説明

インサート成形用接着積層体

【課題】インサート成形時における溶融樹脂のインジェクション圧力により金属インサート部材表面に積層した接着剤が押し流されるのを防止し、インサート部材と射出樹脂との良好な接着性が形成できるインサート成形用接着積層体を提供することを目的する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂に極性基を導入した変性ポリオレフィン系樹脂組成物からなるホットメルト接着フィルムを布に予め含浸させておいた接着層を金属インサート部材に積層してインサート成形を行なうことにより上記課題が解決されることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形において、熱可塑性樹脂と金属インサート部材を、金型内で接着するためのインサート成形用接着積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材と樹脂部材とが一体化されてなる複合成形品は、従来から、自動車内装部材などに用いられている。金属部材と樹脂部材とを一体化する方法としては、接着剤を用いて接着する方法や、金属部材および樹脂部材に折り返し片や爪などの固定部材を設け、この固定部材を用いて両者を固着させる方法、ねじなどを用いて接合する方法などがある。しかし、接着剤を用いないで、金属部材と樹脂部材とが一体化されてなる複合品は、金属部材の形状加工と樹脂部材の成型加工とを別々に行なってから両者を一体化して形成しなければならないため、工程が複雑化し経済的でないという問題がある。また、接着剤でも溶剤系接着剤を使用した場合、VOCによる作業環境の悪化が懸念されたり、塗布ムラによる接着不良、糸引きによる成形体の外観不良などによる歩留まり率の低下が発生する。さらに、溶剤系接着剤では、塗布後、乾燥工程が必須であるため、設備の大型化や生産のタクトタイムが長くなるなど経済的ではない。例えば、特許文献1では、金属部材と樹脂部材をインサート成形により強固に接着させることが可能であるが、接着剤の乾燥工程に30分以上を要する。
【0003】
また、特許文献2では、金属材の表面を処理して超微細凹凸を形成させた後、該金属材をインサート成形により樹脂と複合化させるという、実質、接着剤を使用しない方法が記載されている。しかし、表面処理後に時間が経つと、金属表面の酸化により接着性が低下する懸念がある。
【0004】
一方、特許文献3に記載のポリオレフィン系樹脂に極性基を導入した変性ポリオレフィン系樹脂組成物からなるホットメルト接着フィルムは、種々の金属と種々の樹脂との良好な接着性が得られることが知られている。しかし、インサート成形において、金属インサート部材と射出樹脂との接着のために、ホットメルト接着フィルムを用いると、射出樹脂の流動圧力で射出樹脂の熱により溶融した接着フィルムが流されてしまい、部分的に金属インサート部材と射出樹脂が接着せず、良好な複合成形体を得ることが出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−73088号公報
【特許文献2】特開2010−64397号公報
【特許文献3】特開2010−89382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インサート成形時における溶融樹脂のインジェクション圧力により金属インサート部材表面に積層した接着剤が押し流されるのを防止し、金属インサート部材と射出樹脂との良好な接着性を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、ポリオレフィン系樹脂に極性基を導入した変性ポリオレフィン系樹脂組成物からなるホットメルト接着フィルムを布に予め含浸させておいた接着層を金属インサート部材に積層してインサート成形を行なうことでインジェクション圧力での樹脂流れを防止でき、且つ、成形時の溶融樹脂の熱によりホットメルト接着フィルムが溶融することで金属インサート部材と射出樹脂の良好な接着性が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本願発明は以下の構成を有するものである。
1).プロピレン単位が過半量であるポリオレフィン系樹脂に、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸グリシジルから選ばれる少なくとも1つのエポキシ基含有ビニル単量体及び芳香族ビニル単量体をグラフト反応させて成る変性ポリオレフィン系樹脂組成物を含有する接着剤を布に含浸させたことを特徴とするインサート成形用接着積層体。
【0009】
2).1)に記載のインサート成形用接着積層体中の接着剤の質量含有率が20〜60%であるインサート成形用接着積層体。
【0010】
3).布が厚さ100μm〜600μm、目付け50〜300g/m2であることを特徴とする2)に記載のインサート成形用接着積層体。
【0011】
4).アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるインサート部材に3)に記載のインサート成形用接着積層体を積層させることを特徴とするインサート成形用複合体。
【0012】
5).3)に記載のインサート成形用接着積層体が厚さ100〜600μmであることを特徴とする4)に記載のインサート成形用複合体。
【0013】
6).インサート成形時に射出される樹脂がアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)系樹脂であることを特徴とする5)に記載のインサート成形用複合体。
【発明の効果】
【0014】
本発明におけるインサート成形用接着積層体を用いると、インサート成形時において金属インサート部材と種々の射出樹脂との接着性良好な複合成形体を得ることが可能となり、自動車内装、住宅内装、家電機器筐体の成形品加飾用途に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の詳細について述べる。
本発明のインサート成形用接着積層体は、(A)変性ポリオレフィン系樹脂組成物からなるホットメルト接着剤が(B)織布、不織布、編布から選ばれる少なくとも1つ以上からなる布に含浸されたものである。該(A)成分として、(a−1)ポリオレフィン系樹脂に(a−2)エポキシ基含有ビニル単量体及び(a−3)芳香族ビニル単量体をグラフト反応させて成る変性ポリオレフィン系樹脂組成物である。
【0016】
(1)(a−1)ポリオレフィン系樹脂について
前記(a−1)ポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび/または1−ブテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下のビニル化合物などとのランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソブチレンが好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。
【0017】
また、エポキシ基含有ビニル単量体と相溶し易い点で、極性基が導入されたポリオレフィン系樹脂も使用できる。極性基が導入されたポリオレフィン系樹脂の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、アクリル酸変性ポリプロピレンなどの酸変性ポリプロピレン;エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/塩化ビニリデン共重合体、エチレン/アクリロニトリル共重合体、エチレン/メタクリロニトリル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリルアミド共重合体、エチレン/メタクリルアミド共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン/アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸イソブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸金属塩共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、又はその鹸化物、エチレン/プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体エチレン/アクリル酸エチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/ビニル単量体共重合体;塩素化ポリプロピレン塩素化ポリエチレンなどの塩素化ポリオレフィンなどが挙げられる。これらの極性基導入ポリオレフィン系樹脂は混合しても使用できる。
【0018】
前記原料ポリオレフィン系樹脂には、必要に応じて、ほかの樹脂またはゴムを本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0019】
前記ほかの樹脂またはゴムとしては、たとえばポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリイソブテン、ポリペンテン−1、ポリメチルペンテン−1などのポリα−オレフィン;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、プロピレン含有量が75重量%未満のプロピレン/ブテン−1共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン共重合体;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン/ジエン系単量体共重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン系共重合体;スチレン/ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体ランダム共重合体;スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体;水素化(スチレン/ブタジエンランダム共重合体)などの水素化(ビニル単量体/ジエン系単量体ランダム共重合体);水素化(スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体)などの水素化(ビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体);アクリロニトリル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体グラフト共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンなどのビニル重合体;塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体などのビニル系共重合体などがあげられる。
【0020】
ポリオレフィン系樹脂に対するこれらほかの樹脂またはゴムの添加量は、この樹脂の種類またはゴムの種類により異なり、前述のように本発明の効果を損なわない範囲内にあればよいものであるが、通常、25重量%程度以下であることが好ましい。
【0021】
さらに、ポリオレフィン系樹脂には必要に応じて、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、または架橋剤、連鎖移動剤、核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0022】
また、これらポリオレフィン系樹脂(各種の添加材料を含むばあいもある)は粒子状のものであってもペレット状のものであってもよく、その大きさや形はとくに制限されるものではない。
【0023】
また、前記の添加材料(ほかの樹脂、ゴム、安定剤および/または添加剤)を用いる場合は、この添加材料は予めポリオレフィン系樹脂に添加されているものであっても、ポリオレフィン系樹脂を溶融するときに添加されるものであってもよく、また変性ポリオレフィン系樹脂を製造したのちに適宜の方法でこの変性ポリオレフィン系樹脂に添加されるものであってもよい。
【0024】
ポリオレフィン系樹脂におけるプロピレン成分に関しては、ポリオレフィン系樹脂に対しラジカルが発生し易くなる点で、プロピレン単位が過半量であることが好ましい。ここでいう過半量とはポリオレフィン樹脂に対するプロピレン成分が50重量%以上のことを意味する。
【0025】
(2)(a−2)エポキシ基含有ビニル単量体について
(a−2)エポキシ基含有ビニル単量体は、変性ポリオレフィン系樹脂に接着性を付与するための成分である。例示するならば、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノグリシジル、マレイン酸ジグリシジル、イタコン酸モノグリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルコハク酸モノグリシジル、アリルコハク酸ジグリシジル、p−スチレンカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテンなどのエポキシオレフィン、ビニルシクロヘキセンモノオキシドなどの1種または2種以上が挙げられる。
これらのうち、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジルが安価という点で好ましい。前記エポキシ基含有ビニル単量体の添加量は、(a−1)ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.1〜100重量部であることが好ましく、0.5〜50重量部であることがさらに好ましい。また、(a−2)エポキシ基含有ビニル単量体の割合が、(a−1)ポリオレフィン系樹脂、(a−2)エポキシ基含有ビニル単量体、(a−3)芳香族ビニル単量体、及び(a−4)(メタ)アクリル酸エステル単量体の合計量が0.1〜50重量%の範囲であることが好ましく、0.5〜40重量%の範囲であることがより好ましく、1〜30重量%の範囲であることが特に好ましい。添加量が少なすぎると接着性が充分に改善されない傾向があり、添加量が多すぎると好適な形状や外観を有する樹脂組成物として取得できない傾向がある。
【0026】
(3)(a−3)芳香族ビニル単量体について
(a−3)芳香族ビニル単量体は、(a−2)エポキシ基含有ビニル単量体のグラフト効率を高めるための成分である。例示するならば、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレンなどのメチルスチレン;o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、α−クロロスチレン、β−クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのクロロスチレン;o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレンなどのブロモスチレン;o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、ジフルオロスチレン、トリフルオロスチレンなどのフルオロスチレン;o−ニトロスチレン、m−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン、ジニトロスチレン、トリニトロスチレンなどのニトロスチレン;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレンなどのビニルフェノール;o−ジビニルスチレン、m−ジビニルスチレン、p−ジビニルスチレンなどのジビニルスチレン;o−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼンなどのジイソプロペニルベンゼン;などの1種または2種以上が挙げられる。これらのうちスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのメチルスチレン、ジビニルベンゼン単量体またはジビニルベンゼン異性体混合物が安価であるという点で好ましい。
【0027】
前記(a−3)芳香族ビニル単量体の添加量は、(a−1)ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部であることが好ましく、0.5〜40重量部であることがさらに好ましく、1〜30重量部であることが特に好ましい。添加量が少なすぎるとポリオレフィン系樹脂に対するエポキシ基含有ビニル単量体のグラフト率が劣る傾向がある。一方、添加量が多すぎるとエポキシ基含有ビニル単量体のグラフト効率が飽和域に達するので、50重量部を上限とすることが好ましい。
【0028】
(4)ラジカル開始剤について
(a−1)ポリオレフィン系樹脂、(a−2)エポキシ基含有ビニル単量体、(a−3)芳香族ビニル単量体、及び(a−4)(メタ)アクリル酸エステル単量体を共重合する際、反応を促進するため、ラジカル開始剤を添加することができる。
【0029】
ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物またはアゾ化合物などがあげられる。前記ラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;パーメタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの有機過酸化物の1種または2種以上があげられる。
【0030】
これらのうち、とくに水素引き抜き能が高いものが好ましく、そのようなラジカル重合開始剤としては、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの1種または2種以上があげられる。
【0031】
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲内にあることが好ましく、0.2〜5重量部の範囲内にあることがさらに好ましい。0.01重量部未満では変性が充分に進行せず、10重量部を超えると流動性、機械的特性の低下を招く。
【0032】
(5)変性ポリオレフィン系樹脂組成物について
本発明に用いる変性ポリオレフィン系樹脂組成物を得るためのグラフト重合反応としては、特に制限されないが、溶液重合、含浸重合、溶融重合などを用いることができる。特に、溶融重合が簡便で好ましい。
【0033】
溶融混練時の添加順序及び方法については、ポリオレフィン系樹脂とラジカル重合開始剤を溶融混練した混合物に、エポキシ基含有ビニル単量体、芳香族ビニル単量体を加え溶融混練する添加順序がよく、この添加順序で行うことでグラフトに寄与しない低分子量体の生成を抑制することができる。なお、そのほか必要に応じ添加される材料の混合や溶融混練の順序及び方法はとくに制限されるものではない。
【0034】
溶融混練時の加熱温度は、130〜300℃であることが、ポリオレフィン系樹脂が充分に溶融し、かつ熱分解しないという点で好ましい。また溶融混練の時間(ラジカル重合開始剤を混合してからの時間)は、通常30秒間〜60分間である。
【0035】
また、前記の溶融混練の装置としては、押出機、バンバリーミキサー、ミル、ニーダー、加熱ロールなどを使用することができる。生産性の面から単軸あるいは2軸の押出機を用いる方法が好ましい。また、各々の材料を充分に均一に混合するために、前記溶融混練を複数回繰返してもよい。
【0036】
(6)(A)変性ポリオレフィン系樹脂組成物を含有する接着剤について
前記変性ポリオレフィン系樹脂組成物は、それ自体を接着剤として使用してもよく、他の樹脂やフィラーなどを配合した組成物を接着剤として使用してもよい。本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、添加剤として、ポリオレフィン系樹脂に添加しても、接着性を向上することができる。ここで用いるポリオレフィン系樹脂は、(a−1)成分として用いるポリオレフィン系樹脂と同じものであってもよく、異なっていてもよい。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂が配合されるポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリプロピレン単独重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび/または1−ブテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下のたとえば酢酸ビニル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニルなどのビニル化合物などとのランダム共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーブロック共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー(ポリプロピレンとエチレン/プロピレン共重合体又はエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体の単純混合物、その一部架橋物、又はその完全架橋物)などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
剛性が高く、安価であるという点からはポリプロピレン単独重合体が好ましく、剛性および耐衝撃性がともに高いという点からはプロピレンとほかの単量体とのブロック共重合体であることが好ましい。また、柔軟性が必要な場合にはポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0037】
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂をポリオレフィン系樹脂に配合する際にその配合量は特に限定はないが、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、0.1〜100重量部、更には0.1〜70重量部を含有させることが好ましい。より好ましくは0.3〜50重量部であり、更に好ましくは0.5〜20重量部である。この範囲より少ないとポリオレフィン系樹脂に対して本発明の改質効果が得られない傾向がある。逆に多すぎるとポリオレフィン系樹脂本来の機械特性が低下し、また経済的な課題が生じてくる場合がある。
【0038】
(A)変性ポリオレフィン系樹脂組成物を含有する接着剤は、シートまたはフィルム状に成形してホットメルト型接着剤として用いる。本発明のシートまたはフィルム状成形体とは、成形体の厚みとしては3μmから3mmが例示でき、好ましくは10μm〜1mmであり、シートあるいはフィルムとして利用することができるものである。一般的に、厚み0.2mm以上の成形体はシート、厚み0.2mm以下の成形体はフィルムと呼ばれているが、本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着剤はシート状であってもフィルム状であってもよい。
【0039】
本発明の優れた接着性を有するポリオレフィン系シートまたはフィルム状成形体の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば本発明のポリオレフィン系樹脂と変性ポリオレフィン系樹脂をドライブレンド、あるいは溶融混練した後に、各種の押出成形機、射出成形機、カレンダー成形機、インフレーション成形機、ロール成形機、あるいは加熱プレス成形機などを用いてシート状成形体に成形加工することが可能である。
【0040】
(7)(B)布について
本発明における布の素材としては特に限定されるものではないが、綿、麻、パルプ、レーヨン、ポリエステル、ナイロンなどが挙げられ、これらは単一素材からなるものでも、または2種以上の複合素材からなるものでもよい。また、布の作り方及び織り方として特に限定されるものではなく、例えば、織布、不織布、編布などが挙げられる。
ホットメルト接着フィルムを積層させただけでは、インジェクション時に布の繊維によって接着剤を保持されないので、接着フィルムはすべて布繊維に含浸されている状態が好ましい。本発明に用いる布はインジェクション圧力により接着剤が流れず、保持される必要があるから、布の繊維間がある程度狭いことが求められる。しかし、布の繊維間が狭すぎると、ホットメルト接着剤が保持される割合が少なくなるので、布の繊維間は接着剤が保持される空間が必要となる。また、布の厚みが厚すぎると、接着性に寄与しない接着剤が余分に必要となり期待する接着性は発揮されるが、製造コストが高くなり経済的でない。これらのことから布の目付け50〜300g/m2、且つ、厚み100μm〜600μmが好ましく、より好ましくは布の目付け100〜200g/m2、且つ、厚み150μm〜500μmである。
【0041】
(8)インサート成形用接着積層体について
インサート成形時の射出樹脂の熱により布に含浸したホットメルト接着剤が溶融することで、金属インサート部材と射出樹脂が接着される。この時、布に含浸させたホットメルト接着剤が射出樹脂の熱により再溶融して、射出樹脂に接着剤が接するには布に対するホットメルト接着剤の含有率のバランスが重要になる。
【0042】
ホットメルト接着剤を布に含浸させたものをインサート成形用接着積層体とすると、接着積層体に対し、ホットメルト接着剤が20〜60%、より好ましくは、25〜50%、さらに好ましくは、30〜45%の質量含有率が好ましい。ホットメルト接着剤の含有率が少なすぎると、射出樹脂と接着剤が接着面全体で接することができず、一部接着されていない状態が発生し、良好な接着性が発現されない。一方、ホットメルト接着剤の含有率が過剰すぎると、インジェクション時の樹脂圧力により、布に保持されていないホットメルト接着剤が押し流されて金属インサート部材端部からはみ出し、金型が接着剤によって汚染される。
また、インサート成形用接着積層体の厚みは、インサート成形時に接着力が充分に発現する100μm〜600μmが好ましく、更には150μm〜500μmが好ましい。
【0043】
本発明のインサート成形用接着積層体の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば変性ポリオレフィン系樹脂を押出成形機やカレンダー成形機、インフレーション成形機、などを用いてフィルム化した後にプレス機を用いて布に含浸させる、などの方法が挙げられる。
【0044】
(9)インサート成形用接着複合体について
本発明のインサート成形用接着積層体を用いるインサート成形において使用される金属インサート部材としては、本発明のインサート成形用接着積層体と良好な接着を有するものであれば特に制限はないが、例えば、金、銀、銅、錫、鉛、鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、ガルバリウム鋼及び亜鉛めっき鋼等が挙げられる。これらのうち鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、ガルバリウム鋼及び亜鉛めっき鋼が好ましい。なお、金属からなるインサート部材は用途に応じて2種類以上を同時に使用しても良い。
【0045】
また本発明におけるインサート成形用積層接着フィルムを用いるインサート成形において使用されるアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)系樹脂としては、特に制限はないが、例えば、アクリロニトリル-アクリルスチレン樹脂(ASA樹脂)、アクリロニトリル-塩素化ポリエチレン-スチレン樹脂(ACS樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレンジエン-スチレン樹脂(AES樹脂)が挙げられ、ABS樹脂とポリカーボネートなどのポリマーアロイでも良い。また、これらはタルク、カオリン、マイカ、モンモリロナイト、ガラス繊維、炭素繊維などの充填材を含有していても良い。
【実施例】
【0046】
以下に具体的な実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。下記実施例および比較例中「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0047】
(実施例1)
ポリプロピレンエチレンラバー(ダウケミカル製Versify3401.05、MFR=8、融点143℃)100部、1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日油製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5部をホッパー口よりシリンダー温度200℃、スクリュー回転数150rpmに設定した二軸押出機(44mmφ、L/D=38.5、(株)日本製鋼所製、製品名TEX44XCT)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりスチレン3部、グリシジルメタクリレート5部を加え溶融混練して変性ポリオレフィン系樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットを、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュー回転数100rpmに設定した単軸押出機(東洋精機製、品名ラボプラストミル;φ20mm、L/D=20)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスにより、幅約130mm、厚み60μmの接着フィルム1を得た。
【0048】
得られた接着フィルム1(厚み60μm、100mm×120mm、50g/m)と織布の綿(100mm×120mm、目付け150g/m)とを重ね合わせ、プレス機(神藤金属工業所、型式NSF−50、プレス温度200℃、無圧・予熱3分、3MPa・プレス3min、無圧・冷却プレス3min)にて溶融した接着フィルム1を布に含浸させて、ホットメルト接着剤が全体に対して25%の質量含有率である接着積層体1を得た。
【0049】
次に、得られた接着積層体1を幅25mm×長さ120mmに切り出したものとアルミ板(幅25mm×長さ120mm×厚み1mm)とを重ね合わせ、プレス機(神藤金属工業所、型式NSF−50、プレス温度120℃、無圧・予熱3分、2MPa・プレス3min、無圧・冷却プレス3min)にて接着させて接着複合体1を得た。
【0050】
その後、接着複合体1の接着積層体側の面で長手方向片側端部10mmに接着性評価時の掴みしろのためにイミドテープを貼り、イミドテープ部位はアルミ板と射出樹脂が接着しないようにした。そして、接着複合体1を金型内(ゲート径:厚み3.2mm×幅4mm/サイドゲート式)にインサートし、東洋機械金属工業(株)製100トン射出成形機にて、帝人化成(株)の非ハロゲン難燃PC/ABS樹脂(マルチロンTN−7000F)をコア材として、シリンダー設定温度260℃、金型温度60℃、射出速度100mm/sec、冷却時間40secの条件で射出成形し、幅25mm×長さ120mm×厚み3.2mmサイズのインサート成形品1を得た。
【0051】
(実施例2)
実施例1で得た接着フィルム1を2枚重ね合わせて、接着フィルム2(厚み120μm、100mm×120mm、100g/m)として実施例1と同様にして織布の綿に接着フィルム2を含侵させて、ホットメルト接着剤が全体に対して40%の質量含有率である接着積層体2を得た。
次に、実施例1と同様にして、得られた接着積層体2とアルミ板からなる接着複合体2を得た。
その後、得られた接着複合体2を実施例1と同様にして、PC/ABS樹脂をコア材として射出成形機にてインサート成形品2を得た。
【0052】
(実施例3)
実施例1で得た接着フィルム1を4枚重ね合わせて、接着フィルム3(厚み240μm、100mm×120mm、200g/m)として実施例1と同様にして織布の綿に接着フィルム3を含侵させて、ホットメルト接着剤が全体に対して57%の質量含有率である接着積層体3を得た。
次に、実施例1と同様にして、得られた接着積層体3とアルミ板からなる接着複合体3を得た。
その後、得られた接着複合体3を実施例1と同様にして、PC/ABS樹脂をコア材として射出成形機にてインサート成形品3を得た。
【0053】
(実施例4)
実施例1と同様にして、実施例2で得た接着層積層体2とステンレス板からなる接着複合体4を得た。
その後、得られた接着複合体4を実施例1と同様にして、PC/ABS樹脂をコア材として射出成形機にてインサート成形品4を得た。
【0054】
(実施例5)
実施例2で得た接着複合体2を実施例1と同様にして、金型内にインサートして、(株)プライムポリマー製のポリプロピレン(PP)樹脂(プライムポリマー―J708UG)をコア材として射出成形機にてインサート成形品5を得た。
【0055】
(実施例6)
実施例1で得た接着フィルム1を2枚重ね合わせて、接着フィルム2(厚み120μm、100mm×120mm、100g/m)として実施例1と同様にして不織布のポリエステル(100mm×120mm、目付け120g/m)に接着フィルム2を含侵させて、ホットメルト接着剤が全体に対して45%の質量含有率である接着積層体4を得た。
次に、実施例1と同様にして、得られた接着積層体4とアルミ板からなる接着複合体5を得た。
その後、得られた接着複合体5を実施例1と同様にして、PC/ABS樹脂をコア材として射出成形機にてインサート成形品6を得た。
【0056】
(比較例1)
実施例1で得た接着フィルム1を2枚重ね合わせて、布に含侵させずに幅25mm×長さ120mmに切り出したものとアルミ板(幅25mm×長さ120mm×厚み1mm)とを重ね合わせ、プレス機(神藤金属工業所、型式NSF−50、プレス温度120℃、無圧・予熱3分、2MPa・プレス3min、無圧・冷却プレス3min)にて接着させて接着複合体6を得た。
その後、得られた接着複合体6を実施例1と同様にして、PC/ABS樹脂をコア材として射出成形機にてインサート成形品7を得た。
【0057】
(比較例2)
実施例1で得た接着フィルム1を2枚重ね合わせて、接着フィルム2(厚み120μm、100mm×120mm、100g/m)と織布の綿(100mm×120mm、目付け150g/m)とを重ね合わせ、プレス機(神藤金属工業所、型式NSF−50、プレス温度200℃、無圧・加熱プレス3min、無圧・冷却プレス3min)にて接着フィルム1を布に含浸させずに積層させて接着積層体5を得た。
次に、実施例1と同様にして、得られた接着積層体5とアルミ板からなる接着複合体7を得た。
その後、得られた接着複合体7を実施例1と同様にして、PC/ABS樹脂をコア材として射出成形機にてインサート成形品8を得た。
【0058】
(比較例3)
実施例1と同様にして得られた樹脂ペレットを、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュー回転数100rpmに設定した単軸押出機(東洋精機製、品名ラボプラストミル;φ20mm、L/D=20)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスにより、幅約130mm、厚み30μmの接着フィルム4を得た。
得られた接着フィルム4の1枚を実施例1と同様にして織布の綿に接着フィルム4を含侵させて、ホットメルト接着剤が全体に対して14%の質量含有率である接着積層体6を得た。
次に、実施例1と同様にして、得られた接着積層体6とアルミ板からなる接着複合体8を得た。
その後、得られた接着複合体8を実施例1と同様にして、PC/ABS樹脂をコア材として射出成形機にてインサート成形品9を得た。
【0059】
(比較例4)
実施例1で得た接着フィルム1を7枚重ね合わせて、接着フィルム5(厚み420μm、100mm×120mm、350g/m)として実施例1と同様にして織布の綿に接着フィルム5を含侵させて、ホットメルト接着剤が全体に対して70%の質量含有率である接着積層体7を得た。
次に、実施例1と同様にして、得られた接着積層体7とアルミ板からなる接着複合体9を得た。
その後、得られた接着複合体9を実施例1と同様にして、PC/ABS樹脂をコア材として射出成形機にてインサート成形品10を得た。
【0060】
(比較例5)
日本マタイ(株)のポリエステル系接着フィルム(エルファンPHE411、厚み50μm)を2枚重ね合わせて、厚み100μm、100mm×120mm、150g/mとして実施例1と同様にして織布の綿に含侵させて、ホットメルト接着剤が全体に対して50%の質量含有率である接着積層体8を得た。
次に、実施例1と同様にして、得られた接着積層体8とアルミ板からなる接着複合体10を得た。
その後、得られた接着複合体10を実施例1と同様にして、PC/ABS樹脂をコア材として射出成形機にてインサート成形品11を得た。
【0061】
<インサート部材と射出樹脂との接着性評価>上記の方法で得られたインサート成形品のアルミ板をイミドテープが貼っている箇所からラジオペンチで掴み、アルミ板と射出樹脂が容易に剥がせるか否かを官能評価にて評価した。
・ :容易には剥がれない
× :容易に剥がれる。または、成形品の部位によって接着性にムラがあり、極端に接着性が乏しい箇所がある。
【0062】
<成形時の接着剤による金型汚染評価>
上記の方法でインサート成形品を作製した後、金型内側にホットメルト接着剤が付着しているか否かを評価した。
・ :金型汚染なし
× :金型汚染あり
【0063】
【表1】

【0064】
実施例1〜6は本発明構成の接着積層体を用いており、射出樹脂であるPC/ABS樹脂またはPP樹脂と強固な接着強度を示し、且つ接着面での強度ムラもなかった。
一方、比較例1の接着積層体は布を用いず、ホットメルト接着剤フィルム単体で用いており、溶融樹脂注入口直下付近の接着剤は樹脂のインジェクション圧力により押し流されて、接着剤が押し流された箇所はアルミとPC/ABS樹脂の接着性は非常に弱く、成形体全体では部位によって接着性にムラがあった。また、比較例2は接着剤を布に含浸させず、積層させた接着積層体を用いており、布に積層させただけでは接着剤が保持されず、インジェクション圧力により押し流され、比較例1と同様の結果となった。
さらに、比較例3〜4において請求項以外のホットメルト接着剤の質量含有率の範囲を用いた場合には、接着強度が弱いまたは、インジェクション時の樹脂圧力により過剰分の接着剤が押し流されて金属インサート部材端部からはみ出し、金型が接着剤によって汚染された。また、比較例5は請求項以外のホットメルト接着剤組成であり、アルミとPC/ABS樹脂の接着性は非常に弱く良好な複合成形体を得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン単位が過半量であるポリオレフィン系樹脂に、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸グリシジルから選ばれる少なくとも1つのエポキシ基含有ビニル単量体及び芳香族ビニル単量体をグラフト反応させて成る変性ポリオレフィン系樹脂組成物を含有する接着剤を布に含浸させたことを特徴とするインサート成形用接着積層体。
【請求項2】
請求項1に記載のインサート成形用接着積層体中の接着剤の質量含有率が20〜60%であるインサート成形用接着積層体。
【請求項3】
布が厚さ100μm〜600μm、目付け50〜300g/m2であることを特徴とする請求項2に記載のインサート成形用接着積層体。
【請求項4】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるインサート部材に請求項3に記載のインサート成形用接着積層体を積層させることを特徴とするインサート成形用接着複合体。
【請求項5】
請求項3に記載のインサート成形用接着積層体が厚さ100〜600μmであることを特徴とする請求項4に記載のインサート成形用接着複合体。
【請求項6】
インサート成形時に射出される樹脂がアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)系樹脂であることを特徴とする請求項5に記載のインサート成形用接着複合体。

【公開番号】特開2013−91268(P2013−91268A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235273(P2011−235273)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】