説明

インスリン分泌ペプチド結合体を含む肥満関連疾患治療用医薬組成物

本発明はインスリン分泌ペプチド結合体を含む肥満関連疾患治療用組成物に係り、より詳しくはインスリン分泌ペプチドを非ペプチド性リンカーを通じてキャリア物質と相互に共有結合させてなる結合体を含む肥満関連疾患治療用組成物、及びこれを用いて肥満関連疾患を治療する方法に関する。特に、本発明による肥満関連疾患治療用組成物は、飲食物摂取抑制効力及びその持続性を画期的に向上させて体重及び体脂肪を減少させる効果が卓越して肥満関連疾患を治療するのに非常に効果的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインスリン分泌ペプチド結合体を含む肥満関連疾患治療用組成物に係り、より詳しくはインスリン分泌ペプチドを非ペプチド性リンカーを介してキャリア物質と相互に共有結合させてなる結合体を含む肥満関連疾患治療用組成物及びこれを用いて肥満関連疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満はエネルギーバルランス調節機能の異常あるいは過栄養(hypernutrition)によって脂肪組職が過多に蓄積して各種疾病の罹患率と死亡率を高める晩成疾患である。肥満及びこれに関連した疾病はアメリカ及び全世界的に共通的で非常に深刻な公衆保健問題であり、肥満患者はアメリカで去る7年間22.9%から30.6%に増加した。アメリカの疾病管理及び予防センター(U.S. center for Disease Control and Prevention)の支社である国際健康栄養調査(NHANES、National Health and Nutrition Examination Survey)の1999年から2002年までの報告書によると、アメリカ人20歳以上の大人29.8%が過体重、30.4%は肥満、そして4.9%は深刻な肥満であると報告している(Hedley et al., JAMA 2004;291:2847−50)。このような現象はアメリカだけの問題ではなく徐々に食生活及び生活環境が西洋化している多くの国々で現れており、現在肥満人口は全世界的に2億5,000万人に達し、来る2025年に至ると約3億人以上になると予測している。肥満は、肥満そのものが持つ問題点だけでなく、高血圧、脂質異常症及び心血関係疾患や糖尿のような疾病の原因として作用することができ、肥満患者の約80%以上が前記のような疾病を一緒に持っており(Mantzoros et al., J Clin Endocrinol Metab 2000;85:4000−2)、毎年300,000人程度が肥満によって死亡すると報告されている(Allison et al., JAMA 1999;282:1530−8)。体重1kgの増加は心血管疾患危険度を3.1%、糖尿危険度を4.5〜9%増加させ、約11%体重の減少は前記のような疾患による死亡率を25%減少させると知られているので、肥満の効果的な治療方法が緊急に要求されている(Arbeeny et al., Obes Res 2004;12:1191−6)。1893年、肥満を治療するために、ノルアドレナリンとアドレナリンの熱発生促進作用を利用した甲状腺ホルモン剤が使用されたことがあったが、これらの薬剤は脂肪組職を減らすのに効果を現すよりは除骨除脂肪量(lean tissue mass)の消失を加速化して負の窒素バランス(negative nitrogen balance)をもたらして心臓毒性などの副作用を引き起こし、現在甲状腺機能低下症がある場合にだけ制限して使用している。1930年代からは主に食欲抑制作用があるアンフェタミン(amphetamine)が使用されたが、薬物依存性があるため、長期間にわたる投与が許されなく、薬物依存性がないフェンテルミン(phentermine)、ジエチルプロピオン(diethylpropion)、フェンフルラミン(fenfluramine)などが開発されて肥満患者に使用されたが、大部分の治療剤が心臓疾患、高血圧、不整脈、肺高血圧症、記憶力障害のような精神疾患を引き起こすため、使用が禁止されている。現在、肥満治療剤の開発戦略は中枢性アドレナリン受容体を興奮させるかセロトニン再吸収を抑制させる食欲抑制剤、アドレナリン性ベータ3効能剤である熱発生促進剤、リパーゼ(Lipase)の活性を阻害する消化抑制剤、そしてレプチン(Leptin)、PYYのようなホルモン調節剤である(Dunstan et al., Nature reviews drug discovery 2006;5:919−931)。このうち、リパーゼ阻害剤であるオリスタト(orlistat)とセロトニン再吸収を抑制して食欲抑制効果を引き起こすシブトラミン(sibutramine)の2種の薬物だけがFDAの承認を受けて処方されているが、脂肪便、頭痛及び血圧上昇などの副作用を引き起こすため、いまだ安全性と効能を同時に持っている薬物を開発するのが易しくないことが現実である。
【0003】
GLP−1は飲食物摂取に刺激されて小腸から分泌するホルモンで、一般的にインスリン生合成及び分泌を促進してグルカゴン分泌を抑制して血糖を調節する機能が知られており、さらにネズミに投与するとき、飲食物摂取抑制と体重減少効果があることが報告され(Meeran et al.、 Endorinology 1999;140:244−50)、このような効果は正常状態と肥満状態で共に現れることが確認され、肥満治療剤としての可能性を示した。しかし、GLP−1は血中に存在するタンパク質分解酵素中の一つであるジペプチジルペプチダーゼIV(dipeptidyl peptidase IV、DPPIV)によって易しく分解されるため、その効力が非常に制限される欠点がある。一方、エキセンジン(Exendin)はアメリカのアリゾナ州やメキシコで発見されるアメリカドクトカゲ(Gila−monster)の唾で発見されるペプチドであって、GLP−1のような作用を奏するがDPPIVによって分解されない特徴があるので糖尿及び肥満治療剤としての可能性を示し、現在一日2回注射する糖尿治療剤として常用化された。アメリカ特許第6956026号、同第6989366号及び同第7115569号には、エキセンジン及びエキセンジン誘導体を利用した飲食物摂取抑制方法に関する内容が開示されている。しかし、エキセンジンによる飲食物摂取抑制効力はどのくらい立証されたが、その持続性が投与後最大6時間程度しか維持されないことが分かり、肥満のような晩成疾患の場合、一日に多数回の注射で投与することは患者に大きな負担になるに違いない。また、前記特許に開示されたエキセンジン誘導体は、誘導体別に効力、容量依存性(dose−dependency)、薬効持続性(duration)などが互いに異なることが分かり、天然型エキセンジンより優越な飲食物摂取抑制効力を示す誘導体はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明者はインスリン分泌ペプチドの血中半減期の増加及び生体内活性の維持を同時に極大化することができる方法で兔疫グロブリンFc領域、非ペプチド性リンカー及びインスリン分泌ペプチドを共有結合で相互に連結させる製造方法を使用して、結合体の飲食物摂取抑制効力及びその持続性を画期的に増加させることを確認し、特にインスリン分泌ペプチドの中でエキセンジン−4及びエキセンジン−4のN−末端のアミン基を除去したデス−アミノ−ヒスチジルエキセンジン−4、エキセンジン−4のN−末端アミン基をヒドロキシル基で置換したベータ−ヒドロキシ−イミダゾ−プロピオニルエキセンジン−4、エキセンジン−4のN−末端アミン基を二つのメチル基で修飾したジメチル−ヒスチジルエキセンジン−4、及びエキセンジン−4の一番目アミノ酸であるヒスチジンのアルファ炭素を除去したイミダゾ−アセチル−エキセンジン−4などの結合体の飲食物摂取抑制効力及び持続性が画期的に増加することを確認して本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、インスリン分泌ペプチドを非ペプチド性リンカーを介してキャリア物質と相互に共有結合させてなる結合体(Conjugate)を含む、肥満関連疾患治療用、飲食物摂取抑制用及び体脂肪減少用組成物を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、前記結合体を含む組成物を利用して肥満関連疾患を治療し、飲食物摂取を抑制するとともに体脂肪を減少させる方法を提供することである。
【発明の効果】
【0007】
本発明が提供するインスリン分泌ペプチド結合体を含む組成物は、天然型インスリン分泌ペプチドに比べて優れた飲食物摂取抑制及びこれによる体脂肪減少及び肥満関連疾患治療活性を現すので、肥満関連疾患の治療効果を極大化させるのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1はob/obマウスにおいて体重減少効力を示すグラフである。
【図2】図2はob/obマウスにおいて体脂肪の変化を示すグラフである。
【図3】図3はDIO動物モデルにおいて体重減少効力を示すグラフである。
【図4】図4はZDFラットにおいて脂肪減少効力を示すグラフである。
【図5】図5はZDFレッドにおいて飲食物摂取減少効力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一面によれば、本発明は、インスリン分泌ペプチドを非ペプチド性リンカーを介してキャリア物質と相互に共有結合させてなる結合体を含む肥満関連疾患治療用、飲食物摂取抑制用または体脂肪減少用組成物に関する。
【0010】
本発明で使用される用語"肥満関連疾患"は食べ過ぎ、飲みすぎ及び過食症、高血圧、糖尿、増加した血漿インスリン濃度、インスリン耐性、脂質異常症、代謝症侯群、インスリン耐性症侯群、肥満関胃食道逆流、動脈硬化症、高コレステロール血症、高尿酸血症、腰痛、心臓肥大及び左心室肥大、リポジストロフィ、非アルコール性脂肪性肝炎、心血管疾患、多嚢胞性卵巣症候群よりなる群から選ばれることができ、このような肥満関連疾患の治療対象は体重を減らそうとする欲求がある対象も含まれる。
【0011】
本発明で使用される用語"インスリン分泌ペプチド"はインスリン分泌機能を保有したペプチドを意味し、このようなペプチドは膵膓ベータ細胞のインスリンの合成及び発現を刺激する。このようなペプチドはインスリンの前駆物質(precursor)、アゴニスト(agonist)、誘導体(derivative)、断片(fragment)及び変異体(variant)などを含み、好ましくはGLP(glucagon like peptide)−1、エキセンジン−3、及びエキセンジン−4、またはこれらの誘導体などである。
【0012】
本発明のインスリン分泌ペプチド誘導体は、インスリン分泌ペプチドのN−末端残基のヒスチジン残基の化学的変性誘導体あるいはN−末端ヒスチジン残基のアミノ基を化学的に変化させた誘導体である。また、ここで、エキセンジン−4またはエキセンジン−3の誘導体は天然型のエキセンジン−4またはエキセンジン−3の一つ以上のアミノ酸が置換、欠失及び/または付加されたものであるか、一つ以上のアミノ酸残基が、例えばアルキル化、アシル化、エステル化形成またはアミド形成などによって化学的に変形されたペプチドを指称し、天然型の活性を持ったものを言う。このようなエキセンジン−3またはエキセンジン−4の誘導体の例は、これらに制限されるものではないが、エキセンジン−4のC−末端を一部欠損するか非天然型アミノ酸であるノルロイシン(Norleucine)で置換したエキセンジン変異体に関するWO97/46584、ペンチルグリシン(pentylglycine)、ホモプロリン(homoproline)、t−ブチルグリシン(tertbutylglycine)のような非天然型アミノ酸を含むエキセンジンのアミノ酸を置換した変異体に関するWO99/07404、エキセンジン4のC−末端アミノ酸残基の一部を切断して天然型より短いアミノ酸配列で構成されたエキセンジン変異体と他のアミノ酸で置換したエキセンジン変異体に関するUS2008/0119390などに開示されており、これら文献は参考文献として本発明の範囲に組み込まれる。より好ましくは、前記インスリン分泌ペプチドはエキセンジン−4またはこれらの誘導体である。
【0013】
具体的に、本発明のインスリン分泌ペプチド誘導体は、インスリン分泌ペプチドのN−末端アミノ基が除去された誘導体(Desamino−histidyl−誘導体)、アミノ基をヒドロキシル基で置換した誘導体(beta−hydroxyimidazopropionyl−誘導体)、アミノ基に2個のメチル(methyl)残基で変性された誘導体(Dimethyl−histidyl−誘導体)、N−末端のアミノ基をカルボキシル基で置換した誘導体(beta−carboxyimidazopropionyl−誘導体)またはN−末端ヒスチジン残基のアルファカーボンを削除してイミダゾアセチル(imidazoacetyl)基のみを残してアミノ基の正電荷(positive charge)を除去した誘導体(Imidazoacetyl−誘導体)などが含まれることができ、さらにその他の形態のN−末端アミノ基変異誘導体が本発明の範疇に属する。
【0014】
本発明において、インスリン分泌ペプチド誘導体はより好ましくはエキセンジン−4のN−末端アミノ基またはアミノ酸残基を化学的に変異させた誘導体であり、さらに好ましくはエキセンジン−4のアミノ末端の一番目アミノ酸であるヒスチジン残基のアルファカーボンに存在するアルファアミノ基またはアルファカーボンを置換または除去したエキセンジン−4誘導体であり、さらに好ましくは下記の<a>〜<e>に示すような、N−末端アミノ基を除去したデスアミノ−ヒスチジル−エキセンジン−4(Desamino−histidyl−exendin−4、DA−エキセンジン−4)、ヒドロキシル基またはカルボキシル基で置換したベータ−ヒドロキシイミダゾプロピオニル−エキセンジン−4(beta−hydroxyimidazopropionyl−exendin−4、HY−エキセンジン−4)、ベータ−カルボキシイミダゾプロピオニル−エキセンジン−4(beta−carboxyimidazopropionyl−exendin−4、CX−エキセンジン−4)、2個のメチル残基で変性したジメチル−ヒスチジル−エキセンジン−4(Dimethyl−histidyl−exendin−4、DM−エキセンジン−4)、またはアミノ末端ヒスチジン残基のアルファカーボンを除去したイミダゾアセチル−エキセンジン−4(Imidazoacetyl−exendin−4、CA−エキセンジン−4)である。
【0015】
【化1】

【0016】
本発明に使用可能なキャリア物質は非ペプチド性リンカーによってインスリン分泌ペプチドに結合されて前記ペプチドの血中持続性を増大させる物質で、兔疫グロブリンFc領域、血清アルブミン(Serum Albumin)、トランスフェリン(transferrin)、コラーゲン及びコラーゲン断片、フィブロネクチン(fibronectin)及びその断片、そしてPEGよりなる群から選ばれることができ、好ましくは兔疫グロブリンFc領域である。本発明において、"兔疫グロブリンFc領域"は、兔疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域、重鎖不変領域1(CH1)と軽鎖不変領域(CL1)を除いた、重鎖不変領域2(CH2)及び重鎖不変領域3(CH3)部分を意味し、重鎖不変領域にヒンジ(hinge)部分を含むこともある。
【0017】
また、本発明の兔疫グロブリンFc領域は天然型と実質的に同等以上の効果を持つ限り、免疫グロブリンンの重鎖と軽鎖可変領域のみを除き、一部または全体重鎖不変領域1(CH1)及び/または軽鎖不変領域1(CL1)を含む拡張したFc領域であることができる。また、CH2及び/またはCH3にあたるかなり長い一部アミノ酸配列が除去された領域であり得る。すなわち、本発明の兔疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)1個または2個の以上のドメインと兔疫グロブリンヒンジ領域(またはヒンジ領域の一部)との組合せ、6)重鎖不変領域の各ドメインと軽鎖不変領域の二量体であることができる。また、本発明の兔疫グロブリンFc領域は天然型アミノ酸配列だけはなくその配列誘導体(mutant)を含む。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列の一つ以上のアミノ酸残基が結実、挿入、非保存的または保存的置換またはこれらの組合せによって異なる配列を持つことを意味する。例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であると知られた214〜238、297〜299、318〜322または327〜331番のアミノ酸残基が変形のために適当な部位として利用できる。また、二硫化結合を形成することができる部位が除去されるか、天然型FcにおいてN−末端のいくつかのアミノ酸が除去されるかあるいは天然型FcのN−末端にメチオニン残基が付加されることもできるなど、多様な種類の誘導体が可能である。また、エフェクター機能を無くすために、補体結合部位、たとえばC1q結合部位が除去されることもでき、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されることもできる。このような兔疫グロブリンFc領域の配列誘導体を製造する技術は国際特許公開第WO97/34631号、国際特許公開第96/32478号などに開示されている。分子の活性を全体的に変更させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は技術的に知られている(H. Neurath, R. L. Hill, The Proteins, Academic Press, NewYork, 1979)。最も通常的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu及びAsp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)及びアミド化(amidation)などで修飾(modification)されることもできる。前述したFc誘導体は本発明のFc領域と同一の生物学的活性を示すが、Fc領域の熱、pHなどに対する構造的安全性を増大させた誘導体である。また、このようなFc領域は、人間だけでなく、牛、山羊、豚、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット及びモルモットなどの動物の生体内から分離した天然型から得られることもでき、形質転換された動物細胞または微生物から得られた組み換え型またはその誘導体であることもある。ここで、天然型から獲得する方法は、全体兔疫グロブリンを人間または動物の生体から分離した後、タンパク質分解酵素を処理して得ることであることができる。パパインを処理する場合にはFab及びFcに切断し、ペプシンを処理する場合にはpF'c及びF(ab)2に切断する。これをサイズ排除クロマトグラフィー(size−exclusion chromatography)などによってFcまたはpF'cを分離することができる。好ましくは、人間来由のFc領域を微生物から収得した組み換え型兔疫グロブリンFc領域である。また、兔疫グロブリンFc領域は天然型糖鎖、天然型に比べて増加した糖鎖、天然型に比べて減少した糖鎖または糖鎖が除去された形態であることができる。このような兔疫グロブリンFc糖鎖の増減または除去には、化学的方法、酵素学的方法及び微生物を利用した遺伝工学的方法のような通常の方法が利用できる。ここで、Fcから糖鎖が除去された兔疫グロブリンFc領域は補体(c1q)の結合力が著しく低下し、抗体−依存性細胞毒性または補体−依存性細胞毒性が減少または除去されるので、生体内で不必要な免疫反応を誘発しない。この点から、薬物のキャリアとしての元の目的と一層符合する形態は糖鎖が除去されるか非糖鎖化された兔疫グロブリンFc領域であるといえる。本発明において、糖鎖の除去(Deglycosylation)は酵素で糖を除去したFc領域をいい、非糖鎖化(Aglycosylation)は原核生物、好ましくは大膓菌によって生産して糖鎖化されなかったFc領域を意味する。一方、兔疫グロブリンFc領域は人間または牛、山羊、豚、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット及びモルモットなどの動物から由来することができ、好ましくは人間から由来する。また、兔疫グロブリンFc領域はIgG、IgA、IgD、IgE、IgMから来由するかあるいはこれらの組合せ(combination)またはこれらの混成(hybrid)によるFc領域であることができる。好ましくは、人間血液に最も豊かなIgGまたはIgMから来由し、最も好ましくはリガンド結合タンパク質の半減期を向上させるもので、公知のIgGから来由する。一方、本発明において、組合せ(combination)とは、二量体または単量体を形成するとき、同一起源単鎖兔疫グロブリンFc領域を暗号化するポリペプチドが他の起源の単鎖ポリペプチドと結合を形成することを意味する。すなわち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgE Fc断片よりなる群から選ばれる2個以上の断片から二量体または単量体の製造が可能である。本発明において、"ハイブリッド(hybrid)"とは、単鎖の兔疫グロブリンFc領域内に2個以上の相異なる起源の兔疫グロブリンFc断片にあたる配列が存在することを意味する用語である。本発明の場合、多くの形態のハイブリッドが可能である。すなわち、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4よりなる群から1個ないし4個のドメインでなるドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含むことができる。一方、IgGもIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けることができ、本発明ではこれらの組合せまたはこれらの混成化も可能である。好ましくは、IgG2及びIgG4サブクラスであり、最も好ましくは補体依存的毒性(CDC、Complementdependent cytotoxicity)のようなエフェクター機能(effector function)がほとんどないIgG4のFc領域である。すなわち、最も好ましい本発明に使用される薬物のキャリア用兔疫グロブリンFc領域は、人間IgG4来由の非糖鎖化されたFc領域である。人間来由のFc領域は人間生体で抗原として作用してこれに対する新しい抗体を生成するなどの好ましくない免疫反応を引き起こすことができる非人間来由のFc領域に比べて好ましい。
【0018】
本発明の組成物に含まれる結合体においては、インスリン分泌ペプチドがキャリア物質と非ペプチド性リンカーを介して連結される。用語"非ペプチド性リンカー"は繰り返し単位のない単一化合物であるか繰り返し単位が2個以上結合された生体適合性重合体を意味する。本発明で使用される非ペプチドリンカーはその化学的構造は重要ではなく、インスリン分泌ペプチドとキャリア物質を相互に共有結合で連結する連結体としての機能を一次に行うもので、よって両末端にペプチド/キャリア物質と結合することができる反応基があって二つのペプチド/キャリア物質を共有結合させることができる反応基が存在する化合物であることを特徴とし、両末端反応基は同一であるか異なることができる。前記非ペプチド性リンカーの両末端反応基は互いに同一であるか違うことができる。例えば、一方の末端にはマレイミド基を、他方の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、またはブチルアルデヒド基を持つことができる。前記非ペプチド性リンカーの両末端反応基は、反応アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド(maleimide)基及びスクシンイミド(succinimide)誘導体よりなる群から選ばれることが好ましい。ここで、スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジルプロピオネート、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシメチルまたはスクシンイミジルカーボネートが利用できる。特に、前記非ペプチド性リンカーは両末端に反応アルデヒド基の反応基を持つ場合、非特異的反応を最小化し、非ペプチド性重合体の両末端で生理活性ポリペプチド及び兔疫グロブリンとそれぞれ結合するのに効果的である。アルデヒド結合による還元性アルキル化によって生成された最終産物はアミド結合で連結されたものより遥かに安定的である。アルデヒド反応基は低pHでN−末端に選択的に反応し、高pH、例えばpH9.0の条件ではリシン残基と共有結合を形成することができる。両末端にヒドロキシ反応基を持つポリエチレングリコールを非ペプチド性重合体として用いる場合は、公知の化学反応によって前記ヒドロキシル基を前記多様な反応基に活性化するか、商業的に入手可能な変形した反応基を持つポリエチレングリコールを利用して本発明のインスリン分泌ペプチド結合体を製造することができる。本発明に使用可能な非ペプチド性重合体はこれに制限されるものではないが、例えばペプチドのアミン(amine)基とスルフィドリル(sulfydryl)基に共有結合可能なSMCC(succinimidyl 4−(N−maleimido−methyl)cyclohexane−1−carboxylate)、SFB(succinimidyl 4−formylbenzoate)などが使用可能であり、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、PLA(ポリ乳酸、polylactic acid)及びPLGA(ポリ乳酸−グリコール酸、polylactic−glycolic acid)のような生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸及びこれらの組合せでなることができ、好ましくはポリエチルレングリコールである。当該分野にもう知られたこれらの誘導体及び当該分野の技術水準で容易に製造することができる誘導体も本発明の範囲に属する。
【0019】
このように、インスリン分泌ペプチドとキャリア物質が非ペプチド性リンカーによって相互に共有結合されて製造される本発明による肥満関連疾患治療用組成物に含まれる結合体の好適な例は国際公開番号第WO08/082274号に開示されており、これは下記化学式1のように表現される。
【0020】
<化学式1>
1−X−R2−L−F
ここで、R1はデス−アミノ−ヒスチジル、ジメチル−ヒスチジル、ベータ−ヒドロキシイミダゾプロピオニル、4−イミダゾアセチル及びベータ−カルボキシイミダゾプロピオニルよりなる群から選ばれ、
2は−NH2、−OH及び−Lysよりなる群から選ばれ、
XはGly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Y−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Z−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser、Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Y−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Z−Asn−Gly−Gly、及びSer−Asp−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Y−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Z−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Serよりなる群から選ばれ、
YはLys、Ser及びArgよりなる群から選ばれ、
ZはLys、Ser及びArgよりなる群から選ばれ、
Lは非ペプチドリンカーであり、
Fは兔疫グロブリンFcである。
【0021】
また、本発明の結合体を含む薬剤学的組成物は薬剤学的に許容可能な担体を含むことができる。薬剤学的に許容される担体は、経口投与の場合、結合剤、滑剤、分解剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素及び香料などを使用することができ、注射剤の場合は、緩衝剤、保存剤、鎮痛剤、可溶化剤、等張剤及び安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合は、基剤、賦形剤、滑剤及び保存剤などを使用することができる。本発明の薬剤学的組成物の剤形は前述したような薬剤学的に許容される担体と混合して多様に製造できる。例えば、経口投与の場合には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、サスペンション、シロップ及びウェハーなどの形態に製造することができ、注射剤の場合は、単位投薬アンプルまたは多数回投薬形態に製造することができる。その外に、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル及び持続性錠剤などに剤形化可能である。一方、製剤処方に適した担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱物油などが使用できる。また、充填剤、抗凝固剤、滑剤、湿潤剤、香料及び防腐剤などをさらに含むことができる。また、本発明の薬剤学的組成物の投与量は、治療すべき疾患、投与経路、患者の年齢、性別及び体重及び疾患の重症度などの多くの関連因子によって決定される。本発明の組成物は生体内持続性及び力価に優れるので、本発明の組成物を含む薬剤学的製剤の投与回数及び頻度を著しく減少させることができる。
【0022】
本発明の組成物に含まれるインスリン分泌ペプチド結合体は、天然型インスリン分泌ペプチドよりずっと少ない容量で持続的な飲食物摂取抑制効果を奏し、このような食欲抑制は肥満及び急性冠症侯群のような関連疾患の治療に有用に使用できる。また、このような飲食物摂取抑制(すなわち、食欲抑制)効果によってコレステロールあるいは脂肪細胞のような体脂肪を減少させるのに有用に使用できる。一般に、肥満及び関連疾患治療の際、体脂肪の減少は必要であるが、除骨除脂肪の減少、つまりタンパク質の減少は好ましくない。除骨除脂肪量は身の筋肉、生命維持器官、骨、連結組職及び他の非脂肪組職で構成されているため、除骨除脂肪量の減少は人間の健康に有害であると信じられた。したがって、本発明による組成物の食欲抑制によって体重が減少するとき、除骨除脂肪でない脂肪細胞のような体脂肪の減少は肥満関連疾患の治療の際に重要な要素として作用することができる。
【0023】
GLP−1、アミリン(amylin)、CCK及びエキセンジンなどのインスリン分泌ペプチドは、食欲抑制作用時間が投与後1時間ないし6時間で、その効力時間が制限されているため、晩成疾患と知られた肥満及びその関連疾患を治療するためには非常に頻繁に繰り返し投与しなければならないが、本発明の組成物に含まれたインスリン分泌ペプチド結合体は少ない容量の投与でその持続時間を一週間以上維持して治療学的効能が極大化した。
【0024】
さらに他の面によれば、本発明は前記組成物を利用して肥満関連疾患を治療する方法、飲食物摂取を抑制する方法及び体脂肪を減少させる方法に関する。具体的に、本発明による方法は、前記組成物を治療学的に許容可能な量で投与する段階を含むことができる。
【0025】
本発明において、"投与"は、いずれかの適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味し、前記結合体が含まれた組成物の投与経路は薬物が目的組職に到逹することができる限り、一般的な経路を通じて投与できる。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与及び直腸内投与などが含まれると思われるが、これに制限されない。しかし、経口投与の際、ペプチドは消化されるため、経口用組成物は活性薬剤をコートするか胃での分解から保護されるように剤形化することが好ましい。好ましくは、注射剤形で投与可能である。また、活性物質を標的細胞に移動させることができる任意の装置によって組成物を投与することができる。この際、前記組成物の治療学的に許容可能な量は前述した多様な要素によって決定可能である。
【0026】
本発明のさらに他の面いよれば、本発明はインスリン分泌ペプチド結合体を単独であるいは一つ以上の抗肥満活性物質と併用して肥満関連疾患を治療することができる薬剤学的組成物を提供する。インスリン分泌ペプチド結合体と併用して本発明の肥満関連疾患治療用薬剤学的組成物を構成することができる物質は、GLP−1及びその誘導体(Patricia., Trends in endocrinology and metabolism 2007;18:240−245)、アミリン(amyline)、PYY(ペプチドYY)(Lynn etal., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2007;17:1916−1919)、レプチン(leptin)、コレサイトカイニン(cholecytokinin、CCK)、オキシントモジュリン(oxyntomodulin)、グレニンアンタゴニスト(ghrelin antagonist)、NPYアンタゴニスト(Elena et al., Nutrition, Metabolism & Cardiovascular Disease 2008;18:158−168)、Sarika et al., Neuropeptides 2006;40:375−401)、リモナバント(rimonabant)、シブトラミン(sibutramine)、及びオリスタト(orlistat)(Alan Dove., Nature biotechnology 2001;19:25−28)の食欲抑制活性、エネルギー代謝促進活性、脂肪分解抑制活性、胃内容排出遅延活性、タンパク質チロシンホスファターゼ(Protein tyrosine phosphatase、PTP)1b抑制活性及びDPPIV抑制活性を示す物質を含むが、これに限定されない。
【実施例】
【0027】
<発明の様態>
以下、下記の実施例によって本発明がより明らかに理解可能であろう。ただ、下記の実施例は本発明を例示するためのもので、本発明の範囲を限定するものではない。
【0028】
[実施例1]インスリン分泌ペプチド結合体(CA−Exendin)の製造
3.4KPropionALD(2)PEG(プロピオンアルデヒド基を2個持っているPEG、IDB Inc.,大韓民国)をイミダゾアセチルエキセンジン−4(Imidazo−acetyl Exendin−4)(Bachem,スイス)のリシン残基にペギル化(pegylation)させるために、ペプチドとPEGのモル比1:15、ペプチドの濃度を5mg/mlにして、4℃で夜通し反応させた。この際、反応はpH7.5の緩衝液内で行われ、還元剤である20mM SCB(NaCNBH3)を添加して反応させた。反応液はSOURCE S(XK16ml、Amersham Biosciences)を下記のような条件でモノペギル化エキセンジン及び異性体を分離した。
【0029】
Column:SOURCE S(XK 16ml、Amersham Biosciences)
流速:2.0ml/分
勾配:A 0→100%45分B(A:20mMクエン酸 pH3.0、B:A+0.5M KCl)
前記分離したモノペギル化されたCA−Exendin−4を免疫グロブリンFcとカップリングさせた。ペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:4にし、全体タンパク質濃度を50mg/mlにし、4℃で16時間反応した。反応液は100mM K−P(pH6.0)であり、還元剤である20mM SCBを添加した。カップリング(Coupling)反応後、SOURCE Phe 16mlとSOURCE Q 16mlを利用した2段階精製法を実施した。
【0030】
Column:SOURCE Phe(HR16ml、Amersham Biosciences)
流速:2.0ml/分
勾配:B 100→0% 30分 B(A:20mM トリス pH7.5、B:A+1.5M NaCl)
Column:SOURCE Q(XK16ml、Amersham Biosciences)
流速:2.0ml/分
勾配:A 0→25% 60分 B(A:20mM トリス pH7.5、B:A+1M NaCl)
【0031】
[実施例2]ob/obネズミでのインスリン分泌ペプチド結合体の体重減少効果
代表的な肥満モデル動物の一つであるob/obネズミ(C57BL/6JHamSlc−ob/bo、雌8−9週齢)を4群(群当たり5匹ずつ)に分けた後、ビークルとByetta(Amylin−Lily、exendin−4、45μg/kg、毎日皮下投与)及び前記実施例1で製造したインスリン分泌ペプチド結合体(45μgまたは100μg/kg、週当り1回皮下投与)などを投与した後、28日間体重の変化を観察し、投与が終わった後、コレステロール、遊離脂肪酸など、脂肪代謝に係わる物質の血中濃度を測定し、試験が完了した後、動物を解剖し、肝と脂肪組職の重量を測定した。このようなob/obネズミにおいてインスリン分泌ペプチド結合体の体重減少効果を表1に示した。
【0032】
【表1】

【0033】
表1と図1及び図2から分かるように、Byettaに比べてインスリン分泌ペプチド結合体は1/7容量で体重減少効果及びコレステロール含量減少効果が優れ、その効果は容量依存的であることが分かる。そして、その効力の持続性も毎日投与したエキセンジン−4に比べ、一週に1回投与したインスリン分泌ペプチド結合体の効力がより優れることが分かる。
【0034】
[実施例3]DIOネズミでのインスリン分泌ペプチド結合体の体重減少効果
代表的な肥満モデル動物の一つであるDIO(diet induced obesity)ネズミ(C57BL/6NCrjBgi、雄25週齢)を5群(群当たり5匹)に分けた後、ビークルとByetta(100μg/kg、毎日皮下投与)及び前記実施例1で製造したインスリン分泌ペプチド結合体(20、50、100μg/kg、1週当り1回皮下投与)などを投与した後、2週間体重の変化を観察した。この際、DIOネズミでのインスリン分泌ペプチド結合体の体重減少効果を表2に示した。
【0035】
【表2】

【0036】
表2及び図3から分かるように、Byettaに比べ、インスリン分泌ペプチド結合体は1/17.5容量で体重減少効果が優れ、その効果は容量依存的であることが分かる。そして、その効力の持続性においても、毎日投与したエキセンジン−4に比べて一週に1回投与したインスリン分泌ペプチド結合体の効力がもっと優れることが分かる。
【0037】
[実施例4]ZDF(Zucker diabetic fat)ラットでのインスリン分泌ペプチド結合体の体重減少効果
糖尿実験の際、一般的に最も多く使用され、db/dbネズミと類似の特性を示すZDFラット(ZDF/Gmi−fa/fa、雄7週齢)を5群(群当たり5匹)に分けた後、ビークルとByetta(100μg/kg、毎日皮下投与)及び前記実施例1で製造したインスリン分泌ペプチド結合体(20、50、100μg/kg、1週当り1回皮下投与)などを投与した後、8週間体重の変化と飼料摂取量を観察し、投与が終わった後、コレステロールなど、脂肪代謝に係わる物質の血中濃度を測定し、試験が完了した後、動物を解剖して脂肪組職の重量を測定した。このようなZDFラットでのインスリン分泌ペプチド結合体の体重減少効果を表3に示した。
【0038】
【表3】

【0039】
表3と図4及び図5から分かるように、Byettaに比べ、インスリン分泌ペプチド結合体は1/35容量で体重減少効果及び体脂肪含量減少効果そして飲食物摂取抑制効力がずっと優れ、その効果は容量依存的であることが分かる。そして、その効力の持続性においても、毎日投与したエキセンジン−4に比べて一週に1回投与したインスリン分泌ペプチド結合体の効力がもっと優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン分泌ペプチド及び兔疫グロブリンFc領域がSMCC(succinimidyl 4−(N−maleimido−methyl)cyclohexane−1−carboxylate)、SFB(succinimidyl 4−formylbenzoate)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、PLA(ポリ乳酸、polylactic acid)及びPLGA(ポリ乳酸−グリコール酸、polylactic−glycolic acid)などの生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸及びこれらの組合せよりなる群から選ばれる非ペプチド性リンカーを通じて連結されてなることを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体を含む肥満関連疾患治療用組成物。
【請求項2】
前記インスリン分泌ペプチドは、GLP−1、エキセンジン−3、エキセンジン−4またはこれらのアゴニスト(agonist)、誘導体(derivative)、断片(fragment)、変異体(variant)及びこれらの組合せよりなる群から選択されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の肥満関連疾患治療用組成物。
【請求項3】
前記誘導体は、天然型インスリン分泌ペプチドのN−末端アミン基の置換(substitution)、欠損(deletion)、及び変性(modification)から選択されたいずれか1方法によって製造され、インスリン分泌ペプチド、これらの断片及びこれらの変異体よりなる群から選択されるものであることを特徴とする、請求項2に記載の肥満関連疾患治療用組成物。
【請求項4】
前記誘導体はエキセンジン−4の誘導体であり、エキセンジン−4のN−末端アミン基が除去されたエキセンジン−4誘導体、エキセンジン−4のN−末端アミン基がヒドロキシル基で置換されたエキセンジン−4誘導体、エキセンジン−4のN−末端アミン基がジメチル基で変性されたエキセンジン−4誘導体、エキセンジン−4の一番目アミノ酸(ヒスチジン)のアルファ炭素を除去(deletion)したエキセンジン−4誘導体、エキセンジン−4の12番目アミノ酸(lysine)がセリンで置換されたエキセンジン−4誘導体、及びエキセンジン−4の12番目アミノ酸(lysine)がアルギニンで置換されたエキセンジン−4誘導体よりなる群から選ばれるものであることを特徴とする、請求項3に記載の肥満関連疾患治療用組成物。
【請求項5】
下記化学式1のインスリン分泌ペプチド結合体を含むことを特徴とする、肥満関連疾患治療用組成物:
1−X−R2−L−F・・・<化学式1>
ここで、R1はデス−アミノ−ヒスチジル、ジメチル−ヒスチジル、ベータ−ヒドロキシイミダゾプロピオニル、4−イミダゾアセチル及びベータ−カルボキシイミダゾプロピオニルよりなる群から選ばれ、
2は−NH2、−OH及び−Lysよりなる群から選ばれ、
XはGly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Y−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Z−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser、Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Y−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Z−Asn−Gly−Gly及びSer−Asp−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Y−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Z−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Serよりなる群から選ばれ、
YはLys、Ser及びArgよりなる群から選ばれ、
ZはLys、Ser及びArgよりなる群から選ばれ、
Lは非ペプチドリンカーであり、
Fは兔疫グロブリンFcである。
【請求項6】
前記Lは、SMCC(succinimidyl 4−(N−maleimido−methyl)cyclohexane−1−carboxylate)、SFB(succinimidyl 4−formylbenzoate)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、PLA(ポリ乳酸、polylactic acid)及びPLGA(ポリ乳酸−グリコール酸、polylactic−glycolic acid)のような生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸及びこれらの組合せよりなる群から選ばれる非ペプチド性リンカーであることを特徴とする、請求項5に記載の肥満関連疾患治療用組成物。
【請求項7】
前記Lはポリエチルレングリコールであることを特徴とする、請求項6に記載の肥満関連疾患治療用組成物。
【請求項8】
前記R1は、4−イミダゾアセチル、YはLysまたはSer、ZはLys、R2は−NH2であることを特徴とする、請求項5に記載の肥満関連疾患治療用組成物。
【請求項9】
前記肥満関連疾患は、肥満、脂質異常症、インスリン耐性症侯群、肥満関連胃食道逆流性疾患、脂肪肝炎、心血管疾患及び代謝症侯群よりなる群から選ばれる疾患であることを特徴とする、請求項1に記載の肥満関連疾患治療用組成物。
【請求項10】
インスリン分泌ペプチド及び兔疫グロブリンFc領域がSMCC(succinimidyl 4−(N−maleimido−methyl)cyclohexane−1−carboxylate)、SFB(succinimidyl 4−formylbenzoate)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、PLA(ポリ乳酸、polylacticacid)及びPLGA(ポリ乳酸−グリコール酸、polylactic−glycolic acid)のような生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸及びこれらの組合せよりなる群から選ばれる非ペプチド性リンカーを通じて連結されたことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体を含む飲食物摂取抑制用組成物。
【請求項11】
前記インスリン分泌ペプチドは、GLP−1、エキセンジン−3、エキセンジン−4またはこれらのアゴニスト(agonist)、誘導体(derivative)、断片(fragment)、変異体(variant)及びこれらの組合せよりなる群から選択されるものであることを特徴とする、請求項10に記載の飲食物摂取抑制用組成物。
【請求項12】
前記誘導体は、天然型インスリン分泌ペプチドのN−末端アミン基の置換(substitution)、欠損(deletion)、及び修飾(modification)から選択されたいずれか一方法によって製造され、インスリン分泌ペプチド、これらの断片及びこれらの変異体よりなる群から選択されるものであることを特徴とする、請求項11に記載の飲食物摂取抑制用組成物。
【請求項13】
前記誘導体はエキセンジン−4の誘導体であり、エキセンジン−4のN−末端アミン基が除去されたエキセンジン−4誘導体、エキセンジン−4のN−末端アミン基がヒドロキシル基で置換されたエキセンジン−4誘導体、エキセンジン−4のN−末端アミン基がジメチル基で変性されたエキセンジン−4誘導体、エキセンジン−4の一番目アミノ酸(ヒスチジン)のアルファ炭素を除去(deletion)したエキセンジン−4誘導体、エキセンジン−4の12番目アミノ酸(lysine)がセリンで置換されたエキセンジン−4誘導体、及びエキセンジン−4の12番目アミノ酸(lysine)がアルギニンで置換されたエキセンジン−4誘導体よりなる群から選ばれるものであることを特徴とする、請求項12に記載の飲食物摂取抑制用組成物。
【請求項14】
下記化学式1のインスリン分泌ペプチド結合体を含むことを特徴とする、飲食物摂取抑制用組成物:
1−X−R2−L−F・・・<化学式1>
ここで、R1、X、R2、L及びFは請求項5での定義と同一である。
【請求項15】
インスリン分泌ペプチド及び兔疫グロブリンFc領域がSMCC(succinimidyl 4−(N−maleimido−methyl)cyclohexane−1−carboxylate)、SFB(succinimidyl 4−formylbenzoate)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、PLA(ポリ乳酸、polylactic acid)及びPLGA(ポリ乳酸−グリコール酸、polylactic−glycolic acid)のような生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸及びこれらの組合せよりなる群から選ばれる非ペプチド性リンカーを通じて連結されたことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体を含む体脂肪または血漿コレステロール減少用組成物。
【請求項16】
前記インスリン分泌ペプチドは、GLP−1、エキセンジン−3、エキセンジン−4またはこれらのアゴニスト(agonist)、誘導体(derivative)、断片(fragment)、変異体(variant)及びこれらの組合せよりなる群から選択されるものであることを特徴とする、請求項15に記載の体脂肪または血漿コレステロール減少用組成物。
【請求項17】
前記誘導体は、天然型インスリン分泌ペプチドのN−末端アミン基の置換(substitution)、欠損(deletion)、及び変性(modification)から選択されたいずれか一方法によって製造され、インスリン分泌ペプチド、これらの断片及びこれらの変異体よりなる群から選択されるものであることを特徴とする、請求項16に記載の体脂肪または血漿コレステロール減少用組成物。
【請求項18】
前記誘導体はエキセンジン−4の誘導体であり、エキセンジン−4のN−末端アミン基が除去されたエキセンジン−4誘導体、エキセンジン−4のN−末端アミン基がヒドロキシル基で置換されたエキセンジン−4誘導体、エキセンジン−4のN−末端アミン基がジメチル基で変性されたエキセンジン−4誘導体、エキセンジン−4の一番目アミノ酸(ヒスチジン)のアルファ炭素を除去(deletion)したエキセンジン−4誘導体、エキセンジン−4の12番目アミノ酸(lysine)がセリンで置換されたエキセンジン−4誘導体、及びエキセンジン−4の12番目アミノ酸(lysine)がアルギニンで置換されたエキセンジン−4誘導体よりなる群から選ばれるものであることを特徴とする、請求項17に記載の体脂肪または血漿コレステロール減少用組成物。
【請求項19】
下記化学式1のインスリン分泌ペプチド結合体を含むことを特徴とする、体脂肪または血漿コレステロール減少用組成物:
1−X−R2−L−F・・・<化学式1>
ここで、R1、X、R2、L及びFは請求項5での定義と同一である。
【請求項20】
請求項1の組成物を、GLP−1及びその誘導体、アミリン(amyline)、PYY(ペプチドYY)、レプチン(leptin)、コレサイトカイニン(CCK)、オキシントモジュリン(oxyntomodulin)、グレニンアンタゴニスト(ghrelin antagonist)、NPYアンタゴニスト、リモナバント(rimonabant)、シブトラミン(sibutramine)、及びオリスタト(orlistat)の食欲抑制活性、エネルギー代謝促進活性、脂肪分解抑制活性、胃内容排出遅延活性、タンパク質チロシンホスファターゼ(Protein tyrosine phosphatase、PTP)1b抑制活性、及びDPPIV抑制活性を示す物質よりなる群から選ばれた物質と併用して肥満関連疾患を治療するために薬剤学的組成物。
【請求項21】
請求項1〜9及び請求項20のいずれか1項の組成物を使用して肥満関連疾患を治療する方法。
【請求項22】
前記肥満関連疾患は、肥満、脂質異常症、インスリン耐性症侯群、肥満関連胃食道逆流性疾患、脂肪肝炎、心血管疾患及び代謝症侯群よりなる群から選ばれる疾患であることを特徴とする、請求項21に記載の肥満関連疾患治療方法。
【請求項23】
請求項10〜14のいずれか1項の組成物を使用して飲食物摂取を抑制する方法。
【請求項24】
請求項15〜19のいずれか1項の組成物を使用して血漿コレステロールを減少させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−505355(P2011−505355A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535887(P2010−535887)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007074
【国際公開番号】WO2009/069983
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(507293549)ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (8)
【Fターム(参考)】