説明

インストルメントパネル構造

【課題】車両の発進時等におけるトレイ部からの物品の落下を確実に防止し且つトレイ部への物品の出し入れを従来より容易に行い得るようにする。
【解決手段】インストルメントパネルの助手席側に物品を載置可能なトレイ部2を備えたインストルメントパネル構造に関し、トレイ部2の上側に配置される助手席側アッパパネル3の張出面を車両前方へ退避させて該張出面よりも前記トレイ部2が車両後方へ張り出すように構成し、該トレイ部2の後端に物品の載置面より高くせり上がる後壁5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、インストルメントパネルの助手席側にティッシュペーパーや筆記具等といった物品を収容するためのトレイ部を備えた車両がある。一般的に、この種のトレイ部は、その上側にエアバッグリッドやアッパボックスリッド等を成す助手席側アッパパネルを備え、その下側にグローブボックス等を有する助手席側ロアパネルを備えており、これら助手席側アッパパネルと助手席側ロアパネルとに挟まれたレイアウトとなっている。
【0003】
ここで、助手席側アッパパネルにつき補足して説明しておくと、トレイ部の上側位置には、エアバッグモジュール又はアッパボックスが選択的に構成されるようになっており、エアバッグモジュールが選択された場合には、助手席側アッパパネルがエアバッグリッドにより構成されることになり、アッパボックスが選択された場合には、助手席側アッパパネルがアッパボックスリッドにより構成されることになる。
【0004】
また、トレイ部がインストルメントパネルの本体構造に対して取り付けられている一方、助手席側ロアパネルはエアコンユニットに対して取り付けられており、既存のインストルメントパネル構造においては、トレイ部と助手席側ロアパネルとが単に位置合わせされているに留まり、特に相互間を連結するような措置は採られていない。
【0005】
尚、トレイ部を助手席側に備えたインストルメントパネル構造に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−81895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、先の特許文献1にも示されている通り、これまでのトレイ部には、車両前方ヘ向け僅かな下り勾配が付されているものの、トレイ部に収容されている物品の飛び出しを堰き止めるような構造にはなっていなかったため、車両の発進時等に慣性力が作用すると、トレイ部の物品が相対的に後方へ移動してそのまま落下してしまう虞れがあった。
【0008】
しかも、そもそも従来構造においては、トレイ部の上側に配置される助手席側アッパパネルの張出面が前記トレイ部より車両後方へ張り出したオーバーハング構造となっていて、前記トレイ部の間口が非常に狭くなっていたため、前記トレイ部への物品の出し入れが行い難い不便な構造となっており、物品の飛び出しを防止するために間口を更に狭めるような構造は実質的に採用できないのが実情である。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、車両の発進時等におけるトレイ部からの物品の落下を確実に防止し且つトレイ部への物品の出し入れを従来より容易に行い得るようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、インストルメントパネルの助手席側に物品を載置可能なトレイ部を備えたインストルメントパネル構造であって、トレイ部の上側に配置される助手席側アッパパネルの張出面を車両前方へ退避させて該張出面よりも前記トレイ部が車両後方へ張り出すように構成し、該トレイ部の後端に物品の載置面より高くせり上がる後壁を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
而して、このようにすれば、車両の発進時等における慣性力でトレイ部の物品が相対的に後方へ移動したとしても、その物品はトレイ部の後壁に突き当たることで載置面に留められるので、トレイ部からの物品の落下が前記後壁により確実に防止されることになる。
【0012】
また、トレイ部の後端で後壁がせり上がっていても、トレイ部の上側に配置される助手席側アッパパネルの張出面が車両前方へ退避して該張出面よりも前記トレイ部が車両後方へ張り出しているので、トレイ部の間口が広くなってトレイ部への物品の出し入れが行い易くなる。
【0013】
また、本発明においては、トレイ部の下側に配置される助手席側ロアパネルの上部を前記トレイ部の載置面より高くせり上がらせることにより後壁を形成し、該後壁の近傍位置にて前記トレイ部と前記助手席側ロアパネルとを締結することが好ましい。
【0014】
このようにすれば、助手席側ロアパネルの上部を利用して後壁を容易に構成することが可能であり、しかも、後壁の近傍位置におけるトレイ部と助手席側ロアパネルとの締結によりトレイ部の棚としての剛性が高められ、該トレイ部がぐらつくような事態が回避されて品質感の大幅な向上が図られる。
【0015】
更に、本発明においては、トレイ部の載置面にフックを取り付けることが好ましく、このようにすれば、コンビニエンスストア等で買い物をした際に、その買った品物をビニール袋に入れたままフックに掛けて吊るしておくことが可能となる。
【0016】
尚、このようにフックを別部品として取り付けるようにしておけば、前記フックが損傷しても該フックだけを適宜に交換すれば良く、トレイ部の一部にフックを一体成形した場合のようにトレイ部全体を交換しなくても済む。
【0017】
しかも、複数のフックを備えて少なくとも一対のフック間のピッチが250〜350mmとなるようにしておけば、前記一対のフックのうちの一方と他方にビニール袋の取っ手部分を夫々掛けて該ビニール袋の口を大きく開けた状態にして吊るしておくことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
上記した本発明のインストルメントパネル構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0019】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、車両の発進時等におけるトレイ部からの物品の落下を後壁により確実に防止することができ、しかも、助手席側アッパパネルの張出面を車両前方へ退避させてトレイ部の間口を広くしたことでトレイ部への物品の出し入れを容易に行い得るようにすることができる。
【0020】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、助手席側ロアパネルの上部を利用して後壁を容易に構成することができ、しかも、後壁の近傍位置におけるトレイ部と助手席側ロアパネルとの締結によりトレイ部の棚としての剛性を高めて品質感の向上を図ることができる。
【0021】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、コンビニエンスストア等で買い物をした際に、その買った品物をビニール袋に入れたままフックに掛けて吊るしておくことができ、しかも、フックが損傷した場合に該フックだけを適宜に交換して簡便に対応することができる。
【0022】
(IV)本発明の請求項4に記載の発明によれば、一対のフックのうちの一方と他方にビニール袋の取っ手部分を夫々掛けることにより、該ビニール袋の口を大きく開けた状態にして吊るしておくことができ、このビニール袋に対する品物の出し入れを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II矢視の断面図である。
【図3】図1のトレイ部を上方から見た平面図である。
【図4】図1のトレイ部にビニール袋を吊るした状態を示す斜視図である。
【図5】図4のトレイ部にビニール袋を吊るした状態を上方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図1中における1は助手席側に物品を載置可能なトレイ部2を備えたインストルメントパネルを示し、前記トレイ部2の上側には、アッパボックスリッドを成す助手席側アッパパネル3が配置され、前記トレイ部2の下側には、助手席側ロアパネル4が配置されている。
【0026】
特に図1のII−II矢視の断面を示す図2を参照すれば明らかな通り、本形態例においては、助手席側アッパパネル3の張出面を車両前方(図2中における左側)へ退避させて該張出面よりも前記トレイ部2が車両後方(図2中における右側)へ張り出すように構成されており、該トレイ部2の後端には、助手席側ロアパネル4の上部を前記トレイ部2の載置面2aより高くせり上がらせることにより後壁5が形成されている。
【0027】
ここで、図2の断面図で示している例では、車両後方に向けて開口したバケット型のケーシング部材6の底面部分が前記トレイ部2を成すようになっており、前記ケーシング部材6により物品の収納空間7が画成され且つ該収納空間7の奥側(車両前方側)で上方に折り返して収納空間7の手前側(車両後方側)へ延びる天井部分8が前記助手席側アッパパネル3の下部へと連続するようになっている。
【0028】
前記助手席側ロアパネル4には、そのトレイ部2直下に相当する高さ位置に車両前方に向けて張り出す締結座9が形成されており、該締結座9に対しトレイ部2の後方部分が載置されて該後方部分がボルト10とスプリングナット11とにより前記締結座9に対し締結されるようになっている。
【0029】
ここで、前記スプリングナット11は、助手席側ロアパネル4側の締結座9を車幅方向(図2の紙面に対し直角な方向)からクランプするように配置されており、前記ボルト10は、前記トレイ部2の載置面2aに対し略直角に上方から締め込まれて前記スプリングナット11と螺着するようになっている。
【0030】
更に、本形態例においては、前記ボルト10及びスプリングナット11による締結の際に、車両前方へ向け鉤爪状を成すフック12が一緒に共締めされるようになっており、このフック12と一緒に締結が成される箇所には、トレイ部2の載置面2aから一段下がった段差部2bが形成されていて、前記フック12の取付基部やボルト10のヘッドが前記載置面2aより上方へ突出しないようにしてある。
【0031】
尚、図3に上方から見た平面図で示しているように、前記フック12は、トレイ部2の後方部分における車幅方向両側に250〜350mmのピッチP(夫々のフック12の車幅方向外側端間の距離)を隔てて一対で配置され、しかも、車室側から見て前記後壁5に隠れた配置となるようにしてあり、前記フック12がトレイ部2内で目立つことで見栄えが悪くなるような事態を招かないようにしてある。
【0032】
而して、このようにすれば、車両の発進時等における慣性力でトレイ部2の物品が相対的に後方へ移動したとしても、その物品はトレイ部2の後壁5に突き当たることで載置面2aに留められるので、トレイ部2からの物品の落下が前記後壁5により確実に防止されることになり、しかも、トレイ部2の後端で後壁5がせり上がっていても、トレイ部2の上側に配置される助手席側アッパパネル3の張出面が車両前方へ退避して該張出面よりも前記トレイ部2が車両後方へ張り出すようになっているので、トレイ部2の間口が広くなってトレイ部2への物品の出し入れが行い易くなる。
【0033】
また、トレイ部2の下側に配置される助手席側ロアパネル4の上部を前記トレイ部2の載置面2aより高くせり上がらせることにより後壁5を形成し、該後壁5の近傍位置にて前記トレイ部2と前記助手席側ロアパネル4とを締結するようにしているので、助手席側ロアパネル4の上部を利用して後壁5を容易に構成することが可能であり、しかも、後壁5の近傍位置におけるトレイ部2と助手席側ロアパネル4との締結によりトレイ部2の棚としての剛性が高められ、該トレイ部2がぐらつくような事態が回避されて品質感の大幅な向上が図られる。
【0034】
この際、締結箇所のトレイ部2が一段下がった段差部2bを形成していて、フック12の取付基部やボルト10のヘッドが載置面2aより上方へ突出しないようになっているので、トレイ部2の物品が締結箇所と干渉する虞れがなくなって物品の良好な収納性が保たれることになる。
【0035】
尚、後壁5の近傍位置でトレイ部2と助手席側ロアパネル4とを締結するにあたり、助手席側アッパパネル3の張出面が車両前方へ退避して該張出面よりもトレイ部2が車両後方へ張り出すようになっているので、後壁5近傍の締結箇所に対し締結工具13(図2参照)を上方から接近させ易く、締結のための作業スペースも締結箇所の上方に容易に確保することが可能となる。特に本形態例の如く、トレイ部2の載置面2aに対し略直角に上方からボルト10を締め込む形式とすれば、締結作業がより一層行い易くなる上、締結箇所も後壁5側に寄せ易くなって該締結箇所を後壁5で隠し易くなる。例えば、図2に示す如く、前記締結工具13が約55mm径程度の一般的なサイズであった場合、助手席側アッパパネル3の張出面は、ボルト10の中心線を成す締結中心Oに対し車両前方へ約30mm程度退避させておけば良い。
【0036】
更に、図4及び図5に示す如く、トレイ部2の載置面2aにフック12を取り付けたことにより、コンビニエンスストア等で買い物をした際に、その買った品物をビニール袋14に入れたままフック12に掛けて吊るしておくことが可能となり、少なくとも一対のフック12を備えて該フック12間のピッチPが250〜350mmとなるようにしておけば、前記一対のフック12のうちの一方と他方にビニール袋14の取っ手部分を夫々掛けて該ビニール袋14の口を大きく開けた状態にして吊るしておくことが可能となる。
【0037】
即ち、本発明者らによる鋭意研究によれば、一般的にコンビニエンスストア等で配布されているサイズのビニール袋14の場合、フック12間のピッチPを250〜350mmとすることでビニール袋14の口を大きく開けた状態にして吊るしておけることが確認されている。
【0038】
また、本形態例のように、フック12を別部品として取り付けるようにしておけば、前記フック12が損傷しても該フック12だけを適宜に交換すれば良く、例えば、トレイ部の一部にフックを一体成形した場合のようにトレイ部全体を交換しなくても済むというメリットもある。
【0039】
従って、上記形態例によれば、車両の発進時等におけるトレイ部2からの物品の落下を後壁5により確実に防止することができ、しかも、助手席側アッパパネル3の張出面を車両前方へ退避させてトレイ部2の間口を広くしたことでトレイ部2への物品の出し入れを容易に行い得るようにすることができる。
【0040】
また、助手席側ロアパネル4の上部を利用して後壁5を容易に構成することができ、しかも、後壁5の近傍位置におけるトレイ部2と助手席側ロアパネル4との締結によりトレイ部2の棚としての剛性を高めて品質感の向上を図ることができる。
【0041】
しかも、コンビニエンスストア等で買い物をした際に、その買った品物をビニール袋14に入れたままフック12に掛けて吊るしておくことができ、更には、一対のフック12のうちの一方と他方にビニール袋14の取っ手部分を夫々掛けることにより、該ビニール袋14の口を大きく開けた状態にして吊るしておくこともできて、このビニール袋14に対する品物の出し入れを容易に行うことができ、また、フック12が損傷した場合に該フック12だけを適宜に交換して簡便に対応することもできる。
【0042】
尚、本発明のインストルメントパネル構造は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、後壁は必ずしも助手席側ロアパネルの上部で構成しなくても良いこと、また、トレイ部と助手席側ロアパネルとの締結構造は図示例に限定されないこと、更に、フックの数は任意であること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
1 インストルメントパネル
2 トレイ部
2a 載置面
3 助手席側アッパパネル
4 助手席側ロアパネル
5 後壁
12 フック
P ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルの助手席側に物品を載置可能なトレイ部を備えたインストルメントパネル構造であって、トレイ部の上側に配置される助手席側アッパパネルの張出面を車両前方へ退避させて該張出面よりも前記トレイ部が車両後方へ張り出すように構成し、該トレイ部の後端に物品の載置面より高くせり上がる後壁を設けたことを特徴とするインストルメントパネル構造。
【請求項2】
トレイ部の下側に配置される助手席側ロアパネルの上部を前記トレイ部の載置面より高くせり上がらせることにより後壁を形成し、該後壁の近傍位置にて前記トレイ部と前記助手席側ロアパネルとを締結したことを特徴とする請求項1に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項3】
トレイ部の載置面にフックを取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項4】
トレイ部の載置面に複数のフックが備えられ且つ少なくとも一対のフック間のピッチが250〜350mmであることを特徴とする請求項1に記載のインストルメントパネル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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