インストルメントパネルのエアバッグ部の構造
【目的】 エアバッグドアおよびエアバッグドア周辺部分のインストルメントパネルが高い強度を有し、かつ外観の良好なインストルメントパネルとエアバッグケースの取付け構造を提供する。
【構成】 パネル主体12の裏面側に熱かしめ用のボス16が一体に突設されており、補強板20にはボス貫通部21が形成されていて、前記ボスが前記ボス貫通部を貫通して熱かしめされて当該補強板が前記パネル主体の裏面側に固着されているとともに、該補強板にはエアバッグケース取り付け部材が設けられていて、前記取り付け部材を介してエアバッグケースが前記補強板に固着されている。
【構成】 パネル主体12の裏面側に熱かしめ用のボス16が一体に突設されており、補強板20にはボス貫通部21が形成されていて、前記ボスが前記ボス貫通部を貫通して熱かしめされて当該補強板が前記パネル主体の裏面側に固着されているとともに、該補強板にはエアバッグケース取り付け部材が設けられていて、前記取り付け部材を介してエアバッグケースが前記補強板に固着されている。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はインストルメントパネルのエアバッグ部の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車の助手席にもエアバッグ装置が設けられるようになった。このエアバッグ装置は、エアバッグと当該エアバッグが収納されるエアバッグケースとからなり、助手席前面のインストルメントパネルの裏側に取り付けられる。エアバッグ装置が設けられたインストルメントパネルのエアバッグ部は、エアバッグのための展開開口部を有し、この開口部は平時には前記インストルメントパネルと同種の外観をもったエアバッグドアによって覆われている。そして、一旦衝突などによって車両が大きな衝撃を受けた時には、前記エアバッグケース内に収納されているエアバッグが作動して膨張し、このエアバッグドアを内側から押し広げて開口させる。
【0003】しかるに、この構造にあっては、エアバッグの展開開口部とエアバッグドアとが別体によって構成されるため、製品寸法のわずかなばらつきあるいは使用に伴う製品の収縮などにより両者を区画するラインが不可避的に生じ、インストルメントパネルの外観が損なわれるおそれがある。また、後工程によってインストルメントパネルにエアバッグドアを取り付けることは自ずと工数を増大させることになる。
【0004】そのため、最近では図6および図7に示されるように、インストルメントパネル50裏面に、ノッチ状の開口予定部51およびヒンジ部52を形成してエアバッグドア部53を一体に区画形成するとともに、該エアバッグドア部53裏面にアルミ板や鉄板などの補強板54を裏打ちしたものが提案されている。そして、エアバッグ55が膨張した際には前記インストルメントパネル50裏面のノッチ状の開口予定部51が開裂し、ヒンジ部52を介してエアバッグドア部53が開口する。
【0005】この構造によれば、インストルメントパネル50とエアバッグドア部53とが一体に形成され、前記したような両者を区画するラインがインストルメントパネル表面に現出されないので、外観は良好となる。しかしながら、インストルメントパネル50とエアバッグドア部53が一体に形成される関係上、このインストルメントパネル部分とエアバッグ55を内装したエアバッグケース56との間に、隙間が生じ、膨張展開するエアバッグ55の圧力がエアバッグ開口予定部51より広い範囲に作用し、エアバッグドア部53が開口するまでに、周辺のインストルメントパネル50が変形したり、破損するおそれがあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、このような問題点に鑑み提案されたものであって、エアバッグドア部周辺部分のインストルメントパネルの変形または破損を招くことなくエアバッグを確実に展開させるとともに、外観の良好なインストルメントパネルのエアバッグ部の構造を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち、この発明は、エアバッグ作動時の膨張圧力によってヒンジ開口するようにあらかじめヒンジ部と開口予定部がそれぞれ形成されたインストルメントパネルのパネル主体ならびにその裏面側に裏打ちされた補強板を含み、前記補強板を介してエアバッグを内包するエアバッグケースが固着されたインストルメントパネルのエアバッグ部の構造であって、前記パネル主体の裏面側には熱かしめ用のボスが一体に突設されており、前記補強板には前記熱かしめ用ボスのためのボス貫通部が形成されていて、前記ボスが前記ボス貫通部を貫通して熱かしめされて当該補強板が前記パネル主体の裏面側に固着されているとともに、前記補強板にはエアバッグケース取り付け部材が設けられていて、前記エアバッグケースには前記取り付け部材に対応する位置に取り付け孔が設けられており、前記取り付け部材を介して当該エアバッグケースが前記補強板に固着されていることを特徴とするインストルメントパネルのエアバッグ部の構造に係る。
【0008】
【実施例】以下添付の図面に従ってこの発明を詳細に説明する。図1はこの発明のインストルメントパネルのエアバッグ部の構造の一例を示す断面図、図2はその要部を拡大した断面図、図3はこの発明構造を分解してインストルメントパネル裏面から示した斜視図、図4はこの発明構造の他の例を示す要部の断面図、図5は同じく別の実施例を示す要部の断面図である。
【0009】図1および図2に示されるように、この発明のインストルメントパネルのエアバッグ部の構造は、自動車のインストルメントパネル10裏面の所定位置にエアバッグ30を内包するエアバッグケース31を、取り付け部材32により確実にかつ強固に固着した構造に関する。そして、エアバッグ作動時の膨張圧力を受けた場合には、前記エアバッグドア部周辺のインストルメントパネルを破壊することなく確実にエアバッグドア部11を開放させることができる。符号17はエアバッグケース31を支えるリーンホース、18,19はブラケットである。
【0010】インストルメントパネル10は、所定のパネル形状に形成されたパネル主体12および当該パネル主体12裏面の所定位置に裏打ちされた補強板20を含んでいる。パネル主体12の裏面には、従来技術の項で説明したと同様に、ヒンジ部13とあらかじめ適宜深さのノッチによって薄肉にされた開口予定部14がそれぞれ形成されている。ヒンジ部13は、エアバッグ作動時の膨張圧力を受けた際に、エアバッグドア部11をヒンジ開口せしめる。また、開口予定部14は、実施例ではコ字状に形成されていて、前記エアバッグドア部11のドア形状を区画して、前記エアバッグ30の膨張圧力により破断してエアバッグドア部11を開放する。なお、前記開口予定部14は図のような略コの字状のほか、エの字状に形成してもよい。この構成によれば、エアバッグドア部11はインストルメントパネル10に一体に形成されており、当該エアバッグドア部11とインストルメントパネル10との境界線が現出されることがなく、外観良好である。
【0011】図3に示されるように、パネル主体12の裏面には、多数本の熱かしめ用ボス16が一体に突設されている。ボス16は、後に述べる補強板20を熱かしめによりパネル主体12裏面に固着するためのもので、当該補強板20の厚みより長く形成されている。このボス16は、前記パネル主体12のエアバッグドア部11裏面だけでなく、ヒンジ部13および開口予定部14を避けたエアバッグドア部11の周辺にわたって多数が設けられる。なお、このボス16は、意匠面のヒケを防止するため中空形状とすることが好ましい。
【0012】また、この実施例では、パネル主体12の裏面において、エアバッグケース31の開口部33外側近傍には凹所15が形成されている。この凹所15は、エアバッグケース31をインストルメントパネル10裏面に固着するための取り付け部材(ここではボルト)32の頭部35が収容される。この凹所15によれば、補強板20をパネル主体12裏面に裏打ちする際に、前記頭部35がパネル主体12内に完全に収容されるので、補強板20をパネル主体12裏面に密着させて固定することができる。前記凹所15の深さは、取り付け部材32の頭部が完全に収容され、かつパネル主体12裏面に突出するボルト部34の長さが補強板20の厚みより大となるように構成される。
【0013】補強板20は金属板や剛性の高い樹脂板よりなり、前記パネル主体12のエアバッグドア部11裏面に、前記ヒンジ部13および開口予定部14およびその近傍を含んで裏打ちされている。それによって、エアバッグドア部11の開放の際の衝撃で、ヒンジ部13および開口予定部14周辺のインストルメントパネル10が変形したり破損するのを防ぐ。この補強板20には、前記ボス16のための小孔よりなるボス貫通部21およびエアバッグケースの取り付け部材32が設けられている。符号22は取り付け部材32のための孔部である。この補強板20としては、鉄またはアルミなどの金属板のほかに、ポリカーボネート(PC)、PC系アロイ複合材、PA系アロイ複合材、PPO系アロイ複合材のほか、各種エラストマー材料が使用される。なお、図中の符号23は、前記パネル主体12のヒンジ部に対応して重なり合う屈曲部、24は開口予定部14に対応するスリット状の開口部で、エアバッグ30の膨張によってパネル主体12の開口予定部14を速やかに破断せしめるものである。
【0014】補強板20のボス貫通部21は、パネル主体12に突設されたボス16と対応する位置に設けられている。そして、このボス16を貫通させ、先端を前記補強板20表面に突出させる。また、補強板20の所定位置には、エアバッグケース取り付け部材(ボルト)32が設けられており、補強板20をパネル主体12に固着する際に、当該取り付け部材32のボルト部34を孔部22から補強板20表面に突設する。
【0015】このような構成よりなる補強板20は、パネル主体12のボス16を前記ボス貫通部21に貫通させ、前記補強板20表面から突出したボス16の先端を超音波、ハンダ熱風などを用いて軟化させ補強板20を介してプレスしてかしめることにより、パネル主体12裏面に一体に固着される。
【0016】このとき、この実施例のように、エアバッグケース取り付け部材(ボルト)32の頭部35が補強板20に突出するような場合には、前記したようにパネル主体12裏面には該ボルト頭部35を収容する凹部15が設けられているので、補強板20をパネル主体12裏面に密着させ強固に固着することができる。
【0017】なお、エアバッグケース取り付け部材と補強板との組付けは図4または図5のような例がある。図4R>4は補強板20Aに凹所29を設けて、該凹所29にエアバッグケース取り付け部材(ボルト)32のボルト頭部35を収容する構造である。このような構成とすれば、先の実施例のように、パネル主体に凹部15を形成する必要はない。符号31はエアバッグケース、38はナットである。
【0018】また、図5は、同じく補強板20Aの凹所29にエアバッグケース取り付け部材(ナット)32Aを取り付けた例である。符号39はボルトである。
【0019】前記補強板20の裏打ちされたインストルメントパネル10の裏面には、エアバッグケース31が取り付けられる。前記したように、このエアバッグケース31は、前記インストルメントパネル10側に開口し、エアバッグ30を内包している。前記エアバッグケース31の開口部33には、エアバッグケース31をインストルメントパネル10に取り付けるためのフランジ状の取り付け部36が設けられている。この例において、前記取り付け部36は開口端部33の四方に設けられている。
【0020】この取り付け部36には、前記した補強板に設けられた取り付け部材(ボルトまたはナット等)に対応する取り付け孔37が形成されており、この取り付け孔37を介してナット38(またはボルト39)を螺着することによって、エアバッグケース31がインストルメントパネル10裏面に固着される。
【0021】なお、図1から理解されるように、エアバッグケース31の開口部33と前記スリット状開口部24および開口予定部14の位置関係は、互いに一致せずかつ開口部33から開口予定部14に向かって外側方向に形成されることが好ましい。それによって、エアバッグ30が膨張してエアバッグドア部11が開口した場合、エアバッグ30が破断した開口予定部14に当たって破れるのを防ぐ。
【0022】また、開口予定部14が補強板20およびエアバッグケース31の取り付け部36によって裏面から支持されるので、平時のインストルメントパネル表面側からの圧力に対する充分な強度を保つことができる。
【0023】
【発明の効果】以上図示し説明したように、この発明の構造によれば、インストルメントパネルにエアバッグドアが一体に形成されかつ表面にエアバッグドアの形状が表れない。そのため、インストルメントパネルの外観は極めて良好であるとともに、エアバッグドア取り付けのための工程を簡略化することができる。しかも、エアバッグドアの開口予定部およびヒンジ部周辺が補強板によって強固に補強されているので、エアバッグの展開の際のエネルギーで該周辺部が変形したり破壊されるおそれがない。また、エアバッグケースは、補強板を介してインストルメントパネル裏面に突出する取り付けボルトによって、当該インストルメントパネル裏面に直接取り付けられるので、エアバッグケース取り付け時の位置合わせが簡単でその精度も良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のインストルメントパネルのエアバッグ部の構造の一例を示す断面図である。
【図2】その要部を拡大した断面図である。
【図3】この発明構造を分解してインストルメントパネル裏面から示した斜視図である。
【図4】この発明構造の他の例を示す要部の断面図である。
【図5】同じく別の実施例を示す要部の断面図である。
【図6】従来のインストルメントパネルのエアバッグ部の構造の一例を示す斜視図である。
【図7】その7−7線における断面図である。
【符号の説明】
10 インストルメントパネル
11 エアバッグドア部
12 パネル主体
15 凹所
16 ボス
20 補強板
21 ボス貫通部
22 ボルト貫通部
30 エアバッグ
31 エアバッグケース
32 取り付け部材(ボルト)
34 ボルト部
35 頭部
37 取り付け孔
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はインストルメントパネルのエアバッグ部の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車の助手席にもエアバッグ装置が設けられるようになった。このエアバッグ装置は、エアバッグと当該エアバッグが収納されるエアバッグケースとからなり、助手席前面のインストルメントパネルの裏側に取り付けられる。エアバッグ装置が設けられたインストルメントパネルのエアバッグ部は、エアバッグのための展開開口部を有し、この開口部は平時には前記インストルメントパネルと同種の外観をもったエアバッグドアによって覆われている。そして、一旦衝突などによって車両が大きな衝撃を受けた時には、前記エアバッグケース内に収納されているエアバッグが作動して膨張し、このエアバッグドアを内側から押し広げて開口させる。
【0003】しかるに、この構造にあっては、エアバッグの展開開口部とエアバッグドアとが別体によって構成されるため、製品寸法のわずかなばらつきあるいは使用に伴う製品の収縮などにより両者を区画するラインが不可避的に生じ、インストルメントパネルの外観が損なわれるおそれがある。また、後工程によってインストルメントパネルにエアバッグドアを取り付けることは自ずと工数を増大させることになる。
【0004】そのため、最近では図6および図7に示されるように、インストルメントパネル50裏面に、ノッチ状の開口予定部51およびヒンジ部52を形成してエアバッグドア部53を一体に区画形成するとともに、該エアバッグドア部53裏面にアルミ板や鉄板などの補強板54を裏打ちしたものが提案されている。そして、エアバッグ55が膨張した際には前記インストルメントパネル50裏面のノッチ状の開口予定部51が開裂し、ヒンジ部52を介してエアバッグドア部53が開口する。
【0005】この構造によれば、インストルメントパネル50とエアバッグドア部53とが一体に形成され、前記したような両者を区画するラインがインストルメントパネル表面に現出されないので、外観は良好となる。しかしながら、インストルメントパネル50とエアバッグドア部53が一体に形成される関係上、このインストルメントパネル部分とエアバッグ55を内装したエアバッグケース56との間に、隙間が生じ、膨張展開するエアバッグ55の圧力がエアバッグ開口予定部51より広い範囲に作用し、エアバッグドア部53が開口するまでに、周辺のインストルメントパネル50が変形したり、破損するおそれがあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、このような問題点に鑑み提案されたものであって、エアバッグドア部周辺部分のインストルメントパネルの変形または破損を招くことなくエアバッグを確実に展開させるとともに、外観の良好なインストルメントパネルのエアバッグ部の構造を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち、この発明は、エアバッグ作動時の膨張圧力によってヒンジ開口するようにあらかじめヒンジ部と開口予定部がそれぞれ形成されたインストルメントパネルのパネル主体ならびにその裏面側に裏打ちされた補強板を含み、前記補強板を介してエアバッグを内包するエアバッグケースが固着されたインストルメントパネルのエアバッグ部の構造であって、前記パネル主体の裏面側には熱かしめ用のボスが一体に突設されており、前記補強板には前記熱かしめ用ボスのためのボス貫通部が形成されていて、前記ボスが前記ボス貫通部を貫通して熱かしめされて当該補強板が前記パネル主体の裏面側に固着されているとともに、前記補強板にはエアバッグケース取り付け部材が設けられていて、前記エアバッグケースには前記取り付け部材に対応する位置に取り付け孔が設けられており、前記取り付け部材を介して当該エアバッグケースが前記補強板に固着されていることを特徴とするインストルメントパネルのエアバッグ部の構造に係る。
【0008】
【実施例】以下添付の図面に従ってこの発明を詳細に説明する。図1はこの発明のインストルメントパネルのエアバッグ部の構造の一例を示す断面図、図2はその要部を拡大した断面図、図3はこの発明構造を分解してインストルメントパネル裏面から示した斜視図、図4はこの発明構造の他の例を示す要部の断面図、図5は同じく別の実施例を示す要部の断面図である。
【0009】図1および図2に示されるように、この発明のインストルメントパネルのエアバッグ部の構造は、自動車のインストルメントパネル10裏面の所定位置にエアバッグ30を内包するエアバッグケース31を、取り付け部材32により確実にかつ強固に固着した構造に関する。そして、エアバッグ作動時の膨張圧力を受けた場合には、前記エアバッグドア部周辺のインストルメントパネルを破壊することなく確実にエアバッグドア部11を開放させることができる。符号17はエアバッグケース31を支えるリーンホース、18,19はブラケットである。
【0010】インストルメントパネル10は、所定のパネル形状に形成されたパネル主体12および当該パネル主体12裏面の所定位置に裏打ちされた補強板20を含んでいる。パネル主体12の裏面には、従来技術の項で説明したと同様に、ヒンジ部13とあらかじめ適宜深さのノッチによって薄肉にされた開口予定部14がそれぞれ形成されている。ヒンジ部13は、エアバッグ作動時の膨張圧力を受けた際に、エアバッグドア部11をヒンジ開口せしめる。また、開口予定部14は、実施例ではコ字状に形成されていて、前記エアバッグドア部11のドア形状を区画して、前記エアバッグ30の膨張圧力により破断してエアバッグドア部11を開放する。なお、前記開口予定部14は図のような略コの字状のほか、エの字状に形成してもよい。この構成によれば、エアバッグドア部11はインストルメントパネル10に一体に形成されており、当該エアバッグドア部11とインストルメントパネル10との境界線が現出されることがなく、外観良好である。
【0011】図3に示されるように、パネル主体12の裏面には、多数本の熱かしめ用ボス16が一体に突設されている。ボス16は、後に述べる補強板20を熱かしめによりパネル主体12裏面に固着するためのもので、当該補強板20の厚みより長く形成されている。このボス16は、前記パネル主体12のエアバッグドア部11裏面だけでなく、ヒンジ部13および開口予定部14を避けたエアバッグドア部11の周辺にわたって多数が設けられる。なお、このボス16は、意匠面のヒケを防止するため中空形状とすることが好ましい。
【0012】また、この実施例では、パネル主体12の裏面において、エアバッグケース31の開口部33外側近傍には凹所15が形成されている。この凹所15は、エアバッグケース31をインストルメントパネル10裏面に固着するための取り付け部材(ここではボルト)32の頭部35が収容される。この凹所15によれば、補強板20をパネル主体12裏面に裏打ちする際に、前記頭部35がパネル主体12内に完全に収容されるので、補強板20をパネル主体12裏面に密着させて固定することができる。前記凹所15の深さは、取り付け部材32の頭部が完全に収容され、かつパネル主体12裏面に突出するボルト部34の長さが補強板20の厚みより大となるように構成される。
【0013】補強板20は金属板や剛性の高い樹脂板よりなり、前記パネル主体12のエアバッグドア部11裏面に、前記ヒンジ部13および開口予定部14およびその近傍を含んで裏打ちされている。それによって、エアバッグドア部11の開放の際の衝撃で、ヒンジ部13および開口予定部14周辺のインストルメントパネル10が変形したり破損するのを防ぐ。この補強板20には、前記ボス16のための小孔よりなるボス貫通部21およびエアバッグケースの取り付け部材32が設けられている。符号22は取り付け部材32のための孔部である。この補強板20としては、鉄またはアルミなどの金属板のほかに、ポリカーボネート(PC)、PC系アロイ複合材、PA系アロイ複合材、PPO系アロイ複合材のほか、各種エラストマー材料が使用される。なお、図中の符号23は、前記パネル主体12のヒンジ部に対応して重なり合う屈曲部、24は開口予定部14に対応するスリット状の開口部で、エアバッグ30の膨張によってパネル主体12の開口予定部14を速やかに破断せしめるものである。
【0014】補強板20のボス貫通部21は、パネル主体12に突設されたボス16と対応する位置に設けられている。そして、このボス16を貫通させ、先端を前記補強板20表面に突出させる。また、補強板20の所定位置には、エアバッグケース取り付け部材(ボルト)32が設けられており、補強板20をパネル主体12に固着する際に、当該取り付け部材32のボルト部34を孔部22から補強板20表面に突設する。
【0015】このような構成よりなる補強板20は、パネル主体12のボス16を前記ボス貫通部21に貫通させ、前記補強板20表面から突出したボス16の先端を超音波、ハンダ熱風などを用いて軟化させ補強板20を介してプレスしてかしめることにより、パネル主体12裏面に一体に固着される。
【0016】このとき、この実施例のように、エアバッグケース取り付け部材(ボルト)32の頭部35が補強板20に突出するような場合には、前記したようにパネル主体12裏面には該ボルト頭部35を収容する凹部15が設けられているので、補強板20をパネル主体12裏面に密着させ強固に固着することができる。
【0017】なお、エアバッグケース取り付け部材と補強板との組付けは図4または図5のような例がある。図4R>4は補強板20Aに凹所29を設けて、該凹所29にエアバッグケース取り付け部材(ボルト)32のボルト頭部35を収容する構造である。このような構成とすれば、先の実施例のように、パネル主体に凹部15を形成する必要はない。符号31はエアバッグケース、38はナットである。
【0018】また、図5は、同じく補強板20Aの凹所29にエアバッグケース取り付け部材(ナット)32Aを取り付けた例である。符号39はボルトである。
【0019】前記補強板20の裏打ちされたインストルメントパネル10の裏面には、エアバッグケース31が取り付けられる。前記したように、このエアバッグケース31は、前記インストルメントパネル10側に開口し、エアバッグ30を内包している。前記エアバッグケース31の開口部33には、エアバッグケース31をインストルメントパネル10に取り付けるためのフランジ状の取り付け部36が設けられている。この例において、前記取り付け部36は開口端部33の四方に設けられている。
【0020】この取り付け部36には、前記した補強板に設けられた取り付け部材(ボルトまたはナット等)に対応する取り付け孔37が形成されており、この取り付け孔37を介してナット38(またはボルト39)を螺着することによって、エアバッグケース31がインストルメントパネル10裏面に固着される。
【0021】なお、図1から理解されるように、エアバッグケース31の開口部33と前記スリット状開口部24および開口予定部14の位置関係は、互いに一致せずかつ開口部33から開口予定部14に向かって外側方向に形成されることが好ましい。それによって、エアバッグ30が膨張してエアバッグドア部11が開口した場合、エアバッグ30が破断した開口予定部14に当たって破れるのを防ぐ。
【0022】また、開口予定部14が補強板20およびエアバッグケース31の取り付け部36によって裏面から支持されるので、平時のインストルメントパネル表面側からの圧力に対する充分な強度を保つことができる。
【0023】
【発明の効果】以上図示し説明したように、この発明の構造によれば、インストルメントパネルにエアバッグドアが一体に形成されかつ表面にエアバッグドアの形状が表れない。そのため、インストルメントパネルの外観は極めて良好であるとともに、エアバッグドア取り付けのための工程を簡略化することができる。しかも、エアバッグドアの開口予定部およびヒンジ部周辺が補強板によって強固に補強されているので、エアバッグの展開の際のエネルギーで該周辺部が変形したり破壊されるおそれがない。また、エアバッグケースは、補強板を介してインストルメントパネル裏面に突出する取り付けボルトによって、当該インストルメントパネル裏面に直接取り付けられるので、エアバッグケース取り付け時の位置合わせが簡単でその精度も良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のインストルメントパネルのエアバッグ部の構造の一例を示す断面図である。
【図2】その要部を拡大した断面図である。
【図3】この発明構造を分解してインストルメントパネル裏面から示した斜視図である。
【図4】この発明構造の他の例を示す要部の断面図である。
【図5】同じく別の実施例を示す要部の断面図である。
【図6】従来のインストルメントパネルのエアバッグ部の構造の一例を示す斜視図である。
【図7】その7−7線における断面図である。
【符号の説明】
10 インストルメントパネル
11 エアバッグドア部
12 パネル主体
15 凹所
16 ボス
20 補強板
21 ボス貫通部
22 ボルト貫通部
30 エアバッグ
31 エアバッグケース
32 取り付け部材(ボルト)
34 ボルト部
35 頭部
37 取り付け孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エアバッグ作動時の膨張圧力によってヒンジ開口するようにあらかじめヒンジ部と開口予定部がそれぞれ形成されたインストルメントパネルのパネル主体ならびにその裏面側に裏打ちされた補強板を含み、前記補強板を介してエアバッグを内包するエアバッグケースが固着されたインストルメントパネルのエアバッグ部の構造であって、前記パネル主体の裏面側には熱かしめ用のボスが一体に突設されており、前記補強板には前記熱かしめ用ボスのためのボス貫通部が形成されていて、前記ボスが前記ボス貫通部を貫通して熱かしめされて当該補強板が前記パネル主体の裏面側に固着されているとともに、前記補強板にはエアバッグケース取り付け部材が設けられていて、前記エアバッグケースには前記取り付け部材に対応する位置に取り付け孔が設けられており、前記取り付け部材を介して当該エアバッグケースが前記補強板に固着されていることを特徴とするインストルメントパネルのエアバッグ部の構造。
【請求項1】 エアバッグ作動時の膨張圧力によってヒンジ開口するようにあらかじめヒンジ部と開口予定部がそれぞれ形成されたインストルメントパネルのパネル主体ならびにその裏面側に裏打ちされた補強板を含み、前記補強板を介してエアバッグを内包するエアバッグケースが固着されたインストルメントパネルのエアバッグ部の構造であって、前記パネル主体の裏面側には熱かしめ用のボスが一体に突設されており、前記補強板には前記熱かしめ用ボスのためのボス貫通部が形成されていて、前記ボスが前記ボス貫通部を貫通して熱かしめされて当該補強板が前記パネル主体の裏面側に固着されているとともに、前記補強板にはエアバッグケース取り付け部材が設けられていて、前記エアバッグケースには前記取り付け部材に対応する位置に取り付け孔が設けられており、前記取り付け部材を介して当該エアバッグケースが前記補強板に固着されていることを特徴とするインストルメントパネルのエアバッグ部の構造。
【図2】
【図4】
【図5】
【図1】
【図3】
【図6】
【図7】
【図4】
【図5】
【図1】
【図3】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開平7−291078
【公開日】平成7年(1995)11月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−113466
【出願日】平成6年(1994)4月28日
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【公開日】平成7年(1995)11月7日
【国際特許分類】
【出願日】平成6年(1994)4月28日
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
[ Back to top ]