインサート体抄込紙の抄造装置。
【請求項8】
前記第1湿紙層へのインサート体の供給間隔を変更するインサート体供給調整手段を備えていることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかに記載のインサート抄込紙の抄造装置。
【請求項9】
前記案内ロールの吸引手段を該案内ロールに形成した吸引口で構成し、前記インサート体供給調整手段を該吸引口の配列の変更して前記インサート体の前記第1湿紙層への供給間隔を変更するものとしたことを特徴とする請求項3から請求項8までのいずれかに記載のインサート体抄込紙の抄造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−168680(P2010−168680A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10857(P2009−10857)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】