説明

インスリン、ニコチンアミド及びアミノ酸を含む製剤

インスリン化合物又は二以上のインスリン化合物の混合物、ニコチン化合物及びアミノ酸を含有するインスリン製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインスリン化合物、ニコチン化合物及びアミノ酸を含む薬学的製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
真性糖尿病はグルコース利用能が部分的又は完全に失われる代謝疾患である。全てのヒトのうち約5%が糖尿病を患い、その疾患は大流行に近づいている。
【0003】
1920年代にインスリンが導入されて以来、糖尿病治療に絶え間ない改良が行われてきた。高血糖値を避けられるように、糖尿病患者はインスリンが各食事と一緒に投与される複数の注射療法をたびたび行っている。糖尿病患者は数十年にわたりインスリンで治療されてきたので、安全で生活の質を改善するインスリン製剤に対して大きな需要がある。商業的に入手可能なインスリン製剤としては、速効型、中間型および持続性作用型の製剤を挙げることができる。
【0004】
真性糖尿病の治療において、レギュラーインスリン(例えばアクトラピッド(登録商標))、イソフェンインスリン(NPHと称される)、インスリン亜鉛懸濁剤(例えばSemilente(登録商標)、Lente(登録商標)、及びUltralente(登録商標))、及び二相性イソフェンインスリン(例えばノボミックス(登録商標))等の、多くの様々なインスリンの薬学的製剤が提案され使用されてきた。ヒトインスリンアナログ及び誘導体もまた開発され、作用の特別なプロファイル、つまり速効作用又は持続作用に対して設計されている。そうした速効性インスリンアナログを含む市販のインスリン製剤のいくつかは、ノボラピッド(登録商標)(B28Aspヒトインスリン製剤)、ヒューマログ(登録商標)(B28LysB29Proヒトインスリン製剤)及びアピドラ(登録商標)(B3LysB29Gluヒトインスリン製剤)を含む。
【0005】
国際出願WO91/09617号及びWO/9610417号(ノボノルデイスクA/S)は、ニコチンアミド又はニコチン酸又はその塩を含むインスリン製剤を開示している。
【0006】
ほとんどの場合インスリンの薬学的製剤は皮下注射により投与される。患者のために重要なのはインスリンの作用プロファイルであり、注射してからの時間の関数としてのグルコース代謝におけるインスリンの作用を意味する。このプロファイルにて、とりわけ、開始時間、作用の最大値及び総持続時間は重要である。ボーラス投与インスリンの場合、異なる作用プロファイルを持つ様々なインスリン製剤が患者により望まれ要求されている。ある患者は、同じ日にインスリン製剤を非常に異なった作用プロファイルで使用し得る。例として望まれる作用プロファイルは、その日の時刻及び患者が食べた食事の量と組成物に依存する。
【0007】
患者にとって同様に重要なのは、インスリン製剤が、1.5〜3.0mlのカートリッジを含む器具について少なくとも1から2週間、カートリッジ全体が空になるまで保管される、例えばペンフィル(登録商標)カートリッジを含む器具等のペン型注射器具の豊富な使用のためインスリン製剤の化学的安定性である。保管の間、インスリンの構造の共有結合性の化学変化が起きる。これは、活性が低く、及び/又は、アミド分解産物や高分子量変換産物(二量体、多量体)等の潜在的に免疫原性となり得る分子の形成を引き起こし得る。更に、長期間保管は結果的に生物的に不活性で潜在的に免疫原性である不溶性フィブリルの形成につながるため、インスリン製剤の物理的安定性もまた重要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は好ましい吸収速度及び好ましい化学的及び物理的安定性を持つインスリン製剤に関する。本発明は、ヒトインスリン及び/又はそのアナログ、ニコチンアミド又はニコチン酸及び/又はその塩、及びアルギニンを含むインスリン製剤に関する。
【0009】
一実施態様では、本発明は、
・インスリン化合物
・ニコチン化合物、及び
・アルギニン、
を含有するインスリン製剤に関する。
【0010】
他の実施態様では、インスリン製剤はグルタミン酸を更に含有し得る。
【0011】
その他の実施態様では、本発明はまた、本発明に係るインスリン製剤を被験者又は哺乳動物に投与することを含む被験者の真性糖尿病の治療方法、又は被験者の血糖値を下げる方法を熟考する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明に係る製剤を37℃で2週間保管した間の分解産物の全インスリン含有量のパーセンテージの進展を示す。文字Aはノボラピッド(登録商標)基準を指し、残りの文字は、実施例1の表1に記載のインスリンアスパルト製剤に対応する。ノボラピッド(登録商標)製剤(製剤A)と比較し、ニコチンアミド(製剤B及びD)の添加は分解産物形成の増加を引き起こす。一方、ニコチンアミド、グルタミン酸及びアルギニンの複合添加(製剤C及びE)では、HMWPの形成が少なく、ほとんど類似の分解パターンを有している。
【図2】図2は本発明に係る製剤を37℃で2週間保管した間の分解産物の全インスリン含有量のパーセンテージの進展を示す。文字Aはノボラピッド(登録商標)基準を指し、残りの文字は、実施例1の表1に記載のインスリンアスパルト製剤に対応する。ニコチンアミド、グルタミン酸及びアルギニンの複合添加である、製剤F、G、H、及びIは、バッファー系が異なり、リン酸又はトリスバッファーであり、インスリン及びZnの濃度は、0.6mM及び0.3mM、又は1.2mM及び0.6mMであり、製剤Aのノボラピッド(登録商標)製剤と似た分解パターンを有している。
【図3】図3は本発明に係る製剤を0分時に1nmol/kg投与量をブタに皮下注射した後の血漿中グルコース濃度(平均+/−SEM、N=8)を示す。文字Aはノボラピッド(登録商標)基準を指し、残りの文字は実施例1の表1に記載されたインスリンアスパルト製剤に対応する。ノボラピッド(登録商標)製剤(製剤A)と比較して、血漿グルコース低下の初期速度はニコチンアミド添加製剤(製剤N)においてより速く、及びニコチンアミド及びアルギニンの組み合わせ(製剤M)においてなお一層速い。
【図4】図4は本発明による製剤を0分時に1nmol/kg投与量をブタに皮下注射した後の血漿中グルコース濃度(平均+/−SEM、N=7)を示す。文字Aはノボラピッド(登録商標)基準を指し、残りの文字は実施例1の表1に記載されたインスリンアスパルト製剤に対応する。ノボラピッド(登録商標)製剤(製剤A)と比較して、血漿グルコース低下の初期速度はニコチンアミド、アルギニン及びグルタミン酸を組み合わせた製剤(製剤L)及びニコチンアミド及びアルギニンを組み合わせた製剤(製剤K)においてより速い。
【図5】図5は本発明による製剤を0分時にて1nmol/kg投与量をブタに皮下注射した後の血漿中グルコース濃度(平均+/−SEM、N=7)を示す。文字Aはノボラピッド(登録商標)基準を指し、残りの文字は実施例1の表1に記載されたインスリンアスパルト製剤に対応する。ノボラピッド(登録商標)製剤(製剤A)と比較して、ニコチンアミドの製剤(製剤J)、ニコチンアミド及びアルギニンを組み合わせた製剤(製剤K)、及びニコチンアミド、アルギニン及びグルタミン酸を組み合わせた製剤(調剤L)のインスリン組成物の初期吸収速度は著しく速い。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のインスリン製剤のインスリン化合物の皮下注射後の吸収は、驚くべきことに基準インスリン製剤のそれよりも速いことが見いだされた。この性質は速効性インスリン、とりわけ毎食前にインスリンを与える複数の注射療法に関連して有用である。速い作用の開始により、インスリンは一般的な速効性インスリン溶液によるよりも食事にちかづけて都合良く摂取できる。更に、インスリンの速い消失は食後の低血糖のリスクを恐らく減少させる。
【0014】
本発明のインスリン製剤は、インスリンアスパルト等のインスリン化合物、ニコチンアミド等のニコチン化合物及びアミノ酸のアルギニンを含む速効性インスリン製剤である。任意で、本発明のインスリン製剤は更にグルタミン酸等のアミノ酸を含みうる。これらのインスリン製剤は、既存の治療よりもより密接に正常な生理機能を模倣する急速な吸収プロファイルを有している。更に、本発明のインスリン製剤は市販の薬学的製剤に適した化学的及び物理的安定性を有している。
【0015】
本発明のインスリン製剤は既存のインスリン治療法と比較して更に速い作用の開始を提供する。そうした超速効性インスリン製剤は、第一段階のインスリン放出を回復する利点、注射の利便性及び肝臓でのグルコース生成の停止を有する。本発明のインスリン製剤は、ブタにおけるいくつかのPK/PD実験で示唆されたように、ノボラピッド(登録商標)等の伝統的製剤と比較した時、初期吸収速度が1.5から5倍の範囲で増加し、皮下組織から血漿へ好ましい吸収速度を有する。この速い吸収速度は血糖のコントロールと利便性を改善し得て、食前から食後の投薬への変更を可能とし得る。本発明のインスリン製剤は一部は、ニコチンアミドの添加は吸収速度の増加を可能にするが、HMWPの量の著しい増加により化学的安定性に負の効果も有するという、驚くべき発見に基づく。本発明のインスリン製剤は、アルギニンの添加により改善された化学的安定性を有し、そのことは、例えば保管後に二量体又は多量体又はデスアミドインスリンの形成の減少に反映される。本発明のインスリン製剤は更に改善された物理的安定性をも有し得、ポンプでの使用に有用でありうる。
【0016】
本発明は、約0.1mMから約10.0mMの濃度で存在する本発明によるインスリン化合物を含むインスリン製剤を提供し、上記製剤は3から8.5のpHを有する。製剤はまたニコチン化合物及びアルギニンを含む。製剤は更に、プロテアーゼ阻害剤、金属イオン、バッファー系、保存料、等張化剤、キレート剤、安定剤及び界面活性剤を含み得る。
【0017】
一実施態様では、インスリン製剤はヒトインスリン、そのアナログ又は組合わせ、ニコチンアミド及び/又はニコチン酸及び/又はその塩、及びアルギニン及び/又はその塩を含む。
【0018】
一実施態様にて、本発明のインスリン製剤はB28Aspヒトインスリン、ニコチンアミド及びアルギニンの水溶液を含む。
【0019】
本発明の溶液中のB28Aspヒトインスリンの含有量は注射製剤中にて、15から500国際単位(IU)/ml、好ましくは50から333(IU)/mlの範囲であり得る。しかしながら、他の非経口投与目的においては、インスリン化合物の含有量はより高い場合がある。
【0020】
ここでまた、インスリン化合物、ニコチン化合物及びグルタミン酸を含むインスリン製剤を述べる。
【0021】
本文脈中において単位「IU」は6nmolに相当する。
【0022】
「インスリンアスパルト」なる用語はヒトインスリンアナログB28Aspヒトインスリンを指す。
【0023】
「開始」なる用語は注射後にPKカーブが増加に転じるまでの時間を指す。
【0024】
「吸収速度」なる用語はPKカーブの勾配を指す。
【0025】
本発明による「インスリン化合物」はここではヒトインスリン、インスリンアナログ及び/又はその何れかの組合わせとして理解されるべきである。
【0026】
ここで使用される「ヒトインスリン」なる用語は、構造及び特性を良く知られたヒトホルモンを意味する。ヒトインスリンはシステイン残基間のジスルフィド結合により連結した2本のポリペプチド鎖、すなわちA鎖及びB鎖を持つ。A鎖は21アミノ酸ペプチド及びB鎖は30アミノ酸ペプチドであり、2本鎖は3つのジスルフィド結合で連結しており:1つはA鎖の位置6と11のシステイン間、2つ目はA鎖の位置7のシステイン及びB鎖の位置7のシステイン間、3つ目はA鎖の位置20のシステイン及びB鎖の位置19のシステイン間である。
【0027】
ホルモンはその構造に86アミノ酸を含むプロインスリンが続く24アミノ酸からなるプレペプチドを含む単鎖前駆体プロインスリン(プレプロインスリン):プレペプチド−B−Arg Arg−C−Lys Arg−Aとして合成され、ここでCは31アミノ酸からなる連結ペプチドである。Arg−Arg及びLys−ArgはA鎖とB鎖からの連結ペプチドの分割の切断部位である。
【0028】
ここで使用される「インスリンアナログ」により、変異によって天然インスリンの一次構造、例えばヒトインスリンの一次構造に由来したポリペプチドを意味する。一以上の変異は、天然インスリンに起きる少なくとも一アミノ酸残基の欠失及び/又は置換により、及び/又は少なくとも一アミノ酸の付加により作られる。付加及び/又は置換されたアミノ酸残基はコード化可能なアミノ酸残基又は他の天然アミノ酸残基であり得る。
【0029】
一実施態様では、インスリンアナログは親インスリンに対して8未満の修飾(置換、欠失、付加及びその何れかの組合わせ)、あるいは親インスリンに対して7未満の修飾、あるいは親インスリンに対して6未満の修飾、あるいは親インスリンに対して5未満の修飾、あるいは親インスリンに対して4未満の修飾、あるいは親インスリンに対して3未満の修飾、あるいは親インスリンに対して2未満の修飾を含む。
【0030】
インスリン分子の変異は、鎖(A又はB)、位置、及び天然アミノ酸を置換するアミノ酸の3文字コードを記載して表示される。「desB30」又は「B(1−29)」により、B30アミノ酸残基を欠いた天然インスリンB鎖又はそのアナログを意味し、B28Aspインスリンにより、B鎖の位置28のアミノ酸残基がAspと置換されたヒトインスリンを意味する。
【0031】
インスリンアナログの例として、B鎖の位置28のProがAsp、Lys、Leu、Val、又はAlaに変異し、及び/又は位置B29のLysがPro、Glu又はAspに変異した例がある。更に、位置B3のAsnはThr、Lys、Gln、Glu又はAspに変異し得る。位置A21のアミノ酸残基はGlyに変異し得る。位置B1のアミノ酸はGluに変異し得る。位置B16のアミノ酸はGlu又はHisに変異し得る。インスリンアナログの更なる例は、例えばヒトインスリンB30アミノ酸が欠失したアナログ(des(B30)ヒトインスリン)、ヒトインスリンのB1アミノ酸が欠失したインスリンアナログ(des(B1)ヒトインスリン)、des(B28−B30)ヒトインスリン及びdes(B27)ヒトインスリンなどの欠失アナログである。A鎖及び/又はB鎖がN末端伸長を持つインスリンアナログ、及びA鎖及び/又はB鎖が、B鎖のC末端に付加した2つのアルギニン残基等のC末端伸長を持つインスリンアナログもまたインスリンアナログの例である。更なる例は言及された変異の組合わせを含むインスリンアナログである。位置A14のアミノ酸がAsn、Gln、Glu、Arg、Asp、Gly又はHisであり、位置B25のアミノ酸がHisであり、場合によっては更に一以上の追加の変異を含むインスリンアナログはインスリンアナログの更なる例である。位置A21のアミノ酸がGlyであり及びそのインスリンアナログはC末端に2つのアルギニン残基を更に伸長したヒトインスリンのインスリンアナログもまたインスリンアナログの例である。
【0032】
インスリンアナログの更なる例は、限定されないが、DesB30ヒトインスリン;AspB28ヒトインスリン;AspB28,desB30ヒトインスリン;LysB3,GluB29ヒトインスリン;LysB28,ProB29ヒトインスリン;GlyA21,ArgB31,ArgB32ヒトインスリン;GluA14,HisB25ヒトインスリン;HisA14,HisB25ヒトインスリン;GluA14,HisB25,desB30ヒトインスリン;HisA14,HisB25,desB30ヒトインスリン;GluA14,HisB25,desB27,desB28,desB29,desB30ヒトインスリン;GluA14,HisB25,GluB27,desB30ヒトインスリン;GluA14,HisB16,HisB25,desB30ヒトインスリン;HisA14,HisB16,HisB25,desB30ヒトインスリン;HisA8,GluA14,HisB25,GluB27,desB30ヒトインスリン;HisA8,GluA14,GluB1,GluB16,HisB25,GluB27,desB30ヒトインスリン;及びHisA8,GluA14,GluB16,HisB25,desB30ヒトインスリンを含む。
【0033】
「ニコチン化合物」なる用語はニコチンアミド、ニコチン酸、ナイアシン、ナイアシンアミド及びビタミンB3及び/又はその塩及び/又はその何れかの組合わせを含む。
【0034】
本発明によれば、ニコチン化合物の濃度及び/又はその塩は約1mMから約300mM又は約5mMから約200mMの範囲である。
【0035】
「アルギニン」又は「Arg」なる用語はアミノ酸のアルギニン及び/又はその塩を含む。
【0036】
一実施態様では、インスリン製剤は1から100mMのアルギニンを含む。
【0037】
一実施態様では、インスリン製剤は1から20mMのアルギニンを含む。
【0038】
一実施態様では、インスリン製剤は20から90mMのアルギニンを含む。
【0039】
一実施態様では、インスリン製剤は30から85mMのアルギニンを含む。
【0040】
「グルタミン酸」又は「Glu」なる用語はアミノ酸のグルタミン酸及び/又はその塩を含む。
【0041】
一実施態様では、インスリン製剤は1から100mMのグルタミン酸を含む。
【0042】
一実施態様では、インスリン製剤は20から90mMのグルタミン酸を含む。
【0043】
一実施態様では、インスリン製剤は30から85mMのグルタミン酸を含む。
【0044】
ここで使用される「薬学的製剤」又は「インスリン製剤」なる用語は、インスリン化合物、すなわちヒトインスリン、そのアナログ及び又はその組合わせ及びニコチン化合物及びアミノ酸を、場合によっては、保存料、キレート剤、張力修正剤、増量剤、安定剤、酸化防止剤、ポリマーおよび界面活性剤等の他の賦形剤、金属イオン、油性賦形剤及びタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ゼラチン又はタンパク質)と共に含む製品を意味し、上記インスリン製剤はヒトに上記インスリン製剤を投与することにより、疾病又は疾患を治療、予防又は重症度を低減するために有効である。従って、インスリン製剤は当該技術分野では薬学的製剤又は薬学的組成物としても知られている。
【0045】
バッファーは、限定されないが、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、ビシン、トリシン、リンゴ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸又はその組合わせからなる群から選択されうる。これらの特定のバッファーの各々は本発明のもう一つの実施態様を構成する。
【0046】
本発明のインスリン製剤は更に、インスリン製剤に一般的な他の成分、例えばクエン酸塩等の亜鉛錯化剤及びリン酸バッファーを含み得る。
【0047】
グリセロール及び/又はマンニトール及び/又は塩化ナトリウムは0から250mM、0から200mM又は0から100mMの濃度に対応する量にて存在しうる。
【0048】
安定剤、界面活性剤及び保存料もまた本発明のインスリン製剤に存在しうる。
【0049】
本発明のインスリン製剤は更に薬学的に許容される保存料を含み得る。保存料は保存効果を得るに十分な量存在し得る。インスリン製剤中の保存料の量は、例えば当該分野の文献及び/又は、例えば商品中の保存料の既知の量から決定され得る。これらの特定の保存料のおのおのは本発明のもう一つの実施態様を構成する。薬学的製剤中の保存料の使用は、例えばレミントンによる「The Science and Practice of Pharmacy」第19版、1995年に記載されている。
【0050】
本発明のインスリン製剤に存在する保存料はこれまでの伝統的なインスリン製剤にあるように、例えばフェノール、m-クレゾール及びメチルパラベンであり得る。
【0051】
本発明のインスリン製剤は更にキレート剤を含み得る。薬学的製剤中のキレート剤の使用は当業者には良く知られている。便宜上、レミントンによる「The Science and Practice of Pharmacy」第19版、1995年が参照される。
【0052】
本発明のインスリン製剤は更に安定剤を含み得る。ここで使用される「安定剤」なる用語はペプチドを安定化し、すなわち、そうした製剤の有効期間及び/又は使用時間を増大させるために、薬学的製剤を含むポリペプチドに添加される化学薬品を言う。便宜上、レミントンによる「The Science and Practice of Pharmacy」第19版、1995年が参照される。
【0053】
本発明のインスリン製剤は更に界面活性剤を含み得る。ここで使用される「界面活性剤」なる用語は、水溶性(親水性)部分、頭部、及び脂溶性(親油性)部分を含む分子又はイオンを言う。界面活性剤は界面に好んで蓄積し、親水性部分は水(親水相)に向けて、及び親油性部分は油−又は疎水相(例えばガラス、空気、油等)に向けて配向する。界面活性剤がミセルを形成し始める濃度は臨界ミセル濃度又はCMCとして知られている。更に、界面活性剤は液体の表面張力を下げる。界面活性剤は両親媒性化合物として知られている。「デタージェント(界面活性剤)」なる用語は一般的に界面活性剤に対して使用される同義語である。薬学的製剤中の界面活性剤の使用は当業者には良く知られている。便宜上、レミントンによる「The Science and Practice of Pharmacy」第19版、1995年が参照される。
【0054】
更なる態様では、本発明は本発明のインスリン化合物の水溶液及びバッファーを含むインスリン製剤に係り、その中で上記インスリンン化合物は0.1mM以上の濃度で存在し、及びその中で上記製剤は室温(〜25℃)にて約3.0から約8.5のpHを有する。
【0055】
本発明はまた本発明のインスリン製剤の生産方法に関する。
【0056】
一実施態様では、本発明のインスリン製剤の製造方法は、
a)インスリン化合物又はインスリン化合物の混合物を水又はバッファーに溶解した溶液を調製し;
b)二価の金属イオンを水又はバッファーに溶解した溶液を調製し;
c)保存料を水又はバッファーに溶解した溶液を調製し;
d)等張化剤を水又はバッファーに溶解した溶液を調製し;
e)界面活性剤及び/又は安定剤を水又はバッファーに溶解した溶液を調製し;
f)溶液a)と溶液b)、c)、d)、及びe)の一以上を混合し;
最後にf)中の混合物のpHを望まれるpHに調整した後濾過滅菌を行う。
【0057】
本発明のインスリン製剤は非経口投与により糖尿病の治療に使用できる。患者に投与されるべき本発明のインスリン製剤の用量は医師により設定されることが推奨される。
【0058】
非経口投与は、注射器や任意でペン型注射器を用いて、皮下、筋肉内、腹腔内又は静脈内注射によって行われ得る。あるいは、非経口投与は輸液ポンプを用いて行うことができる。更なる選択肢として、本発明のインスリン化合物を含むインスリン製剤は、例えば無針注射により又はパッチから、任意でイオン注入パッチからの経皮投与、又は例えば口腔などの経粘膜投与にもまた適用できる。
【0059】
本発明によるインスリン製剤は複数の部位、例えば、例えば皮膚及び粘膜部位等の局所部位、例えば動脈内、静脈内、心臓内投与等の吸収を迂回する部位、及び、例えば皮膚内、皮膚下、筋肉内又は腹部内への投与等の吸収を含む部位において、そうした治療を必要としている患者に投与され得る。
【0060】
本発明の一実施態様では、インスリン製剤は水性製剤であり、すなわち水を含む製剤である。そうした製剤は典型的には溶液又は懸濁液である。本発明の更なる態様にて、インスリン製剤は水溶液である。
【0061】
「水性製剤」なる用語は、少なくとも50%w/wの水を含む製剤として定義される。同様に「水溶液」なる用語は、少なくとも50%w/wの水を含む溶液として定義され、及び「水性懸濁液」なる用語は、少なくとも50%w/wの水を含む懸濁剤として定義される。
【0062】
水性懸濁液は水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合剤中の活性化合物を含みうる。
【0063】
一実施態様では、本発明のインスリン製剤は注射によるインスリン療法に使用されるペン型機器での適用に良く適している。
【0064】
一実施態様では、本発明のインスリン製剤はインスリン投与のためのポンプにおいて使用できる。
【0065】
ここで用いられるインスリン製剤の「物理的安定性」という用語は、熱機械的ストレスへのタンパク質の暴露、及び/又は、例えば疎水性表面及び界面のような、不安定化している界面及び表面、との相互作用の結果としての、生物学的に不活性な及び/又は不溶性のタンパク質の凝集体を形成するタンパク質の傾向について言及するものである。水性のタンパク質製剤の物理的安定性は、適切な容器(例えばカートリッジもしくはバイアル)中に満たした製剤を機械的/物理的ストレス(例えば攪拌)に様々な時間の間、異なった温度で暴露した後に、視覚的な検査及び/又は濁度の測定をすることにより評価される。製剤の視覚的な検査は、暗い背景中において鋭く集光された光下で実施される。製剤の濁度は、濁りの度合いを、例えば0から3の尺度(濁りを示さない製剤が視覚スコア0に相当し、昼光で可視できる濁りを示す製剤は視覚スコア3に相当する)でランク付けする視覚スコアにより特徴付けされる。製剤は、昼光下で可視できる濁りを示す時に、タンパク質凝集に関して物理的に不安定であると分類される。あるいは、製剤の濁度は、当業者によく知られている簡単な濁度測定により評価することができる。タンパク質水性製剤の物理的安定性は、タンパク質の立体構造状態の分光学的な薬剤もしくはプローブを使用することによっても、評価することができる。プローブは好ましくはタンパク質の非天然配座異性体に優先的に結合する小分子である。タンパク質構造の小分子性分光学的プローブの一例はチオフラビンTである。チオフラビンTはアミロイドフィブリルの検出に広く用いられている蛍光染料である。フィブリル及びおそらくは他のタンパク質の立体構造の存在下においても、チオフラビンTは、フォブリルタンパク質形態に結合する時、約450nmで新たな励起極大と、約482nmで増強された発光とを生じる。未結合のチオフラビンTは本質的にはその波長で非蛍光である。
【0066】
ここで用いられるタンパク質製剤の「化学的安定性」という用語は、天然タンパク質構造と比較して、潜在的に低い生物学的効力及び/又は潜在的に高い免疫原性を有する化学的分解産物の形成に至る共有結合性のタンパク質構造の変化を意味する。天然タンパク質の種類と性質及びタンパク質がさらされる環境に応じて、様々な化学的分解産物が形成されうる。タンパク質製剤の保管及び使用中に、化学的分解産物の量の増加がしばしば観察される。大部分のタンパク質は、グルタミニル又はアスパラギニル残基の側鎖アミド基が加水分解されて遊離のカルボン酸又はアスパラギニル残基を形成し、IsoAsp誘導体を形成するプロセスである脱アミド化を受ける傾向がある。他の分解経路は、二以上のタンパク質分子が、アミド基転移及び/又はジスルフィド相互作用を通して互いに共有結合し、共有結合した二量体、オリゴマー及び多量体分解産物の形成に至る高分子量産物の形成を含む(Stability of Protein Pharmaceuticals, Ahern.T.J. & Manning M.C., Plenum Press,New York,1992)。(例えばメチオニン残基の)酸化は、化学的分解の他の変形例として述べることができる。タンパク質製剤の化学的安定性は、異なった環境条件への暴露(分解産物の形成はしばしば例えば温度上昇により加速され得る)後に、様々な時点において化学的分解産物の量を測定することにより評価することができる。それぞれ個別の分解産物の量は、しばしば、様々なクロマトグラフィー法(例えば、SEC−HPLC及び/又はRP−HPLC)を用いて、分子サイズ及び/又は電荷に応じて分解産物を分離することにより決定される。HMWP産物は潜在的に免疫原性であり生物学的に活性では無いため、低レベルのHMWPが好都合である。
【0067】
「安定化製剤」なる用語は、増加した物理的安定性、増加した化学的安定性、又は増加した物理的及び化学的安定性を有する製剤を言う。一般に、製剤は有効期限に達するまで(推奨された使用及び保管条件に応じて)使用及び保管中は安定でなければならない。
【0068】
「糖尿病」又は「真性糖尿病」なる用語は、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病(妊娠中)及び高血糖症を生じさせる他の状態を含む。該用語は、膵臓が不十分な量のインスリンを生産するか、又は体の細胞が適切にはインスリンに応答せず、細胞がグルコースを吸収するのを妨げる代謝疾患について使用される。その結果、グルコースが血液中に蓄積する。
【0069】
インスリン依存性糖尿病(IDDM)及び若年発症型糖尿病とも呼ばれる1型糖尿病は、B細胞破壊によって引き起こされ、通常は絶対的インスリン欠乏に至る。
【0070】
インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)及び成人発症型糖尿病としても知られている2型糖尿病は、主たるインスリン耐性、よって相対的なインスリン欠乏及び/又はインスリン耐性を伴う主たるインスリン分泌欠陥に関連している。
【0071】
ここで使用される「薬学的に許容可能な」なる用語は、正常な薬学的適用に適した、すなわち患者に何らの重篤な有害事象を引き起こさないことを意味する。
【0072】
ここで使用される「疾病の治療」なる用語は、疾病、病状又は疾患を発症した患者の管理及び世話(ケア)を意味し、疾病の治療、予防又は緩和を含む。治療の目的は、疾病、症状又は疾患と闘うことである。治療には、疾病、症状又は疾患を排除し又は制御するため、並びに疾病、症状又は疾患に関連した徴候又は合併症を緩和するための活性な化合物の投与、及び疾病、症状又は疾患の予防を含む。
【0073】
その他の実施態様にて、本発明によるインスリンアナログは、2型糖尿病の疾患の進行を遅延又は予防するための医薬として使用される。
【0074】
本発明の一実施態様では、ストレス誘導性高血糖、2型糖尿病、耐糖能異常、1型糖尿病、及び、治療に同化作用が必要なやけど、手術創及び他の疾患又は創傷、心筋梗塞、脳卒中、冠状動脈性心臓病及び他の心血管疾患の予防又は治療のための医薬として使用される本発明によるインスリン製剤が提供される。
【0075】
本発明の更なる実施態様では、ストレス誘導性高血糖、2型糖尿病、耐糖能異常、1型糖尿病を含む高血糖、及び治療に同化作用が必要なやけど、手術創、及び他の疾患又は創傷、心筋梗塞、冠状動脈性心臓病やその他の心血管疾患、脳卒中の予防又は治療のための方法であって、本発明によるインスリン製剤をそのような治療を必要とする患者への投与を含む方法が与えられる。
【0076】
本発明によるインスリン製剤による治療は、例えば抗糖尿病薬、抗肥満薬、食欲の調節薬、降圧薬、糖尿病に由来又は関連して起こる合併症の治療及び/又は予防のための薬剤及び肥満に由来又は関連して起こる合併症及び疾患の治療及び/又は予防のための薬剤から選択される、第二の又はより薬理学的に活性な物質ともまた組合わされうる。
【0077】
本発明によるインスリン製剤による治療は、胃バンディング術又は胃バイパス手術等の血糖値及び/又は脂質ホメオスタシスに影響を与える手術である肥満手術ともまた組合わされうる。
【0078】
ポリペプチド、例えばインスリンの生成は当該技術分野で良く知られている。本発明によるインスリンアナログは例えば古典的なペプチド合成、例えばt−Boc又はFmoc化学又はその他の十分に確立された技術を使用した固相ペプチド合成により生成されうる。Greene及びWuts,「Protective Groups in Organic Synthesis」,John Wiley & Sons,1999を参照のこと。インスリンアナログは、アナログをエンコードしインスリンアナログの発現を可能にした条件下で適切な栄養培地にてインスリンアナログを発現する能力のあるDNA配列を含む宿主細胞の培養を含む方法によっても生成され得る。非天然アミノ酸残基を含むインスリンアナログに対して、組換え細胞は例えばtRNA変異体の使用により、非天然アミノ酸がアナログに導入されるように改変されるべきである。従って、本発明によるインスリンアナログは簡単に既知のインスリンアナログの調製に類似して調製される。
【0079】
ヒトインスリン及びヒトインスリンアナログの生産のために幾つかの方法が使用されうる。例えば、微生物中でのインスリン生産に使用される3つの主要な方法が国際公開第2008034881号に開示されている。これらのうち2つは、細胞質中での大きな融合タンパク質の発現(Frank等(1981),Peptides:Proceedings of the 7th American Peptide Chemistry Symposium(Rich&Gross編集),Pierce Chemical Co.,Rockford,III.頁729−739)、又は細胞膜周辺腔への分泌を可能にするシグナルペプチドの使用(Chan等(1981)PNAS 78:5401−5404)の何れかとともに大腸菌を使う。第三の方法はインスリン前駆体を培地へ分泌する出芽酵母を使用する(Thim等、(1986)PNAS 83:6766−6770)。従来技術は大腸菌又は出芽酵母で発現される多数のインスリン前駆体を開示しており、米国特許第5,962,267号、国際公開95/16708、欧州特許出願公開第0055945号、欧州特許出願公開第0163529号、欧州特許出願公開第0347845号及び欧州特許出願公開第0741188号を参照のこと。
【0080】
インスリンアナログは、例えば米国特許第6500645号に開示され良く知られた技術により、当該のインスリンアナログをエンコードしているDNA配列を適切な宿主細胞中で発現することにより産生される。インスリンアナログは直接的に又はB鎖のN末端伸長又はB鎖のC末端伸長を有する前駆体分子として発現される。N末端伸長は直接発現された産物の収率を増やす機能を持ち得、15アミノ酸長以下であり得る。N末端伸長は培養液から単離後にインビトロで切断されるべきであり、従ってB1の隣に切断部位を持つであろう。本発明に適したN末端伸長のタイプは、米国特許第5,395,922号又は欧州特許出願公開第765395号に開示されている。C末端伸長は宿主細胞のエキソプロテアーゼによる細胞内タンパク質プロセシングに対して、成熟インスリン又はインスリンアナログ分子を保護する機能を有し得る。C末端伸長は分泌された活性カルボキシペプチダーゼにより培養液中の細胞外にて、又は培養液から単離後にインビトロで切断されるべきである。成熟インスリン及びカルボキシペプチダーゼにより除かれるB鎖のC末端伸長を持つインスリンアナログを生産する方法は国際公開第08037735号に開示されている。本方法による標的インスリン産物は、2本鎖ヒトインスリン又はB鎖の短いC末端伸長を有し得る又は有し得ない2本鎖ヒトインスリンアナログであり得る。もし標的インスリン産物がB鎖のC末端伸長を持たなければ、更なる精製工程の前に上記C末端伸長は後にB鎖から切断される能力があるはずである。
【0081】
本発明は以下の限定されない実施態様のリストをもまた熟考し、それらは本明細書の他の箇所で更に記述される。
【0082】
1.・インスリン化合物、
・ニコチン化合物、及び
・アルギニン
を含有するインスリン製剤。
2.インスリン化合物がインスリン又はインスリンアナログである、実施態様1によるインスリン製剤。
3.インスリン化合物がB28Aspヒトインスリンである、実施態様1から2の何れかに記載のインスリン製剤。
4.インスリン化合物がB28LysB29Proヒトインスリンである、実施態様1から3の何れかに記載のインスリン製剤。
5.インスリン化合物がB3LysB29Gluヒトインスリンである、実施態様1から4の何れかに記載のインスリン製剤。
6.インスリン化合物が、0.1−10.0mM;0.1−3.0mM;0.1−2.5mM;0.1−2.0mM;0.1−1.5mM;0.2−2.5mM;0.2−2.0mM;0.2−1.5mM;0.3−3.0mM;0.3−2.5mM;0.3−2.0mM;0.3−1.5mM;0.5−1.3mM及び0.6−1.2mMから選択された範囲において存在する、実施態様1から5の何れかに記載のインスリン製剤。
7.インスリン化合物が約0.1mMから約10.0mMの量で存在する、実施態様1から6の何れかに記載のインスリン製剤。
8.インスリン化合物が約0.1mMから約3.0mMの量で存在する、実施態様1から7の何れかに記載のインスリン製剤。
9.インスリン化合物が約0.1mMから約2.5mMの量で存在する、実施態様1から8の何れかに記載のインスリン製剤。
10.インスリン化合物が約0.1mMから約2.0mMの量で存在する、実施態様1から9の何れかに記載のインスリン製剤。
11.インスリン化合物が約0.1mMから約1.5mMの量で存在する、実施態様1から10の何れかに記載のインスリン製剤。
12.インスリン化合物が約0.2mMから約2.5mMの量で存在する、実施態様1から11の何れかに記載のインスリン製剤。
13.インスリン化合物が約0.2mMから約2.0mMの量で存在する、実施態様1から12の何れかに記載のインスリン製剤。
14.インスリン化合物が約0.2mMから約1.5mMの量で存在する、実施態様1から13の何れかに記載のインスリン製剤。
15.インスリン化合物が約0.3mMから約3.0mMの量で存在する、実施態様1から14の何れかに記載のインスリン製剤。
16.インスリン化合物が約0.3mMから約2.5mMの量で存在する、実施態様1から15の何れかに記載のインスリン製剤。
17.インスリン化合物が約0.3mMから約2.0mMの量で存在する、実施態様1から16の何れかに記載のインスリン製剤。
18.インスリン化合物が約0.3mMから約1.5mMの量で存在する、実施態様1から17の何れかに記載のインスリン製剤。
19.インスリン化合物が約0.5mMから約1.3mMの量で存在する、実施態様1から18の何れかに記載のインスリン製剤。
20.インスリン化合物が約0.3mMから約1.2mMの量で存在する、実施態様1から19の何れかに記載のインスリン製剤。
21.インスリン化合物が約0.6mMから約1.2mMの量で存在する、実施態様1から20の何れかに記載のインスリン製剤。
22.インスリン化合物が約0.6又は約1.2mMの量で存在する、実施態様1から21の何れかに記載のインスリン製剤。
23.インスリン化合物が約0.3mMの量で存在する、実施態様1から22の何れかに記載のインスリン製剤。
24.インスリン化合物が約0.6mMの量で存在する、実施態様1から23の何れかに記載のインスリン製剤。
25.インスリン化合物が約1.2mMの量で存在する、実施態様1から24の何れかに記載のインスリン製剤。
26.ニコチン化合物がニコチンアミド、ニコチン酸、ナイアシン、ナイアシンアミド及びビタミンB3及び/又はその塩及び/又はその何れかの組合わせからなる群から選択される、実施態様1から25の何れかに記載のインスリン製剤。
27.ニコチン化合物がニコチンアミド、ニコチン酸、及び/又はその塩及び/又はその何れかの組合わせから選択される、実施態様1から26の何れかに記載のインスリン製剤。
28.ニコチン化合物が1−300mM;5−200mM;40−120mM,70−140mM又は80−130mMから選択される範囲に存在する、実施態様1から27の何れかに記載のインスリン製剤。
29.ニコチン化合物を約1mMから約300mM含む、実施態様1から28の何れかに記載のインスリン製剤。
30.ニコチン化合物を約8mMから約260mM含む、実施態様1から29の何れかに記載のインスリン製剤。
31.ニコチン化合物を約5mMから約200mM含む、実施態様1から30の何れかに記載のインスリン製剤。
32.ニコチン化合物を約1mMから約150mM含む、実施態様1から31の何れかに記載のインスリン製剤。
33.ニコチン化合物を約5mMから約20mM含む、実施態様1から32の何れかに記載のインスリン製剤。
34.ニコチン化合物を約20mMから約120mM含む、実施態様1から33の何れかに記載のインスリン製剤。
35.ニコチン化合物を約40mMから約120mM含む、実施態様1から34の何れかに記載のインスリン製剤。
36.ニコチン化合物を約20mMから約40mM含む、実施態様1から35の何れかに記載のインスリン製剤。
37.ニコチン化合物を約60mMから約80mM含む、実施態様1から36の何れかに記載のインスリン製剤。
38.ニコチン化合物を約70mMから約140mM含む、実施態様1から37の何れかに記載のインスリン製剤。
39.ニコチン化合物を約80mMから約130mM含む、実施態様1から38の何れかに記載のインスリン製剤。
40.ニコチン化合物を約8mM、30mM、100mM又は130mM含む、実施態様1から39の何れかに記載のインスリン製剤。
41.ニコチン化合物を約8mM含む、実施態様1から40の何れかに記載のインスリン製剤。
42.ニコチン化合物を約30mM、100mM、130mM含む、実施態様1から41の何れかに記載のインスリン製剤。
43.ニコチン化合物を約30mM含む、実施態様1から42の何れかに記載のインスリン製剤。
44.ニコチン化合物を約100mM含む、実施態様1から43の何れかに記載のインスリン製剤。
45.ニコチン化合物を約130mM含む、実施態様1から44の何れかに記載のインスリン製剤。
46.ニコチン化合物を約150mM含む、実施態様1から45の何れかに記載のインスリン製剤。
47.アルギニン化合物を1−100mM,5−120mM,8−85mM,20−90mM,30−90mM,30−85mM,30−60mM又は10−40mMの範囲にて含む、実施態様1から46の何れかに記載のインスリン製剤
48.アルギニン化合物を1−120mM,8−85mM又は1−40mMの範囲にて含む、実施態様1から47の何れかに記載のインスリン製剤。
49.アルギニンを約1mMから約120mM含む、実施態様1から48の何れかに記載のインスリン製剤。
50.アルギニンを約1mMから約100mM含む、実施態様1から49の何れかに記載のインスリン製剤。
51.アルギニンを約5mMから約120mM含む、実施態様1から50の何れかに記載のインスリン製剤。
52.アルギニンを約20mMから約90mM含む、実施態様1から51の何れかに記載のインスリン製剤。
53.アルギニンを約30mMから約85mM含む、実施態様1から52の何れかに記載のインスリン製剤。
54.アルギニンを約8mMから約85mM含む、実施態様1から53の何れかに記載のインスリン製剤。
55.アルギニンを約30mMから約60mM含む、実施態様1から54の何れかに記載のインスリン製剤。
56.アルギニンを約10mMから約40mM含む、実施態様1から55の何れかに記載のインスリン製剤。
57.アルギニンを約1mMから約40mM含む、実施態様1から56の何れかに記載のインスリン製剤。
58.アルギニンが、1mM,2mM,3mM,4mM,5mM,6mM,7mM,8mM,9mM,10mM,15mM,20mM,25mM,30mM,35mM又は40mM,45mM,50mM,55mM又は60mMから選択される範囲で存在する、実施態様1から57の何れかに記載のインスリン製剤。
59.アルギニンを約1mM含む、実施態様1から58の何れかに記載のインスリン製剤。
60.アルギニンを約2mM含む、実施態様1から59の何れかに記載のインスリン製剤。
61.アルギニンを約3mM含む、実施態様1から60の何れかに記載のインスリン製剤。
62.アルギニンを約4mM含む、実施態様1から61の何れかに記載のインスリン製剤。
63.アルギニンを約5mM含む、実施態様1から62の何れかに記載のインスリン製剤。
64.アルギニンを約6mM含む、実施態様1から63の何れかに記載のインスリン製剤。
65.アルギニンを約7mM含む、実施態様1から64の何れかに記載のインスリン製剤。
66.アルギニンを約8mM含む、実施態様1から65の何れかに記載のインスリン製剤。
67.アルギニンを約9mM含む、実施態様1から66の何れかに記載のインスリン製剤。
68.アルギニンを約10mM含む、実施態様1から67の何れかに記載のインスリン製剤。
69.アルギニンを約15mM含む、実施態様1から68の何れかに記載のインスリン製剤。
70.アルギニンを約20mM含む、実施態様1から69の何れかに記載のインスリン製剤。
71.アルギニンを約25mM含む、実施態様1から70の何れかに記載のインスリン製剤。
72.アルギニンを約30mM含む、実施態様1から71の何れかに記載のインスリン製剤。
73.アルギニンを約35mM含む、実施態様1から72の何れかに記載のインスリン製剤。
74.アルギニンを約40mM含む、実施態様1から73の何れかに記載のインスリン製剤。
75.アルギニンを約45mM含む、実施態様1から74の何れかに記載のインスリン製剤。
76.アルギニンを約50mM含む、実施態様1から75の何れかに記載のインスリン製剤。
77.アルギニンを約55mM含む、実施態様1から76の何れかに記載のインスリン製剤。
78.アルギニンを約60mM含む、実施態様1から77の何れかに記載のインスリン製剤。
79.グルタミン酸を更に含む、実施態様1から78の何れかに記載のインスリン製剤。
80.グルタミン酸を1−100mM,20−90mM,30−90mM,30−85mM又は30−50mMから選択される範囲にて存在する、実施態様79に記載のインスリン製剤。
81.グルタミン酸を約1mMから約100mM含む、実施態様79に記載のインスリン製剤。
82.グルタミン酸を約20mMから約90mM含む、実施態様79に記載のインスリン製剤。
83.グルタミン酸を約30mMから約85mM含む、実施態様79に記載のインスリン製剤。
84.グルタミン酸を約30mMから約50mM含む、実施態様79に記載のインスリン製剤。
85.グルタミン酸を約30mM又は50mM含む、実施態様79に記載のインスリン製剤。
86.グルタミン酸を約30mM含む、実施態様79に記載のインスリン製剤。
87.グルタミン酸を約50mM含む、実施態様79に記載のインスリン製剤。
88.更に金属イオン、保存料、等張化剤及び安定剤、界面活性剤及びバッファーを含む、実施態様1から87の何れかに記載のインスリン製剤。
89.バッファーがトリスである、実施態様88に記載のインスリン製剤。
90.約2mMから約50mMのトリスを含む、実施態様89に記載のインスリン製剤。
91.約10mMから約40mMのトリスを含む、実施態様89に記載のインスリン製剤。
92.約20mMから約30mMのトリスを含む、実施態様89に記載のインスリン製剤。
93.約10mM、20mM、30mM又は40mMのトリスを含む、実施態様89に記載のインスリン製剤。
94.約10mMのトリスを含む、実施態様89に記載のインスリン製剤。
95.約20mMのトリスを含む、実施態様89に記載のインスリン製剤。
96.約30mMのトリスを含む、実施態様89に記載のインスリン製剤。
97.約40mMのトリスを含む、実施態様89に記載のインスリン製剤。
98.金属イオンが亜鉛である、実施態様89に記載のインスリン製剤。
99.インスリン化合物のヘキサマーあたり約6つ未満の亜鉛イオンが存在する、実施態様98に記載のインスリン製剤。
100.インスリン化合物のヘキサマーあたり約4つ未満の亜鉛イオンが存在する、実施態様98に記載のインスリン製剤。
101.インスリン化合物のヘキサマーあたり約3つ未満の亜鉛イオンが存在する、実施態様98に記載のインスリン製剤。
102.「亜鉛:インスリン」のモル比が約2:6から約5:6である、実施態様98に記載のインスリン製剤。
103.「亜鉛:インスリン」のモル比が約2.5:6から約4.5:6である、実施態様98に記載のインスリン製剤。
104.「亜鉛:インスリン」のモル比が約3:6から約4:6である、実施態様98に記載のインスリン製剤。
105.「亜鉛:インスリン」のモル比が約2:6である、実施態様98に記載のインスリン製剤。
106.「亜鉛:インスリン」のモル比が約2.5:6である、実施態様98に記載のインスリン製剤。
107.「亜鉛:インスリン」のモル比が約3:6である、実施態様98に記載のインスリン製剤。
108.「亜鉛:インスリン」のモル比が約3.5:6である、実施態様98に記載のインスリン製剤。
109.「亜鉛:インスリン」のモル比が約4:6である、実施態様98に記載のインスリン製剤。
110.「亜鉛:インスリン」のモル比が約4.5:6である、実施態様98に記載のインスリン製剤。
111.「亜鉛:インスリン」のモル比が約5:6である、実施態様98に記載のインスリン製剤。
112.安定剤が非イオン性界面活性剤である、実施態様88に記載のインスリン製剤。
113.界面活性剤がポリソルベート20(Tween20)又はポリソルベート80(Tween80)である、実施態様112に記載のインスリン製剤。
114.界面活性剤がポリソルベート20(Tween20)である、実施態様112に記載のインスリン製剤。
115.界面活性剤がポリソルベート80(Tween80)である、実施態様112に記載のインスリン製剤。
116.ポリソルベートを約5から100ppm、約10から50ppm又は約10から20ppm含む、実施態様112−115の何れかに記載のインスリン製剤。
117.更にフェノール化合物を含む、実施態様88に記載のインスリン製剤。
118.上記フェノール化合物が約0から約6mg/ml又は約0から約4mg/mlにおける量存在する、実施態様117に記載のインスリン製剤。
119.更にm−クレゾールを含む、実施態様88に記載のインスリン製剤。
120.m−クレゾールが約0.5から約4.0mg/ml又は約0.6から約4.0mg/mlにおける量存在する、実施態様119に記載のインスリン製剤。
121.pHが中性から弱塩基性である、実施態様1から120の何れかに記載のインスリン製剤。
122.pHが約7.0から約8.0である、実施態様1から121の何れかに記載のインスリン製剤。
123.pHが約7.0である、実施態様1から122の何れかに記載のインスリン製剤。
124.pHが約7.1である、実施態様1から123の何れかに記載のインスリン製剤。
125.pHが約7.2である、実施態様1から124の何れかに記載のインスリン製剤。
126.pHが約7.3である、実施態様1から125の何れかに記載のインスリン製剤。
127.pHが約7.4である、実施態様1から126の何れかに記載のインスリン製剤。
128.pHが約7.5である、実施態様1から127の何れかに記載のインスリン製剤。
129.pHが約7.6である、実施態様1から128の何れかに記載のインスリン製剤。
130.pHが約7.7である、実施態様1から129の何れかに記載のインスリン製剤。
131.pHが約7.8である、実施態様1から130の何れかに記載のインスリン製剤。
132.pHが約7.9である、実施態様1から131の何れかに記載のインスリン製剤。
133.pHが約8.0である、実施態様1から132の何れかに記載のインスリン製剤。
134.実施態様1から133の何れかに記載のインスリン製剤を治療に有効な用量、その治療を必要とする患者への投与により、哺乳動物の血糖値を下げる方法。
135.実施態様1から134の何れかに記載のインスリン製剤を被験者へ投与することを含む、被験者の真性糖尿病を治療する方法。
136.非経口投与のための、実施態様1から135の何れかに記載の方法。
137.ストレス誘導による高血糖を含む高血糖症、2型糖尿病、耐糖能異常、1型糖尿病、及び治療に同化作用が必要なやけどや手術創及び他の疾患又は創傷、心筋梗塞、脳卒中、冠状動脈性心疾患や他の心血管疾患の治療又は予防、及び危篤状態の糖尿病患者及び非糖尿病患者の治療における使用のための、実施態様1から136の何れかに記載のインスリン製剤。
【0083】
本発明は以下の実施例で更に説明されるが、限定するものとして解釈されるべきではない。
【0084】
ここに引用される出版物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、あたかも各参考文献が個々に特に出典明示により援用されると示され、(法律で許容される最大範囲で)ここにその全体が説明されたかの如く、その全体において同程度に出典明示により援用される。
【0085】
全ての表題及び副題はここでは便宜のためだけに使用され、決して本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【0086】
あらゆる実施例、又はここで供される例示的な言葉(例えば、「例えば」)の使用は単に本発明の理解をより容易にすることを目的としており、他に主張されない限り本発明の範囲を制限をもたらすものではない。本明細書ではいかなる言葉も、何れかの非請求要素が本発明の実施に必要不可欠であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0087】
ここでの特許文書の引用と編入は、単に便宜上のために行われるものであり、そのような特許文書の有効性、特許性及び/又は権利行使可能性の如何なる見解も反映するものではない。
【0088】
この発明には、適用される法律により許可される限り、ここに添付された特許請求の範囲に記載される主題事項の全ての変形例及び均等物が含まれる。
【実施例】
【0089】
実施例1
薬学的製剤の調製
本発明の薬学的製剤は水溶液として調剤され得る。水性溶媒は、例えば、塩化ナトリウム又はグリセロールで等張にされる。更に、水性溶媒は、例えば酢酸亜鉛又は塩化亜鉛として添加された亜鉛イオン、バッファー及び保存料を含み得る。アルギニンがArg,HClとして添加され得る。製剤のpHの値は望まれた値に調整され、当該のインスリンの等電点、pI、に依存して約3から約8.5の間、約3から約5の間又は約6.5から約7.5の間であり得る。


【0090】
実施例2
インスリンの化学的安定性の分析
サイズ排除クロマトグラフィー
【0091】
高分子量タンパク質(HMWP)及びモノマーインスリンアスパルトの定量はウォーターズ(Waters)インスリン(300×7.8mm,部品番号 wat201549)で、2.5M酢酸、4mMのL−アルギニン及び20%(V/V)のアセトニトリルを含む溶離液により流量1ml/分で40℃にて実施した。検出は同調型吸光度検出器(ウォーターズ486)で276nmで行った。注入容積は40μl及び600μlのヒトインスリン標準であった。HMWP及び製剤の濃度は各サンプリング点において測定した。
【0092】
逆相クロマトグラフィー(UPLC)
インスリンアスパルトに関連した不純物の決定は、BEH RP C8 2.1×100mmカラム、粒子径1.7μm、ウォーターズ部品番号186002878を使用し、流量0.5ml/分、40℃で、220nmにおける検出でUPLCシステム上で行った。溶出は以下からなる移動相で行った。
A.10%(w/V)アセトニトリル、2.8%(w/w)硫酸ナトリウム、0.3%(w/w)o−リン酸、pH 3.5。
B.70%(w/V)アセトニトリル、勾配:0−11分 アイソクラチック A/Bは73%/27%、11−12 A/Bは52%/48%に線形変化、13−15分 A/Bは73%/27%に線形変化、15−20分 A/Bは73%/27%でアイソクラチック勾配。
【0093】
B28イソアスパラギン酸、デスアミド及び他の関連した不純物の量は、保存料の溶出後に決定した総吸光度面積の百分率で測定された吸光度面積として決定された。RP−UPLC法はノボノルディスクが市販するインスリンアスパルト薬剤の品質管理に使用される分析的方法と同等である。
【0094】
アルギニンの追加は形成される分解産物、特にHMWP及びデスアミド型の量を減少させ、アルギニンの濃度を10から50mMの範囲で増加させると更に分解の減少をもたらす。ThTアッセイにおける遅延時間として測定される物理的安定性はアルギニンの添加によって減少し、アルギニン濃度を増加させるとますます減少する。50mMアルギニンの全効能は、下の表3に示される通り、分解産物形成の減少に関して、50mMグリシン、50mMグルタミン酸又は50mMヒスチジンよりより優れている。

【0095】
実施例3
LYDブタモデルにおける薬物動態(PK)/薬動力学(PD)研究及び血漿分析アッセイ
LYDブタにおけるPK/PD研究
PK/PD研究は55から110kgの重さのLYD異種交配した国産メスブタで行った。ブタは研究開始の少なくとも2日前に、耳の静脈を通して頚部静脈にカテーテルが挿入された。研究開始前の最後の食餌は、試験製剤の注射の約18時間前に動物に出され、動物は絶食期間及び試験期間中いつでも自由に水を摂取できた。
【0096】
0時間にて試験製剤が首の横側の皮下へ与えられた。投薬前に血液試料が採血され、投薬後一定の時間間隔でカテーテルから試料が摂取され、ヘパリンで事前にコーティングされた1.5mlガラスチューブへサンプリングした。血液試料は、最初の30分以内に行われた3000rpm、4℃で10分間の遠心分離による血漿の分画まで氷水中で保管された。血漿試料は短時間(2−3時間)4℃で、又は長期間−18℃で保管され、グルコースはYSI又はKonelab 30iにて、及びインスリンアスパルト濃度はLOCIにより分析された。
【0097】
インスリンアスパルト定量化のための発光酸素チャネリングイムノアッセイ(LOCI)
インスリンアスパルトLOCIはモノクロナール抗体にもとずくサンドイッチ免疫測定法であり、ユーロピウムでコーティングされたアクセプタービーズとストレプトアビジンでコーティングされたドナービーズである2つのビーズの近接を利用する。アクセプタービーズはヒトインスリンに対する特異的抗体でコートされており、血漿試料中のインスリンアスパルトを認識する。第2のビオチン標識化抗体はインスリンアスパルトに特異的に結合し、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズと共にサンドイッチを作り上げる。ビーズが会合した免疫複合体のイルミネーションはドナービーズから一重項酸素を放出し化学発光を引き起こす。化学発光が測定され、生成した光量がインスリンアスパルトの濃度に比例する。
【0098】
市販品のノボラピッド(登録商標)と比較して、血漿グルコース低下の初期速度は本発明による製剤においてより速い(図3及び4)。同様に、ノボラピッド(登録商標)と比較した場合、本発明による製剤のインスリン組成物の初期吸収速度は著しく速い(図5)。
【0099】
実施例4
タンパク質製剤の物理的安定性に関する評価のためのThTフィブリル化アッセイの概略紹介
ペプチドの低い物理的安定性はアミロイドフィブリル形成を引き起こし得、それは試料中に良く整頓された糸状高分子構造として観察され、最終的にゲルの形成を引き起こす。これは伝統的に試料の目視により測定されている。しかしながら、そのような測定は非常に主観的であり観察者に依存している。従って、小分子指標プローブの適用がはるかに有利である。チオフラビンT(ThT)はそのようなプローブであり、フィブリルに結合すると異なる蛍光サインを示す[Naiki等、(1989) Anal.Biochem.177, 244−249;LeVine(1999) Methods.Enzymol.309, 274−284]。フィブリル形成の時間的経過は次の式によるS字型曲線により記述できる[Nielsen等、(2001) Biochemistry 40,6036−6046]。

【0100】
ここで、Fは時刻tにおけるThT蛍光である。定数t0は最大蛍光の50%に達するために必要な時間である。フィブリル形成を記述する2つの重要なパラメーターはt0−2τにより計算される遅延時間と見かけの速度定数kapp=1/τである。

【0101】
部分的にフォールドしたペプチドの中間体はフィブリル化の一般的な開始機構として提案されている。そうした中間体が核形成して鋳型を作りそこに更に中間体が会合してフィブリル化が進行しうることは少ない。遅延時間は臨界量の核が蓄積される間隔に対応し、見かけの速度定数はフィブリルそれ自身が形成される速度である。
【0102】
試料調製
試料は各アッセイ前に新しく調製した。各試料の組成物は各実施例中に記述する。試料のpHは濃縮されたNaOH及びHClO又はHClを適量使用して望まれる値に調整した。HO中のストック溶液からチオフラビンTを試料に添加して最終濃度を1μMとした。
【0103】
200μlの試料を96穴マイクロタイタープレート(Packard OptiPlateTM-96、白色ポリスチレン)に置いた。通常、各試料について4又は8の複製(1回の試験条件に対応する)が穴の一列に置かれる。プレートはスコッチパッド(Qiagen)で密封した。
【0104】
インキュベーション及び蛍光測定
所定の温度でのインキュベーション、震盪及びThT蛍光発光の測定はFluoroskan Ascent FL蛍光プレートリーダー又はVarioskanプレートリーダー(Thermo Labsystems)で行った。温度は37℃に調整した。軌道震盪は全ての提示データにおいて1mmの振幅で960rpmに設定した。蛍光測定は444nmフィルターを通した励起及び485nmフィルターを通した発光測定を使用して行った。
【0105】
各実行はアッセイ温度にてプレートを10分間インキュベートすることから開始した。プレートは20分ごとに望まれた時間測定した。各測定の間、記述した通りにプレートを震盪し加熱した。
【0106】
データの取り扱い
測定点を更なる処理のためマイクロソフトエクセル形式に保存し、GraphPad Prismを使用して曲線描画及びフィッティングを行った。フィブリルが無いときのThT由来のバックグランド発光は無視できるものであった。データ点は典型的には4つ又は8つの試料の平均であり標準偏差のエラーバーと共に示される。同一実験で得られたデータのみ(すなわち同一プレート上の試料)同一グラフに提示され、実験の間におけるフィブリル化の相対的な測定を保証している。
【0107】
データセットは式(1)にフィットさせ得る。しかしながら全S字曲線が常に実験時間中に得られるわけではなく、ThT蛍光がバックグランドレベルとは異なる時点として、遅延時間をThT蛍光曲線から目視で決定した。
【0108】
初期及び最終濃度の測定
試験された各製剤におけるペプチド濃度はThTフィブリル化アッセイ「初期」及びThTフィブリル化完了後「ThTアッセイ後」の両方で測定した。濃度はプラムリンチド標準を参照として使用し逆HPLC法で決定した。完了後の測定前に各複製から150μlを採取しエッペンドルフチューブへ移した。これらを30000Gで40分間遠心した。HPLCシステムに適用前に上清を0.22μmフィルターを通して濾過した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・インスリン化合物
・ニコチン化合物、及び
・アルギニン
を含有するインスリン製剤。
【請求項2】
インスリン化合物がインスリン又はインスリンアナログである、請求項1に記載のインスリン製剤。
【請求項3】
インスリン化合物がB28Aspヒトインスリンである、請求項1又は2に記載のインスリン製剤。
【請求項4】
インスリン化合物がB28LysB29Proヒトインスリンである、前記請求項の何れかに記載のインスリン製剤。
【請求項5】
インスリン化合物がB3LysB29Gluヒトインスリンである、前記請求項の何れかに記載のインスリン製剤。
【請求項6】
インスリン化合物が約0.2mMから約2.0mMの量で存在する、請求項1から5の何れかに記載のインスリン製剤。
【請求項7】
インスリン化合物が約0.3mMから約1.2mMの量で存在する、請求項1から6の何れかに記載のインスリン製剤。
【請求項8】
ニコチン化合物がニコチンアミド、ニコチン酸、ナイアシン、ナイアシンアミド及びビタミンB3及び/又はその塩及び/又はその何れかの組合わせからなる群から選択される、請求項1から7の何れかに記載のインスリン製剤。
【請求項9】
ニコチン化合物を約1mMから約150mM含む、請求項1から8の何れかに記載のインスリン製剤。
【請求項10】
アルギニンを約1mMから約85mM含む、請求項1から9の何れかに記載のインスリン製剤。
【請求項11】
グルタミン酸を更に含む、請求項1から10の何れかに記載のインスリン製剤。
【請求項12】
金属イオン、保存料、等張化剤及び安定化剤、界面活性剤及びバッファーを更に含む、請求項1から11の何れかに記載のインスリン製剤。
【請求項13】
請求項1から12の何れかに記載のインスリン製剤を治療に有効な用量、その治療を必要とする患者へ投与することにより、哺乳動物の血糖値を下げる方法。
【請求項14】
請求項1から13の何れかに記載のインスリン製剤を被験者へ投与することを含む、被験者の真性糖尿病を治療する方法。
【請求項15】
ストレス誘導性高血糖を含む高血糖、2型糖尿病、耐糖能異常、1型糖尿病、及び治療に同化作用が必要なやけどや手術創及び他の疾患又は創傷、心筋梗塞、脳卒中、冠状動脈性心疾患や他の心血管疾患の治療又は予防、及び危篤状態の糖尿病患者及び非糖尿病患者の治療における使用のための、請求項1から14の何れかに記載のインスリン製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−530768(P2012−530768A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516763(P2012−516763)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059069
【国際公開番号】WO2010/149772
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(596113096)ノボ・ノルデイスク・エー/エス (241)
【Fターム(参考)】