インジェクタ
【課題】振動を低減可能なインジェクタを提供する。
【解決手段】内部に導入される空気を、その可動方向の一方側から噴射するインジェクタ本体10と、インジェクタ本体10の一方側に設けられたゲル状の第1緩衝部材20と、インジェクタ本体10の他方側に設けられたゲル状の第2緩衝部材30と、インジェクタ本体10を、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30を介して保持する第1保持部材40及び第2保持部材50と、を備え、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30は、第1保持部材40及び第2保持部材50から開放されているインジェクタ1である。
【解決手段】内部に導入される空気を、その可動方向の一方側から噴射するインジェクタ本体10と、インジェクタ本体10の一方側に設けられたゲル状の第1緩衝部材20と、インジェクタ本体10の他方側に設けられたゲル状の第2緩衝部材30と、インジェクタ本体10を、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30を介して保持する第1保持部材40及び第2保持部材50と、を備え、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30は、第1保持部材40及び第2保持部材50から開放されているインジェクタ1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス等の流体を噴射し、リリーフ弁等として使用されるインジェクタ(噴射装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素(燃料ガス、反応ガス)がアノードに、酸素を含む空気(酸化剤ガス、反応ガス)がカソードに、それぞれ供給されることで発電する固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)等の燃料電池の開発が盛んである。
【0003】
このような水素は、水素タンクから、インジェクタによりパイロット圧が制御される減圧弁を介して、燃料電池に供給される(特許文献1参照)。そして、インジェクタ本体の振動等をゲル状の緩衝部材で緩衝させる技術が、提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−150191号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のインジェクタでは、ゲル状の緩衝部材がケースに拘束されているので、緩衝部材が変形しにくく、インジェクタ本体の振動が緩衝されにくいという不都合があった。
【0006】
そこで、本発明は、振動を低減可能なインジェクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、内部に導入される流体を、その可動方向の一方側から噴射するインジェクタ本体と、前記インジェクタ本体の一方側に設けられたゲル状の第1緩衝部材と、前記インジェクタ本体の他方側に設けられたゲル状の第2緩衝部材と、前記インジェクタ本体を、前記第1緩衝部材及び前記第2緩衝部材を介して保持する保持部材と、を備え、前記第1緩衝部材及び/又は前記第2緩衝部材の少なくとも一部は、前記保持部材から開放されていることを特徴とするインジェクタである。
【0008】
このようなインジェクタによれば、第1緩衝部材及び/又は第2緩衝部材の少なくとも一部は、保持部材から開放されているので、第1緩衝部材及び/又は第2緩衝部材は、インジェクタ本体からの振動(力)により、容易に変形する。これにより、インジェクタ本体の振動を、第1緩衝部材及び/又は第2緩衝部材で好適に緩衝し、低減できる。
なお、インジェクタは、本来、注入装置を意味するが、本明細書等においては、注入するか否かは問わず、流体を噴射する噴射装置を意味するものとし、後記する実施形態のように、空気(流体)を外部に噴射するものも含む。
【0009】
また、前記第2緩衝部材は、前記第1緩衝部材よりも、大きく開放されており、可動方向において、前記第2緩衝部材は、前記第1緩衝部材よりも厚いことを特徴とするインジェクタである。
【0010】
このようなインジェクタによれば、第2緩衝部材は、第1緩衝部材よりも大きく開放されているので、第1緩衝部材よりも変形しやすい。そして、このように変形しやすい第2緩衝部材は第1緩衝部材よりも厚いので、インジェクタ本体の振動を、さらに好適に緩衝し、低減できる。
【0011】
また、前記インジェクタ本体による流体の噴射に伴う噴射音を吸音する多孔質状の吸音部材を備え、前記インジェクタ本体の噴射部は、前記吸音部材に差し込まれていることを特徴とするインジェクタである。
【0012】
このようなインジェクタによれば、インジェクタ本体の噴射部は吸音部材に差し込まれているので、インジェクタ本体からの流体が、多孔質状の吸音部材内に噴射される。これにより、噴射に伴う噴射音を、多孔質状の吸音部材で好適に吸音できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、振動を低減可能なインジェクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態について、図1から図8を参照して説明する。
【0015】
≪燃料電池システムの構成≫
図1に示す本実施形態に係る燃料電池システム100は、図示しない燃料電池自動車(移動体)に搭載されている。燃料電池システム100は、燃料電池スタック110と、燃料電池スタック110のアノードに対して水素(燃料ガス、反応ガス)を給排するアノード系と、燃料電池スタック110のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス、反応ガス)を給排するカソード系と、これらを電子制御するECU160(Electronic Control Unit、電子制御装置)と、を備えている。
【0016】
<燃料電池スタック>
燃料電池スタック110は、複数(例えば200〜400枚)の固体高分子型の単セル111が積層されることで構成されたスタックであり、複数の単セル111は電気的に直列で接続されている。単セル111は、MEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極接合体)と、これを挟み2枚の導電性を有するアノードセパレータ及びカソードセパレータと、を備えている。
【0017】
MEAは、1価の陽イオン交換膜(例えばパーフルオロスルホン酸型)からなる電解質膜(固体高分子膜)と、これを挟むアノード及びカソードとを備えている。アノード及びカソードは、カーボンペーパ等の導電性を有する多孔質体から主に構成されると共に、アノード及びカソードにおける電極反応を生じさせるための触媒(Pt、Ru等)を含んでいる。
【0018】
アノードセパレータには、各MEAのアノードに対して水素を給排するため単セル111の積層方向に延びる貫通孔(内部マニホールドと称される)や、単セル111の面方向に延びる溝が形成されており、これら貫通孔及び溝がアノード流路112(燃料ガス流路)として機能している。
カソードセパレータには、各MEAのカソードに対して空気を給排するため単セル111の積層方向に延びる貫通孔(内部マニホールドと称される)や、単セル111の面方向に延びる溝が形成されており、これら貫通孔及び溝がカソード流路113(酸化剤ガス流路)として機能している。
【0019】
そして、アノード流路112を介して各アノードに水素が供給されると、式(1)の電極反応が起こり、カソード流路113を介して各カソードに空気が供給されると、式(2)の電極反応が起こり、各単セル111で電位差(OCV(Open Circuit Voltage)、開回路電圧)が発生するようになっている。次いで、燃料電池スタック110と走行モータ(燃料電池自動車の動力源)等の外部回路とが電気的に接続され、電流が取り出されると、燃料電池スタック110が発電するようになっている。
2H2→4H++4e− …(1)
O2+4H++4e−→2H2O …(2)
【0020】
<アノード系>
アノード系は、水素タンク121(燃料ガス供給手段)と、常閉型の遮断弁122と、減圧弁123と、エゼクタ126と、常閉型のパージ弁127(燃料ガス排出弁)とを備えている。水素タンク121は、配管121a、遮断弁122、配管122a、減圧弁123、配管123a、エゼクタ126、配管126aを介して、アノード流路112の入口に接続されている。そして、ECU160によって、遮断弁122が開かれると、水素タンク121の水素が配管121a等を介してアノード流路112に供給されるようになっている。
【0021】
また、減圧弁123には、コンプレッサ131からカソード流路113に向かう空気の圧力が、オリフィス124が設けられた配管124aを介して、信号圧(パイロット圧力)として入力されるようになっている。そして、減圧弁123は、入力された空気の圧力に基づいて、水素の圧力を制御する構成となっている。
【0022】
さらに、配管124aは、配管124bを介して、インジェクタ1に接続されている。そして、インジェクタ1が、ECU160からの開指令(パルス信号(PWM信号))に従って開くと、空気が外部に噴射され、配管124a及び配管124bの圧力、つまり、減圧弁123に入力されるパイロット圧力が下がるようになっている。すなわち、ECU160が、インジェクタ1を制御(PWM制御)することで、減圧弁123に入力されるパイロット圧力が変化し、これにより、減圧弁123の二次側圧力、つまり、アノード流路112における水素の圧力が制御されるようになっている。したがって、インジェクタ1は、本実施形態では、空気をリリーフするリリーフ弁として機能すると共に、パイロット圧力を調圧する調圧弁として機能している。
なお、インジェクタ1の具体的構造は、後で詳細に説明する。
【0023】
アノード流路112の出口は、配管126b(燃料ガス循環ライン)を介して、燃料電池スタック110の上流のエゼクタ126の吸込口に接続されている。これにより、アノード流路112(アノード)から排出された未消費の水素を含むアノードオフガスは、エゼクタ126に戻され、その結果、水素が循環するようになっている。
なお、配管126bには気液分離器(図示しない)が設けられており、この気液分離器によって、循環する水素に同伴する水分が分離されるようになっている。
【0024】
配管126bは、その途中で、配管127a、パージ弁127、配管127bを介して、後記する希釈器134に接続されている。パージ弁127は、燃料電池スタック110の発電時において、配管126bを循環する水素に同伴する不純物(水蒸気、窒素等)を排出(パージ)する場合、ECU160によって開かれる設定となっている。
なお、ECU160は、例えば、単セル111の電圧を検出するセル電圧モニタ(図示しない)から入力される最低セル電圧が、所定最低セル電圧以下となった場合、不純物を排出する必要があると判定し、パージ弁127を開く設定となっている。
【0025】
<カソード系>
カソード系は、コンプレッサ131(酸化剤ガス供給手段)と、背圧弁133と、希釈器134とを備えている。
【0026】
コンプレッサ131は、配管131aを介して、カソード流路113の入口に接続されている。そして、コンプレッサ131は、ECU160の指令に従って作動すると、酸素を含む空気を取り込み、これをカソード流路113に供給するようになっている。なお、コンプレッサ131の回転速度は、後記するアクセルペダル151の踏み込み量(アクセル開度)が大きくなると、空気を大流量・高圧で供給するべく、高められる設定となっている。
【0027】
また、配管131aには、カソード流路113に向かう空気を加湿する加湿器(図示しない)が設けられている。この加湿器は、水分交換可能な中空糸膜を備えており、この中空糸膜を介して、カソード流路113に向かう空気と、多湿のカソードオフガスとの間で水分交換させるようになっている。
【0028】
カソード流路113の出口は、配管133a、背圧弁133、配管133bを介して、希釈器134に接続されている。そして、カソード流路113(カソード)から排出された多湿のカソードオフガスは、配管133a等を介して、希釈器134に排出されるようになっている。
背圧弁133は、バタフライ弁等から構成された常開型の弁であり、その開度はECU160によって制御される。詳細には、アクセルペダル151の踏み込み量が大きくなると、ECU160は、空気を高圧で供給するべく、背圧弁133の開度は小さく制御される。
【0029】
希釈器134は、パージ弁127から導入されるアノードオフガスと、配管133bから導入されるカソードオフガス(希釈用ガス)とを混合し、アノードオフガス中の水素を、カソードオフガスで希釈する容器であり、その内部に希釈空間を備えている。そして、アノードオフガスとカソードオフガスとが混合することで生成した希釈後ガスは、配管134aを介して車外に排出されるようになっている。
【0030】
<ECU>
ECU160は、燃料電池システム100を電子制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されている。そして、ECU160は、その内部に記憶されたプログラムに従って、遮断弁122、インジェクタ1、パージ弁127、コンプレッサ131、及び、背圧弁133を、適宜に制御するようになっている。
【0031】
<インジェクタの構成>
次に、アノード系のインジェクタ1について、図2から図8を参照して、具体的に説明する。なお、図2、図3では、図4に示す外ケース80を省略している。また、以下の説明において、「上」、「下」は、図4を基準としている。
【0032】
インジェクタ1は、インジェクタ本体10と、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30と、第1保持部材40及び第2保持部材50と、消音ケース60と、第1吸音部材71及び第2吸音部材75と、外ケース80とを備えている。そして、本実施形態では、消音ケース60の取付部(図示しない)が、燃料電池自動車のボディに固定されることで、インジェクタ1が燃料電池自動車に取り付けられるようになっている。
【0033】
インジェクタ本体10は、その外形が段付きの円柱状であり、その内部に導入される空気を、ECU160からの指令に従って、下端側(一方側)から噴射するものである。詳細には、配管124b(図1参照)からの空気が、空気導入管17を介して、インジェクタ本体10に導入されるようになっている。なお、空気導入管17は、クリップ(図示しない)により、インジェクタ本体10に一体に取り付けられている。
【0034】
そして、ECU160から開指令を受けると、インジェクタ本体10に内蔵されたコイル11に通電し、これにより、プランジャ12が上方向に作動し(図4参照)、空気が、インジェクタ本体10の下端側で段違いで縮径した小径の噴射部13の噴射孔14から噴射されるようになっている。なお、プランジャ12は、リターンスプリング(図示しない)により、噴射孔14側に付勢されており、通常時(開指令がない時)、プランジャ12に設けられた弁体(図示しない)が、噴射孔14を閉じる閉位置に戻るようになっている。
したがって、本実施形態において、インジェクタ本体10の可動方向は図4の上下方向となり、ECU160からの開指令(所定デューティ比のPWM信号)を繰り返して受けることにより、インジェクタ本体10は、上下に振動する。
【0035】
<第1緩衝部材、第2緩衝部材>
第1緩衝部材20、第2緩衝部材30は、インジェクタ本体10の振動を緩衝し、この振動を燃料電池自動車(外部)に伝達しにくくするものである。第1緩衝部材20、第2緩衝部材30は、ゲル状物質から形成されており、そのJIS K2207に準拠する針入度は、55±15(1/10mm)の範囲である。
【0036】
第1緩衝部材20、第2緩衝部材30は、いずれも、円筒形を呈しており、インジェクタ本体10の両端側にそれぞれ設けられている。
詳細には、第1緩衝部材20は、インジェクタ本体10の下端側(可動方向の一方側)に設けられており、その中空部21を、インジェクタ本体10の噴射部13が貫通している。そして、第1緩衝部材20は、その軸方向(インジェクタ本体10の可動方向)において、インジェクタ本体10の肩部15と、第1保持部材40の後記する底壁部41とで挟まれている。
【0037】
第1緩衝部材20の上部22の径方向外側部分は、第1保持部材40から開放、つまり、第1緩衝部材20の上面23の径方向外側部分は、インジェクタ本体10の肩部15及び第1保持部材40と接触しておらず、拘束されていない。
また、第1緩衝部材20の下部の径方向内側部分は、噴射部13から開放、つまり、第1緩衝部材20の内周面24の下部は、噴射部13と接触しておらず(図5参照)、拘束されていない。さらに、第1緩衝部材20の下部と噴射部13との間には、第1緩衝部材20が容易に変形可能となる隙間が形成されている。
【0038】
これにより、プランジャ12が閉位置に戻る際、インジェクタ本体10から第1緩衝部材20に伝達する鉛直下向きの応力(振動力)により、第1緩衝部材20が容易に変形し(図5参照)、この鉛直下向きの応力を緩衝、つまり、和らげるようになっている。したがって、この鉛直下向きの応力は、第1保持部材40を介して、消音ケース60に伝達しにくくなっている。よって、インジェクタ本体10から消音ケース60の取り付けられた燃料電池自動車に伝達する振動が、低減されるようになっている。
【0039】
第2緩衝部材30は、インジェクタ本体10の上端側(可動方向の他方側)、詳細には、インジェクタ本体10に一体に固定された空気導入管17のフランジ部19の上に設けられており、その中空部31を、空気導入管17の管本体18が遊挿している。そして、第2緩衝部材30は、その軸方向(インジェクタ本体10の可動方向)において、空気導入管17のフランジ部19と、第2保持部材50の後記する天壁部51とで挟まれている。
【0040】
第2緩衝部材30の外周部32は、第2保持部材50から開放、つまり、第2緩衝部材30の外周面33の全ては、第2保持部材50と接触しておらず、拘束されていない。また、外周面33と第2保持部材50との間には、第2緩衝部材30が容易に変形可能となる隙間が形成されている。
第2緩衝部材30の内周部34も、中空部31を貫通する管本体18から開放、つまり、第2緩衝部材30の内周面35の全ては、管本体18と接触しておらず、拘束されていない。また、内周面35と管本体18との間には、第2緩衝部材30が容易に変形可能となる隙間が形成されている。
【0041】
これにより、ECU160からインジェクタ本体10に開指令が入力され、プランジャ12が上方に移動する際、インジェクタ本体10からフランジ部19を介して第2緩衝部材30に伝達する鉛直上向きの応力(振動力)により、第2緩衝部材30が容易に変形し(図7参照)、この鉛直上向きの応力を緩衝、つまり、和らげるようになっている。したがって、この鉛直上向きの応力は、第2保持部材50を介して、消音ケース60に伝達しにくくなっている。よって、インジェクタ本体10から消音ケースの取り付けられた燃料電池自動車に伝達する振動が、低減されるようになっている。
【0042】
さらに、第2緩衝部材30は、第1緩衝部材20よりも大きく開放されている。つまり、第2緩衝部材30の他の部品と接触していない外周面33及び内周面35の面積(開放面積S2)は、第1緩衝部材20の他の部品と接触していない上面23の外側部分の面積及び内周面24の下部の面積(開放面積S1)よりも大きく設定されている(S2>S1)。これにより、第2緩衝部材30は、第1緩衝部材20よりも容易に変形可能となっている。
【0043】
そして、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30の軸方向(インジェクタ本体10の可動方向)において、第2緩衝部材30は、第1緩衝部材20よりも厚くなっている。すなわち、第2緩衝部材30の厚さT30は、第1緩衝部材20の厚さT20よりも厚くなっている。これにより、第1緩衝部材20よりも変形しやすい第2緩衝部材30で、インジェクタ本体10からの応力を吸収し、インジェクタ本体10の振動を大幅に低減可能となっている。
【0044】
<第1保持部材、第2保持部材>
第1保持部材40及び第2保持部材50は、インジェクタ本体10の可動方向の両側から、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30を介してインジェクタ本体10を挟持し、第1緩衝部材20をインジェクタ本体10の下端側の所定位置に、第2緩衝部材30をインジェクタ本体10の上端側の所定位置に、それぞれ保持するためのものである。すなわち、第1保持部材40及び第2保持部材50は、インジェクタ本体10と直接に接触しておらず、インジェクタ本体10の振動が、第1保持部材40及び第2保持部材50に直接伝達しないようになっている。
【0045】
第1保持部材40は、インジェクタ本体10の下方に配置され、段違いで縮径した有底円筒状を呈し、前記したように、その底壁部41とインジェクタ本体10の肩部15とで第1緩衝部材20を挟み、第1緩衝部材20を所定位置に保持している。
【0046】
そして、底壁部41には、貫通孔42が形成されており、インジェクタ本体10の噴射部13は、この貫通孔42を貫通し、噴射部13の下部は、第1保持部材40から下方に突出すると共に、第1吸音部材71の小穴73に差し込まれており、噴射部13の下部の外面と小穴73の内面とは密着している。
これにより、噴射部13からの空気が、第1吸音部材71内に良好に噴射され、噴射音が第1吸音部材71で好適に吸音されるようになっている。すなわち、噴射部13からの空気が、底壁部41と第1緩衝部材20との隙間等に漏れず、漏れ音が発生しにくくなっている。
【0047】
また、第1保持部材40の段違いで縮径している縮径部43も、第1吸音部材71の大穴72に差し込まれており、縮径部43の外面は大穴72の内面に密着している。これにより、噴射部13からの空気が、第1保持部材40の上方に漏れにくくなっていると共に、漏れ音が好適に吸音されるようになっている。
【0048】
第2保持部材50は、インジェクタ本体10の上方に配置され、円盤状の天壁部51と、天壁部51から下方に延びた一対のアーム53、53とを備えている。そして、前記したように、天壁部51と、空気導入管17のフランジ部19とで、第2緩衝部材30を挟み、第2緩衝部材30を所定位置に保持している。
天壁部51には貫通孔52が形成されおり、空気導入管17の管本体18がこの貫通孔52を貫通し、外部に延設されている。
【0049】
なお、第1保持部材40の開口縁部44と、第2保持部材50のアーム53、53の下端部54、54とが、ボルトB、Bによって、消音ケース60の開口縁部69に締結されることで、第1保持部材40及び第2保持部材50が消音ケース60に固定されると共に、第1保持部材40及び第2保持部材50によるインジェクタ本体10の保持状態が維持されている。
【0050】
<消音ケース>
消音ケース60は、インジェクタ本体10から空気が噴射されることに伴う噴射音を低減するための有底円筒状のケースであり、その内部に、第1消音室61と第2消音室62とを有している。第1消音室61は、インジェクタ本体10の噴射部13側に配置されており、第2消音室62は、第1消音室61の下方に配置されている。なお、第1消音室61の上方は、これに差し込まれた第1保持部材40によって密閉されている。
【0051】
第1消音室61と第2消音室62とは中間壁部63で仕切られると共に、中間壁部63には周方向に複数の連通孔64が形成されており(図8参照)、第1消音室61と第2消音室62とは連通孔64を介して連通している。また、消音ケース60の底壁部65には連通孔66が形成されており、第2消音室62とインジェクタ1の外部とは、連通孔66を介して連通している。そして、インジェクタ本体10から噴射された空気は、第1消音室61、複数の連通孔64、第2消音室62、連通孔66を通って、インジェクタ1の外部に噴射されるようになっている。
【0052】
ここで、図6に示すように、連通孔66は底壁部65の厚さ方向に対して略斜めに形成、つまり、連通孔66には外部に排出される空気の流れ方向を底壁部65に沿うように曲げる屈曲部67が設けられている。これにより、外部に排出される空気が、消音ケース60の下方の機器(図示しない)に、勢いよく吹き付けられないようになっている。
その他、連通孔66を下流に向かって拡径するように形成し、外部に排出される空気の流量を下げるようにしてもよい。
【0053】
<第1吸音部材、第2吸音部材>
第1吸音部材71及び第2吸音部材75は、インジェクタ本体10から噴射される空気の噴射音を吸音するための部材であり、例えば、スポンジ等の多孔質体から形成されている。そして、第1吸音部材71は第1消音室61に収容されており、第2吸音部材75は第2消音室62に収容されている。
【0054】
第1吸音部材71は、大穴72と、大穴72の底に段違いで形成された小穴73とを有している。
大穴72には第1保持部材40の縮径部43が差し込まれており、縮径部43の外周面は大穴72の内周面に密着し、底壁部41の外底面は大穴72の底面に密着している。
一方、小穴73には第1保持部材40の貫通孔42から突出した噴射部13が差し込まれており、噴射部13の外周面は小穴73の内周面に密着し、噴射部13の外底面は小穴73の底面に密着している。すなわち、噴射部13は、第1吸音部材71に差し込まれている。
【0055】
<外ケース>
外ケース80は、インジェクタ本体10、第1緩衝部材20、第2緩衝部材30等を、インジェクタ1の外部の埃・水分等から保護するために、また、外部に音を漏らさないようにするために、上側が閉じた円筒状のケースであり、インジェクタ本体10、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30が、外部から隠れるように、空気導入管17の管本体18に取り付けられている。
また、外ケース80の全裏面には、スポンジ等からなる吸音層81が形成されており、インジェクタ本体10の作動音が、吸音層81で好適に吸音されるようになっている。
【0056】
<インジェクタの作用・効果>
このようなインジェクタ1によれば、次の作用・効果を得る。
第1緩衝部材20の上面23の外側部分が第1保持部材40から開放され、第1緩衝部材20の内周面24の下部が噴射部13から開放され、第2緩衝部材30の外周面33が第2保持部材50から開放され、第2保持部材50の内周面35が空気導入管17から開放されているので、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30が、インジェクタ本体10の振動に追従して、容易に変形する。これにより、インジェクタ本体10から第1保持部材40及び第2保持部材50に伝達する振動を大きく低減でき、燃料電池自動車の静粛性を確保できる。
【0057】
また、大きく開放された第2緩衝部材30は、第1緩衝部材20よりも厚いので(T30>T20)、インジェクタ本体10の振動を、さらに好適に低減できる。
さらに、インジェクタ本体10の噴射部13は、第1吸音部材71に差し込まれているので、空気を第1吸音部材71内に噴射し、噴射音を好適に吸音できる。
【0058】
さらにまた、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30は円筒形を呈する簡易な形状であるから、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30を容易に生産できる。また、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30の量は、従来と比較して、削減されているので、インジェクタ1が軽量化されると共に、インジェクタ1を低コストで簡便に生産可能となる。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば次のように変更することができ、また、次の構成を適宜組合させてもよい。
【0060】
前記した実施形態では、インジェクタ本体10が空気を噴射するとしたが、その他のガス(気体)や、ガソリン等の液体を噴射するものでもよい。
【0061】
前記した実施形態では、燃料電池自動車に搭載された燃料電池システム100に、本発明を適用した場合を例示したが、その他に例えば、自動二輪車、列車、船舶に搭載された燃料電池システム、家庭用や業務用の据え置き型の燃料電池システムや、給湯システムに組み込まれた燃料電池システムに適用してもよい。また、その他のシステムに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態に係る燃料電池システムの構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るインジェクタの斜視図であり、外ケースを省略している。
【図3】本実施形態に係るインジェクタの分解斜視図であり、外ケースを省略している。
【図4】本実施形態に係るインジェクタの縦断面図である。
【図5】図4の第1緩衝部材20の拡大図である。
【図6】図4の連通孔66の拡大図である。
【図7】図4のX1−X1線断面図である。
【図8】図4のX2−X2線断面図であり、第1吸音部材を省略している。
【符号の説明】
【0063】
1 インジェクタ
10 インジェクタ本体
13 噴射部
20 第1緩衝部材
30 第2緩衝部材
40 第1保持部材
50 第2保持部材
60 消音ケース
71 第1吸音部材
75 第2吸音部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス等の流体を噴射し、リリーフ弁等として使用されるインジェクタ(噴射装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素(燃料ガス、反応ガス)がアノードに、酸素を含む空気(酸化剤ガス、反応ガス)がカソードに、それぞれ供給されることで発電する固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)等の燃料電池の開発が盛んである。
【0003】
このような水素は、水素タンクから、インジェクタによりパイロット圧が制御される減圧弁を介して、燃料電池に供給される(特許文献1参照)。そして、インジェクタ本体の振動等をゲル状の緩衝部材で緩衝させる技術が、提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−150191号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のインジェクタでは、ゲル状の緩衝部材がケースに拘束されているので、緩衝部材が変形しにくく、インジェクタ本体の振動が緩衝されにくいという不都合があった。
【0006】
そこで、本発明は、振動を低減可能なインジェクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、内部に導入される流体を、その可動方向の一方側から噴射するインジェクタ本体と、前記インジェクタ本体の一方側に設けられたゲル状の第1緩衝部材と、前記インジェクタ本体の他方側に設けられたゲル状の第2緩衝部材と、前記インジェクタ本体を、前記第1緩衝部材及び前記第2緩衝部材を介して保持する保持部材と、を備え、前記第1緩衝部材及び/又は前記第2緩衝部材の少なくとも一部は、前記保持部材から開放されていることを特徴とするインジェクタである。
【0008】
このようなインジェクタによれば、第1緩衝部材及び/又は第2緩衝部材の少なくとも一部は、保持部材から開放されているので、第1緩衝部材及び/又は第2緩衝部材は、インジェクタ本体からの振動(力)により、容易に変形する。これにより、インジェクタ本体の振動を、第1緩衝部材及び/又は第2緩衝部材で好適に緩衝し、低減できる。
なお、インジェクタは、本来、注入装置を意味するが、本明細書等においては、注入するか否かは問わず、流体を噴射する噴射装置を意味するものとし、後記する実施形態のように、空気(流体)を外部に噴射するものも含む。
【0009】
また、前記第2緩衝部材は、前記第1緩衝部材よりも、大きく開放されており、可動方向において、前記第2緩衝部材は、前記第1緩衝部材よりも厚いことを特徴とするインジェクタである。
【0010】
このようなインジェクタによれば、第2緩衝部材は、第1緩衝部材よりも大きく開放されているので、第1緩衝部材よりも変形しやすい。そして、このように変形しやすい第2緩衝部材は第1緩衝部材よりも厚いので、インジェクタ本体の振動を、さらに好適に緩衝し、低減できる。
【0011】
また、前記インジェクタ本体による流体の噴射に伴う噴射音を吸音する多孔質状の吸音部材を備え、前記インジェクタ本体の噴射部は、前記吸音部材に差し込まれていることを特徴とするインジェクタである。
【0012】
このようなインジェクタによれば、インジェクタ本体の噴射部は吸音部材に差し込まれているので、インジェクタ本体からの流体が、多孔質状の吸音部材内に噴射される。これにより、噴射に伴う噴射音を、多孔質状の吸音部材で好適に吸音できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、振動を低減可能なインジェクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態について、図1から図8を参照して説明する。
【0015】
≪燃料電池システムの構成≫
図1に示す本実施形態に係る燃料電池システム100は、図示しない燃料電池自動車(移動体)に搭載されている。燃料電池システム100は、燃料電池スタック110と、燃料電池スタック110のアノードに対して水素(燃料ガス、反応ガス)を給排するアノード系と、燃料電池スタック110のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス、反応ガス)を給排するカソード系と、これらを電子制御するECU160(Electronic Control Unit、電子制御装置)と、を備えている。
【0016】
<燃料電池スタック>
燃料電池スタック110は、複数(例えば200〜400枚)の固体高分子型の単セル111が積層されることで構成されたスタックであり、複数の単セル111は電気的に直列で接続されている。単セル111は、MEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極接合体)と、これを挟み2枚の導電性を有するアノードセパレータ及びカソードセパレータと、を備えている。
【0017】
MEAは、1価の陽イオン交換膜(例えばパーフルオロスルホン酸型)からなる電解質膜(固体高分子膜)と、これを挟むアノード及びカソードとを備えている。アノード及びカソードは、カーボンペーパ等の導電性を有する多孔質体から主に構成されると共に、アノード及びカソードにおける電極反応を生じさせるための触媒(Pt、Ru等)を含んでいる。
【0018】
アノードセパレータには、各MEAのアノードに対して水素を給排するため単セル111の積層方向に延びる貫通孔(内部マニホールドと称される)や、単セル111の面方向に延びる溝が形成されており、これら貫通孔及び溝がアノード流路112(燃料ガス流路)として機能している。
カソードセパレータには、各MEAのカソードに対して空気を給排するため単セル111の積層方向に延びる貫通孔(内部マニホールドと称される)や、単セル111の面方向に延びる溝が形成されており、これら貫通孔及び溝がカソード流路113(酸化剤ガス流路)として機能している。
【0019】
そして、アノード流路112を介して各アノードに水素が供給されると、式(1)の電極反応が起こり、カソード流路113を介して各カソードに空気が供給されると、式(2)の電極反応が起こり、各単セル111で電位差(OCV(Open Circuit Voltage)、開回路電圧)が発生するようになっている。次いで、燃料電池スタック110と走行モータ(燃料電池自動車の動力源)等の外部回路とが電気的に接続され、電流が取り出されると、燃料電池スタック110が発電するようになっている。
2H2→4H++4e− …(1)
O2+4H++4e−→2H2O …(2)
【0020】
<アノード系>
アノード系は、水素タンク121(燃料ガス供給手段)と、常閉型の遮断弁122と、減圧弁123と、エゼクタ126と、常閉型のパージ弁127(燃料ガス排出弁)とを備えている。水素タンク121は、配管121a、遮断弁122、配管122a、減圧弁123、配管123a、エゼクタ126、配管126aを介して、アノード流路112の入口に接続されている。そして、ECU160によって、遮断弁122が開かれると、水素タンク121の水素が配管121a等を介してアノード流路112に供給されるようになっている。
【0021】
また、減圧弁123には、コンプレッサ131からカソード流路113に向かう空気の圧力が、オリフィス124が設けられた配管124aを介して、信号圧(パイロット圧力)として入力されるようになっている。そして、減圧弁123は、入力された空気の圧力に基づいて、水素の圧力を制御する構成となっている。
【0022】
さらに、配管124aは、配管124bを介して、インジェクタ1に接続されている。そして、インジェクタ1が、ECU160からの開指令(パルス信号(PWM信号))に従って開くと、空気が外部に噴射され、配管124a及び配管124bの圧力、つまり、減圧弁123に入力されるパイロット圧力が下がるようになっている。すなわち、ECU160が、インジェクタ1を制御(PWM制御)することで、減圧弁123に入力されるパイロット圧力が変化し、これにより、減圧弁123の二次側圧力、つまり、アノード流路112における水素の圧力が制御されるようになっている。したがって、インジェクタ1は、本実施形態では、空気をリリーフするリリーフ弁として機能すると共に、パイロット圧力を調圧する調圧弁として機能している。
なお、インジェクタ1の具体的構造は、後で詳細に説明する。
【0023】
アノード流路112の出口は、配管126b(燃料ガス循環ライン)を介して、燃料電池スタック110の上流のエゼクタ126の吸込口に接続されている。これにより、アノード流路112(アノード)から排出された未消費の水素を含むアノードオフガスは、エゼクタ126に戻され、その結果、水素が循環するようになっている。
なお、配管126bには気液分離器(図示しない)が設けられており、この気液分離器によって、循環する水素に同伴する水分が分離されるようになっている。
【0024】
配管126bは、その途中で、配管127a、パージ弁127、配管127bを介して、後記する希釈器134に接続されている。パージ弁127は、燃料電池スタック110の発電時において、配管126bを循環する水素に同伴する不純物(水蒸気、窒素等)を排出(パージ)する場合、ECU160によって開かれる設定となっている。
なお、ECU160は、例えば、単セル111の電圧を検出するセル電圧モニタ(図示しない)から入力される最低セル電圧が、所定最低セル電圧以下となった場合、不純物を排出する必要があると判定し、パージ弁127を開く設定となっている。
【0025】
<カソード系>
カソード系は、コンプレッサ131(酸化剤ガス供給手段)と、背圧弁133と、希釈器134とを備えている。
【0026】
コンプレッサ131は、配管131aを介して、カソード流路113の入口に接続されている。そして、コンプレッサ131は、ECU160の指令に従って作動すると、酸素を含む空気を取り込み、これをカソード流路113に供給するようになっている。なお、コンプレッサ131の回転速度は、後記するアクセルペダル151の踏み込み量(アクセル開度)が大きくなると、空気を大流量・高圧で供給するべく、高められる設定となっている。
【0027】
また、配管131aには、カソード流路113に向かう空気を加湿する加湿器(図示しない)が設けられている。この加湿器は、水分交換可能な中空糸膜を備えており、この中空糸膜を介して、カソード流路113に向かう空気と、多湿のカソードオフガスとの間で水分交換させるようになっている。
【0028】
カソード流路113の出口は、配管133a、背圧弁133、配管133bを介して、希釈器134に接続されている。そして、カソード流路113(カソード)から排出された多湿のカソードオフガスは、配管133a等を介して、希釈器134に排出されるようになっている。
背圧弁133は、バタフライ弁等から構成された常開型の弁であり、その開度はECU160によって制御される。詳細には、アクセルペダル151の踏み込み量が大きくなると、ECU160は、空気を高圧で供給するべく、背圧弁133の開度は小さく制御される。
【0029】
希釈器134は、パージ弁127から導入されるアノードオフガスと、配管133bから導入されるカソードオフガス(希釈用ガス)とを混合し、アノードオフガス中の水素を、カソードオフガスで希釈する容器であり、その内部に希釈空間を備えている。そして、アノードオフガスとカソードオフガスとが混合することで生成した希釈後ガスは、配管134aを介して車外に排出されるようになっている。
【0030】
<ECU>
ECU160は、燃料電池システム100を電子制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されている。そして、ECU160は、その内部に記憶されたプログラムに従って、遮断弁122、インジェクタ1、パージ弁127、コンプレッサ131、及び、背圧弁133を、適宜に制御するようになっている。
【0031】
<インジェクタの構成>
次に、アノード系のインジェクタ1について、図2から図8を参照して、具体的に説明する。なお、図2、図3では、図4に示す外ケース80を省略している。また、以下の説明において、「上」、「下」は、図4を基準としている。
【0032】
インジェクタ1は、インジェクタ本体10と、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30と、第1保持部材40及び第2保持部材50と、消音ケース60と、第1吸音部材71及び第2吸音部材75と、外ケース80とを備えている。そして、本実施形態では、消音ケース60の取付部(図示しない)が、燃料電池自動車のボディに固定されることで、インジェクタ1が燃料電池自動車に取り付けられるようになっている。
【0033】
インジェクタ本体10は、その外形が段付きの円柱状であり、その内部に導入される空気を、ECU160からの指令に従って、下端側(一方側)から噴射するものである。詳細には、配管124b(図1参照)からの空気が、空気導入管17を介して、インジェクタ本体10に導入されるようになっている。なお、空気導入管17は、クリップ(図示しない)により、インジェクタ本体10に一体に取り付けられている。
【0034】
そして、ECU160から開指令を受けると、インジェクタ本体10に内蔵されたコイル11に通電し、これにより、プランジャ12が上方向に作動し(図4参照)、空気が、インジェクタ本体10の下端側で段違いで縮径した小径の噴射部13の噴射孔14から噴射されるようになっている。なお、プランジャ12は、リターンスプリング(図示しない)により、噴射孔14側に付勢されており、通常時(開指令がない時)、プランジャ12に設けられた弁体(図示しない)が、噴射孔14を閉じる閉位置に戻るようになっている。
したがって、本実施形態において、インジェクタ本体10の可動方向は図4の上下方向となり、ECU160からの開指令(所定デューティ比のPWM信号)を繰り返して受けることにより、インジェクタ本体10は、上下に振動する。
【0035】
<第1緩衝部材、第2緩衝部材>
第1緩衝部材20、第2緩衝部材30は、インジェクタ本体10の振動を緩衝し、この振動を燃料電池自動車(外部)に伝達しにくくするものである。第1緩衝部材20、第2緩衝部材30は、ゲル状物質から形成されており、そのJIS K2207に準拠する針入度は、55±15(1/10mm)の範囲である。
【0036】
第1緩衝部材20、第2緩衝部材30は、いずれも、円筒形を呈しており、インジェクタ本体10の両端側にそれぞれ設けられている。
詳細には、第1緩衝部材20は、インジェクタ本体10の下端側(可動方向の一方側)に設けられており、その中空部21を、インジェクタ本体10の噴射部13が貫通している。そして、第1緩衝部材20は、その軸方向(インジェクタ本体10の可動方向)において、インジェクタ本体10の肩部15と、第1保持部材40の後記する底壁部41とで挟まれている。
【0037】
第1緩衝部材20の上部22の径方向外側部分は、第1保持部材40から開放、つまり、第1緩衝部材20の上面23の径方向外側部分は、インジェクタ本体10の肩部15及び第1保持部材40と接触しておらず、拘束されていない。
また、第1緩衝部材20の下部の径方向内側部分は、噴射部13から開放、つまり、第1緩衝部材20の内周面24の下部は、噴射部13と接触しておらず(図5参照)、拘束されていない。さらに、第1緩衝部材20の下部と噴射部13との間には、第1緩衝部材20が容易に変形可能となる隙間が形成されている。
【0038】
これにより、プランジャ12が閉位置に戻る際、インジェクタ本体10から第1緩衝部材20に伝達する鉛直下向きの応力(振動力)により、第1緩衝部材20が容易に変形し(図5参照)、この鉛直下向きの応力を緩衝、つまり、和らげるようになっている。したがって、この鉛直下向きの応力は、第1保持部材40を介して、消音ケース60に伝達しにくくなっている。よって、インジェクタ本体10から消音ケース60の取り付けられた燃料電池自動車に伝達する振動が、低減されるようになっている。
【0039】
第2緩衝部材30は、インジェクタ本体10の上端側(可動方向の他方側)、詳細には、インジェクタ本体10に一体に固定された空気導入管17のフランジ部19の上に設けられており、その中空部31を、空気導入管17の管本体18が遊挿している。そして、第2緩衝部材30は、その軸方向(インジェクタ本体10の可動方向)において、空気導入管17のフランジ部19と、第2保持部材50の後記する天壁部51とで挟まれている。
【0040】
第2緩衝部材30の外周部32は、第2保持部材50から開放、つまり、第2緩衝部材30の外周面33の全ては、第2保持部材50と接触しておらず、拘束されていない。また、外周面33と第2保持部材50との間には、第2緩衝部材30が容易に変形可能となる隙間が形成されている。
第2緩衝部材30の内周部34も、中空部31を貫通する管本体18から開放、つまり、第2緩衝部材30の内周面35の全ては、管本体18と接触しておらず、拘束されていない。また、内周面35と管本体18との間には、第2緩衝部材30が容易に変形可能となる隙間が形成されている。
【0041】
これにより、ECU160からインジェクタ本体10に開指令が入力され、プランジャ12が上方に移動する際、インジェクタ本体10からフランジ部19を介して第2緩衝部材30に伝達する鉛直上向きの応力(振動力)により、第2緩衝部材30が容易に変形し(図7参照)、この鉛直上向きの応力を緩衝、つまり、和らげるようになっている。したがって、この鉛直上向きの応力は、第2保持部材50を介して、消音ケース60に伝達しにくくなっている。よって、インジェクタ本体10から消音ケースの取り付けられた燃料電池自動車に伝達する振動が、低減されるようになっている。
【0042】
さらに、第2緩衝部材30は、第1緩衝部材20よりも大きく開放されている。つまり、第2緩衝部材30の他の部品と接触していない外周面33及び内周面35の面積(開放面積S2)は、第1緩衝部材20の他の部品と接触していない上面23の外側部分の面積及び内周面24の下部の面積(開放面積S1)よりも大きく設定されている(S2>S1)。これにより、第2緩衝部材30は、第1緩衝部材20よりも容易に変形可能となっている。
【0043】
そして、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30の軸方向(インジェクタ本体10の可動方向)において、第2緩衝部材30は、第1緩衝部材20よりも厚くなっている。すなわち、第2緩衝部材30の厚さT30は、第1緩衝部材20の厚さT20よりも厚くなっている。これにより、第1緩衝部材20よりも変形しやすい第2緩衝部材30で、インジェクタ本体10からの応力を吸収し、インジェクタ本体10の振動を大幅に低減可能となっている。
【0044】
<第1保持部材、第2保持部材>
第1保持部材40及び第2保持部材50は、インジェクタ本体10の可動方向の両側から、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30を介してインジェクタ本体10を挟持し、第1緩衝部材20をインジェクタ本体10の下端側の所定位置に、第2緩衝部材30をインジェクタ本体10の上端側の所定位置に、それぞれ保持するためのものである。すなわち、第1保持部材40及び第2保持部材50は、インジェクタ本体10と直接に接触しておらず、インジェクタ本体10の振動が、第1保持部材40及び第2保持部材50に直接伝達しないようになっている。
【0045】
第1保持部材40は、インジェクタ本体10の下方に配置され、段違いで縮径した有底円筒状を呈し、前記したように、その底壁部41とインジェクタ本体10の肩部15とで第1緩衝部材20を挟み、第1緩衝部材20を所定位置に保持している。
【0046】
そして、底壁部41には、貫通孔42が形成されており、インジェクタ本体10の噴射部13は、この貫通孔42を貫通し、噴射部13の下部は、第1保持部材40から下方に突出すると共に、第1吸音部材71の小穴73に差し込まれており、噴射部13の下部の外面と小穴73の内面とは密着している。
これにより、噴射部13からの空気が、第1吸音部材71内に良好に噴射され、噴射音が第1吸音部材71で好適に吸音されるようになっている。すなわち、噴射部13からの空気が、底壁部41と第1緩衝部材20との隙間等に漏れず、漏れ音が発生しにくくなっている。
【0047】
また、第1保持部材40の段違いで縮径している縮径部43も、第1吸音部材71の大穴72に差し込まれており、縮径部43の外面は大穴72の内面に密着している。これにより、噴射部13からの空気が、第1保持部材40の上方に漏れにくくなっていると共に、漏れ音が好適に吸音されるようになっている。
【0048】
第2保持部材50は、インジェクタ本体10の上方に配置され、円盤状の天壁部51と、天壁部51から下方に延びた一対のアーム53、53とを備えている。そして、前記したように、天壁部51と、空気導入管17のフランジ部19とで、第2緩衝部材30を挟み、第2緩衝部材30を所定位置に保持している。
天壁部51には貫通孔52が形成されおり、空気導入管17の管本体18がこの貫通孔52を貫通し、外部に延設されている。
【0049】
なお、第1保持部材40の開口縁部44と、第2保持部材50のアーム53、53の下端部54、54とが、ボルトB、Bによって、消音ケース60の開口縁部69に締結されることで、第1保持部材40及び第2保持部材50が消音ケース60に固定されると共に、第1保持部材40及び第2保持部材50によるインジェクタ本体10の保持状態が維持されている。
【0050】
<消音ケース>
消音ケース60は、インジェクタ本体10から空気が噴射されることに伴う噴射音を低減するための有底円筒状のケースであり、その内部に、第1消音室61と第2消音室62とを有している。第1消音室61は、インジェクタ本体10の噴射部13側に配置されており、第2消音室62は、第1消音室61の下方に配置されている。なお、第1消音室61の上方は、これに差し込まれた第1保持部材40によって密閉されている。
【0051】
第1消音室61と第2消音室62とは中間壁部63で仕切られると共に、中間壁部63には周方向に複数の連通孔64が形成されており(図8参照)、第1消音室61と第2消音室62とは連通孔64を介して連通している。また、消音ケース60の底壁部65には連通孔66が形成されており、第2消音室62とインジェクタ1の外部とは、連通孔66を介して連通している。そして、インジェクタ本体10から噴射された空気は、第1消音室61、複数の連通孔64、第2消音室62、連通孔66を通って、インジェクタ1の外部に噴射されるようになっている。
【0052】
ここで、図6に示すように、連通孔66は底壁部65の厚さ方向に対して略斜めに形成、つまり、連通孔66には外部に排出される空気の流れ方向を底壁部65に沿うように曲げる屈曲部67が設けられている。これにより、外部に排出される空気が、消音ケース60の下方の機器(図示しない)に、勢いよく吹き付けられないようになっている。
その他、連通孔66を下流に向かって拡径するように形成し、外部に排出される空気の流量を下げるようにしてもよい。
【0053】
<第1吸音部材、第2吸音部材>
第1吸音部材71及び第2吸音部材75は、インジェクタ本体10から噴射される空気の噴射音を吸音するための部材であり、例えば、スポンジ等の多孔質体から形成されている。そして、第1吸音部材71は第1消音室61に収容されており、第2吸音部材75は第2消音室62に収容されている。
【0054】
第1吸音部材71は、大穴72と、大穴72の底に段違いで形成された小穴73とを有している。
大穴72には第1保持部材40の縮径部43が差し込まれており、縮径部43の外周面は大穴72の内周面に密着し、底壁部41の外底面は大穴72の底面に密着している。
一方、小穴73には第1保持部材40の貫通孔42から突出した噴射部13が差し込まれており、噴射部13の外周面は小穴73の内周面に密着し、噴射部13の外底面は小穴73の底面に密着している。すなわち、噴射部13は、第1吸音部材71に差し込まれている。
【0055】
<外ケース>
外ケース80は、インジェクタ本体10、第1緩衝部材20、第2緩衝部材30等を、インジェクタ1の外部の埃・水分等から保護するために、また、外部に音を漏らさないようにするために、上側が閉じた円筒状のケースであり、インジェクタ本体10、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30が、外部から隠れるように、空気導入管17の管本体18に取り付けられている。
また、外ケース80の全裏面には、スポンジ等からなる吸音層81が形成されており、インジェクタ本体10の作動音が、吸音層81で好適に吸音されるようになっている。
【0056】
<インジェクタの作用・効果>
このようなインジェクタ1によれば、次の作用・効果を得る。
第1緩衝部材20の上面23の外側部分が第1保持部材40から開放され、第1緩衝部材20の内周面24の下部が噴射部13から開放され、第2緩衝部材30の外周面33が第2保持部材50から開放され、第2保持部材50の内周面35が空気導入管17から開放されているので、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30が、インジェクタ本体10の振動に追従して、容易に変形する。これにより、インジェクタ本体10から第1保持部材40及び第2保持部材50に伝達する振動を大きく低減でき、燃料電池自動車の静粛性を確保できる。
【0057】
また、大きく開放された第2緩衝部材30は、第1緩衝部材20よりも厚いので(T30>T20)、インジェクタ本体10の振動を、さらに好適に低減できる。
さらに、インジェクタ本体10の噴射部13は、第1吸音部材71に差し込まれているので、空気を第1吸音部材71内に噴射し、噴射音を好適に吸音できる。
【0058】
さらにまた、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30は円筒形を呈する簡易な形状であるから、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30を容易に生産できる。また、第1緩衝部材20及び第2緩衝部材30の量は、従来と比較して、削減されているので、インジェクタ1が軽量化されると共に、インジェクタ1を低コストで簡便に生産可能となる。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば次のように変更することができ、また、次の構成を適宜組合させてもよい。
【0060】
前記した実施形態では、インジェクタ本体10が空気を噴射するとしたが、その他のガス(気体)や、ガソリン等の液体を噴射するものでもよい。
【0061】
前記した実施形態では、燃料電池自動車に搭載された燃料電池システム100に、本発明を適用した場合を例示したが、その他に例えば、自動二輪車、列車、船舶に搭載された燃料電池システム、家庭用や業務用の据え置き型の燃料電池システムや、給湯システムに組み込まれた燃料電池システムに適用してもよい。また、その他のシステムに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態に係る燃料電池システムの構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るインジェクタの斜視図であり、外ケースを省略している。
【図3】本実施形態に係るインジェクタの分解斜視図であり、外ケースを省略している。
【図4】本実施形態に係るインジェクタの縦断面図である。
【図5】図4の第1緩衝部材20の拡大図である。
【図6】図4の連通孔66の拡大図である。
【図7】図4のX1−X1線断面図である。
【図8】図4のX2−X2線断面図であり、第1吸音部材を省略している。
【符号の説明】
【0063】
1 インジェクタ
10 インジェクタ本体
13 噴射部
20 第1緩衝部材
30 第2緩衝部材
40 第1保持部材
50 第2保持部材
60 消音ケース
71 第1吸音部材
75 第2吸音部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に導入される流体を、その可動方向の一方側から噴射するインジェクタ本体と、
前記インジェクタ本体の一方側に設けられたゲル状の第1緩衝部材と、
前記インジェクタ本体の他方側に設けられたゲル状の第2緩衝部材と、
前記インジェクタ本体を、前記第1緩衝部材及び前記第2緩衝部材を介して保持する保持部材と、
を備え、
前記第1緩衝部材及び/又は前記第2緩衝部材の少なくとも一部は、前記保持部材から開放されている
ことを特徴とするインジェクタ。
【請求項2】
前記第2緩衝部材は、前記第1緩衝部材よりも、大きく開放されており、
可動方向において、前記第2緩衝部材は、前記第1緩衝部材よりも厚い
ことを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ。
【請求項3】
前記インジェクタ本体による流体の噴射に伴う噴射音を吸音する多孔質状の吸音部材を備え、
前記インジェクタ本体の噴射部は、前記吸音部材に差し込まれている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインジェクタ。
【請求項1】
内部に導入される流体を、その可動方向の一方側から噴射するインジェクタ本体と、
前記インジェクタ本体の一方側に設けられたゲル状の第1緩衝部材と、
前記インジェクタ本体の他方側に設けられたゲル状の第2緩衝部材と、
前記インジェクタ本体を、前記第1緩衝部材及び前記第2緩衝部材を介して保持する保持部材と、
を備え、
前記第1緩衝部材及び/又は前記第2緩衝部材の少なくとも一部は、前記保持部材から開放されている
ことを特徴とするインジェクタ。
【請求項2】
前記第2緩衝部材は、前記第1緩衝部材よりも、大きく開放されており、
可動方向において、前記第2緩衝部材は、前記第1緩衝部材よりも厚い
ことを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ。
【請求項3】
前記インジェクタ本体による流体の噴射に伴う噴射音を吸音する多孔質状の吸音部材を備え、
前記インジェクタ本体の噴射部は、前記吸音部材に差し込まれている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインジェクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2009−279469(P2009−279469A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130997(P2008−130997)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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