説明

インサート部品設置装置及びそれを備えた発泡材成形機

【課題】 低コスト、省スペースであり、インサート部品の設置位置が制約されることなく、インサート部品を成形空間内に設置できるインサート部品設置装置を提供する。
【解決手段】 発泡材成形機100の成形空間104にインサート部品Pを供給するインサート部品設置装置1は、インサート部品Pを保持するとともに、成形時に、保持されたインサート部品Pが成形空間104の内部に位置するように、成形空間104を形成する金型102Aの一部となる保持部材121と、金型102Aの一部として成形空間104を形成する成形位置と、新たなインサート部品Pを供給する退避位置との間で、保持部材121を駆動する駆動機構126とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡材成形機の成形空間にインサート部品を設置するインサート部品設置装置及びそれを備えた発泡材成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発泡スチロール等の発泡材に、樹脂部材、金属部材等の別部材が埋め込まれたインサート成形品と呼ばれる発泡材成形品が知られている。埋め込まれる別部材(以下、「インサート部品」という。)の用途は、様々である。例えば、発泡材成形品を他の部材に固定するための取付金具や、発泡材成形品に対して他の部材を取り付けるための取付金具が、インサート部品として発泡材成形品に埋め込まれる。
【0003】
インサート成形では、インサート部品を予め金型内部に設置しておき、その状態で、通常の成形の通りに金型に発泡材を充填して発泡させることにより、インサート成形品を完成させる。従来のインサート成形では、インサート部品を金型に設置するために多軸ロボットを使用し、又は作業員の手作業によってインサート部品を金型に設置している。
【0004】
本願に関連する先行技術を開示した文献として、以下の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−296752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、多軸ロボットを使用してインサート部品を金型に設置する場合には、次のような問題がある。まず、多軸ロボットの導入にかかる投資コストが大きくなる。また、多軸ロボットが設置されることで、機械レイアウトや金型交換作業に制約が生じるというスペース上の問題も生じる。さらに、多軸ロボットの可動範囲や精度の制約により、金型内でインサート部品を設置可能な位置ないしは範囲が制限されるという問題がある。即ち、多軸ロボットがある形状の金型に対してはインサート部品を設置できるが、他の形状の金型には設置できないといった状況が生じる。また、多軸ロボットを用いてインサート部品の載置場所から金型内の設置箇所までインサート部品を運ぶのに比較的長い時間を要するという問題もある。
【0007】
作業員が手作業でインサート部品を設置する場合には、次の問題が生じる。まず、設置するための時間が大幅にかかってしまう。また、成形をしている間中、作業員が発泡材成形機に付きっ切りでいなければならない。さらに、特に、大きな金型を用いた大型の発泡材成形機においてインサート成形を行う場合には、作業員に危険が伴うという問題も生じる。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、低コスト、省スペースであり、インサート部品の設置位置が制約されることなく、インサート部品を成形空間内に設置できるインサート部品設置装置、及びそれを備えた発泡材成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のインサート部品設置装置は、発泡材成形機の成形空間にインサート部品を設置するインサート部品設置装置であって、インサート部品を保持するとともに、成形時に、保持されたインサート部品が前記成形空間の内部に位置するように、前記成形空間を形成する金型の一部となる保持手段と、金型の一部として前記成形空間を形成する成形位置と、新たなインサート部品が供給される退避位置との間で、前記保持手段を駆動する駆動機構とを備えた構成を有している。
【0010】
この構成により、成形空間内でインサート部品を保持するインサート保持手段が成形位置と退避位置との間で移動可能であり、かつ、成形位置では金型の一部となるので、金型における成形空間が形成される側を内側、その逆側を外側と呼ぶと、金型の外側からインサート部品を供給できる。このため、インサート部品を内側から金型に取り付ける多軸ロボットの場合と比較して、短い距離の移動でインサート部品を成形空間の所定の位置に設置できる。また、作業員が手作業でインサート部品を内側から金型に取り付ける必要もなくなる。さらに、保持手段へのインサート部品の供給を金型の外側で行なうことができるので、多軸ロボットの場合と比較して、設置位置の精度を高めるのにかかるコストを抑えることができる。
【0011】
上記のインサート部品設置装置は、前記退避位置にある保持手段に対して、新たなインサート部品を供給する供給手段をさらに備えてよい。
【0012】
この構成により、供給手段によって保持手段に新たなインサート部品を供給できる。また、この供給手段の駆動を自動化することで、保持手段に次々にインサート部品を供給するために作業員が付きっ切りでいる必要がなくなる。
【0013】
上記の前記インサート部品設置装置は、前記インサート部品設置装置は、複数のインサート部品を収納するカセットを装填可能であってよく、前記供給手段は、前記カセットから前記保持手段にインサート部品を供給してよい。
【0014】
この構成により、カセットを入れ替えるだけで、容易にインサート部品を補充できる。
【0015】
上記のインサート部品設置装置において、前記保持手段は、前面にてインサート部品を保持する本体部と、前記成形位置において、前記駆動機構による退避位置から成形位置へ向かう方向への前記保持手段の移動を規制するためのフランジ部とを有してよい。
【0016】
この構成により、フランジ部によって移動が規制されることで、インサート部品を保持した保持手段が成形位置に位置決めされる。
【0017】
上記のインサート部品設置装置は、前記インサート部品設置装置を前記発泡材成形機に取り付けるために、前記インサート部品設置装置の他の部材に固定される取付手段をさらに備えていてよく、前記インサート部品設置装置の他の部材に対する前記取付手段の固定位置は可変であってよい。
【0018】
この構成により、発泡材成形機に対するインサート部品設置装置の位置が可変となり、インサート部品設置装置を、複数の種類の発泡材成形機にそれぞれ取り付けることが可能となる。即ち、インサート部品設置装置に、複数の種類の発泡材成形機に対する汎用性を持たせることができる。
【0019】
本発明の別の態様は、上記のインサート部品設置装置を備えた発泡材成形機である。この発泡材成形機は、チャンバ外殻と、前記チャンバ外殻に接合して、前記チャンバ外殻と共に、蒸気が供給されるチャンバ室を形成する第1の金型と、前記第1の金型と合わせられることで、前記第1の金型及び前記成形位置の保持手段と共に前記成形空間を形成する第2の金型とを備えていてよく、前記インサート部品設置装置は、前記第1の金型における、前記第2の金型と合わせられることで形成される前記成形空間の側とは逆の側から、前記成形空間にインサート部品を設置してよい。
【0020】
この構成によれば、インサート部品設置装置が、第1の金型における成形空間が形成される側とは逆の側(外側)からインサート部品を設置するので、短い移動距離でインサート部品を成形空間内の所定の位置に設置でき、また、インサート部品を設置可能な成形空間内の位置ないし範囲の制約も少なくできる。
【0021】
上記の発泡材成形機において、前記チャンバ外殻には、前記インサート部品設置装置の一部が前記チャンバ室内に配置され、他の一部が前記チャンバ室外に配置されるように前記インサート部品設置装置を受け入れるための受入孔が形成されていてよい。
【0022】
この構成により、保持手段に保持されたインサート部品は、チャンバ室を経て第1の金型の外側から成形空間に設置されると共に、保持手段に新たなインサート部品を供給する手段や、複数のインサート部品を収容するカセットの挿入口等は、チャンバ室の外側に設けることができる。
【0023】
上記の発泡材成形機において、前記第1の金型は、前記成形位置にある前記保持手段の本体部の前面が前記第1の金型と共に前記成形空間を形成するように、前記保持手段の本体部を受け入れるための受入孔が形成されていてよい。
【0024】
この構成により、保持手段の本体部が受入孔に受け入れられることで、閉空間としての成形空間が形成されると同時に、第1の金型の任意の位置に受入孔を形成することで、成形空間内の任意の位置にインサート部品を配置できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、成形空間内でインサート部品を保持するインサート保持手段が成形位置と退避位置との間で移動可能であり、かつ、成形位置では金型の一部となるので、金型に対して、成形空間の外側からインサート部品を設置できる。これにより、作業員が手作業でインサート部品を成形空間の内側から金型に取り付ける必要がなく、インサート部品を成形空間の内側から金型に取り付ける多軸ロボットの場合と比較して、短い距離の移動でインサート部品を成形空間の所定の位置に設置することができ、かつ、インサート部品の保持手段への供給は成形空間の外部で行なうことができるので、多軸ロボットの場合と比較して、設置位置の精度を高めるのにかかるコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態のインサート部品設置装置の外観図
【図2A】本発明の実施の形態のインサート部品設置装置が発泡材成形機に取り付けられた状態(供給段階)を示す断面図
【図2B】本発明の実施の形態のインサート部品設置装置が発泡材成形機に取り付けられた状態(成形段階)を示す断面図
【図3】本発明の実施の形態の保持部材の本体部の前端部分及びそこに取り付けられるインサート部品の拡大図
【図4】本発明の実施の形態のインサート部品が埋め込まれた発泡材成形品を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態のインサート部品設置装置及びそれを備えた発泡材成形機について、図面を用いて説明する。図1は、インサート部品設置装置の外観図である。図1に示すように、インサート部品設置装置1は、本体11、筒部12、及び取付板13を備えている。
【0028】
本体11は、概略直方体に形成される。本体11の側面には、カセット挿入口111が形成されている。複数のインサート部品を収納したカセットは、カセット挿入口111から挿入されて、インサート部品設置装置1に装填される。
【0029】
筒部12は、本体11の前面の上方から前面と垂直な方向に向くように設けられている。筒部12の内部には、保持部材121がスライドする空洞122(図2A、図2B参照)が形成されている。筒部12の前面には、保持部材121の本体部1211が出入りする孔123が開口しており、空洞122はこの孔123で外部に開放されている。
【0030】
筒体12の前面には、さらに、筒体12を金型に位置決めするための2本の脚124、124が設けられている。脚124は、筒体12の前面からそれに垂直な方向に設けられている。脚124の前端には、金型に設けられた位置決め凹部1022(図2A、図2B参照)に嵌め込まれる凸部125が設けられている。
【0031】
取付板13は平面形成を有する。取付板13は、筒体12を取り巻くように設けられ、すなわち、中心部に筒体12を通すための円形の孔が形成されている。取付板13は、筒体12に対して、その軸方向の移動可能であり、任意の位置で筒体12に固定され得る。取付板13は、本発明の取付手段に相当する。
【0032】
取付板13の前面には、4隅に取付治具131が設けられている。取付板13は、取付治具131によって、発泡材成形機100のチャンバ外殻101(図2、図2B参照)の外面に取り付けられる。すなわち、インサート部品設置装置1は、取付板13によって発泡材成形機100に取り付けられる。
【0033】
図2A及び図2Bは、インサート部品設置装置1が発泡材成形機100に取り付けられた状態を示す断面図である。図2Aは、インサート部品Pを保持部材121の先端に供給している段階を示している。図2Bは、インサート部品Pが成形空間104に設置された段階を示している。
【0034】
図2A、図2Bに示す発泡材成形機100は、半円筒形の発泡材成形品を成形する成形機である。発泡材成形機100は、チャンバ外殻101、金型102A、及び金型102Bを備えている。チャンバ外殻101は、一面が開放された直方体形状を有する。金型102Aは、チャンバ外殻101の開放された一面を覆うようにチャンバ外殻101に取り付けられる。金型102Aとチャンバ外殻101とは、金型102Aの外面とチャンバ外殻101の内面とで、チャンバ室103が形成されるように接合される。金型102Aは本発明の第1の金型に相当し、金型102Bは本発明の第2の金型に相当する。
【0035】
金型102Aと金型102Bとは、発泡材成形品を成形する際に、図2Bに示すように合わせられる。金型102Aと金型102Bとが図2Bに示すように合わせられることで、それらの間に閉空間が形成される。この閉空間は成形空間104となり、発泡材はこの中で発泡することで成形されて、成形空間104と同一形状の発泡材成形品が得られる。チャンバ外殻101に接合される金型102Aには、チャンバ室103と成形空間104とを連通させる複数の細い蒸気通孔1021が、外面から内面までを貫通するように形成している。
【0036】
チャンバ外殻101には、インサート部品設置装置1の筒体12を受け入れるための筒体受入孔1011が形成されている。また、チャンバ外殻101に接合される金型102Aにおけるこの筒体受入孔1011に対応する位置には、インサート部品設置装置1の保持部材121を受け入れるための保持部受入孔1021が形成されている。また、保持部受入孔1021の近くには、筒体12の脚124の先端に設けられた凸部125が嵌合する位置決め凹部1022が形成されている。
【0037】
インサート部品設置装置1は、取付板13がチャンバ外殻101の外面に取り付けられ、かつ筒体12の脚124の先端の凸部125が金型102Aの位置決め凹部1022に嵌合することで、筒体12の脚124が金型102Aの外面に当接して、発泡材成形機100に固定される。
【0038】
上述のように、取付板13は、筒体12の軸方向の任意の位置で固定可能であるので、インサート部品設置装置1が取付板13によって発泡材成形機100に取り付けられたときに、筒体12の前後方向の位置を任意の位置とすることができ、これにより、筒体12の脚124の前端がちょうど金型102Aの表面に当接するように調整することができる。このことは、インサート部品設置装置1が様々な種類の発泡材成形機100に対して適用可能であることを意味する。
【0039】
図2A及び図2Bに示すように、取付板13とチャンバ外殻101の外面とはシール部材であるOリング201によってシールされ、取付板13と筒部12との間もシール部材であるOリング202によってシールされる。この結果、チャンバ室103が外気に対して密封される。
【0040】
インサート部品設置装置1の筒体12の内部には、筒体12の軸方向に空洞122が形成されており、この空洞122は筒体12の軸方向にさらに本体11内部にも延びている。空洞122内には、保持部材121が備えられている。保持部材121は、駆動機構126により空洞122内を筒体12の軸方向にスライド可能である。駆動機構126は電動でインサート保持部材121を駆動してもよいし、作業員が駆動力を付与することによりインサート保持部材121を駆動してもよい。保持部材121は、本発明の保持手段に相当し、駆動機構126は、本発明の保持手段を駆動する駆動機構に相当する。
【0041】
保持部材121は、本体部1211とフランジ部1212とからなる。保持部材121が駆動機構126によって、筒体12の前端に移動すると、保持部材121の本体部1211は、筒体12の前面に形成された孔123から出て、フランジ部1212が筒体12の前端内面の孔123の周りの部分に当接することで、保持部材121のそれ以上の前面側への移動が規制される。フランジ部1212が筒体12の前端内面の孔123の周りの部分に当接するとき(即ち、図2Bの状態)の保持部材121の位置は、本発明の成形位置に相当する。
【0042】
筒体12の前端内面の孔123の周りとフランジ部1212との間は、シール部材であるOリング203によってシールされる。これにより、フランジ部1212が筒体12の前端内面の孔123の周りの部分と当接した状態で、高圧蒸気が供給されるチャンバ室103と空洞122との間が連通して蒸気が空洞122に漏れることが防止される。
【0043】
保持部材121の本体部1211の前端部分が、金型102Aに形成された保持部材受入孔1021に挿入されて、フランジ部1212が筒体12の前端内面の孔123の周りの部分と当接した状態(即ち、図2Bの状態)で、本体部1211の前面は、金型102A、102Bと共に成形空間104を構成し、即ち、保持部材121の本体部1211の前端部分が成形空間104を構成する金型の一部となる。
【0044】
インサート部品設置装置1の本体11には、前述のカセット挿入口111(図1参照)から挿入されたカセットCが装填されている。カセットCには、複数のインサート部品Pが装填されている。
【0045】
インサート部品設置装置1には、インサート部品Pを搬送するための搬送座112と、搬送座112を駆動するための駆動機構113とが設けられている。駆動機構113は、カセットCと後方に退避した保持部材121との間で上下方向に搬送座112を移動させる。図2Aは、搬送座112が空洞122内の保持部材121に対してインサート部品Pを供給する位置にある状態を示しており、図2Bは、搬送座112に対して、新たなインサート部品Pを供給する状態を示している。搬送座112及び駆動機構113からなる構成は、本発明の供給手段に相当する。
【0046】
インサート部品設置装置1の本体11には、さらに、カセットCに収容された最後尾のインサート部品Pを前方に押すための送り部材115と、送り部材115を駆動するための駆動機構114とを備えている。カセットC内のインサート部品Pは送り部材115が前方に駆動されることで、前端側のインサート部品Pから順に1つずつ取り出される。
【0047】
図3は、保持部材121の本体部1211の前端部分及びそこに取り付けられるインサート部品Pの拡大図である。インサート部品Pは、平面状の露出面31と、露出面の両側辺から直角に折れ曲がった側面32、32と、両側面から外側に直角に折れ曲がって形成されたフランジ部33、33とからなる。
【0048】
図4は、インサート部品が埋め込まれた発泡材成形品を示す図である。インサート部品Pは、側面32及びフランジ部33が発泡材Fに埋め込まれる。側面32及びフランジ部33には複数の孔が形成されている。インサート部材Pが発泡材Fに埋め込まれた際には、この孔の中にも発泡材Fが充填されることで、インサート部材Pがより強固に発泡材成形品に保持されることになる。
【0049】
インサート部品Pの露出面31には2つの円形の孔311、311が設けられている。これらの孔311、311は、インサート部品Pが埋め込まれた発泡材成形品に他の部品をボルトで留めるためのボルト用孔である。すなわち、インサート部品Pは、他の部品を発泡材成形品にボルトで取り付けるために用いられる。
【0050】
インサート部品Pは、保持部材121の本体部1211の前面に取り付けられる。インサート部品Pは金属製であり、本体部1211の前面はマグネットとなっている。これにより、インサート部品Pは、磁力によって本体部1211の前面に保持される。インサート部品Pにおいて、本体部1211の前面に接する面が、発泡材成形品から露出することになる。
【0051】
本体部1211の前面には、インサート部品Pの露出面31に形成されたボルト用孔311、311に対応する位置に、位置決め突起151、151が設けられている。位置決め突起151の最下部(本体部1211の前面に最も近い部分)の外形は、インサート部品Pのボルト用孔311の形状と一致する円形であるが、位置決め突起151は、上部に向けて徐々にその径が小さくなるテーパ形状をしている。これにより、インサート部材Pが本体部1211に供給される際に、位置決め突起151がインサート部材Pのボルト用孔311に容易に嵌るようになっている。
【0052】
以上のように構成されたインサート部品設置装置1及びそれを備えた発泡材成形機100の動作を説明する。まず、図2Aに示すように、保持部材121が、それに新たなインサート部品Pを供給するための退避位置にあるときに、駆動機構113及び搬送座112によって、カセットCから上方に搬送されてきたインサート部品Pが保持部材121の本体部1211の前面に供給される。
【0053】
上述のように、インサート部品取付部材121の本体部1211の前面はマグネットになっているので、金属製のインサート部品Pが磁力によって保持部材121の本体部1211の前面に保持される。このとき、図3に示すように、インサート部品Pの露出面31の2つの円形のボルト用孔311、311が、それぞれ保持部材121の本体部1211の前面の位置決め突起151、151に嵌合することで、インサート部品Pがインサート部品取付部材121に対して位置決めされる。
【0054】
インサート部品Pをインサート部品取付部材121に供給すると、図2Bに示すように、インサート部品取付座112は、駆動機構113によって駆動されて、下方に退避する。インサート部品取付座112が下方に退避すると、インサート部品取付部材121は駆動機構126によって駆動されて、前方に送り出される。
【0055】
保持部材121は、フランジ部1212が筒体12の前端内面の孔123の周りの部分と当接すると、その位置(成形位置)でそれ以上の前方への移動が制限される。この状態で、保持部材121の本体部1211の前面は、インサート部品Pを保持した状態で、金型102Aの内面と同レベルになる。この状態で、金型102Bが金型102Aに密着し、密閉された成形空間104が形成される。
【0056】
成形空間104が形成されると、成形空間104に発泡材Fとしての発砲ビーズが充填される。そして、チャンバ室103に高圧の蒸気が供給されると、この蒸気は蒸気通孔1021を通って成形空間104内に供給される。成形空間104内に蒸気が供給されると、そこに充填されている発砲ビーズが発砲して、インサート部品Pを埋め込んだ、成形空間104と同形状の発泡材成形品が成形される。
【0057】
発泡材成形品が成形されると、図2Aに示すように、金型102Bが退避して、図示しない押し出し部材により発泡成形品が金型102Aから押し出されて、取り出される。このとき、インサート部品Pは、発泡材成形品に埋め込まれているので、発泡材成形品と共に取り出される。
【0058】
保持部材121は、駆動機構126によって後方に移動して、インサート部品Pが供給される退避位置まで退避する。この状態で、次の成形のために、再び駆動機構113によって、インサート部品Pを保持した搬送座112が上方に移動して、退避位置に退避している保持部材121にインサート部品Pを供給する。以上の動作の繰り返しによって、次々にインサート部品が埋め込まれた発泡材成形品(インサート成形品)が製造される。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態のインサート部品設置装置1及びそれを備えた発泡材成形装置100によれば、インサート部品Pを保持する保持部材121が、成形位置と退避位置との間で移動可能であり、保持部材121が成形位置にあるときには、保持部材121が金型の一部となって、保持されたインサート部品Pを成形空間104の内部に設置できる。また、この保持部材121を退避位置まで退避させることで、保持部材121に新たなインサート部品を供給できる。即ち、金型102Aにおいて、成形空間104が形成される側を内側、その逆側を外側と呼ぶと、金型102Aの外側からインサート部品Pを成形空間104に設置できることになる。
【0060】
よって、本実施の形態のインサート部品設置装置1によれば、インサート部品Pを内側から金型に取り付ける多軸ロボットの場合と比較して、短い距離の移動でインサート部品Pを成形空間104の所望の位置に設置できる。また、作業員が手作業でインサート部品Pを内側から金型に取り付ける必要もなくなる。さらに、保持部材121へのインサート部品Pの供給は金型102A及びチャンバ外殻101の外側で行なうことができるので、多軸ロボットの場合と比較して、設置位置の精度を高めるのにかかるコストを抑えることができる。
【0061】
また、本実施の形態のインサート部品設置装置1では、搬送座112及び駆動機構113からなる構成によってインサート部品PをカセットCから、退避位置にある保持部材121の本体部1211の前面に供給して、保持部材121に新たなインサート部品Pを保持させることができる。この駆動機構113は手動で駆動してもよいし、モータ及び制御装置を用意して、自動的に駆動してもよい。
【0062】
また、本実施の形態のインサート部品設置装置1では、搬送座112及び駆動機構113からなる構成によって、カセットCからインサート部品を1つずつ取り出して保持部材121に保持させるようにしているので、カセットを入れ替えるだけで、容易にインサート部品を補充できる。
【0063】
また、本実施の形態のインサート部品設置装置1では、発泡材成形機100に取り付けられる取付板13が、インサート部品設置装置1における取付板13以外の部材に対して、前後方向における任意の位置に固定される。よって、取付板13の位置を調節することで、インサート部品設置装置1は、チャンバ外殻101から金型101Aまでの距離が異なる別種類の発泡材成形機に対しても適用でき、インサート部品設置装置1に対して異なる種類の発泡材成形機に対する汎用性を持たせることができる。
【0064】
また、本実施の形態のインサート部品設置装置1では、保持部材121が成形位置において露出する部分を含む一部のみがチャンバ室103に配置され、他の部分はチャンバ室103の外側に配置される。チャンバ室103には、上述のように発泡材を発泡させるために高圧蒸気が供給されるが、本実施の形態のインサート部品設置装置1によれば、このチャンバ室103の外側の部分において、保持部材121へのインサート部品Pの供給やインサート部品Pの補充などの作業を行なうことができる。
【0065】
なお、上記の実施の形態では、インサート部品設置装置1が、チャンバ室103を形成するチャンバ外殻101に取り付けられたが、インサート部品設置装置1は発泡成形機100における他の部材に取り付けられてもよい。
【0066】
また、上記の実施の形態では、チャンバ外殻101に接合されて、チャンバ外殻101と共にチャンバ室103を形成する金型102Aに対してインサート部品Pが供給された。即ち、成形品の取り出しの際に移動させられない固定された金型102に対して、その外側からインサート部品Pを供給したが、本発明の発泡材成形機は、成形品の取り出しのために移動させられる側の金型102Bに対して、その外側からインサート部品Pを供給するように構成されてもよい。この場合には、成形品の取り出しのために移動させられる側の金型102Bとインサート部品設置装置1とが、成形品の取り出しのために、一体となって移動させられるようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、短い距離の移動でインサート部品を成形空間の所定の位置に設置することができ、作業員が手作業でインサート部品を内側から金型に取り付ける必要もなく、さらに、保持手段へのインサート部品の供給は金型の外側で行なうことができ、インサート部品設置装置及びそれを備えた発泡材成形機等として有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 インサート部品設置装置
11 本体
111 カセット挿入口
112 搬送座
113 駆動機構
114 駆動機構
12 筒部
121 保持部材
1211 本体部
1212 フランジ部
122 空洞
123 孔
124 脚
125 凸部
126 駆動機構
13 取付板
131 取付治具
151 位置決め突起
100 発泡材成形機
101 チャンバ外殻
102A、102B 金型
1021 保持部受入孔
1022 位置決め凹部
103 チャンバ室
104 成形空間
31 露出面
32 側面
33 フランジ部
311 ボルト用孔
C カセット
P インサート部品
F 発泡材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡材成形機の成形空間にインサート部品を設置するインサート部品設置装置であって、
インサート部品を保持するとともに、成形時に、保持されたインサート部品が前記成形空間の内部に位置するように、前記成形空間を形成する金型の一部となる保持手段と、
金型の一部として前記成形空間を形成する成形位置と、新たなインサート部品が供給される退避位置との間で、前記保持手段を駆動する駆動機構と、
を備えたことを特徴とするインサート部品設置装置。
【請求項2】
前記退避位置にある保持手段に対して、新たなインサート部品を供給する供給手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のインサート部品設置装置。
【請求項3】
前記インサート部品設置装置は、複数のインサート部品を収納するカセットを装填可能であり、
前記供給手段は、前記カセットから前記保持手段にインサート部品を供給することを特徴とする請求項1又は2に記載のインサート部品設置装置。
【請求項4】
前記保持手段は、前面にてインサート部品を保持する本体部と、前記成形位置において、前記駆動機構による退避位置から成形位置へ向かう方向への前記保持手段の移動を規制するためのフランジ部とを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のインサート部品設置装置。
【請求項5】
前記インサート部品設置装置を前記発泡材成形機に取り付けるために、前記インサート部品設置装置の他の部材に固定される取付手段をさらに備え、
前記インサート部品設置装置の他の部材に対する前記取付手段の固定位置は可変であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のインサート部品設置装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項のインサート部品設置装置を備えた発泡材成形機。
【請求項7】
チャンバ外殻と、
前記チャンバ外殻に接合して、前記チャンバ外殻と共に、蒸気が供給されるチャンバ室を形成する第1の金型と、
前記第1の金型と合わせられることで、前記第1の金型及び前記成形位置の保持手段と共に前記成形空間を形成する第2の金型と、
を備え、
前記インサート部品設置装置は、前記第1の金型における、前記第2の金型と合わせられることで形成される前記成形空間の側とは逆の側から、前記成形空間にインサート部品を設置することを特徴とする請求項6に記載の発泡材成形機。
【請求項8】
前記チャンバ外殻には、前記インサート部品設置装置の一部が前記チャンバ室内に配置され、他の一部が前記チャンバ室外に配置されるように前記インサート部品設置装置を受け入れるための受入孔が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の発泡材成形機。
【請求項9】
前記第1の金型は、前記成形位置にある前記保持手段の本体部の前面が前記第1の金型と共に前記成形空間を形成するように、前記保持手段の本体部を受け入れるための受入孔が形成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の発泡材成形機。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−111770(P2013−111770A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257226(P2011−257226)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(594207447)旭化成株式会社 (7)
【Fターム(参考)】