説明

インスリン及びGLP−1アゴニストの組み合わせ

【課題】 新規なインスリン及びGLP−1アゴニストを含む薬剤の提供。
【解決手段】 少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含む薬剤であって、インスリン及びGLP−1アゴニストをそれぞれ所定の量で含むことになるように、そして患者の個別の要求に適合した用量で投与することができるように製剤化及び/又は調剤される薬剤。本薬剤は糖尿病患者等を処置する分野において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1受容体アゴニスト(以下ではGLP−1アゴニストと呼ぶ)を含む薬剤であって、インスリン及びGLP−1アゴニストをそれぞれ所定の量で含むことになるように、そして患者の個別の要求に適合する用量で投与することができるように製剤化及び/又は製剤化される、上記薬剤に関する。
【0002】
本発明は、特に、第一の医薬組成物及び第二の医薬組成物、及び場合により少なくとも1つのさらなる医薬組成物を含み、これらがそれぞれ、少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含み、そして少なくとも1つのインスリン及び/又は少なくとも1つのGLP−1アゴニストを、組成物の総質量に対して異なる質量分率(weight fraction)で含有する薬剤に関する。
【0003】
とりわけ、本発明は、第一の医薬組成物及び第二の医薬組成物、及び場合により少なくとも1つのさらなる医薬組成物を含む薬剤であって、第一の医薬組成物は少なくとも1つのインスリンを含み、そして第二の医薬組成物は少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含み、そして少なくとも1つのさらなる医薬組成物は、少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのさらなる活性化合物を含む、上記薬剤に関する。
【背景技術】
【0004】
世界中で約2億5000万の人々が糖尿病を患っている。そのうち1型糖尿病については、欠乏した内分泌性インスリン分泌の代替が彼らに対する現在可能な唯一の治療法である。罹患した人々は、死ぬまで通常は毎日数回のインスリン注射に依存する。2型糖尿病は常にインスリン欠乏であるわけではないが、多くの場合、特に進行した状態では、場合により経口抗糖尿病剤と組み合わせたインスリンによる処置が最も有利な治療形態と考えられる点で1型糖尿病と対照的である。
【0005】
健康な個体では、膵臓によるインスリン放出は血中グルコース濃度と厳密に連動する。食事の後に起こるような上昇した血中グルコースレベルは、対応するインスリン分泌の上昇により迅速に補正される。空腹状態において、血漿インスリンレベルは、インスリン感受性器官及び組織へのグルコースの継続的な供給を確実にするために十分なベースライン値まで下がり、夜間に肝臓のグルコース産生を低く維持する。内因性インスリン分泌を、外因性のもの、通常はインスリンの皮下投与で置き換えると、一般的に、血中グルコースの生理的調節の質は上記の質には及ばない。血中グルコースが上方又は下方に大幅に外れてしまう事例は頻繁にあり、それらの最も深刻な形態では、これらは生命に関わる。しかし、さらに、初期症状もなく何年にもわたって上昇した血中グルコースレベルは、相当な健康上のリスクを構成する。米国における大規模なDCCT研究(非特許文献1)は、慢性的に上昇した血中グルコースレベルが後期糖尿病合併症の発症の原因であることを明らかに示した。後期糖尿病合併症は微小血管及び大血管の損傷であり、これは網膜症、ネフロパシー又はニュロパシーとして特定の状況で現れ、そして失明、腎不全及び四肢の喪失をもたらし、さらに心血管障害の増加したリスクを伴う。このことから、血中グルコースをできるだけ生理的範囲内に近く維持するには糖尿病の改善された治療を第一に目指さなければならないということが推測され得る。強化されたインスリン治療という考え方に従えば、これは、速効性及び遅効性のインスリン調製物の一日に数回の注射により達成されるべきである。速効性製剤は、血中グルコースの食後の上昇を補正するために食事時間に投与される。遅効性基礎(basal)インスリンは、低血糖になることなく、特に夜間
のインスリンの基本的供給を確実にすることを意図される。
【0006】
インスリンは、2つのアミノ酸鎖に分けられる51個のアミノ酸から構成されるポリペプチドであり:A鎖は21個のアミノ酸を有し、そしてB鎖は30個のアミノ酸を有する。これらの鎖は2つのジスルフィド架橋により一緒に連結されている。インスリン調製物は、長年の間糖尿病治療に使用されてきた。このような調製物は、天然に存在するインスリンだけでなく、より最近ではインスリン誘導体及びインスリン類似体も使用する。
【0007】
インスリン類似体は、少なくとも1つの天然に存在するアミノ酸残基の他のアミノ酸による置換、及び/又は対応するかそうでなければ同一の天然に存在するインスリンからの少なくとも1つのアミノ酸残基の付加/欠失で異なる、天然に存在するインスリン、すなわちヒトインスリン又は動物インスリンの類似体である。対象のアミノ酸は天然似存在しないアミノ酸でもよい。
【0008】
インスリン誘導体は、天然に存在するインスリンの、又は化学修飾により得られるインスリン類似体の誘導体である。化学修飾は、例えば1つ又はそれ以上の規定された化学基に加えて、及び1つ又はそれ以上のアミノ酸に対してなされ得る。一般的に言えば、インスリン誘導体及びインスリン類似体の活性はヒトインスリンと比較していくらか変更されている。
【0009】
作用の開始が加速されているインスリン類似体は、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に記載される。特許文献1は特にB27及びB28の置換に関する。特許文献3は、B29の位置に異なるアミノ酸(好ましくはプロリンであるがグルタミン酸ではない)を有するインスリン類似体を記載する。特許文献2はリジン又はアルギニンをB28に有するインスリン類似体を包含し、これは場合によりB3及び/又はA21において修飾されていてもよい。加速された活性は、特許文献4に記載されるインスリン類似体によっても示されている。
【0010】
特許文献5は、B3におけるアスパラギンの修飾及びA5、A15、A18又はA21の位置における少なくとも1つのさらなるアミノ酸の修飾により化学修飾から保護されているインスリン類似体を開示する。
【0011】
特許文献6は、B1−B6の位置における少なくとも1つのアミノ酸がリジン又はアルギニンで置き換えられているインスリン類似体を記載する。特許文献6によれば、このようなインスリンは延長された活性を有する。遅延した活性は、特許文献7において記載されるインスリン類似体、並びに特許文献8及び特許文献9において記載されるインスリン類似体によっても示される。
【0012】
販売されているインスリン代替品のための天然に存在するインスリンのインスリン調製物は、インスリンの起源が異なり(例えば、ウシ、ブタ、ヒトインスリン)、そしてそれらの組成も異なり、それにより作用プロファイルが影響を受け得る(作用開始及び作用持続期間)。異なるインスリン製品を組み合わせることにより、多種多様な作用プロファイルを得ることが可能であり、そしてできるだけ生理的状態(physiological)に近い血中糖レベルを設定することが可能である。現在では、組み換えDNA技術によりこのような修飾インスリンの製造が可能となる。これらには延長された作用持続期間を有するインスリングラルギン(Gly(A21)−Arg(B31)−Arg(B32)ヒトインスリン)が含まれる。インスリングラルギンは、皮下組織の生理的pH範囲におけるその溶解特性のために酸性の透明溶液として注射され、安定な六量体会合物として沈殿する。インスリングラルギンは1日に1回注射され、そしてその平坦な血清プロファイル及び夜間の低血糖のリスクの関連した減少に関して、他の長期活性インスリンよりも顕
著である(非特許文献2)。
【0013】
長期の作用持続期間をもたらすインスリングラルギンの特定の製造は、酸性pHを有する透明溶液を特徴とする。
【0014】
グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)は、グルコース又は脂肪の経口摂取後にインスリン応答を増大させる内分泌性ホルモンである。GLP−1は一般的に、グルカゴンの濃度を調節し、胃排出を遅らせ、(プロ−)インスリンの生合成を刺激し、インスリンに対する感受性を増大させ、そしてグリコゲンのインスリン依存性生合成を刺激する(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。
【0015】
ヒトGLP−1は37個のアミノ酸残基を有する(非特許文献6、非特許文献7)。GLP−1の活性フラグメントはGLP−1(7−36)アミド及びGLP−1(7−37)を含む。
【0016】
エキセンジンは、血中グルコース濃度を低下させることができる別のグループのペプチドである。エキセンジンはGLP−1(7−36)と一定の類似性を有する(53%、非特許文献8)。エキセンジン−3及びエキセンジン−4は、モルモット膵臓の腺房細胞においてエキセンジン受容体との相互作用により細胞cAMP産生の増加を刺激する(非特許文献9)。エキセンジン−4と対照的に、エキセンジン−3は膵臓の腺房細胞においてアミラーゼ放出の増加をもたらす。
【0017】
エキセンジン−3、エキセンジン−4、及びエキセンジンアゴニストは、糖尿病の処置及び低血糖の予防に提案されており;これらは胃運動及び胃排出を低減する(特許文献10及び特許文献11)。
【0018】
エキセンジン類似体は、天然のエキセンジン−4配列のアミノ酸置換及び/又はC末端切断で特徴付けられ得る。この種類のエキセンジン類似体は、特許文献12、特許文献13、特許文献14に記載される。
【0019】
インスリンとGLP−1との組み合わせは糖尿病の処置に関して特許文献15より公知である。
【0020】
診療において、投与されるインスリンの量は、個々の糖尿病患者の個別の要件に対して調整される。個々の患者は一般的に異なる量のインスリン及び/又はGLP−1アゴニストを必要とする。典型的には、所定の用量が、規定された濃度を有する規定された量の組成物を投与することにより投与される。この結果は、インスリン及びGLP−1を同時に含む組成物は1つの特定の比率のインスリン及びGLP−1しか投与できないということである。これは、インスリン及びGLP−1の2つの量の一方しか患者の要件に最適に適合することができないということを意味する。実際には、投与されるインスリンの量の正確な調整が必須であるため、GLP−1に対して特定の比率のインスリンが投与される場合、GLP−1アゴニストは過少量投与か過量投与のいずれかであり、そしてせいぜい偶然にしか補正されない。
【0021】
活性化合物の組み合わせの注射について種々のシステムが公知である。活性化合物は、組成物で製剤化されて、例えばプレフィルドシリンジのようなデバイスで提供されてもよい。この種類のシステムは組み合わせの投薬を可能にするが、組成物中に存在する固定された比率の活性化合物のみである。そこで述べられているように、治療上の要件によって異なる量のインスリン及びGLP−1アゴニストを投与しなければならないので、このことはインスリンとGLP−1アゴニストとの組み合わせには不利である。
【0022】
2つの活性化合物を、それぞれが2つの活性化合物のうち1つを含む2つの別個の製剤で投与することも可能であり、これらは互いに独立してそれぞれ1つのデバイス(例えばプレフィルドシリンジ)を用いて注射される。例えばインスリン注射のような注射の治療の場合には、患者コンプライアンスは治療の成功のための鍵となる必要条件である。一般的に言えば、注射治療の場合には、痛み、針恐怖症、及び注射装置の運搬設備が問題であり、これがコンプライアンスの低下をもたらし得る。患者が2つの別個のデバイスを注射に使用する場合、これらの問題は増大する。
【0023】
インスリン及びGLP−1アゴニストの投与のための単一のデバイスは、 患者/使用者が関与する限り、インスリン及びGLP−1アゴニストの投与のための2つの別個のデバイスの使用よりも有利である。さらに、2つのデバイスよりもむしろ1つのみのデバイスの使用が、患者/使用者が行わなければならない工程の数を減らし得、これにより使用における過失の頻度が低下する。これにより望ましくない副作用のリスクが低減される。
【0024】
特許文献16、特許文献17、特許文献18及び特許文献19は、2つの注射剤を患者に同時投与するためのデバイスを記載する。これらのデバイスは、それぞれ1つの組成物を含有する2つの容器を含む。これらのデバイスにおいて、2つの組成物は針を介して注入される。これにより2つの別個のデバイスの使用により生じる不利な点を克服することが可能となる。混合処理の結果として、2つの活性化合物の濃度の希釈がある。これは薬物動態に対して悪影響を与えることがある。
【0025】
インスリン、特にインスリングラルギンの薬物動態は、投与される組成物におけるインスリンの希釈に影響を受ける。従って、特定の用量のインスリンの信頼性のある活性を確実にするために、インスリンの濃度は可能な限り一定に維持するべきである。投薬は、投与されるインスリン組成物の体積により本質的に行われるべきである。このことはインスリン及びGLP−1アゴニストの組み合わせの投与にも当てはまる。インスリン及びGLP−1アゴニストの組み合わせが投与される場合、両方の物質が1つの組成物中で互いに固定された比率で投薬される場合にのみこの条件が満たされる。両方の物質が別個の組成物で提供されて適切なデバイス(例えば特許文献19)で注射用に混合される場合、一定の濃度のインスリンは、インスリン組成物がGLP−1アゴニストの組成物により実質的に希釈されない場合にのみ実現できる。このことは、インスリンとGLP−1アゴニストとの独立した投薬の可能性に制限を課す。
【0026】
1つの考えられる解決法は、GLP−1アゴニストを投薬用に加えることによりインスリン組成物の大幅な希釈を生じない(例えば多くて10%)ような高い濃度でGLP−1アゴニストを提供することだろう。インスリン(例えばインスリングラルギン、Lantus(登録商標))又はGLP−1アゴニストのようなポリペプチドは、無限に濃縮することができない。第一に、タンパク質の溶解度は限定されており、高濃度のタンパク質は溶液の流動特性を変更し得る。高濃度の活性化合物を含む溶液の使用に関して最も重要な問題は投薬の正確性である。高濃度では、小さい体積を投与すること又は異なる溶液への投薬を行うことが必要になるだろう。小さいか又は非常に小さい体積の正確な投薬について知られているデバイスがある。しかし、このようなデバイスは高価であり、そしてそれらの操作を踏まえて、例えば研究所におけるような訓練された人物による使用のみを意図されている。一般的に言えば患者が患者自身にインスリン及び/又はGLP−1アゴニストを注射するので、インスリン及び/又はGLP−1アゴニストを投与するためのこのようなデバイスの使用は認められない。患者が患者自身に活性化合物溶液を注射することを可能にする、例えば特許文献16、特許文献17、特許文献18及び特許文献19に記載されるデバイスは、小さい体積及び非常に小さい体積の投薬には不適切である。
【0027】
インスリン及びGLP−1アゴニストの組み合わせの注射で生じる問題は以下のとおりである
・ 活性化合物の比率が変わりやすいはずである;
・ 活性化合物の少なくとも1つ(インスリン)の薬物動態が濃度/希釈により影響を受ける;
・ 少なくとも1つの他の活性化合物(GLP−1アゴニスト)の薬物動態が濃度/希釈により影響を受けないか又は実質的に影響を受けない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】EP0214826
【特許文献2】EP0375437
【特許文献3】EP0678522
【特許文献4】EP−A−0 885 961
【特許文献5】EP0419504
【特許文献6】WO92/00321
【特許文献7】EP−A 0 368 187
【特許文献8】独国特許出願第10 2008 003 568.8号
【特許文献9】独国特許出願第10 2008 003 566.1号
【特許文献10】US 5,424,286
【特許文献11】WO98/05351
【特許文献12】WO 99/07404
【特許文献13】WO 99/25727
【特許文献14】WO 99/25728
【特許文献15】WO 2004/005342
【特許文献16】US 4,689,042
【特許文献17】US 5,478,323
【特許文献18】US 5,253,785
【特許文献19】WO 01/02039
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】The Diabetes Control and Complications Trial Research Group (1993) N. Engl. J. Med. 329, 977−986
【非特許文献2】Schubert−Zsilavecz et al., 2:125−130(2001)
【非特許文献3】Holst (1999), Curr. Med. Chem 6:1005
【非特許文献4】Nauck et al. (1997) Exp Clin Endocrinol Diabetes 105: 187
【非特許文献5】Lopez−Delgado et al. (1998) Endocrinology 139:2811
【非特許文献6】Heinrich et al., Endocrinol. 115:2176 (1984)
【非特許文献7】Uttenthal et al., J Clin Endocrinol Metabol (1985) 61:472
【非特許文献8】Goke et al. J. Biol Chem 268, 19650−55
【非特許文献9】Raufman, 1996, Reg. Peptides 61:1−18
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
従って、先行技術の上記の不利な点を少なくとも部分的に克服する薬剤を提供することが本発明の目的であった。できるだけ1日に1回だけの投与であるべきということがさらに意図される。
【課題を解決するための手段】
【0031】
驚くべきことに、インスリンとGLP−1アゴニストとの組み合わせが、インスリン又はGLP−1アゴニストの単独での使用と比較して、食後期及び吸収後期(postprandial
and postabsorptive phases)における血中グルコースの調節において相乗効果を示すことが見出されている:
・ 空腹時及び食後のグルコースレベルに対する補完的な活性の組み合わせ(これらは互いに補完する)に基づくより高い活性(実施例2及び3)。この組み合わせは、単独のGLP−1アゴニストと同様に食後グルコース濃度の低下(すなわち改善された耐糖能)を示し、そしてさらにインスリンと同様のグルコースの吸収後の低下を示す(実施例9)。・ 低血糖リスクの低減(実施例2〜4)。
・ 血中グルコース濃度の正常血糖レベルへの改善された適応(実施例8)。
・ 改善された耐糖能及び吸収後グルコース濃度の低下(実施例9)。
・ グルコース濃度に対するこの組み合わせの相乗的活性が、GLP−1アゴニスト濃度範囲で一桁の大きさで(10倍)観察される。(実施例4及び2と比較した実施例6)。比較的小さなGLP−1用量及び/又はGLP−1に対するインスリンの比較的大きな比率の場合のみ、インスリンの活性が主となる。
・ β細胞の機能を維持する(実施例10)。
・ 減量/体重増加の低減。
・ 全ての実施例は、GLP−1アゴニストとインスリンとが有害な相互作用を示さないことを示している。
・ 空腹時、食後及び吸収後の血中グルコース濃度に対する活性の結果として、組み合わせの投与回数を1日1回まで減らすことが可能となる。
【0032】
本発明は、少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含む薬剤を提供し、本薬剤は、インスリン及びGLP−1アゴニストをそれぞれ所定の量で含み、かつ患者の個別の要件に適合する用量で投与することができるように製剤化及び/又は調合されている。
【0033】
本発明の薬剤は特に糖尿病患者、より詳細には1型又は2型糖尿病患者を処置するために使用される。
【0034】
本発明の薬剤は、糖尿病、より詳細には1型又は2型糖尿病の患者の場合に血中グルコース濃度を正常血糖レベルまでより効果的に適合させることを可能にする。
【0035】
本薬剤は、好ましくは糖尿病患者、より詳細には1型又は2型糖尿病患者の空腹時、食後及び/又は吸収後の血中グルコース濃度を調節するために使用される。より好ましくは、本発明の薬剤は、糖尿病患者、より詳細には1型又は2型糖尿病患者の食後及び/又は吸収後の血中グルコース濃度を調節するために使用される。この文脈における調節は、正常血糖の血中グルコース濃度が実質的に達成されるか、又は少なくともそれに近い値が得られることを意味する。正常血糖レベルは、より詳細には正常範囲(変動幅60〜140mg/dl、3.3〜7.8mmol/lに相当する)の血中グルコース濃度を意味する。この変動の範囲は、空腹条件、食後条件及び吸収後条件下での血中グルコース濃度を包含する。
【0036】
食後及び吸収後は、糖尿病学分野の当業者にはよく知られた用語である。本明細書で使用される食後は、より詳細には食事の後及び/又は実験における糖負荷の後の段階を指す。この段階は、より詳細には、健康な個体において血液中のグルコース濃度の増加及び降下を特徴とする。吸収後、又は吸収後期は、本明細書において、より詳細には食後期に続く段階を指すために使用される。食後期は、典型的には食事及び/又はグルコース負荷の4時間後までに終了する。吸収後期は、典型的には8〜16時間まで続く。
【0037】
本発明の薬剤はまた、好ましくは糖尿病患者、より詳細には1型又は2型糖尿病患者の処置において耐糖能を改善するために使用される。耐糖能を改善することは、本発明の薬剤が食後血中グルコース濃度を低下させることを意味する。耐糖能を改善することはまた、本発明の薬剤が吸収後血中グルコース濃度を低下させることを意味するとも解釈される。低下させることとは、より詳細には、血中グルコース濃度が実質的に正常血糖値に達するか又は少なくともそれに近づくことを意味する。
【0038】
本発明の薬剤は、例えば吸収後期で起こり得る低血糖のリスクを低下させることができる。本発明の薬剤は、好ましくは糖尿病、より詳細には1型又は2型糖尿病の患者の処置において低血糖を予防するために使用され、より詳細には低血糖は吸収後期において起こり得る。
【0039】
本発明の薬剤は、膵臓β細胞の機能を維持し得る。本発明の薬剤は、糖尿病、より詳細には1型又は2型糖尿病の患者において膵臓β細胞の機能の喪失を予防するために好ましく使用される。β細胞の機能の喪失は、より詳細にはアポトーシスにより引き起こされ得る。
【0040】
さらに、本発明の薬剤は、糖尿病、より詳細にはI型又はII型糖尿病の患者において減量をもたらし得、かつ/又は体重増加を予防し得る。糖尿病患者、特に2型糖尿病患者において、体重増加及び過剰な体重は頻繁に起こる問題である。従って、本発明の薬剤を投与することは、過剰体重の処置のための治療を支持し得る。
【0041】
当然のことながら、本発明の薬剤は、糖尿病、より詳細には1型又は2型糖尿病の患者において、本明細書で記載される好ましい適応症の1つより多くを処置するために使用することができる。従って本発明は、個々の好ましい適応症だけでなく適応症の任意の組み合わせも包含する。従って本発明の薬剤は、糖尿病、より詳細には1型又は2型糖尿病の患者において、例えば空腹時、食後及び/若しくは吸収後の血中グルコース濃度を調節する目的のため、耐糖能を改善するため、低血糖を予防するため、膵臓β細胞の機能の喪失を予防するため、減量のため、並びに/又は体重増加を予防するために、本明細書に記載される適応症の1つ又はそれ以上を処置するために使用することができる。空腹時、食後及び/若しくは吸収後の血中グルコース濃度の調節、耐糖能の改善、並びに/又は低血糖の予防が好ましい。
【0042】
本発明の薬剤はまた、例えば空腹時、食後及び/若しくは吸収後の血中グルコース濃度を調節するため、耐糖能を改善するため、低血糖を予防するため、膵臓β細胞の機能の喪失を予防するため、減量のため、並びに/又は体重増加を予防するためのような、本明細書に記載される適応症の1つ又はそれ以上を処置するための医薬品を製造するために使用することができる。
【0043】
少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストはまた、例えば空腹時、食後及び/若しくは吸収後の血中グルコース濃度を調節するため、耐糖能を改善するため、低血糖を予防するため、膵臓β細胞の機能の喪失を予防するため、減量のた
め、並びに/又は体重増加を予防するためのような、本明細書に記載される適応症の1つ又はそれ以上を処置するための医薬品を製造するためにも使用され得る。
【0044】
少なくとも1つのGLP−1アゴニスト及び少なくとも1つのインスリンは、1つの医薬組成物で一緒に提供されてもよい。この場合、第一及び第二の組成物、ならびに場合により少なくとも1つのさらなる医薬組成物が提供され、それぞれがインスリン及びGLP−1アゴニストを含む。従って本発明は、それぞれが少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含み、そして組成物の総質量に対して異なる質量分率で少なくとも1つのインスリン及び/又は少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含有する、第一の医薬組成物及び第二の医薬組成物、並びに場合により少なくとも1つのさらなる医薬組成物を含む薬剤を提供する。
【0045】
本明細書において、「場合により少なくとも1つのさらなる医薬組成物」は、本発明の薬剤が、第一及び第二の医薬組成物に加えて、少なくとも1つのさらなる医薬組成物を含み得るということを意味する。それ故、本発明の薬剤は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の本発明の医薬組成物を含み得る。
【0046】
好ましい薬剤は、本発明の第一及び第二の医薬組成物を含む薬剤である。
【0047】
本発明の第一、第二及び第三の医薬組成物を含む薬剤も同様に好ましい。
【0048】
本発明の第一、第二、第三及び第四の医薬組成物を含む薬剤も同様に好ましい。
【0049】
第一、第二、第三、第四、及び第五の医薬組成物を含む薬剤も同様に好ましい。
【0050】
少なくとも1つのインスリンの質量分率及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストの質量分率は、質量分率に基づいて医薬組成物がGLP−1アゴニストに対して異なる比率のインスリンを含むように、第一の医薬組成物、第二の医薬組成物、及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる医薬組成物において選択され得る。
【0051】
この場合、第一の組成物は最小比率を含有し得、そして第二の組成物は次に大きい比率を含有し得る。少なくとも1つのさらなる組成物が存在する場合、それは次に大きな比率を含有し得る。その上さらなる組成物が存在する場合、それが今度は次に大きな比率を含有し得る。従って組成物は、質量分率に基づいて、第一の組成物から第二の組成物へと、そして使用された場合はさらなる組成物へと増加する、GLP−1アゴニストに対するインスリンの比率を含有し得る。
【0052】
第一の医薬組成物、第二の医薬組成物、及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる医薬組成物中の、2つの活性化合物、すなわち少なくとも1つのインスリン又は少なくとも1つのGLP−1アゴニストのうち一方の質量分率は、好ましくはこの活性化合物の所定の用量が、規定された体積の第一、第二及び/又は少なくとも1つのさらなる組成物を投与することにより投与され得るようにそれぞれの場合において選択される。この活性化合物が少なくとも1つのインスリンであることが特に好ましい。
【0053】
第一の医薬組成物、第二の医薬組成物、及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる医薬組成物中の、2つの活性化合物、すなわち少なくとも1つのインスリン又は少なくとも1つのGLP−1アゴニストのうち他方の質量分率は、好ましくは、質量分率に基づいてGLP−1アゴニストに対するインスリンの比率が、第一の組成物から第二の組成物、そして使用される場合はさらなる組成物へと増加するように選択される。この活性化合物が少なくとも1つのGLP−1アゴニストであることが特に好ましい。
【0054】
さらに、医薬組成物中の2つの活性化合物のうち他方の質量分率は、医薬組成物の一方が、投与しようとする2つの活性化合物の第一のものの用量及び投与しようとする第二の活性化合物の用量が規定された体積で与えられるように選択され得るように決定される。それ故、所望の比率を含有する医薬組成物が選択される。
【0055】
理論的には、全ての患者のために両方の活性化合物について要件に合わせた最適の投薬量を得るために、少なくとも1つのGLP−1アゴニストに対する少なくとも1つのインスリンのそれぞれ個々の治療的に望ましい質量分率の比率の医薬組成物を提供することは可能だろう。
【0056】
本発明において、特定の数の医薬組成物は、2つの活性化合物について実際に必要とされる投薬量を網羅するために十分である。各患者について、規定された投薬量範囲は、2つの活性化合物のそれぞれについて治療上合理的な間隔内で規定される。これにより、投与しようとする用量は過量投与も過少量投与もなく、特定の患者について本質的にこの投薬範囲内で変動するべきである。
【0057】
驚くべきことに、血漿中のグルコース濃度に対する少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストの組み合わせの相乗効果がGLP−1アゴニストの1桁の大きさ(10倍)の濃度範囲で起こるということが見出されている。個々の患者に適合されて正確に投薬されなければならないのは主にインスリンの量であるので、GLP−1アゴニストの相乗的濃度範囲により、少なくとも1つのGLP−1アゴニストに対して規定された比率の少なくとも1つのインスリンを含有する本発明の医薬組成物が、関連した相乗作用量のGLP−1アゴニストと同時に治療範囲のインスリン用量を網羅することが可能となる。この比率は、全ての所望のインスリン用量がその対応する用量の少なくとも1つのGLP−1アゴニストを有するように選択することができ、これは所望の範囲、例えば相乗作用範囲内にある。上で先に述べたように、本薬剤の第一、第二、及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる組成物の比率はまた、これらの比率が第一の組成物から第二の組成物、そして使用される場合は少なくとも1つのさらなる組成物へと増加するように選択され得る。組成物の(例えば第一の組成物の)所望のインスリン用量でGLP−1アゴニストの用量がGLP−1アゴニストの所望の投薬量範囲外(一般的には上方)である場合、少なくとも1つのGLP−1アゴニストに対してより高い比率の少なくとも1つのインスリンを含む次の組成物(例えば第二の組成物)又はさらなる組成物が使用のために選択され、ここで所望のインスリン用量におけるGLP−1アゴニストの量は所望の範囲内にある。本薬剤の第一、第二及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる組成物の比率は、少なくとも1つのGLP−1アゴニストの所望の投薬量に対応するインスリン投薬量範囲が互いに境界を接するか、かつ/又は互いに重なるようにさらに選択され得る。好ましくはこれらの範囲は重なる。重なるとは、より詳細には少なくとも1つのインスリンの所望の用量において、それぞれが所望の投薬量範囲内にある量の少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含有する少なくとも2つの組成物を選択することが可能であるということを意味する。
【0058】
例えば、3つの組成物は、個々の患者について少なくとも1つのインスリンの用量を15〜80単位のインスリンの範囲から選択されるレベルに調節し、かつ同時に10〜20μgの範囲内の量でGLP−1アゴニストを投薬するために十分である(実施例11を参照のこと)。
【0059】
GLP−1アゴニストのそれぞれ所望の投薬量について、所望の範囲、例えば相乗作用範囲内にある少なくとも1つのインスリンの対応する投薬量が存在するように、これらの比率が選択される本発明の薬剤を提供することも可能である。本薬剤の第一、第二及び使
用される場合は少なくとも1つのさらなる組成物の比率はまた、少なくとも1つのインスリンの所望の投薬量に対応するGLP−1アゴニストの投薬量の範囲が互いに境界を接するか、かつ/又は互いに重なるように選択され得る。好ましくはこれらの範囲は重なる。この文脈における重なるとは、より詳細には、少なくとも1つのGLP−1アゴニストの所望の投薬量において、それぞれが所望の投薬量範囲内にある量の少なくとも1つのインスリンを含有する少なくとも2つの組成物を選択することが可能であるということを意味する。
【0060】
好ましくは、本発明の薬剤は、上で定義される医薬組成物を多くとも10まで、より好ましくは多くとも5まで、4まで、3まで、又は2つの医薬組成物を含む。
【0061】
本発明の組成物は、同一であるか又は異なる質量分率で少なくとも1つのインスリンを含有し得る。例えば、本発明の組成物の少なくとも2つは、少なくとも1つのインスリンを実質的に同一の質量分率で含有し得る。
【0062】
第一、第二、及び使用される場合はさらなる組成物が、少なくとも1つのインスリンを実質的に同一の質量分率で、そして少なくとも1つのGLP−1アゴニストを異なる質量分率で含有することが好ましい。
【0063】
本発明の組成物は、少なくとも1つのGLP−1アゴニストを同一であるか又は異なる質量分率で含有し得る。例えば、本発明の組成物のうち少なくとも2つは、少なくとも1つのGLP−1アゴニストを実質的に同一の質量分率で含有し得る。
【0064】
第一、第二、及び使用される場合はさらなる組成物が、少なくとも1つのGLP−1アゴニストを実質的に同一の質量分率で、そして少なくとも1つのインスリンを異なる質量分率で含有することもまた好ましい。
【0065】
第一、第二、及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる組成物に加えて、本発明の薬剤は、少なくとも1つのインスリン又は少なくとも1つのGLP−1アゴニストのいずれかを含有する少なくとも1つのさらなる医薬組成物を含み得る。本発明の薬剤はまた、本明細書に記載される第一、第二、又は使用される場合はさらなる医薬組成物のような質量分率の比率で少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含有する少なくとも1つのさらなる医薬組成物も含み得る。
【0066】
本発明はさらに、第一の医薬組成物及び第二の医薬組成物を含む薬剤を提供し、第一の医薬組成物は少なくとも1つのインスリンを含み、そして第二の医薬組成物は少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含み、本薬剤は、第一の医薬組成物及び第二の医薬組成物の独立した投与のために製剤化及び/又は調合されている。
【0067】
実施例12は、2つ又はそれ以上の組成物を組み合わせる場合に、両方の活性化合物をいずれかの所望の量でかつ互いに所望の比率で投与することができるように、どのようにして2つ又はそれ以上の活性化合物の組み合わせを製剤化することができるかを示す。これは、活性化合物のうち少なくとも1つが組み合わせの結果として(例えば投与直前の混合により)希釈されてはならないという事実を考慮する。
【0068】
本発明は、第一の活性化合物及び第二の活性化合物、並びに場合により少なくとも1つのさらなる活性化合物を含む薬剤を提供し、これらの活性化合物は、第一、第二、及び場合により少なくとも1つのさらなる組成物で提供される。第一の活性化合物は全ての組成物中に存在する。第二の活性化合物は第二の製剤中に存在し、そして少なくとも1つのさらなる活性化合物は、使用される場合、場合により少なくとも1つのさらなる組成物中に
存在する。それ故、第二の組成物及び各さらなる組成物は、別の活性化合物と組み合わせた第一の活性化合物を含む。
【0069】
従って、本発明はさらに、第一の医薬組成物及び第二の医薬組成物、並びに場合により少なくとも1つのさらなる医薬組成物を含む薬剤を提供し、第一の医薬組成物は少なくとも1つの第一の活性化合物を含み、そして第二の医薬組成物は少なくとも1つの第一の活性化合物及び少なくとも1つの第二の活性化合物を含み、そして少なくとも1つのさらなる医薬組成物は、少なくとも1つの第一の活性化合物及び少なくとも1つのさらなる活性化合物を含む。本明細書における活性化合物は、任意の所望の活性化合物であり得る。
【0070】
第一の組成物は、好ましくは活性化合物として少なくとも1つの第一の活性化合物のみを含む。
【0071】
第一、第二、及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる組成物は、組成物の総質量に対して実質的に同一の質量分率又は異なる質量分率で第一の活性化合物を含み得る。
【0072】
第一の医薬組成物、第二の医薬組成物、及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる医薬組成物が組成物の総質量に対して実質的に等しい質量分率で第一の活性化合物を含むことが好ましい。これは、いずれかの所望の比率の第一及び第二の組成物、並びに適切な場合はいずれかの所望の比率の第一及び少なくとも1つのさらなる組成物を使用することができることを確実にすることが可能であるということを意味し、第一の活性化合物の投薬は、投与される組成物の総量に従って行われる。2つの組成物の比率を介して、第二の組成物のみに、及び適切な場合は少なくとも1つのさらなる組成物に存在する活性化合物の量を無段階式に(steplessly)増加させることが可能である。従って、このようにして、第二の活性化合物に対するいずれかの所望の量及びいずれかの所望の比率の第一の化合物、並びに適切な場合は、さらなる活性化合物に対するいずれかの所望の量及びいずれかの所望の比率の第一の活性化合物を、第一の活性化合物の濃度を変更することなく投薬することが容易に可能である。
【0073】
第一の活性化合物は少なくとも1つのインスリンであり得る。第二の活性化合物は少なくとも1つのGLP−1アゴニストであり得る。第一の医薬組成物及び第二の医薬組成物、並びに場合により少なくとも1つのさらなる医薬組成物を含む薬剤であって、第一の医薬組成物が少なくとも1つのインスリンを含み、かつ第二の医薬組成物が少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含み、かつ少なくとも1つのさらなる医薬組成物が少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのさらなる活性化合物を含む、薬剤が好ましい。
【0074】
第一の組成物は、好ましくは活性化合物として少なくとも1つのインスリンのみを含む。
【0075】
さらなる活性化合物はいずれかの所望の活性化合物であり得る。より詳細には、さらなる活性化合物は、糖尿病(1型及び/又は2型)患者を処置するために使用される活性化合物であり、糖尿病に付随する障害を処置するための活性化合物も含まれる。
【0076】
第一、第二、及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる組成物は、組成物の総質量に対して実質的に等しい質量分率又は異なる質量分率のインスリンを含み得る。
【0077】
第一の医薬組成物、第二の医薬組成物、及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる医薬組成物が、組成物の総質量に対して実質的に等しい質量分率でインスリンを含むことが好ましい。これは、いずれかの所望の比率の第一及び第二の組成物、並びに適切な場
合はいずれかの所望の比率の第一及び少なくとも1つのさらなる組成物を使用することができることを確実にすることが可能であるということを意味し、インスリンの投薬は、投与される組成物の総量により行われる。2つの組成物の比率を介して、第二の組成物のみに、及び適切な場合は少なくとも1つのさらなる組成物に存在する活性化合物の量を無段階式に増加させることが可能である。従って、このようにして、GLP−1アゴニストに対するいずれかの所望の量及びいずれかの所望の比率のインスリン、並びに適切な場合は、さらなる活性化合物に対するいずれかの所望の量及びいずれかの所望の比率のインスリンを、少なくとも1つのインスリンの濃度を変更することなく投薬することが容易に可能である。
【0078】
本発明において、2つの組成物における活性化合物の「実質的に等しい質量分率」は、2つの組成物の一方が、他方の組成物におけるその質量分率よりも例えば、多くとも10%、多くとも5%、多くとも1%又は多くとも0.1%高い質量分率で活性化合物を含有することを意味する。
【0079】
第一の活性化合物はまた、少なくとも1つのGLP−1アゴニストであってもよい。第二の活性化合物は少なくとも1つのインスリンであってもよい。第一の医薬組成物及び第二の医薬組成物、並びに場合により少なくとも1つのさらなる医薬組成物を含む薬剤であって、第一の医薬組成物が少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含み、かつ第二の医薬組成物が少なくとも1つのGLP−1アゴニスト及び少なくとも1つのインスリンを含み、かつ少なくとも1つのさらなる医薬組成物が少なくとも1つのGLP−1アゴニスト及び少なくとも1つのさらなる活性化合物を含む、薬剤が好ましい。
【0080】
第一の組成物は、好ましくは活性化合物として少なくとも1つのGLP−1アゴニストのみを含む。
【0081】
第一、第二、及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる組成物は、組成物の総質量に対して実質的に等しい質量分率または異なる質量分率でGLP−1アゴニストを含み得る。第一の医薬組成物、第二の医薬組成物、及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる医薬組成物が、組成物の総質量に対して実質的に等しい質量分率で少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含むことが好ましい。
【0082】
従って本発明は、それぞれが1つの活性化合物(より詳細にはインスリン又はGLP−1アゴニスト)を含有する別個の組成物を含み、先行技術の組成物を超える多数の利点を示す薬剤を提供し、これら利点としては以下が挙げられる:
・ 第二の活性化合物に対する第一の活性化合物の比、及び適切な場合は少なくとも1つのさらなる活性化合物に対する第一の活性化合物の比を、使用者が自由に選択することができる。
・ 第一の活性化合物が全ての組成物中に、より詳細には等しい質量分率で存在するので、この活性化合物は第一の組成物が第二の組成物と、適切な場合はさらなる組成物と混合される場合に希釈されない。このことは、例えば薬物動態が濃度/希釈により影響を受ける場合にインスリンのような活性化合物に関して重要である。
・ 注射体積が低減される(実施例12を参照のこと)。それ故、第二の活性化合物(例えばGLP−1アゴニスト)の希釈、及び適切な場合はさらなる活性化合物の希釈が低減される。
【0083】
本発明はさらに、本発明の薬剤を含むキットを提供する。本発明のキットは、医療従事者による使用、又は専門家の医療訓練を行っていない人物、より詳細には患者自身又は血縁者のような助力者による使用を意図され得る。本発明のキットにおいて、本発明の薬剤を含む個別の医薬組成物が別個のパックにまとめられているので、患者は現在の要件に適
した組成物を選択することができ、そしてその要件に一致する量を投与することができる。本発明のキットは、例えば本発明の組成物を含む一組のシリンジ、ガラスアンプル及び/又はペン(pens)の形態で本発明の薬剤を含む。
【0084】
本発明の薬剤を投与することができる種々の方法が存在する。本薬剤は非経口投与してもよい。本薬剤は注射されてもよく、針を用いるか又は用いない注射システムの使用が見込まれる。さらに、本薬剤は吸入により投与されてもよい。この場合、液体組成物を吸入することが可能であり、又は組成物を粉末形態で吸入することができる。さらに、本発明の薬剤は、スプレー剤として、より詳細には鼻腔スプレー剤として投与されてもよい。さらに、本発明の薬剤は経皮システムにより投与されてもよい。当業者はこれらの投与方法を知っており、本発明の薬剤をこれらの投与方法の1つにより有効に投与することができるようなやり方で製剤化することができる。本発明の薬剤の組成物は好ましくは液体である。さらに、本発明の薬剤が非経口投与、より詳細には注射により投与されることが好ましい。
【0085】
本発明はさらに、本発明の薬剤を投与するためのデバイスを提供する。このデバイスは、本発明の薬剤に含まれる医薬組成物を別個の容器中に含み、そして医薬組成物が互いに独立して投薬されることを可能にする。本発明のデバイスは非経口投与用のデバイスであってもよい。本発明のデバイスは針を用いるか又は用いない注射用のデバイスであってもよい。さらに、本デバイスは吸入用のデバイスであってもよく、この場合には、液体組成物が吸入されるか、又は組成物が粉末の形態で吸入される。さらに、本デバイスはスプレー剤、より詳細には鼻腔スプレー剤を投与するためのデバイスであってもよい。さらに、本デバイスは経皮投与システムであってもよい。本発明のデバイスが非経口投与用のデバイス、より詳細には注射デバイスであることが好ましい。
【0086】
「調合すること」は、当業者に知られている用語であり、薬理学では、例えば最終使用者による使用のための薬剤の仕上げの処理、例えば分割及び包装することと特定される。本明細書において、「調合された」又は「調合すること」は、より詳細には、本発明の医薬組成物を適切なやり方で治療有効量で包装して、本発明の薬剤の組成物のうち少なくとも1つの本明細書に記載される選択を、少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストの所望の投薬のために可能にすることを意味する。より詳細には、非経口投与、好ましくは注射、より好ましくは皮下注射が意図される。適切な包装は、例えばシリンジ又は適切に密閉されるガラス容器であり、これらから、必要に応じて個々の治療上活性な用量を取り出すことができる。本発明の医薬組成物を含有する容器(例えばカートリッジ)を含む、インスリン投与のための注射ペン(injection pen)も適切である。
【0087】
「製剤化すること」又は「製剤化」は、当業者に知られている用語であり、そして薬理学の分野では、薬剤及び薬組成物の製造、並びに添加剤を用いたそれらの製造を指す。本明細書において、「製剤化すること」又は「製剤化」は、より詳細には、本発明の組成物が治療有効量の活性化合物の投与を可能にする適切な形態で提供されることを意味する。より詳細には、製剤化は非経口投与、好ましくは注射、より好ましくは皮下注射を意図される。
【0088】
本発明において、用語「GLP−1アゴニスト」には、GLP−1、その類似体及び誘導体、エキセンジン−3及びその類似体及び誘導体、並びにエキセンジン−4及びその類似体及び誘導体が含まれる。本発明の組成物は、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1の類似体及び誘導体、エキセンジン−3、エキセンジン−3の類似体及び誘導体、エキセンジン−4、エキセンジン−4の類似体及び誘導体、並びにそれらの薬理学的に許容しうる塩からなる群から互いに独立して選択される1つ又はそれ以上のものを
含む。GLP−1の生物学的活性を示す物質も含まれる。
【0089】
GLP−1類似体及び誘導体はWO98/08871に記載されており、例えば;エキセンジン−3、エキセンジン−3の類似体及び誘導体、並びにエキセンジン−4及びエキセンジン−4の類似体及び誘導体はWO01/04156、WO98/30231、US5,424,286、EP出願第99610043.4号、WO2004/005342及びWO04/035623に見出され得る。これらの書類は参照により本明細書に含まれる。これらの書類に記載されるエキセンジン−3及びエキセンジン−4、並びにそこに記載されるそれらの類似体及び誘導体を、本発明の組成物においてGLP−1アゴニストとして使用することができる。これらの書類に記載されるエキセンジン−3及びエキセンジン−4、並びにそこに記載される類似体及び誘導体のいずれかの所望の組み合わせをGLP−1アゴニストとして使用することも可能である。少なくとも1つのGLP−1アゴニストは、好ましくはエキセンジン−4、エキセンジン−4の類似体及び誘導体、並びにそれらの薬理学的に許容しうる塩からなる群より独立して選択される。
【0090】
さらなる好ましいGLP−1アゴニストは:
H−desPro36−エキセンジン−4−Lys6−NH2
H−des(Pro36,37)−エキセンジン−4−Lys4−NH2
H−des(Pro36,37)−エキセンジン−4−Lys5−NH2、及びそれらの薬理学的に許容しうる塩
からなる群より選択されるエキセンジン−4の類似体である。
【0091】
さらなる好ましいGLP−1アゴニストは:
desPro36 [Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36 [IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36 [Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36 [Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、desPro36 [Trp(O225,Asp28]エキセンジン−2(1−39)、
desPro36 [Trp(O225,IsoAsp28]エキセンジン−2(1−39)、
desPro36 [Met(O)14Trp(O225,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36 [Met(O)14Trp(O225,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)及びそれらの薬理学的に許容しうる塩
からなる群より選択されるエキセンジン−4の類似体である。
【0092】
さらなる好ましいGLP−1アゴニストは、ペプチド−Lys6−NH2がエキセンジン−4類似体のC末端に結合されている、上の段落に記載される群より選択されるエキセンジン−4の類似体である。
【0093】
さらなる好ましいGLP−1アゴニストは:
H−(Lys)6−des Pro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
des Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5 des Pro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
des Pro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(
Lys)6−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5− des Pro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−des Pro36[Trp(O225,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
H− des Asp28 Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O225]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6− des Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O225,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−des Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O225,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
des Pro36,Pro37,Pro38 [Trp(O225,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O225,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−des Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O225,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−des Pro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
des Met(O)14 Asp28 Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28
]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
H−Asn−(Glu)5 des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−des Pro36[Met(O)14,Trp(O225,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
des Asp28 Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O225]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O225,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O225,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O225,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O225,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、及びその薬理学的に許容しうる塩
からなる群より選択されるエキセンジン−4類似体である。
【0094】
さらなる好ましいGLP−1アゴニストは、Arg34,Lys26(Nε(γ−グルタミル(Nα−ヘキサデカノイル)))GLP−1(7−37)[リラグルチド]及びその薬理学的に許容しうる塩からなる群より選択される。
【0095】
さらなる好ましいGLP−1アゴニストはAVE0010である。AVE0010はPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2の配列を有する。この物質はWO01/04156において配列番号93として公開されている。AVE0010の薬理学的に許容しうる塩もまた好ましい。
【0096】
用語「少なくとも1つのGLP−1アゴニスト」は、本発明の組成物において使用される本明細書に記載されるGLP−1アゴニストの組み合わせを含み、例は本明細書に記載されるGLP−1アゴニストから選択される2つ又はそれ以上のGLP−1アゴニストのいずれかの所望の組み合わせである。
【0097】
少なくとも1つのGLP−1アゴニストは、さらに好ましくはエキセンジン−4、Pro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2及びArg34,Lys26(Nε(γ−グルタミル(Nα−ヘキサデカノイル)))GLP−1(7−37)[リラグルチド]、並びにその薬理学的に許容しうる塩から独立して選択される。
【0098】
本発明の組成物は、GLP−1アゴニストを10μg/ml〜20mg/mlの量で、好ましくは25μg/ml〜15mg/mlの量で含有する。酸性から中性で溶解されたGLP−1アゴニストについては、量は好ましくは20μg/ml〜300μg/mlであり、そして中性から塩基性のアゴニストについては、好ましくは500μg/ml〜10mg/mlである。エキセンジン−4類似体については、20μg/ml〜150μg/mlが好ましい。
【0099】
本明細書において、用語「インスリン」は、未修飾インスリンだけでなく、インスリン類似体、インスリン誘導体、及びインスリン代謝物も包含する。本発明の組成物は、インスリン(例えば未修飾インスリン)、インスリン類似体、インスリン誘導体、及びインスリン代謝物、並びにそれらのいずれかの所望の組み合わせからなる群より独立して選択される1つ又はそれ以上のものを含む。
【0100】
少なくとも1つのインスリンは、ウシインスリン、その類似体、誘導体及び代謝物、ブタインスリン、その類似体、誘導体及び代謝物、並びにヒトインスリン、その類似体、誘導体及び代謝物からなる群より独立して選択され得る。好ましくは、少なくとも1つのインスリンはヒトインスリン、その類似体、誘導体及び代謝物から独立して選択される。
【0101】
さらに、本発明のインスリンは、未修飾インスリン、より詳細にはウシインスリン、ブタインスリン、及びヒトインスリンから独立して選択され得る。
【0102】
少なくとも1つのインスリンは、ウシインスリン、ブタインスリン、及びヒトインスリンからなる群より独立して選択され得る。より好ましくは、少なくとも1つのインスリンはヒトインスリンより独立して選択される。本発明のインスリンは、未修飾インスリン、より詳細にはウシインスリン、ブタインスリン、及びヒトインスリンから選択され得る。
【0103】
本発明のインスリン誘導体は、化学修飾により得られる、天然に存在するインスリン及び/又はインスリン類似体の誘導体である。化学修飾は、1つ又はそれ以上の規定された化学基を1つ又はそれ以上のアミノ酸上に付加することにあり得る。
【0104】
EP 0 214 826、EP 0 375 437、EP 0 678 522、
EP 0 885 961、EP 0 419 504、WO 92/00321、独国特許出願第10 2008 003 568.8号及び10 2008 003 566.1号、並びにEP−A 0 368 187に記載されるインスリン類似体は、本発明の組成物の一部であり得る。書類EP 0 214 826、EP 0 375 437、EP 0 678 522、EP 0 419 504、WO 92/00321及びEP−A 0 368 187は参照により本明細書に含まれる。
【0105】
本発明の1つの好ましいインスリン類似体は、Gly(A21)−Arg(B31)−Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン、Lantus);Arg(A0)−His(A8)−Glu(A15)−Asp(A18)−Gly(A21)−Arg(B31)−Arg(B32)ヒトインスリンアミド、Lys(B3)−Glu(B29)ヒトインスリン;LysB28ProB29ヒトインスリン(インスリンlyspro)、B28 Aspヒトインスリン(インスリンaspart)、B28の位置におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val若しくはAlaで置換されており、そしてここでB29の位置におけるLysがProで置換されていてもよいヒトインスリン;AlaB26ヒトインスリン;des(B28−B30)ヒトインスリン;des(B27)ヒトインスリン又はB29Lys(ε−テトラデカノイル),des(B30)ヒトインスリン(インスリンdetemir)からなる群より選択され得る。
【0106】
本発明の好ましいインスリン誘導体は、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン、B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン、B29−N−ミリストイルヒトインスリン、B29−N−パルミトイルヒトインスリン、B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン、B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン、B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン、B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン、B29−N−(N−パルミトイル−Υ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン、B29−N−(N−リトコリル(lithocholyl)−Υ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン、B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンからなる群より選択され得る。
【0107】
本発明のより高度に好ましいインスリン誘導体は、Gly(A21)−Arg(B31)−Arg(B32)ヒトインスリン、LysB28ProB29ヒトインスリン(インスリンlyspro)、B28 Aspヒトインスリン(インスリンaspart)、B29Lys(ε−テトラデカノイル),desB30ヒトインスリン(インスリンdetemir)からなる群より選択される。
【0108】
用語「少なくとも1つのインスリン」には、本発明の組成物において使用される、本明細書に記載されるインスリン、その類似体、誘導体及び代謝物の組み合わせ、例えば本明細書に記載されるインスリン、類似体、誘導体及び代謝物より選択される2つ又はそれ以上のいずれかの所望の組み合わせが含まれる。
【0109】
本発明の組成物は、60〜6000nmol/ml、好ましくは240〜3000nmol/mlの本明細書で定義されるインスリンを含有する。使用されるインスリンに依存して、240〜3000nmol/mlの濃度がおおよそ1.4〜35mg/ml又は40−500単位/mlの濃度に相当する。
【0110】
2〜10、好ましくは3〜5ペンカバーオール(cover all)システムにおいて、本組成物は、GLP−1アゴニスト20μg/ml及びインスリン100U/mlからGLP−1アゴニスト300μg/ml及びインスリン500U/mlの範囲である。
以下の濃度範囲が好ましい:25μg/ml及び100U/ml、33μg/ml及び100U/ml、40μg/ml及び100U/ml、66μg/ml及び100U/ml、並びに75μg/ml及び100U/ml。
【0111】
インスリンの望ましい投薬量範囲は、特に相乗効果のある投薬量である。ここではこれらの値は5〜100U、好ましくは15〜80Uである。GLP−1アゴニストについては、投薬量範囲の値は5μg〜2mg、好ましくは10μg〜1.8mg、より好ましくは10μg〜30μgである。
【0112】
[使用される量及び投薬量に関するここでのより正確な詳細]
本発明の医薬組成物の好ましい提示形態は、特に非経口投与、より好ましくは注射、最も好ましくは皮下注射に適した液体組成物の形態である。特に、本発明の医薬組成物は1日に1回の注射に適している。
【0113】
本発明の医薬組成物は、酸性又は生理的pHを有し得る。酸性pH範囲は、好ましくはpH1〜6.8の範囲、より好ましくはpH3.5〜6.8、なおより好ましくはpH3.5〜4.5、最も好ましくは約4.0〜4.5のpH範囲に位置づけられる。生理的pHは、好ましくはpH4.0〜8.5の範囲、より好ましくはpH5.0〜8.5、なおより好ましくはpH6.0〜8.5の範囲に位置づけられる。
【0114】
本発明の組成物は適切な保存料を含み得る。適切な保存料の例としては、フェノール、m−クレゾール、ベンジルアルコール及び/又はp−ヒドロキシ安息香酸エステルが挙げられる。
【0115】
本発明の組成物はさらに適切な緩衝剤を含み得る。特にpHレベルを約4.0〜8.5の間に設定するために使用することができる緩衝物質としては、例えば酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。その他では、生理学的に好ましくない点のない希酸(典型的にはHCl)又はアルカリ(典型的にはNaOH)がpHレベルを設定するために適している。緩衝剤及び対応する塩の好ましい濃度は、5〜250mMの範囲、より好ましくは10〜100mMの範囲である。
【0116】
本発明の組成物は亜鉛イオンを含み得る。亜鉛イオンの濃度は、好ましくは0μg/ml〜500μg/mlの範囲、より好ましくは5μg〜200μgの亜鉛/mlの範囲である。
【0117】
本発明の組成物はさらに、適切な等張剤を含み得る。適切な例としては、グリセロール、デキストロース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、グルコース、NaCl、カルシウム化合物又はマグネシウム化合物、例えばCaCl2などが挙げられる。グリセ
ロール、デキストロース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール及びグルコースは、典型的には100〜250mMの範囲、NaClは150mMまでの濃度である。
【0118】
本発明の組成物は界面活性剤をさらに含み得る。界面活性剤は、酸性インスリン組成物の安定性を大きく増加させ得る。界面活性剤を使用して、何ヶ月にもわたる温度曝露でも疎水性凝集核に関して優れた安定性を保証する組成物を製造することも可能である。
【0119】
界面活性剤は、好ましくはグリセロール及びソルビトールのような多価アルコールの脂肪酸部分エステル及び脂肪酸エステル及びエーテル、並びにポリオール類からなる群より選択され、グリセロール及びソルビトールの部分エステル及び脂肪酸エステル及びエーテルは、Span(登録商標)、Tween(登録商標)、Myrj(登録商標)、Brij(登録商標)及びCremophor(登録商標)を含む群より選択され;そしてポリ
オール類は、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ポリソルベート、プルロニック、及びテトロニックの群より選択される。界面活性剤の好ましい濃度は、5〜200μg/mlの範囲、好ましくは5〜120μg/ml、そしてより好ましくは20〜75μg/mlの範囲である。
【0120】
本発明の組成物はさらに、例えば少なくとも1つのインスリンの放出を遅らせる塩のような他の添加物を含み得る。
【0121】
本発明の1つの特に好ましい主題は、LysB28ProB29ヒトインスリン(インスリンlyspro)、B28 Aspヒトインスリン(インスリンaspart)、B29Lys(ε−テトラデカノイル),desB30ヒトインスリン(インスリンdetemir)、及びインスリングラルギン(Gly(A21)−Arg(B31)−Arg(B32)ヒトインスリン)から独立して選択される少なくとも1つのインスリンを含み、そしてAVE0010及び/又はその薬理学的に許容しうる塩を含む、本明細書に記載される薬剤である。さらなる特に好ましい主題は、インスリングラルギン(Gly(A21)−Arg(B31)−Arg(B32)ヒトインスリン)並びにAVE0010(des Pro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2)及び/又はその薬理学的に許容しうる塩を含む本明細書に記載される薬剤である。これらの特に好ましい薬剤の組成物は、好ましくは1〜6.8の酸性pH、より好ましくはpH3.5〜6.8、なおより好ましくはpH3.5〜5.0、最も好ましくは約4.0〜4.5のpHを有する。さらに、これらの特に好ましい薬剤の組成物は、本明細書に記載されるような界面活性剤を含み得る。
【0122】
本発明のさらなる主題は、インスリングラルギン(Gly(A21)−Arg(B31)−Arg(B32)ヒトインスリン)とAVE0010(des Pro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2)及び/又はその薬理学的に許容しうる塩との組み合わせである。
【0123】
本発明はさらに、本明細書に記載される本発明のキット又は薬剤を用いて患者を処置する方法を提供する。
【0124】
患者を処置するための本発明の方法は、少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含む本発明の薬剤を投与することを含み、この薬剤は、インスリン及びGLP−1アゴニストをそれぞれ所定の量で含み、かつ患者の個別の要件に適合する用量で投与することができるように製剤化及び/又は調合されている。
【0125】
より詳細には、本方法は第一の医薬組成物及び第二の医薬組成物、並びに場合により少なくとも1つのさらなる医薬組成物を含む薬剤を投与することを含み、組成物はそれぞれ少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含み、そして少なくとも1つのインスリン及び/又は少なくとも1つのGLP−1アゴニストを組成物の総質量に対して異なる質量分率で含有し、上記方法は:
(a) 投与しようとする少なくとも1つのインスリンの用量を選択すること、
(b) 投与しようとする少なくとも1つのGLP−1アゴニストの用量を選択すること、
(c) (a)及び(b)からの用量が同じ体積中に存在するような濃度で(a)及び(b)からの用量を含む薬剤の、第一、第二及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる組成物から、組成物を選択すること、並びに
(d) (a)及び(b)からの用量に対応する量を決定しそして投与すること、
を含む。
【0126】
工程(a)及び/又は工程(b)に従う用量は、患者の個別の要件に従って決定される。
【0127】
本発明の処置方法の工程(c)は表に基づいて行われ得る。この表は、本発明の薬剤の一部であり得る。実施例11は本発明の表の例を含む。
【0128】
患者を処置する方法は、より詳細には薬剤を投与することを含み得、この薬剤は、第一の医薬組成物及び第二の医薬組成物、並びに場合により少なくとも1つのさらなる医薬組成物を含み、第一の医薬組成物は少なくとも1つの第一の活性化合物を含み、そして第二の医薬組成物は少なくとも1つの第一の活性化合物及び少なくとも1つの第二の活性化合物を含み、少なくとも1つのさらなる医薬組成物は少なくとも1つの第一の活性化合物及び少なくとも1つのさらなる活性化合物を含み、そしてこの方法は以下の工程を含む:
(i.) 投与しようとする少なくとも1つの第一の活性化合物の用量を選択し、そして選択した用量の少なくとも1つの第一の活性化合物が総量中に存在できるように、第一、第二、及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる組成物の総量を決定すること、
(ii.) 投与しようとする少なくとも1つの第二の活性化合物の用量を選択し、そして選択した用量の少なくとも1つの第二の活性化合物が、第二の組成物の総量中に存在できるように第二の組成物の総量を決定すること、
(iii.) 必要に応じて、投与しようとする少なくとも1つのさらなる活性化合物の用量を選択し、そして選択した用量の少なくとも1つのさらなる活性化合物が、少なくとも1つのさらなる組成物の総量中に存在できるように少なくとも1つのさらなる組成物の総量を決定すること、
(iv.) 工程(i)による総量から、工程(ii)による第二の組成物の総量を差し引いて、そして必要に応じて工程(iii)による少なくとも1つのさらなる組成物の総量を差し引いた量に相当する投与量の第一の組成物を患者に投与すること、並びに
(v.) 工程(ii)において決定された総量の第二の組成物、及び必要に応じて、工程(iii)において決定された総量の少なくとも1つのさらなる組成物を、患者に投与すること、
を含む。
【0129】
第一の活性化合物はインスリンであり得、そして第二の活性化合物はGLP−1アゴニストであり得る。従って、患者を処置する方法はより詳細には薬剤を投与することを含み得、この薬剤は第一の医薬組成物及び第二の医薬組成物、並びに場合により少なくとも1つのさらなる医薬組成物を含み、第一の医薬組成物は少なくとも1つのインスリンを含み、そして第二の医薬組成物は少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含み、そして少なくとも1つのさらなる医薬組成物は少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのさらなる活性化合物を含み、そして本方法は:
(i.) 投与しようとする少なくとも1つのインスリンの用量を選択し、そして選択した用量の少なくとも1つのインスリンが総量中に存在できるように、第一、第二、及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる組成物の総量を決定する工程、
(ii.) 投与しようとする少なくとも1つのGLP−1アゴニストの用量を選択し、そして選択した用量の少なくとも1つのGLP−1アゴニストが、第二の組成物の総量中に存在できるように第二の組成物の総量を決定する工程、
(iii.) 必要に応じて、投与しようとする少なくとも1つのさらなる活性化合物の用量を選択し、そして選択した用量の少なくとも1つのさらなる活性化合物が、少なくとも1つのさらなる組成物の総量中に存在できるように少なくとも1つのさらなる組成物の総量を決定する工程、
(iv.) 工程(i)による総量から、工程(ii)による第二の組成物の総量を差し引いて、そして必要に応じて工程(iii)による少なくとも1つのさらなる組成物の総量を差し引いた量に相当する投与量の第一の組成物を患者に投与する工程、並びに
(v.) 工程(ii)において決定された総量の第二の組成物、及び必要に応じて、工程(iii)において決定された総量の少なくとも1つのさらなる組成物を、患者に投与する工程、
を含む。
【0130】
第一の活性化合物はGLP−1アゴニストであり得、そして第二の活性化合物はインスリンであり得る。従って、患者を処置する方法は、より詳細には薬剤を投与することを含み得、この薬剤は、第一の医薬組成物及び第二の医薬組成物、並びに場合により少なくとも1つのさらなる医薬組成物を含み、第一の医薬組成物は少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含み、そして第二の医薬組成物は少なくとも1つのGLP−1アゴニスト及び少なくとも1つのインスリンを含み、そして少なくとも1つのさらなる医薬組成物は少なくとも1つのGLP−1アゴニスト及び少なくとも1つのさらなる活性化合物を含み、そして本方法は:
(i.) 投与しようとうする少なくとも1つのGLP−1アゴニストの用量を選択し、そして選択した用量の少なくとも1つのGLP−1アゴニストが総量中に存在できるように、第一、第二、及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる組成物の総量を決定する工程、
(ii.) 投与しようとする少なくとも1つのインスリンの用量を選択し、そして選択した用量の少なくとも1つのインスリンが、第二の組成物の総量中に存在できるように第二の組成物の総量を決定する工程、
(iii.) 必要に応じて、投与しようとするなくとも1つのさらなる活性化合物の用量を選択し、そして選択した用量の少なくとも1つのさらなる活性化合物が、少なくとも1つのさらなる組成物の総量中に存在できるように少なくとも1つのさらなる組成物の総量を決定する工程、
(iv.) 工程(i)による総量から、工程(ii)による第二の組成物の総量を差し引いて、そして必要に応じて工程(iii)による少なくとも1つのさらなる組成物の総量を差し引いた量に相当する投与量の第一の組成物を患者に投与する工程、並びに
(v.) 工程(ii)において決定された総量の第二の組成物、及び必要に応じて、工程(iii)において決定された総量の少なくとも1つのさらなる組成物を、患者に投与する工程、
を含む。
【0131】
工程(i)、(ii)及び/又は(iii)は、少なくとも1つの表に基づいて行われてもよく、この表は本薬剤の一部であり得る。工程(i)、(ii)及び(iii)の各工程について、互いに独立して表が提供され得る。
【0132】
本発明の処置方法は、より詳細には、糖尿病患者、より詳細には1型又はII型糖尿病患者を処置するために使用され得る。好ましくは本方法は、空腹時、食後及び/若しくは吸収後の血中グルコース濃度を調節するため、耐糖能を改善するため、低血糖を予防するため、膵臓β細胞の機能の喪失を予防するため、減量のため、並びに/又は体重増加を予防するために使用される。
【0133】
本発明はさらに、本発明の薬剤を製造する方法を提供し、この方法は、該薬剤がインスリン及びGLP−1アゴニストをそれぞれ所定の量で含み、かつ患者の個別の要件に適合する用量で投与することができるように製剤化及び/又は調合することを含む。本製造方法において、薬剤は好ましくは、例えば第一の医薬組成物及び第二の医薬組成物、並びに場合により少なくとも1つのさらなる医薬組成物を含み、各組成物が少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含み、かつ少なくとも1つのインスリン及び/又は少なくとも1つのGLP−1アゴニストを組成物の総質量に対して異なる質量分率で含む、本発明の薬剤のような、本明細書に記載される本発明の薬剤の1つを
得ることができるように製剤化及び調合される。
【0134】
本発明を、以下の図面及び以下の実施例によって説明するが、これらはどのような形であれ本発明を何ら限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】経口耐糖能試験のための研究デザイン。
【図2】イヌにおけるOGTT:プラセボと比較したインスリングラルギンの効果。
【図3】イヌにおけるOGTT:プラセボと比較したAVE0010の効果。
【図4】イヌにおけるOGTT:血中グルコースレベルに対するAVE0010/インスリングラルギンの組み合わせの効果。
【図5】イヌにおけるOGTT:血漿インスリン及びc−ペプチドレベルに対するAVE0010/インスリングラルギンの組み合わせの効果。
【図6】イヌにおけるOGTT:組み合わせ製剤中のインスリングラルギンに対して異なる比率を有するAVE0010の、用量低下効果。
【図7】糖尿病db/dbマウスにおける血中グルコースに対するAVE0010/インスリングラルギンの組み合わせの効果。
【図8】糖尿病db/dbマウスにおける経口耐糖能試験におけるAVE0010/インスリングラルギンの組み合わせの効果。
【図9】インビトロでのサイトカイン誘導及び脂肪毒性誘発β細胞アポトーシスに対するAVE0010/インスリングラルギンの組み合わせの効果。
【図10】「3ペンカバーオール(pens cover all)」システム。
【実施例】
【0136】
実施例1
モデル:健常なイヌにおける経口耐糖能試験(OGTT):インスリングラルギン/AVE0010の組み合わせと2つの個々の活性化合物との比較。
動物
・ 雄性正常血糖ビーグル犬
・ 体重:約15kg
・ 一群あたりの例数:n=6
試験デザイン(図1を参照のこと)
・ 時間0でのプラセボ又は試験製剤の個々の皮下注射
・ 2gグルコース/体重kgでの時間30分及び5時間での2回のグルコース経口投与・ 血中グルコース、血漿インスリン、及びc−ペプチドを決定するために血液サンプルを採取する
群分け(n=6)
・ プラセボ(APIを含まないLantusプラセボ製剤)
・ インスリングラルギン(0.3IU/kg s.c.、1.8nmol/kgと等価)。インスリングラルギンはGly(A21)−Arg(B31)−Arg(B32)ヒトインスリンである。
・ AVE0010(Lantusプラセボ製剤で10μg/kg s.c.、2nmol/kgと等価)。AVE0010はdesPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2である。
・ AVE0010/インスリングラルギンの組み合わせ(10μg/kg AVE0010/0.3IU/kgインスリングラルギンs.c.)
【0137】
実施例2
イヌにおけるOGTT:プラセボと比較したインスリングラルギンの効果
この実験は実施例1に記載したプロトコルに従って行った。
・ 反復OGTT(2g/kg p.o.)
・ 雄性ビーグル犬、n=6
・ 平均±Sem
・ プラセボ=Lantusプラセボ
・ インスリングラルギン(0.3U/kg s.c.)
結果:データを図2に示す。インスリングラルギンの単回投与は血中グルコースのOGTT誘発増加を防げない。インスリングラルギンは吸収後期(postabsorptive phase)での血中グルコース濃度の期待される遅延した低下を強化する。
【0138】
実施例3
イヌにおけるOGTT:プラセボと比較したAVE0010の効果
この実験は実施例1に記載したプロトコルに従って行われた。
・ 反復OGTT(2g/kg p.o.)
・ 雄性ビーグル犬、n=6
・ 平均±Sem
・ プラセボ=Lantusプラセボ
・ AVE0010(10μg/kg s.c.)
結果:データを図3に示す。AVE0010は血中グルコースのOGTT誘発食後増加をほとんど完全に防止する。吸収後期でのグルコース濃度に対する効果はない。この実施例は、血中グルコースのOGTT誘発食後増加に対するAVE0010の効果が吸収後期でのインスリングラルギンの血糖低下効果に対して補完的であることを示す。
【0139】
実施例4
イヌにおけるOGTT:血中グルコースレベルに対するAVE0010/インスリングラルギンの組み合わせの効果
この実験を実施例1に記載されるプロトコルに従って行った。
・ 反復OGTT(2g/kg p.o.)
・ 雄性ビーグル犬、n=6
・ 平均±Sem
・ プラセボ=Lantusプラセボ
・ AVE0010(10μg/kg s.c.)
・ インスリングラルギン(0.3U/kg s.c.)
・ AVE+Lan(=1つの製剤中の10μg/kgのAVE0010及び0.3U/kgのインスリングラルギンのプレミックス)
結果:データを図4に示す。この組み合わせは食後グルコース増加に対してAVE0010と同じ作用を有する(実施例3を参照のこと)。吸収後期におけるインスリングラルギンの血糖低下効果は同様に存在するが希釈されている(実施例2を参照のこと)。AVE0010単独ではグルコースレベルに対して効果を有さず、グルコース投与後に再降下しており、インスリングラルギン単独では食後グルコースレベルに対して効果を有していないので、これはインスリングラルギンとAVE0010との相乗効果である。
【0140】
実施例5
イヌにおけるOGTT:血漿インスリン及びc−ペプチドレベルに対するAVE0010/インスリングラルギンの組み合わせの効果
この実験は実施例1に記載されるプロトコルに従って行った。
・ 反復OGTT(2g/kg p.o.)
・ 雄性ビーグル犬、n=6
・ 平均±Sem
・ プラセボ=Lantusプラセボ
・ AVE0010(10μg/kg s.c.)
・ インスリングラルギン(0.3U/kg s.c.)
・ AVE+Lan(=10μg/kgのAVE0010及び0.3U/kgのインスリングラルギンの1つの製剤でのプレミックス)
C−ペプチドは、プロインスリンのインスリンへの変換の過程で放出され、そして膵臓β細胞によるインスリンの分泌のマーカーとして役立つ。グルコース負荷試験において、c−ペプチドを使用して膵臓の応答能を決定することができる。
結果:データを図5a及び5bに示す。組み合わせの群において、インスリンの食後の減少に続いて吸収後のインスリングラルギンレベルが増加する。組み合わせについてのC−ペプチドレベルは食事期の間のAVE0010のインスリン曲線、及び吸収後期の間のインスリングラルギンのインスリン曲線に対応する。
【0141】
実施例6
イヌにおけるOGTT:組み合わせ製剤中インスリングラルギンに対して異なる比率を有するAVE0010の用量低下効果。
この実験は実施例1に記載されるプロトコルに従って行った。
・ 反復OGTT(2g/kg p.o.)
・ 雄性ビーグル犬、n=11/6/6/6
・ 平均±Sem
・ コントロール=Lantusプラセボ
・ AVE+Lan(=0.15〜1.0μg/kgのAVE0010及び0.3U/kgのインスリングラルギンの1つの製剤でのプレミックス)。実施例2〜5において、10μg/kgのAVE0010濃度を使用した。
結果:データを図6に示す。10μg/kg(特に実施例4を参照のこと)から1μg/kg(すなわち10の倍数で)へのAVE0010用量の減少と、その結果としてのAVE0010に対するインスリングラルギンの比率の増加は、AVE0010とインスリングラルギンとの組み合わせの相乗的活性(特に実施例4を参照のこと)に対して効果を有していない。有意により小さいAVE0010用量においてのみ、組み合わせの効果がインスリングラルギン単独での効果に匹敵する(特に図2を参照のこと)。従ってAVE0010の用量は、相乗効果を失うことなく少なくとも1桁の大きさ内で変化し得る。
【0142】
実施例7
モデル:糖尿病のインスリン抵抗性db/dbマウス:インスリングラルギン/AVE0010の組み合わせ物と2つの個々の活性化合物との比較。
動物
・ 雌性db/dbマウス
・ 年齢:10〜11週
・ 一群あたりの例数:n=10
試験デザイン
・プラセボ又は試験製剤の個々の皮下注射
・血中グルコースを決定するための血液サンプル採取
群分け
・プラセボ(=APIを含まないLantusプラセボ製剤)
・AVE0010(10μg/kg s.c.)
・インスリングラルギン(5IU/kg s.c.)
・AVE0010/インスリングラルギンの組み合わせ物(10μg/kgのAVE0010と5IU/kgのインスリングラルギンとのプレミックス s.c.)
【0143】
実施例8
糖尿病db/dbマウスにおける血中グルコースに対するAVE0010/インスリングラルギンの組み合わせの効果
この実験は実施例7に記載されるプロトコルに従って行った。
・ 雌性db/dbマウス、10週
・ n=10、平均±Sem
・ ビヒクル=Lantusプラセボ
・ AVE0010(10μg/kg sc)
・ Lantus(5U/kg sc)
・ AVE0010/インスリングラルギン(=AVE0010 10μg/kg及びインスリングラルギン5U/kgの1つの製剤でのプレミックス)
結果:データを図7に示す。糖尿病db/dbマウスにおいて、AVE0010/インスリングラルギンの組み合わせは、2つの個々の活性化合物と比較して血中グルコース濃度のより迅速でより顕著な減少をもたらした。その結果として、この組み合わせは、2つの単独の活性化合物のいずれよりも糖尿病db/dbマウスを正常血糖により近づけた。
【0144】
実施例9
糖尿病db/dbマウスにおける経口耐糖能試験におけるAVE0010/インスリングラルギンの組み合わせの効果
この実験は実施例7に記載されるプロトコルにしたがって行われた。さらに、OGTT(2g/kg p.o. @30分)を行った。
・雌性db/dbマウス、11週
・n=10、平均±Sem
・コントロール=Lantusプラセボ
・AVE0010(10μg/kg sc)
・インスリングラルギン(5U/kg sc)
・AVE0010/インスリングラルギン(=AVE0010 10μg/kg及びインスリングラルギン5U/kgの1つの製剤でのプレミックス)
結果:データを図8に示す。AVE0010/インスリングラルギンの組み合わせは、有意に改善した耐糖能及びより低い吸収後グルコースレベルをもたらす。
【0145】
実施例10
インビトロでのサイトカイン誘導及び脂肪毒性誘導β細胞アポトーシスに対するAVE0010/インスリングラルギンの組み合わせの効果
・インスリノーマ細胞株INS−1、ラット
・試験化合物と共に5時間インキュベート
・サイトカインミックス(cytokine mix)と共に22時間さらにインキュベート(1ng/mL IFN−γ+4ng/mL IL−1β)又は
・0.5mM FFAと共に18時間さらにインキュベート(パルミテート:BSA 3:1)
アポトーシスについて使用した尺度は、アポトーシスと相関する、カスパーゼ−3活性及び細胞核の断片化である。
結果:データを図9に示す。AVE0010又はインスリングラルギン(グラルギン、Glar)は単独でアポトーシスを約40〜50%防止する。AVE0010及びインスリングラルギンの組み合わせは、アポトーシスを有意により良好に防止する。この相乗効果に基づいて、この組み合わせはサイトカイン誘導及び脂肪毒性誘導アポトーシスに対する増加した防御をもたらす。
【0146】
実施例11
「3ペンカバーオール」システム(図10)
・3つの異なる所定の比率を有する3プレミックスペン:
−ミックスA:1mLあたりインスリングラルギン100U+AVE0010 66.66μg
−ミックスB:1mLあたりインスリングラルギン100U+AVE0010 40μg
−ミックスC:1mLあたりインスリングラルギン100U+AVE0010 25μg
・3つのプレミックスペンの使用:一例を示す図10における表は、1用量あたり15〜80Uのインスリングラルギン及び10〜20μgのAVE0010の治療範囲から始まる。特定の患者について、投与しようとするインスリングラルギンの用量を指定するか又は予め定めた。この所定の用量は左の列に見られる。ミックスA〜ミックスCの列が対応するAVE0010の用量を10〜20μgの間の範囲で指定している箇所で、対応するミックスが選択され、調薬され(dosed)、そして投与される。これらの範囲は重なっている:例えば、インスリングラルギン26〜30Uという条件の場合、ミックスA又はミックスB(より高い用量のAVE0010を含む)を選択することが可能だろう。同じことがミックスB及びCに当てはまる。例えばインスリン50Uの用量とするつもりである場合、ミックスB又はミックスC 0.5mlを処方することができる。この用量はAVE0010を20μg(ミックスB)又は12.5μg(ミックスC)含有する。
・結論:起り得るAVE0010の効果が10〜15μgの間で、そして治療効果は15〜22μgの間で得られるという想定に基づいて、インスリングラルギン用量15〜80Uを投与されたほとんど全ての患者は、3つの異なるインスリングラルギン:AVE0010比を含有する3つのプレミックスペン(ミックスA、B又はC)のうち1つを彼らが使用する場合、10〜20μgの間のAVE0010治療用量を得ることもできる。相乗効果を有するインスリングラルギン対AVE0010の広範囲の可能な比率に基づいて(実施例6を参照のこと)、ペンにおける比率は、インスリングラルギンの各用量について少なくとも1つのペン中にAVE0010の相乗的用量が存在するように仕立てることができる。
【0147】
実施例12
この実施例は、2つ又はそれ以上の組成物を組み合わせる場合、両方の活性化合物をいずれかの所望の量でかつ互いに対していずれかの所望の比率で投与できるように、2つ又はそれ以上の活性化合物の組み合わせを如何にして製剤化するかを示す。ここでは、少なくとも1つの活性化合物が組み合わせの結果として(例えば、投与前に直接混合することを通して)希釈されてはならないということを考慮に入れている。
【0148】
この実施例では、「活性体A」及び「活性体B」という表示は、いずれかの所望の活性化合物を示す。特に、活性体Aはインスリンであり、そして活性体BはGLP−1アゴニストである。活性体AはGLP−1アゴニストであってもよく、そして活性体Bはインスリンであってもよい。
【0149】
1.比較例
活性体A(例えばインスリン)及び活性体B(例えばGLP−1アゴニスト)を用いた組み合わせ治療について、a mg/mlの濃度で活性体Aを含む組成物を含む容器1、及びb mg/mlの濃度で活性体Bを含む組成物を含む容器2を用意する。
これら2つの活性体の組み合わせ物を投与するために、容器1からの体積V1ml及び
容器2からの体積V2mlを混合する。
所定の濃度a及びbで2つの活性体を処方するために、投与しようとする体積V1及び
2は、投与しようとする活性体A及びBの量に依存して選択される。2つの活性体の体
積V1及びV2は、活性体の量に基づいて以下のように決定される:
活性体Aの量: V1・a mg
活性体Bの量: V2・b mg
2つの組成物の混合物中の活性体A及びBの濃度は以下のように決定される
活性体A: x mg/mL=V1・a/(V1+V2
活性体B: y mg/mL=V2・b/(V1+V2
1+V2は投与される総体積である。これは2つの活性体が互いに希釈することを意味する。従ってこのシステムでは、例えば活性体Bの量が変動する場合に活性体A(例えばインスリン)の濃度を所定のレベルを維持することは不可能である。
【0150】
2.本発明の実施例
この実施例では、活性体A(例えばインスリン)及び活性体B(例えばGLP−1アゴニスト)を用いた組み合わせ治療のために、a mg/mlの濃度で活性体Aを含む組成物を含む容器1、及びa mg/mlの濃度で活性体A及びb mg/mlの濃度で活性体Bを含む組成物を含む容器2を用意した。従って、活性体Aの濃度は両方の組成物で同じである。
2つの活性体の組み合わせ物を投与するために、容器1からの体積V3ml及び容器2
からの体積V2mlを混合した。
所定の濃度a及びbで2つの活性体を処方するために、投与しようとする体積V3及び
2は、投与しようとする活性体A及びBの量に依存して選択される。2つの活性体の体
積V3及びV2は活性体の量に基づいて以下のように決定される:
活性体Aの量:(V3・a+V2・a) mg
活性体Bの量:V2・b mg
活性体A及びBの濃度は以下のように決定される。
活性体A: a mg/mL=(V3・a+V2・a)/(V3+V2
活性体B: z mg/mL=V2・b/(V3+V2
3+V2は投与される総体積である。上記の計算から、活性体Aの濃度が、どんな体積比V3/V2が処方されているかに関わらず常にa mg/mlである、すなわち一定であるということは明らかである。
【0151】
比較例(1の項を参照のこと)と本発明の実施例を比較すると、活性体A及びBの等しい処方量のために本発明の実施例において必要とされる総体積の方がより低いことは明らかである。
【0152】
活性体Aの所定の用量(活性体の量)のために、
比較例における数量は: V1・a mgである。
本発明の実施例では: それは(V3・a+V2・a)mgである。
【0153】
活性体の量は両方の場合で同じであるべきなので、
(V3・a+V2・a)=V1・a
(V3+V2)・a=V1・a
すると V3+V2=V1
又は V3=V1−V2 である。
【0154】
ここで、活性体Bが投与される体積V2は、両方の場合で同じである。
【0155】
比較例における総体積は V1+V2 であり
本発明の実施例における総体積は V3+V2 である。
上の等式によって、本発明の実施例については:
3+V2=V1−V2+V2=V1
ということである。
【0156】
この体積V1は比較例の体積V1+V2よりも小さい。
【0157】
活性体A及びBを含む組成物を活性体Aを含む組成物と混合する結果として、活性体B
は希釈される。この希釈は比較例における活性体Bの希釈よりも少ない(すなわち濃度b>濃度z>濃度y):
b >z
b >V2・b/(V3+V2
b >b・V2/(V3+V2)[ここでV2/(V3+V2)は<1である]であり、
z >y
2・b/(V3+V2) >V2・b/(V1+V2
1/(V3+V2) >1/(V1+V2
1/(V1−V2+V2) >1/(V1+V2
1/V1 >1/(V1+V2
である。
【0158】
従って、変化する活性体A(例えばインスリン)及びB(例えばGLP−1アゴニスト)の用量を投与するための本発明の処方システムは、比較システムを超える3つの利点を有する:
・活性体A(例えばインスリン)の濃度を所定のレベルで一定に維持することができる。・投与しようとする活性体A及びBの用量が同じである場合、投与しようとする総体積がより小さい。
・活性体B(例えばGLP−1アゴニスト)の希釈は比較例よりも少ない。従って活性体Bの濃度を所定の範囲内により容易に保持することができる。
【0159】
本発明の実施例を、第一の活性体が全ての組成物中に(好ましくは等しい質量分率で)存在し、かつ少なくとも1つのさらなる活性体がさらなる組成物の各々に存在する、3つ又はそれ以上の活性体を含む薬剤に容易に拡大することができる。第一の組成物は、第一の組成物中の活性体の濃度を希釈することなく同じ比率でさらなる組成物の各々と混合することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含む薬剤であって、インスリン及びGLP−1アゴニストをそれぞれ所定の量で含むことになるように、そして患者の個別の要求に適合した用量で投与することができるように製剤化及び/又は調剤される、薬剤。
【請求項2】
糖尿病患者の空腹時、食後及び/又は吸収後の血中グルコース濃度を調節するための、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
耐糖能を改善するための、請求項1又は2に記載の薬剤。
【請求項4】
低血糖を予防するための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項5】
膵臓β細胞の機能の喪失を予防するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項6】
減量のため、及び/又は体重増加を予防するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項7】
第一の医薬組成物及び第二の医薬組成物、及び場合により少なくとも1つのさらなる医薬組成物を含み、これらがそれぞれ少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含み、そして少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストを組成物の総質量に対して異なる質量分率で含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項8】
第一の医薬組成物中、第二の医薬組成物中、及び使用される場合の少なくとも1つのさらなる医薬組成物中の少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストの質量分率は、これらの医薬組成物がその質量分率に基づいてGLP−1アゴニストに対して異なる比率のインスリンを含有するように選択される、請求項7に記載の薬剤。
【請求項9】
第一の組成物、第二の組成物及び使用される場合はさらなる組成物が、実質的に同一の質量分率で少なくとも1つのインスリンを含み、そして異なる質量分率で少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含む、請求項7又は8に記載の薬剤。
【請求項10】
第一の組成物、第二の組成物及び使用される場合はさらなる組成物が、実質的に同一の質量分率で少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含み、そして異なる質量分率で少なくとも1つのインスリンを含む、請求項7又は8に記載の薬剤。
【請求項11】
第一の医薬組成物及び第二の医薬組成物を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の薬剤であって、第一の医薬組成物は少なくとも1つのインスリンを含み、そして第二の医薬組成物は少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含み、該薬剤が、第一の医薬組成物及び第二の医薬組成物の独立した投与のために製剤化及び/又は調剤される、上記薬剤。
【請求項12】
第一の医薬組成物及び第二の医薬組成物、及び場合により少なくとも1つのさらなる医薬組成物を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の薬剤であって、第一の医薬組成物は少なくとも1つのインスリンを含み、そして第二の医薬組成物は少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストを含み、そして少なくとも1つのさらなる医薬組成物は少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのさらなる活性化合物
を含む、上記薬剤。
【請求項13】
第一の医薬組成物、第二の医薬組成物、及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる組成物が、組成物の総質量に対する実質的に同一の質量分率で該インスリンを含む、請求項12に記載の薬剤。
【請求項14】
少なくとも1つのインスリンが、ヒトインスリン類、それらの類似体、誘導体及び代謝物から独立して選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項15】
少なくとも1つのインスリンが、Gly(A21)−Arg(B31)−Arg(B32)ヒトインスリン、LysB28ProB29ヒトインスリン、B28 Aspヒトインスリン、及びB29Lys(ε−テトラデカノイル),desB30ヒトインスリンからなる群より独立して選択される、請求項14に記載の薬剤。
【請求項16】
少なくとも1つのGLP−1アゴニストが、GLP−1、その類似体及び誘導体、エキセンジン−3、その類似体及び誘導体、エキセンジン−4、その類似体及び誘導体、並びにそれらの薬理学的に許容される塩からなる群より独立して選択される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項17】
少なくとも1つのGLP−1アゴニストが、エキセンジン−4、desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2[AVE0010]、及びArg34,Lys26(Nε(γ−グルタミル(Nα−ヘキサデカノイル)))GLP−1(7−37)[リラグルチド]、並びにそれらの薬理学的に許容される塩からなる群より独立して選択される、請求項16に記載の薬剤。
【請求項18】
少なくとも1つのGLP−1アゴニストが、エキセンジン−4、その類似体、誘導体、及び薬理学的に許容される塩からなる群より独立して選択される、請求項17に記載の薬剤。
【請求項19】
少なくとも1つのGLP−1アゴニストがdesPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2である、請求項18に記載の薬剤。
【請求項20】
インスリンが、Gly(A21)−Arg(B31)−Arg(B32)ヒトインスリンであり、そしてGLP−1アゴニストがdesPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又はその薬学的に許容しうる塩である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項21】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の薬剤を含むキット。
【請求項22】
Gly(A21)−Arg(B31)−Arg(B32)ヒトインスリン、及びdesPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2及び/又はその薬学的に許容しうる塩の組み合わせ物。
【請求項23】
糖尿病患者、特に1型若しくは2型糖尿病患者を処置するため、空腹時、食後及び/又は吸収後の血中グルコース濃度を調節するため、耐糖能を改善するため、低血糖を予防するため、膵臓β細胞の機能の喪失を予防するため、減量のため、及び/又は体重増加を予防するための医薬品を調製するための、少なくとも1つのインスリン及び少なくとも1つのGLP−1アゴニストの使用。
【請求項24】
請求項7に記載の薬剤又はそのような薬剤を含むキットを用いて患者を処置する方法で
あって、
(a) 投与しようとする少なくとも1つのインスリンの用量を選択すること、
(b) 投与しようとする少なくとも1つのGLP−1アゴニストの用量を選択すること、
(c) (a)及び(b)からの用量が同じ体積中に存在するような濃度で(a)及び
(b)からの用量を含む薬剤の、第一、第二及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる組成物から、組成物を選択すること、並びに
(d) (a)及び(b)からの用量に対応する量を決定しそして投与すること、
を含む、上記方法。
【請求項25】
空腹時、食後及び/若しくは吸収後の血中グルコース濃度を調節するため、耐糖能を改善するため、低血糖を予防するため、膵臓β細胞の機能の喪失を予防するため、減量のため、並びに/又は体重増加を予防するための、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程(c)が表に基づいて行われる、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
請求項13に記載の薬剤又はそのような薬剤を含むキットを用いて患者を処置する方法であって:
(i.) 投与しようとする少なくとも1つのインスリンの用量を選択し、そして選択した用量の少なくとも1つのインスリンが総量中に存在できるように、第一、第二、及び使用される場合は少なくとも1つのさらなる組成物の総量を決定すること、
(ii.) 投与しようとする少なくとも1つのGLP−1アゴニストの用量を選択し、そして選択した用量の少なくとも1つのGLP−1アゴニストが、第二の組成物の総量中に存在できるように第二の組成物の総量を決定すること、
(iii.) 必要に応じて、投与しようとする少なくとも1つのさらなる活性化合物の用量を選択し、そして選択した用量の少なくとも1つのさらなる活性化合物が、少なくとも1つのさらなる組成物の総量中に存在できるように少なくとも1つのさらなる組成物の総量を決定すること、
(iv.) 工程(i)による総量から、工程(ii)による第二の組成物の総量を差し引いて、そして必要に応じて工程(iii)による少なくとも1つのさらなる組成物の総量を差し引いた量に相当する投与量の第一の組成物を患者に投与すること、並びに
(v.) 工程(ii)において決定された総量の第二の組成物、及び必要に応じて、工程(iii)において決定された総量の少なくとも1つのさらなる組成物を、患者に投与すること、
を含む、上記方法
【請求項28】
空腹時、食後及び/若しくは吸収後の血中グルコース濃度を調節するため、耐糖能を改善するため、低血糖を予防するため、膵臓β細胞の機能の喪失を予防するため、減量のため、並びに/又は体重増加を予防するための、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
工程(i)、(ii)及び/又は(iii)が表に基づいて行われる、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の薬剤を調製する方法であって、該薬剤がインスリン及びGLP−1アゴニストをそれぞれ所定の量で含み得るように、そして患者の個別の要求に適合する用量で投与することができるように製剤化及び/又は調剤することを含む、上記方法。
【請求項31】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の薬剤又は請求項21に記載のキットを含むデバイスであって、別々の容器中に薬剤の医薬組成物を含み、かつ互いに独立して医薬組成物
を調薬することを可能にする、デバイス。
【請求項32】
注射用である、請求項31に記載のデバイス。
【請求項33】
Gly(A21)−Arg(B31)−Arg(B32)ヒトインスリンとリラグルチド及び/又はその薬理学的に許容しうる塩との組み合わせ物。
【請求項34】
Gly(A21)−Arg(B31)−Arg(B32)ヒトインスリンとエキセンジン−4及び/又はその薬理学的に許容しうる塩との組み合わせ物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−255040(P2012−255040A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−221012(P2012−221012)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【分割の表示】特願2011−531457(P2011−531457)の分割
【原出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】