説明

インサート用治具

【課題】コンクリート製品に埋設するインサートに取り付けるインサート用治具を、つまみ易く、紛失し難くすること。
【解決手段】雄ネジ部2と、雄ネジ部の一端から段付き状に張り出す頭部3とを備え、頭部の外周面をその底面側に向かって小径になるテーパー状とし、頭部の頂面側には雄ネジ部よりも小径の雌ネジ穴6と、取り外し治具用の嵌合穴7を備えているインサート用治具1において、雄ネジ部2と頭部3の中央部を形成する金属製の芯金具10と、頭部3の外周部を形成する合成樹脂製のリング20とを備えるインサート成形品である。頭部の頂面又は頭部の底面の縁部に沿って指先を引っ掛けるための凸部4、5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製品に埋め込まれるインサートを型枠の所定の位置に固定するためのインサート用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製品を製造する場合に、型枠にインサートをボルトで取り付けるために、インサートの雌ネジにインサート用治具を装着することがある。これは、インサート用治具に設けるボルト用の雌ネジを、インサートの雌ネジよりも小径にすることにより、型枠にあけるボルト用の孔を小さくし、型枠の損傷を少なくするものである。
【0003】
具体的なインサート用治具の一例としては、頭部と、頭部よりも小径の雄ネジ部を備える一般的なネジ状であるが、頭部には特別にドライバー用の溝等と、ボルト用の雌ネジを形成してあるものがある(非特許文献1)。
【0004】
また、別例としては、雄ネジ部のみからなるネジ状であって、一端面にはドライバー用の溝等と、ボルト用の雌ネジを形成してあるものがある(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ジャパンライフ株式会社、土木関連事業、JL取付金具、B治具PAT.、[online]、[平成21年7月15日検索]、インターネット<URL:http://www.japanlife.co.jp/strucframe.htm>
【非特許文献2】ジャパンライフ株式会社、土木関連事業、JL取付金具、C治具PAT.、[online]、[平成21年7月15日検索]、インターネット<URL:http://www.japanlife.co.jp/strucframe.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、いずれのインサート用治具も直径がインサートと同じ程度か、それよりも小径であり、このような小さなものの場合、つまみ難く、作業時に落とし易いし、落とすと紛失しやすい。かといって、大きくするとすれば、いずれのインサート用治具も金属のみで作られているので、その分だけ重くなり、やはり、つまみ難くなる。
【0007】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その解決課題はインサート用治具をつまみ易くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、雄ネジ部と、雄ネジ部の一端から段付き状に張り出す頭部とを備え、頭部の外周面をその底面側に向かって小径になるテーパー状とし、頭部の頂面側には雄ネジ部よりも小径の雌ネジ穴と、取り外し治具用の嵌合穴を備えているインサート用治具を前提とする。
【0009】
そして、請求項1の発明は、頭部の中央部及び雄ネジ部を形成する金属製の芯金具と、頭部の外周部を形成する合成樹脂製のリングとを備えるインサート成形品であって、芯金具は、軸部と、軸部に沿って延長する軸延長部とを備え、軸部は雄ネジであって、雄ネジの先部側がリングの外側に露出して雄ネジ部を形成すると共に雄ネジの根元部及び軸延長部がリングの中に埋設されており、軸延長部には前述の雌ネジ穴と嵌合穴が形成されており、リングは、頭部の外周部を形成しており、その内周部に軸延長部及び雄ネジの根元部を収容していることを特徴とする。
【0010】
頭部の頂面及び底面の形状は問わないし、例えば平面であっても良い。ただし、型枠にインサート用治具を介してインサートをボルト留めする場合、コンクリートの打設後にボルトを外すことを考慮すれば、型枠とインサート用治具との間にコンクリートや水が回り込まないようにすることが望ましい。それには、請求項2の発明のように、頭部の頂面の縁部に沿って雄ネジ部の反対側に突出する凸条を備えることが望ましい。
【0011】
同様に、コンクリート製品のインサートが雌ネジ部を筒の内側に備えるものであった場合、インサートの雌ネジ部とインサート用治具の雄ネジ部との嵌り合う箇所に、コンクリートが回り込まないようにすることが望ましい。それには、請求項3の発明のように、頭部の底面の縁部に沿って雄ネジ部側に突出する凸条を備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のインサート用治具は、合成樹脂製のリングと金属製の芯金具とからなるインサート成形品であるので、全てが金属製のものに比べれば軽量である。しかも、インサート用治具の中心部分が金属製の芯金具で形成され、この金属部分に剛性の必要な雄ネジ部や雌ネジ穴や嵌合穴を設けてあり、一方、中心部分に比べれば剛性を必要としない部分には合成樹脂製のリングを用いて、軽量化を図りながら雄ネジ部よりも大径としてつまみ易くしてある。さらに、インサート成形品であって、軸部の雄ネジの根元部がリングの中に埋設されているので、リングと芯金具とが強固に一体化されていて、耐久性の高いものとなっており、インサートから外せば反復利用できる。
【0013】
頭部の頂面の縁部に沿って雄ネジ部の反対側に突出する凸条を備えていたり、頭部の底面の縁部に沿って雄ネジ部側に突出する凸条を備えていたりすれば、指先にリングが引っかかり易く、非常につまみ易い。特に、頭部の頂面及び底面の両方に凸条があれば、親指と中指等でつまむ際に真に都合が良い。さらに、インサート用治具を型枠及びインサートの間に取り付けると、これら凸条が型枠に押し当てられたり、インサートの外側に嵌り込んだりすることにより、型枠とインサート用治具との突き合わせ箇所、並びにインサート用治具とインサートとの突き合わせ箇所に生コンクリート(俗にコンクリートヌロとも言う)が侵入し難くなり、取り外しの際に都合が良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(イ)〜(ニ)図は本発明のインサート用治具を一部断面で示す斜視図、正面図、平面図、縦断面である。
【図2】(イ)、(ロ)図はインサート用治具の取り付け状態、取り外し状態を示す使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のインサート用治具1は、図1又は図2に示すように、雄ネジ部2と、雄ネジ部2の一端から同心円状に且つ段付き状に張り出す大径の頭部3とを備えている。頭部3は、その外周面がテーパー状であって、頂面側から底面側に向かって小径になる尻すぼみの形状にしてある。また、頭部3は、頂面及び底面をその縁部以外についてそれぞれ凹ませてある。従って、頭部3の頂面及び底面の各縁部には、その円周方向全域に亘って連続する円形状の凸条4、5が、突出している。その上、底面側の凸条5の突出量を頂面側の凸条4のそれよりも大きくしてある。また、頭部3の全長L1を、雄ネジ部2の全長L2と同じか、それ以上に形成して、頭部3をつまみ易くしてある。さらに、頭部3の頂面側には雄ネジ部2よりも小径の雌ネジ穴6と、治具取り外し用の嵌合穴7を備えている。
【0016】
このインサート用治具1は、金属製(例えば鉄などの錆びる金属)の芯金具10と、合成樹脂製(例えば、PP、PE等のプラスチック)のリング20とが一体となったインサート成形品である。
【0017】
芯金具10は、雄ネジ部2と、頭部3の中央部を形成するものである。そのために、芯金具10は、軸部11と、軸部11に沿って同一軸線上に延長する軸延長部12とを備え、軸部11の直径が軸延長部12よりも大径の段付き形状となっている。軸部11はその外周面全域に雄ネジが形成されており、雄ネジの先部側がリング20の外側に露出して前述の雄ネジ部2を形成すると共に、雄ネジの根元部側及び軸延長部12がリング20の中に埋設されている。軸延長部12は、軸部11よりも小径であって、その頂面側の中心部に取り外し治具用の嵌合穴(六角穴)7を備えている。また、六角穴7の底の中心には前述の雌ネジ穴6が形成されている。
【0018】
リング20は、頭部3の外周部を形成すると共に、その内周部に軸延長部12及び雄ネジの根元部側を収容している。
【0019】
上述したインサート用治具1を使用する場合、次のように行う。(1)まず、頂面及び底面の凸条4、5を指先に引っ掛けるようにしてインサート用治具1をつまむ。(2)次に、図2(イ)に示すように、内側に雌ネジ部31が形成された筒状のインサート30に、インサート用治具1の雄ネジ部2を捩じ込む。そして、底面側の凸条5をインサート30の先部外側に殆ど隙間無く嵌め合わせ、雄ネジ部2と雌ネジ部31とが嵌り合う箇所にコンクリートヌロが回り込まないようにする。(3)さらに、型枠40の抜穴41にインサート用治具1の雌ネジ穴6を合わせ、蝶ボルト42を抜穴41から雌ネジ穴6に捩じ込む。そして、頂面側の凸条4が型枠40の内面に強く押し当たった状態にし、蝶ボルト42と雌ネジ穴6とが嵌り合う箇所に、コンクリートヌロが回り込まないようにする。(4)この後に、コンクリートを打ち込み、養生後、蝶ボルト42、型枠40を外す。また、インサート用治具1に六角レンチRを嵌めて緩める方向に回すと、リング20が尻すぼみ状のテーパーであるために、インサート30から抜け外れ、コンクリート製品43にテーパー状の穴44があき、インサート30の端面がコンクリート製品43の表面よりも引き込んだ形態となる。この穴44をモルタルで埋めれば、インサート30が雨水に直に晒されることが無くなり、劣化し難くなる。
【0020】
なお、型枠40を組む場所が風雨に晒される場所の場合、雨水が型枠40とリング20との間に侵入してくるが、リング20が合成樹脂であるので、錆びることが無い。従ってリング20とインサート30が錆でくっついて外れ難くなることがない。また、雄ネジ部2の芯金具10とリング20とはインサート成形により一体となっているので、芯金具10とリング20との間に隙間はなく雨水が侵入することも当然ない。それ故、インサート30の雌ネジ部2に嵌り合う雄ネジ部2が鉄などであっても、雄ネジ部2と雌ネジ部31が錆びることもなく、外れ難くなることもない。
【0021】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、嵌合穴7は、六角穴に限らず、ドライバー用の溝であっても良い。
【符号の説明】
【0022】
1インサート用治具 2雄ネジ部
3頭部 4凸条
5凸条 6雌ネジ穴
7嵌合穴(六角穴)
10芯金具 11軸部
12軸延長部
20リング
30インサート 31雌ネジ部
40型枠 41抜穴
42蝶ボルト 43コンクリート製品
44穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ネジ部(2)と、雄ネジ部(2)の一端から段付き状に張り出す頭部(3)とを備え、頭部(3)の外周面をその底面側に向かって小径になるテーパー状とし、頭部(3)の頂面側には雄ネジ部(2)よりも小径の雌ネジ穴(6)と、取り外し治具用の嵌合穴(7)を備えているインサート用治具(1)において、
頭部(3)の中央部及び雄ネジ部(2)を形成する金属製の芯金具(10)と、頭部(3)の外周部を形成する合成樹脂製のリング(20)とを備えるインサート成形品であって、
芯金具(10)は、軸部(11)と、軸部(11)に沿って延長する軸延長部(12)とを備え、軸部(11)は雄ネジであって、雄ネジの先部側がリング(20)の外側に露出して雄ネジ部(2)を形成すると共に雄ネジの根元部及び軸延長部(12)がリング(20)の中に埋設されており、軸延長部(12)には前述の雌ネジ穴(6)と嵌合穴(7)が形成されており、
リング(20)は、頭部(3)の外周部を形成しており、その内周部に軸延長部(12)及び雄ネジの根元部を収容していることを特徴とするインサート用治具。
【請求項2】
頭部(3)の頂面の縁部に沿って雄ネジ部(2)の反対側に突出する凸条(4)を備えることを特徴とする請求項1記載のインサート用治具。
【請求項3】
頭部(3)の底面の縁部に沿って雄ネジ部(2)側に突出する凸条(5)を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のインサート用治具。

【図1】
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【図2】
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