インスリンペプチドを経口投与するための医薬組成物
本発明は、インスリンペプチドの経口投与に適した医薬組成物、このような医薬組成物を作製する方法、およびこのような医薬組成物を用いる治療に関するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのインスリンペプチド、少なくとも1つの半極性のプロトン性有機溶媒、および少なくとも2つの非イオン性界面活性剤を含む医薬組成物、このような医薬組成物を作製する方法、ならびに治療方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、グルコースを利用する能力が部分的にまたは完全に失われている代謝障害であり、例えばインスリンで治療され得る。
【0003】
インスリン送達のための通常のアプローチは、侵襲性であり不便な非経口投与である。したがって、タンパク質ベースの医薬品の経口送達のような、非侵襲性経路の研究が増大している。しかし、胃腸(GI)管における酵素分解、薬剤排出ポンプ、腸粘膜からの不十分で可変の吸収、および肝臓における初回通過代謝などの、いくつかの障壁が存在する。ヒトインスリンは、胃(ペプシン)において、腸管腔(キモトリプシン、トリプシン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼなど)において、およびGI管の粘膜表面(アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、エンテロペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼ、エンドペプチダーゼなど)において見られる、様々な消化酵素によって分解される。
【0004】
哺乳動物、例えばヒトに薬剤を経口投与するための有用な媒体は、SMEDDSもしくはSNEDDS(自己マイクロ乳化薬剤送達系または自己ナノ乳化薬剤送達系)とも呼ばれるマイクロエマルジョン前濃縮物もしくはナノエマルジョン前濃縮物の形態、またはSEDDS(自己乳化剤送達系)とも呼ばれるエマルジョン前濃縮物の形態である。SEDDS製剤、SMEDDS製剤、またはSNEDDS製剤は、油、界面活性剤、共界面活性剤、または可溶化剤、および必要に応じて任意の他の作用物質もしくは賦形剤の、等方混合物である。系のコンポーネントが水性媒質、例えば水、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、またはエマルジョンと接触すると、わずかな撹拌で、または撹拌することなく、水中油型エマルジョンまたは水中油型マイクロエマルジョンなどを自然に形成する。マイクロエマルジョンは、2つの非混和性の液体を含む、熱力学的に安定な系であり、界面活性剤の存在によって、一方の液体は他方の液体内に細かく分散する。形成されたマイクロエマルジョンは、分散相の粒子サイズが小さいために、例えば、澄明もしくは半透明に、わずかに不透明に、乳白色に、透明に、またはほぼ透明に見える。
【0005】
WO2009115469A1は、プロテアーゼ安定化された、アシル化されたインスリン類似体、およびこれを含む組成物に関するものであり、WO2003047494A2、US5444041、およびWO02094221A1は、エマルジョン/マイクロエマルジョン組成物に関するものであり、WO9637215A1は、インスリンの油中水型エマルジョンに関するものであり、US20060210622A1は、生物学的に活性な物質の表面修飾型粒子組成物に関するものであり、WO03030865A1、US5206219A、およびUS2004097410A1は、例えば界面活性剤および/または脂質コンポーネントを含む、インスリン組成物に関するものであり、US20060182771A1は、眼の疾患を治療するための自己乳化組成物に関するものであり、WO2008145730A1、WO2008145728A1、Ma Er-Liら、Acta Pharmacologica Sinica、2006年10月、Vol. 27、Nr. 10、1382〜1388頁は、マイクロエマルジョン前濃縮物またはエマルジョン前濃縮物に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2009115469A1
【特許文献2】WO2003047494A2
【特許文献3】US5444041
【特許文献4】WO02094221A1
【特許文献5】WO9637215A1
【特許文献6】US20060210622A1
【特許文献7】WO03030865A1
【特許文献8】US5206219A
【特許文献9】US2004097410A1
【特許文献10】US20060182771A1
【特許文献11】WO2008145730A1
【特許文献12】WO2008145728A1
【特許文献13】WO2005/012347
【特許文献14】WO2008/034881
【特許文献15】WO2009/115469
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ma Er-Liら、Acta Pharmacologica Sinica、2006年10月、Vol. 27、Nr. 10、1382〜1388頁
【非特許文献2】Griffin (Griffin WC:「Classification of Surface-Active Agents by「HLB」」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1 (1949): 311)
【非特許文献3】Davies (Davies JT:「A quantitative kinetic theory of emulsion type, I. Physical chemistry of the emulsifying agent」、Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface. Proceedings of the International Congress of Surface Activity (1957): 426〜438)
【非特許文献4】Handbook of Pharmaceutical Excipients, Roweら編、第4版、Pharmaceutical Press (2003)
【非特許文献5】Eudragit Application Guidelines、Evonik Industries、第11版、2009年9月
【非特許文献6】Hudson and Andersen、Peptide Science、第76巻(4)、298〜308頁(2004)
【非特許文献7】Greene and Wuts、「Protective Groups in Organic synthesys」、John Wiley & Sons、1999
【非特許文献8】Handbook of Chemistry and Physics、CMC Press
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
SMEDDS組成物は、シクロスポリンなどの疎水性ポリペプチドの溶解度および経口バイオアベイラビリティを向上させることが知られている。しかし、SMEDDSおよびSNEDDSにおけるヒトインスリンなどの親水性水溶性ポリペプチドの溶解度は不十分であり、バイオアベイラビリティは、常に最適というわけではない可能性がある。改良したSMEDDS組成物および/またはSNEDDS組成物がしたがって、インスリンの経口送達に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも1つのインスリンペプチド、少なくとも1つの半極性のプロトン性有機溶媒、およびHLBが10を超える少なくとも2つの非イオン性界面活性剤を含む、液体の非水性医薬組成物に関するものである。
【0010】
本発明の1つの態様において、油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤を含有しない医薬組成物が記載される。
【0011】
1つの態様において、本発明では、水性媒質中に希釈された後にマイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンを形成する医薬組成物が記載される。
【0012】
本発明の別の態様において、HLBが10を超える2つまたは3つの非イオン性界面活性剤を含む医薬組成物であって、残りの成分が界面活性剤以外の賦形剤である医薬組成物が記載される。
【0013】
また、本発明に従った医薬組成物を生産する方法、および効果的な量の本発明に従った医薬組成物を経口投与することを含む、高血糖を治療するための方法も記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】麻酔した、一晩絶食させたSprague-Dawleyラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、Tween 20、Labrasol ALF、およびジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である。
【図2】麻酔した、一晩絶食させたSprague-Dawleyラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、Tween 20、Labrasol ALF、およびジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である。
【図3】絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、ジグリセロールカプリレート、Tween 20、Plurol Oleique、Labrasol ALF、超精製ポリソルベート20、およびRylo MG08 Pharmaを含むSMEDDSまたはSEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である(平均±SEM、n=4〜6)。HLBが10を超える2つまたは3つの界面活性剤を含むSMEDDS(-□-および-▼-)は、HLBが7未満の少なくとも1つの脂溶性コンポーネント(Rylo MG08またはPlurol Oleiqueなど)を含む製剤(-■-、-*-)、またはただ1つの界面活性剤を含む製剤(-Δ-)よりも高い血漿インスリンレベルを示した。
【図4】絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、Tween 20、Labrasol ALF、およびジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である(平均±SEM、n=6〜7)。HLBが10を超える2つまたは3つの界面活性剤を含むSMEDDS製剤は、ただ1つの界面活性剤および脂溶性コンポーネントRylo MG08を含む製剤(-×-)よりも有意に高いインスリン誘導体血漿レベルを示した。
【図5】絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、SEDDSまたはSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である(平均±SEM、n=6〜7)。HLBが10を超える3つの界面活性剤を含むSMEDDS(-□-、-■-)は、2つの界面活性剤を含むSMEDDSまたはただ1つの界面活性剤を含むSEDDS製剤(-×-)よりも高い血漿インスリンレベルを示した。
【図6】SMEDDS(15%PG、32.5%Labrasol ALF、32.5%Cremophor RH40、20%RyloMG08)内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(30nmol/kg)を含む腸溶コーティングされたソフトカプセルをオスのビーグル犬(n=8)に経口投与した後の、薬物動態プロフィールを示す図である。ソフトカプセルは、Eudragit L30 D-55で腸溶コーティングした。
【図7】SMEDDS(15%プロピレングリコール、30%超精製ポリソルベート20、および55%ジグリセロールカプリレート)内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(30nmol/kg)を含む腸溶コーティングされていないソフトカプセルをオスのビーグル犬(n=8)に内視鏡投与した後の、薬物動態プロフィールを示す図である。ソフトカプセルは、ビーグル犬の十二指腸に内視鏡で投与した。
【図8】SMEDDS(15%プロピレングリコール、30%超精製ポリソルベート20、および55%ジグリセロールカプリレート)内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(45〜50nmol/kg)を含むコーティングされたソフトカプセルをオスのビーグル犬(n=8)に経口投与した後の、薬物動態プロフィールを示す図である。ソフトカプセルは、Eudragit L30 D-55で腸溶コーティングした。
【図9】SMEDDS(15%プロピレングリコール、30%超精製ポリソルベート20、および55%ジグリセロールカプリレート)内に製剤されたインスリン誘導体A14E、B16H、B25H、B29K(N(ε)-ヘキサデカンジオイル-gGlu)、desB30ヒトインスリン(30nmol/kg)を含むコーティングされたソフトカプセルをオスのビーグル犬(n=8)に経口投与した後の、薬物動態プロフィールを示す図である。ソフトカプセルは、Eudragit L30 D-55とEudragit NE30Dとの混合物で腸溶コーティングした。
【図10】絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、SMEDDS(15%プロピレングリコール、30%ポリソルベート20、55%ジグリセロールカプリレート)内に製剤された異なるアシル化されたインスリン誘導体(30nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である(平均±SEM、n=6)。
【図11】絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、異なるSMEDDS組成物内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である(平均±SEM、n=6)。
【図12】絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に0.1mlを注射した後の、無水SMEDDS組成物内および5%の水を含むSMEDDS組成物内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(SMEDDS1グラム当たり3.25mg)の薬物動態プロフィールを示す図である(平均±SEM、n=6)。
【図13】絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、Tween 20、およびジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS組成物内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(30nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である(平均±SEM、n=6)。
【図14】絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、15%プロピレングリコール、30%Tween 20、および55%ジグリセロールカプリレートを含む本発明に従ったSMEDDS組成物内に製剤された異なるインスリン誘導体a)、b)、c)、d)、e)、f)、g)(30nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である(平均±SEM、n=6)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、少なくとも1つのインスリンペプチド、少なくとも1つの半極性のプロトン性有機溶媒、およびHLBが10を超える少なくとも2つの非イオン性界面活性剤を含む、液体の非水性医薬組成物に関するものである。本発明の1つの態様において、組成物は、水性媒質に希釈された後にマイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンを形成する。
【0016】
本発明の液体の非水性医薬組成物が、HLBが10を超える少なくとも2つの非イオン性界面活性剤を含むことは、重要な態様である。したがって、前記新規な組成物が、例えばただ1つの界面活性剤を含む既知の組成物と比較して高い経口バイオアベイラビリティを有することが、本発明者らによって驚くべきことに見出された。1つの態様において、本発明の液体の非水性医薬組成物は、HLBが10を超える少なくとも3つの非イオン性界面活性剤を含む。1つの態様において、本発明の液体の非水性医薬組成物は、HLBが10を超える2つまたは3つの非イオン性界面活性剤を含み、残りの成分は、界面活性剤以外の賦形剤である。
【0017】
1つの態様において、本発明の液体の非水性医薬組成物は、10%未満の油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤を含有する。1つの態様において、本発明の液体の非水性医薬組成物は、5%未満の油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤を含有する。1つの態様において、本発明の液体の非水性医薬組成物は、1%未満の油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤を含有する。
【0018】
1つの態様において、本発明の液体の非水性医薬組成物は、HLBが10を超える2つの非イオン性界面活性剤を含み、残りの成分は、界面活性剤以外の賦形剤である。1つの態様において、本発明の液体の非水性医薬組成物は、HLBが10を超える3つの非イオン性界面活性剤を含み、残りの成分は、界面活性剤以外の賦形剤である。
【0019】
本発明の液体の非水性医薬組成物の各非イオン性界面活性剤の親水性-脂溶性バランス(HLB)は10を超え、それによって、高いインスリンペプチド(インスリン誘導体など)薬物負荷能力および高い経口バイオアベイラビリティが達成される。1つの態様において、本発明に従った非イオン性界面活性剤は、HLBが11を超える非イオン性界面活性剤である。1つの態様において、本発明に従った非イオン性界面活性剤は、HLBが12を超える非イオン性界面活性剤である。
【0020】
用語「経口バイオアベイラビリティ」は、本明細書において、経口的に投与された後に全身循環に達する薬剤の投与量の画分を意味する。定義では、薬物が静脈内に投与される場合、そのバイオアベイラビリティは100%である。しかし、薬物が経口経路などの他の経路を介して投与されると、そのバイオアベイラビリティは、不完全な吸収および初回通過代謝に起因して低下する。用語「高い経口バイオアベイラビリティ」は、したがって、大量の活性薬剤(すなわちインスリン)が、経口的に投与された後に全身循環に達することを意味する。
【0021】
本明細書において用いられる場合、用語「液体」は、室温(「RT」)で液体状態であり、かつ例えば20℃未満の融点を有する、コンポーネントまたは組成物を意味する。本明細書において用いられる場合、室温(RT)はおよそ20〜25℃を意味する。
【0022】
本発明の1つの態様において、液体の非水性医薬組成物は、油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤を含有しない。このことは、大量のインスリン誘導体がこれらのSMEDDSまたはSNEDDS内に溶解し得るという利点を有する。さらなる態様において、組成物は、油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが8未満の界面活性剤を含有しない。さらなる態様において、組成物は、油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが9未満の界面活性剤を含有しない。さらなる態様において、組成物は、油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが10未満の界面活性剤を含有しない。
【0023】
本発明に従った液体の非水性医薬組成物は、少なくとも1つの半極性のプロトン性有機溶媒を含む。1つの態様において、本発明に従った液体の非水性医薬組成物は、ただ1つの半極性のプロトン性有機溶媒を含む。1つの態様において、本発明に従った半極性のプロトン性有機溶媒は、例えばジオールまたはトリオールなどのポリオールである。1つの態様において、半極性のプロトン性有機溶媒は、グリセロール(プロパントリオール)、エタンジオール(エチレングリコール)、1,3-プロパンジオール、メタノール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、エタノール、およびイソプロパノール、またはその混合物からなる群から選択される。1つの態様において、本発明に従った半極性のプロトン性有機溶媒は、プロピレングリコール、グリセロール、およびその混合物からなる群から選択される。1つの態様において、本発明に従った半極性のプロトン性有機溶媒は、プロピレングリコールである。
【0024】
本発明に従った医薬組成物における、例えばプロピレングリコールとHLBが10を超える少なくとも2つの非イオン性界面活性剤との組み合わせは、驚くべきことに、インスリン誘導体の高い経口バイオアベイラビリティをもたらした。
【0025】
薬剤送達系のコンポーネントは、任意の相対量で存在し得る。1つの態様において、薬剤送達系は、担体の組成の重量当たり最大15%の極性有機コンポーネントを含み、すなわち、インスリンを添加する前に、担体の重量の最大15%が、極性有機コンポーネントからなる。1つの態様において、薬剤送達系は、担体の全組成の約1重量%から約15重量%の極性有機溶媒を含む。さらなる態様において、薬剤送達系は、担体の全組成の約5重量%から約15重量%の極性有機溶媒を含む。1つの態様において、薬剤送達系は、担体の全組成の約10重量%から約15重量%の極性有機溶媒を含む。さらなる態様において、薬剤送達系は、担体の全組成の約15重量%の極性有機溶媒を含む。
【0026】
本発明に従った液体の非水性医薬組成物は、驚くほど高いインスリンペプチド(インスリン誘導体など)薬物負荷能力を有し得、すなわち、前記組成物は、大量のインスリンを含み得る。本発明の1つの態様において、治療的に活性なインスリンペプチドは、医薬組成物全体の最大約20重量%、例えば最大約10重量%の量で、または約0.1重量%から、例えば約1重量%から存在し得る。本発明の1つの態様において、治療的に活性なインスリンペプチドは、組成物全体の約0.1重量%から約20重量%の量で存在し得、さらなる態様において、約0.1重量%から10重量%、0.1重量%から20重量%、1重量%から20重量%、または約1重量%から10重量%の量で存在し得る。しかし、インスリンペプチドの特定のレベルの選択は、極性有機溶媒におけるインスリンペプチドの溶解度、または用いられる最適な親水性コンポーネントもしくは界面活性剤、またはその組み合わせ、投与態様、ならびに患者のサイズおよび状態を含めた、薬学分野で周知の因子に従って行われる。
【0027】
用語「非水性」は、本明細書において用いられる場合、医薬組成物の調製の間に水が添加されない組成物を言う。当業者には、例えば組成物を封入するために用いられるソフトカプセルまたはハードカプセルなどの、水を添加せずに調製された組成物が、医薬組成物の取り扱いの間に周りから少量の水を取り込み得ることが知られている。また、医薬組成物内のインスリンペプチドおよび/または賦形剤の1つもしくは複数には、本発明に従った医薬組成物を調製する前に、少量の水が結合していてよい。本発明に従った非水性医薬組成物は、したがって、少量の水を含有し得る。1つの態様において、本発明に従った非水性医薬組成物は、10%w/w未満の水を含む。別の態様において、本発明に従った組成物は、5%w/w未満の水を含む。別の態様において、本発明に従った組成物は、4%w/w未満の水を含み、別の態様においては3%w/w未満の水を含み、別の態様においては2%w/w未満の水を含み、さらに別の態様においては1%w/w未満の水を含む。
【0028】
本明細書において用いられる場合、用語「半極性のプロトン性有機溶媒」は、1つまたは複数のアルコール官能基またはアミン官能基またはその混合物を含有する親水性の水混和性の炭素含有溶媒を言う溶媒を意味するものとする。極性は、溶媒の比誘電率または双極子モーメントに反映される。溶媒の極性は、溶媒がどのタイプの化合物を溶解可能であるか、および溶媒がどの他の溶媒または液体化合物と混和可能であるかを決定する。典型的には、極性溶媒は極性化合物を最も良く溶解し、無極性溶媒は無極性化合物を最も良く溶解し、すなわち、「類似のものは類似のものを溶解する」。無機塩(例えば、塩化ナトリウム)のような強極性化合物は、非常に極性の溶媒のみに溶解する。
【0029】
半極性溶媒は、ここで、20〜50の範囲の比誘電率を有する溶媒として定義され、一方、極性溶媒および無極性溶媒は、それぞれ50を超える、および20未満の比誘電率によって定義される。半極性のプロトン性溶媒の例を、参照としての水と共に、Table1(表1)に列挙する。
【0030】
【表1】
【0031】
本文脈において、1,2-プロパンジオールおよびプロピレングリコールは区別せずに用いられる。本文脈において、プロパントリオールおよびグリセロールは区別せずに用いられる。本文脈において、エタンジオールおよびエチレングリコールは区別せずに用いられる。
【0032】
用語「ポリオール」は、本明細書において用いられる場合、複数のヒドロキシル基を含有する化学的化合物を言う。用語「ジオール」は、本明細書において用いられる場合、2つのヒドロキシル基を含有する化学的化合物を言う。用語「トリオール」は、本明細書において用いられる場合、3つのヒドロキシル基を含有する化学的化合物を言う。
【0033】
本発明の医薬組成物の界面活性剤は、非イオン性である。界面活性剤は、その調製に伴う副生成物または未反応開始生成物を含有する複合混合物であり得、例えば、ポリオキシエチル化によって作製される界面活性剤は、別の副生成物、例えばPEGを含有し得る。本発明に従った界面活性剤は、少なくとも10の親水性-脂溶性バランス(HLB)値を有する。例えば、界面活性剤は、10〜30、例えば10〜20または11〜17の平均HLB値を有し得る。界面活性剤は、天然で液体、半固体、または固体であり得る。
【0034】
界面活性剤の親水性-脂溶性バランス(HLB)は、Griffin (Griffin WC:「Classification of Surface-Active Agents by「HLB」」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1 (1949): 311)またはDavies (Davies JT:「A quantitative kinetic theory of emulsion type, I. Physical chemistry of the emulsifying agent」、Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface. Proceedings of the International Congress of Surface Activity (1957): 426〜438)によって記載されているように、分子の異なる領域について値を計算することによって決定される、界面活性剤が親水性または脂溶性である程度の尺度である。
【0035】
本発明の1つの態様において、本発明に従った非イオン性界面活性剤は、「中鎖脂肪酸基」を含む。中鎖脂肪酸基は、本明細書において、6から12個の炭素原子を有する鎖を有する脂肪酸基と理解される。1つの態様において、中鎖脂肪酸基は、8から12個の炭素原子を有する。1つの態様において、中鎖脂肪酸基は、C8脂肪酸(カプリレート)、C10脂肪酸(カプレート)、およびC12脂肪酸(ラウレート)からなる群から選択される。
【0036】
用語「非イオン性界面活性剤」は、本明細書において用いられる場合、表面、および液体から気体、液体から液体、液体から容器、または液体から任意の固体のような界面で吸着し得、その親水基(「ヘッド」と言われることもある)に荷電基を有さない、任意の物質、特に洗剤を言う。非イオン性界面活性剤は、エトキシ化されたヒマシ油、ポリグリコール化されたグリセリド、アセチル化されたモノグリセリド、およびソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、例えばポリソルベート-20、ポリソルベート-40、ポリソルベート-60、ポリソルベート-80、超精製ポリソルベート20、超精製ポリソルベート40、超精製ポリソルベート60、および超精製ポリソルベート80(ここで、用語「超精製」は、提供元Crodaによって、彼らの高純度のTween製品について用いられる)、ポリオキサマー、例えばポリオキサマー188およびポリオキサマー407、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体、例えばアルキル化誘導体およびアルコキシル化誘導体(Tween、例えば、Tween-20またはTween-80)、ブロックコポリマー、例えばポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー(例えば、Pluronics/Tetronics、Triton X-100、および/またはSynperonic PE/L 44 PEL)、ならびにエトキシ化されたソルビタンアルカノエート界面活性剤(例えば、Tween-20、Tween-40、Tween-80、Brij-35)、ジグリセロールラウレート、ジグリセロールカプレート、ジグリセロールカプリレート、ジグリセロールモノカプリレート、ポリグリセロールラウレート、ポリグリセロールカプレート、およびポリグリセロールカプリレートなどの洗剤から選択され得る。
【0037】
他の非イオン性界面活性剤の例には、限定はしないが、以下のものが含まれる。
【0038】
1.天然のまたは水素化されたヒマシ油およびエチレンオキシドの反応生成物。天然のまたは水素化されたヒマシ油は、約1:35から約1:60のモル濃度比でエチレンオキシドと反応し得、生成物からはPEGコンポーネントが最適に除去される。様々なこのような界面活性剤は市販されており、例えば、BASF Corp. (Mt. Olive、NJ)のCREMOPHORシリーズ、例えばCREMOPHOR RH 40であり、これは、約50から60の鹸化価、約1未満の酸価、約2%未満の水分含有量、すなわちFischer、約1.453〜1.457のnD60、および約14〜16のHLBを有するPEG40水素化ヒマシ油である。
【0039】
2.ポリオキシエチレンステアリン酸エステルを含めたポリオキシエチレン脂肪酸エステル、例えばUniqemaのMYRJシリーズ、例えば、約47℃のm.p.を有するMYRJ 53。MYRJシリーズの特定の化合物は、例えば、約47℃のm.p.を有するMYRJ 53、およびMYRJ 52として入手可能なPEG-40-ステアレートである。
【0040】
3. UniqemaのTWEENシリーズ、例えばTWEEN 60を含めた、ソルビタン誘導体。
【0041】
4.ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーおよびブロックコポリマーまたはポロキサマー、例えば、BASFのPluronic F127もしくはPluronic F68、またはCrodaのSynperonic PE/L。
【0042】
5.ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、C12〜C18アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテル、例えば、UniqemaのBRIJシリーズとして知られており市販されている、ポリオキシル10-もしくは20-セチルエーテルまたはポリオキシル23-ラウリルエーテルまたはポリオキシル20-オレイルエーテルまたはポリオキシル10-、20-、もしくは100-ステアリルエーテル。BRIJシリーズの特に有用な製品は、BRIJ 58、BRIJ 76、BRIJ 78、BRIJ 35、すなわち、ポリオキシル23ラウリルエーテル、ならびにBRIJ 98、すなわち、ポリオキシル20オレイルエーテルである。これらの製品は、約32℃から約43℃の間のm.p.を有する。
【0043】
6.約36℃のm.p.を有する、Eastman Chemical Co.から入手可能な水溶性トコフェリルPEGコハク酸エステル、例えばTPGS、例えばビタミンE TPGS。
【0044】
7.例えば5〜35個の[CH2-CH、-O]単位、例えば20〜30単位を有するPEGステロールエーテル、例えばChemron(Paso Robles、CA)のSOLULAN C24(Choleth-24およびCetheth-24)。同様に用いることができる類似の製品は、Nikko ChemicalsのNIKKOL BPS-30(ポリエトキシ化された30フィトステロール)およびNIKKOL BPSH-25(ポリエトキシ化された25フィトスタノール)として知られており市販されているものである。
【0045】
8.例えば4〜10個のグリセロール単位の範囲、または4、6、もしくは10個のグリセロール単位を有する、ポリグリセロール脂肪酸エステル。例えば、特に適切なものは、デカ-/ヘキサ-/テトラグリセリルモノステアレート、例えば、Nikko ChemicalsのDECAGLYN、HEXAGLYN、およびTETRAGLYNである。
【0046】
9.アルキレンポリオールエーテルまたはアルキレンポリオールエステル、例えば、それぞれGELUCIRE 44/14およびGELUCIRE 50/13である、ラウロイルマクロゴール-32グリセリドおよび/またはステアロイルマクロゴール-32グリセリド。
【0047】
10.飽和したC10からC22のポリオキシエチレンモノエステル、例えば、C18が置換された例えばヒドロキシ脂肪酸。例えば、12ヒドロキシステアリン酸PEGエステル、例えば、例えば約600〜900ダルトン、例えば660ダルトンのMWのPEGの12ヒドロキシステアリン酸PEGエステル、例えばBASF(Ludwigshafen、20 Germany)のSOLUTOL HS 15。BASFの技術説明書MEF 151E(1986)によると、SOLUTOL HS 15は、約70重量%のポリエトキシ化された12-ヒドロキシステアレートおよび約30重量%のエステル化されていないポリエチレングリコールコンポーネントを含む。これは、90から110の水素化値、53から63の鹸化価、最大1の酸価、および0.5重量%の最大水分含有量を有する。
【0048】
11.ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、例えば、C12からC18のアルコールのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、例えば、Nikko ChemicalsからNIKKOL PBC 34として市販されている、ポリオキシエチレン-20-ポリオキシプロピレン-4-セチルエーテル。
【0049】
12.例えばUniqemaからATLAS G 1821という商品名で、およびNikko ChemicalsからNIKKOCDS-6000Pという商品名で市販されている、ポリエトキシ化されたジステアレート。
【0050】
本明細書において用いられる場合、界面活性剤または脂溶性コンポーネントの「親水性-脂溶性バランス」または「HLB」という用語は、Griffin (Griffin WC:「Classification of Surface-Active Agents by「HLB」」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1 (1949): 311)またはDavies (Davies JT:「A quantitative kinetic theory of emulsion type, I. Physical chemistry of the emulsifying agent」、Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface. Proceedings of the International Congress of Surface Activity (1957): 426〜438)によって記載されているように、分子の異なる領域について値を計算することによって決定される、界面活性剤が親水性または脂溶性である程度の尺度である。
【0051】
「HLBが10を超える非イオン性界面活性剤」は、HLBが10を超える共通の特徴を有する非イオン性界面活性剤の選択物である。
【0052】
例として、HLBが10を超える界面活性剤の非限定的なリストを、そのHLB値と共に以下に示す。
【0053】
HLBが16.7であるポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(例えば、Tween 20、ポリソルベート20、超精製ポリソルベート20)、
HLBが15であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレアート(例えば、Tween 80、ポリソルベート80、超精製ポリソルベート80)、
HLBが15.6であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート(例えば、Tween 40、ポリソルベート40、超精製ポリソルベート40)、
HLBが11であるジグリセロールカプリレート(ジグリセロールモノカプリレート、ポリグリセロールカプリレート)、
HLBが10であるポリグリセロールカプレート(例えば、Rylo PG10 Pharma)、
HLBが14であるカプリロカプロイルマクロゴールグリセリド(例えば、Labrasol、Labrasol ALF)、
ブロックポリマー(例えば、SYNPERONIC PE/L 44、Poloxamer 124)、
HLBが11.1であるポリオキシエチレンステアレート(例えば、Myrj 45、マクロゴールステアレート)、
HLBが15であるポリオキシエチレンステアレート(例えば、Myrj 49、マクロゴールステアレート)、
HLBが16であるポリオキシエチレンステアレート(例えば、Myrj 51、マクロゴールステアレート)、
HLBが16.9であるポリオキシエチレンステアレート(例えば、Myrj 52、マクロゴールステアレート)、
HLBが17.9であるポリオキシエチレンステアレート(例えば、Myrj 53、マクロゴールステアレート)、
HLBが18.8であるポリオキシエチレンステアレート(例えば、Myrj 59、マクロゴールステアレート)、および
HLBが13.3であるポリオキシエチレングリセロールトリリシノレエート(例えば、Cremophor EL)。
【0054】
本発明に従った液体の非水性医薬組成物において用いることができる、HLBが10を超える液体の非イオン性界面活性剤の例には、限定はしないが、ソルビタン誘導体、例えば、全てUniqemaまたはCrodaから入手可能なTWEEN 20、TWEEN 40、TWEEN 80、SYNPERONIC L44、およびポリオキシル10-オレイルエーテル、ならびにポリオキシエチレン含有界面活性剤、例えば、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(例えば、Gattefosseから入手可能なLabrasolまたはLabrasol ALF)が含まれる。
【0055】
本発明の1つの態様において、HLBが10を超える非イオン性界面活性剤の1つまたは複数は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ブロックコポリマー、およびポロキサマーからなる群から選択され、例えば、BASFのPluronic F127、Pluronic F68、および/またはCrodaのSynperonicである。
【0056】
本発明の1つの態様において、HLBが10を超える非イオン性界面活性剤の1つまたは複数は、ポリオキシエチレン含有界面活性剤、例えば、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(例えば、Gattefosseから入手可能なLabrasolまたはLabrasol ALF)である。
【0057】
本発明の1つの態様において、HLBが10を超える非イオン性界面活性剤の1つまたは複数は、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(例えば、Merck、Uniqema、またはCrodaから入手可能なTween 20)である。本発明のさらなる態様において、HLBが10を超える非イオン性界面活性剤の1つまたは複数は、超精製ポリソルベート、例えば超精製ポリソルベート20、40、60、および80(例えば、Crodaから市販されている)からなる群から選択される。
【0058】
本発明の1つの態様において、HLBが10を超える非イオン性界面活性剤の1つまたは複数は、BASFのCremophor RH40である。
【0059】
本発明の1つの態様において、HLBが10を超える非イオン性界面活性剤の1つまたは複数は、ジグリセロールモノカプリレートまたはジグリセロールカプレート(例えば、Daniscoから入手可能な)である。
【0060】
本発明の1つの態様において、HLBが10を超える非イオン性界面活性剤の2つは、ジグリセロールモノカプリレートおよびポリソルベート20(例えば、Tween 20)である。
【0061】
本発明の態様において、本発明の液体の非水性医薬組成物が、HLBが10を超える2つの非イオン性界面活性剤を含む場合、前記2つの非イオン性界面活性剤は、ジグリセロールモノカプリレートおよびポリソルベート20(例えば、Tween 20)である。
【0062】
本発明の組成物は、担体の組成の重量当たり約30%から約90%の非イオン性界面活性剤を含み得、すなわち、インスリンを添加する前に、担体の重量の約30%から約90%、例えば約40重量%から約85重量%、例えば約50重量%から約85重量%、例えば約60重量%から約85重量%、または例えば約70重量%から約85重量%が、非イオン性界面活性剤からなる。
【0063】
本発明の特定の態様において、医薬組成物は、医薬組成物において一般に見られるさらなる賦形剤を含み得、このような賦形剤の例には、限定はしないが、抗酸化剤、抗微生物剤、酵素阻害剤、安定剤、防腐剤、香料、甘味料、および、参照することによって本明細書に組み込まれるHandbook of Pharmaceutical Excipients, Roweら編、第4版、Pharmaceutical Press (2003)において記載されているような他のコンポーネントが含まれる。
【0064】
これらのさらなる賦形剤は、医薬組成物全体の約0.05〜5重量%の量であり得る。抗酸化剤、抗微生物剤、酵素阻害剤、安定剤、または防腐剤は、典型的には、医薬組成物全体の最大約0.05〜1重量%である。甘味料または香料は、典型的には、医薬組成物全体の最大約2.5重量%または5重量%である。
【0065】
本発明の1つの態様において、組成物はバッファーを含む。用語「バッファー」は、本明細書において用いられる場合、バッファーの不存在下では化学反応に起因して生じる、組成物のpHが経時的に変化する傾向を低減させる、医薬組成物における化学的化合物を言う。バッファーには、リン酸ナトリウム、TRIS、グリシン、およびクエン酸ナトリウムなどの化学物質が含まれる。
【0066】
用語「防腐剤」は、本明細書において用いられる場合、微生物の活性(成長および代謝)を予防するかまたは遅らせるために医薬組成物に添加される化学的化合物を言う。薬学的に許容可能な防腐剤の例は、フェノール、m-クレゾール、およびフェノールとm-クレゾールとの混合物である。
【0067】
用語「安定剤」は、本明細書において用いられる場合、ペプチドを安定化させるため、すなわち、ペプチド含有医薬組成物の保存期間および/または使用期間を増大させるために、このような組成物に添加される化学物質を言う。
【0068】
製造者から得られる本発明に適した非イオン性界面活性剤の質は、前記非イオン性界面活性剤を含む医薬組成物の安定性に影響し得る。例えば、液体の非水性医薬組成物を安定化させる、さらに高い純度の特定の賦形剤が同定されている。したがって、非イオン性界面活性剤が高純度の非イオン性界面活性剤である、液体の非水性医薬組成物が得られることが、本発明の1つの態様である。1つの態様において、高純度の非イオン性界面活性剤は、医薬品グレードで提供元により提供される非イオン性界面活性剤である。1つの態様において、高純度の非イオン性界面活性剤は、超精製されたものとして提供元により提供される非イオン性界面活性剤である。1つの態様において、高純度の非イオン性界面活性剤は、アルデヒドおよび/またはケトンの含有量が20ppm未満の非イオン性界面活性剤である。別の態様において、高純度の非イオン性界面活性剤は、アルデヒドおよび/またはケトンの含有量が10ppm未満の非イオン性界面活性剤である。1つの態様において、非イオン性界面活性剤は、Daniscoのジグリセロールモノカプリレートまたはジグリセロールカプレートからなる群から選択される。別の態様において、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート、例えば、CrodaのTween 20、Tween 80、超精製ポリソルベート20、超精製ポリソルベート80である。
【0069】
用語「油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤」は、本明細書において、油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満であるという共通の特徴を有する界面活性剤の選択物に対して用いられる。
【0070】
油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤の例には、限定はしないが、
HLBが6であるポリグリセロールオレエート(例えば、Plurol Oleique CC497)、
HLBが5から6.5であるポリグリセリル-3オレエート(例えば、Caprol 3GO、Isolan GO33、トリグリセロールモノオレエート)、
HLBが6であるプロピレングリコールモノカプリレート(Capryol 90、Capryol PGMC、Capmul PG)、
HLBが5であるプロピレングリコールモノラウレート(Lauroglycol 90、Lauroglycol FCC)、
HLBが2であるプロピレングリコールジカプリロカプレート(例えば、Labrafac PG)、
HLBが1である中鎖トリグリセリド(すなわち、8から12個の炭素原子、例えば8、10、または12個の炭素原子を有する鎖を有するトリグリセリド)(例えば、Labrafac Lipophile WL1349、Captex 355)、
HLBが4であるグリセリルモノリノレート(例えば、Maisine 35-1)、
HLBが3であるグリセリルモノオエレート(例えば、Peceol)、
HLBが4であるラウロイルマクロゴールグリセリド(例えば、Labrafil M2130CS)、
HLBが4であるリノレオイルマクロゴールグリセリド(例えば、Labrafil M2125CS)、
HLBが4であるオレオイルマクロゴールグリセリド(例えば、Labrafil M1944CS)、
HLBが5〜6である中鎖モノグリセリド、中鎖ジトリグリセリド、および/または中鎖トリグリセリド(すなわち、8から12個の炭素原子、例えば8、10、または12個の炭素原子を有する鎖を有するモノグリセリド、ジグリセリド、および/またはトリグリセリド)(例えば、Capmul MCM)、
プロピレングリコール内のカプリル酸/カプリン酸の混合ジエステル(例えば、Captex 200)、
プロピレングリコールジカプレートエステル(例えば、Captex 100)、ならびに
HLBが6〜7であるグリセロールモノカプレート/カプリレート(例えば、Rylo MG10 Pharma、Rylo MG8 Pharma)
が含まれる。
【0071】
本発明の特定の態様において、医薬組成物は、経口医薬組成物などの医薬組成物で一般に見られるコーティング剤でコーティングされ得る。既知のコーティングには、例えば、糖衣、フィルムコーティング、例えば可塑剤および顔料を含めたポリマーおよび多糖ベースのコーティング、二酸化チタンなどの不透明な材料を含むコーティング、真珠光沢効果を有するコーティング、制御放出コーティング、ならびに腸溶コーティングが含まれる。医薬組成物は、カプセル、例えば、腸溶コーティングされたカプセル、ソフトカプセル、ハードカプセル、または腸溶性ソフトカプセル内に充填され得る。
【0072】
1つの実施形態において、コーティングは、薬剤(インスリン誘導体)が放出される部位を制御するために用いられ得る少なくとも1つの放出調節ポリマーを含む。調節放出ポリマーは、例えばEudragit Application Guidelines、Evonik Industries、第11版、2009年9月において記載されているような、ポリメタクリレートポリマー、例えば、Eudragit(登録商標)という商品名で販売されているポリメタクリレートポリマー(Evonik Rohm GmbH、Darmstadt、Germany)、例えば、Eudragit L30 D55、Eudragit L100-55、Eudragit L100、Eudragit S100、Eudragit S12,5、Eudragit FS30D、Eudragit NE30D、およびその混合物であり得る。
【0073】
本明細書において用いられる場合、用語「マイクロエマルジョン前濃縮物」は、経口的適用後に、水性媒質中、例えば水内または胃腸液内でマイクロエマルジョンまたはナノエマルジョン、例えば、水中油型マイクロエマルジョンまたはナノエマルジョン、膨潤ミセル、ミセル溶液を自然に形成する組成物を意味する。この組成物は、例えば1:5、1:10、1:50、1:100、またはそれを超える希釈で水性媒質中に希釈されると、自己乳化する。
【0074】
「SEDDS」(自己乳化薬剤送達系)は、本明細書において、穏やかな撹拌またはGI管において遭遇する消化運動の条件下で水性媒質に曝されると細かい水中油型エマルジョンを自然に形成する、親水性コンポーネント、界面活性剤、場合によって共界面活性剤、および薬剤の混合物であると定義される。
【0075】
「SMEDDS」(自己マイクロ乳化薬剤送達系)は、本明細書において、穏やかな撹拌またはGI管において遭遇する消化運動の条件下で水性媒質に曝されると水中油型マイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンを迅速に形成する、親水性コンポーネント、界面活性剤、場合によって共界面活性剤、および薬剤の等方性混合物であると定義される。
【0076】
「SNEDDS」(自己ナノ乳化薬剤送達系)は、本明細書において、穏やかな撹拌またはGI管において遭遇する消化運動の条件下で水性媒質に曝されるとナノエマルジョン(例えばPCSによって測定すると直径が20nm未満の液滴サイズ)を迅速に形成する、親水性コンポーネント、HLBが10を超える少なくとも1つの界面活性剤、場合によって共界面活性剤、および薬剤の等方性混合物であると定義される。
【0077】
本明細書において用いられる場合、用語「エマルジョン」は、そのコンポーネントが水性媒質と接触すると自然にまたはほぼ自然に形成される、わずかに不透明な、乳白色の、または不透明なコロイド粗分散体を言う。
【0078】
本明細書において用いられる場合、用語「マイクロエマルジョン」は、そのコンポーネントが水性媒質と接触すると自然にまたはほぼ自然に形成される、澄明なまたは半透明の、わずかに不透明な、乳白色の、透明な、またはほぼ透明なコロイド分散体を言う。
【0079】
マイクロエマルジョンは、熱力学的に安定であり、例えばMALVERN ZETASIZER Nano ZSを用いる標準的な光散乱技術によって測定すると平均直径が150nm未満の、例えば固体状態または液体状態(例えば、液体脂質の粒子または液滴)の、均一に分散した粒子またはドメインを含有する。1つの態様において、本発明に従った医薬組成物が水性媒質と接触すると、平均直径が100nm未満の、例えば50nm未満の、40nm未満の、および30nm未満の均一に分散した粒子またはドメインを含有するマイクロエマルジョンが形成される。
【0080】
用語「ドメインサイズ」は、本明細書において用いられる場合、反復散乱単位(repetitive scattering units)を言い、例えば小角X線によって測定され得る。本発明の1つの態様において、ドメインサイズは150nmよりも小さく、別の態様においては100nmよりも小さく、別の態様においては50nmよりも小さく、別の態様においては20nmよりも小さく、別の態様においては15nmよりも小さく、さらに別の態様においては10nmよりも小さい。
【0081】
本明細書において用いられる場合、用語「ナノエマルジョン」は、そのコンポーネントが水性媒質と接触すると自然にまたはほぼ自然に形成される、粒子または液滴のサイズが直径で20nm未満である(例えば、PCSによって測定すると)、澄明なもしくは半透明の、わずかに不透明な、乳白色の、透明な、またはほぼ透明なコロイド分散体を言う。1つの態様において、本発明に従った医薬組成物が水性媒質と接触すると、平均直径が20nm未満であり、例えば15nm未満、10nm未満であり、かつ約2〜4nmを超える、均一に分散した粒子またはドメインを含有する、マイクロエマルジョンが形成される。
【0082】
1つの態様において、本発明の医薬組成物は、水性媒質と接触すると、光子相関分光法(PCS)によって測定すると直径が100nm未満のドメインを有するマイクロエマルジョンを形成する。PCSはまた、動的光散乱(DLS)としても知られている。ブラウン運動によって生じる、粒子の秩序近傍(near-order)の時間減衰は、ストークス・アインシュタインの関係を介するナノ粒子のサイズの評価に用いられる。一定温度Tでは、この方法には、平均粒子サイズおよびその分布関数(および体積分率では、屈折率n)を推定するために、懸濁流体の粘度hのみが分かっていればよい。
【0083】
1つの態様において、本発明に従った医薬組成物が水性媒質と接触すると、ナノエマルジョンが形成される。
【0084】
本明細書において用いられる場合、用語「自然に分散性の」は、前濃縮物について言及される場合、本発明の組成物のコンポーネントが水性媒質と接触した場合に、例えば手による短時間の、例えば10秒間の単純な振とうによって、水性媒質で希釈されると、ナノエマルジョン、マイクロエマルジョン、エマルジョン、および他のコロイド系などのコロイド構造をもたらし得る組成物を言う。1つの態様において、本発明に従った自然に分散性の濃縮物は、SEDDS、SMEDDS、またはSNEDDSである。
【0085】
本発明に従った医薬組成物は、液体形態である。
【0086】
本明細書において用いられる場合、用語「液体」は、室温(「RT」)で液体状態にあり、例えば20℃未満の融点を有する、コンポーネントまたは組成物を意味する。本明細書において用いられる場合、室温(RT)はおよそ20〜25℃を意味する。
【0087】
1つの態様において、本発明に従った液体の非水性医薬組成物は、約4℃などの冷蔵温度で液体形態である。
【0088】
用語「約」は、本明細書において用いられる場合、記載された数値の、プラスまたはマイナス10%などの妥当な近似にあることを意味する。
【0089】
本発明の液体の非水性医薬組成物は、物理的におよび化学的に安定であり、すなわち、前記組成物の保存期間は薬剤組成物として適切であるために十分であり、したがって医薬組成物は常温保存可能である。
【0090】
用語「常温保存可能な医薬組成物」は、本明細書において用いられる場合、少なくとも、治療用タンパク質に関連する規制当局によって必要とされる期間にわたり安定である医薬組成物を意味する。好ましくは、常温保存可能な医薬組成物は、5℃で少なくとも1年にわたり安定である。貯蔵性には、化学的安定性および物理的安定性が含まれる。化学的不安定性は、共有結合の分解、例えば加水分解、ラセミ化、酸化、または架橋を伴う。製剤の化学的安定性は、逆相(RP-HPLC)クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって評価される。本発明の1つの態様において、保存期間の間のペプチドに関連する不純物の形成は、総ペプチド含有量の20%未満である。本発明のさらなる態様において、保存期間の間のペプチドに関連する不純物の形成は、10%未満である。本発明のさらなる態様において、保存期間の間のペプチドに関連する不純物の形成は、5%未満である。RP-HPLC分析は、典型的には、水-アセトニトリル混合物または水-エタノール混合物において行われる。1つの態様において、RP-HPLCステップにおける溶媒は、塩、例えばNa2SO4、(NH4)2SO4、NaCl、KCl、ならびにバッファー系、例えばホスフェートおよびシトレートおよびマレイン酸を含む。溶媒中の塩の所要の濃度は、約0.1Mから約1M、好ましくは0.2Mから0.5Mの間、最も好ましくは0.3から0.4Mの間であり得る。適切な時間内にカラムからの溶出を達成するためには、塩濃度の増大には、有機溶媒の濃度の増大が必要である。物理的不安定性は、非変性構造に対する立体構造の変化を伴い、これには、高次構造の喪失、凝集、フィブリル化、沈殿、または表面への吸着が含まれる。インスリンペプチドなどのペプチド、GLP-1化合物、およびアミリン化合物は、フィブリル化に起因して不安定となりやすいことが知られている。製剤の物理的安定性は、例えば異なる温度で様々な時間にわたり製剤を保存した後の目視検査および比濁法の、従来の手段によって評価することができる。立体構造の安定性は、例えば、Hudson and Andersen、Peptide Science、第76巻(4)、298〜308頁(2004)によって記載されているように、円二色性およびNMRによって評価することができる。
【0091】
インスリンペプチドの生物学的活性は、例えばWO2005/012347において記載されているような、当業者によって知られているアッセイで測定することができる。
【0092】
本発明の1つの態様において、本発明に従った医薬組成物は、6週間を超える使用にわたり、および3年間を超える保存にわたり安定である。
【0093】
本発明の別の態様において、本発明に従った医薬組成物は、4週間を超える使用にわたり、および3年間を超える保存にわたり安定である。
【0094】
本発明のさらなる態様において、本発明に従った医薬組成物は、4週間を超える使用にわたり、および2年間を超える保存にわたり安定である。
【0095】
本発明のさらなる態様において、本発明に従った医薬組成物は、2週間を超える使用にわたり、および2年間を超える保存にわたり安定である。
【0096】
本発明のさらなる態様において、本発明に従った医薬組成物は、1週間を超える使用にわたり、および1年間を超える保存にわたり安定である。
【0097】
1つの態様において、本発明に従った医薬組成物は、高血糖、2型糖尿病、耐糖能異常、および1型糖尿病を治療または予防するための薬剤を調製するために用いられる。
【0098】
本明細書において用いられる「インスリンペプチド」、「1つの(an)インスリンペプチド」、または「その(the)インスリンペプチド」は、CysA7とCysB7との間、およびCysA20とCysB19との間のジスルフィド架橋、ならびにCysA6とCysA11との間の内部ジスルフィド架橋を有するヒトインスリン、またはそのインスリン類似体もしくはインスリン誘導体を意味する。
【0099】
ヒトインスリンは、2つのポリペプチド鎖、すなわちそれぞれ21個および30個のアミノ酸残基を含有するA鎖およびB鎖からなる。A鎖およびB鎖は、2つのジスルフィド架橋によって相互に連結している。ほとんどの他の種のインスリンは類似であるが、いくつかの位置にアミノ酸置換を含有し得る。
【0100】
本明細書において用いられるインスリン類似体は、天然のインスリンにおいて生じる少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/もしくは置換による、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加による、天然のインスリンの構造、例えばヒトインスリンの構造に形式的に由来し得る分子構造を有するポリペプチドである。
【0101】
1つの態様において、本発明に従ったインスリン類似体は、ヒトインスリンと比較して8個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。1つの態様において、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比較して7個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。1つの態様において、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比較して6個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比較して5個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比較して4個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比較して3個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比較して2個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。
【0102】
本発明に従ったインスリン誘導体は、天然のインスリンであるか、あるいは、例えば、インスリン骨格の1つまたは複数の位置に側鎖を導入することによって、またはインスリンにおけるアミノ酸残基の基を酸化もしくは還元することによって、または遊離カルボキシル基をエステル基もしくはアミド基に変換することによって化学的に修飾されているインスリン類似体である。他の誘導体は、ヒトインスリンのB29位またはヒトインスリンのdesB30位などにある遊離アミノ基またはヒドロキシル基をアシル化することによって得られる。
【0103】
インスリン誘導体は、したがって、少なくとも1つの共有結合性の修飾、例えばインスリンペプチドの1つまたは複数のアミノ酸に付いた側鎖を含む、ヒトインスリンまたはインスリン類似体である。
【0104】
本明細書において、インスリンペプチドの命名は、以下の原則に従って行われる:名称は、ヒトインスリンと比較した突然変異および修飾(アシル化)として付与される。「desB30ヒトインスリン」は、したがって、B30アミノ酸残基を欠く、ヒトインスリンの類似体を意味する。同様に、「desB29desB30ヒトインスリン」は、B29およびB30アミノ酸残基を欠く、ヒトインスリンの類似体を意味する。「B1」、「A1」などは、それぞれ、インスリンのB鎖における1位のアミノ酸残基(N末端から数えて)およびインスリンのA鎖における1位のアミノ酸残基(N末端から数えて)を意味する。特定の位置におけるアミノ酸残基はまた、例えばPheB1として示され得、これは、B1位のアミノ酸残基がフェニルアラニン残基であることを意味する。
【0105】
1つの態様において、本発明の医薬組成物において用いるためのインスリン誘導体は、アミド結合を介して、インスリンペプチドのB鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基、またはB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基に付いた側鎖を有する。
【0106】
1つの態様において、側鎖は、少なくとも1つのOEG基を含む。1つの態様において、側鎖は、4から22個の炭素原子を有する脂肪二酸部分を含む。1つの態様において、側鎖は、少なくとも1つの遊離カルボン酸基または中性pHで負に荷電する基を含む。1つの態様において、側鎖は、側鎖における個別のコンポーネントを、アミド結合、エーテル結合、またはアミン結合を介して互いに連結する、少なくとも1つのリンカーを含み、前記リンカーは、場合によって、遊離カルボン酸基を含む。
【0107】
1つの態様において、側鎖は、少なくとも1つのOEG基、4から22個の炭素原子を有する脂肪二酸部分、少なくとも1つの遊離カルボン酸基、または中性pHで負に荷電する基、および場合によって、側鎖における個別のコンポーネントを、アミド結合、エーテル結合、またはアミン結合を介して互いに連結する、少なくとも1つのリンカーを含み、前記リンカーは、場合によって、遊離カルボン酸基を含む。
【0108】
本発明の1つの態様において、側鎖は、1から20個のOEG基、1から10個のOEG基、または1から5個のOEG基を含む。
【0109】
1つの態様において、本発明に従った非水性医薬組成物におけるインスリン誘導体は、インスリンペプチドの1つまたは複数のアミノ酸においてアシル化されたインスリンペプチドである。
【0110】
1つの態様において、本発明に従った非水性医薬組成物におけるインスリン誘導体は、インスリンペプチドのB鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基、および/またはB鎖に存在する1つもしくは複数のLys残基のε-アミノ基へのアミド結合を介してアシル化されているインスリンペプチドである。
【0111】
アシル部分の命名については、命名はIUPAC命名法に従って行われ、他のケースではペプチド命名法として行われる。例えば、アシル部分
【0112】
【化1】
【0113】
の命名は、例えば、「オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG」または「17-カルボキシヘプタデカノイル-γ-L-Glu-OEG-OEG」であり得、ここでOEGは-NH(CH2)2O(CH2)2OCH2CO-の略記法であり、γ-L-Glu(またはg-L-Glu)はアミノ酸のガンマグルタミン酸部分のL形態の略記法である。
【0114】
修飾されたペプチドまたはタンパク質のアシル部分は、キラルアミノ酸部分の立体構造がDもしくはL(または、R/S用語を用いる場合にはRまたはS)である純粋なエナンチオマーの形態であり得るか、またはエナンチオマーの混合物の形態(DおよびL/RおよびS)であり得る。本発明の1つの態様において、アシル部分は、エナンチオマーの混合物の形態である。1つの態様において、アシル部分は、純粋なエナンチオマーの形態である。1つの態様において、アシル部分のキラルアミノ酸部分は、L形態である。1つの態様において、アシル部分のキラルアミノ酸部分は、D形態である。
【0115】
1つの態様において、本発明に従った非水性医薬組成物におけるインスリン誘導体は、タンパク質分解性の分解に対して安定化され(特異的な突然変異による)、かつB29-リジンでさらにアシル化された、インスリンペプチドである。タンパク質分解性の分解に対して安定化された(特異的な突然変異による)インスリンペプチドの非限定的な例は、例えば、参照することによって本明細書に組み込まれるWO2008/034881において見ることができる。
【0116】
本発明のアシル化されたインスリンペプチドは、モノ置換されていてよく、プロテアーゼ安定化されたインスリン分子におけるリジンアミノ酸残基に付いたただ1つのアシル化基を有する。
【0117】
1つの態様において、インスリンペプチドは、インスリンペプチドのB鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基、またはB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基に対してアシル化されている。1つの態様において、インスリンペプチドは、インスリンペプチドのB29位に存在するLys残基のε-アミノ基に対してアシル化されている。
【0118】
本発明の液体の非水性医薬組成物に適したアシル化されたインスリンペプチドの非限定的なリストは、例えば、WO2009/115469の、第25頁で始まりその後6頁続く一節において見ることができる。
【0119】
1つの態様において、本発明に従った非水性の液体の医薬組成物におけるインスリン誘導体は、WO2009/115469において見られるアシル化されたインスリン、例えば、WO2009/115469の請求項8において列挙されるアシル化されたインスリンである。
【0120】
本発明の1つの態様において、アシル化されたインスリンペプチドは、
B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB27 desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB27 desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、および
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル)A14E B25H desB30ヒトインスリン
からなる群から選択される。
【0121】
本発明の別の態様において、インスリン誘導体は、B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンである。
【0122】
インスリンペプチドは、医薬組成物全体の最大約20重量%、例えば最大約10重量%の量で、または約0.1重量%から、例えば約1重量%から存在し得る。本発明の1つの態様において、インスリンペプチドは、組成物全体の約0.1重量%から約20重量%の量で、さらなる態様においては約0.1重量%から15重量%、0.1重量%から10重量%、1重量%から8重量%、または約1重量%から5重量%の量で存在する。しかし、インスリンペプチドの特定のレベルの選択は、極性有機溶媒におけるインスリンペプチドの溶解度、または用いられる最適な親水性コンポーネントもしくは界面活性剤、またはその組み合わせ、投与態様、ならびに患者のサイズおよび状態を含めた、薬学分野で周知の因子に従って行われる。
【0123】
各単位投与量は、1mgから200mgのインスリンペプチド、例えば、約1mg、2mg、5mg、10mg、15mg、25mg、50mg、80mg、90mg、100mg、150mg、200mgのインスリンペプチド、例えば、5mgから200mgの間のインスリンペプチドを適切に含有する。本発明の1つの態様において、各単位投与量は、10mgから200mgの間のインスリンペプチドを含有する。さらなる態様において、単位投与形態は、10mgから100mgの間のインスリンペプチドを含有する。本発明のさらなる態様において、単位投与形態は、20mgから80mgの間のインスリンペプチドを含有する。本発明のさらなる態様において、単位投与形態は、30mgから60mgの間のインスリンペプチドを含有する。本発明のさらなる態様において、単位投与形態は、30mgから50mgの間のインスリンペプチドを含有する。このような単位投与形態は、特定の治療目的に応じる毎日1〜5回の投与に適している。
【0124】
インスリンなどのポリペプチドおよびペプチドの生産は、当技術分野において周知である。ポリペプチドまたはペプチドは、例えば、従来のペプチド合成、例えば、t-Boc化学またはFmoc化学または他の良く確立された技術を用いる固相ペプチド合成によって生産され得る。例えば、Greene and Wuts、「Protective Groups in Organic synthesys」、John Wiley & Sons、1999を参照されたい。ポリペプチドまたはペプチドはまた、(ポリ)ペプチドをコードするDNA配列を含有しペプチドの発現を可能にする条件下で適切な栄養培地において(ポリ)ペプチドを発現し得る宿主細胞を培養することを含む方法によって生産され得る。非天然アミノ酸残基を含む(ポリ)ペプチドでは、組換え細胞は、例えばtRNA突然変異体を用いることによって非天然アミノ酸が(ポリ)ペプチド内に組み込まれるように修飾されるべきである。
【0125】
さらなる態様において、本発明は、インスリンペプチドを含有するSEDDS、SMEDDS、またはSNEDDS(腸溶コーティングされたカプセル、ソフトカプセル、または腸溶性ソフトカプセルなどのカプセル内に充填され得る)などの医薬組成物を調製するためのプロセスを提供し、このプロセスは、以下のステップを含む:
(a)まず、インスリンペプチドを極性有機溶媒(プロピレングリコールなど)に溶解するステップ、および
(b)次に、非イオン性界面活性剤と場合によってさらなるコンポーネントとを混合するステップ。
【0126】
本発明の1つの態様において、医薬組成物を調製するためのプロセスは、低温(例えば、室温または室温未満)で実施される。
【0127】
本発明に従った医薬組成物を調製する場合、インスリンペプチドは、例えば、以下の方法を用いて極性有機溶媒に溶解され得る:
a)場合によって賦形剤を含むインスリンペプチドの水溶液を提供すること、
b)pH値を、インスリンペプチドのpIの1単位あるいは2単位あるいは2.5pH単位上または下である標的pH値に調整すること、
c)凍結乾燥または噴霧乾燥などの従来の乾燥技術によってインスリンペプチドから水を除去すること(脱水すること)、ならびに
d)例えば撹拌すること、回転させること、または他の混合方法によって、インスリンペプチドを前記極性非水性溶媒内に混合および溶解すること、
e)場合によって、非水性インスリンペプチド溶液を濾過または遠心分離して、溶解していない無機塩を除去すること、
f)場合によって、例えば固体乾燥剤を添加することまたは真空乾燥によって、残留量の水を除去すること。
【0128】
1つの態様において、インスリンペプチドは、以下の方法によって極性有機溶媒内に溶解される:
a)場合によって亜鉛およびグリシルグリシンなどの安定剤を含有するインスリンペプチドの水溶液を提供すること、
b)例えば、塩酸または水酸化ナトリウムなどの不揮発性の塩基または酸を溶液に添加することによって、pH値を、インスリンペプチドのpIの1単位あるいは2単位あるいは2.5pH単位上または下に調整すること、
c)凍結乾燥および噴霧乾燥などの従来の乾燥技術によってインスリンペプチドから水を除去すること(脱水すること)、
d)例えば撹拌すること、回転させること、または他の混合方法によって、インスリンペプチドを前記極性非水性溶媒内に混合および溶解すること、
e)場合によって、非水性インスリンペプチド溶液を濾過または遠心分離して、溶解していない無機塩を除去すること、
f)場合によって、例えば固体乾燥剤を添加することまたは真空乾燥によって、残留量の水を除去すること。
【0129】
「揮発性の塩基」は、加熱の際におよび/または減圧下である程度蒸発する塩基、例えば、室温で蒸気圧が65Paを超える塩基、または室温で蒸気圧が65Paを超える塩基を含めた水性共沸混合物を意味する。揮発性の塩基の例は、水酸化アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、第二級アミン、第三級アミン、アリールアミン、脂肪族アミン、または重炭酸アンモニウム、または組み合わせである。例えば、揮発性の塩基は、重炭酸塩、炭酸塩、アンモニア、ヒドラジン、または有機塩基、例えば低級脂肪族アミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、およびそれらの塩であり得る。さらに、揮発性の塩基は、水酸化アンモニウム、エチルアミン、またはメチルアミン、またはその組み合わせであり得る。
【0130】
「揮発性の酸」は、加熱の際におよび/または減圧下である程度蒸発する酸、例えば、室温で蒸気圧が65Paを超える酸、または室温で蒸気圧が65Paを超える酸を含めた水性共沸混合物を意味する。揮発性の酸の例は、炭酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、および酪酸である。
【0131】
本明細書において言及される「不揮発性の塩基」は、加熱の際に蒸発しないかまたは部分的にのみ蒸発する塩基、例えば、室温で蒸気圧が65Pa未満の塩基を意味する。不揮発性の塩基は、アルカリ金属の塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の塩、アルカリ土類金属の水酸化物、およびアミノ酸、またはこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。不揮発性の塩基の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、および酸化カルシウムである。
【0132】
本明細書において言及される「不揮発性の酸」は、加熱の際に蒸発しないかまたは部分的にのみ蒸発する酸、例えば、室温で蒸気圧が65Pa未満の酸を意味する。不揮発性の酸の例は、塩酸、リン酸、および硫酸である。
【0133】
1つの態様において、本発明に従ったインスリンペプチドは、プロピレングリコールにおいて可溶性である。別の態様において、本発明に従ったインスリンペプチドは、少なくとも20%w/wのインスリンペプチドを含むプロピレングリコール溶液において可溶性である。本発明のさらに別の態様において、本発明に従ったインスリンペプチドは、少なくとも30%w/wのインスリンペプチドを含むプロピレングリコール溶液において可溶性である。
【0134】
本発明の1つの態様において、インスリンペプチドは、極性有機溶媒における溶解度を向上させるために、極性有機溶媒に溶解する前にpHを最適化される。
【0135】
用語「pHを最適化される」を用いる場合、これは、本明細書において、インスリンペプチドが、水溶液におけるインスリンペプチドのpIから少なくとも1pH単位である標的pHで脱水されていることを意味する。したがって、本発明の1つの態様において、標的pHは、インスリンペプチドの等電点の1pH単位超上である。本発明の別の態様において、標的pHは、インスリンペプチドの等電点の1pH単位超下である。さらなる態様において、標的pHは、インスリンペプチドのpIの1.5pH単位超上または下である。さらなる態様において、標的pHは、インスリンペプチドのpIの2.0pH単位以上上または下である。さらなる態様において、標的pHは、インスリンペプチドのpIの2.5pH単位以上上または下である。さらなる態様において、標的pHは、インスリンペプチドのpIよりも上である。
【0136】
用語「脱水された」は、インスリンペプチドに関して本明細書において用いられる場合、水溶液から乾燥されたインスリンペプチドを言う。用語「標的pH」は、本明細書において用いられる場合、脱水されたインスリンペプチドがおよそ40mg/ml以上の濃度まで純水内に再水和される場合に確立する水性pHを言う。標的pHは、典型的には、インスリンペプチドが乾燥によって除去された元である水性インスリンペプチド溶液のpHに同一である。しかし、溶液が揮発性の酸または塩基を含有する場合には、インスリンペプチド溶液のpHは標的pHに同一ではない。インスリンペプチドのpHの変遷が、極性有機溶媒内に可溶化され得るインスリンペプチドの量の決定要因となることが明らかにされている。
【0137】
用語「インスリンペプチドのpI」は、本明細書において用いられる場合、インスリンペプチドの等電点を言う。
【0138】
用語「等電点」は、本明細書において用いられる場合、ペプチドなどの高分子の総正味荷電がゼロであるpH値を意味する。ペプチドでは、いくつかの荷電基が存在し得、等電点では、全てのこれらの荷電の合計はゼロである。等電点を超えるpHでは、ペプチドの総正味荷電は負となり、一方、等電点未満のpH値では、ペプチドの総正味荷電は正となる。
【0139】
タンパク質のpIは、等電点電気泳動などの電気泳動技術によって、実験的に決定され得る。
【0140】
pH勾配は、ポリアクリルアミドゲルなどの抗対流(anticonvective)媒質において確立される。ペプチドが系に導入されると、ペプチドは、ゲル全体に印加された電界の影響下で移動する。正に荷電したペプチドは、陰極に移動する。最終的には、移動しているペプチドは、その正味荷電がゼロであるpH勾配内の点に達し、フォーカスされたと言われる。これは、ペプチドの等電pH(pI)である。ペプチドは、次に、ゲル上で固定され、染色される。ペプチドのpIが次に、既知のpI値を有するマーカー分子と比較したゲル上のペプチドの位置の比較によって決定され得る。
【0141】
所与のpH値でのペプチドの正味荷電は、従来の方法によって当業者によって理論的に確立され得る。本質的には、ペプチドの正味荷電は、ペプチド、すなわちアスパラギン酸(β-カルボキシル基)、グルタミン酸(δ-カルボキシル基)、システイン(チオール基)、チロシン(フェノール基)、ヒスチジン(イミダゾール側鎖)、リジン(ε-アンモニウム基)、およびアルギニン(グアニジウム基)における荷電したアミノ酸の分数電荷の合計に等しい。さらに、ペプチド末端基(α-NH2およびα-COOH)の荷電も考慮に入れるべきである。イオン性基の分数電荷は、固有のpKa値から計算され得る。
【0142】
インスリンペプチドの乾燥、すなわち脱水は、任意の従来の乾燥方法によって、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、日光乾燥、および接触乾燥によって行うことができる。本発明の1つの態様において、インスリンペプチド溶液は、約10%未満の水分含有量を得るように乾燥される。水分含有量は、実験部分で述べるように、乾燥試験での損失を元に計算すると/乾燥試験での損失によって測定すると(重量的に)、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満であり得る。
【0143】
本発明の1つの態様において、インスリンペプチドは噴霧乾燥される。本発明のさらなる態様において、インスリンペプチドは凍結乾燥される。
【0144】
以下は、本発明の範囲内にさらに包含される態様の非限定的なリストである。
【0145】
1.少なくとも1つのインスリンペプチド、少なくとも1つの半極性のプロトン性有機溶媒、およびHLBが10を超える少なくとも2つの非イオン性界面活性剤を含む、液体医薬組成物。
【0146】
2.油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤を含有しない、態様1に記載の医薬組成物。
【0147】
3. 10%w/w未満の水を含む、態様1または2に記載の医薬組成物。
【0148】
4.非水性である、態様1〜3のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0149】
5.残りの成分が界面活性剤以外の賦形剤である、態様1または3〜4のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0150】
6.水性媒質中に希釈された後にマイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンを形成する、態様1〜5のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0151】
7.水性媒質中に100倍希釈された後に直径が100nm未満の液滴サイズを有するエマルジョンを形成する、態様1〜6のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0152】
8.液滴サイズが動的光散乱によって分析される、態様6または7に記載の医薬組成物。
【0153】
9.油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが8未満の界面活性剤を含有しない、態様1〜8のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0154】
10.油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが9未満の界面活性剤を含有しない、態様1〜9のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0155】
11.油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが10未満の界面活性剤を含有しない、態様1〜10のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0156】
12.前記少なくとも2つの非イオン性界面活性剤が、11を超えるHLBを有する、態様1〜11のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0157】
13.前記少なくとも2つの非イオン性界面活性剤が、12を超えるHLBを有する、態様1〜12のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0158】
14.HLBが10を超える、あるいはHLBが11を超える、あるいはHLBが12を超える少なくとも3つの非イオン性界面活性剤を含む、態様1〜13のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0159】
15.HLBが10を超える、あるいはHLBが11を超える、あるいはHLBが12を超える2つまたは3つの非イオン性界面活性剤を含む、態様1〜14のいずれか1つに記載の医薬組成物であって、残りの成分が界面活性剤以外の賦形剤である医薬組成物。
【0160】
16.HLBが10を超える、あるいはHLBが11を超える、あるいはHLBが12を超える2つの非イオン性界面活性剤を含む、態様15に記載の医薬組成物であって、残りの成分が界面活性剤以外の賦形剤である医薬組成物。
【0161】
17.HLBが10を超える、あるいはHLBが11を超える、あるいはHLBが12を超える3つの非イオン性界面活性剤を含む、態様15に記載の医薬組成物であって、残りの成分が界面活性剤以外の賦形剤である医薬組成物。
【0162】
18.半極性のプロトン性有機溶媒が、比誘電率が20〜50の範囲のプロトン性溶媒である、態様1〜17のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0163】
19.半極性のプロトン性有機溶媒がポリオールである、態様1〜18のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0164】
20.半極性のプロトン性有機溶媒がグリセロールまたはプロピレングリコールである、態様1〜19のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0165】
21.半極性のプロトン性有機溶媒がプロピレングリコールである、態様1〜20のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0166】
22.前記非イオン性界面活性剤が室温で液体である、態様1〜21のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0167】
23.溶液の形態である、態様1〜22のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0168】
24.前記非イオン性界面活性剤が16から20個の炭素原子を有するいかなる長鎖脂肪酸基(例えば、遊離長鎖脂肪酸または長鎖脂肪酸エステル)も含まない、態様1〜23のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0169】
25.前記非イオン性界面活性剤の1つまたは複数が中鎖脂肪酸基を含む、態様1〜24のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0170】
26.前記非イオン性界面活性剤の1つまたは複数が最大12個の炭素原子を有する脂肪酸基を含む、態様1〜25のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0171】
27.中鎖脂肪酸基が6から12個の炭素原子を有する、態様25に記載の医薬組成物。
【0172】
28.中鎖脂肪酸基が8から12個の炭素原子を有する、態様25または27に記載の医薬組成物。
【0173】
29.中鎖脂肪酸基が、C8脂肪酸(カプリレート)、C10脂肪酸(カプレート)、またはC12脂肪酸(ラウレート)からなる群から選択される、態様25、27、または28に記載の医薬組成物。
【0174】
30.前記非イオン性界面活性剤の1つまたは複数が、Labrasol(カプリロカプロイルマクロゴールグリセリドとも名付けられている)、Tween 20(ポリソルベート20またはポリエチレングリコールソルビタンモノラウレートとも名付けられている)、Tween 80(ポリソルベート80とも名付けられている)、ジグリセロールモノカプリレート、ポリグリセロールカプリレート、およびCremophor RH40からなる群から選択される、態様1〜29のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0175】
31.前記非イオン性界面活性剤が、Tween 20、Tween 80、ジグリセロールモノカプリレート、およびポリグリセロールカプリレートからなる群から選択される、態様1〜30のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0176】
32.前記非イオン性界面活性剤の1つがジグリセロールモノカプリレートである、態様1〜31のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0177】
33.半極性のプロトン性有機溶媒が約1%から約15%の量で存在する、態様1〜32のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0178】
34.半極性のプロトン性有機溶媒が約5%から約15%の量で存在する、態様1〜33のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0179】
35.半極性のプロトン性有機溶媒が約10%から約15%の量で存在する、態様1〜34のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0180】
36. 5%w/w未満の水を含む、態様1〜3または5〜36のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0181】
37. 2%w/w未満の水を含む、態様36に記載の医薬組成物。
【0182】
38. 1%w/w未満の水を含む、態様37に記載の医薬組成物。
【0183】
39.インスリンペプチドがインスリン誘導体である、態様1〜38のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0184】
40.インスリン誘導体が、アシル化されたインスリンペプチドである、態様1〜39のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0185】
41.インスリン誘導体が、1つまたは複数の位置で誘導体化されているプロテアーゼ安定化されたインスリンである、態様1〜40のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0186】
42.インスリン誘導体が、1つまたは複数の位置でアシル化されているプロテアーゼ安定化されたインスリンである、態様1〜41のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0187】
43.インスリン誘導体が、モノ置換されており、インスリン分子内のリジンアミノ酸残基に付いているただ1つのアシル化基を有する、態様1〜42のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0188】
44.インスリンペプチドが、インスリンペプチドのB鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基またはB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基に対してアシル化されている、態様1〜43のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0189】
45.インスリンペプチドが、インスリンペプチドのB29位に存在するLys残基のε-アミノ基に対してアシル化されている、態様1〜44のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0190】
46.インスリン誘導体が、プロテアーゼ安定化されたインスリンに付いたアシル部分を有するプロテアーゼ安定化されたインスリンであり、アシル部分が一般式:
Acy-AA1n-AA2m-AA3p- (I)
を有し、
式中、nは、0または1から3の範囲の整数であり、
mは、0または1から10の範囲の整数であり、
pは、0または1から10の範囲の整数であり、
Acyは、約8から約24個の炭素原子を含む脂肪酸または脂肪二酸であり、
AA1は、中性の線形または環状のアミノ酸残基であり、
AA2は、酸性アミノ酸残基であり、
AA3は、中性のアルキレングリコール含有アミノ酸残基であり、
かつ、式においてAA1、AA2、およびAA3が出現する順序が、独立して入れ替え可能であり得る、態様39〜45のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0191】
47.nが0である、態様46に記載の医薬組成物。
【0192】
48.mが1から10の範囲の整数、例えば1から5、例えば1である、態様46または47に記載の医薬組成物。
【0193】
49.pが1から10の範囲の整数、例えば1から5、1から4、1から3、1、または2である、態様46〜48のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0194】
50.AA3がOEGである、態様46〜49のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0195】
51.インスリン誘導体が、
B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン、B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB27 desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB27 desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、および
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル)A14E B25H desB30ヒトインスリン
からなる群から選択される、態様39〜50のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0196】
52.インスリン誘導体がプロピレングリコールにおいて可溶性である、態様1〜51のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0197】
53.インスリン誘導体が、少なくとも20%w/wのインスリン誘導体を含むプロピレングリコール溶液において可溶性である、態様1〜52のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0198】
54.インスリン誘導体が、少なくとも30%w/wのインスリン誘導体を含むプロピレングリコール溶液において可溶性である、態様1〜53のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0199】
55.インスリンペプチドがSMEDDSまたはSNEDDS内に溶解している、態様1〜54のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0200】
56.PCSによって測定した場合に直径が100nm未満のドメインを有するマイクロエマルジョンを形成する、態様1〜55のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0201】
57.PCSによって測定した場合に直径が50nm未満のドメインを有するマイクロエマルジョンを形成する、態様1〜56のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0202】
58.PCSによって測定した場合に直径が40nm未満のドメインを有するマイクロエマルジョンを形成する、態様1〜57のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0203】
59.PCSによって測定した場合に直径が30nm未満のドメインを有するマイクロエマルジョンを形成する、態様1〜58のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0204】
60.PCSによって測定した場合に直径が20nm未満のドメインを有するナノエマルジョンを形成する、態様1〜59のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0205】
61.PCSによって測定した場合に直径が15nm未満のドメインを有するナノエマルジョンを形成する、態様1〜60のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0206】
62.それぞれの他の賦形剤が、10を超える、あるいは11を超える、あるいは12を超えるHLBを有する、態様1〜61のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0207】
63.エチレンジアミンなどのアルデヒドスカベンジャーをさらに含む、態様1〜62のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0208】
64.ソフトカプセルまたはハードカプセルなどのカプセル内に封入された、態様1〜63のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0209】
65.ハードカプセルまたはソフトカプセルが腸溶コーティングされている、態様64に記載の医薬組成物。
【0210】
66.態様1〜65のいずれか1つに記載の医薬組成物を生産する方法。
【0211】
67.(a)インスリン誘導体を極性有機溶媒に溶解するステップ、および
(b)次に、脂溶性コンポーネントと場合によって界面活性剤および/または親水性コンポーネントとを混合するステップ
を含む、態様1〜66のいずれか1つに記載の医薬組成物を生産する方法。
【0212】
68.a)インスリンを、水溶液におけるポリペプチドのpIから少なくとも1pH単位である標的pHで脱水するステップ、
b)脱水されたインスリンを、半極性のプロトン性溶媒に溶解するステップ、
c)HLBが10を超える少なくとも2つの非イオン性界面活性剤を、撹拌下で共にまたは段階的に添加するステップ、
d)液体製剤をソフトカプセル内に封入する、またはハードカプセル内に充填するステップ、
e)ソフトカプセルまたはハードカプセルを最適に腸溶コーティングするステップ
を含む、態様1〜67のいずれか1つに記載の医薬組成物を生産する方法。
【0213】
69.薬剤として用いるための、態様1〜65のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0214】
70.高血糖の治療における薬剤として用いるための、態様1〜65のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0215】
71.効果的な量の、態様1〜65のいずれか1つにおいて規定される医薬組成物を経口投与することを含む、高血糖を治療するための方法。
【0216】
(実施例)
インスリンの液体非水性医薬組成物の調製:
25mgのインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンをMilliQ水に溶解し、pHをNaOHで調整して、7から8のpHを得た。次のステップにおいて、溶液を凍結および凍結乾燥して中性のインスリン粉末を得、これを次に、RTでの穏やかな撹拌下および窒素下で、150mgのプロピレングリコールに溶解した。完全に溶解した後、550mgのジグリセロールカプリレートを、RTでの穏やかな撹拌下および窒素下で添加した。最終ステップにおいて、300mgのポリソルベート20(Tween 20)を、RTでの穏やかな撹拌下および窒素下で添加した。最終液体組成物は、澄明で、均質であった。
【0217】
同様に、インスリンの液体非水性医薬組成物を他の成分を用いて調製した。
【0218】
(実施例1)
インスリン誘導体、プロピレングリコール、Tween 20、Labrasol ALF、およびジグリセロールカプリレートを含む、液体の非水性医薬組成物。
麻酔した、一晩絶食させたSprague-Dawleyラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、Tween 20、Labrasol ALF、およびジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを作成した。インスリン誘導体をまずプロピレングリコールに溶解し、その後、一致する量の界面活性剤Tween 20、ジグリセロールカプリレート、およびLabrasol ALFを添加および混合して、均一な液体製剤を得た。
【0219】
結果を図1に示す。
【0220】
(実施例2)
実施例1の医薬組成物からのエマルジョンの粒子サイズ分布
実施例1において記載されているインスリン誘導体SEDDS、SMEDDS、およびSNEDDS医薬組成物をMilliQ水で50倍希釈し、得られたエマルジョン、マイクロエマルジョン、またはナノエマルジョンの粒子サイズ分布を、37℃で、Malvern Zetasizer Nano ZSを用いるPCS(DLS)によって分析した。マイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンをもたらすインスリン誘導体SMEDDS医薬組成物は、粗エマルジョンをもたらす製剤よりも高いインスリン血漿レベルを示した。
【0221】
結果をTable 2(表2)および図1に示す。
【0222】
【表2】
【0223】
(実施例3)
インスリン誘導体、プロピレングリコール、Tween 20、Labrasol ALF、およびジグリセロールカプリレートを含む、液体の非水性医薬組成物
麻酔した、一晩絶食させたSprague-Dawleyラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、Tween 20、Labrasol ALF、およびジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを作成した。インスリン誘導体をまずプロピレングリコールに溶解し、その後、一致する量の界面活性剤、Tween 20、ジグリセロールカプリレート、およびLabrasol ALFを添加および混合して、均一な液体製剤を得た。
【0224】
結果を図2に示す。
【0225】
(実施例4)
インスリン誘導体、プロピレングリコール、1つまたは複数の界面活性剤を含む、液体の非水性医薬組成物
絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、ジグリセロールカプリレート、Tween 20、Plurol Oleique、Labrasol ALF、超精製ポリソルベート20、およびRylo MG08 Pharmaを含むSMEDDSまたはSEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを作成した(平均±SEM、n=4〜6)。HLBが10を超える2つまたは3つの界面活性剤を含むSMEDDSは、HLBが7未満の少なくとも1つの脂溶性コンポーネント(Rylo MG08またはPlurol Oleiqueなど)を含む製剤、またはただ1つの界面活性剤を含む製剤よりも高い血漿インスリンレベルを示した。インスリン誘導体をまずプロピレングリコールに溶解し、その後、一致する量の界面活性剤または脂溶性コンポーネントを添加および混合して、均一な液体製剤を得た。
【0226】
結果を図3に示す。
【0227】
(実施例5)
実施例4の医薬組成物からのエマルジョンの粒子サイズ分布
インスリン誘導体SEDDS、SMEDDS、およびSNEDDSをMilliQ水で50倍希釈し、得られたエマルジョン、マイクロエマルジョン、またはナノエマルジョンの粒子サイズ分布を、37℃で、Malvern Zetasizer Nano ZSを用いるPCS(DLS)によって分析した。ナノエマルジョンをもたらすインスリン誘導体SNEDDSは、粗エマルジョンをもたらすSEDDSよりも高いインスリン血漿レベルを示した。
【0228】
結果をTable 3(表3)および図3に示す。
【0229】
【表3】
【0230】
(実施例6)
インスリン誘導体、プロピレングリコール、2つまたは3つの界面活性剤を含む、液体の非水性医薬組成物
絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、Tween 20、Labrasol ALF、およびジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを作成した(平均±SEM、n=6〜7)。HLBが10を超える2つまたは3つの界面活性剤を含むSMEDDS製剤は、ただ1つの界面活性剤および脂溶性コンポーネントRylo MG08を含む製剤よりも有意に高いインスリン誘導体血漿レベルを示した。インスリン誘導体をまずプロピレングリコールに溶解し、その後、一致する量の界面活性剤または脂溶性コンポーネントを添加および混合して、均一な液体製剤を得た。
【0231】
結果を図4に示す。
【0232】
(実施例7)
インスリン誘導体、プロピレングリコール、1つ、2つ、または3つの界面活性剤を含む、液体の非水性医薬組成物
絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、SEDDSまたはSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを作成した(平均±SEM、n=6〜7)。HLBが10を超える3つの界面活性剤を含むSMEDDS製剤は、2つの界面活性剤を含むSMEDDS、またはただ1つの界面活性剤を含むSEDDS製剤よりも高い血漿インスリンレベルを示した。インスリン誘導体をまずプロピレングリコールに溶解し、その後、一致する量の界面活性剤または脂溶性コンポーネントを添加および混合して、均一な液体製剤を得た。
【0233】
結果を図5に示す。
【0234】
(実施例8)
実施例7の医薬組成物からのエマルジョンの粒子サイズ分布
インスリン誘導体SEDDS、SMEDDS、およびSNEDDSをMilliQ水で50倍希釈し、得られたエマルジョン、マイクロエマルジョン、またはナノエマルジョンの粒子サイズ分布を、37℃で、Malvern Zetasizer Nano ZSを用いるPCS(DLS)によって分析した。ナノエマルジョンをもたらすインスリン誘導体SNEDDSは、マイクロエマルジョンをもたらすSMEDDSまたは粗エマルジョンをもたらすSEDDSよりも高いインスリン血漿レベルを示した。
【0235】
結果をTable 4(表4)および図5に示す。
【0236】
【表4】
【0237】
(実施例9)
インスリン誘導体、プロピレングリコール、Labrasol ALF、Cremophor RH40、およびRyloMG08を含む、液体の非水性医薬組成物
SMEDDS(15%プロピレングリコール、32.5%Labrasol ALF、32.5%Cremophor RH40、20%RyloMG08)内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(30nmol/kg)を含む腸溶コーティングされたソフトカプセルをオスのビーグル犬(n=8)に経口投与した後の、薬物動態プロフィールを作成した。インスリン誘導体をまずプロピレングリコールに溶解し、その後、一致する量の界面活性剤を添加および混合して、均一な液体製剤を得た。液体製剤をソフトカプセル内に充填し、Eudragit L30D-55で腸溶コーティングした。
【0238】
結果を図6に示す。
【0239】
(実施例10)
SMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体を含むコーティングされていないソフトカプセル
SMEDDS(15%プロピレングリコール、30%超精製ポリソルベート20、および55%ジグリセロールカプリレート)内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(30nmol/kg)を含むコーティングされていないソフトカプセルをオスのビーグル犬(n=8)に内視鏡投与した後の、薬物動態プロフィールを作成した。ソフトカプセルは、オスのビーグル犬の十二指腸に内視鏡で投与した。
【0240】
結果を図7に示す。
【0241】
(実施例11)
SMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体を含む腸溶性ソフトカプセル
SMEDDS(15%プロピレングリコール、30%超精製ポリソルベート20、および55%ジグリセロールカプリレート)内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(45〜50nmol/kg)を含むコーティングされたソフトカプセルをオスのビーグル犬(n=8)に経口投与した後の、薬物動態プロフィールを作成した。ソフトカプセルは、Eudragit L30 D-55で腸溶コーティングした。
【0242】
結果を図8に示す。
【0243】
(実施例12)
SMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体を含む腸溶性ソフトカプセル
SMEDDS(15%プロピレングリコール、30%超精製ポリソルベート20、および55%ジグリセロールカプリレート)内に製剤されたインスリン誘導体A14E, B16H, B25H, B29K(N(ε)-ヘキサデカンジオイル-gGlu), desB30ヒトインスリン(30nmol/kg)を含む腸溶コーティングされたソフトカプセルをオスのビーグル犬(n=8)に経口投与した後の、薬物動態プロフィールを作成した。ソフトカプセルは、Eudragit L30 D-55とEudragit NE30Dとの1:1の混合物で腸溶コーティングした。
【0244】
結果を図9に示す。
【0245】
(実施例13)
SMEDDS内に製剤された異なるインスリン誘導体
SMEDDS(15%プロピレングリコール、30%ポリソルベート20、55%ジグリセロールカプリレート)内に製剤された異なるアシル化されたインスリン誘導体(30nmol/kg)の薬物動態プロフィールを、絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後に測定した(平均±SEM、n=6)。
【0246】
結果を図10に示す。
【0247】
(実施例14)
異なるSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体
絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、異なるSMEDDS組成物内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを作成した(平均±SEM、n=6)。
【0248】
結果を図11に示す。
【0249】
(実施例15)
異なる量の水と共にSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体
絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に0.1mlを注射した後の、無水SMEDDS組成物内および5%の水を含むSMEDDS組成物内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(SMEDDS1グラム当たり3.25mg)の薬物動態プロフィールを作成した(平均±SEM、n=6)。
【0250】
結果を図12に示す。
【0251】
(実施例16)
SMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体
絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、Tween 20、およびジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS組成物内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(30nmol/kg)の薬物動態プロフィールを作成した(平均±SEM、n=6)。
【0252】
結果を図13に示す。
【0253】
(実施例17)
SMEDDS組成物内に製剤されたインスリン誘導体
異なるインスリン誘導体(a、b、c、d、e、f、およびg、30nmol/kg)をそれぞれ、15%プロピレングリコール、30%Tween 20、および55%ジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS組成物内に製剤した。薬物動態プロフィールを、絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後に作成した(平均±SEM、n=6)。結果を図14に示す。
【0254】
組成物の調製:インスリン誘導体を含む水溶液のpHをpH7から8に調整し、溶液を凍結乾燥した。凍結乾燥されたインスリンをプロピレングリコールに溶解し、次に、ジグリセロールカプリレートを撹拌下で添加し、最終ステップにおいて、Tween 20を室温(RT)で撹拌下で添加した。最終的な製剤は、澄明な均質のSMEDDS組成物内に得られた。
【0255】
試験したインスリン誘導体:
a)SMEDDS内に製剤されたA14E, B25H, B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG), desB30ヒトインスリン
b)SMEDDS内のA14E, B25H, (N(ε)-[2-(2-[2-(2-[2-(オクタデカンジオイル-gGlu)アミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル]), desB27, desB30ヒトインスリン
c)SMEDDS内のA14E, B25H, desB27, B29K(N-(ε)-(オクタデカンジオイル-gGlu), desB30ヒトインスリン
d)SMEDDS内のA14E, B25H, desB27, B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-gGlu), desB30ヒトインスリン
e)SMEDDS内のA14E, B25H, desB27, B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-(N-カルボキシメチル-bAla)), desB30ヒトインスリン
f)SMEDDS内のA14E, B25H, B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-(N-カルボキシメチル-bAla)), desB30ヒトインスリン
g)SMEDDS内のB29N(ε)-ヘキサデカンジオイル-ガンマ-L-Glu A14E B25H desB30ヒトインスリン
【0256】
薬理学的方法
PK研究のためにラットを腸内(空腸)注射する方法
麻酔したラットにインスリン(誘導体)ペプチドを腸内(空腸に)投与した。採用される化合物の血漿濃度と血液グルコースの変化とを、投与後4時間にわたり、特定の間隔で測定した。薬物動態パラメータを、次に、WinNonLinを用いて計算した。
【0257】
約18時間にわたり絶食させた250〜300gの体重のオスのSprague-Dawleyラット(Taconic)を麻酔した。
【0258】
麻酔したラットを、37℃に安定化された恒温毛布上に置いた。1mlのシリンジを搭載した20cmのポリエチレンカテーテルにインスリン製剤または媒体を充填した。4〜5cmの正中切開を腹壁で行った。カテーテルを、腸壁を貫通させることによって、盲腸から≒50cmの空腸中央部内に穏やかに挿入した。腸内容物が存在する場合は、適用部位を±10cm移動した。カテーテルの先端を、腸分節の内腔のおよそ2cm内側に置き、結紮を用いずに固定した。腸を慎重に腹腔内に戻し、腹壁および皮膚を各層においてオートクリップで閉じた。時点0で、ラットに、カテーテルを介して、0.4ml/kgの試験化合物または媒体を投与した。
【0259】
総血液グルコース濃度を決定するための血液試料を、尾端内の毛細血管を穿刺することによって、ヘパリン化された10μlの毛細管内に回収した。血液グルコース濃度を、500μlの分析バッファー中に希釈した後に、Biosenオートアナライザー(EKF Diagnostic Gmbh、Germany)を用いるグルコースオキシダーゼ法によって測定した。平均血液グルコース濃度のグラフ(平均±SEM)を、各化合物について作成した。
【0260】
血漿インスリンペプチド濃度を決定するために試料を回収した。100μlの血液試料を、EDTAを含有する冷蔵した試験管内に引き込んだ。試料を、遠心分離(7000rpm、4℃、5分)するまで氷上で維持し、血漿をMicronic管内にピペットで取り、次に、アッセイするまで20℃で凍結した。インスリン類似体の血漿濃度を、LOCIアッセイを用いて測定した。
【0261】
血液試料を、t=-10で(血液グルコースのみ)、t=-1で(投与の直前)、および投与後4時間にわたり特定の間隔で引き込んだ。
【0262】
血漿濃度-時間プロフィールを、WinNonlin Professional(Pharsight Inc.、Mountain View、CA、USA)を用いる非コンパートメント薬物動態分析によって分析した。
【0263】
計算を、各動物の個別の濃度-時間値を用いて行った。
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのインスリンペプチド、少なくとも1つの半極性のプロトン性有機溶媒、および少なくとも2つの非イオン性界面活性剤を含む医薬組成物、このような医薬組成物を作製する方法、ならびに治療方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、グルコースを利用する能力が部分的にまたは完全に失われている代謝障害であり、例えばインスリンで治療され得る。
【0003】
インスリン送達のための通常のアプローチは、侵襲性であり不便な非経口投与である。したがって、タンパク質ベースの医薬品の経口送達のような、非侵襲性経路の研究が増大している。しかし、胃腸(GI)管における酵素分解、薬剤排出ポンプ、腸粘膜からの不十分で可変の吸収、および肝臓における初回通過代謝などの、いくつかの障壁が存在する。ヒトインスリンは、胃(ペプシン)において、腸管腔(キモトリプシン、トリプシン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼなど)において、およびGI管の粘膜表面(アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、エンテロペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼ、エンドペプチダーゼなど)において見られる、様々な消化酵素によって分解される。
【0004】
哺乳動物、例えばヒトに薬剤を経口投与するための有用な媒体は、SMEDDSもしくはSNEDDS(自己マイクロ乳化薬剤送達系または自己ナノ乳化薬剤送達系)とも呼ばれるマイクロエマルジョン前濃縮物もしくはナノエマルジョン前濃縮物の形態、またはSEDDS(自己乳化剤送達系)とも呼ばれるエマルジョン前濃縮物の形態である。SEDDS製剤、SMEDDS製剤、またはSNEDDS製剤は、油、界面活性剤、共界面活性剤、または可溶化剤、および必要に応じて任意の他の作用物質もしくは賦形剤の、等方混合物である。系のコンポーネントが水性媒質、例えば水、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、またはエマルジョンと接触すると、わずかな撹拌で、または撹拌することなく、水中油型エマルジョンまたは水中油型マイクロエマルジョンなどを自然に形成する。マイクロエマルジョンは、2つの非混和性の液体を含む、熱力学的に安定な系であり、界面活性剤の存在によって、一方の液体は他方の液体内に細かく分散する。形成されたマイクロエマルジョンは、分散相の粒子サイズが小さいために、例えば、澄明もしくは半透明に、わずかに不透明に、乳白色に、透明に、またはほぼ透明に見える。
【0005】
WO2009115469A1は、プロテアーゼ安定化された、アシル化されたインスリン類似体、およびこれを含む組成物に関するものであり、WO2003047494A2、US5444041、およびWO02094221A1は、エマルジョン/マイクロエマルジョン組成物に関するものであり、WO9637215A1は、インスリンの油中水型エマルジョンに関するものであり、US20060210622A1は、生物学的に活性な物質の表面修飾型粒子組成物に関するものであり、WO03030865A1、US5206219A、およびUS2004097410A1は、例えば界面活性剤および/または脂質コンポーネントを含む、インスリン組成物に関するものであり、US20060182771A1は、眼の疾患を治療するための自己乳化組成物に関するものであり、WO2008145730A1、WO2008145728A1、Ma Er-Liら、Acta Pharmacologica Sinica、2006年10月、Vol. 27、Nr. 10、1382〜1388頁は、マイクロエマルジョン前濃縮物またはエマルジョン前濃縮物に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2009115469A1
【特許文献2】WO2003047494A2
【特許文献3】US5444041
【特許文献4】WO02094221A1
【特許文献5】WO9637215A1
【特許文献6】US20060210622A1
【特許文献7】WO03030865A1
【特許文献8】US5206219A
【特許文献9】US2004097410A1
【特許文献10】US20060182771A1
【特許文献11】WO2008145730A1
【特許文献12】WO2008145728A1
【特許文献13】WO2005/012347
【特許文献14】WO2008/034881
【特許文献15】WO2009/115469
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ma Er-Liら、Acta Pharmacologica Sinica、2006年10月、Vol. 27、Nr. 10、1382〜1388頁
【非特許文献2】Griffin (Griffin WC:「Classification of Surface-Active Agents by「HLB」」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1 (1949): 311)
【非特許文献3】Davies (Davies JT:「A quantitative kinetic theory of emulsion type, I. Physical chemistry of the emulsifying agent」、Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface. Proceedings of the International Congress of Surface Activity (1957): 426〜438)
【非特許文献4】Handbook of Pharmaceutical Excipients, Roweら編、第4版、Pharmaceutical Press (2003)
【非特許文献5】Eudragit Application Guidelines、Evonik Industries、第11版、2009年9月
【非特許文献6】Hudson and Andersen、Peptide Science、第76巻(4)、298〜308頁(2004)
【非特許文献7】Greene and Wuts、「Protective Groups in Organic synthesys」、John Wiley & Sons、1999
【非特許文献8】Handbook of Chemistry and Physics、CMC Press
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
SMEDDS組成物は、シクロスポリンなどの疎水性ポリペプチドの溶解度および経口バイオアベイラビリティを向上させることが知られている。しかし、SMEDDSおよびSNEDDSにおけるヒトインスリンなどの親水性水溶性ポリペプチドの溶解度は不十分であり、バイオアベイラビリティは、常に最適というわけではない可能性がある。改良したSMEDDS組成物および/またはSNEDDS組成物がしたがって、インスリンの経口送達に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも1つのインスリンペプチド、少なくとも1つの半極性のプロトン性有機溶媒、およびHLBが10を超える少なくとも2つの非イオン性界面活性剤を含む、液体の非水性医薬組成物に関するものである。
【0010】
本発明の1つの態様において、油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤を含有しない医薬組成物が記載される。
【0011】
1つの態様において、本発明では、水性媒質中に希釈された後にマイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンを形成する医薬組成物が記載される。
【0012】
本発明の別の態様において、HLBが10を超える2つまたは3つの非イオン性界面活性剤を含む医薬組成物であって、残りの成分が界面活性剤以外の賦形剤である医薬組成物が記載される。
【0013】
また、本発明に従った医薬組成物を生産する方法、および効果的な量の本発明に従った医薬組成物を経口投与することを含む、高血糖を治療するための方法も記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】麻酔した、一晩絶食させたSprague-Dawleyラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、Tween 20、Labrasol ALF、およびジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である。
【図2】麻酔した、一晩絶食させたSprague-Dawleyラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、Tween 20、Labrasol ALF、およびジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である。
【図3】絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、ジグリセロールカプリレート、Tween 20、Plurol Oleique、Labrasol ALF、超精製ポリソルベート20、およびRylo MG08 Pharmaを含むSMEDDSまたはSEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である(平均±SEM、n=4〜6)。HLBが10を超える2つまたは3つの界面活性剤を含むSMEDDS(-□-および-▼-)は、HLBが7未満の少なくとも1つの脂溶性コンポーネント(Rylo MG08またはPlurol Oleiqueなど)を含む製剤(-■-、-*-)、またはただ1つの界面活性剤を含む製剤(-Δ-)よりも高い血漿インスリンレベルを示した。
【図4】絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、Tween 20、Labrasol ALF、およびジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である(平均±SEM、n=6〜7)。HLBが10を超える2つまたは3つの界面活性剤を含むSMEDDS製剤は、ただ1つの界面活性剤および脂溶性コンポーネントRylo MG08を含む製剤(-×-)よりも有意に高いインスリン誘導体血漿レベルを示した。
【図5】絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、SEDDSまたはSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である(平均±SEM、n=6〜7)。HLBが10を超える3つの界面活性剤を含むSMEDDS(-□-、-■-)は、2つの界面活性剤を含むSMEDDSまたはただ1つの界面活性剤を含むSEDDS製剤(-×-)よりも高い血漿インスリンレベルを示した。
【図6】SMEDDS(15%PG、32.5%Labrasol ALF、32.5%Cremophor RH40、20%RyloMG08)内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(30nmol/kg)を含む腸溶コーティングされたソフトカプセルをオスのビーグル犬(n=8)に経口投与した後の、薬物動態プロフィールを示す図である。ソフトカプセルは、Eudragit L30 D-55で腸溶コーティングした。
【図7】SMEDDS(15%プロピレングリコール、30%超精製ポリソルベート20、および55%ジグリセロールカプリレート)内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(30nmol/kg)を含む腸溶コーティングされていないソフトカプセルをオスのビーグル犬(n=8)に内視鏡投与した後の、薬物動態プロフィールを示す図である。ソフトカプセルは、ビーグル犬の十二指腸に内視鏡で投与した。
【図8】SMEDDS(15%プロピレングリコール、30%超精製ポリソルベート20、および55%ジグリセロールカプリレート)内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(45〜50nmol/kg)を含むコーティングされたソフトカプセルをオスのビーグル犬(n=8)に経口投与した後の、薬物動態プロフィールを示す図である。ソフトカプセルは、Eudragit L30 D-55で腸溶コーティングした。
【図9】SMEDDS(15%プロピレングリコール、30%超精製ポリソルベート20、および55%ジグリセロールカプリレート)内に製剤されたインスリン誘導体A14E、B16H、B25H、B29K(N(ε)-ヘキサデカンジオイル-gGlu)、desB30ヒトインスリン(30nmol/kg)を含むコーティングされたソフトカプセルをオスのビーグル犬(n=8)に経口投与した後の、薬物動態プロフィールを示す図である。ソフトカプセルは、Eudragit L30 D-55とEudragit NE30Dとの混合物で腸溶コーティングした。
【図10】絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、SMEDDS(15%プロピレングリコール、30%ポリソルベート20、55%ジグリセロールカプリレート)内に製剤された異なるアシル化されたインスリン誘導体(30nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である(平均±SEM、n=6)。
【図11】絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、異なるSMEDDS組成物内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である(平均±SEM、n=6)。
【図12】絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に0.1mlを注射した後の、無水SMEDDS組成物内および5%の水を含むSMEDDS組成物内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(SMEDDS1グラム当たり3.25mg)の薬物動態プロフィールを示す図である(平均±SEM、n=6)。
【図13】絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、Tween 20、およびジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS組成物内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(30nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である(平均±SEM、n=6)。
【図14】絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、15%プロピレングリコール、30%Tween 20、および55%ジグリセロールカプリレートを含む本発明に従ったSMEDDS組成物内に製剤された異なるインスリン誘導体a)、b)、c)、d)、e)、f)、g)(30nmol/kg)の薬物動態プロフィールを示す図である(平均±SEM、n=6)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、少なくとも1つのインスリンペプチド、少なくとも1つの半極性のプロトン性有機溶媒、およびHLBが10を超える少なくとも2つの非イオン性界面活性剤を含む、液体の非水性医薬組成物に関するものである。本発明の1つの態様において、組成物は、水性媒質に希釈された後にマイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンを形成する。
【0016】
本発明の液体の非水性医薬組成物が、HLBが10を超える少なくとも2つの非イオン性界面活性剤を含むことは、重要な態様である。したがって、前記新規な組成物が、例えばただ1つの界面活性剤を含む既知の組成物と比較して高い経口バイオアベイラビリティを有することが、本発明者らによって驚くべきことに見出された。1つの態様において、本発明の液体の非水性医薬組成物は、HLBが10を超える少なくとも3つの非イオン性界面活性剤を含む。1つの態様において、本発明の液体の非水性医薬組成物は、HLBが10を超える2つまたは3つの非イオン性界面活性剤を含み、残りの成分は、界面活性剤以外の賦形剤である。
【0017】
1つの態様において、本発明の液体の非水性医薬組成物は、10%未満の油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤を含有する。1つの態様において、本発明の液体の非水性医薬組成物は、5%未満の油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤を含有する。1つの態様において、本発明の液体の非水性医薬組成物は、1%未満の油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤を含有する。
【0018】
1つの態様において、本発明の液体の非水性医薬組成物は、HLBが10を超える2つの非イオン性界面活性剤を含み、残りの成分は、界面活性剤以外の賦形剤である。1つの態様において、本発明の液体の非水性医薬組成物は、HLBが10を超える3つの非イオン性界面活性剤を含み、残りの成分は、界面活性剤以外の賦形剤である。
【0019】
本発明の液体の非水性医薬組成物の各非イオン性界面活性剤の親水性-脂溶性バランス(HLB)は10を超え、それによって、高いインスリンペプチド(インスリン誘導体など)薬物負荷能力および高い経口バイオアベイラビリティが達成される。1つの態様において、本発明に従った非イオン性界面活性剤は、HLBが11を超える非イオン性界面活性剤である。1つの態様において、本発明に従った非イオン性界面活性剤は、HLBが12を超える非イオン性界面活性剤である。
【0020】
用語「経口バイオアベイラビリティ」は、本明細書において、経口的に投与された後に全身循環に達する薬剤の投与量の画分を意味する。定義では、薬物が静脈内に投与される場合、そのバイオアベイラビリティは100%である。しかし、薬物が経口経路などの他の経路を介して投与されると、そのバイオアベイラビリティは、不完全な吸収および初回通過代謝に起因して低下する。用語「高い経口バイオアベイラビリティ」は、したがって、大量の活性薬剤(すなわちインスリン)が、経口的に投与された後に全身循環に達することを意味する。
【0021】
本明細書において用いられる場合、用語「液体」は、室温(「RT」)で液体状態であり、かつ例えば20℃未満の融点を有する、コンポーネントまたは組成物を意味する。本明細書において用いられる場合、室温(RT)はおよそ20〜25℃を意味する。
【0022】
本発明の1つの態様において、液体の非水性医薬組成物は、油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤を含有しない。このことは、大量のインスリン誘導体がこれらのSMEDDSまたはSNEDDS内に溶解し得るという利点を有する。さらなる態様において、組成物は、油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが8未満の界面活性剤を含有しない。さらなる態様において、組成物は、油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが9未満の界面活性剤を含有しない。さらなる態様において、組成物は、油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが10未満の界面活性剤を含有しない。
【0023】
本発明に従った液体の非水性医薬組成物は、少なくとも1つの半極性のプロトン性有機溶媒を含む。1つの態様において、本発明に従った液体の非水性医薬組成物は、ただ1つの半極性のプロトン性有機溶媒を含む。1つの態様において、本発明に従った半極性のプロトン性有機溶媒は、例えばジオールまたはトリオールなどのポリオールである。1つの態様において、半極性のプロトン性有機溶媒は、グリセロール(プロパントリオール)、エタンジオール(エチレングリコール)、1,3-プロパンジオール、メタノール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、エタノール、およびイソプロパノール、またはその混合物からなる群から選択される。1つの態様において、本発明に従った半極性のプロトン性有機溶媒は、プロピレングリコール、グリセロール、およびその混合物からなる群から選択される。1つの態様において、本発明に従った半極性のプロトン性有機溶媒は、プロピレングリコールである。
【0024】
本発明に従った医薬組成物における、例えばプロピレングリコールとHLBが10を超える少なくとも2つの非イオン性界面活性剤との組み合わせは、驚くべきことに、インスリン誘導体の高い経口バイオアベイラビリティをもたらした。
【0025】
薬剤送達系のコンポーネントは、任意の相対量で存在し得る。1つの態様において、薬剤送達系は、担体の組成の重量当たり最大15%の極性有機コンポーネントを含み、すなわち、インスリンを添加する前に、担体の重量の最大15%が、極性有機コンポーネントからなる。1つの態様において、薬剤送達系は、担体の全組成の約1重量%から約15重量%の極性有機溶媒を含む。さらなる態様において、薬剤送達系は、担体の全組成の約5重量%から約15重量%の極性有機溶媒を含む。1つの態様において、薬剤送達系は、担体の全組成の約10重量%から約15重量%の極性有機溶媒を含む。さらなる態様において、薬剤送達系は、担体の全組成の約15重量%の極性有機溶媒を含む。
【0026】
本発明に従った液体の非水性医薬組成物は、驚くほど高いインスリンペプチド(インスリン誘導体など)薬物負荷能力を有し得、すなわち、前記組成物は、大量のインスリンを含み得る。本発明の1つの態様において、治療的に活性なインスリンペプチドは、医薬組成物全体の最大約20重量%、例えば最大約10重量%の量で、または約0.1重量%から、例えば約1重量%から存在し得る。本発明の1つの態様において、治療的に活性なインスリンペプチドは、組成物全体の約0.1重量%から約20重量%の量で存在し得、さらなる態様において、約0.1重量%から10重量%、0.1重量%から20重量%、1重量%から20重量%、または約1重量%から10重量%の量で存在し得る。しかし、インスリンペプチドの特定のレベルの選択は、極性有機溶媒におけるインスリンペプチドの溶解度、または用いられる最適な親水性コンポーネントもしくは界面活性剤、またはその組み合わせ、投与態様、ならびに患者のサイズおよび状態を含めた、薬学分野で周知の因子に従って行われる。
【0027】
用語「非水性」は、本明細書において用いられる場合、医薬組成物の調製の間に水が添加されない組成物を言う。当業者には、例えば組成物を封入するために用いられるソフトカプセルまたはハードカプセルなどの、水を添加せずに調製された組成物が、医薬組成物の取り扱いの間に周りから少量の水を取り込み得ることが知られている。また、医薬組成物内のインスリンペプチドおよび/または賦形剤の1つもしくは複数には、本発明に従った医薬組成物を調製する前に、少量の水が結合していてよい。本発明に従った非水性医薬組成物は、したがって、少量の水を含有し得る。1つの態様において、本発明に従った非水性医薬組成物は、10%w/w未満の水を含む。別の態様において、本発明に従った組成物は、5%w/w未満の水を含む。別の態様において、本発明に従った組成物は、4%w/w未満の水を含み、別の態様においては3%w/w未満の水を含み、別の態様においては2%w/w未満の水を含み、さらに別の態様においては1%w/w未満の水を含む。
【0028】
本明細書において用いられる場合、用語「半極性のプロトン性有機溶媒」は、1つまたは複数のアルコール官能基またはアミン官能基またはその混合物を含有する親水性の水混和性の炭素含有溶媒を言う溶媒を意味するものとする。極性は、溶媒の比誘電率または双極子モーメントに反映される。溶媒の極性は、溶媒がどのタイプの化合物を溶解可能であるか、および溶媒がどの他の溶媒または液体化合物と混和可能であるかを決定する。典型的には、極性溶媒は極性化合物を最も良く溶解し、無極性溶媒は無極性化合物を最も良く溶解し、すなわち、「類似のものは類似のものを溶解する」。無機塩(例えば、塩化ナトリウム)のような強極性化合物は、非常に極性の溶媒のみに溶解する。
【0029】
半極性溶媒は、ここで、20〜50の範囲の比誘電率を有する溶媒として定義され、一方、極性溶媒および無極性溶媒は、それぞれ50を超える、および20未満の比誘電率によって定義される。半極性のプロトン性溶媒の例を、参照としての水と共に、Table1(表1)に列挙する。
【0030】
【表1】
【0031】
本文脈において、1,2-プロパンジオールおよびプロピレングリコールは区別せずに用いられる。本文脈において、プロパントリオールおよびグリセロールは区別せずに用いられる。本文脈において、エタンジオールおよびエチレングリコールは区別せずに用いられる。
【0032】
用語「ポリオール」は、本明細書において用いられる場合、複数のヒドロキシル基を含有する化学的化合物を言う。用語「ジオール」は、本明細書において用いられる場合、2つのヒドロキシル基を含有する化学的化合物を言う。用語「トリオール」は、本明細書において用いられる場合、3つのヒドロキシル基を含有する化学的化合物を言う。
【0033】
本発明の医薬組成物の界面活性剤は、非イオン性である。界面活性剤は、その調製に伴う副生成物または未反応開始生成物を含有する複合混合物であり得、例えば、ポリオキシエチル化によって作製される界面活性剤は、別の副生成物、例えばPEGを含有し得る。本発明に従った界面活性剤は、少なくとも10の親水性-脂溶性バランス(HLB)値を有する。例えば、界面活性剤は、10〜30、例えば10〜20または11〜17の平均HLB値を有し得る。界面活性剤は、天然で液体、半固体、または固体であり得る。
【0034】
界面活性剤の親水性-脂溶性バランス(HLB)は、Griffin (Griffin WC:「Classification of Surface-Active Agents by「HLB」」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1 (1949): 311)またはDavies (Davies JT:「A quantitative kinetic theory of emulsion type, I. Physical chemistry of the emulsifying agent」、Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface. Proceedings of the International Congress of Surface Activity (1957): 426〜438)によって記載されているように、分子の異なる領域について値を計算することによって決定される、界面活性剤が親水性または脂溶性である程度の尺度である。
【0035】
本発明の1つの態様において、本発明に従った非イオン性界面活性剤は、「中鎖脂肪酸基」を含む。中鎖脂肪酸基は、本明細書において、6から12個の炭素原子を有する鎖を有する脂肪酸基と理解される。1つの態様において、中鎖脂肪酸基は、8から12個の炭素原子を有する。1つの態様において、中鎖脂肪酸基は、C8脂肪酸(カプリレート)、C10脂肪酸(カプレート)、およびC12脂肪酸(ラウレート)からなる群から選択される。
【0036】
用語「非イオン性界面活性剤」は、本明細書において用いられる場合、表面、および液体から気体、液体から液体、液体から容器、または液体から任意の固体のような界面で吸着し得、その親水基(「ヘッド」と言われることもある)に荷電基を有さない、任意の物質、特に洗剤を言う。非イオン性界面活性剤は、エトキシ化されたヒマシ油、ポリグリコール化されたグリセリド、アセチル化されたモノグリセリド、およびソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、例えばポリソルベート-20、ポリソルベート-40、ポリソルベート-60、ポリソルベート-80、超精製ポリソルベート20、超精製ポリソルベート40、超精製ポリソルベート60、および超精製ポリソルベート80(ここで、用語「超精製」は、提供元Crodaによって、彼らの高純度のTween製品について用いられる)、ポリオキサマー、例えばポリオキサマー188およびポリオキサマー407、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体、例えばアルキル化誘導体およびアルコキシル化誘導体(Tween、例えば、Tween-20またはTween-80)、ブロックコポリマー、例えばポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー(例えば、Pluronics/Tetronics、Triton X-100、および/またはSynperonic PE/L 44 PEL)、ならびにエトキシ化されたソルビタンアルカノエート界面活性剤(例えば、Tween-20、Tween-40、Tween-80、Brij-35)、ジグリセロールラウレート、ジグリセロールカプレート、ジグリセロールカプリレート、ジグリセロールモノカプリレート、ポリグリセロールラウレート、ポリグリセロールカプレート、およびポリグリセロールカプリレートなどの洗剤から選択され得る。
【0037】
他の非イオン性界面活性剤の例には、限定はしないが、以下のものが含まれる。
【0038】
1.天然のまたは水素化されたヒマシ油およびエチレンオキシドの反応生成物。天然のまたは水素化されたヒマシ油は、約1:35から約1:60のモル濃度比でエチレンオキシドと反応し得、生成物からはPEGコンポーネントが最適に除去される。様々なこのような界面活性剤は市販されており、例えば、BASF Corp. (Mt. Olive、NJ)のCREMOPHORシリーズ、例えばCREMOPHOR RH 40であり、これは、約50から60の鹸化価、約1未満の酸価、約2%未満の水分含有量、すなわちFischer、約1.453〜1.457のnD60、および約14〜16のHLBを有するPEG40水素化ヒマシ油である。
【0039】
2.ポリオキシエチレンステアリン酸エステルを含めたポリオキシエチレン脂肪酸エステル、例えばUniqemaのMYRJシリーズ、例えば、約47℃のm.p.を有するMYRJ 53。MYRJシリーズの特定の化合物は、例えば、約47℃のm.p.を有するMYRJ 53、およびMYRJ 52として入手可能なPEG-40-ステアレートである。
【0040】
3. UniqemaのTWEENシリーズ、例えばTWEEN 60を含めた、ソルビタン誘導体。
【0041】
4.ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーおよびブロックコポリマーまたはポロキサマー、例えば、BASFのPluronic F127もしくはPluronic F68、またはCrodaのSynperonic PE/L。
【0042】
5.ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、C12〜C18アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテル、例えば、UniqemaのBRIJシリーズとして知られており市販されている、ポリオキシル10-もしくは20-セチルエーテルまたはポリオキシル23-ラウリルエーテルまたはポリオキシル20-オレイルエーテルまたはポリオキシル10-、20-、もしくは100-ステアリルエーテル。BRIJシリーズの特に有用な製品は、BRIJ 58、BRIJ 76、BRIJ 78、BRIJ 35、すなわち、ポリオキシル23ラウリルエーテル、ならびにBRIJ 98、すなわち、ポリオキシル20オレイルエーテルである。これらの製品は、約32℃から約43℃の間のm.p.を有する。
【0043】
6.約36℃のm.p.を有する、Eastman Chemical Co.から入手可能な水溶性トコフェリルPEGコハク酸エステル、例えばTPGS、例えばビタミンE TPGS。
【0044】
7.例えば5〜35個の[CH2-CH、-O]単位、例えば20〜30単位を有するPEGステロールエーテル、例えばChemron(Paso Robles、CA)のSOLULAN C24(Choleth-24およびCetheth-24)。同様に用いることができる類似の製品は、Nikko ChemicalsのNIKKOL BPS-30(ポリエトキシ化された30フィトステロール)およびNIKKOL BPSH-25(ポリエトキシ化された25フィトスタノール)として知られており市販されているものである。
【0045】
8.例えば4〜10個のグリセロール単位の範囲、または4、6、もしくは10個のグリセロール単位を有する、ポリグリセロール脂肪酸エステル。例えば、特に適切なものは、デカ-/ヘキサ-/テトラグリセリルモノステアレート、例えば、Nikko ChemicalsのDECAGLYN、HEXAGLYN、およびTETRAGLYNである。
【0046】
9.アルキレンポリオールエーテルまたはアルキレンポリオールエステル、例えば、それぞれGELUCIRE 44/14およびGELUCIRE 50/13である、ラウロイルマクロゴール-32グリセリドおよび/またはステアロイルマクロゴール-32グリセリド。
【0047】
10.飽和したC10からC22のポリオキシエチレンモノエステル、例えば、C18が置換された例えばヒドロキシ脂肪酸。例えば、12ヒドロキシステアリン酸PEGエステル、例えば、例えば約600〜900ダルトン、例えば660ダルトンのMWのPEGの12ヒドロキシステアリン酸PEGエステル、例えばBASF(Ludwigshafen、20 Germany)のSOLUTOL HS 15。BASFの技術説明書MEF 151E(1986)によると、SOLUTOL HS 15は、約70重量%のポリエトキシ化された12-ヒドロキシステアレートおよび約30重量%のエステル化されていないポリエチレングリコールコンポーネントを含む。これは、90から110の水素化値、53から63の鹸化価、最大1の酸価、および0.5重量%の最大水分含有量を有する。
【0048】
11.ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、例えば、C12からC18のアルコールのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、例えば、Nikko ChemicalsからNIKKOL PBC 34として市販されている、ポリオキシエチレン-20-ポリオキシプロピレン-4-セチルエーテル。
【0049】
12.例えばUniqemaからATLAS G 1821という商品名で、およびNikko ChemicalsからNIKKOCDS-6000Pという商品名で市販されている、ポリエトキシ化されたジステアレート。
【0050】
本明細書において用いられる場合、界面活性剤または脂溶性コンポーネントの「親水性-脂溶性バランス」または「HLB」という用語は、Griffin (Griffin WC:「Classification of Surface-Active Agents by「HLB」」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1 (1949): 311)またはDavies (Davies JT:「A quantitative kinetic theory of emulsion type, I. Physical chemistry of the emulsifying agent」、Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface. Proceedings of the International Congress of Surface Activity (1957): 426〜438)によって記載されているように、分子の異なる領域について値を計算することによって決定される、界面活性剤が親水性または脂溶性である程度の尺度である。
【0051】
「HLBが10を超える非イオン性界面活性剤」は、HLBが10を超える共通の特徴を有する非イオン性界面活性剤の選択物である。
【0052】
例として、HLBが10を超える界面活性剤の非限定的なリストを、そのHLB値と共に以下に示す。
【0053】
HLBが16.7であるポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(例えば、Tween 20、ポリソルベート20、超精製ポリソルベート20)、
HLBが15であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレアート(例えば、Tween 80、ポリソルベート80、超精製ポリソルベート80)、
HLBが15.6であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート(例えば、Tween 40、ポリソルベート40、超精製ポリソルベート40)、
HLBが11であるジグリセロールカプリレート(ジグリセロールモノカプリレート、ポリグリセロールカプリレート)、
HLBが10であるポリグリセロールカプレート(例えば、Rylo PG10 Pharma)、
HLBが14であるカプリロカプロイルマクロゴールグリセリド(例えば、Labrasol、Labrasol ALF)、
ブロックポリマー(例えば、SYNPERONIC PE/L 44、Poloxamer 124)、
HLBが11.1であるポリオキシエチレンステアレート(例えば、Myrj 45、マクロゴールステアレート)、
HLBが15であるポリオキシエチレンステアレート(例えば、Myrj 49、マクロゴールステアレート)、
HLBが16であるポリオキシエチレンステアレート(例えば、Myrj 51、マクロゴールステアレート)、
HLBが16.9であるポリオキシエチレンステアレート(例えば、Myrj 52、マクロゴールステアレート)、
HLBが17.9であるポリオキシエチレンステアレート(例えば、Myrj 53、マクロゴールステアレート)、
HLBが18.8であるポリオキシエチレンステアレート(例えば、Myrj 59、マクロゴールステアレート)、および
HLBが13.3であるポリオキシエチレングリセロールトリリシノレエート(例えば、Cremophor EL)。
【0054】
本発明に従った液体の非水性医薬組成物において用いることができる、HLBが10を超える液体の非イオン性界面活性剤の例には、限定はしないが、ソルビタン誘導体、例えば、全てUniqemaまたはCrodaから入手可能なTWEEN 20、TWEEN 40、TWEEN 80、SYNPERONIC L44、およびポリオキシル10-オレイルエーテル、ならびにポリオキシエチレン含有界面活性剤、例えば、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(例えば、Gattefosseから入手可能なLabrasolまたはLabrasol ALF)が含まれる。
【0055】
本発明の1つの態様において、HLBが10を超える非イオン性界面活性剤の1つまたは複数は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ブロックコポリマー、およびポロキサマーからなる群から選択され、例えば、BASFのPluronic F127、Pluronic F68、および/またはCrodaのSynperonicである。
【0056】
本発明の1つの態様において、HLBが10を超える非イオン性界面活性剤の1つまたは複数は、ポリオキシエチレン含有界面活性剤、例えば、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(例えば、Gattefosseから入手可能なLabrasolまたはLabrasol ALF)である。
【0057】
本発明の1つの態様において、HLBが10を超える非イオン性界面活性剤の1つまたは複数は、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(例えば、Merck、Uniqema、またはCrodaから入手可能なTween 20)である。本発明のさらなる態様において、HLBが10を超える非イオン性界面活性剤の1つまたは複数は、超精製ポリソルベート、例えば超精製ポリソルベート20、40、60、および80(例えば、Crodaから市販されている)からなる群から選択される。
【0058】
本発明の1つの態様において、HLBが10を超える非イオン性界面活性剤の1つまたは複数は、BASFのCremophor RH40である。
【0059】
本発明の1つの態様において、HLBが10を超える非イオン性界面活性剤の1つまたは複数は、ジグリセロールモノカプリレートまたはジグリセロールカプレート(例えば、Daniscoから入手可能な)である。
【0060】
本発明の1つの態様において、HLBが10を超える非イオン性界面活性剤の2つは、ジグリセロールモノカプリレートおよびポリソルベート20(例えば、Tween 20)である。
【0061】
本発明の態様において、本発明の液体の非水性医薬組成物が、HLBが10を超える2つの非イオン性界面活性剤を含む場合、前記2つの非イオン性界面活性剤は、ジグリセロールモノカプリレートおよびポリソルベート20(例えば、Tween 20)である。
【0062】
本発明の組成物は、担体の組成の重量当たり約30%から約90%の非イオン性界面活性剤を含み得、すなわち、インスリンを添加する前に、担体の重量の約30%から約90%、例えば約40重量%から約85重量%、例えば約50重量%から約85重量%、例えば約60重量%から約85重量%、または例えば約70重量%から約85重量%が、非イオン性界面活性剤からなる。
【0063】
本発明の特定の態様において、医薬組成物は、医薬組成物において一般に見られるさらなる賦形剤を含み得、このような賦形剤の例には、限定はしないが、抗酸化剤、抗微生物剤、酵素阻害剤、安定剤、防腐剤、香料、甘味料、および、参照することによって本明細書に組み込まれるHandbook of Pharmaceutical Excipients, Roweら編、第4版、Pharmaceutical Press (2003)において記載されているような他のコンポーネントが含まれる。
【0064】
これらのさらなる賦形剤は、医薬組成物全体の約0.05〜5重量%の量であり得る。抗酸化剤、抗微生物剤、酵素阻害剤、安定剤、または防腐剤は、典型的には、医薬組成物全体の最大約0.05〜1重量%である。甘味料または香料は、典型的には、医薬組成物全体の最大約2.5重量%または5重量%である。
【0065】
本発明の1つの態様において、組成物はバッファーを含む。用語「バッファー」は、本明細書において用いられる場合、バッファーの不存在下では化学反応に起因して生じる、組成物のpHが経時的に変化する傾向を低減させる、医薬組成物における化学的化合物を言う。バッファーには、リン酸ナトリウム、TRIS、グリシン、およびクエン酸ナトリウムなどの化学物質が含まれる。
【0066】
用語「防腐剤」は、本明細書において用いられる場合、微生物の活性(成長および代謝)を予防するかまたは遅らせるために医薬組成物に添加される化学的化合物を言う。薬学的に許容可能な防腐剤の例は、フェノール、m-クレゾール、およびフェノールとm-クレゾールとの混合物である。
【0067】
用語「安定剤」は、本明細書において用いられる場合、ペプチドを安定化させるため、すなわち、ペプチド含有医薬組成物の保存期間および/または使用期間を増大させるために、このような組成物に添加される化学物質を言う。
【0068】
製造者から得られる本発明に適した非イオン性界面活性剤の質は、前記非イオン性界面活性剤を含む医薬組成物の安定性に影響し得る。例えば、液体の非水性医薬組成物を安定化させる、さらに高い純度の特定の賦形剤が同定されている。したがって、非イオン性界面活性剤が高純度の非イオン性界面活性剤である、液体の非水性医薬組成物が得られることが、本発明の1つの態様である。1つの態様において、高純度の非イオン性界面活性剤は、医薬品グレードで提供元により提供される非イオン性界面活性剤である。1つの態様において、高純度の非イオン性界面活性剤は、超精製されたものとして提供元により提供される非イオン性界面活性剤である。1つの態様において、高純度の非イオン性界面活性剤は、アルデヒドおよび/またはケトンの含有量が20ppm未満の非イオン性界面活性剤である。別の態様において、高純度の非イオン性界面活性剤は、アルデヒドおよび/またはケトンの含有量が10ppm未満の非イオン性界面活性剤である。1つの態様において、非イオン性界面活性剤は、Daniscoのジグリセロールモノカプリレートまたはジグリセロールカプレートからなる群から選択される。別の態様において、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート、例えば、CrodaのTween 20、Tween 80、超精製ポリソルベート20、超精製ポリソルベート80である。
【0069】
用語「油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤」は、本明細書において、油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満であるという共通の特徴を有する界面活性剤の選択物に対して用いられる。
【0070】
油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤の例には、限定はしないが、
HLBが6であるポリグリセロールオレエート(例えば、Plurol Oleique CC497)、
HLBが5から6.5であるポリグリセリル-3オレエート(例えば、Caprol 3GO、Isolan GO33、トリグリセロールモノオレエート)、
HLBが6であるプロピレングリコールモノカプリレート(Capryol 90、Capryol PGMC、Capmul PG)、
HLBが5であるプロピレングリコールモノラウレート(Lauroglycol 90、Lauroglycol FCC)、
HLBが2であるプロピレングリコールジカプリロカプレート(例えば、Labrafac PG)、
HLBが1である中鎖トリグリセリド(すなわち、8から12個の炭素原子、例えば8、10、または12個の炭素原子を有する鎖を有するトリグリセリド)(例えば、Labrafac Lipophile WL1349、Captex 355)、
HLBが4であるグリセリルモノリノレート(例えば、Maisine 35-1)、
HLBが3であるグリセリルモノオエレート(例えば、Peceol)、
HLBが4であるラウロイルマクロゴールグリセリド(例えば、Labrafil M2130CS)、
HLBが4であるリノレオイルマクロゴールグリセリド(例えば、Labrafil M2125CS)、
HLBが4であるオレオイルマクロゴールグリセリド(例えば、Labrafil M1944CS)、
HLBが5〜6である中鎖モノグリセリド、中鎖ジトリグリセリド、および/または中鎖トリグリセリド(すなわち、8から12個の炭素原子、例えば8、10、または12個の炭素原子を有する鎖を有するモノグリセリド、ジグリセリド、および/またはトリグリセリド)(例えば、Capmul MCM)、
プロピレングリコール内のカプリル酸/カプリン酸の混合ジエステル(例えば、Captex 200)、
プロピレングリコールジカプレートエステル(例えば、Captex 100)、ならびに
HLBが6〜7であるグリセロールモノカプレート/カプリレート(例えば、Rylo MG10 Pharma、Rylo MG8 Pharma)
が含まれる。
【0071】
本発明の特定の態様において、医薬組成物は、経口医薬組成物などの医薬組成物で一般に見られるコーティング剤でコーティングされ得る。既知のコーティングには、例えば、糖衣、フィルムコーティング、例えば可塑剤および顔料を含めたポリマーおよび多糖ベースのコーティング、二酸化チタンなどの不透明な材料を含むコーティング、真珠光沢効果を有するコーティング、制御放出コーティング、ならびに腸溶コーティングが含まれる。医薬組成物は、カプセル、例えば、腸溶コーティングされたカプセル、ソフトカプセル、ハードカプセル、または腸溶性ソフトカプセル内に充填され得る。
【0072】
1つの実施形態において、コーティングは、薬剤(インスリン誘導体)が放出される部位を制御するために用いられ得る少なくとも1つの放出調節ポリマーを含む。調節放出ポリマーは、例えばEudragit Application Guidelines、Evonik Industries、第11版、2009年9月において記載されているような、ポリメタクリレートポリマー、例えば、Eudragit(登録商標)という商品名で販売されているポリメタクリレートポリマー(Evonik Rohm GmbH、Darmstadt、Germany)、例えば、Eudragit L30 D55、Eudragit L100-55、Eudragit L100、Eudragit S100、Eudragit S12,5、Eudragit FS30D、Eudragit NE30D、およびその混合物であり得る。
【0073】
本明細書において用いられる場合、用語「マイクロエマルジョン前濃縮物」は、経口的適用後に、水性媒質中、例えば水内または胃腸液内でマイクロエマルジョンまたはナノエマルジョン、例えば、水中油型マイクロエマルジョンまたはナノエマルジョン、膨潤ミセル、ミセル溶液を自然に形成する組成物を意味する。この組成物は、例えば1:5、1:10、1:50、1:100、またはそれを超える希釈で水性媒質中に希釈されると、自己乳化する。
【0074】
「SEDDS」(自己乳化薬剤送達系)は、本明細書において、穏やかな撹拌またはGI管において遭遇する消化運動の条件下で水性媒質に曝されると細かい水中油型エマルジョンを自然に形成する、親水性コンポーネント、界面活性剤、場合によって共界面活性剤、および薬剤の混合物であると定義される。
【0075】
「SMEDDS」(自己マイクロ乳化薬剤送達系)は、本明細書において、穏やかな撹拌またはGI管において遭遇する消化運動の条件下で水性媒質に曝されると水中油型マイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンを迅速に形成する、親水性コンポーネント、界面活性剤、場合によって共界面活性剤、および薬剤の等方性混合物であると定義される。
【0076】
「SNEDDS」(自己ナノ乳化薬剤送達系)は、本明細書において、穏やかな撹拌またはGI管において遭遇する消化運動の条件下で水性媒質に曝されるとナノエマルジョン(例えばPCSによって測定すると直径が20nm未満の液滴サイズ)を迅速に形成する、親水性コンポーネント、HLBが10を超える少なくとも1つの界面活性剤、場合によって共界面活性剤、および薬剤の等方性混合物であると定義される。
【0077】
本明細書において用いられる場合、用語「エマルジョン」は、そのコンポーネントが水性媒質と接触すると自然にまたはほぼ自然に形成される、わずかに不透明な、乳白色の、または不透明なコロイド粗分散体を言う。
【0078】
本明細書において用いられる場合、用語「マイクロエマルジョン」は、そのコンポーネントが水性媒質と接触すると自然にまたはほぼ自然に形成される、澄明なまたは半透明の、わずかに不透明な、乳白色の、透明な、またはほぼ透明なコロイド分散体を言う。
【0079】
マイクロエマルジョンは、熱力学的に安定であり、例えばMALVERN ZETASIZER Nano ZSを用いる標準的な光散乱技術によって測定すると平均直径が150nm未満の、例えば固体状態または液体状態(例えば、液体脂質の粒子または液滴)の、均一に分散した粒子またはドメインを含有する。1つの態様において、本発明に従った医薬組成物が水性媒質と接触すると、平均直径が100nm未満の、例えば50nm未満の、40nm未満の、および30nm未満の均一に分散した粒子またはドメインを含有するマイクロエマルジョンが形成される。
【0080】
用語「ドメインサイズ」は、本明細書において用いられる場合、反復散乱単位(repetitive scattering units)を言い、例えば小角X線によって測定され得る。本発明の1つの態様において、ドメインサイズは150nmよりも小さく、別の態様においては100nmよりも小さく、別の態様においては50nmよりも小さく、別の態様においては20nmよりも小さく、別の態様においては15nmよりも小さく、さらに別の態様においては10nmよりも小さい。
【0081】
本明細書において用いられる場合、用語「ナノエマルジョン」は、そのコンポーネントが水性媒質と接触すると自然にまたはほぼ自然に形成される、粒子または液滴のサイズが直径で20nm未満である(例えば、PCSによって測定すると)、澄明なもしくは半透明の、わずかに不透明な、乳白色の、透明な、またはほぼ透明なコロイド分散体を言う。1つの態様において、本発明に従った医薬組成物が水性媒質と接触すると、平均直径が20nm未満であり、例えば15nm未満、10nm未満であり、かつ約2〜4nmを超える、均一に分散した粒子またはドメインを含有する、マイクロエマルジョンが形成される。
【0082】
1つの態様において、本発明の医薬組成物は、水性媒質と接触すると、光子相関分光法(PCS)によって測定すると直径が100nm未満のドメインを有するマイクロエマルジョンを形成する。PCSはまた、動的光散乱(DLS)としても知られている。ブラウン運動によって生じる、粒子の秩序近傍(near-order)の時間減衰は、ストークス・アインシュタインの関係を介するナノ粒子のサイズの評価に用いられる。一定温度Tでは、この方法には、平均粒子サイズおよびその分布関数(および体積分率では、屈折率n)を推定するために、懸濁流体の粘度hのみが分かっていればよい。
【0083】
1つの態様において、本発明に従った医薬組成物が水性媒質と接触すると、ナノエマルジョンが形成される。
【0084】
本明細書において用いられる場合、用語「自然に分散性の」は、前濃縮物について言及される場合、本発明の組成物のコンポーネントが水性媒質と接触した場合に、例えば手による短時間の、例えば10秒間の単純な振とうによって、水性媒質で希釈されると、ナノエマルジョン、マイクロエマルジョン、エマルジョン、および他のコロイド系などのコロイド構造をもたらし得る組成物を言う。1つの態様において、本発明に従った自然に分散性の濃縮物は、SEDDS、SMEDDS、またはSNEDDSである。
【0085】
本発明に従った医薬組成物は、液体形態である。
【0086】
本明細書において用いられる場合、用語「液体」は、室温(「RT」)で液体状態にあり、例えば20℃未満の融点を有する、コンポーネントまたは組成物を意味する。本明細書において用いられる場合、室温(RT)はおよそ20〜25℃を意味する。
【0087】
1つの態様において、本発明に従った液体の非水性医薬組成物は、約4℃などの冷蔵温度で液体形態である。
【0088】
用語「約」は、本明細書において用いられる場合、記載された数値の、プラスまたはマイナス10%などの妥当な近似にあることを意味する。
【0089】
本発明の液体の非水性医薬組成物は、物理的におよび化学的に安定であり、すなわち、前記組成物の保存期間は薬剤組成物として適切であるために十分であり、したがって医薬組成物は常温保存可能である。
【0090】
用語「常温保存可能な医薬組成物」は、本明細書において用いられる場合、少なくとも、治療用タンパク質に関連する規制当局によって必要とされる期間にわたり安定である医薬組成物を意味する。好ましくは、常温保存可能な医薬組成物は、5℃で少なくとも1年にわたり安定である。貯蔵性には、化学的安定性および物理的安定性が含まれる。化学的不安定性は、共有結合の分解、例えば加水分解、ラセミ化、酸化、または架橋を伴う。製剤の化学的安定性は、逆相(RP-HPLC)クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって評価される。本発明の1つの態様において、保存期間の間のペプチドに関連する不純物の形成は、総ペプチド含有量の20%未満である。本発明のさらなる態様において、保存期間の間のペプチドに関連する不純物の形成は、10%未満である。本発明のさらなる態様において、保存期間の間のペプチドに関連する不純物の形成は、5%未満である。RP-HPLC分析は、典型的には、水-アセトニトリル混合物または水-エタノール混合物において行われる。1つの態様において、RP-HPLCステップにおける溶媒は、塩、例えばNa2SO4、(NH4)2SO4、NaCl、KCl、ならびにバッファー系、例えばホスフェートおよびシトレートおよびマレイン酸を含む。溶媒中の塩の所要の濃度は、約0.1Mから約1M、好ましくは0.2Mから0.5Mの間、最も好ましくは0.3から0.4Mの間であり得る。適切な時間内にカラムからの溶出を達成するためには、塩濃度の増大には、有機溶媒の濃度の増大が必要である。物理的不安定性は、非変性構造に対する立体構造の変化を伴い、これには、高次構造の喪失、凝集、フィブリル化、沈殿、または表面への吸着が含まれる。インスリンペプチドなどのペプチド、GLP-1化合物、およびアミリン化合物は、フィブリル化に起因して不安定となりやすいことが知られている。製剤の物理的安定性は、例えば異なる温度で様々な時間にわたり製剤を保存した後の目視検査および比濁法の、従来の手段によって評価することができる。立体構造の安定性は、例えば、Hudson and Andersen、Peptide Science、第76巻(4)、298〜308頁(2004)によって記載されているように、円二色性およびNMRによって評価することができる。
【0091】
インスリンペプチドの生物学的活性は、例えばWO2005/012347において記載されているような、当業者によって知られているアッセイで測定することができる。
【0092】
本発明の1つの態様において、本発明に従った医薬組成物は、6週間を超える使用にわたり、および3年間を超える保存にわたり安定である。
【0093】
本発明の別の態様において、本発明に従った医薬組成物は、4週間を超える使用にわたり、および3年間を超える保存にわたり安定である。
【0094】
本発明のさらなる態様において、本発明に従った医薬組成物は、4週間を超える使用にわたり、および2年間を超える保存にわたり安定である。
【0095】
本発明のさらなる態様において、本発明に従った医薬組成物は、2週間を超える使用にわたり、および2年間を超える保存にわたり安定である。
【0096】
本発明のさらなる態様において、本発明に従った医薬組成物は、1週間を超える使用にわたり、および1年間を超える保存にわたり安定である。
【0097】
1つの態様において、本発明に従った医薬組成物は、高血糖、2型糖尿病、耐糖能異常、および1型糖尿病を治療または予防するための薬剤を調製するために用いられる。
【0098】
本明細書において用いられる「インスリンペプチド」、「1つの(an)インスリンペプチド」、または「その(the)インスリンペプチド」は、CysA7とCysB7との間、およびCysA20とCysB19との間のジスルフィド架橋、ならびにCysA6とCysA11との間の内部ジスルフィド架橋を有するヒトインスリン、またはそのインスリン類似体もしくはインスリン誘導体を意味する。
【0099】
ヒトインスリンは、2つのポリペプチド鎖、すなわちそれぞれ21個および30個のアミノ酸残基を含有するA鎖およびB鎖からなる。A鎖およびB鎖は、2つのジスルフィド架橋によって相互に連結している。ほとんどの他の種のインスリンは類似であるが、いくつかの位置にアミノ酸置換を含有し得る。
【0100】
本明細書において用いられるインスリン類似体は、天然のインスリンにおいて生じる少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/もしくは置換による、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加による、天然のインスリンの構造、例えばヒトインスリンの構造に形式的に由来し得る分子構造を有するポリペプチドである。
【0101】
1つの態様において、本発明に従ったインスリン類似体は、ヒトインスリンと比較して8個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。1つの態様において、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比較して7個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。1つの態様において、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比較して6個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比較して5個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比較して4個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比較して3個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様において、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比較して2個未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。
【0102】
本発明に従ったインスリン誘導体は、天然のインスリンであるか、あるいは、例えば、インスリン骨格の1つまたは複数の位置に側鎖を導入することによって、またはインスリンにおけるアミノ酸残基の基を酸化もしくは還元することによって、または遊離カルボキシル基をエステル基もしくはアミド基に変換することによって化学的に修飾されているインスリン類似体である。他の誘導体は、ヒトインスリンのB29位またはヒトインスリンのdesB30位などにある遊離アミノ基またはヒドロキシル基をアシル化することによって得られる。
【0103】
インスリン誘導体は、したがって、少なくとも1つの共有結合性の修飾、例えばインスリンペプチドの1つまたは複数のアミノ酸に付いた側鎖を含む、ヒトインスリンまたはインスリン類似体である。
【0104】
本明細書において、インスリンペプチドの命名は、以下の原則に従って行われる:名称は、ヒトインスリンと比較した突然変異および修飾(アシル化)として付与される。「desB30ヒトインスリン」は、したがって、B30アミノ酸残基を欠く、ヒトインスリンの類似体を意味する。同様に、「desB29desB30ヒトインスリン」は、B29およびB30アミノ酸残基を欠く、ヒトインスリンの類似体を意味する。「B1」、「A1」などは、それぞれ、インスリンのB鎖における1位のアミノ酸残基(N末端から数えて)およびインスリンのA鎖における1位のアミノ酸残基(N末端から数えて)を意味する。特定の位置におけるアミノ酸残基はまた、例えばPheB1として示され得、これは、B1位のアミノ酸残基がフェニルアラニン残基であることを意味する。
【0105】
1つの態様において、本発明の医薬組成物において用いるためのインスリン誘導体は、アミド結合を介して、インスリンペプチドのB鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基、またはB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基に付いた側鎖を有する。
【0106】
1つの態様において、側鎖は、少なくとも1つのOEG基を含む。1つの態様において、側鎖は、4から22個の炭素原子を有する脂肪二酸部分を含む。1つの態様において、側鎖は、少なくとも1つの遊離カルボン酸基または中性pHで負に荷電する基を含む。1つの態様において、側鎖は、側鎖における個別のコンポーネントを、アミド結合、エーテル結合、またはアミン結合を介して互いに連結する、少なくとも1つのリンカーを含み、前記リンカーは、場合によって、遊離カルボン酸基を含む。
【0107】
1つの態様において、側鎖は、少なくとも1つのOEG基、4から22個の炭素原子を有する脂肪二酸部分、少なくとも1つの遊離カルボン酸基、または中性pHで負に荷電する基、および場合によって、側鎖における個別のコンポーネントを、アミド結合、エーテル結合、またはアミン結合を介して互いに連結する、少なくとも1つのリンカーを含み、前記リンカーは、場合によって、遊離カルボン酸基を含む。
【0108】
本発明の1つの態様において、側鎖は、1から20個のOEG基、1から10個のOEG基、または1から5個のOEG基を含む。
【0109】
1つの態様において、本発明に従った非水性医薬組成物におけるインスリン誘導体は、インスリンペプチドの1つまたは複数のアミノ酸においてアシル化されたインスリンペプチドである。
【0110】
1つの態様において、本発明に従った非水性医薬組成物におけるインスリン誘導体は、インスリンペプチドのB鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基、および/またはB鎖に存在する1つもしくは複数のLys残基のε-アミノ基へのアミド結合を介してアシル化されているインスリンペプチドである。
【0111】
アシル部分の命名については、命名はIUPAC命名法に従って行われ、他のケースではペプチド命名法として行われる。例えば、アシル部分
【0112】
【化1】
【0113】
の命名は、例えば、「オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG」または「17-カルボキシヘプタデカノイル-γ-L-Glu-OEG-OEG」であり得、ここでOEGは-NH(CH2)2O(CH2)2OCH2CO-の略記法であり、γ-L-Glu(またはg-L-Glu)はアミノ酸のガンマグルタミン酸部分のL形態の略記法である。
【0114】
修飾されたペプチドまたはタンパク質のアシル部分は、キラルアミノ酸部分の立体構造がDもしくはL(または、R/S用語を用いる場合にはRまたはS)である純粋なエナンチオマーの形態であり得るか、またはエナンチオマーの混合物の形態(DおよびL/RおよびS)であり得る。本発明の1つの態様において、アシル部分は、エナンチオマーの混合物の形態である。1つの態様において、アシル部分は、純粋なエナンチオマーの形態である。1つの態様において、アシル部分のキラルアミノ酸部分は、L形態である。1つの態様において、アシル部分のキラルアミノ酸部分は、D形態である。
【0115】
1つの態様において、本発明に従った非水性医薬組成物におけるインスリン誘導体は、タンパク質分解性の分解に対して安定化され(特異的な突然変異による)、かつB29-リジンでさらにアシル化された、インスリンペプチドである。タンパク質分解性の分解に対して安定化された(特異的な突然変異による)インスリンペプチドの非限定的な例は、例えば、参照することによって本明細書に組み込まれるWO2008/034881において見ることができる。
【0116】
本発明のアシル化されたインスリンペプチドは、モノ置換されていてよく、プロテアーゼ安定化されたインスリン分子におけるリジンアミノ酸残基に付いたただ1つのアシル化基を有する。
【0117】
1つの態様において、インスリンペプチドは、インスリンペプチドのB鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基、またはB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基に対してアシル化されている。1つの態様において、インスリンペプチドは、インスリンペプチドのB29位に存在するLys残基のε-アミノ基に対してアシル化されている。
【0118】
本発明の液体の非水性医薬組成物に適したアシル化されたインスリンペプチドの非限定的なリストは、例えば、WO2009/115469の、第25頁で始まりその後6頁続く一節において見ることができる。
【0119】
1つの態様において、本発明に従った非水性の液体の医薬組成物におけるインスリン誘導体は、WO2009/115469において見られるアシル化されたインスリン、例えば、WO2009/115469の請求項8において列挙されるアシル化されたインスリンである。
【0120】
本発明の1つの態様において、アシル化されたインスリンペプチドは、
B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB27 desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB27 desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、および
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル)A14E B25H desB30ヒトインスリン
からなる群から選択される。
【0121】
本発明の別の態様において、インスリン誘導体は、B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンである。
【0122】
インスリンペプチドは、医薬組成物全体の最大約20重量%、例えば最大約10重量%の量で、または約0.1重量%から、例えば約1重量%から存在し得る。本発明の1つの態様において、インスリンペプチドは、組成物全体の約0.1重量%から約20重量%の量で、さらなる態様においては約0.1重量%から15重量%、0.1重量%から10重量%、1重量%から8重量%、または約1重量%から5重量%の量で存在する。しかし、インスリンペプチドの特定のレベルの選択は、極性有機溶媒におけるインスリンペプチドの溶解度、または用いられる最適な親水性コンポーネントもしくは界面活性剤、またはその組み合わせ、投与態様、ならびに患者のサイズおよび状態を含めた、薬学分野で周知の因子に従って行われる。
【0123】
各単位投与量は、1mgから200mgのインスリンペプチド、例えば、約1mg、2mg、5mg、10mg、15mg、25mg、50mg、80mg、90mg、100mg、150mg、200mgのインスリンペプチド、例えば、5mgから200mgの間のインスリンペプチドを適切に含有する。本発明の1つの態様において、各単位投与量は、10mgから200mgの間のインスリンペプチドを含有する。さらなる態様において、単位投与形態は、10mgから100mgの間のインスリンペプチドを含有する。本発明のさらなる態様において、単位投与形態は、20mgから80mgの間のインスリンペプチドを含有する。本発明のさらなる態様において、単位投与形態は、30mgから60mgの間のインスリンペプチドを含有する。本発明のさらなる態様において、単位投与形態は、30mgから50mgの間のインスリンペプチドを含有する。このような単位投与形態は、特定の治療目的に応じる毎日1〜5回の投与に適している。
【0124】
インスリンなどのポリペプチドおよびペプチドの生産は、当技術分野において周知である。ポリペプチドまたはペプチドは、例えば、従来のペプチド合成、例えば、t-Boc化学またはFmoc化学または他の良く確立された技術を用いる固相ペプチド合成によって生産され得る。例えば、Greene and Wuts、「Protective Groups in Organic synthesys」、John Wiley & Sons、1999を参照されたい。ポリペプチドまたはペプチドはまた、(ポリ)ペプチドをコードするDNA配列を含有しペプチドの発現を可能にする条件下で適切な栄養培地において(ポリ)ペプチドを発現し得る宿主細胞を培養することを含む方法によって生産され得る。非天然アミノ酸残基を含む(ポリ)ペプチドでは、組換え細胞は、例えばtRNA突然変異体を用いることによって非天然アミノ酸が(ポリ)ペプチド内に組み込まれるように修飾されるべきである。
【0125】
さらなる態様において、本発明は、インスリンペプチドを含有するSEDDS、SMEDDS、またはSNEDDS(腸溶コーティングされたカプセル、ソフトカプセル、または腸溶性ソフトカプセルなどのカプセル内に充填され得る)などの医薬組成物を調製するためのプロセスを提供し、このプロセスは、以下のステップを含む:
(a)まず、インスリンペプチドを極性有機溶媒(プロピレングリコールなど)に溶解するステップ、および
(b)次に、非イオン性界面活性剤と場合によってさらなるコンポーネントとを混合するステップ。
【0126】
本発明の1つの態様において、医薬組成物を調製するためのプロセスは、低温(例えば、室温または室温未満)で実施される。
【0127】
本発明に従った医薬組成物を調製する場合、インスリンペプチドは、例えば、以下の方法を用いて極性有機溶媒に溶解され得る:
a)場合によって賦形剤を含むインスリンペプチドの水溶液を提供すること、
b)pH値を、インスリンペプチドのpIの1単位あるいは2単位あるいは2.5pH単位上または下である標的pH値に調整すること、
c)凍結乾燥または噴霧乾燥などの従来の乾燥技術によってインスリンペプチドから水を除去すること(脱水すること)、ならびに
d)例えば撹拌すること、回転させること、または他の混合方法によって、インスリンペプチドを前記極性非水性溶媒内に混合および溶解すること、
e)場合によって、非水性インスリンペプチド溶液を濾過または遠心分離して、溶解していない無機塩を除去すること、
f)場合によって、例えば固体乾燥剤を添加することまたは真空乾燥によって、残留量の水を除去すること。
【0128】
1つの態様において、インスリンペプチドは、以下の方法によって極性有機溶媒内に溶解される:
a)場合によって亜鉛およびグリシルグリシンなどの安定剤を含有するインスリンペプチドの水溶液を提供すること、
b)例えば、塩酸または水酸化ナトリウムなどの不揮発性の塩基または酸を溶液に添加することによって、pH値を、インスリンペプチドのpIの1単位あるいは2単位あるいは2.5pH単位上または下に調整すること、
c)凍結乾燥および噴霧乾燥などの従来の乾燥技術によってインスリンペプチドから水を除去すること(脱水すること)、
d)例えば撹拌すること、回転させること、または他の混合方法によって、インスリンペプチドを前記極性非水性溶媒内に混合および溶解すること、
e)場合によって、非水性インスリンペプチド溶液を濾過または遠心分離して、溶解していない無機塩を除去すること、
f)場合によって、例えば固体乾燥剤を添加することまたは真空乾燥によって、残留量の水を除去すること。
【0129】
「揮発性の塩基」は、加熱の際におよび/または減圧下である程度蒸発する塩基、例えば、室温で蒸気圧が65Paを超える塩基、または室温で蒸気圧が65Paを超える塩基を含めた水性共沸混合物を意味する。揮発性の塩基の例は、水酸化アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、第二級アミン、第三級アミン、アリールアミン、脂肪族アミン、または重炭酸アンモニウム、または組み合わせである。例えば、揮発性の塩基は、重炭酸塩、炭酸塩、アンモニア、ヒドラジン、または有機塩基、例えば低級脂肪族アミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、およびそれらの塩であり得る。さらに、揮発性の塩基は、水酸化アンモニウム、エチルアミン、またはメチルアミン、またはその組み合わせであり得る。
【0130】
「揮発性の酸」は、加熱の際におよび/または減圧下である程度蒸発する酸、例えば、室温で蒸気圧が65Paを超える酸、または室温で蒸気圧が65Paを超える酸を含めた水性共沸混合物を意味する。揮発性の酸の例は、炭酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、および酪酸である。
【0131】
本明細書において言及される「不揮発性の塩基」は、加熱の際に蒸発しないかまたは部分的にのみ蒸発する塩基、例えば、室温で蒸気圧が65Pa未満の塩基を意味する。不揮発性の塩基は、アルカリ金属の塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の塩、アルカリ土類金属の水酸化物、およびアミノ酸、またはこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。不揮発性の塩基の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、および酸化カルシウムである。
【0132】
本明細書において言及される「不揮発性の酸」は、加熱の際に蒸発しないかまたは部分的にのみ蒸発する酸、例えば、室温で蒸気圧が65Pa未満の酸を意味する。不揮発性の酸の例は、塩酸、リン酸、および硫酸である。
【0133】
1つの態様において、本発明に従ったインスリンペプチドは、プロピレングリコールにおいて可溶性である。別の態様において、本発明に従ったインスリンペプチドは、少なくとも20%w/wのインスリンペプチドを含むプロピレングリコール溶液において可溶性である。本発明のさらに別の態様において、本発明に従ったインスリンペプチドは、少なくとも30%w/wのインスリンペプチドを含むプロピレングリコール溶液において可溶性である。
【0134】
本発明の1つの態様において、インスリンペプチドは、極性有機溶媒における溶解度を向上させるために、極性有機溶媒に溶解する前にpHを最適化される。
【0135】
用語「pHを最適化される」を用いる場合、これは、本明細書において、インスリンペプチドが、水溶液におけるインスリンペプチドのpIから少なくとも1pH単位である標的pHで脱水されていることを意味する。したがって、本発明の1つの態様において、標的pHは、インスリンペプチドの等電点の1pH単位超上である。本発明の別の態様において、標的pHは、インスリンペプチドの等電点の1pH単位超下である。さらなる態様において、標的pHは、インスリンペプチドのpIの1.5pH単位超上または下である。さらなる態様において、標的pHは、インスリンペプチドのpIの2.0pH単位以上上または下である。さらなる態様において、標的pHは、インスリンペプチドのpIの2.5pH単位以上上または下である。さらなる態様において、標的pHは、インスリンペプチドのpIよりも上である。
【0136】
用語「脱水された」は、インスリンペプチドに関して本明細書において用いられる場合、水溶液から乾燥されたインスリンペプチドを言う。用語「標的pH」は、本明細書において用いられる場合、脱水されたインスリンペプチドがおよそ40mg/ml以上の濃度まで純水内に再水和される場合に確立する水性pHを言う。標的pHは、典型的には、インスリンペプチドが乾燥によって除去された元である水性インスリンペプチド溶液のpHに同一である。しかし、溶液が揮発性の酸または塩基を含有する場合には、インスリンペプチド溶液のpHは標的pHに同一ではない。インスリンペプチドのpHの変遷が、極性有機溶媒内に可溶化され得るインスリンペプチドの量の決定要因となることが明らかにされている。
【0137】
用語「インスリンペプチドのpI」は、本明細書において用いられる場合、インスリンペプチドの等電点を言う。
【0138】
用語「等電点」は、本明細書において用いられる場合、ペプチドなどの高分子の総正味荷電がゼロであるpH値を意味する。ペプチドでは、いくつかの荷電基が存在し得、等電点では、全てのこれらの荷電の合計はゼロである。等電点を超えるpHでは、ペプチドの総正味荷電は負となり、一方、等電点未満のpH値では、ペプチドの総正味荷電は正となる。
【0139】
タンパク質のpIは、等電点電気泳動などの電気泳動技術によって、実験的に決定され得る。
【0140】
pH勾配は、ポリアクリルアミドゲルなどの抗対流(anticonvective)媒質において確立される。ペプチドが系に導入されると、ペプチドは、ゲル全体に印加された電界の影響下で移動する。正に荷電したペプチドは、陰極に移動する。最終的には、移動しているペプチドは、その正味荷電がゼロであるpH勾配内の点に達し、フォーカスされたと言われる。これは、ペプチドの等電pH(pI)である。ペプチドは、次に、ゲル上で固定され、染色される。ペプチドのpIが次に、既知のpI値を有するマーカー分子と比較したゲル上のペプチドの位置の比較によって決定され得る。
【0141】
所与のpH値でのペプチドの正味荷電は、従来の方法によって当業者によって理論的に確立され得る。本質的には、ペプチドの正味荷電は、ペプチド、すなわちアスパラギン酸(β-カルボキシル基)、グルタミン酸(δ-カルボキシル基)、システイン(チオール基)、チロシン(フェノール基)、ヒスチジン(イミダゾール側鎖)、リジン(ε-アンモニウム基)、およびアルギニン(グアニジウム基)における荷電したアミノ酸の分数電荷の合計に等しい。さらに、ペプチド末端基(α-NH2およびα-COOH)の荷電も考慮に入れるべきである。イオン性基の分数電荷は、固有のpKa値から計算され得る。
【0142】
インスリンペプチドの乾燥、すなわち脱水は、任意の従来の乾燥方法によって、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、日光乾燥、および接触乾燥によって行うことができる。本発明の1つの態様において、インスリンペプチド溶液は、約10%未満の水分含有量を得るように乾燥される。水分含有量は、実験部分で述べるように、乾燥試験での損失を元に計算すると/乾燥試験での損失によって測定すると(重量的に)、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満であり得る。
【0143】
本発明の1つの態様において、インスリンペプチドは噴霧乾燥される。本発明のさらなる態様において、インスリンペプチドは凍結乾燥される。
【0144】
以下は、本発明の範囲内にさらに包含される態様の非限定的なリストである。
【0145】
1.少なくとも1つのインスリンペプチド、少なくとも1つの半極性のプロトン性有機溶媒、およびHLBが10を超える少なくとも2つの非イオン性界面活性剤を含む、液体医薬組成物。
【0146】
2.油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤を含有しない、態様1に記載の医薬組成物。
【0147】
3. 10%w/w未満の水を含む、態様1または2に記載の医薬組成物。
【0148】
4.非水性である、態様1〜3のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0149】
5.残りの成分が界面活性剤以外の賦形剤である、態様1または3〜4のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0150】
6.水性媒質中に希釈された後にマイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンを形成する、態様1〜5のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0151】
7.水性媒質中に100倍希釈された後に直径が100nm未満の液滴サイズを有するエマルジョンを形成する、態様1〜6のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0152】
8.液滴サイズが動的光散乱によって分析される、態様6または7に記載の医薬組成物。
【0153】
9.油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが8未満の界面活性剤を含有しない、態様1〜8のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0154】
10.油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが9未満の界面活性剤を含有しない、態様1〜9のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0155】
11.油もしくは任意の他の脂質コンポーネントまたはHLBが10未満の界面活性剤を含有しない、態様1〜10のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0156】
12.前記少なくとも2つの非イオン性界面活性剤が、11を超えるHLBを有する、態様1〜11のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0157】
13.前記少なくとも2つの非イオン性界面活性剤が、12を超えるHLBを有する、態様1〜12のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0158】
14.HLBが10を超える、あるいはHLBが11を超える、あるいはHLBが12を超える少なくとも3つの非イオン性界面活性剤を含む、態様1〜13のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0159】
15.HLBが10を超える、あるいはHLBが11を超える、あるいはHLBが12を超える2つまたは3つの非イオン性界面活性剤を含む、態様1〜14のいずれか1つに記載の医薬組成物であって、残りの成分が界面活性剤以外の賦形剤である医薬組成物。
【0160】
16.HLBが10を超える、あるいはHLBが11を超える、あるいはHLBが12を超える2つの非イオン性界面活性剤を含む、態様15に記載の医薬組成物であって、残りの成分が界面活性剤以外の賦形剤である医薬組成物。
【0161】
17.HLBが10を超える、あるいはHLBが11を超える、あるいはHLBが12を超える3つの非イオン性界面活性剤を含む、態様15に記載の医薬組成物であって、残りの成分が界面活性剤以外の賦形剤である医薬組成物。
【0162】
18.半極性のプロトン性有機溶媒が、比誘電率が20〜50の範囲のプロトン性溶媒である、態様1〜17のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0163】
19.半極性のプロトン性有機溶媒がポリオールである、態様1〜18のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0164】
20.半極性のプロトン性有機溶媒がグリセロールまたはプロピレングリコールである、態様1〜19のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0165】
21.半極性のプロトン性有機溶媒がプロピレングリコールである、態様1〜20のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0166】
22.前記非イオン性界面活性剤が室温で液体である、態様1〜21のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0167】
23.溶液の形態である、態様1〜22のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0168】
24.前記非イオン性界面活性剤が16から20個の炭素原子を有するいかなる長鎖脂肪酸基(例えば、遊離長鎖脂肪酸または長鎖脂肪酸エステル)も含まない、態様1〜23のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0169】
25.前記非イオン性界面活性剤の1つまたは複数が中鎖脂肪酸基を含む、態様1〜24のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0170】
26.前記非イオン性界面活性剤の1つまたは複数が最大12個の炭素原子を有する脂肪酸基を含む、態様1〜25のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0171】
27.中鎖脂肪酸基が6から12個の炭素原子を有する、態様25に記載の医薬組成物。
【0172】
28.中鎖脂肪酸基が8から12個の炭素原子を有する、態様25または27に記載の医薬組成物。
【0173】
29.中鎖脂肪酸基が、C8脂肪酸(カプリレート)、C10脂肪酸(カプレート)、またはC12脂肪酸(ラウレート)からなる群から選択される、態様25、27、または28に記載の医薬組成物。
【0174】
30.前記非イオン性界面活性剤の1つまたは複数が、Labrasol(カプリロカプロイルマクロゴールグリセリドとも名付けられている)、Tween 20(ポリソルベート20またはポリエチレングリコールソルビタンモノラウレートとも名付けられている)、Tween 80(ポリソルベート80とも名付けられている)、ジグリセロールモノカプリレート、ポリグリセロールカプリレート、およびCremophor RH40からなる群から選択される、態様1〜29のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0175】
31.前記非イオン性界面活性剤が、Tween 20、Tween 80、ジグリセロールモノカプリレート、およびポリグリセロールカプリレートからなる群から選択される、態様1〜30のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0176】
32.前記非イオン性界面活性剤の1つがジグリセロールモノカプリレートである、態様1〜31のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0177】
33.半極性のプロトン性有機溶媒が約1%から約15%の量で存在する、態様1〜32のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0178】
34.半極性のプロトン性有機溶媒が約5%から約15%の量で存在する、態様1〜33のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0179】
35.半極性のプロトン性有機溶媒が約10%から約15%の量で存在する、態様1〜34のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0180】
36. 5%w/w未満の水を含む、態様1〜3または5〜36のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0181】
37. 2%w/w未満の水を含む、態様36に記載の医薬組成物。
【0182】
38. 1%w/w未満の水を含む、態様37に記載の医薬組成物。
【0183】
39.インスリンペプチドがインスリン誘導体である、態様1〜38のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0184】
40.インスリン誘導体が、アシル化されたインスリンペプチドである、態様1〜39のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0185】
41.インスリン誘導体が、1つまたは複数の位置で誘導体化されているプロテアーゼ安定化されたインスリンである、態様1〜40のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0186】
42.インスリン誘導体が、1つまたは複数の位置でアシル化されているプロテアーゼ安定化されたインスリンである、態様1〜41のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0187】
43.インスリン誘導体が、モノ置換されており、インスリン分子内のリジンアミノ酸残基に付いているただ1つのアシル化基を有する、態様1〜42のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0188】
44.インスリンペプチドが、インスリンペプチドのB鎖のN末端アミノ酸残基のα-アミノ基またはB鎖に存在するLys残基のε-アミノ基に対してアシル化されている、態様1〜43のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0189】
45.インスリンペプチドが、インスリンペプチドのB29位に存在するLys残基のε-アミノ基に対してアシル化されている、態様1〜44のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0190】
46.インスリン誘導体が、プロテアーゼ安定化されたインスリンに付いたアシル部分を有するプロテアーゼ安定化されたインスリンであり、アシル部分が一般式:
Acy-AA1n-AA2m-AA3p- (I)
を有し、
式中、nは、0または1から3の範囲の整数であり、
mは、0または1から10の範囲の整数であり、
pは、0または1から10の範囲の整数であり、
Acyは、約8から約24個の炭素原子を含む脂肪酸または脂肪二酸であり、
AA1は、中性の線形または環状のアミノ酸残基であり、
AA2は、酸性アミノ酸残基であり、
AA3は、中性のアルキレングリコール含有アミノ酸残基であり、
かつ、式においてAA1、AA2、およびAA3が出現する順序が、独立して入れ替え可能であり得る、態様39〜45のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0191】
47.nが0である、態様46に記載の医薬組成物。
【0192】
48.mが1から10の範囲の整数、例えば1から5、例えば1である、態様46または47に記載の医薬組成物。
【0193】
49.pが1から10の範囲の整数、例えば1から5、1から4、1から3、1、または2である、態様46〜48のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0194】
50.AA3がOEGである、態様46〜49のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0195】
51.インスリン誘導体が、
B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン、B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB27 desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB27 desB30ヒトインスリン、
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン、および
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル)A14E B25H desB30ヒトインスリン
からなる群から選択される、態様39〜50のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0196】
52.インスリン誘導体がプロピレングリコールにおいて可溶性である、態様1〜51のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0197】
53.インスリン誘導体が、少なくとも20%w/wのインスリン誘導体を含むプロピレングリコール溶液において可溶性である、態様1〜52のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0198】
54.インスリン誘導体が、少なくとも30%w/wのインスリン誘導体を含むプロピレングリコール溶液において可溶性である、態様1〜53のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0199】
55.インスリンペプチドがSMEDDSまたはSNEDDS内に溶解している、態様1〜54のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0200】
56.PCSによって測定した場合に直径が100nm未満のドメインを有するマイクロエマルジョンを形成する、態様1〜55のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0201】
57.PCSによって測定した場合に直径が50nm未満のドメインを有するマイクロエマルジョンを形成する、態様1〜56のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0202】
58.PCSによって測定した場合に直径が40nm未満のドメインを有するマイクロエマルジョンを形成する、態様1〜57のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0203】
59.PCSによって測定した場合に直径が30nm未満のドメインを有するマイクロエマルジョンを形成する、態様1〜58のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0204】
60.PCSによって測定した場合に直径が20nm未満のドメインを有するナノエマルジョンを形成する、態様1〜59のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0205】
61.PCSによって測定した場合に直径が15nm未満のドメインを有するナノエマルジョンを形成する、態様1〜60のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0206】
62.それぞれの他の賦形剤が、10を超える、あるいは11を超える、あるいは12を超えるHLBを有する、態様1〜61のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0207】
63.エチレンジアミンなどのアルデヒドスカベンジャーをさらに含む、態様1〜62のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0208】
64.ソフトカプセルまたはハードカプセルなどのカプセル内に封入された、態様1〜63のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0209】
65.ハードカプセルまたはソフトカプセルが腸溶コーティングされている、態様64に記載の医薬組成物。
【0210】
66.態様1〜65のいずれか1つに記載の医薬組成物を生産する方法。
【0211】
67.(a)インスリン誘導体を極性有機溶媒に溶解するステップ、および
(b)次に、脂溶性コンポーネントと場合によって界面活性剤および/または親水性コンポーネントとを混合するステップ
を含む、態様1〜66のいずれか1つに記載の医薬組成物を生産する方法。
【0212】
68.a)インスリンを、水溶液におけるポリペプチドのpIから少なくとも1pH単位である標的pHで脱水するステップ、
b)脱水されたインスリンを、半極性のプロトン性溶媒に溶解するステップ、
c)HLBが10を超える少なくとも2つの非イオン性界面活性剤を、撹拌下で共にまたは段階的に添加するステップ、
d)液体製剤をソフトカプセル内に封入する、またはハードカプセル内に充填するステップ、
e)ソフトカプセルまたはハードカプセルを最適に腸溶コーティングするステップ
を含む、態様1〜67のいずれか1つに記載の医薬組成物を生産する方法。
【0213】
69.薬剤として用いるための、態様1〜65のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0214】
70.高血糖の治療における薬剤として用いるための、態様1〜65のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0215】
71.効果的な量の、態様1〜65のいずれか1つにおいて規定される医薬組成物を経口投与することを含む、高血糖を治療するための方法。
【0216】
(実施例)
インスリンの液体非水性医薬組成物の調製:
25mgのインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンをMilliQ水に溶解し、pHをNaOHで調整して、7から8のpHを得た。次のステップにおいて、溶液を凍結および凍結乾燥して中性のインスリン粉末を得、これを次に、RTでの穏やかな撹拌下および窒素下で、150mgのプロピレングリコールに溶解した。完全に溶解した後、550mgのジグリセロールカプリレートを、RTでの穏やかな撹拌下および窒素下で添加した。最終ステップにおいて、300mgのポリソルベート20(Tween 20)を、RTでの穏やかな撹拌下および窒素下で添加した。最終液体組成物は、澄明で、均質であった。
【0217】
同様に、インスリンの液体非水性医薬組成物を他の成分を用いて調製した。
【0218】
(実施例1)
インスリン誘導体、プロピレングリコール、Tween 20、Labrasol ALF、およびジグリセロールカプリレートを含む、液体の非水性医薬組成物。
麻酔した、一晩絶食させたSprague-Dawleyラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、Tween 20、Labrasol ALF、およびジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを作成した。インスリン誘導体をまずプロピレングリコールに溶解し、その後、一致する量の界面活性剤Tween 20、ジグリセロールカプリレート、およびLabrasol ALFを添加および混合して、均一な液体製剤を得た。
【0219】
結果を図1に示す。
【0220】
(実施例2)
実施例1の医薬組成物からのエマルジョンの粒子サイズ分布
実施例1において記載されているインスリン誘導体SEDDS、SMEDDS、およびSNEDDS医薬組成物をMilliQ水で50倍希釈し、得られたエマルジョン、マイクロエマルジョン、またはナノエマルジョンの粒子サイズ分布を、37℃で、Malvern Zetasizer Nano ZSを用いるPCS(DLS)によって分析した。マイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンをもたらすインスリン誘導体SMEDDS医薬組成物は、粗エマルジョンをもたらす製剤よりも高いインスリン血漿レベルを示した。
【0221】
結果をTable 2(表2)および図1に示す。
【0222】
【表2】
【0223】
(実施例3)
インスリン誘導体、プロピレングリコール、Tween 20、Labrasol ALF、およびジグリセロールカプリレートを含む、液体の非水性医薬組成物
麻酔した、一晩絶食させたSprague-Dawleyラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、Tween 20、Labrasol ALF、およびジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを作成した。インスリン誘導体をまずプロピレングリコールに溶解し、その後、一致する量の界面活性剤、Tween 20、ジグリセロールカプリレート、およびLabrasol ALFを添加および混合して、均一な液体製剤を得た。
【0224】
結果を図2に示す。
【0225】
(実施例4)
インスリン誘導体、プロピレングリコール、1つまたは複数の界面活性剤を含む、液体の非水性医薬組成物
絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、ジグリセロールカプリレート、Tween 20、Plurol Oleique、Labrasol ALF、超精製ポリソルベート20、およびRylo MG08 Pharmaを含むSMEDDSまたはSEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを作成した(平均±SEM、n=4〜6)。HLBが10を超える2つまたは3つの界面活性剤を含むSMEDDSは、HLBが7未満の少なくとも1つの脂溶性コンポーネント(Rylo MG08またはPlurol Oleiqueなど)を含む製剤、またはただ1つの界面活性剤を含む製剤よりも高い血漿インスリンレベルを示した。インスリン誘導体をまずプロピレングリコールに溶解し、その後、一致する量の界面活性剤または脂溶性コンポーネントを添加および混合して、均一な液体製剤を得た。
【0226】
結果を図3に示す。
【0227】
(実施例5)
実施例4の医薬組成物からのエマルジョンの粒子サイズ分布
インスリン誘導体SEDDS、SMEDDS、およびSNEDDSをMilliQ水で50倍希釈し、得られたエマルジョン、マイクロエマルジョン、またはナノエマルジョンの粒子サイズ分布を、37℃で、Malvern Zetasizer Nano ZSを用いるPCS(DLS)によって分析した。ナノエマルジョンをもたらすインスリン誘導体SNEDDSは、粗エマルジョンをもたらすSEDDSよりも高いインスリン血漿レベルを示した。
【0228】
結果をTable 3(表3)および図3に示す。
【0229】
【表3】
【0230】
(実施例6)
インスリン誘導体、プロピレングリコール、2つまたは3つの界面活性剤を含む、液体の非水性医薬組成物
絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、Tween 20、Labrasol ALF、およびジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを作成した(平均±SEM、n=6〜7)。HLBが10を超える2つまたは3つの界面活性剤を含むSMEDDS製剤は、ただ1つの界面活性剤および脂溶性コンポーネントRylo MG08を含む製剤よりも有意に高いインスリン誘導体血漿レベルを示した。インスリン誘導体をまずプロピレングリコールに溶解し、その後、一致する量の界面活性剤または脂溶性コンポーネントを添加および混合して、均一な液体製剤を得た。
【0231】
結果を図4に示す。
【0232】
(実施例7)
インスリン誘導体、プロピレングリコール、1つ、2つ、または3つの界面活性剤を含む、液体の非水性医薬組成物
絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、SEDDSまたはSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを作成した(平均±SEM、n=6〜7)。HLBが10を超える3つの界面活性剤を含むSMEDDS製剤は、2つの界面活性剤を含むSMEDDS、またはただ1つの界面活性剤を含むSEDDS製剤よりも高い血漿インスリンレベルを示した。インスリン誘導体をまずプロピレングリコールに溶解し、その後、一致する量の界面活性剤または脂溶性コンポーネントを添加および混合して、均一な液体製剤を得た。
【0233】
結果を図5に示す。
【0234】
(実施例8)
実施例7の医薬組成物からのエマルジョンの粒子サイズ分布
インスリン誘導体SEDDS、SMEDDS、およびSNEDDSをMilliQ水で50倍希釈し、得られたエマルジョン、マイクロエマルジョン、またはナノエマルジョンの粒子サイズ分布を、37℃で、Malvern Zetasizer Nano ZSを用いるPCS(DLS)によって分析した。ナノエマルジョンをもたらすインスリン誘導体SNEDDSは、マイクロエマルジョンをもたらすSMEDDSまたは粗エマルジョンをもたらすSEDDSよりも高いインスリン血漿レベルを示した。
【0235】
結果をTable 4(表4)および図5に示す。
【0236】
【表4】
【0237】
(実施例9)
インスリン誘導体、プロピレングリコール、Labrasol ALF、Cremophor RH40、およびRyloMG08を含む、液体の非水性医薬組成物
SMEDDS(15%プロピレングリコール、32.5%Labrasol ALF、32.5%Cremophor RH40、20%RyloMG08)内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(30nmol/kg)を含む腸溶コーティングされたソフトカプセルをオスのビーグル犬(n=8)に経口投与した後の、薬物動態プロフィールを作成した。インスリン誘導体をまずプロピレングリコールに溶解し、その後、一致する量の界面活性剤を添加および混合して、均一な液体製剤を得た。液体製剤をソフトカプセル内に充填し、Eudragit L30D-55で腸溶コーティングした。
【0238】
結果を図6に示す。
【0239】
(実施例10)
SMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体を含むコーティングされていないソフトカプセル
SMEDDS(15%プロピレングリコール、30%超精製ポリソルベート20、および55%ジグリセロールカプリレート)内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(30nmol/kg)を含むコーティングされていないソフトカプセルをオスのビーグル犬(n=8)に内視鏡投与した後の、薬物動態プロフィールを作成した。ソフトカプセルは、オスのビーグル犬の十二指腸に内視鏡で投与した。
【0240】
結果を図7に示す。
【0241】
(実施例11)
SMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体を含む腸溶性ソフトカプセル
SMEDDS(15%プロピレングリコール、30%超精製ポリソルベート20、および55%ジグリセロールカプリレート)内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(45〜50nmol/kg)を含むコーティングされたソフトカプセルをオスのビーグル犬(n=8)に経口投与した後の、薬物動態プロフィールを作成した。ソフトカプセルは、Eudragit L30 D-55で腸溶コーティングした。
【0242】
結果を図8に示す。
【0243】
(実施例12)
SMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体を含む腸溶性ソフトカプセル
SMEDDS(15%プロピレングリコール、30%超精製ポリソルベート20、および55%ジグリセロールカプリレート)内に製剤されたインスリン誘導体A14E, B16H, B25H, B29K(N(ε)-ヘキサデカンジオイル-gGlu), desB30ヒトインスリン(30nmol/kg)を含む腸溶コーティングされたソフトカプセルをオスのビーグル犬(n=8)に経口投与した後の、薬物動態プロフィールを作成した。ソフトカプセルは、Eudragit L30 D-55とEudragit NE30Dとの1:1の混合物で腸溶コーティングした。
【0244】
結果を図9に示す。
【0245】
(実施例13)
SMEDDS内に製剤された異なるインスリン誘導体
SMEDDS(15%プロピレングリコール、30%ポリソルベート20、55%ジグリセロールカプリレート)内に製剤された異なるアシル化されたインスリン誘導体(30nmol/kg)の薬物動態プロフィールを、絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後に測定した(平均±SEM、n=6)。
【0246】
結果を図10に示す。
【0247】
(実施例14)
異なるSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体
絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、異なるSMEDDS組成物内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(60nmol/kg)の薬物動態プロフィールを作成した(平均±SEM、n=6)。
【0248】
結果を図11に示す。
【0249】
(実施例15)
異なる量の水と共にSMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体
絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に0.1mlを注射した後の、無水SMEDDS組成物内および5%の水を含むSMEDDS組成物内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(SMEDDS1グラム当たり3.25mg)の薬物動態プロフィールを作成した(平均±SEM、n=6)。
【0250】
結果を図12に示す。
【0251】
(実施例16)
SMEDDS内に製剤されたインスリン誘導体
絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後の、プロピレングリコール、Tween 20、およびジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS組成物内に製剤されたインスリン誘導体B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン(30nmol/kg)の薬物動態プロフィールを作成した(平均±SEM、n=6)。
【0252】
結果を図13に示す。
【0253】
(実施例17)
SMEDDS組成物内に製剤されたインスリン誘導体
異なるインスリン誘導体(a、b、c、d、e、f、およびg、30nmol/kg)をそれぞれ、15%プロピレングリコール、30%Tween 20、および55%ジグリセロールカプリレートを含むSMEDDS組成物内に製剤した。薬物動態プロフィールを、絶食させたオスSPRDラットの空腸中央部内に注射した後に作成した(平均±SEM、n=6)。結果を図14に示す。
【0254】
組成物の調製:インスリン誘導体を含む水溶液のpHをpH7から8に調整し、溶液を凍結乾燥した。凍結乾燥されたインスリンをプロピレングリコールに溶解し、次に、ジグリセロールカプリレートを撹拌下で添加し、最終ステップにおいて、Tween 20を室温(RT)で撹拌下で添加した。最終的な製剤は、澄明な均質のSMEDDS組成物内に得られた。
【0255】
試験したインスリン誘導体:
a)SMEDDS内に製剤されたA14E, B25H, B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG), desB30ヒトインスリン
b)SMEDDS内のA14E, B25H, (N(ε)-[2-(2-[2-(2-[2-(オクタデカンジオイル-gGlu)アミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル]), desB27, desB30ヒトインスリン
c)SMEDDS内のA14E, B25H, desB27, B29K(N-(ε)-(オクタデカンジオイル-gGlu), desB30ヒトインスリン
d)SMEDDS内のA14E, B25H, desB27, B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-gGlu), desB30ヒトインスリン
e)SMEDDS内のA14E, B25H, desB27, B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-(N-カルボキシメチル-bAla)), desB30ヒトインスリン
f)SMEDDS内のA14E, B25H, B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-(N-カルボキシメチル-bAla)), desB30ヒトインスリン
g)SMEDDS内のB29N(ε)-ヘキサデカンジオイル-ガンマ-L-Glu A14E B25H desB30ヒトインスリン
【0256】
薬理学的方法
PK研究のためにラットを腸内(空腸)注射する方法
麻酔したラットにインスリン(誘導体)ペプチドを腸内(空腸に)投与した。採用される化合物の血漿濃度と血液グルコースの変化とを、投与後4時間にわたり、特定の間隔で測定した。薬物動態パラメータを、次に、WinNonLinを用いて計算した。
【0257】
約18時間にわたり絶食させた250〜300gの体重のオスのSprague-Dawleyラット(Taconic)を麻酔した。
【0258】
麻酔したラットを、37℃に安定化された恒温毛布上に置いた。1mlのシリンジを搭載した20cmのポリエチレンカテーテルにインスリン製剤または媒体を充填した。4〜5cmの正中切開を腹壁で行った。カテーテルを、腸壁を貫通させることによって、盲腸から≒50cmの空腸中央部内に穏やかに挿入した。腸内容物が存在する場合は、適用部位を±10cm移動した。カテーテルの先端を、腸分節の内腔のおよそ2cm内側に置き、結紮を用いずに固定した。腸を慎重に腹腔内に戻し、腹壁および皮膚を各層においてオートクリップで閉じた。時点0で、ラットに、カテーテルを介して、0.4ml/kgの試験化合物または媒体を投与した。
【0259】
総血液グルコース濃度を決定するための血液試料を、尾端内の毛細血管を穿刺することによって、ヘパリン化された10μlの毛細管内に回収した。血液グルコース濃度を、500μlの分析バッファー中に希釈した後に、Biosenオートアナライザー(EKF Diagnostic Gmbh、Germany)を用いるグルコースオキシダーゼ法によって測定した。平均血液グルコース濃度のグラフ(平均±SEM)を、各化合物について作成した。
【0260】
血漿インスリンペプチド濃度を決定するために試料を回収した。100μlの血液試料を、EDTAを含有する冷蔵した試験管内に引き込んだ。試料を、遠心分離(7000rpm、4℃、5分)するまで氷上で維持し、血漿をMicronic管内にピペットで取り、次に、アッセイするまで20℃で凍結した。インスリン類似体の血漿濃度を、LOCIアッセイを用いて測定した。
【0261】
血液試料を、t=-10で(血液グルコースのみ)、t=-1で(投与の直前)、および投与後4時間にわたり特定の間隔で引き込んだ。
【0262】
血漿濃度-時間プロフィールを、WinNonlin Professional(Pharsight Inc.、Mountain View、CA、USA)を用いる非コンパートメント薬物動態分析によって分析した。
【0263】
計算を、各動物の個別の濃度-時間値を用いて行った。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのインスリンペプチド、少なくとも1つの半極性のプロトン性有機溶媒、およびHLBが10を超える少なくとも2つの非イオン性界面活性剤を含み、油もしくは他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤を含有しない、液体の医薬組成物。
【請求項2】
10%w/w未満の水を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
非水性である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
水性媒質中に希釈された後にマイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンを形成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
HLBが10を超える2つまたは3つの非イオン性界面活性剤を含み、残りの成分が界面活性剤以外の賦形剤である、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
半極性のプロトン性有機溶媒が、比誘電率が20〜50の範囲のプロトン性溶媒である、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
半極性のプロトン性有機溶媒がグリセロールまたはプロピレングリコールである、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
溶液の形態である、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記非イオン性界面活性剤の1つまたは複数が、C8脂肪酸(カプリレート)、C10脂肪酸(カプレート)、またはC12脂肪酸(ラウレート)などの中鎖脂肪酸基を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記非イオン性界面活性剤の1つまたは複数が、Labrasol(カプリロカプロイルマクロゴールグリセリドとも名付けられている)、Tween 20(ポリソルベート20またはポリエチレングリコールソルビタンモノラウレートとも名付けられている)、Tween 80(ポリソルベート80とも名付けられている)、ジグリセロールモノカプリレート、ポリグリセロールカプリレート、およびCremophor RH40からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
半極性のプロトン性有機溶媒が約1%から約15%の量で存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
インスリンペプチドが、インスリン類似体に付いたアシル部分を有するインスリン類似体であり、
アシル部分が一般式I:
Acy-AA1n-AA2m-AA3p- (I)
(式中、nが、0または1から3の範囲の整数であり、
mが、0または1から10の範囲の整数であり、
pが、0または1から10の範囲の整数であり、
Acyが、約8から約24個の炭素原子を含む脂肪酸または脂肪二酸であり、
AA1が、中性の線形または環状のアミノ酸残基であり、
AA2が、酸性アミノ酸残基であり、
AA3が、中性のアルキレングリコール含有アミノ酸残基であり、
かつ、式においてAA1、AA2、およびAA3が出現する順序が、独立して入れ替え可能であり得る)
を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
a)インスリンを、水溶液におけるポリペプチドのpIから少なくとも1pH単位である標的pHで脱水するステップ、
b)脱水されたインスリンを、半極性のプロトン性溶媒に溶解するステップ、
c)HLBが10を超える少なくとも2つの非イオン性界面活性剤を、撹拌下で共にまたは段階的に添加するステップ、
d)液体製剤をソフトカプセル内に封入する、またはハードカプセル内に充填するステップ、
e)ソフトカプセルまたはハードカプセルを最適に腸溶コーティングするステップ
を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物を生産する方法。
【請求項14】
薬剤として用いるための、請求項1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
効果的な量の、請求項1〜13のいずれか一項に記載の医薬組成物を経口投与することを含む、高血糖を治療するための方法。
【請求項1】
少なくとも1つのインスリンペプチド、少なくとも1つの半極性のプロトン性有機溶媒、およびHLBが10を超える少なくとも2つの非イオン性界面活性剤を含み、油もしくは他の脂質コンポーネントまたはHLBが7未満の界面活性剤を含有しない、液体の医薬組成物。
【請求項2】
10%w/w未満の水を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
非水性である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
水性媒質中に希釈された後にマイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンを形成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
HLBが10を超える2つまたは3つの非イオン性界面活性剤を含み、残りの成分が界面活性剤以外の賦形剤である、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
半極性のプロトン性有機溶媒が、比誘電率が20〜50の範囲のプロトン性溶媒である、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
半極性のプロトン性有機溶媒がグリセロールまたはプロピレングリコールである、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
溶液の形態である、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記非イオン性界面活性剤の1つまたは複数が、C8脂肪酸(カプリレート)、C10脂肪酸(カプレート)、またはC12脂肪酸(ラウレート)などの中鎖脂肪酸基を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記非イオン性界面活性剤の1つまたは複数が、Labrasol(カプリロカプロイルマクロゴールグリセリドとも名付けられている)、Tween 20(ポリソルベート20またはポリエチレングリコールソルビタンモノラウレートとも名付けられている)、Tween 80(ポリソルベート80とも名付けられている)、ジグリセロールモノカプリレート、ポリグリセロールカプリレート、およびCremophor RH40からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
半極性のプロトン性有機溶媒が約1%から約15%の量で存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
インスリンペプチドが、インスリン類似体に付いたアシル部分を有するインスリン類似体であり、
アシル部分が一般式I:
Acy-AA1n-AA2m-AA3p- (I)
(式中、nが、0または1から3の範囲の整数であり、
mが、0または1から10の範囲の整数であり、
pが、0または1から10の範囲の整数であり、
Acyが、約8から約24個の炭素原子を含む脂肪酸または脂肪二酸であり、
AA1が、中性の線形または環状のアミノ酸残基であり、
AA2が、酸性アミノ酸残基であり、
AA3が、中性のアルキレングリコール含有アミノ酸残基であり、
かつ、式においてAA1、AA2、およびAA3が出現する順序が、独立して入れ替え可能であり得る)
を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
a)インスリンを、水溶液におけるポリペプチドのpIから少なくとも1pH単位である標的pHで脱水するステップ、
b)脱水されたインスリンを、半極性のプロトン性溶媒に溶解するステップ、
c)HLBが10を超える少なくとも2つの非イオン性界面活性剤を、撹拌下で共にまたは段階的に添加するステップ、
d)液体製剤をソフトカプセル内に封入する、またはハードカプセル内に充填するステップ、
e)ソフトカプセルまたはハードカプセルを最適に腸溶コーティングするステップ
を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物を生産する方法。
【請求項14】
薬剤として用いるための、請求項1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
効果的な量の、請求項1〜13のいずれか一項に記載の医薬組成物を経口投与することを含む、高血糖を治療するための方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2013−517245(P2013−517245A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548420(P2012−548420)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050338
【国際公開番号】WO2011/086093
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(509091848)ノヴォ ノルディスク アー/エス (42)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050338
【国際公開番号】WO2011/086093
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(509091848)ノヴォ ノルディスク アー/エス (42)
【Fターム(参考)】
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