説明

インスリン分泌促進剤などの薬物のスクリーニング方法

【課題】より強力なインスリン分泌促進作用を有し、より副作用(低血糖誘発など)の少ないインスリン分泌促進剤などの薬物のスクリーニング方法、及び、より有効な腫瘍転移抑制剤(MMP−2阻害剤など)などの薬物のスクリーニング方法の提供。
【解決手段】対象蛋白質とレポータールシフェラーゼの融合蛋白質を用いたスクリーニング方法は、インスリン分泌促進作用を有し、より副作用(低血糖誘発など)の少ないインスリン分泌促進剤などの薬物のスクリーニングに有用である。また、前記スクリーニング方法に使用される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換細胞、前記形質転換細胞を含むスクリーニングキットなども、同様に優れた薬物のスクリーニングなどに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン分泌促進剤などの薬物のスクリーニング方法などに関する。より詳しくは、発光イメージング法を用いたインスリン分泌促進剤などの薬物のスクリーニング方法などに関する
【背景技術】
【0002】
インスリンは、グルコースの代謝調節において重要な役割を果たしているホルモンである。膵臓ランゲルハンス島β細胞で産生されたインスリンは、エキソサイトーシスによってβ細胞から分泌される。分泌されたインスリンは、インスリンレセプターを有する細胞に作用し、細胞によるグルコースの取り込みを促す。インスリンの作用によって、生体の血糖値は適切な範囲に維持されている。
インスリンが関係する代表的な疾患である糖尿病は、インスリンの分泌が不全となったI型糖尿病(Type I diabetes mellitus)と、II型糖尿病(Type II diabetes mellitus)とがある。
I型糖尿病においては、インスリンに対する応答性は維持されているため、インスリン製剤(例、ウシ、ブタの膵臓から抽出された動物インスリン製剤;大腸菌またはイーストを用い、遺伝子工学的に合成したヒトインスリン製剤など)の投与、またはインスリン分泌促進剤[例、スルホニルウレア剤(例、トルブタミド、グリペンクラミド、グリクラジド、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、グリクロピラミド、グルメピリド、グリピザイド、グリブゾール等)、レパグリニド、セナグリニド、ナテグリニド、ミチグリニド等]の投与によって血糖値のコントロールが可能である。
インスリン製剤は、作用時間により超速効型、速効型、中間型、持続型、混合型(超速効型+中間型、即効型+中間型)、持効溶解型などに分けられる。これらのインスリン製剤は、患者の症状、状態に応じて適宜選択して投与される。
インスリン分泌促進剤としては、上記のように種々の薬物が知られているが、食前低血糖、食後高血糖などが発生しやすいという問題がある。
【0003】
分泌型タンパク質の細胞外への放出(分泌)は、輸送小胞が細胞膜に融合する機構(エキソサイトーシス、開口分泌)によって行われる。エキソサイトーシスを可視化するための方法としては、全反射蛍光法(TIRF法)、2分子励起を利用した蛍光イメージ法(2分子励起法)が知られている。
全反射蛍光法によって、蛍光タンパク質の一種であるGFPの変異体とインスリンとの融合タンパク質(インスリン−EGFP)の分泌を観察したことが報告されている(非特許文献1:J. Biol. Chem. 277,3805-3808 (2002))。より具体的には、ガラス底面結合部位における、インスリン−EGFP融合タンパク質輸送小胞からのエキソサイトーシス現象を観察したことが報告されている。
2分子励起法によって、蛍光色素を細胞同士が密接に接着した空間に浸透させ、インスリンを含む分泌小胞が細胞膜に融合して形成されるΩ型構造の出現を観察したことが報告されている(非特許文献2:Science, 297, 1349-1352 (2002))。
しかし、全反射蛍光法および2分子励起法のいずれの方法も、細胞全体におけるエキソサイトーシス部位の局在を特定することができない、分泌されたタンパク質の定量ができない、などの問題がある。
【0004】
ウミホタルルシフェラーゼ(Vargula luciferase)を用いて、ルシフェラーゼの細胞外分泌過程を発光イメージング法によって観察したことが報告されている(非特許文献3:Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 89, 9584-9587 (1992))。
ガウシアルシフェラーゼ(Gaussia Luciferase, GLuc)を用いて、ヒトDBH(dopamine β-hydroxylase)のシグナルペプチド(DBHsp)とガウシアルシフェラーゼ(GLase)との融合タンパク質(DBHsp-GLase)の細胞外分泌過程を発光イメージング法によって観察したことが報告されている(非特許文献4:FEBS Letters, 581, 4551-4556 (2007))。
しかしながら、発光イメージング法による、ホルモン、成長因子等の機能するタンパク質あるいはペプチドのエキソサイトーシスの観察については報告されていない。
【0005】
マトリックスメタロプロテイナーゼ(matrix metalloproteinase, MMP)は、細胞の動きを制限する細胞外マトリックスおよび結合組織の主成分の分解に関与する、亜鉛依存性エンドペプチダーゼのスーパーファミリーを構成する。
MMP、特にゼラチナーゼは、細胞外マトリックスのタンパク質分解による癌の転移拡散に関与していることが知られている。例えば、ゼラチナーゼであるMMP−2およびMMP−9は、特定の腫瘍進行事象において増加することが知られている。MMP−2およびMMP−9は、基底膜の主成分であるIV型コラーゲンおよび変性コラーゲン(ゼラチン)を分解して、腫瘍転移を引き起こす。また、MMP−2およびMMP−9による、主にIV型コラーゲンからなる血管膜の破壊は、腫瘍転移に重要な役割を果たすことが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Biol. Chem. 277,3805-3808 (2002)
【非特許文献2】Science, 297, 1349-1352 (2002)
【非特許文献3】Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 89, 9584-9587 (1992)
【非特許文献4】FEBS Letters, 581, 4551-4556 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記状況において、より強力なインスリン分泌促進作用を有し、より副作用(低血糖誘発など)の少ないインスリン分泌促進剤などの薬物のスクリーニング方法が望まれている。
また、より有効な腫瘍転移抑制剤(MMP−2阻害剤など)などの薬物のスクリーニング方法も望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、プレプロインスリンとルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドにより形質転換された細胞を用いることによって、細胞からのインスリン分泌を発光イメージング方法によって観察し、細胞全体におけるエキソサイトーシス部位の局在を特定しうること、細胞からのインスリン分泌量を定量しうることなどを見いだした。
また、プロMMP−2とルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドにより形質転換された細胞を用いることによって、細胞からのMMP−2分泌を発光イメージング方法によって観察し、細胞からのMMP−2分泌量を定量しうること、細胞外における拡散動態を評価しうることなどを見いだした。
これらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1] プレプロインスリンとルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドにより形質転換された細胞を用いて、細胞からのインスリン分泌を調節する物質をスクリーニングする方法、
[2] ルシフェラーゼが、分泌型ルシフェラーゼである上記[1]記載のスクリーニング方法、
[3] 分泌型ルシフェラーゼが、ガウシアルシフェラーゼである上記[2]記載のスクリーニング方法、
[4] ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である上記[3]記載のスクリーニング方法:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列を含有するタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;および
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質、
[5] ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である上記[4]記載のスクリーニング方法:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質、
[6] プレプロインスリンが、以下の(e)〜(h)のいずれかに記載のポリペプチドである上記[1]〜[5]のいずれかに記載のスクリーニング方法:
(e)配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(f)配列番号:10のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(g)配列番号:10のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(h)配列番号:9の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
[7] プレプロインスリンが、プレプロインスリンのシグナルペプチドと、以下の(i)〜(l)のいずれかに記載のポリペプチドからなる上記[6]記載のスクリーニング方法:
(i)配列番号:4のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(j)配列番号:4のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(k)配列番号:4のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(l)配列番号:3の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
[8] プレプロインスリンのシグナルペプチドが、配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチドである、上記[7]記載のスクリーニング方法、
[9] 融合タンパク質が、以下の(m)〜(p)のいずれかに記載のポリペプチドである上記[1]〜[8]のいずれかに記載のスクリーニング方法:
(m)配列番号:12のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(n)配列番号:12のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(o)配列番号:12のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(p)配列番号:11の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
[10] さらに、CCDカメラまたはフォトンカウンティングカメラを用いて発光を検出する工程を含む、上記[1]〜[9]のいずれかに記載のスクリーニング方法、
[11] プレプロインスリンとルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
[12] ルシフェラーゼが、分泌型ルシフェラーゼである上記[11]記載のポリヌクレオチド、
[13] 分泌型ルシフェラーゼが、ガウシアルシフェラーゼである上記[12]記載のポリヌクレオチド、
[14] ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である上記[13]記載のポリヌクレオチド:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列を含有するタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;および
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質、
[15] ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である上記[14]記載のポリヌクレオチド:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質、
[16] プレプロインスリンが、以下の(e)〜(h)のいずれかに記載のポリペプチドである上記[11]〜[15]のいずれかに記載のポリヌクレオチド:
(e)配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(f)配列番号:10のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(g)配列番号:10のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(h)配列番号:9の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
[17] プレプロインスリンが、プレプロインスリンのシグナルペプチドと、以下の(i)〜(l)のいずれかに記載のポリペプチドからなる上記[16]記載のポリヌクレオチド:
(i)配列番号:4のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(j)配列番号:4のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(k)配列番号:4のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(l)配列番号:3の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
[18] プレプロインスリンのシグナルペプチドが、配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチドである、上記[17]記載のポリヌクレオチド、
[19] 融合タンパク質が、以下の(m)〜(p)のいずれかに記載のポリペプチドである上記[11]〜[18]のいずれかに記載のポリヌクレオチド:
(m)配列番号:12のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(n)配列番号:12のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(o)配列番号:12のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(p)配列番号:11の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
[20] 上記[11]〜[19]のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、
[21] 上記[20]記載の組換えベクターが導入された形質転換細胞、
[22] 細胞株由来である上記[21]記載の形質転換細胞、
[23] 細胞株が、哺乳動物由来である上記[22]記載の形質転換細胞、
[24] 細胞が、膵臓β細胞由来である上記[21]〜[23]のいずれかに記載の形質転換細胞、
[25] 上記[21]〜[24]のいずれかに記載の形質転換細胞を用いて、インスリンの細胞外分泌を観察する方法、
[26] 上記[21]〜[24]のいずれかに記載の形質転換細胞を用いて、細胞におけるインスリンのエキソサイトーシス部位の局在を特定する方法、
[27] 上記[21]〜[24]のいずれかに記載の形質転換細胞を用いて、細胞外に分泌されたインスリンを定量する方法、
[28] 上記[21]〜[24]のいずれかに記載の形質転換細胞を用いて、細胞におけるインスリンの分泌頻度を特定する方法、
[29] 上記[21]〜[24]のいずれかに記載の形質転換細胞を用いて、細胞外に分泌されたインスリンの拡散動態を観察する方法、
[30] 上記[21]〜[24]のいずれかに記載の形質転換細胞を含むキット、
[31] 薬物のスクリーニングのためのキットである、上記[30]記載のキット、
[32] さらにルシフェリンを含む、上記[30]または[31]記載のキット、
[33] プレプロインスリンとルシフェラーゼとの融合タンパク質、
[34] ルシフェラーゼが、分泌型ルシフェラーゼである上記[33]記載のタンパク質、
[35] 分泌型ルシフェラーゼが、ガウシアルシフェラーゼである上記[34]記載のタンパク質、
[36] ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である上記[35]記載のタンパク質:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列を含有するタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;および
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質、
[37] ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である上記[36]記載のタンパク質:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質、
[38] プレプロインスリンが、以下の(e)〜(h)のいずれかに記載のポリペプチドである上記[33]〜[37]のいずれかに記載のタンパク質:
(e)配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(f)配列番号:10のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(g)配列番号:10のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(h)配列番号:9の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
[39] プレプロインスリンが、プレプロインスリンのシグナルペプチドと、以下の(i)〜(l)のいずれかに記載のポリペプチドからなる上記[38]記載のタンパク質:
(i)配列番号:4のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(j)配列番号:4のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(k)配列番号:4のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(l)配列番号:3の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
[40] プレプロインスリンのシグナルペプチドが、配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチドである上記[39]記載のタンパク質、
[41] 以下の(m)〜(p)のいずれかに記載のポリペプチドを含有する上記[33]〜[40]のいずれかに記載のタンパク質:
(m)配列番号:12のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(n)配列番号:12のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(o)配列番号:12のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(p)配列番号:11の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド
などを提供する。
【0010】
さらに、本発明は、
(1B) プロMMP−2とルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドにより形質転換された細胞を用いて、MMP−2の分泌および/または活性を阻害する物質、癌転移抑制剤などの薬物をスクリーニングする方法、
(2B) ルシフェラーゼが、分泌型ルシフェラーゼである上記(1B)記載のスクリーニング方法、
(3B) 分泌型ルシフェラーゼが、ガウシアルシフェラーゼである上記(2B)記載のスクリーニング方法、
(4B) ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である上記(3B)記載のスクリーニング方法:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列を含有するタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;および
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質、
(5B) ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である上記(4B)記載のスクリーニング方法:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質、
(6B) プロMMP−2が、以下の(e)〜(h)のいずれかに記載のポリペプチドである上記(1B)〜(5B)のいずれかに記載のスクリーニング方法:
(e)配列番号:18のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(f)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(g)配列番号:18のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(h)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
(7B) プロMMP−2が、プロMMP−2のシグナルペプチドと、以下の(i)〜(l)のいずれかに記載のポリペプチドからなる上記(6B)記載のスクリーニング方法:
(i)配列番号:14のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(j)配列番号:14のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(k)配列番号:14のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(l)配列番号:13の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
(8B) プロMMP−2のシグナルペプチドが、配列番号:16のアミノ酸配列からなるポリペプチドである上記(7B)記載のスクリーニング方法、
(9B) 融合タンパク質が、以下の(m)〜(p)のいずれかに記載のポリペプチドである上記(1B)〜(8B)のいずれかに記載のスクリーニング方法:
(m)配列番号:20のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(n)配列番号:20のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(o)配列番号:20のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(p)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
(10B) さらに、CCDカメラまたはフォトンカウンティングカメラを用いて発光を検出する工程を含む、上記(1B)〜(9B)のいずれかに記載のスクリーニング方法、
(11B) プロMMP−2とルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(12B) ルシフェラーゼが、分泌型ルシフェラーゼである上記(11B)記載のポリヌクレオチド、
(13B) 分泌型ルシフェラーゼが、ガウシアルシフェラーゼである上記(12B)記載のポリヌクレオチド、
(14B) ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である上記(13B)記載のポリヌクレオチド:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列を含有するタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;および
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質、
(15B) ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である上記(14B)記載のポリヌクレオチド:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質、
(16B) プロMMP−2が、以下の(e)〜(h)のいずれかに記載のポリペプチドである上記(11B)〜(15B)のいずれかに記載のポリヌクレオチド:
(e)配列番号:18のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(f)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(g)配列番号:18のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(h)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
(17B) プロMMP−2が、プロMMP−2のシグナルペプチドと、以下の(i)〜(l)のいずれかに記載のポリペプチドからなる上記(16B)記載のポリヌクレオチド:
(i)配列番号:14のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(j)配列番号:14のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(k)配列番号:14のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(l)配列番号:13の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
(18B) プロMMP−2のシグナルペプチドが、配列番号:16のアミノ酸配列からなるポリペプチドである上記(17B)記載のポリヌクレオチド、
(19B) 融合タンパク質が、以下の(m)〜(p)のいずれかに記載のポリペプチドである上記(11B)〜(17B)のいずれかに記載のポリヌクレオチド:
(m)配列番号:20のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(n)配列番号:20のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(o)配列番号:20のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(p)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
(20B) 上記(11B)〜(19B)のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、
(21B) 上記(20B)記載の組換えベクターが導入された形質転換細胞、
(22B) 細胞株由来である上記(21B)記載の形質転換細胞、
(23B) 細胞株が、哺乳動物由来である上記(22B)記載の形質転換細胞、
(24B) 細胞が、癌細胞由来である上記(21B)〜(23B)のいずれかに記載の形質転換細胞、
(25B) 上記(21B)〜(24B)のいずれかに記載の形質転換細胞を用いて、MMP−2の細胞外分泌を観察する方法、
(26B) 上記(21B)〜(24B)のいずれかに記載の形質転換細胞を用いて、細胞におけるMMP−2のエキソサイトーシス部位の局在を特定する方法、
(27B) 上記(21B)〜(24B)のいずれかに記載の形質転換細胞を用いて、細胞外に分泌されたMMP−2を定量する方法、
(28B) 上記(21B)〜(24B)のいずれかに記載の形質転換細胞を用いて、細胞におけるインスリンの分泌頻度を特定する方法、
(29B) 上記(21B)〜(24B)のいずれかに記載の形質転換細胞を用いて、細胞外に分泌されたMMP−2の拡散動態を観察する方法、
(30B) 上記(21B)〜(24B)のいずれかに記載の形質転換細胞を含むキット、
(31B) 薬物のスクリーニングのためのキットである、上記(30B)記載のキット、
(32B) さらにルシフェリンを含む、上記(30B)または(31B)記載のキット、
(33B) プロMMP−2とルシフェラーゼとの融合タンパク質、
(34B) ルシフェラーゼが、分泌型ルシフェラーゼである上記(33B)記載のタンパク質、
(35B) 分泌型ルシフェラーゼが、ガウシアルシフェラーゼである上記(34B)記載のタンパク質、
(36B) ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である上記(35B)記載のタンパク質:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列を含有するタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;および
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質、
(37B) ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である上記(36B)記載のタンパク質:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質、
(38B) プロMMP−2が、以下の(e)〜(h)のいずれかに記載のポリペプチドである上記(33B)〜(37B)のいずれかに記載のタンパク質:
(e)配列番号:18のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(f)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(g)配列番号:18のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(h)配列番号:18の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
(39B) プロMMP−2が、プロMMP−2のシグナルペプチドと、以下の(i)〜(l)のいずれかに記載のポリペプチドからなる上記(38B)記載のタンパク質:
(i)配列番号:14のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(j)配列番号:14のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(k)配列番号:14のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(l)配列番号:13の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
(40B) プロMMP−2のシグナルペプチドが、配列番号:16のアミノ酸配列からなるポリペプチドである上記(39B)記載のタンパク質、
(41B) 以下の(m)〜(p)のいずれかに記載のポリペプチドを含有する上記(33B)〜(40B)のいずれかに記載のタンパク質:
(m)配列番号:20のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(n)配列番号:20のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(o)配列番号:20のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(p)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
なども提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インスリン分泌促進作用を有し、より副作用(低血糖誘発など)の少ないインスリン分泌促進剤などの薬物のスクリーニング方法を提供することができる。また、前記スクリーニング方法に使用される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換細胞、前記形質転換細胞を含むスクリーニングキットなどを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1−2で得られたMIN6細胞株由来の形質転換細胞へ、グルコース添加の有無(-, +)による細胞外へ分泌されたインスリン-GLase融合タンパク質の活性比較を示す図である。
【図2】図2は、実施例1−3で得られたMIN6細胞株由来の形質転換細胞へ、グルコース添加刺激により分泌されたインスリン-GLase融合タンパク質の発光イメージを示す図である。(左)明視野像。(中央)発光シグナル画像。(左)明視野像に発光画像を重ね合わせた画像。
【図3】図3は、実施例1−3で得られたMIN6細胞株由来の形質転換細胞へ、グルコース添加刺激により、周期的振動分泌するインスリン-GLase融合タンパク質の経緯時的変化を、100ミリ秒で取得した発光シグナル画像である。
【図4】図4は、図2で指定した細胞領域1-3について、グルコース添加刺激により分泌するインスリン-GLase融合タンパク質の経時的変化を、定量化したグラフである。
【図5】図5は、実施例1−3で得られたMIN6細胞株由来の形質転換細胞へ、グルコース添加刺激により分泌するインスリン-GLase融合タンパク質の分布を示す発光イメージを示す図である。(上)明視野像。(中央)発光シグナル画像。(下)明視野像に発光画像を重ね合わせた画像。
【図6】図6は、図5の画像領域において、グルコース添加刺激により周期的振動分泌分泌するインスリン-GLase融合タンパク質の経緯時的変化を、平均発光強度から定量化したグラフである。
【図7】図7は、実施例1−3で得られたMIN6細胞株由来の形質転換細胞へ、グルコース添加刺激により周期的振動分泌しないエキソサイトーシスによるインスリン-GLase融合タンパク質の分布を示す図と、短時間(1秒以内)における各発光スポットでの発光シグナルの経時的変化を示す画像である。
【図8】図8は、実施例1−3で得られたMIN6細胞株由来の形質転換細胞へ、グルコース添加刺激により周期的振動分泌しないエキソサイトーシスによるインスリン-GLase融合タンパク質の分布を示す図と、長時間(1秒以上)における各発光スポットでの発光シグナルの経時的変化を示す画像である。
【図9】図9は、インスリン-GLase 発現MIN6細胞を用いた血糖降下薬グリベンクラミドの薬効評価のグラフである。
【図10】図10は、実施態様3−2で得られたHeLa細胞株由来の形質転換細胞から分泌されたhMMP-2-GLase融合タンパク質(MMP2-GL)と天然型GLase活性(GL)を比較したグラフである。
【図11】図11は、実施態様3−2で得られたHeLa細胞株由来の形質転換体細胞からのhMMP-2-GLase融合タンパク質の細胞膜への分布を示す発光画像である。 (左)明視野像。(中央)発光シグナル画像。(左)明視野像に発光画像を重ね合わせた画像。
【図12】図12は実施態様3−2で得られたHeLa細胞株由来の形質転換体細胞からのhMMP-2-GLase融合タンパク質の細胞膜での分布の経時的変化を示す発光画像である。
【図13】図13は実施態様3−2で得られたHeLa細胞株由来の形質転換体細胞からのhMMP-2-GLase融合タンパク質の平均発光強度の経時的変化を示すグラフである。
【図14】図14は実施態様3−2で得られたHeLa細胞株由来の形質転換体細胞からのhMMP-2-GLase融合タンパク質の細胞膜での発光画像である。(左)発光シグナル画像。(右)明視野像に発光画像を重ね合わせた画像。
【図15】図15は、図14で指定した発光スポット領域1-4について、hMMP-2-GLase融合タンパク質の経時的変化を、定量化したグラフである。矢印が、強い分泌発光シグナルである。
【図16】図16は、実施態様3−2で得られたHeLa細胞株由来の形質転換体細胞からのhMMP-2-GLase融合タンパク質のリーディングエッジでの発光画像である。(左上)明視野像。(右上)発光シグナル画像。(左下)明視野像に発光画像を重ね合わせた画像。(右下)100秒間で現れるリーディングエッジでの発光スポット領域を示した画像。
【図17】図17は、図16で指定した発光スポット2、3および4について、hMMP-2-GLase融合タンパク質の経時的変化を示した発光画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.本発明の薬物のスクリーニング方法
本発明の薬物のスクリーニング方法は、プレプロインスリンまたはMMP−2などの分泌タンパク質とルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドにより形質転換された細胞を用いて、細胞からのインスリン分泌を促進(または調節)する物質またはMMP−2の分泌および/もしくは活性を阻害する物質、癌転移抑制剤などの薬物をスクリーニングする方法である。
本発明の薬物のスクリーニング方法は、より具体的には、例えば、プレプロインスリンとルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドにより形質転換された細胞を用いて、細胞からのインスリン分泌を発光イメージング法によって観察し、試験物質を添加した場合と添加しない場合とのインスリン分泌量などを比較することによって、細胞からのインスリン分泌を促進(または調節)する物質をスクリーニングする方法である。
本発明の薬物のスクリーニング方法は、また、例えば、プロMMP−2とルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドにより形質転換された細胞を用いて、試験物質を添加した場合と添加しない場合とのMMP−2分泌などを比較することによって、MMP−2の分泌および/または活性を阻害する物質、癌転移抑制剤などの薬物をスクリーニングする方法である。
以下、本発明をその実施態様に基づいて詳細に説明する。
【0014】
本発の薬物のスクリーニング方法としては、例えば、以下の[スクリーニング方法1]〜[スクリーニング方法2]などがあげられる。
[スクリーニング方法1]
以下の工程(a)〜工程(d)を含む、細胞からのインスリン分泌を調節する物質のスクリーニング方法:
工程(a):プレプロインスリンと、ルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドにより形質転換した細胞を、試験物質の存在下および非存在下において培地中で培養する工程;
工程(b):本発明の形質転換体内で本発明の融合タンパク質を発現させ、本発明の融合タンパク質を、ルシフェリンを含有する培地中(細胞外)に分泌させる工程;
工程(c):細胞外に分泌された融合タンパク質を発光イメージング法により観察する工程;および
工程(d):試験物質の存在下と非存在下との融合タンパク質の発現を比較する工程。
【0015】
以下、各工程の詳細について説明する。
[工程(a)]
(1)ルシフェラーゼ
本発明で用いられるルシフェラーゼとは、発光基質であるルシフェリンが酸素存在下で酸化されてオキシルシフェリンとなる反応を触媒する酵素を意味する。このルシフェラーゼによって触媒される、ルシフェリンの酸素による酸化反応をルシフェリン−ルシフェラーゼ反応という。ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応により生じたオキシルシフェリンは励起状態で生成し、それが基底状態になるときに発光する。
本発明で用いられるルシフェラーゼとしては、分泌型ルシフェラーゼであるのが好ましく、さらにセレンテラジン系ルシフェラーゼであるのが好ましく、特にガウシアルシフェラーゼ(Gaussia luciferase)が好ましい。セレンテラジン系ルシフェラーゼとしては、例えば、ガウシアルシフェラーゼ、ウミシイタケ(レニラ、Renilla)ルシフェラーゼ、プレウロマンマルシフェラーゼ、メトリディアルシフェラーゼ、オプロフォーラス(ヒメオドシエビ)ルシフェラーゼなどがあげられる。
分泌型ルシフェラーゼとは、分泌シグナルペプチドを有し、細胞外に分泌されうるルシフェラーゼを意味する。
本明細書において、ルシフェラーゼが分泌型ルシフェラーゼである場合には、シグナルペプチドを有していてもよく、シグナルペプチドを欠いていてもよい。
ガウシアルシフェラーゼとは、Gaussia princeps由来のルシフェラーゼを意味する。本明細書において、ガウシアルシフェラーゼとは、シグナルペプチドを有していてもよく、シグナルペプチドを欠いていてもよい。すなわち、シグナルペプチドを欠くガウシアルシフェラーゼも、ガウシアルシフェラーゼに含まれる。
【0016】
本発明で用いられるガウシアルシフェラーゼには、配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号:8のアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質と実質的に同質の活性もしくは機能を有するタンパク質および配列番号:8のアミノ酸配列からなるタンパク質と実質的に同質の活性もしくは機能を有するタンパク質を含む。
実質的に同質の活性もしくは機能とは、例えば、(i)前記タンパク質が、発光基質であるルシフェリンと、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応を示す機能、
(ii)前記タンパク質が示すルシフェリン−ルシフェラーゼ反応により生じる発光の最大発光強度(Imax)が、配列番号:8のアミノ酸配列が示すルシフェリン−ルシフェラーゼ反応により生じる発光の最大発光強度の1/4以上、好ましくは1/3以上、より好ましくは1/2以上、さらに好ましくは1/1.5以上であること、(iii)前記タンパク質が示すルシフェリン−ルシフェラーゼ反応により生じる発光の半減期(T1/2)が、配列番号:8のアミノ酸配列が示すルシフェリン−ルシフェラーゼ反応により生じる発光の半減期の4倍以下、好ましくは3倍以下、より好ましくは2倍以下、さらに好ましくは1.5倍以下であることなどを意味する。上記の実質的に同質の活性もしくは機能を「ルシフェラーゼ活性」と称することもある。上記の発光活性や発光パターンの測定は、例えば、Methods in Enzymology 326, 165-174 (2000)などに記載の方法によって測定することができる。具体的には、例えば、前記タンパク質に、酸素存在下ルシフェリンを加えることにより発光反応を開始させ、発光測定装置を用いて発光活性または発光パターンを測定することができる。発光測定装置としては、市販されている装置、例えばTD−4000(ラボサイエンス社製)、Berthold960(ベルトール社製)などを使用することができる。
【0017】
本発明で用いられるガウシアルシフェラーゼとしては、より具体的には、例えば、(a)配列番号:8のアミノ酸配列を含有するタンパク質;(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質、(a’)配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質;(b’)配列番号:2のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;(c’)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;および(d’)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質などがあげられる。
「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」については、後述する。
【0018】
本明細書において、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列」における「1〜複数個」の範囲は、例えば、1〜17個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個である。欠失、置換、挿入もしくは付加したアミノ酸の数は、一般的に少ないほど好ましい。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。このような蛋白質は、「モレキュラークローニング第3版」、「カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー」、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
【0019】
(2)ルシフェリン
本発明で用いられるルシフェリンとは、ルシフェラーゼによる触媒作用により、酸素存在下で酸化されてオキシルシフェリンとなる物質を意味する。このルシフェラーゼによって触媒される、ルシフェリンの酸素による酸化反応をルシフェリン−ルシフェラーゼ反応という。ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応により生じたオキシルシフェリンは励起状態で生成し、それが基底状態になるときに発光する。すなわち、ルシフェリンは、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応を示す発光性基質である。
本発明で用いられるルシフェリンは、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応に基質特異性があるため、用いられるルシフェラーゼに応じて適宜選択される。例えば、ルシフェリンとしてガウシアルシフェラーゼを使用する場合には、セレンテラジン(coelenterazine, CTZ)が用いられる。その他のセレンテラジン系ルシフェラーゼ(例、変異型ウミシイタケ(レニラ、Renilla)ルシフェラーゼ、プレウロマンマルシフェラーゼ、メトリディアルシフェラーゼ、オプロフォーラス(ヒメオドシエビ)ルシフェラーゼなど)を使用する場合にも、セレンテラジンが用いられる。
【0020】
(3)プレプロインスリン、プロインスリン、インスリン
インスリンは、21個のアミノ酸残基からなるA鎖と、30個のアミノ酸残基からなるB鎖から構成されるペプチドホルモンであり、グルコースの代謝調節において重要な役割を果たしている。インスリンは、86個のアミノ酸残基からなる前駆体であるプロインスリンが、2箇所の塩基性ジペプチド部位で酵素的に切断されてA鎖とB鎖となり、2箇所でジスルフィド結合することにより生成される。プロインスリンは、N末端に24個のアミノ酸残基からなるプレペプチド(シグナルペプチド)が結合したプレプロインスリンとして合成されるが、粗面小胞体を貫通した直後にプレペプチドが切断されてプロインスリンが生成される。
【0021】
本発明で用いられるプレプロインスリンには、配列番号:10のアミノ酸配列からなるタンパク質および配列番号:10のアミノ酸配列からなるタンパク質と実質的に同質の活性もしくは機能を有するタンパク質を含む。
実質的に同質の活性もしくは機能とは、例えば、(i)前記タンパク質からシグナルペプチドの切断、2箇所の塩基性ジペプチド部位における切断および2箇所のジスルフィド結合の形成により生成した物質が、血糖値を降下させる機能、(ii)前記タンパク質からシグナルペプチドの切断、2箇所の塩基性ジペプチド部位における切断および2箇所のジスルフィド結合の形成により生成した物質の血糖値降下活性が、配列番号:10のアミノ酸配列からなるタンパク質から生成したインスリンの血糖降下活性の、1/4以上、好ましくは1/3以上、より好ましくは1/2以上、さらに好ましくは1/1.5以上であることなどを意味する。上記の実質的に同質の活性もしくは機能を「インスリン活性」と称することもある。上記の血糖降下活性は、例えば、試験動物(マウス、ラット、自然発症糖尿病モデルマウスKKAy、など)に被検物質を投与し、投与前後の血糖値を公知の血糖値測定方法、市販の血糖値測定器、血糖値測定キットなどを用いて測定することができる。試験等物としては、例えば、KKAy/Taマウス(日本クレア株式会社)、血糖測定器、血糖測定キットなどとしては、例えば、グルコカード ダイアメーターα、ダイアセンサー(アークレイ株式会社)、血糖測定器グルテストエース(GT−1640)(株式会社三和化学研究所)、血糖測定装置デキスターZ(バイエルメディカル株式会社)、血糖測定器アントセンスII(バイエル−三共株式会社)、血糖測定装置アキュチェック・コンフォート(ロシュ・ダイアグノスティクス)、グルコースCII−テストワコー(和光純薬株式会社)などを用いることができる。
インスリン濃度は、公知の方法、市販のインスリン測定キットなどを用いて測定することができる。例えば、インスリン測定キット(森永生科学研究所)などを用いてインスリン濃度を測定することができる。
【0022】
本発明で用いられるプレプロインスリンとしては、より具体的には、例えば、(a)配列番号:10のアミノ酸配列を含有するタンパク質;(b)配列番号:10のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するタンパク質;(c)配列番号:10のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するタンパク質;(d)配列番号:9の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するタンパク質などがあげられる。
【0023】
プレプロインスリンとしては、プレプロインスリンのシグナルペプチドと、以下の(i)〜(l)のいずれかに記載のポリペプチドであるのが好ましい:
(i)配列番号:4のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(j)配列番号:4のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(k)配列番号:4のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(l)配列番号:3の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド。
プレプロインスリンのシグナルペプチドとしては、配列番号:6のアミノ酸からなるペプチドが好ましい。
【0024】
本発明で用いられるプロインスリンには、配列番号:10のアミノ酸配列からなるタンパク質および配列番号:10のアミノ酸配列からなるタンパク質と実質的に同質の活性もしくは機能を有するタンパク質を含む。
実質的に同質の活性もしくは機能とは、例えば、(i)前記タンパク質からシグナルペプチドの切断、2箇所の塩基性ジペプチド部位における切断および2箇所のジスルフィド結合の形成により生成した物質が、血糖値を降下させる機能、(ii)前記タンパク質からシグナルペプチドの切断、2箇所の塩基性ジペプチド部位における切断および2箇所のジスルフィド結合の形成により生成した物質の血糖値降下活性が、配列番号:10のアミノ酸配列からなるタンパク質から生成したインスリンの血糖降下活性の、1/4以上、好ましくは1/3以上、より好ましくは1/2以上、さらに好ましくは1/1.5以上であることなどを意味する。
【0025】
(4)プレプロインスリンと、ルシフェラーゼとの融合タンパク質
本明細書において、プレプロインスリンと、ルシフェラーゼとの融合タンパク質とは、上述のプレプロインスリンと、上述のルシフェラーゼとの融合タンパク質を意味する。
上述したように、ルシフェラーゼが分泌型ルシフェラーゼである場合には、シグナルペプチドを有していてもよく、シグナルペプチドを欠いていてもよい。
本明細書において、プレプロインスリンと、ルシフェラーゼとの融合タンパク質を、「本発明の融合タンパク質」と称することがある。
【0026】
本発明の融合タンパク質には、以下の(m)〜(p)のいずれかに記載のポリペプチドが含まれる:
(m)配列番号:12のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(n)配列番号:12のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(o)配列番号:12のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(p)配列番号:11の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド。
【0027】
(5)本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド
本明細書において、前述したプレプロインスリンと、ルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを「本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド」と称することがある。
本明細書において、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、「本発明のポリヌクレオチド」と称することがある。
【0028】
本発明のポリヌクレオチドとしては、本発明の融合タンパク質をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドであればいかなるものであってもよいが、好ましくはDNAである。
DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、細胞・組織由来のcDNA、細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAなどが挙げられる。ライブラリーに使用するベクターは、特に制限はなく、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織からtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接 Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction(以下、RT-PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
【0029】
本発明のポリヌクレオチドには、(m)配列番号:12のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;(n)配列番号:12のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;(o)配列番号:12のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および(p)配列番号:11の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。本発明のポリヌクレオチドとしては、さらに(p2)配列番号:11の塩基配列を含有するポリヌクレオチドが好ましく、特に(p3)配列番号:11の塩基配列からなるポリヌクレオチドが好ましい。
【0030】
ここで、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド(例、DNA)」とは、目的とするポリヌクレオチド(例、配列番号:11の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド(例、DNA)または目的とするポリペプチド(例、配列番号:12のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド(例、DNA))の全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例、DNA)をいう。具体的には、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/LのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドをあげることができる。
【0031】
ハイブリダイゼーションは、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)(以下、モレキュラー・クローニング第3版と略す)、Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997)、Glover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
本明細書でいう「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5(w/v)%SDS、50%(v/v)ホルムアミド、50℃の条件である。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。具体的には、例えば、これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0032】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコルにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
【0033】
これ以外にハイブリダイズ可能なDNAとしては、FASTA、BLAST等の解析プログラムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、目的とするポリヌクレオチド(例、DNA)の塩基配列と約80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.3%以上、99.5%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するポリヌクレオチド(例、DNA)をあげることができる。なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、前述した方法を用いて決定できる。
【0034】
あるアミノ酸配列に対して、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドは、部位特異的変異導入法(例えば、Gotoh, T. et al., Gene 152, 271-275 (1995)、Zoller, M.J., and Smith, M., Methods Enzymol. 100, 468-500 (1983)、Kramer, W. et al., Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456 (1984)、Kramer W, and Fritz H.J., Methods. Enzymol. 154, 350-367 (1987)、Kunkel,T.A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82, 488-492 (1985)、Kunkel, Methods Enzymol. 85, 2763-2766 (1988)、など参照)、アンバー変異を利用する方法(例えば、Gapped duplex法、Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456 (1984)、など参照)などを用いることにより得ることができる。
また目的の変異(欠失、付加、置換および/または挿入)を導入した配列をそれぞれの5’端に持つ1組のプライマーを用いたPCR(例えば、Ho S. N. et al., Gene 77, 51 (1989)、など参照)によっても、ポリヌクレオチドに変異を導入することができる。
【0035】
本発明のポリヌクレオチド(すなわち、プレプロインスリンとルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド)の具体例としては、例えば、
(i)プレプロインスリンと分泌型ルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド;

(ii)プレプロインスリンとガウシアルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド;

(iii)プレプロインスリンと、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質(ガウシアルシフェラーゼ)との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列を含有するタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;および
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;

(iv)プレプロインスリンと、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質(ガウシアルシフェラーゼ)との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;

(v)以下の(e)〜(h)のいずれかに記載のポリペプチド(プレプロインスリン)と、前記(i)〜(iv)のいずれかに記載のルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド:
(e)配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(f)配列番号:10のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(g)配列番号:10のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(h)配列番号:9の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;

(vi)プレプロインスリンのシグナルペプチドと、以下の(i)〜(l)のいずれかに記載のポリペプチドからなるポリペプチド(プレプロインスリン):
(i)配列番号:4のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(j)配列番号:4のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(k)配列番号:4のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(l)配列番号:3の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
と、前記(i)〜(iv)のいずれかに記載のルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド;

(vii)配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチド(プレプロインスリンのシグナルペプチド)と、以下の(i)〜(l)のいずれかに記載のポリペプチドからなるポリペプチド(プレプロインスリン):
(i)配列番号:4のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(j)配列番号:4のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(k)配列番号:4のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(l)配列番号:3の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド、
と、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド;

(viii)以下の(m)〜(p)のいずれかに記載のポリペプチドをコードする、前記(i)〜(vii)のいずれかに記載のポリヌクレオチド:
(m)配列番号:12のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(n)配列番号:12のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(o)配列番号:12のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(p)配列番号:11の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
などがあげられる。
【0036】
本発明によれば、さらに上述した本発明のポリヌクレオチドを含有する組換えベクターおよび形質転換体を提供することができる。
(6)組換えベクター
適当なベクターにプレプロインスリンとルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(本発明のポリヌクレオチド(DNA))を連結(挿入)することにより、本発明の融合タンパク質を発現しうるベクターを得ることができる。
本明細書において、本発明のポリヌクレオチドを含有する組換えベクターを「本発明の組換えベクター」と称することがある。
より具体的には、精製されたポリヌクレオチド(DNA)を適当な制限酵素で切断し、適当なベクターの制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに挿入して、ベクターに連結することにより得ることができる。本発明のポリヌクレオチドを挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミド、バクテリオファージ、動物ウイルス等が挙げられる。プラスミドとしては、例えば、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322, pBR325, pUC118, pUC119等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110, pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13, YEp24, YCp50等)などがあげられる。バクテリオファージとしては、例えば、λファージなどがあげられる。動物ウイルスとしては、例えば、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、昆虫ウイルス(例えば、バキュロウイルスなど)などがあげられる。
本発明のポリヌクレオチドは、通常、適当なベクター中のプロモーターの下流に、発現可能なように連結される。用いられるプロモーターとしては、形質転換する際の宿主が動物細胞である場合には、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、Trpプロモーター、T7プロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが好ましい。宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADH1プロモーター、GALプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
本発明の組換えベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、リボソーム結合配列(SD配列)、選択マーカーなどを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子などがあげられる。
【0037】
(7)形質転換体
このようにして得られた、本発明のポリヌクレオチド(すなわち、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド)を含有する組換えベクターを、適当な宿主中に導入することによって、形質転換体を作成することができる。
本明細書において、本発明の組換えベクターを含有する形質転換体を「本発明の形質転換体」と称することがある。
本発明の形質転換体を作成するための宿主としては、本発明のポリヌクレオチド(DNA)を発現できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、シュードモナス属菌、リゾビウム属菌、酵母、動物細胞または昆虫細胞などがあげられる。エシェリヒア属菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)などがあげられる。バチルス属菌としては、例えば、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などがあげられる。シュードモナス属菌としては、例えば、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)などがあげられる。リゾビウム属菌としては、例えば、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)などがあげられる。酵母としては、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などがあげられる。動物細胞としては、例えば、COS細胞、CHO細胞などがあげられる。昆虫細胞としては、例えば、Sf9、Sf21などがあげられる。
【0038】
宿主としては、なかでも動物細胞または動物細胞由来の細胞株が好ましい。さらに、インスリン分泌能を有する動物細胞、膵臓ランゲルハンス島β細胞およびこれらの細胞由来の細胞株が好ましい。
【0039】
組換えベクターの宿主への導入方法およびこれによる形質転換方法は、一般的な各種方法によって行うことができる。組換えベクターの宿主細胞への導入方法としては、例えば、例えばリン酸カルシウム法(Virology, 52, 456-457 (1973))、リポフェクション法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987))、エレクトロポレーション法(EMBO J., 1, 841-845 (1982))などがあげられる。エシェリヒア属菌の形質転換方法としては、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)、Gene, 17, 107 (1982)などに記載の方法などがあげられる。バチルス属菌の形質転換方法としては、例えば、Molecular & General Genetics,168, 111 (1979)に記載の方法などがあげられる。酵母の形質転換方法としては、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,75,1929 (1978)に記載の方法などがあげられる。動物細胞の形質転換方法としては、例えば、Virology,52, 456 (1973)に記載の方法などがあげられる。昆虫細胞の形質転換方法としては、例えば、Bio/Technology, 6, 47-55 (1988)に記載の方法などがあげられる。このようにして、本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチド(本発明のポリヌクレオチド)を含有する組換えベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
【0040】
(8)本発明の形質転換体の培養
本発明の形質転換体の培養は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。該培養によって、本発明の融合タンパク質が生成され、培養液中に本発明の融合タンパク質が分泌される。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する培地としては、該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプンなどの炭水化物、酢酸、プロピオン酸などの有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩またはその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカーなどが用いられる。無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウムなどが用いられる。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときにはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)などを、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)などを培地に添加してもよい。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行い、必要により、通気や撹拌を加える。宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加える。
宿主が酵母である形質転換体を培養する培地としては、たとえばバークホールダー(Burkholder)最小培地(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4505 (1980))や0.5%(w/v)カザミノ酸を含有するSD培地(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 5330 (1984))があげられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する培地としては、たとえば約5〜20%(v/v)の胎児牛血清を含むMEM培地(Science, 122, 501 (1952)),DMEM培地(Virology, 8, 396 (1959))などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞である形質転換体を培養する培地としては、Grace's Insect Medium(Nature,195,788(1962))に非働化した10%(v/v)ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0041】
本発明の形質転換細胞を、(i)試験物質非存在下、または(ii)試験物質存在下、上記培養条件で培養する。試験物質としては、例えばペプチド、タンパク質、抗体、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などがあげられる。試験物質は塩を形成していてもよく、試験物質の塩としては、生理学的に許容される塩が好ましい。生理的に許容される塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩などがあげられる。有機塩基との塩としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩があげられる。無機酸との塩としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩があげられる。有機酸との塩としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩があげられる。塩基性アミノ酸との塩としては、例えばアルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩があげられる。酸性アミノ酸との塩としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩があげられる。
[工程(b)]
(8)本発明の融合タンパク質の発現(生成)と細胞外への分泌
【0042】
以上のようにして、本発明の形質転換体を培養することにより、本発明の融合タンパク質を形質転換体内で発現(生成)させ、細胞外(培地中)に分泌させることができる。
培地中には、本発明の融合タンパク質中のルシフェラーゼと特異的にルシフェリン−ルシフェラーゼ反応を起こすことができるルシフェリンを添加しておく。本発明の融合タンパク質が細胞外に分泌されると、培地中のルシフェリンとルシフェリン−ルシフェラーゼ反応を起こし、発光する。この発光を観察、検出または測定することによって、本発明の融合タンパク質の局在(分布)、分泌、定量などを観察、検出または測定することができる。
【0043】
[工程(c)]
(9)発光イメージング
本明細書において、発光イメージングとは、発光を観察、検出または測定することを意味する。
本発明の形質転換体は、本発明の融合タンパク質を発現、分泌することができる。本発明の融合タンパク質は、融合タンパク質中のルシフェラーゼと、前記ルシフェラーゼに特異的なルシフェリンとの間でルシフェリン−ルシフェラーゼ反応を起こすことができる。前述したように、このルシフェリン−ルシフェラーゼ反応により発光を生じる。この発光を観察、検出または測定することにより、本発明の融合タンパク質の局在(分布)、分泌、定量などを観察、検出または測定することができる。
【0044】
発光イメージングは、具体的には、例えばCCDカメラ、フォトンカウンティングカメラなどの電子的に光を検出するカメラ(電子的カメラ)、フィルムカメラなどの科学的に光を検出するカメラ(化学的(ケミカル)カメラまたは銀塩カメラ)などの光検出装置(例、カメラ)を使用して行うことができる。モノクロCCDカメラ、3CCDカメラ、単板カラーCCDカメラ、デジタルCCDカメラなどを使用することができる。さらに、極微弱光検出CCDカメラとしては、電子冷却型CCD,液体窒素型CCD,イメージインテンシファイア付きCCDなどがあげられる。
極微弱光検出CCDイネージングカメラとしては、EM−CCDカメラ(例、浜松ホトニクス株式会社製モデルC9100-13、浜松ホトニクス株式会社製モデルC9100-14、プリンストンインスルメント社製モデルQuantEM、ホトメトリクス社製Evolve, ベルトール社製モデルNightOWL II LB983 em100など)が好ましい。フォトンカウンティングカメラとしては、市販されている装置、例えば浜松ホトニクス株式会社製VIMカメラ(例、モデルC2741-35Aなど)などを使用することができる。なお、浜松ホトニクス社製VIMカメラは、光増幅装置およびCCDカメラを備えている。
発光イメージングは、光検出装置に加えて、さらに顕微鏡を使用して行ってもよく、顕微鏡を使用するのが好ましい。顕微鏡としては、市販されている顕微鏡、例えば、オリンパス株式会社製倒立型顕微鏡モデルIX71、IX81などを使用してもよい。
発光イメージングは、光検出装置に加えて、さらに光増幅管、半導体光増幅装置などのイメージインテンシファイア(光増幅装置)を使用して行ってもよく、光増幅装置を使用するのが好ましい。光増幅装置としては、半導体受光素子を使用した光増幅装置(例、GaAsP(ガリウムヒ素リン)イメージインテンシファイアなど)、光電子増倍管などを使用することができる。光増幅装置としては、GaAsPイメージインテンシファイア(例、浜松ホトニクス株式会社製モデルC8600-04など)が好ましい。
【0045】
[工程(d)]
(10)細胞からの本発明の融合タンパク質分泌またはインスリン分泌を促進(または調節)する化合物のスクリーニング
上述したように、試験物質非存在下および試験物質存在下、本発明の形質転換体を培養し、それぞれの場合における本発明の融合タンパク質の分泌量などを、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応による発光を観察することによって測定する。試験物質非存在下と、試験物質存在下とにおける本発明の融合タンパク質の分泌量などを比較することによって、細胞からの本発明の融合タンパク質分泌またはインスリン分泌などを促進(または調節)する物質をスクリーニングすることができる。
より具体的には、(i)試験物質非存在下、本発明の形質転換体を培養した場合の本発明の融合タンパク質の分泌量などと、(ii)試験物質存在下、本発明の形質転換体を培養した場合の本発明の融合タンパク質の分泌量などを発光イメージングによって測定し、比較することにより、細胞からの本発明の融合タンパク質分泌またはインスリン分泌を促進(または調節)する物質をスクリーニングすることができる。
【0046】
より具体的には、例えば、上記(ii)の場合における本発明の融合タンパク質の分泌量を上記(i)の場合に比べて、約10%以上、好ましくは約20%以上、より好ましくは約30%以上、さらに好ましくは約40%以上、特に好ましくは約50%以上促進する試験物質を、本発明の融合タンパク質分泌またはインスリン分泌などを促進(または調節)する物質として選択することができる。
【0047】
[スクリーニング方法2]
以下の工程(a’)〜工程(d’)を含む、細胞からのMMP−2分泌を調節する物質のスクリーニング方法:
工程(a’):ルシフェラーゼと、プロMMP−2との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドにより形質転換した細胞を、試験物質の存在下および非存在下において培地中で培養する工程;
工程(b’):本発明の形質転換体内で本発明の融合タンパク質を発現させ、本発明の融合タンパク質を、ルシフェリンを含有する培地中(細胞外)に分泌させる工程;
工程(c’):細胞外に分泌された融合タンパク質を発光イメージング法により観察する工程;および
工程(d’):試験物質の存在下と非存在下との融合タンパク質の発現および/または活性、もしくは癌転移抑制活性などを比較する工程。
【0048】
以下、各工程の詳細について説明する。
[工程(a’)]
(1’)ルシフェラーゼ
本発明で用いられるルシフェラーゼは、前記[スクリーニング方法1]で説明した通りである。ルシフェラーゼとしては、前記[スクリーニング方法1]に記載したものと同様のものがあげられ、同様のものが好ましい。
【0049】
(2’)ルシフェリン
本発明で用いられるルシフェリンは、前記[スクリーニング方法1]で説明した通りである。ルシフェリンとしては、前記[スクリーニング方法1]に記載したものと同様のものがあげられ、同様のものが好ましい。
【0050】
(3’)プロMMP−2、MMP−2
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)−2は、細胞外マトリックスおよび結合組織の主成分の分解および修復に関与する、亜鉛依存性エンドペプチダーゼである。MMP−2は、基底膜の主成分であるIV型コラーゲンおよび変性コラーゲン(ゼラチン)を分解する活性を有している。また、MMP−2は、主にIV型コラーゲンからなる血管膜を破壊する活性を有している。このような活性により、MMP−2は腫瘍転移に重要な役割を果たしている。
MMP−2は、N末端にシグナルペプチドが結合したプロMMP−2として合成される。プロMMP−2は、シグナルペプチドが切断されることにより活性化され、MMP−2が生成される。
【0051】
本発明で用いられるプロMMP−2には、配列番号:18のアミノ酸配列からなるタンパク質および配列番号:18のアミノ酸配列からなるタンパク質と実質的に同質の活性もしくは機能を有するタンパク質を含む。
実質的に同質の活性もしくは機能とは、例えば、(i)前記タンパク質からシグナルペプチドの切断により生成した活性タンパク質のIVコラーゲン分解活性または変性コラーゲン(ゼラチン)分解活性が、配列番号:8のアミノ酸配列からなるタンパク質から生成したMMP−2の活性のIVコラーゲン分解活性または変性コラーゲン(ゼラチン)分解活性の、1/4以上、好ましくは1/3以上、より好ましくは1/2以上、さらに好ましくは1/1.5以上であることなどを意味する。上記の実質的に同質の活性もしくは機能を「MMP−2活性」と称することもある。前記のIVコラーゲン分解活性または変性コラーゲン(ゼラチン)分解活性は、IVコラーゲンまたは変性コラーゲン(ゼラチン)に前記タンパク質またはMMP−2を添加して一定時間分解反応を行い、残存したIVコラーゲンまたは変性コラーゲン(ゼラチン)をHPLC法、ゲル電気泳動法などを用いて定量することにより測定することができる。
【0052】
本発明で用いられるプロMMP−2としては、より具体的には、例えば、(a’)配列番号:18のアミノ酸配列を含有するタンパク質;(b’)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するタンパク質;(c’)配列番号:18のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するタンパク質;(d’)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するタンパク質などがあげられる。
【0053】
本発明で用いられるプロMMP−2としては、例えば、(a’)配列番号:18のアミノ酸配列を含有するタンパク質;(b’)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ前記アミノ酸配列からシグナルペプチドが切断された活性型タンパク質がMMP−2活性を有するタンパク質;(c’)配列番号:18のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ前記アミノ酸配列からシグナルペプチドが切断された活性型タンパク質がMMP−2活性を有するタンパク質;(d’)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ前記アミノ酸配列からシグナルペプチドが切断された活性型タンパク質がMMP−2活性を有するタンパク質などもあげられる。
【0054】
プロMMP−2としては、プロMMP−2のシグナルペプチドと、以下の(i’)〜(l’)のいずれかに記載のタンパク質であるのが好ましい:
(i’)配列番号:14のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(j’)配列番号:14のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するタンパク質;
(k’)配列番号:4のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するタンパク質;および
(l’)配列番号:3の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するタンパク質。
プロMMP−2のシグナルペプチドとしては、配列番号:16のアミノ酸からなるペプチドが好ましい。
【0055】
(4’)プロMMP−2と、ルシフェラーゼとの融合タンパク質
本明細書において、プロMMP−2と、ルシフェラーゼとの融合タンパク質とは、上述のプロMMP−2と、上述のルシフェラーゼとの融合タンパク質を意味する。
上述したように、ルシフェラーゼが分泌型ルシフェラーゼである場合には、シグナルペプチドを有していてもよく、シグナルペプチドを欠いていてもよい。
本明細書において、プロMMP−2と、ルシフェラーゼとの融合タンパク質も、「本発明の融合タンパク質」と称することがある。
【0056】
本発明の融合タンパク質には、以下の(m’)〜(p’)のいずれかに記載のタンパク質が含まれる:
(m’)配列番号:20のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(n’)配列番号:20のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するタンパク質;
(o’)配列番号:20のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するタンパク質;および
(p’)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するタンパク質。
【0057】
(5’)プロMMP−2と、ルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド
本明細書において、プロMMP−2と、ルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドも、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドと称することがある。
本明細書において、前述の本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、「本発明のポリヌクレオチド」と称することもある。
【0058】
本発明のポリヌクレオチドとしては、本発明の融合タンパク質をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドであればいかなるものであってもよいが、好ましくはDNAである。
【0059】
本発明のポリヌクレオチドには、(m’)配列番号:20のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;(n’)配列番号:20のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;(o’)配列番号:20のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するタンパク質;および(p’)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつMMP−2活性を有するポリペプチドを含有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドが含まれる。本発明のポリヌクレオチドとしては、さらに(p2’)配列番号:19の塩基配列を含有するポリヌクレオチドが好ましく、特に(p3’)配列番号:19の塩基配列からなるポリヌクレオチドが好ましい。
【0060】
本発明によれば、さらに上述した本発明のポリヌクレオチドを含有する組換えベクターおよび形質転換体を提供することができる。
(6')組換えベクター
適当なベクターにプロMMP−2と、ルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(本発明のポリヌクレオチド(DNA))を連結(挿入)することにより、本発明の融合タンパク質を発現しうるベクターを得ることができる。
本明細書において、前記の本発明のポリヌクレオチドを含有する組換えベクターを「本発明の組換えベクター」と称することがある。
本発明の組換えベクターは、より具体的には、前記と同様にして作成することができる。
【0061】
(7’)形質転換体
このようにして得られた、本プロMMP−2と、ルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(すなわち、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド)を含有する組換えベクターを、適当な宿主中に導入することによって、形質転換体を作成することができる。
本明細書において、前記の本発明の組換えベクターを含有する形質転換体も「本発明の形質転換体」と称することがある。
本発明の形質転換体は、より具体的には、前記と同様にして作成することができる。
【0062】
(8’)本発明の形質転換体の培養
本発明の形質転換体の培養は、前記と同様に、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。該培養によって、本発明の融合タンパク質が生成され、培養液中に本発明の融合タンパク質が分泌される。
【0063】
[工程(c’)]
(9’)発光イメージング
発光イメージングは、前記と同様にして実施することができる。
【0064】
[工程(d’)]
(10’)細胞からの本発明の融合タンパク質分泌またはMMP−2分泌を促進(または調節)する化合物のスクリーニング
上述したように、試験物質非存在下および試験物質存在下、本発明の形質転換体を培養し、それぞれの場合における本発明の融合タンパク質の分泌量などを、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応による発光を観察することによって測定する。試験物質非存在下と、試験物質存在下とにおける本発明の融合タンパク質の分泌量などを比較することによって、細胞からの本発明の融合タンパク質分泌またはMMP−2分泌などを促進(または調節)する物質をスクリーニングすることができる。
より具体的には、(i')試験物質非存在下、本発明の形質転換体を培養した場合の本発明の融合タンパク質の分泌量などと、(ii')試験物質存在下、本発明の形質転換体を培養した場合の本発明の融合タンパク質の分泌量などを発光イメージングによって測定し、比較することにより、細胞からの本発明の融合タンパク質分泌またはMMP−2分泌を促進(または調節)する物質をスクリーニングすることができる。
【0065】
より具体的には、例えば、上記(ii')の場合における本発明の融合タンパク質の分泌量を上記(i')の場合に比べて、約10%以上、好ましくは約20%以上、より好ましくは約30%以上、さらに好ましくは約40%以上、特に好ましくは約50%以上促進する試験物質を、本発明の融合タンパク質分泌またはMMP−2分泌などを促進(または調節)する物質として選択することができる。
【実施例】
【0066】
[実施例1−1]ヒトプレプロインスリン(hINS)とガウシアルシフェラーゼ(GLase)融合タンパク質発現ベクターの構築
ヒト由来のプレプロインスリンとガウシアルシフェラーゼとの融合タンパク質を発現させるための発現ベクターpcDNA3-hINS-GLucを、下記の方法に従って作成した。
ヒトプレプロインスリンをコードするBamHI-EcoRI cDNAフラグメントは、IMAGE cDNA クローン3950204 (http://image.llnl.gov/image/html/vectors.shtml参照)を鋳型として、PCR法によって取得した。PCR反応は、KOD-plus-DNAポリメラーゼ(東洋紡績株式会社製)と、プライマーであるhINS-P1 (5'ctc GGATCC AGCCACC ATG GCC CTG TGG ATG CGC CT 3'; 下線はBamHI認識部位)(配列番号:21)およびhINS-P2 (5'ctt GAA TTC GTT GCA GTA GTT CTC CAG CTG 3'; 下線はEcoRI 認識部位)(配列番号:22)を用い、サイクル条件は、25サイクル;15秒/96℃、15秒/55℃、45秒/68℃で実施した。得られたDNAフラグメントは、制限酵素BamHIおよびEcoRIを用いて消化した後、pcDNA3-GLuc-BEベクター(FEBS Letters, 581, 4551-4556 (2007)記載)のBamHI/EcoRI部位に挿入することによって、発現ベクターpcDNA3-hINS-GLucを構築した。
得られた発現ベクターpcDNA3-hINS-GLucにより発現されるタンパク質は、インスリンのシグナルペプチド配列、プロインスリンおよびガウシアルシフェラーゼからなる融合タンパク質である。
【0067】
[実施例1−2]発現ベクターpcDNA3-hINS-GLucによる形質転換細胞の作成及び形質転換細胞の評価。
マウス膵臓β細胞であるMIN6株は、10%ウシ胎仔血清(インビトロジェン社製)および2-メルカプトエタノール50μMを添加した、高グルコース濃度のDMEM培地(シグマ社製)中で培養した。
実施例1−1で得られた発現ベクターのMIN6細胞株へのトランスフェクションは、LipofectAMINE2000(インビトロジェン社製)を使用し、トランスフェクション後、細胞はCO2インキュベーターにて、37度で24時間培養した。
形質転換細胞における融合ガウシアルシフェラーゼ蛋白質の分泌発現の確認は、セレンテラジンを発光基質として、Biochem. Biophys. Res. Commun. 365, 96-101(2007)記載の方法に従い、発光活性をルミノメーターAB2200 (アトー社製)により測定した。 その結果、形質転換したMIN6細胞への高グルコース(20 mMグルコース )刺激による培養液での、発光活性は、処理前と比較して約7倍増加した(図1)。 このことは、本発現ベクターpcDNA3-hINS-GLuc-動物培養細胞系において、インスリンの分泌評価するこができることが明らかとなった。
【0068】
[実施例1−3]ヒトインスリン-ガウシアルシフェラーゼ融合タンパク質発現によるインスリンの細胞外分泌のイメージング方法
インスリンの分泌を可視化するためのMIN6細胞は、ガラス表面がポリ-D-リジンで処理された35 mm培養皿(Mat-Tek社製)で培養した。
高濃度グルコースを添加刺激することにより細胞より分泌するインスリンを、インスリン-GLase融合タンパク質の発光シグナルを用いて可視化するために、EM−CCDカメラを使用した、
【0069】
より具体的には、形質転換を行ったMIN6細胞株を3 mlの生理食塩水(PBS)で3回洗浄した後、セレンテラジン3 μg/mlを含む緩衝液1 mlに浸した。使用した緩衝液としては、低グルコース改変KRHB緩衝液(Krebs-Ringer Hepes buffer; 130 mM NaCl, 4.7 mM KCl, 1.2 mM KH2PO4, 1.2 mM MgSO4, 1.5 mM CaCl2, 10 mM Hepes (pH 7.4)、2 mMグルコースを含有)を用いた。上記の緩衝液1 mlによる洗浄後、セレンテラジン3 μg/mlを含有する低グルコースKRHB緩衝液(2 mMグルコース)中における細胞の発光ビデオイメージを取得した。つづいて、前記と同一の細胞について、高グルコース緩衝液における発光ビデオイメージを取得するために、培養液中に38 mMグルコースおよびセレンテラジン3 μg/mlを含有するKRHB緩衝液1 mlを添加して発光ビデオイメージ取得した。
【0070】
発光イメージング法による可視化は以下のとおりである。ガウシアルシフェラーゼとセレンテラジンによりルシフェリン−ルシフェラーゼ反応の結果、細胞より生成する発光シグナルは、暗箱中で、サーモスタットインキュベーター(株式会社東海ヒット社製)およびEM-CCDカメラ(モデルC9100-13;512 × 512ピクセル、ピクセルサイズ= 16 μm;浜松ホトニクス株式会社製)を備えたモデルIX71顕微鏡(オリンパス株式会社製)を用いて、37℃で測定した。以下のような、高開口数(NA)の対物レンズを使用した。UPLFLN 40×O (NA 1.30)、ApoN 60×OTIRFM (NA 1.49)およびPlanApo 100×OTIRFM (NA 1.45)(オリンパス株式会社製)。
【0071】
発光ビデオイメージは、AQUACOSMOSソフトウェア バージョン2.6(浜松ホトニクス株式会社製)を用いて、コンピューターのハードディスクに記録した。前記AQUACOSMOSソフトウェアを用いた発光シグナルデータの取得モード (acquisition mode)は、1×1 binning、fast scanningおよびphoto-counting level=1で使用した。取得した発光ビデオイメージは、前記ソフトウェアを用いて処理し、解析した。いくつかのケースでは、前記ソフトウェアの"sequential calculation"メニューの"MaxTrace"法を使用して、連続した発光イメージを取得し、最大発光強度を表示する画像イメージとして表示した。
【0072】
連続発光画像イメージにより取得した画像発光イメージは、明視野像に重ね合わせて、個々の細胞における発光シグナルの局在を表示させた。ビデオイメージにおける経時的な発光強度の変化を解析するために、特定の発光領域内の平均発光強度および最大発光強度を算出した。
【0073】
前記したインスリン-GLase融合タンパク質を一過的に発現するMIN6細胞株由来の形質転換体は、EM-CCDカメラ-顕微鏡装置(60倍対物レンズ:開口数1.49)を用いて、発光イメージング法によって解析した。
【0074】
低グルコース条件(2 mMグルコース)の培地で培養したMIN6細胞株由来の形質転換細胞からのエキソサイトーシスによるインスリン-GLase融合タンパク質の発光シグナルは、100-500 ms/frameの時間分解能での観察において、ほとんど検出されなかった。
【0075】
前記実施例1−1で調製したインスリン-GLase発現ベクターをトランスフェクション後、24時間培養した。 この一過的に形質転換されたMIN6細胞株由来の細胞塊(図2-左:明視野像)に、セレンテラジンを含む高グルコース(20 mMグルコース)培地で刺激した。刺激開始1分後から、発光ビデオイメージを、100 ms/フレームで7000フレームまで、約11.8分間取得した。
20 mMグルコースでの刺激後、インスリン-GLase融合タンパク質の分泌を示す発光スポットが頻繁に観察された(図2-中央:発光シグナルの画像)。 細胞の明視野像画像と発光画像を重ね合わすことにより、細胞からのインスリンの分泌画像をえることができ、細胞における分泌部位の特定が可能である(図2-右)。
さらに、100ミリ秒での高速発光画像を連続的に、編集することにより、インスリンのリアルタイムに分泌を映像化することができる(図3)。その結果、すべての発光画像の最大発光強度から作成された連続合成画像の編集により、MIN6細胞の形質転換体の細胞塊の細胞間隙から、インスリン-GLase融合タンパク質が分泌していることが示された。
分泌発光を示した細胞について、それぞれ図2-中央の細胞領域1〜3で示し、細胞領域1〜3内の平均発光強度の経時的な変化を算出した(図4)。
【0076】
領域2内の発光シグナルは、細胞が相互作用している狭い細胞間領域内に検出され、高グルコース刺激の数分後から発光強度が周期的パターンを示した。領域2および3内の2個の細胞のインスリン-GLase分泌の典型的なピークをそれぞれ解析した(図4)。これらのピークは、発光スポットの連続的な出現により生じる強い発光シグナルは、大量のインスリン-GLaseの分泌を表している。これらの大量の分泌の発光シグナルは、細胞の縁の周囲に多く連続的に現れ、その後、細胞間隙領域で拡散した。この現象は、とくに領域2の細胞において顕著であった。このことは、インスリン分泌の動的解析と同時に定量化が可能となった。
【0077】
いくつかの他の実験において、緊密な細胞間相互作用関係にある細胞は、細胞塊の周辺領域にある細胞と比較して、周期的なインスリン分泌を示す傾向が見られた(図5、図6)。
【0078】
さらに、細胞内部におけるインスリン-GLase融合タンパク質の分泌による強い発光スポットの集団は、細胞体の底部から1 μm以内の深さに集中していた。これらのデータは、インスリン分泌が細胞接着に依存している可能性を示唆している。また、これらのデータは、生理的条件において、細胞間相互作用している細胞塊形成が、インスリンの周期的分泌において重要である可能性も示唆している。
【0079】
インスリン-GLase融合タンパク質分泌は、エキソサイトーシスによる散発的な発光スポットは、周期的振動発光する集合した発光スポットと比較して、インスリン-GLase蛋白質分泌による発光スポットの大きさおよび持続時間を解析しやすい。多くの発光スポットは、大きさが1 μm以内であり、発光スポットの持続時間は0.1〜1秒の間であった。これらのデータは、個々のインスリン-GLaseによる分泌の発光シグナルは、一個の細胞顆粒の融合によって生じたことを示唆している(図7)。
【0080】
これに対して、いくつかの発光シグナルは、1秒から30秒以上にわたって持続することもあった。これらの持続的なスポットは、主に細胞体の底部側で観察された(図8)。インスリン分泌について、種々の分泌形態があることが、初めて明らかとなった。
【0081】
[実施例2−1]
スルホニル尿素系の血糖降下薬であるグリベンクラミドは、内因性インスリンの分泌を促進することにより、血糖降下させる。このインスリンの分泌促進をインスリン-GLase 発現MIN6細胞を用いて、その効果を評価した。具体的には、実施例1-1で調製した発現ベクターpcDNA3-hINS-GLucを、実施例1-2の記載の方法によりMIN6細胞に形質転換を行ない、インスリン-GLase 発現細胞を調製した。MIN6細胞株を3 mlの生理食塩水(PBS)で2回洗浄した後、それぞれ、コントロール(未処理)は2 mMグルコース、20 mMグルコース、10 (M グリベンクラミド(和光純薬社製)を含む2(lの低グルコース改変KRHB緩衝液を添加し、0、3、4、6、8、10、15、30分ごとに、2 ml分得し、ルシフェラーゼ活性を実施例1-2の記載の方法で測定した。図9に示すように、グリベンクラミド処理することにより、インスリンの分泌が促進することが明らかとなり、本ベクター発現細胞系において、薬剤評価が可能であることが示された。
【0082】
[実施態様3−1]ヒト由来のプロマトリックスメタロプロテイナーゼ2(pro-hMMP-2)-ガウシアルシフェラーゼ(GLase)融合タンパク質の発現ベクターの構築
ヒト由来のマトリックスメタロプロテイナーゼ2(hMMP-2)のシグナルペプチドを有するプロヒトマトリックスメタロプロテイナーゼ2(pro-hMMP-2)とガウシアルシフェラーゼ(GLase)との融合タンパク質を発現させるための発現ベクターpcDNA3-hMMP2-GLucを、下記の方法に従って作成した。
hMMP-2プロタンパク質のコード領域を、IMAGE cDNA クローン3161383(I.M.A.G.E.コンソーシアムの作成したcDNAクローン)から、PCR法(サイクル条件:25サイクル;15秒/98℃、15秒/55℃、2分/68℃)によって調製した。PCR法は、KOD-plus-DNAポリメラーゼ(東洋紡績株式会社製)と、プライマーセットhMMP-2-P1 (5' ggc AAGCTT AGCCACC ATG GAG GCG CTA ATG GCC C 3'; 下線はBamHI 認識部位)(配列番号:23)およびhMMP2-P2 (5'ggc GAATTC GCA GCC TAG CCA GTC GGA T 3'; 下線はEcoRI認識部位)(配列番号:24)を用いて実施した。得られたPCRフラグメントは、制限酵素BamHIおよびEcoRIを用いて消化した後、pcDNA3-GLuc-BEベクター(FEBS Letters, 581, 4551-4556 (2007)記載)のBamHI/EcoRI部位に挿入することによって、発現ベクターpcDNA3-hMMP2-GLucを構築した。 得られた発現ベクターpcDNA3-hMMP2-GLucにより発現されるタンパク質は、hMMP-2のシグナルペプチド配列、hMMP-2およびGLaseからなる融合タンパク質である。
【0083】
[実施態様3−2]発現ベクターpcDNA3-hMMP2-GLucによる形質転換体の作成
ヒト子宮頚癌細胞由来細胞株であるHeLa細胞を、10%ウシ胎仔血清(インビトロジェン社製)を添加したDMEM培地(シグマ社製)中で培養した。
実施態様3−1で得られた発現ベクターpcDNA3-hMMP2-GLucによるHeLa細胞株の形質転換体の作成は、Fugene HD(ロッシュ社製)を使用し、トランスフェクション後、細胞はCO2 インキュベーターにて、37度で24時間培養した。
【0084】
[実施態様3−3]ヒトメタロプロテイナーゼ2(hMMP-2)-GLase融合タンパク質の細胞外分泌のイメージング
ヒトメタロプロテイナーゼ2(hMMP-2)-GLase融合タンパク質の細胞外分泌のイメージングは、ガラス表面が未処理35 mm培養皿(旭硝子株式会社製)で培養し、前記実施例1−3と同様の方法に従って実施した。
【0085】
hMMP-2と融合したGLase(hMMP-2-GLase融合タンパク質)をHeLa細胞中で24時間、一過性に発現させると、培地中のMMP-2-GLaseは、GLase単独の場合に比べて約1/3程度の発光強度を示した(図10)。一過性にhMMP-2-GLase融合タンパク質および野生型hMMP-2を発現するHeLa細胞を、抗MMP-2抗体および抗GLase抗体を用いて免疫蛍光法およびウェスタンブロット法で分析したところ、hMMP-2-GLase融合タンパク質は、野生型hMMP-2と同様の局在を示した。これらの結果は、hMMP-2-GLaseの分泌経路は、野生型hMMP-2と同様であることを示している。
【0086】
一方、hMMP-2-GLase融合タンパク質を発現する形質転換したHeLa細胞において、発光ビデオイメージ(500 ミリ秒/フレーム)解析の結果、MMP-2分泌は細胞極性を示すことが、示された(図11)。発光画像において、hMMP-2-GLase融合タンパク質を発現するHeLa細胞は、GLase単独で発現するHeLa細胞とは異なり、発光基質セレンテラジンの添加直後に、多くの明るい発光スポットが観察された。これらの最初に現れる発光スポットは、同一の場所に留まり、セレンテラジン添加後1分間以内に、ゆっくりとバックグラウンドレベルまで消失した。一方、発光を持続する発光スポットの存在は、細胞膜表面に結合したhMMP-2-GLase融合タンパク質を示すものである。これらの継続する発光スポットは、移動する細胞の前方部分に向かって集まり、かつ分散した分布を示す。MMP-2は細胞表面のインテグリンまたはMT1-MMP (MMP14)(これはMMP-2のアクチベーターである)に結合することが知られている。これらのMMP-2-GLase融合タンパク質の継続する発光スポットは、前記タンパク質に結合した、細胞表面におけるMMP-2の局在を示すものである。
【0087】
継続する発光スポットが消滅する間または消滅した後、hMMP-2-GLase融合タンパク質のエキソサイトーシス(開口分泌)を示す一過性に表れる発光スポットが観察された。同一のイメージング条件(500 ミリ秒/フレーム、40×対物レンズ;図12)において、融合されていないGLaseだけの発光スポットとは異なり、hMMP-2-GLaseの一過性に表れる発光スポットは、狭い領域に維持され、かつ数秒間かけてゆっくりと拡散した。
【0088】
hMMP-2-GLase融合タンパク質の分泌による発光スポットは、主に細胞のリーディングエッジ付近に出現した。数秒間にわたるhMMP-2-GLase融合タンパク質の連続的な分泌が、リーディングエッジに沿って観察されることもあった(図12)。MMP-2プロテアーゼ活性は、細胞接着タンパク質を分解してラッフル膜を持ち上げるために必要である可能性があるので、hMMP-2-GLaseの連続的な分泌は、リーディングエッジにおけるラッフル膜の形成および移動に関係する可能性がある。なお、hMMP-2-GLase分泌による発光シグナルは、K+濃度上昇による刺激されなかったことから、細胞内のイオン影響を受けないことが明らかとなった。
【0089】
前記連続する分泌発光が消滅した後(図13)、hMMP-2-GLase融合タンパク質のエキソサイトーシスによって生じる最大発光シグナル(図14-左)を細胞の明視野像に重ねあわせた合成画像を作成し(100フレーム、約50秒間;図14-右)、hMMP-2-GLase融合タンパク質のエキソサイトーシス現象を局在および頻度を推定した。この合成画像は、移動する細胞中のリーディングエッジ付近に、MMP-2が極性のある分布を示すことを明確に示している。エキソサイトーシスによる発光スポットの分布は、初期に観察される連続する発光スポットの分布と比較して、よりリーディングエッジに近かった(図14)。発光ビデオイメージおよび合成画像(図14-右)は、移動する細胞のhMMP-2-GLase融合タンパク質の分泌も示している。これらのデータは、エキソサイトーシス現象によるMMP-2分泌のホットスポットおよび細胞表面に残留するMMP-2の点状のスポットは、原形質膜の別個の極小領域局在することを示唆している。
【0090】
次に、細胞の極小領域におけるエキソサイトーシスの頻度を推定した。図13の合成イメージ中の丸印で囲まれた4つの領域(領域1-4)における最大発光強度の経時的な変化は、それぞれの領域において、いくつかの発光ピークを示した(図15)。領域1-4における顕著な発光ピーク(図14において矢印で示す)を計測したところ、それぞれ3個、4個、1個および2個であった。これらの数は、この期間内(100フレーム、約50秒間)に少なくとも起こった顕著なエキソサイトーシスの数を示す。これらのデータは、hMMP-2-GLase融合タンパク質のエキソサイトーシスは、移動する細胞の細胞表面における限られた極小領域内において繰り返し起きていることを示している。
【0091】
次に、100×対物レンズ(開口数(NA) 1.45)を使用してイメージングを行った。40×対物レンズを使用した発光ビデオイメージ取得直後に、100×対物レンズを使用い、同一の移動細胞のhMMP-2-GLaseに関する発光ビデオイメージを、500 ms/フレーム(200フレーム、約100秒間)で、取得した。高100×対物レンズ使用による発光画像から、リーディングエッジにおける個々のhMMP-2-GLase融合タンパク質分泌の発光スポットが、より明確に観察された。矢印で示された発光ビデオイメージの1フレーム中の発光スポット(図16、スポット1-5)は、画像から、エキソサイトーシス現象により生成されたシグナルと判断された。スポット2-4は、このフレームで新たに現れたスポットである。スポット2および3において、エキソサイトーシスによる発光スポットの発光強度は、2-3秒間でバックグラウンドレベルまで減少した(図17)。スポット2などのいくつかの繰り返し現れる発光スポットは、エキソサイトーシス分泌顆粒の連続的な膜融合によるhMMP-2分泌を示唆している(図17)。
【0092】
これらのスポットと同様に、hMMP-2-GLase融合タンパク質の発光スポットの大多数は、1μm未満程度である。一つのエキソサイトーシス顆粒の発光スポットの直径は、TIRFおよび2光子イメージング法(Science, 297, 1349-1352 (2002))によって0.1-0.4 μmと測定されている。したがって、これらの発光スポットは、1つのエキソサイトーシス分泌顆粒由来のMMP-2-GLase融合タンパク質分泌によるものであるか、または極小領域内での連続的な分泌小胞の融合によるものである。また、ビデオ画像の最大発光強度の合成画像は、リーディングエッジでのエキソサイトーシススポットの分布を、高解像度で解析できる。領域1および領域2における一過性に表れる発光スポットの数は、それぞれ70個および20個と計測された(図16右下)。
【0093】
hMMP-2-GLase融合タンパク質分泌の発光スポットは、細胞の底面側の約1μm以内の深さに集中していた。このことから、hMMP-2は、主に細胞表面の底面側から分泌されることが示唆される。
【0094】
これらのデータは、MMP-2を含むエキソサイトーシス分泌顆粒の融合の多くは、短時間のうちにリーディングエッジで起こり、細胞接着および細胞外マトリックスを破壊することを示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のスクリーニング方法は、インスリン分泌促進作用を有し、より副作用(低血糖誘発など)の少ないインスリン分泌促進剤などの薬物のスクリーニングに有用である。また、前記スクリーニング方法に使用される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換細胞、前記形質転換細胞を含むスクリーニングキットなども、同様に優れた薬物のスクリーニングなどに有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0096】
[配列番号:1]ガウシアルシフェラーゼ(Gaussia Luciferase, GLase)をコードするポリヌクレオチドの塩基配列を示す。
[配列番号:2]ガウシアルシフェラーゼのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:3]ヒトプロインスリンをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を示す。
[配列番号:4]ヒトプロインスリンのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:5]ヒトプレプロインスリンのシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を示す。
[配列番号:6]ヒトプレプロインスリンのシグナルペプチドのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:7]実施例(Example)1−1および実施態様(Embodiment)3−1で用いられた、シグナル配列を欠くガウシアルシフェラーゼ(GLase(K18-D185))をコードするポリヌクレオチドの塩基配列を示す。
[配列番号:8]配列番号:7で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド(GLase(K18-D185))のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:9]実施例(Example)1−1で用いられた、ヒトプレプロインスリンをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を示す。
[配列番号:10]配列番号:9で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド(ヒトプレプロインスリン)のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:11]実施例(Example)1−1で用いられたヒトプレプロインスリンと、シグナル配列を欠くガウシアルシフェラーゼ(GLase(K18-D185))との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列を示す。
[配列番号:12]配列番号:11で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:13]ヒトMMP−2をコードするポリヌクレオチドの塩基配列。
[配列番号:14]ヒトMMP−2のアミノ酸配列。
[配列番号:15]ヒトプロMMP−2のシグナル配列をコードするポリヌクレオチド。
[配列番号:16]ヒトプロMMP−2のシグナル配列のアミノ酸配列。
[配列番号:17]実施態様(Embodiment)3−1で用いられた、ヒトプロMMP−2をコードするポリヌクレオチドの塩基配列。
[配列番号:18]配列番号:17で表されるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド(ヒトプロMMP−2)のアミノ酸配列。
[配列番号:19]実施態様(Embodiment)3−1で用いられた、ヒトプロMMP−2と、シグナル配列を欠くガウシアルシフェラーゼ(GLase(K18-D185))との融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列。
[配列番号:20]配列番号:19で表されるポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドのアミノ酸配列。
[配列番号:21]実施例1−1で用いられたプライマーの塩基配列。
[配列番号:22]実施例1−1で用いられたプライマーの塩基配列。
[配列番号:23]実施態様3−1で用いられたプライマーの塩基配列。
[配列番号:24]実施態様3−1で用いられたプライマーの塩基配列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレプロインスリンとルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドにより形質転換された細胞を用いて、細胞からのインスリン分泌を調節する物質をスクリーニングする方法。
【請求項2】
ルシフェラーゼが、分泌型ルシフェラーゼである請求項1記載のスクリーニング方法。
【請求項3】
分泌型ルシフェラーゼが、ガウシアルシフェラーゼである請求項2記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である請求項3記載のスクリーニング方法:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列を含有するタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;および
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項5】
ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である請求項4記載のスクリーニング方法:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項6】
プレプロインスリンが、以下の(e)〜(h)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項1〜5のいずれかに記載のスクリーニング方法:
(e)配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(f)配列番号:10のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(g)配列番号:10のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(h)配列番号:9の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド。
【請求項7】
プレプロインスリンが、プレプロインスリンのシグナルペプチドと、以下の(i)〜(l)のいずれかに記載のポリペプチドからなる請求項6記載のスクリーニング方法:
(i)配列番号:4のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(j)配列番号:4のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(k)配列番号:4のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(l)配列番号:3の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド。
【請求項8】
プレプロインスリンのシグナルペプチドが、配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチドである、請求項7記載のスクリーニング方法。
【請求項9】
融合タンパク質が、以下の(m)〜(p)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項1〜8のいずれかに記載のスクリーニング方法:
(m)配列番号:12のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(n)配列番号:12のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(o)配列番号:12のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(p)配列番号:11の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド。
【請求項10】
さらに、CCDカメラまたはフォトンカウンティングカメラを用いて発光を検出する工程を含む、請求項1〜9のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項11】
プレプロインスリンとルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項12】
ルシフェラーゼが、分泌型ルシフェラーゼである請求項11記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
分泌型ルシフェラーゼが、ガウシアルシフェラーゼである請求項12記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である請求項13記載のポリヌクレオチド:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列を含有するタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;および
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項15】
ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である請求項14記載のポリヌクレオチド:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項16】
プレプロインスリンが、以下の(e)〜(h)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項11〜15のいずれかに記載のポリヌクレオチド:
(e)配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(f)配列番号:10のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(g)配列番号:10のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(h)配列番号:9の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド。
【請求項17】
プレプロインスリンが、プレプロインスリンのシグナルペプチドと、以下の(i)〜(l)のいずれかに記載のポリペプチドからなる請求項16記載のポリヌクレオチド:
(i)配列番号:4のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(j)配列番号:4のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(k)配列番号:4のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(l)配列番号:3の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド。
【請求項18】
プレプロインスリンのシグナルペプチドが、配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチドである、請求項17記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
融合タンパク質が、以下の(m)〜(p)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項11〜18のいずれかに記載のポリヌクレオチド:
(m)配列番号:12のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(n)配列番号:12のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(o)配列番号:12のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(p)配列番号:11の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド。
【請求項20】
請求項11〜19のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
【請求項21】
請求項20記載の組換えベクターが導入された形質転換細胞。
【請求項22】
細胞株由来である請求項21記載の形質転換細胞。
【請求項23】
細胞株が、哺乳動物由来である請求項22記載の形質転換細胞。
【請求項24】
細胞が、膵臓β細胞由来である請求項21〜23のいずれかに記載の形質転換細胞。
【請求項25】
請求項21〜24のいずれかに記載の形質転換細胞を用いて、インスリンの細胞外分泌を観察する方法。
【請求項26】
請求項21〜24のいずれかに記載の形質転換細胞を用いて、細胞におけるインスリンのエキソサイトーシス部位の局在を特定する方法。
【請求項27】
請求項21〜24のいずれかに記載の形質転換細胞を用いて、細胞外に分泌されたインスリンを定量する方法。
【請求項28】
請求項21〜24のいずれかに記載の形質転換細胞を用いて、細胞におけるインスリンの分泌頻度を特定する方法。
【請求項29】
請求項21〜24のいずれかに記載の形質転換細胞を用いて、細胞外に分泌されたインスリンの拡散動態を観察する方法。
【請求項30】
請求項21〜24のいずれかに記載の形質転換細胞を含むキット。
【請求項31】
薬物のスクリーニングのためのキットである、請求項30記載のキット。
【請求項32】
さらにルシフェリンを含む、請求項30または31記載のキット。
【請求項33】
プレプロインスリンとルシフェラーゼとの融合タンパク質。
【請求項34】
ルシフェラーゼが、分泌型ルシフェラーゼである請求項33記載のタンパク質。
【請求項35】
分泌型ルシフェラーゼが、ガウシアルシフェラーゼである請求項34記載のタンパク質。
【請求項36】
ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である請求項35記載のタンパク質:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列を含有するタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;および
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項37】
ガウシアルシフェラーゼが、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のタンパク質である請求項36記載のタンパク質:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質;
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項38】
プレプロインスリンが、以下の(e)〜(h)のいずれかに記載のポリペプチドである請求項33〜37のいずれかに記載のタンパク質:
(e)配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(f)配列番号:10のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(g)配列番号:10のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(h)配列番号:9の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド。
【請求項39】
プレプロインスリンが、プレプロインスリンのシグナルペプチドと、以下の(i)〜(l)のいずれかに記載のポリペプチドからなる請求項38記載のタンパク質:
(i)配列番号:4のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(j)配列番号:4のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(k)配列番号:4のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(l)配列番号:3の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド。
【請求項40】
プレプロインスリンのシグナルペプチドが、配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチドである請求項39記載のタンパク質。
【請求項41】
以下の(m)〜(p)のいずれかに記載のポリペプチドを含有する請求項33〜40のいずれかに記載のタンパク質:
(m)配列番号:12のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(n)配列番号:12のアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;
(o)配列番号:12のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド;および
(p)配列番号:11の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつインスリン活性を有するポリペプチドを含有するポリペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−213610(P2010−213610A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63279(P2009−63279)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】